JP6957672B2 - アニオン変性セルロースナノファイバー分散液および組成物 - Google Patents
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Description
(1)アニオン変性セルロースナノファイバー、
前記アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して1〜30質量%の、ホウ酸塩類、亜硫酸塩類、およびこれらの組合せからなる群から選択される着色防止剤、ならびに
溶媒を含む、アニオン変性セルロースナノファイバー分散液。
(2)前記着色防止剤の合計量が、前記アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して1〜15質量%である、(1)に記載の分散液。
(3)pHが6.5〜10である、請求項1または2に記載の分散液。
(4)前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、0.5〜2.0mmol/gの量のカルボキシル基を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の分散液。
(5)前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである、(1)〜(3)のいずれかに記載の分散液。
(6)前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、還元剤により還元処理されている、(1)〜(5)のいずれかに記載の分散液。
(7)前記アニオン変性セルロースナノファイバーの長さ平均繊維長が50〜2000nm、長さ平均繊維径が2〜50nmである、(1)〜(6)のいずれかに記載の分散液。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のアニオン変性セルロースナノファイバー分散液から溶媒を除去して得たアニオン変性セルロースナノファイバー組成物。
(9)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の分散液の製造方法であって、
(i)N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化して酸化セルロースを調製する工程、
(ii)前記酸化セルロースを解繊し、酸化セルロースナノファイバー分散液を得る工程、ならびに
(iii)前記酸化セルロースナノファイバー分散液と前記着色防止剤とを含有するセルロースナノファイバー分散液を得る工程、
を備える製造方法。
(10)前記(8)に記載の組成物の製造方法であって、
(i)N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化して酸化セルロースを調製する工程、
(ii)前記酸化セルロースを解繊し、酸化セルロースナノファイバー分散液を得る工程、
(iii)前記酸化セルロースナノファイバー分散液と前記着色防止剤とを含有するセルロースナノファイバー分散液を得る工程、ならびに
(iv)前記ナノファイバー分散液から前記水を除去する工程、
を備える製造方法。
(11)前記(8)に記載の組成物を含有するシート。
(1)着色防止剤
着色防止剤とは、アニオン変性セルロースナノファイバー(以下、「アニオン変性CNF」ともいう)の加熱による着色を防止する添加剤をいう。本発明では、ホウ酸塩類、亜硫酸塩類、およびこれらの組合せからなる群から選択される着色防止剤を用いる。
本発明においてホウ酸塩類とは、ホウ酸塩とボロン酸塩の総称である。本発明におけるホウ酸塩とはホウ酸(B(OH)3)由来の陰イオンと、一価の金属イオンと、で構成される塩をいう。当該金属イオンとしてはアルカリ金属イオンが好ましい。ホウ酸由来の陰イオンとしては、ホウ酸イオン[BO3]3−、ホウ酸水素イオン[HBO3]2−、またはホウ酸二水素イオン[H2BO3]−である。本発明におけるボロン酸塩とはボロン酸由来の陰イオン[R−BO2H]−、[R−BO2]2−と、一価の金属イオンと、で構成される塩をいう。Rは一価の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基、アリール基である。中でもRはフェニル基またはアルキルフェニル基が好ましい。Rがフェニル基であるボロン酸はフェニルボロン酸である。すなわち、本発明においてホウ酸塩類とは、M3[BO3]、M2[HBO3]、M[H2BO3]、M2[R−BO2]、またはM[R−BO2H]で表される(Mは一価の金属イオン、Rは一価の炭化水素基)塩である。これらのホウ酸塩類は、アニオン変性CNF分散液および組成物において、固体として、電離して、あるいはアニオン変性CNF中の官能基と反応した状態で存在しうる。
本発明において亜硫酸塩類とは、亜硫酸塩(M2SO3:Mは一価の陽イオン部位)、亜硫酸水素塩(MHSO3:Mは一価の陽イオン部位)、ピロ亜硫酸塩(M2S2O5もしくはM’S2O5:Mは一価の陽イオン部位、M’は二価の陽イオン部位)、次亜硫酸塩(M2S2O4もしくはM’S2O4:Mは一価の陽イオン部位、M’は二価の陽イオン部位)、またはこれらの水和物をいう。Mとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンが挙げられ、M’としてはアルカリ土類金属イオンが挙げられる。好ましい亜硫酸塩類としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、次亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、次亜硫酸カルシウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸マグネシウム、ピロ亜硫酸カルシウム等が挙げられ、中でも亜硫酸水素ナトリウムが特に好ましい。
本発明において、アニオン変性CNFの長さ平均繊維径は2〜1000nmであり、下限は、好ましくは2.5nm、より好ましくは3nm、さらに好ましくは4nmであり、上限は好ましくは500nm、より好ましくは100nm、さらに好ましくは10nm程度である。長さ平均繊維長は、好ましくは100〜3000nmであり、より好ましくは150〜1500nm、さらに好ましくは200〜1000nmである。アニオン変性CNFのアスペクト比(長さ平均繊維長/長さ平均繊維径)としては、好ましくは10〜1000、より好ましくは、100〜1000である。アニオン変性CNFは、セルロース原料を変性して得たカルボキシル化セルロース(「酸化セルロース」ともいう)、カルボキシメチル化セルロース、リン酸エステル基を導入したセルロースなどのアニオン変性セルロースを解繊することによって得ることができる。以下、原料および変性方法等について説明する。
アニオン変性セルロースを製造するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするもの、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース、上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロース、を挙げることができ、それらのいずれも使用できる。中でも植物または微生物由来のセルロース繊維が好ましく、植物由来のセルロース繊維がより好ましい。
カルボキシメチル化セルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよいし、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度は0.01〜0.50が好ましい。そのようなカルボキシメチル化したセルロースを製造する方法の一例として次の方法を挙げることができる。
カルボキシル化セルロース(酸化セルロース)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。特に限定されないが、カルボキシル化の際には、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が好ましくは0.2mmol/g以上、より好ましくは0.5〜2.0mmol/g、さらに好ましくは0.6〜2.0、よりさらに好ましくは1.0〜2.0mmol/g、特に好ましくは1.0〜1.8mmol/gとなるように調整される。カルボキシル基量は、酸化反応時間、酸化反応温度、酸化反応時のpH、N−オキシル化合物や臭化物、ヨウ化物、酸化剤の添加量により調整できる。
アニオン変性セルロースを解繊することでセルロースナノファイバーが得られる。解繊に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いることができる。解繊の際にはアニオン変性セルロースの水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊および分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、前記水分散体に予備処理を施してもよい。
このようにして本発明のアニオン変性CNF分散液を得ることができる。着色防止剤は、アニオン変性セルロースを解繊する前に添加してもよいし、解繊して得たアニオン変性CNF分散液に添加してもよい。しかしながら解繊効率をより向上させる観点からは、解繊後のアニオン変性CNF分散液に添加することが好ましい。着色防止剤を添加する温度は特に限定されないが0〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。アニオン変性CNF分散液のpHは限定されないが、好ましくは6.5〜10、より好ましくは8〜9.5である。分散液のpHがこの範囲であると高い着色抑制効果が発現する。溶媒は、着色防止剤の溶解性の観点から水であることが好ましいが、当該溶解性を損なわない範囲でアルコール等の有機溶媒を含んでいてもよい。当該分散液中のアニオン変性CNF濃度は、0.1〜10%(w/v)が好ましい。
アニオン変性CNF組成物とはアニオン変性CNFと前記着色防止剤を含む組成物をいうが、当該組成物としては、前記アニオン変性CNF分散液を乾燥して得た組成物が好ましい。乾燥とは分散液から溶媒を除去することである。当該組成物は溶媒を含まない絶乾状態であってもよいが、溶媒をアニオン変性CNF絶乾質量あたり10〜100000質量%程度含んでいてもよい。このようにして得たアニオン変性CNF組成物は前述のとおり、着色防止剤がアニオン変性CNF中の水酸基等の官能基と反応して存在している可能性がある。しかしながら、この反応形態を同定することやその量を特定することはおよそ現実的ではない。
アニオン変性CNF分散液は、特に限定されないが、下記(i)〜(iii)の工程を備える方法で製造されることが好ましい。
(i)N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化して酸化セルロースを調製する工程、
(ii)前記酸化セルロースを解繊し、酸化セルロースナノファイバー分散液を得る工程、
(iii)前記酸化セルロースナノファイバー分散液と前記着色防止剤とを含有するセルロースナノファイバー分散液を得る工程。
<カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
前述のカルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの製造に用いたカルボキシル化セルロースと同じカルボキシル化セルロース40g(絶乾)を準備し、イオン交換水1960mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。このパルプ分散液のpHが10.5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、水素化ホウ素ナトリウム0.2gを添加し、1.5時間室温で撹拌した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗して還元処理されたカルボキシル化セルロースを得た。
カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
アニオン変性CNFの長さ平均繊維径および長さ平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析した。アスペクト比は下記の式により算出した:
アスペクト比=長さ平均繊維長/長さ平均繊維径。
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの着色抑制度合は、カルボキシル化CNFの水分散液から調製された厚さ50μmのCNFフィルムを150℃で30分間加熱処理し、以下の基準で目視評価した。なお、前記CNFフィルムはポリスチレン製のシャーレ上で、カルボキシル化CNFの水分散液を40℃で24時間乾燥することで調製した。
着色しない: ++ > + > ± > −(ホウ酸塩類無配合) > −−:着色する
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、10質量%濃度のホウ酸水溶液を0.1質量部添加し、よく撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液によりpHを8.9に調整して、CNF当たり1質量%のホウ酸塩を含むCNF水分散液を得た。得られた分散液をポリスチレン製のシャーレ上に展開し、40℃で24時間乾燥してCNF当たり10質量%のホウ酸塩を含む厚さ50μmのCNFフィルムを得た。前記ホウ酸は水酸化ナトリウムにより系中でホウ酸ナトリウムを形成している。
(実施例A2)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、前記ホウ酸水溶液を0.5質量部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり5質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A3)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、前記ホウ酸水溶液を1.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり10質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A4)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、前記ホウ酸水溶液を1.5部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり15質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A5)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、前記ホウ酸水溶液を2.0部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり20質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A6)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、前記ホウ酸水溶液を3.0部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり30質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A7)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、前記ホウ酸水溶液を1.5質量部添加し、当該ホウ酸塩を含むカルボキシル化CNFの水分散液のpHを塩酸により7.5に調整した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり15重量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A8)
ホウ酸塩を含むカルボキシル化CNFの水分散液のpHを塩酸により8.0に調整した以外は実施例A7と同様にして、CNF当たり15質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A9)
ホウ酸塩を含むカルボキシル化CNFの水分散液のpHを塩酸により8.5に調整した以外は実施例A7と同様にして、CNF当たり15質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A10)
ホウ酸塩を含むカルボキシル化CNFの水分散液のpHを水酸化ナトリウム水溶液により9.0に調整した以外は実施例A7と同様にして、CNF当たり15質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(実施例A11)
CNFとして還元処理されたカルボキシル化(TEMPO酸化)CNFを用いた以外は実施例1と同様にして、CNF当たり15質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
ホウ酸塩を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、CNFフィルムを得た。
(比較例A2)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、前記ホウ酸水溶液を0.01質量部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり0.1質量%のホウ酸塩を含むCNFフィルムを得た。
(比較例A3)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、リン酸水素二アンモニウムの10質量%水溶液を1.5質量部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり15質量%のリン酸水素二アンモニウムを含むCNFフィルムを得た。
(比較例A4)
カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの1.0%(w/v)水分散液100質量部に対して、リン酸トリエチルの10質量%水溶液を1.5質量部添加した以外は実施例1と同様にして、CNF当たり15質量%のリン酸トリエチルを含むCNFフィルムを得た。
(実施例B1)
<パルプの酸化>
広葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(長さ平均繊維長534μm)5g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mgと臭化ナトリウム514mgを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を5.5mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過して固液分離した。得られたパルプ繊維から、水と塩酸を用いてpHが約3、固形分濃度が1.0質量%の分散液を調製した。再度固液分離して得られたパルプ繊維を十分に水洗して酸化セルロースを得た。
酸化セルロースのカルボキシル基量は、次の方法で測定した:
酸化セルロースの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化パルプ〕= a〔ml〕× 0.05/酸化セルロース質量〔g〕。
上記の工程で得られた酸化セルロースを水と水酸化ナトリウムでpHを7に、固形分濃度1.0質量%(1%(w/v))の分散液に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理して、酸化セルロース由来のセルロースナノファイバー分散液を得た。
上記の工程で得られたセルロースナノファイバー分散液(固形分濃度1.0質量%)50gに亜硫酸水素ナトリウム25mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:5.0質量%)を添加して、プロペラ撹拌機にて600rpmで撹拌しながら水酸化ナトリウムを用いて中和した。
ISO 16065−2に従って測定した。
マイカ切片上に固定したセルロースナノファイバーの原子間力顕微鏡像(3000nm×3000nm)から、繊維長を測定し、長さ平均繊維長を算出した。繊維長測定は、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用い、長さ100nm〜2000nmの範囲で行った。
セルロースナノファイバーの濃度が0.001質量%となるように希釈したセルロースナノファイバー水分散液を調製した。この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の断面高さを計測し、長さ平均繊維径を算出した。
アスペクト比は下記の式により算出した。
アスペクト比=長さ平均繊維長/長さ平均繊維径
上記の固形分濃度1.0質量%のセルロースナノファイバー50ml分を量り取り、基材(ポリエステルフィルムA4100、東洋紡社製)上に注いだ後、送風乾燥器にて温度40℃で1日間静置した。その後、厚さ40μmのセルロースナノファイバーのフィルム化物を得た。
上記で得られたフィルム化物を、送風乾燥器にて温度150℃で30分間加熱処理を行った。加熱処理前後のフィルム化物を分光色差計(SE6000、日本電色工業社製)にてJIS K7373に準拠してYI(Yellowness Index)を測定して評価した。
亜硫酸水素ナトリウムの添加量を5mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:1.0質量%)とした以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(実施例B3)
亜硫酸水素ナトリウムの添加量を50mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:10質量%)とした以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(実施例B4)
パルプの酸化に用いた次亜塩素酸ナトリウムの添加量を3.1mmol/gとし、解繊時に超高圧ホモジナイザーで5回処理した以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。この時、得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.1mmol/gであった。
(実施例B5)
原料パルプに広葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(長さ平均繊維長1020μm)を用いた以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(実施例B6)
亜硫酸水素ナトリウムの添加量を50mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:10質量%)とした以外は実施例B5と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(実施例B7)
原料パルプに針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(長さ平均繊維長2270μm)を用いた以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(実施例B8)
亜硫酸水素ナトリウムの添加量を50mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:10質量%)とした以外は実施例B7と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(実施例B9)
亜硫酸水素ナトリウムの代わりに亜硫酸ナトリウムを50mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:10質量%)添加した以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
着色防止剤を添加しなかった以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(比較例B2)
亜硫酸水素ナトリウムの代わりに水素化ホウ素ナトリウムを50mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:10質量%)添加した以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(比較例B3)
亜硫酸水素ナトリウムの代わりにチオ硫酸ナトリウムを50mg(セルロースナノファイバー絶乾固形分に対する添加率:10質量%)添加した以外は実施例B1と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(比較例B4)
着色防止剤を添加しなかった以外は実施例B5と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
(比較例B5)
着色防止剤を添加しなかった以外は実施例B7と同様にして、セルロースナノファイバー分散液およびセルロースナノファイバーのフィルム化物を得て、加熱後の着色評価を行った。
Claims (12)
- アニオン変性セルロースナノファイバー、
前記アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して1〜30質量%の亜硫酸水素塩から選択される着色防止剤、ならびに
溶媒を含み、
前記亜硫酸水素塩が、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種である、
アニオン変性セルロースナノファイバー分散液。 - 前記亜硫酸水素塩が、亜硫酸水素ナトリウムである、請求項1に記載の分散液。
- 前記着色防止剤の合計量が、前記アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して1〜15質量%である、請求項1または2に記載の分散液。
- pHが6.5〜10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散液。
- 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、0.5〜2.0mmol/gの量のカルボキシル基を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散液。
- 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散液。
- 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、還元剤により還元処理されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散液。
- 前記アニオン変性セルロースナノファイバーの平均繊維長が50〜2000nm、平均繊維径が2〜50nmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散液。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のアニオン変性セルロースナノファイバー分散液から溶媒を除去して得たアニオン変性セルロースナノファイバー組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の分散液の製造方法であって、
(i)N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化して酸化セルロースを調製する工程、
(ii)前記酸化セルロースを解繊し、酸化セルロースナノファイバー分散液を得る工程、ならびに
(iii)前記酸化セルロースナノファイバー分散液と前記着色防止剤とを含有するセルロースナノファイバー分散液を得る工程、
を備える製造方法。 - 請求項9に記載の組成物の製造方法であって、
(i)N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化して酸化セルロースを調製する工程、
(ii)前記酸化セルロースを解繊し、酸化セルロースナノファイバー分散液を得る工程、
(iii)前記酸化セルロースナノファイバー分散液と前記着色防止剤とを含有するセルロースナノファイバー分散液を得る工程、ならびに
(iv)前記ナノファイバー分散液から前記水を除去する工程、
を備える製造方法。 - 請求項9に記載の組成物を含有するシート。
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