以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明のマスクの一実施形態を示したものである。図1〜図3に示す本実施形態のマスク1は、図3に示すように使用者の顔20の顔面21(例えば、口や鼻孔の周辺)を覆うためのマスク本体2と、このマスク本体2の両側端4c,4d付近に取り付けられた耳掛け紐3,3とを備えている。
マスク1は、使い捨てのいわゆる「プリーツ型」と称されるものであり、図1に示すように、マスク1の内面6の中央寄りにプリーツ部7が設けられている。
このプリーツ部7には、マスク本体2の上下方向に所定幅で折り畳んだプリーツ折り目部7a〜7dが横方向に複数形成されている。
プリーツ折り目部7a〜7dは、マスク本体2を折り返すことによって形成されており、マスク本体2を上下方向に広げてプリーツ部7を展開すると、マスク本体2が外側に向かって膨らむ山型の立体形状となるように構成されている。
マスク本体2は、平面形状が四角形で、複数枚の不織布シートが重ね合わされた積層体であり、この重ね合わされた不織布シートの周囲が溶着等によって固着されている。マスク本体2の内面6には、上端4a、下端4b、側端4c,4dに沿って直線状に、重ね合わされた不織布シート同士が固着された固着部5a,5b,5c,5dが設けられている。
マスク本体2は、上端4a近傍に沿って、鼻22にフィットするポリエチレン等の樹脂片もしくは金属片(ノーズフィッター)が内面6の不織布と外面の不織布との間の内部に収納されていてもよい。
例えば、マスク本体2は、外気側に配置される外層の不織布シートと、肌に接する口元側の内層の不織布シートとを必須とし、外層と内層との間に少なくとも1つの中間層を有していてもよい、複数層の不織布シートからなる積層体である。外層と内層には通気性のある材質、中間層はフィルタとして機能する材質等が選択される。
マスク本体2を構成する不織布材料としては、一般にマスク1の材料として周知の材料を用いることができる。例えば、ポリオレフィン系繊維やポリエステル系繊維で構成される合成繊維の不織布等が挙げられる。具体的には、例えば、芯部/鞘部が、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/低融点ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリプロピレン等の芯鞘型複合繊維の他、ポリプロピレン単体またはポリエチレンテレフタレート単体で構成されるレギュラー繊維等が用いられる。その他の不織布材料としては、レーヨン系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維等が挙げられる。
不織布シートとしては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布等を用いることができる。
複数枚の不織布シートのうち少なくとも一部に代替して、ガーゼ、紙、透湿性樹脂シート等を用いてもよい。
マスク本体2の両側端4c,4d付近には、耳掛け紐3,3が、溶着等によってそれぞれ取り付けられている。耳掛け紐3,3は、図3に示すように、マスク本体2の左右両側より、耳23,23に掛けることによりマスク1を顔面21に装着できるようになっている。耳掛け紐3,3の材質は、ゴム等のように伸縮性を有するものが好ましい。 本実施形態のマスク1は、内面6にホットメルト材料10が設けられている。
ホットメルト材料10は、マスク本体2の内面6における周縁4近傍において不織布に接着されている。ここで周縁4近傍とは、マスク1を顔面21に装着した際に、口が面する部分の周囲、特にプリーツ部7と、上端4a、下端4b、および側端4c,4dからなる周縁4との間を示している。
ホットメルト材料10は、樹脂、ゴム、エラストマーなどの主成分を必須とし、マスク本体2に使用されている不織布にコーティング材として塗布することができるものである。塗布時には、この主成分の加熱溶融によって適度な流動性と粘度を持つコーティング材となり、塗布後は、冷却によって流動性を失い柔らかい弾性体となって、不織布にそれ自体が接着されるものである。
好ましいホットメルト材料10の条件は、ホットメルトガンで塗布できること、粘度等が適正で厚盛りできること、マスク本体2の不織布に浸透したり、不織布を溶融させないこと、安全性と衛生性の点から肌に対してアレルギー物質を含まないこと、表面が肌にフィットし易いことであり、これらの条件を満たすものであれば、ホットメルト材料10として各種材料が使用できる。
ホットメルト材料10の主成分は特に限定されず樹脂、ゴム、エラストマー等のいずれを使用してもよい。ホットメルト材料10の主成分としては、例えば、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系、合成ゴム系、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリオレフィン系として、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピレン共重合体、アイオノマー(エチレン・アクリル酸共重合体にナトリウムや亜鉛などの金属イオンを作用させて、イオン橋架け構造をもたせたもの)なども使用できる。エチレン系共重合体の場合は、コモノマーを共重合し、結晶化度を低下させる方法により柔軟化し、EVAの場合、VA濃度が45〜60質量%で結晶性がなくなる性質がある。このようなEVAも使用可能で、好ましくはVA濃度が9〜46質量%、より好ましくはVA濃度が19〜46質量%である。その中でも、ホットメルト材料10は、粘着性よりもその低い硬度によりせん断ずり強度を小さくしても密着性を確保することを特徴とし、この点から、柔軟性と弾性による密着性に着目することが重要で、ゴム弾性を有し熱可塑性によって溶融時の作業性の良い熱可塑性エラストマーが好ましい。
ホットメルト材料10には、主成分以外の添加剤として、粘着性付与樹脂、軟化剤、ワックス、他、例えば、滑剤、消臭剤、発泡剤、顔料、酸化防止剤、香料、吸水性樹脂、熱安定剤、耐光剤、耐候剤、紫外線吸収剤、光安定剤、補強剤、帯電防止剤、防菌剤、防かび剤、分散剤などを配合することができる。
これらのうち滑剤としては、例えばシリコンオイル;パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸ステアリルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記消臭剤はゼオライト系が使用でき、一般に三次元骨格構造を有するアルミノシリケートの総称であって、一般式として、xM2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2Oで表される。ここで、Mはイオン交換可能なイオンを表し、通常は1価又は多価の金属イオンである。nはイオン交換可能なイオン(金属イオン)の原子価である。また、x及びyはそれぞれ金属酸化物、シリカのモル係数、zは結晶水のモル数を表している。本発明においては、天然ゼオライトや合成ゼオライトを問わず用いることができ、例えば、天然ゼオライトとしてはモルデナイト(モルデン沸石)やエリオナイト(毛沸石)、クリノブチロライト、チャバザイト(斜方沸石)などが挙げられる。合成ゼオライトとしてはA型ゼオライトやX型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、オメガ型ゼオライトなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ホットメルト材料10の主成分としての上記熱可塑性エラストマーとしては、耐熱性とエラストマーの弾性による密封性等を確保することができること等を考慮すると、スチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーは、スチレン重合体ブロックとエラストマーブロックとから構成される。
スチレン含有量は、高いと表面硬度が硬く、低いと表面硬度が柔らかくなり、10〜50質量%から選択でき、中でも20〜40質量%が好ましく、28〜33質量%がより好ましい。スチレン系ブロック共重合体として、具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。なお、前記において、「エチレン/ブチレン」はエチレンおよびブチレンの共重合体ブロックを示し、「エチレン/プロピレン」はエチレンおよびプロピレンの共重合体ブロックを示す。熱可塑性エラストマーは、トリブロック共重合体単体またはジブロック共重合体との混合物を2種以上組合せて用いてもよい。
スチレン重合体ブロックに用いられるスチレンモノマーとしては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ビニルピリジン等を挙げることができる。中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
エラストマーブロックは、イソプレン(I)、ブタジエン(B)、エチレン−ブチレン(EB)、エチレン−プロピレン(EP)またはエチレン−エチレン−プロピレン(EEP)を含有する。
ブロック構造としては、A:スチレン重合体ブロック、B:エラストマーブロックと表すと、A−B−A型等を用いることができ、1種単独でまたは2種以上のブレンドとして用いることができる。例えばSEBS型、SEPS型を好ましく用いることができる。
スチレン系エラストマーは、メルトフローレート(MFR:[g/10min]、200℃/5kg荷重、(JIS K7210)は1〜70が好ましく、比重は0.86〜0.98が好ましく、溶液粘度(10質量%トルエン溶液)は5〜2000mPa・s(25℃)が好ましい。
ホットメルト材料10の主成分が熱可塑性エラストマーである場合、主成分以外の添加剤として、軟化剤を含有することが好ましい。軟化剤は、ホットメルト材料10を軟化し、可塑性、塗布加工性を付与し得る。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量(ピークトップ分子量400〜90000程度)ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリ(イソプレン−ブタジエン)共重合体、液状ポリ(スチレン−ブタジエン)共重合体、液状ポリ(スチレン−イソプレン)共重合体などの液状ポリジエンおよびその水添物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとの相溶性の観点から、パラフィン系プロセスオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;低分子量(ピークトップ分子量400〜90000程度)ポリイソブチレン;液状ポリジエンおよびその水添物が好ましい。
軟化剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対し軟化剤20〜300質量部が好ましく、50〜300質量部がより好ましく、50〜250質量部がさらに好ましい。軟化剤の含有量が少な過ぎると粘度が高過ぎライニングし難く、多過ぎるとホットメルト材料10の表面に軟化剤がブリードしやすくなる。
ホットメルト材料10の主成分が熱可塑性エラストマーである場合、主成分以外の添加剤として、酸化防止剤、粘着性付与樹脂、無機充填剤、非晶性ポリアルファオレフィン、ワックス等を添加することができる。
酸化防止剤は、ホットメルト材料10の老化を防止し、無味、無臭の安全、衛生性を高めることができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキノン誘導体の酸化防止剤などを挙げることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。酸化防止剤の含有量は、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が少な過ぎるとホットメルト材料10の製造時の加熱による劣化が激しく変色や異臭の問題が発生しやすくなる。酸化防止剤の含有量が3質量部を超えても、添加量の増加に伴う効果はほとんどなく、5質量部を超えるとブリードアウトし外観が悪くなる可能性がある。
粘着性付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、これらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステルなどのロジン系樹脂;α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンなどを主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などテルペン系樹脂;(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5−C9共重合系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂などの水素添加されていてもよい石油樹脂;ポリα−メチルスチレン、α−メチルスチレン−スチレン共重合体、スチレン系モノマー−脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー−α−メチルスチレン−脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー−芳香族系モノマー(スチレン系モノマーを除く。)共重合体などのスチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン樹脂;クマロン−インデン系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、熱可塑性エラストマー組成物の着色抑制の観点から、水添テルペン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂が好ましい。粘着性付与樹脂を添加する場合は、粘着力が強過ぎてマスクを顔から外す際に痛みを感じるようになることを防止する点等から、その含有量は160質量部以下が好ましく、110質量部以下がより好ましい。
無機充填剤は、ホットメルト材料10の塗布時にノズルからの糸引きを抑制し、さらに消臭効果等を改良することができる。無機充填剤としては、ゼオライト、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、カーボン繊維などが挙げられる。無機充填剤を添加する場合は、粘度が高過ぎてホットメルト材料10の塗布に支障が生じることを防止する点等から、その含有量は、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
非晶性ポリアルファオレフィンは、ホットメルト材料10とマスク基材である不織布との接着性を向上する。非晶性ポリアルファオレフィンを添加する場合は、相溶性が悪くなることを防止する点等から、その含有量は、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。
ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油由来の天然ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ホットメルト材料10のA硬度は、50未満であり、48以下が好ましく、30以下がより好ましい。A硬度の下限は、特に限定されないが、1以上が好ましい。ここでA硬度は、JIS K6301−1975の記載に従って測定することができる。A硬度は、非測定物の表面に圧子を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定し、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)を用いたものである。A硬度が50未満であると顔面との装着密封性が高く、眼鏡が曇りにくく、顔面との密着性が良好でマスク自体が上下にずれにくいとともに、粘着性が強過ぎずマスクを取り外す際に痛み等の違和感を感じにくく離型紙も省略可能で、特に折り曲げ加工性の良いマスクを安価に得ることができる。マスク1を顔面に密着させる際に、ノーズフィッター部を鼻22に沿うように折り曲げるが、その際にホットメルト材料10が硬すぎると折り曲げ難く、A硬度が50未満であるとホットメルト材料10も容易に折り曲げることができる。A硬度を50未満とし適度な柔らかさを持つことで、柔らかさによって顔面形状に沿って変形しやすく顔面へのフィット性が向上し、粘着性の指標ともなるせん断ずり強度を小さくしても顔面とフィットし密着性が良いため、粘着性付与剤等による粘着性で肌の違和感、特に痛さを感じることなく顔面とフィットし密着性が良くなるとともに、ホットメルト材料10の折り曲げ加工性も良好となる。その結果として、マスク1を複数枚重ねて包装する際に、ホットメルト材料10に起因する粘着を防止するために離型紙を必要とすることがない。
ホットメルト材料10は、ポリプロピレン(PP)シートを圧着して測定したせん断ずり強度が450g/5mm以下であることが好ましく、より好ましくは10g/5mm以上300g/5mm以下、さらに好ましくは100g/5mm未満である。粘着力(密着力)がこのような範囲であると、マスク1の取り外しの際に、肌の痛さを感じることなく、マスク1を装着した際の顔面とのフィット性を良好なものとすることができる。せん断ずり強度は、後述の実施例で示したように、ホットメルト材料10を5mm幅で150mm長さにコーティングし、室温に1日経過後、その上にポリプロピレンシートを圧着し、長さ方向のせん断ずり強度を測定する。ポリプロピレンシートは、表面が平坦なシートであれば特に限定されず、その中でも硬質シートが使用でき、例えば、積水マテリアルソリューションズ(株)製、商品名:ポリセームP8134ナチュラル等が市販品として使用できる。ホットメルト材料10の厚さは、例えば1〜3mmである。
本発明では、低いA硬度とすることで、ノーズ部折り曲げ性を向上し、上記のようなせん断ずり強度であっても密着性が良く、取り外し易さ(肌の痛さ低減)を向上しつつ密着性を良好なものとすることができる。また、塗布、冷却後にマスク同士を重ねても剥がれない程に接着することはなく、ホットメルト材料同士もくっつきにくくなり離型紙を貼る必要もなくなる。
ホットメルト材料10の溶融粘度は、ブルックフィールド粘度計で測定した値で、190℃で180000mPa・s以下であり、150000mPa・s以下が好ましい。溶融粘度が180000mPa・s未満であると、ホットメルト材料10をマスク1の内面6にホットメルトガンで塗布する際に、塗布の最後の工程で、ホットメルトガンよりホットメルト材料10を吐出させるスイッチをオフにした後、ホットメルトガンの吐出ノズル先端でのキレが良く、吐出ノズル先端からの糸引きの発生を抑制しやすい。これにより作業性が向上し、かつ糸引き部分が残存することによる製品外観の低下を抑制できる。ホットメルト材料10の溶融温度や吐出ノズルの温度が高くなると、マスク1の基材が溶融しやすくなるため、マスク1の材質によって溶融温度を選定する必要があるが、例えばポリプロピレン(PP)製のマスク1の場合には、ホットメルト材料10の吐出温度を190℃以下として塗布することが好ましい。
ホットメルト材料10は、マスク1の通常の製造工程において乾燥オーブンを用いずとも弾性体を形成できることから、製造工程を大幅に変更することなく、かつホットメルト材料10の塗布工程をマスク1の通常の製造工程へ簡易に組み込むことができる。
マスク1の内面6に設けられたホットメルト材料10は、発泡していると、より顔面21との接触部が顔面21の形状に沿って変形しやすくなりフィット性が向上する。顔面21とのフィット性と、復元性の点から、ホットメルト材料10の発泡倍率は4倍以下が好ましく、1〜4倍がより好ましく、2〜4倍がさらに好ましい。ホットメルト材料10を発泡させることで、塗布体積も大きく出来て、より顔面との接触部が形状に沿って変形しやすくなりフィット性が向上するが、発泡倍率が高くなりすぎると、ホットメルトガンから吐出した際に破泡しやくなり、塗布が断続的になる等の不良が出易くなる。またホットメルト表面の凹凸が顕著になり、また復元性が低くなる。
ホットメルト材料10を発泡させるためには、添加剤として発泡剤を使用するか、あるいは、ホットメルト材料10を加熱溶融し、これをタンク内で加圧しながら空気や二酸化炭素、窒素等の不活性ガスを混入させ、この加圧状態のホットメルト−ガス混合溶融体をホットメルトガン等により大気圧下で塗布してもよいが、材料が溶融中の熱劣化等を考慮すると不活性ガスとして窒素ガスを混入するのが好ましい。
本実施形態のマスク1は、このようなホットメルト材料10を設けているので、マスク1を顔面21に装着した際に、ホットメルト材料10が顔面21に接触してマスク1と顔面21との隙間を埋めることができる。
本実施形態のマスク1は、ホットメルト材料10が、マスク1の内面6における周縁4近傍において不織布に接着されている。
より具体的には、ホットメルト材料10は、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に線状に設けられている。
周縁4のうち上端4a近傍に線状に設けられたホットメルト材料10は、鼻22の両サイドにフィットする2つの上端側厚肉部11,11とその間の括れ部12が設けられ、上端側厚肉部11,11の括れ部12とは反対側に、上端側薄肉部14,14がそれぞれ側端4c,4dに向かって線状に設けられている。
これらの上端側厚肉部11,11、括れ部12、上端側薄肉部14,14は、マスク1の上端4a近傍と平行に全体として直線状を成している。
上端側厚肉部11,11は、マスク本体2の内面6の上端4a近傍における中央部付近に設けられ、厚みのある膨らんだ形状で、プリーツ部7の外側に2つの上端側厚肉部11,11が対称となるように設けられている。2つの上端側厚肉部11,11は、厚みのある膨らんだ形状によって、耳掛け紐3,3によって顔面21にマスク本体2が引き寄せられると、図3に示すように鼻22の両サイドを挟持する。これにより、ホットメルト材料10は、鼻柱および頬付近にフィットし密着する。上端側厚肉部11,11は、マスク1を顔面21に装着した際に、鼻22の両サイドで生じるマスク本体2と顔面21との隙間を、厚みのある膨らんだ形状によって埋めることができる。従って、顔面21との装着密封性が高く、鼻22の両サイドから呼気が漏れて眼鏡が曇ることを防止できる。
括れ部12と上端側薄肉部14,14も、マスク1の上部側において顔面21に接触してフィットし、上端側厚肉部11,11に比べて厚みの小さい線状とすることで、マスク本体2と顔面21との隙間を埋めることができる。
このように本実施形態のマスク1は、顔20に装着した際に、マスク1と顔面21との間に生じる隙間の大小に応じて、ホットメルト材料10の厚さが変化している。すなわち、この隙間の大小に応じて、コーティング材としてホットメルト材料10を塗布する際の厚み(塗布量)を部分的に変えることができる。これにより、顔面21との装着密封性を高めることができる。
次に、本実施形態のマスク1の製造方法について説明する。
コーティング材としてのホットメルト材料10の塗布には、一般的なホットメルトガンが使用できる。例えば、3軸可動ロボットにより塗工用のホットメルトガンをX軸、Y軸、Z軸でマスク1上の任意の位置に動かし、あるいは位置によって任意にホットメルトガンの移動スピードを変更することによって、マスク本体2の内面6に対する位置ごとに塗布量を変えることができる。これにより、上端側厚肉部11,11、括れ部12、上端側薄肉部14,14の各位置に応じて厚みや形状を変えて立体的に塗布することができる。
図4は、本実施形態のマスク1を製造する工程の一例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、一般的なプリーツ型の使い捨てマスクの製造工程に準じたものである。マスク本体2に使用される複数枚の不織布は、ロールから長尺シート状の不織布がそれぞれ連続的に巻き出されて、これらを積層し貼り合せる(S1)。次に、鼻22にフィットするポリエチレン等の樹脂片もしくは金属片(ノーズフィッター)を積層された不織布に合流させ、不織布の返しがつけられて、樹脂片もしくは金属片はマスク1の鼻22に接触する上端4a側に折り込まれる(S2)。
次に、プリーツ機を使用して横方向にプリーツを形成する(S3)。プリーツ機に搬送された不織布は、プリーツを形成する溝がプリーツ機の金具で折り込まれ、さらにプレスされて強く折り込まれる。
次に、マスク本体2の上端4a、下端4bのエッジ被覆(S4)、カット切り離し(S5)、マスク本体2の両側端4c、4dのエッジ被覆(S6)、カット切り離し(S7)、エッジ処理(S8)の各工程を経る。これらの工程では、複数枚の不織布シートが重ね合わされた積層体からなるマスク本体2の周囲を固着して補強し、マスク本体2の形状に不織布の積層体を切断する。
その後、マスク本体2に、耳掛け紐3,3を切断しながらあてがい溶着する(S10)。マスク本体2の内面6へのホットメルト材料10の塗布は(S9)、例えば、この耳掛け紐3,3を取り付ける工程S10の直前または直後に行うことができる。ホットメルト材料10の塗布は、マスク本体2の内面6にコーティング材としてのホットメルト材料10をホットメルトガンにより塗布することによって行う。
ホットメルト材料10の塗布工程S9は、耳掛け紐3,3を溶着して一旦通常のマスクを製造後に、内面6に塗布することもできるが(R2)、耳掛け紐3,3を溶着する直前の工程で塗布することが(R1)、マスク1の製造ラインでの塗工がし易くなり、塗工装置の組み込みも容易である等の点から望ましい。
その後、製造されたマスク1の汚れ、歪み、耳掛け紐溶着不良などの検品(S11)、箱詰め(S12)を経て、製品として出荷される。
以上に説明した本実施形態のマスク1によれば、ホットメルト材料10のA硬度を50未満とすることで、顔面との装着密封性が高く、眼鏡が曇りにくく、顔面との密着性が良好でマスク自体が上下にずれにくいとともに、粘着性が強過ぎずマスクを取り外す際に痛み等の違和感を感じにくく離型紙も省略可能で、特に折り曲げ加工性の良いマスクを安価に得ることができる。ホットメルト材料10として熱可塑性エラストマーを使用するとこれらの効果発現に適している。
また本実施形態のマスク1によれば、マスク1の内面6の周縁4近傍において不織布に接着され、マスク1を顔面21に装着した際に顔面21と接触するホットメルト材料10が設けられている。ホットメルト材料10は、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に線状に設けられている。特に、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に、鼻22の両サイドに接触する範囲において連続して設けられている。従って、顔面21との装着密封性が高く、鼻22の両サイドに近い所から漏れ出た吐息で、特に冬場のメガネが曇ることがなく、メガネの曇りによる煩わしさが解消される。さらに、顔面21との密着性が良好でマスク1自体が上下にずれにくい。
また、マスク1が不織布であるので、エッジ面が硬いため顔面21に接触する部分で擦ると、肌に敏感な人ではかぶれたり痛くなる場合があるが、内面6に塗布したホットメルト材料10の面が直接に肌へ触れるので、不織布の表面やエッジ等で肌の表面を擦ったりしにくい。
さらに、一般に使用されているマスクにホットメルト材料10を塗布するだけで製造できるので、従来技術のノーズクッションのように発泡させたシートを打抜いて後工程で接着剤により貼り付ける場合に比べて余分な工程が少なく、安価に製造できる。
(第2実施形態)
図5(a)〜(d)は、本発明のマスクの製造方法の一実施形態を説明する図である。
本実施形態では、ホットメルト材料10をマスク1の内面6にホットメルトガン30で塗布する際に、塗布の最後の工程で、ホットメルトガン30のホットメルト材料10を吐出させるスイッチをオフにした後、ホットメルトガン30の吐出ノズル先端30aを、ホットメルト材料10の塗布終端の近傍のマスク1の内面6に接触させる。
図5(a)のマスクの辺側から見た正面図に示すように、加熱溶融したホットメルト材料10をマスク本体2の内面6に塗布し、ホットメルトガン30での塗布の最後の工程で、位置Aにおいてホットメルトガン30のホットメルト材料10を吐出させるスイッチをオフにする。このとき、図5(b)に示すように、加熱溶融したホットメルト材料10の粘度によっては、吐出ノズル先端30aにホットメルト材料10の糸引き10aが発生する場合がある。この糸引き10aは、ホットメルトガン30を移動させると周囲に不規則に付着し、外観を損ねたりする。
そこで本実施形態では、図5(c)の上面図(ホットメルトガン30は図示省略している。)および図5(d)のマスクの辺側から見た正面図に示すように、ホットメルトガン30での塗布の最後の工程で、ホットメルトガン30のホットメルト材料10を吐出させるスイッチをオフにした後、ホットメルト材料10の塗布終端(図5(a)〜(d)では、スイッチをオフにした位置Aで示している。)の近傍の位置Bにあるマスク本体2の内面6の不織布に、吐出ノズル先端30aを瞬間的に接触させる。ここで、ホットメルト材料10の塗布終端の近傍とは、例えば、塗布終端(位置A)から位置Bまでの距離が7mm以内の範囲である。ホットメルトガン30はマスク本体2に下方へ吐出して塗布するのに限らず、上向きとしてマスク本体2に上方へ吐出して塗布するようにしてもよい。
以上に説明した本実施形態のマスクの製造方法によれば、吐出ノズル先端30aに糸引き10aが発生しても、ホットメルト材料10の塗布終端の近傍の位置Bにある、マスク本体2の内面6の不織布の特定箇所に接触することで糸引き10aを付着させることができ、マスク1の外観を良好なものとすることができる。さらに、吐出ノズル先端30aをマスク本体2の内面6の不織布に接触させることで、吐出ノズル先端30aより糸引き10aが除去されるため、吐出ノズル先端30aを常に綺麗にすることができ、ノズル先端へのビルドアップ(ホットメルトの堆積)を防ぐことができる。
(第3実施形態)
図6〜図8は、本発明のマスクの別の実施形態を示したものである。なお、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態のマスク1は、図6に示すように、周縁4のうち上端4a近傍には、鼻22の両サイドにフィットする2つの上端側厚肉部11,11とその間の括れ部12が設けられ、上端側厚肉部11,11の括れ部12とは反対側に、上端側薄肉部14,14がそれぞれ側端4c,4dに向かって線状に設けられている。
これらの上端側厚肉部11,11、括れ部12、上端側薄肉部14,14は、括れ部12を中心として、その両側から上端側厚肉部11と上端側薄肉部14がやや傾斜した上面視で山型の形状を成している。
周縁4のうち側端4c,4d近傍には、顔面21の頬側両サイドにフィットする側端側厚肉部13,13が、上端側薄肉部14,14の外端から連続して側端4c,4dと平行に直線状に設けられている。
周縁4のうち下端4b近傍には、顔面21の顎側にフィットする下端側薄肉部15が、側端側厚肉部13,13の下端から連続して、やや下側に傾斜するように線状に設けられている。
上端側厚肉部11,11は、マスク本体2の内面6の上端4a近傍における中央部付近に設けられ、側端4c,4d側へやや傾斜するように厚みのある膨らんだ形状で、プリーツ部7の外側に2つの上端側厚肉部11,11が対称となるように設けられている。2つの上端側厚肉部11,11は、厚みのある膨らんだ形状によって、耳掛け紐3,3によって顔面21にマスク本体2が引き寄せられると、図8に示すように鼻22の両サイドを挟持する。これにより、ホットメルト材料10は、鼻柱および頬付近にフィットし密着する。上端側厚肉部11,11は、マスク1を顔面21に装着した際に、鼻22の両サイドで生じるマスク本体2と顔面21との隙間を、厚みのある膨らんだ形状によって埋めることができる。従って、顔面21との装着密封性が高く、鼻22の両サイドから呼気が漏れて眼鏡が曇ることを防止できる。また、マスク1の上側からの風邪等のウイルスや花粉、塵、埃等の吸引を抑制でき、風邪にかかった人等がウイルスを飛散しにくい。
括れ部12と上端側薄肉部14,14も、マスク1の上部側において顔面21に接触してフィットし、上端側厚肉部11,11に比べて厚みの小さい線状とすることで、マスク本体2と顔面21との隙間を塞ぐことができる。
側端側厚肉部13,13は、その厚みのある形状によって、図8に示すように、マスク1を顔面21に装着した際に、顔面21の頬側両サイドにフィットし、マスク本体2と顔面21との隙間を埋めることができる。従って、顔面21との装着密封性が高く、マスク1の上側のみならず横側からの風邪等のウイルスや花粉、塵、埃等の吸引も抑制できる。
下端側薄肉部15も、マスク1の下部側において顔面21の顎側に接触してフィットし、上端側厚肉部11,11や側端側厚肉部13,13に比べて厚みの小さい線状とすることで、マスク本体2と顔面21との隙間を埋めることができる。
このように本実施形態のマスク1は、顔20に装着した際に、マスク1と顔面21との間に生じる隙間の大小に応じて、ホットメルト材料10の厚さが変化している。すなわち、この隙間の大小に応じて、コーティング材としてホットメルト材料10を塗布する際の厚み(塗布量)を部分的に変えることができる。これにより、顔面21との装着密封性を高めることができる。
本実施形態のマスク1は、プリーツ型のマスク1であり、側端4c,4d近傍に線状に設けられたホットメルト材料10(側端側厚肉部13,13)は、プリーツ折り目部7a〜7dを横断しないように設けられている。
ここで「横断しないように」とは、プリーツ折り目部7a〜7dは、マスク本体2を折り返すことによって形成されており、マスク本体2を上下方向に広げてプリーツ部7を展開すると、マスク本体2が外側に向かって膨らむ山型の立体形状となるように構成されているが、マスク本体2が外側に向かって膨らむことを阻害しない範囲で、プリーツ折り目部7a〜7dを横断しないように設けられていることを意味する。従って、マスク本体2が外側に向かって膨らむことを阻害しない範囲であれば、プリーツ折り目部7a〜7dの側端4c,4d側にホットメルト材料10が重なることは許容される。
すなわち、コーティング材としてホットメルト材料10を塗布する際に、隣接するプリーツ折り目部7a〜7dを横断するような塗布を避ける塗布パターンでコーティングしている。これにより、プリーツ部7を広げる際に、プリーツ部7の拡がりの妨げにならないようにすることができる。
本実施形態のマスク1は、上記第1実施形態と同様に、ホットメルトガンを用いてホットメルト材料10を塗布することができる。例えば、3軸可動ロボットにより塗工用のホットメルトガンをX軸、Y軸、Z軸でマスク1上の任意の位置に動かし、あるいは位置によって任意にホットメルトガンの移動スピードを変更することによって、マスク本体2の内面6に対する位置ごとに塗布量を変えることができる。これにより、上端側厚肉部11,11、括れ部12、側端側厚肉部13,13、上端側薄肉部14,14、下端側薄肉部15の各位置に応じて厚みや形状を変えて立体的に塗布することができる。
以上に説明した本実施形態のマスク1によれば、ホットメルト材料10のA硬度を50未満とすることで、顔面との装着密封性が高く、眼鏡が曇りにくく、顔面との密着性が良好でマスク自体が上下にずれにくいとともに、粘着性が強過ぎずマスクを取り外す際に痛み等の違和感を感じにくく離型紙も省略可能で、特に折り曲げ加工性の良いマスクを安価に得ることができる。ホットメルト材料10として熱可塑性エラストマーを使用するとこれらの効果発現に適している。
また本実施形態のマスク1によれば、マスク1の内面6の周縁4近傍において不織布に接着され、マスク1を顔面21に装着した際に顔面21と接触するホットメルト材料10が設けられている。特に、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に、鼻22の両サイドに接触する範囲において連続して設けられている。さらにホットメルト材料10は、少なくとも、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍および側端4c,4d近傍に線状に設けられている。従って、顔面21との装着部の隙間をできる限り小さくできる。そのため、隙間から風邪ウイルスや花粉、塵、埃等を吸い込む危険性や、風邪にかかった人等がウイルスを飛散する危険性を著しく低減できる。さらに、顔面21との装着密封性が高く、鼻22の両サイドに近い所から漏れ出た吐息で、特に冬場のメガネが曇ることがなく、メガネの曇りによる煩わしさが解消される。さらに、顔面21との密着性が良好でマスク1自体が上下にずれにくい。
また、マスク1が不織布であるので、エッジ面が硬いため顔面21に接触する部分で擦ると、肌に敏感な人ではかぶれたり痛くなる場合があるが、内面6に塗布したホットメルト材料10の面が直接に肌へ触れるので、不織布の表面やエッジ等で肌の表面を擦ったりしにくい。
さらに、一般に使用されているマスクにホットメルト材料10を塗布するだけで製造できるので、従来技術のノーズクッションのように発泡させたシートを打抜いて後工程で接着剤により貼り付ける場合に比べて余分な工程が少なく、安価に製造できる。全周に塗布した場合には、密封性が高まる為に、密封性が求められる用途での使用にも好適である。(第4実施形態)
図9は、本発明のマスクの別の実施形態を示したものである。なお、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態のマスク1は、ホットメルト材料10が、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に線状に設けられている。
周縁4のうち上端4a近傍には、鼻22の両サイドにフィットする2つの上端側厚肉部11,11とその間の括れ部12が設けられ、上端側厚肉部11,11の括れ部12とは反対側に、上端側薄肉部14,14がそれぞれ側端4c,4dに向かって線状に設けられている。
これらの上端側厚肉部11,11、括れ部12、上端側薄肉部14,14は、括れ部12を中心として、その両側から上端側厚肉部11と上端側薄肉部14がやや傾斜した上面視で山型の形状を成している。
上端側厚肉部11,11は、マスク本体2の内面6の上端4a近傍における中央部付近に設けられ、側端4c,4d側へやや傾斜するように厚みのある膨らんだ形状で、プリーツ部7の外側に2つの上端側厚肉部11,11が対称となるように設けられている。2つの上端側厚肉部11,11は、厚みのある膨らんだ形状によって、耳掛け紐3,3によって顔面21にマスク本体2が引き寄せられると、ホットメルト材料10は、上記第1実施形態と同様に鼻22の両サイドを挟持する。これにより、ホットメルト材料10は、鼻柱および頬付近にフィットし密着する。上端側厚肉部11,11は、マスク1を顔面21に装着した際に、鼻22の両サイドで生じるマスク本体2と顔面21との隙間を、厚みのある膨らんだ形状によって埋めることができる。
以上に説明した本実施形態のマスク1によれば、ホットメルト材料10のA硬度を50未満とすることで、顔面との装着密封性が高く、眼鏡が曇りにくく、顔面との密着性が良好でマスク自体が上下にずれにくいとともに、粘着性が強過ぎずマスクを取り外す際に痛み等の違和感を感じにくく離型紙も省略可能で、特に折り曲げ加工性の良いマスクを安価に得ることができる。ホットメルト材料10として熱可塑性エラストマーを使用するとこれらの効果発現に適している。
また本実施形態のマスク1によれば、マスク1の内面6の周縁4近傍において不織布に接着され、マスク1を顔面21に装着した際に顔面21と接触するホットメルト材料10が設けられている。ホットメルト材料10は、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に線状に設けられている。特に、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に、鼻22の両サイドに接触する範囲において連続して設けられている。従って、顔面21との装着密封性が高く、鼻22の両サイドに近い所から漏れ出た吐息で、特に冬場のメガネが曇ることがなく、メガネの曇りによる煩わしさが解消される。さらに、顔面21との密着性が良好でマスク1自体が上下にずれにくい。
また、マスク1が不織布であるので、エッジ面が硬いため顔面21に接触する部分で擦ると、肌に敏感な人ではかぶれたり痛くなる場合があるが、内面6に塗布したホットメルト材料10の面が直接に肌へ触れるので、不織布の表面やエッジ等で肌の表面を擦ったりしにくい。
さらに、一般に使用されているマスクにホットメルト材料10を塗布するだけで製造できるので、従来技術のノーズクッションのように発泡させたシートを打抜いて後工程で接着剤により貼り付ける場合に比べて余分な工程が少なく、安価に製造できる。
(第5実施形態)
図10は、本発明のマスクの別の実施形態を示したものである。なお、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態のマスク1は、ホットメルト材料10が、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に線状に設けられている。
ホットメルト材料10は、マスク1の上端4a近傍と平行に全体として均一幅かつ均一厚みの直線状を成している。ホットメルト材料10は、内面6の側端4c付近から側端4d付近に至るまで、つまり固着部5c近傍から固着部5d近傍に至るまで、上端4aに沿う概ね全範囲に設けられている。
耳掛け紐3,3によって顔面21にマスク本体2が引き寄せられると、ホットメルト材料10は、上記第1実施形態と同様に鼻22の両サイドを挟持する。これにより、ホットメルト材料10は、鼻柱および頬付近にフィットし密着する。例えば、ホットメルト材料10表面に弱い粘着力があると、顔面21との接触部分で僅かな粘着力によってマスク1を密着できるため、顔面21とマスク本体2との隙間が小さくなり、マスク1と顔面21との間を埋めることができる。
上記第1、第3、第4実施形態のように、コーティング材としてホットメルト材料10を塗布する際の厚み(塗布量)を部分的に変えることで、顔20に装着した際に、マスク1と顔面21との間に生じる隙間の大小に応じて、ホットメルト材料10の厚さが変化していると、顔面21との装着密封性をより高めることができるが、本実施形態のように、ホットメルト材料10が均一幅かつ均一厚みの直線状を成していても、顔面21との装着密封性を確保でき、鼻22の両サイドから呼気が漏れて眼鏡が曇ることを防止できる。さらに、顔面21との密着性が良好でマスク1自体が上下にずれにくい。また、この場合には単純な直線形状なので上記第1、第3、第4実施形態と比較し生産スピードを上げることができる。
図11は、本実施形態の変形例である。このマスク1は、ホットメルト材料10が、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に線状に設けられている点は図10と同様であり、上端4aに沿う全範囲のうち、鼻22に接触する中央部を含む範囲にのみにホットメルト材料10が設けられている。このような変形例でも、鼻22に接触する中央部に設けられたホットメルト材料10によって、顔面21との装着密封性を確保でき、鼻22の両サイドから呼気が漏れて眼鏡が曇ることを防止できる。さらに、顔面21との密着性が良好でマスク1自体が上下にずれにくい。塗布量が少なく出来、より安価で、また生産スピードも上げることができる。
(第6実施形態)
図12は、本発明のマスクの別の実施形態を示したものである。なお、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態のマスク1は、2本のホットメルト材料10が、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に、線状かつ互いに平行に設けられている。
2本のホットメルト材料10は、マスク1の上端4a近傍と平行に全体として均一幅かつ均一厚みの直線状を成している。
耳掛け紐3,3によって顔面21にマスク本体2が引き寄せられると、2本のホットメルト材料10は、上記第1実施形態と同様に鼻22の両サイドを挟持する。これにより、2本のホットメルト材料10は、鼻柱および頬付近にフィットし密着する。例えば、2本のホットメルト材料10表面に弱い粘着力があると、顔面21との接触部分で僅かな粘着力によってマスク1を密着できるため、顔面21とマスク本体2との隙間が小さくなり、マスク1と顔面21との間を埋めることができる。
上記第1、第3、第4実施形態のように、コーティング材としてホットメルト材料10を塗布する際の厚み(塗布量)を部分的に変えることで、顔20に装着した際に、マスク1と顔面21との間に生じる隙間の大小に応じて、ホットメルト材料10の厚さが変化していると、顔面21との装着密封性をより高めることができるが、本実施形態のように、ホットメルト材料10が均一幅かつ均一厚みの直線状を成していても、顔面21との装着密封性を確保でき、鼻22の両サイドから呼気が漏れて眼鏡が曇ることを防止できる。さらに、顔面21との密着性が良好でマスク1自体が上下にずれにくい。また、この場合には単純な直線形状なので、ホットメルトガンで同時に2本塗工することで、上記第1、第3、第4実施形態と比較し生産スピードを上げることができることは第5実施形態と同様である。
(第7実施形態)
図13は、本発明のマスクの別の実施形態を示したものである。なお、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態のマスク1は、使い捨てのいわゆる「立体型」と称されるものであり、中央部から左右にマスク本体2a,2bを有し、マスク本体2a,2bは中央部を折り目として折り畳み可能とされている。折り畳んだ状態の左右のマスク本体2a,2bを図13に示すように広げると、嘴状の立体形状となる。
マスク1は、左右のマスク本体2a,2bからなるマスク本体2と、このマスク本体2の両側端4c,4d付近に取り付けられた耳掛け部30,30とを備えている。
マスク本体2の内面6には、上端4a、下端4b、側端4c,4dの近傍に沿って線状に、ホットメルト材料10が設けられている。
本実施形態のマスク1によれば、ホットメルト材料10のA硬度を50未満とすることで、顔面との装着密封性が高く、眼鏡が曇りにくく、顔面との密着性が良好でマスク自体が上下にずれにくいとともに、粘着性が強過ぎずマスクを取り外す際に痛み等の違和感を感じにくく離型紙も省略可能で、特に折り曲げ加工性の良いマスクを安価に得ることができる。ホットメルト材料10として熱可塑性エラストマーを使用するとこれらの効果発現に適している。
また、鼻22の両サイドに連続してフィットするように左右のマスク本体2a,2bにわたって一本の線状にホットメルト材料10を設けても、ホットメルト材料10のA硬度を50未満とすることで、折り曲げ時の抵抗が少なく、折り畳みの加工性が良好である。立体型のマスク1は、マスク1のマスク本体2a,2bを中央部で折り畳んだ状態で包装し販売されるのが通常であるが、A硬度が50未満であるとホットメルト材料10も容易に折り曲げることができる。またA硬度を50未満とし適度な柔らかさを持つことで、柔らかさによって顔面形状に沿って変形しやすく顔面へのフィット性が向上し、粘着性の指標ともなるせん断ずり強度を小さくしても顔面とフィットし密着性が良いため、粘着性付与剤等による粘着性で肌の違和感、特に痛さを感じることなく顔面とフィットし密着性が向上する。その結果として、マスク1を複数枚重ねて包装する際に、ホットメルト材料10に起因する粘着を防止するために離型紙を必要とすることがない。つまり、立体マスクを折り畳んでもホットメルト材料10同士の粘着によりくっつくことがなく、ホットメルト材料を塗布し冷却後はそのまま折り畳んだり重ねたりすることができ、離型紙を貼る工程がなく製造工程を簡略化できる。
また本実施形態のマスク1によれば、マスク1の内面6の周縁4近傍において不織布に接着され、マスク1を顔面21に装着した際に顔面21と接触するホットメルト材料10が設けられている。特に、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍に、鼻22の両サイドに接触する範囲において連続して設けられている。さらにホットメルト材料10は、少なくとも、マスク1の内面6の周縁4近傍のうち上端4a近傍、下端4b近傍、および側端4c,4d近傍に全周にわたり線状に設けられている。従って、顔面21との装着部の隙間をできる限り小さくできる。そのため、隙間から風邪ウイルスや花粉、塵、埃等を吸い込む危険性や、風邪にかかった人等がウイルスを飛散する危険性を著しく低減できる。さらに、顔面21との装着密封性が高く、鼻22の両サイドに近い所から漏れ出た吐息で、特に冬場のメガネが曇ることがなく、メガネの曇りによる煩わしさが解消される。さらに、顔面21との密着性が良好でマスク1自体が上下にずれにくい。
さらに、一般に使用されている立体型マスクにホットメルト材料10を塗布するだけで製造できるので、従来技術のノーズクッションのように発泡させたシートを打抜いて後工程で接着剤により貼り付ける場合に比べて余分な工程が少なく、安価に製造できる。
以上に、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、プリーツ型と立体型の使い捨てマスク1を一例として示したが、その他のマスクにも本発明を適用することができる。
また、マスク本体2の内面6の各部におけるホットメルト材料10の形状、厚みについては、マスク1と顔面21との隙間の密封性などを考慮して適宜のものとすることができ、例えば、密封度が弱い部分については任意に厚盛りできる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
ホットメルト材料として、(株)大響から市販されている合成ゴム系ホットメルト接着剤『アイメルトPA-14B(170℃での溶融粘度1600mPa・s)』を170℃で溶融し、ホットメルトガンにて市販されているプリーツ型マスクの内面に塗布し、図6に示すようなマスクを製造した。
このマスクの耳掛け紐を耳に掛けて顔面に装着したところ、ホットメルト材料が顔面にフィットし、顔面とマスク本体との隙間が小さく、マスクと顔面との間を外気より遮断することができた。また、鼻の両サイドに近いところから吐息が漏出して眼鏡が曇ることもなかった。後述の方法で測定したせん断ずり強度は100g/5mm未満であり特にマスクを外す際の痛さは感じなかった。
<実施例2>
ホットメルト材料として、(株)大響から市販されている合成ゴム系ホットメルト接着剤『アイメルトPA-41(170℃での溶融粘度1700mPa・s)』を170℃で溶融し、ホットメルトガンにて市販されているプリーツ型マスクの内面に塗布し、図6に示すようなマスクを製造した。
このマスクの耳掛け紐を耳に掛けて顔面に装着したところ、ホットメルト材料が顔面にフィットし、このホットメルト材料では表面に弱い粘着力があり、顔面との接触部分で僅かな粘着力によってマスクを密着できたため、顔面とマスク本体との隙間が小さく、マスクと顔面との間を外気より遮断することができた。また、鼻の両サイドに近いところから吐息が漏出して眼鏡が曇ることもなかったが、粘着力の指標となる下記のせん断ずり強度が510g/5mmであったため、マスクを取り外す際には少し肌を引っ張る感があった。
<実施例3〜27、比較例1〜3、参考例1>
表1および表2に示すホットメルト材料を用いてマスクを製造し、次の評価を行った。
ホットメルト材料の原料は次のものを用いた。
熱可塑性エラストマーA:SEBS、スチレン含有量30%、MFR(g/10分)(230℃/5kg):5、比重0.91、10%トルエン溶液粘度(mPa・s,25℃):30
熱可塑性エラストマーB:SEBS、スチレン含有量31%、MFR(g/10分)(230℃/2.16kg):<0.1、比重0.91、10%トルエン溶液粘度(mPa・s,30℃):40
熱可塑性エラストマーC:SEPS、スチレン含有量30%、MFR(g/10分)(230℃/2.16kg):70、比重0.91、15%トルエン溶液粘度(mPa・s,30℃):25
熱可塑性エラストマーD:SEPS、スチレン含有量65%、MFR(g/10分)(230℃/2.16kg):0.4、比重0.98、15%トルエン溶液粘度(mPa・s,30℃):23
軟化剤:石油系炭化水素、無臭無色透明液体、引火点250℃、密度0.868g/cm 3(15℃)、流動点−12.5℃、水に不溶(20℃)、動粘度40℃mm2/s(cSt):67.65、平均分子量483
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス「3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート」
ワックス:低分子量ポリプロピレン系樹脂:軟化点152℃、比重0.89(20℃)、粘度:200mPa・s(160℃)
シリコンオイル:ポリジメチルシロキサン、密度0.97g/cm3/25℃、粘度350mPa・s/25℃(試験法:DIN 53019)
粘着性付与樹脂A:脂環族飽和炭化水素樹脂 軟化点(環球法)90℃
粘着性付与樹脂B:脂環族飽和炭化水素樹脂 軟化点(環球法)125℃
非晶性ポリアルファオレフィン:粘度:3000mPa・s(190℃)、軟化点(環球法)90℃
無機充填剤A:簸性硫酸バリウム、平均粒径(D50%:μm):10
無機充填剤B:ゼオライト、陽イオンタイプ、BET比表面積(m3/g):390、平均粒径(D50%:μm):4.0
[ホットメルト材料のA硬度、折り曲げ加工性、顔面とのフィット性(密着性)]
ホットメルト材料として、表1に示す配合の材料を用いて、実施例1と同様の製造方法で、170℃で溶融しホットメルトガンにて市販されているプリーツ型マスクの内面に塗布し、図6に示すようなマスクを製造した。
硬度別に、マスク塗布品を汎用されているノーズフィッター部の折り曲げと同様にホットメルト部を折り曲げて加工性を評価した。ノーズフィッター部と同様に問題なく加工できたものは◎、折り曲げ時に抵抗はあるが加工は容易なものは〇、硬くて折り曲げにくく加工が困難なものは△、硬過ぎて折り曲げが非常に困難なものは×として評価した。また顔面とのフィット性として、特に良好を◎、良好を○、顔面に接触した当初からフィット感に劣るか、あるいは一旦密着しても持続せず次第にフィット感が失われたものを△として評価した。その結果を表1に示す。
ホットメルト材料としては、マスクのノーズフィッターの折り曲げ加工がしやすく、かつ顔面にフィットしやすい硬度が望まれるが、A硬度が50以上になると折り曲げ時の抵抗があり、一旦、顔面に密着できたとしても塑性変形しにくいので、弾性反発によりもとに戻ろうとするため、復元力により肌との密着性が低下する。ホットメルト材料のA硬度としては、50未満であると折り曲げ加工性、顔面とのフィット性のいずれも満足でき、特に30以下であると肌への密着感が良好であった。
[マスクの取り外し易さ(肌の痛さ)]
ホットメルト材料として、表2に示す配合の材料を用いて、実施例1と同様の製造方法で、170℃で溶融しホットメルトガンにて市販されているプリーツ型マスクの内面に塗布し、図6に示すようなマスクを製造し粘着力(密着力)の違いによるマスクの取り外し易さを調べた。
なお、密着強度は通常、T剥離等の剥離強度として測定するのが一般的であるが、剥離強度として測定すると測定値が小さく測定しにくい為、せん断ずり強度として測定し密着強度とした。つまり、密着強度は、ホットメルト材料を5mm幅で150mm長さにコーティングし、室温に1日経過後、その上にポリプロピレン(PP)シート(積水マテリアルソリューションズ(株)製、商品名:ポリセームP8134ナチュラル、寸法950×1000×厚さ0.2mmより10mm巾の短冊状に切り出して使用)を圧着し、長さ方向のせん断ずり強度を測定し密着強度とした。
表2の実施例11〜27においては、マスクを装着した際に、表1での「顔面とのフィット性」の評価においていずれも◎もしくは〇であり、これを表2では「可」と表記した。またホットメルト材料のA硬度の測定結果も併せて表2に示した。
せん断ずり強度(密着強度)とマスクの取り外し易さ(肌の痛さ)の評価結果を表2に示す。
マスクの取り外し易さは、特に良好を◎、良好を○、肌を引張り痛さを感じる場合を△、肌を引張り非常に痛さを感じる場合を×として評価した。
顔面に装着したマスクの取り外し易さは表2の通り、450g/5mmよりも大きいと取り外しの際に肌を引張り肌が痛く感じてくるため、密着力としては、450g/5mm以下の密着強度が好ましい。肌を引張り痛く感じるかどうかは男性か女性によっても違い、人によっても感じ方が異なるので、肌を引張り痛く感じにくい点でより好ましいのは100g/5mm未満である。
[ブリード]
ホットメルト材料を紙面上に吐出し、室温雰囲気下で30日間放置し、成形品表面を目視で観察し、ブリードアウトの有無を確認した。ここで、ブリードアウトとは、ホットメルト材料中の配合物の一部が成形品の表面にしみ出てくる現象であり、下記の基準で評価を行った。
○:成形品表面の外観に変化はなく、オイル状の滲み出しがない。
△:成形品表面の外観に変化はないが、オイル状の滲み出しが若干感じられる。
×:成形品表面にオイル状のものがしみ出てきてベタベタする。
実施例11〜16について上記の評価結果を表2に示した。軟化剤が熱可塑性エラストマー100質量部に対して300質量部を超えるとホットメルト材料表面に軟化剤がブリードしやすくなる。
[ホットメルト材料の溶融粘度、ノズル先端でのキレやすさ]
ホットメルト材料として、表1および表2に示す配合の材料を用いて、実施例1と同様の製造方法で、190℃で溶融しホットメルトガンにて市販されているプリーツ型マスクの内面に塗布し、図6に示すようなマスクを製造した。
溶融粘度については190℃での速度20rpmの粘度をブルックフィールド粘度計で測定し、吐出ノズル先端でのホットメルト材料のキレやすさ(糸引きの発生しにくさ)との関係を評価した。ノズル先端でのホットメルト材料のキレが特に良好なものを◎、良好なものを○、若干糸引きが発生するものを△、糸引きが顕著に発生するものを×として評価した。その結果を表1および表2に示す。
また、実施例12のホットメルト材料を使用し、ホットメルト材料の吐出可能な溶融粘度の限界を調べる為に、樹脂温度を変更して溶融粘度別に吐出性を上記の基準で評価した。その結果を表3に示す。
表3より、溶融粘度が180000mPa・sを超えると吐出ノズル先端でのキレに低下が見られ、吐出ノズル先端から糸引きが発生しやすくなるため、溶融粘度としては180000mPa・s以下が良好であった。
ホットメルト材料10の溶融温度や吐出ノズルの温度が高くなると、マスク1の基材が溶融しやすくなるため、ホットメルト材料10の吐出温度を190℃以下として塗布することが好ましい。したがって、190℃での溶融粘度が180000mPa・s以下であれば、ホットメルト材料10の吐出温度を適宜調節すればノズル切れを良好なものとすることができる。
<実施例28>
190℃での溶融粘度が182000mPa・sのホットメルト材料を用いて、実施例1と同様の製造方法で、190℃で溶融しホットメルトガンにて市販されているプリーツ型マスクの内面に塗布し、図6に示すようなマスクを製造した。
通常の操作によりホットメルトガンで塗布したものと、ホットメルトガンでの塗布の最後の工程で、ホットメルトガンのホットメルト材料を吐出させるスイッチをオフにした後、ホットメルト材料の塗布終端の近傍(スイッチをオフにした位置の近傍)のマスク不織布に吐出ノズル先端を接触させたものを比較した。
その結果、通常の操作によりホットメルトガンで塗布したものは、ホットメルトガンよりホットメルト材料を吐出させるスイッチをオフにした後、吐出ノズル先端でのキレが悪いため細い糸引き現象が見られ、ホットメルトガンの移動に伴って周囲に不規則に付着し外観を損ねた。
一方、ホットメルトガンでの塗布の最後の工程で、ホットメルトガンよりホットメルト材料を吐出させるスイッチをオフにした後、ホットメルト材料の塗布終端の近傍のマスク不織布に吐出ノズル先端を接触させたものは、吐出ノズル先端に糸引きが発生しても、ホットメルト材料の塗布終端の近傍のマスク不織布の特定箇所に接触することで糸引き部分を付着させることができ、同時に吐出ノズル先端を綺麗にすることができた。
以上の各実施例においては、ホットメルト材料の塗布パターンは、図6の塗布パターンとしたが、本発明はこの塗布パターンに限定されることはなく、必ずしもマスク内面の周縁近傍の全周を覆う必要はなく、例えばメガネの曇り防止やマスクのズレ防止等のみを重視する場合には、図1や図9〜図12のようにノーズフィッター部を中心としてマスク内面の周縁近傍のうち上端近傍にのみ塗布してもよいことは言うまでもない。
<実施例29>
ホットメルト材料としては実施例12と同じものを使用し、160℃で溶融し、市販の窒素ガス混入溶融アプリケーターを用い、窒素ガスを混入し均一状態にしたものをプリーツ型マスクの内面にホットメルトガンにて塗布し、図11に示すようなマスクを製造した。発泡倍率を各々2倍、3倍、4倍、5倍として塗布し、4種類の倍率を変更したマスクを製造した。マスクを装着した際の顔面とのフィット性と、ホットメルト材料の復元性の結果を表4に示す。良好を○、それよりも若干低下したものを△として評価した。
ホットメルト材料を発泡させることで、より顔面との接触部が形状に沿って変形しやすくなりフィット性が向上するが、発泡倍率が高くなりすぎると、ホットメルト表面の凹凸が顕著になり、また復元性が低くなること、またホットメルトガンから吐出した際に破泡しやくなり、塗布が断続的になる等の不良が出易くなること等から、顔面とのフィット性と復元性、連続塗布性、外観性等の点から好ましい倍率は2〜4倍であった。
<実施例30>
次の方法でマスクに使用するホットメルト材料のパッチテストを行い、ホットメルト材料が皮膚に接触したときの安全性を確認した。
1.テスト方法
1)風呂上り後、良く水分を拭き取って乾かし、二の腕の内側(皮膚の軟らかい部分)にシーラント材(16mmφの円形)に成形したホットメルト材料の丸みをおびた凸側を肌面に所定のバンドエイドテープで固定する。
2)24時間経過するまでそのままにし、かゆみや赤みの反応がでるかどうかをチェックする。
被験者の構成は下記の通りである。
被験者 36名 男女比率:男性15名、女性21名
被験者の年齢構成
60才以上 4名
55才〜59才 3名
45才〜49才 6名
35才〜39才 4名
25才〜29才 4名
20才〜24才 3名
15才〜19才 4名
10才以下 2名
2.使用材料
1)実施例5
2)サイズ:16mmφ×2.7mm厚
3.テスト結果
被験者36名全員において、皮膚のかゆみや赤み等の異常は認められなかった。