一例として示す鉄骨構造物10Aの正面図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る鉄骨構造物の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、一例として示す新設鉄骨間柱12の上面図であり、図3は、一例として示す鋼材スリーブ14の斜視図である。図4は、一例として示す増設部材16の斜視図である。図1では、垂直方向を矢印Aで示し、水平方向を矢印Bで示す。鉄骨構造物10A(鉄骨構造物10B~10Gを含む)は、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、工場等の既設のあらゆる既設建造物に構築される。
鉄骨構造物10Aは、既設建造物の既設鉄骨梁11および新設鉄骨間柱12と、連結板13および複数個の鋼材スリーブ14(管材)と、複数本の連結ボルト15および複数の増設部材16と、複数本の挿入ボルト17および充填材18とから形成されている。なお、図1では、1本の新設鉄骨間柱12を図示しているが、実際には、複数本の新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に取り付けられる(図7や図9、図12、図14、図16、図18も同様)。鋼材スリーブ14の個数、連結ボルト15および挿入ボルト17の本数、増設部材16の数について特に制限はなく、鉄骨構造物10Aの大きさや求められる強度等によってそれらの数を決定する。
既設鉄骨梁11には、鋼材から作られた水平方向へ延びるH形鋼19(第2のH形鋼)が使用されている。既設鉄骨梁11であるH形鋼19は、水平方向へ延びる上フランジ20と、上フランジ20に平行して水平方向へ延びる下フランジ21と、それらフランジ20,21の間に位置して水平方向へ延びるウェブ22とから形成されている。上フランジ20およびウェブ22には、ボルト孔23が穿孔されている。
既設鉄骨梁11は、H形鋼から形成された既設の主柱(図示せず)に連結されている。なお、既設鉄骨梁11がH形鋼ではなく、I形鋼やT形鋼、山形鋼、溝形鋼、Z形鋼等であってもよく、既設の主柱がH形鋼ではなく、I形鋼やT形鋼、山形鋼、溝形鋼、Z形鋼、口形鋼、日形鋼、O形鋼等であってもよい。既設鉄骨梁11(上フランジ20)の上には、所定の厚み寸法の既設コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)が施工されている。コンクリートスラブ24の所定の箇所には、水平方向へ並ぶ断面円形の貫通孔25および断面円形の挿入孔26が穿孔されている。
新設鉄骨間柱12は、既設鉄骨梁11の上に取り付けられて既設鉄骨梁11から垂直方向上方へ延びている。新設鉄骨間柱12には、鋼材から作られた垂直方向へ延びるH形鋼27(第1のH形鋼)が使用されている。新設鉄骨間柱12であるH形鋼27は、垂直方向へ延びる一方のフランジ28と、一方のフランジ28に平行して垂直方向へ延びる他方のフランジ29と、それらフランジ28,29の間に位置して垂直方向へ延びるウェブ30とから形成されている。なお、新設鉄骨間柱12がH形鋼ではなく、I形鋼やT形鋼、山形鋼、溝形鋼、Z形鋼、口形鋼、日形鋼、O形鋼等であってもよい。
連結板13は、鋼材から作られ、板状に成形されて所定面積および所定厚みを有する。連結板13は、新設鉄骨間柱12の下端(フランジ28,29およびウェブ30の下端)に溶接によって取り付けられている(溶着されている)。連結板13は、新設鉄骨間柱12の下端において水平方向へ延びている。連結板13は、工場においてあらかじめ新設鉄骨間柱12の下端に取り付けられ、現場に搬送される。
連結板13は、新設鉄骨間柱12であるH形鋼27の一方のフランジ28と他方のフランジ29との間に延びる中央部31と、H形鋼27のそれらフランジ28,29から水平方向側方に延びる両側部32,33とを有する。連結板13の中央部31および両側部32,33には、ボルト孔23が穿孔されている。連結板13は、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の上に配置(載置)されている。連結板13とコンクリートスラブ24との間には、充填材34が充填されている。充填材34は、連結板13とコンクリートスラブ24との間において硬化している。充填材18,34(後記する充填材47を含む)には、無収縮モルタルや高強度コンクリート等の無機系の充填材、エポキシ樹脂等の有機系の充填材等の使用可能なあらゆる充填材を使用することができる。
それら鋼材スリーブ14(管材)は、鋼材から作られ、その断面形状が円形の筒状に成形されている。鋼材スリーブ14は、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に挿通されて垂直方向へ延びている。鋼材スリーブ14は、その上端が連結板13の下面に当接していることが好ましい。それら連結ボルト15は、鋼材から作られている。連結ボルト15は、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通され、連結板13から既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19の上フランジ20に向かって垂直方向へ延びている。
連結ボルト15は、連結板13の両側部32,33に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着され、連結板13の中央部31であって一方のフランジ28の近傍に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着されているとともに、連結板13の中央部31であって他方のフランジ29の近傍に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着されている。連結ボルト15は、連結板13から垂直方向上方へ露出する螺子部35にナット36(固定手段)が螺着され、連結板13に強固に連結されている。
それら増設部材16は、鋼材から作られ、既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19の上フランジ20の側(上フランジ20の直下)に配置されている。増設部材16は、既設鉄骨梁11のウェブ22に平行して垂直方向へ延びる所定面積および所定厚みの取付板部37と、既設鉄骨梁11の上フランジ20に平行して水平方向へ延びる所定面積および所定厚みの接続板部38と、取付板部37および接続板部38の中央に位置して垂直方向へ延びる所定面積および所定厚みの補強板部39とから形成されている。増設部材16では、取付板部37や接続板部38、補強板部39が一体に成形されている。取付板部37および接続板部38には、ボルト孔23が穿孔されている。
増設部材16は、その取付板部37に穿孔されたボルト孔23と既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19のウェブ22のボルト孔23とに挿通または螺着された固定ボルト40によって既設鉄骨梁11(H形鋼19)に強固に固定されている。固定ボルト40には、ナット(図示せず)が螺着されている。連結ボルト15は、増設部材16の接続板部38のボルト孔23に挿通され、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通されているとともに、連結板13のボルト孔23に挿通または螺着されている。連結ボルト15は、ナット36によって連結板13に固定されることで、連結板13と増設部材16とを連結している。
鉄骨構造物10Aでは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端が既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20に連結され、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に取り付けられている。
鉄骨構造物10Aでは、連結ボルト15が引っ張り応力に抵抗し、鋼材スリーブ14が圧縮応力に抵抗するから、連結ボルト15と鋼材スリーブ14とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成している。曲げ抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の両側部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成され、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍に形成されるとともに、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の他方のフランジ29の近傍に形成される。
それら挿入ボルト17は、鋼材から作られている。挿入ボルト17は、連結板13の中央部31に穿孔されたボルト孔23に螺着または挿入され、連結板13から既設鉄骨梁11(上フランジ20)に向かって垂直方向へ延びている。挿入ボルト17は、連結板13を挟むように螺着されたナット36によって連結板13に取り付けられている。挿入ボルト17の連結板13から下方へ露出する露出部分41(頭部を含む)は、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に穿孔された挿入孔26に挿入されている。なお、図1では、挿入孔26がコンクリートスラブ24を貫通しているが、挿入ボルト17(後記する挿入棒46、金属柱48、コネクト部材52)を挿入するのに十分な深さがあればよく、挿入孔26がコンクリートスラブ24を途中までに穿孔した断面円形の穴溝であってもよい。
充填材18は、挿入孔26に充填されている。挿入孔26では、充填材18が硬化し、挿入ボルト17と硬化した充填材18とが一体になっている。鉄骨構造物10Aでは、挿入ボルト17と挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成している。せん断抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されている。
図5は、図1の鉄骨構造物10Aを構築するための連結工程の一例を示す正面図である。連結工程では、それら連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とを連結し、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端を既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20に連結するとともに、曲げ抵抗・伝達手段を構築(形成)する。
連結工程では、既設鉄骨梁11に対する新設鉄骨間柱12の設置箇所を選定し、図5の(a)に示すように、設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置に電動ドリルドライバー(図示せず)のドリルビット42によって貫通孔25を穿孔するとともに、既設鉄骨梁11の上フランジ20にボルト孔23を穿孔する。次に、図5の(b)に示すように、ドリルビット42によって穿孔したコンクリートスラブ24の貫通孔25の周囲をコア抜きドリル43を利用してコア抜きし、コンクリートスラブ24に断面円形の貫通孔25を穿孔する。なお、貫通孔25の穿孔手順は図示のそれに限らず、公知の全ての穿孔手順によって貫通孔25を穿孔することができる(後記する貫通孔25の穿孔手順も同様)。
コア抜きドリル43によってコンクリートスラブ24に貫通孔25を穿孔した後、図5の(c)に示すように、その貫通孔25に鋼材スリーブ14を挿入し、貫通孔25に鋼材スリーブ14を設置する。鋼材スリーブ14は、その下端が既設鉄骨梁11の上フランジ20に当接し、その上端が連結板13の下面に当接するように設置する。鋼材スリーブ14の上端と連結板13の下面との間に隙間が生じる場合は、その隙間にフィラープレートを差し込み、または、鋼材スリーブ14を長めに作り、貫通孔25に設置した後、余分な部分を削除する。あるいは、鋼材スリーブ14に長さ調節機構を形成し、現場において調節機構を利用して長さ調節を行う。
貫通孔25に鋼材スリーブ14を挿入・設置した後、新設鉄骨間柱12の設置箇所のコンクリートスラブ24の上に連結板13を配置し、図5の(d)に示すように、連結ボルト15の頭部を下にした状態で、増設部材16の接続板部38に穿孔されたボルト孔23に増設部材16の下方から上方に向かって連結ボルト15を挿入しつつ、連結ボルト15を既設鉄骨梁11の上フランジ20のボルト孔23に挿通するとともに鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通する。なお、連結ボルト15を上方から下方に向かって挿入する場合もある。増設部材16は、その取付板部37に穿孔されたボルト孔23と既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19のウェブ22のボルト孔23とに挿通または螺着された固定ボルト40によって既設鉄骨梁11に固定されている。
連結ボルト15を鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通した後、図5の(e)に示すように、連結ボルト15の螺子部35を連結板13に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着し、連結板13の上方へ露出する連結ボルト15の螺子部35にナット36(固定手段)を螺着する。連結板13の上方へ露出する連結ボルト15の螺子部35にナット36を螺着することで、連結板13と増設部材16とが連結され、既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12が連結される。
連結板13とコンクリートスラブ24の表面との間のスペースには充填材34が充填される。充填材34は、養生期間が経過すると、スペースにおいて硬化する。なお、既設鉄骨梁11の上フランジ20(コンクリートスラブ24の表面)に対する連結板13(新設鉄骨間柱12)の平行状態が充填材34によって調節されている。
鉄骨構造物10Aでは、連結ボルト15と鋼材スリーブ14とから既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段が形成される。曲げ抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の両側部であって新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成され、新設鉄骨間柱12の中央部であって新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍に形成されるとともに、新設鉄骨間柱12の中央部であって新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の他方のフランジ29の近傍に形成される。
図6は、図1の鉄骨構造物10Aを構築するための接続工程の一例を示す正面図である。接続工程では、それら挿入ボルト17によって連結板13(新設鉄骨間柱12)とコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)とを接続し、せん断抵抗・伝達手段を構築(形成)する。接続工程では、図6の(a)に示すように、既設鉄骨梁11に対する新設鉄骨間柱12の設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置にコア抜きドリル43を利用して挿入孔26を穿孔する。
次に、図6の(b)に示すように、挿入ボルト17の頭部を下にした状態で、連結板13に穿孔されたボルト孔23に連結板13の下方から上方に向かって挿入ボルト17の螺子部44を挿入または螺着し、連結板13を挟むようにナット36を挿入ボルト17の螺子部44に螺着して挿入ボルト17を連結板13に取り付ける。なお、挿入ボルト17に頭部がない場合もある。連結板13のボルト孔23の近傍には、充填材18を充填する充填材充填口45が形成されている。
挿入ボルト17を連結板13に取り付けた後、図6の(c)に示すように、連結板13を挿入孔26に向かって下方へ移動させ、連結板13から下方へ露出する挿入ボルト17の露出部分41をコンクリートスラブ24の挿入孔26に挿入し、連結板13をコンクリートスラブ24の上に設置する。次に、連結板13の充填材充填口45から挿入孔26に充填材18を充填(注入)する。挿入孔26に充填された充填材18は、養生期間が経過すると、挿入孔26において硬化する。
挿入孔26では、図6の(d)に示すように、挿入ボルト17が挿入孔26において硬化した充填材18と一体になっている。鉄骨構造物10Aでは、挿入ボルト17と挿入孔26において硬化した充填材18とから既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段が形成される。せん断抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成される。
接続工程の他の一例としては、コンクリートスラブ24の所定の位置に挿入孔26を穿孔した後、挿入孔26に充填材18を充填する。次に、挿入ボルト17(露出部分41)をコンクリートスラブ24の挿入孔26(充填材18)に挿入し、連結板13のボルト孔23に挿入ボルト17を挿通して連結板13をコンクリートスラブ24の上に設置し、ナット36を挿入ボルト17の螺子部44に螺着して挿入ボルト17を連結板13に取り付ける。または、挿入ボルト17を取り付けた連結板13を挿入孔26に向かって下方へ移動させ、連結板13から下方へ露出する挿入ボルト17の露出部分41をコンクリートスラブ24の挿入孔26(充填材18)に挿入し、連結板13をコンクリートスラブ24の上に設置する。この場合、連結板13に充填材充填口45は作られない。
鉄骨構造物10Aは、既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に貫通孔25を穿孔し、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端に取り付けられた連結板13が既設鉄骨梁11のH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に配置(載置)され、コンクリートスラブ24の貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、連結ボルト15を挿通する貫通孔25をコンクリートスラブ24に穿孔し、その貫通孔25に鋼材スリーブ14を設置しつつ、鋼材スリーブ14に挿通した連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とを連結すればよく、はつり工事を行う必要がなく、はつり音やはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができ、静音および清浄な環境を維持した状態で既設建造物の既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12を取り付けることができる。
鉄骨構造物10Aは、はつり音およびはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができるから、平日の昼間の時間に作業を行うことができ、平日の昼間の時間を有効に使って短時間に効率よく既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を取り付けることができる。鉄骨構造物10Aは、コンクリートをはつる必要がないから、はつり箇所に対する復旧工事を行う手間と時間とを節約することができるとともに、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の耐力の低下やコンクリートスラブ24の変形を防ぎつつ既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を短時間に効率よく取り付けることができる。
鉄骨構造物10Aは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15を利用して新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、溶接作業を必要とせず、溶接の熱による鉄骨部材の耐力の低下や鉄骨部材の変形を防ぐことができ、火災発生の危険がなく、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、工場等のあらゆる既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を安全に取り付けることができる。
鉄骨構造物10Aは、挿入孔26に挿入された挿入ボルト17と挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力が生じた際に、挿入孔26に挿入された挿入ボルト17と挿入孔26において硬化した充填材18とから形成されたせん断抵抗・伝達手段がそのせん断応力に抵抗しつつ、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間においてせん断応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Aは、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に曲げ応力が生じた際に、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14とから形成された曲げ抵抗・伝達手段がその曲げ応力に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間において曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Aでは、新設鉄骨間柱12のH形鋼27のウェブ30に沿ってせん断抵抗・伝達手段が形成され、新設鉄骨間柱12のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに曲げ抵抗・伝達手段が形成されているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27のウェブ30に沿って形成されたせん断抵抗・伝達手段や新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成された曲げ抵抗・伝達手段がせん断応力や曲げ応力に十分に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11(H形鋼19)やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との間においてせん断応力や曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
図7は、他の一例として示す鉄骨構造物10Bの正面図である。図7では、垂直方向を矢印Aで示し、水平方向を矢印Bで示す。鉄骨構造物10Bは、既設建造物の既設鉄骨梁11および新設鉄骨間柱12と、連結板13および複数個の鋼材スリーブ14(管材)と、複数本の連結ボルト15および複数の増設部材16と、複数本の挿入ボルト17および充填材18,47とから形成されている。鋼材スリーブ14の個数、連結ボルト15および挿入ボルト17の本数、増設部材16の数について特に制限はなく、鉄骨構造物10Bの大きさや求められる強度等によってそれらの数を決定する。
鉄骨構造物10Bを形成する既設鉄骨梁11や新設鉄骨間柱12には、図1のそれらと同一のH形鋼19,27(第1のH形鋼、第2のH形鋼)が使用されている。既設鉄骨梁11(上フランジ20)の上には、既設コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)が施工され、コンクリートスラブ24の所定の箇所には、水平方向へ並ぶ断面円形の貫通孔25および断面円形の挿入孔26が穿孔されている。
鉄骨構造物10Bを形成する連結板13は、図1のそれと同一であり、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の上に配置(載置)されている。連結板13のボルト孔23の近傍には、充填材47を充填する充填材充填口45が形成されている。連結板13とコンクリートスラブ24との間には、充填材34が充填されている。鉄骨構造物10Bを形成するそれら鋼材スリーブ14は、図1のそれと同一であり、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に挿入・設置されている。
鉄骨構造物10Bを形成するそれら連結ボルト15は、図1のそれと同一であり、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通されて連結板13から既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19の上フランジ20に向かって垂直方向へ延びている。連結ボルト15は、連結板13から垂直方向上方へ露出する螺子部35にナット36(固定手段)が螺着され、連結板13に連結されている。鉄骨構造物10Bを形成するそれら増設部材16は、図1のそれと同一であり、既設鉄骨梁11の上フランジ20の側(上フランジ20の直下)に配置されている。増設部材16は、固定ボルト40およびナットによって既設鉄骨梁11のウェブ22に固定されている。
連結ボルト15は、増設部材16の接続板部38のボルト孔23に挿通され、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通されているとともに、連結板13のボルト孔23に挿通または螺着され、螺子部35に螺着されたナット36によって連結板13に固定されることで、連結板13と増設部材16とを連結している。鉄骨構造物10Bを形成する充填材47は、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に充填され、貫通孔25において硬化している。
鉄骨構造物10Bでは、貫通孔25と鋼材スリーブ14の外周面との間隙が充填材47によって埋められているとともに、連結ボルト15と鋼材スリーブ14の内周面との間隙が充填材47によって埋められている。貫通孔25では、連結ボルト15と鋼材スリーブ14と硬化した充填材47とが一体になっている。
鉄骨構造物10Bでは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端が既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20に連結され、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に取り付けられている。
鉄骨構造物10Bでは、連結ボルト15が引っ張り応力に抵抗し、鋼材スリーブ14と充填材47とが圧縮応力に抵抗するから、連結ボルト15と鋼材スリーブ14と充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成している。曲げ抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の両側部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成され、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍に形成されるとともに、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の他方のフランジ29の近傍に形成される。
鉄骨構造物10Bを形成するそれら挿入ボルト17は、図1のそれと同一であり、連結板13の中央部31に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着され、連結板13から既設鉄骨梁11(上フランジ20)に向かって垂直方向へ延びている。挿入ボルト17は、連結板13を挟むように螺着されたナット36によって連結板13に取り付けられている。挿入ボルト17の連結板13から下方へ露出する露出部分41(頭部を含む)は、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に穿孔された挿入孔26に挿入されている。
充填材18は、挿入孔26に充填されている。挿入孔26では、充填材18が硬化し、挿入ボルト17と硬化した充填材18とが一体になっている。鉄骨構造物10Bでは、挿入ボルト17と挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成している。せん断抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されている。
図8は、図7の鉄骨構造物10Bを構築するための連結工程の一例を示す正面図である。なお、図7の鉄骨構造物10Bを構築するための接続工程は、図1の鉄骨構造物10Aを構築するための接続工程と同一である(図6参照)。連結工程では、既設鉄骨梁11に対する新設鉄骨間柱12の設置箇所を選定し、図8の(a)に示すように、設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置に電動ドリルドライバー(図示せず)のドリルビット42によって貫通孔25を穿孔するとともに、既設鉄骨梁11の上フランジ20にボルト孔23を穿孔する。次に、図8の(b)に示すように、ドリルビット42によって穿孔したコンクリートスラブ24の貫通孔25の周囲をコア抜きドリル43を利用してコア抜きし、コンクリートスラブ24に断面円形の貫通孔25を穿孔する。
コア抜きドリル43によってコンクリートスラブ24に貫通孔25を穿孔した後、図8の(c)に示すように、その貫通孔25に鋼材スリーブ14を挿入し、貫通孔25に鋼材スリーブ14を設置する。鋼材スリーブ14は、その下端が既設鉄骨梁11の上フランジ20に当接し、その上端が連結板13の下面に当接するように設置する。鋼材スリーブ14の上端と連結板13の下面との間に隙間が生じる場合は、既述の方法でその隙間を埋める。貫通孔25に鋼材スリーブ14を挿入・設置した後、図8の(d)に示すように、貫通孔25に充填材47を充填し、その充填材47によって貫通孔25と鋼材スリーブ14の外周面との間隙を埋める。
次に、新設鉄骨間柱12の設置箇所のコンクリートスラブ24の上に連結板13を配置し、図8の(e)に示すように、連結ボルト15の頭部を下にした状態で、増設部材16の接続板部38に穿孔されたボルト孔23に増設部材16の下方から上方に向かって連結ボルト15を挿入しつつ、連結ボルト15を既設鉄骨梁11の上フランジ20のボルト孔23に挿通するとともに鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通する。なお、充填材47によって連結ボルト15と鋼材スリーブ14の内周面との間隙を埋める。増設部材16は、その取付板部37に穿孔されたボルト孔23と既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19のウェブ22のボルト孔23とに挿通または螺着された固定ボルト40によって既設鉄骨梁11に固定されている。
連結ボルト15を鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通した後、図8の(f)に示すように、連結ボルト15の螺子部35を連結板13に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着し、連結板13の上方へ露出する連結ボルト15の螺子部35にナット36(固定手段)を螺着する。連結板13の上方へ露出する連結ボルト15の螺子部35にナット36を螺着することで、連結板13と増設部材16とが連結され、既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12が連結される。
連結板13とコンクリートスラブ24の表面との間のスペースには充填材34が充填される。充填材34は、養生期間が経過すると、スペースにおいて硬化する。なお、既設鉄骨梁11の上フランジ20(コンクリートスラブ24の表面)に対する連結板13(新設鉄骨間柱12)の平行状態が充填材34によって調節されている。
鉄骨構造物10Bでは、連結ボルト15と鋼材スリーブ14と貫通孔25において硬化した充填材47とから既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段が形成される。曲げ抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の両側部であって新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成され、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍に形成されるとともに、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の他方のフランジ29の近傍に形成される。
鉄骨構造物10Bは、既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に貫通孔25を穿孔し、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端に取り付けられた連結板13が既設鉄骨梁11のH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に配置(載置)され、コンクリートスラブ24の貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、連結ボルト15を挿通する貫通孔25をコンクリートスラブ24に穿孔しつつ、その貫通孔25に鋼材スリーブ14を設置するとともに、貫通孔25に充填材47を充填し、連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とを連結すればよく、はつり工事を行う必要がなく、はつり音やはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができ、静音および清浄な環境を維持した状態で既設建造物の既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12を取り付けることができる。
鉄骨構造物10Bは、はつり音およびはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができるから、平日の昼間の時間に作業を行うことができ、平日の昼間の時間を有効に使って短時間に効率よく既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を取り付けることができる。鉄骨構造物10Bは、コンクリートをはつる必要がないから、はつり箇所に対する復旧工事を行う手間と時間とを節約することができるとともに、コンクリートスラブ24の耐力の低下やコンクリートスラブ24の変形を防ぎつつ既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を短時間に効率よく取り付けることができる。
鉄骨構造物10Bは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15を利用して新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、溶接作業を必要とせず、溶接の熱による鉄骨部材の耐力の低下や鉄骨部材の変形を防ぐことができ、火災発生の危険がなく、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、工場等のあらゆる既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を安全に取り付けることができる。
鉄骨構造物10Bは、挿入孔26に挿入された挿入ボルト17と挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力が生じた際に、挿入孔26に挿入された挿入ボルト17と挿入孔26において硬化した充填材18とから形成されたせん断抵抗・伝達手段がそのせん断応力に抵抗しつつ、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間においてせん断応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Bは、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14と貫通孔25において硬化した充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に曲げ応力が生じた際に、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14と貫通孔25において硬化した充填材47とから形成された曲げ抵抗・伝達手段がその曲げ応力に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間において曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Bでは、新設鉄骨間柱12のH形鋼27のウェブ30に沿ってせん断抵抗・伝達手段が形成され、新設鉄骨間柱12のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに曲げ抵抗・伝達手段が形成されているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27のウェブ30に沿って形成されたせん断抵抗・伝達手段や新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成された曲げ抵抗・伝達手段がせん断応力や曲げ応力に十分に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11(H形鋼19)やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との間においてせん断応力や曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
図9は、他の一例として示す鉄骨構造物10Cの正面図である。図9では、垂直方向を矢印Aで示し、水平方向を矢印Bで示す。鉄骨構造物10Cは、既設建造物の既設鉄骨梁11および新設鉄骨間柱12と、連結板13および複数本の連結ボルト15と、複数の増設部材16および複数本の挿入棒46と、充填材18,47とから形成されている。連結ボルト15および挿入棒46の本数、増設部材16の数について特に制限はなく、鉄骨構造物10Cの大きさや求められる強度等によってそれらの数を決定する。
鉄骨構造物10Cを形成する既設鉄骨梁11や新設鉄骨間柱12には、図1のそれらと同一のH形鋼19,27(第1のH形鋼、第2のH形鋼)が使用されている。既設鉄骨梁11(上フランジ20)の上には、既設コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)が施工され、コンクリートスラブ24の所定の箇所には、水平方向へ並ぶ断面円形の貫通孔25および断面円形の挿入孔26が穿孔されている。
鉄骨構造物10Cを形成する連結板13は、図1のそれと同一であり、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の上に配置(載置)されている。連結板13のボルト孔23の近傍と挿入棒46の近傍とには、充填材18,47を充填する充填材充填口45が形成されている(図10,11参照)。連結板13とコンクリートスラブ24との間には、充填材34が充填されている。鉄骨構造物10Cを形成するそれら連結ボルト15は、図1のそれと同一であり、貫通孔25に挿通されて連結板13から既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19の上フランジ20に向かって垂直方向へ延びている。連結ボルト15は、連結板13から垂直方向上方へ露出する螺子部35にナット36(固定手段)が螺着され、連結板13に連結されている。鉄骨構造物10Cを形成するそれら増設部材16は、図1のそれと同一であり、既設鉄骨梁11の上フランジ20の側(上フランジ20の直下)に配置されている。増設部材16は、固定ボルト40およびナットによって既設鉄骨梁11のウェブ22に固定されている。
連結ボルト15は、増設部材16の接続板部38のボルト孔23に挿通され、貫通孔25に挿通されているとともに、連結板13のボルト孔23に挿通または螺着され、螺子部35に螺着されたナット36によって連結板13に固定されることで、連結板13と増設部材16とを連結している。鉄骨構造物10Cを形成する充填材47は、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に充填され、貫通孔25において硬化している。貫通孔25では、充填材47が硬化し、連結ボルト15と硬化した充填材47とが一体になっている。
鉄骨構造物10Cでは、貫通孔25に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端が既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20に連結され、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に取り付けられている。
鉄骨構造物10Cでは、連結ボルト15が引っ張り応力に抵抗し、貫通孔25において硬化した充填材47が圧縮応力に抵抗するから、連結ボルト15と貫通孔25において硬化した充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成している。曲げ抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の両側部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成され、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍に形成されるとともに、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の他方のフランジ29の近傍に形成される。
それら挿入棒46は、鋼材から作られている。挿入棒46は、連結板13の中央部31に溶接によって固定され、連結板13から既設鉄骨梁11(上フランジ20)に向かって垂直方向へ延びている。挿入棒46(頭部を含む)は、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に穿孔された挿入孔26に挿入されている。挿入孔26には、充填材18が充填されている。挿入孔26では、充填材18が硬化し、挿入棒46と硬化した充填材18とが一体になっている。
鉄骨構造物10Cでは、挿入棒46と挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成している。せん断抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されている。
図10は、図9の鉄骨構造物10Cを構築するための連結工程の一例を示す正面図である。連結工程では、図10の(a)に示すように、新設鉄骨間柱12の設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置に電動ドリルドライバーのドリルビット42によって断面円形の貫通孔25を穿孔するとともに、既設鉄骨梁11の上フランジ20に断面円形のボルト孔23を穿孔する。
ドリルビット42によってコンクリートスラブ24に貫通孔25を穿孔した後、図10の(b)に示すように、連結ボルト15の頭部を下にした状態で、増設部材16の接続板部38に穿孔されたボルト孔23に増設部材16の下方から上方に向かって連結ボルト15を挿入しつつ、連結ボルト15を既設鉄骨梁11の上フランジ20のボルト孔23に挿通するとともに貫通孔25に挿通する。なお、連結ボルト15を上方から下方に向かって挿入する場合もある。増設部材16は、その取付板部37に穿孔されたボルト孔23と既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19のウェブ22のボルト孔23とに挿通または螺着された固定ボルト40によって既設鉄骨梁11に固定されている。
連結ボルト15を貫通孔25に挿通した後、連結ボルト15の螺子部35を連結板13に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着し、連結板13の上方へ露出する連結ボルト15の螺子部35にナット36(固定手段)を螺着する。次に、図10の(c)に示すように、連結板13の充填材充填口45から貫通孔25に充填材47を充填(注入)し、その充填材47によって貫通孔25と連結ボルト15の外周面との間隙を埋める。貫通孔25に充填された充填材47は、養生期間が経過すると、貫通孔25において硬化する。貫通孔25では、図10の(d)に示すように、連結ボルト15が貫通孔25において硬化した充填材47と一体になっている。
連結板13の上方へ露出する連結ボルト15の螺子部35にナット36を螺着することで、連結板13と増設部材16とが連結され、既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12が連結される。連結板13とコンクリートスラブ24の表面との間のスペースには充填材34が充填される。なお、既設鉄骨梁11の上フランジ20(コンクリートスラブ24の表面)に対する連結板13(新設鉄骨間柱12)の平行状態が充填材47によって調節されている。鉄骨構造物10Cでは、連結ボルト15と貫通孔25において硬化した充填材47とから既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じる曲げ応力に抗する曲げ抵抗・伝達手段が形成される。
図9の鉄骨構造物10Cを構築するための連結工程の他の一例としては、コンクリートスラブ24の所定の位置に貫通孔25を穿孔した後、貫通孔25に充填材47を充填し、増設部材16の接続板部38に穿孔されたボルト孔23に連結ボルト15を挿入しつつ、連結ボルト15を既設鉄骨梁11の上フランジ20のボルト孔23に挿通するとともに貫通孔25(充填材47)に挿通する。次に、連結ボルト15の螺子部35を連結板13に穿孔されたボルト孔23に挿入または螺着し、連結板13の上方へ露出する連結ボルト15の螺子部35にナット36(固定手段)を螺着する。この場合、連結板13に充填材充填口45は作られない。
図11は、図9の鉄骨構造物10Cを構築するための接続工程の一例を示す正面図である。接続工程では、図11の(a)に示すように、新設鉄骨間柱12の設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置にコア抜きドリル43を利用して挿入孔26を穿孔する。次に、図11の(b)に示すように、連結板13に固定された挿入棒46を挿入孔26に向かって下方へ移動させ、挿入棒46を挿入孔26に挿入し、連結板13をコンクリートスラブ24の上に設置する。なお、連結板13の挿入棒46の固定位置近傍には、充填材18を充填(注入)する充填材充填口45が形成されている。
挿入棒46を挿入孔26に挿入した後、図11の(c)に示すように、充填材充填口45から挿入孔に充填材18を充填(注入)する。挿入孔26に充填された充填材18は、養生期間が経過すると、挿入孔26において硬化する。挿入孔26では、図11の(d)に示すように、挿入棒46が挿入孔26において硬化した充填材18と一体になっている。鉄骨構造物10Cでは、挿入棒46と挿入孔26において硬化した充填材18とから既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段が形成される。
図9の鉄骨構造物10Cを構築するための接続工程の他の一例としては、コンクリートスラブ24の所定の位置に挿入孔26を穿孔した後、挿入孔26に充填材18を充填する。挿入孔26に充填材18を充填した後、連結板13に固定された挿入棒46を挿入孔26に向かって下方へ移動させ、挿入棒46を挿入孔26(充填材18)に挿入し、連結板13をコンクリートスラブ24の上に設置する。この場合、連結板13に充填材充填口45は作られない。
鉄骨構造物10Cは、既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に貫通孔25を穿孔し、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端に取り付けられた連結板13が既設鉄骨梁11のH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に配置(載置)され、コンクリートスラブ24の貫通孔25に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、連結ボルト15を挿通する貫通孔25をコンクリートスラブ24に穿孔しつつ、その貫通孔25に充填材47を充填し、連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とを連結すればよく、はつり工事を行う必要がなく、はつり音やはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができ、静音および清浄な環境を維持した状態で既設建造物の既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12を取り付けることができる。
鉄骨構造物10Cは、はつり音およびはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができるから、平日の昼間の時間に作業を行うことができ、平日の昼間の時間を有効に使って短時間に効率よく既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を取り付けることができる。鉄骨構造物10Cは、コンクリートをはつる必要がないから、はつり箇所に対する復旧工事を行う手間と時間とを節約することができるとともに、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の耐力の低下やコンクリートスラブ24の変形を防ぎつつ既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を短時間に効率よく取り付けることができる。
鉄骨構造物10Cは、貫通孔25に挿通された連結ボルト15を利用して新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、溶接作業を必要とせず、溶接の熱による鉄骨部材の耐力の低下や鉄骨部材の変形を防ぐことができ、火災発生の危険がなく、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、工場等のあらゆる既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を安全に取り付けることができる。
鉄骨構造物10Cは、挿入孔26に挿入された挿入棒46と挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力が生じた際に、挿入孔26に挿入された挿入棒46と挿入孔26において硬化した充填材18とから形成されたせん断抵抗・伝達手段がそのせん断応力に抵抗しつつ、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間においてせん断応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Cは、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25において硬化した充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に曲げ応力が生じた際に、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25において硬化した充填材47とから形成された曲げ抵抗・伝達手段がその曲げ応力に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間において曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Cでは、新設鉄骨間柱12のH形鋼27のウェブ30に沿ってせん断抵抗・伝達手段が形成され、新設鉄骨間柱12のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに曲げ抵抗・伝達手段が形成されているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27のウェブ30に沿って形成されたせん断抵抗・伝達手段や新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成された曲げ抵抗・伝達手段がせん断応力や曲げ応力に十分に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11(H形鋼19)やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との間においてせん断応力や曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
図12は、他の一例として示す鉄骨構造物10Dの正面図である。図12では、垂直方向を矢印Aで示し、水平方向を矢印Bで示す。鉄骨構造物10Dは、既設建造物の既設鉄骨梁11および新設鉄骨間柱12と、連結板13および複数個の鋼材スリーブ14(管材)と、複数本の連結ボルト15および複数の増設部材16と、充填材47および複数本の金属柱48とから形成されている。鋼材スリーブ14の個数、連結ボルト15および金属柱48の本数、増設部材16の数について特に制限はなく、鉄骨構造物10Dの大きさや求められる強度等によってそれらの数を決定する。
鉄骨構造物10Dを形成する既設鉄骨梁11や新設鉄骨間柱12には、図1のそれらと同一のH形鋼19,27(第1のH形鋼、第2のH形鋼)が使用されている。既設鉄骨梁11(上フランジ20)の上には、既設コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)が施工され、コンクリートスラブ24の所定の箇所には、水平方向へ並ぶ断面円形の貫通孔25および断面円形の挿入孔26が穿孔されている。
鉄骨構造物10Dを形成する連結板13は、図1のそれと同一であるが、連結板13の中央部31にはボルト孔23ではなく挿通孔49が穿孔されている。連結板13は、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の上に配置(載置)されている。連結板13とコンクリートスラブ24との間には、充填材34が充填されている。鉄骨構造物10Dを形成するそれら鋼材スリーブ14は、図1のそれと同一であり、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に挿入・設置されている。
鉄骨構造物10Dを形成するそれら連結ボルト15は、図1のそれと同一であり、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通されて連結板13から既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19の上フランジ20に向かって垂直方向へ延びている。連結ボルト15は、連結板13から垂直方向上方へ露出する螺子部35にナット36(固定手段)が螺着され、連結板13に連結されている。鉄骨構造物10Dを形成するそれら増設部材16は、図1のそれと同一であり、既設鉄骨梁11の上フランジ20の側(上フランジ20の直下)に配置されている。増設部材16は、固定ボルト40およびナットによって既設鉄骨梁11のウェブ22に固定されている。
連結ボルト15は、増設部材16の接続板部38のボルト孔23に挿通され、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通されているとともに、連結板13のボルト孔23に挿通または螺着され、螺子部35に螺着されたナット36によって連結板13に固定されることで、連結板13と増設部材16とを連結している。鉄骨構造物10Dを形成する充填材47は、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に充填され、貫通孔25において硬化している。
鉄骨構造物10Dでは、貫通孔25と鋼材スリーブ14の外周面との間隙が充填材47によって埋められているとともに、連結ボルト15と鋼材スリーブ14の内周面との間隙が充填材47によって埋められている。貫通孔25では、充填材47が硬化し、連結ボルト15と鋼材スリーブ14と硬化した充填材47とが一体になっている。
鉄骨構造物10Dでは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端が既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20に連結され、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に取り付けられている。
鉄骨構造物10Dでは、連結ボルト15が引っ張り応力に抵抗し、鋼材スリーブ14と充填材47とが圧縮応力に抵抗するから、連結ボルト15と鋼材スリーブ14と充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成している。曲げ抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の両側部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成され、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍に形成されるとともに、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の他方のフランジ29の近傍に形成される。
それら金属柱48は、鋼材から作られて円柱状に成形されている。金属柱48は、連結板13から既設鉄骨梁11(上フランジ20)に向かって垂直方向へ延びている。金属柱48は、連結板13の中央部31に穿孔された挿通孔49に挿入されているとともに、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に穿孔された挿入孔26に挿入されている。なお、金属柱48の形状(直径や長さを含む)は、必要な耐力等を勘案して決定する。図12では、金属柱48がコンクリートスラブ24を貫通して既設鉄骨梁11(上フランジ20)に達しているが、コンクリートスラブ24の途中までに延びていてもよい。
鉄骨構造物10Dでは、金属柱48が既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵・伝達抗手段を形成している。せん断抵・伝達抗手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されている。なお、図12の鉄骨構造物10Dを構築するための連結工程は、図7の鉄骨構造物10Bを構築するための連結工程と同一である(図8参照)。
図13は、図12の鉄骨構造物10Dを構築するための接続工程の一例を示す正面図である。接続工程では、図13の(a)に示すように、新設鉄骨間柱12の設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置にコア抜きドリル43を利用して挿入孔26を穿孔する。次に、図13の(b)に示すように、金属柱48を挿入孔26に挿入する。金属柱48を挿入孔26に挿入した後、図13の(c)に示すように、連結板13をコンクリートスラブ24の上に配置(載置)し、図13の(d)に示すように、連結板13に穿孔された挿通孔49に金属柱48の頂部50を挿入する。鉄骨構造物10Dでは、金属柱48によって既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段が形成される。
鉄骨構造物10Dは、既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に貫通孔25を穿孔し、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端に取り付けられた連結板13が既設鉄骨梁11のH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に配置(載置)され、コンクリートスラブ24の貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、連結ボルト15を挿通する貫通孔25をコンクリートスラブ24に穿孔しつつ、その貫通孔25に鋼材スリーブ14を設置するとともに、貫通孔25に充填材47を充填し、連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とを連結すればよく、はつり工事を行う必要がなく、はつり音やはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができ、静音および清浄な環境を維持した状態で既設建造物の既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12を取り付けることができる。
鉄骨構造物10Dは、はつり音およびはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができるから、平日の昼間の時間に作業を行うことができ、平日の昼間の時間を有効に使って短時間に効率よく既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を取り付けることができる。鉄骨構造物10Dは、コンクリートをはつる必要がないから、はつり箇所に対する復旧工事を行う手間と時間とを節約することができるとともに、コンクリートスラブ24の耐力の低下やコンクリートスラブ24の変形を防ぎつつ既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を短時間に効率よく取り付けることができる。
鉄骨構造物10Dは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15を利用して新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、溶接作業を必要とせず、溶接の熱による鉄骨部材の耐力の低下や鉄骨部材の変形を防ぐことができ、火災発生の危険がなく、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、工場等のあらゆる既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を安全に取り付けることができる。
鉄骨構造物10Dは、挿通孔49および挿入孔26に挿入された金属柱48が既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力が生じた際に、挿通孔49および挿入孔26に挿入された金属柱48によって形成されたせん断抵抗・伝達手段がそのせん断応力に抵抗しつつ、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間においてせん断応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Dは、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14と貫通孔25において硬化した充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に曲げ応力が生じた際に、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14と貫通孔25において硬化した充填材47とから形成された曲げ抵抗・伝達手段がその曲げ応力に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間において曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Dでは、新設鉄骨間柱12のH形鋼27のウェブ30に沿ってせん断抵抗・伝達手段が形成され、新設鉄骨間柱12のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに曲げ抵抗・伝達手段が形成されているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27のウェブ30に沿って形成されたせん断抵抗・伝達手段や新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成された曲げ抵抗・伝達手段がせん断応力や曲げ応力に十分に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11(H形鋼19)やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との間においてせん断応力や曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
図14は、他の一例として示す鉄骨構造物10Eの正面図である。図14では、垂直方向を矢印Aで示し、水平方向を矢印Bで示す。図14に示す鉄骨構造物10Eが図12に示す鉄骨構造物10Dと異なるところは、連結板13に穿孔された挿通孔49およびコンクリートスラブ24に穿孔された挿入孔26と挿通孔49および挿入孔26に挿入された金属柱48の外周面との間の間隙に充填材18が充填されている点にあり、その他の構成は図12の鉄骨構造物10Dのそれらと同一であるから、鉄骨構造物10Dと同一の符号を付すとともに、鉄骨構造物10Dの説明を援用することで、この鉄骨構造物10Eの構成の詳細な説明は省略する。
鉄骨構造物10Eは、既設建造物の既設鉄骨梁11および新設鉄骨間柱12と、連結板13および複数個の鋼材スリーブ14(管材)と、複数本の連結ボルト15および複数の増設部材16と、複数本の金属柱48および充填材18,47とから形成されている。金属柱48は、連結板13の中央部31に穿孔された挿通孔49に挿入されているとともに、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に穿孔された挿入孔26に挿入されている。挿入孔26に充填された充填材18によって挿入孔26と金属柱48の外周面との間隙が埋められている。金属柱48の頂部50の外周面と連結板13の挿通孔49との間に生じた間隙に充填材18が充填され、充填材18によってその間隙が埋められている。
鉄骨構造物10Eでは、金属柱48が挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18と一体になり、金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成している。せん断抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されている。なお、図14の鉄骨構造物10Eを構築するための連結工程は、図7の鉄骨構造物10Bを構築するための連結工程と同一である(図8参照)。
図15は、図14の鉄骨構造物10Eを構築するための接続工程の一例を示す正面図である。接続工程では、図15の(a)に示すように、新設鉄骨間柱12の設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置にコア抜きドリル43を利用して挿入孔26を穿孔する。次に、図15の(b)に示すように、金属柱48を挿入孔26に挿入する。金属柱48を挿入孔26に挿入した後、図15の(c)に示すように、挿入孔26と金属柱48の外周面との間の間隙に充填材18を充填し、充填材18によって挿入孔26と金属柱48の外周面との間隙を埋める。なお、挿入孔26に充填材18を充填した後に金属柱48を挿入孔26に挿入してもよい。
充填材18を充填した後、図15の(d)に示すように、連結板13をコンクリートスラブ24の上に配置(載置)し、図15の(e)に示すように、連結板13に穿孔された挿通孔49に金属柱48の頂部50を挿入する。金属柱48の頂部50の外周面と連結板13の挿通孔49との間に生じた間隙に充填材18を充填し、充填材18によってその間隙を埋める。鉄骨構造物10Eでは、金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18とから既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段が形成される。
鉄骨構造物10Eは、鉄骨構造物10Dが有する効果に加え、以下の効果を有する。鉄骨構造物10Eは、金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力が生じた際に、挿通孔49および挿入孔26に挿入された金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18とから形成されたせん断抵抗・伝達手段がそのせん断応力に抵抗しつつ、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間においてせん断応力の円滑な伝達を行うことができる。
図16は、他の一例として示す鉄骨構造物10Fの正面図である。図16では、垂直方向を矢印Aで示し、水平方向を矢印Bで示す。図16に示す鉄骨構造物10Fが図12に示す鉄骨構造物10Dと異なるところは、連結板13に穿孔された挿通孔49およびコンクリートスラブ24に穿孔された挿入孔26と挿通孔49および挿入孔26に挿入された金属柱48の外周面との間の間隙に充填材18が充填されている点、金属柱48の頂部50を押さえる押さえ板51を有する点にあり、その他の構成は図12の鉄骨構造物10Dのそれらと同一であるから、鉄骨構造物10Dと同一の符号を付すとともに、鉄骨構造物10Dの説明を援用することで、この鉄骨構造物10Fの構成の詳細な説明は省略する。
鉄骨構造物10Fは、既設建造物の既設鉄骨梁11および新設鉄骨間柱12と、連結板13および複数個の鋼材スリーブ14(管材)と、複数本の連結ボルト15および複数の増設部材16と、充填材18,47および複数本の金属柱48と、押さえ板51とから形成されている。金属柱48は、連結板13の中央部31に穿孔された挿通孔49に挿入されているとともに、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に穿孔された挿入孔26に挿入されている。挿入孔26と金属柱48の外周面との間の間隙に充填材18が充填され、挿入孔26において硬化した充填材18によって挿入孔26と金属柱48の外周面との間隙が埋められている。金属柱48の頂部50の外周面と連結板13の挿通孔49との間に生じた間隙に充填材18が充填され、充填材18によって間隙が埋められている。
押さえ板51は、鋼材から作られて板状に成形されている。押さえ板51は、連結板13の挿通孔49およびコンクリートスラブ24の挿入孔26に挿入された金属柱48の頂部50を含むその近傍に配置され、金属柱48の頂部50の直上に載置されている。押さえ板51は、それに穿孔されたボルト孔23と連結板13に穿孔されたボルト孔23とに固定ボルト40が螺着されることで、連結板13の上面に固定されている。押さえ板51は、連結板13に固定されることで、金属柱48の頂部50を押さえ、金属柱48の挿通孔49および挿入孔26からの抜脱を防いでいる。
鉄骨構造物10Fでは、金属柱48が挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18と一体になり、金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18と金属柱48の頂部50を押さえる押さえ板51とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成している。せん断抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されている。なお、図16の鉄骨構造物10Fを構築するための連結工程は、図7の鉄骨構造物10Bを構築するための連結工程と同一である(図8参照)。
図17は、図16の鉄骨構造物10Fを構築するための接続工程の一例を示す正面図である。接続工程では、図17の(a)に示すように、新設鉄骨間柱12の設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置にコア抜きドリル43を利用して挿入孔26を穿孔する。次に、図17の(b)に示すように、金属柱48を挿入孔26に挿入する。金属柱48を挿入孔26に挿入した後、図17の(c)に示すように、挿入孔26と金属柱48の外周面との間の間隙に充填材18を充填し、充填材18によって挿入孔26と金属柱48の外周面との間隙を埋める。
充填材18を充填した後、図17の(d)に示すように、連結板13をコンクリートスラブ24の上に配置(載置)し、連結板13に穿孔された挿通孔49に金属柱48の頂部50を挿入する。金属柱48の頂部50の外周面と連結板13の挿通孔49との間に生じた間隙に充填材18を充填し、充填材18によって間隙を埋める。次に、図17の(e)に示すように、押さえ板51を金属柱48の頂部50の直上に載置する。押さえ板51は、連結板13の挿通孔49およびコンクリートスラブ24の挿入孔26に挿入された金属柱48の頂部50を含むその近傍に配置される。押さえ板51を金属柱48の頂部50の直上に載置した後、図17の(f)に示すように、押さえ板51に穿孔されたボルト孔23と連結板13に穿孔されたボルト孔23とに固定ボルト40を螺着し、押さえ板51を連結板13の上面に固定する。鉄骨構造物10Fでは、金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18と押さえ板51とから既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段が形成される。
鉄骨構造物10Fは、鉄骨構造物10Dが有する効果に加え、以下の効果を有する。鉄骨構造物10Fは、金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18と金属柱48の頂部50を押さえる押さえ板51とが既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力が生じた際に、挿通孔49および挿入孔26に挿入された金属柱48と挿通孔49および挿入孔26において硬化した充填材18と金属柱48の頂部50を押さえる押さえ板51とから形成されたせん断抵抗・伝達手段がそのせん断応力に抵抗しつつ、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間においてせん断応力の円滑な伝達を行うことができる。
図18は、他の一例として示す鉄骨構造物10Gの正面図であり、図19は、一例として示すコネクト部材48の斜視図である。図18では、垂直方向を矢印Aで示し、水平方向を矢印Bで示す。鉄骨構造物10Gは、既設建造物の既設鉄骨梁11および新設鉄骨間柱12と、連結板13および複数個の鋼材スリーブ14(管材)と、複数本の連結ボルト15および複数の増設部材16と、充填材18,47および複数のコネクト部材52とから形成されている。鋼材スリーブ14の個数、連結ボルト15の本数、増設部材16およびコネクト部材52の数について特に制限はなく、鉄骨構造物10Gの大きさや求められる強度等によってそれらの数を決定する。
鉄骨構造物10Gを形成する既設鉄骨梁11や新設鉄骨間柱12には、図1のそれらと同一のH形鋼19,27(第1のH形鋼、第2のH形鋼)が使用されている。既設鉄骨梁11(上フランジ20)の上には、既設コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)が施工され、コンクリートスラブ24の所定の箇所には、水平方向へ並ぶ断面円形の貫通孔25および断面円形の挿入孔26が穿孔されている。鉄骨構造物10Gを形成する連結板13は、図1のそれと同一であり、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の上に配置(載置)されている。連結板13とコンクリートスラブ24との間には、充填材34が充填されている。
鉄骨構造物10Gを形成する鋼材スリーブ14は、図1のそれと同一であり、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に設置されて垂直方向へ延びている。鉄骨構造物10Gを形成するそれら連結ボルト15は、図1のそれと同一であり、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通されて連結板13から既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19の上フランジ20に向かって垂直方向へ延びている。連結ボルト15は、連結板13から垂直方向上方へ露出する螺子部35にナット36(固定手段)が螺着され、連結板13に連結されている。
鉄骨構造物10Gを形成する増設部材16は、図1のそれと同一であり、既設鉄骨梁11の上フランジ20の側(上フランジ20の直下)に配置されている。増設部材16は、固定ボルト40およびナットによって既設鉄骨梁11のウェブ22に固定されている。連結ボルト15は、増設部材16の接続板部38のボルト孔23に挿通され、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通されているとともに、連結板13のボルト孔23に挿通または螺着され、螺子部35に螺着されたナット36によって連結板13に固定されることで、連結板13と増設部材16とを連結している。鉄骨構造物10Gを形成する充填材47は、コンクリートスラブ24に穿孔された貫通孔25に充填され、貫通孔25において硬化している。
鉄骨構造物10Gでは、貫通孔25と鋼材スリーブ14の外周面との間隙が充填材47によって埋められているとともに、連結ボルト15と鋼材スリーブ14の内周面との間隙が充填材47によって埋められている。貫通孔25では、充填材47が硬化し、連結ボルト15と鋼材スリーブ14と硬化した充填材47とが一体になっている。
鉄骨構造物10Gでは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端が既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20に連結され、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に取り付けられている。
鉄骨構造物10Gでは、連結ボルト15が引っ張り応力に抵抗し、鋼材スリーブ14と充填材47とが圧縮応力に抵抗するから、連結ボルト15と鋼材スリーブ14と充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成している。曲げ抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の両側部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成され、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の一方のフランジ28の近傍に形成されるとともに、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27の他方のフランジ29の近傍に形成される。
それらコネクト部材52は、鋼材から作られている。コネクト部材52は、脚部53と板状ベース54と接続ボルト55とから形成されている。脚部53は、垂直方向へ延びていてコンクリートスラブ24の上面からその内部(挿入孔26)に埋め込まれる(食い込む)。板状ベース54は、円盤状に成形され、脚部53につながって水平方向へ延びている。板状ベース54の中央部には、接続ボルト55の螺子部56を螺着するボルト孔23が形成されている。脚部53と板状ベース54とは、一体に作られている。接続ボルト55は、その頭部が板状ベース54の下方に位置した状態で、その螺子部56が板状ベース54のボルト孔23に螺着されている。接続ボルト55の螺子部56のうちの板状ベース54から上方へ露出する部分にナット36が螺着されることで、接続ボルト55が板状ベース54に取り付けられている。
鉄骨構造物10Gでは、コネクト部材52(脚部53)が挿入孔26において硬化した充填材18と一体になり、コネクト部材52と挿入孔26において硬化した充填材18が既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成している。せん断抵抗・伝達手段は、新設鉄骨間柱12の中央部であって、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されている。なお、図18の鉄骨構造物10Gを構築するための連結工程は、図7の鉄骨構造物10Bを構築するための連結工程と同一である(図8参照)。
図20は、図18の鉄骨構造物10Gを構築するための接続工程の一例を示す正面図である。接続工程では、図20の(a)に示すように、新設鉄骨間柱12の設置箇所に施工されたコンクリートスラブ24の所定の位置にコア抜きドリル43を利用して挿入孔26を穿孔し、図20の(b)に示すように、その挿入孔26に充填材18を充填する。次に、図20の(c)に示すように、コネクト部材52を挿入孔26(充填材18)に進入させ、図20の(d)に示すように、コネクト部材52の脚部53と板状ベース54と接続ボルト55の頭部とを挿入孔26に挿入・設置する。
コネクト部材52の脚部53と板状ベース54と接続ボルト55の頭部とを挿入孔26に挿入すると、脚部53が挿入孔26の周縁部に埋め込まれる。挿入孔26において硬化した充填材18によって挿入孔26とコネクト部材52の脚部53との間隙が埋められている。なお、挿入孔26に充填材18が充填されていなくてもよく、挿入孔26への充填材18の充填作業を省くこともできる。次に、図20の(e)に示すように、連結板13のボルト孔23に接続ボルト55の螺子部56を挿通し、螺子部56にナット36を螺着することで、コネクト部材52を連結板13に取り付ける。
鉄骨構造物10Gでは、コネクト部材48と挿入孔26において硬化した充填材18とによって既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段が形成される。
鉄骨構造物10Gは、既設鉄骨梁11を形成するH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に貫通孔25を穿孔し、新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27(第1のH形鋼)の下端に取り付けられた連結板13が既設鉄骨梁11のH形鋼19(第2のH形鋼)の上フランジ20の上に施工されたコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)に配置(載置)され、コンクリートスラブ24の貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14に挿通された連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とが連結されることで、新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、連結ボルト15を挿通する貫通孔25をコンクリートスラブ24に穿孔しつつ、その貫通孔25に鋼材スリーブ14を設置するとともに、貫通孔25に充填材47を充填し、連結ボルト15によって連結板13と増設部材16(既設鉄骨梁11)とを連結すればよく、はつり工事を行う必要がなく、はつり音やはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができ、静音および清浄な環境を維持した状態で既設建造物の既設鉄骨梁11に新設鉄骨間柱12を取り付けることができる。
鉄骨構造物10Gは、はつり音およびはつり振動の発生や多量の塵埃の発生を防ぐことができるから、平日の昼間の時間に作業を行うことができ、平日の昼間の時間を有効に使って短時間に効率よく既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を取り付けることができる。鉄骨構造物10Gは、コンクリートをはつる必要がないから、はつり箇所に対する復旧工事を行う手間と時間とを節約することができるとともに、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)の耐力の低下やコンクリートスラブ24の変形を防ぎつつ既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を短時間に効率よく取り付けることができる。
鉄骨構造物10Gは、鋼材スリーブ14(貫通孔25)に挿通された連結ボルト15を利用して新設鉄骨間柱12が既設鉄骨梁11に連結されているから、溶接作業を必要とせず、溶接の熱による鉄骨部材の耐力の低下や鉄骨部材の変形を防ぐことができ、火災発生の危険がなく、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、工場等のあらゆる既設建造物の既設鉄骨梁11(H形鋼19)に新設鉄骨間柱12(H形鋼27)を安全に取り付けることができる。
鉄骨構造物10Gは、挿入孔26に挿入されたコネクト部材52(脚部53)と挿入孔26において硬化した充填材18とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じるせん断応力に抗するせん断抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力が生じた際に、挿入孔26に挿入されたコネクト部材52(脚部53)と挿入孔26において硬化した充填材18とから形成されたせん断抵抗・伝達手段がそのせん断応力に抵抗しつつ、コンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間においてせん断応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Gは、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14と貫通孔25において硬化した充填材47とが既設鉄骨梁11(H形鋼19)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との接合部に生じる曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)に抗する曲げ抵抗・伝達手段を形成しているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に曲げ応力が生じた際に、貫通孔25に挿通された連結ボルト15と貫通孔25に設置された鋼材スリーブ14と貫通孔25において硬化した充填材47とから形成された曲げ抵抗・伝達手段によってその曲げ応力に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間において曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
鉄骨構造物10Gでは、新設鉄骨間柱12のH形鋼27のウェブ30に沿ってせん断抵抗・伝達手段が形成され、新設鉄骨間柱12のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに曲げ抵抗・伝達手段が形成されているから、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27のウェブ30に沿って形成されたせん断抵抗・伝達手段や新設鉄骨間柱12を形成する第1のH形鋼27の一方のフランジ28の近傍と他方のフランジ29の近傍とに形成された曲げ抵抗・伝達手段がせん断応力や曲げ応力に十分に抵抗しつつ、既設鉄骨梁11(H形鋼19)やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12(H形鋼27)との間においてせん断応力や曲げ応力の円滑な伝達を行うことができる。
図21は、他の一例として示す新設鉄骨間柱12の上面図である。図21に示す新設鉄骨間柱12は、金属柱48が連結板13の端縁近傍(外周縁近傍)に設置された場合の例である。金属柱48は、必ずしも連結板13の中(連結板13の外周縁の内側)に設置されていなくてもよく、金属柱48が連結板13に部分的に支持されていればせん断抵抗・伝達手段として機能するから、図21に示すように、金属柱48が連結板13の端縁近傍に設置され、金属柱48の一部が連結板13の端縁からはみ出していてもよい。なお、図21に示す新設鉄骨間柱12では、せん断抵抗・伝達手段が挿入ボルト17や挿入棒46、コネクト部材52によって形成されていてもよい。
図22は、他の一例として示す新設鉄骨間柱12の上面図である。図22に示す新設鉄骨間柱12は、挿入ボルト17が新設鉄骨間柱12の中央部であって新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って配置され、せん断抵抗・伝達手段が新設鉄骨間柱12の中央部であって新設鉄骨間柱12を形成するH形鋼27のウェブ30に沿って形成されているのみならず、挿入ボルト17が連結ボルト15の横方向外方であって新設鉄骨間柱12の両側部に配置され、せん断抵抗・伝達手段が曲げ抵抗・伝達手段の横方向外方であって新設鉄骨間柱12の両側部に形成されている。なお、挿入ボルト17が連結ボルト15の横方向外方であって新設鉄骨間柱12の両側部のみに配置され、せん断抵抗・伝達手段が曲げ抵抗・伝達手段の横方向外方であって新設鉄骨間柱12の両側部のみに形成され、せん断抵抗・伝達手段が新設鉄骨間柱12の中央部に形成されていなくてもよい。なお、図22に示す新設鉄骨間柱12では、せん断抵抗・伝達手段が金属柱48や挿入棒46、コネクト部材52によって形成されていてもよい。
図23は、他の一例として示す鋼材スリーブ14の斜視図である。図23に示す鋼材スリーブ14は、円筒状の鋼材スリーブ14の頂部57に径方向外方へ延びる所定厚みのフランジ58が形成されている。フランジ58は、連結板13の下面に当接する場合と連結板13の下面に当接しない場合とがある。フランジ58が連結板13の下面に当接する場合は、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に曲げ応力が生じた際に、連結板13からフランジ58に圧縮応力が伝達され、フランジ58から鋼材スリーブ14に圧縮応力が伝達されるから、フランジ58を介して連結板13から鋼材スリーブ14に圧縮応力が伝達され、既設鉄骨梁11やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間で曲げ応力を効率よく伝達することができる。
フランジ58が連結板13の下面に当接しない場合では、既設建造物に地震等の外力が作用し、既設鉄骨梁11と新設鉄骨間柱12との接合部に曲げ応力が生じた際に、フランジ58が連結板13の下面に当接していなくても、連結板13から充填材34に圧縮応力が伝達され、充填材34からフランジ58に圧縮応力が伝達され、フランジ58から鋼材スリーブ14に圧縮応力が伝達されるから、充填材34およびフランジ58を介して連結板13から鋼材スリーブ14に圧縮応力が伝達され、既設鉄骨梁11やコンクリートスラブ24(コンクリート躯体)と新設鉄骨間柱12との間で曲げ応力を効率よく伝達することができる。
図1の鉄骨構造物10Aや図7の鉄骨構造物10Bでは、せん断抵抗・伝達手段として図9や図12、図14、図16、図18に示すせん断抵抗・伝達手段を採用することができる。図9の鉄骨構造物10Cでは、せん断抵抗・伝達手段として図1や図12、図14、図16、図18に示すせん断抵抗・伝達手段を採用することができる。