JP5404131B2 - セルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明で用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、本発明で使用されるN−オキシル化合物としては、下記一般式(式1)で示される物質が挙げられる。
式1で表される化合物のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−オキシラジカル(以下TEMPOと称する)及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−オキシラジカル(以下、4−ヒドロキシTEMPOと称する)を発生する化合物が好ましい。また、下記式2〜4のいずれかで表されるN−オキシル化合物のラジカル、すなわち、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基をアルコールでエーテル化、またはカルボン酸若しくはスルホン酸でエステル化し、適度な疎水性を付与した4−ヒドロキシTEMPO誘導体は、安価であり、かつ均一な酸化セルロースを得ることができるため、とりわけ好ましい。
さらに、下記式5で表されるN−オキシル化合物のラジカル、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルは、短時間で、均一なセルロースナノファイバーを製造できるため、とりわけ好ましい。
N−オキシル化合物の使用量は、セルロース系原料をナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.01〜1mmol、さらに好ましくは0.05〜0.5mmol程度を用いることができる。
セルロース系原料の酸化の際に用いる臭化物またはヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などを使用することができる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.1〜100mmol、好ましくは0.1〜10mmol、さらに好ましくは0.5〜5mmol程度を用いることができる。
セルロース系原料の酸化の際に用いる酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。中でも、ナノファイバー生産コストの観点から、現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが、特に好適である。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.5〜500mmol、好ましくは0.5〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度を用いることができる。
本発明で用いるセルロース系原料は特に限定されるものではなく、各種木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末などを使用することができる他、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物を使用することもできる。このうち、漂白済みクラフトパルプ、漂白済みサルファイトパルプ、粉末セルロース、または微結晶セルロース粉末を用いることが量産化やコストの観点から好ましい。また、粉末セルロース及び微結晶セルロース粉末を用いると、高濃度であってもより低い粘度を有するセルロースナノファイバー分散液を製造することができるから、とりわけ好ましい。
本発明の方法は温和な条件であっても酸化反応を円滑に進行させることができるという特色がある。そのため、反応温度は15〜30℃程度の室温であってもよい。なお、反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率良く進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加することにより、反応液のpHを9〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが望ましい。酸化反応における反応時間は、適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、0.5〜4時間程度である。
本発明では、酸化されたセルロース系原料に対して、紫外線を照射する。紫外線の波長は、好ましくは100〜400nmであり、より好ましくは100〜300nmである。このうち、波長135〜260nmの紫外線は、直接セルロースやヘミセルロースに作用して低分子化を引き起こし、短繊維化することができるから、特に好ましい。
紫外線を照射する光源としては、100〜400nmの波長領域の光を持つものが使用でき、具体的には、キセノンショートアークランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ等が一例として挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を任意に組合せて使用することができる。特に波長特性の異なる複数の光源を組み合わせて使用すると、異なる波長の紫外線を同時に照射することによりセルロース鎖やヘミセルロース鎖における切断箇所が増加し、短繊維化が促進されるため好ましい。
本発明において、紫外線照射を行う際の酸化されたセルロース系材料を収容する容器としては、例えば、300nmより長波長の紫外線を用いる場合は、硬質ガラス製のものを用いることができるが、それより短波長の紫外線を用いる場合は、紫外線をより透過させる石英ガラス製のものを用いる方がよい。なお、容器の光透過反応に関与しない部分の材質については、用いる紫外線の波長に対して劣化の少ない材質の中から適切なものを選定することができる。
本発明において、紫外線を照射する際の酸化されたセルロース系原料の濃度は、0.1質量%以上であればエネルギー効率が高まるため好ましく、また12質量%以下であれば紫外線照射装置内でのセルロース系原料の流動性が良好であり反応効率が高まるため好ましい。したがって、0.1〜12質量%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.5〜5質量%、さらに好ましくは、1〜3質量%である。
本発明では、酸化されたセルロース系原料に紫外線を照射した後、解繊・分散処理する。解繊・分散装置の種類としては、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置が挙げられるが、透明性と流動性に優れるセルロースナノファイバー分散液を効率よく得るには、50MPa以上、好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上の条件下で分散できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーで処理することが好ましい。
本発明により製造されるセルロースナノファイバーは、幅2〜5nm、長さ1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルである。本発明において、「ナノファイバー化する」とは、セルロース系原料を、幅2〜5nm、長さ1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルであるセルロースナノファイバーへと加工することを意味する。
本発明では、N−オキシル化合物を用いて酸化されたセルロース系原料に紫外線を照射し、次いで解繊・分散処理することで、高濃度であっても流動性と透明性に優れているセルロースナノファイバー分散液を低い消費電力量で得ることができる。その理由は、以下のように推察される。N−オキシル化合物を用いて酸化されたセルロース系原料の表面にはカルボキシル基が局在しており、水和層が形成されている。そのため、該原料同士の間には、カルボキシル基同士の電荷反発力の作用で、通常のパルプでは見られない微視的隙間が存在すると考えられる。そして、該原料に紫外線を照射すると、該原料の表面の水和層または該原料の間隙水に溶存している酸素からオゾン等の酸化力に優れる活性酸素種が生成し、セルロース鎖が効率よく酸化分解され、最終的にセルロース系原料の短繊維化が促進されると考えられる。セルロース系原料の短繊維化により、次工程での解繊・分散処理における分散液のB型粘度が顕著に低下し、分散液の流動性が向上すると考えられる。また、セルロース系原料の短繊維化により、透明性に優れたセルロースナノファイバー分散液が得られると考えられる。
紫外線を照射しない以外、実施例1と同様にしてナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
分散装置として回転刃を装備したハイシェアーミキサー(周速37m/s、日本精機製作所)を超高圧ホモジナイザーの代わりに使用した以外は、比較例1と同様にしてナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
比較例1により製造した1%(w/v)のセルロースナノファイバー分散液を、B型粘度600mPa・s(60rpm、20℃)となるように濃度を調整した。このときのセルロースナノファイバー濃度は、0.4%(w/v)であった。この分散液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み20μm)片面に、手塗り専用のバー(バーNo.16)で塗工し、50℃で乾燥させてフィルムを形成した。フィルムの厚みは約2.0μmであった。実施例13と同じ厚さである5.9μmのフィルムを形成させるためには、塗布と乾燥を少なくとも2回繰り返す必要があった。
Claims (5)
- (A)(1)N−オキシル化合物、及び、(2)臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、酸化剤を用いてセルロース系原料を酸化すること、
(B)前記(A)からのセルロース系原料に紫外線を照射すること、及び、
(C)前記(B)からのセルロース系原料を解繊・分散処理することによりナノファイバー化すること、
を含む、セルロースナノファイバーの製造方法。 - 前記紫外線の波長が、100〜400nmであることを特徴とする請求項1記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記紫外線の照射が、酸化剤の存在下で行われることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記紫外線の光源が、波長特性の異なる複数の光源からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記解繊・分散処理が、50MPa以上の圧力下で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
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