JP5986769B2 - ガラス合紙及び積層体 - Google Patents
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パルプ繊維を主成分とする原料を抄紙して得られるガラス合紙であって、
長網方式による抄紙後にカレンダーによる平坦化処理が施され、
緊度が0.6g/cm3以上1.2g/cm3以下であることを特徴とする。
当該ガラス合紙は、パルプ繊維を主原料とし、長網方式で抄紙後にカレンダーによる平坦化処理が施されて製造され、緊度(密度)が0.6g/cm3以上1.2g/cm3以下である。当該ガラス合紙は、長網方式で抄紙することによって、ワイヤー非接触面を外面とするカールを有する。そのため、当該ガラス合紙は、カールの軸方向への直立性が良好、すなわち見かけの剛性が高い。また、湿度変化による形状変化への耐性を有し、カールの安定性が高い。
上記パルプ繊維としては、特に限定されず、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、古紙パルプ(DIP)、機械パルプ(TMP)等を1種類又は2種類以上を混合して用いることができる。
当該ガラス合紙においては、両面に炭酸カルシウム、クレー等の顔料を主成分とする塗工層を設けることができる。このような塗工層を設けることによって、当該ガラス合紙の表面に存在する樹脂成分がガラスに転移することを防止して、当該ガラス合紙をガラス板間に挿入した際にガラスが汚染されることを抑制することができる。
当該ガラス合紙の坪量としては、30g/m2以上70g/m2以下が好ましく、40g/m2以上55g/m2以下がより好ましい。坪量が上記範囲未満の場合、当該ガラス合紙において、十分な直立性が発揮されないおそれがあるほか、緩衝性が低下するおそれがある。逆に、坪量が上記範囲を超える場合、当該ガラス合紙において、ハンドリング性が低下するおそれがあるほか、生産コストが高くなるおそれがある。
当該ガラス合紙の緊度は、0.6g/cm3以上1.2g/cm3以下であるが、0.7g/cm3以上1.1g/cm3以下とすることがより好ましい。緊度が上記範囲未満の場合、繊維間の絡み合いが低減され、湿度変化によりカールが変化しやすくなるおそれがある。逆に、緊度が上記範囲を超える場合、当該ガラス合紙の繊維間結合が密になりやすく、水分を少し吸収しただけでもカールが変化する可能性があり、カールの安定性が低下しやすくなるおそれがあるだけでなく、当該ガラス合紙をガラス板間に挿入した際に、地合ムラ等によってガラスに傷が発生しやすくなるおそれがある。
当該ガラス合紙においては、抄紙方向を一辺とする300mm四方の正方形に切断した場合の四隅のカール高さの平均が5mm以上20mm以下であることが好ましく、8mm以上15mm以下であることがより好ましい。当該ガラス合紙は、カール高さを上記範囲に制御することによって、直立性と湿度変化に対するカールの安定性とを両立させることができる。カール高さが上記範囲未満の場合、当該ガラス合紙が十分な直立性を発揮しないおそれがある。逆に、カール高さが上記範囲を超える場合、カール度合いが強くなりすぎて、当該ガラス合紙のカールの安定性が低下するおそれがある。
当該ガラス合紙の縦目方向の引張強度と横目方向の引張強度の比(Y/T比)としては、0.40以上0.85以下が好ましく、0.50以上0.70以下がより好ましい。Y/T比が上記範囲未満の場合、当該ガラス合紙において、カール度合いが強くなりすぎて、当該ガラス合紙の湿度に対するカールの安定性が低下するおそれがある。逆に、Y/T比が上記範囲を超える場合、当該ガラス合紙において、抄紙方向と垂直方向を軸方向とするカールが発生しやすくなって、他の方法によりカールを付与したとしても、水分の吸放湿によりカールが変化しやすく、湿度に対するカールの安定性が低下するおそれがある。
当該ガラス合紙においては、裏面のベック平滑度に対する表面のベック平滑度を1.2倍以上40倍以下とすることが好ましく、2倍以上35倍以下とすることがより好ましく、5倍以上30倍以下とすることがさらに好ましく、10倍以上30倍以下とすることが特に好ましい。このように表面のベック平滑度を裏面よりも高めパルプ繊維同士の接触面積を増加させることによって、空気中の水分と表面側に存在するパルプ繊維とが接触する面積が小さくなり、当該ガラス合紙において、裏面に比較して表面が吸湿しにくくなる。その結果、当該ガラス合紙は表面を内側にしたカールが安定的に発現しやすくなる。また、表面と裏面との平滑度の比を上記範囲とすることによって、好ましいカール度合いを達成でき、当該ガラス合紙の直立性及びハンドリング性をより高めることができる。上記平滑度比が上記範囲未満の場合、十分なカール形状が発現されにくく、当該ガラス合紙の直立性が低下するおそれがある。逆に、上記平滑度比が上記範囲を超える場合、カール度合いが強くなりすぎて、当該ガラス合紙のカールの湿度に対する安定性が低下するおそれがある。
当該ガラス合紙においては、密度を上記範囲とすることに加え、水分率を2%以上8%以下とすることが好ましく、3%以上7%以下とすることがより好ましい。当該ガラス合紙の密度及び水分率を上記範囲に調整することによって、当該ガラス合紙において、適度なカール度合いを達成できるほか、静電気の発生の抑制及び適度な通気性を発現させることができるため、ハンドリング性が高まる。水分率が上記範囲未満の場合、当該ガラス合紙において、カールが調整しにくくなるおそれや、静電気が生じやすくなるおそれがある。また、通気性が高くなってバキューム装置を用いる際のハンドリング性が低下するおそれがある。逆に、水分率が上記範囲を超える場合、水分が多く含むことによってガラス板と当該ガラス合紙との密着性が高まり、ハンドリング性が低下するおそれがある。
当該ガラス合紙の縦目方向の剛度としては、20以上80以下が好ましく、25以上70以下がより好ましい。当該ガラス合紙の縦目方向の剛度を上記範囲とすることによって、より優れた直立性を発揮させることができ、当該ガラス合紙のハンドリング性が高まる。剛度が上記範囲未満の場合、当該ガラス合紙の直立性及びハンドリング性が低下するおそれがある。逆に、剛度が上記範囲を超える場合、当該ガラス合紙の巻き取りがしにくくなるなど、ハンドリング性が低下するおそれがある。
当該ガラス合紙は、当該ガラス合紙をガラス板間に挿入した際におけるガラスへの傷付けを防止するために、表面の粗さが一定範囲内にあることが好ましい。具体的には、PPS TESTER(型番:SE−115 ローレンツェンアンドベットレー社製)を用い、ソフトバッキング、クランプ圧1MPaにて、JIS−P8151に準じて測定した値が1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。表面の粗さが上記範囲を超える場合、当該ガラス合紙をガラス板間に挿入した際に、ガラス板に傷を付けやすくなるおそれがある。逆に、表面の粗さが上記範囲未満の場合、当該ガラス合紙の製造が困難になるおそれがある。
本発明の積層体は、ガラス板と、当該ガラス合紙とが交互に積層されてなる。上記ガラス板としては、液晶テレビやプラズマテレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板等を挙げることができる。このガラス基板としては、一辺が1,500mm以上の大判のものを用いることもできる。当該積層体によれば、ガラス板が当該ガラス合紙により保護されており、ガラス板及びガラス合紙の挿入や取り出し等の作業性に優れる。
ガラス合紙をJIS−P8220(1998)に記載の方法で離解して離解パルプとし、この離解パルプをJIS−P8121に記載の「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定した。
ガラス合紙をJIS−P8220(1998)に記載の方法で離解して離解パルプとし、FiberLab.(Kajaani社)を用いて測定した。
JIS−P8124(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した。
JIS−P8118(1998)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
ガラス合紙を抄紙方向を一辺とする300mm四方の正方形に切断し、温度23℃、湿度50%の環境下に1時間放置した。この後、平らな面(板)上に裏面が接触するように切断したガラス合紙を置いた。すなわち、表面が上になるようにガラス合紙を置き、4隅の板表面からの高さを測定し、試験体10点について平均値をとった。
JIS−P8113(2006)に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に準拠して縦目方向及び横目方向の引張強度を測定し、Y/T比を以下の式にて求めた。
Y/T比=引張強さ(横目方向)/引張強さ(縦目方向)
バキューム装置を用いて、ガラス板の間にガラス合紙を挿入する作業を20枚のガラス合紙において行い、以下の基準にて評価した。
◎:ガラス板間にガラス合紙を挿入後、その直立が維持されているものが9割以上である。
○:ガラス板間にガラス合紙を挿入後、その直立が維持されているものが7割以上9割未満である。
×:ガラス板間にガラス合紙を挿入後、その直立が維持されているものが7割未満である。
上記カール高さ試験に引き続いて、ガラス合紙を温度23℃、湿度65%の環境に1時間放置した後のカールの変形度合を以下の基準にて評価した。
◎:カールの変形が全くみられない。
○:カールの変形がほとんどみられない。
△:カールの変形が若干認められる。
×:カールが大きく変形し、安定性が不十分である。
NBKP及びLBKPを配合したパルプスラリーに、サイズ剤としてけん化ロジンを3kg/t、及び硫酸バンドを3kg/t添加し、原料スラリーを得た。なお、用いたNBKPとLBKPとの配合比は10:90である。また、抄紙後のガラス合紙を離解して得られた離解パルプにおける繊維長1.2mm未満の短繊維の含有率が75質量%となるように原料パルプを叩解した。
原料パルプのNBKPとLBKPの割合を表1のとおり変更した以外の条件は実施例1と同様にして、実施例2〜5のガラス合紙を製造した。
原料パルプのNBKPとLBKPの割合と、カレンダー処理における線圧を調整して緊度を表1に示す値となるようにしたこと以外の条件は実施例1と同様にして、実施例6〜9、14〜17及び比較例2、3のガラス合紙を製造した。
ワイヤーでの脱水方法(フォイル本数、真空度等)を調整して、短繊維の表面側含有率に対する裏面側含有率の比を表1に示す値となるようにしたこと以外の条件は実施例1と同様にして、実施例10〜13のガラス合紙を製造した。
ドライヤーの蒸気圧を変更して表裏の乾燥バランスを調整したこと以外の条件は実施例1と同様にして、実施例18〜22のガラス合紙を製造した。
J/W比(噴出し原料とワイヤーとの速度比)を調整して、Y/T比を表1に示す値となるようにしたこと以外の条件は実施例1と同様にして、実施例23、24のガラス合紙を製造した。
原料パルプの叩解方法(カッティング、粘状等)を調整して、離解パルプのフリーネス及びフィブリル化率をそれぞれ表1に示す値となるようにしたこと以外の条件は実施例1と同様にして、実施例25、26のガラス合紙を製造した。
原料パルプのNBKPとLBKPの割合と、抄紙後にカレンダー処理を施さなかったこと以外の条件は実施例1と同様にして、比較例1のガラス合紙を製造した。
Claims (3)
- パルプ繊維を主成分とする原料を抄紙して得られるガラス合紙であって、
ガラス合紙を離解した離解パルプが、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含み、NBKPとLBKPとの質量比が2:98以上20:80以下であり、
上記離解パルプが、繊維長が1.2mm未満の短繊維を含有し、この短繊維の含有率が40質量%以上であり、
上記離解パルプのフリーネスが400ml以上650ml以下、フィブリル化率が2.5%以上4.5%以下であり、
緊度が0.6g/cm3以上1.2g/cm3以下であり、
表面粗さが1.0μm以上10.0μm以下であり、
短繊維の表面側における含有率に対する裏面側における含有率の比が0.61以上0.92以下であり、
表面側を外側とするカールを有することを特徴とするガラス合紙。 - 抄紙方向を一辺とする300mm四方の正方形に切断した場合の四隅の平均カール高さが5mm以上20mm以下であり、
縦目方向の引張強度に対する横目方向の引張強度の比が0.40以上0.85以下である請求項1に記載のガラス合紙。 - ガラス板と、請求項1又は請求項2に記載のガラス合紙とが交互に積層されてなる積層体。
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