JP6896491B2 - 呈味向上効果を有する難消化性グルカン - Google Patents

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Description

本発明は、呈味向上効果を有する難消化性グルカンに関する。
近年の消費者の嗜好やライフスタイルの多様化に伴い、飲食品の分野では多種多様な商品開発が求められている。飲食品の商品開発や実際の製造で重要な位置を占めるのが飲食品の味付けである。ヒトの味覚は、甘味、塩味、酸味、苦味およびうま味の5つの基本味とその周辺の感覚から構成されているが、一般的にはこれらの基本味を基準にして飲食品の味付けがなされる。
基本味のうち苦味は一般的には好ましくない味覚と考えられている。しかし、コーヒーや酒類などの嗜好的な飲食品については苦味は風味上欠かせない味覚である。このため、これまでに飲食品に添加可能な様々な苦味付与素材が開発されてきた。このような苦味を付与する素材としては、コーヒー豆から抽出して作られるカフェインや、柑橘類から抽出して作られるナリンギンおよびリモノイドが知られている。しかし、これらの苦味付与素材は、いずれも植物原料から有機溶剤を用いて抽出するため、コストが膨大に掛かり、また、抽出残渣は使用する有機溶媒を分離することができず、廃棄物として処分されていた(非特許文献1)。
苦味を付与する素材としてはまた、酵素法によって2個のグルコースをβ−1,6−結合させたゲンチオビオースに代表されるβ−グルコオリゴ糖が知られている(特許文献1)。しかし、この糖の製造には特異的な酵素が必要であり、製造コストの点で改善の余地を残していた(非特許文献2)。
特開平3−83557号公報
食品と科学社 天然物便覧 第14版 218〜222頁(1998) J.Appl.Glycosci.52巻 59〜64頁(2005)
本発明は、飲食品の呈味を向上させることができる新規な水溶性食物繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、新規な呈味向上剤を提供することを目的とする。
本発明者らは今般、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合して得られた特定性状の加熱縮合物からなる難消化性グルカンが苦味を有していることを見出した。本発明者らはまた、この難消化性グルカンを飲食品に添加することで顕著な呈味向上効果が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]DE70〜100の澱粉分解物の加熱縮合物からなる難消化性グルカンであって、食物繊維含量が30〜65質量%であり、かつ、重量平均分子量が700〜1250である、難消化性グルカン(以下、「本発明の難消化性グルカン」ということがある)およびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物。
[2]固形分当たりの単糖含量が15質量%以下である、上記[1]に記載の分画処理物。
[3]上記[1]に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せを有効成分として含んでなる、飲食品の呈味向上剤。
[4]飲食品に苦味を付与するための、上記[3]に記載の呈味向上剤。
[5]上記[1]または[2]に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、または上記[3]または[4]に記載の呈味向上剤を配合してなる、飲食品。
[6]加熱縮合物の食物繊維含量が30〜65質量%の範囲内になり、かつ、加熱縮合物の重量平均分子量が700〜1250の範囲内になるまで、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合する工程を含んでなる、難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物の製造方法。
[7]得られた加熱縮合物に糖質分解酵素を作用させて糖質分解酵素処理物を得る工程をさらに含んでなる、上記[6]に記載の製造方法。
[8]加熱縮合物および/またはその糖質分解酵素処理物を分画処理して分画処理物を得る工程をさらに含んでなる、上記[6]または[7]に記載の製造方法。
[9]難消化性グルカンが飲食品の呈味向上剤である、上記[6]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]上記[1]または[2]に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、上記[3]または[4]に記載の呈味向上剤、または上記[6]〜[9]のいずれかに記載の製造方法により製造された難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せを飲食品に配合する工程を含んでなる、呈味が向上した飲食品の製造方法。
[11]上記[1]または[2]に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、上記[3]または[4]に記載の呈味向上剤、または上記[6]〜[9]のいずれかに記載の製造方法により製造された難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せを飲食品に配合する工程を含んでなる、飲食品の呈味向上方法。
本発明の難消化性グルカンは、口に入れた直後からある程度苦味が感じられ、また、苦味の持続性があるため口の中で苦味が長く残り後を引くような特徴を有する。本発明の難消化性グルカンはまた、単調な味ではなく、味の厚みが深いため良好な味質を備えている。すなわち、本発明の難消化性グルカンは、これまで知られていない風味特性を有しており、食物繊維の生理機能、飲食品の物性改善効果、カロリー低減効果を期待しつつ、飲食品の呈味向上のために用いることができる点で有利である。
図1は、本発明の難消化性グルカンを配合したアルコール飲料(添加区1)の味質(苦味)に関する官能評価の試験結果を、難消化性グルカンを添加しないアルコール飲料(無添加区1)および市販の難消化性グルカンを添加したアルコール飲料(比較区1)との対比で示した図である。 図2は、本発明の難消化性グルカンを配合したアルコール飲料(添加区1)の味質(ドライ感)に関する官能評価の試験結果を、難消化性グルカンを添加しないアルコール飲料(無添加区1)および市販の難消化性グルカンを添加したアルコール飲料(比較区1)との対比で示した図である。 図3は、本発明の難消化性グルカンを配合したアルコール飲料(添加区1)の味質(美味しさ)に関する官能評価の試験結果を、難消化性グルカンを添加しないアルコール飲料(無添加区1)および市販の難消化性グルカンを添加したアルコール飲料(比較区1)との対比で示した図である。
発明の具体的説明
本発明において「難消化性グルカン」は、難消化性のグルカン(グルコースポリマー)を意味する。本発明の難消化性グルカンは、DE70〜100の澱粉分解物を加熱処理により縮合反応させた加熱縮合物からなるものである。
難消化性グルカンの原料となる澱粉分解物としては、DEが70〜100である澱粉分解物を使用することができる。澱粉分解物は、例えば、澱粉を酸で加水分解したものでも、酵素で加水分解したものでもよい。澱粉分解物のDEが70を下回ると、原料の分子量が大きくなるため食物繊維含量が30〜65質量%となるように加熱縮合反応を行うと、分子量が所定の範囲を超えてしまい、本発明の効果をよりよく発揮させることができない。ここで、「DE(Dextrose Equivalent)」とは、澱粉分解物の分解度合いの指標であり、試料中の還元糖をブドウ糖として固形分に対する百分率で示した値である。澱粉分解物のDEは、例えばレーンエイノン法で測定することができる。難消化性グルカンの原料となる澱粉分解物は、DEが75〜100であることが好ましく、80〜100であることがより好ましい。
本発明に用いられる「DE70〜100の澱粉分解物」は、DEが所定の範囲を満たす澱粉分解物であればよく、例えば、マルトオリゴ糖、水飴、粉飴、グルコース等が挙げられる。その性状も特に制限はなく、結晶品(無水ぶどう糖結晶、含水ぶどう糖結晶等)、液状品(液状ぶどう糖、水飴等)、非結晶粉末品(粉飴等)のいずれでも良いが、ハンドリングや製造コストを考慮すると液状品を用いることが好ましい。特に、グルコースの精製工程で生じる副産物である「ハイドロール」と呼ばれるグルコースシラップの使用は、リサイクルや原料コスト削減の観点から極めて有利である。
本発明において「加熱縮合」は、澱粉分解物を加熱条件下において縮合させることをいい、加熱縮合方法は当業者に周知である。加熱縮合における加熱条件は、縮合反応により本発明の難消化性グルカンが得られれば特に制限はなく、当業者であれば技術常識に基づいて加熱条件を適宜決定することができる。例えば、加熱温度を高くすれば得られる難消化性グルカンの食物繊維含量は高くなり、分子量も大きくなり、また、加熱時間を長くすれば同様に得られる難消化性グルカンの食物繊維含量は高くなり、分子量も大きくなる。加熱条件としては、例えば、100℃〜260℃で1〜180分間、より好ましくは、140℃〜220℃で1〜120分間加熱処理することで本発明の難消化性グルカンを製造することができる。
加熱縮合処理に用いる加熱機器としては、例えば、棚式熱風乾燥機、薄膜式蒸発器、フラッシュエバポレーター、減圧乾燥機、熱風乾燥機、スチームジャケットスクリューコンベヤー、ドラムドライヤー、エクストルーダー、ウォームシャフト反応機、ニーダーなどが挙げられる。また、加熱縮合処理は常圧条件下で行ってもよく、減圧条件下で反応を行っても良い。減圧条件下で行った場合、反応生成物の着色度が低下する点で有利である。
本発明において加熱縮合処理は、無触媒条件下で行ってもよいが、縮合反応の反応効率の点から触媒存在下で行うことが好ましい。前記触媒としては糖縮合反応を触媒するものであれば特に制限はないが、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、酢酸等の有機酸、珪藻土、活性白土、酸性白土、ベントナイト、カオリナイト、タルク等の鉱物性物質および水蒸気炭、塩化亜鉛炭、スルホン化活性炭、酸化活性炭等の活性炭を用いることができる。得られる水溶性食物繊維素材の着色や安全性、更には味・臭いを考慮すると、触媒として活性炭を用いることが好ましい。前記各触媒は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の難消化性グルカンは、食物繊維含量が30〜65質量%であり、かつ、重量平均分子量が700〜1250であることを特徴とする。特徴的な味質と呈味向上効果をよりよく発揮させる観点から、食物繊維含量は35〜60質量%とすることが好ましく、重量平均分子量は750〜1200とすることが好ましい。なお、食物繊維含量は、平成28年11月17日消食表第706号(食品表示基準について)に記載されている高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により測定することができる。また、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
本発明の難消化性グルカンは糖質分解酵素処理されたものであってもよい。ここで、難消化性グルカンの「糖質分解酵素処理物」とは、難消化性グルカンにα−アミラーゼやグルコアミラーゼなどの糖質加水分解酵素を作用させたものをいう。後記実施例の通り、本発明の難消化性グルカンを糖質分解酵素で酵素処理しても苦味には影響を及ぼさない。また、酵素処理によりグルコース等の単糖が生じるため、苦味に加え適度な甘味が難消化性グルカンに付与されることでより深みのある味質となり、呈味向上効果をより高めることができる。
本発明において「糖質分解酵素」は、糖質に作用し加水分解反応を触媒する酵素を意味し、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ(アミログルコシダーゼ)、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、α−グルコシダーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−フルクトシダーゼ、セロビアーゼ、ゲンチオビアーゼが挙げられる。糖質分解酵素は、単独で用いてもよく、複数の酵素を組み合わせて用いてもよい。難消化性グルカンへの分解作用からα−アミラーゼおよびグルコアミラーゼが好ましく、両酵素のいずれかを単独で作用させてもよいが、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼを共に作用させるのが特に好ましい。
本発明において糖質分解酵素処理の条件は、酵素処理により難消化性グルカンの易消化性部分が消化される条件であれば特に制限はなく、当業者であれば酵素処理条件を適宜決定することができるが、酵素処理により固形分当たりグルコース含量が1質量%以上、より好ましくは2質量%以上増加するように処理するのが好ましく、例えば、20〜120℃で30分間〜48時間、より好ましくは、50〜100℃で30分間〜48時間酵素処理することができる。
本発明において「分画処理物」は、難消化性グルカンおよび/またはその糖質分解酵素処理物を、膜分離やゲルろ過クロマトグラフィーなどの分画手段で分画処理し、特定重合度の糖質を除去したものをいう。後記実施例の通り、本発明の難消化性グルカンを分画処理しても苦味には影響を及ぼさない。また、分画処理によりグルコース等の甘味の強い単糖成分を除去できるため、後を引く苦味をより強めることができ、呈味向上効果をより高めることができる。加えて、食物繊維含量を高めることで食物繊維としての価値や食物繊維由来の生理機能を高めることができる。
本発明において「分画処理物」は、難消化性グルカンおよび/またはその糖質分解酵素処理物を、単糖含量が固形分当たり15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように分画処理して得ることができる。加熱縮合反応により得られた難消化性グルカンをそのまま分画処理してもよく、あるいは、前記難消化性グルカンを酵素処理した後に分画処理してもよい。
本発明において「分画処理」は、固形分当たりの単糖含量を15質量%以下にすることができる処理であれば特に制限はなく、その分離方法は当業者に周知の手段を利用することができる。例えば、膜分離、ゲルろ過クロマトグラフィー、カーボン−セライトカラムクロマトグラフィー、強酸性陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、エタノール沈殿、溶媒沈殿など当業者に周知の糖質の精製手段を分画処理に使用することができる。
本発明においてはまた、本発明の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物(以下、「本発明の難消化性グルカン等」ということがある)を、さらに還元処理に付して還元処理物としてもよい。すなわち、本発明の難消化性グルカン等には、上記還元処理物も含まれるものとする。本発明において「還元処理」は、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基を水酸基に還元する処理をいう。還元処理方法は当業者に周知であり、例えば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法が挙げられる。本発明においては、少量の糖アルコールを調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便で、かつ、特殊な装置を必要とせず好都合であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。「接触水素化反応」とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応であり、一般に水添反応ともいわれている。還元処理を実施することにより、本発明の難消化性グルカン等の着色を低減したり、酸・アルカリに対する安定性を高めたり、加熱による褐変反応やアミノ酸、タンパク質とのメイラード反応を抑制したりすることができる。
本発明の難消化性グルカン等は、必要に応じて活性炭により脱色したものや、イオン交換樹脂によりイオン性成分を除去したものを濃縮し、濃縮液とすることができる。保存性やその後の用途においては、脱色、イオン除去したものを微生物の繁殖が問題とならない程度の水分活性となるまで濃縮することが好適である。あるいは、用途によっては、利用しやすいように乾燥させて、粉末とすることもできる。乾燥は、通常、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥などの公知の方法により実施できる。乾燥物は、必要により粉砕することが望ましい。すなわち、本発明の難消化性グルカンの態様は、その用途に応じて好適な性状を選択することができる。
本発明の難消化性グルカン等やそれを有効成分とする本発明の呈味向上剤の製造は、加熱縮合物の食物繊維含量や重量平均分子量が所定の範囲内になるまでDE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合すること以外は、常法に従って行うことができる。加熱縮合反応の条件や手順は前記に従って実施することができる。
本発明の難消化性グルカン等は、それ自身が特有の苦味を有しており、口に入れた直後からある程度苦味が感じられ、また、苦味の持続性があるため口の中で苦味が長く残り後を引くような特徴を有する。本発明の難消化性グルカンはまた、単調な味ではなく、味の厚みが深いため良好な味質を備えている。本発明の難消化性グルカンはさらに、飲食品の味質を向上させる効果も有している。このように本発明の難消化性グルカンは、これまで知られていない風味特性を有していることから、飲食品の呈味向上のために用いることができる。
すなわち、本発明によれば、本発明の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せを有効成分とする飲食品の呈味向上剤と、本発明の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、あるいは、本発明の呈味向上剤を飲食品に配合する工程を含んでなる飲食品の呈味向上方法が提供される。本発明の呈味向上方法は、後述する本発明の飲食品の製造方法に従って実施することができる。
ここで「呈味向上」とは、飲食品により提供される甘味、塩味、酸味、苦味およびうま味の基本味と、辛味、渋味、刺激味、味の厚み、後味のキレ、コクなどの基本味の周辺の感覚のうち1種または2種以上を向上することを意味し、特に、甘味、苦味、味の厚み、後味のキレのうち1種または2種以上を向上することを意味する。また、「向上」とは前の状態よりもすぐれた状態になることを意味し、通常の状態や良好な状態をよりよくすることに加え、好ましくない状態や悪化した状態を少なくとも回復させることを含む意味で用いられる。
飲食品は様々な原材料配合で製造されることから、本発明の難消化性グルカン等によって所望の呈味が増強することで呈味が向上する場合もあれば、ある呈味がマスキングされることで所望の呈味が向上する場合もある。本発明においては、本発明の難消化性グルカン等を前者の態様を期待して用いる場合には、例えば、苦味が増強されることで苦味を向上することができる。すなわち、本発明の呈味向上剤は、好ましくは苦味付与剤として用いることができ、また、本発明の呈味向上方法は、好ましくは苦味付与方法として用いることができる。本発明においてはまた、本発明の難消化性グルカン等を後者の態様を期待して用いる場合には、望ましくない味がマスキングされることで飲食品の呈味を向上することができる。すなわち、本発明の呈味向上剤は、好ましくはマスキング剤として用いることができ、また、本発明の呈味向上方法は、好ましくはマスキング方法として用いることができる。
本発明の難消化性グルカン等は、呈味向上を目的として種々の飲食品に添加することができる。すなわち、本発明によれば、本発明の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、あるいは、本発明の呈味向上剤を配合してなる飲食品が提供される。本発明によればまた、本発明の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、あるいは、本発明の呈味向上剤を配合することを含んでなる、呈味が向上した飲食品の製造方法が提供される。呈味が向上した飲食品の製造は、後記実施例に示される通り、本発明の難消化性グルカン等や本発明の呈味向上剤が原材料に配合されること以外は、常法に従って行うことができる。
本発明の難消化性グルカン等を適用できる飲食品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
・ノンアルコール飲料(果汁含有飲料、果汁ジュース、野菜ジュース、炭酸飲料、アイソトニック飲料、アミノ酸飲料、スポーツ飲料、コーヒー、カフェオレ、ココア飲料、茶系飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、栄養ドリンク、ノンアルコールビール、ノンアルコールチューハイ、ノンアルコールカクテル、ニアウォーター、フレーバーウォーターなど)、アルコール飲料(ビール、発泡酒、リキュール、チューハイ、清酒、ワイン、果実酒、カクテル、蒸留酒など)などの飲料類
・アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、かき氷、フラッペ、フローズンヨーグルト、ゼリー 、プリン、ババロア、水羊羹などの冷菓類
・水飴、果実のシロップ漬、氷みつ、チョコレートシロップ、カラメルシロップなどのシロップ類
・フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、バタークリーム、カスタードクリームなどのペースト類
・マーマレード、フルーツソース、ブルーベリージャム、苺ジャムなどのジャム類
・食パン、ロールパン、ブリオッシュ、蒸しパン、あんパン、クリームパンなどのパン類
・ビスケット、クラッカー、クッキー、ワッフル、マフィン、スポンジケーキ、パイなどの焼菓子類
・シュークリーム、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、ヌガー、キャンディなどの洋菓子類
・せんべい、あられ、おこし、求肥、餅類、まんじゅう、大福、ういろう、餡類、錦玉、カステラ、飴玉などの和菓子類
・醤油、魚醤、味噌、ひしお、マヨネーズ、ドレッシング、三杯酢、天つゆ、麺つゆ、ウスターソース、オイスターソース、ケチャップ、焼き鳥のタレ、焼き肉のタレ、漬け込みタレ、甘味料、粉飴、食酢、すし酢、カレールウ、中華の素、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルソルト、テーブルシュガーなどの各種調味料類
・パスタソース、ミートソース、トマトソース、ホワイトソース、デミグラスソース、カレーソース、ハヤシソース、グレービーソース、ハンバーグソース、サルサソース、ステーキソースなどのソース類
・糠漬け、粕漬け、味噌漬け、福神漬け、べったら漬、奈良漬け、千枚漬、梅干しなどの漬物類
・たくわん漬の素、白菜漬の素、キムチの素などの漬物の素
・ハム、ベーコン、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボールなどの畜肉製品類
・魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、干物などの魚肉製品類
・塩ウニ、カラスミ、塩辛、なれずし、酢コンブ、さきするめ、田麩などの各種珍味類
・海苔、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類
・煮豆、煮魚、ポテトサラダ、コンブ巻などの惣菜食品
・乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜などの瓶詰類や缶詰類
・天ぷら、トンカツ、フリッター、唐揚げ、竜田揚げなどの揚げ物用衣類
・うどん、そば、中華麺、パスタ、春雨、ビーフン、餃子の皮、シューマイの皮などの麺類
・プリンミックス、ホットケーキミックス、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープなどの即席食品類
本発明の難消化性グルカン等は、特有の味質を有し、苦味付与効果に加えて、エグミの低減効果、乳類の後味のキレおよび/またはコクの改善効果、果汁感増強効果、高甘味度甘味料の味質改善効果、香辛料感増強効果、塩味増強効果、アルコール感の付与・増強効果、マスキング効果等の飲食品の味質向上効果を発揮することができる。従って、本発明による呈味向上効果をより効果的に発揮させる観点から、本発明の難消化性グルカン等を、飲料類、冷菓類、シロップ類、ペースト類、ジャム類、焼き菓子類、洋菓子類、和菓子類、調味料類、ソース類に用いるのが好ましく、アルコール飲料(ビール、発泡酒、リキュール、チューハイ、清酒、ワイン、果実酒、カクテル、蒸留酒など)やノンアルコール飲料(果汁含有飲料、果汁ジュース、野菜ジュース、炭酸飲料、アイソトニック飲料、アミノ酸飲料、スポーツ飲料、コーヒー、カフェオレ、ココア飲料、茶系飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、栄養ドリンク、ノンアルコールビール、ノンアルコールチューハイ、ノンアルコールカクテル、ニアウォーター、フレーバーウォーターなど)に用いるのが特に好ましい。
本発明の難消化性グルカン等は、水溶性食物繊維成分を有するものである。ここで、食物繊維の中でも水溶性食物繊維は、便通改善効果、食後血糖上昇抑制効果、食後中性脂肪の上昇抑制効果等の生理機能を有することが報告されており、特定保健用食品を含むさまざまな機能性食品が販売されている。また、水溶性食物繊維は低カロリーであることから、カロリーの低減を目的にした低カロリー食品に使用すること可能である。さらに、低カロリー食品においてはボディ感の付与が必要となることが多いが、水溶性食物繊維は高粘性である為、低カロリー食品にボディ感を付与する効果も有する。このため、既存の水溶性食物繊維と同様に、本発明の難消化性グルカン等を低カロリー素材として一部原料の代替素材や飲料のエキス分調整素材などとして飲食品に添加できる。また、増粘効果や、脂肪代替効果、乳化効果などの飲食品の物性改善効果を期待して飲食品に添加してもよい。さらに、当該組成物の摂取により整腸作用、血糖上昇抑制作用、脂質代謝改善作用などの水溶性食物繊維が有する生理機能の発揮も期待される。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において特に記載の無い場合は「%」は質量%を意味し、また「固形分」当たりの割合(含有量)や「固形分」の含有割合(濃度)に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
実施例中に示される各種測定方法および分析方法は以下の通り行った。
DE(還元糖量)の測定
DEは、レーンエイノン法(澱粉糖関連工業分析法(株式会社食品化学新聞社)(平成3年11月1日発行)5〜6頁)に従って測定した。
食物繊維含量の測定
平成28年11月17日消食表第706号(食品表示基準について)に記載されている高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により測定する。具体的には以下のように行った。
まず、サンプル1gを精密に測り、0.08mol/Lリン酸緩衝液50mLを加え、pH6.0±0.5であることを確認した。これに熱安定性α-アミラーゼ(Sigma社:EC3.2.1.1 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mLを加え、沸騰水中に入れ、5分ごとに撹拌しながら30分間放置した。冷却後、水酸化ナトリウム溶液(1.1→100)を加えてpHを7.5±0.1に調整した。プロテアーゼ(Sigma社:EC.3.4.21.62 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mLを加えて、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させた。冷却後、0.325mol/L塩酸を加え、pHを4.3±0.3に調整した。アミログルコシダーゼ(Sigma社:EC3.2.13 Aspergillus niger由来)溶液0.1mLを加え、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させた。以上の酵素処理終了後、直ちに沸騰水浴中で10分間加熱した後、冷却し、グリセリン(10→100)を内部標準物質として5mL加え、水で100mLとし酵素処理液とした。次に、酵素処理液50mLをイオン交換樹脂(OH型:H型=1:1)50mLが充填されたカラム(ガラス管20mm×300mm)に通液速度50mL/時で通液し、さらに水を通して流出液の全量を200mLとした。この溶液をロータリー・エバポレーターで濃縮し、全量を水で20mLとした。孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、検液とした。
次に、検液20μLにつき、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行い、検液のグリセリンおよび食物繊維画分のピーク面積値を測定した。
HPLCの分析条件は以下の通りであった。
検出器:示差屈折計
カラム:ULTRON PS−80N(φ8.0×300mm、島津ジーエルシー社製)を二本連結
カラム温度:80℃
移動相:純水
流速:0.5mL/分
食物繊維成分含量は以下の式から算出した。
食物繊維成分含量(%)=[食物繊維成分のピーク面積/グリセリンのピーク面積]×f1×[内部標準グリセリン質量(mg)/秤取資料質量(mg)]×100
(上記式中、f1はグリセリンとブドウ糖のピーク面積の感度比(0.82)である。)
重量平均分子量の測定
各サンプルを10%(w/v)となるよう純水で溶解し、1%(w/v)活性炭を添加し、煮沸後、0.45μmメンブレンフィルターろ過した。ろ液をイオン交換樹脂(製品名:MB4、オルガノ社製)処理後、0.45μmメンブレンフィルターろ過した。ろ液を終濃度50mM 硝酸ナトリウムとなるよう調整し、分子量分析を行なった。較正曲線のスタンダードは、グルコース(和光純薬工業社製)、マルトトリオース(和光純薬工業社製)、プルランスタンダードP−5およびP−10(昭和電工社製)を用いた。
分析条件は以下の通りであった。
カラム:Shodex OHpak SB− 803 HQ+KB−802.5HQ(φ8.0×300mm、昭和電工社製)
温度:70℃
溶媒:50mM硝酸ナトリウム、0.3mL/分
解析ソフト:Agilent OpenLAB CDS Ezchrom Edition (version.A.04.07.,Agilent Technology)
打込量:Brix5×10μL
苦みの官能評価
官能評価は、パネラー3人がBrix30に調整したサンプル水溶液を飲用し、明らかな苦みを有する場合をA、苦みを有さない場合をBとするアンケート調査とした。苦みの感受性(閾値)は個人差がある為、過半数のパネラーが苦み有りと判定した場合にAと判定した。
糖組成の測定
各サンプルを5%(w/v)となるよう純水で溶解し、イオン交換樹脂(製品名:MB4、オルガノ社製)処理後、0.45μmメンブレンフィルターでろ過して分析を行なった。
カラム:ULTRON PS−80N.L(信和化工社製)(二本連結)
カラム温度:50℃
移動相:超純水
流速:0.5mL
検出器:示差屈折率検出器
サンプル注入量:5%溶液10μL
実施例1:苦味を有する難消化性グルカンの検討
(1)難消化性グルカンの検討
固形分濃度70%の澱粉分解物(DE87)1000gに活性炭(フタムラ化学社製)21gを添加混合後、加熱反応機(テクノベル社製)に投入し、所定の温度で約5分間加熱して糖縮合物(難消化性グルカン)を得た。反応後の難消化性グルカンは室温まで冷却し、濾過処理で活性炭を完全に除去し、活性炭による脱色濾過およびイオン交換樹脂による脱塩を行った後、エバポレーターで濃縮した。
得られた各サンプルについて食物繊維含量と重量平均分子量および苦みに関する官能評価を実施した。結果は表1に示される通りであった。
Figure 0006896491
表1から明らかなように、DE87の澱粉分解物を加熱縮合反応させることで得られた糖縮合物である難消化性グルカンのうち、食物繊維含量37.2〜56.9質量%および重量平均分子量798〜1153のサンプルが特有の苦味を有することが判明した。また、低分子量ほど甘みを有する傾向であった。
(2)難消化性グルカンの酵素処理物の検討
上記試験で得られた各サンプルを固形分20%水溶液とし、サンプルの固形分1gあたりの酵素添加量が各々1.0Uとなるようにα−アミラーゼ(クライスターゼT5N、天野エンザイム社製)およびグルコアミラーゼ(デキストロザイムDXJ、ノボザイム社製)を添加し、60℃で48時間反応させた。なお、α−アミラーゼの活性度は旧JIS K7001−1972に定められている細菌α−アミラーゼ活性測定法、グルコアミラーゼの活性度はJIS K7001−1990に定められているグルコアミラーゼ活性測定法による。煮沸により酵素を失活させた後、濾過処理で活性炭を完全に除去して難消化性グルカンの酵素処理物を得た。得られた難消化性グルカン酵素処理物を活性炭による脱色濾過およびイオン交換樹脂による脱塩を行った後、エバポレーターで濃縮した。
得られた各サンプルについて食物繊維含量と重量平均分子量および苦みに関する官能評価を実施した。結果は表2に示される通りであった。
Figure 0006896491
表2から明らかなように、DE87の澱粉分解物を加熱縮合反応させることで得られた糖縮合物である難消化性グルカンの酵素処理物のうち、食物繊維含量36.2〜57.1質量%および重量平均分子量579〜936のサンプルが特有の苦味を有していた。すなわち、苦味を有する本発明の難消化性グルカンを酵素処理しても酵素処理前と同様に苦味を有することが判明した。また酵素処理前と比べ、酵素処理によって増加した消化性糖の甘みが付与されていた。
(3)難消化性グルカンの分画処理物の検討
上記(2)において得られた難消化性グルカン酵素処理物(加熱温度175℃)の試料(以下、「試料1」という)を分画原料とし、イオン交換樹脂を用いた分画処理にて単糖を除去したサンプルを調整した。
分画原料(試料1)および分画処理後のサンプルを糖組成(HPLC)分析、食物繊維含量、重量平均分子量および官能検査に供した。結果は表3に示される通りであった。
Figure 0006896491
表3から明らかなように、分画されたサンプルは単糖が減少されたことによって食物繊維含量と重量平均分子量は増加したが、分画原料と同様に苦味は有していた。また、グルコース由来の甘さが少なくなり、分画原料よりも後を引く苦みが強くなっていた。
実施例2:糖縮合物基質の澱粉分解物DEの検討
(1)澱粉分解物DEの検討・その1
表4に示したDEの澱粉分解物100g(固形分)に30gの活性炭(フタムラ化学社製)を添加混合後、加熱反応機(ADVANTEC社製)に投入し、160℃で10分間加熱して糖縮合物(難消化性グルカン)を得た。反応後の難消化性グルカンは室温まで冷却し、濾過処理で活性炭を完全に除去し、活性炭による脱色濾過およびイオン交換樹脂による脱塩を行った後、エバポレーターで濃縮した。
得られたサンプルについて食物繊維含量と重量平均分子量および苦みを対象とした官能評価を実施した。結果は表4に示される通りであった。
Figure 0006896491
(2)澱粉分解物DEの検討・その2
DE45の澱粉分解物を用い、加熱温度を表5に記載の通りとした以外は、上記(1)と同様に難消化性グルカンの調製および評価を実施した。その結果は表5に示される通りであった。
Figure 0006896491
(3)考察
表4から明らかなように、DE70〜DE100の澱粉分解物を用いて食物繊維含量30〜65質量%および重量平均分子量700〜1250となるように糖縮合反応させた難消化性グルカンは、苦味を有することが示された。一方で、表5から明らかなように、DE45の澱粉分解物を用いて糖縮合反応を行った場合、食物繊維含量30〜65質量%となるように糖縮合反応を行うと重量平均分子量が1250を超えてしまい、苦味を有する本願発明の難消化性グルカンが得られないことが判明した。
実施例3:味覚センサーにおける苦味強度の比較
味覚センサーを用いて本発明の糖縮合物(難消化性グルカン)の苦味強度を客観的に評価した。苦味の基準物質としては、キニーネ塩酸塩二水和物を終濃度1mg/100mLまたは5mg/100mLで含む10mM塩化カリウム溶液を用いた。試験区である糖縮合物サンプルは、糖縮合物を終濃度Brix30で含有する10mM塩化カリウム溶液を調製した。
試料1以外の糖縮合物としては、以下の市販の水溶性食物繊維を用いた。
難消化性デキストリン1:パインファイバーBi、松谷化学工業社製
難消化性デキストリン2:パインファイバー、松谷化学工業社製
難消化性デキストリン3:ファイバーソル2、松谷化学工業社製
難消化性グルカン:フィットファイバー#80、日本食品化工社製
ポリデキストロース:ライテスII、ダニスコ社製
味覚認識装置(製品名:TS−5000Z、インテリジェントセンサーテクノロジー社製)を用いて苦味強度を測定した。味覚センサーとして医薬用苦味センサー(AN0)を用い、塩基性苦味を測定した。センサーチェックでセンサーの安定を確認した後、測定回数を7回に指定し、測定した。解析には、味認識装置解析アプリケーション(ver.1.0.0.4)を用いた。測定回数7回のうち1回目のデータは削除し、残りの6回のデータを用い、解析した。補正処理は10mM塩化カリウム水溶液に対して補間差分処理を行った後に、補間加算差分処理を行った。推定値計算は、センサーに対応する変換データファイル(医薬.ece)を用い、統計処理を行った。
1mg/100mLキニーネ塩酸塩溶液の数値を基準(1.0)とし、各糖縮合物溶液の数値を換算値として算出した。苦味強度(換算値)と、各糖縮合物の水溶性食物繊維含量および重量平均分子量の測定結果は表6に記載される通りであった。
Figure 0006896491
表6に示した通り、本発明の難消化性グルカンである試料1は、今回検討に用いた市販されている既存の糖縮合物(水溶性食物繊維)と比較してはるかに強い苦味を有することが判明した。また、澱粉を原料に製造される糖縮合物である難消化性デキストリン1は、食物繊維含量43.0%、重量平均分子量1625だが苦味を有していなかった。
実施例4:苦味の官能評価
実施例3に用いた各糖縮合物のBrix30水溶液を調整し、苦味について9人のパネラーが室温条件下にて官能評価を実施した。水を0点、0.0016%キニーネ塩酸塩溶液を5点として、各水溶性食物繊維の相対評価による苦味の点数付けを行い、その平均値を算出した。結果を表7に示した。
Figure 0006896491
表7に示す通り、試料1は官能評価においても市販されている水溶性食物繊維と比較して著しく強い苦味を有することが明らかとなった。
製造例1:アルコール飲料への配合
試料1および市販の難消化性グルカン(フィットファイバー#80、食物繊維含量78%、日本食品化工社製)をそれぞれ固形分濃度72質量%に濃縮したものを用い、表8に示す配合によりアルコール飲料(チューハイ飲料)を調製した。
Figure 0006896491
無添加区と比較したアルコール飲料の味質について、下記基準に基づきパネラー5名で室温条件下、ブラインドによる官能評価試験を実施し、その平均点を図1、図2および図3に示した。
苦み:口に入れた直後の苦みの強さが弱い(苦味の立ちが悪い)ものを低評価点、強い(苦味の立ちが良い)ものを高評価点として、無添加区1を0点として−5〜5点の10段階で評価した。
ドライ感:味として「キレ」や「辛口感」が弱いものを低評価点、強いものを高評価点として、無添加区1を0点として−5〜5点の10段階で評価した。
美味しさ:アルコール飲料の味や飲み応えなどのトータルの美味しさが欠けるものを低評価点、総合的に美味しいものを高評価点として、無添加区1を0点として−5〜5点の10段階で評価した。
結果は図1、図2および図3に示される通りであった。図1、図2および図3に示されるように、本発明の難消化性グルカン(試料1)が添加されたアルコール飲料は、無添加区や既存の水溶性食物繊維が添加された比較区よりも苦味やドライ感が向上しており好ましい味質であることが確認された。また、添加区は、アルコール感や炭酸感が強く感じ、キレの良いクリアな味質であり、高甘味度甘味料由来の味質も改善され、果汁感も向上していた。
製造例2:ノンアルコールビールへの配合
試料1および市販の難消化性グルカン(フィットファイバー#80、食物繊維含量78%、日本食品化工社製)をそれぞれ固形分濃度72質量%に濃縮したものを用い、表9に示す配合によりノンアルコールビールを調製した。
また、良く訓練され、飲料の評価に熟練したパネル10名により、苦味やドライ感、コクについて総合的に好ましさとして評価した。好ましさの程度を、4点満点:「好ましい」=4点、「やや好ましい」=3点、「わずかに好ましい」=2点、「好ましくない」=1点で評価し、評価点の平均点を算出した。平均点に応じて3段階の評価を設けた。
平均点3.0以上〜4.0以下;A
平均点2.0以上〜3.0未満;B
平均点1.0以上〜2.0未満;C
Figure 0006896491
本発明の難消化性グルカン(試料1)が添加された添加区は、無添加区や既存の水溶性食物繊維が添加された比較区よりも苦味やドライ感、コクが向上しており好ましい味質であることが確認された。また、添加区は、比較区よりも特にえぐ味が少なく、香辛料であるホップの風味が増強され、キレの良い清澄な味質であった。
製造例3:茶飲料への配合
試料1または市販の難消化性グルカン(フィットファイバー#80、食物繊維含量78%、日本食品化工社製)をそれぞれ固形分濃度72質量%に濃縮したものを準備し、市販の茶飲料1(茶カテキン含量56mg/100mL)および市販の茶飲料(茶カテキン含量80mg/100mL)を4倍に薄めた茶飲料2(茶カテキン含量20mg/100mL)に固形分換算で0.5質量%となるように添加して、茶飲料を調製した。各茶飲料について、茶飲料1については4名のパネラーで、茶飲料2については5名のパネラーで下記基準により官能評価を実施した。無添加区を0点として、渋味(エグ味)および苦味が、弱いものを低評価点、強いものを高評価点として、−3〜3点の6段階で評価し、評価点の平均点を算出した。結果を表10に示す。
Figure 0006896491
表10に示した通り、茶飲料1および茶飲料2ともに、本発明の難消化性グルカン添加区は、無添加区よりも、渋味が弱くマスキングされていた。また、渋味のキレが良くなりスッキリした味質となり飲みやすさが向上していた。苦味は、茶カテキン濃度が高い茶飲料1ではマスキングされ低減されたが、茶カテキン濃度の低い茶飲料2では増強されていた。これは、本発明の難消化性グルカン(試料1)が、苦味を有しかつ一定程度の分子量を有するグルカンであるためと考えられる。
製造例4:チーズフードへの配合
試料1を固形分濃度72質量%に濃縮したものを用い、表11に示す配合によりチーズフードを調製した。
Figure 0006896491
本発明の難消化性グルカン(試料1)を添加した添加区は無添加区よりもまろやかであり、好ましい味質であることが確認された。また、添加区は呈味がやや強くなり、塩味も増し、スモークチーズの様なチーズ風味感が向上した。
製造例5:リンゴ酢飲料への配合
試料1を固形分濃度72質量%に濃縮したもの、およびデキストリン(パインデックス#100、松谷化学工業社製)を用い、表12に示す配合によりリンゴ酢飲料を調製した。
Figure 0006896491
本発明の難消化性グルカン(試料1)を添加した添加区は無添加区よりも酸味がマスキングされ、まろやかで飲みやすくなっていた。また、添加区はデキストリンを配合した比較区よりも臭みが無く、喉の刺激緩和効果も高かった。
製造例6:カフェオレ飲料への配合
試料1および市販されている難消化性グルカン(フィットファイバー#80、食物繊維含量78%、日本食品化工社製)をそれぞれ固形分濃度72質量%に濃縮したもの、並びにデキストリン(パインデックス#4、松谷化学工業社製)を用い、表13に示す配合によりカフェオレ飲料を調製した。
Figure 0006896491
本発明の難消化性グルカン(試料1)を添加した添加区は、無添加区やデキストリンを添加した比較区および既存の難消化性グルカンを添加した比較区よりも乳味があり、ボディ感やコクが向上していた。また、本発明の難消化性グルカンが添加されたものはコーヒー感をマスキングせず、呈味の中でも苦味が持続したことによってコーヒー感が向上した。
以上の通り、本発明の難消化性グルカンは、単に飲食品に苦味を付与するだけではなく、ドライ感、アルコール感、炭酸感、キレ、果汁感、高甘味度甘味料の味質、香辛料感、塩味、コクなどを向上し、また飲食品によっては苦味などをマスキングする効果を発揮するものであり、種々の飲食品において様々な呈味向上効果をもたらすことが明らかとなった。

Claims (11)

  1. DE70〜100の澱粉分解物の加熱縮合物からなる難消化性グルカンであって、食物繊維含量が30〜65質量%であり、かつ、重量平均分子量が700〜1250である、難消化性グルカンもしくはその糖質分解酵素処理物またはそれらの分画処理物。
  2. 固形分当たりの単糖含量が15質量%以下である、請求項1に記載の分画処理物。
  3. 請求項1に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せを有効成分として含んでなる、飲食品の呈味向上剤。
  4. 飲食品に苦味を付与するための、請求項3に記載の呈味向上剤。
  5. 請求項1または2に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、または請求項3または4に記載の呈味向上剤を配合してなる、飲食品。
  6. 加熱縮合物の食物繊維含量が30〜65質量%の範囲内になり、かつ、加熱縮合物の重量平均分子量が700〜1250の範囲内になるまで、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合する工程を含んでなる、難消化性グルカンもしくはその糖質分解酵素処理物またはそれらの分画処理物の製造方法。
  7. 得られた加熱縮合物に糖質分解酵素を作用させて糖質分解酵素処理物を得る工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の製造方法。
  8. 加熱縮合物および/またはその糖質分解酵素処理物を分画処理して分画処理物を得る工程をさらに含んでなる、請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 難消化性グルカンが飲食品の呈味向上剤である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 請求項1または2に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、請求項3または4に記載の呈味向上剤、または請求項6〜9のいずれか一項に記載の製造方法により製造された難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せを飲食品に配合する工程を含んでなる、呈味が向上した飲食品の製造方法。
  11. 請求項1または2に記載の難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せ、請求項3または4に記載の呈味向上剤、または請求項6〜9のいずれか一項に記載の製造方法により製造された難消化性グルカンおよびその糖質分解酵素処理物並びにそれらの分画処理物のいずれかまたは組合せを飲食品に配合する工程を含んでなる、飲食品の呈味向上方法。
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