JPWO2019124251A1 - 化学変性セルロースおよびセルロースナノファイバーならびにその製造方法 - Google Patents

化学変性セルロースおよびセルロースナノファイバーならびにその製造方法 Download PDF

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Abstract

(1)以下の方法で測定されるパルプ中のCaイオンの濃度がパルプ重量に対して0.01重量%以下であるパルプを準備する工程、濃度測定方法:1)パルプ濃度が2重量%であるパルプと水との混合物を離解してスラリーとし、2)当該スラリーのpHを2にし、3)当該スラリーをろ過してろ液を得て、4)ろ液中の目的とするイオン濃度を測定する(2)当該パルプを化学変性する工程、を含む、化学変性セルロースの製造方法。当該方法によって良好な解繊性を有する化学変性セルロースを提供できる。

Description

本発明は化学変性セルロースおよびセルロースナノファイバーならびにその製造方法に関する。
ナノメートルの領域すなわち原子や分子のスケールにおいて物質を自在に制御する技術であるナノテクノロジーから様々な便利な新素材やデバイスが生み出されることが期待される。特に、繊維を極限まで細くすると従来の繊維にはなかったまったく新しい物理学的な性質が生まれることから、ナノオーダーの繊維すなわちナノファイバーが非常に注目されている。このナノファイバーによる極めて微細な異物も通過させない高性能フィルターの開発や、樹脂あるいは塗膜の強度向上などの効果が期待されている。
このナノファイバーに関する様々な開発や研究が行われており、例えば、特許文献1には、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)触媒の存在下で各種天然セルロースを酸化して酸化セルロースを得る方法が提案されている。特許文献1には当該方法で得た酸化セルロースから繊維幅が3〜20nmで1本1本が完全に分離されたシングルナノファイバーが製造されたことが開示されている。
特開2008−001728号公報
酸化セルロースはカルボキシル基同士の電気的な反発により解繊されてセルロースナノファイバーを生成する。したがって、導入されたカルボキシル基の量が解繊性に影響する。特許文献1の実施例に開示された酸化セルロースのカルボキシル基の量は0.31〜0.99mmoL/gであり十分な解繊性を与えるレベルとはいえず、1本1本が完全に分離されたシングルナノファイバーを製造するには高いエネルギーが必要となる。かかる事情を鑑み、本発明は良好な解繊性を有する化学変性セルロースを提供することを課題とする。
また、反応系におけるパルプ濃度が高いとカルボキシル基等の変性基を効率よくセルロースに導入することができないという問題があった。このためパルプ濃度を低くして反応を実施する必要があり、特許文献1においても2gのパルプを150mLの水に分散させてパルプ濃度1.3%において反応を実施している。このように、セルロースの化学変性については、反応効率を高めることが求められていた。かかる事情を鑑み、本発明は良好な反応効率にて化学変性セルロースを提供することを課題とする。
前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1](1)以下の方法で測定されるパルプ中のCaイオンの濃度がパルプ重量に対して0.02重量%以下であるパルプを準備する工程、
濃度測定方法:
1)パルプ濃度が2重量%であるパルプと水との混合物を離解してスラリーとし、
2)当該スラリーのpHを2にし、
3)当該スラリーをろ過してろ液を得て、
4)ろ液中の目的とするイオン濃度を測定する
(2)当該パルプを化学変性する工程、
を含む、化学変性セルロースの製造方法。
[2]前記工程(1)におけるパルプの、前記方法で測定されるパルプ中のMgイオンの濃度がパルプ重量に対して0.01重量%以下である、[1]に記載の方法。
[3]前記工程(1)が、キレート剤を原料パルプに添加して多価金属イオンを捕捉する工程、当該処理されたパルプを洗浄する工程を経て、前記Caイオン濃度を有するパルプを準備する工程である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記工程(1)が、原料パルプを酸性の液体で洗浄することにより前記Caイオン濃度を有するパルプを準備する工程である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[5](A)パルプにキレート剤を添加して、多価金属イオンを捕捉する工程、および
(B)当該パルプを化学変性する工程、を含む、化学変性セルロースの製造方法。
[6]前記キレート剤が、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、オキソ酸の縮合物、これらの無機塩、およびこれらの組合せからなる群から選択される、[5]に記載の製造方法。
[7]前記化学変性を行う際のパルプ濃度が1〜20重量%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記化学変性が酸化反応である、[1]〜[7]に記載の製造方法。
[9]前記[1]〜[8]のいずれかの方法よって化学変性セルロースを調製する工程、および
当該化学変性セルロース解繊してセルロースナノファイバーを得る工程、
を含む、セルロースナノファイバーの製造方法。
本発明により良好な解繊性を有する化学変性セルロースを提供できる。また本発明によって反応効率の高い化学変性セルロースの製造方法を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその端値であるXおよびYを含む。
1.第1の化学変性セルロースの製造方法
本発明の第1の化学変性セルロースの製造方法は、後述する方法で測定されるパルプ中のCaイオンの濃度がパルプ重量に対して0.02重量%以下であるパルプを準備する工程(1)、および当該パルプを化学変性する工程(2)を備える。本製造方法によって、解繊性が良好な化学変性セルロースを得ることができる。
(1)工程(1)
1)パルプ
本発明では特定範囲のCaイオン濃度、好ましくは特定範囲のCaイオン濃度およびMgイオン濃度を有するパルプを原料として用いる。パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹溶解クラフトパルプ(LDKP)、針葉樹溶解クラフトパルプ(NDKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、針葉樹溶解サルファイトパルプ(NDSP)、広葉樹溶解サルファイトパルプ(LDSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。サルファイトパルプは酸蒸解を含む工程で製造されるためCaイオンおよびMgイオンが除去されやすく当該イオンの残存量が少ない。よって本発明においてはサルファイトパルプを用いることが好ましい。
2)多価金属イオン濃度
パルプ中のCaイオンの濃度は、絶乾パルプ重量に対して0.02重量%以下である。当該イオン濃度をこの範囲にすることで、次工程においてパルプを化学変性する際に反応性が向上する。さらに、パルプ中のMgイオンの濃度は絶乾パルプ重量に対して0.01重量%以下であることが好ましい。CaイオンやMgイオンは、パルプを酸化する際に用いる次亜塩素酸塩等の酸化剤を失活すると考えられ、これらのイオン濃度を前記の範囲とすることによって酸化剤の失活を回避でき、その結果、より多くの官能基(カルボキシル基等)をパルプに導入できると考えられる。この失活は、例えば酸化剤が次亜塩素酸Na塩である場合、当該塩は水への溶解度が高いが、これが次亜塩素酸Ca塩等に変換されると水への溶解度が低下することに起因するとも推察される。これらの観点から、Caイオンは0.015重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。Mgイオンは0.01重量%以下であることが好ましく、0.005重量%以下であることがより好ましい。
当該イオン濃度は以下の工程を含む方法によって決定される。
工程1:パルプ濃度が2重量%であるパルプと水との混合物を離解してスラリーを調製する工程
工程2:当該スラリーのpHを2にする工程
工程3:当該スラリーをろ過してろ液を得る工程
工程4:ろ液中の目的とするイオン濃度を測定する工程
工程1における離解には公知のミキサー等の混合機を使用してよい。工程2のpH調整には、塩酸等の金属イオンを含まない公知の無機酸を使用することが好ましい。工程3のろ過にはブフナー漏斗等の公知のろ過手段を使用できる。さらに、工程3で得たろ液を、シリンジフィルター等を用いて精密ろ過することが好ましい。工程4においては公知の分析方法を適用できるが、ICP−OES分析方法を用いることが好ましい。測定された各イオンの量から、パルプ重量に対する濃度を決定する。
パルプ中のCaイオンおよびMgイオン以外の多価金属イオン濃度は限定されないが、当該イオンのそれぞれの濃度は、絶乾パルプ重量に対して0.01重量%以下であることが好ましい。当該イオン濃度も前述の方法に従って測定される。
当該工程で得た特定のCaイオン濃度を有するパルプ(以下「低Ca濃度パルプ」ともいう)は、当該Caイオン濃度を有するパルプを適宜選択する、Ca濃度が前記範囲よりも高い原料パルプを酸で洗浄する、あるいはキレート剤を原料パルプに添加して多価金属イオンを捕捉することによって準備できる。
まず、原料パルプを酸で洗浄する方法を説明する。洗浄には酸を用いることが好ましい。具体的には、無機酸または有機酸の水溶液を用いることが好ましく、そのpHは2〜4であることが好ましい。無機酸としては塩酸、硫酸等が挙げられる。有機酸としては酢酸、ギ酸等が挙げられる。
次に、キレート剤を用いる方法を説明する。キレート剤とは、金属イオンと2個以上の配位結合を形成しうる基を有する化合物である。本発明においては、パルプに含まれる多価金属イオンを捕捉できるキレート剤が好ましい。多価金属イオンとしては、パルプ製造工程での白水中に含まれるCaイオンやMgイオン等が挙げられる。好ましいキレート剤としてはアミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、オキソ酸の縮合物、およびこれらの無機塩が挙げられる。
アミノカルボン酸系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸、ペンタエチレンヘキサミン八酢酸、ニトリロ三酢酸等が挙げられる。この中でもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。
ホスホン酸系キレート剤としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸等が挙げられる。
オキソ酸とは中央原子に結合している原子がすべて酸素である酸であり、リン酸、ケイ酸、炭酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。オキソ酸の縮合物とは、オキソ酸が縮合してなるオキソ酸のポリマーである。この中でもポリリン酸が好ましい。
これらのキレート剤は無機塩の形態でもよい。特に、パルプの酸化はアルカリ条件下で行われることが多いので、キレート剤はアルカリ条件下でキレート化能力を有するものが好ましい。よってキレート剤は、アルカリ金属イオン(好ましくはNaイオン、Kイオン)等の1価の金属イオンまたはアンモイウムイオンをカウンターイオンとして有する無機塩の形態が好ましい。また、本発明においては複数のキレート剤を併用することもできる。
キレート剤の添加量は、パルプ中の多価金属イオンの量とキレート剤のキレート化能力に応じて適宜調整されるが、絶乾パルプ重量に対して0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜5.0重量%であることがより好ましい。
キレート剤は次工程の化学変性反応の前にパルプに添加されるが、パルプが水や水性有機溶媒等の水系分散媒に分散している分散体に添加されることが好ましい。例えば、パルプ濃度が1〜20重量%である分散体にキレート剤を添加することが好ましい。キレート剤を添加しながらまたは添加した後に分散体を撹拌すると多価金属イオンの捕捉を促進することができる。例えば、次工程でパルプを2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、「TEMPO」ともいう)および次亜塩素酸塩を用いて酸化する場合は、次亜塩素酸塩の添加前にキレート剤を添加して多価金属イオンを捕捉し、洗浄することが好ましい。一般に次亜塩素酸は重金属イオンで分解されることが知られているが、これをキレート剤で捕捉し安定化することで、化学変性反応を効率よく実施できるからである。
このようにキレート剤を用いて処理されたパルプの洗浄は公知のとおりに実施できるが、溶媒にイオン交換水を用いてもよいし、酸性の液体を用いてもよい。酸性の液体としては無機酸または有機酸の水溶液が好ましく、そのpHは2〜4であることが好ましい。無機酸としては塩酸、硫酸等が挙げられる。有機酸としては酢酸、ギ酸等が挙げられる。
(2)化学変性工程(2)
化学変性とは、セルロースのグルコース単位あたりに存在するヒドロキシル基を変性することをいう。化学変性としては、例えば、酸化、エーテル化、リン酸エステル化等のエステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化等が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化(カルボキシメチル化等)、カチオン化、エステル化が好ましく、酸化(カルボキシル化)、カルボキシメチル化がより好ましい。本発明においてはパルプ濃度が1〜20重量%の条件で実施することが好ましく、2〜10重量%の条件で実施することが好ましい。具体的には、パルプを分散媒に分散して当該濃度の分散体(好ましくはスラリー)を調製し、反応に供することが好ましい。分散媒は水であることが好ましい。以下、酸化(カルボキシル化)を例にして化学変性について説明する。
パルプを酸化して得られる変性セルロース(酸化セルロース)は、セルロースの水酸基の少なくとも1つが選択的に酸化されていることが好ましい。当該酸化セルロースは、セルロースを構成するグルコピラノース環の水酸基の少なくとも1つがカルボキシル基を有することが好ましく、セルロースを構成する少なくとも1つのグルコピラノース環の6位の水酸基がカルボキシル基を有することがより好ましい。
酸化方法は特に限定されないが、例えば、N−オキシル化合物と、臭化物およびヨウ化物の少なくともいずれかとの存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース系原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の1級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。
N−オキシル化合物とはニトロキシラジカルを発生し得る化合物をいう。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であればいずれの化合物も使用できる。ニトロキシルラジカルとしては、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(以下「TEMPO」ともいう)または4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(以下、「4−ヒドロキシTEMPO」ともいう)が挙げられる。N−オキシル化合物の使用量は原料となるセルロースの酸化反応を触媒する量であればよい。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下がさらに好ましい。従って、N−オキシル化合物の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.02〜0.5mmolがさらに好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、例えば、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が挙げられる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、例えば、ヨウ化アルカリ金属が挙げられる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、特に限定されず、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は1gの絶乾セルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。当該量の上限は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下がさらに好ましい。従って、臭化物およびヨウ化物の合計量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、これらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。中でも、安価で環境負荷が少ないことから、次亜ハロゲン酸またはその塩が好ましく、次亜塩素酸またはその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがさらに好ましい。酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上がさらに好ましい。当該量の上限は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下がさらに好ましく、10mmol以下がさらにより好ましい。従って、酸化剤の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolがさらにより好ましい。N−オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量はN−オキシル化合物1molに対して1mol以上が好ましく、上限は40mol以下が好ましい。従って、酸化剤の使用量はN−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されない。一般に酸化反応は比較的温和な条件であっても効率よく進行する。反応温度は4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。当該温度の上限は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。従って、反応温度は4〜40℃が好ましく、15〜30℃程度、すなわち室温でもよい。反応液のpHは8以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHの上限は12以下が好ましく、11以下がより好ましい。従って、反応液のpHは好ましくは8〜12、より好ましくは10〜11程度である。通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱いの容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
酸化における反応時間は酸化の進行程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5時間以上であり、その上限は通常は6時間以下、好ましくは4時間以下である。従って、酸化における反応時間は通常0.5〜6時間、好ましくは0.5〜4時間程度である。酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後にろ別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
酸化セルロースのカルボキシル基量は、絶乾重量に対して、好ましくは0.6mmol/g以上、より好ましくは0.8mol/g以上、さらに好ましくは1.3mmol/g以上である。当該量の上限は、好ましくは2.5mmol/g以下、より好ましくは2.2mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。従って、当該量は0.6〜2.5mmol/gが好ましく、0.8〜2.2mmol/gまたは1.3〜2.0mmol/gがより好ましい。
酸化セルロースのカルボキシル基量は以下の方法で測定される。
酸化セルロース濃度が0.5重量%スラリーを調製し、当該スラリー60mLに0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とし、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)を求め、下式を用いて算出する。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース重量〔g〕
2.第2の化学変性セルロースの製造方法
第2の化学変性セルロースの製造方法は、パルプにキレート剤を添加して、多価金属イオンを捕捉する工程(A)、および当該パルプを化学変性する工程(B)を備える。本製造方法によって、良好な反応効率にて化学変性セルロースを提供できる。
(1)工程(A)
本工程で用いるパルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹溶解クラフトパルプ(LDKP)、針葉樹溶解クラフトパルプ(NDKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、針葉樹溶解サルファイトパルプ(NDSP)、広葉樹溶解サルファイトパルプ(LDSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。本工程は、第1の製造方法の工程(1)で述べたとおりに実施できるが、本工程においてはキレート処理を行った後、化学変性工程の前にパルプを洗浄してもよいし、しなくてもよい。
(2)工程(B)
本工程は、第1の製造方法の工程(1)で述べたとおりに実施できる。
本製造方法においては、多価金属イオンをキレート剤によって捕捉した状態で化学変性を行うので、効率よく反応を進めることができる。このためパルプ濃度が高い条件下でも高い反応効率を達成でき、より多くの官能基(カルボキシル基等)をパルプに導入できる。この理由は限定されないが、CaイオンやMgイオン、Niイオン等の多価金属イオンは、パルプを酸化する際に用いる次亜塩素酸塩等の酸化剤を失活すると考えられるが、これらを捕捉することで酸化剤の失活を回避できるためと考えられる。この失活は、例えば酸化剤が次亜塩素酸Na塩である場合、前述のとおり当該塩が多価金属イオンによって分解されることや、当該塩は水への溶解度が高いが、これが次亜塩素酸Ca塩等に変換されると水への溶解度が低下することに起因するとも推察される。パルプを酸洗浄することによってもパルプに含まれる多価金属イオンの影響を排除することは可能であるが、この場合は耐酸性の製造装置を用いる必要がある。しかし、本製造方法ではこのような装置を用いなくても多価金属イオンの影響を排除できる。
(3)他の工程
このようにして得た化学変性セルロースを洗浄してもよい。洗浄により、余剰のキレート剤、およびキレート剤と多価金属イオンの錯体を除去することができる。洗浄は公知の方法で実施してよく、例えば化学変性セルロースをろ過等によって単離し、水または有機溶媒で洗浄することができる。
2.化学変性セルロースナノファイバーの製造方法
(1)解繊(ナノ解繊)
前記化学変性セルロースを解繊することによって繊維幅がナノオーダーの化学変性セルロースナノファイバーを製造できる。解繊処理は1回行ってもよく複数回行ってもよい。
解繊に用いる装置は、特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの方式の装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の、高圧または超高圧ホモジナイザーがより好ましい。これらの装置は、変性セルロースに強力なせん断力を印加することができるので好ましい。せん断速度は1000sec-1以上が好ましい。これにより、凝集構造が少なく、均一にナノファイバー化することができる。化学変性セルロースに印加する圧力は、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。
解繊は、通常、化学変性セルロースが分散媒中に分散した分散体を用いて実施する。分散媒は、通常、水等の水系分散媒が好ましい。分散に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理としては、例えば、混合、撹拌、乳化が挙げられ、公知の装置(例えば、高速せん断ミキサー)を用いて行えばよい。
化学変性セルロースの分散体を解繊処理する場合、分散体中の化学変性セルロースの固形分濃度の下限は、通常は0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。この濃度であると原料に対する液量が適量となり効率的な解繊を行うことができる。当該濃度の上限は、通常10重量%以下であり、好ましくは6重量%以下である。この濃度であると分散体の流動性を保持することができる。
(2)化学変性セルロースナノファイバー分散液
解繊工程により、化学変性セルロースナノファイバーが分散媒中に分散した分散液(以下単に「分散液」ともいう)が得られる。本発明で得られた化学変性セルロースは化学変性基を多く含むので解繊性が良好であり、解繊によって得られた分散液は高い透明度を有する。具体的に、濃度1%(w/v)の分散液の660nmの透過度によって定義される透明度は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
(3)ろ過
必要に応じて、解繊によって得られた分散液をろ過してもよい。ろ過により分散液中の異物を除去できるので分散液の透明度をより向上できる。ろ過処理としては、例えば、分散液(通常は水系分散媒を使用)を0.01MPa以上、好ましくは0.01〜10MPaの差圧を付けて加圧ろ過または減圧ろ過する処理が挙げられる。差圧が0.01MPa以上であることにより、相当の希釈を行わなくとも十分なろ過処理量が得られる。希釈を行わない分散液はセルロースナノファイバー濃度を高く保てるので輸送等に有利である。具体的には特願2015−215793に記載の方法に従ってろ過を行うことが好ましい。
3.化学変性セルロースナノファイバー
化学変性セルロースナノファイバーとは化学変性セルロースから得られた微細繊維である。化学変性セルロースナノファイバーの平均繊維径は特に限定されないが、長さ加重平均繊維径にして通常2〜500nm程度であり、好ましくは2〜50nmである。化学変性セルロースナノファイバーの平均繊維長は特に限定されないが、長さ加重平均繊維長にして好ましくは50〜2000nmである。長さ加重平均繊維径および長さ加重平均繊維長(以下、単に「平均繊維径」、「平均繊維長」ともいう)は、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察して求められる。変性セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は10以上である。上限は特に限定されないが、1000以下である。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径により算出できる。化学変性セルロースナノファイバーにおけるカルボキシル基等の化学変性基の量は解繊前の化学変性セルロースと同じである。
[実施例1−1]
1)イオン濃度の測定
針葉樹由来の溶解サルファイトパルプ(日本製紙株式会社製、NDSP)に水を加えて、濃度2重量%の混合物とした後、ミキサーを用いて離解した。当該混合物に塩酸(和光純薬工業株式会社製)を添加してpH2に調整した。ブフナー漏斗を用いて当該混合物をろ過し、ろ液を回収後、さらにシリンジフィルター(孔径0.45μm)でろ過した。得られたろ液をICP−OESにて測定し、多価金属イオン濃度(mg/パルプg)を算出した。その結果、Caイオンが0.075mg/g(=0.0075重量%)、Mgイオンが0.034mg/g(=0.0034重量%)であった。
2)パルプの酸化
前記針葉樹由来の溶解サルファイトパルプ(日本製紙株式会社製、NDSP)5g(絶乾)を、TEMPO(東京化成工業株式会社製)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)756mg(7.35mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。ここに次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)2.3mmolを水溶液の形態で加えた。次いで、次亜塩素酸ナトリウムを絶乾パルプ1g当たり0.23mmol/分の添加速度となるように送液ポンプを用いて徐々に添加してパルプの酸化を行った。次亜塩素酸ナトリウムの全添加量が22.5mmolとなるまで添加を継続した。反応中は系内のpHは低下するが、3N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。水酸化ナトリウム水溶液を添加し始めた時点、すなわち酸化反応が開始されてpHの低下が見られた時点から添加を終了するまで、すなわち酸化反応が終了してpHの低下が見られなくなった時点までの時間を反応時間とした。塩酸を用いて当該反応液を中和した後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗して酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。
3)酸化セルロースのカルボキシル基量の測定
次の方法によって酸化セルロースのカルボキシル基量を測定した。
濃度が0.5重量%である酸化セルロースのスラリーを60mL調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いてカルボキシル基量を算出した。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース重量〔g〕。
この測定の結果、得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.60mmol/gであった。
4)酸化パルプの解繊および分散液の調製
上記酸化処理を経た濃度1%(w/v)の酸化セルロースのスラリー500mLを超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で3回処理して、透明なゲル状のセルロースナノファイバー分散液を得た。
5)透明度測定
超音波装置を用いてセルロースナノファイバー分散液を脱泡した後、紫外可視分光光度計(UV−1800、株式会社島津製作所製)の660nmの波長にて測定した透過度(%)を透明度とした。本分散液の透明度は95%であった。結果を表1に示す。
[実施例1−2]
パルプとしてバッカイ社製NDKP(銘柄名:V5)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。
[実施例1−3]
パルプとして日本製紙株式会社製LDSPを用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。
[比較例1−1]
パルプとして日本製紙株式会社製NBKPを用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。
[比較例1−2]
パルプとして日本製紙株式会社製LBKPを用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。
Figure 2019124251
[比較例1−3]
比較例1−1のNBKPに水を加えて、濃度2重量%の混合物とした後、ミキサーを用いて離解した。ブフナー漏斗を用いて当該混合物をろ過し、イオン交換水で洗浄した。洗浄後のろ液について、実施例1−1と同様にしてイオン濃度を測定した。イオン濃度は、Ca:0.0450、Mg:0.0100、Al:0.0002であった。当該洗浄済みパルプを用いて実施例1−1と同様にしてTEMPO酸化反応を行い、カルボキシル基量1.53mmol/gのTEMPO酸化パルプを得た。上記酸化処理を経た濃度1%(w/v)の酸化セルロースのスラリー500mLを超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で3回処理して、透明度89%のセルロースナノファイバー分散液を得た。
[実施例1−4]
比較例1−1で用いたNBKPに水を加えて、濃度2重量%の混合物とした後、パルプの絶乾重量に対して2重量%のEDTAを添加し、充分に撹拌した。この混合物を脱水後、洗浄済みパルプを得た。このパルプを比較例1−3と同様に処理して、ろ液を採取し、イオン濃度を測定した。当該濃度は、Ca:0.0041、Mg:0.0022、Al:<0.0001であった。洗浄済みパルプを用いて実施例1−1と同様にしてTEMPO酸化反応を行い、カルボキシル基量1.65mmol/gのTEMPO酸化パルプを得た。上記酸化処理を経た濃度1%(w/v)の酸化セルロースのスラリー500mLを超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で3回処理して、透明度94%のセルロースナノファイバー分散液を得た。
[実施例1−5]
比較例1−1で用いたNBKPに水を加えて、濃度2重量%の混合物とした後、ミキサーを用いて離解した。当該混合物に塩酸(和光純薬工業株式会社製)を添加してpH2に調整した。ブフナー漏斗を用いて当該混合物をろ過し、ろ液を回収後、さらにシリンジフィルター(孔径0.45μm)でろ過した。得られたろ液について、実施例1−1と同様にしてイオン濃度を測定した。当該濃度は、Ca:0.0022、Mg:0.0017、Al:<0.0001であった。洗浄済みパルプを用いて実施例1−1と同様にしてTEMPO酸化反応を行い、カルボキシル基量1.67mmol/gのTEMPO酸化パルプを得た。上記酸化処理を経た濃度1%(w/v)の酸化セルロースのスラリー500mLを超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で3回処理して、透明度94%のセルロースナノファイバー分散液を得た。
表1から実施例で得たセルロースナノファイバーは高いカルボキシル基量を有し、その分散液は高い透明性を有することが明らかである。すなわち、実施例で得た化学変性パルプは高い解繊性を有することが明らかである。
また、比較例1−3ではイオン交換水のみでの洗浄を行ったが、NBKPに含まれる多価金属イオンを十分に除去できなかった。一方、実施例1−4ではEDTAを用いたため、キレート作用によりNBKPに含まれる多価金属イオンを除去できた。また実施例1−5では酸洗浄を施すことで、NBKPに含まれる多価金属イオンを除去できた。
[実施例2−1]
1)パルプの酸化
針葉樹由来の漂白済み未叩解パルプ(日本製紙株式会社製)100g(絶乾)と水を、アンカーミキサーを備えるウォータージャケット付き容器(プライミクス株式会社製)に仕込み、パルプ濃度が5重量%のスラリーを調製した。室温にて、キレート剤としてEDTA(株式会社日新化学研究所、商品名:コントロールHN)を当該スラリーに滴下した。キレート剤の総量は1.0g(絶乾パルプに対し0.5重量%)であり、滴下時間は1分であった。
当該スラリーに、TEMPO(東京化成工業株式会社製)0.391gと臭化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10.29gを溶解した水溶液を加え、撹拌した。ここに次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)濃度が2mol/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液330mLを30分かけて加え、酸化反応を行った。反応温度は25℃であった。反応中は系内のpHは低下するが3N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。水酸化ナトリウム水溶液を添加し始めた時点、すなわち酸化反応が開始されてpHの低下が見られた時点から添加を終了するまで、すなわち酸化反応が終了してpHの低下が見られなくなった時点で反応を停止した。塩酸を用いて当該反応液を中和した後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗して酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。当該反応におけるスラリー中のパルプ濃度は5重量%であった。
2)酸化セルロースのカルボキシル基量の測定
次の方法によって酸化セルロースのカルボキシル基量を測定した。
濃度が0.5重量%である酸化セルロースのスラリーを60mL調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いてカルボキシル基量を算出した。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース重量〔g〕。
この測定の結果、得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.55mmol/gであった。
3)酸化パルプの解繊および分散液の調製
上記反応で得た酸化セルロースを含むスラリーに水を加えて濃度1%(w/v)の酸化セルロースのスラリーを調製した。当該スラリー500mLを超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で3回処理して、透明なゲル状のセルロースナノファイバー分散液を得た。
4)透明度測定
超音波装置を用いてセルロースナノファイバー分散液を脱泡した後、紫外可視分光光度計(UV−1800、株式会社島津製作所製)の660nmの波長にて測定した透過度(%)を透明度とした。本分散液の透明度は95%であった。結果を表2に示す。
[実施例2−2、2−3]
キレート剤の添加量を、2.0重量%、5.0重量%に変更した以外は、実施例2−1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[実施例2−4]
キレート剤として2.0g(パルプに対して2.0重量%)のポリリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した以外は、実施例2−1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[比較例2−1]
キレート剤を使用しなかった以外は、実施例2−1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[実施例2−5]
パルプの量を60g、TEMPOの量を0.234g、臭化ナトリウムの量を6.17g、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を198mL、キレート剤の量を1.2g(パルプに対して2.0重量%)とした以外は、実施例2−4と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。当該反応におけるスラリー中のパルプ濃度は3重量%であった。結果を表2に示す。
[比較例2−2]
キレート剤を使用しなかった以外は、実施例2−5と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[実施例2−6]
パルプの量を40g、TEMPOの量を0.156g、臭化ナトリウムの量を4.12g、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を124mL、キレート剤の量を0.8g(パルプに対して2.0重量%)とした以外は、実施例2−4と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。当該反応におけるスラリー中のパルプ濃度は2重量%であった。結果を表2に示す。
[比較例2−3]
キレート剤を使用しなかった以外は、実施例2−6と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[実施例2−7]
パルプの量を20g、TEMPOの量を0.078g、臭化ナトリウムの量を2.06g、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を58mL、キレート剤の量を0.4g(パルプに対して2.0重量%)とした以外は、実施例2−4と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。当該反応におけるスラリー中のパルプ濃度は1重量%であった。結果を表2に示す。
[比較例2−4]
キレート剤を使用しなかった以外は、実施例2−7と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を製造し、評価した。結果を表2に示す。
Figure 2019124251
実施例で得たセルロースナノファイバーは高いカルボキシル基量を有し、かつその分散液は高い透明性を有することが明らかである。

Claims (9)

  1. (1)以下の方法で測定されるパルプ中のCaイオンの濃度がパルプ重量に対して0.02重量%以下であるパルプを準備する工程、
    濃度測定方法:
    1)パルプ濃度が2重量%であるパルプと水との混合物を離解してスラリーとし、
    2)当該スラリーのpHを2にし、
    3)当該スラリーをろ過してろ液を得て、
    4)ろ液中の目的とするイオン濃度を測定する
    (2)当該パルプを化学変性する工程、
    を含む、化学変性セルロースの製造方法。
  2. 前記工程(1)におけるパルプの、前記方法で測定されるパルプ中のMgイオンの濃度がパルプ重量に対して0.01重量%以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(1)が、キレート剤を原料パルプに添加して多価金属イオンを捕捉する工程、当該処理されたパルプを洗浄する工程を経て、前記Caイオン濃度を有するパルプを準備する工程である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記工程(1)が、原料パルプを酸性の液体で洗浄することにより前記Caイオン濃度を有するパルプを準備する工程である、請求項1または2に記載の製造方法。
  5. (A)パルプにキレート剤を添加して、多価金属イオンを捕捉する工程、および
    (B)当該パルプを化学変性する工程、
    を含む、化学変性セルロースの製造方法。
  6. 前記キレート剤が、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、オキソ酸の縮合物、これらの無機塩、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記化学変性を行う際のパルプ濃度が1〜20重量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記化学変性が酸化反応である、請求項1〜7に記載の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかの方法よって化学変性セルロースを調製する工程、および
    当該化学変性セルロース解繊してセルロースナノファイバーを得る工程、
    を含む、セルロースナノファイバーの製造方法。
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