JP7039828B2 - シート及びシートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シート及びシートの製造方法に関する。具体的には、本発明は、微細繊維状セルロース繊維を含み、新規形態を有するシート及び該シートの製造方法に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。また、繊維状セルロースは、吸放湿機能を有することから、断熱材等としても利用されている(例えば、特許文献1)。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。近年は、このような微細繊維状セルロースから構成されるシートや、微細繊維状セルロースを含む成形物の開発が検討されている。
例えば、特許文献2には、平均繊維径が2~1000nmの微小セルロース繊維から構成される多孔質体であって、見掛け密度が0.005~0.15g/cm3のセルロース多孔質体が開示されている。ここでは、微小セルロース繊維を含むスラリーを凍結乾燥することで多孔質体を形成している。また、特許文献3には、石膏等の多孔質基材にセルロースナノファイバー水溶液を載せ、圧力をかけることで溶媒を除去し、セルロースナノファイバーを含有する成形物を製造する方法が開示されている。ここでは、セルロース等の天然資源を利用した高分子の成形体を少ないエネルギーで製造する方法を提供することが検討されている。また、水や湿度に強い成形物を提供することも検討されている。
特開2012-144952号公報 特開2010-215872号公報 特開2011-38031号公報
微細繊維状セルロースを含むシートや成形体としては種々の形態が知られているが、従来のシートにはない特性を有する微細繊維状セルロース含有シートの開発も求められている。
そこで本発明者らは、新規な形態を有する微細繊維状セルロース含有シートを提供することを目的として検討を進めた。具体的には、低密度でありながらも高い含水率を有する微細繊維状セルロース含有シートを開発することを目的として検討を進めた。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、以下に示すように、新規な形態を有する微細繊維状セルロース含有シートが得られることを見出した。
[1] 繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を含むシートであって、シートの含水率が15質量%以上95質量%以下であり、シートの密度が0.005g/cm3以上0.50g/cm3以下であるシート。
[2] 親水性化合物をさらに含む[1]に記載のシート。
[3] 厚みが2mm以上である[1]又は[2]に記載のシート。
[4] 以下条件(a)で測定したヘーズが10%以下である[1]~[3]のいずれかに記載のシート;
条件(a)
シートを、ミキサーを用いて20000rpmで1分間粉砕して、得られた粉砕物に、固形分濃度が0.6質量%になるようイオン交換水を添加し、全量を80gとして、ディスパーザーを用いて8000rpmで5分撹拌し、分散液Aを得る;分散液Aの固形分濃度が0.2質量%になるようイオン交換水でさらに希釈し、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分撹拌し、分散液Bを得る;分散液Bを光路長1cmのガラスセルに入れ、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーターを用いてヘーズを測定する。
[5] 以下条件(b)で測定した粘度が200mPa・s以上である[1]~[4]のいずれかに記載のシート;
条件(b)
シートを、ミキサーを用いて20000rpmで1分間粉砕して、得られた粉砕物に、固形分濃度が0.6質量%になるようイオン交換水を添加し、全量を80gとして、ディスパーザーを用いて8000rpmで5分撹拌し、分散液Aを得る;分散液Aの固形分濃度が0.4質量%になるようイオン交換水でさらに希釈し、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分撹拌し、分散液Cを得る;B型粘度計を用い、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させ、得られた分散液Cの粘度を測定する。
[6] 繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を含むスラリーを、乾燥速度50g/m2・分以上で乾燥する工程を含み、含水率が15質量%以上95質量%以下であり、密度が0.005g/cm3以上0.50g/cm3以下のシートの製造方法。
[7] スラリーの固形分濃度が0.5質量%以上5質量%以下である[6]に記載のシートの製造方法。
本発明によれば、新規な形態を有する微細繊維状セルロース含有シートを得ることができる。具体的には、低密度でありながらも高い含水率を有する微細繊維状セルロース含有シートを得ることができる。
図1は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図3は、本発明のシートの一例の写真である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(シート)
本発明は、繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を含むシートに関する。ここで、シートの含水率は15質量%以上95質量%以下であり、シートの密度は0.005g/cm3以上0.50g/cm3以下である。本明細書においては、繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を微細繊維状セルロースと呼ぶことがあり、このような微細繊維状セルロースを含むシートを微細繊維状セルロース含有シートと呼ぶことがある。
本発明においては、従来のシートにはない特性を兼ね備えた微細繊維状セルロース含有シートが得られる。具体的には、低密度でありながらも高い含水率を有する微細繊維状セルロース含有シートが得られる。従来、低密度の微細繊維状セルロース含有シートとしては、例えば多孔質体のような低密度シートが知られている。しかし、従来の低密度の微細繊維状セルロース含有シートは、シートの表面から裏面に向かって貫通する多数の貫通孔を有するものが一般的であり、含水率は非常に低いものであった。一方、本発明のシートは、シート内部にも細かな孔(非貫通孔)を多数有する多孔質体であるため、低密度でありながらも高い含水率を発揮することができる点に特徴がある。このように、本発明のシートはシート内部にも細かな孔を多数有する低密度のシートであって、高含水率を発揮し得る全く新しい形態のシートである。
本発明のシートは、柔軟性を有しており、クッション性に優れている点にも特徴がある。本発明のシートは、外部からの力で変形し得る(たわむ)柔軟性を有している。そして、外部からの力を解除した際に、元の形状に戻る回復力を備えている。本明細書においては、このように変形した後(たわんだ後)に、元の形状に回復する性質をクッション性と定義しており、本発明のシートは優れたクッション性を有している。
シートの含水率は、15質量%以上であればよく、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが一層好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、シートの含水率は、95質量%以下であればよい。なお、本明細書において、シートの含水率は、シート500mgを水分率計(エー・アンド・デイ社製、MS-70)に載せ、含水率の時間変化が0.02%/分以下になるまで140℃で加熱して測定する。
なお、含水率を測定する際には、固形分濃度が既知であって、固形分の絶乾質量が既知である原料スラリーの重量と乾燥後のシート重量を測定し、その差から含水率を算出することもできる。いずれの方法で含水率を測定した場合であっても、シートの含水率は実質的に同じ値となる。
シートの厚みは2mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましく、4mm以上であることが特に好ましい。なお、シートの厚みの上限値は特に限定されるものではないが、例えば、50mmとすることができる。なお、シートの厚みは、シート平面内に存在する任意の3点における厚みをノギスで測定し、3点の厚みの平均値を算出したものである。本発明のシートは、上記範囲内の厚みを有することで、高い含水率と優れたクッション性を発揮しやすくなる。
シートの密度は、0.005g/cm3以上であればよく、0.01g/cm3以上であることが好ましく、0.05g/cm3以上であることがより好ましく、0.10g/cm3以上であることがさらに好ましい。また、シートの密度は、0.50g/cm3以下であればよく、0.45g/cm3以下であることが好ましく、0.40g/cm3以下であることがより好ましい。なお、シートの密度は、シート体積とシート重量から算出する値である。シートの体積は、シートが直方体形状である場合は、上述した方法で算出した厚み(3点の厚みの平均値)と、シートの縦横の長さから算出することができる。なお、シートが直方体形状ではない場合は、シートを直方体形状となるように切り出した後に、体積と重量を測定することが好ましい。
シートに含まれる微細繊維状セルロース繊維の含有量は、シートの全質量に対して2.5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
<親水性化合物>
本発明のシートは、親水性化合物をさらに含んでもよい。親水性化合物は、保湿剤としてシートの含水率を高める働きをすることができる。また、親水性化合物は、後述するようにシートの再分散性を高める働きもする。これは、親水性化合物が微細繊維状セルロースの各繊維間の隙間に入り込み、各繊維が凝集することを抑制するためであると考えられる。すなわち、親水性化合物は、保湿剤として用いられてもよく、また、再分散を容易にするためのスペーサーとして用いられてもよい。
親水性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等の親水性高分子;トレハロース、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール等の親水性低分子が挙げられる。これらの中でも、含水率を高める観点からは、トレハロースを用いることが好ましく、シートの再分散を容易にするためのスペーサーとしての役割の観点からは、トレハロースやポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
親水性化合物の含有量は、微細繊維状セルロース100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましく、30質量部以上であることが特に好ましい。また、親水性化合物の含有量は、微細繊維状セルロース100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。親水性化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、シートの含水率をより高め、またシートの再分散性をより高めることができる。
<任意成分>
シートには、微細繊維状セルロース以外の任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、フィラー、顔料、染料、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等が挙げられる。
<微細繊維状セルロース>
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有するシートは高強度が得られる傾向がある。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースは、置換基を有するものであることが好ましく、置換基はアニオン基であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。すなわち、本発明で用いられる微細繊維状セルロースはリン酸化セルロースであることが好ましい。
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであることが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には-PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 0007039828000001
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1以上n以下の整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1-フェニル尿素、1-ベンジル尿素、1-メチル尿素、1-エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースのスラリーの粘度を適切な範囲に調整することができ、これにより、所望の厚みを有するシートを形成しやすくなる。なお、本明細書において、微細繊維状セルロースが有するリン酸基の含有量(リン酸基の導入量)は、後述するように微細繊維状セルロースが有するリン酸基の強酸性基量と等しい。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。例えば、リン酸基導入工程を2回行うことが好ましい。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<カルボキシル基導入工程>
微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、カルボキシル基導入工程を経ることで微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。カルボキシル基導入工程では、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって繊維原料を処理することで、微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。
カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
カルボキシル基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合、その処理をpHが6以上8以下の条件で行うことも好ましい。このような処理工程は中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、例えば、リン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、パルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)等のニトロキシラジカル、犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシル基まで酸化することが出来る。
カルボキシル基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、カルボキシル基の導入量は、3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。
カルボキシル基の導入量は伝導度滴定法で測定することができる。伝導度滴定法による測定の際には、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーに、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定する。
伝導度滴定法では、アルカリを加えていくと、図2に示した曲線を与える。この曲線は、電気伝導度が減少した後、伝導度の増分(傾き)がほぼ一定となるまでを第1領域、その後、伝導度の増分(傾き)が増加する第2領域に区分される。なお、第1領域、第2領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。図2で示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除して、カルボキシル基の導入量(mmol/g)とする。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程やカルボキシル基導入工程といったイオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、イオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みイオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<解繊処理>
イオン性置換基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、またはt-ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本発明では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
(シートの再分散性)
本発明のシートは、再分散性を有していてもよい。ここで、再分散性とは、シートを粉砕して水等の溶媒に混合した際、シートの粉砕物が溶媒に均一に分散する性質をいう。微細繊維状セルロースを含有するシートの粉砕物が溶媒に均一に分散した場合、分散液の粘度は高まり、かつ、分散液の透明性も高まる。
本発明においては、以下条件(a)で測定したヘーズは10%以下である。
条件(a)
シートを、ミキサーを用いて20000rpmで1分間粉砕して、得られた粉砕物に、固形分濃度が0.6質量%になるようイオン交換水を添加し、全量を80gとして、ディスパーザーを用いて8000rpmで5分撹拌し、分散液Aを得る。分散液Aの固形分濃度が0.2質量%になるようイオン交換水でさらに希釈し、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分撹拌し、分散液Bを得る。分散液Bを光路長1cmのガラスセルに入れ、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーターを用いてヘーズを測定する。
条件(a)で測定した分散液のヘーズは、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。なお、分散液のヘーズは0%であってもよい。
また、本発明においては、以下条件(b)で測定した粘度は200mPa・s以上である。
条件(b)
シートを、ミキサーを用いて20000rpmで1分間粉砕して、得られた粉砕物に、固形分濃度が0.6質量%になるようイオン交換水を添加し、全量を80gとして、ディスパーザーを用いて8000rpmで5分撹拌し、分散液Aを得る。分散液Aの固形分濃度が0.4質量%になるようイオン交換水でさらに希釈し、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分撹拌し、分散液Cを得る。B型粘度計を用い、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させ、得られた分散液Cの粘度を測定する。
条件(b)で測定した分散液の粘度は、200mPa・s以上であることが好ましく、600mPa・s以上であることがより好ましく、700mPa・s以上であることがさらに好ましく、800mPa・s以上であることが一層好ましい。また、分散液の粘度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、50000mPa・sとすることができる。
なお、条件(a)及び(b)において、シートを粉砕する際には、例えば、岩谷産業社製、ミルサー800DGを用いることができる。ミルサー800DG等のミキサーによる粉砕条件は20000rpmで1分間とする。
また、条件(a)で使用するヘーズメーターとしては、例えば、村上色彩技術研究所社製、HM-150を用いることができる。なお、ヘーズを測定する際には、光路長1cmのガラスセルにイオン交換水を加えたものをゼロ点とする。
条件(b)で使用するB型粘度計としては、例えば、BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T-LVTを用いることができる。
本発明のシートは、上述したように再分散性を有していてもよく、再分散性を有するシートを例えば、農業栽培用のシートとして用いた場合、使用後に生分解がされやすくなるという利点がある。また、本発明のシートを使用後に再分散させ新たなシートを形成することで、再利用も可能となる。
(シートの製造方法)
本発明は、シートの製造方法に関するものでもある。本発明のシートの製造方法は、繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を含むスラリーを、乾燥速度50g/m2・分以上で乾燥する工程を含む。上記工程を経て得られるシートの含水率は15質量%以上95質量%以下であり、シートの密度は0.05g/cm3以上0.5g/cm3以下である。
乾燥する工程では、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等の種々の方法を採用することができる。中でも、熱風乾燥及びマイクロ波乾燥から選択される少なくとも1種を採用することが好ましく、マイクロ波乾燥を採用することが特に好ましい。なお、マイクロ波乾燥と熱風乾燥の両方を組み合わせて採用することも好ましい。
乾燥工程に供するスラリーの固形分濃度は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、乾燥工程に供するスラリーの固形分濃度は、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。乾燥工程に供するスラリーの固形分濃度を上記範囲内とすることにより、低密度なシートであって、かつ高い含水率を有するシートが得られる。また、乾燥工程に供するスラリーの固形分濃度を上記範囲内とすることにより、優れたクッション性を有するシートを得ることができる。
乾燥工程に供するスラリーは、ある程度以上の厚みとなるように容器に充填し、その状態で容器ごと乾燥することが好ましい。乾燥前に容器に充填されたスラリーの厚みは、0.5cm以上であることが好ましく、1cm以上であることがより好ましく、2cm以上であることがさらに好ましい。また、乾燥前に容器に充填されたスラリーの厚みは、15cm以下であることが好ましい。このように、乾燥前に容器に充填されたスラリーの厚みを上記範囲内となるように調整することで、低密度でありながらも高い含水率を有するシートが形成されやすくなる。
なお、スラリーを充填する容器は、例えば、充填したいスラリーの厚みの1.5倍以上の高さを有していることが好ましい。スラリーを充填する容器としては、例えば、テフロン製容器、ポリプロピレン製容器、ポリスチレン製容器等を挙げることができる。
乾燥工程に供するスラリーは、板上に塗工され、その状態で乾燥されてもよい。この際、塗工厚みは、0.5cm以上であることが好ましく、1cm以上であることがより好ましく、2cm以上であることがさらに好ましい。スラリーがある程度以上の粘度を有する場合は、容器に充填する方法に加えて、塗工する方法を採用することもできる。
乾燥工程では、微細繊維状セルロース含有スラリーを、乾燥速度50g/m2・分以上で乾燥することが好ましい。乾燥速度は、60g/m2・分以上であることがより好ましく、100g/m2・分以上であることがさらに好ましく、1000g/m2・分以上であることがよりさらに好ましく、2000g/m2・分以上であることが一層好ましく、3000g/m2・分以上であることがより一層好ましく、4000g/m2・分以上であることが特に好ましい。すなわち、本発明のシートの製造方法における乾燥工程では、急速乾燥を行うことが好ましい。
なお、本発明においては、乾燥条件を途中で変更する2段階以上の乾燥工程を設けてもよい。この場合、少なくともいずれか1つの段階において、上記乾燥速度が達成されていればよい。
乾燥工程において、マイクロ波乾燥を行う場合、マイクロ波出力は、3kW以上であることが好ましく、4kW以上であることがより好ましく、5kW以上であることがさらに好ましく、6kW以上であることが一層好ましく、10kW以上であることが特に好ましい。なお、2段階以上の乾燥工程を設ける場合は、少なくともいずれか1つの段階において、上記マイクロ波出力が達成されていればよい。
乾燥工程において、熱風乾燥を行う場合は、熱風温度は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。なお、上記熱風温度は、炉内に吹き込まれた後の熱風温度であり、炉内の温度と同一である。
乾燥工程において例えば、12kWでマイクロ波乾燥を行う場合、乾燥時間は、1分以上であることが好ましく、2分以上であることがより好ましい。また、12kWでマイクロ波乾燥を行う場合、乾燥時間は、5.5分以下であることが好ましく、5分以下であることがより好ましく、4.5分以下であることがさらに好ましい。なお、マイクロ波出力を12kWよりも弱くする場合は、乾燥時間は上記時間よりも長いことが好ましく、一方で、マイクロ波出力を12kWよりも強くする場合は、乾燥時間は上記時間よりも短いことが好ましい。また、マイクロ波乾燥と熱風乾燥を組み合わせて行う場合も、マイクロ波乾燥を単独で行う場合と比較して乾燥時間を短くすることが好ましい。
乾燥工程では、シートの含水率が15質量%以上95質量%以下になるまで乾燥を行うことが好ましい。含水率を上記範囲となるように調整するためには、例えば、乾燥時間を調整したり、マイクロ波出力を調整したり、熱風温度を調整することができる。
(用途)
本発明のシートは、例えば、冷却シート、農業用栽培シート、培地等の保水性が必要とされるシートや、家電の部材、内装材、外装材、包装用資材の補強材、断熱材、クッション、緩衝剤、充填材、吸音材、シーリング材、スポンジ、パッド、防振材として好適である。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(リン酸基導入セルロース繊維の作製)
針葉樹クラフトパルプ100質量部(絶乾質量)を、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液に含浸させ、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12以上13以下のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を添加した。撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
得られた脱水シートに対し、先と同様にして、リン酸基を導入する工程、濾過脱水する工程を繰り返し、二回リン酸化セルロースの脱水シートを得た。得られた脱水シートの赤外線吸収スペクトルをFT-IRで測定した。その結果、1230cm-1以上1290cm-1以下にリン酸基に基づく吸収が観察され、リン酸基の付加が確認された。
(機械処理)
得られた二回リン酸化セルロースの脱水シートにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で245MPaの圧力にて3回処理し、微細繊維状セルローススラリー1を得た。
(置換基量の測定)
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1(リン酸基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。算出した結果、1.59mmol/gであった。
(繊維幅の測定)
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
微細繊維状セルローススラリー1の上澄み液を濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL-2000EX)により観察した。これにより、幅4nm程度の微細繊維状セルロースになっていることを確認した。
<実施例1>
微細繊維状セルローススラリー1を原料スラリーとした。内法寸法が長さ10cm×幅10cm×高さ4.5cmのテフロン製容器に、原料スラリーを厚さが2cmとなるよう隙間なく充填した。コンベア式マイクロ波乾燥装置(ミクロ電子社製)を用い、マイクロ波出力を12kWに設定して4.5分乾燥し、シートを得た。
<実施例2>
乾燥条件を、マイクロ波出力12kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間2分とした。それ以外は全て実施例1と同様の方法でシートを得た。
<実施例3>
乾燥条件を、マイクロ波出力12kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間3分とした。それ以外は全て実施例1と同様の方法でシートを得た。
<実施例4>
乾燥工程を二段階とし、一段階目の乾燥条件を、マイクロ波出力12kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間1分とした。二段階目の乾燥条件を、マイクロ波出力6.4kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間4.5分とした。それ以外は全て実施例1と同様の方法でシートを得た。
<実施例5>
乾燥工程を二段階とし、一段階目の乾燥条件を、マイクロ波出力12kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間1.5分とした。二段階目の乾燥条件を、マイクロ波出力4kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間4.5分とした。それ以外は全て実施例1と同様の方法でシートを得た。
<実施例6>
微細繊維状セルローススラリー1に2質量%のトレハロース溶液を添加し、微細繊維状セルロース100質量部に対し、トレハロースが40質量部のスラリーを調製し、これを原料スラリーとした。乾燥工程を二段階とし、一段階目の乾燥条件を、マイクロ波出力12kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間1.5分とした。二段階目の乾燥条件を、マイクロ波出力4kWかつ、炉内温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間4.5分とした。それ以外は全て実施例1と同様の方法でシートを得た。
<実施例7>
微細繊維状セルローススラリー1を1質量%に希釈し、ポリエチレングリコール(第一工業製薬、PEG200)を添加し、微細繊維状セルロース100質量部に対し、ポリエチレングリコールが40質量部のスラリーを調製し、これを原料スラリーとした。内法寸法が長さ10cm×幅10cm×高さ4.5cmのテフロン製容器に、原料スラリーを厚さが2cmとなるよう隙間なく詰めた。乾燥工程を二段階とし、炉内温度140℃の送風乾燥機で5.5時間乾燥した後、炉内温度105℃の送風乾燥機で1時間乾燥し、シートを得た。
<比較例1>
実施例1において、乾燥時間を6分に延長した。それ以外は全て実施例1と同様の方法でシートを得た。
<比較例2>
実施例6において、乾燥工程を一段階とし、乾燥条件を、マイクロ波出力12kWかつ温度100℃(熱風発生装置を使用)、乾燥時間6分とした。それ以外は全て実施例6と同様の方法でシートを得た。
<比較例3>
微細繊維状セルローススラリー1を長さ10cm×幅6cm×厚さ3cmの直方体状となるように、500mLのプラスチック容器内に充填し、凍結乾燥機(ラブコンコ社製、FreeZone)を用いて-50℃で4日間真空凍結乾燥し、シートを得た。
(評価)
(含水率の測定)
実施例及び比較例で得られたシート500mgを水分率計(エー・アンド・デイ社製、MS-70)に載せ、含水率の時間変化が0.02%/分以下になるまで140℃で加熱して測定した。
(密度の測定)
実施例及び比較例で得られたシートの縦横の長さを測り、任意の3点の厚みをノギスで測定した。3点の厚みの平均とシートの縦横の長さから、シートの体積を算出した。シート体積とシート重量からシートの密度を算出した。なお、表1及び2における厚みは任意の3点の厚みの平均値である。
(乾燥速度の算出)
実施例及び比較例で用いた原料スラリーについて、乾燥前の重量を測定した。乾燥後、得られたシートの重量を測定し、乾燥前後の重量変化から水蒸発量を算出した。水蒸発量、乾燥時間、原料スラリーの塗付面積から乾燥速度(g/m2・分)を算出した。
(クッション性の測定)
実施例及び比較例で得られたシートの両端を持ってたわませ、その後、シートの両端部から手を離し、その際のシート形状を観察した。そして、シートのクッション性を以下基準で評価した。
○:シートが容易にたわみ、手を離すと元の形状に戻る。
△:やや力を入れるとシートがたわみ、手を離すと元の形状に戻る。
×:力を入れてもシートがたわまない、もしくは、力を入れてもシートがたわんだ場合であっても元の形状に戻らない。
(分散液の粘度の測定)
実施例及び比較例で得られたシートをミキサー(岩谷産業社製、ミルサー800DG)を用いて、20000rpmで1分間粉砕して、粉砕物を得た。この粉砕物に、全固形分濃度が0.6質量%になるようイオン交換水を添加し、全量を80gとし、ディスパーザーを用いて8000rpmで5分撹拌した。この分散液の全固形分濃度が0.4質量%になるようイオン交換水でさらに希釈し、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分撹拌した。得られた0.4質量%の分散液の粘度を、B型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T-LVT)を用い、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させ、測定した。
(分散液のヘーズの測定)
分散液の粘度の測定において得られた分散液をイオン交換水で2倍希釈し、全固形分濃度が0.2質量%の分散液とした。この分散液を光路長1cmのガラスセル(藤原製作所製、MG-40)に入れ、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いてヘーズを測定した。なお、同ガラスセルにイオン交換水を加えたものをゼロ点とした。
Figure 0007039828000002
Figure 0007039828000003
実施例では、密度が低いが、含水率の高い微細繊維状セルロース含有シートが得られた。また、実施例で得られたシートは、クッション性に優れていた。
なお、図3は、本発明の実施例で得られたシートの一例の様子を示す写真である。

Claims (7)

  1. 繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を含むシートであって、
    前記シートの含水率が45質量%以上95質量%以下であり、
    前記シートの密度が0.005g/cm以上0.50g/cm以下であるシート。
  2. 親水性化合物をさらに含む請求項1に記載のシート。
  3. 厚みが2mm以上である請求項1又は2に記載のシート。
  4. 以下条件(a)で測定したヘーズが10%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のシート;
    条件(a)
    シートを、ミキサーを用いて20000rpmで1分間粉砕して、得られた粉砕物に、固形分濃度が0.6質量%になるようイオン交換水を添加し、全量を80gとして、ディスパーザーを用いて8000rpmで5分撹拌し、分散液Aを得る;分散液Aの固形分濃度が0.2質量%になるようイオン交換水でさらに希釈し、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分撹拌し、分散液Bを得る;分散液Bを光路長1cmのガラスセルに入れ、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーターを用いてヘーズを測定する。
  5. 以下条件(b)で測定した粘度が200mPa・s以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のシート;
    条件(b)
    シートを、ミキサーを用いて20000rpmで1分間粉砕して、得られた粉砕物に、固形分濃度が0.6質量%になるようイオン交換水を添加し、全量を80gとして、ディスパーザーを用いて8000rpmで5分撹拌し、分散液Aを得る;分散液Aの固形分濃度が0.4質量%になるようイオン交換水でさらに希釈し、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分撹拌し、分散液Cを得る;B型粘度計を用い、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させ、得られた分散液Cの粘度を測定する。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のシートの製造方法であって、
    繊維幅が1000nm以下であるセルロース繊維を含むスラリーを、乾燥速度50g/m・分以上で乾燥する工程を含み、
    含水率が45質量%以上95質量%以下であり、密度が0.005g/cm以上0.50g/cm以下のシートの製造方法。
  7. 前記スラリーの固形分濃度が0.5質量%以上5質量%以下である請求項6に記載のシートの製造方法。
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