JP6967465B2 - 片艶クラフト紙及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、片艶クラフト紙及びその製造方法に関する。
近年、各種用途に和紙や和紙調の風合いを有する紙が利用されている。背景として、海外旅行者の急増に伴って、通常の紙にも日本らしさを醸し出すものが求められてきているからである。しかしながら、和紙は原料や製造手段の問題で量産化が困難であるため、このような不具合に鑑みて、和紙調の風合いを有する模様加工紙と呼ばれる、大札紙、雲龍紙、引っ掛け等の紙が存在する。
通常、上記のような和紙調の風合いを有する模様加工紙は、レーヨン繊維をパルプ繊維と混在させた原料を用いて製造されている。具体的には、レーヨン繊維及びパルプ繊維からなるベース層に、レーヨン繊維からなる模様層を、ポリビニルアルコールを成分とするバインダーで接着することで2層構造の模様加工紙が形成されている。しかしながら、このような模様加工紙は、ポリビニルアルコールが水溶性であるため、水に濡れた場合に模様層の繊維がほぐれ羽毛立ちや破断が生じ易くなる。そのため、水に濡れるような環境で使用することができないという問題があった。
そこで上記の欠点を補うべく、第1の従来技術においては、ポリビニルアルコールを使用せずに化学繊維を凝集させて模様を形成する模様加工紙が開示されている(特許文献1参照)。上記第1の従来技術では、模様加工紙が、化学繊維を含有する凝集体をパルプ繊維に添加した原料を抄紙することによって得られる。次に、第2の従来技術においては、構成素材として麻繊維と他の繊維素材で構成される基材紙を積層させた撥水性高調湿和紙シートが開示されている(特許文献2参照)。
また、第3の従来技術においては、用紙の表裏面が異なった指感性を有する有指感性用紙が開示されている。用紙の抄紙時に繊維密度を異ならせる手段としてダンディーロールを用い、所謂漉き込みと言われる凹凸模様を形成する方法で有指感性を醸し出している(特許文献3参照)。第4の従来技術においては、抄紙時に用いる抄網の片側に所定の線径の抄網を用いることで、紙表面に凹凸模様を形成する技術が開示されている(特許文献4参照)。さらに特許文献5には、パルプにマイクロカプセル型発泡剤を定着させた後に凝集させて、凝集地模様を形成し、当該地模様を紙料に抄き込み凹凸模様を形成する技術が開示されている(特許文献5参照)。
特開2011−94253号公報 特開2010−13753号公報 特開2010−163718号公報 特開平11−315500号公報 特公平6−94640号公報
しかしながら、上記第1の従来技術においては、凝集体によって形成される模様部分の接着性が十分ではなく、使用時等に模様が剥離又は解繊してしまうおそれがある。上記第2の従来技術においては、紙用途の繊維素材の中で比較的長繊維の麻繊維を用いることで和紙調の外観を得ることができると考えられるが、感触上も和紙調の凹凸を得ることは困難である。さらに、上記第2の従来技術においては、複数層の構成を有し、基材自体の厚みが増加することから、建材用途には適するが、包装紙や手提げ袋への利用には適さないおそれがある。また、上記第3の従来技術においては、有指感性を醸し出す製造設備の操業手段が煩雑であるとともに、コスト的に不利な面を有し、得られる有指感性シートの凹凸がすき込みで得られるため、人工的な風合い模様となるおそれがある。また、表裏面共に同等の凹凸が表現されるので、内容物の視認性が高くなると共に、その部分のみ密度が特に小さくなるために破断が生じるおそれがある。上記第4の従来技術においては、湿紙状態で湿紙に凹凸模様を付与する手段であり自然な風合いが得られないおそれがある。さらに、紙の坪量を包装紙や手提げバッグ等の用途において求められる50g/m以上とした場合においては、十分な凹凸の発現が困難であり、外観上の和紙調の風合が得られないおそれがある。さらに。上記第5の従来技術においては、紙の裁断時や使用時にマイクロカプセル等の脱落が生じ、食品等の包装紙には適さないおそれがあるととともに、外観上及び感触において和紙調の風合いが得られないおそれがある。
また、包装紙や手提げ袋においては、包装時の作業性や使用時の耐久性を備えるための強度も求められる。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、和紙が備える外観と自然な凹凸の風合いを醸し出すとともに、包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙及びその製造方法を提供することを目的とする。
本件発明者等は、元来、製紙用途に用いられるパルプ繊維を用いながら、外観上及び感触における和紙調の凹凸の風合いを得る手段について鋭意検討を重ねた結果、本来均一性が求められる用紙の地合を意図的に崩し、さらに和紙調の外観を得る手段として、複数のパルプ繊維と特定の乾燥手段を組み合わせることで、本件発明の目的を達成できることを見出し、本件発明を完成させた。
上記課題を解決するためになされた発明は、パルプ繊維を主成分とし、一方の面が艶面、他方の面が非艶面であり、上記パルプが、広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有し、上記パルプにおける広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量が95質量%以上であり、上記艶面のJIS−P8119(1998)に準拠して測定されるベック平滑度が85秒以上200秒以下であり、上記非艶面の上記ベック平滑度が、5秒以上20秒以下であり、かつ上記艶面及び上記非艶面の平滑度差が80秒以上であり、上記艶面のJIS−8151(2004)に準拠して測定されるパーカープリントサーフ平滑度が、1.6μm以上5.5μm以下であり、上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度が5.5μm以上10.0μm以下であり、画像解析装置を用いて測定される0.05m以上のダートの総数が、1500個/m以上3000個/m以下であり、かつダートの総面積が100mm/m以上300mm/m以下である片艶クラフト紙である。
ここで、「艶面」とは、光沢を有する面をいう。「非艶面」とは、光沢性を有さない面をいう。
片艶クラフト紙が、パルプ繊維を主成分とし、一方の面が艶面、他方の面が非艶面であり、上記パルプが、広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有し、上記パルプにおける広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量が95質量%以上であることで、針葉樹パルプに起因する地模様を意図的に醸し出し、地模様の和紙調凹凸を有しつつ包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙を得ることができる。また、針葉樹未哂クラフトパルプを含有することで、当該片艶クラフト紙の表面に、和紙の原料として使用される、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維様の模様を出現させることができる。
また、上記艶面のJIS−P8119(1998)に準拠して測定されるベック平滑度が85秒以上200秒以下であり、上記非艶面の上記ベック平滑度が、5秒以上20秒以下であり、かつ上記艶面及び上記非艶面のベック平滑度差が80秒以上であり、上記艶面のJIS−8151(2004)に準拠して測定されるパーカープリントサーフ平滑度が、1.6μm以上5.5μm以下であり、上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度が5.5μm以上10.0μm以下であり、画像解析装置を用いて測定される0.05m以上のダートの総数が、1500個/m以上3000個/m以下であり、かつダートの総面積が100mm/m以上300mm/m以下であることで、艶面及び非艶面の平滑度の差を大きくし、外観上のみならず感触における未晒しの和紙調の風合いを醸し出すことができる。
ベック平滑度、パーカープリントサーフ平滑度は共に空気の流通量(エアーリーク)から平滑性を評価する装置であり、ニップ数、ニップ圧、ロール温度、ロール材質、ロール硬度等を適宜設定することができ、特にスーパーカレンダー、熱カレンダーでの平滑化処理が密度の変化を抑え、表面性のみを調整する手段として、本件発明における原料パルプ中に含有するリグニン含有量が多く比較的硬質な針葉樹未晒クラフトパルプの感触を損なわせない効果を有し好適に利用できる。JIS−P8119(1998)に規定されるベック平滑度は、シートを光学的平面仕上げのガラス製標準面とゴム製押さえ板間に約98(kN/m)/(g/m2)の圧力で挟み、10mlの空気が比較的広い10cmのガラス製標準面との間を通り、水銀柱約370mmlに減圧保持された器内に流入するのに要する時間で表され、所謂被測定物の面における平滑性を示し、パーカープリントサーフ平滑度は、ハードタイプのバッキングを用い、クランプ圧0.5Mpaにて測定される値で、本件発明者等の知見では、ベック平滑度より微視的な印刷版の網点の大きさにおいて、対象物に圧力をかけて測定することにより、各種印刷機にて印圧を掛けた際の印刷時の平滑性を評価することができ、本件発明においては、艶面に表出する針葉樹未晒クラフトパルプの表面状態と密接な関係を有する。従い、ベック平滑度にて本件発明の主用途である包装紙や手提げ袋としての印刷適性を評価でき、パーカープリンントサーフ平滑度にて、本件発明の和紙調の風合いと有指感性を評価でき、更にダートの総数とダートの面積にて外観上の和紙調の風合いを評価できる。
上記広葉樹哂クラフトパルプのフリーネスが、500ml以下であり、上記針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプのフリーネスが、660ml以上であり、上記広葉樹哂クラフトパルプの含有量と、上記針葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹未哂クラフトパルプの合計含有量とが、質量比で55:45〜65:35であり、上記針葉樹哂クラフトパルプの含有量と、上記針葉樹未哂クラフトパルプの含有量とが、質量比で、87.5:12.5〜92.9:7.1であることで、白い基材紙中に未晒しのあたかも和紙の原料として使用される、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維様の含有を表現できる。特に、フィブリル化が進んでいない針葉樹未哂クラフトパルプのフリーネスが、660ml以上であることで、針葉樹未晒クラフトパルプが広葉樹サラクラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプ中で固定化され脱落が殆ど生じない和紙調のクラフト紙を得ることができる。
上記広葉樹洒クラフトパルプと上記針葉樹クラフトパルプとのフリーネスの差が、100ml以上であることで、艶面の平坦性を醸し出し易くなり、印刷適正が向上するとともに、靭皮繊維様の含有を表現し易くなる。
当該片艶クラフト紙におけるJIS−P8226−2(2011)に準拠して測定される質量加重平均繊維長が1.6mm以上2.0mm以下であり、超音波伝播速度測定器を用いて測定される繊維配向比が1.20以上1.50以下であることで、包装紙や手提げ袋用途における加工適性、引張りや引裂き、耐カール等の紙質を向上できる。
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有する原料パルプを抄紙する工程と、上記抄紙工程で抄紙された紙の片面をヤンキードライヤーにより乾燥して艶面を形成する工程とを備え、上記原料パルプにおける上記広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量が95質量%以上であり、上記艶面のJIS−P8119(1998)に準拠して測定されるベック平滑度が85秒以上200秒以下であり、上記非艶面の上記ベック平滑度が、5秒以上20秒以下であり、かつ上記艶面及び上記非艶面の平滑度差が80秒以上であり、上記艶面のJIS−8151(2004)に準拠して測定されるパーカープリントサーフ平滑度が、1.6μm以上5.5μm以下であり、上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度が、5.5μm以上10.0μm以下であり、画像解析装置を用いて測定される0.05m以上のダートの総数が、1500個/m以上3000個/m以下であり、かつダートの総面積が100mm/m以上300mm/m以下である片艶クラフト紙の製造方法である。
当該片艶クラフト紙の製造方法が、上記構成を備えることで、多額の設備投資や複雑な工程を必要とせず、既存の設備を用いて、和紙が備えるような外観と自然な凹凸の風合いを醸し出すとともに、包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙を製造することができる。
本発明によれば、和紙が備えるような外観と自然な凹凸の風合いを醸し出すとともに、包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る片艶クラフト紙及びその製造方法について詳説する。
<片艶クラフト紙>
当該片艶クラフト紙は、パルプ繊維を主成分とし、一方の面(裏面)が艶面、他方の面(表面)が非艶面である。また、上記パルプが、広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有する。
当該片艶クラフト紙は、残留するリグニンの影響で剛直で繊維長が長い針葉樹未哂クラフトパルプと、比較的柔軟ながら繊維長の長い針葉樹哂クラフトパルプと、上記針葉樹クラフトパルプの間隙を充足するとともに、包装用紙用途に求められる印刷適正を確保する目的で広葉樹哂クラフトパルプを組み合わせ、混抄させることで、針葉樹パルプに起因する地模様を意図的に醸し出し、地模様の和紙調凹凸を有する片艶クラフト紙を得ることができる。また、針葉樹未哂クラフトパルプを含有することで、当該片艶クラフト紙の表面に、和紙の原料として使用される、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維様の模様を出現させることができる。
[パルプ繊維]
原料となるパルプ繊維は、片艶クラフト紙の主成分を構成する。主成分とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。当該片艶クラフト紙に使用するパルプ繊維としては、広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有する。
上記パルプにおける広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量の下限としては、95質量%である。上記パルプにおける広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量が95質量%以上であることで、針葉樹パルプに起因する地模様を意図的に醸し出し、地模様の和紙調凹凸を有しつつ包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙を得ることができる。
上記広葉樹哂クラフトパルプの含有量と、上記針葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹未哂クラフトパルプの合計含有量とが、質量比で55:45〜65:35であることが好ましい。また、上記針葉樹哂クラフトパルプの含有量と、上記針葉樹未哂クラフトパルプの含有量とが、質量比で、87.5:12.5〜92.9:7.1であることが好ましい。上記質量比が上記範囲であることで、白い基材紙中に未晒しのあたかも和紙の原料として使用される、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維様の含有を表現できる。
広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプの合計含有量に対する広葉樹哂クラフトパルプの含有量としては、57質量%以上62質量%以下が好ましく、上記合計含有量に対する針葉樹哂クラフトパルプの含有量としては、35質量%以上41質量%以下が好ましく、上記合計含有量に対する針葉樹未哂クラフトパルプの含有量としては、3質量%以上5質量%以下が好ましい。広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプの含有量が上記範囲であることで、和紙が備えるような外観と自然な凹凸の風合いをより良好に醸し出すとともに包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙を提供できる。
(広葉樹哂クラフトパルプ)
当該片艶クラフト紙の原料パルプは、寸法安定性に優れる広葉樹哂クラフトパルプ(LBKP)を多く配合する。
広葉樹哂クラフトパルプのフリーネスの上限としては、500mlが好ましく、480mlがより好ましい。上記フリーネスが500mlを超えると、針葉樹未サラクラフトパルプの脱落を抑えることが困難になるとともに、艶面の平坦性を損なうおそれがある。
パルプの白色度は、JIS−P8148(2001)に準拠して測定される。広葉樹哂クラフトパルプの白色度の下限としては、漂白パルプ繊維中に未漂白パルプ繊維の混在が外観上明瞭となる観点から、70%以上80%以下が好ましい。
(針葉樹晒クラフトパルプ)
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)は、広葉樹哂クラフトパルプより繊維長が長く、強くてしなやかである。
針葉樹晒クラフトパルプの上記フリーネスの下限としては660mlが好ましく、680mlがより好ましい。上記フリーネスが660ml以上であることで、本件発明の主用途である包装紙や手提げ袋における地合いや引張り強度、引裂き強度を担保でき、針葉樹未晒クラフトパルプの共存と相俟って、和紙調に風合いを醸しだすことができる。また、フィブリル化が進んでいない針葉樹未哂クラフトパルプのフリーネスが、660ml以上であることで、針葉樹未晒クラフトパルプが広葉樹サラクラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプ中で固定化され脱落が殆ど生じない和紙調のクラフト紙を得ることができる。さらに、上記広葉樹洒クラフトパルプと上記針葉樹晒クラフトパルプとのフリーネスの差としては、それぞれが求める和紙調の片艶紙としての表面性、印刷適性と包装紙や手提げ袋用途における紙質強度を確保する観点から、お互いの効果を阻害しないで相乗効果を得ることができる100ml以上が好ましい。
針葉樹晒クラフトパルプの白色度の下限としては、漂白パルプ繊維中に未漂白パルプ繊維の混在が外観上明瞭となる観点から、66%以上70%以下が好ましい。
(針葉樹未晒クラフトパルプ)
針葉樹クラフトパルプは、比較的大きな強度を有し、特にリグニン及びステロールのエステル化合物があまり除去されていない針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)は、パルプ中に残存するリグニンの作用によって強度がより大きく、かつパルプ中に残存するステロールのエステル化合物によりパルプ繊維が良好な滑性を示すと共に適度な剛直性や耐折れ性を有する。このため、原料パルプとして針葉樹未晒クラフトパルプを用いることで、当該片艶クラフト紙に大きな強度と好適な作業性とを付与することができる。また、針葉樹未晒クラフトパルプは、紙層中で他のパルプ繊維との共存と絡み合い、和紙調の風合いを得る観点から、叩解初期の濃度は5〜15質量%が好ましく、叩解中期から末期の濃度は2〜8質量%が好ましい。針葉樹クラフトパルプは、高濃度で叩解されるとき、刃物による切断よりも、繊維同士の摩擦により微細化する。このため、短繊維化よりもフィブリル化が優位に叩解され、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維様に平均繊維幅を広く保ったまま短繊維化ができる。原料濃度が低濃度だと、短繊維化が優位に働くためフィブリルが発生し難く、発生したフィブリルも刃物による切断力が加わり脱落してしまう。
針葉樹未晒クラフトパルプの上記フリーネスの下限としては、660mlが好ましく、680mlがより好ましい。離解パルプのフリーネスが660ml以上であることで、針葉樹未晒クラフトパルプの存在を表現し易く、和紙調の風合いを醸し出し易い。また、上記広葉樹洒クラフトパルプと上記針葉樹未晒クラフトパルプとのフリーネスの差としては、紙層中に恰も楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維が含有する様な有指感性を醸しだす観点から、100ml以上が好ましい。
針葉樹未晒クラフトパルプの白色度としては、見た目の楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維の含有を醸しだす観点から、23%以上32%以下が好ましい。
「カッパー価」とは、JIS−P−8211(2011)に準拠して測定される値であり、未晒パルプのリグニン量の指標となる。針葉樹未晒クラフトパルプのカッパー価としては、14以上18以下が好ましい。針葉樹未晒クラフトパルプのカッパー価が上記下限に満たない場合、見た目の未晒パルプの存在が薄れ和紙調の風合いが損なわれるおそれがある。また、上記カッパー価が上記上限を超える場合、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)の靭皮繊維の含有を強調できるものの、紙層中で他のパルプとの共存が得られ難くなり、未晒パルプの脱落や表出が生じ易くなり、見た目が損なわれ、包装紙や手提げ袋用途には不向きになるおそれがある。
(その他の原料パルプ)
上記原料パルプとしては、さらに必要に応じて、本件発明の目的である和紙調の風合いが損なわれない範囲で、古紙パルプや機械パルプ、非木材パルプなど、抄紙原料として一般的に使用されているものの1種類または2種類以上の原料パルプを混合して使用することができる。
[凝結剤]
当該片艶クラフト紙は、パルプ由来の無機粒子や微細なパルプ繊維の変動を抑えるために凝結剤を添加するのが好ましく、特にカチオン性高分子ポリマーを添加するのが好ましい。凝結剤としては、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ポリエチレンイミン変性体、2−(メタクロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド重合体、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体、ポリアミン重合物、アクリルアミドコポリマ等が挙げられる。これらの中では、リグニンを多く含有する針葉樹未晒クラフトパルプのアニオン性に対応する観点から、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体が好ましい。また、凝結剤の質量平均分子量としては、50万から500万の化合物を好適に用いることができる。
上記パルプスラリーにおける凝結剤のパルプ繊維に対する固形分における含有量の下限としては0.3kg/パルプtが好ましく、0.5kg/パルプtがより好ましい。また、上記パルプスラリーにおける凝結剤のパルプ繊維に対する含有量の上限としては、2.0kg/パルプtが好ましく、1.8kg/パルプtがより好ましい。上記凝結剤のパルプ繊維に対する含有量が上記範囲であることで、フロック地合いを避けると共に、針葉樹未晒クラフトパルプの適度な凝集を醸し出し、更に包装紙や手提げ袋用途における紙質強度を担保しやすくなる。
[その他の添加剤]
当該片艶クラフト紙の基紙においては、上記凝結剤以外の公知の製紙用添加剤が添加されていてもよい。このような内添剤としては、特に制限されず、種々の薬品を単独または組み合わせて用いることができる。例えば凝集剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、填料、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の製紙用薬品を用いることができる。これらの中で好適に使用できるものとしては、凝集剤;ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルガン樹脂などの内添乾燥紙力増強剤;ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などの内添湿潤紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等の内添サイズ剤;などを挙げることができる。
(ベック平滑度)
ベック平滑度は、JIS−P8119(1999)に準拠して測定した値である。ベック平滑度は、後述するパーカープリントサーフ平滑度と同様に空気の流通量から平滑性を求める装置であり、比較的広い面におけるマクロ的な平滑性を評価する。当該片艶クラフト紙においては、ベック平滑度により表面のいわゆるうねり性を評価できる。このように、上記パーカープリントサーフ平滑度と上記ベック平滑度との評価値の両者を所定の範囲に収めることで、微視的な面と或る程度広い面における片艶紙の表面平坦性と針葉樹未晒クラフトパルプを含有することによる和紙調の風合いを評価できる。
当該片艶クラフト紙の艶面側のベック平滑度の下限としては85秒であり、95秒が好ましい。上記艶面側のベック平滑度が85秒未満の場合、剛直な針葉樹未晒クラフトパルプの存在で表面平坦性が損なわれ、包装紙や手提げ袋に求められる印刷適性が損なわれるおそれがある。一方、上記上限としては、200秒が好ましく、180秒がより好ましい。上記艶面側のベック平滑度が200秒を超える場合、艶面の平坦性が過剰になり有指感性が劣り、本件発明が目的とする和紙調の風合いが損なわれる問題が生じるおそれがある。
当該片艶クラフト紙の非艶面側(裏面側)のベック平滑度の下限としては、5秒であり、7秒が好ましい。上記艶面側のベック平滑度が5秒未満の場合、剛直な針葉樹未晒クラフトパルプの表出や脱落が生じるおそれがある。一方、上記上限としては、20秒が好ましく、18秒がより好ましい。ヤンキードライヤーを用いた乾燥に於いて上記非艶面側のベック平滑度を20秒以上とするには多筒ドライヤーを組み合わせるなどの方策が必要であり、多筒ドライヤーを用いると艶面側の表面性も変化するため、結果として和紙調の風合いを損なうおそれがある。
上記艶面及び上記非艶面のベック平滑度差の下限としては、80秒であり、85秒がより好ましい。ベック平滑度差が80秒未満の場合、片艶紙クラフト紙としての風合いと共に和紙調の風合いが損なわれるおそれがある。
(パーカープリントサーフ平滑度)
後述の実施例で測定するパーカープリントサーフ平滑度(以下「PPS平滑度」ともいう。)は、JIS−P8151(2004)の付属書Aに準じて測定されるパーカープリントサーフ平滑度(μm)である。パーカープリントサーフ平滑度は、ベック平滑度と同様に空気の流通量から平滑性を求める装置であるが、測定ヘッドに圧力をかけて測定することにより、押圧下の平滑度を測定することができる。本件発明においては、測定圧力を0.5Mpa、ハードバッキングに設定して測定することで、所謂指感に近い感触の数値化として好適であり、その測定値は和紙調の凹凸性や平滑性をかなり正確に表していると考えられる。すなわち、パーカープリントサーフ平滑度が高い場合、当該片艶クラフト紙の測定面は和紙調の凹凸が生じており、感触的にも和紙調の凹凸の風合いを感じ取れる。一方、パーカープリントサーフ平滑度が低い場合、上記測定面は平坦で、当該片艶クラフト紙の表面へのインキの定着性に優れ、印刷カスレ等の問題が生じ難い。
当該片艶クラフト紙の艶面のパーカープリントサーフ平滑度の下限としては、1.6μmであり、2.2μmが好ましい。上記艶面のパーカープリントサーフ平滑度の上限としては、5.5μmであり、5.3μmがより好ましい。上記艶面のパーカープリントサーフ平滑度が上記範囲であることで、和紙調の凹凸の風合いを醸し出しながら適度なインキの定着性が得られ、印刷適性が良好になる。
当該片艶クラフト紙の非艶面の上記パーカープリントサーフ平滑度の下限としては、5.5μmであり、5.7μmが好ましい。上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度の上限としては、10.0μmであり、9.8μmが好ましい。上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度が上記範囲であることで、印刷適性を維持しつつ外観上のみならず感触上においても和紙調の凹凸を良好に表現することができる。
(ダート)
画像解析装置を用いて測定される当該片艶クラフト紙の0.05m以上のダートの総数の下限としては、1400個/mであり、1500個/mが好ましい。上記ダートの総数の上限としては、3000個/mであり、2800個/mが好ましい。また、当該片艶クラフト紙のダートの総面積の下限としては、100mm/mであり、90mm/mが好ましい。また、当該片艶クラフト紙のダートの総面積の上限としては、300mm/mであり、280mm/mが好ましい。本件発明者等の知見では、和紙調の外観と凹凸の風合いを確保するには、未漂白パルプ繊維の存在がクラフト紙表面に所定量必要であり、外観上の評価手法として画像解析装置を用いて測定した指標で、上記数値範囲とすることが、好ましいことを見出している。
(質量加重平均繊維長)
質量加重平均繊維長は、JIS−P8226−2(2011)に準拠して測定される。当該片艶クラフト紙の質量加重平均繊維長としては、1.6mm以上2.0mmが好ましい。上記質量加重平均繊維長が上記範囲であることで、寸法安定性が向上する。
(繊維配向比)
繊維配向比は、繊維の配向(配列)の度合いを示す尺度であり、パルプ繊維が抄紙機のワイヤー上に流出され、脱水、紙層が形成される過程で縦方向(抄紙機上のパルプ繊維の流れ方向)に並ぶ傾向のことである。繊維配向比は、数値が大きいほど配列の度合いが強いことを示す。本発明では超音波法を採用し、超音波伝播速度測定器を用いて縦方向の超音波伝播速度(VMD)と横方向の超音波伝播速度(VCD)を測定し、その比率(VMD/VCD)を繊維配向比として繊維配向のランダム性を評価している。吸湿や脱湿の際における繊維の膨潤や収縮は、繊維の横(CD)方向で行われるため、繊維配向比と水を吸った際の紙の横方向の寸法変化の度合いを表す横方向の水中伸度との関係は、繊維配向比が高いと横方向の水中伸度は大きく、繊維配向比が低いと横方向の水中伸度は小さく、両者は直接的に作用する。この繊維配向比はマシンでの抄紙条件によって決定され、マシン速度、繊維サスペンジョンジェットの流入速度とワイヤー速度の比(J/W比)等を調整することにより所望の繊維配向比を得ることができる適正化が挙げられる。
ここで、「縦方向」とは、抄紙方向(MD:Machine Direction)を意味し、「横方向」とは、上記縦方向に垂直な方向(CD:Cross Direction)を意味する。
当該片艶クラフト紙の超音波伝播速度測定器を用いて測定される繊維配向比としては、1.20以上1.50以下が好ましい。上記繊維配向比が上記範囲であることで、包装時の作業性及び強度をより良好にすることができる。
(片艶クラフト紙の比引張強度)
当該片艶クラフト紙のJIS−P8113(2006)に準拠した繊維の縦方向の比引張強度としては、0.048(kN/m)/(g/m)以上0.065(kN/m)/(g/m)以下が好ましく、上記縦方向と直交する横方向の比引張強度としては、0.037(kN/m)/(g/m)以上0.053(kN/m)/(g/m)以下が好ましい。当該片艶クラフト紙の上記比引張強度が上記範囲であることにより、当該片艶クラフト紙の主用途である、包装紙や手提げ用紙としての紙質強度をより向上させることができる。
(片艶クラフト紙の比引裂強度)
当該片艶クラフト紙のJIS−P8116(2000)に準拠した繊維の縦方向の比引裂強度としては、8.25(mN)/(g/m)以上8.93(mN)/(g/m)以下が好ましく、上記縦方向と直交する横方向の比引裂強度としては、9.93(mN)/(g/m)以上10.98(mN)/(g/m)以下が好ましい。当該片艶クラフト紙の上記比引裂強度が上記範囲であることにより、当該片艶クラフト紙の主用途である包装紙や手提げ袋の破袋や加工適性をより向上させることができる。
(片艶クラフト紙の白色度)
白色度は、JIS−P8148(2001)に準拠して測定される値である。当該片艶クラフト紙は、漂白パルプと未漂白パルプとのパルプ繊維が混在したクラフト紙表面を呈するため、外観上の白色度より低い測定値が得られるものの、和紙調の適度な白さを表現できることから、当該片艶クラフト紙の白色度としては、68%以上72%以下が好ましい。
(坪量)
当該片艶クラフト紙の坪量の下限としては、30g/mが好ましく、40g/mがより好ましい。上記坪量が30g/m未満では、包装紙や手提げ袋用紙としての紙質強度を満足できないおそれがある。上記上限としては、150g/mが好ましい。片艶クラフト紙の坪量が150g/mを超えると上記軽量化の観点から好ましくない。
当該片艶クラフト紙によれば、和紙が備える外観と自然な凹凸の風合いを醸し出すとともに、包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙を得ることができる。
<片艶クラフト紙の製造方法>
当該片艶クラフト紙の製造方法は、広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有する原料パルプを抄紙する工程と、上記抄紙工程で抄紙された紙の片面をヤンキードライヤーにより乾燥して艶面を形成する工程とを備える。
上記抄紙工程では、パルプスラリーを脱水(抄紙)する。当該片艶クラフト紙は、未哂針葉樹クラフトパルプと針葉樹哂クラフトパルプ、広葉樹哂クラフトパルプを出発原料と
する。上述したように、上記原料パルプにおける上記広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量が95質量%以上である。
次に、混合された紙料は、抄紙機のヘッドボックスに送られ、ヘッドボックスからワイヤーに噴射されて抄速100から800m/分で抄紙される。抄紙機としては例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、キヤツプフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できるが、特に地合が悪化しやすいツインワイヤー抄紙機でも、本発明の効果を有意に発揮させることができる。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマー等が挙げられる。これらの抄紙機の中でもギャップフォーマー型抄紙機、より好ましくはオントップ型ギャップフォーマー抄紙機が好ましい。当該片艶クラフト紙の製造方法においては、好適な地模様を形成させながら、和紙調の風合いを醸し出す手段として、好適な地模様の凹凸を形成する観点からギャップフォーマーの形式としては、オントップ型のギャップフォーマーが更には、J/W比が100以上で抄紙することが好ましい。
次に、上記パルプスラリーを脱水して得られるパルプ(抄紙したパルプ)の一方の面側をヤンキードライヤーによって乾燥する。本件発明の目的とする和紙調の凹凸の風合いは、ヤンキードライヤーでて乾燥処理することが好ましく、ヤンキードライヤーでの乾燥において一方の面と他方の面の平坦性を変えることが可能になり、和紙調を醸し出す凹凸の形成が可能になる。当該片艶クラフト紙は、ヤンキードライヤーとの接触面が艶面として形成される。より詳細には、ヤンキードライヤーにいわゆる毛布にて湿紙を押し当て、ヤンキードライヤーのシリンダー表面の鏡面を湿紙に写し取ることで片艶クラフト紙の艶面が得られる。ヤンキードライヤーでの乾燥処理においては、ドライヤーの表面温度が100℃以上150℃以下の範囲で、ヤンキードライヤー鏡面に圧接される。また、ヤンキードライヤーとの非接触面が非艶面として形成される。上記非艶面側においては、毛布の素材や毛布をヤンキードライヤーに押し当てるタッチロールの加圧加減でベック平滑度及びパーカープリントサーフ平滑度を調整する。
上述の通り、得られる片艶クラフト紙の艶面のベック平滑度が85秒以上200秒以下であり、上記非艶面の上記ベック平滑度が、5秒以上20秒以下であり、かつ上記艶面及び上記非艶面の平滑度差が80秒以上である。また、上記片艶クラフト紙の上記艶面のパーカープリントサーフ平滑度が、2.0μm以上5.5μm以下であり、上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度が、5.5μm以上10.0μm以下である。さらに、画像解析装置を用いて測定される上記片艶クラフト紙の0.05m以上のダートの総数が、1500個/m以上3000個/m以下であり、かつダートの総面積が100mm/m以上300mm/m以下である。
当該片艶クラフト紙の製造方法によれば、多額の設備投資や複雑な工程を必要とせず、既存の設備を用いて、和紙が備えるような外観と自然な凹凸の風合いを醸し出すとともに、包装時の作業性及び強度が良好な片艶クラフト紙を製造することができる。
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の物性値の測定方法は以下のとおりである。
[各パルプのフリーネス(mL)]
広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプをJIS−P8220−1(2012)のパルプの離解方法に準拠して離解することによって離解パルプとし、この離解パルプをJIS−P8121−2(2012)のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定した。
[未哂針葉樹クラフトパルプのカッパー価]
未哂針葉樹クラフトパルプのカッパー価は、JIS−P−8211(2011)に準拠して測定した。
[ベック平滑度(秒)]
JIS−P8119(1998)に記載の「ベック平滑度の測定方法」に準拠して測定した。
[パーカープリントサーフ平滑度(μm)]
熊谷理機工業(株)製のPPSラフネス測定機を用い、ソフトバッキング、クランプ圧0.5MPaにて、JIS−P8151(2004)に記載の「パーカープリントサーフ平滑度の測定方法」に準拠して測定した。
[坪量(g/m)]
JIS−P8142(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
[ダート]
ダートの個数及び総面積は、野村商事製画像解析システムであるスキャンマーク800を用いて計測した。
[繊維配向比]
東洋精機製作所製光学式配向性試験機を用いて繊維配向比を測定した。
[比引張強度]
JIS−P8113(2006)に準拠して測定した。
[比引裂強度]
JIS−P8116(2000)に準拠して測定した。
[白色度]
JIS−P8148(2001)に準拠して測定した。
[実施例1]
(1)広葉樹哂クラフトパルプを58質量%、針葉樹哂クラフトパルプを38質量%及び針葉樹未哂クラフトパルプを4質量%含有するパルプスラリーを作製する。なお、針葉樹未晒クラフトパルプは、3.5%の濃度で叩解した。
(2)100部のパルプスラリー中に、凝結剤としてのジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体[質量平均分子量200万](ソマール社製「A2400」):1.4kg/パルプtと、その他、ロジン系サイズ剤、乾燥紙力剤(ポリアクリルアミド(ハリマ社製RP236Y))、澱粉、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、染料等とを適宜添加した。
(3)このパルプスラリーをワイヤーパートが長網抄紙機を用いて抄紙した。
(4)次に、ヤンキードライヤーを用いてワイヤー面を艶面(裏面)とし、実施例1の片艶クラフト紙を得た。
(5)実施例1の片艶クラフト紙の物性値は以下のとおりである。
(原料パルプ)
広葉樹哂クラフトパルプ:フリーネス470mL 白色度85%
針葉樹哂クラフトパルプ:フリーネス700mL 白色度78%
針葉樹未哂クラフトパルプ:フリーネス750mL 白色度30%
カッパー価16
(片艶クラフト紙)
坪量:120g/m
質量加重平均繊維長:1.74(mm)
繊維配向比:1.27
ベック平滑度:艶面(裏面)103秒、非艶面(表面)12秒、平滑度差91秒
パーカープリントサーフ平滑度:艶面(裏面)3.8μm、非艶面(表面)8.4μm
ダート:0.05m以上の総数1623(個/m)、総面積122(mm/m
比引張強度:縦方向0.055(mN)/(g/m
:横方向0.039(mN)/(g/m
比引裂強度:縦方向8.82(mN)/(g/m
:横方向10.65(mN)/(g/m
白色度:70.4%
[実施例2〜実施例18及び比較例1〜比較例6]
原料の種類、含有量及び物性値を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜実施例18及び比較1〜比較例6の片艶クラフト紙を得た。
また、凝結剤としては、以下の原料を用いた。
(A)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体[質量平均分子量30万]:ハイモ社製「ハイマックスSC−100」
(B)ポリエチレンイミン変性体[質量平均分子量50万]:ハイモ社製「ハイマックスSC−924」
(C)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体[質量平均分子量200万]:ソマール社製「A2400」
(D)ポリアミン重合物[質量平均分子量500万]:ハイモ社製「ハイモロックFR740」
(E)アクリルアミドコポリマ[質量平均分子量800万]:ナルコ社製「ナルコ61610」
なお、以下の表1中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
Figure 0006967465
[評価]
(官能評価)
得られた各片艶クラフト紙(サイズ210×297mm:A4)に対して、下記方法にて、実施例及び比較例の和紙調及び凹凸の風合いについて官能評価を行った。
和紙調を目視により判定し、和紙が有する凹凸の風合いを感触により判定した。
評価基準は以下のとおりとした。成人男女それぞれ10人による官能評価を下記評価基準で判断した。評価結果を下記表2に示す。
(1)和紙調の外観評価:艶面
◎:外観上、和紙と遜色なく、和紙と同等と判断できる。
○:和紙調の模様が表現されている。
△:和紙調の模様が十分に表現されていない。
×:外観上、和紙調ではない。
(2)風合い:艶面)
◎:手触り、表面性が和紙と同等である。
○:有指感性を有し、和紙に近い風合いである。
△:有指感性を有するが、和紙の風合いが十分ではない。
×:和紙の風合いが感じられない。
[評価]
(包装作業性評価)
自動製袋機(型番:136T+504TH、ニューロング工業(株)製)を使用し、片艶クラフト紙から角底袋を加工し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(1)加工速度性
◎:加工状態が全体的に均一で、従来の片艶クラフト紙と同等の速度で加工できる。
○:加工状態がやや劣るものの、従来の片艶クラフト紙と同等の速度で加工できる。
△:加工状態が低下する傾向が見られるため従来の片艶クラフト紙と比べ、加工速度を低下させる必要がある。糊付け部分に波打ちが認められる。
×:加工状態が均一でなく、加工速度を大幅に落としても改善が見られない。
(2)製袋適性
前述の自動製袋機を使用し、片艶クラフト紙から角底袋を加工して、角底袋の折り部での角割れの状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の片艶クラフト紙以下である。
○:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の片艶クラフト紙と同等である。
△:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の片艶クラフト紙と同等だが1袋に複数箇所角割れが見られる場合、又は角割れの発生頻度が従来の片艶クラフト紙の倍未満で1袋の程度が軽い。
×:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の片艶クラフト紙の倍以上である。
(3)角底袋製袋性
前述の自動製袋機を使用し、片艶クラフト紙から角底袋を製造し、得られた角底袋を以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:得られた角底袋は適度な腰と柔軟性を有すると共に貼合性が良く、被包装物の包装作業を非常にスムーズに行うことができる。
○:被包装物と角底袋内面との良好な滑り性が得られて、包装作業をスムーズに行うことができる。
×:角底袋として、適度な腰と柔軟性に欠け、包装作業をスムーズに行うことができない。
Figure 0006967465
上記表2に示されるように、当該片艶クラフト紙の実施例1〜実施例18は、目視による和紙調の外観評価及び感触による風合い評価の双方において良好であることが示された。また、実施例1〜実施例18は、包装作業性評価である加工速度性、製袋適性及び角底袋製袋性においても良好であった。一方、パルプにおける広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量、ベック平滑度、パーカープリントサーフ平滑度、ダートの総数及びダートの総面積のうちのいずれかが当該当該片艶クラフト紙における要件を具備しない比較例1〜比較例6は、官能評価である和紙調の外観評価及び風合い評価のいずれか並びに包装作業性評価である加工速度性、製袋適性及び角底袋製袋性のいずれかにおいて劣っていた。また、実施例1〜実施例18においては、全て比引張強度及び比引裂強度が良好な値を示し、強度も優れていることが示された。
本発明の片艶クラフト紙は、和紙調の風合いを有する模様加工紙として和菓子等贈答品の包装用紙、手提げ袋等に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. パルプ繊維を主成分とし、
    一方の面が艶面、他方の面が非艶面であり、
    上記パルプが、広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有し、上記パルプにおける広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量が95質量%以上であり、
    上記艶面のJIS−P8119(1998)に準拠して測定されるベック平滑度が85秒以上200秒以下であり、上記非艶面の上記ベック平滑度が、5秒以上20秒以下であり、かつ上記艶面及び上記非艶面の平滑度差が80秒以上であり、
    上記艶面のJIS−8151(2004)に準拠して測定されるパーカープリントサーフ平滑度が、1.6μm以上5.5μm以下であり、上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度が5.5μm以上10.0μm以下であり、
    画像解析装置を用いて測定される0.05m以上のダートの総数が、1500個/m以上3000個/m以下であり、かつダートの総面積が100mm/m以上300mm/m以下である片艶クラフト紙。
  2. 上記広葉樹哂クラフトパルプのフリーネスが、500ml以下であり、
    上記針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプのフリーネスが、660cml以上であり、
    上記広葉樹哂クラフトパルプの含有量と、上記針葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹未哂クラフトパルプの合計含有量とが、質量比で55:45〜65:35であり、
    上記針葉樹哂クラフトパルプの含有量と、上記針葉樹未哂クラフトパルプの含有量とが、質量比で、87.5:12.5〜92.9:7.1である請求項1に記載の片艶クラフト紙。
  3. 上記広葉樹洒クラフトパルプと上記針葉樹クラフトパルプとのフリーネスの差が、100ml以上である請求項1又は請求項2に記載の片艶クラフト紙。
  4. JIS−P8226−2(2011)に準拠して測定される質量加重平均繊維長が1.6mm以上2.0mm以下であり、
    超音波伝播速度測定器を用いて測定される繊維配向比が1.20以上1.50以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の片艶クラフト紙。
  5. 広葉樹哂クラフトパルプ、針葉樹哂クラフトパルプ及び針葉樹未哂クラフトパルプを含有する原料パルプを抄紙する工程と、
    上記抄紙工程で抄紙された紙の片面をヤンキードライヤーにより乾燥して艶面を形成する工程と
    を備え、
    上記原料パルプにおける上記広葉樹哂クラフトパルプ及び上記針葉樹哂クラフトパルプの合計含有量が95質量%以上であり、
    上記艶面のJIS−P8119(1998)に準拠して測定されるベック平滑度が85秒以上200秒以下であり、上記非艶面の上記ベック平滑度が、5秒以上20秒以下であり、かつ上記艶面及び上記非艶面の平滑度差が80秒以上であり、
    上記艶面のJIS−8151(2004)に準拠して測定されるパーカープリントサーフ平滑度が、1.6μm以上5.5μm以下であり、上記非艶面のパーカープリントサーフ平滑度が、5.5μm以上10.0μm以下であり、
    画像解析装置を用いて測定される0.05m以上のダートの総数が、1500個/m以上3000個/m以下であり、かつダートの総面積が100mm/m以上300mm/m以下である片艶クラフト紙の製造方法。
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