以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造(以下、単に「密封構造」ともいう。)の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分断面図であり、図2は、図1に示す密封構造の部分拡大断面図である。以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向(軸線方向において一方)を外側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向(軸線方向において他方)を内側とする。より具体的には、外側とは、被取付部としてのケースやハウジングの内部から離れる方向であり、内側とは、ケースやハウジングの内部に近づく方向である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)を内周側とする。本発明の第1の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造1は、車両や汎用機械等に用いられるディファレンシャル装置40に適用されているものである。
図1に示すように、ディファレンシャル装置40は従来公知のディファレンシャル装置であり、車両等に設けられ、左右の駆動輪や前後輪の間において出力の差を生成又は速度の差を吸収するための図示しないディファレンシャル機構がハウジング41の内部に収容されている。左右の駆動輪や前後輪(アクスル)に夫々連結される軸部材であるディファレンシャル機構の出力軸42は、ハウジング41に形成された貫通穴43を通ってハウジング41を貫通して外部に延びている。出力軸42は、ハウジング41の内部において、転がり軸受44によって軸線xを中心に又は略中心に回転可能に保持されている。出力軸42と貫通穴43との間に環状の隙間が形成されており、この隙間には密封装置20が取り付けられており、出力軸42と貫通穴43との間の隙間の密封を図っている。
本発明の第1の実施の形態に係る密封構造1は、環状のポケット10と、密封装置20と備えている。本発明に係る密封構造において、ポケットは、軸線x周りに回転可能な軸部材、又は、この軸部材に取り付けられる機能部材に設けられている。本発明の第1の実施の形態に係る密封構造1においては、ポケット10は、後述する機能部材としてのスリンガ30に設けられている。密封装置20は、上述のように、被取付部としてのハウジング41に取り付けられている。
密封装置20は、軸線x周りに環状のシールリップと、軸線x方向において一方の側(外側)に向かって延びる軸線x周りに環状のサイドリップとを備えている。具体的には、密封装置20は、図1,2に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の補強環21と、軸線xを中心又は略中心とする環状の弾性体から成る弾性体部22とを備えている。弾性体部22は、補強環21に一体的に取り付けられている。補強環21の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。弾性体部22の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
補強環21は、図2に示すように、例えば、断面略L字状の形状を呈しており、円盤部21aと、円筒部21bとを備えている。円盤部21aは、軸線xに垂直又は略垂直な方向に広がる中空円盤状の部分であり、円筒部21bは、円盤部21aの外周側の端部から軸線x方向において内側に延びる円筒状の部分である。
弾性体部22は、補強環21に取り付けられており、本実施の形態においては補強環21を外側及び外周側から覆うように補強環21と一体的に成形されている。弾性体部22は、リップ腰部23と、シールリップ24と、ダストリップ25とを備えている。図2に示すように、リップ腰部23は、補強環21の円盤部21aにおける内周側の端部の近傍に位置する部分であり、シールリップ24は、リップ腰部23から内側に向かって延びる部分であり、補強環21の円筒部21bに対向して配置されている。ダストリップ25は、リップ腰部23から軸線x方向に向かって延びている。
シールリップ24は、内側の端部に、断面形状が内周側に向かって凸の楔形状の環状のリップ先端部24aを有している。リップ先端部24aは、後述するように、出力軸42の外周側の表面である外周面42aが摺動可能に外周面42aに接触するように形成されており、出力軸42との間を密封するようになっている。また、シールリップ24の外周部側には、シールリップ24を径方向において内側に押し付けるガータースプリング26が嵌着されている。
ダストリップ25は、リップ腰部23から延びる部位であり、外側且つ内周側に延出している。ダストリップ25により、使用状態におけるリップ先端部24a方向への異物の侵入の防止が図られている。
また、弾性体部22は、後方カバー27と、ガスケット部28とを備えている。後方カバー27は、補強環21の円盤部21aを外側から覆い、ガスケット部28は、補強環21の円筒部21bを外周側から覆っている。
また、密封装置20は、軸線x方向において一方の側(外側方向)に向かって延びる、軸線x周りに環状のサイドリップ29を備えている。サイドリップ29の詳細については後述する。
補強環21は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部22は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、補強環21は成形型の中に配置されており、弾性体部22が架橋(加硫)接着により補強環21に接着され、弾性体部22が補強環21と一体的に成形される。
上述のように、密封装置20は、ハウジング41の貫通穴43と、出力軸42との間に形成される隙間を密封している。具体的には、密封装置20は、ハウジング41の貫通穴43に圧入されて取り付けられ、弾性体部22のガスケット部28が圧縮されて貫通穴43の内周側の面である内周面43aに液密に接触している。これにより、密封装置20とハウジング41の貫通穴43との間が密閉されている。また、シールリップ24のリップ先端部24aが、出力軸42の外周面42aに液密に当接し、密封装置20出力軸42との間が密閉されている。
スリンガ30は、軸線x周りに環状の部材であり、出力軸42に嵌着されるように形成されている。具体的には、スリンガ30は、金属製、例えば防錆に優れたステンレス鋼製の部材であり、図2に示すように、軸線x周りに環状の軸線xに沿って延びる筒状の内周筒部31と、軸線x周りに環状の軸線xに沿って延びる筒状の外周筒部32と、内周筒部31の外側の端部と外周筒部32の外側の端部との間において広がる底部33とを有している。
ポケット10は、軸線x周りに環状の軸線xに沿って延びる周面である外周面11を有しており、凹部12を形成している。凹部12は、軸線x方向において外側(一方の側)に凹む部分であり、軸線x周りに環状に形成されている。外周面11は、軸線x方向において一方(外側、矢印a方向)に向うに連れて拡径している。
具体的には、図2に示すように、スリンガ30において、内周筒部31は、軸線xを中心又は略中心とする円筒状の部分であり、内周側の周面である内周面31aにおいて出力軸42の外周面42aに嵌着可能に形成されている。つまり、内周筒部31の内周面31aの径は、出力軸42の外周面42aの径よりも小さく設定されており、スリンガ30は、内周筒部31において出力軸42に締まり嵌め可能に形成されている。外周筒部32は、内周筒部31に外周側において対向しており、軸線xを中心又は略中心とするテーパ状の部分であり、外周筒部32の内周側の周面である内周面32aは、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径するように形成されている。底部33は、軸線xを中心又は略中心とする円板状の部分である。
スリンガ30は、ディファレンシャル装置40の出力軸42において、密封装置20のダストリップ25よりも外側に配設されている。出力軸42は、図2に示すように、シールリップ24のリップ先端部24aが接触し、ダストリップ25が接触する又は径方向において対向する外周面42aの部分であるシール面よりも、スリンガ30が嵌着される外周面42aの部分の方が径が大きく外周側に突出している形態が好ましい。スリンガ30を出力軸42に嵌着させる際に、出力軸42の外周面42aに傷をつける不都合を低減できるからである。
また、スリンガ30は、外周筒部32の内側の端部から外周方向に延びる環状の部分である鍔部34を有している。鍔部34は、例えば、図2に示すように、軸線xを中心又は略中心とする中空円盤状の形状を有している。この鍔部34により、後述するように、スリンガ30の外周筒部32を伝って内側に侵入しようとする異物を堰き止めることができる。なお、スリンガ30は、鍔部34を有していなくてもよい。
次いで、ポケット10と、密封装置20のサイドリップ29とについて図2を参照して説明する。
ポケット10は、スリンガ30に形成されており、ポケット10の凹部12は、スリンガ30の内周筒部31、外周筒部32、及び底部33により画成されており、また、ポケット10の外周面11はスリンガ30の外周筒部32に形成されている。より具体的には、スリンガ30の外周筒部32がポケット10の外周面11を有しており、ポケット10の外周面11は、スリンガ30の外周筒部32の内周面32aによって形成されており、ポケット10の外周面11は、スリンガ30の外周筒部32の内周面32aである。
ポケット10の外周面11は、上述のように、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径しており、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面であり、例えば、略円錐面状のテーパ面である。ポケット10の拡径する外周面11の軸線xに対する角度である拡径角度αは所定の値となっている。拡径角度αは、具体的には、図2に示すように、断面において、軸線x(軸線xと平行な直線)と外周面11との間の角度である。ポケット10の外周面11の拡径角度αは、0°よりも大きい角度であり、好ましくは、4°以上18°以下であり、より好ましくは、5°以上16°以下であり、さらに好ましくは、7°以上15°以下である。このように、ポケット10の外周面11は、軸線xに対して拡径角度αだけ外周側に向かって傾斜している。
密封装置20のサイドリップ29は、図2に示すように、外側方向に延びており、より具体的には、軸線xに平行に、または、外側方向及び外周方向に軸線xに対して斜めに延びている。また、サイドリップ29の外側の端部である外側端29aは、径方向において、ポケット10の外周面11の内側の端部である内側端11aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ポケット10の内部に進入していない。つまり、密封装置20のサイドリップ29とポケット10の外周面11とは、径方向において互いに重なり合っていない。
このようにサイドリップ29とポケット10により、サイドリップ29の外側端29aとポケット10の外周面11の内側端11aとの間には、環状の間隙g1が形成されている。
サイドリップ29の外側端29aとポケット10の外周面11の内側端11aとが形成する環状の間隙g1は、ラビリンスシールを形成している。このため、ディファレンシャル装置40の外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきても、サイドリップ29とポケット10とが形成するラビリンスシール(間隙g1)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することが抑制されている。これにより、上述のように外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。このため、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置20のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。また、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、ディファレンシャル装置40の外部から内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
また、ラビリンスシール(間隙g1)を形成しているポケット10の外周面11が、上述のように、外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールg1において、異物が更にシールリップ24側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
ラビリンスシール(間隙g1)を形成しているポケット10の外周面11が、上述のように、上記所定の拡径角度αで外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールg1において、異物が更にシールリップ24側に侵入することを更に効果的に抑制することができる。
また、スリンガ30は、鍔部34を有しており、また、鍔部34の内周側の端部に接続する外周筒部32の外周側の面である外周面32b(図2参照)は、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面、例えば円錐面状のテーパ面を形成している。このため、ディファレンシャル装置40の外部から侵入する異物をスリンガ30の外周筒部32と鍔部34との間に堆積させて密封装置20に異物が到達することを抑制することができる。また、外周筒部32と鍔部34との間に堆積した異物は、その自重によって、または、スリンガ30の回転によって、下方に排出可能である。
なお、スリンガ30は、鍔部34を有していなくてもよい。この場合、スリンガ30の外周筒部32の外周面32bは、軸線x方向において外側に向かうに連れて内周側に狭まる(縮径する)環状の面であることが好ましい。この場合、スリンガ30の外周筒部32を伝わって密封装置20側に異物が移動し難くすることができるからである。また、この場合も、ポケット10の外周面11は、上述のように、軸線x方向において外側に向かうに連れて拡径する面である。
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造1は、ディファレンシャル装置40の外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
なお、スリンガ30の形状は上述の形状に限られるものではない。例えば、内周筒部31は、軸線x方向において内側にシールリップ24のリップ先端部24aを超えて延びていてもよい。この場合、スリンガ30の内周筒部31がシール部を形成する。また、この場合、出力軸42の外周面42aは上述のように段差を有しておらず、スリンガ30の内周筒部31が嵌着する部分に亘って一様の径となっていることが好ましい。
次いで、本発明の第2の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造1´について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る密封構造1´は、上述の本発明の第1の実施の形態に係る密封構造1に対して、サイドリップ29とポケット10の外周面11とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第1の実施の形態に係る密封構造1と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る密封構造1´の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図3に示すように、密封装置20のサイドリップ29は、外側端29a側の部分が、ポケット10の内部に進入しており、サイドリップ29とポケット10の外周面11とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている。つまり、サイドリップ29とポケット10の外周面11とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ29とポケット10の外周面11との間に環状の間隙g2を形成している。つまり、サイドリップ29とポケット10の外周面11とはオーバーラップしている。
サイドリップ29とポケット10の外周面11とが形成する環状の間隙g2は、ラビリンスシールを形成している。このため、密封構造1´は、上記密封構造1と同様に、ディファレンシャル装置40の外部から侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することを抑制することができる。これにより、外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができ、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置20のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。また、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、ディファレンシャル装置40の外部から内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
また、サイドリップ29とポケット10の外周面11との軸線x方向に亘る重なり合い(オーバーラップ)の範囲が広いほど、間隙g2のラビリンスシールとしての密封性能は向上する。
また、密封構造1´においては、スリンガ30の鍔部34と、密封装置20の弾性体部22の後方カバー27との間の間隙を狭くすることができ、異物がこの間隙を通過することを困難にすることができる。このため、ラビリンスシールg2の作用に加えて、異物がシールリップ24側に侵入することを抑制することができる。なお、スリンガ30の鍔部34の径方向の長さを延ばすことにより、鍔部34と弾性体部22の後方カバー27との間の間隙をハウジング41の外側の面である外側面41aにまで延ばすことができ、異物がシールリップ24側に侵入することをより抑制することができる。
このように、本発明の第2の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造1´は、本発明の第1の実施の形態に係る密封構造1と同様に、ディファレンシャル装置40の外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
次いで、本発明の第3の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造について説明する。図4は、本発明の第3の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造2の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分断面図であり、図5は、図4に示す密封構造2の部分拡大断面図である。本発明の第3の実施の形態に係る密封構造2は、ポケット13と密封装置50とを備えており、車両や汎用機械等に用いられるハブベアリング60に適用されているものである。
図4に示すように、ハブベアリング60は従来公知のハブベアリングであり、車両等に設けられ、アクスル又は懸架装置において車輪を回転自在に支持する。ハブベアリング60は、具体的には、図4に示すように、被取付部としての軸線xを中心又は略中心とする環状の外輪61と、外輪61に対して相対回転可能であり外輪61に部分的に包囲された軸線xを中心又は略中心とする軸部材としてのハブ62と、外輪61とハブ62との間に配設された複数のベアリングボール63とを備えている。車両等に取り付けられたハブベアリング60の使用状態において、外輪61は固定され、ハブ62が外輪61に対して相対回動可能になる。ハブ62は、具体的には、内輪64とハブ輪65とを有しており、ハブ輪65は、軸線xに沿って延びる筒状又は略円筒状の軸部65aと、車輪取付フランジ65bとを有している。車輪取付フランジ65bは、軸部65aの一端(ハブベアリング60において外側の端部)から外周側に向かって円盤状に広がる部分であり、図示しない車輪が複数本のハブボルトによって取り付けられる部分である。軸部65aと車輪取付フランジ65bとは、内側において滑らかに繋がっており、軸部65aと車輪取付フランジ65bとが内側において繋がっている部分である移行部65cは、軸線xに沿う断面において円弧状の又は弧状の滑らから曲線を描く輪郭を有している。内輪64は、外輪61と内輪64との間の空間内にベアリングボール63を保持するために、ハブ輪65の軸部65aの内側(矢印b方向側)の端部に嵌合されている。外輪61と内輪64との間の空間内において、ベアリングボール63は保持器66によって保持されている。
外輪61は、軸線x方向に延びる貫通穴67を有しており、この貫通穴67には、ハブ62のハブ輪65の軸部65aが挿入されており、軸部65aと貫通穴67との間に軸線xに沿って延びる環状の空間が形成されている。この空間内には、上述のようにベアリングボール63が収容されて保持器66によって保持されており、また、潤滑剤が塗布又は注入されている。軸部65aと貫通穴67との間の空間が外側(矢印a方向側)において開放された開口である外側開口68には、密封装置50が取り付けられており、軸部65aと貫通穴67との間の空間が内側(矢印b方向側)において開放された開口である内側開口68´には、他の密封装置69が取り付けられている。密封装置50,69によって、軸部65aと貫通穴67との間の空間の密封が図られており、内部の潤滑剤が外部に漏れ出ることの防止を図っており、外部から異物が内部に侵入することの防止を図っている。密封装置69は、従来公知の密封装置であり、詳細な説明は省略する。
本発明の第3の実施の形態に係る密封構造2は、上述のように、環状のポケット13と、密封装置50とを備えている。本発明の第3の実施の形態に係る密封構造2においては、ポケット13は、軸部材としてのハブ62に設けられている。密封装置50は、上述のように、被取付部としての外輪61に取り付けられている。
密封装置50は、軸線x周りに環状のシールリップと、軸線x方向において一方の側(外側)に向かって延びる軸線x周りに環状のサイドリップとを備えている。具体的には、密封装置50は、図4,5に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の補強環51と、軸線xを中心又は略中心とする環状の弾性体から成る弾性体部52とを備えている。弾性体部52は、補強環51に一体的に取り付けられている。補強環51の金属材としては、補強環21と同様に、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。弾性体部52の弾性体としては、弾性体部22と同様に、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
補強環51は、図5に示すように、例えば、外周側に位置する円筒状の円筒部51aと、円筒部51aの外側端部から内周側に延びる円盤状の円盤部51bとを備えている。より具体的には、円盤部51bは、図5に示すように、外側に向かって突出している部分と、この外側に向かって突出している部分から内周に向かって延びている部分とを有するように形成されている。補強環51の円筒部51aは、外輪61の外側開口68における内周面68aに密着して嵌着されるように形成されており、外側開口68に締まり嵌め可能に形成されている。
弾性体部52は、補強環51に取り付けられており、本実施の形態においては補強環51を外側から覆うように補強環51と一体的に成形されている。弾性体部52は、基体部53を有しており、また、基体部53から夫々延びた部分である上記サイドリップとしての外周側サイドリップ54と、内周側サイドリップ55と、シールリップとしてのラジアルリップ56とを有している。
基体部53は、補強環51の円盤部51bに外側から取り付けられた部分であり、円盤部51bの外側の表面全体に亘って広がっている。内周側サイドリップ55は、外周側サイドリップ54よりも内周側に位置しており、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部53から外側に向かって延びている。内周側サイドリップ55は、ハブベアリング60において、その先端部において所定の締め代を持ってハブ輪65の移行部65cにハブ輪65が摺動可能に接触し、密封装置50と移行部65cとの間の密封を図っている。また、ラジアルリップ56は、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部53から内側及び内周側に向かって延びている。ラジアルリップ56は、その先端部において所定の締め代を持ってハブ輪65の移行部65cにハブ輪65が摺動可能に当接し、密封装置50と移行部65cとの間の密封を図っている。ラジアルリップ56は、ハブ輪65の移行部65cではなく、ハブ輪65の軸部65aに当接していてもよい。内周側サイドリップ55及びラジアルリップ56は共に、基体部53の内周側の端部から延びており、ラジアルリップ56は、内周側サイドリップ55より内側において基体部53から延びている。
ラジアルリップ56は、上述のようにハブ輪65に当接しており、ハブ輪65の軸部65aと外輪61の貫通穴67との間のベアリングボール63が収容されている空間内の潤滑剤が外部に漏れ出ないようにしている。また、内周側サイドリップ55は、上述のようにハブ輪65に当接しており、ラジアルリップ56側に外部から、泥水や砂、ダスト等の異物が侵入しないようにしている。
外周側サイドリップ54は、内周側サイドリップ55よりも外周側に位置しており、軸線x方向において一方の側(外側方向、矢印a方向)に向かって延びる、軸線x周りに環状のリップである。外周側サイドリップ54の詳細については後述する。
補強環51は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部52は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、補強環51は成形型の中に配置されており、弾性体部52が架橋(加硫)接着により補強環51に接着され、弾性体部52が補強環51と一体的に成形される。
ポケット13は、上記密封構造1のポケット10と同様に、軸線x周りに環状の軸線xに沿って延びる周面である外周面11を有しており、凹部12を形成している。凹部12は、軸線x方向において外側(一方の側)に凹む部分であり、軸線x周りに環状に形成されている。外周面11は、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向うに連れて拡径している。
次いで、ポケット13と、密封装置50の外周側サイドリップ54とについて図5を参照して説明する。
ポケット13は、図5に示すように、ハブ62のハブ輪65に、移行部65cの外周側の端部において又は移行部65cよりも外周側において、形成されており、移行部65cにおいて又は車輪取付フランジ65bの内側の表面である内側面65dにおいて、軸線xを中心又は略中心として円環状に延びる外側に向かって凹む部分である。このようにポケット13は凹部12を形成しており、この凹部12は、外周面11と、ハブ輪65における移行部65cの一部と又は移行部65cから外側に続く周面とによって画成されている。
ポケット13の外周面11は、上述のように、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径しており、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる円環状の面であり、例えば、略円錐面状のテーパ面である。ポケット13の拡径する外周面11の軸線xに対する角度である拡径角度αは所定の値となっている。拡径角度αは、具体的には、図5に示すように、断面において、軸線x(軸線xと平行な直線)と外周面11との間の角度である。ポケット13の外周面11の拡径角度αは、0°よりも大きい角度であり、好ましくは、4°以上18°以下であり、より好ましくは、5°以上16°以下であり、さらに好ましくは、7°以上15°以下である。このように、ポケット13の外周面11は、軸線xに対して拡径角度αだけ外周側に向かって傾斜している。
密封装置50の外周側サイドリップ54は、図5に示すように、外側方向に延びており、より具体的には、軸線xに平行に、または、外側方向及び外周方向に軸線xに対して斜めに延びている。また、外周側サイドリップ54の外側の端部である外側端54aは、径方向において、ポケット13の外周面11の内側端11aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ポケット13の内部に進入していない。つまり、密封装置50の外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11とは、径方向において互いに重なり合っていない。
このように、外周側サイドリップ54とポケット13により、外周側サイドリップ54の外側端54aとポケット13の外周面11の内側端11aとの間には、環状の間隙g3が形成されている。
外周側サイドリップ54の外側端54aとポケット13の外周面11の内側端11aとが形成する環状の間隙g3は、ラビリンスシールを形成している。このため、ハブベアリング60の外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきたとしても、外周側サイドリップ54とポケット13とが形成するラビリンスシール(間隙g3)によって、侵入してきた異物が更にラジアルリップ56側に侵入することが抑制されている。これにより、上述のように外部から侵入する異物に密封装置50のラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が曝されることを抑制することができる。このため、ラジアルリップ56が先端部において異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置50のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。また、ラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が異物を噛み込んで損傷又は劣化し、ハブベアリング60の外部から内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
また、ラビリンスシール(間隙g3)を形成しているポケット13の外周面11が、上述のように、外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールg3において、異物が更にラジアルリップ56側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
ラビリンスシール(間隙g3)を形成しているポケット13の外周面11が、上述のように、上記所定の拡径角度αで外側に向かうに連れて拡径する形状を呈していると、ラビリンスシールg3において、異物が更にラジアルリップ56側に侵入することを更に効果的に抑制することができる。
上述のように、本発明の第3の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造2は、ハブベアリング60の外部から侵入する異物に密封装置50のラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が曝されることを抑制することができる。
なお、ポケット13の凹部12の形状は上述の形状に限られず、断面矩形等の他の形状であってもよい。但し、ポケット13は外周面11を必ず有している。
次いで、本発明の第4の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造2´について説明する。本発明の第4の実施の形態に係る密封構造2´は、上述の本発明の第4の実施の形態に係る密封構造2に対して、外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第3の実施の形態に係る密封構造2と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る密封構造2´の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における部分拡大図である。図6に示すように、密封装置50の外周側サイドリップ54は、外側端54a側の部分が、ポケット13の内部に進入しており、外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って重なり合っている。つまり、外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11とは互いに径方向において対向しており、外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11との間に環状の間隙g4を形成している。つまり、外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11とはオーバーラップしている。
外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11とが形成する環状の間隙g4は、ラビリンスシールを形成している。このため、密封構造4は、上記密封構造3と同様に、ハブベアリング60の外部から侵入してきた異物が更にラジアルリップ56側に侵入することを抑制することができる。これにより、外部から侵入する異物に密封装置50のラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が曝されることを抑制することができ、ラジアルリップ56が異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置50のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。また、ラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が異物を噛み込んで損傷又は劣化し、ハブベアリング60の外部から内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
また、外周側サイドリップ54とポケット13の外周面11との軸線x方向に亘る重なり合い(オーバーラップ)の範囲が広いほど、間隙g4のラビリンスシールとしての密封性能は向上する。
なお、密封構造2´においては、密封構造2に対して、外周側サイドリップ54の長さを長くすることにより、外周側サイドリップ54がポケット13の外周面11とオーバーラップするようにしてもよく、また、外輪61における密封装置50の取り付け位置を軸線x方向において外側に移すことにより、外周側サイドリップ54がポケット13の外周面11とオーバーラップするようにしてもよい。
このように、本発明の第4の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造2´は、本発明の第3の実施の形態に係る密封構造2と同様に、ハブベアリング60の外部から侵入する異物に密封装置50のラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が曝されることを抑制することができる。
次いで、本発明の第5の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造について説明する。図7は、本発明の第5の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造3の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。本発明の第5の実施の形態に係る密封構造3は、ポケット14と密封装置50とを備えており、車両や汎用機械等に用いられるハブベアリング60に適用されているものであり、上述の本発明の第3の実施の形態に係る密封構造2に対してポケットの形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第3の実施の形態に係る密封構造2と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図7に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る密封構造3は、上述のように、環状のポケット14と、密封装置50とを備えている。また、密封構造3は、機能部材としてのスリンガ70を備えている。密封構造3においては、ポケット14は、上述のポケット13(図5,6)とは異なり、ハブ62には設けられておらず、スリンガ70に設けられている。
スリンガ70は、軸線x周りに環状の部材であり、ハブ輪65の移行部65cを覆うようにハブ輪65に嵌着されるように形成されている。具体的には、スリンガ70は、金属製、例えば防錆に優れたステンレス鋼製の部材であり、ハブ輪65の軸部65aの外周側の周面である外周面65eに嵌着するように形成された内周筒部71と、内周筒部71の外側の端部から移行部65cに沿って延びるシール面部72と、シール面部72の外周側の端部(外周端部72a)から内側に延びる筒状の外周筒部73と、外周筒部73の内側の端部から外周方向に延びる環状の部分である鍔部74とを有している。
より具体的には、内周筒部71は、軸線xを中心又は略中心とする円筒状又は略円筒状の部分であり、ハブ輪65の軸部65aの外周面65eに締まり嵌めされるように形成されている。これにより、スリンガ70はハブ輪65に相対移動しないように取り付けられる。シール面部72は、軸線xを中心又は略中心とする筒状の部分であり、軸線xに沿う断面において円弧状の又は弧状の滑らかな曲線を描く輪郭を外周面に有している。シール面部72は、外周端部72aにおいて、ハブ輪65の移行部65cに又はハブ輪65の車輪取付フランジ65bの内側面65dに接触するようになっている。外周筒部73は、シール面部72に外周側において対向しており、軸線xを中心又は略中心とするテーパする筒状の部分であり、外周筒部73の内周側の周面である内周面73aは、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径するように形成されている。鍔部74は、例えば、図7に示すように、軸線xを中心又は略中心とする中空円盤状の形状を有している。この鍔部74により、後述するように、スリンガ70の外周筒部73を伝って内側に侵入しようとする異物を堰き止めることができる。なお、スリンガ70は、鍔部74を有していなくてもよい。
スリンガ70は、シール面部72の外周端部72aに弾性体から形成された環状のガスケット部を有していてもよい。この場合、スリンガ70は、シール面部72の外周端部72aにおいてガスケット部を介してハブ輪65に接触し、シール面部72の外周端部72aにおけるスリンガ70とハブ輪65との間の密封性を向上させることができる。
スリンガ70は、ハブベアリング60において、ハブ輪65の移行部65cを覆うように取り付けられており、密封装置50の内周側サイドリップ55及びラジアルリップ56は、移行部65cにではなく、夫々その先端部において所定の締め代を持ってスリンガ70のシール面部72にスリンガ70(ハブ輪65)が摺動可能に当接している。
次いで、ポケット14と、密封装置50の外周側サイドリップ54とについて図7を参照して説明する。
ポケット14は、スリンガ70に形成されており、上述のポケット13(図5,6参照)と同様に、外周面11と、凹部12とを有しており、凹部12は、スリンガ70のシール面部72と外周筒部73とにより画成されている。また、ポケット14の外周面11はスリンガ70の外周筒部73に形成されている。より具体的には、スリンガ70の外周筒部73がポケット14の外周面11を有しており、ポケット14の外周面11は、スリンガ70の外周筒部73の内周面73aによって形成されており、ポケット14の外周面11は、スリンガ70の外周筒部73の内周面73aである。
密封装置50の外周側サイドリップ54の外側端54aは、図7に示すように、径方向において、ポケット14の外周面11の内側端11aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ポケット14の内部に進入していない。つまり、密封装置50の外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11とは、径方向において互いに重なり合っていない。
このように、外周側サイドリップ54とポケット14により、外周側サイドリップ54の外側端54aとポケット14の外周面11の内側端11aとの間には、環状の間隙g5が形成されている。
外周側サイドリップ54の外側端54aとポケット14の外周面11の内側端11aとが形成する環状の間隙g5は、ラビリンスシールを形成している。このため、ハブベアリング60の外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきたとしても、外周側サイドリップ54とポケット14とが形成するラビリンスシール(間隙g5)によって、侵入してきた異物が更にラジアルリップ56側に侵入することが抑制されている。このように、本発明の実施の形態に係る密封構造3も、上述の密封構造2と同様の効果を奏することができる。
また、スリンガ70は、鍔部74を有しており、また、鍔部74の内周側の端部に接続する外周筒部73の外周側の面である外周面73bは、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面、例えば円錐面状のテーパ面を形成している。このため、ハブベアリング60の外部から侵入する異物をスリンガ70の外周筒部73と鍔部74との間に堆積させて密封装置50に異物が到達することを抑制することができる。また、外周筒部73と鍔部74との間に堆積した異物は、その自重によって、または、スリンガ70の回転によって、下方に排出可能である。
なお、スリンガ70は、鍔部74を有していなくてもよい。この場合、スリンガ70の外周筒部73の外周面73bは、軸線x方向において外側に向かうに連れて内周側に狭まる(縮径する)環状の面であることが好ましい。この場合、スリンガ70の外周筒部73を伝わって密封装置50側に異物が移動し難くすることができるからである。また、この場合も、ポケット14の外周面11は、上述のように、軸線x方向において外側に向かうに連れて拡径する面である。
上述のように、本発明の第5の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造3は、ハブベアリング60の外部から侵入する異物に密封装置50のラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が曝されることを抑制することができる。
なお、ポケット14の凹部12の形状は上述の形状に限られず、断面矩形等の他の形状であってもよい。但し、ポケット13は外周面11を必ず有している。
次いで、本発明の第6の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造3´について説明する。本発明の第6の実施の形態に係る密封構造3´は、上述の本発明の第5の実施の形態に係る密封構造3に対して、外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第5の実施の形態に係る密封構造3と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図8は、本発明の第6の実施の形態に係る密封構造3´の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における部分拡大断面図である。図8に示すように、密封装置50の外周側サイドリップ54は、外側端54a側の部分が、ポケット14の内部に進入しており、外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って重なり合っている。つまり、外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11とは互いに径方向において対向しており、外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11との間に環状の間隙g6を形成している。つまり、外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11とはオーバーラップしている。
外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11とが形成する環状の間隙g6は、ラビリンスシールを形成している。このため、密封構造3´は、上記密封構造3と同様の効果を奏することができ、ハブベアリング60の外部から侵入してきた異物が更にラジアルリップ56側に侵入することを抑制することができる。
また、外周側サイドリップ54とポケット14の外周面11との軸線x方向に亘る重なり合い(オーバーラップ)の範囲が広いほど、間隙g6のラビリンスシールとしての密封性能は向上する。
なお、密封構造3´においては、密封構造3に対して、外周側サイドリップ54の長さを長くすることにより、外周側サイドリップ54がポケット14の外周面11とオーバーラップするようにしてもよく、また、外輪61における密封装置50の取り付け位置を軸線x方向において外側に移すことにより、外周側サイドリップ54がポケット14の外周面11とオーバーラップするようにしてもよい。
このように、本発明の第6の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造3´は、本発明の第5の実施の形態に係る密封構造3と同様に、ハブベアリング60の外部から侵入する異物に密封装置50のラジアルリップ56や内周側サイドリップ55が曝されることを抑制することができる。
次いで、本発明の第7の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造について説明する。図9は、本発明の第7の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造4の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における部分断面図であり、図10は、図9に示す密封構造4の部分拡大断面図である。本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4は、ポケット15と密封装置20とを備えており、車両や汎用機械等に用いられるエンジン80のクランクシャフト81の後端とフライホイール82との間に適用されているものである。本実施の形態に係る密封構造4は、上述の第1の実施の形態に係る密封構造1の密封装置20と同様の構成を有する密封装置20を備えている。
図9に示すように、エンジン80のクランクシャフト81及びフライホイール82は従来公知のクランクシャフト及びフライホイールである。軸部材としてのクランクシャフト81は、被取付部材としてのケース83の内部において回転可能に支持されており、一方の端の部分(後端部分81a)がケース83の側面に形成された貫通穴84を貫通してケース83の外側に突き出している。具体的には、クランクシャフト81は、後端部分81aにおいて、ケース83にメタルベアリング83aを介して回転自在に支持された部分であるジャーナル部81bと、ジャーナル部81bよりも後端側に形成されたジャーナル部81bよりも大径のシールフランジ部81cとを有している。シールフランジ部81cは、ケース83の貫通穴84内に通されており、シールフランジ部81cの円筒面状の外周面81dは、ケース83の貫通穴84の円筒面状の内周面84aと径方向において対向して環状の隙間を形成している。この隙間は、ケース83の貫通穴84に取り付けられた密封装置20によって密封されている。なお、ケース83は、シリンダブロック及びクランクケースによって構成されている。
フライホイール82は、シールフランジ部81cに対して外側から取り付けられている。具体的には、シールフランジ部81cには、図示しないボルト穴が形成されており、フライホイール82は、円盤状のハブ部82aにおいて、ボルト80aによってシールフランジ部81cに対して固定されている。ハブ部82aの内側(矢印b方向側)の面である内側面82bは、平面又は略平面状に広がっている。
本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4は、上述のように、環状のポケット15と、密封装置20とを備えている。本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4においては、ポケット15は、機能部材としてのフライホイール82に設けられている。
密封装置20は、上述のように、被取付部としてのケース83に取り付けられている。密封装置20は、具体的には、図10に示すように、ケース83の貫通穴84に圧入されており、弾性体部22のガスケット部28が貫通穴84の内周面84aに押し付けられて、密封装置20と貫通穴84との間の密封を図っている。また、シールリップ24は、リップ先端部24aにおいて、クランクシャフト81のシールフランジ部81cの外周面81dにシールフランジ部81cが摺動可能に密接に接触しており、クランクシャフト81と密封装置20との間の密封を図っている。ダストリップ25は、シールフランジ部81cの外周面81dに接触するか又は径方向において対向し、リップ先端部24a方向への異物の侵入の防止を図っている。シールリップ24は、主として、ケース83内の潤滑剤の漏洩の防止を図っており、ダストリップ25は、ケース83の外部からの泥水や砂、ダスト等の異物の侵入の防止を図っている。
ポケット15は、上記密封構造1のポケット10と同様に、軸線x周りに環状の軸線xに沿って延びる周面である外周面11を有しており、凹部12を形成している。凹部12は、軸線x方向において外側(一方の側)に凹む部分であり、軸線x周りに環状に形成されている。外周面11は、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向うに連れて拡径している。
次いで、ポケット15と、密封装置20のサイドリップ29とについて図5を参照して説明する。
ポケット15は、図10に示すように、フライホイール82のハブ部82aの内側面82bに形成されており、軸線xを中心又は略中心として円環状に延びるハブ部82aの内側面82bから外側に向かって凹む部分である。ポケット15は、例えば図10に示すように、軸線xを中心又は略中心とする円筒面状の内周面15aを外周面11の内周側に有しており、また、外周面11の外側の端部と内周面15aの外側の端部との間に広がる中空円盤面状の底面15bを有しており、断面矩形又は略矩形の凹部12を形成している。
また、ポケット15の外周面11は、上述のように、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径しており、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる円環状の面であり、例えば、略円錐面状のテーパ面である。ポケット15の拡径する外周面11の軸線xに対する角度である拡径角度αは所定の値となっている。拡径角度αは、具体的には、図10に示すように、断面において、軸線x(軸線xと平行な直線)と外周面11との間の角度である。ポケット15の外周面11の拡径角度αは、0°よりも大きい角度であり、好ましくは、4°以上18°以下であり、より好ましくは、5°以上16°以下であり、さらに好ましくは、7°以上15°以下である。このように、ポケット15の外周面11は、軸線xに対して拡径角度αだけ外周側に向かって傾斜している。
密封装置20のサイドリップ29は、図10に示すように、外側方向に延びており、より具体的には、軸線xに平行に、または、外側方向及び外周方向に軸線xに対して斜めに延びている。また、サイドリップ29の外側の端部である外側端29aは、径方向において、ポケット15の外周面11の内側端11aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ポケット15の内部に進入していない。つまり、密封装置20のサイドリップ29とポケット15の外周面11とは、径方向において互いに重なり合っていない。
このように、サイドリップ29とポケット15により、サイドリップ29の外側端29aとポケット15の外周面11の内側端11aとの間には、環状の間隙g7が形成されている。
サイドリップ29の外側端29aとポケット15の外周面11の内側端11aとが形成する環状の間隙g7は、ラビリンスシールを形成している。このため、エンジン80又はケース83の外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきたとしても、サイドリップ29とポケット15とが形成するラビリンスシール(間隙g7)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することが抑制されている。これにより、上述のように外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。このため、シールリップ24が先端部において異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置20のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。
また、ラビリンスシール(間隙g7)を形成しているポケット15の外周面11が、上述のように、外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールg7において、異物が更にシールリップ24側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
ラビリンスシール(間隙g7)を形成しているポケット15の外周面11が、上述のように、上記所定の拡径角度αで外側に向かうに連れて拡径する形状を呈していると、ラビリンスシールg7において、異物が更にシールリップ24側に侵入することを更に効果的に抑制することができる。
上述のように、本発明の第7の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造4は、エンジン80又はケース83の外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。このように、本発明の第7の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造4は、上述の本発明の第1の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造1と同様の効果を奏することができる。
次いで、本発明の第8の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造4´について説明する。本発明の第8の実施の形態に係る密封構造4´は、上述の本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4に対して、サイドリップ29とポケット15の外周面11とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図11は、本発明の第8の実施の形態に係る密封構造4´の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における部分拡大断面図である。図11に示すように、密封装置20のサイドリップ29は、外側端29a側の部分が、ポケット15の内部に進入しており、サイドリップ29とポケット15の外周面11とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って重なり合っている。つまり、サイドリップ29とポケット15の外周面11とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ29とポケット15の外周面11との間に環状の間隙g8を形成している。つまり、サイドリップ29とポケット15の外周面11とはオーバーラップしている。
サイドリップ29とポケット15の外周面11とが形成する環状の間隙g8は、ラビリンスシールを形成している。このため、密封構造4´は、上記密封構造4と同様に、エンジン80又はケース83の外部から侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することを抑制することができる。これにより、外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができ、シールリップ24が異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置20のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。また、シールリップ24が異物を噛み込んで損傷又は劣化し、エンジン80の外部から内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
また、サイドリップ29とポケット15の外周面11との軸線x方向に亘る重なり合い(オーバーラップ)の範囲が広いほど、間隙g8のラビリンスシールとしての密封性能は向上する。
なお、密封構造4´においては、密封構造4に対して、サイドリップ29の長さを長くすることにより、サイドリップ29がポケット15の外周面11とオーバーラップするようにしてもよく、また、ケース83における密封装置20の取り付け位置を軸線x方向において外側に移すことにより、サイドリップ29がポケット15の外周面11とオーバーラップするようにしてもよい。
このように、本発明の第8の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造4´は、本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4と同様に、エンジン80又はケース83の外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
次いで、本発明の第9の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造について説明する。図12は、本発明の第9の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造5の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における部分断面図であり、図13は、図12に示す密封構造5の部分拡大断面図である。本発明の第9の実施の形態に係る密封構造5は、ポケット16と密封装置20とを備えており、上述の密封構造4と同様に、車両や汎用機械等に用いられるエンジン80のクランクシャフト81の後端とフライホイール82との間に適用されるものである。本実施の形態に係る密封構造5は、上述の本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4に対してポケットの形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第7の実施の形態に係る密封構造4と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図12に示すように、本発明の第9の実施の形態に係る密封構造5は、上述のように、環状のポケット16と、密封装置20とを備えている。また、密封構造5は、機能部材としての円盤状のプレート部材90を備えている。密封構造5においては、ポケット16は、上述のポケット15(図10,11)とは異なり、フライホイール82には設けられておらず、プレート部材90に設けられている。
プレート部材90は、クランクシャフト81とフライホイール82との間に挟持されて、ポケット16の外周面11においてクランクシャフト81の軸線x方向において一方の側の端部(後端部)を外周側から覆ってポケット16の凹部17を形成する。具体的には、図12に示すように、プレート部材90は、クランクシャフト81の後端部分81aのシールフランジ部81cとフライホイール82のハブ部82aとの間に挟まれてボルト80aによってフライホイール82と共締めされてシールフランジ部81cとフライホイール82との間に固定されている。
プレート部材90は、図12に示すように、円板状の部分である円板部91を有しており、円板部91の外周側の端部から軸線xに沿って筒状の部分である外周筒部92が延びており、ポケット16の外周面11は外周筒部92に形成されている。より具体的には、円板部91は、軸線xを中心又は略中心とする円形の板状の部分であり、プレート部材90は、円板部91において、シールフランジ部81cとフライホイール82との間に挟持されている。外周筒部92は、円板部91の外周側の端部から延びるフランジ状の部分であり、内側(矢印b方向)に向かって内周側に斜めに延びている。外周筒部92は、例えば板状になっており、軸線xを中心又は略中心とする円錐面状の内周側の周面である内周面92aと、軸線xを中心又は略中心とする円錐面状の外周側の周面である外周面92bとを有している。
また、プレート部材90は、外周筒部92の内側の端部から外周方向に延びる環状の部分である鍔部93を有している。鍔部93は、例えば、図12に示すように、軸線xを中心又は略中心とする中空円盤状の形状を有している。この鍔部93により、後述するように、プレート部材90の外周筒部92を伝って内側に侵入しようとする異物を堰き止めることができる。なお、プレート部材90は、鍔部93を有していなくてもよい。プレート部材90は、例えば、金属製であり、一枚の板状の部材からプレス加工等により形成される。
次いで、ポケット16と、密封装置20のサイドリップ29とについて図13を参照して説明する。
ポケット16は、プレート部材90によって形成されており、ポケット16の凹部17は、クランクシャフト81のシールフランジ部81cの外周側においてプレート部材90の外周筒部92及び円板部91によって画成されており、また、ポケット16の外周面11はプレート部材90の外周筒部92に形成されている。より具体的には、プレート部材90の外周筒部92がポケット16の外周面11を有しており、ポケット16の外周面11は、プレート部材90の外周筒部92の内周面92aによって形成されており、ポケット16の外周面11は、プレート部材90の外周筒部92の内周面92aである。
ポケット16の外周面11は、上述のように、軸線x方向において外側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径しており、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面であり、例えば、略円錐面状のテーパ面である。ポケット16の拡径する外周面11の軸線xに対する角度である拡径角度αは所定の値となっている。拡径角度αは、具体的には、図13に示すように、断面において、軸線x(軸線xと平行な直線)と外周面11との間の角度である。ポケット16の外周面11の拡径角度αは、0°よりも大きい角度であり、好ましくは、4°以上18°以下であり、より好ましくは、5°以上16°以下であり、さらに好ましくは、7°以上15°以下である。このように、ポケット16の外周面11は、軸線xに対して拡径角度αだけ外周側に向かって傾斜している。
密封装置20のサイドリップ29は、図13に示すように、外側方向に延びており、より具体的には、軸線xに平行に、または、外側方向及び外周方向に軸線xに対して斜めに延びている。また、サイドリップ29の外側の端部である外側端29aは、径方向において、ポケット16の外周面11の内側の端部である内側端11aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ポケット16の内部に進入していない。つまり、密封装置20のサイドリップ29とポケット16の外周面11とは、径方向において互いに重なり合っていない。
このように、サイドリップ29とポケット16により、サイドリップ29の外側端29aとポケット16の外周面11の内側端11aとの間には、環状の間隙g9が形成されている。
サイドリップ29の外側端29aとポケット16の外周面11の内側端11aとが形成する環状の間隙g9は、ラビリンスシールを形成している。このため、エンジン80又はケース83の外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきても、サイドリップ29とポケット16とが形成するラビリンスシール(間隙g9)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することが抑制されている。これにより、上述のように外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。このため、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置20のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。また、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、エンジン80又はケース83の外部から内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
また、ラビリンスシール(間隙g9)を形成しているポケット16の外周面11が、上述のように、外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールg1において、異物が更にシールリップ24側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
ラビリンスシール(間隙g9)を形成しているポケット16の外周面11が、上述のように、上記所定の拡径角度αで外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールg9において、異物が更にシールリップ24側に侵入することを更に効果的に抑制することができる。
また、プレート部材90は、鍔部93を有しており、また、鍔部93の内周側の端部に接続する外周筒部92の外周側の面である外周面92b(図13参照)は、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面、例えば円錐面状のテーパ面を形成している。このため、エンジン80又はケース83の外部から侵入する異物をプレート部材90の外周筒部92と鍔部93との間に堆積させて密封装置20に異物が到達することを抑制することができる。また、外周筒部92と鍔部93との間に堆積した異物は、その自重によって、または、プレート部材90の回転によって、下方に排出可能である。
なお、プレート部材90は、鍔部93を有していなくてもよい。この場合、プレート部材90の外周筒部92の外周面92bは、軸線x方向において外側に向かうに連れて内周側に狭まる(縮径する)環状の面であることが好ましい。この場合、プレート部材90の外周筒部92を伝わって密封装置20側に異物が移動し難くすることができるからである。また、この場合も、ポケット16の外周面11は、上述のように、軸線x方向において外側に向かうに連れて拡径する面である。
上述のように、本発明の第9の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造5は、エンジン80又はケース83の外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
なお、プレート部材90の形状は上述の形状に限られるものではない。例えば、外周筒部92は、図13に示すように筒板状の部分でなくてもよい。また、密封構造1のスリンガ30のように、外周筒部92に内周側において対向する筒状の部分(内周筒部)を有していてもよい。また、プレート部材90が形成するポケット16の凹部17の形状は上述の形状に限られない。
次いで、本発明の第10の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造5´について説明する。本発明の第10の実施の形態に係る密封構造5´は、上述の本発明の第9の実施の形態に係る密封構造5に対して、サイドリップ29とポケット16の外周面11とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第9の実施の形態に係る密封構造5と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図14は、本発明の第10の実施の形態に係る密封構造5´の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図14に示すように、密封装置20のサイドリップ29は、外側端29a側の部分が、ポケット16の内部に進入しており、サイドリップ29とポケット16の外周面11とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている。つまり、サイドリップ29とポケット16の外周面11とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ29とポケット16の外周面11との間に環状の間隙g10を形成している。つまり、サイドリップ29とポケット16の外周面11とはオーバーラップしている。
サイドリップ29とポケット16の外周面11とが形成する環状の間隙g10は、ラビリンスシールを形成している。このため、密封構造5´は、上記密封構造5と同様に、エンジン80又はケース83の外部から侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することを抑制することができる。これにより、外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができ、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、密封装置20のシール性能が低下して潤滑剤が漏洩してしまうことを抑制することができる。また、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、エンジン80又はケース83の外部から内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
また、サイドリップ29とポケット16の外周面11との軸線x方向に亘る重なり合い(オーバーラップ)の範囲が広いほど、間隙g10のラビリンスシールとしての密封性能は向上する。
また、密封構造5´においては、プレート部材90と、密封装置20の弾性体部22の後方カバー27との間の間隙を狭くすることができ、異物がこの間隙を通過することを困難にすることができる。このため、ラビリンスシールg10の作用に加えて、異物がシールリップ24側に侵入することを抑制することができる。なお、プレート部材90の鍔部93の径方向の長さを延ばすことにより、鍔部93と弾性体部22の後方カバー27との間の間隙をケース83の外側の面である外側面83bにまで延ばすことができ、異物がシールリップ24側に侵入することをより抑制することができる。
このように、本発明の第10の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造5´は、本発明の第9の実施の形態に係る密封構造5と同様に、エンジン80又はケース83の外部から侵入する異物に密封装置20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
次いで、本発明の第11の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造について説明する。図15は、本発明の第11の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分断面図である。本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造は、自動車のエンジンに適用されている。
図15に示すように、本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101は、機能部材としてのトーショナルダンパとしてのダンパプーリ110と、密封装置としてのオイルシール120とを備える。ダンパプーリ110はエンジンの軸部材としてのクランクシャフト151の一端にボルト152によって固定されており、オイルシール120は、被取付部としてのエンジンのフロントカバー153の貫通穴154とダンパプーリ110との間を密封している。
ダンパプーリ110は、ハブ111と、質量体としてのプーリ112と、ハブ111とプーリ112との間に配設されたダンパ弾性体113とを備える。ハブ111は、軸線xを中心とする環状の部材であり、内周側のボス部114と、外周側のリム部115と、ボス部114とリム部115とを接続する略円盤状の円盤部116とを備える。ハブ111は、例えば、金属材料から鋳造等によって製造されている。
ハブ111において、ボス部114は、貫通穴114aが形成された軸線xを中心とする環状の部分であり、外側の部分の外周面から外周方向に円盤部116が延びている。ボス部114は、円筒状の内側の部分の外周側の面である外周面114bを備え、外周面114bは滑らかな面となっており、後述するように、オイルシール120のシール面となっている。リム部115は、軸線xを中心とする環状の、より具体的には円筒状の部分であり、ボス部114に対して同心的にボス部114よりも外周側に位置する部分である。リム部115の内周側の面である内周面115aからは円盤部116が内周方向に延びている。リム部115の外周側の面である外周面115bにはダンパ弾性体113が圧着されている。
円盤部116は、ボス部114とリム部115との間に延びて、ボス部114とリム部115とを接続している。円盤部116は、軸線xに対して垂直な方向に延びていてもよく、軸線xに対して傾斜する方向に延びていてもよい。また、円盤部116は、軸線xに沿う断面(以下、単に「断面」ともいう。)が湾曲した形状であっても、真っ直ぐに延びる形状であってもよい。また、図15,16に示すように、円盤部116には、円盤部116を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部116aが少なくとも1つ形成されており、本実施の形態においては、4つの窓部116aが軸線xに対して同心的に周方向に等角度間隔で形成されている(図16参照)。この窓部116aによって、ハブ111、ひいてはダンパプーリ110の軽量化が図られている。
プーリ112は、軸線xを中心とする環状の部材であり、ハブ111を外周側において覆うような形状を呈している。具体的には、プーリ112の内周側の面である内周面112aは、ハブ111のリム部115の外周面115bに対応した形状を有しており、図15に示すように、プーリ112は、その内周面112aがリム部115の外周面115bに径方向において間隔を空けて対向するように位置している。また、プーリ112の外周側の面である外周面112bには、環状のv溝112cが複数形成されており、図示しないタイミングベルトが巻回可能になっている。
ダンパ弾性体113は、プーリ112とハブ111のリム部115との間に設けられている。ダンパ弾性体113は、ダンパゴムであり、耐熱性、耐寒性、及び疲労強度において優れたゴム状弾性材料から架橋(加硫)成形されて形成されている。ダンパ弾性体113は、プーリ112とハブ111のリム部115との間に圧入されており、プーリ112の内周面112aとリム部115の外周面115bとに嵌着されて固定されている。
ダンパプーリ110において、プーリ112とダンパ弾性体113とがダンパ部を形成しており、ダンパ部の捩り方向固有振動数が、クランクシャフト151の捩れ角が最大となる所定の振動数域である、クランクシャフト151の捩り方向固有振動数と一致するように同調されている。つまり、ダンパ部の捩り方向固有振動数がクランクシャフト151の捩り方向固有振動数と一致するように、プーリ112の円周方向の慣性質量と、ダンパ弾性体113の捩り方向剪断ばね定数とが調整されている。
また、ダンパプーリ110は、ハブ111のボス部114に沿って周方向に延びる、円盤部116方向(外側方向)に凹む軸線xを中心とする環状のハブポケット130を有する。ハブポケット130の詳細については、図17を用いて後述する。
上述のように、ダンパプーリ110は、エンジンにおいてクランクシャフト151の一端に取り付けられている。具体的には、図15に示すように、クランクシャフト151の一端がハブ111のボス部114の貫通穴114aに挿通され、外側からボルト152がクランクシャフト151に螺合されて、ダンパプーリ110がクランクシャフト151に固定されている。また、クランクシャフト151とボス部114との間には、クランクシャフト151とボス部114とに係合する半月キー等のキーが設けられて、ダンパプーリ110がクランクシャフト151に対して相対回動不能になっている。
クランクシャフト151に取り付けられた状態において、ダンパプーリ110は、ボス部114の外周面114bを有する内側の部分がフロントカバー153の貫通穴154内に挿通された状態になっており、ボス部114の外周面114bと、フロントカバー153の貫通穴154との間に環状の空間が形成されている。
オイルシール120は、図15に示すように、軸線xを中心とする環状の金属製の補強環121と、軸線xを中心とする環状の弾性体から成る弾性体部122とを備える。弾性体部122は、補強環121に一体的に取り付けられている。補強環121の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。弾性体部122の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
補強環121は、例えば、断面略L字状の形状を呈しており、円盤部121aと、円筒部121bとを備える。円盤部121aは、軸線xに略垂直な方向に広がる中空円盤状の部分であり、円筒部121bは、円盤部121aの外周側の端部から軸線x方向において内側に延びる円筒状の部分である。
弾性体部122は、補強環121に取り付けられており、本実施の形態においては補強環121を外側及び外周側から覆うように補強環121と一体的に成形されている。弾性体部122は、リップ腰部123と、シールリップ124と、ダストリップ125とを備える。図15に示すように、リップ腰部123は、補強環121の円盤部121aにおける内周側の端部の近傍に位置する部分であり、シールリップ124は、リップ腰部123から内側に向かって延びる部分であり、補強環121の円筒部121bに対向して配置されている。ダストリップ125は、リップ腰部123から軸線x方向に向かって延びている。
シールリップ124は、内側の端部に、断面形状が内周側に向かって凸の楔形状の環状のリップ先端部124aを有している。リップ先端部124aは、後述するように、ハブ111のボス部114の外周面114bが摺動可能に外周面114bに密接して接触するように形成されており、ダンパプーリ110との間を密封するようになっている。また、シールリップ124の外周部側には、シールリップ124を径方向において内側に押し付けるガータースプリング126が嵌着されている。
ダストリップ125は、リップ腰部123から延びる部位であり、外側且つ内周側に延出している。ダストリップ125により、使用状態におけるリップ先端部124a方向への異物の侵入の防止が図られている。
また、弾性体部122は、後方カバー127と、ガスケット部128とを備える。後方カバー127は、補強環121の円盤部121aを外側から覆い、ガスケット部128は、補強環121の円筒部121bを外周側から覆っている。
また、オイルシール120は、外側方向に向かって延びるサイドリップ129を備える。サイドリップ129の詳細については、図17を用いて後述する。
補強環121は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部122は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、補強環121は成形型の中に配置されており、弾性体部122が架橋(加硫)接着により補強環121に接着され、弾性体部122が補強環121と一体的に成形される。
上述のように、オイルシール120は、フロントカバー153の貫通穴154と、ダンパプーリ110のボス部114の外周面114bとの間に形成される空間を密封している。具体的には、オイルシール120は、フロントカバー153の貫通穴154に圧入されて取り付けられ、弾性体部122のガスケット部128が圧縮されて貫通穴154の内周側の面である内周面154aに液密に当接している。これにより、オイルシール120とフロントカバー153の貫通穴154との間が密閉されている。また、シールリップ124のリップ先端部124aが、ハブ111のボス部114の外周面114bに液密に当接し、オイルシール120とダンパプーリ110との間が密閉されている。
次いで、ダンパプーリ110の有するハブポケット130と、オイルシール120のサイドリップ129とについて図17を参照して説明する。図17は、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101の部分拡大図である。
図17に示すように、ハブポケット130は、ダンパプーリ110において、円盤部116より内側に形成されており、ボス部114の外周面114bを取り囲んで延びる環状の円盤部116方向に凹む凹部である。具体的には、ハブポケット130は、ボス部114の外周面114bに外周側において対向する環状の外周面131と、外周面131とボス部114の外周面114bとの間に延びる底面132とを備え、外周面131、底面132、及びボス部114の外周面114bとによって画成されている。
ハブポケット130の外周面131は、軸線x方向において円盤部116方向(外側方向)に向かうに連れて拡径しており、軸線x方向において円盤部116方向(外側方向)に向かうに連れて外周側に広がる環状の面であり、例えば、略円錐面状のテーパ面である。
ハブポケット130は、ハブ111の円盤部116から内側方向に延びる環状の突条部によって形成されていてもよく、また、円盤部116に外側方向に凹む凹部が形成されることにより形成されていてもよい。また、ハブポケット130は、これらの突条部と凹部との組み合わせであってもよい。円盤部116から内側方向に延びる環状の突条部によってハブポケット130が形成される場合は、この突条部の内周側の面がハブポケット130の外周面131を形成する。また、円盤部116に外側方向に凹む凹部が形成されることによりハブポケット130が形成される場合は、この凹部の外周側の面がハブポケット130の外周面131を形成する。本実施の形態においては、図17に示すように、ハブ111の円盤部116から軸線x方向において内側方向に突出する環状の突条部133が形成されており、この突条部133によって外周面131が形成されてハブポケット130が形成されている。
ハブポケット130の底面132は、ハブ111の円盤部116の内側の面によって形成されてもよく、ハブ111の円盤部116の内側の面よりも内側に形成されてもよく、ハブ111の円盤部116の内側の面に凹部を形成することによって形成されてもよい。
ハブポケット130の上述のように拡径する外周面131の軸線xに対する角度である拡径角度αは所定の値となっている。拡径角度αは、具体的には、図17に示すように、断面において、軸線x(軸線xと平行な直線)と外周面131との間の角度である。ハブポケット130の外周面131の拡径角度αは、0°よりも大きい角度であり、好ましくは、4°以上18°以下であり、より好ましくは、5°以上16°以下であり、さらに好ましくは、7°以上15°以下である。このように、ハブポケット130の外周面131は、軸線xに対して拡径角度αだけ外周側に向かって傾斜している。
オイルシール120のサイドリップ129は、図17に示すように、外側方向に延びており、より具体的には、軸線xに平行に、または、外側方向及び外周方向に軸線xに対して斜めに延びている。また、サイドリップ129の外側の端部である外側端129aは、径方向において、ハブポケット130の外周面131の内側の端部である内側端131aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ハブポケット130の内部に進入していない。つまり、オイルシール120のサイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは、径方向において互いに重なり合っていない。
このように、サイドリップ129とハブポケット130により、サイドリップ129の外側端129aとハブポケット130の外周面131の内側端131aとの間には、環状の間隙g11が形成されている。
サイドリップ129の外側端129aとハブポケット130の外周面131の内側端131aとが形成する環状の間隙g11は、ラビリンスシールを形成している。このため、ダンパプーリ110とフロントカバー153との間に加えて、ハブ111の円盤部116の窓部116aを介して外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきても、サイドリップ129とハブポケット130とが形成するラビリンスシール(間隙g11)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ124側に侵入することが抑制されている。これにより、上述のようにダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。このため、リップ先端部124aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール120のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。なお、ダンパプーリ110から侵入する異物とは、ダンパプーリ110とフロントカバー153との間を介して外部から侵入する異物、及びハブ111の円盤部116の窓部116aを介して外部から侵入する異物を含む。
また、ラビリンスシール(間隙g11)を形成しているハブポケット130の外周面131が、上述のように、外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールにおいて、異物が更にシールリップ124側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
ラビリンスシール(間隙g11)を形成しているハブポケット130の外周面131が、上述のように、上記所定の拡径角度αで外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールにおいて、異物が更にシールリップ124側に侵入することを更に効果的に抑制することができる。
上述のように、本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101は、ダンパプーリ110とフロントカバー153との間から侵入する異物に、ダンパプーリ110の窓部116aから侵入する異物を加えた、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。
なお、ハブポケット130を形成する突条部133の外周側の面である外周面133a(図17参照)は、軸線x方向において内側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面、例えば円錐面状のテーパ面を形成していてもよい。この場合、ダンパプーリ110から侵入する異物を突条部133の外周面133aに堆積させてオイルシール120に異物が到達することを抑制することができる。また、突条部133の外周面133aに堆積した異物は、その自重によって、または、ダンパプーリ110の回転によって、下方に排出することができる。
次いで、本発明の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101の密封性能について説明する。
[評価試験1:拡径角度αの評価]
本発明者は、拡径角度αが異なる上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101を製作し(試験例1〜4)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1の密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例4は、上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。また、密封性能の評価の便宜上、実施例1〜4においては、オイルシール120における弾性体部122のシールリップ124、ダストリップ125、及びガータースプリング126の形成を省略した(図18参照)。
試験例1においては、ハブポケット130の外周面131の拡径角度αをα=7.2°とし、ハブポケット130の外周面131の内側端131aにおける直径φをφ=52.0mmとした。試験例2においては、拡径角度αをα=14.4°とし、ハブポケット130の外周面131の内側端131aにおける直径φをφ=52.0mmとした。試験例3においては、拡径角度αをα=21.6°とし、ハブポケット130の外周面131の内側端131aにおける直径φをφ=52.0mmとした。試験例4においては、拡径角度αをα=0°とし、ハブポケット130の外周面131の内側端131aにおける直径φをφ=54.2mmとした。なお、試験例1〜4において、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131との軸線x方向に亘る重なり合い量(オーバーラップ量)は0mmである。また、試験例1〜4において、補強環121及び弾性体部122の材料は、夫々、EPDM及びFC250とした。
図19は、上記密封性能の評価試験に用いる密封性能試験機170の概略構成を示すための図であり、図19(a)は部分断面斜視図であり、図19(b)は部分拡大断面図である。図19に示すように、密封性能試験機170は、図示しないモータによって回動可能なダミークランクシャフト171と、モータ172によって回動可能な撹拌羽根173と、ダミーフロントカバー174とを備える。ダミーフロントカバー174には、円筒状のカバー175が取り付けられており、カバー175は、内部に、試験例1〜4に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造と撹拌羽根173を収容し、これらの周りに密封空間を形成している。また、ダミーフロントカバー174の貫通穴174aにおいて、試験例1〜4におけるオイルシールの外部側には、ダミークランクシャフト171とダミーフロントカバー174との間を外部に対して密封するシール部材176が取り付けられている。このように、密封性能試験機170において、試験例1〜4に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の周辺空間は密封されている。そして、カバー175の内部には異物としてのダスト177が堆積されている。ダスト177としては、JIS試験用粉体1(1種及び8種)、または、JIS Z8901:2006記載の試験用粉体の1種又は3種(以下、「JIS1種」、「JIS3種」ともいう。)が用いられている。また、図19(b)に示すように、ダミーフロントカバー174とダンパプーリ110のプーリ112との間の軸方向の間隔βはβ=2.5mmとなっている。
図20は、評価試験に用いるトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101のハブポケット130の近傍を拡大して示す図である。図20に示すように、評価試験においては、ダンパプーリ110のハブ111に軸線xを中心とする環状の凹部を形成し、この凹部にハブポケット130に対応する溝が形成された環状部材であるアタッチメントAを着脱可能に固定することによりハブポケット130が形成されたダンパプーリ110が用いられている。なお、図20においては、便宜上、サイドリップ129がハブポケット130にオーバーラップしているように記載されている。
密封性能の評価試験は、撹拌羽根173をモータ172により回転させて、カバー175内に堆積されたダストを撹拌し、サイドリップ129とハブポケット130との間の間隙g11を通過したダストの量(ダスト侵入量)を計測することにより行った。また、評価試験においては、ダミークランクシャフト171を回転させ、ダンパプーリ110とオイルシール120とを使用状態に近似させ、また、周辺温度を室温とした。評価試験は1時間行った。
本密封性能の評価試験の結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、拡径角度αが0°である試験例4と拡径角度αが0°よりも大きい試験例1,2とを比較すると、拡径角度αが0°よりも大きいハブポケット130とサイドリップ129とが形成するラビリンスシール(間隙g11)の密封性能が高いことが分かる。また、拡径角度αが4°以上18°以下の範囲内にある試験例1及び試験例2は、ダスト侵入量が夫々2.1g及び1.0gであり、サイドリップ129及びハブポケット130が形成するラビリンスシール(間隙g11)の密封性能が高い。一方、拡径角度αが4°以上18°以下の範囲内にない試験例3は、ダスト侵入量が8.1gであり、試験例1,2と比較してサイドリップ129及びハブポケット130が形成するラビリンスシール(間隙g11)の密封性能が低い。このように、試験例1及び試験例2に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101は、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを大幅に抑制することができることが分かった。つまり、拡径角度αが4°以上18°以下の範囲内にあるトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1は、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを大幅に抑制することができることが分かった。
[評価試験2:隙間角度差δの評価]
本発明者は、ハブポケット130の外周面131の拡径角度αとサイドリップ129の軸線xに対する傾斜角度(傾斜角度γ)(図20参照)との組み合わせが異なる上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101を製作し(試験例11〜20)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例11は、上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。本試験例11〜20に係る密封構造の密封性能の評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(図18,20参照)と密封性能試験機170(図19参照)とを用いて同様に行った。
試験例11〜15においては、サイドリップ129の軸線xに対する傾斜角度γをγ=7.2°とし、各試験例においてハブポケット130の外周面131の拡径角度αを変え、ハブポケット130の拡径角度αとサイドリップ129の傾斜角度γとの差(隙間角度差δ=α―γ)を異なるものにした。また、試験例16〜20においては、サイドリップ129の傾斜角度γをγ=19.3°とし、各試験例においてハブポケット130の拡径角度αを変え、隙間角度差δを異なるものにした。
具体的には、試験例11においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。なお、マイナスの隙間角度差δの値は、サイドリップ129がハブポケット130の外周面131よりも大きく傾斜していることを表す。試験例12においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例13においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例14においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。また、試験例15においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。また、試験例16においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例17においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=2.3°とした。試験例18においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=26.5°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例19においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=31.4°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。試験例20においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=33.7°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。
本密封性能の評価試験の結果を図21及び以下の表2に示す。
図21及び表2に示すように、本評価試験から、隙間角度差δとダスト侵入量との間に関連性があることが分かった。そして、サイドリップ129の傾斜角度γの値がγ=7.2°であってもγ=19.3°であっても、隙間角度差δが1.0°以上11.0°以下である場合、ダスト侵入量が低減され、隙間角度差δが2.0°以上9.0°以下である場合、ダスト侵入量が更に低減され、隙間角度差δが3.0°以上8.0°以下である場合、ダスト侵入量がより低減される傾向が認められた。また、サイドリップ129の傾斜角度γの値がγ=7.2°であってもγ=19.3°であっても、隙間角度差δがδ=7.2°の場合、ダスト侵入量が最も低減される傾向が認められた。この評価結果から、サイドリップ129の傾斜角度γの値に拘らず、隙間角度差δが1.0°〜11.0°である場合にダスト侵入量を効果的に低減させることができ、隙間角度差δが2.0°〜9.0°である場合にダスト侵入量をより低減させることができ、隙間角度差δが3.0°〜8.0°である場合にダスト侵入量を更に低減させることができることが分かる。また、ダスト侵入量を低減させるためには、サイドリップ129の傾斜角度γの値に拘らず、隙間角度差δが7.2°であることが最も好ましいことが分かる。
[評価試験3:ダンパプーリのボス部の軸径の評価]
また、本発明者は、ダンパプーリ110のボス部114の軸の直径である軸径d(図20参照)と隙間角度差δとの組み合わせが異なる上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101を製作し(試験例21〜33)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例21,25,30は、上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。試験例21〜24においては、ボス部114の軸径dをd=35mmとし、試験例25〜29においては、ボス部114の軸径dをd=42mmとし、試験例30〜33においては、ボス部114の軸径dをd=50mmとした。また、本試験例21〜33に係る密封構造の密封性能の評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(図18,20参照)と密封性能試験機170(図19参照)とを用いて同様に行った。なお、本評価試験においては、夫々の軸径dの密封構造において、サイドリップ129の傾斜角度γ、間隙g1の径方向の幅である間隙幅a、サイドリップ129とハブポケット130とがオーバーラップしている量であるオーバーラップ量b、及びダンパプーリ110の円盤部116とオイルシール120との間の軸線x方向の間隔である間隔cは同じ値となっている。オーバーラップ量bはb=0であり、サイドリップ129の傾斜角度γはγ=7.2°である。
具体的には、試験例21においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例22においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例23においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例24においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。また、試験例25においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例26においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例27においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例28においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。試験例29においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。また、試験例30においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例31においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例32においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例33においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。
本密封性能の評価試験の結果を図22及び以下の表3に示す。
図22及び表3に示すように、本評価試験から、軸径d=35,42,50mmの各々の密封構造においても、隙間角度差δとダスト侵入量との間に、上記評価試験2と同様の傾向が認められた。つまり、軸径d=35,42,50mmの夫々の密封構造においても、隙間角度差δが1.0°以上11.0°以下である場合、ダスト侵入量が低減され、隙間角度差δが2.0°以上9.0°以下である場合、ダスト侵入量が更に低減され、隙間角度差δが3.0°以上8.0°以下である場合、ダスト侵入量がより低減される傾向が認められた。また、軸径d=35,42,50mmの夫々の密封構造においても、隙間角度差δがδ=7.2°の場合、ダスト侵入量が最も低減されることが分かった。この評価結果から、ボス部114の軸径dの値が異なる各密封構造101において、隙間角度差δが1.0°〜11.0°である場合にダスト侵入量を低減させることができ、隙間角度差δが2.0°〜9.0°である場合にダスト侵入量をより低減させることができ、隙間角度差δが3.0°〜8.0°である場合にダスト侵入量を更に低減させることができることが分かる。また、ボス部114の軸径dの値が異なる各密封構造101において、隙間角度差δが7.2°である場合に、ダスト侵入量を最も低減させることができることが分かる。このように、ボス部114の軸径dの値に拘らず、隙間角度差δが7.2°である場合にダスト侵入量が最小となることが分かる。また、本評価試験から、間隙g11の通路面積が大きいほど、つまり軸径dが大きいほど、ダスト侵入量が大きくなることが分かった。
[評価試験4:間隙g11の間隙幅aの評価]
また、本発明者は、サイドリップ129とハブポケット130とが形成する間隙g11の間隙幅aが異なる上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101を製作し(試験例41〜44)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の密封性能の評価試験を行った。また、本試験例41〜44に係る密封構造の密封性能の評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(図18,20参照)と密封性能試験機170(図20参照)とを用いて同様に行った。試験例41〜44の夫々においては、ハブポケット130の拡径角度α、サイドリップ129の傾斜角度γ、サイドリップ129とハブポケット130とのオーバーラップ量b、ダンパプーリ110の円盤部116とオイルシール120との間の間隔c、及びボス部114の軸径dは同じ値となっている。なお、オーバーラップ量bはb=0であり、サイドリップ129の傾斜角度γはγ=7.2°である。
具体的には、試験例41においては、間隙g11の間隙幅aをa=2.1mmとし、試験例42においては、間隙g11の間隙幅aをa=1.6mmとし、試験例43においては、間隙g1の間隙幅aをa=1.1mmとし、試験例44においては、間隙g11の間隙幅aをa=0.6mmとした。
本密封性能の評価試験の結果を図23及び以下の表4に示す。
図23及び表4に示すように、試験例41〜44において、ダスト侵入量に差はほとんど認められない。このように、本評価試験から、ボス部114の軸径dが一定であれば、間隙g11の間隙幅aが変化しても密封構造101の密封性能にほとんど影響が無いことが分かった。
[評価試験5:試験用粉体の粒径の評価]
また、本発明者は、異物の大きさの違いが上記トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101の密封性能に与える影響について評価するために本評価試験を行った。本評価試験においては、隙間角度差δが異なる上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101を製作し(試験例51〜60)、JIS1種及びJIS3種の2つの異なる試験用粉体を別々に用いて、密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例51,56は、上記本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。JIS1種の試験用粉体の粒径は150μm以上であり、試験用粉体の量は5vol%であり、JIS3種の試験用粉体の粒径は5〜75μmであり、試験用粉体の量は5vol%である。本評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(図18,20参照)と密封性能試験機170(図19参照)とを用いて同様に行った。試験例51〜60の夫々においては、サイドリップ129の傾斜角度γ、間隙g11の間隙幅a、サイドリップ129とハブポケット130とのオーバーラップ量b、ダンパプーリ110の円盤部116とオイルシール120との間の間隔c、及びボス部114の軸径dは同じ値となっている。なお、オーバーラップ量bはb=0であり、サイドリップ129の傾斜角度γはγ=7.2°であり、軸径dはd=42mmである。
具体的には、試験例51,56においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例52,57においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例53,58においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例54,59においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。また、試験例55,60においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。
本密封性能の評価試験の結果を図24及び以下の表5に示す。
図24及び表5に示すように、本評価試験から、試験用粉体として粒径の小さいJIS3種を使用した場合、JIS1種を使用する場合よりもダスト侵入量は減少したが、粒径の異なるJIS1,3種を使用した場合でも、各粒径の試験用粉体に対して、隙間角度差δとダスト侵入量との間に、上記評価試験2と同様の傾向が認められた。つまり、粒径の異なるJIS1,3種の夫々を試験用粉体として使用した密封構造においても、隙間角度差δが1.0°以上11.0°以下である場合、ダスト侵入量が低減され、隙間角度差δが2.0°以上9.0°以下である場合、ダスト侵入量が更に低減され、隙間角度差δが3.0°以上8.0°以下である場合、ダスト侵入量がより低減される傾向が認められた。また、粒径の異なるJIS1,3種の夫々を試験用粉体として夫々使用した密封構造においても、隙間角度差δがδ=7.2°の場合、ダスト侵入量が最も低減されることが分かった。この評価結果から、曝される異物の大きさに拘らず、密封構造101において、隙間角度差δが1.0°〜11.0°である場合にダスト侵入量を低減させることができ、隙間角度差δが2.0°〜9.0°である場合にダスト侵入量をより低減させることができ、隙間角度差δが3.0°〜8.0°である場合にダスト侵入量を更に低減させることができることが分かる。また、曝される異物の大きさに拘らず、密封構造101において、隙間角度差δが7.2°である場合に、ダスト侵入量を最も低減させることができることが分かる。
次いで、本発明の第21の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102は、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図25は、本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大図である。
図25に示すように、オイルシール120のサイドリップ129は、外側端129a側の部分が、ハブポケット130の内部に進入しており、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている。つまり、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131との間に環状の間隙g12を形成している。つまり、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とはオーバーラップしている。
サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とが形成する環状の間隙g12は、ラビリンスシールを形成している。このため、上記密封構造101と同様に、ダンパプーリ110から侵入してきた異物が更にシールリップ124側に侵入することを抑制することができる。これにより、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができ、リップ先端部124aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール120のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。
後述するように、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131との軸線x方向に亘る重なり合い(オーバーラップ)の範囲が広いほど、間隙g12のラビリンスシールとしての密封性能は向上する。
このように、本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102は、本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同様に、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。
次いで、本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102の密封性能について説明する。
[評価試験6:オーバーラップ量bの評価]
本発明者は、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とが軸線x方向に亘り重なり合う長さであるオーバーラップ量bの違いが上記トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102の密封性能に与える影響について評価するために本評価試験を行った。本評価試験においては、各ハブポケット130の拡径角度αに対して異なるオーバーラップ量bを設定した上記本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102を製作し(試験例61〜77)、密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例72〜77は、上記本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。試験例61〜65においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=7.2°とし、試験例66〜71においては、ハブポケット130の拡径角度αをα=14.4°とした。本評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(図18,20参照)と密封性能試験機170(図19参照)とを用いて同様に行った。試験例61〜74の夫々においては、サイドリップ129の傾斜角度γ、及びボス部114の軸径dは同じ値となっている。なお、傾斜角度γはγ=7.2°である。また、試験例61〜70及び試験例72〜76においては、ハブポケット130が形成されたアタッチメントA(図20参照)を軸線x方向において移動させることにより、オーバーラップ量bを下記の夫々の値に設定した。このため、試験例61〜70及び試験例72〜76においては、ダンパプーリ110の円盤部116とオイルシール120との間の間隔cが、設定されたオーバーラップ量に応じて異なる値となっている。一方、試験例71,77においては、ダンパプーリ110の円盤部116に対向するオイルシール120の弾性体部122の外側の面を切削して、間隔cの値が、試験例61,72(オーバーラップ量b=0)における間隔cの値と同一となるようにした。
具体的には、試験例61,66,72においては、オーバーラップ量bをb=0mmとし、試験例62,67,71,73,77においては、オーバーラップ量bをb=0.6mmとし、試験例63,68,74においては、オーバーラップ量bをb=1.2mmとし、試験例64,69,75においては、オーバーラップ量bをb=1.8mmとし、試験例65,70,76においては、オーバーラップ量bをb=2.1mmとした。
本密封性能の評価試験の結果を図26及び以下の表6に示す。
図26及び表6に示すように、本評価試験から、オーバーラップ量bとダスト侵入量との間に関連性があることが分かる。具体的には、各拡径角度αにおいて同様に、オーバーラップ量bが増加するに連れて、ダスト侵入量が減少していくことが分かる。また、図において塗り潰した○及び△は、試験例71,77の試験結果に夫々対応しており、間隔cがオーバーラップ量bの値に応じて減少された夫々同じオーバーラップ量b(b=0.6mm)を有する対応する試験例67,73と略同等の試験結果を示している。このため、本評価試験において、ダンパプーリ110の円盤部116とオイルシール120との間の間隔cは、ダスト侵入量に影響を与えないと考えることができる。
このように、本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102において、オーバーラップ量bが多い程、間隙g12を超えて内部に侵入してくるダストの量を低減することができ、密封構造102の密封性能を高めることができることが分かった。本実施の形態に係る密封構造102において、具体的には、サイドリップ129の延び方向の長さを長くすることにより、オーバーラップ量bを多くすることが考えられるが、ゴム弾性体等の弾性部材から形成されているサイドリップ29は、その延び方向の長さが長くなると鉛直方向に自重で撓んでしまう。従って、オーバーラップ量bは多ければ多いほど好ましいが、オーバーラップ量bの上限値は、例えば、サイドリップ129が重力や使用状態で加えられる他の力に対して所望する形状を維持可能な範囲において設定される。また、図26及び表6より、各拡径角度αの密封構造において、オーバーラップ量bが1.2mmから1.8mmに増加すると、ダスト侵入量は著しく減少しており、オーバーラップ量bの下限値は、1,2mm〜1.8mmの間の値、または、1.8mmが好ましいことが分かる。
次いで、本発明の第13の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103は、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して、ハブポケット130を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図27は、本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図27に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103におけるダンパプーリ110においては、ハブポケット130の外周面131及び底面132がハブ111に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103は、ダンパプーリ110に取り付けられたハブ111とは別体の付属環部材140を有しており、この付属環部材140にハブポケット130の外周面131及び底面132が形成されている。
付属環部材140は、軸線xを中心とする中空環状の円盤状の部材であり、ダンパプーリ110のボス部114に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット130の外周面131及び底面132が形成されている。具体的には、図27に示すように、付属環部材140は、外周側の面である外周面140aと、ダンパプーリ110において、ボス部114に挿通された嵌合される貫通孔を形成する内周側の面である内周面140bとを有している。付属環部材140には、内側に面する側面である側面140cに外側に向かって凹む凹部が形成されて、ハブポケット130の外周面131及び底面132が形成されている。
ダンパプーリ110のボス部114には、外周面114bに外側において続く外周面である段差面114cが形成されており、段差面114cは、外周面114bよりも大きな径を有しており、外周面114bよりも外側に突き出している。また、外周面114bと段差面114cとは滑らかに接続されている。付属環部材140は、内周面140bがボス部114の段差面114cに嵌合されてボス部114に取り付けられている。
付属環部材140は、固定部材141によってダンパプーリ110に相対移動不能に取り付けられている。付属環部材140はこの取り付けられた状態において、付属環部材140の外側に面する側面である側面140dが、円盤部116の側面に接触している。固定部材141は、例えば、ボルトやリベット、ピンであり、円盤部116に形成された軸線x方向に延びる貫通孔である貫通孔116bと、付属環部材140に形成された底面132と側面140dとの間を貫通する軸線x方向に延びる貫通孔140eとに係合して付属環部材140をダンパプーリ110に固定する。例えば、貫通孔116b及び貫通孔140eのいずれか一方又は両方がネジ穴となっており、ボルトである固定部材141がこのネジ穴に螺合されることにより、付属環部材140がダンパプーリ110に固定される。また、固定部材141がピン又はリベットである場合は、固定部材141は貫通孔116b及び貫通孔140eに嵌合若しくは係合されて付属環部材140がダンパプーリ110に固定される。付属環部材140の固定方法は上述のものに限られず、固定部材141としては他の公知の適用可能な固定方法を実現するものであってもよい。付属環部材140は固定部材141によってダンパプーリ110に固定されるため、強固に固定される。
付属環部材140がダンパプーリ110に取り付けられた状態において、オイルシール120のサイドリップ129の外側端129aとハブポケット130の外周面131の内側端131aとの間には、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同様に、環状の間隙g11が形成されている。
付属環部材140の材料は、金属材料であっても樹脂材料であってもよく、例えば、ステンレス鋼やABS樹脂等である。付属環部材140の樹脂材料としては、エンジンルーム等の使用環境の雰囲気温度に耐えられる樹脂であることが好ましい。
上述の本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103は、本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同様な作用効果を奏することができ、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。
また、本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103においては、付属環部材140にハブポケット130の外周面131及び底面132が形成されているので、ハブポケット130の加工を容易にすることができる。上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101,102においては、ハブポケット130がハブ111に形成されており、ハブポケット130は、鋳造により形成されたハブ111に対して切削加工を行うことにより形成される。ハブ111の重量は大きく、また、切削加工用の工具とボス部114とが干渉しないようにハブポケット130の加工作業を行う必要があり、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101,102においては、ハブポケット130の加工が難しい。一方、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103においては、ハブ111とは別体の環状部材にハブポケット130の外周面131及び底面132を加工して付属環部材140を作成し、付属環部材140をダンパプーリ110に取り付けてハブポケット130を形成するので、ハブポケット130の加工を容易にすることができる。特に、ハブポケット130の傾斜面である外周面131の加工を容易にすることができる。
また、本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103においては、ダンパプーリ110のボス部114において、外周面114bの外側に外周方向に突出した段差面114cが形成されており、この段差面114cに付属環部材140が嵌合される。このため、付属環部材140の嵌合の際に、シールリップ124のリップ先端部124aの接触するリップ摺動面である外周面114bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。
次いで、本発明の第4の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104は、上述の本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103に対して、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。また、本発明の第14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104は、上述の本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102に対して、ハブポケット130を形成する構成が異なり、付属環部材140を有している。以下、上述の本発明の第12,13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102,103と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図28は、本発明の第14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図28に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104は、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102と同様に、オイルシール120のサイドリップ129は、外側端129a側の部分が、ハブポケット130の内部に進入しており、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている(オーバーラップしている)。つまり、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131との間に環状の間隙g12を形成しており、ラビリンスシールを形成している。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104においては、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とがオーバーラップするように、付属環部材140の外周面131が内側により長く延びている。若しくは、付属環部材140の取り付け位置が、本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103における付属環部材140の取り付け位置よりも内側になるようになっている。若しくは、サイドリップ129が外側により長く延びている。
上述の構成を有する本発明の第14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104は、上記本発明の第12,13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102,103と同様の作用効果を奏することができる。
このように、本発明の第14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104は、上記本発明の第12,13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102,103と同様に、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。
次いで、上述の本発明の第13,14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103,104における付属環部材140の変形例について以下に説明する。
図29は、本発明の第13,14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103,104における付属環部材140の第1の変形例の概略構造を示す断面図である。第1の変形例に係る付属環部材140´は、外周面140aが、軸線x方向において内側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面、例えば円錐面状のテーパ面を形成している。これにより、ダンパプーリ110から侵入する異物を付属環部材140´の外周面140aに堆積させてオイルシール120に異物が到達することを抑制することができる。また、付属環部材140´の外周面140aに堆積した異物は、その自重によって、または、ダンパプーリ110の回転によって、下方に排出することができる。図29においては、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103に第1の変形例に係る付属環部材140´が取り付けられた状態が図示されているが、第1の変形例に係る付属環部材140´は、付属環部材140と同様に、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造104において適用することができる。本変形例に係る付属環部材140´を用いた場合であっても、上記本発明の第13,14の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103,104と同様の効果を奏することができる。
次いで、本発明の第15の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105は、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して、ハブポケット130を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図30は、本発明の第15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図30に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105におけるダンパプーリ110においては、ハブポケット130がハブ111に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105は、ダンパプーリ110に取り付けられたハブ111とは別体の付属環部材142を有しており、この付属環部材142にハブポケット130が形成されている。
付属環部材142は、軸線xを中心とする中空環状の円環状の部材であり、ダンパプーリ110のボス部114に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット130が形成されている。具体的には、図30に示すように、付属環部材142は、軸線xを中心とする円筒状の部分である円筒部142aと、円筒部142aの外側の端部から径方向において外周側に延びる円盤状の部分である円盤部142bと、円盤部142bの外周側の端部から内側に向かって延びる部分である外周部142cとを有している。付属環部材142は、金属材料から形成されており、一つの金属部材、例えば金属板がプレス加工等をされて付属環部材142に成形される。円筒部142a、円盤部142b、外周部142cは、同一の材料から一体に形成されており、同一の又は略同一の厚さを有している。付属環部材142の金属材料としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。
図30に示すように、付属環部材142は、円筒部142a、円盤部142b、及び外周部142cが空間を画成して、ハブポケット130を形成している。具体的には、外周部142cの内周側の面がハブポケット130の外周面131を形成しており、外周部142cは、軸線xに対してハブポケット130の外周面131と同じ角度(傾斜角度α)で傾斜して延びている。また、円盤部142bの内側の面がハブポケット130の底面132を形成しており、円筒部142aの外周側の面である外周面142dがハブポケット130の外周面131に対向する内周側の面を形成している。
また、付属環部材142の円筒部142aは、ダンパプーリ110のボス部114に嵌合可能に形成されており、付属環部材142がボス部114に取り付けられた状態において、円筒部142aの内周側の面である内周面142eはボス部114の外周面114bに密接している。また、付属環部材142は、円筒部142aがボス部114に嵌合されて、ダンパプーリ110のハブ111に対して相対移動不能に取り付けられる。このとき、付属環部材142の円盤部142bはハブ111の円盤部116に当接されていてもよく、所定の間隔を空けて離れていてもよい。
また、付属環部材142の円筒部142aは、図30に示すように、オイルシール120のリップ先端部124aまで、若しくはリップ先端部124aを超えて、内側に延びており、円筒部142aの外周面142dは、リップ先端部124aに摺動可能に接触している。このように、本実施の形態においては、上述の各実施の形態とは異なり、ボス部114の外周面114bではなく、付属環部材142の円筒部142aの外周面142dがオイルシール120のリップ摺動面を形成している。このため、円筒部142aの外周面142dは、研磨、コーティング等の処理によって形成されている。本実施の形態においては、ボス部114の外周面114bをリップ摺動面にする処理(加工等)を省略することができる。
付属環部材142がダンパプーリ110に取り付けられた状態において、オイルシール120のサイドリップ129の外側端129aとハブポケット130の外周面131の内側端131aとの間には、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同様に、環状の間隙g11が形成されている。
上述の本発明の第15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105は、本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同様な作用効果を奏することができ、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。
また、本発明の第15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105においては、ハブポケット130が付属環部材142に形成されているので、上述の本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103と同様に、ハブポケット130の加工を容易にすることができる。
次いで、本発明の第16の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106は、上述の本発明の第15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105に対して、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。また、本発明の第16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106は、上述の本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102に対して、ハブポケット130を形成する構成が異なり、上記付属環部材142を有している。以下、上述の本発明の第12,15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102,105と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図31は、本発明の第16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図31に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106は、本発明の第12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102と同様に、オイルシール120のサイドリップ129は、外側端129a側の部分が、ハブポケット130の内部に進入しており、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている(オーバーラップしている)。つまり、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131との間に環状の間隙g12を形成しており、ラビリンスシールを形成している。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106においては、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とがオーバーラップするように、付属環部材142の外周部142cが内側により長く延びている。若しくは、付属環部材142の取り付け位置が、本発明の第15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105における付属環部材142の取り付け位置よりも内側になるようになっている。若しくは、サイドリップ129が外側により長く延びている。
上述の構成を有する本発明の第16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106は、上記本発明の第12,15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102,105と同様の作用効果を奏することができる。
このように、本発明の第16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106は、上記本発明の第12,15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造102,105と同様に、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。
次いで、上述の本発明の第15,16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105,106における付属環部材142の変形例について以下に説明する。
図32は、本発明の第15,16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105,106における付属環部材142の第1の変形例の概略構造を示す断面図である。第1の変形例に係る付属環部材143は、図32に示すように、上記付属環部材142に対して、円筒部142aの長さが短く、円筒部142aが外周面においてリップ摺動面を形成していない。このため、本変形例に係る付属環部材143を用いる場合は、ダンパプーリ110のボス部114の外周面114bはリップ摺動面を形成しており、外周面114bのリップ摺動面への処理(加工等)を省略することはできない。
また、本変形例に係る付属環部材143を用いる場合は、図32に示すように、ダンパプーリ110のボス部114に、外周面114bに外側において続く外周面である段差面114cが形成されることが好ましい。段差面114cは、外周面114bよりも大きな径を有しており、外周面114bよりも外側に突き出している。付属環部材142は、円筒部142aがボス部114の段差面114cに嵌合されてボス部114に固定される。これにより、付属環部材143の嵌合の際に、シールリップ124のリップ先端部124aの接触するリップ摺動面である外周面114bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。図32においては、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105に第1の変形例に係る付属環部材143が取り付けられた状態が図示されているが、第1の変形例に係る付属環部材143は、付属環部材142と同様に、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106において適用することができる。この場合も、ダンパプーリ110のボス部114に、外周面114bに外側において続く外周面である段差面114cが形成されることが好ましい。本変形例に係る付属環部材143を用いた場合であっても、上記本発明の第15,16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105,106と同様の効果を奏することができる。
図33は、本発明の第15,16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105,106における付属環部材142の第2の変形例の概略構造を示す断面図である。第2の変形例に係る付属環部材144は、図33に示すように、上記付属環部材142に対して、円筒部142aを有しておらず、付属環部材144はリップ摺動面を形成していない。このため、本変形例に係る付属環部材144を用いる場合は、付属環部材143を用いる場合と同様に、ダンパプーリ110のボス部114の外周面114bはリップ摺動面を形成しており、外周面114bのリップ摺動面への処理(加工等)を省略することはできない。付属環部材144は、円盤部142bの内周側の端部である内周端142fにおいて、ボス部114に嵌合されてハブ111に固定される。
また、本変形例に係る付属環部材144を用いる場合は、図33に示すように、ダンパプーリ110のボス部114に、外周面114bに外側において続く外周面である段差面114cが形成されることが好ましい。段差面114cは、外周面114bよりも大きな径を有しており、外周面114bよりも外側に突き出している。付属環部材144は、円盤部142bの内周端142fにおいてボス部114の段差面114cに嵌合されてボス部114に固定される。これにより、付属環部材144の嵌合の際に、シールリップ124のリップ先端部124aの接触するリップ摺動面である外周面114bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。また、本変形例に係る付属環部材144を用いる場合は、33に示すように、ダンパプーリ110のハブ111の円盤部116に、付属環部材144をボス部114との間で挟持するための環状の突出部116dを設けるようにしてもよい。これにより、付属環部材144を、ボス部114の段差面114cと突出部116dの内側の面とによって強固に固定することができるようになる。突出部116dは、上述の付属環部材143が用いられる場合に、ハブ111の円盤部116に設けるようにしてもよい。
図33においては、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105に第2の変形例に係る付属環部材144が取り付けられた状態が図示されているが、第2の変形例に係る付属環部材144は、付属環部材142と同様に、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造106において用いることができる。この場合も、ダンパプーリ110のボス部114に、外周面114bに外側において続く外周面である段差面114cが形成されることが好ましい。本変形例に係る付属環部材144を用いた場合であっても、上記本発明の第15,16の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105,106と同様の効果を奏することができる。
次いで、本発明の第17の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第17の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107は、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して、ハブポケット130を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図34は、本発明の第17の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図34に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107におけるダンパプーリ110においては、上記第15の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造105と同様に、ハブポケット130がダンパプーリ110のハブ111に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107は、ダンパプーリ110に取り付けられたハブ111とは別体の付属環部材145を有しており、この付属環部材145にハブポケット130が形成されている。
付属環部材145は、軸線xを中心とする中空環状の円環状の部材であり、ダンパプーリ110のボス部114に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット130が形成されている。具体的には、図34に示すように、付属環部材145は、弾性体から形成された軸線xを中心と環状の弾性フランジ部146と、金属材料から形成された軸線xを中心とする環状の金属環部147とを有している。
金属環部147は、軸線xを中心とする円筒状の部分である円筒部147aと、円筒部147aの外側の端部から径方向において外周側に延びる円盤状の部分である円盤部147bと、円盤部147bの外周側の端部から屈曲して内側に向かって延びる部分である外周部147cとを有している。金属環部147は、上述のように金属材料から形成されており、一つの金属部材、例えば金属板がプレス加工等をされて成形される。円筒部147a、円盤部147b、外周部147cは、同一の材料から一体に形成されており、同一の又は略同一の厚さを有している。金属環部147の金属材料としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。
弾性フランジ部146は、例えばゴム材から形成されている。弾性フランジ部146のゴム材としては、上述したオイルシール120の弾性体部122のゴム弾性体がある。弾性フランジ部146は、図34に示すように、軸線x方向に延びる環状の部材であり、金属環部147の外周側に取り付けられて、金属環部147の円盤部147bから内側に向かって延びている。具体的には、金属環部147の外周部147c及び円盤部147bの外周側の端部及びその近傍が弾性フランジ部146内に外側から埋め込まれて、弾性フランジ部146は付属環部材145において保持されている。また、弾性フランジ部146は、内周面がハブポケット130の外周面131を形成しており、外周面131は上述のように軸線xに対して傾斜角度α傾斜して延びている。弾性フランジ部146は架橋成形によって成形され、この架橋成形の際に金属環部147に架橋接着される。
このように、付属環部材145において、金属環部147の円筒部147a、金属環部147の円盤部147b、及び弾性フランジ部146が空間を画成して、ハブポケット130を形成している。金属環部147の円盤部147bの内側の面は、ハブポケット130の底面312を形成しており、金属環部147の円筒部147aの外周側の面である外周面147dは、ハブポケット130の外周面131に対向する内周側の面を形成している。
また、金属環部147の円筒部147aは、ダンパプーリ110のボス部114に嵌合可能に形成されており、付属環部材145がボス部114に取り付けられた状態において、円筒部147aの内周側の面である内周面147eはボス部114の外周面114bに密接している。また、付属環部材145は、金属環部147の円筒部147aがボス部114に嵌合されて、ダンパプーリ110のハブ111に対して相対移動不能に取り付けられる。このとき、金属環部147の円盤部147bはハブ111の円盤部116に当接されている、または、所定の間隔を空けて離れている。
また、金属環部147の円筒部147aは、図34に示すように、オイルシール120のリップ先端部124aまで、若しくはリップ先端部124aを超えて、内側に延びており、円筒部147aの外周面147dは、リップ先端部124aに摺動可能に接触している。このように、本実施の形態においては、上述の各実施の形態とは異なり、ボス部114の外周面114bではなく、付属環部材145の金属環部147の円筒部147aの外周面147dがオイルシール120のリップ摺動面を形成している。このため、上述の付属環部材142(図20)と同様に、円筒部147aの外周面147dは、研磨、コーティング等の処理によって形成されている。本実施の形態においては、上記本発明の第5の実施の形態に係る密封構造105と同様に、ボス部114の外周面114bをリップ摺動面にする処理(加工等)を省略することができる。金属環部147の外周部147cは、少なくとも弾性フランジ部146を保持可能な長さを有している。
付属環部材145がダンパプーリ110に取り付けられた状態において、オイルシール120のサイドリップ129の外側端129aとハブポケット130の外周面131の内側端131aとの間には、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同様に、環状の間隙g11が形成されている。
上述の本発明の第17の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107は、本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同様な作用効果を奏することができ、ダンパプーリ110から侵入する異物にオイルシール120のシールリップ124が曝されることを抑制することができる。
また、本発明の第17の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107においては、ハブポケット130が形成される付属環部材145において、弾性体から形成された弾性フランジ部146によってハブポケット130の外周面131が形成されている。このため、ハブポケット130の外周面131の拡径角度αが所望の値となるように、外周面131を精度よく形成することができる。これは、金属材料をプレス加工するよりもゴム材による成形の方が成形品の寸法精度を高めることができるからである。また、ダンパプーリ110のボス部114の偏心等により、サイドリップ129が弾性フランジ部146に接触したとしても、弾性フランジ部146はゴム材等の弾性体から形成されているので衝撃を吸収し、サイドリップ129が損傷しにくくすることができる。また、金属部材のプレス成形において、金属部材の形状が複雑になると金属部材に残留応力が発生し、金属部材全体が歪みやすくなるが、付属環部材145においては、金属材から形成されている金属環部147の形状をシンプルにすることができ、金属環部147の成形精度(寸法精度)を高めることができる。
また、本発明の第17の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107においては、ハブポケット130が付属環部材145に形成されているので、上述の本発明の第13の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103と同様に、ハブポケット130の加工を容易にすることができる。
上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107においては、オイルシール120のサイドリップ129は、ハブポケット130の内部に進入していないが、サイドリップ129の外側端129a側の部分が、ハブポケット130の内部に進入して、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っていてもよい。つまり、上述の密封構造102,106(図25,31)と同様に、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131とは互いに径方向において対向して、サイドリップ129とハブポケット130の外周面131との間に環状の間隙g12を形成していてもよい。
また、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造107において、付属環部材145の金属環部147の形状は上述の形状に限らず、例えば、上述の図32に示す付属環部材143のように、円筒部147aがシールリップ124まで延びておらず、ダンパプーリ110のボス部114がリップ摺動面を形成するようにしてもよい。この場合も、図32に示すように、ダンパプーリ110のボス部114に、外周面114bに外側において続く外周面である段差面114cが形成され、付属環部材145が段差面114cに嵌合されることが好ましい。
また、付属環部材145の金属環部147の形状は、上述の図33に示す付属環部材144のように、円筒部147aを有していない形状であってもよい。この場合、ダンパプーリ110のハブ111の形状は、上記図33に示すように、突出部116d及び段差面114cを有する形状であることが好ましい。
次いで、本発明の第18の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第18の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造108は、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101に対して、間隙g11の構成が異なる。以下、上述の本発明の第11の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図35は、本発明の第18の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造108の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図35に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造108は、上述の密封構造101におけるオイルシール120に代えて、オイルシール160を備えており、また、間隙g11を形成する環部材161を備えている。オイルシール160は、サイドリップ129を有していない点及びフロントカバー153の貫通穴154に直接取り付けられない点においてオイルシール120と異なる。
環部材161は、軸線xを中心とする中空環状の円環状の部材であり、上述のオイルシール120の有するサイドリップ129の外周面と同じ傾斜角度γ(図20参照)で傾く外周面を形成するサイドリップとしての突起部162を有しており、フロントカバー153の貫通穴154に嵌合可能になっている。具体的には、環部材161は、軸線xを中心とする円筒状の嵌合部163と、嵌合部163の外側の端部から内周側に延びる円盤状の支持部164とを有しており、支持部164の内周側の端部から突起部162が嵌合部163とは反対側に延びておりハブポケット130に向かって延びている。
嵌合部163は、フロントカバー153の貫通穴154に嵌合可能に形成されており、嵌合部163がフロントカバー153の貫通穴154に嵌合された際に、外周側の周面において、貫通穴154の内周面154aに密接するように形成されている。突起部162は、軸線xを中心とする環状の部分であり、外側の端部である外側端162aにおいて、ハブポケット130の外周面131の内側端131aとの間に間隙g11を形成している。
環部材161は、金属材料や樹脂材料から形成されており、金属材料としては例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)等がある。錆が発生しやすい環境で密封構造108が用いられる場合、環部材161の金属材料としてはステンレス鋼が好ましい。環部材161は、プレス加工や樹脂成形によってオイルシール160とは別体で形成され、図35に示すように、環部材161にオイルシール160が内嵌された状態で、環部材161の支持部164を押圧することにより、フロントカバー153の貫通穴154に嵌合部163が嵌合されて、フロントカバー153に環部材161が嵌着される。これにより、オイルシール160及び環部材161がフロントカバー153に取り付けられ、間隙g11が形成される。
環部材161の突起部162は、ハブポケット130の内部に進入していない形状に限らず、上記密封構造102のサイドリップ129のように、突起部162の外側端162a側の部分が、ハブポケット130の内部に進入して、突起部162とハブポケット130の外周面131とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っていてもよい。つまり、上述の密封構造102(図25)と同様に、突起部162とハブポケット130の外周面131とは互いに径方向において対向して、突起部162とハブポケット130の外周面131との間に環状の間隙g12を形成していてもよい。
本発明の第18の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造108は、上述の本発明の第11,12の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造101,102と同様の効果を奏することができる。また、環部材161は金属材料又は樹脂材料から形成されており、ゴム材から形成された部材よりも剛性が高く、突起部162が自重で変形しにくい。このため、突起部162がハブポケット130との間に間隙g12を形成する場合に、自重によって撓むことなく突起部162を長くすることができる。このため、突起部162とハブポケット130との間のオーバーラップ量bをより多くすることができ、間隙g12を通過して侵入する異物の量を低減することができる。
本実施の形態におけるオイルシール160及び環部材161は、上述の本発明の第13〜17の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造103〜107において、オイルシール120に代えて適用することができる。
図36は、本発明の第19の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分断面図である。本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造は、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造が自動車のエンジンのトーショナルダンパとオイルシールとの間に適用されたものである。以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図36参照)方向を外側(一方の側)とし、軸線x方向において矢印b(図36参照)方向を内側(他方の側)とする。より具体的には、外側とは、密封される空間から離れる方向であり、内側とは、密封される空間に近づく方向である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図36の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(図36の矢印d方向)を内周側とする。
図36に示すように、本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201は、機能部材としてのトーショナルダンパであるダンパプーリ210と、密封装置としてのオイルシール220とを備えている。ダンパプーリ210はエンジンのクランクシャフト151の一端にボルト152によって固定されており、オイルシール220は、エンジンのフロントカバー153の貫通穴154とダンパプーリ210との間の密封を図っている。
ダンパプーリ210は、ハブ211と、質量体としてのプーリ212と、ハブ211とプーリ212との間に配設されたダンパ弾性体213とを備えている。ハブ211は、軸線x周りに環状の、より具体的には軸線xを中心又は略中心とする環状の部材であり、内周側のボス部214と、外周側のリム部215と、ボス部214とリム部215とを接続する略円盤状又は円盤状の円盤部216とを備えている。ハブ211は、例えば、金属材料から鋳造等によって製造されている。
ハブ211において、ボス部214は、貫通穴214aが形成された軸線xを中心又は略中心とする環状の部分であり、外側の部分の外周面から外周方向に円盤部216が延びている。ボス部214は、円筒状の内側の部分の外周側の面である外周面214bを備え、外周面214bは滑らかな面となっており、後述するように、オイルシール220のシール面となっている。リム部215は、軸線xを中心又は略中心とする環状の、より具体的には円筒状の部分であり、ボス部214に対して同心的にボス部214よりも外周側に位置する部分である。リム部215の内周側の面である内周面215aからは円盤部216が内周方向に延びている。リム部215の外周側の面である外周面215bにはダンパ弾性体213が圧着されている。
円盤部216は、ボス部214とリム部215との間に延びて、ボス部214とリム部215とを接続している。円盤部216は、軸線xに対して垂直な方向に延びていてもよく、軸線xに対して傾斜する方向に延びていてもよい。また、円盤部216は、軸線xに沿う断面(以下、単に「断面」ともいう。)が湾曲した形状であっても、真っ直ぐに延びる形状であってもよい。また、図36,37に示すように、円盤部216には、円盤部216を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部216aが少なくとも1つ形成されており、本実施の形態においては、4つの窓部216aが軸線xに対して同心的に周方向に等角度間隔で形成されている(図37参照)。この窓部216aによって、ハブ211、ひいてはダンパプーリ210の軽量化が図られている。
プーリ212は、軸線xを中心又は略中心とする環状の部材であり、ハブ211を外周側において覆うような形状を呈している。具体的には、プーリ212の内周側の面である内周面212aは、ハブ211のリム部215の外周面215bに対応した形状を有しており、図36に示すように、プーリ212は、その内周面212aがリム部215の外周面215bに径方向において間隔を空けて対向するように位置している。また、プーリ212の外周側の面である外周面212bには、環状のv溝212cが複数形成されており、図示しないタイミングベルトが巻回可能になっている。
ダンパ弾性体213は、プーリ212とハブ211のリム部215との間に設けられている。ダンパ弾性体213は、ダンパゴムであり、耐熱性、耐寒性、及び疲労強度において優れたゴム状弾性材料から架橋(加硫)成形されて形成されている。ダンパ弾性体213は、プーリ212とハブ211のリム部215との間に圧入されており、プーリ212の内周面212aとリム部215の外周面215bとに嵌着されて固定されている。
ダンパプーリ210において、プーリ212とダンパ弾性体213とがダンパ部を形成しており、ダンパ部の捩り方向固有振動数が、クランクシャフト151の捩れ角が最大となる所定の振動数域である、クランクシャフト151の捩り方向固有振動数と一致するように同調されている。つまり、ダンパ部の捩り方向固有振動数がクランクシャフト151の捩り方向固有振動数と一致するように、プーリ212の円周方向の慣性質量と、ダンパ弾性体213の捩り方向剪断ばね定数とが調整されている。なお、ダンパプーリ210は、図示のように、所謂シングルマスタイプではなく、慣性マス(質量体)を2つ有するダブルマスタイプであってもよく、慣性マスを複数有するタイプのものであってもよい。
また、ダンパプーリ210は、ハブ211のボス部214に沿って周方向に延びる、軸線x方向において外側(一方の側)に凹む軸線x周りに環状のポケットとしてのハブポケット230を有している。ハブポケット230の詳細については、図38を用いて後述する。
上述のように、ダンパプーリ210は、クランクシャフト151の一端に取り付けられている。具体的には、図36に示すように、クランクシャフト151の一端がハブ211のボス部214の貫通穴214aに挿入され、外側からボルト152がクランクシャフト151に螺合されて、ダンパプーリ210がクランクシャフト151に固定されている。また、クランクシャフト151とボス部214との間には、クランクシャフト151とボス部214とに係合する半月キー等のキーが設けられて、ダンパプーリ210がクランクシャフト151に対して相対回動不能になっている。
クランクシャフト151に取り付けられた状態において、ダンパプーリ210は、ボス部214の外周面214bを有する内側の部分がフロントカバー153の貫通穴154内に挿入された状態になっており、ボス部214の外周面214bと、フロントカバー153の貫通穴154との間に環状の空間が形成されている。
オイルシール220は、図36に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の補強環221と、軸線xを中心又は略中心とする環状の弾性体から成る弾性体部22とを備えている。弾性体部222は、補強環221に一体的に取り付けられている。補強環221の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。弾性体部222の弾性体としは、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
補強環221は、断面略L字状の形状を呈しており、円盤部221aと、円筒部221bとを備えている。円盤部221aは、軸線xに垂直な又は略垂直な方向に広がる中空円盤状の部分であり、円筒部221bは、円盤部221aの外周側の端部から軸線x方向において内側に延びる円筒状の又は略円筒状の部分である。
弾性体部222は、補強環221に取り付けられており、本実施の形態においては補強環221を外側及び外周側から覆うように補強環221と一体的に成形されている。弾性体部222は、リップ腰部223と、シールリップ224と、ダストリップ225とを備えている。図36に示すように、リップ腰部223は、補強環221の円盤部221aにおける内周側の端部の近傍に位置する部分であり、シールリップ224は、リップ腰部223から内側に向かって延びる部分であり、補強環221の円筒部221bに対向して配置されている。ダストリップ225は、リップ腰部223から軸線x方向に向かって延びている。
シールリップ224は、内側の端部に、断面形状が内周側に向かって凸の楔形状の環状のリップ先端部224aを有している。リップ先端部224aは、後述するように、ハブ211のボス部214の外周面214bに外周面214bが摺動可能に密接に接触するように形成されており、ダンパプーリ210との間を密封するようになっている。また、シールリップ224の外周部側には、シールリップ224に内周側に向かう緊迫力を与えるガータースプリング226が嵌着されている。
ダストリップ225は、リップ腰部223から延びる部位であり、外側且つ内周側に延出している。ダストリップ225により、使用状態におけるリップ先端部224a方向への異物の進入の防止が図られている。
また、弾性体部222は、後方カバー227と、ガスケット部228とを備えている。後方カバー227は、補強環221の円盤部221aを外側から覆い、ガスケット部228は、補強環221の円筒部221bを外周側から覆っている。
また、オイルシール220は、外側方向に向かって延びるサイドリップ229を備えている。サイドリップ229の詳細については、図38を用いて後述する。
補強環221は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部222は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、補強環221は成形型の中に配置されており、弾性体部222が架橋(加硫)接着により補強環221に接着され、弾性体部222が補強環221と一体的に成形される。
上述のように、オイルシール220は、フロントカバー153の貫通穴154と、ダンパプーリ210のボス部214の外周面214bとの間に形成される空間を密封している。具体的には、オイルシール220は、フロントカバー153の貫通穴154に圧入されて取り付けられ、弾性体部222のガスケット部228が圧縮されて貫通穴154の内周側の面である内周面154aに液密に当接している。これにより、オイルシール220とフロントカバー153の貫通穴154との間が密閉されている。また、シールリップ224のリップ先端部224aが、ハブ211のボス部214の外周面214bに液密に当接し、オイルシール220とダンパプーリ210との間が密閉されている。
次いで、ダンパプーリ210の有するハブポケット230と、オイルシール220のサイドリップ229とについて図38を参照して説明する。図38は、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201の部分拡大断面図である。
図38に示すように、ハブポケット230は、軸線x周りに環状の軸線xに沿って延びる面である外周面231を有しており、軸線x方向において外側に凹む軸線x周りに環状の部分である凹部234を形成している。ハブポケット230は、ダンパプーリ210において、円盤部216より内側に形成されており、ボス部214の外周面214bを取り囲んで延びる環状の外側に向かって凹む凹部である。具体的には、ハブポケット230の外周面231は、ハブ211の円盤部216から内側に突出してボス部214を外周側において包囲する環状の部分である突条部233によって形成されており、突条部233のボス部214の外周面214bに対向する環状の内周面が外周面231を形成している。ハブポケット230は、外周面231と、外周面231とボス部214の外周面214bとの間に延びる底面232と、ボス部214の外周面214bとによって画成されている。
ハブポケット230の外周面231は、軸線x方向において外側(一方の側)に向かうに連れて拡径しており、軸線x方向において外側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面であり、例えば、軸線xを中心又は略中心とする円錐面状又は略円錐面状のテーパ面である。
ハブポケット230は、上述のようにハブ211の円盤部216から内側方向に延びる環状の突条部233によって外周面231を形成して画成されていてもよく、また、円盤部216に外側方向に凹む凹部234を形成することにより外周面231を形成して画成されるようにしてもよい。この場合、凹部234の外周面が外周面231を形成する。なお、ハブポケット230は、突条部233と円盤部216に形成された凹部とによって形成されるものであってもよい。
オイルシール220のサイドリップ229は、図38に示すように、外側(軸線x方向において一方の側)に向かって延びており、より具体的には、軸線xに平行に、または、外側方向及び外周方向に軸線xに対して斜めに延びている。また、サイドリップ229の外側の端部である外側端229aは、径方向において、ハブポケット230の外周面231の内側の端部である内側端231aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ハブポケット230の内部に進入していない。サイドリップ229の外側端229aとハブポケット230の外周面231の内側端231aとの間には、環状の間隙g13が形成されている。
サイドリップ229の外側端229aとハブポケット230の外周面231の内側端231aとが形成する環状の間隙g13は、ラビリンスシールを形成している。このため、フロントカバー153とダンパプーリ210との間から侵入する泥水や砂、ダスト等の異物に加えて、ハブ211の円盤部216の窓部216aを介して外部から異物が侵入してきても、サイドリップ229とハブポケット230とが形成するラビリンスシール(間隙g13)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ224側に侵入することが抑制されている。これにより、外部から侵入する異物にオイルシール220のシールリップ224が曝されることを抑制することができる。このため、リップ先端部224aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール220のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。
また、ラビリンスシール(間隙g13)を形成しているハブポケット230の外周面231が、上述のように、外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールにおいて、異物が更にシールリップ224側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
このように、ハブポケット230の外周面231とオイルシール220のサイドリップ229とによって形成されるラビリンスシール(間隙g13)によって、間隙g13を越えて更にシールリップ224側に異物が侵入することが抑制されているが、異物が間隙g13を越えてしまった場合、ハブポケット230の外周面231に異物が堆積することが考えられる。外周面231は、ハブ211の円盤部216側に近づくほど径が大きくなっており、外周面231の奥(円盤部216側)には異物が堆積しやすくなっている。外周面231に異物が堆積すると、ラビリンスシール(間隙g13)のシール効果の低減や、堆積した異物がシールリップ224側に移動することが考えられる。そこで、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造においては、外周面231に、または、ハブポケット230に異物が堆積することを抑制するために、異物排出溝235が設けられている。
図37,38に示すように、異物排出溝235は、ハブポケット230の外周面231に形成されており、軸線x方向において一方の側(外側)から他方の側(内側)に向かって延びる外周方向に凹む溝である。ハブポケット230の外周面231は、少なくとも1つの異物排出溝235を有しており、本実施の形態においては、周方向に等角度間隔に複数の異物排出溝235を有しており、例えば、図37に示すように、4つの異物排出溝235を有している。
異物排出溝235は、外周側の部分である底部235aが径方向において軸線xに沿って延びるように形成されており、例えば、異物排出溝235の底部235aは、異物排出溝235の延び方向に亘って、軸線xから径方向に等間隔で延びている。異物排出溝235の外周側の部分である底部235aは、異物排出溝235の延び方向に亘る軸線xに直交する各断面における異物排出溝235の輪郭の軸線xから最も離れた点を、異物排出溝235の外側の端部と内側の端部との間で連ねた軌跡によって表される部分である。異物排出溝235の底部235aは、軸線x方向において外側から内側に向かうに連れて、軸線xから遠ざかるように延びていてもよい。また、異物排出溝235は、図37に示すように、軸線xに対して周方向において(異物排出溝235を径方向に見て)平行に延びていてもよく、軸線xに対して周方向において傾斜して延びていてもよい。本実施の形態においては、図37,38に示すように、異物排出溝235は、周方向において軸線xに平行に、且つ、径方向おいて軸線xに平行に延びており、つまり、軸線xに平行に延びている。
異物排出溝235は、外側と内側との間において外周面231全体に亘って延びていてもよく、外周面231の内側の端部(内側端231a)から外側に向かって外周面231の途中まで延びていてもよい。また、異物排出溝235は、延び方向に亘って、延び方向に直交する断面における輪郭が同じ形状を有していてもよく、異なる輪郭を有していてもよい。例えば、異物排出溝235の延び方向に直交する断面における輪郭は、内側に向かうに連れて周方向の幅が広くなるようにしてもよい。
このように、ハブポケット230には、外周面231に異物排出溝235が形成されており、ハブポケット230に侵入してきた異物が異物排出溝235を伝ってハブポケット230の外部に排出されやすくなっている。このため、異物がハブポケット230の外周面231等の内部に堆積することを抑制することができる。異物排出溝235の底部235aが軸線x方向において外側から内側に向かうに連れて軸線xから遠ざかるように延びている場合は、異物排出溝235の底部235aが軸線xから等間隔で延びている場合に比べて、ダンパプーリ210の回転により発生する遠心力によってハブポケット230内の異物を異物排出溝235を伝って外部に排出しやすくすることができる。また、異物排出溝235が軸線xに対して周方向において傾斜して延びている場合は、ダンパプーリ210の回転によるネジ効果により、ハブポケット230内の異物を異物排出溝235を伝って外部に排出しやすくすることができる。また、異物排出溝235の延び方向に直交する断面における輪郭の周方向の幅が、内側に向かうに連れて広くなっている場合は、ハブポケット230内の異物を異物排出溝235を伝って外部に排出しやすくすることができる。
このように、本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201においては、サイドリップ229とハブポケット230とが形成するラビリンスシール(間隙g13)によって、外部から侵入してきた異物が更にシールリップ224側に侵入することを抑制することができる。また、ハブポケット230の外周面231に異物排出溝235が形成されており、たとえ間隙g13を通過して異物がハブポケット230内に侵入したとしても、異物排出溝235を介して外部に異物が排出されるようにすることができ、ハブポケット230内に異物が堆積することを抑制することができる。このため、密封構造201は、異物がハブポケット230を超えて更にシールリップ224側に侵入することを効率的に抑制することができる。
このように、本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201によれば、外部から侵入する異物にオイルシール220のシールリップ224が曝されることを効率的に抑制することができる。
次いで、本発明の第20の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第20の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造202は、上述の本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201に対して、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図39は、本発明の第20の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造202の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図39に示すように、オイルシール220のサイドリップ229は、外側端229a側の部分が、ハブポケット230の内部に進入しており、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている。つまり、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231との間に環状の間隙g14を形成している。つまり、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とはオーバーラップしている。
サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とが形成する環状の間隙g14は、ラビリンスシールを形成している。このため、上記密封構造201と同様に、ダンパプーリ210から侵入してきた異物が更にシールリップ224側に侵入することを抑制することができる。これにより、ダンパプーリ210から侵入する異物にオイルシール220のシールリップ224が曝されることを抑制することができ、リップ先端部224aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール220のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。また、ハブポケット230の外周面231に異物排出溝235が形成されており、たとえ間隙g14を通過して異物がハブポケット230内に侵入したとしても、異物排出溝235を介して外部に異物が排出されるようにすることができ、ハブポケット230内に異物が堆積することを抑制することができる。このため、密封構造202は、異物がハブポケット230を超えて更にシールリップ24側に侵入することを効率的に抑制することができる。
このように、本発明の第20の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造202によれば、外部から侵入する異物にオイルシール220のシールリップ224が曝されることを効率的に抑制することができる。
次いで、本発明の第21の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第21の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3は、上述の本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201に対して、ハブポケット230を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図40は、本発明の第21の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造203の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図40に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3におけるダンパプーリ210においては、ハブポケット230の外周面231及び底面232がハブ211に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造203は、突条部233を有しておらず、ダンパプーリ210に取り付けられたハブ211とは別体の付属環部材240を有しており、この付属環部材240にハブポケット230の外周面231及び底面232が形成されている。
付属環部材240は、軸線x周りに環状の中空環状の円盤状の部材であり、ダンパプーリ210のボス部214に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット230の外周面231及び底面232が形成されている。具体的には、図40に示すように、付属環部材240は、外周側の面である外周面240aと、ダンパプーリ210において、ボス部214に挿通されて嵌合される貫通穴を形成する内周側の面である内周面240bとを有している。付属環部材240には、内側に面する側面である側面240cに外側に向かって凹む凹部234が形成されて、ハブポケット230の外周面231及び底面232が形成されている。
ダンパプーリ210のボス部214には、外周面214bに外側において続く外周面である段差面214cが形成されており、段差面214cは、外周面214bよりも大きな径を有しており、外周面214bよりも外側に突き出している。また、外周面214bと段差面214cとは滑らかに接続されている。付属環部材240は、内周面240bがボス部214の段差面214cに嵌合されてボス部214に取り付けられている。これにより、付属環部材240の嵌合の際に、シールリップ224のリップ先端部224aの接触するリップ摺動面である外周面214bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。
付属環部材240は、固定部材241によってダンパプーリ210に相対移動不能に取り付けられている。付属環部材240はこの取り付けられた状態において、付属環部材240の外側に面する側面である側面240dが、円盤部216の側面に接触している。固定部材241は、例えば、ボルトやリベット、ピンであり、円盤部216に形成された軸線x方向に延びる貫通穴である貫通穴216bと、付属環部材240に形成された底面232と側面240dとの間を貫通する軸線x方向に延びる貫通穴である貫通穴240eとに係合して付属環部材240をダンパプーリ210に固定する。例えば、貫通穴216b及び貫通穴240eのいずれか一方又は両方がネジ穴となっており、ボルトである固定部材241がこのネジ穴に螺合されることにより、付属環部材240がダンパプーリ210に固定される。また、固定部材241がピン又はリベットである場合は、固定部材241は貫通穴216b及び貫通穴240eに嵌合若しくは係合されて付属環部材240がダンパプーリ210に固定される。付属環部材240の固定方法は上述のものに限られず、固定部材241としては他の公知の適用可能な固定方法を実現するものであってもよい。付属環部材240は固定部材241によってダンパプーリ210に固定されるため、強固に固定される。
付属環部材240がダンパプーリ210に取り付けられた状態において、オイルシール220のサイドリップ229の外側端229aとハブポケット230の外周面231の内側端231aとの間には、上述の密封構造201と同様に、環状の間隙g13が形成されており、ラビリンスシール(間隙g13)が形成されている。
付属環部材240の材料は、金属材料であっても樹脂材料であってもよく、例えば、ステンレス鋼やABS樹脂等である。付属環部材240の樹脂材料としては、エンジンルーム等の使用環境の雰囲気温度に耐えられる樹脂であることが好ましい。
また、付属環部材240には、上述の密封構造201と同様に、外周面231に異物排出溝235が形成されている。異物排出溝235は、外周面231に1つ、または、周方向に等角度間隔に複数形成されている。
上述の本発明の第21の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造203は、本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201と同様な作用効果を奏することができ、外部から侵入する異物にオイルシール220のシールリップ224が曝されることを効率的に抑制することができる。
また、本発明の第21の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造203においては、付属環部材240にハブポケット230の外周面231及び底面232が形成されているので、ハブポケット230の加工を容易にすることができる。
本発明の第21の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造203においては、オイルシール220のサイドリップ229はハブポケット230内部に進入していないが、オイルシール220のサイドリップ229は、図39に示す密封構造202におけるサイドリップ229と同様に、外側端229a側の部分がハブポケット230の内部に進入しており、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っていてもよい。つまり、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231との間に環状の間隙(間隙g14)を形成するようにしてもよい。この場合、例えば、図40に示す密封構造203と比較して、付属環部材240の外周面231が内側に長く延びており、若しくは、付属環部材240の取り付け位置が内側になるようになっている。
次いで、本発明の第22の実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造としてのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第22の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造204は、上述の本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201に対して、ハブポケット230を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
図41は、本発明の第22の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造204の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。図41に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造204におけるダンパプーリ210においては、ハブポケット230がハブ211に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造204は、突条部233を有しておらず、ダンパプーリ210に取り付けられたハブ211とは別体の付属環部材242を有しており、この付属環部材242にハブポケット230が形成されている。
付属環部材242は、軸線x周りに環状の中空環状の円環状の部材であり、ダンパプーリ210のボス部214に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット230が形成されている。具体的には、図41に示すように、付属環部材242は、軸線xを中心又は略中心とする円筒状の部分である円筒部242aと、円筒部242aの外側の端部から径方向において外周側に延びる円盤状の部分である円盤部242bと、円盤部242bの外周側の端部から内側に向かって延びる部分である外周部242cとを有している。付属環部材242は、金属材料から形成されており、一つの金属部材、例えば金属板がプレス加工等をされて付属環部材242に成形される。円筒部242a、円盤部242b、外周部242cは、同一の材料から一体に形成されており、同一の又は略同一の厚さを有している。付属環部材242の金属材料としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。
図41に示すように、付属環部材242は、円筒部242a、円盤部242b、及び外周部242cが空間を画成して、ハブポケット230を形成している。具体的には、外周部242cの内周側の面がハブポケット230の外周面231を形成しており、外周部242cは、軸線xに対してハブポケット230の外周面231と同じ角度(傾斜角度α)で傾斜して延びている。また、円盤部242bの内側の面がハブポケット230の底面232を形成しており、円筒部242aの外周側の面である外周面242dがハブポケット230の外周面231に対向する内周側の面を形成している。
また、付属環部材242の円筒部242aは、ダンパプーリ210のボス部214に嵌合可能に形成されており、付属環部材242がボス部214に取り付けられた状態において、円筒部242aの内周側の面である内周面242eはボス部214の外周面214bに密接している。また、付属環部材242は、円筒部242aがボス部214に嵌合されて、ダンパプーリ210のハブ211に対して相対移動不能に取り付けられる。このとき、付属環部材242の円盤部242bはハブ211の円盤部216に当接されていてもよく、所定の間隔を空けて離れていてもよい。
また、付属環部材242の円筒部242aは、図41に示すように、オイルシール220のリップ先端部224aまで、若しくはリップ先端部224aを超えて、内側に延びており、円筒部242aの外周面242dは、リップ先端部224aに摺動可能に接触している。このように、本実施の形態においては、上述の各実施の形態とは異なり、ボス部214の外周面214bではなく、付属環部材242の円筒部242aの外周面242dがオイルシール220のリップ摺動面を形成している。このため、円筒部242aの外周面242dは、研磨、コーティング等の処理によって形成されている。本実施の形態においては、ボス部214の外周面214bをリップ摺動面にする処理(加工等)を省略することができる。
付属環部材242がダンパプーリ210に取り付けられた状態において、オイルシール220のサイドリップ229の外側端229aとハブポケット230の外周面231の内側端231aとの間には、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201と同様に、環状の間隙g13が形成されている。
また、付属環部材242には、上述の密封構造201と同様に、外周面231に異物排出溝235が形成されている。異物排出溝235は、外周面231に1つ、または、周方向に等角度間隔に複数形成されている。図42は、付属環部材242を内側(ハブポケット230が開放している側)から見た付属環部材242の正面図である。図42に示すように、例えば、付属環部材242において外周面231には、周方向に等角度間隔に4つの異物排出溝235が形成されており、異物排出溝235が形成された部分において付属環部材242の外周部242cは外周側に突出している。付属環部材242の異物排出溝235が形成されている部分において、外周部242cがどれだけ外周方向に突出しているかは、異物排出溝235の形状に基づく。異物排出溝235は、付属環部材242のプレス加工の際に形成することができる。なお、図41は、図42における線A−Aの断面における断面に対応している。
上述の本発明の第22の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造204は、本発明の第19の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造201と同様な作用効果を奏することができ、外部から侵入する異物にオイルシール220のシールリップ224が曝されることを効率的に抑制することができる。また、本発明の第22の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造204においては、付属環部材242にハブポケット230の外周面231及び底面232が形成されているので、ハブポケット230の加工を容易にすることができる。
本発明の第22の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造204においては、オイルシール220のサイドリップ229はハブポケット230内部に進入していないが、オイルシール220のサイドリップ229は、図39に示す密封構造202におけるサイドリップ229と同様に、外側端229a側の部分がハブポケット230の内部に進入しており、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っていてもよい。つまり、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ229とハブポケット230の外周面231との間に環状の間隙(間隙g14)を形成するようにしてもよい。この場合、例えば、図41に示す密封構造204と比較して、付属環部材242の外周面231が内側に長く延びており、若しくは、付属環部材242の取り付け位置が内側になるようになっている。
また、付属環部材242は、上述のように、円筒部242aが、オイルシール220のリップ先端部224aまで、若しくはリップ先端部224aを超えて、内側に延びておらず、密封構造201と同様にボス部214の外周面214bがオイルシール220のリップ摺動面を形成していてもよい。この場合、上述の密封構造203と同様に、ダンパプーリ210のボス部214には、外周面214bに外側において続く段差面214cが形成されており、付属環部材242は、円筒部242aがボス部214の段差面214cに嵌合されてボス部214に取り付けられる構成が好ましい。付属環部材242の取り付けの際に、シール面であるボス部214の外周面214bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
具体的には、上述のような間隙g1〜g12を形成するポケット10,13,14,15,16又はハブポケット130、及びサイドリップ29,129、外周側サイドリップ54又は突起部162を夫々有しているものであれば、スリンガ30,70、ハブ62、フライホイール82、プレート部材90、ダンパプーリ110、オイルシール120,160、及び環部材161の形態は他の形態であってもよい。
また、本実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造1〜5´,101〜108は、自動車や汎用機械のディファレンシャル装置、ハブベアリング、フライホイール、エンジンに適用されるものとしたが、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等の軸部材や機能部材等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。更に、本実施の形態におけるトーショナルダンパ(ダンパプーリ110)は、円盤部116を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部116aが形成されているものとしたが、本発明に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の適用対象はこれに限られるものではなく、窓部116aが形成されていないものに対しても本発明は適用可能である。
また、例えば、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造は、上述のトーショナルダンパとそのオイルシールとの間に適用された、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造に限られるものではなく、軸部材又は回転する機能部材と、これらに用いられる密封装置との間に適用されるものであってよい。例えば、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造は、エンジンの後端や、車輪を保持するためのハブベアリングや、ディファレンシャル装置等に適用することができる。
本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造をエンジンの後端に適用する場合、クランクシャフトの後端においてケースとクランクシャフトの間の隙間を密封するために用いられるオイルシールが密封装置となり、フライホイールが機能部材となる。そして、フライホイールに直接外周面231が形成されてハブポケット230が形成されるか、または、外周面231が形成されたハブポケット230がスリンガ等の付属環部材によって形成され、この付属環部材がフライホイールに取り付けられることによりフライホイールにハブポケット230が形成される。
また、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造をハブベアリングに適用する場合、外輪と内輪との間の隙間を密封するために用いられるシールが密封装置となり、内輪が軸部材となる。そして、内輪において車輪が取り付けられるハブ輪に直接外周面231が形成されてハブポケット230が形成されるか、または、外周面231が形成されたハブポケット230がスリンガ等の付属環部材によって形成され、この付属環部材が内輪に取り付けられることにより内輪にハブポケット230が形成される。
また、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造をディファレンシャル装置に適用する場合、ハウジングと出力軸との間の隙間を密封するために用いられるシールが密封装置となり、出力軸が軸部材となる。そして、出力軸に直接外周面231が形成されてハブポケット230が形成されるか、または、外周面231が形成されたハブポケット230がスリンガ等の付属環部材によって形成され、この付属環部材が出力軸に取り付けられることにより出力軸にハブポケット230が形成される。
また、本実施の形態に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造は、自動車のエンジンに適用されるものとしたが、本発明に係る環状のポケットと密封装置とを用いた密封構造の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等の回転軸等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。
また、付属環部材240,242の形態は、上述の具体的形態に限定されない。例えば、密封構造201のダンパプーリ210の突条部233に付属環部材242が嵌め込まれて、ハブポケット230がダンパプーリ210に設けられるようにしてもよい。この場合、付属環部材242は円筒部242aを短く若しくは省いてもよい。
また、本実施の形態におけるトーショナルダンパ(ダンパプーリ210)は、円盤部216を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部216aが形成されているものとしたが、本発明に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の適用対象はこれに限られるものではなく、窓部216aが形成されていないものに対しても本発明は適用可能である。