JP6588071B2 - β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトース及びその用途 - Google Patents

β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトース及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、新規な二糖であるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトース及びその用途に関する。
単糖2分子がグリコシド結合を形成して1分子となった糖のことを二糖という。主に知られている二糖として、グルコースとフルクトースが結合したスクロース、ガラクトースとフルクトースが結合したラクツロース、グルコース2分子が結合したマルトース、トレハロース等が挙げられる。
上記スクロースはグルコースとフルクトースがα−1,2グリコシド結合したものであるが、このようにグルコースとフルクトースが結合した二糖としては他にも、α−1,6−グリコシド結合したパラチノース(イソマルツロース)、α−1,3−グリコシド結合したツラノース、α−1,4−グリコシド結合したマルツロースが知られている。
また、この他にもグルコースとフルクトースがグリコシド結合した二糖に関して報告例がある(特許文献1〜特許文献4)。
特許第4583505号公報 特許第4485602号公報 特許第4674828号公報 特許第4684361号公報
しかしながら、グルコースとフルクトースがβ−1,1−グリコシド結合した、つまり、グルコースの1位とフルクトースの1位がβ結合した二糖については報告例がない。
したがって、本発明の目的は、グルコースとフルクトースがグリコシド結合した新規な二糖を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、グルコースとフルクトースを基質としβ−グルコシダーゼを作用させて得られた生成物中より、新規な二糖であるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを提供するものである。
Figure 0006588071
本発明の好ましい態様においては、結晶状の上記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを提供する。
また、本発明は、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを含有することを特徴とする飲食品用組成物を提供するものである。
本発明の飲食品用組成物は、前記β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを0.5質量%以上含有することが好ましい。
更に、本発明は、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを含有することを特徴とする医薬品用組成物を提供するものである。
本発明の医薬品用組成物は、前記β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを0.5質量%以上含有することが好ましい。
更にまた、本発明は、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを有効成分として含有することを特徴とする呈味改善剤を提供するものである。
更にまた、本発明は、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを有効成分として含有することを特徴とする腸内菌叢改善剤を提供するものである。
本発明によれば、グルコースの1位とフルクトースの1位がβ結合した新規な二糖であるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを提供することができる。
β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースは、苦味を有する難消化性糖質であることから、飲食品用組成物、及び医薬品用組成物として有用である。
特に、苦味を呈することから、呈味改善剤の有効成分として有用であり、難消化性糖質であることから、腸内菌叢改善剤の有効成分として有用である。
また、本発明のβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースは、水への溶解度が低く容易に結晶化させることができるため、比較的簡単に高純度物を得ることができる。
製造例1で得られた結晶の質量検出器分析チャートを示す図である。 製造例1で得られた結晶のH−NMRスペクトルのチャートを示す図である。 製造例1で得られた結晶の13C−NMRスペクトルのチャートを示す図である。 製造例1で得られた結晶のH−HCOSYスペクトルのチャートを示す図である。 製造例1で得られた結晶のE−HSQCスペクトルのチャートを示す図である。 製造例1で得られた結晶のHMBCスペクトルのチャートを示す図である。 製造例1で得られたサンプルの主成分であるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースの構造式(β−D−グルコピラノシル−(1→1)−β−D−フルクトピラノース型)を示す図である。 β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースとスクロースの人工胃液での残存率を示す図である。 β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースとスクロースの消化酵素での残存率を示す図である。 B. catenulatum JCM 1194を用いた、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースとスクロースとフルクトオリゴ糖の資化性試験を示す図である。 B. longum subsp. Longum JCM1217を用いた、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースとスクロースとフルクトオリゴ糖の資化性試験を示す図である。 B. adolecentis JCM1275を用いた、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースとスクロースとフルクトオリゴ糖の資化性試験を示す図である。
本発明の下記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトース(以下、「Gβ1−1F」ともいう。)は、グルコースの1位とフルクトースの1位がβ結合した二糖である。
Figure 0006588071
本発明のGβ1−1Fの製造方法は特に制限はなく、酵素合成、化学合成、分解、抽出など様々な手法を用いることができるが、その簡便性や製造コスト等の点から、D−グルコース(以下、「グルコース」ともいう。)及びD−フルクトース(以下、「フルクトース」ともいう。)を含む糖質原料に酵素を作用させて製造することが好ましい。この場合に用いる酵素としてはβ−グルコシダーゼであることが好ましい。
原料とするグルコースとフルクトースは、グルコース及びフルクトースを含有するものであれば特に制限はなく、グルコース及びフルクトースを任意で混合したものでもよく、例えば、スクロース等のグルコースとフルクトースとを構成糖として含む糖質を分解することにより生成させたものでもよく、例えば異性化酵素等の触媒によりグルコースまたはフルクトースをもう一方の糖質に異性化することにより生成させたものでもよい。このような糖として、入手のしやすさやコスト等を考慮すると、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖)や転化糖を用いるのが好ましい。
用いるグルコースとフルクトースの質量比は、固形分換算でグルコースとフルクトースの質量比が0.1:10〜10:0.1とするのが好ましく、1:10〜10:1とするのがより好ましく、1:4〜4:1とするのがさらに好ましい。
用いるβ−グルコシダーゼとしては、特に制限はなく、種々の起源の酵素を用いることができる。例えば、アーモンド由来、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のβ−グルコシダーゼを用いることができ、培養した微生物などから分離精製した酵素を用いてもよく、市販の酵素製剤を用いてもよい。酵素製剤としてはβ-グルコシダーゼ製剤だけでなく、β-グルコシダーゼが混在したセルラーゼ製剤等を用いることもできる。
グルコースとフルクトースにβ−グルコシダーゼを作用させる条件としては、用いるβ−グルコシダーゼの至適条件などを考慮して適宜設定することができる。例えば、グルコース及びフルクトースを含有し、固形分濃度が好ましくは30〜90質量%、より好ましくは50〜80質量%である水溶液を調製し、pHを好ましくは4.0〜8.0、より好ましくは5.0〜7.0とし、上記固形分1g当たり、好ましくは0.1〜1000mg、より好ましくは1〜250mgとなるようにβ−グルコシダーゼを添加し、好ましくは30〜80℃、より好ましくは50〜70℃にて、好ましくは1〜100時間、より好ましくは24〜72時間保持することで作用させることができる。なお、上記水溶液の固形分当たりのグルコース及びフルクトースの合計含量は30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
グルコースとフルクトースにβ−グルコシダーゼを作用させて得られたGβ1−1F含有組成物は、液状のままであってもよいが、噴霧乾燥などの公知の方法により粉末状とすることができる。
また、Gβ1−1F含有組成物は、必要に応じて、ろ過、脱色、脱臭、脱塩などの精製処理を常法により施すことができる。また、抽出、遠心分離、晶出、微生物資化、更に活性炭、多孔質担体、疎水性樹脂、親水性樹脂、イオン交換樹脂、吸着樹脂等を利用したクロマトグラフィーによる分画、透析、限界ろ過等の膜分画等の処理を施してGβ1−1Fの純度を高めることができる。
本発明のGβ1−1Fは、結晶状(結晶化した状態)であってもよい。結晶状とする方法としては、特に制限はなく、温度低下、濃縮、溶媒添加(エタノール、メタノール、アセトンなど)などによる方法が挙げられる。特に、Gβ1−1Fは水溶液中での溶解度が低いことから、Gβ1−1F含有組成物を冷却及び/又は濃縮することで容易に結晶化することが可能である。このように、Gβ1−1Fを結晶化することによって、比較的容易にGβ1−1Fの純度が高いものを得ることができる。
本発明のGβ1−1Fは、高純度化されたものとして利用することもできるが、Gβ1−1Fを含有する糖組成物として利用することもできる。この場合、糖組成物中に含まれるGβ1−1Fの含有量は、特に制限はないが、例えば、固形分あたり0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましく、2質量%以上とすることがさらに好ましく、3質量%以上とすることが最も好ましい。固形分あたりのGβ1−1Fの含有量が0.5質量%未満では、Gβ1−1Fの特徴を十分に付与することができないというデメリットがある。
なお、Gβ1−1Fは主にβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−β−D−フルクトピラノースとして存在するが、後述の通り鎖状構造を介して構造が変化し、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−α−D−フルクトピラノース、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−α−D−フルクトフラノース、及びβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−β−D−フルクトフラノースとしても微量に存在する。
本発明のGβ1−1F、又はそれを含有する糖組成物は、飲食品用組成物として利用することができる。対象となる飲食品としては、特に制限はなく、食することが可能なあらゆる飲食品を挙げることができる。例えば、下記飲食品が挙げられる。
・ノンアルコール飲料(果汁含有飲料、果汁ジュース、野菜ジュース、炭酸飲料、アイソトニック飲料、アミノ酸飲料、スポーツ飲料、コーヒー、カフェオレ、ココア飲料、茶系飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、栄養ドリンク、ノンアルコールビール、ノンアルコールチューハイ、ノンアルコールカクテル、ニアウォーター、フレーバーウォーターなど)、アルコール飲料(ビール、発泡酒、リキュール、チューハイ、清酒、ワイン、果実酒、カクテル、蒸留酒など)などの飲料類
・アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、かき氷、フラッペ、フローズンヨーグルト、ゼリー 、プリン、ババロア、水羊羹などの冷菓類
・水飴、果実のシロップ漬、氷みつ、チョコレートシロップ、カラメルシロップなどのシロップ類
・フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、バタークリーム、カスタードクリームなどのペースト類
・マーマレード、フルーツソース、ブルーベリージャム、苺ジャムなどのジャム類
・食パン、ロールパン、ブリオッシュ、蒸しパン、あんパン、クリームパンなどのパン類
・ビスケット、クラッカー、クッキー、ワッフル、マフィン、スポンジケーキ、パイなどの焼菓子類
・シュークリーム、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、ヌガー、キャンディなどの洋菓子類
・せんべい、あられ、おこし、求肥、餅類、まんじゅう、大福、ういろう、餡類、錦玉、カステラ、飴玉などの和菓子類
・醤油、魚醤、味噌、ひしお、マヨネーズ、ドレッシング、三杯酢、天つゆ、麺つゆ、ウスターソース、オイスターソース、ケチャップ、焼き鳥のタレ、焼き肉のタレ、漬け込みタレ、甘味料、粉飴、食酢、すし酢、カレールウ、中華の素、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルソルト、テーブルシュガーなどの各種調味料類
・パスタソース、ミートソース、トマトソース、ホワイトソース、デミグラスソース、カレーソース、ハヤシソース、グレービーソース、ハンバーグソース、サルサソース、ステーキソースなどのソース類
・糠漬け、粕漬け、味噌漬け、福神漬け、べったら漬、奈良漬け、千枚漬、梅干しなどの漬物類
・たくわん漬の素、白菜漬の素、キムチの素などの漬物の素
・ハム、ベーコン、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボールなどの畜肉製品類
・魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、干物などの魚肉製品類
・塩ウニ、カラスミ、塩辛、なれずし、酢コンブ、さきするめ、田麩などの各種珍味類
・海苔、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類
・煮豆、煮魚、ポテトサラダ、コンブ巻などの惣菜食品
・乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜などの瓶詰類や缶詰類
・天ぷら、トンカツ、フリッター、唐揚げ、竜田揚げなどの揚げ物用衣類
・うどん、そば、中華麺、パスタ、春雨、ビーフン、餃子の皮、シューマイの皮などの麺類
・プリンミックス、ホットケーキミックス、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープなどの即席食品類。
また、飲食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメント)等も挙げられる。この場合の飲食品の形態は、例えば、粉末状、頼粒状、錠剤状、カプセル状、又は液状とすることができる。
本発明の飲食品用組成物の飲食品への添加量は、Gβ1−1Fとして、0.002質量%以上となるようにすることが好ましく、0.02質量%以上となるようにすることがより好ましく、0.05質量%以上となるようにすることがさらに好ましく、0.1質量%以上となるようにすることが特に好ましい。Gβ1−1Fとしての添加量が、0.002質量%未満だと、Gβ1−1Fの特徴を十分に付与することができなくなる場合がある。
また、本発明のGβ1−1F、又はそれを含有する糖組成物は、後述する生理活性効果が期待されることから、医薬品用組成物として利用することができる。すなわち、後述する生理活性効果をもたらすための医薬品原料として利用することができる。この場合の医薬品は、経口投与用の医薬品であることが好ましいが、外用の医薬品にも適用することもできる。経口投与用の医薬品の剤形としては、具体的には、固形製剤として、粉末剤、頼粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ等、また、液状製剤として内用液剤、外用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等が挙げられる。
本発明の医薬品用組成物は、Gβ1−1Fの他、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を適宜含有していてもよい。
本発明の医薬品用組成物の医薬品への添加量は、Gβ1−1Fとして、0.02質量%以上となるようにすることが好ましく、0.1質量%以上となるようにすることがより好ましく、0.2質量%以上となるようにすることがさらに好ましく、1.0質量%以上となるようにすることが特に好ましい。Gβ1−1Fとしての添加量が、0.02質量%未満だと、Gβ1−1Fの特徴を十分に付与することができなくなる場合がある。
また、Gβ1−1Fは、苦味を呈するという特徴から、本発明のGβ1−1F、又はそれを含有する組成物は、飲食品や医薬品用の呈味改善剤として利用することができる。本発明の呈味改善剤は、飲食品や医薬品に添加することで、コクの付与・増強、キレの付与・増強、果汁感の付与・増強、乳味感の付与・増強、エグ味低減、高甘味度甘味料の呈味改善などの呈味改良作用を発揮することが期待される。また、本発明の呈味改善剤は、苦味を呈することから、例えば苦味付与剤として利用することができる。なお、適用される飲食品としては、前述したような各種飲食品が挙げられる。呈味改善剤としての飲食品又は医薬品への添加量は、Gβ1−1Fとして、前述したような添加量となるようにすることが好ましい。
また、Gβ1−1Fは、後述する実施例に示されるように、プレバイオティクス素材として知られるフルクトオリゴ糖と同等以上にBifidobacteriumに対する資化性を有していることから、本発明のGβ1−1F、又はそれを含有する糖組成物は、腸内菌叢改善剤、すなわち、腸内菌叢改善用の医薬品、飲食品として利用することができる。ここで、飲食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメント)等が含まれる。
この場合、本発明の腸内菌叢改善剤の有効投与量は、特に限定されないが、Gβ1−1Fの投与量として、成人1日当たり0.5〜30gが好ましく、2〜10gがより好ましい。
なお、Gβ1−1Fは、人や動物の栄養成分であるグルコース及びフルクトースを含有する原料にβ−グルコシダーゼを作用させて生成したものであることから、人や動物に対して安全性を有している。
また、Gβ1−1Fは、後述する実施例に示されるように、難消化性糖質であることから、ダイエット用の低カロリー素材として飲食品や医薬品に用いることができるだけでなく、脂肪蓄積抑制用、肥満改善及び/又は予防用、メタボリック症候群治療及び/又は予防用等の飲食品や医薬品に用いることができる。
さらに、Gβ1−1Fは、腸内細菌の増殖を促進するという特徴から、難消化性オリゴ糖と同様に、整腸剤、便通改善剤、ミネラル吸収促進剤、腸管バリア機能亢進剤、脂質代謝改善剤、免疫調節剤、血糖上昇抑制剤として機能を発揮することが期待される。
本発明のGβ1−1Fを含有する飲食用組成物、医薬品用組成物、呈味改善剤、及び腸内菌叢改善剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、Gβ1−1F以外の他の糖を含有してもよい。他の糖としては、単糖、二糖以上の糖質でもよい。また、原料に由来する糖質(原料として用いたグルコース源やフルクトース源、グルコース源やフルクトース源の分解により生じた糖、それらの糖同士が反応して副生した糖類等)を含有するものであってもよい。
なお、本発明においては、下記実施例に示したHPLC条件で保持時間37.8分、36.2分及び34.5分に検出されるピーク成分を二糖成分と判断した。また、本発明における糖組成は、固形分あたりの糖組成(各糖質の含量(質量%))を意味する。
<製造例1>
D−グルコース(製品名:無水結晶ぶどう糖、日本食品化工株式会社製)(以下、「グルコース」ともいう。)、D−フルクトース(ナカライテスク株式会社製)(以下、「フルクトース」ともいう。)、及びグルコースとフルクトースを等重量混合したものをそれぞれ75w/w%となるように超純水に溶解した。1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を10mMとなるように添加した。66℃下でβ−グルコシダーゼ(東洋紡株式会社製)を14mg/g−ds添加し、72時間保持し、反応させた。それぞれの保持時間後のサンプル溶液中の糖組成をHPLCにて分析した。
HPLC分析は、カラム(300mm×8.0mmI.D.)(製品名:ULTRON PS−80N.L、信和化工株式会社製)を二本連結し、カラム温度を50℃として超純水を流速0.5mL/minで通液し、示差屈折率検出器(株式会社島津製作所製)で検出を行った。
結果を表1に示した。
Figure 0006588071
グルコースを糖質原料とした場合は、保持時間34.5分に二糖、31.5+30.7分に三糖、及び30分よりも早い時間に四糖以上のピークが増加した。フルクトースを糖質原料とした場合は、糖組成は反応前後でほぼ変化しなかった。グルコースとフルクトース、それぞれ等量を糖質原料とした場合は、グルコースと同様に、保持時間34.5分に二糖、31.5+30.7分に三糖、及び30分よりも早い時間に四糖以上のピークが増加し、それ以外に保持時間36.2分、及び37.8分に二糖のピークが増加した。
それぞれ等量のグルコースとフルクトースを糖質原料として得られたサンプル溶液を、以降の試験の試料とした。
(1)分画処理
カーボン−セライトカラムクロマトグラフィーにより、サンプルの分画を行った。活性炭「精製白驚」(製品名、大阪ガスケミカル株式会社製)と、「セライト545」(製品名、関東化学株式会社製)とを等重量混合し、水に懸濁したスラリーをガラスカラム(型番:XK―26/40、ファルマシア製)(φ2.6×40cm)に充填し、これにBx50の試料10mLを負荷した。クロマトグラフィーは室温で行い、流速を5mL/minとした。まず超純水を通液して単糖類を溶出させた後、1.5v/v%エタノール及び3.0v/v%エタノールを通液して未知ピーク及び二糖を溶出させた。二糖の溶出が完了したことを確認後、50v/v%エタノールを通液して三糖以上のサンプルを溶出させた。
1.5v/v%エタノールを通液したときの溶出液を一定量ずつ分画し、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)でBx40程度に濃縮した。
サンプルの糖組成を上記と同様にHPLCにて分析し、その結果を表2に示した。
Figure 0006588071
サンプルの濃縮液を一晩4℃保存したところ、保持時間36.2分の溶出物を多く含有する分画No.1〜3で白色結晶の生成が確認された。HPLCで分析したところ、白色結晶は保持時間36.2分の二糖の未知物質が主成分であった。
分画No.3の結晶を純水に再溶解し、Bx40程度に濃縮して再び一晩4℃保存したところ再び結晶が生成し、主成分の純度が向上した。さらにもう一度同じ操作を繰り返すことで純度は99.3%となった(表3)。
Figure 0006588071
(2)結晶の同定
得られた結晶を質量検出器(製品名:5610質量検出器、日立ハイテクサイエンス製)で分析した結果、分子量365となり(ナトリウム分の23を減じて342)、二糖であることが確認された(図1)。
次に、400MHz核磁気共鳴分光計(NMR)(製品名:Ultrashield 400 PLUS、BRUKER社製)を用いて結晶の分析を行った。測定は一次元としてH(図2)、及び13C(図3)、二次元としてH−HCOSY(図4)、E−HSQC(図5)、及びHMBC(図6)により行った(表4)。なお、分析は結晶を重水に溶解して実施した。トリメチルシリルプロパン酸を内部基準物質として微量添加し、当該物質由来のピークを0ppmとした。
Figure 0006588071
分析と解析の結果、サンプルの主成分はβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−β−D−フルクトピラノースであった(図7)。NMRのデータには高純度のサンプルにも関わらず、複数の微小ピークが確認された。これはβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−β−D−フルクトピラノースが開環構造を経て、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−α−D−フルクトピラノース、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−α−D−フルクトフラノース、β−D−グルコピラノシル−(1→1)−β−D−フルクトフラノースの異性体となっているものと考えられた。従って、本サンプルはβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−β−D−フルクトピラノースを主構造とするGβ1−1Fであることが明らかとなった。
(3)味質の確認
Gβ1−1Fを超純水に10w/w%となるように溶解し、味質を確認したところ、苦味が感じられた。すなわち、Gβ1−1Fは苦味を有する糖質であることがわかった。
(4)人工胃液試験
Gβ1−1Fの人工胃液による分解を確認した。
サンプルを0.73w/v%となるように、16.7mMHCl−KCl緩衝液(pH2.0)で溶解し、37℃で保持した。0、30、60、120分でサンプリングし、イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトMB4、オルガノ株式会社)を加えて脱塩後、0.45μmフィルターろ過して、HPLCで分析した。得られたピーク面積を反応0分のピーク面積で除し、100を乗ずることで残存率を算出した。
HPLC分析は、カラム(300mm×8.0mmI.D.)(製品名:ULTRON PS−80N.L、信和化工株式会社製)を使用し、カラム温度を50℃として超純水を流速0.9mL/minで通液し、示差屈折率検出器(株式会社島津製作所製)で検出を行った。
この結果から、Gβ1−1Fはスクロースと同様に人口胃液によっても分解されないことがわかった(図8)。
(5)消化性試験
Gβ1−1Fの消化酵素による消化性を確認した。
ラット小腸アセトンパウダー(製品名、シグマ社)2gを45mMマレイン酸ナトリウム緩衝液(pH6.6)20mLに懸濁後、遠心分離(19000g、10分間)して上清を回収した。得られた溶液の活性を測定し、消化酵素溶液として下記のインビトロ消化性試験に用いた。
消化酵素溶液の活性は、マルターゼ活性として測定した。純水で適宜希釈した消化酵素溶液15μLに0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を40μL添加し、37℃に保持した。これに2w/v%マルトース溶液45μLを添加して反応を開始した。10分後、これに2MTris−HC1緩衝液(pH7.0)200μLを添加して反応を停止し、グルコースC−IIテストワコー(製品名、和光純薬工業社)80μLを添加して37℃に30分間程度保持して発色させた。A492を測定し、グルコースの標準曲線に基づき、遊離グルコース量を算出した。
グルコースの標準曲線は、0〜0.01w/v%グルコース水溶液100μLに上記と同様に2MTris−HC1緩衝液(pH7.0)及び発色試薬を添加することにより作成した。酵素活性1Uを上記条件下で1分間に2μmolのグルコースを生成する酵素量と定義した。
45mMマレイン酸ナトリウム緩衝液(pH6.6)に終濃度0.45w/v%となるようにサンプルを溶解し、上記手法で調製した消化酵素溶液を86U/g−dsとなるように添加し、37℃で保持した。反応液20μLを2MTris−HC1緩衝液200μLと混合して反応を停止し、適宜サンプリングを行った。サンプリングした溶液のグルコース量はグルコースC−IIテストワコーを用いてグルコースオキシダーゼ法により測定した。分解率=グルコース質量×2/基質質量×100と定義した。
試験の結果、スクロースは速やかに分解されたのに対してGβ1−1Fはまったく分解されなかったことから、Gβ1−1Fが難消化性糖質であることが明らかとなった(図9)。
(6)資化性試験
供試菌株B. catenulatum JCM 1194、B. longum subsp. Longum JCM 1217、及びB. adolecentis JCM1275(いずれもビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の菌株、JCMの番号は、国立研究開発法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室の寄託番号である)を用い、唯一の炭素源としてグルコースを終濃度15%添加したIL培地にて、嫌気ジャー及びアネロペック・ケンキ(ともに製品名、三菱ガス化学社製)を使用した嫌気条件下にて37℃、24時間前培養を行った。次いで、Gβ1−1F又はフルクトオリゴ糖(和光純薬工業)を、それぞれ終濃度1%になるように添加したILS培地3.0mLに当該前培養液を1v/v%植菌し、37℃、嫌気条件化にて培養を行った。またネガティブコントロールとして炭素源の代わりに滅菌超純水を添加した。資化性は菌体増殖にて判断することとし、経時的に簡易ODモニター「mini photo 518R」(製品名、TAITEC社製)を用いて菌濁度(OD660)を測定し、増殖曲線を描いた。
B. catenulatum JCM 1194を用いた資化性試験では、Gβ1−1Fの資化性はフラクトオリゴ糖と同程度であった(図10)。B. longum subsp. Longum JCM 1217を用いた資化性試験では、フラクトオリゴ糖が資化性を示したのに対して、Gβ1−1Fはほとんど資化性を示さなかった(図11)。B. adolecentis JCM1275を用いた資化性試験では、Gβ1−1Fの資化性はフラクトオリゴ糖より高い資化性を示した(図12)。
従って、Gβ1−1Fは、プレバイオティクス素材として知られるフルクトオリゴ糖と同等以上にBifidobacteriumに対する資化性を有していることから、プレバイオティクスとして利用できる可能性が示唆された。また、資化性を示さなかった菌株もあることから、特定の菌種を選択的に増殖させることができると示唆された。
<製造例2>
果糖ぶどう糖液糖(製品名:フジフラクト、日本食品化工株式会社)をpH5.0に調整し、66℃下でセルラーゼ製剤「スミチームACL」(製品名、新日本化学工業株式会社)を128mg/g−ds添加し、72時間保持し、反応させた。
その後、上記と同様の分画処理を行ったところ、白色結晶が得られた。得られた結晶をHPLCで分析した結果、Gβ1−1Fと同様の保持時間であった。
従って、本方法でもGβ1−1Fを製造可能であった。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトース。
    Figure 0006588071
  2. 結晶状の請求項1記載のβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトース。
  3. 下記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを含有することを特徴とする飲食品用組成物。
    Figure 0006588071
  4. 前記β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを0.5質量%以上含有する請求項3記載の飲食品用組成物。
  5. 下記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを含有することを特徴とする医薬品用組成物。
    Figure 0006588071
  6. 前記β−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを0.5質量%以上含有する請求項5記載の医薬品用組成物。
  7. 下記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを有効成分として含有することを特徴とする呈味改善剤。
    Figure 0006588071
  8. 下記式(1)で示されるβ−D−グルコピラノシル−(1→1)−D−フルクトースを有効成分として含有することを特徴とする腸内菌叢改善剤。
    Figure 0006588071
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