JP6276550B2 - 酸化セルロースの製造方法 - Google Patents
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Description
[1](1)N−オキシル化合物、
(2)臭化物、ヨウ化物及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物、並びに
(3)酸化剤
を含む反応系を用いてセルロース原料を酸化することを含む酸化セルロースの製造方法において、
該酸化剤を、セルロース原料の酸化反応中に、反応系内に一定の時間をかけながら徐々に添加することを特徴とする、酸化セルロースの製造方法。
[2]前記酸化剤の添加速度がセルロース原料1gに対して0.01〜50mmol/分である、[1]に記載の酸化セルロースの製造方法。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいい、本発明では、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、N−オキシル化合物として、下記一般式(式1)で示される化合物が挙げられる。
式1で示される物質のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(TEMPO)は好ましい。また、下記式2〜5のいずれかで表されるN−オキシル化合物、すなわち、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基をアルコールでエーテル化、またはカルボン酸若しくはスルホン酸でエステル化し、適度な疎水性を付与した4−ヒドロキシTEMPO誘導体、あるいは4−アミノTEMPOのアミノ基をアセチル化し、適度な疎水性を付与した4−アセトアミドTEMPOは安価であり、かつ均一な酸化セルロースを得ることができるため、好ましい。
さらに、下記式6で示されるN−オキシル化合物、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルは、短時間で効率よくセルロース原料を酸化でき、また、セルロース鎖の切断も起こりにくいため、好ましい。
N−オキシル化合物の使用量は、セルロース原料を酸化できる触媒量であれば特に限定されず、通常は、例えば、絶乾1gのパルプに対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.01〜1mmol、さらに好ましくは0.01〜0.5mmol程度である。本発明では、比較的少ない量のN−オキシル化合物を用いた場合であっても、比較的短時間で効率良くセルロース原料にカルボキシル基を導入することができる。
本発明に用いられる酸化剤としては、セルロース原料の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。酸化セルロースの生産コストの観点からは、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好適である。酸化剤の最終的な使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.5〜500mmol、好ましくは0.5〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度である。
セルロース原料とは、セルロースを主体とした様々な形態の材料をいい、パルプ(晒又は未晒木材パルプ、晒又は未晒非木材パルプ、精製リンター、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど)、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース、及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロースなどが例示される。
本発明におけるセルロース原料の酸化とは、セルロースの一級水酸基を、カルボキシル基へと酸化することをいう。酸化反応における反応温度は15〜30℃程度の室温でよい。セルロースにカルボキシル基が生成するに伴って、反応系のpH低下が認められるが、酸化反応を効率良く進行させるためには、反応系のpHを9〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが望ましい。反応系の媒体としては、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、0.5〜6時間、好ましくは1〜5時間、さらに好ましくは1〜4時間程度である。本発明では、酸化反応が効率良く進行するため、比較的短時間でもカルボキシル基量の高い酸化セルロースを製造することができる。
本発明において酸化セルロースとは、セルロースの1級水酸基がカルボキシル基へと酸化されたセルロースをいう。酸化セルロースのカルボキシル基量は特に限定されるものではないが、酸化セルロースの質量に基づいて、0.5mmol/g以上となるように反応条件を設定することが好ましい。より好ましくはカルボキシル基量が1.0mmol/g〜3.0mmol/g、さらに好ましくは1.4mmol/g〜2.8mmol/g、特に好ましくは1.5mmol/g〜2.5mmol/gである。カルボキシル基量が上記範囲内となる酸化セルロースは、セルロースナノファイバーの原料として優れている。カルボキシル基量は、酸化反応時間、酸化反応温度、酸化反応時のpH、N−オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物、及び酸化剤の添加量などを調整することにより調整できる。本発明では、N−オキシル化合物の使用量が少なかったり、また、比較的短時間であっても、カルボキシル基量の高い酸化セルロースを製造することができる。
酸化セルロースの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕= a〔ml〕× 0.05/酸化セルロース質量〔g〕。
本発明のセルロース原料の酸化方法は、(1)N−オキシル化合物、並びに(2)臭化物、ヨウ化物又はそれらの混合物を含む反応系に、セルロース原料の酸化反応中、酸化剤を一定の時間をかけて徐々に添加すること(逐次添加)を含む。本発明では、酸化剤の全量を反応系内に一括で投入するのではなく、徐々に添加する。
針葉樹由来の漂白済み未叩解パルプ(日本製紙)5g(絶乾)を、TEMPO(東京化成)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム(和光純薬)756mg(7.35mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで攪拌した。ここに次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬)2.3mmolを水溶液の形態で加え、次いで、次亜塩素酸ナトリウムをパルプ1g当たり0.23mmol/分の添加速度となるように送液ポンプを用いて徐々に添加し、パルプの酸化を行った。次亜塩素酸ナトリウムの全添加量が22.5mmolとなるまで添加を継続した。反応中は系内のpHは低下するが、3N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。水酸化ナトリウム水溶液を添加し始めてから(すなわち、酸化反応が開始されてpHの低下が見られた時点から)、添加を終了するまで(すなわち、酸化反応が終了してpHの低下が見られなくなった時点まで)の時間を反応時間とした。反応後の液をガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化処理したパルプを得た。
針葉樹由来の漂白済み未叩解パルプ(日本製紙)5g(絶乾)を、TEMPO(東京化成)20mg(0.125mmol)と臭化ナトリウム(和光純薬)356mg(3.75mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで攪拌した。ここに次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬)2.3mmolを水溶液の形態で加え、次いで、次亜塩素酸ナトリウムをパルプ1g当たり0.45mmol/分の添加速度となるように送液ポンプを用いて徐々に添加し、パルプの酸化を行った。次亜塩素酸ナトリウムの全添加量が22.5mmolとなるまで添加を継続した。反応中は系内のpHは低下するが、3N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。実施例1と同様にして反応時間を計測した。反応後の液をガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化処理したパルプを得た。
次亜塩素酸ナトリウムの添加速度をパルプ1g当たり0.08mmol/分に変更した以外は、実施例2と同様にして、酸化処理したパルプを得た。
次亜塩素酸ナトリウムの添加速度をパルプ1g当たり2.06mmol/分に変更した以外は、実施例2と同様にして、酸化処理したパルプを得た。
次亜塩素酸ナトリウムの添加速度をパルプ1g当たり10.10mmol/分に変更した以外は、実施例2と同様にして、酸化処理したパルプを得た。
針葉樹由来の漂白済み未叩解パルプ(日本製紙)5g(絶乾)を、TEMPO(東京化成)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム(和光純薬)756mg(7.35mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで攪拌した。ここに次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬)22.5mmolを水溶液の形態で一括で添加し、パルプの酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、3N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。実施例1と同様にして反応時間を計測した。反応後の液をガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化処理したパルプを得た。
一括で添加する次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬)の量を32.5mmolに変更した以外は、比較例1と同様にして、酸化処理したパルプを得た。
針葉樹由来の漂白済み未叩解パルプ(日本製紙)5g(絶乾)をTEMPO(東京化成)59mg(0.375mmol)と臭化ナトリウム(和光純薬)356mg(3.75mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで攪拌した。ここに次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬)32.5mmolを水溶液の形態で一括で添加し、パルプの酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、3N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。実施例1と同様にして反応時間を計測した。反応後の液をガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化処理したパルプを得た。
酸化パルプのカルボキシル基量は、上述した通り、次の方法で測定した:
酸化パルプの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化パルプ〕= a〔ml〕× 0.05/酸化パルプ質量〔g〕。
酸化パルプの回収率は下式を用いて算出した:
Y=(Wr*S/100)/Wp*100
Y;回収率(%)、Wr;回収した酸化パルプのスラリーの質量(g)、S;回収した酸化パルプのスラリーの固形分(%)、Wp;仕込みパルプ絶乾質量(g)。
Claims (3)
- (1)N−オキシル化合物、
(2)臭化物、ヨウ化物及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物、並びに、
(3)酸化剤
を含む反応系を用いてセルロース原料を酸化することを含む酸化セルロースの製造方法において、
セルロース原料1gに対して2.5〜25mmolの該酸化剤を、セルロース原料の酸化反応中に、反応系内にセルロース原料1gに対して2.06〜5mmol/分の速度で徐々に添加することを特徴とする、酸化セルロースの製造方法。 - 前記酸化セルロースがセルロース原料1gに対して1.0〜3.0mmolのカルボキシル基を有する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記酸化剤の量が、セルロース原料1gに対して4.5〜25mmolである、請求項1または2に記載の製造方法。
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