JP7105547B2 - 上質系非塗工紙 - Google Patents
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Description
特許文献1は、嵩の出やすい機械パルプを使用する技術に関する発明であった。また、特許文献2は、古紙パルプを含有する中質系の書籍用紙を想定した技術であり、古紙の使用による白色度の低下の懸念などがあり、また、読書時の目の疲れにくさ等の課題は認識されていなかった。
特許文献3は、改装性には着目しているものの古紙を含有する中質書籍用紙を想定した技術であり、さらに、インクジェット印刷適性や目の疲れにくさなどの課題を有していなかった。
特許文献4は、製造方法が明らかではなく、また、古紙を含有する紙に関する技術であった。
(1)パルプ100重量%のうち化学パルプが100重量%であり、原紙上にクリア塗工層を有する、密度が0.75g/cm3未満の上質系非塗工紙において、クリア塗工層がラテックスと澱粉を含有し、前記ラテックスと澱粉の比率がラテックス:澱粉=10:90~99:1である上質系非塗工紙。
(2)パルプ100重量%に対し、嵩高剤を1.0重量%以下含有する(1)記載の上質系非塗工紙。
(3)パルプ100重量%に対し、内添サイズ剤を0.01重量%以上3.0重量%以下含有する、(1)または(2)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(4)ステキヒトサイズ度が1秒以上100秒以下である(1)~(3)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(5)JIS P8143に準じて測定した横(CD)方向の剛度(クラーク式)が、10以上である(1)~(4)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(6)JIS P8143に準じて測定した縦(MD)方向の剛度(クラーク式)が、40以上である(1)~(5)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(7)JIS P8150による紫外線を含む光源によるL*a*b*値がそれぞれ、L*値が90~98、a*値が―5~0、b*値が10~15である、(1)~(6)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(8)インクジェットおよび/またはオフセット用印刷用紙である(1)~(7)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(9)書籍用紙である(1)~(8)のいずれかに記載の上質系非塗工紙
(10)澱粉とラテックスを混合する工程と、ゲートロールコーターによって片面0.1g/m2以上3.0g/m2以下のクリア塗工層を設ける工程と、カレンダー処理を施す工程を有する、(1)~(9)のいずれかに記載の上質系非塗工紙の製造方法。
本発明に用いる紙料は、パルプ100重量%に対し、化学パルプが100重量%である。使用するパルプ原料としては、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、印刷用紙の抄紙原料として一般的に使用される化学パルプを好適に使用することができ、晒、未晒のパルプを使用することができ、適宜、これらの1種類または2種類以上を配合して使用されるが、白色度の点から、漂白工程を経た晒化学パルプを使用することが好ましい。本発明の上質系非塗工紙は、化学パルプ100重量%から成るため、白色度や耐色性に優れる。また、化学パルプは古紙パルプや機械パルプと比較して白色度が高いため、色相調節のための着色剤を添加した際の発色が良い。
本発明においては、上記のように調成された紙料が適宜希釈され、必要に応じてスクリーンやクリーナーで紙料から異物を除去した後に、抄紙機のヘッドボックスから抄紙ワイヤー上に噴射される。本発明は種々の抄紙機、例えば長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などによって製造される。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。抄紙後のプレス線圧は、本発明の密度となる範囲内で適宜用いられるが、本発明の嵩高効果を得るためにはプレス線圧は低い事か好ましい。
また、抄紙法は、中性抄紙でも酸性抄紙でもよいが、中性抄紙であることが好ましい。具体的には、本発明においては、抄紙時の紙料pHが5.0~9.0であることが好ましく、6.0~8.0であることがより好ましい。
本発明においては、表面強度向上や耐水性付与、印刷適性などを付与するために、前記で得られた原紙に表面処理液を塗工し、クリア塗工層を設けてもよい。表面処理液に使用する接着剤の種類は特に限定しないが、生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化したタピオカ澱粉を原料として製紙工場内で熱化学変性あるいは酵素変性によって生成される自家変性澱粉などの澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの変性澱粉を含むのが好ましい。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、セルロースナノファイバーなどのセルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、ラテックス、スチレン-ブタジエン系共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステルなどを併用することも可能である。前記表面処理液には、表面強度と小口研磨時のくっつきを防止する点から、少なくともラテックスを含有することが好ましく、さらに好ましくは、スチレン―ブタジエン系ラテックス(SBR)が好ましい。前記ラテックスの光学相関法で測定した平均粒子径は、70nm以上、200nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは75nm以上、150nm以下である。200nmより平均粒子径が大きいラテックスを使用すると、得られた紙の表面強度が低くなってしまう恐れがある。また、使用するラテックスのガラス転移温度(Tg)は、表面強度と加熱ロールでのべたつきを両立する観点から、-50~10℃が好ましく、更に好ましくは-30~5℃である。本発明のラテックスの平均粒子径及びTgは、それぞれ光学相関法、動的光散乱法などによって測定することができる。
小口面のくっつき防止効果に関するメカニズムは明らかではないが、以下のような仮説が考えられる。澱粉とラテックスを混合した際の研磨時の小口面くっつき防止効果は、澱粉の保水性や、ラテックスと澱粉の吸湿性の差に依存している可能性が考えられる。澱粉は固形分濃度が高いとゲル化を起こしやすい性質があり、乾燥過程において塗工層中でゲル化が発生していると考えられる。澱粉を多く含むような保水性の高い表面処理液を使用した場合、塗工から乾燥までの工程間での原紙への表面処理液の浸透が少なく、紙のごく表面にしか表面処理液が存在しない状態となる。そのため、紙層内部の繊維は表面処理剤によってコーティングされていないため毛羽立ちが発生しやすく、より繊維が絡みやすい状態となってしまう。
また、小口面の研磨に供される書籍はいずれも、書店の店頭に長く陳列されたものであり、その間に吸湿が起こっていると想定される。そのため、より吸湿性の高い澱粉を多く使用した場合、水分を含んだクリア塗工層が軟化し、研磨時のねっぱりが発生し易い状態となっていると想定される。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P 8124に準じて測定した坪量が40g/m2以上150g/m2以下が好ましく、より好ましくは45g/m2以上140g/m2以下である。本発明の技術は、坪量が低くても高い剛度が得られるため、特に坪量の低い紙に好適である。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P 8118に準じて測定した紙厚(50kPa)が、90μm以上である。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P 8118に準じて測定した紙の密度が、0.75g/cm3未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.70g/m3以下である。紙の密度は、低ければ低いほど本発明の断裁時の小口面のくっつきが少なくなるため下限は特に設けないが、書籍用紙に求められる平滑性を維持するためには、0.50g/cm3より高い事が好ましい。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS-P8143に準じて測定した剛度(クラーク式)が、縦(MD:マシン流れ)方向の剛度が40以上210以下が好ましく、さらに好ましくは50以上200以下である。また、横(CD:マシン幅)方向の剛度は10以上100以下が好ましく、さらに好ましくは15以上90以下である。剛度が前記範囲より低い場合、文庫本としたときに紙が柔らかすぎたり、静電気でページ同士が張りついてしまうため、めくりにくくなってしまったり、平版印刷や電子写真方式での印刷時に重送が発生してしまう事がある。一方、剛度が前記範囲より高い場合、本の見開き時に、ページ両端の紙がそろいにくく、さらに、紙が立ちあがってしまうため読みにくい。また、CD方向の剛度が10より低いと、本を開いた時に手肉感がなくページがへたってしまうため、本を開いた状態で保持しにくく、MD方向の剛度が40より低いと印刷時の走行性が悪化する恐れがある。
本発明の上質系非塗工紙は、ISO2471に準じて測定したISO不透明度が、80以上であることが好ましく、さらに好ましくは85以上である。ISO不透明度が80未満であると、印刷時に裏抜けが発生し、製本した際に読みにくい本になってしまう。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P8150による紫外線を含む光源によるL*a*b*値がそれぞれ、L*90以上98以下、a*-5以上0以下、b*10以上15以下であることが好ましく、より好ましくはL*92以上97以下、a*-3以上-1以下、b*11以上14以下である。上記範囲であると、クリーム系で、目に優しい自然な風合い上質系塗工紙を得ることができる。また、書籍用紙として利用した際に、長時間読書をしていても目が疲れにくい書籍用紙を得ることができる。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P8155に準じて測定したステキヒトサイズ度が100秒以下であることが好ましく、さらに好ましくは5秒以上80以下である。ステキヒトサイズ度が前記範囲であると、オフセット印刷時のブラン離れとインクジェット印刷時の吸液性を両立することができるため好ましい。
紙質測定方法
・坪量:JIS P 8124に準じて測定した。
・紙厚、密度: JIS P 8118に準じて測定した。
・灰分: ISO1762-1974に準じて測定した。
・ISO不透明度: ISO2471に準じて測定した。
・ISO白色度:JIS P8148に準じて、村上色彩(株)製色差計CMS-35SPXにて測定した。
・色相:JIS P8150に準じて紫外線を含む光源で測定した。
・王研式平滑度:JIS P 8155に準じて測定した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8155に準じて測定した。
・剛度(クラーク式):JIS-P8143に準じて縦方向の剛度を測定した。
手肉感の評価方法
上質系非塗工紙サンプルをA6判(文庫本サイズ)で200枚、ソフトカバー、無線とじで製本サンプルを作成した。左手で閉じ部を保持し、右手で紙を20回さばいた際の紙の張り(手肉感)について、張りがなく紙がへたってしまいうまくさばけないものを「×」、張りはややないが問題なくページをさばけるものを「△」、張りがありさばいている途中に各ページがへたらないものを「○」として手肉感を評価した。
改装性の評価方法
上質系非塗工紙サンプルをA6判(文庫本サイズ)で200枚、ソフトカバー、無線とじで製本サンプルを作成した。ベルト研磨機(NIPPO社製)に製本サンプルを4冊セットし標準使用法に従い小口面の研磨を往復2回行った。小口面を研磨した製本サンプルについて、本を開くと複数ページが研磨部で強くくっついてほぐれにくいものを「×」、本を開くと複数ページが研磨部でくっついているがほぐれ易いものを「△」、本を開くと研磨部のくっつきがほぐれるもの、あるいは研磨部にくっつきのないものを「○」として小口面くっつきを評価した。
目の疲れの評価方法
A4に断裁した紙に、レーザープリンタで10pt 明朝体 黒で4000字の文章を印刷し、3回読んだ際の目の疲れ具合を評価した。紙と字コントラストが強く目が疲れやすいものを「×」、目が疲れにくいものを「○」とした。
マシンの汚れの評価方法
製造時のマシンの汚れ具合を確認し、マシンに汚れがでたものを「×」、汚れがでなかったものを「○」とした。
LBKP90部、NBKP10部を混合したパルプスラリーに、炭酸カルシウム、サイズ剤がそれぞれパルプ100重量%に対し、38重量%、0.5重量%、0.08重量%となるように添加し、紙料を調成した。その後、上記紙料をヘッドボックスからツインワイヤー型の抄紙ワイヤー上に紙料を噴出して抄紙し、プレスパートで搾水、プレドライヤーで乾燥し、抄紙速度650m/minで原紙を抄造した。得られた原紙に、バインダーとして酸化澱粉とスチレン-ブタジエン系ラテックス及び水を、酸化澱粉:スチレン-ブタジエン系ラテックス(A&L社製、PB9501、平均粒子径83nm、Tg-15℃)=67:33となるように混合し、さらに黄色染料を300g/t(紙)となるように添加した水溶液(クリア塗工液)を、ゲートロールコーターを用いて、両面の塗工量が2.4g/m2(固形分)となるように均等に塗工、乾燥して上質系非塗工紙を得た。紙質の測定値、評価結果は表1に示す。
坪量68g/m2、紙厚109μmとした以外は、実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプ100重量%に対し、炭酸カルシウムを16重量%、嵩高剤を0.6重量%とし、クリア塗工液の酸化澱粉:スチレン-ブタジエン系ラテックス=84:16、黄色染料が80g/tとなるように両面に2.4g/m2(固形分)塗工した以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
坪量80g/m2とした以外は、実施例3と同様に上質系非塗工紙を得た。
クリア塗工液にサイズ剤をバインダー100重量%に対し1.25重量%となるように添加し、両面の塗工量を1.6g/m2となるように塗工した以外は、実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
クリア塗工層のバインダーを酸化澱粉のみとした以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
クリア塗工層のバインダーをスチレン-ブタジエン系ラテックスのみとした以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
紙料に嵩高剤を添加せず、クリア塗工層のバインダーを酸化澱粉のみとし、坪量を87g/m2とした以外は実施例4と同様に上質系非塗工紙を得た。
紙料に嵩高剤をパルプ100重量%に対し1.50重量%添加し、坪量を80g/m2とした以外は比較例3と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプスラリーが、パルプ100重量%に対し、NBKP8重量%、GP40重量%、TMP52重量%とし、内添サイズ剤、黄色染料を含有しない以外は比較例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
Claims (7)
- 原紙上にクリア塗工層を有する、密度が0.62g/cm3以上0.75g/cm3未満の上質系非塗工書籍用紙であって、
原紙を構成するパルプ100重量%のうち化学パルプが100重量%であり、原紙が、パルプ100重量%に対して0.01重量%以上3.0重量%以下の内添サイズ剤を含有し、クリア塗工層が少なくともラテックスと澱粉を含有し、ラテックス:澱粉の重量比が10:90~99:1であり、
JISP8150に基づいて紫外線を含む光源によって測定したL*値が90~98、ステキヒトサイズ度が5~100秒である、上記書籍用紙。 - パルプ100重量%に対し、嵩高剤を1.0重量%以下含有する、請求項1または2に記載の書籍用紙。
- JIS P8143に準じて測定した剛度(クラーク式)が、横(CD)方向で10以上、縦(MD)方向で40以上である、請求項1または2に記載の書籍用紙。
- JISP8150に基づいて紫外線を含む光源によって測定したa*値が-5~0、b*値が10~15である、請求項1~3のいずれかに記載の書籍用紙。
- オフセット印刷用またはインクジェット印刷用である、請求項1~4のいずれかに記載の書籍用紙。
- 前記化学パルプとして、針葉樹晒クラフトパルプおよび広葉樹晒クラフトパルプを含む、請求項1~5のいずれかに記載の書籍用紙。
- 請求項1~6のいずれかに記載の書籍用紙を製造する方法であって、
澱粉とラテックスを混合してクリア塗工液を調製する工程と、
ゲートロールコーターによってクリア塗工液を原紙上に塗工して片面0.1g/m2以上3.0g/m2以下のクリア塗工層を原紙上に設ける工程と、
を有する、上記方法。
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