JP6405751B2 - 微小セルロースの製造方法 - Google Patents

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本発明は、セルロースを出発原料とした微小セルロースの製造方法に関するものである。
近年、資源の枯渇や大気中の二酸化炭素濃度の増加による温暖化や環境汚染、廃棄物問題等を背景に、製造時の化石資源の使用量が少なく、廃棄時において低エネルギーで処理可能であり、さらに、二酸化炭素の排出が少ない、環境に配慮された材料の利用が注目されている。
また、化石資源を原料とせず、一部または全部を天然の植物等を原料とするバイオマス資源由来の材料や、環境中で分解されて水と二酸化炭素になるポリ乳酸に代表される、生分解性材料の積極利用が期待されている。
バイオマス材料の中でも、その生産量の約半分を占めるセルロースは、その生産量の多さから有効利用が期待されている。特に、高強度、高弾性率、極めて低い熱膨張係数を有し、さらに、繊維同士の絡み合い効果も期待されることなどから、微細化したセルロースを用い、樹脂に混練することにより樹脂の改質剤として利用するなど、機能性付与剤としての応用に期待されており、近年では、多くの機関で精力的に開発が進められている。
ところが、セルロースは、その多量な生産量に対して、材料としての利用が多いとは言えない。その理由の一つに、水系や非水系溶剤への溶解性・分散性の低さがある。
セルロースは、ブドウ糖の6員環であるD−グルコピラノースがβ‐(1→4)グルコシド結合したホモ多糖であり、C2位、C3位、C6位に水酸基を持つ。そのため、分子内、分子間に強固な水素結合を形成しており、水や一般的な溶剤に対して溶解しない。
化学的処理を施すことにより最も一般化されたセルロースの利用法の一つに、カルボキシメチル化がある。これは、カルボキシル基がC2位、C3位、C6位の水酸基にランダムに導入され、その置換度により、多置換度では水溶性で増粘剤として利用可能である材料が得られ、低置換度では不溶性のカルボキシメチル化セルロース繊維と多様な材料が得られる。
しかし、セルロースのカルボキシメチル化反応では、多量の有機溶剤を使用し、毒性のあるモノクロロ酢酸を用いているため、環境汚染や廃液処理等への問題がある。また、導入されるカルボキシル基は、水酸基の位置に区別がないため、生成物は不均一な化学構造となる。さらに、化学的な処理を施したことにより、強度、弾性率といった、セルロースが本来有する規則正しい自己集合体から成る高結晶性に由来する、高い物理特性が低下するといった課題がある。
また、近年では、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)を触媒とした酸化反応を用いて、セルロースを処理する方法が注目されている。この方法を用いると、セルロースのC6位の水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基を経由してカルボキシル基が導入される。さらに、カルボキシル基の導入量などを調整すると、水中での様々な分散処理により、透明な分散液が得られる。その際、セルロースは、ミクロフィブリルレベルまで分散され、幅数nm以上数200nm以下の範囲内のナノファイバー状に分散している。また、このTEMPO酸化反応では、有機溶剤は使用せず、常温・常圧の温和な条件下、短時間で反応が完了するなど、反応プロセスの環境適応性が極めて高い。また、TEMPO酸化反応では、セルロースを、繊維状のナノ分散体や液体状態として用いることが可能であり、また、環境への負荷が低いため、TEMPO酸化反応による処理及び酸化物は、セルロースの新たな利用形態として期待されている。
一方、セルロース繊維を機械的な力により微細化し、微小セルロースやその懸濁液を、工業用材料として活用しようとする試みも古くからなされている。
例えば、特許文献1には、繊維状セルロースの水懸濁液を、高圧ホモジナイザー等により、高圧・高速で処理する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、機械的処理のみで繊維状セルロースの水懸濁液を処理するため、処理部が目詰まりを起こしやすく、また、処理効率が低いため、多数の処理回数を必要とするという課題がある。
また、セルロースを、酵素処理や酸薬品処理、アルカリ薬品処理、オートクレーブ処理などの前処理を実施することにより、微細化処理を効率よく行う検討が多くなされてきた。例えば、特許文献2には、酵素処理または薬品処理について、機械的処理の前処理としてセルロースを分解する技術が開示されている。
特公昭63‐44763号公報 特開平6‐10288号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術では、セルロース原料に、最終的に不純物となる物質を添加していることから、不純物を除去するための洗浄工程が必要であり、この洗浄工程における、歩留まりの低下、微小片の流出が避けられないという問題が発生する。
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための、微小セルロースの製造方法、微小セルロース、微小セルロースを用いた成形体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、セルロースを出発原料とするセルロース系材料を乾式で分解する分解工程と、
前記セルロース系材料を機械で微細化する微細化工程と、を有し、
前記分解工程を、液体を用いた洗浄工程を含まない工程とし、
平均繊維長が5μm以上30μm以下の範囲内であり、平均繊維径が0.2μm以上0.8μm以下の範囲内である微小セルロースを製造することを特徴とする微小セルロースの製造方法である。
また、本発明の一態様は、セルロースを出発原料とするセルロース系材料を乾式で分解する分解工程と、
前記セルロース系材料を機械で微細化する微細化工程と、を有し、
前記微細化工程において、前記微細化するセルロース系材料の他は分散媒のみを含み、
平均繊維長が5μm以上30μm以下の範囲内であり、平均繊維径が0.2μm以上0.8μm以下の範囲内である微小セルロースを製造することを特徴とする微小セルロースの製造方法である。
また、本発明の一態様は、前記分解工程において、電子線またはガンマー線を照射して前記セルロース系材料の分子鎖を切断することを特徴とする微小セルロースの製造方法である。
また、本発明の一態様は、前記照射線量が10kGy以上1000kGy以下の範囲内とすることを特徴とする微小セルロースの製造方法である。
また、本発明の一態様は、前記分解工程の前工程または後工程として、前記セルロース系材料を化学処理する化学処理工程を有することを特徴とする微小セルロースの製造方法である。
また、本発明の一態様は、前記分解工程において、前記セルロース系材料の含水率を5wt%以上90wt%以下の範囲内とすることを特徴とする微小セルロースの製造方法である。
また、本発明の一態様は、前記微小セルロースは、セルロースI型の結晶系を有することを特徴とする微小セルロースの製造方法である。
また、本発明の一態様は、上述した微小セルロースの製造方法で製造したことを特徴とする微小セルロースである。
また、本発明の一態様は、上述した微小セルロースを材料として用いたことを特徴とする成形体である。
本発明の一態様であれば、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための、微小セルロースの製造方法と、微小セルロースの製造方法で製造した微小セルロースと、微小セルロースを材料として用いた成形体を提供することが可能となる。
本発明の第一実施形態における、微小セルロースの製造方法を示す図である。 本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。 本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。 本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。 本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(微小セルロースの製造方法)
図1中に示すように、第一実施形態の微小セルロースの製造方法は、分解工程(ステップS10)と、微細化工程(ステップS11)を有し、分解工程、微細化工程の順番に工程を経て、微小セルロースを調整(ステップS12)する方法である。
また、微小セルロースの製造方法では、セルロースを出発原料としたセルロース系材料として、例えば、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプ、具体的には、漂白及び未漂白クラフト木材パルプ、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプ等をはじめ、古紙、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、綿セルロース、麻セルロース並びにこれらの混合物を用いることが可能である。
第一実施形態では、好適なセルロース系材料として、セルロースI型の結晶形を有するセルロース系材料を用いる場合を説明する。
(分解工程)
以下、セルロース系材料の分解工程について説明する。
セルロース系材料の分解において、一般的には、酵素処理や酸薬品処理、アルカリ薬品処理、オートクレーブ処理が行われてきた。これらの分解反応においては、酵素や薬剤が被分解材料の表面から順次処理が進むため、均一に且つ効果的に分解するために、予め分解させたい材料を予備分散させるなどして、表面積を増大させる方法が一般的である。
この予備分散の段階では、分散媒として水などの液体が用いられる。
一方で、第一実施形態の微小セルロースの製造方法では、分解される材料がある程度の体積を持った固体であっても、分解処理が表面や内部に渡って均一に分解されるという特徴を有するため、上述のような予備分散工程を必要としない。そのため、第一実施形態の微小セルロースの製造方法における分解処理は、乾式において実施されるものである。
すなわち、第一実施形態では、分解工程においてセルロース系材料を液体に晒すことなく処理する方法を用いる。さらに、その後、液体を用いた洗浄工程を含まず、材料としては、セルロース系材料のみを用いることにより、分解工程を経たセルロース系材料は、液体に晒されることなく、次の工程へ移行することができる。
セルロース系材料の分解工程において、セルロース系材料以外を含んでいると、分解工程後に酵素や薬剤などの不純物を取り除く目的等のために、液体を用いた洗浄工程が必要となり、洗浄に係る製造コストや製造工程が増大する上、洗浄過程の分解物の流出に伴い歩留まりの低下が引き起こされる。
また、分解工程後に洗浄のために、水などの腐敗しやすい液体を使用すると、劣化や腐敗の進行が加速されるため、保管条件等の制限を厳しくする必要が生じる。さらに、分解工程後に洗浄液に晒されないため、その後洗浄液を嫌った処理を容易に行うことが可能となる。
第一実施形態の微小セルロースの製造方法では、分解工程後の洗浄工程を経ないことにより、製造上のコスト軽減、設計の自由度が大幅に増大する。
このようにして、セルロース系材料が分解工程を経ると、セルロース系材料以外の不純物を含まないため、その後の微細化工程において、分散媒と不純物の親和性を考慮する必要がなく、分散媒の選択肢が広がるという効果も得られる。
第一実施形態の微小セルロースの製造方法における乾式の分解方法としては、電子線やガンマー線を照射する方法を用いることが可能である。
セルロース系材料に電子線やガンマー線を照射すると、照射線量や材料の特性に応じて、材料の改質や分解を促す作用を生じる。一般的に、このような改質・分解のメカニズムとしては、原子間の結合が切断されてラジカルが発生することに起因する。このラジカルにより分子鎖が切断される場合と、ラジカルが瞬時に再結合して共有結合が新たに形成される場合がある。セルロースをはじめとする天然高分子の場合は、再結合に対して分解が優位に進むことから、電子線照射やガンマー線照射により分子鎖を切断することにより、低分子化させる効果を得ることが可能となる。
電子線の照射やガンマー線の照射にてセルロース系材料を処理する際、水を包含したセルロース系材料であると、その含水状態が、分解挙動に影響を及ぼす。
具体的には、電子線やガンマー線が照射された水がラジカルを発生し、そのラジカルにより、セルロース系材料の分解が加速される場合がある一方、水の存在により電子線やガンマー線が遮蔽されて分解効率が低下する場合がある。または、含水状態により材料の分子鎖挙動が異なるため、発生したラジカル同士の接触頻度が増加または減少し、残存ラジカルの寿命、すなわち、分解効果の継続時間が異なる。
本発明におけるセルロース系材料の場合、重量分率において、含水率を5wt%以上90wt%以下の範囲内とすることが好ましい。これは、セルロース系材料の含水率が5wt%未満では、セルロース系材料の凝集が強くなり過ぎるため、その後の分散処理が困難になるなど、処理後のハンドリングが困難になるためである。一方、セルロース系材料の含水率が90wt%よりも大きいと、電子線照射やガンマー線照射の遮蔽効果が大きくなり、セルロース系材料の分解効率が低下するためである。
電子線の照射方法としては、カーテン型、スキャン型、プラズマ放電型等の、いずれも適用可能である。
ガンマー線は、コバルト60を線源に用いることができる。照射線量としては、いずれも10kGy以上1000kGy以下の範囲内が好ましい。これは、照射線量が10kGyよりも少ないと、分解能力が不十分であり、また、照射線量が1000kGyよりも大きい場合は、1000kGyと同等の分解効率しか得られず、照射エネルギーが過剰となるためである。
電子線あるいはガンマー線を照射する環境としては、酸素が存在しないことが好ましい。これは、酸素が存在すると、共有結合の生成を阻害するためであり、酸素濃度としては、500ppm以下が好ましい。
ガンマー線は、物質の透過能力が非常に高いため、照射面に関しては特に限定されず何れの面からでも問題ない。
電子線に関しては、加速電圧により物質の透過能力が異なり、加速電圧が高いほど電子線の物質中の透過能力が高くなる。水の場合では、電子線の加速電圧が2MeVで、8mm程度の透過能力がある。そのため、材料の形態によって、電子線を照射する面を考慮する必要がある。加速電圧としては0.1MeV以上10MeV以下の範囲内が適用可能である。これは、加速電圧が0.1MeVより低いと、電子線透過能力が低いために、電子線照射の効果が材料表面近傍のみに限定されてしまうためである。一方、10MeVよりも高い加速電圧を持つ装置では、設備の規模が大きくなり過ぎて現実的ではないためである。また、電子線透過能力と設備規模の面から、加速電圧は1MeV以上5MeV以下の範囲内がより好ましい。
電子線またはガンマー線を処理する際のセルロース系材料の形態としては、電子線またはガンマー線がセルロース系材料を分解可能な状態において、処理の過程でセルロース系材料が包含する水が過剰に蒸発する場合や、セルロース系材料を包装する包装材料が、電子線処理またはガンマー線照射により生成した分解物等によって、セルロース系材料に対して悪影響を及ぼさない限りは、限定しない。例えば、セルロース系材料をアルミ箔で覆ったものを、電子線またはガンマー線により処理しても構わない。
(微細化工程)
以下、セルロース系材料の微細化工程について説明する。
セルロース系材料において、分解工程を経た後に機械を用いて微細化工程を行うことにより、セルロース系材料の微細化をより効率的に行うことが可能となる。これは、分解工程において、セルロース分子が部分的に分解されてセルロースの繊維間の絡み合いが緩む、または、分子鎖が切断されるため、微細化工程で投入するエネルギーを低減することが可能となるためである。
微細化工程における分散の方法としては、既に知られている各種機械処理を用いることが可能である。例えば、ホモミキサー処理、回転刃付きミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理、ナノジナイザー処理、ディスク型レファイナー処理、コニカル型レファイナー処理、ダブルディスク型レファイナー処理、グラインダー処理、ボールミル処理、ニ軸混練機による混練処理、水中対向処理等がある。この中でも、微細化効率の面から回転刃付きミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理、グラインダー処理が好適である。なお、これらの処理のうち、二つ以上の処理方法を組み合わせて分散を行うことも可能である。
このように、セルロース系材料について分解工程及び微細化工程を施すことにより、微小セルロースを調製することが可能である。
なお、微小セルロースの繊維形状としては、平均繊維長が30μm以下且つ平均繊維幅が0.3μm以下であることが好ましい。得られた微小セルロースは、液状の分散媒と共に、ペースト状、または、分散体として他の材料との混合において均一性を向上させることが可能である。
さらに、各種塗工方式を用いた塗工により薄膜を形成するなど、機能化、加工性における設計の自由度が向上する。特に、セルロースI型の結晶系を有するセルロース材料系からなる塗工膜は、高いガスバリア性を有することが知られており、本発明からなる微小セルロース分散体を用いて、各種基材上にガスバリア層を形成してもよい。
なお、微小セルロースの繊維形状は、0.001wt%以上0.01wt%以下の範囲内に調製した分散体をスライドガラス上に展開して乾燥させ、光学顕微鏡にて観察するか、0.0001wt%以上0.001wt%以下の範囲内に調製した微小セルロース分散体を、表面が平滑なマイカ等に展開して乾燥させSEM観察し、10本の微小繊維を無作為に抽出し、平均値を算出することにより求められる。
なお、第一実施形態の微小セルロースの製造方法で得られた微小セルロース、または、微小セルロース分散体は、金属等を含んでも良い。
金属としては、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、または、これらの合金、または、酸化物、複酸化物、炭化物等を用いることが可能である。
金属の担持方法としては、金属、または、金属酸化物等の微粒子を混合する他、カルボキシル基を有する微小セルロース分散体が金属、または、金属酸化物の錯体を形成し、還元剤を添加することで金属粒子として析出させることが可能である。この担持方法を用いると、微小な金属粒子が微小セルロースの繊維表面に均一に固定化されるため、微量な金属量によって、効率的に効果を発揮させることができる。
また、凝集や沈殿が生成しない範囲においては、より繊維同士の荷電反発を増大させる目的や、分散液の粘度を制御する目的で、水溶性多糖類を含む各種添加物、各種樹脂を含んでも良い。例えば、化学修飾したセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、寒天、可溶化澱粉、グリセリン、ソルビトール、消泡剤、水溶性高分子、合成高分子等を用いることが可能である。あるいは、塗工性や濡れ性など機能性付与等のために、各種溶剤を含んでもよい。この場合、アルコール類、セルソルブ類、グリコール類等を用いることが可能である。さらに、意匠性を付与する目的で、各種染料や顔料、有機フィラー、無機フィラーを含んでも構わない。
また、耐水性、電解液耐性を向上させるために、各種架橋剤を含んでもよい。この場合、例えば、オキサゾリン、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、グリオキザール、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等を用いることが可能である。また、反応性を向上させるなどの目的で、酸やアルカリを添加することにより、pHを調整することが可能である。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。さらに、上述した第一実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。例えば、上述した第一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄に記載した課題が解決可能であり、発明の効果に記載した効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の微小セルロースの製造方法であれば、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大することが可能となる。これに加え、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための微小セルロースの製造方法で製造した微小セルロースと、微小セルロースを材料として用いた成形体を提供することが可能となる。
具体的には、煩雑な操作を経ることなく、高濃度で様々な用途に用いることが可能な微小セルロースを得ることが可能となる。特に、分解工程において微小セルロースの原料となるセルロース系材料のみを含むため、従来のセルロースを分解する方法において不可欠であった、酵素や薬剤等の不純物を取り除く洗浄工程を必要としない。これに加え、セルロースの固形分を高く維持したまま処理することが可能であり、さらに、洗浄工程における歩留まり低下の懸念が無いため、生産性及び実用性を向上させることが可能となる。
(変形例)
以下、第一実施形態の変形例を記載する。
(1)第一実施形態では、微小セルロースの製造方法を、分解工程と、微細化工程を有する方法としたが、これに限定するものではなく、図2中に示すように、微小セルロースの製造方法を、分解工程(ステップS20)と微細化工程(ステップS21)に加え、分解工程の後工程として化学処理工程(ステップS22)を有する方法としてもよい。なお、図2中には、最終的に微小セルロースを調整する工程を、「ステップS23」と示す。
化学処理工程は、微小セルロースへの機能性付与や微細化処理の簡便化等を目的とした工程である。
化学処理工程を、分解工程の後工程とした場合、分解工程で生成したラジカルや反応末端を化学処理により消滅させることが可能となり、材料の化学的安定性を向上させることが可能となる。さらに、化学処理工程の後工程となる微細化工程の処理をより低エネルギーで行うことが可能となる。
(2)第一実施形態では、微小セルロースの製造方法を、分解工程と、微細化工程を有する方法としたが、これに限定するものではなく、図3中に示すように、微小セルロースの製造方法を、分解工程(ステップS31)と微細化工程(ステップS32)に加え、分解工程の前工程として化学処理工程(ステップS30)を有する方法としてもよい。なお、図3中には、最終的に微小セルロースを調整する工程を、「ステップS33」と示す。
化学処理工程を、分解工程の前工程とした場合、セルロース系材料は強固な繊維形状を保持しているため、処理後の洗浄においても歩留まり低下が発生しにくく、洗浄効率も上がる。さらに、分解工程において副生成物が発生する場合、予め化学処理することにより副生成物の生成を抑制することが可能となる。
(3)第一実施形態では、微小セルロースの製造方法を、分解工程と、微細化工程を有する方法としたが、これに限定するものではなく、図4中に示すように、微小セルロースの製造方法を、分解工程(ステップS41)と微細化工程(ステップS43)に加え、分解工程の前工程として化学処理工程(ステップS40)を有し、さらに、分解工程の後工程として漂白工程(ステップS42)を有する方法としてもよい。なお、図4中には、最終的に微小セルロースを調整する工程を、「ステップS44」と示す。
漂白工程は、セルロース系材料の着色を防ぐ工程である。なお、セルロース系材料が着色する原因としては、電子線、または、ガンマー線、熱等の影響による副反応で、生成したセルロースに含まれるアルデヒドや二重結合が考えられる。
漂白方法としては、既存の方法を用いることが可能であり、例えば、塩素処理、次亜塩素酸塩処理、二酸化塩素処理、酸素処理、過酸化水素処理、オゾン処理等を用いることが可能である。また、これらの2種類以上を組み合わせた方法を用いても構わない。あるいは、セルロース中のアルデヒドを酸化や還元することにより着色を防ぐ方法も有用である。
酸化方法、還元方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。酸化方法としては、例えば、酸性下において亜塩素酸ナトリウムを用いて処理する方法を用いることが可能である。また、還元方法としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムの還元力を利用する処理方法を用いることが可能である。また、これらの酸化や還元と、過酸化水素処理等を組み合わせて用いても構わない。
なお、漂白工程は、図5中に示すように、微細化工程の最中に行う工程(微細化・漂白工程)とする等、他の工程に含んで実施してもよい。なお、図5中には、化学処理工程を、「ステップS50」と示し、分解工程を、「ステップS51」と示し、微細化・漂白工程を、「ステップS52」と示し、最終的に微小セルロースを調整する工程を、「ステップS53」と示す。
以下に、本発明の実施例を説明する。なお、以下の実施例は本発明の一例であり、本発明は、これらの実施例には限定されない。
(本発明例1)
本発明例1では、以下の手順により、微小セルロースの調製を行った。
(1)試薬・材料
セルロース:漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ「Machenzie」)
(2)分解工程
セルロース系材料として上記の漂白クラフトパルプを用いた。このとき、漂白クラフトパルプの含水率は7wt%であった。エリア型電子線照射装置キュアトロン(日新ハイボルテージ社製)を用いて、酸素濃度200ppmで、加速電圧2MeVにて、照射線量100kGyの電子線を照射した。なお、電子線の照射線量は、線量計の照射前後の吸光度差から、96.5kGyと算出された。
(3)微細化工程
さらに、分解工程で分解処理を施したセルロースを分散媒として水に加え、ミキサー(大阪ケミカル、アブソルートミル、14,000rpm)を用いて1時間処理した。そして、固形分濃度1%の微小セルロース分散体を得た。
(本発明例2)
本発明例2では、分解工程において、電子線の照射線量を300kGy変更した他は、本発明例1と同様の条件にて微小セルロース分散体を調製した。
(本発明例3)
本発明例3では、分解工程において、電子線処理に代わり照射線量100kGyのガンマー線を照射した他は、本発明例1と同様の条件にて微小セルロース分散体を調製した。
(比較例1)
比較例1では、分解工程を行わない他は、本発明例1と同様の条件にて微小セルロース分散体を調製した。
(比較例2)
比較例2では、分解工程において漂白クラフトパルプに加水し、含水率を95wt%とした他は、本発明例1と同様の条件にて微小セルロース分散体を調製した。
[評価]
本発明例1〜3及び比較例1〜2で得られた微小セルロース分散体について、繊維形状の測定を次のように行った。
[繊維形状]
微細化処理後の微小セルロース分散体を加水して0.001wt%に調整し、スライドガラス上に展開して一晩自然乾燥させたものをSEMにて観察した。さらに、それぞれ任意の10本について、繊維長と繊維幅を計測し、平均値を求めた。
Figure 0006405751
表1中に示すように、セルロース系材料として漂白クラフトパルプに電子線またはガンマー線の照射による分解処理を施した後に微細化処理を施すことにより、本発明例は、比較例よりも微細な繊維形状を有する微小セルロースの分散体を調製することが可能であることが確認された。
本発明によれば、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための方法を提供することが可能となる。本発明の微小セルロースの製造方法によると、煩雑な操作を経ることなく、高濃度で様々な用途に用いることが可能な微小セルロースを得ることが可能となる。特に、従来のセルロースを分解する方法において不可欠であった、酵素や薬剤等の不純物を取り除く工程を必要とせず、さらに、セルロースの固形分を高く維持したまま処理することが可能であることから、分解後に反応媒から回収する際に歩留まりが低下する懸念がないため、生産性が高く、実用的である。また、本発明の微小セルロースの製造方法により調製した微小セルロース分散体は、種々の添加剤や樹脂、金属粒子等との均一性に優れた混和が良好であり、塗工材料を始めとする成形体の材料として用いることが可能である。
S10,S20,S31,S41,S51…分解工程、S11,S22,S32,S43…微細化工程、S12,S23,S33,S44,S53…最終的に微小セルロースを調整する工程、S21,S30,S40,S50…化学処理工程、S42…漂白工程、S52…微細化・漂白工程

Claims (6)

  1. セルロースを出発原料とするセルロース系材料を乾式で分解する分解工程と、
    前記セルロース系材料を機械で微細化する微細化工程と、を有し、
    前記分解工程を、液体を用いた洗浄工程を含まない工程とし、
    前記分解工程において、酸素濃度が500ppm以下の環境、且つ0.1MeV以上10MeV以下の範囲内の加速電圧で電子線を照射して前記セルロース系材料の分子鎖を切断し、
    平均繊維長が5μm以上30μm以下の範囲内であり、平均繊維径が0.2μm以上0.8μm以下の範囲内である微小セルロースを製造することを特徴とする微小セルロースの製造方法。
  2. セルロースを出発原料とするセルロース系材料を乾式で分解する分解工程と、
    前記セルロース系材料を機械で微細化する微細化工程と、を有し、
    前記分解工程において、酸素濃度が500ppm以下の環境、且つ0.1MeV以上10MeV以下の範囲内の加速電圧で電子線を照射して前記セルロース系材料の分子鎖を切断し、
    前記微細化工程において、前記微細化するセルロース系材料の他は分散媒のみを含み、
    平均繊維長が5μm以上30μm以下の範囲内であり、平均繊維径が0.2μm以上0.8μm以下の範囲内である微小セルロースを製造することを特徴とする微小セルロースの製造方法。
  3. 前記電子線の照射線量を、10kGy以上1000kGy以下の範囲内とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した微小セルロースの製造方法。
  4. 前記分解工程の前工程または後工程として、前記セルロース系材料を化学処理する化学処理工程を有することを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した微小セルロースの製造方法。
  5. 前記分解工程において、前記セルロース系材料の含水率を5wt%以上90wt%以下の範囲内とすることを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した微小セルロースの製造方法。
  6. 前記微小セルロースは、セルロースI型の結晶系を有することを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した微小セルロースの製造方法。
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