JP6954253B2 - 溶銑予備処理方法 - Google Patents

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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Description

本発明は、溶銑中に含まれる珪素や燐を除去する際に、脱燐処理時の温度降下を抑止しながら処理後燐濃度を低減する溶銑予備処理方法に関する。
溶銑には珪素や燐などの不純物が多量に含まれており、従来から、鍋やトピードカーに溶銑を入れた状態で生石灰などのフラックスおよび酸化鉄等を添加して脱珪・脱燐する、いわゆる溶銑予備処理が盛んにおこなわれている。酸化鉄の酸素分(以下、固酸)を用いた脱燐処理は、酸化鉄中のFeおよびFeOの分解が吸熱反応であることと、脱燐剤そのものの顕熱変化とにより溶銑温度が低下するという欠点がある。その対策として、溶銑中の珪素や炭素と酸素ガス(以下、気酸)との発熱反応の利用、脱燐反応効率の向上、スラグが容器から吹き出すスロッピングの抑制もしくはスラグを容器から排出する排滓を抑止または省略することなどで溶銑温度の低下を抑える取り組みが行われている。
また、製鋼プロセスにおいて、脱燐剤などフラックスの滓化促進材として、CaF(蛍石)などのハロゲン化物が使用されてきた。しかし、環境問題に対する社会的関心が高まる中、フッ素は水中への溶出が問題とされており、近年では、蛍石などのハロゲン化物を使用しないフラックスが求められている。
例えば、特許文献1には、生石灰と酸化鉄および酸素ガスを同一箇所に同時に供給し、その生石灰の質量と酸化鉄および酸素ガスの酸素換算質量の和の比、CaO/Oを0.2〜0.7とすることで、生石灰の高滓化性により脱燐効率を向上させる方法が記載されている。
また、特許文献2には、トピードカーなどの反応容器内の溶銑に酸化剤を吹き込み、副原料としてCaO含有物質を投入する溶銑の脱珪処理方法において、酸化剤の送酸速度FO2(Nm/t/min)と脱珪処理後のスラグの塩基度(C/S)(−)が、1.0>(C/S)≧1.2×FO2+0.55となる範囲に送酸速度や塩基度を調整することによってスラグフォーミングを抑止する方法が記載されている。
また、特許文献3には、溶銑の脱珪処理に際して、脱珪処理のスラグ中MgO含有量が20%以上80%未満となるように酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムを添加することで、脱珪処理の後に排滓することなく脱燐処理を行う方法が記載されている。
また、特許文献4には、脱燐処理に至るまでに一度排滓した後に、燐濃度が0.04〜0.06%に到達するまでの1次脱燐処理の後排滓を行い、その後さらに脱燐フラックスを添加して2次脱燐処理を行い、気酸は上吹きランスを用いて浴面に吹付け、気酸比率を調整することで脱燐速度を向上させる方法が記載されている。
また、特許文献5には、溶銑の脱珪・脱燐を同一処理で行うにあたり、酸素としての体積流量換算で、気酸比率を脱珪反応期間中は80%以上、脱燐反応期間中は60%以下とすることで脱珪・脱燐反応を効果的に進行させる方法が記載されている。
特開2000−144226号公報 特開2017−145435号公報 特開昭62−161907号公報 特開2002− 69518号公報 特開2013−127089号公報
しかしながら、前記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、脱珪・脱燐の同時処理時にCaO/Oが0.2〜0.7の領域において、スロッピングが多発することを発明者らは確認しており、度々処理の中断が発生することによる生産性の低下や、熱ロスの増加が問題となる。
特許文献2に記載の技術では、低塩基度(C/S<1)スラグは脱燐能力が低く、またトピードカーの炉口周辺へ使用されるAl系キャスタブルは、吹き込みガスによるスプラッシュなどで付着した低塩基度スラグと良く反応し、溶損が助長されることが問題となる。
特許文献3に記載の技術の目的は排滓省略による熱ロス低減、および前記メカニズムでの炉口耐火物損耗の低減にある。しかし、スラグ中のMgO含有量が増加することでfree−MgOが析出し、スラグ膨張の誘因となり、スラグのリサイクル性を阻害することが判明している。したがってスラグリサイクルの観点からMgO源の添加は望ましくなく、実用性に問題がある。
特許文献4に記載の技術では、脱珪処理後と1次脱燐処理の後に2回排滓を行うことになり、浴温度は脱燐処理において約70〜90℃、脱珪時の排滓を含めればそれ以上溶銑温度が低下しているはずであり、高炉出銑成分や温度によってはこのプロセスは熱的に成り立たないか、後工程において多量の昇熱剤を必要とし、コスト増が問題となる。
特許文献5に記載の技術では、現実には脱珪期と脱燐期を明確に区別することが難しい問題があった。また、脱珪スラグを残したまま、脱燐処理を継続した場合、スロッピングにより処理の中断を余儀なくされる場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蛍石等のハロゲン化合物を用いることなく、スラグのスロッピングを抑止し、それによって、溶銑予備処理における溶銑温度降下を抑止し、創出した熱余裕を用いて処理後燐濃度をさらに低下させることや後工程到着時の燐濃度を上げることなく溶銑配合率(以下、銑配)を低下させることにある。
前記課題を解決し上記の目的を実現するため開発した本発明は、下記の要旨構成に示すとおりである。即ち、本発明は、脱珪と脱燐の同一処理を含む溶銑予備処理方法において、浸漬ランスを用いて酸素ガスと石灰および酸化鉄を主成分とする精錬剤とを溶銑中の同一箇所に供給し、処理中にスラグを排滓または流滓させることなく溶銑中燐濃度を0.050質量%以上で処理を終了する1次予備処理を行うことを特徴とする溶銑予備処理方法を提案する。
なお、本発明に係る上記溶銑の脱燐処理方法については、
a.前記1次予備処理を行った後、該処理にて生成したスラグを排滓してから、さらに酸素ガスと前記精錬剤とを溶銑中の同一箇所に供給する2次予備処理を行うこと、
b.前記1次予備処理または前記2次予備処理を行った後、該処理にて生成したスラグを排滓してからさらに上吹きランスから酸素ガスを溶銑浴面に吹き付けると共に、石灰および酸化鉄を主成分とする脱燐フラックスを溶銑中に吹き込んで脱燐本処理を行うこと、
c.前記1次予備処理および前記2次予備処理の石灰の質量と酸化鉄および酸素ガスの酸素質量換算の和の比CaO/O(−)を0.80以上とすること、
d.前記1次予備処理および前記2次予備処理の酸化鉄および酸素ガスの酸素質量換算流量に対する酸素ガスの質量流量の割合である気酸比率を40〜60質量%とすること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
以上説明したように、本発明に依れば、蛍石等のハロゲン化合物を含まない脱燐フラックスを用いて、スロッピングなく脱珪・脱燐処理を同一処理で行うことができる。さらに、気酸を温度上昇に利用したり、脱燐反応に効果的に寄与させたりすることができるようになるため、脱珪処理着から脱燐処理終了までの温度降下が抑制され、創出した熱余裕で従来以上に予備処理後の燐濃度を低減できるようになる。また、従来は、銑配を下げる分失われた熱余裕を、酸化鉄の使用量を抑える、つまり処理後燐濃度を上げることで補てんしていたが、本発明により創出された熱余裕で補てんすることにより、処理後燐濃度を上げることなく銑配の低減が可能になるという効果もある。
溶銑予備処理における通常処理と本発明処理のフロー概略を示す図である。 本発明における既存の脱珪処理設備での1次予備処理と2次予備処理の実施形態の一例を表す図である。 本発明における既存の脱燐処理設備での脱燐本処理の実施形態の一例を表す図である。 1次予備処理時の石灰源と全酸素との比率CaO/Oがスロッピングに与える影響を示す図である。 1次予備処理時の気酸比率と(a)脱Si酸素効率および(b)脱C酸素効率の関係を示す図である。 最終工程気酸比率と最終ΔT/ΔPの関係を表す図である。 初回処理工程の処理前温度と最終処理工程での到達[P]濃度の関係を示す図である。
添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明する。図1は通常処理フローと本発明処理フローの説明図である。通常処理では、高炉から出銑された溶銑は、酸化鉄と石灰源を配合した脱珪剤と気酸を同一ランスから同一箇所に同時に、または酸素ガスと脱珪剤を別々のランスから供給することによりSiを酸化除去させる(脱珪処理)。この際生成したスラグを容器外に除去(排滓)したのち、石灰源および酸化鉄を主成分とする脱燐用フラックス(脱燐剤)を溶銑中に浸漬させたランスから吹き込み、別のランスからは気酸を溶銑表面に吹き付けることにより燐を酸化させ、燐酸化物(P)としてスラグ中に捕捉させることにより脱燐を行う(脱燐本処理)。この脱珪処理または脱燐本処理中、あるいはその両方で、生成したスラグを連続的に排滓(流滓)もしくは断続的に排滓する。
これに対し、本発明の処理フロー(1)では、高炉から出銑された溶銑は、浸漬させたランスから気酸と酸化鉄および石灰源を配合した精錬剤とを同一箇所から同時に吹き込み、脱珪と脱燐を同一処理内で行う(1次予備処理)。1次予備処理終了後、生成したスラグを一部あるいは全部排滓し、そののち、上記脱燐本処理を行うものである。本発明の処理フロー(2)では、上記1次予備処理終了後、生成したスラグを一部あるいは全部排滓し、必要に応じて、上記1次予備処理と同様の脱燐処理(2次予備処理)を行って生成したスラグを排滓した後、上記脱燐本処理を行うものである。
(1次予備処理)
この1次予備処理では、処理後[P]濃度を0.050質量%以上で処理を終了する。その際、少なくとも化学量論的に溶銑中の処理前[Si]がすべて酸化する量の酸素を固酸および気酸の和として吹込むものとする。好ましくは、化学量論的酸素必要量の1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。この1次予備処理の間は途中でスラグを排滓または流滓させることなく処理することで熱余裕を確保する。1次予備処理の処理後[P]が0.050質量%を境に処理中のスロッピング頻度が変わることから、1次予備処理は溶銑中[P]濃度が0.050質量%で終了した方が良いことが分かった。溶銑中[P]濃度が0.050質量%未満では、スロッピングが多発し、処理を中断して、スラグフォーミング鎮静剤の投入を余儀なくされた。この理由として、溶銑中[P]濃度が低下してくると脱P反応は1次反応となり、脱炭が盛んになってくるため、スラグ中にCO気泡がトラップされる。それによりスラグをフォーミングさせ、スロッピングにつながったものと考えている。スロッピングすると、スラグのフォーミングを鎮静化させるため処理を中断するので溶銑温度が下がって熱余裕がなくなってしまうおそれがある。
1次予備処理で用いる精錬剤は、酸化鉄および石灰源を主成分とする。酸化鉄としては、鉄鉱石粉、焼結粉、所内リサイクルダストなどを用いることができる。石灰源として、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、石灰石(CaCO)、ドロマイト(CaMg(CO)のほか、転炉スラグなどを用いることができる。配合比率は、低融点のカルシウムフェライトを生成できる比率とすることが好ましい。滓化促進剤として、Al源を添加することもできる。なお、精錬剤には蛍石等のハロゲン化合物を添加しない。
1次予備処理中は、スラグ塩基度(CaO)/(SiO)(省略して、C/Sとも表記する)が1.0以上、CaO/Oが0.80以上、気酸比率が40〜60質量%とすることが好ましい。そうすることで、この1次予備処理の間にスラグの排滓または流滓を必要とせず、さらに気酸とSi、Cなどの反応熱を有効に利用できるので、温度降下を抑制しつつ溶銑[P]濃度が0.050〜0.080質量%程度まで脱珪脱燐処理を施すことができる。ここで、CaO/Oとは、石灰源中のCaO分の質量と酸化鉄および酸素ガスの酸素質量換算の和の比であり、気酸比率とは、酸化鉄および酸素ガスの酸素質量換算流量に対する酸素ガスの質量流量の割合である。
スラグ塩基度(C/S)が1.0未満では、スラグの脱燐能が十分ではない。一方、スラグ塩基度が高くなりすぎる、つまり、CaO源を多量投入することは、スラグ発生量の増加を招き、また、滓化不良により排滓を困難とする恐れがあるので、1次予備処理ではC/S:2.0以下とすることが好ましい。
処理後のCaO/Oが0.80未満では、スロッピングが発生するおそれがある。一方、CaO/Oが2.0を超えるとフラックスに対する総酸素量が不足し、熱余裕が小さくなるので、CaO/O:2.0以下とすることが好ましい。より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.2以下である。
気酸比率40質量%未満では、精錬剤の分解吸熱による溶銑温度低下の問題があり、60質量%超えでは、脱Si酸素効率が低下し、脱炭反応により溶銑温度が上昇しすぎて、脱燐反応効率が低下するおそれがある。
用いるランスは内管と外管の2重管構造を有し、内管から酸素ガスと脱燐用フラックスを、外管からは冷却ガス(例えば窒素ガスやプロパンガス)を流せる2孔ないし4孔のランスであることが望ましい。またその浸漬方法は反応容器の開口部中心位置から垂直に、浴表面から300mm以上浸漬させることが望ましい。この理由は第1に、反応容器の1種であるトピードカーは端部の撹拌が悪いため、中心位置からガスおよび粉体を吹くことで浴をより均一に撹拌できるため、第2に、吹込み深さが浅すぎると酸素ガスが浴面から吹き抜けることにより未反応の酸素ガスが2次燃焼に使用され、炉口耐火物へのダメージが懸念されるためである。
1次予備処理で浸漬するランスは前記のランス1本でもよいが、塩基度やCaO/Oが前記条件を満たせるなら窒素と精錬剤を吹く単孔ランスもしくは前記2重管構造で内管から酸素ガスと精錬剤、外管からは冷却ガスを流す単孔ランスをもう1本、浴面に対して斜めに浸漬させるなどして浸漬本数を増やしてもよい。
(2次予備処理)
処理後[P]濃度の目標が0.050質量%未満であるなどの場合には、必要に応じて、1次予備処理し排滓後、続けて2次予備処理を行うことができる。2次予備処理は、上記1次予備処理と同様の設備構成で行う。この場合、1次予備処理で溶銑中のSiはほぼ除去し終えているため、精錬剤の配合塩基度は脱燐能を向上させるためにC/S:1.0以上、より好ましくは2.0以上とし、CaO/Oを0.80以上、気酸比率を40〜60質量%とすることが好ましい。そうすることで溶銑温度低下を抑制または溶銑温度上昇させながら脱燐処理を行うことができる。それぞれの数値限定理由は、1次予備処理と同様である。
(脱燐本処理)
脱燐本処理は、目標[P]濃度となるように通常工程と同様に処理する。通常所定の銑配になるように、後工程でスクラップを使用する場合、処理前の温度条件によっては脱燐本処理を実施することができない場合がある。本発明に依れば、脱燐本処理前に温度降下を抑止あるいは温度上昇させながら脱燐処理を行うことが可能であるため、所定の[P]濃度になるように1次予備処理のみ、あるいは1次予備処理および2次予備処理を行った後、脱燐本処理を省略してもよい。
本発明における1次予備処理や2次予備処理と脱燐本処理は、同一の設備で実施しても良いが、溶銑在庫状況によって別々の設備で実施することが望ましい。
本発明の実施例について、図2に記載の設備に基づいて、具体的に説明する。高炉から出銑された溶銑中成分[P]:0.10〜0.15質量%、[Si]:0.1〜0.7質量%を含む溶銑1の300tをトピードカー2に入れたのち、既存の溶銑脱珪設備にて1次予備処理を行った。この1次予備処理では、精錬剤3として生石灰と焼結粉または所内リサイクルダストを種々の配合比で混合したものを用い、酸素ガス4と共に、4孔のランス5を用いてトピードカー2内の溶銑中に吹込んだ。該ランス5はトピードカー2の開口部中心位置から垂直に300mm以上溶銑1内に浸漬した。酸素ガス4の体積流量は14〜30Nm/minとし、精錬剤3の供給速度(FI速度)は50〜310kg−剤/minとした。精錬剤3はディスペンサー6から窒素ガス7をキャリアガスとして輸送し、ランス5直上部で酸素ガス4の配管と合流させてランス5の内管から吹き込んだ。ランス5の外管からは冷却ガスとしてプロパンガス8を、内管の酸素ガス流量の1/10の体積流量で供給した。脱燐用フラックス中の焼結粉または所内リサイクルダストの固酸分は酸素ガス換算で0.16Nm/kg−剤であった。
前記設備で1次予備処理を行った後、排滓設備にて生成したスラグを排滓した。排滓は目分量で1/3〜全量のスラグを除去している。排滓した後、前記脱珪設備にて2次予備処理を行って前記と同様の排滓を行い、既存の脱燐設備にて脱燐本処理を行った。
脱燐本処理について、図3の設備に基づいて具体的に説明する。脱燐設備において、転炉スラグ、生石灰、焼結粉およびダストから選ばれた2種以上を配合した脱燐用フラックス9を酸素ガス4とともに添加する。酸素ガス4は上吹きランス10から0〜30Nm/minの体積流量で溶銑浴面に吹き付けた。脱燐用フラックス9は浴中に斜めに浸漬したインジェクションランス11を用いて、窒素ガス7をキャリアガスとして、300〜550kg−剤/minの供給速度で浴中へ吹き込んだ。脱燐本処理中は、トピードカー2は流滓ピット側に約5°傾転させて、スラグを逐次排出しながら処理を行った。
まず、発明者らは、脱珪・脱燐同時処理となる1次予備処理でのスラグの噴出抑制方法について調査した。先述したように、1次予備処理後の溶銑[P]濃度を0.050質量%未満とすると、スロッピングが多発した。1次予備処理後の溶銑[P]濃度が0.050〜0.080質量%であってもまれにスロッピングする場合があった。精錬剤の供給速度(FI速度)およびCaO/Oを種々変えて、スロッピングの発生有無を調べ、図4に示す。結果、図4のごとく、CaO/Oが0.80を下回ると1次予備処理中にスロッピングが発生する場合があり、その場合には処理中断して石灰を投入しスラグを鎮静する必要があった。しかしCaO/Oが0.80以上であれば、1次予備処理中のスロッピングはほぼなくなり、処理中断なく処理可能であることがわかった。ここでCaOは予備処理中の石灰源供給速度(kg/min)、Oは精錬剤中の固酸および気酸の酸素質量流量の換算和(kg/min)であり、体積流量(Nm/min)から質量流量(kg/min)への単位換算には酸素ガス密度1.42(kg/Nm)を用いた。CaO/Oを0.80以上とした時の処理終了時のスラグの塩基度C/Sは1.0以上が確保されていた。
次に発明者らは、1次予備処理中の気酸比率と脱Si酸素効率、脱C酸素効率について調査し、結果を図5(a)(b)にそれぞれ示す。1次予備処理中の精錬剤の供給速度、気酸の供給速度は一定とし、したがって、1次予備処理中の気酸比率は一定であった。1次予備処理後の溶銑[P]濃度が0.050〜0.080質量%の場合を選んだ。図5から明らかなように気酸比率60質量%を超えると脱Si酸素効率が低下し、脱炭酸素効率が上昇する。ここで、脱Si酸素効率とは、1次予備処理で吹込まれた固酸と気酸の総和のうち、溶銑中の処理前[Si]から計算される脱Siに用いられる酸素量の質量分率をいい、脱C酸素効率とは、1次予備処理で吹込まれた固酸と気酸の総和のうち、溶銑中の処理前[C]と処理後[C]から計算される脱Cのために消費された酸素量の質量分率をいう。
さらに発明者らは、1次予備処理中および2次予備処理中の精錬剤供給速度(FI速度)、気酸比率およびCaO/O比率を変更し、本発明を適用した場合における処理後[P]濃度として、[P]:0.001質量%を除去する際の温度変化の指標であるΔT/ΔP(℃/0.001質量%)を、本発明方法を適用しない場合のそれと比較した。ΔTは(処理後溶銑温度−処理前溶銑温度)(℃)、ΔPは(処理後[P]濃度−処理前[P]濃度)(質量%)で算出した。なお、ΔT/ΔPは、その値が小さいほど処理中の温度降下が少ないことを意味し、負の数字は温度上昇を意味する。また、本発明の適用においては複数の処理フローが存在するため、操業形態の分類を下記で定義した。
通常処理 :脱珪処理→排滓→脱燐本処理
操業(1):1次予備処理→排滓(脱燐本処理省略)
操業(2):1次予備処理→排滓→2次予備処理→排滓(脱燐本処理省略)
操業(3):1次予備処理→排滓→脱燐本処理
操業(4):1次予備処理→排滓→2次予備処理→排滓→脱燐本処理
操業の結果について、表1−1〜1−3、図6および図7にまとめる。
Figure 0006954253
Figure 0006954253
Figure 0006954253
表1−1の結果から、1次予備処理において、処理後[P]濃度が0.050質量%以上である実施例1〜8はスロッピングによるスラグ噴出がないか、または、軽度であるのに対し、処理後[P]濃度が0.048質量%である比較例1はスロッピングによる重度のスラグ噴出が発生し、処理中断してスラグの鎮静化を余儀なくされた。また、CaO/Oが0.080未満の実施例7には軽度のスロッピングがあったが、CaO/Oが0.080以上の他の実施例ではスロッピングの発生がなかった。ここで、軽度のスロッピングとは、処理を中断するほどではないものをいい、重度のスロッピングとは、処理を中断し、スラグフォーミングの鎮静化を必要とするものをいう。
また、実施例8は、気酸比率が40質量%未満であり、熱余裕の指標である1次予備処理のΔT/ΔPが0.42(℃/0.001質量%)であったが、気酸比率が40〜60質量%の好ましい範囲にある他の実施例は、1次予備処理のΔT/ΔPが0.22(℃/0.001質量%)以下と十分な熱余裕を持つことがわかる。
溶銑予備処理の最終工程の気酸比率と最終ΔT/ΔPの関係を図6に示す。通常処理操業(工程)である比較例2〜5において、最終ΔT/ΔP(℃/0.001質量%)は、図6で明らかなように気酸比率が増加するにしたがって直線的に低下し、通常処理の最終ΔT/ΔPは0.5〜1.25(℃/0.001質量%)であった。ここで、最終ΔT/ΔPは、(最終工程の処理後温度―初回工程の処理前温度)=ΔT(℃)と(最終工程の処理後[P]濃度−初回工程の処理前[P]濃度)=ΔP(質量%)の比である。
また、初回処理工程の処理前溶銑温度と最終到達[P]濃度の関係を図7に示す。初回処理工程における処理前温度が低くなると、熱余裕を残すために、脱燐本処理において、酸化鉄を含む脱燐用フラックスの使用量を抑制するため、通常処理操業では最終到達[P]濃度は直線的に増加した。その最終到達[P]濃度は0.052〜0.074質量%であった。
操業(1)に分類される実施例3,4では、1次予備処理のみの工程ではあるが、通常処理の最終工程気酸比率の延長線と比較して、図6に示すように最終ΔT/ΔPは、小さくなっており、熱余裕に優れることがわかる。
操業(2)に分類される実施例6において、前記最終ΔT/ΔPは−0.29(℃/0.001質量%)、最終到達[P]濃度は0.024質量%であった。通常処理との違いは、脱燐本処理を省略していることであり、処理後温度を増加させつつ最終到達[P]濃度は、同一最終工程気酸比率での通常処理での最終到達[P]濃度:0.070質量%に対し十分に低減できている。
操業(3)に分類される好ましい実施例1、2の最終ΔT/ΔPは、同一の最終工程気酸比率である通常処理のそれと比較しても約0.1〜0.2(℃/0.001質量%)小さく、通常処理の操業方法と比較して温度降下が少ないことが分かった。また、実施例1、2の最終到達[P]濃度は0.019〜0.053質量%であり、図7で初回処理工程の同一処理前温度の時の最終到達[P]濃度を比較すると、通常処理の操業方法と比較して最終到達[P]濃度は低下させることができた。
操業(4)に分類される実施例5において、前記最終ΔT/ΔPは0.31(℃/0.001質量%)、最終到達P濃度は0.009質量%であった。実施例5における初回工程の処理前温度は1295℃と低く、同温度域での通常処理工程操業の最終到達[P]濃度は約0.070質量%であるから、本発明の最終到達[P]低減効果は極めて大きい。なおかつ、図6から同一最終工程気酸比率(28質量%)で比較すると最終ΔT/ΔPは工程操業よりも約0.5(℃/0.001質量%)低位であるから、熱的にも優位なプロセスであることが分かった。
1 溶銑
2 トピードカー
3 精錬剤(1次予備処理ないし2次予備処理)
4 酸素ガス
5 ランス
6 ディスペンサー
7 窒素ガス
8 プロパンガス
9 脱燐用フラックス(脱燐本処理)
10 上吹きランス
11 インジェクションランス

Claims (4)

  1. 脱珪と脱燐の同一処理を含む溶銑予備処理方法において、
    浸漬ランスを用いて酸素ガスと石灰および酸化鉄を主成分としハロゲン化合物を添加しない精錬剤とを溶銑中の同一箇所から同時に供給し、
    処理中にスラグを排滓または流滓させることなく溶銑中燐濃度を0.050質量%以上で処理を終了する1次予備処理を行い、
    または、前記1次予備処理を行った後、該処理にて生成したスラグを排滓してから、さらに酸素ガスと前記精錬剤とを溶銑中の同一箇所から同時に供給する2次予備処理を行
    ここで、前記1次予備処理では、少なくとも化学量論的に溶銑中の処理前[Si]がすべて酸化する量の酸素を吹込むことを特徴とする溶銑予備処理方法。
  2. 前記1次予備処理または前記2次予備処理を行った後、該処理にて生成したスラグを排滓してからさらに上吹きランスから酸素ガスを溶銑浴面に吹き付けると共に、石灰および酸化鉄を主成分とする脱燐フラックスを溶銑中に吹き込んで脱燐本処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の溶銑予備処理方法。
  3. 前記1次予備処理および前記2次予備処理の石灰の質量と酸化鉄および酸素ガスの酸素質量換算の和の比CaO/O(−)を0.80以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の溶銑予備処理方法。
  4. 前記1次予備処理および前記2次予備処理の酸化鉄および酸素ガスの酸素質量換算流量に対する酸素ガスの質量流量の割合である気酸比率を40〜60質量%とすることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の溶銑予備処理方法。
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