JP6299939B1 - 増粘剤、組成物及びシート - Google Patents

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Abstract

本発明は、優れた耐光性を発揮し得る増粘剤を提供することを課題とする。本発明は、繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースと、水と、を含む増粘剤であって、増粘剤は、スラリー状又はゲル状であり、増粘剤を、縦1cm×横4cm×高さ4.5cmの内寸を有する無色透明のガラスセルに満たし、ガラスセルの最大面積面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量が10以下である増粘剤に関する。

Description

本発明は、増粘剤、組成物及びシートに関する。具体的には、本発明は、微細繊維状セルロースを含む増粘剤、組成物及びシートに関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースは増粘作用を発揮することができるため、微細繊維状セルロースを増粘剤として各種用途に用いることも検討されている。
例えば、特許文献1には、アニオン変性セルロースナノファイバーと着色防止剤を含むアニオン変性セルロースナノファイバー分散液が開示されている。ここでは、加熱時に着色しない分散液が提供できるとされている。また、特許文献2及び3には、微細繊維状セルロースを含む塗料が開示されている。特許文献2では、所定の長さと幅を有する微細繊維状セルロースを水性塗料用添加剤として用いている。特許文献3では、セルロースナノファイバーと水系エマルション樹脂を含む建築物外壁用塗料が開示されている。
特許文献4には、微細セルロース繊維を含む複合体の製造方法が記載されており、25℃における微細セルロース繊維を0.5質量%含む分散液の粘度を、1s-1のせん断速度のときと、100s-1のせん断速度のときについてそれぞれ所定の範囲内とする方法が記載されている。特許文献5には、セルロース系材料を重合度が250以下の機能性セルロースを製造する方法が記載されている。しかし、特許文献4及び5には紫外線照射前後の黄色度の変化量については記載がない。
特許文献6には、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有する微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース含有物が記載されており、この微細繊維状セルロース含有物は透明に優れ、加熱による黄変が抑制された物であることが記載されている。特許文献7には、加水分解された酸化セルロース系原料を含む分散液を調製し、当該加水分解された酸化セルロース系原料を分散媒中に分散させながら解繊してナノファイバー化することを含む、セルロースナノファイバーの製造方法が記載され、乾燥時の熱によって変色しにくい透明フィルムが得られることが記載されている。しかしながら、特許文献6及び7には、紫外線照射前後の黄色度の変化量が抑制された繊維状セルロース含有物についての記載はない。なお、加熱による黄変のメカニズムと、紫外線照射による黄変のメカニズムとは同一であるとは言えず、加熱による黄変の抑制とは、紫外線照射による黄変の抑制とは異なるパラメーターである。
特許文献8には、高耐候性且つ無臭性のビスコース法セルロース繊維を製造するために、銅換算で0.1〜200ppmのEDTA−銅キレート化合物をビスコース法セルロース繊維に担持させることが記載されている。
国際公開第2016/186055号公報 特開2009−067910号公報 特開2016−098488号公報 特開2015−221844号公報 特開2015−183095号公報 特開2017−66273号公報 特開2012−214717号公報 特開平7−138875号公報
微細繊維状セルロースを含む組成物は、透明な包装材料に充填されることがある。しかしながら、微細繊維状セルロースを含む組成物が透明な包装材料に充填された状態で長期間保管された場合、組成物が光の影響等により劣化することが懸念される。そこで、本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、優れた耐光性を発揮し得る組成物を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースと、水と、を含む増粘剤に紫外線を照射した場合に、紫外線照射前後の増粘剤の黄色度変化量を所定値以下にコントロールすることで、優れた耐光性を発揮し得る組成物が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースと、水と、を含む増粘剤であって、増粘剤は、スラリー状又はゲル状であり、増粘剤を、縦1cm×横4cm×高さ4.5cmの内寸を有する無色透明のガラスセルに満たし、ガラスセルの最大面積面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量が10以下である増粘剤。
[2] 固形分濃度が0.5質量%となるよう調製した希釈液の25℃におけるせん断速度1s-1でのせん断粘度が、3000mPa・s以上である、[1]に記載の増粘剤。
[3] 固形分濃度が0.5質量%となるよう調製した希釈液の25℃におけるせん断速度100s-1でのせん断粘度が、250mPa・s以上である、[1]又は[2]に記載の増粘剤。
[4] 繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースの重合度が、280以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の増粘剤。
[5] 下記手順aで得られた膜の一方の面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量が5以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の増粘剤;
(手順a)
増粘剤をイオン交換水で0.5質量%となるように希釈し、希釈液Aとする;重量平均分子量が400万のポリエチレングリコールをイオン交換水で0.5質量%となるように希釈し、希釈液Bとする;希釈液A 100質量部と、希釈液B 40質量部を混合し、混合液とする;内径12cmのポリスチレン製シャーレに混合液を113g注ぎ、50℃の恒温槽に24時間静置し、形成された膜をポリスチレン製シャーレから剥離する。
[6] 繊維状セルロースは、イオン性置換基を有する[1]〜[5]のいずれかに記載の増粘剤。
[7] 増粘剤を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後に測定されるスラリーのpHが6以上10以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の増粘剤。
[8] 繊維状セルロース及び水の合計含有量は、増粘剤の全質量に対して、90質量%以上である[1]〜[7]のいずれかに記載の増粘剤。
[9] 増粘剤を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定されるスラリーのヘーズが20%以下である[1]〜[8]のいずれかに記載の増粘剤。
[10] 増粘剤を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、B型粘度計を用いて、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させることで測定されるスラリーの粘度が3000mPa・s以上である[1]〜[9]のいずれかに記載の増粘剤。
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の増粘剤を含む組成物。
[12] 樹脂成分をさらに含む[11]に記載の組成物。
[13] [1]〜[10]のいずれかに記載の増粘剤を含むシート。
本発明によれば、優れた耐光性を発揮し得る組成物を得ることができる。
図1は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(増粘剤)
本発明は、繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースと、水と、を含む増粘剤であって、スラリー状又はゲル状の増粘剤に関する。この増粘剤を、縦1cm×横4cm×高さ4.5cmの内寸を有する無色透明のガラスセルに満たし、ガラスセルの最大面積面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量は10以下である。なお、本明細書における微細繊維状セルロースには、繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースが含まれる。
本発明の増粘剤は、上記構成を有するものであるため、該増粘剤を含む組成物は、優れた耐光性を発揮することができる。組成物の耐光性は、組成物を透明な包装材料に充填した後、180日間以上といった長期間保管し、劣化状況等を観察することで評価することができる。例えば、耐光性を評価する際には、組成物を透明な包装材料に充填して長期間保管した後の着色具合を観察し、着色が抑制されている場合には耐光性が良好であると評価できる。
本発明は、組成物中の各成分のうちの微細繊維状セルロースを含む増粘剤の特性が、組成物の耐光性に大きく影響することを新たに見出したものでもある。本発明者らが微細繊維状セルロースを含む組成物について、その耐光性を向上させることを検討した結果、上記構成を有する増粘剤を用いることに至り、優れた耐光性を有する組成物を実現した。
また、本発明においては、増粘剤を用いて得られるシートも優れた耐光性を発揮することができる。増粘剤を用いて得られるシートの耐光性は、増粘剤を含む塗液を基材上に塗工し、100℃の乾燥機で1時間乾燥させることで塗膜(シート)を形成した後、180日間以上といった長期間保管し、劣化状況等を観察することで評価することができる。例えば、長期間保管した後のシートの着色具合を観察し、着色が抑制されている場合には耐光性が良好であると評価できる。なお、本明細書においては、シートは膜、塗膜、フィルム等を包含するものである。
本明細書において、スラリーとは固形物が分散している液体をいう。具体的には、粘度が105mPa・s未満の液状物をスラリーと呼び、粘度が105mPa・s以上109mPa・s未満の固形物をゲルと呼ぶ。なお、粘度が109mPa・s以上の流動性を有さない固形物は、固体と呼ぶ。
増粘剤を、縦1cm×横4cm×高さ4.5cmの内寸を有する無色透明のガラスセルに満たし、ガラスセルの最大面積面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量は10以下である。なお、ガラスセルの最大面積面とは、ガラスセルの側面であって、4.5cmの高さ辺と、4cmの横辺で周囲を囲まれた面である。紫外線照射前後の黄色度の変化量は9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。
上記条件で紫外線を照射する際には、例えば、耐候性試験機(スガ試験機社製、スーパーキセノンウェザーメーターSX75)を用いることができる。なお、紫外線照射前後の増粘剤の黄色度を測定する際には、増粘剤を上記ガラスセルに満たした状態で測定する。測定機器としては、例えば、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いることができる。そして、紫外線照射前後の黄色度の変化量は、下記の式により算出される。
紫外線照射前後の黄色度の変化量=(紫外線照射後の増粘剤の黄色度)−(紫外線照射前の増粘剤の黄色度)
本発明の増粘剤を用いて下記手順aで膜を作製し、膜の一方の面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量は5以下である。紫外線照射前後の黄色度の変化量は4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1以下であることが特に好ましい。
(手順a)
増粘剤をイオン交換水で0.5質量%となるように希釈し、希釈液Aとする。重量平均分子量が400万のポリエチレングリコールをイオン交換水で0.5質量%となるように希釈し、希釈液Bとする。希釈液A 100質量部と、希釈液B 40質量部を混合し、混合液とする。内径12cmのポリスチレン製シャーレに混合液を113g注ぎ、50℃の恒温槽に24時間静置し、形成された膜をポリスチレン製シャーレから剥離する。
上記手順aでは坪量が50g/m2の膜が得られる。このような膜に上記条件で紫外線を照射する際には、例えば、耐候性試験機(スガ試験機社製、スーパーキセノンウェザーメーターSX75)を用いることができる。また、膜の紫外線照射前後の黄色度を測定する際に用いる機器としては、例えば、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いることができる。そして、紫外線照射前後の黄色度の変化量は、下記の式により算出される。
紫外線照射前後の黄色度の変化量=(紫外線照射後の膜の黄色度)−(紫外線照射前の膜の黄色度)
増粘剤中の8nm以下の繊維状セルロースの含有量は、増粘剤の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、8nm以下の繊維状セルロースの含有量は、増粘剤の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
また、増粘剤中の水の含有量は、増粘剤の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。また、水の含有量は、増粘剤の全質量に対して、99.99質量%以下であることが好ましく、99.90質量%以下であることがより好ましい。
さらに、8nm以下の繊維状セルロース及び水の含有量は、増粘剤の全質量に対して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。なお、8nm以下の繊維状セルロース及び水の含有量は、増粘剤の全質量に対して、100質量%であってもよい。このように、本発明の増粘剤においては、大部分が8nm以下の繊維状セルロースと水で占められており、他の成分が含まれていないか、含まれていても少量であることが好ましい。
増粘剤を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後に測定されるスラリーのpHは6以上であることが好ましく、6.5以上であることがより好ましく、7.0以上であることがさらに好ましい。該スラリーのpHは7.5以上とすることもできる。また、スラリーのpHは10以下であることが好ましく、9.5以下であることがより好ましい。
増粘剤を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定されるスラリーのヘーズは、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが一層好ましく、2.4%以下であることが特に好ましい。なお、スラリーのヘーズは2.0%以下とすることもできる。スラリーのヘーズの測定に用いるヘーズメータとしては、例えば、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を挙げることができる。ヘーズを測定する際には、25℃の環境下にて16時間以上静置した固形分濃度が0.2質量%のスラリーを、光路長1cmの液体用ガラスセルに入れ、測定を行う。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行う。
増粘剤を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、B型粘度計を用いて、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させることで測定されるスラリーの粘度は、3000mPa・s以上であることが好ましく、5000mPa・s以上であることがより好ましく、9000mPa・s以上であることがさらに好ましく、20000mPa・s以上であることが特に好ましい。また、スラリーの粘度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、100000mPa・sとすることができる。粘度を測定する際には、25℃の環境下にて16時間以上静置した固形分濃度が0.4質量%のスラリーを、B型粘度計を用いて測定する。B型粘度計としては、例えば、B型粘度計(No.3ローター)(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を挙げることができる。
本発明の増粘剤としては、固形分濃度が0.5質量%となるよう調製した希釈液の25℃におけるせん断速度1s-1でのせん断粘度が、2000mPa・sより大きいことが好ましく、3000mPa・s以上であることがより好ましく、4000mPa・s以上であることがより一層好ましく、5000mPa・s以上であることがさらに好ましく、7000mPa・s以上であることがさらに一層好ましく、9000mPa・s以上であることが特に好ましく、10000mPa・s以上であることが最も好ましい。上記のせん断速度1s-1でのせん断粘度の上限は特に限定されないが、一般的には30000mPa・s以下であり、好ましくは20000mPa・s以下である。
本発明の増粘剤としては、固形分濃度が0.5質量%となるよう調製した希釈液の25℃におけるせん断速度100s-1でのせん断粘度が、200mPa・sより大きいことが好ましく、250mPa・s以上であることがより好ましく、300mPa・s以上であることがより一層好ましく、350mPa・s以上であることがさらに好ましく、400mPa・s以上であることがさらに一層好ましく、450mPa・s以上であることが特に好ましく、500mPa・s以上であることが最も好ましい。上記のせん断速度100s-1でのせん断粘度の上限は特に限定されないが、一般的には2000mPa・s以下であり、好ましくは1000mPa・s以下である。
せん断粘度の測定は以下の方法で行うものとする。増粘剤にイオン交換水を注ぎ、固形分濃度が0.5質量%となるよう希釈液を調製し、測定環境を温度25℃とした後、希釈液をレオメーター(ハーケ社製、レオストレス1)の測定台に配置する。せん断速度0.01s-1から100s-1について連続的にせん断粘度を測定し、1s-1及び100s-1におけるせん断粘度の値を求める。
本発明の増粘剤における、繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースの重合度は、250より大きいことが好ましく、280以上であることがより好ましく、300以上であることがより一層好ましく、350以上であることがさらに好ましく、400以上であることが特に好ましく、500以上が最も好ましい。繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースの重合度の上限は特に限定されないが、一般的には2000以下であり、1000以下であることが好ましい。
繊維状セルロースの重合度は、Tappi T230に従い測定する。すなわち、測定対象の繊維状セルロースを分散媒に分散させて測定した粘度(η1とする)、および分散媒体のみで測定したブランク粘度(η0とする)を測定したのち、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を下記式に従って測定する。
ηsp=(η1/η0)−1
[η]=ηsp/(c(1+0.28×ηsp))
ここで、式中のcは、粘度測定時の微細繊維状セルロースの濃度を示す。
さらに、下記式から微細繊維状セルロースの重合度(DP)を算出する。
DP=1.75×[η]
本発明の増粘剤は、上述のように、優れた耐光性とともに、高い粘度および高い重合度を実現することができる。
<微細繊維状セルロース>
本発明の増粘剤は、微細繊維状セルロースを含み、微細繊維状セルロースとして、繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースを含む。
本発明で用いる微細繊維状セルロースにおいては、グルコース単位の含有率をCglu(質量%)、キシロース単位の含有率をCxyl(質量%)、マンノース単位の含有率をCman(質量%)、ガラクトース単位の含有率をCgal(質量%)、アラビノース単位の含有率をCara(質量%)とした場合、(Cxyl+Cman+Cgal+Cara)/Cgluの値が0.1より大きいことが好ましく、0.12以上であることがより好ましい。なお、本明細書の実施例1から6で作製したリン酸基導入セルロース繊維についての(Cxyl+Cman+Cgal+Cara)/Cgluは0.12以上である。
グルコース単位の含有率Cglu、キシロース単位の含有率Cxyl、マンノース単位の含有率Cman、ガラクトース単位の含有率Cgal、アラビノース単位の含有率Caraは、微細繊維状セルロースを単糖まで加水分解をした後に、イオンクロマトグラフィーで測定をすることができる。具体的には、微細繊維状セルロースを、絶乾質量で200mg採取し、これに72%硫酸7.5mlを加える。その後、振盪恒温槽に入れ、30℃、160rpmで60分間振盪攪拌して第1の加水分解を行う。次いで、第1の加水分解後のパルプ分散液30μlを、超純水840μlを入れた1.5mlチューブにとり、攪拌して硫酸濃度4%に希釈する。その後、オートクレーブにて121℃で1時間処理し、第2の加水分解処理を行う。その後、カラム(ダイオネクス社製、CarboPac PA1)を装着したイオンクロマトグラフィー(ダイオネクス社製、ICS−5000)を用いて、グルコース単位の含有率Cglu、キシロース単位の含有率Cxyl、マンノース単位の含有率Cman、ガラクトース単位の含有率Cgal、アラビノース単位の含有率Caraを定量する。本発明では、グルコース単位、キシロース単位、マンノース単位、ガラクトース単位及びアラビノース単位の合計を100質量%として、各単位の含有率を算出する。
イオンクロマトグラフィーでの分析においては、流速を1ml/分、カラム温度を室温に設定する。移動相には水を用い、洗浄液には0.3Nの水酸化ナトリウム水溶液、0.1Nの水酸化カリウム水溶液、0.25Nの炭酸ナトリウム水溶液を用いる。分析においては、アラビノース、ガラクトース、グルコース、キシロース、マンノースの順序で分離され、溶出する。検出されるピークはダイオネックス社製の解析ソフト(PeakNet)を用いて解析する。
なお、各単糖単位の含有率について、解繊後に得られる微細繊維状セルロースを加水分解して測定した値は、解繊直前のパルプ原料を加水分解して測定した値と同等である。
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、本発明の増粘剤に含まれる微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が8nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースは、イオン性官能基を有していることが好ましい。イオン性官能基はアニオン基であることが好ましく、このようなイオン性官能基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。
リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 0006299939
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を表す(ただし、a=b×mである);αおよびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」ともいう)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の含有量(リン酸基の導入量)は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり、0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましい。また、リン酸基の含有量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.00mmol/g以下であることがより好ましく、2.00mmol/g以下であることがさらに好ましく、1.50mmol/g未満であることが特に好ましい。リン酸基の含有量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、増粘剤の黄色度変化をより効果的に抑制することができる。なお、本明細書において、微細繊維状セルロースが有するリン酸基の含有量(リン酸基の導入量)は、後述するように微細繊維状セルロースが有するリン酸基の強酸性基量と等しい。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<カルボキシル基の導入工程>
本発明においては、微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、たとえば繊維原料にTEMPO酸化処理などの酸化処理を施すことや、カルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって処理することで、カルボキシル基を導入することができる。
カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
カルボキシル基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましい。また、カルボキシル基の含有量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。
カルボキシル基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図2に示した曲線を与える。図2に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程やカルボキシル基導入工程といったイオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、イオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みイオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<解繊処理工程>
イオン性置換基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶媒を使用することができる。好ましい極性有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本発明では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
<任意成分>
本発明の増粘剤は、上述した微細繊維状セルロースと水からなるものであることが好ましいが、上述した微細繊維状セルロースと水の他に任意成分を含んでいてもよい。増粘剤が任意成分を含む場合、任意成分の含有量は、増粘剤の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
なお、増粘剤が含み得る任意成分としては、後述する組成物が含み得る他の成分と同様のものを列挙することができる。
(増粘剤の製造方法)
本発明の増粘剤の製造方法は、微細繊維状セルロースの分散液に対して、黄変抑制処理を施す工程を含むことが好ましい。本発明においては、微細繊維状セルロースの分散液に黄変抑制処理を施すことで、本発明の増粘剤を含む組成物は優れた耐光性を発揮できるものと推定される。
黄変抑制処理が施される微細繊維状セルロースの分散液は、上述した<解繊処理工程>を経て得られる微細繊維状セルロースの分散液である。該分散液の固形分濃度は0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
黄変抑制処理を施す工程としては、例えば、電子線照射工程を挙げることができる。電子線照射工程では、微細繊維状セルロースの分散液に対して、電子線の照射を行う。この際、微細繊維状セルロースの分散液は、基板上に塗り広げられた状態とし、その状態で電子線を照射することが好ましい。微細繊維状セルロースの分散液を塗り広げる基板としては、例えば、ポリカーボネートシート等の樹脂基板を挙げることができる。そして、電子線を照射する際には、微細繊維状セルロースの分散液は、厚みが1mm以上20mm以下となるように塗り広げられた状態であることが好ましい。なお、微細繊維状セルロースの分散液の蒸散を防ぐために、電子線の照射は微細繊維状セルロースの分散液の塗工後、直ちに行うことが好ましく、具体的には1時間以内に行うことが好ましい。
電子線照射工程では、加速電圧が0.1MeV以上10.0MeV以下、照射線量が1kGy以上100kGy以下の電子線を照射することが好ましい。中でも、電子線の加速電圧は、0.5MeV以上であることがより好ましく、1.0MeV以上であることがさらに好ましい。また、電子線の加速電圧は、5.0MeV以下であることがより好ましく、3.0MeV以下であることがさらに好ましい。電子線の照射線量は、3kGy以上であることがより好ましく、5kGy以上であることがさらに好ましい。また、電子線の照射線量は、50kGy以下であることがより好ましく、30kGy以下であることがさらに好ましい。
電子線照射工程では、電子線を複数回照射することが好ましい。電子線の照射回数は、2回以上50回以下であることが好ましく、3回以上20回以下であることがより好ましい。なお、電子線照射工程は、窒素ガス環境下で行うことが好ましい。また、電子線照射工程で用いる装置としては、例えば、電子線照射装置(ESI社製、エレクトロカーテン)を挙げることができる。
本実施形態においては、例えば電子線照射を複数回照射する、特定範囲の加速電圧を有する電子線を照射するといった、黄変抑制処理の方法やその条件を高度に調整することによって、増粘剤の紫外線照射前後の黄色度変化を適切な範囲に制御することができる。これは、上記のように黄変抑制処理の方法やその条件を調整することで、増粘剤中に含まれる繊維状セルロースやその他の成分について、その存在状態を好適なものとすることができるためであると推定される。さらに、黄変抑制処理の方法やその条件を高度に調整することにより、黄色度変化、粘度および重合度のバランスに優れた増粘剤を得ることも可能となる。
電子線照射工程後には、微細繊維状セルロースの分散液は回収される。回収された微細繊維状セルロースの分散液の固形分濃度は適宜調整される。高濃度の増粘剤とする際には、濃縮工程が設けられてもよく、低濃度の増粘剤とする際には希釈工程が設けられてもよい。また、任意成分や溶媒等と混合してもよい。
(組成物)
本発明は、上述した増粘剤と、他の成分を含む組成物に関するものであってもよい。他の成分としては、例えば、ワックス成分、樹脂成分、親水性高分子、有機イオン等を挙げることができる。なお、本明細書においては、任意成分を含む増粘剤を組成物と呼ぶこともある。
本発明は、上述した増粘剤と、ワックス成分と、を含む組成物に関するものであってもよい。ワックス成分としては、市販の各種のワックス、例えば石油系ワックス、植物性ワックス、動物系ワックス、低分子量ポリオレフィン類などを使用することができる。例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス(カルナバ蝋)、及びキャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体等が挙げられる。なお、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、及びグラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、及びパルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油及びその誘導体等も挙げられる。増粘剤とワックス成分を含む組成物は、例えば、ワックスとして好ましく用いられる。
組成物が、増粘剤とワックス成分を含む場合、組成物中に含まれるワックス成分の含有量は、組成物の全質量に対して、0.01質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。ワックス成分の含有量を上記範囲内とすることにより、耐光性に優れた組成物を得ることができる。
本発明は、上述した増粘剤と、樹脂成分と、を含む組成物に関するものであってもよい。樹脂成分は熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。このような熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂エマルジョンであってもよい。増粘剤と樹脂成分を含む組成物は、例えば、塗料として好ましく用いられる。
組成物が、増粘剤と樹脂成分を含む場合、組成物中に含まれる樹脂成分の含有量は、組成物の全質量に対して、1質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
組成物は、他の成分として、親水性高分子や有機イオンを含んでもよい。親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体などを挙げることができる。中でも、親水性高分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)及びポリエチレンオキサイド(PEO)から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
有機イオンとしては、例えば、テトラアルキルアンモニウムイオンやテトラアルキルホスホニウムイオンを挙げることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルエチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリブチルベンジルアンモニウムイオンが挙げられる。テトラアルキルホスホニウムイオンとしては、例えばテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、およびラウリルトリメチルホスホニウムイオンが挙げられる。また、有機イオンとして、テトラプロピルオニウムイオン、テトラブチルオニウムイオン、特にテトラn−プロピルオニウムイオン、テトラn−ブチルオニウムイオンなども挙げることができる。
さらに、他の成分としては、例えば、フィラー、顔料、染料、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を挙げることもできる。
(増粘剤の用途)
本発明の増粘剤は、各種用途に使用することができる。例えば、上述した増粘剤を含むシートを形成することができる。該シートは、増粘剤を含む組成物から形成されたものであってもよい。例えば、本発明の増粘剤を樹脂成分と混合して膜状体とすることや、当該膜状体を乾燥させることにより、各種シートを形成することができる。これにより、耐光性の高いシートを製造することができる。このようなシートは、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池等の光透過性基板の用途に適している。また、このようなシートは、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。なお、本発明の増粘剤を樹脂成分と混合することで、糸、フィルタ、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材等を形成することもできる。
増粘剤を含むシートを形成する際には、増粘剤と樹脂成分を含む組成物を基材上に塗工する工程を設けることが好ましい。また、増粘剤と樹脂成分を含む組成物を抄紙することによって、シートを形成することもできる。
また、本発明の増粘剤は、塗料、ワックス、食品、掘削用地下処理用組成物、化粧品、インク、薬剤、医療品等への添加剤として用いることもできる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
<リン酸基導入セルロース繊維の作製>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2のシート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を原料として使用した。上記針葉樹クラフトパルプ100質量部(絶乾質量)を、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液に含浸させ、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12以上13以下のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を添加した。撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。得られた脱水シートの赤外線吸収スペクトルをFT−IRで測定した。その結果、1230cm-1以上1290cm-1以下にリン酸基に基づく吸収が観察され、リン酸基の付加が確認された。
<解繊処理>
得られた脱水シートにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2.2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で245MPaの圧力にて3回処理し、微細繊維状セルロース分散液Aを得た。
<置換基量の測定>
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理及びアルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の繊維状セルロース含有スラリーに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1(リン酸基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。算出した結果、リン酸基導入量は1.00mmol/gであった。
<繊維幅の測定>
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
微細繊維状セルロース分散液Aの上澄み液を、固形分濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL−2000EX)により観察した。これにより、平均繊維幅が4nm程度の微細繊維状セルロースになっていることを確認した。また、得られた繊維状セルロースの繊維幅は、8nm以下であった。
<電子線の照射>
微細繊維状セルロース分散液Aにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2.0質量%のスラリーを調製した。次いで、A4サイズに裁断したポリカーボネートシート(帝人社製、パンライトPC−2151、厚み300μm)上に、フィルムアプリケータ(クリアランス3mm、塗工幅150mm)を用いて、スラリーを塗工した。塗工後のポリカーボネートシートに対し、窒素ガス環境下で電子線照射装置(ESI社製、エレクトロカーテン)により加速電圧1.0MeV、照射線量10kGyの電子線を直ちに5回照射した。この際、照射面となる上面側がスラリーの塗工面となるようにした。その後、スラリーをポリカーボネートシート上から回収し、評価用スラリー(増粘剤)とした。
[実施例2]
実施例1の<電子線の照射>において、加速電圧を0.5MeVとした。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。
[実施例3]
実施例1の<電子線の照射>において、電子線の照射回数を10回とした。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。
[実施例4]
実施例1の<リン酸基導入セルロース繊維の作製>において、得られた脱水シートに対し、リン酸基を導入する工程、濾過脱水する工程を再度繰り返し、二回リン酸化セルロースの脱水シートを得た。この脱水シートから得られた微細繊維状セルロース分散液A中の微細繊維状セルロースのリン酸基導入量は、1.50mmol/gであった。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。
[実施例5]
実施例1において、微細繊維状セルロース分散液Aの代わりに、後述の微細繊維状セルロース分散液Bを使用した。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。なお、微細繊維状セルロース分散液Bは以下のようにして製造した。
<TEMPO酸化>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2のシート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を原料として使用した。上記針葉樹クラフトパルプ100質量部(絶乾質量)と、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル)1.25質量部と、臭化ナトリウム12.5質量部とを水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が8.0mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10以上11以下に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。
<TEMPO酸化パルプの洗浄>
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
<解繊処理>
得られた脱水シートにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2.2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で245MPaの圧力にて5回処理し、微細繊維状セルロース分散液Bを得た。
<置換基量の測定>
置換基(カルボキシル基)導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理及びアルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の微細繊維状セルロース分散液Bに、体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024:コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂と分散液を分離して、分散液をアルカリを用いた滴定に供した。アルカリを用いた滴定では、図2(カルボキシル基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。滴定法により測定される置換基(カルボキシル基)の導入量は1.0mmol/gであった。
[実施例6]
実施例1の<電子線の照射>において、イオン交換水を添加する際、カルナバ蝋を添加し、微細繊維状セルロース2.0質量%、カルナバ蝋0.5質量%、水97.5質量%となるようにした。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。
[比較例1]
実施例1において、<電子線の照射>を行わなかった。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。
[比較例2]
実施例4において、<電子線の照射>を行わなかった。その他の手順は実施例4と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。
[比較例3]
実施例5において、<電子線の照射>を行わなかった。その他の手順は実施例5と同様にし、評価用スラリー(増粘剤)を得た。
<測定>
実施例及び比較例で得られた評価用スラリーを、以下の方法に従って測定した。
[紫外線照射前後のスラリーの黄色度変化量]
評価用スラリーを縦1cm×横4cm×高さ4.5cmの内寸を有する無色透明のガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)に満たし、注入口(縦×横で構成される面)を覆うようにポリエステル製の粘着テープを貼合し、封をした。次いで、このガラスセルを耐候性試験機(スガ試験機社製、スーパーキセノンウェザーメーターSX75)の槽内に固定し、波長300nm以上400nm以下の紫外線を、ガラスセルの最大面積面(高さ×横で構成される面)側から、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した。
紫外線照射前後の評価用スラリーの黄色度は、JIS K 7373に準拠して測定した。黄色度を測定する際には、紫外線照射前後の評価用スラリーを縦1cm×横4cm×高さ4.5cmの内寸を有する無色透明のガラスセルに満たした状態で、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いて、ガラスセルの注入口(縦×横で構成される面)を上側に向けて装置に固定し、光路長1cmで測定した。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行った。紫外線照射前後の評価用スラリーの黄色度から、スラリーの黄色度変化量を下記の式により算出した。
紫外線照射前後のスラリーの黄色度変化量=(紫外線照射後のスラリーの黄色度)−(紫外線照射前のスラリーの黄色度)
[紫外線照射前後の膜の黄色度変化量]
評価用スラリー(増粘剤)にイオン交換水を加え、固形分濃度が0.5質量%となるよう調製し、希釈液Aを得た。次いで、ポリエチレンオキサイド(和光純薬社製、分子量400万)をイオン交換水で0.5質量%に希釈し、希釈液Bを得た。その後、希釈液Aが100質量部、希釈液Bが40質量部となるよう混合し、混合液を得た。次いで、上記混合液113gを、内径12cmのポリスチレン製シャーレに注ぎ、50℃の恒温槽(乾燥機)に24時間静置し、形成された膜をポリスチレン製シャーレから剥離した。以上の手順により坪量50g/m2の膜を得た。次いで、この膜を耐候性試験機(スガ試験機社製、スーパーキセノンウェザーメーターSX75)の槽内に固定し、波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した。
紫外線照射前後の膜の黄色度は、JIS K 7373に準拠して測定した。測定には、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いた。紫外線照射前後の膜の黄色度から、膜の黄色度変化量を下記の式より算出した。
紫外線照射前後の膜の黄色度変化量=(紫外線照射後の膜の黄色度)−(紫外線照射前の膜の黄色度)
[ヘーズ]
評価用スラリーにイオン交換水を注ぎ、固形分濃度が0.2質量%となるよう希釈液を調製した。その後、希釈液を25℃の環境下に16時間以上静置し、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて希釈液のヘーズを測定した。測定の際には、光路長1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)に希釈液を入れ、測定した。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行った。
[粘度]
評価用スラリーにイオン交換水を注ぎ、固形分濃度が0.4質量%となるよう希釈液を調製した。その後、希釈液を25℃の環境下にて16時間以上静置し、B型粘度計(No.3ローター)(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて25℃にて回転数3rpmで3分間回転させて希釈液の粘度を測定した。
[pH]
評価用スラリーにイオン交換水を注ぎ、固形分濃度が0.4質量%となるよう希釈液を調製した。その後、希釈液を25℃の環境下にて16時間以上静置し、pHメーター(堀場製作所社製、LAQUAact)を用いて25℃にて希釈液のpHを測定した。
[1s-1、および100s-1におけるせん断粘度]
評価用スラリーにイオン交換水を注ぎ、固形分濃度が0.5質量%となるよう希釈液を調製した。測定環境を温度25℃とした後、希釈液をレオメーター(ハーケ社製、レオストレス1)の測定台に配置して、せん断速度0.01s-1から100s-1について連続的にせん断粘度を測定した。このときの1s-1及び100s-1におけるせん断粘度の値を求めた。
[微細繊維状セルロースの重合度]
評価用スラリーに含まれる微細繊維状セルロースの重合度は、Tappi T230に従い測定した。すなわち、測定対象の微細繊維状セルロースを分散媒に分散させて測定した粘度(η1とする)、および分散媒体のみで測定したブランク粘度(η0とする)を測定したのち、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を下記式に従って測定した。
ηsp=(η1/η0)−1
[η]=ηsp/(c(1+0.28×ηsp))
ここで、式中のcは、粘度測定時の微細繊維状セルロースの濃度を示す。
さらに、下記式から微細繊維状セルロースの重合度(DP)を算出した。
DP=1.75×[η]
この重合度は粘度法によって測定された平均重合度であることから、「粘度平均重合度」と称されることもある。なお、実施例6で得た評価用スラリーについては、カルナバ蝋を含有するため正確な測定ができないものと判断し、測定を行わなかった。
<評価>
実施例及び比較例で得られた評価用スラリーを、以下の方法に従って評価した。
[モデル塗料の経時安定性]
評価用スラリーにイオン交換水とアクリルエマルジョン(DIC社製、ボンコートMAT−200−E)を加え、微細繊維状セルロースが0.5質量%、アクリルエマルジョンの固形分が20質量%、水が79.5質量%となるように調製し、モデル塗料を得た。次いで、モデル塗料をポリプロピレン製のボトル(透明タイプ、容量1L、胴径96mm×全高198mm)に満たし、温度25℃の直射日光の当たらない環境下に180日間静置した。静置した後にモデル塗料の外観を観察し、モデル塗料の耐光性を下記の基準に従って評価した。
◎:黄色味、または茶色味が感じられない。
○:僅かに黄色味、または茶色味が感じられる。
×:はっきりと黄色味、または茶色味が感じられる。
[モデル塗膜の経時安定性]
上記のモデル塗料を、フィルムアプリケータ(クリアランス1mm、塗工幅150mm)を用いて、PETフィルム上(東レ社製、ルミラーS10、厚み250μm)に塗工した。次いで、塗工後のPETフィルムを100℃の乾燥機で1時間乾燥させ、揮発成分を揮発させてモデル塗膜とPETフィルムの積層体を得た。その後、積層体を温度25℃の直射日光の当たらない環境下に180日間静置した。静置した後にモデル塗膜の外観を観察し、モデル塗膜の耐光性を下記の基準に従って評価した。
◎:黄色味、または茶色味が感じられない。
○:僅かに黄色味、または茶色味が感じられる。
×:はっきりと黄色味、または茶色味が感じられる。
Figure 0006299939
表1から明らかなように、実施例で得られたスラリーは、紫外線照射後の黄色度変化量が少なかった。また、実施例で得られたスラリーから形成された膜は、紫外線照射後の黄色度変化量が少なかった。その結果、モデル塗料及びモデル塗膜は優れた耐光性を有していた。また、実施例で得られたスラリーは、耐光性に優れるとともに、高い粘度および高い重合度を実現することができた。
一方、比較例では、紫外線照射前後のスラリーの黄色度変化量、塗膜の黄色度変化量が大きい値となり、結果としてモデル塗料、モデル塗膜の耐光性が低下していた。

Claims (11)

  1. 繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースと、水と、を含む増粘剤であって、
    前記増粘剤は、スラリー状又はゲル状であり、
    前記増粘剤を、縦1cm×横4cm×高さ4.5cmの内寸を有する無色透明のガラスセルに満たし、前記ガラスセルの最大面積面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量が10以下であり、
    固形分濃度が0.5質量%となるよう調製した希釈液の25℃におけるせん断速度1s -1 でのせん断粘度が、3000mPa・s以上であり、
    繊維幅が8nm以下の繊維状セルロースの重合度が、280以上である、
    増粘剤。
  2. 固形分濃度が0.5質量%となるよう調製した希釈液の25℃におけるせん断速度100s-1でのせん断粘度が、250mPa・s以上である、請求項1に記載の増粘剤。
  3. 下記手順aで得られた膜の一方の面側から、キセノンランプを用いて波長300nm以上400nm以下の紫外線を、放射照度が180W/m2、積算光量が500mJ/m2となるように照射した場合、JIS K 7373に準拠して測定される紫外線照射前後の黄色度の変化量が5以下である請求項1又は2に記載の増粘剤。
    (手順a)
    前記増粘剤をイオン交換水で0.5質量%となるように希釈し、希釈液Aとする;重量平均分子量が400万のポリエチレングリコールをイオン交換水で0.5質量%となるように希釈し、希釈液Bとする;前記希釈液A 100質量部と、前記希釈液B 40質量部を混合し、混合液とする;内径12cmのポリスチレン製シャーレに前記混合液を113g注ぎ、50℃の恒温槽に24時間静置し、形成された膜を前記ポリスチレン製シャーレから剥離する。
  4. 前記繊維状セルロースは、イオン性置換基を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の増粘剤。
  5. 前記増粘剤を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後に測定される前記スラリーのpHが6以上10以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の増粘剤。
  6. 前記繊維状セルロース及び前記水の合計含有量は、前記増粘剤の全質量に対して、90質量%以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の増粘剤。
  7. 前記増粘剤を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定される前記スラリーのヘーズが20%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の増粘剤。
  8. 前記増粘剤を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、B型粘度計を用いて、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させることで測定される前記スラリーの粘度が3000mPa・s以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の増粘剤。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の増粘剤を含む組成物。
  10. 樹脂成分をさらに含む請求項に記載の組成物。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の増粘剤を含むシート。
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