JP2015183095A - 機能性セルロース及びその製造方法、並びに、機能性セルロース分散体、成形体 - Google Patents

機能性セルロース及びその製造方法、並びに、機能性セルロース分散体、成形体 Download PDF

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奈緒 西嶋
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【課題】天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための機能性セルロースの製造方法を提供する。【解決手段】セルロースを出発原料とするセルロース系材料を、N−オキシル化合物、臭化アルカリ、及び酸化剤を用いて化学的に処理した。次に、化学的に処理したセルロース系材料に電子線又はガンマー線を照射して、重合度が250以下の機能性セルロースを得た。そして、機能性セルロースを分散媒に分散して機能性セルロース分散体を得た。【選択図】図1

Description

本発明は、機能性セルロース及びその製造方法、並びに、機能性セルロース分散体、成形体に関する。
近年、資源の枯渇や大気中の二酸化炭素濃度の増加による温暖化や環境汚染、廃棄物問題などを背景に、製造時の化石資源の使用量が少なく、廃棄時において低エネルギーで処理でき二酸化炭素の排出量が少ない、環境に配慮された材料の利用が注目されている。こうした中、化石資源を原料とせず、一部又は全部を天然の植物などを原料とするバイオマス資源由来の材料や、環境中で分解されて水と二酸化炭素になるポリ乳酸に代表される生分解性材料の積極利用が期待されている。
バイオマス材料の中でもその生産量の約半分を占めるセルロースは、その生産量の多さから有効利用が期待されている。さらに、高強度、高弾性率、極めて低い熱膨張係数を有しており、耐熱性に関して記述すると、ガラス転移点を持たず、230℃と高い熱分解温度を示す。
ところが、セルロースはその多量な生産量に対して材料としての利用が多いとは言えない。その理由の一つに、水系溶剤や非水系溶剤への溶解性・分散性の低さがある。セルロースは、ブドウ糖の6員環であるD−グルコピラノースがβ−(1→4)グルコシド結合したホモ多糖であり、C2位、C3位、C6位に水酸基を持つ。そのため、分子内、分子間に強固な水素結合を形成しており、水や一般的な溶剤に対してほとんど溶解しない。
最も一般的なセルロースの利用法の一つにカルボキシメチル化がある。カルボキシル基がセルロースのC2位、C3位、C6位の水酸基にランダムに導入され、その置換度によって多様な材料が得られる。例えば、多置換度では水溶性で増粘剤として利用できるものが得られ、低置換度では不溶性のカルボキシメチル化セルロース繊維が得られる。しかし、セルロースのカルボキシメチル化反応では多量の有機溶剤を使用し、毒性のあるモノクロロ酢酸を用いているため、環境汚染や廃液処理などの問題がある。また、導入されるカルボキシル基は水酸基の位置に区別がないため、生成物は不均一な化学構造となる。
また、近年、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(以下「TEMPO」と記す)を触媒とした酸化反応を用いてセルロースを処理する方法が注目されている。この方法を用いると、セルロースのC6位の水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基を経由してカルボキシル基が導入される。さらに、カルボキシル基の導入量などを調整すると、水中での様々な分散処理により透明な分散液が得られる。その際、セルロースはミクロフィブリルレベルまで分散され、幅が数nm〜数百nm(例えば200nm)のナノファイバー状に分散している。また、このTEMPO酸化反応では有機溶剤は使用せず、常温・常圧の温和な条件下、短時間で反応が完了するなど、反応プロセスの環境適応性が極めて高い。セルロースをナノ分散体や液体状態として用いることができ、また環境への負荷が低いため、TEMPO酸化反応による処理及び酸化物はセルロースの新たな利用形態として期待されている。
特許文献1には、TEMPO酸化反応を工業的に活用できる方法が示されている。特許文献1に開示の方法を用いることにより、セルロースの化学処理により上述のように溶媒に容易に溶解又は分散できるようになるため、溶液状態(又は分散液状態)として他の材料と均一に混合したり各種塗工方式を用いた塗工により薄膜を形成するなど、機能化、加工性における使い易さが格段に向上した。ところが、分散液の粘度が高いために高濃度化できず、そのため生産性が低い点が実用化応用を阻害する要因の一つに挙げられる。
そこで、高濃度化を目的として種々の方法が開発されてきた。例えば特許文献2には、セルロースにTEMPO酸化等によりカルボキシル基を導入した後に熱アルカリ処理を行うことによってセルロース鎖を化学的に分解し、低粘度化を行う方法が示されている。ところが、この方法によると過剰なアルカリを投入する必要があり、分解処理の後に過剰なアルカリを除去する手間が生じる上、除去過程においてセルロースの歩留まりが極端に低下するため生産性が低い。あるいは、アルカリを除去せず残存させる場合は、高濃度のアルカリによりセルロースの分解が経時的に進行するため、物性が安定しない。
特許第4998981号公報 特許第5178931号公報
本発明は以上のような背景技術を考慮してなされたものであり、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る機能性セルロースの製造方法は、セルロースを出発原料とするセルロース系材料を用いて、重合度が250以下の機能性セルロースを製造する方法であって、(A)前記セルロース系材料を化学的に処理する化学処理工程と、(B)前記セルロース系材料を電子線照射又はガンマー線照射により処理する放射線処理工程と、を有することを特徴とする
この機能性セルロースの製造方法においては、(C)前記セルロース系材料を分散する分散処理工程をさらに有していてもよい。
また、この機能性セルロースの製造方法においては、前記(A)化学処理工程、前記(B)放射線処理工程、及び前記(C)分散処理工程の処理順序がこの記載順であってもよい。
さらに、この機能性セルロースの製造方法においては、前記(B)放射線処理工程で用いるセルロース系材料の含水率が5質量%以上90質量%以下であってもよい。
さらに、この機能性セルロースの製造方法においては、前記(B)放射線処理工程における照射線量が10kGy以上1000kGy以下であってもよい。
さらに、この機能性セルロースの製造方法においては、機能性セルロースの着色を防ぐ漂白処理を行う漂白工程をさらに有していてもよい。
さらに、この機能性セルロースの製造方法においては、電子線照射又はガンマー線照射によって前記セルロース系材料の重合度を前記(B)放射線処理工程前の2分の1以下としてもよい。
さらに、この機能性セルロースの製造方法においては、前記(A)化学処理工程においては、N−オキシル化合物、臭化アルカリ、及び酸化剤を含む反応試薬により前記セルロース系材料を化学的に処理してもよく、前記N−オキシル化合物は2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカルであってもよい。
また、本発明の他の態様に係る機能性セルロースは、前記機能性セルロースの製造方法によって製造された機能性セルロースであって、前記(A)化学処理工程によって前記セルロース系材料に導入されたカルボキシル基の量が、生成物の乾燥質量当たり0.5mmol/g以上3.0mmol/g以下であることを特徴とする。
さらに、本発明の他の態様に係る機能性セルロース分散体は、前記機能性セルロースの製造方法によって製造された機能性セルロースを、分散媒中に分散処理したことを特徴とする。
この機能性セルロース分散体においては、前記機能性セルロースの固形分濃度が1質量%、光路長が1cm、波長が660nm、リファレンスが前記分散媒との条件で測定した光線透過率が、80%以上であってもよい。
また、この機能性セルロース分散体においては、前記機能性セルロースの固形分濃度が1質量%、温度が25℃、せん断速度が1s−1との条件で測定した粘度が1500mPa・s以下であり、且つ、前記機能性セルロースの固形分濃度が1質量%、温度が25℃、せん断速度が100s−1との条件で測定した粘度が100mPa・s以下であってもよい。
さらに、本発明の他の態様に係る成形体は、前記機能性セルロース又は前記機能性セルロース分散体を含むことを特徴とする。
本発明によれば、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための方法を提供することができる。
本発明の機能性セルロースの製造方法の一実施形態を説明する図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本発明に用いるセルロースを出発原料としたセルロース系材料としては、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプがあげられる。具体的には、漂白又は未漂白クラフト木材パルプ、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプ等をはじめ、古紙、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、綿セルロース、麻セルロース並びにこれらの混合物を用いることができ、これらを物理的、化学的処理した物質の何れを用いてもよい。
好適には、結晶形I型を有する天然セルロースが望ましい。TEMPO酸化反応はI型の結晶形を有する天然のセルロースミクロフィブリルの表面のみを酸化し、カルボキシル基の導入によりミクロフィブリル表面間の水素結合を阻害することによって分散性を得ている。そのため、天然セルロースを用いることにより、高い分散性と高密度に配向した高次構造を有するミクロフィブリルに起因した物理的安定性を得ることができる。
<(A)化学処理工程>
セルロース系材料の化学処理の方法としては、用途に応じて既存の方法を用いることが出来る。例えば、アセチル化をはじめとしたエステル化、エーテル化、酸化、更には架橋剤を用いた架橋、セルロース骨格上へのグラフト重合等を行うことができる。
中でも、N−オキシル化合物、臭化アルカリ、酸化剤を用いた化学処理は、セルロースの結晶構造を保持しつつ、グルコースユニットのC6位の水酸基を、位置選択的にアルデヒド基を経てカルボキシル基へと変換することができる有効な方法として注目されている。また、N−オキシル化合物としては、反応性とコストの両面から2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)が好ましい。
TEMPOと共に用いる共酸化剤である臭化アルカリとしては、反応性が良好であるため、臭化ナトリウムを用いることが望ましい。また、酸化剤としては、次亜ハロゲン酸やその塩、亜ハロゲン酸やその塩、過酸化水素などを用いることができるが、入手の容易さや安価であることから、次亜塩素酸ナトリウムを用いることが望ましい。
また、セルロース系材料において変換されるカルボキシル基の量は、化学処理後のセルロース系材料の乾燥質量に対して、0.5mmol/g以上3.0mmol/g以下であることが望ましい。この範囲のカルボキシル基量を有するセルロース系材料は、導入されたカルボキシル基同士が荷電反発し浸透圧効果を示すため、ナノオーダーのミクロフィブリルが孤立しやすく均一性の高い分散性が得られる。0.5mmol/gより小さいと十分な荷電反発が得られにくいおそれがあり、一方3.0mmol/gより大きいと結晶構造が崩壊し、物理的な強度が低下するおそれがある。
上述のような酸化反応を終了し停止させた後、セルロース系材料からなる生成物をろ過により反応液中から回収する。反応終了後はセルロース系材料に導入されたカルボキシル基は、反応媒中に存在するカチオンに由来する金属イオンを対イオンとした塩を形成する。
酸化反応後のセルロース系材料の回収方法としては、(a)カルボキシル基が塩を形成したままろ別する方法、(b)反応液に酸を添加して系内を酸性に調整し、カルボン酸としてろ別する方法、(c)有機溶媒を添加して凝集させた後にろ別する方法が挙げられる。その中でも、ハンドリング性や回収効率、廃液処理の観点から、(b)カルボン酸として回収する方法が好適である。
また、後述する放射線処理工程において、対イオンとして炭化水素基などの有機鎖を有したり、特定の金属イオンを有すると、電子線やガンマー線の照射により分解や揮発が生じ、対イオンとして機能しなかったり、変性が生じるなど悪影響が出る可能性がある。そのため、カルボン酸として回収することが好ましい。さらに、後述する分散処理工程の前段階として対イオンを変換する際にも、カルボン酸であると置換効率が優れるため好ましい。
なお、酸化反応後のセルロース系材料中の金属イオン含有量は、様々な分析方法で調べることができる。例えば、電子線マイクロアナライザーを用いたEPMA法、蛍光X線分析法の元素分析によって簡易的に調べることができる。塩を形成したままろ別する方法を用いて回収した場合、金属イオンの含有率が5質量%以上であるのに対し、カルボン酸としてからろ別する方法により回収した場合は、1質量%以下となる。
さらに、回収したセルロース系材料は洗浄を繰り返すことにより精製でき、触媒や副生成物を除去することができる。このとき、塩酸等の酸を用いてpH3以下の酸性条件に調製した洗浄液で洗浄を繰り返した後に、純水で洗浄を繰り返すことにより、残存する金属イオン及び塩類の量を低減することができる。
<(B)放射線処理工程>
放射線処理工程を経ることにより、セルロース系材料が機能性セルロースへと調製される。言い換えると、本発明においては、セルロース系材料は機能性セルロースに調製される段階より以前のセルロースの一形態として記載している。
材料に電子線やガンマー線を照射すると、照射線量や材料の特性に応じて、材料の改質や分解を促すことができる。一般的に、このような改質・分解のメカニズムとしては、原子間の結合が切断されてラジカルが発生することに起因する。このラジカルにより分子鎖が切断される場合と、ラジカルが瞬時に再結合して共有結合が新たに形成される場合がある。セルロースをはじめとする天然高分子の場合は、再結合に対して分解が優位に進むことから、電子線照射やガンマー線照射で分子鎖を切断することにより、低分子化させる効果を得ることができる。
電子線照射やガンマー線照射にて処理する際、水を包含した材料であると、その含水状態が分解挙動に影響及ぼす。電子線やガンマー線が照射された水がラジカルを発生し、そのラジカルにより材料の分解が加速される場合がある一方、水の存在により電子線照射やガンマー線照射が遮蔽されて分解効率が低下する場合がある。本発明におけるセルロース系材料の場合は、含水率が5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。5質量%未満ではセルロース系材料の凝集が強くなり過ぎるため、その後の分散処理が困難になるなど処理後のハンドリングが困難になるおそれがある。一方、含水率が90質量%より大きいと、電子線照射やガンマー線照射の遮蔽効果が大きくなるため、セルロース系材料の分解効率が低下する場合がある。
電子線の照射方法としては、カーテン型、スキャン型、プラズマ放電型等がいずれも適用可能である。ガンマー線は、コバルト60を線源に用いることができる。照射線量としては、いずれも10kGy以上1000kGy以下が好ましい。照射線量が10kGyより少ないとセルロース系材料の分解能力が不十分となるおそれがあり、また、1000kGyより大きくしても1000kGyと同等の分解効率しか得られないので、照射エネルギーが過剰となる。
電子線あるいはガンマー線を照射する環境としては、酸素が存在しないことが好ましい。酸素が存在すると、共有結合の生成を阻害するため、酸素濃度としては500ppm以下が好ましい。
ガンマー線は、物質を透過する能力が非常に高いため、照射面に関しては特に限定されず何れの面からでも問題ない。電子線に関しては、加速電圧により物質を透過する能力が異なり、加速電圧が高いほど電子線の物質中の透過能力が高くなる。水において、電子線の加速電圧が2MeVの場合は、8mm程度の透過能力がある。そのため、材料の形態によって、電子線を照射する面を考慮する必要がある。
加速電圧としては0.1MeVから10MeVが適用可能である。0.1MeVより低いと電子線透過能力が低いため電子線照射の効果が材料表面近傍のみに限定されてしまうおそれがある。一方、10MeVより高い加速電圧を持つ装置では、設備の規模が大きくなり過ぎて現実的ではない。また電子線透過能力と設備規模の面から、加速電圧は1MeV以上5MeV以下がより好ましい。
電子線又はガンマー線を照射処理する際のセルロース系材料の形態は、電子線又はガンマー線がセルロース系材料を分解可能な状態において、照射処理の過程でセルロース系材料が包含する水が過剰に蒸発したり、セルロース系材料を包装する包装材料が電子線照射又はガンマー線照射により分解し、生成した分解物等がセルロース系材料に対して悪影響を及ぼしたりしない限り、限定されない。例えば、セルロース系材料をアルミ箔で覆ったものを電子線照射又はガンマー線照射により処理しても構わない。
電子線又はガンマー線を照射することにより、セルロース系材料が通常酸やアルカリ等の薬剤処理による分解によって達成し得るレベルオフ重合度である重合度250以下まで分解することが可能である。さらに、薬剤等を使用せず高固形分濃度において処理できることから、煩雑な操作を必要とせずに分解し低分子量化できるため、生産工程上大変有利となる。
重合度の求め方としては、銅エチレンジアミン溶液に溶解させる粘度法が一般的であり、本発明においても本方法により評価した。詳細な手順に関しては実施例にて後述するが、まずは粘度法により粘度平均分子量を導出する。さらに、1グルコースユニット当たりの分子量である162で除することにより、簡易的に粘度平均重合度として算出することができる。
なお、セルロースにアルデヒド基を含む場合、銅エチレンジアミンの作用で結合が切断されることにより、低分子量化が進行する。そのため、銅エチレンジアミンに溶解する前処理として、追酸化や追還元によりアルデヒド基を消滅させることによって、生成物の重合度をより正確に評価することができる。
<(C)分散処理工程>
以下、セルロース系材料から放射線処理を経て調製した機能性セルロースの分散処理工程について述べる。機能性セルロースに分散処理を施すことにより、機能性セルロースの繊維の繊維径が数ナノメートルから数マイクロメートルまで微細化した、機能性セルロース分散体を調製することができる。
機能性セルロースを分散体とすることにより、溶液状態(又は分散液状態)として他の材料との混合において均一性を向上させることができる。さらに、各種塗工方式を用いた塗工により薄膜を形成するなど、機能化、加工性における設計の自由度が向上する。特に、高結晶性セルロース分散体からなる塗工膜は、高いガスバリア性を有することが知られており、本発明の機能性セルロース分散体を用いて各種基材上にガスバリア層を形成してもよい。
分散処理工程の前段階として、機能性セルロースにアルカリを添加することにより、機能性セルロースに導入したカルボキシル基の対イオンを変換し、これにより新たな機能を付与することが可能となる。アルカリの添加量としては、機能性セルロースに導入されたカルボキシル基に対して0.8当量以上2当量以下であることが好ましい。特に、1当量以上1.8当量以下であると、過剰量のアルカリを添加することなく対イオン交換できるため、より好ましい。
ここで、0.8当量未満でも機能性セルロースをある程度分散させることは可能だが、分散処理により長時間・高エネルギーを要し、得られる繊維の繊維径も大きくなり、分散体の均質性が低下するおそれがある。一方、2当量を超えると、過剰量のアルカリによる分解や分散媒への親和性が低下する場合があり好ましくない。
このとき、機能性セルロースのpHをアルカリを用いてpH4以上pH12以下の範囲に調整することが好ましい。特に、pHをpH7以上pH12以下のアルカリ性とし、添加したアルカリとカルボン酸塩を形成させる。これにより、カルボキシル基同士の荷電反発が起こりやすくなるため、分散性が向上しセルロースナノファイバー分散体が得やすくなる。
ここで、pH4未満でも機械的分散処理によりセルロースを分散させることは可能であるが、アルカリの添加量が過少である場合と同様の理由により、分散体の均質性が低下する。一方、pH12を超えると、分散処理中に酸化セルロースのピーリング反応やアルカリ加水分解による低分子量化や、末端アルデヒドや二重結合形成に伴い分散体の黄変が促進されるため、力学強度や均質性が低下する。
機能性セルロースのpHを調整するアルカリは、アルカリ金属イオン(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属イオン(カルシウム等)、アンモニウムイオン、有機オニウム(各種脂肪族アミン、芳香族アミン、ジアミンなどのアミン類や、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn−ブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムなどのNROH(Rはアルキル基、ベンジル基、フェニル基、又はヒドロキシアルキル基で、4つのRが同一でも異なっていてもよい。)で表される水酸化アンモニウム化合物や、水酸化テトラエチルホスホニウムなどの水酸化ホスホニウム化合物や、水酸化オキソニウム化合物や、水酸化スルホニウム化合物など)の対イオンが挙げられる。また、これらを2種以上混合して塩を形成することもできる。
さらに、分散処理工程において、機能性セルロースを分散媒に懸濁させて分散処理することにより、特定の分散媒中に微細化された機能性セルロースが分散した機能性セルロース分散体を調製することが可能である。この際に用いる分散媒としては、機能性セルロースが過度に凝集せずに分散体として使用可能な範囲においては特に限定がなく、水又は有機溶媒を用いることができる。
有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エーテル類、ケトン類等が挙げられ、これらの内何れか1種、又はこれらの内何れかの2種類以上を混ぜたものが挙げられる。なお、機能性セルロースの対イオンの種類によっても使用可能な分散媒は異なり、さらに得られる機能性セルロース分散体の特性も異なるため、対イオンに用いるアルカリと分散媒の組み合わせによって、機能性セルロース分散体の特性を任意に制御することが可能となる。
分散処理工程における分散の方法としては、既に知られている各種分散処理が可能である。例えば、ホモミキサー処理、回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理、ナノジナイザー処理、ディスク型レファイナー処理、コニカル型レファイナー処理、ダブルディスク型レファイナー処理、グラインダー処理、ボールミル処理、2軸混練機による混練処理、水中対向処理等がある。この中でも、微細化効率の面から、回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理が好適である。なお、これらの処理のうち、二つ以上の処理方法を組み合わせて分散を行うことも可能である。
分散処理工程により得られた機能性セルロース分散体の光路長1cmにおける660nmでの光線透過率は、機能性セルロースの固形分濃度1質量%の分散体において、分散媒をリファレンスとして80%以上であることが好ましい。上記の範囲内であれば、分散体が均質性に優れているということが示される。即ち、可視光領域である660nmにおいて光透過率が低い場合、試験光の透過を妨げる粗大な機能性セルロースの繊維の凝集体が多数存在することを示唆する。光透過率の測定結果は、簡易的に機能性セルロースの分散性を表す指標とすることができる。
なお、機能性セルロース分散体の光線透過率は、機能性セルロースの固形分濃度を調整した後に石英セルに充填し、分光光度計を用いて指定の波長における透過率を測定することにより求められる。また、機能性セルロース分散体としてのセルロースの繊維幅は、2nm以上200nm以下であることが好ましい。すなわち、繊維形状を維持するためには2nm以上が好ましく、200nm以下であれば光学透明性を有するために製品設計における自由度が向上する。なお、機能性セルロースの繊維形状は、0.0001〜0.001質量%に調製した機能性セルロース分散体を、表面が平滑なマイカ等に展開して乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)観察や原子間力顕微鏡(AFM)観察により確認することができる。
また、固形分濃度1質量%の機能性セルロースの分散体の25℃における粘度が、せん断速度1s−1において4000mPa・s以下且つ100s−1において400mPa・s以下であることが好ましい。さらに、せん断速度1s−1において1500mPa・s以下且つ100s−1において100mPa・s以下であることがより好ましい。この範囲であれば、機能性セルロースの固形分濃度を5質量%程度とした場合においても、種々の分散処理方法を用いて分散体を調製することが可能となる。また、調製した機能性セルロース分散体を液体状態として扱うことが可能となり、種々の添加剤や樹脂、金属粒子等との均一性に優れた混和が良好であり、塗工材料を始めとする成形体の材料として用いることが可能となる。
また、分散処理後に機能性セルロースの固形分濃度を増大させることを目的として、濃縮処理を行っても構わない。濃縮方法については特に限定はないが、機能性セルロースの繊維の乾燥による凝集や分解反応による特性低下が問題にならない範囲において、遠心分離や減圧、真空蒸発等の方法を適宜選択することができる。
また、分散工程後の機能性セルロース分散体に、凝集や沈殿を生じない範囲において、粘度調整や乾燥速度の調整、異種材料との親和性向上等を目的として、付加したい機能に応じて、水をはじめ、様々な有機溶媒を混合させることができる。このとき、異種溶媒を混合することにより生じるショックを緩和するため、添加速度やpHの調整、攪拌方法、温度等を適宜選択することができる。
また、得られた機能性セルロース又は機能性セルロース分散体は、金属等を含んでも良い。金属としては、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属又はこれらの合金、又は酸化物、複酸化物、炭化物などを用いることができる。
金属の担持方法としては、金属又は金属酸化物等の微粒子を混合する他、カルボキシル基を有する機能性セルロース分散体が金属又は金属酸化物の錯体を形成し、還元剤を添加することで金属粒子として析出させることができる。この方法を用いると、微小な金属粒子が機能性セルロースの繊維表面に均一に固定化されるため、微量な金属量によって効率的に効果を発揮させることができる。
なお、機能性セルロース分散体は、凝集や沈殿が生成しない範囲においては、より繊維同士の荷電反発を増大させる目的や分散液の粘度を制御する目的で、水溶性多糖類を含む各種添加物、各種樹脂を含んでも良い。例えば、化学修飾したセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、寒天、可溶化澱粉、グリセリン、ソルビトール、消泡剤、水溶性高分子、合成高分子等を用いることができる。あるいは塗工性やぬれ性など機能性付与などのために、各種溶剤を含んでもよい。溶剤としては、アルコール類、セルソルブ類、グリコール類などを用いることができる。さらには、意匠性を付与する目的で、各種染料や顔料、有機フィラー、無機フィラーを含んでも構わない。
また、機能性セルロース分散体は、耐水性、電解液耐性を向上させるために、各種架橋剤を含んでもよい。例えば、オキサゾリン、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、グリオキザール、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などを用いることができる。また、反応性を向上させるなどの目的で、酸やアルカリを添加することによってpHを調整することができる。
また、化学処理、放射線処理、又は分散処理の過程で、機能性セルロースが着色する場合がある。原因としては、試薬、電子線又はガンマー線、熱等の影響による副反応で生成したセルロースに含まれるアルデヒドや二重結合が考えられる。本発明の機能性セルロースの製造方法は、この着色を防ぐ漂白工程を含んでも構わない。漂白工程は、化学処理工程、放射線処理工程、分散処理工程のいずれかの工程の前、又は最中、又は後において適宜実施される。
漂白方法としては、既存の方法を用いることができ、塩素処理、次亜塩素酸塩処理、二酸化塩素処理、酸素処理、過酸化水素処理、オゾン処理等を用いることができ、これらの2種類以上を組み合わせた方法を用いても構わない。あるいは、セルロース中のアルデヒドを酸化又は還元することにより着色を防ぐ方法も有用である。酸化方法、還元方法は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。酸化する方法としては、酸性下において亜塩素酸ナトリウムを用いて処理する方法が知られている。また、還元する場合は、水素化ほう素ナトリウムの還元力を利用する処理方法を用いることもできる。また、これら酸化や還元と過酸化水素処理等を組み合わせて用いても構わない。
なお、従来は、強度向上や軽量化を目的としてセルロースにより樹脂複合体を形成する場合は、セルロースをある程度微細化したものを混合させていた。本発明を用いると、機能性セルロースの重合度は低下するために低エネルギーによる解繊が可能となるので、ある程度バルクな状態で樹脂等と混合させ、混合工程により機能性セルロースを均一に分散させることが可能になるなど、製造工程上簡略化することができる。よって、本発明の方法は工業的に有用である。
以下に、本発明の実施例を説明する。なお、以下の実施例は本発明の一例であり、本発明はこれらの実施例には限定されない。
(実施例1)
以下の手順により、機能性セルロース及び機能性セルロース分散体の調製を行った。
(1)試薬・材料
セルロース:漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ製の商品名「Machenzie」)
TEMPO:東京化成工業株式会社製の市販品(純度98質量%)
次亜塩素酸ナトリウム:和光純薬株式会社製の市販品(塩素含有率:5質量%)
臭化ナトリウム:和光純薬株式会社製の市販品
(2)化学処理工程
乾燥質量10gの漂白クラフトパルプとイオン交換水500mlを2Lのガラスビーカーに入れ、一晩静置して漂白クラフトパルプを膨潤させた。ここにTEMPO0.1gと臭化ナトリウム1gを添加して攪拌し、パルプ懸濁液とした。さらに、攪拌しながら、セルロース質量当たり5mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。この際には、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、パルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。その後、2時間反応させ、エタノール10gを添加して反応を停止し、セルロースにカルボキシル基が導入された酸化セルロースを得た。なお、この際に導入されたカルボキシル基は、反応媒中に残存する反応試薬に由来するナトリウムイオンを対イオンとした塩を形成している。
続いて0.5Nの塩酸を滴下してpHを2まで低下させた。ガラスフィルターを用いてセルロースをろ別し、さらに0.05Nの塩酸で3回洗浄してカルボキシル基(塩)をカルボン酸とした後に純水で5回洗浄し、含水率80質量%の湿潤状態の酸化セルロースを得た。得られた酸化セルロースは、水酸化ナトリウムによる中和滴定から、セルロースの乾燥質量当たりのカルボキシル基量は1.6mmolと算出された。
(3)放射線処理工程
上記により調製した酸化セルロースを10μm厚のアルミ箔で包み、エリア型電子線照射装置キュアトロン(日新ハイボルテージ株式会社製)を用いて、酸素濃度200ppmで、加速電圧2MeVにて、照射線量50kGyの電子線を照射した。なお、電子線の照射線量は、線量計の照射前後の吸光度差から47.5kGyと算出された。以上の処理により、機能性セルロースを得ることができた。
(4)分散工程
さらに、上記で得た機能性セルロースを分散媒である水に加え、1Nの水酸化ナトリウム水溶液にてpH10に調整した後、ミキサー(大阪ケミカル株式会社製のアブソルートミル)を用いて回転速度14000rpmで1時間処理した。こうして固形分濃度1質量%の機能性セルロース分散体を得た。得られた機能性セルロース分散体の660nmにおける光線透過率は91%を示した。また、このときのセルロース繊維の繊維幅は4nmであった。
(実施例2)
放射線処理工程において電子線の照射線量を100kGyに変更した他は、実施例1と同様の条件にて機能性セルロース分散体を調製した。
(実施例3)
放射線処理工程において電子線の照射線量を300kGyに変更した他は、実施例1と同様の条件にて機能性セルロース分散体を調製した。
(比較例1)
化学処理工程においてTEMPOを用いた化学処理を行わない他は、実施例1と同様の条件にて機能性セルロース分散体を調製した。
(比較例2)
放射線処理工程において電子線を照射しない他は、実施例1と同様の条件にて機能性セルロース分散体を調製した。
(実施例4)
放射線処理工程において電子線に代わり照射線量50kGyのガンマー線を照射した他は、実施例1と同様の条件にて機能性セルロース分散体を調製した。
[評価1]
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた機能性セルロース及びその機能性セルロース分散液について、カルボキシル基量、分子量、分散液の光線透過率及びレオロジー測定を次のように行った。
[カルボキシル基量]
分散処理前の機能性セルロースについて、含有されるカルボキシル基量は以下の方法にて算出した。機能性セルロース0.2g(乾燥質量換算)をビーカーにとり、イオン交換水80mlを添加する。そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加え、攪拌させながら0.1M塩酸を加えて全体がpH2.8となるように調整した。ここに自動滴定装置(東亜ディーケーケー株式会社製のAUT−701)を用いて0.1M水酸化ナトリウム水溶液を0.05ml/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定した。この測定は、pH11となるまで続けた。得られた電導度曲線から水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシル基の含有量を算出した。
[重合度]
分散処理前の機能性セルロースについて、極限粘度から粘度平均分子量の導出を行った。まず、前処理として以下の操作を行った。機能性セルロース2g(乾燥質量換算)に対して、固形分濃度が10質量%の懸濁液になるようにイオン交換水を添加し、さらに亜塩素酸ナトリウム1.81gと5M酢酸を20ml添加した。
これを室温中で48時間攪拌しながら反応させ、十分に水洗することにより、酸化反応により生成したアルデヒド基を酸化した。そして、凍結乾燥によりこれを十分に乾燥させた。乾燥させた機能性セルロースを0.5Mの銅エチレンジアミン溶液にセルロース濃度が2mg/mlとなるよう添加し、溶液を調製した。調製した溶液の極限粘度を、キャノン−フェンスケ型粘度計で流出速度を測定することにより求め、極限粘度と粘度式より粘度平均分子量を導出した。導出された粘度平均分子量をグルコースユニット当たりの分子量である162で割り、重合度を求めた。
[光線透過率]
分散処理した機能性セルロース分散体について、光線透過率を測定した。2つの石英製サンプルセルの一方にはリファレンスとして水を入れ、もう一方には気泡が混入しないように分散液を入れた。そして、光路長1cmにおける波長660nmの光透過率を、分光光度計(日本分光株式会社製のNRS−1000)にて測定した。
[レオロジー]
機能性セルロース分散体のレオロジーを、レオメータ(ティー・エイ・インスツルメント社製のAR2000ex)を用いて測定した。レオメータのコーンプレートの傾斜角は1°とした。レオメータの測定部を25℃に温調して、せん断速度0.01〜100s−1の間のせん断粘度を連続的に測定し、せん断速度が1s−1及び100s−1のときのせん断粘度を求めた。
これらの測定結果を表1に示す。表1に示すように、TEMPO試薬を用いた酸化反応により化学処理した後に電子線又はガンマー線を照射した機能性セルロースに分散処理を施すことにより、透明性が高く、粘度の低い機能性セルロース分散体を調製することができた。
Figure 2015183095
次に、実施例1〜4及び比較例1〜2により調製した機能性セルロース分散体を、坪量260g/mのカップ原紙の表面にバーコーターにて塗工し、120℃のオーブンで10分間乾燥することにより、カップ原紙の表面に1000nmの塗工層を形成した。さらに、ウレタン系接着剤を用い、塗工面に厚み30μmのポリエチレンフィルムをドライラミネートし、積層体を形成した。
[評価2]
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた機能性セルロース分散液を用いた上記積層体について、酸素バリア性の評価を次のように行った。
[酸素バリア性]
各種機能性セルロース分散液を用いた上記積層体について、モコン法を用いて酸素透過度(単位:ml/m・day・atm)を30℃−40%RHの条件で測定した。表2に示す結果から判るように、酸素透過度が0.001から10(ml/m・day・atm)の範囲内にあれば、酸素を嫌う多くの内容物を保護するのに十分な機能があると言え、紙基材とセルロース繊維という天然物からバリア性フィルム並みの性能を示すものが得られる。また、酸素と同じような大きさのガスやにおいの漏れも防止することができる。
Figure 2015183095
表2に示すように、TEMPO試薬を用いた酸化反応により化学処理した後に電子線又はガンマー線を照射した機能性セルロースを用いた機能性セルロース分散体を用いた塗工層は、放射線照射前と比較して高い酸素バリア性を示した。また、照射線量の増大に伴い酸素バリア性は向上した。これは、メカニズムは明らかではないが、機能性セルロース分散体を構成する機能性セルロースが放射線照射処理によってより微細化されたことにより、カップ原紙の表面及び内部において、カップ原紙を構成する繊維等への追従性が改善されたことや、より緻密な機能性セルロース膜が形成されたためであると考えられる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
本発明によれば、天然資源の産業利用を促進し、利用用途を拡大するための方法を提供することができる。また、本発明の方法によれば、煩雑な操作を経ることなく高濃度で様々な用途に用いることが可能な機能性セルロースを得ることができる。特に、従来のセルロースを分解する方法において不可欠であった酵素や薬剤などの不純物を取り除く工程を必要としない上、セルロースの固形分を高く維持したまま処理することが可能であることから、分解後に分解反応媒から回収する際に歩留まりが低下する懸念がないため生産性が高く、実用的である。また、本発明の方法により調製した機能性セルロース分散体は、高濃度化した際も粘度の上昇を抑えることができるために、液体状態として扱うことが可能となり、種々の添加剤や樹脂、金属粒子等との均一性に優れた混和が良好であり、塗工材料を始めとする成形体の材料として用いることが可能である。

Claims (14)

  1. セルロースを出発原料とするセルロース系材料を用いて、重合度が250以下の機能性セルロースを製造する方法であって、
    (A)前記セルロース系材料を化学的に処理する化学処理工程と、
    (B)前記セルロース系材料を電子線照射又はガンマー線照射により処理する放射線処理工程と、
    を有することを特徴とする機能性セルロースの製造方法。
  2. (C)前記セルロース系材料を分散する分散処理工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の機能性セルロースの製造方法。
  3. 前記(A)化学処理工程、前記(B)放射線処理工程、及び前記(C)分散処理工程の処理順序がこの記載順であることを特徴とする請求項2に記載の機能性セルロースの製造方法。
  4. 前記(B)放射線処理工程で用いるセルロース系材料の含水率が5質量%以上90質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の機能性セルロースの製造方法。
  5. 前記(B)放射線処理工程における照射線量が10kGy以上1000kGy以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性セルロースの製造方法。
  6. 機能性セルロースの着色を防ぐ漂白処理を行う漂白工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の機能性セルロースの製造方法。
  7. 電子線照射又はガンマー線照射によって前記セルロース系材料の重合度を前記(B)放射線処理工程前の2分の1以下とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の機能性セルロースの製造方法。
  8. 前記(A)化学処理工程においては、N−オキシル化合物、臭化アルカリ、及び酸化剤を含む反応試薬により前記セルロース系材料を化学的に処理することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の機能性セルロースの製造方法。
  9. 前記N−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカルであることを特徴とする請求項8に記載の機能性セルロースの製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の機能性セルロースの製造方法によって製造された機能性セルロースであって、
    前記(A)化学処理工程によって前記セルロース系材料に導入されたカルボキシル基の量が、生成物の乾燥質量当たり0.5mmol/g以上3.0mmol/g以下であることを特徴とする機能性セルロース。
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の機能性セルロースの製造方法によって製造された機能性セルロースを、分散媒中に分散処理した機能性セルロース分散体。
  12. 前記機能性セルロースの固形分濃度が1質量%、光路長が1cm、波長が660nm、リファレンスが前記分散媒との条件で測定した光線透過率が、80%以上であることを特徴とする請求項11に記載の機能性セルロース分散体。
  13. 前記機能性セルロースの固形分濃度が1質量%、温度が25℃、せん断速度が1s−1との条件で測定した粘度が1500mPa・s以下であり、且つ、前記機能性セルロースの固形分濃度が1質量%、温度が25℃、せん断速度が100s−1との条件で測定した粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の機能性セルロース分散体。
  14. 請求項10に記載の機能性セルロース又は請求項11〜13のいずれか一項に記載の機能性セルロース分散体を含むことを特徴とする成形体。
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