JP6389371B2 - 塗工白板紙 - Google Patents
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Description
特許文献1、3に開示された技術は、原紙の白色ムラを目立たなくさせるために、多層抄における表層、表下層の白色度の差を規定してはいるが、塗工面と原紙との白色度差による白色ムラを解決するには至っていない。
特許文献2に開示された技術では、塗工面と原紙との白色度差による白色ムラを解消することができるが、原紙と塗工層の白色度の差を小さくするために、塗工層に黒色色素を添加した場合、全体的な白色度が低下するという問題が発生する。
白色ムラの改善のために、ブレード塗工方式ではなくロール塗工方式を採用した場合、オレンジピール等と呼ばれるロール特有の塗工パターンが発生しやすい。また、エアナイフ塗工方式では、原理上塗工液の粘度を低くしなければならず、そのために固形分濃度を低くすると、原紙に塗工液の水分が過剰に染みこむことにより、原紙の膨潤が発生し、表面平滑性が悪化する。また乾燥に必要なエネルギーも上昇する。
特許文献4、5に開示されているとおり、効率よくチリを目立たなくし白色度や印刷適性を向上させるために、表面に塗被する塗工量を多くする、隠蔽性の高い二酸化チタンやプラスチックピグメント等の有機顔料を多量に配合する場合、コストアップの要因となるだけでなく、一般的な塗工顔料と物性が大きく異なり塗料物性が大幅に変わってしまう問題が発生する。
[1]多層抄き原紙の少なくとも片面に塗工層を有する塗工白板紙であって、
前記塗工層がカーテン塗工により設けられた顔料塗工層を1層以上含み、
前記原紙が、塗工層に隣接する表層、当該表層の塗工面とは反対側に隣接する表下層、およびそれ以外の他層からなり、
当該塗工白板紙を、前記塗工層、表層、および表下層からなる分割層1と、前記他層からなる分割層2に分割したとき、当該分割層1の両面のISO白色度の差が2.0ポイント以上である、
塗工白板紙。
[2]前記表層が古紙パルプを含有する、[1]に記載の塗工白板紙。
[3]前記古紙パルプの配合割合が、原紙の全パルプ量100重量部に対して50重量部以上である、[1]または[2]に記載の塗工白板紙。
[4]前記カーテン塗工により設けられた顔料塗工層が軽質炭酸カルシウムを含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の塗工白板紙。
[5]前記塗工層が、カーテン塗工により設けられた2層以上の顔料塗工層、またはカーテン塗工およびこれ以外の塗工方法により設けられた2層以上の顔料塗工層を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の塗工白板紙。
[6]前記表下層が化学パルプを含有しない、[1]〜[5]のいずれかに記載の塗工白板紙。
[7]前記カーテン塗工により設けられた顔料塗工層の合計の塗工量が片面あたり15g/m2以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の塗工白板紙。
本発明において塗工白板紙は、多層抄き原紙の少なくとも片面に顔料塗工層を有する。前記原紙の少なくとも一層に古紙パルプが配合されることが好ましい。
本発明で使用される原紙は古紙パルプが少なくとも配合されていることが好ましい。古紙パルプ以外のパルプは特に制限されず、クラフトパルプ、亜硫酸パルプなどの化学パルプ;サーモメカニカルパルプ、加圧砕木パルプなどの機械パルプ;ケミカルサーモメカニカルパルプなどの半化学パルプが使用できる。本発明によれば、原紙由来のチリなど、白色ムラを隠蔽することが可能であることから、古紙パルプを多く含有する原紙を用いることができる。そのため、コスト面でも有利であり、環境負荷も低くなる。古紙パルプとしては、上質紙、中質紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙、段ボール古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨古紙パルプまたは脱墨しない古紙パルプを使用できる。古紙パルプの配合量は、全パルプ中50重量%以上、好ましくは80重量%以上とできる。
本発明においては、1種もしくは2種類以上の塗工液から1つのカーテン膜を形成させ、当該カーテン膜に原紙を通して原紙上に1層もしくは2層以上のカーテン塗工による顔料塗工層を形成する。原紙の隠蔽性を高めるためにも、本発明の顔料塗工層は2種以上の塗工液からなることが好ましい。また前記の理由により、顔料塗工層を2層以上形成することが好ましい。例えば、ブレード塗工を行った後にカーテン塗工を行って顔料塗工層を形成してもよいし、カーテン塗工により顔料塗工層を2層以上形成してもよい。この際、同一の塗工液で顔料塗工層を2層以上設けてもよいし、異なる塗工液で各顔料塗工層を設けてもよい。当該カーテン塗工層は、塗工白板紙の最外層である最外塗工層を含む。顔料塗工層が2層以上の場合、当該最外塗工層を上塗り塗工層、当該上塗り塗工層を形成する塗工液を上塗り塗工液ともいう。また、原紙に隣接する塗工層を下塗り塗工層、当該下塗り塗工層を形成する塗工液を下塗り塗工液ともいう。
カーテン塗工とは、1種もしくは2種以上の塗工液をカーテン状に流下させて膜を形成し、その膜に原紙を通すことにより原紙上に塗工層を設ける塗工方式である。カーテン塗工は、原紙に沿って塗工層が形成される輪郭塗工であり、原紙に多少の凹凸が存在しても均一な塗工層を塗設することができ、白色ムラが生じにくいと考えられている。また、ブレードにより塗工液を掻き落とすブレード塗工などの接触型塗工方式と比較して、非接触型塗工方式であるカーテン塗工で形成される塗工層は、空隙が多く、光散乱性や白色度の点で好ましいとされる。さらに、カーテン塗工は非接触型塗工方式であり、原紙にかかる負荷が小さく、断紙を抑制できるので、生産性にも優れている。
(1)坪量:JIS P 8124に準じて測定した。
(2)紙厚:JIS P 8118に準じて測定した。
(3)密度:JIS P 8118に準じて坪量と紙厚から求めた。
(4)平滑性:JIS P8151「紙及び板紙−表面粗さ及び平滑度試験方法(エア・リーク法)−プリント・サーフ試験機法」に準拠し、測定ヘッドの圧力差が19.6±0.1kPaである場合における平滑性を測定した。
(5)DAV2:デュポン社製アピアランスアナライザーを用い、塗工紙表面のもやもや感を評価した。値が大きいほど塗工紙の表面にもやもや感があり、白紙面感が劣る。
4:ムラが全く目立たない
3:軽度のムラが見られる
2:ムラが認められ、実用上問題となる可能性がある
1:顕著なムラが認められ、実用に適さない
(7)夾雑物:以下の基準を用いて、塗工紙表面に見られる原紙層由来の夾雑物を目視により評価した。
4:夾雑物が全く見られない
3:夾雑物がやや見られる
2:夾雑物が認められ、実用上問題となる可能性がある
1:多数の夾雑物が認められ、実用に適さない
塗工白板紙から分割層1を得て、JIS P 8150に準拠した方法より、紫外線を含む測定における白色度を測定した。測定試料は以下に従い準備した。
A5サイズの塗工白板紙を準備し、65℃の温水に約3時間浸漬した。サンプルが乾かないうちに塗工層、表層、および表下層からなる分割層1と、それ以外の原紙層からなる分割層2に分割した。この際、分割層1の表下層側に、分割層2の接していた側の原紙パルプがなるべく付着しないように注意した。分割層1は乾燥収縮を防ぐため、A4サイズの金属板を重石とし、23℃50%にて24時間乾燥した。測定では、A5サイズのサンプルを均等に3つ折りにしたものを使用した。
(原紙1)
脱墨古紙パルプを100%使用して坪量33g/m2の表層、脱墨しない古紙パルプを100%使用して坪量36g/m2の表下層、脱墨しない古紙パルプを100%使用して、4〜7層目をそれぞれ抄造して抄き合わせ、プレス、乾燥処理を行い米坪294g/m2の塗工白板紙原紙を得た。
紡錘状軽質炭酸カルシウム(D50=0.5μm、D75/D25=2.5)50部、デラミネーティッドカオリン(平均アスペクト比50)50部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス16.5部、界面活性剤0.2部を添加した。さらに水を添加して、30℃、60rpmにおけるB型粘度が1000mPa・sになるように調整し、固形分濃度は65%、静的表面張力は30mN/mの塗工液Aを得た。
重質炭酸カルシウム(D50=0.7μm、D75/D25=3.8)85部、酸化チタン15部からなる顔料スラリーを調整した後、顔料100部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス11部、界面活性剤0.2部を添加し、さらに水を添加して60rpmにおけるB型粘度が1000mPa・sになるように調整し、固形分濃度は63%、静的表面張力は30mN/mの塗工液Bを得た。
原紙1に上記塗工液Aを下塗り塗工層としてベントブレード塗工方式にて塗工し、乾燥工程を経ることなく、塗工液Bが最表層になるよう、塗工液AおよびBをカーテン塗工装置にて同時2層塗工を行い、乾燥した。カーテン塗工層は、塗工液Aの層をプレ塗工層、塗工液Bの層をトップ塗工層とした。塗工量は、乾燥後の重量で下塗り塗工層が10g/m2、プレ塗工層が12g/m2、トップ塗工層が5g/m2であり、塗工白板紙の坪量は324g/m2であった。塗工速度は、オンマシンにより抄紙と一貫して行ったため、抄紙速度と同じく300m/分であった。
得られた塗工白板紙をカレンダー処理することにより、塗工白板紙を得た。処理速度は、オンマシンにより抄紙、塗工と一貫して行ったため、抄紙速度および塗工速度と同じく300m/分であった。また、得られた塗工白板紙の塗工面の裏面に、PVA2%、PAM1%からなる塗工液のクリア塗工を行った。クリア塗工の塗工量は1g/m2であった。
(原紙2)
原紙1の表下層のパルプを脱墨古紙パルプ100%とした以外は原紙1と同様に塗工白板紙原紙を得た。
(原紙3)
原紙1の表層のパルプをLBKP40%、脱墨古紙パルプ60%とし、表下層のパルプを脱墨古紙パルプ100%とした以外は、原紙1と同様に塗工白板紙原紙を得た。
(原紙4)
原紙1の表層をLBKP100%とし、表下層を脱墨古紙パルプ100%とした以外は、原紙1と同様に塗工白板紙原紙を得た。
(塗工液C)
塗工液Bの顔料を重質炭酸カルシウム100重量部とした以外は、塗工液Bと同様にして、30℃、60rpmにおけるB型粘度が1000mPa・sになるように調整し、固形分濃度は65%、静的表面張力は30mN/mの塗工液Cを得た。
実施例1において、塗工液Aによるベントブレード塗工方式での下塗り塗工層を設けず、カーテン塗工方式によるトップ塗工層の塗工量を15g/m2とした以外は、実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
(原紙5)
原紙1の表層のパルプをLBKP40%、脱墨古紙パルプ60%とし、表下層のパルプをLBKP40%および非脱墨古紙パルプ60%とした以外は、原紙1と同様に塗工白板紙原紙を得た。
(塗工液D)
デラミネーティッドカオリン(平均アスペクト比50)35部、重質炭酸カルシウム(D50=0.7μm、D75/D25=3.8)65部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100部に対して、尿素リン酸澱粉3部、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス12部を添加した。さらに水を添加して、30℃、60rpmにおけるB型粘度が1000mPa・sになるように調整し、固形分濃度は65%、静的表面張力は30mN/mの塗工液Dを得た。
デラミネーティッドカオリン(平均アスペクト比50)25部、クレー25部、重質炭酸カルシウム(D50=0.7μm、D75/D25=3.8)5部、紡錘状軽質炭酸カルシウム(D50=0.5μm、D75/D25=2.5)38部、酸化チタン7部からなる顔料スラリーを調製した後、顔料100部に対して、尿素リン酸澱粉5部、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス14.5部を添加した。さらに水を添加して、30℃、60rpmにおけるB型粘度が1000mPa・sになるように調整し、固形分濃度は65%、静的表面張力は30mN/mの塗工液Eを得た。
(塗工液F)
クレー100部からなる顔料スラリーに対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス12部、界面活性剤0.2部を添加し、さらに水を添加して60rpmにおけるB型粘度が1000mPa・sになるように調整したところ、固形分濃度は63%、静的表面張力は30mN/mの塗工液Fを得た。
20 表層
22 表下層
24 他層
Claims (10)
- 多層抄き原紙の少なくとも片面に塗工層を有する塗工白板紙であって、
前記塗工層が、カーテン塗工以外の塗工方法で設けられた顔料を含む下塗り塗工層、および当該層の上にカーテン塗工により設けられた顔料塗工層を2層以上含み、
前記下塗り塗工層中の顔料が軽質炭酸カルシウムを含み、
前記原紙が、塗工層に隣接する表層、当該表層の塗工面とは反対側に隣接する表下層、およびそれ以外の他層からなり、
当該塗工白板紙を、前記塗工層、表層、および表下層からなる分割層1と、前記他層からなる分割層2に分割したとき、当該分割層1の両面のISO白色度の差が2.0ポイント以上である、
塗工白板紙。 - 前記表層が古紙パルプを含有する、請求項1に記載の塗工白板紙。
- 前記古紙パルプの配合割合が、原紙の全パルプ量100重量部に対して50重量部以上である、請求項1または2に記載の塗工白板紙。
- 前記カーテン塗工により設けられた顔料塗工層が軽質炭酸カルシウムを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の塗工白板紙。
- 前記下塗り顔料塗工層がブレード塗工層である、請求項1〜4のいずれかに記載の塗工白板紙。
- 前記表下層に化学パルプが使用されていない、請求項1〜5のいずれかに記載の塗工白板紙。
- 前記表下層に古紙パルプが使用されており、当該古紙パルプ中に脱墨しない古紙パルプを20重量%以上含む、請求項6に記載の塗工白板紙。
- 前記カーテン塗工により設けられた顔料塗工層の合計の塗工量が片面あたり15g/m2以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の塗工白板紙。
- 前記下塗り顔料塗工層がデラミネーテッドカオリンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の塗工白板紙。
- 前記カーテン塗工により設けられた顔料塗工層における最外層が重質炭酸カルシウムを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の塗工白板紙。
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