JP7000065B2 - 上質系非塗工紙 - Google Patents
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Description
特許文献1記載の技術は、表面強度の低下なくしなやかさを付与する為に、水溶性金属塩を塗布する技術であり、筆記適性を考慮した技術ではなかった。特許文献2、3は、インクジェット又は電子写真方式での印刷適性に着目した技術であり、教科書や参考書における筆記適性を考慮したものではなかった。特許文献4は、改装性に着目した技術であるが筆記適性に配慮した技術ではなかった。特許文献5、6、7は、筆記用紙に関する技術であるが、いずれもクリア塗工層には接着剤として澱粉のみを使用しており、改装性に劣るものだった。さらに、特許文献8は、目に優しい用紙に関する技術であり色相等を規定しているが、製造方法が明らかでなく、筆記適性や改装性等の課題は有していなかった。
クリア塗工層がラテックスと澱粉を含有し、
前記ラテックスと澱粉の比率がラテックス:澱粉=10:90~99:1とすることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
(1)パルプ100重量%に対して化学パルプを95%以上含有し、原紙上にクリア塗工層を有する、密度が0.75g/cm3以上1.2g/cm3以下の上質系塗工紙において、塗工層が少なくともラテックスと澱粉を含有し、前記ラテックスと澱粉の比率がラテックス:澱粉=10:90~99:1である上質系非塗工紙。
(2)パルプ100重量%に対し、内添サイズ剤を0.01重量%以上0.15重量%以下含有する、(1)記載の上質系非塗工紙。
(3)ベック平滑度が50秒以上である(1)または(2)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(4)不透明度が85%以上である請求項1~3のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(5)JIS P8150による紫外線を含む光源によるL*値が85以上95以下であり、a*b*値から算出される彩度C=(a*2+b*2)1/2が10以上14以下である、請求項1~4のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(6)インクジェットおよび/またはオフセット用印刷用紙である(1)~(5)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(7)文庫用紙である(1)~(6)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(8)筆記用紙である(1)~(6)のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
(9)澱粉とラテックスを混合する工程と、ゲートロールコーターによって片面0.1g/m2以上5.0g/m2以下のクリア塗工層を設ける工程を有する、請求項(1)~(8)記載の上質系非塗工紙の製造方法。
本発明に用いる紙料は、パルプ100重量%に対し、化学パルプを95重量%以上含有する。化学パルプとしては、針葉樹パルプ(NP)や広葉樹パルプ(LP)などの木材パルプ由来の化学パルプを使用することが好ましい。木材化学パルプの他には、原料としては、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維などを使用することができ、パルプ化法としては機械パルプ(MP)、脱墨パルプ(DIP、古紙パルプとも呼ばれる)などが挙げられ、印刷用紙の抄紙原料として一般的に使用されているパルプを好適に使用することができ、適宜、これらの1種類または2種類以上を配合して使用される。本発明の上質系非塗工紙は、化学パルプを95重量%以上含有するため、白色度や耐色性に優れる。また、化学パルプは古紙パルプや機械パルプと比較して白色度が高いため、色相調節のために着色剤を添加した場合の発色が良い。
本発明においては、上記のように調成された紙料が適宜希釈され、必要に応じてスクリーンやクリーナーで紙料から異物を除去した後に、抄紙機のヘッドボックスから抄紙ワイヤー上に噴射される。本発明は種々の抄紙機、例えば長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などによって製造される。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。抄紙後のプレス線圧は、本発明の密度となる範囲内で適宜用いられるが、本発明の嵩高効果を得るためにはプレス線圧は低い事か好ましい。
また、抄紙法は、中性抄紙でも酸性抄紙でもよいが、中性抄紙であることが好ましい。具体的には、本発明においては、抄紙時の紙料pHが5.0~9.0であることが好ましく、6.0~8.0であることがより好ましい。
本発明においては、表面強度向上や耐水性付与、印刷適性などを付与するために、前記で得られた原紙に表面処理液を塗工し、クリア塗工層を設けてもよい。表面処理液に使用する接着剤の種類は特に限定しないが、生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化したタピオカ澱粉を原料として製紙工場内で熱化学変性あるいは酵素変性によって生成される自家変性澱粉などの澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの変性澱粉を含むのが好ましい。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、セルロースナノファイバーなどのセルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、ラテックス、スチレン-ブタジエン系共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステルなどを併用することも可能である。前記表面処理液には、表面強度と小口研磨時のくっつきを防止する点から、少なくともラテックスを含有することが好ましく、さらに好ましくは、スチレン―ブタジエン系ラテックス(SBR)が好ましい。前記ラテックスの平均粒子径は、70nm以上、200nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは75nm以上、150nm以下である。200nmより平均粒子径が大きいラテックスを使用すると、得られた紙の表面強度が低くなってしまう恐れがある。また、使用するラテックスのガラス転移温度(Tg)は、表面強度と加熱ロールでのべたつきを両立する観点から、-50~10℃が好ましく、更に好ましくは-30~5℃である。本発明のラテックスの平均粒子径及びTgは、それぞれ動的光散乱法、示差走査熱量計などによって測定することができる。
また、小口面の研磨に供される書籍はいずれも、書店の店頭に長く陳列されたものであり、その間に吸湿が起こっていると想定される。そのため、より吸湿性の高い澱粉を多く使用した場合、水分を含んだクリア塗工層が軟化し、研磨時のねっぱりが発生し易い状態となっていると想定される。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P8124(50kPa)に準じて測定した坪量が40g/m2以上150g/m2以下が好ましく、より好ましくは45g/m2以上110g/m2以下である。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P 8118に準じて測定した紙の密度が、0.75g/cm3以上1.2g/m3以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.77g/m3以上1.0g/m3以下である。密度が0.75g/m3より低い場合、紙表面の平滑性が低く筆記適性に劣る。であり、
また、密度が1.2g/m3より高い場合、紙表面の平滑性が極度に高く、紙表面が滑り易くなってペン等で書き難くなる恐れがあるため、本発明の上質系非塗工紙は密度を0.75g/m3以上1.2g/m3以下とすることで、適度な平滑性を持ち筆記適性に優れた上質系非塗工紙を得ることができる。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS-P8143に準じて測定した剛度(クラーク式)が、縦(MD:マシン流れ)方向の剛度が15以上150以下が好ましく、さらに好ましくは20以上120以下である。また、CD(マシン幅)方向の剛度は10以上70以下が好ましく、さらに好ましくは20以上50以下である。剛度が前記範囲より低い場合、文庫本としたときに紙が柔らかすぎたり、静電気でページ同士が張りついてしまうため、めくりにくくなってしまう。また、本を開いた時に手肉感がなくページがへたってしまうため、本を開いた状態で保持しにくかったり、平版印刷や電子写真方式での印刷時に重送が発生してしまう事がある。さらに、教科書や参考書として使用した際に、剛度が不足するとカバンの中で自立することができず、カバンに収納しにくくなってしまう。一方、剛度が前記範囲より高い場合、本の見開き時に、ページ両端の紙がそろいにくく、さらに、紙が立ちあがってしまうため読みにくい。また、MD方向の剛度が15より低いと印刷時の走行性が悪化する恐れがある。
本発明の上質系非塗工紙は、ISO2471に準じて測定したISO不透明度が85以上であることが好ましく、さらに好ましくは90以上である。ISO不透明度が85未満であると、印刷時に裏抜けが発生し、製本した際に読みにくい本になってしまう。また、教科書や参考書として使用した際に、筆記物や印字物が裏面から透けてしまう恐れがある。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P8150による紫外線を含む光源によるL*値が、L*85以上95以下であり、C=(a*2+b*2)1/2で表される彩度(C)が、10以上14以下であることが好ましい。彩度(C)は、色相や明度とは異なり、色の「あざやかさ」の度合いを示す指標であり、明度と組み合わせることで、色調を表現することができる。例えば、L*が50、Cが10の場合「暗い灰色」となり、L*が20、Cが50の場合「鮮やかで濃い」色調となる。L*が85以上95以下、Cが10以上14以下であると、明度が高く、彩度が比較的低いため、明るく落ち着いた色調の上質系非塗工紙を得ることができる。教科書や参考書、文庫本といった出版物は、勉強や読書等長時間見続けることが多いため、明るく落ち着いた色調であると、目が疲れにくく、かつ文字などを読みやすい紙面となる。
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P8122に準じて測定したステキヒトサイズ度が1秒以上100秒以下であることが好ましく、さらに好ましくは5秒以上80以下である。ステキヒトサイズ度が前記範囲であると、オフセット印刷時のブラン離れとインクジェット印刷時の吸液性を両立することができるため好ましい。また、ステキヒトサイズ度が1秒未満であると万年筆やボールペンで筆記した際インクが紙に浸透しすぎてしまい、文字のにじみや、インクが裏面に透過してしまう恐れがある。一方、ステキヒトサイズ度が100秒より高いと、インクの吸収が遅く、ペンのインクの渇きが遅く、筆記後に紙面が擦れた場合、紙面が汚れてしまう可能性がある。
ベック平滑度
本発明の上質系非塗工紙は、JIS P8119に準じて測定したベック平滑度が50秒以上であることが好ましく、より好ましくは100秒以上である。上限としては250秒以下が好ましく、200秒以下がより好ましい。ベック平滑度が50秒より低いと、ボールペンや鉛筆等で筆記した際に、紙に筆記具の先端が引っ掛かってしまうため、特に先端の細い筆記具での筆記適性に劣る。また、250秒より高いと、筆記具の先端が紙表面で滑ってしまい、筆記適性、特に鉛筆で書きにくくなる可能性がある。特に鉛筆で筆記した際に、書きにくい場合がある。
紙質測定方法
・坪量:JIS P8124に準じて測定した。
・紙厚、密度: JIS P8118に準じて測定した。
・灰分: ISO1762-1974に準じて測定した。
・ISO不透明度: ISO2471に準じて測定した。
・ISO白色度:JIS P8148に準じて、村上色彩(株)製色差計CMS-35SPXにて測定した。
・色相:JIS P8150に準じて紫外線を含む光源で測定した。
・ベック平滑度:JIS P8119に準じて測定した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P8122に準じて測定した。
・剛度(クラーク式):JIS P8143に準じて縦方向の剛度を測定した。
手肉感の評価方法
上質系非塗工紙サンプルをA6判(文庫本サイズ)で200枚、ソフトカバー、無線とじで製本サンプルを作成した。左手で閉じ部を保持し、右手で紙を20回さばいた際の紙の張り(手肉感)について、張りがなく紙がへたってしまいうまくさばけないものを「×」、張りはややないが問題なくページをさばけるものを「△」、張りがありさばいている途中に各ページがへたらないものを「○」として手肉感を評価した。
改装性の評価方法
上質系非塗工紙サンプルをA6判(文庫本サイズ)で200枚、ソフトカバー、無線とじで製本サンプルを作成した。ベルト研磨機(NIPPO社製)に製本サンプルを4冊セットし標準使用法に従い小口面の研磨を往復2回行った。小口面を研磨した製本サンプルについて、本を開くと複数ページが研磨部で強くくっついてほぐれにくいものを「×」、本を開くと複数ページが研磨部でくっついているがほぐれ易いものを「△」、本を開くと研磨部のくっつきがほぐれるもの、あるいは研磨部にくっつきのないものを「○」として小口面くっつきを評価した。
ボールペン適性
ボールペンで筆記した際の筆記適性を以下の基準に従って3段階で評価した。
○:良好な書き心地である。
△:ペン先が紙表面で引っかかるまたは滑るが、概ね良好な書き心地である
×:ペン先の滑りが悪い、または滑りすぎて書きにくい
5.筆記適性(鉛筆)
HBの鉛筆で筆記した際の筆記適性を、以下の基準に従って4段階で評価した。
○:良好な書き心地である
△:鉛筆の先が紙面でやや滑るが、概ね良好な書き心地である
×:鉛筆の先が紙面で滑り、書き心地が悪い
LBKP80部、NBKP20部を混合したパルプスラリーに、炭酸カルシウム、サイズ剤がそれぞれパルプ100重量%に対し、25重量%、0.04重量%となるように添加し、紙料を調成した。
その後、上記紙料をヘッドボックスからツインワイヤー型の抄紙ワイヤー上に紙料を噴出して抄紙し、プレスパートで搾水、プレドライヤーで乾燥し、抄紙速度725m/minで原紙を抄造した。得られた原紙に、バインダーとして酸化澱粉とスチレン-ブタジエン系ラテックス及び水を、酸化澱粉:スチレン-ブタジエン系ラテックス(A&L社製、PB9501、平均粒子径83nm、Tg-15℃)=2:1となるように混合した水溶液(クリア塗工液)を、ゲートロールコーターを用いて、両面の塗工量が2.4g/m2(固形分)となるように均等に塗工、乾燥し、上質系非塗工紙を得た。紙質の測定値、評価結果は表1に示す。
クリア塗工液にサイズ剤をバインダー100重量%に対し0.8重量%となるように添加した以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプスラリーにサイズ剤を添加しない以外は、実施例2と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプスラリーに炭酸カルシウムを22重量%となるように添加し、坪量を55.2g/m2とした以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプ配合を、パルプ100重量%に対し、LBKP70重量%、LBKP30重量%とし、パルプスラリーに炭酸カルシウムを20重量%となるように添加した以外は実施例4と同様に上質系非塗工紙を得た。
クリア塗工液に、赤染料及び黄色染料を添加して色相を調成した以外は、実施例4と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプ配合を、パルプ100重量%に対し、LBKP65重量%、DIP35重量%とし、パルプスラリーに炭酸カルシウムを27重量%となるように添加した以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプスラリーに炭酸カルシウムを4重量%となるように添加した以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
パルプ配合を、パルプ100重量%に対し、LBKP60重量%、NBKP40重量%とし、パルプスラリーに炭酸カルシウムを25重量%となるように添加した以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
クリア塗工層のバインダーを澱粉のみとした以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
クリア塗工層のバインダーをスチレン-ブタジエン系ラテックスとした以外は実施例1と同様に上質系非塗工紙を得た。
Claims (9)
- JIS P8150に基づいて紫外線を含む光源によって測定したL*値が85以上95以下であり、原紙上にクリア塗工層を有する、密度が0.75g/cm3以上1.2g/cm3以下、ベック平滑度が250秒以下、MD方向およびCD方向のクラーク式剛度がいずれも20以上である上質系非塗工紙であって、
原紙を構成するパルプ100重量%のうち化学パルプが95重量%以上であり、原紙が、パルプ100重量%に対して0.01重量%以上0.15重量%以下の内添サイズ剤を含有し、クリア塗工層が少なくともラテックスと澱粉を含有し、ラテックス:澱粉の重量比が10:90~50:50である、上質系非塗工紙。 - ベック平滑度が50秒以上である、請求項1に記載の上質系非塗工紙。
- 不透明度が85%以上である、請求項1または2に記載の上質系非塗工紙。
- JIS P8150に基づいて紫外線を含む光源によって測定したa*およびb*値から算出される彩度C=(a*2+b*2)1/2が10以上14以下である、請求項1~3のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
- インクジェット用印刷用紙である、請求項1~4のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
- オフセット用印刷用紙であり、ステキヒトサイズ度が5秒以上80秒以下である、請求項1~5のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
- 文庫用紙である、請求項1~6のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
- 筆記用紙である、請求項1~6のいずれかに記載の上質系非塗工紙。
- 請求項1~8のいずれかに記載の上質系非塗工紙を製造する方法であって、
澱粉とラテックスを混合してクリア塗工液を調製する工程と、ゲートロールコーターによって片面あたり0.1g/m2以上5.0g/m2以下のクリア塗工層を原紙上に設ける工程と、を有する、上記方法。
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