JP6940277B2 - 回路体の製造方法、及び、回路体の製造装置 - Google Patents

回路体の製造方法、及び、回路体の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、基材と複数種類の電線と接続部とを有する回路体、そのような回路体の製造方法、及び、そのような回路体の製造装置、に関する。
従来から、種々の電気的負荷と、電源および制御装置等と、を接続するための回路体が知られている。例えば、車両に搭載された電源等と各種の電装品(電気的負荷)とを接続するための車両用ワイヤハーネスの一つ(以下「従来ワイヤハーネス」という。)は、電源等とそれら電装品とを繋ぐ多種多様なコネクタ付き電線(例えば、電源線、アース線および通信線)を結束バンド等によって束ねて電線束を構成すると共に、必要に応じて防水用グロメット及びプロテクタ等をその電線束に取り付けるように、構成されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2011−120318号公報
上述した従来ワイヤハーネスは、実際には、車両を製造する際、車体の所定の箇所(例えば、ドアパネル、ダッシュパネル及び床下パネル等)に対し、所定の配索経路に沿って取り付けられる。ここで、従来ワイヤハーネスは、一般に、そのような取り付けが可能であるように、ある程度の柔軟さを有している。一方、従来ワイヤハーネスは、非常に多くの部品(電線、コネクタ及びプロテクタ等)によって構成されているため、作業者の手作業による取り扱いに対して重量が大きい。このような柔軟さ及び重量に起因し、一般に、作業者が従来ワイヤハーネスを車体に取り付ける際の作業負荷は大きい。
上述した作業負荷の大きさは、従来ワイヤハーネスを車体へ取り付ける作業の効率向上の妨げとなり得る。そこで、上述した取付作業を出来る限り容易にすることにより、取付作業の効率を出来る限り向上させることが望まれる。
なお、上述した取付作業の効率を向上させることは、当然に、車体への従来ワイヤハーネスの取り付けに限らず、他の種々の取付対象に様々な電線束等を取り付ける場合においても、望ましいことである。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路体を取り付けることになる対象物に対して効率良く取り付けが可能な回路体の製造方法、及び、製造装置、を提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明に係る「回路体の製造方法」は、下記()〜()を特徴としている。

基材と、前記基材に対して固定された複数種類の電線と、前記電線によって構成される回路と前記回路の外部にある接続対象とを接続可能な接続部と、を備えた回路体の製造方法であって、
前記電線を前記基材に対して布線しながら固定する布線工程と、
前記電線と前記接続部とを電気的に接続する接続工程と、
前記接続部を前記基材に設置する設置工程と、を備え、
前記布線工程が、前記電線を前記基材に向けて供給する際に前記電線が接触する供給経路に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機を用いて、前記電線を前記基材に対して布線する処理を含む、
回路体の製造方法であること。

上記()に記載の製造方法において、
前記布線工程が、レーザを用いた加熱によって前記電線と前記基材とを溶着させて前記電線を前記基材に対して固定する処理を含む、
回路体の製造方法であること。

上記()又は上記()に記載の製造方法において、
前記布線工程が、前記電線を前記基材に対して固定する前に前記電線の表面粗さを高める加工を前記電線に対して施す処理を含む、
回路体の製造方法であること。

上記()〜上記()の何れか一つに記載の製造方法において、
前記布線工程が、前記電線として複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線を前記基材に対して布線する処理を含む、
回路体の製造方法であること。
上記()の構成の回路体の製造方法によれば、基材に対して電線を布線しながら(所定の経路に沿って張り巡らせしながら)固定することにより、任意の形態の回路を形成できる。よって、基材の形状および接続部の配置によらず、所望の形状の回路を基材に対して配置できる。更に、本構成の製造方法によって製造される回路体は、基材そのものに対して複数種類の電線が固定されていると共に、基材に形成された回路を外部の接続対象と接続可能な接続部が設けられている。そのため、例えば、複数種類の電線および接続部によって上述したワイヤハーネスと同等の回路を基材上に形成すれば、上述した従来ハーネスとは異なり、基材を車体に取り付けるだけで(従来ワイヤハーネスのような配索工程を必要とすることなく)、車体へのワイヤハーネスの取り付けが完了することになる。つまり、上述したように、この回路体をワイヤハーネスに適用すれば、取付作業の効率を向上させられる。更に、この回路体をワイヤハーネスとは別の回路体に適用しても、基材と電線等とが一体化していることにより、同様の効果が期待できる。
更に、電線を基材に向けて供給する際に電線が接触する供給経路に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機が用いられる。その結果、供給経路と電線との摩擦による発熱等を抑えつつ、供給経路から電線を円滑に
引き出すことができ、電線の損傷等を抑制できる。更に、潤滑剤等を使用することなく布線の速度を高められるため、回路体の生産性を向上できる。
ところで、本構成の製造方法によって製造される回路体をワイヤハーネスに利用する場合、上述した従来ワイヤハーネスの柔軟さに起因する作業負荷を軽減する観点から、基材の剛性は、電線の剛性よりも大きいことが好ましい。なお、ワイヤハーネス以外の対象に本構成の製造方法によって製造される回路体を適用する場合、その対象によっては、基材の剛性は、必ずしも電線の剛性よりも大きい必要はなく、電線の剛性と同程度であってもよく、電線の剛性よりも小さくてもよい。
上記「電線」は、電力および通信信号等を伝達可能であればよく、導体芯線を絶縁体によって覆った電線(被覆線)であってもよく、導体芯線のみの電線(裸線,素線)であってもよい。なお、導体芯線を構成する導体は、金属であってもよく、金属以外の材料(例えば、黒鉛)であってもよい。電線の上記「種類」として、例えば、電線の材料、直径(換言すると、許容電流値)、絶縁被覆の有無、及び、撚りの有無などが挙げられる。上記「基材」は、基材に固定される電線間の絶縁性を確保できるように構成されていればよく、全体が樹脂から形成されてもよく、母材としての金属上に表面層としての樹脂層が形成されてもよい。基材と電線との「固定」の手法は、特に制限されず、溶着、接着、並びに、基材に設けた溝への電線の嵌め込み及び圧入などが用いられ得る。更に、電線は全ての箇所において基材に固定されていてもよく(連続的固定)、電線は一部の箇所において基材に固定されていてもよい(間欠的固定,部分的固定)。上記「接続部」は、基材上の回路と外部の接続対象を有線にて繋ぐコネクタであってもよく、両者を無線にて繋ぐ通信機であってもよい。
したがって、本構成の回路体の製造方法は、回路体を取り付けることになる対象物に対して効率良く取り付けが可能な回路体を製造できる。
ところで、上述した「布線工程」、「接続工程」及び「設置工程」は、必ずしもこの順に行われる必要はなく、任意の順序にて行われ得る。更に、これら3つの工程に加え、回路体(特に、基材)を取り付けに適した形状等に加工する(例えば、プレス加工を行う)「加工工程」を行う場合、加工工程は、3つの工程の前に行われても、3つの工程の後に行われても、3つの工程の途中に行われてもよい。
上記()の構成の回路体の製造方法によれば、レーザの指向性の高さを利用して必要な箇所のみ(例えば、電線と基材との接触点)を加熱できるため、加熱による影響(例えば、電線および基材の変性等)を出来る限り抑制できる。
上記()の構成の回路体の製造方法によれば、電線を基材に対して固定する前に電線の表面粗さを高める加工が施されるため、このような加工が施されない場合に比べ、電線と基材との接触面積が増大する。その結果、電線と基材とをより強固に固定できる。
上記()の構成の回路体の製造方法によれば、複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線を、基材に対して布線できる。その結果、電線がツイスト構造を有した状態のまま基材に固定されるため、通常のツイスト線において懸念されるツイスト構造の解消(いわゆる撚り戻し)を抑制できる。
前述した目的を達成するために、本発明に係る「回路体の製造装置」は、下記()〜()を特徴としている。

基材と、前記基材に対して固定された複数種類の電線と、前記電線によって構成される回路と前記回路の外部にある接続対象とを接続可能な接続部と、を備えた回路体の製造装置であって、
前記電線を前記基材に対して布線しながら固定する布線機構と、
前記電線と前記接続部とを電気的に接続する接続機構と、
前記接続部を前記基材に設置する設置機構と、を備え、
前記布線機構が、前記電線を前記基材に向けて供給する際に前記電線が接触する供給経路に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機を用いて、前記電線を前記基材に対して布線する処理機を有する、
回路体の製造装置であること。

上記()に記載の製造装置において、
前記布線機構が、レーザを用いた加熱によって前記電線と前記基材とを溶着させて前記電線を前記基材に対して固定する処理機、を有する、
回路体の製造装置であること。

上記()又は上記()に記載の製造装置において、
前記布線機構が、前記電線を前記基材に対して固定する前に前記電線の表面粗さを高める加工を前記電線に対して施す処理機、を有する、
回路体の製造装置であること。

上記()〜上記()の何れか一つに記載の製造装置において
前記布線機構が、前記電線として複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線を前記基材に対して布線する処理機を有する、
回路体の製造装置であること。
上記()の構成の回路体の製造装置によれば、上記()と同様、基材に対して電線を布線しながら(所定の経路に沿って張り巡らせしながら)固定することにより、任意の形態の回路を形成できる。よって、基材の形状および接続部の配置によらず、所望の形状の回路を基材に対して配置できる。更に、本構成の製造装置によって製造される回路体は、上記(1)と同様、基材そのものに対して複数種類の電線が固定されていると共に、基材に形成された回路を外部の接続対象と接続可能な接続部が設けられている。そのため、上述したように、この回路体をワイヤハーネスに適用すれば、取付作業の効率を向上させられる。更に、この回路体をワイヤハーネスとは別の回路体に適用しても、基材と電線等とが一体化していることにより、同様の効果が期待できる。
更に、上記(1)と同様、電線を基材に向けて供給する際に電線が接触する供給経路に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機が用いられる。その結果、供給経路と電線との摩擦による発熱等を抑えつつ、供給経路から電線を円滑に引き出すことができ、電線の損傷等を抑制できる。更に、潤滑剤等を使用することなく布線の速度を高められるため、回路体の生産性を向上できる。
したがって、本構成の回路体の製造装置は、回路体を取り付けることになる対象物に対して効率良く取り付けが可能な回路体を製造できる。
上記()の構成の回路体の製造装置によれば、上記()と同様、レーザの指向性の高さを利用して必要な箇所のみ(例えば、電線と基材との接触点)を加熱できるため、加熱による影響(例えば、電線および基材の変性等)を出来る限り抑制できる。
上記()の構成の回路体の製造装置によれば、上記()と同様、電線を基材に対して固定する前に電線の表面粗さを高める加工が施されるため、このような加工が施されない場合に比べ、電線と基材との接触面積が増大する。その結果、電線と基材とをより強固に固定できる。
上記()の構成の回路体の製造装置によれば、上記()と同様、複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線を、基材に対して布線できる。その結果、上記(5)と同様、電線がツイスト構造を有した状態のまま基材に固定されるため、通常のツイスト線において懸念されるツイスト構造の解消(いわゆる撚り戻し)を抑制できる。
本発明によれば、回路体を取り付けることになる対象物に対して効率良く取り付けが可能な回路体の回路体の製造方法、及び、製造装置、を提供できる。
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る回路体の製造装置を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示した布線ヘッドの要部縦断面図であり、図1(c)は、図1(b)のA部拡大図である。 図2は、本発明の実施形態に係る回路体を示す斜視図である。 図3(a)〜図3(c)は、基材と電線との固定態様の種々の例を示す断面図である。 図4(a)〜図4(e)は、基材と電線との固定態様の種々の例を示す断面図である。 図5(a)は、電線分岐部の一例を示す斜視図であり、図5(b)は、電線分岐部の他の例を示す斜視図である。 図6(a)は、電線分岐部の他の例を示す斜視図であり、図6(b)〜図6(d)は、電線分岐部の更に他の例およびそれを構成する工程を示す図である。 図7(a)は、ヒューズ部の一例を示す斜視図であり、図7(b)は、ヒューズ部の他の例を示す斜視図である。 図8は、ヒューズ部の他の例を示す斜視図である。 図9(a)〜図9(c)は、ヒューズ部を形成する際の手順を説明するための図である。 図10(a)は、電線交差部の一例を示す斜視図であり、図10(b)〜図10(c)は、電線交差部を形成する際の手順を説明するための図である。 図11(a)〜図11(d)は、電線交差部の他の一例を示す断面図である。 図12は、電線としてツイスト線を使用する場合における図1(a)に対応する図である。 図13(a)は、布線ヘッドの変形例を示す要部縦断面図であり、図13(b)は、布線ヘッドの他の変形例を示す要部縦断面図である。 図14(a)は、レーザを利用して電線を基材に固定する場合における図1(a)に対応する図であり、図14(b)は、図14(a)に示すローラの周囲を拡大して示す側面図であり、図14(c)は、図14(a)に示すローラの周囲を拡大して示す正面図である。
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る回路体、回路体の製造方法、及び、回路体の製造装置について説明する。
図1に示す本発明の実施形態に係る回路体の製造装置(以下「製造装置1」という。)は、例えば、図2に示す本発明の実施形態に係る回路体(以下「回路体10」という。)の基材11に電線13を布線しながら(所定の経路に沿って張り巡らせしながら)固定するための装置である。以下、先ず、回路体10について説明する。
図2に示すように、回路体10は、基材11と、基材11に対して固定された複数種類の電線13と、電線13によって構成される回路とその回路の外部の接続対象とを接続可能な接続部12と、を備える。
基材11は、樹脂製の回路基板であり、本例では湾曲する部分を備えている。基材11の表面には、電線13として、電源線13aと、アース線13bと、通信線(信号線)13c,13dと、の3種類の電線が固定されている。なお、電線13として、2種類又は4種類以上の電線が固定されていてもよい。電線13は、絶縁体の被覆なし(導体芯線のみの素線)の電線であっても、導体芯線が絶縁体によって被覆された電線であってもよい。電線13(素線)は、典型的には、銅線またはアルミ線によって構成される。
基材11の表面には、接続部12として、相手側コネクタ(図示省略)と電気的に接続可能なコネクタ12a、及び、相手側無線通信機(図示省略)と双方向での無線通信が可能な無線通信機12bが設けられている。更に、基材11の表面には、電装品14a,14b,14cが設けられている。更に、基材11の表面には、複数の電線13が電気的に接続された状態にて立体的に重なり合う電線分岐部15(15a,15b,15c,15d)、及び、複数の電線13が電気的に分離(絶縁)された状態にて立体的に重なり合う電線交差部16(16a,16b,16c)が設けられている。
コネクタ12aから延びる電源線13a、アース線13b、及び、通信線13cは、電気的に互いに分離された状態で、電装品14aとそれぞれ接続されている。電装品14bから延びる電源線13aは、電線交差部16aにて、コネクタ12aと電装品14aとを接続するアース線13b及び通信線13cとは電気的に分離(絶縁)された状態にて交差している(詳細は後述される)。更に、電源線13aは、電線分岐部15aにて、コネクタ12aと電装品14aとを接続する電源線13aと電気的に接続されている(詳細は後述される)。電装品14cから延びる電源線13aは、電線分岐部15dにて、コネクタ12aと電装品14aとを接続する電源線13aと電気的に接続されている。その結果、電源線13aは、他の電線13b,13c,13dと電気的に分離された状態で、コネクタ12aと電装品14a,14b,14cとを電気的に接続している。
電装品14bから延びるアース線13bは、電線分岐部15bにて、コネクタ12aと電装品14aとを接続するアース線13bと電気的に接続されている。その結果、アース線13bは、他の電線13a,13c,13dと電気的に分離された状態で、コネクタ12a、及び、電装品14a,14bを相互に電気的に接続している。
電装品14bから延びる通信線13cは、電線交差部16bにて、コネクタ12aと電装品14aとを接続するアース線13bとは電気的に分離された状態で、電線分岐部15cにて、コネクタ12aと電装品14aとを接続する通信線13cと電気的に接続されている。その結果、通信線13cは、他の電線13a,13b,13dと電気的に分離された状態で、コネクタ12aと電装品14a,14bとを電気的に接続している。
電装品14cから延びる通信線13dは、電線交差部16cにて、コネクタ12aと電装品14aとを接続する電気線13a,アース線13b,通信線13cとは電気的に分離された状態で、無線通信機12bと接続されている。
更に、電装品14bから延びる電源線13aにおける電装品14bの近傍部分には、電線13aよりも融点の低い材料によって形成された可溶部17(ヒューズ部)が介在している(詳細は後述される)。可溶部17は、その両側に位置する電源線13a同士を電気的に接続している。
以下、図1を参照しながら、回路体10の基材11に電線13を布線及び固定する際に使用される製造装置1の構成について説明する。
図1(a)に示すように、製造装置1は、布線機構20を備える。布線機構20は、超音波振動発生装置21と、超音波振動発生装置21の先端側(下端側)に接続される布線ヘッド22と、を備える。超音波振動発生装置21は、超音波振動を発生可能であり、発生した超音波振動を布線ヘッド22に伝達するようになっている。
図1(b)及び図1(c)に示すように、布線ヘッド22は、超音波振動発生装置21の先端側(下端側)に接続される小径の先端部23を備える。布線ヘッド22の内部には、挿通孔24が貫通している。挿通孔24は、上下方向から傾いた方向に延びる傾斜孔25と、先端部23の内部にて上下方向に沿って延びる真直孔26と、が接続された構造を有する。
挿通孔24には、電線13が挿通される。具体的には、電線13は、図示しないボビン(金属線材ロール)等から引き出される。引き出された電線13は、ガイドローラ30を経て、布線ヘッド22の側面に位置する傾斜孔25の開口25aから挿通孔24に挿入され、布線ヘッド22の先端面27(平面)に位置する真直孔26の開口26aから導出される。先端面27の周縁部には、面取り部28が設けられている。これにより、布線ヘッド22の先端面27が、基材11の表面上をスムーズに移動できるようになっている。
次いで、製造装置1を用いた電線13を基材11に布線しながら固定する際の手順について説明する。先ず、図1(a)に示すように、電線13を布線すべき基材11を作業台40上に固定する。本例では、基材11が湾曲しているので、作業台40として、その上面が基材11の形状に倣って湾曲したものが使用される。
次いで、電線13を挿通孔24に挿通した状態にある布線機構20を、布線ヘッド22の先端面27が基材11上の布線開始位置の真上に位置するように、且つ、先端面27が基材11の上面と平行となるように、移動する。このとき、基材11は移動しない(静止している)ように固定されている。布線機構20の移動は、布線機構20を把持した6軸(6自由度を有する)のロボット(図示省略)等を利用してもよいし、作業者の手作業によって行ってもよい。なお、この移動は、布線機構20を静止させ且つ基材11を移動させることによって行ってもよく、布線機構20及び基材11の双方を移動させることによって行ってもよい。即ち、布線機構20が基材11に対して相対的に移動すればよく、布線機構20の具体的な移動手法は特に制限されない。後述する布線機構20の移動(実際の電線13の布線に伴う移動)についても同様である。
次いで、布線ヘッド22の先端面27の開口26aから導出された電線13の先端の位置を基材11上の布線開始位置に合わせる。そして、電線13における開口26aから導出される部分(電線13の先端部)を略直角に折り曲げた状態(図1(b)及び図1(c)を参照)にて、布線機構20(布線ヘッド22の先端面27)を、基材11の上面に向けて、電線13を介して所定の圧力P(図1(a)を参照)で押し付ける。
この布線ヘッド22の先端面27の押圧状態を維持しながら、超音波振動発生装置21を作動させる。これにより、布線ヘッド22が超音波振動することにより、基材11における布線ヘッド22の押圧部分が加熱されて溶融する。その結果、この押圧部分において電線13の先端部が基材11に溶着される。
このように、超音波振動発生装置21の作動状態、及び、布線ヘッド22の押圧状態を維持しながら、基材11上にて、布線機構20(布線ヘッド22の先端面27)を電線13の布線すべき経路に沿って移動させる。その結果、布線機構20の移動に伴って、電線13がボビン(金属線材ロール)等から引き出されると共に電線13が挿通孔24の内部を摺動しながら、電線13が、布線すべき経路に沿って基材11に溶着されていく。即ち、電線13が、基材11に布線すべき経路に沿って布線され固定されていく。
布線された電線13における基材11に接触する部分は、基材11の溶融により、基材11の上面より下側(基材11の内部)に埋設される。これにより、電線13が、基材11に強固に固定され得る。
なお、上述のように、挿通孔24が途中で僅かに屈曲していることにより、電線13に適度な摺動抵抗が付与される。その結果、基材11上にて電線13に適度なテンションをかけながら電線13の布線を進行できるので、布線された電線13に弛み等が生じ難い。
更に、詳細な説明は省略するが、上述したように布線及び固定された電線13と接続部12とを固定する処理(接続工程)、及び、接続部12を基材11に設置する処理(設置工程)が所定の手法によって所定の装置(機構)を用いて行われ、図2に示す回路体10が得られることになる。
図3(a)〜図3(c)、及び、図4(a)は、上述した製造装置1を用いて電線13を基材11に布線及び固定した場合における基材11と電線13との固定態様の種々の例を示す。図3(a)〜図3(c)に示す例では、電線13として、被覆なし(導体芯線のみ)の電線が使用され、電線13を基材11に布線及び固定した後、電線13の周囲が絶縁材料18によって保護されている。
図3(a)に示す例では、電線13の周囲のみに絶縁材料18がポッティングされることにより、電線13の周囲のみが絶縁材料18によって保護されている。図3(b)に示す例では、基材11の表面全体に絶縁材料18が塗布(レジスト塗布)されることにより、電線13の表面を含む基材11の表面全体が、絶電材料18からなる層で保護されている。図3(c)に示す例では、基材11の表面全体が、絶縁材料18からなる保護シートで覆われている(ラミネート処理)。
図4(a)に示す例では、電線13として、導体131が樹脂製の絶縁体132によって被覆された電線が使用されている。この例では、導体131が絶縁体132で既に被覆されているので、電線13の保護のために、絶縁体132の周りを絶縁材料18で更に保護する必要がない。このため、電線13(導体131+絶縁体132)を基材11に布線及び固定した後、電線13が絶縁材料18によって保護されていない。
上述した図3(a)〜図3(c)、及び、図4(a)に示す例では、製造装置1を用いて電線13を基材11に布線及び固定しているので、上述したように、布線された電線13における基材11に接触する部分は、基材11の溶融により、基材11の上面より下側(基材11の内部)に埋設されている。
これに対し、図4(b)及び図4(c)に示すように、電線13の基材11に対する布線及び固定が、接着剤19を用いてなされてもよい。この場合、布線された電線13は、その一部が基材11に埋設されることなく、その全体が基材11上に位置する。
図4(b)に示す例では、電線13として、被覆なし(導体芯線のみ)の電線が使用され、電線13が基材11に接着剤19によって固定された後、電線13の周囲が絶縁材料18によって保護されている。図4(c)に示す例では、電線13として、導体131が絶縁体132によって被覆された電線が使用されている。そのため、図4(a)に示す例と同様、電線13が基材11に接着剤19によって固定された後、電線13が絶縁材料18によって保護されていない。
更に、図4(d)及び図4(e)に示すように、電線13の基材11に対する布線及び固定が、基材11の表面において電線13の布線すべき経路に沿って予め形成された溝11aに電線13を嵌め込むことにより行われてもよい。図4(d)に示す例では、電線13として、被覆なし(導体芯線のみ)の電線が使用され、図4(e)に示す例では、電線13として、導体131が絶縁体132によって被覆された電線が使用されている。図4(d)に示す例では、電線13のほぼ全体が溝11aに埋没しているので、電線13の保護のために、電線13の周りを絶縁材料18で更に保護する必要性が低い。このため、電線13を基材11の溝11aに嵌め込んだ(布線及び固定した)後において、電線13が絶縁材料18によって保護されていない。なお、必要に応じ、電線13のうちの溝11aから露出している部分を、上述した絶縁材料等によって覆ってもよい。
次いで、図5を参照しながら、図2に示した電線分岐部15(15a,15b,15c,15d)について説明する。図5(a)に示す例では、電線13として、被覆なし(導体芯線のみ)の電線が使用されている。この場合、一の電線13を基材11に布線及び固定した後、一の電線13の上を通り過ぎるように(跨ぐように)、他の電線13を基材11に布線及び固定する。これにより、双方の電線13が電気的に接続された状態にて重なり合う部分が自然に形成される。この部分が、電線分岐部15となる。なお、本例では、双方の電線13が重複部を形成するように布線して電線分岐部15を形成しているが、双方の電線13を重ね合わせた後に両者を超音波接合してもよく(例えば、超音波ホーンを重複部に押し付けて接合処理を施してもよく)、双方の電線13を重ね合わせた後に両者に接触するように導電性材料(例えば、導電性接着材およびハンダ等)を設けてもよい。
図5(b)に示す例では、電線13として、導体131が絶縁体132によって被覆された電線が使用されている。この場合、絶縁体132が除去されて導体131が露出する部分(以下「導体露出部分」と呼ぶ。)が一部に形成された一の電線13を基材11に布線及び固定した後、一の電線13の上を通り過ぎるように(跨ぐように)、導体露出部分が一部に形成された他の電線13を、双方の導体露出部分が重なり合うように(互いに接触するように)基材11に布線及び固定する。これにより、双方の電線13が電気的に接続された状態にて重なり合う部分が自然に形成される。この部分が、電線分岐部15となる。なお、上記同様、電線分岐部15は、双方の導体131の単なる重ね合わせに限らず、重複部の超音波接合、及び、重複部への導電性材料の塗布などによって形成されてもよい。
なお、図5に示す例では、上方からみて、2つの電線13のなす角度が直角になるように2つの電線13が重なり合っているが、2つの電線13のなす角度が直角以外の角度で2つの電線13が重なり合っていてもよい。
更に、図6(a)に示す例では、図5(b)に示す例とは異なり、一の導体131の上を他の導体131が通り過ぎることなく(跨ぐことなく)、一の導体131の側面(又は上面でもよい)に他の導体131の端部が接触するように、他の導体131が布線及び固定されている。換言すると、一の導体131と他の導体131とが、上面視でT字型をなすように布線及び固定されている。これにより、双方の電線13が電気的に接続された電線分岐部15が形成される。
なお、上記同様、電線分岐部15は、双方の導体131の単なる接触に限らず、接触部の超音波接合、及び、接触部への導電性材料の塗布などによって形成されてもよい。また、図6(a)では導体131を絶縁体132によって覆った電線13を用いた例を示しているが、被覆なし(導体芯線のみ)の電線(図5(a)を参照)を用いて同様の電線分岐部15が形成されてもよい。図6(b)〜図6(d)についても同様である。
更に、図6(b)〜図6(d)に示す例では、電線分岐部15の形成を補助するための構造体111,112,113(以下「分岐補助部材」という。)が、基材11の表面に設けられている。本例において、分岐補助部材111,112,113は、基材11の表面に立設された壁状の形状を有しており、互いの間に導体131の径よりも若干大きい隙間を有するように略平行に配置されている。分岐補助部材111,113に挟まれた分岐補助部材112は、長手方向の中央部に壁の一部が切り欠かれた切欠き部112aを有している。
なお、分岐補助部材111,112,113は、基材11とは別の部材として準備された上で電線13の布線の前に基材11の表面に設置されてもよく、基材11の一部としてあらかじめ基材11の表面に形成されていてもよい。
電線分岐部15を形成する際、図6(b)に示すように、分岐補助部材111,112の間の隙間に一の導体131を挿入し、分岐補助部材112,113の間の隙間に他の導体131を挿入する。これにより、一の導体131と他の導体131との相対位置が、ある程度(少なくとも、各導体131の軸線に直交する方向において)固定される。
その後、図6(c)に示すように、分岐補助部材112の切欠き部112aを介して双方の導体131に接触するように、導電性材料151(例えば、導電性接着材およびハンダ等)を設ける。このとき、分岐補助部材111,112,113によって双方の導体131の相対位置がある程度固定されているため、導電性材料151の設置(例えば、導電性接着剤の塗布から乾燥までの工程)が容易となる。即ち、電線分岐部15の形成が補助される。これにより、双方の電線13が電気的に接続された電線分岐部15が形成される。
一方、図6(d)に示すように、導電性材料151に代えて、双方の導体131を導電性の金具152(例えば、圧接端子など)によって接続してもよい。図6(d)では、金具152は、双方の導体131の外周面を覆うように導体131に取り付けられる(例えば、圧接される)取り付け部分と、その部分同士を繋ぐ連結部分と、を有している。より具体的には、図6(b)の工程に先立ち、金具152を分岐補助部材111,112,113の内側に、切欠き部112aを通過するように配置する。次いで、図6(b)の工程の際、双方の導体131を上述した隙間に挿入しつつ、双方の導体131に金具152を固定する(例えば、図示しない圧接刃を上方から押し付けることにより、金具152を圧接する)。このとき、分岐補助部材111,112,113によって双方の導体131を固定しつつ、上述した隙間に沿って固定用の工具など(例えば、上述した圧接刃など)を金具152に押し当てることができるため、金具152の固定が容易となる。即ち、電線分岐部15の形成が補助される。これにより、双方の電線13が電気的に接続された電線分岐部15が形成される。
なお、金具152は、事前には分岐補助部材111,112,113の内側に配置せず、図6(b)の工程の後(双方の導体131を上述した隙間に挿入した後)、双方の導体131を上方から覆うように取り付けられてもよい。
次いで、図7〜図9を参照しながら、図2に示した可溶部(ヒューズ部)17について説明する。図7(a)に示すように、可溶部17は、その両側に位置する電線13(導体)の間を電気的に接続している。可溶部17は、半田などの電線13(導体)よりも融点の低い材料によって形成されている。
可溶部17は、電線13に過大な電流が流れることなどによって加熱されたときに、両側に位置する電線13同士を分断する動作(以下「分断動作」と呼ぶ。)を行う。分断動作は、可溶部17が溶融することにより、可溶部17の表面張力によって、可溶部17がその両側に位置するそれぞれの電線13に向けて移動していく(引き込まれる)ことにより発生する。
可溶部17の分断動作は、溶融した可溶部17の電線13の表面に対する濡れ性が大きいほどより確実になる。そのため、可溶部17の表面に、表面張力を増加させる材料を塗布しておくことが好ましい。このような材料により、溶融した可溶部17の表面張力を増加させると共に、可溶部17の切断を起こりやすくさせられる。
または、可溶部17の分断動作をより確実にするため、図7(b)に示すように、両側に位置する電線13のそれぞれの端部に、軸線方向に延びる溝133を周方向において複数形成することが好ましい。これにより、溶融した可溶部17が溝133に入り込んだとき、毛細管現象により、可溶部17のそれぞれの電線13に向けた移動(図7(b)の細い矢印を参照)が促進される。その結果、可溶部17の分断動作がより確実になる。
更に、図8に示すように、可溶部17は、3つ(又は、それ以上)の電線13(導体)の端部の間を電気的に接続し、分岐する機能を兼ねるように配置されていてもよい。
図9に示すように、可溶部17は、例えば、図1に示した製造装置1を用いて形成することができる。この場合、図9(a)に示すように、製造装置1の布線機構20に、布線ヘッド22と所定の間隔を空けて並ぶように、可溶部17を構成する材料(可溶部構成材料)を吐出する吐出器71が一体的に設けられる。
先ず、図9(a)に示すように、製造装置1の布線ヘッド22を利用して、基材11に、2つの電線13の端部が互いに所定の間隔を空けて同軸的に対向するように、2つの電線13を布線及び固定する。次いで、図9(b)に示すように、製造装置1の吐出器71を、2つの電線13の端部間の直上位置まで移動し、吐出器71を作動させて、溶融状態にある高温の可溶部構成材料を2つの電線13の端部間に向けて吐出する。この状態にて、可溶部構成材料を冷却及び固化させることにより、図9(c)に示すように、2つの電線13の端部間を接続する可溶部17が形成される。
なお、このように形成された可溶部17に上述した表面張力を増加させる材料を塗布するための機構(図示省略)を、製造装置1の布線機構20に一体的に設けてもよい。更に、上述した溝133を電線13の端部に形成するためのレーザ照射部等の機構(図示省略)を、布線機構20に一体的に設けてもよい。
次いで、図10及び図11を参照しながら、図2に示した図2に示した電線交差部16(16a,16b,15c)について説明する。図10及び図11に示す例では、電線13として、被覆なし(導体芯線のみ)の電線が使用されている。
図10(a)に示す例では、電線交差部16を形成するため、アーチ部材161を用いる。この例では、アーチ部材161は、例えば、樹脂製の薄板で構成され、長手方向を有すると共に横断面が上方に突出する略U字状の形状を有する。この例では、基材11に布線及び固定された一の電線13の所定箇所の上を跨ぐように、アーチ部材161が基材11に配置及び固定されている。このアーチ部材161の上を通り過ぎるように(跨ぐように)、他の電線13が基材11に布線及び固定されている。
これにより、双方の電線13が電気的に分離(絶縁)された状態にて重なり合う部分が形成される。この部分が、電線交差部16となる。図10(a)に示す電線交差部16は、図2の電線交差部16a,16bに対応している。
図10(b)及び図10(c)に示すように、図10(a)に示す電線交差部16は、例えば、図1に示した製造装置1を用いて形成することができる。この場合、図10(b)に示すように、製造装置1の布線機構20に、布線ヘッド22と所定の間隔を空けて並ぶように、アーチ161を供給するアーチ供給器72と、アーチ161を固定するアーチ固定器73とが一体で設けられる。
図10(b)に示すように、製造装置1の布線機構20(具体的には、布線ヘッド22)を矢印の方向に移動しながら、一の電線13を基材11に布線及び固定していく過程において、布線ヘッド22がアーチ161の配置箇所を通り過ぎた後、アーチ供給器72が当該箇所の直上に位置する段階で、布線機構20の移動を中断し、アーチ供給器72を作動させて、アーチ161を一の電線13に向けて供給する。これにより、アーチ部材161が一の電線13の当該箇所にて一の電線13を跨ぐように配置される。
次いで、図10(c)に示すように、アーチ固定器73がアーチ部材161の直上に位置するように布線機構20を移動する。続いて、アーチ固定器73を作動させて、アーチ固定器73の押圧用ピストン73aでアーチ部材161を加熱しながら下方に押圧することにより、アーチ部材161を基材11に熱圧着させる。なお、アーチ部材161の下端面(接着面)にホットメルト接着材等を予め塗布しておいてもよい。これにより、アーチ部材161が基材11により一層強固に固定され得る。なお、アーチ部材161と基材11との接着は、超音波およびレーザ等によってアーチ部材161を加熱及び溶融しつつ下方に押圧して基材11に接着する方法、によって行われてもよい。
なお、一の電線13全体の布線作業が完了した後、アーチ供給器72がアーチ部材161の配置箇所の直上に位置するように布線機構20を移動して、上述した動作と同じ動作を行うことにより、アーチ部材161を配置及び固定してもよい。そして、基材11に固定されたアーチ部材161の上を通り過ぎるように(跨ぐように)、他の電線13を基材11に布線及び固定する。これにより、図10(a)に示す電線交差部16が形成される。
図11(a)に示すように、アーチ部材161に覆われた電線13とアーチ部材161との間の隙間に絶縁材料162(樹脂など)を充填してもよい。この形態は、例えば、一の電線13のアーチ部材161の配置箇所を絶縁材料162で覆った後、アーチ部材161を固定することにより実現できる。
更に、図11(b)に示すように、基材11の表面において一の電線13の布線すべき経路に沿って形成された溝163に一の電線13を嵌め込み、一の電線13が嵌め込まれた溝163の上を通り過ぎるように(跨ぐように)、他の電線13を基材11に布線及び固定することによっても、電線交差部16が形成される。この場合、一の電線13と他の電線13とを電気的に分離(絶縁)するため、両者の間に空隙が確保されるように、溝163の幅および深さ等が定められればよい。図11(b)に示す電線交差部16は、図2の電線交差部16cに対応している。
更に、図11(c)に示すように、図11(b)における一の電線13と他の電線13との間の空隙に絶縁材料164(樹脂など)を充填してもよい。この場合、一の電線13と他の電線13とをより確実に電気的に分離(絶縁)できる。
更に、図11(d)に示すように、一の電線13のアーチ部材161の配置箇所を絶縁材料165で覆った後、絶縁材料165の上部に溝166を形成し、溝166に他の電線13が嵌るように他の電線13を基材11に布線及び固定することによっても、電線交差部16が形成される。
なお、図10及び図11に示す例では、上方から見て、2つの電線13のなす角度が直角になるように2つの電線13が重なり合っているが、2つの電線13のなす角度が直角以外の角度で2つの電線13が重なり合っていてもよい。
以上、本発明の実施形態に係る回路体の製造装置1及びこの製造装置1を用いた製造方法によれば、基材11に対して電線13を布線しながら(所定の経路に沿って張り巡らせしながら)固定することにより、任意の形態の回路を形成できる。よって、基材11の形状および接続部12の配置によらず、所望の形状の回路を基材11に対して配置できる。更に、本発明の実施形態に係る製造方法によって製造される回路体10は、基材11そのものに対して複数種類の電線13が固定されていると共に、基材11に形成された回路を外部の接続対象と接続可能な接続部12が設けられている。そのため、例えば、回路体10をワイヤハーネスに適用すれば、取付作業の効率を向上させられる。更に、回路体10をワイヤハーネスとは別の回路体10に適用しても、基材11と電線13等とが一体化していることにより、同様の効果が期待できる。
したがって、本構成の回路体10の製造装置1及び製造方法は、回路体10を取り付けることになる対象物に対して効率良く取り付けが可能な回路体10を製造できる。
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態では、超音波振動発生装置21を連続的に作動させながら布線機構20を布線すべき経路に沿って移動していくため、電線13が、布線すべき経路に沿って連続して基材11に溶着されていく。これに対し、超音波振動発生装置21をスポット的に作動させながら布線機構20を布線すべき経路に沿って移動することにより、電線13を、布線すべき経路に沿ってスポット的に(間欠的に)基材11に溶着してもよい。
更に、上記実施形態では、布線機構20を用いて、単線である電線13が基材11に布線されているが(図1(a)等を参照)、図12に示すように、複数本の単線(電線13)をツイスト線製造装置50に供して得られるツイスト線133(撚り線)を布線機構20に供給することにより、布線機構20を用いて、ツイスト線133を基材11に布線することもできる。ツイスト線製造装置50は、複数本の単線をチャッキングし、そのチャッキング部分を回転させることによりツイスト線133を製造する。これにより、複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線13を、基材11に対して布線できる。その結果、電線13がツイスト構造を有した状態のまま基材11に固定されるため、通常のツイスト線において懸念されるツイスト構造の解消(いわゆる撚り戻し)を抑制できる。なお、ツイスト線製造装置50の詳細な構成等は、例えば、特開2007−227185号公報等に記載されている。
なお、ツイスト線133は、基材11への固定(溶着)の際、単線13の絶縁体同士が溶け合って一体化する場合もある。この場合、ツイスト線133は、見かけ上は1本の電線であるが、その内部において導体芯線が螺旋状に旋回していることになる。この観点から、ツイスト線133は、(外見上、1本の電線であるか複数本の電線であるかによらず)導体芯線が旋回したツイスト構造を有する電線と言い換え得る。
更に、上記実施形態では、布線ヘッド22に設けられた挿通孔24の内壁面、及び、電線13の外側面の双方において、挿通孔24の内壁面と電線13の外側面との接触面積が大きくなることにより、挿通孔24を通過する電線13の摺動抵抗が過大になる場合がある。
そこで、例えば、図13(a)に示すように、挿通孔24内を所定間隔だけ離れて対向する一対の隔壁61で仕切ることによって得られる空間62内に、エッチング溶液を充填させてもよい。なお、各隔壁61には、電線13が挿通するための貫通孔(図示省略)が形成されている。これにより、電線13が挿通孔24内を進行していく際、空間62内にてエッチング溶液に晒される。その結果、電線13の外側面が不規則に侵食されて、電線13の外周面に微細な凹凸134が形成される。このように、電線13の外周面に微細な凹凸134が形成されることにより、挿通孔24の内壁面と電線13の外側面との接触面積が減少し、挿通孔24を通過する電線13の摺動抵抗を小さくすることができる。更に、基材11に電線13を布線及び固定する際、その微細な凹凸134によるアンカー効果により、電線13をより強固に基材11に固定できる。なお、微細な凹凸134は、レーザ照射等によっても形成することができる。これにより、電線13を基材11に対して固定する前に電線13の表面粗さを高める加工が施されるため、このような加工が施されない場合に比べ、電線13と基材11との接触面積が増大する。その結果、電線13と基材11とをより強固に固定できる。
更に、図13(b)に示すように、挿通孔24の内壁面に微細な凹凸24aを設けても良い。これによっても、挿通孔24の内壁面と電線13の外側面との接触面積が減少し、挿通孔24を通過する電線13の摺動抵抗を小さくすることができる。このような凹凸24aは、例えば、ナノ秒〜フェムト秒パルスレーザ等を挿通孔24の内壁面に照射すること等によって形成することができる。これにより、供給経路と電線13との摩擦による発熱等を抑えつつ、供給経路から電線13を円滑に引き出すことができ、電線13の損傷等を抑制できる。更に、潤滑剤等を使用することなく布線の速度を高められるため、回路体10の生産性を向上できる。
更に、上記実施形態では、布線機構20が有する超音波振動発生装置21による超音波振動を利用して、基材11における布線ヘッド22の押圧部分を加熱及び溶融している(図1(a)を参照)。しかし、図14に示すように、レーザ光Lを利用して基材11における布線ヘッド22の押圧部分を加熱及び溶融してもよい。この場合、図14(a)に示すように、超音波振動発生装置21が省略される。これにより、レーザ光Lの指向性の高さを利用して必要な箇所のみ(例えば、電線13と基材11との接触点)を加熱できるため、加熱による影響(例えば、電線13および基材11の変性等)を出来る限り抑制できる。
なお、図14に示す例では、特に、図14(b)及び図14(c)に示すように、布線ヘッド22の先端部(下端部)に一対のステー64を介してローラ65が回転自在に支持されている。そして、ローラ65の外周面に形成された溝65aに電線13を架けた状態にて、電線13を介してローラ65を基材11に向けて押圧している。
更に、電線13の基材11に対する固定は、熱伝導性が良い接着剤を用いてなされてもよい。この場合、布線された電線13は、その一部が基材11に埋設されることなく、その全体が基材11上に位置する。また、上記実施形態(図2を参照)では、電線13は、電装品14a,14b,14c等が設けられている基材11の実装面(基材11のおもて面。図1等を参照)に形成されている。しかし、電線13は、電装品14a,14b,14c等が設けられていない基材11の非実装面(基材11の裏面)に形成されてもよい。
ここで、上述した本発明に係る「回路体」、「回路体の製造装置」及び「回路体の製造方法」の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(15)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
基材(11)と、前記基材に対して固定された複数種類の電線(13)と、前記電線によって構成される回路と前記回路の外部にある接続対象とを接続可能な接続部(12)と、を備えた回路体。
(2)
上記(1)に記載の回路体において、
前記回路が、一の前記電線と他の前記電線とが電気的に接続された状態の電線分岐部(15)を有する、
回路体。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載の回路体において、
前記回路が、一の前記電線と他の前記電線とが電気的に絶縁された状態にて重なり合った電線交差部(16)、を有する、
回路体。
(4)
上記(1)〜上記(3)の何れか一つに記載の回路体において、
前記回路が、一の前記電線と他の前記電線とが前記一の前記電線及び前記他の前記電線の双方よりも融点の低い可溶部を介して電気的に接続されたヒューズ部(17)、を有する、
回路体。
(5)
上記(1)〜上記(4)の何れか一つに記載の回路体において、
前記回路が、前記電線として、複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線(13)、を有する、
回路体。
(6)
基材(11)と、前記基材に対して固定された複数種類の電線(13)と、前記電線によって構成される回路と前記回路の外部にある接続対象とを接続可能な接続部(12)と、を備えた回路体の製造方法であって、
前記電線(13)を前記基材(11)に対して布線しながら固定する布線工程と、
前記電線(13)と前記接続部(12)とを電気的に接続する接続工程と、
前記接続部(12)を前記基材(11)に設置する設置工程と、を備えた、
回路体の製造方法。
(7)
上記(6)に記載の製造方法において、
前記布線工程が、レーザを用いた加熱によって前記電線(13)と前記基材(11)とを溶着させて前記電線を前記基材に対して固定する処理を含む、
回路体の製造方法。
(8)
上記(6)又は上記(7)に記載の製造方法において
前記布線工程が、前記電線(13)を前記基材(11)に対して固定する前に前記電線の表面粗さを高める加工を前記電線(13)に対して施す処理を含む、
回路体の製造方法。
(9)
上記(6)〜上記(8)の何れか一つに記載の製造方法において
前記布線工程が、前記電線(13)を前記基材(11)に向けて供給する際に前記電線が接触する供給経路(25)に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機(22)を用いて、前記電線を前記基材に対して布線する処理を含む、
回路体の製造方法。
(10)
上記(6)〜上記(9)の何れか一つに記載の製造方法において
前記布線工程が、前記電線として複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線(13)を前記基材に対して布線する処理を含む、
回路体の製造方法。
(11)
基材(11)と、前記基材に対して固定された複数種類の電線(13)と、前記電線によって構成される回路と前記回路の外部にある接続対象とを接続可能な接続部(12)と、を備えた回路体の製造装置であって、
前記電線(13)を前記基材(11)に対して布線しながら固定する布線機構と、
前記電線(13)と前記接続部(12)とを電気的に接続する接続機構と、
前記接続部(12)を前記基材(11)に設置する設置機構と、を備えた、
回路体の製造装置。
(12)
上記(11)に記載の製造装置において、
前記布線機構が、レーザを用いた加熱によって前記電線(13)と前記基材(11)とを溶着させて前記電線(13)を前記基材(11)に対して固定する処理機、を有する、
回路体の製造装置。
(13)
上記(11)又は上記(12)に記載の製造装置において、
前記布線機構が、前記電線(13)を前記基材(11)に対して固定する前に前記電線の表面粗さを高める加工を前記電線に対して施す処理機(61)〜63)、を有する、
回路体の製造装置。
(14)
上記(11)〜上記(13)の何れか一つに記載の製造装置において
前記布線機構が、前記電線(13)を前記基材(11)に向けて供給する際に前記電線が接触する供給経路(25)に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機(22)を用いて、前記電線を前記基材に対して布線する処理機を有する、
回路体の製造装置。
(15)
上記(11)〜上記(14)の何れか一つに記載の製造装置において
前記布線機構が、前記電線として複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線(13)を前記基材に対して布線する処理機を有する、
回路体の製造装置。
1 回路体の製造装置
10 回路体
11 基材
12 接続部
13 電線
15 電線分岐部
16 電線交差部
17 可溶部(ヒューズ部)
20 布線機構
25 挿通孔(供給経路)
133 ツイスト線
L レーザ光

Claims (8)

  1. 基材と、前記基材に対して固定された複数種類の電線と、前記電線によって構成される回路と前記回路の外部にある接続対象とを接続可能な接続部と、を備えた回路体の製造方法であって、
    前記電線を前記基材に対して布線しながら固定する布線工程と、
    前記電線と前記接続部とを電気的に接続する接続工程と、
    前記接続部を前記基材に設置する設置工程と、を備え、
    前記布線工程が、前記電線を前記基材に向けて供給する際に前記電線が接触する供給経路に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機を用いて、前記電線を前記基材に対して布線する処理を含む、
    回路体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法において、
    前記布線工程が、レーザを用いた加熱によって前記電線と前記基材とを溶着させて前記電線を前記基材に対して固定する処理を含む、
    回路体の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の製造方法において
    前記布線工程が、前記電線を前記基材に対して固定する前に前記電線の表面粗さを高める加工を前記電線に対して施す処理を含む、
    回路体の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項の何れか一項に記載の製造方法において
    前記布線工程が、前記電線として複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線を前記基材に対して布線する処理を含む、
    回路体の製造方法。
  5. 基材と、前記基材に対して固定された複数種類の電線と、前記電線によって構成される回路と前記回路の外部にある接続対象とを接続可能な接続部と、を備えた回路体の製造装置であって、
    前記電線を前記基材に対して布線しながら固定する布線機構と、
    前記電線と前記接続部とを電気的に接続する接続機構と、
    前記接続部を前記基材に設置する設置機構と、を備え、
    前記布線機構が、前記電線を前記基材に向けて供給する際に前記電線が接触する供給経路に対して表面粗さを高める加工が施されている供給機を用いて、前記電線を前記基材に対して布線する処理機を有する、
    回路体の製造装置。
  6. 請求項5に記載の製造装置において、
    前記布線機構が、レーザを用いた加熱によって前記電線と前記基材とを溶着させて前記電線を前記基材に対して固定する処理機、を有する、
    回路体の製造装置。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の製造装置において、
    前記布線機構が、前記電線を前記基材に対して固定する前に前記電線の表面粗さを高める加工を前記電線に対して施す処理機、を有する、
    回路体の製造装置。
  8. 請求項5〜請求項7の何れか一項に記載の製造装置において
    前記布線機構が、前記電線として複数の導体芯線が互いに絶縁された状態にて螺旋状に旋回したツイスト構造を有する電線を前記基材に対して布線する処理機を有する、
    回路体の製造装置。
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