一例として示す制震構造物10Aの正面図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る制震構造物の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の制震構造物10Aの側面図であり、図3は、図1のA−A線矢視断面図である。図4は、一例として示す第1および第2支圧板33,34の正面図であり、図5は、第1および第2支圧板33,34の背面図である。図6は、第1および第2支圧板33,34の側面図であり、図7は、一例として示すせん断型パネルダンパー35aの正面図である。図8は、せん断型パネルダンパー35aの側面図である。図1〜図3では、床梁16および第2間柱12に配筋された鉄筋17,18を図示し、天井梁15および第1間柱11に配筋された鉄筋17,18の図示を省略している。図1,2では、上下方向を矢印X、横方向を矢印Yで示し、前後方向を矢印Zで示す。
制震構造物10A(制震構造物10B,10Cを含む)は、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、RC造またはSRC造のマンション、RC造の戸建て住宅等の建造物の内壁近傍または外壁近傍に施工され、建造物を地震から保護する。制震構造物10Aは、第1間柱11および第2間柱12と、第1および第2間柱11,12の間に設置された制震装置14とから形成されている。第1および第2間柱11,12は、同形同大であり、上下方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が同一である。第1間柱11と第2間柱12とは上下方向へ離間対向し、第1間柱11と第2間柱12との間にスペース13が形成されている。
第1間柱11は、鉄筋コンクリート製であり、建造物の天井梁15(大梁または小梁)に連結されて天井梁15から下方へ延びている。天井梁15に配筋された鉄筋17や第1間柱11に配筋された鉄筋18は、床梁16に配筋された鉄筋17や第2間柱12に配筋された鉄筋18と同一である。天井梁15および第1間柱11の施工の一例としては、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
既設の建造物に第1間柱11を施工(新設)する場合の一例としては、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所において天井梁15のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に天井梁用の鉄筋17と第1間柱用の鉄筋18とを配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15の一部と第1間柱11とを構築する。
第1間柱11は、その前面19(一方の面)から前後方向後方へ凹む第1設置凹部20を有する。第1設置凹部20は、第1間柱11の下端エリア21であって第1間柱11の横方向中央に形成されている。第1設置凹部20は、その平面形状が四角形に成型され、横方向へ延びる上端面22と、上下方向へ延びる両側面23と、所定面積の平坦面24とを有する。天井梁15は、鉄筋コンクリート製またはプレストレスト・コンクリート製あるいは鉄骨鉄筋コンクリート製である。
制震構造物10Aでは、第1間柱11がプレストレスト・コンクリートから作られていてもよい。第1間柱11を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式またはポストテンション方式によって施工される。プレテンション方式による第1間柱11の施工の一例は、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1間柱用の型枠を組み上げ、PC鋼材(図示せず)を第1間柱11の下端に配置された固定プレート(図示せず)に挿通して天井梁15と固定プレートとを連結し、PC鋼材に緊張力を付与した後にそれら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
ポストテンション方式による第1間柱11の施工の一例は、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの強度が発現した後にコンクリートと第1間柱用の型枠の下端に配置された固定プレート(図示せず)とにPC鋼材(図示せず)を挿通して天井梁15と固定プレートとを連結しつつPC鋼材に緊張力を付与し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
既設の建造物にプレストレスト・コンクリートから形成された第1間柱11を施工(新設)する場合の一例としては、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所において天井梁15のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に天井梁15の鉄筋17とその鉄筋17につながる第1間柱用の鉄筋18とを配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1間柱用の型枠を組み上げ、既述のプレテンション方式またはポストテンション方式によって天井梁15の一部と第1間柱11とを構築する。
制震構造物10Aでは、第1間柱11が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。第1間柱11がプレキャストコンクリートである場合、第1間柱11を工場から施工現場に搬送し、天井梁15を構築(新設)した後のその天井梁15の第1間柱11の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱11)を配置し、連結ボルトを介して天井梁15とプレキャストコンクリート(第1間柱11)とを連結する。または、既設の建造物の既設の天井梁15の第1間柱11の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱11)を配置し、連結ボルトを介して既設の天井梁15とプレキャストコンクリート(第1間柱11)とを連結する。
第2間柱12は、鉄筋コンクリート製であり、建造物の床梁16(大梁または小梁)に連結されて床梁16から上方へ延びている。床梁16および第2間柱12の施工の一例としては、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第2間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
既設の建造物に第2間柱12を施工(新設)する場合の一例としては、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所において床梁16のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に床梁用の鉄筋17と第2間柱用の鉄筋18とを配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第2間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16の一部と第2間柱12とを構築する。
第2間柱12は、その前面26(一方の面)から前後方向後方へ凹む第2設置凹部27を有する。第2設置凹部27は、第2間柱12の上端エリア28であって第2間柱12の横方向中央に形成されている。第2設置凹部27は、その平面形状が四角形に成型され、横方向へ延びる下端面29と、上下方向へ延びる両側面30と、所定面積の平坦面31とを有する。第1および第2設置凹部20,27は、同形同大であり、上下方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が同一である。第1設置凹部20と第2設置凹部27とは、上下方向へ離間対向している。床梁16は、鉄筋コンクリート製またはプレストレスト・コンクリート製あるいは鉄骨鉄筋コンクリート製である。
制震構造物10Aでは、第2間柱12がプレストレスト・コンクリートから作られていてもよい。第2間柱12を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式またはポストテンション方式によって施工される。プレテンション方式による第2間柱12の施工の一例は、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2間柱用の型枠を組み上げ、PC鋼材(図示せず)を第2間柱12の上端に配置された固定プレート(図示せず)に挿通して床梁16と固定プレートとを連結し、PC鋼材に緊張力を付与した後にそれら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
ポストテンション方式による第2間柱12の施工の一例は、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの強度が発現した後にコンクリートと第2間柱12の上端に配置された固定プレート(図示せず)とにPC鋼材(図示せず)を挿通して床梁16と固定プレートとを連結しつつPC鋼材に緊張力を付与し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
既設の建造物にプレストレスト・コンクリートから形成された第2間柱12を施工(新設)する場合の一例としては、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所において床梁16のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に床梁16の鉄筋17とその鉄筋17につながる第2間柱用の鉄筋18とを配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2間柱用の型枠を組み上げ、既述のプレテンション方式またはポストテンション方式によって床梁16の一部と第2間柱12とを構築する。
制震構造物10Aでは、第2間柱12が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。第2間柱12がプレキャストコンクリートである場合、第2間柱12を工場から施工現場に搬送し、床梁16を構築(新設)した後のその床梁16の第2間柱12の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱12)を配置し、連結ボルトを介して床梁16とプレキャストコンクリート(第2間柱12)とを連結する。または、既設の建造物の既設の床梁16の第2間柱12の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱12)を配置し、連結ボルトを介して既設の床梁16とプレキャストコンクリート(第2間柱12)とを連結する。
制震装置14は、第1支圧板33および第2支圧板34と、せん断型パネルダンパー35aとから形成されている。第1および第2支圧板33,34は、同形同大であり、上下方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が同一である。第1支圧板33と第2支圧板34とは、上下方向へ離間対向している。第1支圧板33は、第1設置凹部20に嵌め込まれた状態で第1設置凹部20に設置され、第1間柱11(鉄筋コンクリート、プレストレスト・コンクリート、プレキャストコンクリートのいずれか)の下端エリア21に固定されている。第2支圧板23は、第2設置凹部27に嵌め込まれた状態で第2設置凹部27に設置され、第2間柱12(鉄筋コンクリート、プレストレスト・コンクリート、プレキャストコンクリートのいずれか)の上端エリア28に固定されている。
第1支圧板33は、鋼材から作られ、その平面形状が四角形であって第1設置凹部20に設置可能な大きさに成型されている。第1支圧板33は、第1外周フレーム36と、第1固定プレート37と、複数本のせん断・曲げ抵抗第1ロッド38と、複数本のせん断・曲げ抵抗第1シアーキー39とから形成されている。第1外周フレーム36は、第1設置凹部20の上端面22に並行して横方向へ延びる上フレーム40と、第1設置凹部20の両側面23に並行して上下方向へ延びる一対の横フレーム41とから形成されている。第1外周フレーム36は、第1設置凹部20に嵌め込まれ、上フレーム40が第1設置凹部20の上端面22に当接し、それら横フレーム41が第1設置凹部20の両側面23に当接している。
第1固定プレート37は、第1外周フレーム36につながって第1外周フレーム36から前後方向後方へ凹み、第1外周フレーム36の後方に位置して上下方向へ延びている。第1固定プレート37は、第1外周フレーム36と一体になり、所定面積を有する四角形に成形されている。第1固定プレート36には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔42が穿孔されている。第1固定プレート36は、第1設置凹部20に嵌め込まれ、その裏面が第1設置凹部20の平坦面24に当接している。
それらせん断・曲げ抵抗第1ロッド38は、鋼材から作られ、円柱状に成型されている。それらせん断・曲げ抵抗第1ロッド38は、第1外周フレーム36の上フレーム40に連結されて上フレーム40から上方(外側)へ向かって上下方向へ延び、第1外周フレーム36のそれら横フレーム41に連結されて横フレーム41から側方(外側)へ向かって横方向へ延びているとともに、第1固定プレート37に連結されて第1固定プレート37の裏面から後方(外側)へ向かって前後方向へ延びている。それらせん断・曲げ抵抗第1ロッド38は、鉄筋コンクリート製の第1間柱11を形成するコンクリート(鉄筋コンクリート、プレストレスト・コンクリート、プレキャストコンクリートのいずれか)に挿入・固定され、第1間柱11(コンクリート)と一体になっている。
それらせん断・曲げ抵抗第1ロッド38は、建造物に地震による軸力が作用し、第1間柱11と第1支圧板33との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、そのせん断応力やその曲げ応力に抵抗しつつ、せん断応力や曲げ応力を第1間柱11から第1支圧板33に伝達する。それらせん断・曲げ抵抗第1ロッド38は、第1外周フレーム36や第1固定プレート37に穿孔された螺子孔に螺着されることで第1外周フレーム36や第1固定プレート37に固定される場合、または、第1外周フレーム36や第1固定プレート37に溶接によって固定される場合がある。なお、せん断・曲げ抵抗第1ロッド38の本数に特に制限はなく、せん断・曲げ抵抗第1ロッド38の第1外周フレーム36や第1固定プレート37に対する固定位置に特に制限はない。
せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39は、第1固定プレート37の裏面に位置して前後方向後方へ凸となる凸条であり、第1固定プレート37の中央に位置して上下方向へ延びる第1縦シアーキー43と、第1固定プレート37の略中央に位置して横方向へ延びる第1横シアーキー44とから形成されている。第1縦シアーキー43は、第1固定プレート37を上下方向へ縦断し、第1外周フレーム36の上フレーム40から上下方向上方(外側)へ延出している。第1横シアーキー44は、第1固定プレート37を横方向へ横断し、第1外周フレーム36のそれら横フレーム41から横方向側方(外側)へ延出している。せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39(第1縦シアーキー43および第1横シアーキー44)は、鉄筋コンクリート製の第1間柱11を形成するコンクリート(鉄筋コンクリート、プレストレスト・コンクリート、プレキャストコンクリートのいずれか)に係入・固定され、第1間柱11(コンクリート)と一体になっている。
せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39(第1縦シアーキー43および第1横シアーキー44)は、建造物に地震等の軸力が作用し、第1間柱11と第1支圧板33との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、そのせん断応力やその曲げ応力に抵抗しつつ、せん断応力や曲げ応力を第1間柱11から第1支圧板33に伝達する。なお、せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39の本数に特に制限はなく、せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39の第1固定プレート37に対する形成位置に特に制限はない。
第2支圧板34は、鋼材から作られ、その平面形状が四角形であって第2設置凹部27に設置可能な大きさに成型されている。第2支圧板34は、第2外周フレーム45と、第2固定プレート46と、複数本のせん断・曲げ抵抗第2ロッド47と、複数本のせん断・曲げ抵抗第2シアーキー48とから形成されている。第2外周フレーム45は、第2設置凹部27の下端面29に並行して横方向へ延びる下フレーム49と、第2設置凹部27の両側面30に並行して上下方向へ延びる一対の横フレーム50とから形成されている。第2外周フレーム45は、第2設置凹部27に嵌め込まれ、下フレーム49が第2設置凹部27の下端面29に当接し、それら横フレーム50が第2設置凹部27の両側面30に当接している。
第2固定プレート46は、第2外周フレーム45につながって第2外周フレーム45から前後方向後方へ凹み、第2外周フレーム45の後方に位置して上下方向へ延びている。第2固定プレート46は、第2外周フレーム45と一体になり、所定面積を有する四角形に成形されている。第2固定プレート46には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔51が穿孔されている。第2固定プレート46は、第2設置凹部27に嵌め込まれ、その裏面が第2設置凹部27の平坦面31に当接している。
それらせん断・曲げ抵抗第2ロッド47は、鋼材から作られ、円柱状に成型されている。せん断・曲げ抵抗第2ロッド47は、その形状やその長さ寸法、径がせん断・曲げ抵抗第1ロッド38のそれらと同一であり、せん断・曲げ抵抗第1ロッド38と対称に配置されている。それらせん断・曲げ抵抗第2ロッド47は、第2外周フレーム45の下フレーム49に連結されて下フレーム49から下方(外側)へ向かって上下方向へ延び、第2外周フレーム45の横フレーム50に連結されて横フレーム50から側方(外側)へ向かって横方向へ延びているとともに、第2固定プレート46に連結されて第2固定プレート46の裏面から後方(外側)へ向かって前後方向へ延びている。それらせん断・曲げ抵抗第2ロッド47は、鉄筋コンクリート製の第2間柱12を形成するコンクリート(鉄筋コンクリート、プレストレスト・コンクリート、プレキャストコンクリートのいずれか)に挿入・固定され、第2間柱12(コンクリート)と一体になっている。
それらせん断・曲げ抵抗第2ロッド47は、建造物に地震による軸力が作用し、第2間柱12と第2支圧板34との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、そのせん断応力やその曲げ応力に抵抗しつつ、せん断応力や曲げ応力を第2間柱12から第2支圧板34に伝達する。それらせん断・曲げ抵抗第2ロッド47は、第2外周フレーム45や第2固定プレート46に穿孔された螺子孔に螺着されることで第2外周フレーム45や第2固定プレート46に固定される場合、または、第2外周フレーム45や第2固定プレート46に溶接によって固定される場合がある。なお、せん断・曲げ抵抗第2ロッド47の本数に特に制限はなく、せん断・曲げ抵抗第2ロッド47の第2外周フレーム45や第2固定プレート46に対する固定位置に特に制限はない。
せん断・曲げ抵抗第2シアーキー48は、第2固定プレート46の裏面に位置して前後方向後方へ凸となる凸条であり、第2固定プレート46の中央に位置して上下方向へ延びる第2縦シアーキー52と、第2固定プレート46の略中央に位置して横方向へ延びる第2横シアーキー53とから形成されている。第2縦シアーキー52は、第2固定プレート46を上下方向へ縦断し、第2外周フレーム45の下フレーム49から上下方向下方(外側)へ延出している。第2横シアーキー53は、第2固定プレート46を横方向へ横断し、第2外周フレーム45のそれら横フレーム50から横方向側方(外側)に延出している。せん断・曲げ抵抗第2シアーキー48(第2縦シアーキー52および第2横シアーキー53)は、鉄筋コンクリート製の第2間柱12を形成するコンクリート(鉄筋コンクリート、プレストレスト・コンクリート、プレキャストコンクリートのいずれか)に係入・固定され、第2間柱12(コンクリート)と一体になっている。
せん断・曲げ抵抗第2シアーキー48(第2縦シアーキー52および第2横シアーキー53)は、建造物に地震等の軸力が作用し、第2間柱12と第2支圧板34との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、そのせん断応力やその曲げ応力に抵抗しつつ、せん断応力や曲げ応力を第2間柱12から第2支圧板34に伝達する。なお、せん断・曲げ抵抗第2シアーキー48の本数に特に制限はなく、せん断・曲げ抵抗第2シアーキー48の第2固定プレート46に対する形成位置に特に制限はない。
せん断型パネルダンパー35aは、上下方向へ離間する第1間柱11の下端エリア21と第2間柱12の上端エリア28との間に位置し、第1および第2支圧板33,34に取り付けられている。せん断型パネルダンパー35aは、普通鋼材よりも降伏強度が低く、塑性変形機能が高い低降状点鋼材から作られている。せん断型パネルダンパー35aは、第1固定パネル54および第2固定パネル55と、第1および第2固定パネル54,55の間に延びるダンパーパネル56とを備えている。第1固定パネル54は、横方向へ長い四角形に成型されている。第1固定パネル54には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔57が穿孔されている。第2固定パネル55は、第1固定パネル54と同形同大であり、横方向へ長い四角形に成型されている。第2固定パネル55には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔58が穿孔されている。
ダンパーパネル56は、その厚み寸法が第1および第2固定パネル54,55のそれよりも小さく、その横方向の寸法が第1および第2固定パネル54,55のそれよりも短い。ダンパーパネル56は、その両側縁59が横方向内方へ向かって弧を画いている。ダンパーパネル56は、第1および第2固定パネル54,55と一体成型されている。ダンパーパネル56は、その前面60(一方の面)に形成された所定面積の第1凹曲面域61と、その後面62(他方の面)に形成された所定面積の第2凹曲面域63とを有する。
第1凹曲面域61は、ダンパーパネル56の中央に形成され、前面60(一方の面)の周縁から中心に向かって所定の曲率半径で前後方向後方へ凹んでいる。第1凹曲面域61は、鉛直断面の外形線が円孤を画くように前面60(一方の面)の周縁から中心に向かうにつれてその厚み寸法が次第に小さくなる凹レンズ状の窪みである。第2凹曲面域63は、ダンパーパネル56の中央に形成され、後面62(他方の面)の周縁から中心に向かって所定の曲率半径で前後方向前方へ凹んでいる。第2凹曲面域63は、鉛直断面の外形線が円孤を画くように後面62(他方の面)の周縁から中心に向かうにつれてその厚み寸法が次第に小さくなる凹レンズ状の窪みである。
第1凹曲面域61と第2凹曲面域63とは、互いに同形同大であってダンパーパネル56において前後方向へ対称に並んでいる。せん断型パネルダンパー35aでは、ダンパーパネル56の厚み寸法(板厚)を自由に調節することができ(たとえば、12mm〜24mmの範囲)、その減衰力(地震抵抗力)を240kN〜1190kNの範囲で任意に設定することができる。
図9は、第1および第2支圧板33,34に設置された状態で示すせん断型パネルダンパー35aの正面図であり、図10は、第1および第2支圧板33,34に設置された状態で示すせん断型パネルダンパー35aの側面図である。せん断型パネルダンパー35aは、その第1固定パネル54が第1支圧板33の第1外周フレーム36の内側に嵌め込まれた状態で第1支圧板33の第1固定プレート37に固定され、その第2固定パネル55が第2支圧板34の第2外周フレーム45の内側に嵌め込まれた状態で第2支圧板34の第2固定プレート46に固定されている。
第1固定パネル54は、それに穿孔されたボルト孔57と第1支圧板33の第1固定プレート37に穿孔されたボルト孔42とに螺着された六角穴付きボルト64によって連結されている。第2固定パネル55は、それに穿孔されたボルト孔58と第2支圧板34の第2固定プレート46に穿孔されたボルト孔51とに螺着された六角穴付きボルト64によって連結されている。せん断型パネルダンパー35aでは、そのダンパーパネル56が上下方向へ離間する第1支圧板33の第1固定プレート37と第2支圧板34の第2固定プレート46との間のスペース13に位置している。
せん断型パネルダンパー35aは、図9,10に示すように、第1および第2支圧板33,34に設置された状態で、第1間柱11の前面19(一方の面)の第1設置凹部20に設置され、第2間柱12の前面26(一方の面)の第2設置凹部27に設置され、第1および第2間柱11,12(硬化したコンクリート)と一体になっている。せん断型パネルダンパー35aのダンパーパネル56は、図10に示すように、第1および第2固定プレート37,46に当接せず、第1および第2固定プレート37,46(第1および第2間柱11,12の第1および第2設置凹部20,27)から前後方向前方へ離間している。ダンパーパネル56では、第1凹曲面域61が第1および第2間柱11,12の前面19,26の側に位置し、第2凹曲面域63が第1および第2間柱11,12の第1および第2設置凹部20,27に対向している。
制震装置14を第1および第2間柱11,12に施工する手順の一例は、間柱用の型枠を組み上げた後、第1および第2間柱11,12の第1および第2設置凹部20,27に相当する箇所に第1支圧板33および第2支圧板34を遊動不能に嵌め込む。第1および第2設置凹部20,27に第1支圧板33および第2支圧板34を嵌め込むと、せん断・曲げ抵抗第1ロッド38やせん断・曲げ抵抗第2ロッド47が第1および第2間柱11,12の施工箇所に向かって上下方向と横方向と前後方向とへ延びる。間柱用の型枠に打設されたコンクリートの養生期間が経過した後に型枠を解体し、第1および第2間柱11,12(コンクリート)と第1および第2支圧板33,34とを一体化する。次に、第1および第2支圧板33,34の第1および第2外周フレーム36,45の内側にせん断型パネルダンパー35aを嵌め込み、第1固定パネル54のボルト孔57と第1支圧板33の第1固定プレート37のボルト孔42とに六角穴付きボルト64を螺着し、第2固定パネル55のボルト孔58と第2支圧板34の第2固定プレート46のボルト孔51とに六角穴付きボルト64を螺着することで、せん断型パネルダンパー35aを第1および第2支圧板33,34に固定する。
地震が発生し、地震による軸力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重や鉛直荷重、曲げ応力、せん断応力)が建造物に作用した場合、その軸力が建造物から鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1および第2間柱11,12に伝達され、軸力が第1間柱11から第1支圧板33に伝達されるとともに、第2間柱12から第2支圧板34に伝達される。さらに、軸力が第1および第2支圧板33,34の外周フレーム36,45や固定プレート37,46からせん断型パネルダンパー35a(ダンパーパネル56)に均等に伝達される。軸力が伝達されたせん断型パネルダンパー35aでは、ダンパーパネル56がその中心からフィレット(両側縁59)の位置にかけて、ダンパーパネル56の全体が均一に塑性変形し、ダンパーパネル56が地震による軸力(地震エネルギー)を吸収し、ダンパーパネル56によって地震エネルギーが減衰する。
なお、建造物に地震による軸力が作用し、第1間柱11と第1支圧板33との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた場合、せん断・曲げ抵抗第1ロッド38およびせん断・曲げ抵抗第1シアーキー39がそのせん断応力やその曲げ応力に抵抗しつつ、せん断・曲げ抵抗第1ロッド38およびせん断・曲げ抵抗第1シアーキー39がそのせん断応力やその曲げ応力を第1間柱11から第1支圧板33に伝達する。建造物に地震による軸力が作用し、第2間柱12と第2支圧板34との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた場合、せん断・曲げ抵抗第2ロッド47およびせん断・曲げ抵抗第2シアーキー48がそのせん断応力やその曲げ応力に抵抗しつつ、せん断・曲げ抵抗第2ロッド47およびせん断・曲げ抵抗第2シアーキー48がそのせん断応力やその曲げ応力を第2間柱12から第2支圧板34に伝達する。
制震構造物10Aは、地震発生時に建造物に作用する軸力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重や鉛直荷重、曲げ応力、せん断応力)が建造物から鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1および第2間柱11,12に伝達され、軸力が第1および第2間柱11,12からそれら間柱11,12の第1および第2設置凹部20,27に固定された第1および第2支圧板33,34に伝達されるとともに、軸力が第1および第2支圧板33,34の外周フレーム36,45や固定プレート37,46からせん断型パネルダンパー35aに均等に伝達されるから、地震による軸力を建造物からせん断型パネルダンパー35aに確実に伝達することができ、せん断型パネルダンパー35aの第1凹曲面域61と第2凹曲面域63とを有するダンパーパネル56の全体が軸力によって均等に塑性変形し、さらに、ダンパーパネル56が第1支圧板33の第1固定プレート37と第2支圧板34の第2固定プレート46との間のスペース13に位置しているから、地震による軸力の伝達時におけるダンパーパネル56の塑性変形を妨げる障害がなく、地震発生時にダンパーパネル56全体が他物に邪魔されることなく自由に塑性変形し、せん断型パネルダンパー35aに地震エネルギーを効率よく吸収させることができ、せん断型パネルダンパー35aのダンパーパネル56の塑性変形を利用して地震エネルギーを十分に減衰させることができる。
制震構造物10Aは、第1支圧板33のせん断・曲げ抵抗第1ロッド38が鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1間柱11に挿入・固定され、せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39が鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1間柱11に係入・固定されているとともに、第2支圧板34のせん断・曲げ抵抗第2ロッド47が鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第2間柱12に挿入・固定され、せん断・曲げ抵抗第2シアーキー48が鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第2間柱12に係入・固定されているから、建造物に地震による軸力が作用し、第1および第2間柱11,12と第1および第2支圧板33,34との接合部にせん断応力や曲げ応力が生じた際に、せん断・曲げ抵抗第1ロッド38およびせん断・曲げ抵抗第2ロッド47がそのせん断応力やその曲げ応力に抵抗し、せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39およびせん断・曲げ抵抗第2シアーキー48がそのせん断応力やその曲げ応力に抵抗しつつ、第1および第2間柱11,12と第1および第2支圧板33,34との間においてせん断応力や曲げ応力の円滑な伝達を行うことができ、地震によって建造物に作用したせん断応力や曲げ応力をせん断型パネルダンパー35aのダンパーパネル56に確実に吸収させることができる。
制震構造物10Aは、地震による軸力(地震エネルギー)が建造物から第1および第2設置凹部20,27に固定された第1および第2支圧板33,34の外周フレーム36,45や固定プレート37,46を介してせん断型パネルダンパー35aへ円滑かつ均一に伝達されるとともに、せん断応力や曲げ応力が建造物から第1および第2支圧板33,34のせん断・曲げ抵抗第1ロッド38やせん断・曲げ抵抗第2ロッド46、せん断・曲げ抵抗第1シアーキー39、せん断・曲げ抵抗第2シアーキー48を介してせん断型パネルダンパー35aに円滑かつ均一に伝達され、せん断型パネルダンパー35aのダンパーパネル56の塑性変形を利用して地震エネルギーを十分に吸収(減衰)させることができるから、地震による建造物の変形や損傷を低減させる(最小限にする)ことができる。
制震構造物10Aは、鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1間柱11を天井梁15に連結し、鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第2間柱12を床梁16に連結し、第1間柱11に第1支圧板33を固定し、第2間柱12に第2支圧板34を固定し、第1および第2支圧板33,34にせん断型パネルダンパー35aの第1および第2固定パネル54,55を固定することで施工することができるから、短い工期で廉価に施工することができ、地震の後はせん断型パネルダンパー35aを交換するだけでよく、地震後に制震構造物をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。
制震構造物10Aは、第1および第2間柱11,12がプレストレスト・コンクリートから形成されている場合、地震による軸力(地震エネルギー)が第1および第2間柱11,12に作用したときに、荷重を受けた第1および第2間柱11,12に引張応力が発生しないように制御されているから、引張応力による第1および第2間柱11,12のひび割れの発生を防ぐことができ、ひび割れの発生による第1および第2間柱11,12の補修の手間やコストを省くことができる。
図11は、他の一例として示す制震構造物10Bの正面図であり、図12は、図11の制震構造物10Bの側面図である。図13は、一例として示す第1および第2鋼製ブラケットの正面図であり、図14は、第1および第2鋼製ブラケットの上面図である。図15は、一例として示す第1および第2スプライスプレートの正面図である。図11,12では、床梁16および第2基礎間柱75に配筋された鉄筋17,18を図示し、天井梁15および第1基礎間柱65に配筋された鉄筋17,18の図示を省略している。図11,12では、上下方向を矢印X、横方向を矢印Yで示し、前後方向を矢印Zで示す。
制震構造物10Bは、第1間柱11および第2間柱12と、第1および第2間柱11,12に設置された制震装置14とから形成されている。第1および第2間柱11,12は、同形同大であり、上下方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が同一である。第1間柱11と第2間柱12とは上下方向へ離間対向し、第1間柱11と第2間柱12との間にスペース13が形成されている。
第1間柱11は、建造物の天井梁15(大梁または小梁)に連結されて天井梁15から下方へ延びる第1基礎間柱65と、第1基礎間柱65の下端66に連結された第1鋼材67とから形成されている。天井梁15や第1基礎間柱65は、プレストレスト・コンクリート製であり、プレストレスト・コンクリートに緊張を付与する第1PC鋼材15が天井梁15および第1基礎間柱65に設置されている。第1基礎間柱65と第1鋼材67とは、第1PC鋼材68を介して建造物の天井梁15に連結されている。天井梁15に配筋された鉄筋17や第1基礎間柱65に配筋された鉄筋18は、床梁16に配筋された鉄筋17や第2基礎間柱75に配筋された鉄筋18と同一である。
第1鋼材は67、第1基礎間柱65の下端66に連結された第1鋼製ブラケット69と、第1鋼製ブラケット69に固定された第1H形鋼70(第1形鋼)とから形成されている。第1鋼製ブラケット69は、所定厚みを有して横方向へ延びる板状の鋼材である。第1鋼製ブラケット69の両側部には、第1PC鋼材68を挿通する挿通孔71が穿孔されている。なお、第1形鋼としてI形鋼やT形鋼、山形鋼、溝形鋼を使用することもできる。
第1H形鋼70は、第1鋼製ブラケット69の下面に上下方向下方へ向かって起立するように設置されている。第1H形鋼70は、第1鋼製ブラケット69の下面の横方向中央に配置され、フランジ72とウェブ73とが第1鋼製ブラケット69の下面に溶接によって固着され、フランジ72とウェブ73とが第1鋼製ブラケット69の下面から上下方向下方へ延びている。第1H形鋼70のウェブ73には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔74が穿孔されている。
第1基礎間柱65を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式またはポストテンション方式によって施工されている。プレテンション方式による第1間柱11の施工の一例は、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、第1PC鋼材68を第1鋼製ブラケット69の両側部の挿通孔71に挿通して天井梁15と第1鋼製ブラケット69とを連結し、第1PC鋼材68に緊張力を付与した後にそれら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
ポストテンション方式による第1間柱11の施工の一例は、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの強度が発現した後にコンクリートと第1鋼製ブラケット69の両側部の挿通孔71とに第1PC鋼材68を挿通して天井梁15と第1鋼製ブラケット69とを連結しつつ第1PC鋼材68に緊張力を付与し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
既設の建造物にプレストレスト・コンクリートから形成された第1基礎間柱65を施工(新設)する場合の一例としては、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所において天井梁15のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に天井梁15の鉄筋17とその鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18とを配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、既述のプレテンション方式またはポストテンション方式によって天井梁15の一部と第1間柱11とを構築する。
制震構造物10Bでは、第1基礎間柱65が鉄筋コンクリートから作られていてもよい。鉄筋コンクリート製の第1基礎間柱65の施工の一例としては、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、第1基礎間柱用の型枠の下端66に第1鋼材67を配置し、連結ロッド(図示せず)によって天井梁15と第1鋼製ブラケット69とを連結する。次に、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
既設の建造物に鉄筋コンクリート製の第1基礎間柱65を施工(新設)する場合の一例としては、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所において天井梁15のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に天井梁用の鉄筋17と第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、第1基礎間柱用の型枠の下端66に第1鋼材67を配置し、連結ロッド(図示せず)によって天井梁15と第1鋼製ブラケット69とを連結する。次に、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15の一部と第1間柱11とを構築する。
制震構造物10Bでは、第1間柱11(第1基礎間柱65および第1鋼製ブラケット69)が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。プレキャストコンクリート製の第1間柱11では、第1基礎間柱65に第1鋼材67の第1鋼製ブラケット69が連結されている。第1間柱11がプレキャストコンクリートである場合、第1間柱11を工場から施工現場に搬送し、天井梁15を構築(新設)した後のその天井梁15の第1間柱11の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱11)を配置し、連結ボルトを介して天井梁15とプレキャストコンクリート(第1間柱11)とを連結する。または、既設の建造物の既設の天井梁15の第1間柱11の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱11)を配置し、連結ボルトを介して既設の天井梁15とプレキャストコンクリート(第1間柱11)とを連結する。
第2間柱12は、建造物の床梁16(大梁または小梁)に連結されて床梁16から上方へ延びる第2基礎間柱75と、第2基礎間柱75の上端76に連結された第2鋼材77とから形成されている。床梁16や第2基礎間柱75は、プレストレスト・コンクリート製であり、プレストレスト・コンクリートに緊張を付与する第2PC鋼材78が床梁16および第2基礎間柱75に設置されている。第2基礎間柱75と第2鋼材77とは、第2PC鋼材78を介して建造物の床梁16に連結されている。
第2鋼材77は、第2基礎間柱75の上端76に連結された第2鋼製ブラケット79と、第2鋼製ブラケット79に固定された第2H形鋼80(第2形鋼)とから形成されている。第2鋼製ブラケット79は、所定厚みを有して横方向へ延びる板状の鋼材である。第2鋼製ブラケット79の両側部には、第2PC鋼材78を挿通する挿通孔81が穿孔されている。なお、第2形鋼としてI形鋼やT形鋼、山形鋼、溝形鋼を使用することもできる。
第2H形鋼80は、第2鋼製ブラケット79の上面に上下方向上方へ向かって起立するように設置されている。第2H形鋼80は、第2鋼製ブラケット79の上面の横方向中央に配置され、フランジ82とウェブ83とが第2鋼製ブラケット79の上面に溶接によって固着されている。第2H形鋼80は、そのフランジ82とウェブ83とが第2鋼製ブラケット79の上面から上下方向上方へ延びている。第2H形鋼80のウェブ83には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔84が穿孔されている。
第2基礎間柱75を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式またはポストテンション方式によって施工される。プレテンション方式による第2間柱12の施工の一例は、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、第2PC鋼材78を第2鋼製ブラケット79の両側部の挿通孔81に挿通して床梁16と第2鋼製ブラケット79とを連結し、第2PC鋼材78に緊張力を付与した後にそれら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
ポストテンション方式による第2間柱12の施工の一例は、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの強度が発現した後にコンクリートと第2鋼製ブラケット79の両側部の挿通孔81とに第2PC鋼材78を挿通して床梁16と第2鋼製ブラケット79とを連結しつつ第2PC鋼材78に緊張力を付与し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
既設の建造物にプレストレスト・コンクリートから形成された第2基礎間柱75を施工(新設)する場合の一例としては、第2間柱12を施工する建造物の床梁の施工箇所を決定し、施工箇所において床梁16のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に床梁16の鉄筋17とその鉄筋17につながる第2間柱用の鉄筋18とを配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、既述のプレテンション方式またはポストテンション方式によって床梁16や第2間柱12を構築する。
制震構造物10Bでは、第2基礎間柱75が鉄筋コンクリートから作られていてもよい。鉄筋コンクリート製の第2基礎間柱75の施工の一例としては、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、第2基礎間柱用の型枠の上端に第2鋼材77を配置し、連結ロッド(図示せず)によって床梁16と第2鋼製ブラケット79とを連結する。次に、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
既設の建造物に鉄筋コンクリート製の第2基礎間柱75を施工(新設)する場合の一例としては、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所において床梁16のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に床梁用の鉄筋17と第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、第2基礎間柱用の型枠の上端に第2鋼材77を配置し、連結ロッド(図示せず)によって床梁16と第2鋼製ブラケット79とを連結する。次に、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16の一部と第2間柱12とを構築する。
制震構造物10Bでは、第2間柱12(第2基礎間柱75および第2鋼製ブラケット79)が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。プレキャストコンクリート製の第2間柱12では、第2基礎間柱75に第2鋼材77の第2鋼製ブラケット79が連結されている。第2間柱12がプレキャストコンクリートである場合、第2間柱12を工場から施工現場に搬送し、床梁16を構築(新設)した後のその床梁16の第2間柱12の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱12)を配置し、連結ボルトを介して床梁16とプレキャストコンクリート(第2間柱12)とを連結する。または、既設の建造物の既設の床梁16の第2間柱12の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱12)を配置し、連結ボルトを介して既設の床梁16とプレキャストコンクリート(第2間柱12)とを連結する。
制震装置14は、一対の第1スプライスプレート85および一対の第2スプライスプレート86と、せん断型パネルダンパー35aとから形成されている。それら第1および第2スプライスプレート85,86は、同形同大の所定厚みを有する板状鋼材であり、上下方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が同一である。第1スプライスプレート85と第2スプライスプレート86とは、上下方向へ離間対向し、第1間柱11と第2間柱12との間のスペース13に配置されている。第1スプライスプレート85の上端部(上半分)と下端部(下半分)には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔87が穿孔され、第2スプライスプレート86の上端部(上半分)と下端部(下半分)には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔88が穿孔されている。
それら第1スプライスプレート85は、第1鋼製ブラケット69の第1H形鋼70のウェブ73の両側に配置され、第1スプライスプレート85の上端部に穿孔されたボルト孔87と第1H形鋼70のウェブ73に穿孔されたボルト孔74とに挿通または螺着された摩擦接合用高力六角ボルト89と摩擦接合用高力六角ボルト89に螺着されたナット90とによって連結され、ウェブ73を挟み込んだ状態でウェブ73(第1間柱11の第1鋼材67)に強固に固定されている。それら第1スプライスプレート85は、前後方向へ対向し、その下端部が第1H形鋼70のウェブ73から上下方向下方へ延びている。
それら第2スプライスプレート86は、第2鋼製ブラケット79の第2H形鋼80のウェブ83の両側に配置され、第2スプライスプレート86の下端部に穿孔されたボルト孔88と第2H形鋼80のウェブ83に穿孔されたボルト孔84とに挿通または螺着された摩擦接合用高力六角ボルト89と摩擦接合用高力六角ボルト89に螺着されたナット90とによって連結され、ウェブ83を挟み込んだ状態でウェブ83(第2間柱12の第2鋼材77)に強固に固定されている。それら第2スプライスプレート86は、前後方向へ対向し、その上端部が第2H形鋼80のウェブ83から上下方向上方へ延びている。
せん断型パネルダンパー35aは、上下方向へ離間する第1間柱11の第1鋼材67の第1H形鋼70(第1形鋼)と第2間柱12の第2鋼材77の第2H形鋼80(第2形鋼)との間のスペース13に位置し、第1および第2スプライスプレート85,86に取り付けられている。せん断型パネルダンパー35aは、図1の制震構造物10Aのそれと同一であり、第1固定パネル54および第2固定パネル55と、第1および第2固定パネル54,55の間に延びるダンパーパネル56とを備え、普通鋼材よりも降伏強度が低く、塑性変形機能が高い低降状点鋼材から作られている。第1固定パネル54には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔57が穿孔され、第2固定パネル55には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔58が穿孔されている。
ダンパーパネル56は、図1の制震装置14のそれと同一であり、その両側縁59が横方向内方へ向かって弧を画き、その前面60(一方の面)に形成された所定面積の第1凹曲面域61と、その後面62(他方の面)に形成された所定面積の第2凹曲面域63とを有する。第1凹曲面域61および第2凹曲面域63は、図1のダンパーパネル56のそれらと同一である。ダンパーパネル56は、上下方向へ離間する第1スプライスプレート85と第2スプライスプレート86との間のスペース13に位置している。せん断型パネルダンパー35aでは、ダンパーパネル56の厚み寸法(板厚)を自由に調節することができ、その減衰力を240kN〜1190kNの範囲で任意に設定することができる。
図16は、第1および第2鋼材67,77に連結された状態で示すせん断型パネルダンパー35aの正面図であり、図17は、第1および第2鋼材67,77に連結された状態で示すせん断型パネルダンパー35aの側面図である。せん断型パネルダンパー35aは、その第1固定パネル54がそれら第1スプライスプレート85の間に挿入された状態で第1スプライスプレート85に固定され、その第2固定パネル55がそれら第2スプライスプレート86の間に挿入された状態で第2スプライスプレート86に固定されている。
せん断型パネルダンパー35aの第1固定パネル54は、それに穿孔されたボルト孔57と第1スプライスプレート85に穿孔されたボルト孔87とに挿通または螺着された摩擦接合用高力六角ボルト89と摩擦接合用高力六角ボルト89に螺着されたナット90とによって第1スプライスプレート85に連結されている。第1固定パネル54は、第1スプライスプレート85に挟まれた状態でそれら第1スプライスプレート85に強固に固定されている。
せん断型パネルダンパー45aの第2固定パネル55は、それに穿孔されたボルト孔58と第2スプライスプレート86に穿孔されたボルト孔88とに挿通または螺着された摩擦接合用高力六角ボルト89と摩擦接合用高力六角ボルト89に螺着されたナット90とによって第2スプライスプレート86に連結されている。第2固定パネル55は、第2スプライスプレート86に挟まれた状態でそれら第2スプライスプレート86に強固に固定されている。ダンパーパネル56では、第1凹曲面域61が第1および第2間柱11,12の前面19,26の側に位置し、第2凹曲面域63が第1および第2間柱11,12の後面の側に位置している。
地震が発生し、地震による軸力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重や鉛直荷重、曲げ応力、せん断応力)が建造物に作用した場合、その軸力が建造物からプレストレスト・コンクリート製(または鉄筋コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1および第2基礎間柱65,75と第1および第2鋼材67,77とを備えた第1および第2間柱11,12に伝達され、軸力が第1および第2鋼材67,77の第1および第2H形鋼70,80から第1および第2スプライスプレート85,86に伝達されるとともに、軸力が第1および第2スプライスプレート85,86からせん断型パネルダンパー35aに均等に伝達される。軸力が伝達されたせん断型パネルダンパー35aでは、ダンパーパネル56がその中心からフィレット(両側縁59)の位置にかけて、ダンパーパネル56の全体が均一に塑性変形し、ダンパーパネル56が地震による軸力(地震エネルギー)を吸収し、ダンパーパネル56によって地震エネルギーが減衰する。
制震構造物10Bは、地震発生時に建造物に作用する軸力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重や鉛直荷重、曲げ応力、せん断応力)が建造物からプレストレスト・コンクリート製(または鉄筋コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1および第2基礎間柱65,75と第1および第2鋼材67,77とを備えた第1および第2間柱11,12に伝達され、軸力が第1および第2鋼材67,77の第1および第2H形鋼70,80から第1および第2スプライスプレート85,86に伝達されるとともに、軸力が第1および第2スプライスプレート85,86からせん断型パネルダンパー35aに均等に伝達されるから、軸力を建造物からせん断型パネルダンパー35aに確実に伝達することができ、せん断型パネルダンパー35aの第1凹曲面域61と第2凹曲面域63とを有するダンパーパネル56の全体が軸力によって均等に塑性変形し、さらに、ダンパーパネル45が第1スプライスプレート85と第2スプライスプレート86との間のスペース13に位置しているから、地震による軸力の伝達時におけるダンパーパネル56の塑性変形を妨げる障害がなく、地震発生時にダンパーパネル56全体が自由に塑性変形し、せん断型パネルダンパー35aに地震エネルギーを効率よく吸収させることができ、せん断型パネルダンパー35aのダンパーパネル56の塑性変形を利用して地震エネルギーを十分に減衰させることができる。
制震構造物10Bは、地震による軸力(地震エネルギー)が建造物から第1および第2間柱11,12の第1および第2H形鋼70,80や第1および第2スプライスプレート85,86を介してせん断型パネルダンパー35aに円滑かつ均一に伝達され、せん断型パネルダンパー35aのダンパーパネル56の塑性変形を利用して地震エネルギーを十分に吸収(減衰)させることができるから、地震による建造物の変形や損傷を低減させる(最小限にする)ことができる。
制震構造物10Bは、第1および第2基礎間柱65,75がプレストレスト・コンクリートから形成され、地震による軸力(地震エネルギー)が第1および第2間柱11,12に作用したときに、荷重を受けた第1および第2基礎間柱65,75に引張応力が発生しないように制御されているから、引張応力による第1および第2基礎間柱65,75のひび割れの発生を防ぐことができ、ひび割れの発生による第1および第2間柱11,12の補修の手間やコストを省くことができる。
制震構造物10Bは、プレストレスト・コンクリート製(または鉄筋コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1基礎間柱65と第1鋼材67とを備えた第1間柱11を第1PC鋼材68を介して天井梁15に連結し、プレストレスト・コンクリート製(または鉄筋コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第2基礎間柱75と第2鋼材77とを備えた第2間柱12を第2PC鋼材78を介して床梁16に連結し、第1および第2鋼材67,77に一対の第1および第2スプライスプレート85,86を固定し、第1および第2スプライスプレート85,86にせん断型パネルダンパー35aの第1および第2固定パネル54,55を固定することで施工することができるから、短い工期で廉価に施工することができ、地震の後はせん断型パネルダンパー35aを交換するだけでよく、地震後に制震構造物をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。
図18は、他の一例として示す制震構造物10Cの正面図であり、図19は、図18の制震構造物10Cの側面図である。図20は、一例として示す第1および第2アングル鋼材92,101の正面図であり、図21は、第1および第2アングル鋼材92,101の上面図である。図22は、第1および第2アングル鋼材92,101の側面図であり、図23は、他の一例として示すせん断型パネルダンパー35bの正面図である。図18,19では、床梁16および第2基礎間柱75に配筋された鉄筋17,18を図示し、天井梁15および第1基礎間柱65に配筋された鉄筋17,18の図示を省略している。図18,19では、第1および第2基礎間柱65,75の第1および第2アンカーボルト96,105を図示しているが、実際には第1および第2アンカーボルト96,105はコンクリートに埋設される。図18,19では、上下方向を矢印X、横方向を矢印Yで示し、前後方向を矢印Zで示す。
制震構造物10Cは、第1間柱11および第2間柱12と、第1および第2間柱11,12に設置された制震装置14とから形成されている。第1および第2間柱11,12は、同形同大であり、上下方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が同一である。第1間柱11と第2間柱12とは上下方向へ離間対向し、第1間柱11と第2間柱12との間にスペース13が形成されている。天井梁15に配筋された鉄筋17や第1基礎間柱65に配筋された鉄筋18は、床梁16に配筋された鉄筋17や第2基礎間柱75に配筋された鉄筋18と同一である。
第1間柱11は、建造物の天井梁15(大梁または小梁)に連結されて天井梁15から下方へ延びている。第1間柱11は、鉄筋コンクリート製の第1基礎間柱65と、第1基礎間柱65の下端66に連結された第1アングル鋼材92とから形成されている。第1アングル鋼材92は、横方向へ延びる所定面積の第1固定プレート93と、第1固定プレート93の端縁から下方へ延びる所定面積の第1延出プレート94と、上下方向へ延びる一対の第1補強プレート95とを有する。第1固定プレート93や第1延出プレート94、第1補強プレート95は、一体に成形されている。
第1固定プレート93は、所定厚みを有する板状の鋼材であり、第1基礎間柱65の下端66に複数本の第1アンカーボルト96を介して連結されている。第1固定プレート93には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔97が穿孔されている。第1延出プレート94は、所定厚みを有する板状の鋼材であ
り、第1基礎間柱65の下端66から下方へ延びている。第1延出プレート94には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔98が穿孔されている。
第1補強プレート95は、所定厚みを有する板状の鋼材であり、第1固定プレート93の両側縁と第1延出プレート94の両側縁とに連結されている。第1補強プレート95は、地震による軸力が第1アングル鋼材92に作用したときの第1固定プレート93や第1延出プレート94の変形を防止する。第1アングル鋼材92は、第1固定プレート93に穿孔されたボルト孔97に挿通または螺着された第1アンカーボルト96と第1アンカーボルト96に螺着されたナット99とによって第1基礎間柱65の下端66に強固に固定されている。
第1間柱11(第1基礎間柱65および第1アングル鋼材92)の施工の一例としては、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、第1基礎間柱用の型枠内に連結プレート100を設置する。次に、連結プレート100に穿孔されたボルト孔と第1固定プレート93に穿孔されたボルト孔97とに第1アンカーボルト96を挿通または螺着し、第1アンカーボルト96にナット99を螺着して第1アングル鋼材92を第1基礎間柱用の型枠の下端に設置した後、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
既設の建造物に第1間柱11(第1基礎間柱65および第1アングル鋼材92)を施工(新設)する場合の一例としては、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所において天井梁15のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に天井梁用の鉄筋17と第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、第1基礎間柱用の型枠内に連結プレート100を設置する。次に、連結プレート100に穿孔されたボルト孔と第1固定プレート93に穿孔されたボルト孔97とに第1アンカーボルト96を挿通または螺着し、第1アンカーボルト96にナット99を螺着して第1アングル鋼材92を第1基礎間柱用の型枠の下端に設置した後、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15の一部と第1間柱11とを構築する。
天井梁15は、鉄筋コンクリート製またはプレストレスト・コンクリート製あるいは鉄骨鉄筋コンクリート製である。制震構造物10Cでは、第1基礎間柱65がプレストレスト・コンクリートから作られていてもよい。天井梁15や第1基礎間柱65を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式またはポストテンション方式によって施工される。
プレテンション方式による第1間柱11(第1基礎間柱65および第1アングル鋼材92)の施工の一例は、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、PC鋼材(図示せず)を第1基礎間柱用の型枠の下端に配置された第1アングル鋼材92の第1固定プレート93に挿通して天井梁15と第1アングル鋼材92とを連結し、PC鋼材に緊張力を付与した後にそれら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
ポストテンション方式による第1間柱11(第1基礎間柱65および第1アングル鋼材92)の施工の一例は、建造物を新築する際に、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所に天井梁15の鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの強度が発現した後にコンクリートと第1基礎間柱用の型枠の下端に配置された第1アングル鋼材92の第1固定プレート93とにPC鋼材(図示せず)を挿通して天井梁15と第1アングル鋼材92とを連結しつつPC鋼材に緊張力を付与し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、天井梁15および第1間柱11を構築する。
既設の建造物にプレストレスト・コンクリートから形成された第1間柱11(第1基礎間柱65および第1アングル鋼材92)を施工(新設)する場合の一例としては、第1間柱11を施工する建造物の天井梁15の施工箇所を決定し、施工箇所において天井梁15のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に天井梁15の鉄筋17とその鉄筋17につながる第1基礎間柱用の鉄筋18とを配筋した後、天井梁15の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第1基礎間柱用の型枠を組み上げ、既述のプレテンション方式またはポストテンション方式によって天井梁15の一部と第1間柱11とを構築する。
制震構造物10Cでは、第1間柱11(第1基礎間柱65および第1アングル鋼材92)が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。プレキャストコンクリート製の第1間柱11では、第1基礎間柱65に第1アングル鋼材92の第1固定プレート93が連結されている。第1間柱11がプレキャストコンクリートである場合、第1間柱11を工場から施工現場に搬送し、天井梁15を構築(新設)した後のその天井梁15の第1間柱11の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱11)を配置し、連結ボルトを介して天井梁15とプレキャストコンクリート(第1間柱11)とを連結する。または、既設の建造物の既設の天井梁15の第1間柱11の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱11)を配置し、連結ボルトを介して既設の天井梁15とプレキャストコンクリート(第1間柱11)とを連結する。
第2間柱12は、建造物の床梁16(大梁または小梁)に連結されて床梁16から上方へ延びている。第2間柱12は、鉄筋コンクリート製の第2基礎間柱75と、第2基礎間柱75の上端76に連結された第2アングル鋼材101とから形成されている。第2アングル鋼材101は、横方向へ延びる所定面積の第2固定プレート102と、第2固定プレート102の端縁から上方へ延びる所定面積の第2延出プレート103と、上下方向へ延びる一対の第2補強プレート104とを有する。第2固定プレート102や第2延出プレート103、第2補強プレート104は、一体に成形されている。
第2固定プレート102は、所定厚みを有する板状の鋼材であり、第2基礎間柱75の上端76に複数本の第2アンカーボルト105を介して連結されている。第2固定プレート102には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔97が穿孔されている。第2延出プレート103は、所定厚みを有する板状の鋼材であり、第2基礎間柱75の上端76から上方へ延びている。第2延出プレート103には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔98が穿孔されている。
第2補強プレート104は、所定厚みを有する板状の鋼材であり、第2固定プレート102の両側縁と第2延出プレート103の両側縁とに連結されている。第2補強プレート104は、地震による軸力が第2アングル鋼材101に作用したときの第2固定プレート102や第2延出プレート103の変形を防止する。第2アングル鋼材101は、第2固定プレート102に穿孔されたボルト孔97に挿通または螺着された第2アンカーボルト105と第2アンカーボルト105に螺着されたナット99とによって第2基礎間柱75の上端76に強固に固定されている。
第2間柱12(第2基礎間柱65および第2アングル鋼材101)の施工の一例としては、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、第2基礎間柱用の型枠内に連結プレート100を設置する。次に、連結プレート100に穿孔されたボルト孔と第2固定プレート102に穿孔されたボルト孔97とに第2アンカーボルト105を挿通または螺着し、第2アンカーボルト105にナット99を螺着して第2アングル鋼材102を第2基礎間柱用の型枠の下端に設置した後、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
既設の建造物に第2間柱12(第2基礎間柱75および第2アングル鋼材101)を施工(新設)する場合の一例としては、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所において床梁16のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に床梁用の鉄筋17と第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、第2基礎間柱用の型枠内の連結プレート100を設置する。次に、連結プレート100に穿孔されたボルト孔と第2固定プレート102に穿孔されたボルト孔97とに第2アンカーボルト105を挿通または螺着し、第2アンカーボルト105にナット99を螺着して第2アングル鋼材101を第2基礎間柱用の型枠の上端に設置した後、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16の一部と第2間柱12とを構築する。
床梁16は、鉄筋コンクリート製またはプレストレスト・コンクリート製あるいは鉄骨鉄筋コンクリート製である。制震構造物10Cでは、第2基礎間柱75がプレストレスト・コンクリートから作られていてもよい。床梁16や第2基礎間柱75を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式またはポストテンション方式によって施工される。
プレテンション方式による第2間柱12(第2基礎間柱75および第2アングル鋼材101)の施工の一例は、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から下方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、PC鋼材(図示せず)を第2基礎間柱用の型枠の上端に配置された第2アングル鋼材101の第2固定プレート102に挿通して床梁16と第2アングル鋼材101とを連結し、PC鋼材に緊張力を付与した後にそれら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
ポストテンション方式による第2間柱12(第2基礎間柱75および第2アングル鋼材101)の施工の一例は、建造物を新築する際に、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所に床梁16の鉄筋17につながる第2基礎間柱用の鉄筋18を配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、それら型枠にコンクリートを打設し、コンクリートの強度が発現した後にコンクリートと第2基礎間柱用の型枠の上端に配置された第2アングル鋼材101の第2固定プレート102とにPC鋼材(図示せず)を挿通して床梁16と第2アングル鋼材101とを連結しつつPC鋼材に緊張力を付与し、コンクリートの養生期間経過後に型枠を解体し、床梁16および第2間柱12を構築する。
既設の建造物にプレストレスト・コンクリートから形成された第2間柱12(第2基礎間柱75および第2アングル鋼材101)を施工(新設)する場合の一例としては、第2間柱12を施工する建造物の床梁16の施工箇所を決定し、施工箇所において床梁16のコンクリート(鉄筋を含む)をはつり、施工箇所に床梁16の鉄筋17とその鉄筋17につながる第2基礎間柱用の鉄筋18とを配筋した後、床梁16の型枠とともに施工箇所から上方へ向かって第2基礎間柱用の型枠を組み上げ、既述のプレテンション方式またはポストテンション方式によって床梁16の一部と第2間柱12とを構築する。
制震構造物10Cでは、第2間柱12(第2基礎間柱75および第2アングル鋼材101)が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。プレキャストコンクリート製の第2間柱12では、第2基礎間柱75に第2アングル鋼材101の第1固定プレート102が連結されている。第2間柱12がプレキャストコンクリートである場合、第2間柱12を工場から施工現場に搬送し、床梁16を構築(新設)した後のその床梁16の第2間柱12の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱12)を配置し、連結ボルトを介して床梁16とプレキャストコンクリート(第2間柱12)とを連結する。または、既設の建造物の既設の床梁16の第2間柱12の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱12)を配置し、連結ボルトを介して既設の床梁16とプレキャストコンクリート(第2間柱12)とを連結する。
制震装置14は、上下方向へ離間する第1アングル鋼材92と第2アングル鋼材101との間に位置するせん断型パネルダンパー35bである。せん断型パネルダンパー35bは、第1アングル鋼材92の第1延出プレート94と第2アングル鋼材101の第2延出プレート103とに取り付けられている。せん断型パネルダンパー35bは、普通鋼材よりも降伏強度が低く、塑性変形機能が高い低降状点鋼材から作られている。せん断型パネルダンパー35bは、第1固定パネル54および第2固定パネル55と、第1および第2固定パネル54,55の間に延びるダンパーパネル56とを備えている。第1固定パネル54は、横方向へ長い四角形に成型されている。第1固定パネル54には、上下方向へ並ぶとともに横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔57が穿孔されている。第2固定パネル55は、第1固定パネル54と同形同大であり、横方向へ長い四角形に成型されている。第2固定パネル55には、上下方向へ並ぶとともに横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔58が穿孔されている。
ダンパーパネル56は、その厚み寸法が第1および第2固定パネル54,55のそれよりも小さく、その横方向の寸法が第1および第2固定パネル54,55のそれよりも短い。ダンパーパネル56は、その両側縁59が横方向内方へ向かって弧を画いている。ダンパーパネル56は、第1および第2固定パネル54,55と一体成型されている。ダンパーパネル56は、その前面60(一方の面)に形成された所定面積の第1凹曲面域61と、その後面62(他方の面)に形成された所定面積の第2凹曲面域63とを有する。
第1凹曲面域61および第2凹曲面域63は、図7のダンパーパネル56のそれらと同一である。ダンパーパネル56は、上下方向へ離間する第1アングル鋼材92の第1延出プレート94と第2アングル鋼材101の第2延出プレート103との間のスペース13に位置している。せん断型パネルダンパー35bでは、ダンパーパネル56の厚み寸法(板厚)を自由に調節することができ、その減衰力を240kN〜1190kNの範囲で任意に設定することができる。
図24は、第1および第2アングル鋼材92,101に連結された状態で示すせん断型パネルダンパー35bの正面図であり、図25は、第1および第2アングル鋼材92,101に連結された状態で示すせん断型パネルダンパー35bの側面図である。せん断型パネルダンパー35bの第1固定パネル54は、それに穿孔されたボルト孔57と第1アングル鋼材92の第1延出プレート94に穿孔されたボルト孔98とに挿通または螺着された摩擦接合用高力六角ボルト89と摩擦接合用高力六角ボルト89に螺着されたナット90とによって第1アングル鋼材92に連結されている。第1固定パネル54は、第1アングル鋼材92の第1延出プレート94に強固に固定されている。
せん断型パネルダンパー35bの第2固定パネル55は、それに穿孔されたボルト孔58と第2アングル鋼材101の第2延出プレート103に穿孔されたボルト孔98とに挿通または螺着された摩擦接合用高力六角ボルト89と摩擦接合用高力六角ボルト89に螺着されたナット90とによって第2アングル鋼材101に連結されている。第2固定パネル55は、第2アングル鋼材101の第2延出プレート103に強固に固定されている。
地震が発生し、地震による軸力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重や鉛直荷重、曲げ応力、せん断応力)が建造物に作用した場合、その軸力が建造物から鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1および第2基礎間柱65,75と第1および第2アングル鋼材92,101とを備えた第1および第2間柱11,12に伝達され、軸力が第1および第2アングル鋼材92,101の第1および第2延出プレート94,103からせん断型パネルダンパー35bに均等に伝達される。軸力が伝達されたせん断型パネルダンパー35bでは、ダンパーパネル56がその中心からフィレット(両側縁59)の位置にかけて、ダンパーパネル56の全体が均一に塑性変形し、ダンパーパネル56が地震による軸力(地震エネルギー)を吸収し、ダンパーパネル56によって地震エネルギーが減衰する。
制震構造物10Cは、地震発生時に建造物に作用する軸力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重や鉛直荷重、曲げ応力、せん断応力)が建造物から鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1および第2基礎間柱65,75と第1および第2アングル鋼材92,101とを備えた第1および第2間柱11,12に伝達され、軸力が第1および第2アングル鋼材92,101の第1および第2延出プレート94,103からせん断型パネルダンパー35bに均等に伝達されるから、軸力を建造物からせん断型パネルダンパー35bに確実に伝達することができ、せん断型パネルダンパー35bの第1凹曲面域61と第2凹曲面域63とを有するダンパーパネル56の全体が軸力によって均等に塑性変形し、さらに、ダンパーパネル56が第1延出プレート92と第2延出プレート101との間のスペース13に位置しているから、地震による軸力の伝達時におけるダンパーパネル56の塑性変形を妨げる障害がなく、地震発生時にダンパーパネル56全体が自由に塑性変形し、せん断型パネルダンパー35bに地震エネルギーを効率よく吸収させることができ、せん断型パネルダンパー35bのダンパーパネル56の塑性変形を利用して地震エネルギーを十分に減衰させることができる。
制震構造物10Cは、地震による軸力(地震エネルギー)が建造物から第1および第2間柱11,12の第1および第2アングル鋼材92,101を介してせん断型パネルダンパー35bに円滑かつ均一に伝達され、せん断型パネルダンパー35bのダンパーパネル56の塑性変形を利用して地震エネルギーを十分に吸収(減衰)させることができるから、地震による建造物の変形や損傷を低減させる(最小限にする)ことができる。
制震構造物10Cは、鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1基礎間柱65と第1アングル鋼材92とを備えた第1間柱11を天井梁15に連結し、鉄筋コンクリート製(またはプレストレスト・コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第2基礎間柱75と第2アングル鋼材101とを備えた第2間柱12を床梁16に連結し、第1および第2アングル鋼材91,101の第1および第2延出プレート94,103にせん断型パネルダンパー35bの第1および第2固定パネル54,55を固定することで施工することができるから、短い工期で廉価に施工することができ、地震の後はせん断型パネルダンパー35bを交換するだけでよく、地震後に制震構造物をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。