JPWO2018230354A1 - セルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
N−オキシル化合物は環境や人体に対する毒性が懸念されているため、酸化セルロースを用いてセルロースナノファイバー水分散液を調製した場合、該分散液中にもN−オキシル化合物が混在することになり、セルロースナノファイバーを高機能性材料として利用する場合、その用途によっては、分散液中に存在するN−オキシル化合物が好ましくない影響を与えることがある。
また、N−オキシルは非常に高価な材料であるため、N−オキシルを使用する方法は、経済的な製造方法ではない。
さらに、特許文献3によれば、過酸化水素等の酸化剤のみを用いてセルロース系原料を酸化処理できると記載されているが、酸化剤として有効塩素濃度が14質量%を超える次亜塩素酸ナトリウム水溶液については記載も示唆もない。
なお、有効塩素濃度が43質量%を超える次亜塩素酸またはその塩は、自己分解が進行し易く、取り扱い難くなる。
次亜塩素酸は水溶液として存在する弱酸であり、次亜塩素酸塩は結晶水をもった固体として存在することは出来るが、潮解性をもち、非常に不安定な物質であり、一般に水溶液として取り扱う。
例えば、次亜塩素酸塩である次亜塩素酸ナトリウムは溶液中にしか存在しないため、次亜塩素酸ナトリウムの濃度ではなく、溶液中の有効塩素量を測定する。
次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素とは,次亜塩素酸ナトリウムの分解により生成する2価の酸素原子の酸化力が1価の塩素の2原子当量に相当するため、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の結合塩素原子は,非結合塩素(Cl2)の2原子と同じ酸化力を持っていて、有効塩素=2×(NaClO 中の塩素)となる。
具体的な有効塩素濃度の測定は、試料を精秤し、水、ヨウ化カリウム、酢酸を加えて放置し、遊離したヨウ素についてデンプン水溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し測定する。
以下、次亜塩素酸またはその塩として次亜塩素酸ナトリウムを例にして、本発明の製造方法を説明する。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度を14〜43質量%に調整する方法としては、有効塩素濃度が14質量%より低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を濃縮する方法、有効塩素濃度が約43質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶をそのまま、または水で希釈して調整する方法がある。これらの中でも、次亜塩素酸ナトリウム5水和物を用いて、酸化剤としての有効塩素濃度に調整することが、自己分解が少ない、すなわち有効塩素濃度の低下が少なく、調整が簡便であるため好ましい。
セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液の混合方法は特に限定はないが、操作の容易さの面から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にセルロース系原料を加えて混合させることが好ましい。
酸化反応の反応時間は、酸化の進行の程度に従って設定することができるが、例えば、15分〜6時間程度反応させることが好ましい。
酸化セルロースの0.5質量%スラリーに純水を加えて60mlに調製し、0.1M塩酸水溶液を加えて、pH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記式を用いて算出する。
カルボキシル基量(mmol/g酸化セルロース)=a(ml)×0.05/酸化セルロース質量(g)
本発明におけるセルロースナノファイバーは、前記工程で得られた酸化セルロースを解繊してナノ化することで製造される。
解繊する方法は、溶媒中でスターラーなどの弱い攪拌にとどめても良いが、機械的解繊を行うことで、解繊時間の短縮が可能になる。ただし、機械的解繊を行うと、セルロースナノファイバーが折れたり、切れたりする場合がある。
前記エーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等が挙げられる。
前記ケトン類としては、アセトンおよびメチルエチルケトン等が挙げられる。
セルロースナノファイバーの繊維長はとくに制限はないが、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは100〜500μmであり、アスペクト比(繊維長/繊維径)は1000〜15000、好ましくは2000〜10000程度である。
セルロースナノクリスタルの繊維長は100〜1000nm(好ましくは150〜500nm)程度である。なお、セルロースナノクリスタルは、セルロースナノウィスカーとも呼ばれる。
<実施例1>
100mlのビーカーに、有効塩素濃度が43質量%である次亜塩素酸ナトリ
ウム5水和物結晶を10.0g入れ、純水10.5mlを加えて撹拌して、有効塩素濃度21質量%の水溶液とした。
ここで、次亜塩素酸ナトリウム中の有効塩素濃度は、以下の方法で測定した。
前記水溶液0.582gを精密に量り、純水50mlを加え,ヨウ化カリウム2gおよび酢酸10mlを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置し、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果(指示薬 デンプン試液)、滴定量は34.55mlであった。別に空試験を行い補正し、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1mlが3.545mgClに相当するので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は21質量%である。
セルロース系原料を供給後、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、30分間スターラーで撹拌し、次に、総量100mlになるまで純水を加えた後、目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、得られたろ過上物を純水で洗浄した後に、カルボキシル基量を測定したところ、0.36mmol/gであり、セルロース系原料のカルボキシル基量より増加しており、酸化セルロースが得られた。
30分間の撹拌中、激しい反応は認められなかった。ろ過上物量は0.66gであり、セルロース系原料からの大幅減少は見られなかった。
前記ろ過上物を純水に分散させて約1%スラリーとし、超音波ホモジナイザーにて10分間解繊処理をした。処理液を遠沈管に入れ、t−ブタノールを加えた後に、十分に混合し遠心分離させた。得られた上澄み分を除去してt−ブタノールを加える操作を10回繰り返して溶媒置換した。そして、得られたt−ブタノール分散液を凍結乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製S−4800)で観察した結果、幅が5〜50nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
図1に実施例1で得られたセルロースナノファイバーのSEMの倍率が10万倍の写真を示す。
有効塩素濃度を32質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
セルロース系原料の供給から約10分経過後にガス発生を伴った反応が見られ、ろ過上物の取得量は0.13gであり、ろ過上物のカルボキシル基量は0.47mmol/gであった。投入したセルロース量と比較して明らかに少なく、多くが母液に溶解したと推測した。
そこで、母液をエタノール液に添加し、得られた沈殿を固液分離、エタノールで洗浄した後、乾燥して評価サンプル(母液回収物)を得た。母液回収物は0.38gであり、処理後セルロースの多くが母液に溶解したことが分かった。ろ過下物のカルボキシル基量は0.67mmol/gであった。
ろ過上物およびろ過下物をそれぞれ、純水に分散させ、超音波ホモジナイザーで解繊処理した結果、1分間で全体が透明な処理液になった。
ろ過上物、ろ過下物を解繊した処理液を別々にt−ブタノールを加えて実施例1と同様に溶媒置換して凍結乾燥させ、SEMで観察した結果、いずれも幅が約100nm、長さが0.4〜1.0μmの棒状形状のセルロースナノクリスタルが得られていることが確認された。
有効塩素濃度が43質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物を30℃に加温して融液状態を使用した以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物のカルボキシル基量は1.5mmol/gであり(取得量は0.01g以下)、ろ過下物(取得量は0.59g)のカルボキシル基量は4.9mmol/gであった。ろ過下物をSEMで観察した結果、幅が約100nm、長さが0.4〜1.0μmの棒状形状のセルロースナノクリスタルが得られていることが確認された。
図4に実施例3で得られたセルロースナノクリスタルのSEM写真(倍率5万倍)を示す。
有効塩素濃度を18質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物量は0.63gであり、カルボキシル基量は0.16mmol/gであった。ろ過上物をSEMで観察した結果、幅が5〜50nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
有効塩素濃度を26質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
30分間の撹拌中、激しい反応は認められなかった。ろ過上物量は0.40gであり、カルボキシル基量は0.41mmol/gであった。
ろ過上物をSEMで観察した結果、幅が5〜50nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
100mlのビーカーに、有効塩素濃度が43質量%である次亜塩素酸ナトリ
ウム5水和物結晶を30.0g入れ、純水と35質量%の塩酸を加えて撹拌して、有効塩素濃度18質量%でpH7.0の水溶液とした。
次に、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液をスターラーで撹拌しながら恒温水槽にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、カルボキシル基量が0.05mmol/gである針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM8495,bleached kraft pulp)を綿状に機械解繊した物を0.35g加えた。
セルロース原料を供給後、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、pH7.0を維持するために、48質量%の水酸化ナトリウムを添加して、30分間スターラーで攪拌した。目開き0.1μmのPTFE製メンブランフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、得られたろ過上物を純水で洗浄した後に、カルボキシル基量を測定したところ、1.26mmol/gであり、ろ過上物量は0.09gであった。
有効塩素濃度を14質量%とした以外は実施例6と同様に反応を行った結果、
カルボキシル基量が0.62mmol/gであり、ろ過上物量は0.16gであった。
有効塩素濃度および反応中のpHを表1に示すように調整した以外は、実施例6と同様に反応を行った。得られた生成物のカルボキシル基量とろ過上物量を表1に示す。
実施例10で得られたろ過上物について、実施例1と同様な方法で解繊処理してナノ化させ、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、幅が10〜20nmであるセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。
図2に実施例10で得られたセルロースナノファイバーのSEM写真(倍率3万倍)を示す。
また、実施例7で得られたろ過上物について、実施例1と同様な方法で解繊処理してナノ化させ、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、幅が30nm〜70nm、長さ30〜280nmであるセルロースナノクリスタルが得られていることを確認した。
図3に実施例7で得られたセルロースナノクリスタルのSEM写真(倍率5万倍)を示す。
有効塩素濃度を12質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物のカルボキシル基量は0.07mmol/gであり、セルロース系原料とほぼ同じ値であり、酸化はほとんど進まなかった。取得量は0.63gであり、セルロース系原料から大幅減少はなかった。
酸化が進まなかったため、ナノ化させる工程は実施しなかった。
有効塩素濃度を7質量%にした以外は実施例1と同じ条件で反応を行った。
ろ過上物のカルボキシル基量は0.09mmol/gであり、セルロース系原料との差は僅かであり、酸化はほとんど進まなかった。取得量は0.69gであり、セルロース原料から大幅減少はなかった。
酸化が進まなかったため、ナノ化させる工程は実施しなかった。
Claims (3)
- 有効塩素濃度が14〜43質量%の次亜塩素酸またはその塩を用いて、セルロース系原料を酸化させて酸化セルロースを製造する工程と、該酸化セルロースを解繊処理してナノ化させる工程とを有するセルロースナノファイバーの製造方法。
- 有効塩素濃度が18〜43質量%の次亜塩素酸またはその塩である請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 次亜塩素酸またはその塩が次亜塩素酸ナトリウムである請求項1または請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
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