JP6894342B2 - サーモリシン及びその変異体の生成及び液体洗剤での使用 - Google Patents

サーモリシン及びその変異体の生成及び液体洗剤での使用 Download PDF

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Description

本発明は改良された安定性及び/又は触媒活性を持つサーモリシン類似のすくなくとも一つの中性プロテアーゼ酵素を含む方法及び組成物を提供する。ある実施の態様においてはサーモリシンは洗浄及び洗剤を含む他の応用分野で使用することができる。ある特別に好ましい実施の態様においては、本発明は洗剤誘発不活化に抗する様に形成され、操作されたサーモリシンを含む方法及び組成物を提供する。
バチルス属は、発酵により大量に安価に製造することのできる工業的に有用な酵素を数多く分泌するグラム陽性細菌である。分泌されたバチルス酵素の例にはスブチリシンセリンプロテアーゼ、亜鉛含有中性プロテアーゼ、アルファーアミラーゼ及びセルラーゼがある。バチルスプロテアーゼは繊維、洗濯業及び家庭用品産業で広く使用されている (Galante,最新の有機化学(Current Organic Chemistry)7:1399-1422, 2003;及びShowell, 洗剤ハンドブック(Handbook of Detergents), Part D: 製剤(Formulation), Hubbard (編纂), NY: Taylor and Francis Group, 2006) 。洗濯物から色彩及び汚れを非常に効率良く落とすためにはプロテアーゼが必要である。しかし、洗浄及び洗濯用の試薬を用いた液体調剤はビルダー、金属キレート剤を含み、これらは殆どのプロテアーゼの安定性を損なう作用を持つ。
洗剤及び他の洗剤組成物は通常複雑な活性成分の組み合わせを含む。例えば、大半の洗剤製品は界面活性剤系、洗剤用酵素、漂白剤、ビルダー、汚れ抑制剤、汚れ防止剤、光学的光沢剤、軟化剤、分散剤、染料移動抑制化合物、研磨剤、殺菌剤及び香料を含む。現在の洗剤の複雑さにもかかわらず、完全に除去することが困難な汚れは多い。さらに、しばしば残留物が堆積し、その結果変色し不完全な洗浄のため美観が劣ることになる。低温での洗濯(例えば、冷水)が増しまた短い洗濯サイクルのためこれらの問題が複雑になる。
さらに、多くの汚れは主に炭水化物及び炭水化物の派生物を含む繊維質材料、繊維及び細胞壁成分(例えば、植物性材料、木材、泥/粘土ベースの土、及び果実)の複雑な混合物を含む。これらの汚れは洗浄組成物の処方及び使用にとり困難な課題を提供する。
さらに、着色した衣類はしばしば色褪せし見掛けが劣ることになる。この色彩の減色した部分は洗濯過程中の、特に洗濯機及び乾燥機での摩耗によるものである。
さらに繊維の引張強度の喪失は、使用、摩耗、及び/又は洗濯及び乾燥による機械的及び化学的作用による避けられない結果である様に思われる。このように、これらの見掛けの喪失を最小に留めるために脱色した衣類を効率的にまた効果的に洗濯する手段が求められる。つまり、洗浄組成物の容量が改良されたにも関わらず、依然として汚れを落とし、繊維の色彩及び外観を維持し、そして染料移動を防ぐ洗剤が求められている。
さらに、繊維にしわの寄らない、毛玉にならない、及び/又は収縮抵抗性を持ち、引張強度を提供し及び/又は回復するとともに、型崩れを防ぎ、繊維を柔軟にし、望みの色彩外観を保ち、及び繊維の摩耗を防ぐ特性及びその特長を維持する洗剤及び/又は繊維のケアー組成物求める需要がある。特に、洗濯する織物にしばしば付着して残留する汚れの色彩成分を除去することのできる組成物を含めることヘの要求がある。さらに、繊維の漂白に適した改良された方法及び組成物に対する要求がある。
本発明は改良された安定性及び/又は触媒活性を持つサーモリシン類似のすくなくとも一つの中性プロテアーゼ酵素を含む方法及び組成物を提供する。ある実施の態様においてはサーモリシンは洗浄及び洗剤を含む他の応用分野で使用することができる。ある特別に好ましい実施の態様においては、本発明は洗剤誘発不活化に抗する様に形成され、操作されたサーモリシンを含む方法及び組成物を提供する。
本発明は単離されたサーモリシン及び中性金属プロテアーゼ抑制剤を含む組成物を提供し、サーモリシンはジオバチルスサーモリシン又はバチルスサーモリシンである。ある実施の態様においては、本発明の組成物は単離されたサーモリシン及びフォスフォラミドン及びガラルジンから選択された中性金属プロテアーゼ抑制剤を含む。ある実施の態様においては、本発明の組成物のサーモリシンはG.カルドプロテオリチカス又はG.ステアロサーモフィルス、サーモリシンであり、他の実施の態様においては、本発明の組成物はB.サーモプロテオリチカスサーモリシンである。ある特別な実施の態様においては、本発明の組成物は配列番号3に示すアミノ酸配列を含むサーモリシンと少なくとも50%(50−100%、好ましくは少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 又は99%)のアミノ酸の同一性を持つサーモリシンを含む。 他の実施の態様においては、本発明の組成物は配列番号3に示すアミノ酸配列を含むサーモリシンを含む。さらに他の実施の態様においては、本発明の組成物は配列番号3のサーモリシンを含む。
さらに、本発明はより改良された安定性及び/又は効果を持つ単離されたサーモリシン変異体を提供する。ある好ましい実施の態様においてはサーモリシン変異体は、配列番号3に示すアミノ酸配列の6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を持つアミノ酸配列を持つジオバチルスサーモリシン変異体である。これらの実施の態様のあるサブセットでは、一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列の6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に1、2、3、4又は5つの置換を含む。さらなる実施の態様においては、本発明は配列番号3に示すアミノ酸配列の4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持ち、より改良された安定性及び/又は効果を持つ単離されたジオバチルスサーモリシン変異体を提供する。これらの実施の態様におけるあるサブセットでは、一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列の4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280及び297の位置と同等の位置から選択された位置に1、2、3、4又は5つの置換を含む。
ある他の実施の態様においては、本発明は以下の置換グループから選択される一以上の置換を含むサーモリシン変異体を提供する。すなわち表7−1、表8−1及び表8−2に示した、そしてより改良された安定性及び/又は効果を持つ置換である:
Figure 0006894342
これらの実施の態様のあるサブセットでは一以上の置換は以下の置換グループから選択される1,2、3,4、又は5の置換を含む。すなわち表7−1、表8−1及び表8−2に示した以下の置換である:
Figure 0006894342
さらに本発明は野生型ジオバチルス属サーモリシン(例えば、配列番号3に示すアミノ酸配列を含むサーモリシン)と比較して改良された安定性及び/又は効果を持つ単離されたサーモリシン変異体を提供する。ある実施の態様においては、本発明は改良された熱安定性、より低い又はより高いpH条件下で改良された効果、及び改良された自己分解安定性の内の一以上の改良点を含む単離されたサーモリシン変異体を提供する。
ある実施の態様においては、本発明は配列番号3に示すアミノ酸配列と50から99%(少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 又は 99%)のアミノ酸の同一性を持つサーモリシン変異体をコードするポリヌクレオチドにより形質転換されたバチルス属宿主細胞を提供する。
本発明はまた以下、すなわち、i) 配列番号3に示すアミノ酸配列を含むサーモリシンと50から99%(少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 又は 99%)のアミノ酸の同一性を持つサーモリシン変異体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより宿主細胞を形質転換すること、及びii)サーモリシンの生成に適した条件下で形質転換された宿主細胞を培養することを含む、サーモリシン活性を持つ酵素を生成する方法を提供する。任意選択的に本発明の方法はさらに生成されたサーモリシンを収穫することを含む。ある実施の態様においては、本発明はi) 配列番号3に示すアミノ酸配列を含むサーモリシンと少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 又は 99%のアミノ酸の同一性を持つサーモリシン変異体をコードするポリヌクレオチドを含むサーモリシン変異体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより宿主細胞を形質転換すること、及び ii) サーモリシンの生成に適した条件下で形質転換された宿主細胞を培養することを含む、サーモリシン活性を持つ酵素を生成する方法を提供する。任意選択的に本発明の方法はさらに生成されたサーモリシンを収穫するステップを含む。ある他の実施の態様においては本発明はサーモリシン活性を持つ酵素の生成方法を提供し、前記方法はi)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むサーモリシンと50から99%(少なくとも55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 又は 99%)のアミノ酸の同一性を持つサーモリシン変異体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターによりバチルス属(例えば、バチルススブチリス)宿主細胞を形質転換すること、及びii)サーモリシンの生成に適した条件下で形質転換された宿主細胞を培養することを含む。任意選択的に本発明の方法はさらに生成されたサーモリシンを収穫するステップを含む。
ある実施の態様においては、本発明は本発明の組み換えバチルス属宿主細胞から得られた少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供する。ある実施の態様においては、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む前記組成物はさらに、少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。ある実施の態様においては、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物はさらに少なくとも一つの安定剤を含む。これらの実施の態様における一つのサブセットにおいては、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化する少なくとも一つの競合的抑制剤である。代替的に少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物は、少なくとも一つの安定剤と組み合わせた少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に記載のこの安定剤のいずれも、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供するために少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせてもよい。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。
ある他の実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
他の実施の態様においては、本発明は、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素又は酵素誘導体と組み合わせて本発明の組み換えバチルス属宿主細胞から得られる少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供する。ある実施の態様においては、少なくとも一つのサーモリシン変異体及びプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素又は酵素誘導体を含む組成物はさらに少なくとも一つの安定剤を含む。
これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰性界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。代替的に、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物は少なくとも一つの安定剤と組み合わせたカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に述べた安定剤のいずれも少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせて、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供しても良い。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある他の実施の態様においては、安定剤は陰性界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
ある実施の態様においては、本発明は、本発明の組み換えバチルス属宿主細胞から得られる少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む洗浄組成物を提供する。ある実施の態様においては、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む前記洗浄組成物はさらに少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。他の実施の態様においては、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む前記洗浄組成物はさらに少なくとも一つの安定剤を含む。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール。
亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある他の実施の態様においては、安定剤は陰性界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。代替的に、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む洗浄組成物は少なくとも一つの安定剤と組み合わせたカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に述べた安定剤のいずれも少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせて少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供する。
ある他の実施の態様においては、安定剤は陰性界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
他の実施の態様においては、本発明は、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素及び酵素誘導体と組み合わせて、本発明の組み換えバチルス属宿主細胞から得られる少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む洗浄組成物を提供する。
ある実施の態様においては、少なくとも一つのサーモリシン変異体及びプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素及び酵素誘導体を含む洗浄組成物はさらに少なくとも一つの安定剤を含む。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰性界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。代替的に、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む洗浄組成物は少なくとも一つの安定剤と組み合わせた少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に述べた安定剤のいずれも少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせて少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供する。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。他の実施の態様においては、安定剤は陰性界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
ある実施の態様においては、本発明は改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む組成物を提供する。ある実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む組成物は、さらに少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。ある代替的な実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む組成物は、さらに少なくとも一つの安定剤を含む。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。
他の実施の態様においては、安定剤は陰性界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。代替的に、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む組成物は、少なくとも一つの安定剤と組み合わせた少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に記載のこの安定剤のいずれも、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供するために少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせてもよい。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある他の実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
ある実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体は、配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持つジオバチルスサーモリシン変異体である。これらの実施の態様のあるサブセットでは一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。さらなる実施の態様においては、本発明は、配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持ち、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離ジオバチルスサーモリシン変異体を提供する。
これらの実施の態様のあるサブセットでは一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。ある他の実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は表7−1、8−1及び8−2に示す、以下の置換グループから選択される一以上の置換を含む:
Figure 0006894342
これらの実施の態様のあるサブセットでは、一以上の置換は、表7−1、8−1及び8−2に示す以下の置換グループから選択される1,2,3,4、又は5の置換を含む:
Figure 0006894342
他の実施の態様においては、本発明はプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素及び酵素誘導体と組み合わせて、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む組成物を提供する。ある実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体、及びプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素及び酵素誘導体を含む組成物はさらに少なくとも一つの安定剤を含む。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。代替的に、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む組成物は、少なくとも一つの安定剤と組み合わせた少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に記載のこの安定剤のいずれも、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供するために少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせてもよい。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化する少なくとも一つの競合的抑制剤である。
ある実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は、配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持つジオバチルスサーモリシン変異体である。これらの実施の態様のあるサブセットでは一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。さらなる実施の態様においては、本発明は、配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持ち、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離ジオバチルスサーモリシン変異体を提供する。
これらの実施の態様のあるサブセットでは一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。ある実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は表7−1、8−1及び8−2に示す、以下の置換グループから選択される一以上の置換を含む:
Figure 0006894342
これらの実施の態様のあるサブセットでは、一以上の置換は、表7−1、8−1及び8−2に示す以下の置換グループから選択される1,2,3,4、又は5の置換を含む:
Figure 0006894342
ある実施の態様においては、本発明は改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む洗浄組成物を提供する。ある実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む洗浄組成物はさらに少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。
ある他の実施の態様においては、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む洗浄組成物はさらに少なくとも一つの安定剤を含む。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
代替的に、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む洗浄組成物は、少なくとも一つの安定剤と組み合わせた少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に記載のこの安定剤のいずれも、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供するために少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせてもよい。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
ある実施の態様においては、洗浄組成物に含まれ、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持つジオバチルスサーモリシン変異体である。これらの実施の態様のあるサブセットでは一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。
さらなる実施の態様において、洗浄組成物に含まれ、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持ち、改良された安定性及び/又は効果を持つジオバチルスサーモリシン変異体である。
これらの実施の態様のあるサブセットでは、一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。ある他の実施の態様においては、洗浄組成物に含まれ、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は表7−1、8−1及び8−2に示す、以下の置換グループから選択される一以上の置換を含むアミノ酸配列を持つジオバチルスサーモリシン変異体である:
Figure 0006894342
これらの実施の態様のあるサブセットでは、一以上の置換は、表7−1、8−1及び8−2に示す以下の置換グループから選択される1,2,3,4、又は5の置換を含む:
Figure 0006894342
他の実施の態様においては、本発明はプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素及び酵素誘導体と組み合わせて、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む洗浄組成物を提供する。ある実施の態様においては、前記洗浄組成物は改良された安定性及び/又は効果を持ち、及びプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素及び酵素誘導体を含む単離サーモリシン変異体を含み、さらに少なくとも一つの安定剤を含む。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
代替的に、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む洗浄組成物は、少なくとも一つの安定剤と組み合わせた少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンを含む。上に記載のこの安定剤のいずれも、少なくとも一つのサーモリシン変異体を含む組成物を提供するために少なくとも一つのカルシウムイオン及び/又は亜鉛イオンと組み合わせてもよい。これらの実施の態様のあるサブセットでは、安定剤はホウ砂、グリセロール、亜鉛イオン、カルシウムイオン、及びギ酸カルシウムから選択される。ある実施の態様においては、安定剤は陰イオン界面活性剤の存在下でサーモリシンを安定化させる少なくとも一つの競合的抑制剤である。
ある実施の態様においては、洗浄組成物に含まれ、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持つジオバチルスサーモリシン変異体である。これらの実施の態様のあるサブセットでは一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列6, 7, 49, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 128, 151, 156, 196, 273, 278, 及び280の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。
さらなる実施の態様において、洗浄組成物に含まれ、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に一以上の置換を含むアミノ酸配列を持ち、改良された安定性及び/又は効果を持つジオバチルスサーモリシン変異体である。
これらの実施の態様のあるサブセットでは、一以上の置換は配列番号3に示すアミノ酸配列4, 6, 7, 36, 49, 53, 56, 58, 61, 63, 65, 75, 85, 108, 128, 129, 151, 156, 194, 195, 196, 261, 265, 273, 278, 280 及び297の位置と同等の位置から選択された位置に1,2,3,4、又は5の置換を持つ。ある他の実施の態様においては、洗浄組成物に含まれ、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体は表7−1、8−1及び8−2に示す、以下の置換グループから選択される一以上の置換を含むアミノ酸配列を持つジオバチルスサーモリシン変異体である:
Figure 0006894342
これらの実施の態様のあるサブセットでは、一以上の置換は、表7−1、8−1及び8−2に示す以下の置換グループから選択される1,2,3,4、又は5の置換を含む:
Figure 0006894342
ある実施の態様においては、本明細書に記載の改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体を含む洗浄組成物はいずれも洗剤である。ある実施の態様においては、組成物は洗剤組成物である。他の実施の態様においては、組成物は液体である。
ある実施の態様においては、本発明は改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体を含む組成物、例えば、洗浄組成物であり、少なくとも約0.0001重量%のサーモリシン変異体、又は約0.001から約0.5重量%の同じサーモリシン変異体を含む組成物を提供する。任意選択的に、本明細書の組成物は、改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体を含む組成物、例えば、洗浄組成物であり、さらに少なくとも一つの付加成分を含む。代替的にある実施の態様においては、組成物、例えば、洗浄組成物は、前記組成物に約3から約5の純粋のpHを提供するに十分な量のpH調整剤をさらに含み、前記組成物は約3から約5のpHで加水分解する材料を実質的に含まない。ある実施の態様においては、約3から約5のpHで加水分解する材料は少なくとも一つの界面活性剤を含む。ある好ましい実施の態様においては、界面活性剤はエチレンオキシド部分を含むアルキル硫酸ナトリウム界面活性剤である。ある実施の態様においては、前記組成物は改良された安定性及び/又は効果を持つサーモリシン変異体を含む組成物、例えば、洗浄組成物、は洗剤である。さらに、本発明は改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む動物の飼料用組成物を提供する。さらなる実施の態様においては、本発明は改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む繊維加工用組成物を提供する。さらに他の実施の態様においては、本発明は改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む皮革加工用組成物を提供する。
さらに、本発明は表面及び/又は織物を含む商品を、改良された安定性及び/又は効果を持つ単離サーモリシン変異体を含む洗浄組成物に接触させるステップを含む。ある実施の態様においては、洗浄の方法には、さらに、表面及び/又は材料を洗浄組成物に接触させた後に表面及び/又は材料を濯ぐステップを含む。
図1はジオバチルス カルドロプロテオリティカスサーモリシン類似の中性金属プロテアーゼ酵素(本明細書で、サーモリシン、プロテイナーゼーT又はPrTとも言う)の成熟形のアミノ酸配列(配列番号3)を提供する。 図2はpHPLTプラスミドのマップを提供する。 図3はpHPLT−サーモリシン発現ベクターのマップを提供する。 図4A−BはpHPLT−サーモリシン発現ベクターの核酸配列(配列番号8)を提供する。 図5はUnilever ALL Small and Mighty 3X洗剤中において室温で培養後にサーモリシン及びNprEのプロテアーゼ活性を比較したグラフを提供する。 図6はProctor & Gamble TIDE(登録商標) Fresh Breeze 1X洗剤中において室温で培養後のサーモリシン及びNprEのプロテアーゼ活性を比較したグラフを提供する。 図7はProctor & Gamble TIDE(登録商標) Fresh Breeze 2X洗剤中において室温で培養後にのサーモリシン及びNprEのプロテアーゼ活性を比較したグラフを提供する。 図8は既知の金属プロテイナーゼ抑制剤の存在又は不存在下でUnilever ALL Small and Mighty 3X洗剤中で長期培養した後のサーモリシンの安定性のSDS-PAGE分析を示す。 図9はサーモリシン(T)及びNprEアミノ酸配列の組み合わせ(alignment)を提供する。サーモリシン配列は配列番号3に示し、NprE配列は配列番号9に示す。
発明の一般的説明
本発明は改良された安定性及び/又は触媒活性を持つサーモリシン類似のすくなくとも一つの中性プロテアーゼ酵素を含む方法及び組成物を提供する。ある実施の態様においてはサーモリシンは洗浄及び洗剤を含む他の応用分野で使用することができる。ある特に好ましい実施の態様においては、本発明は洗剤誘発不活化に抗する様に形成され、操作されたサーモリシンを含む方法及び組成物を提供する。
断らない限り、本発明においては分子生物学、微生物学及び組み換えDNA分野で通常用いられる従来の技術を用いて実施され、これらは当業者の常識の範囲である。その様な技術は当業者に知られており、数多くの教科書及び参考文献に記載されている(例えば、Sambrook 他、「分子クローン:実験室マニュアル」(Molecular Cloning: A Laboratory Manual),第2版 (Cold Spring Harbor), [1989]); 及び Ausubel他、「分子生物学における今日の手順」(Current Protocols in Molecular Biology [1987])を参照願いたい)。本明細書に記載の全ての特許、特許出願、論文及び刊行物は、すでに記載のもの、以下に記載するものを問わず、参照により本明細書に組み入れられる。
断らない限り、本明細書で用いられる技術及び科学上の用語は、本発明が関係する分野の当業者により通常理解されるものと同様の意味を持つ。例えば、Singleton及びSainsburyの「微生物学及び分子生物学辞典」(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)第2版、John Wiley and Sons, NY (1994); 及びHale及びMarhamの 「Harper Collins 生物学辞典」(The Harper Collins Dictionary of Biology), Harper Perennial, NY (1991)は当業者に、本明細書で使用される多くの用語の一般的辞書を提供する。本明細書に記載の方法及び材料と同様の又は同等の方法及び材料は本発明の実施のために使用され得るが、好ましい方法及び材料が本明細書に記載される。したがって、以下に定義される用語は明細書を全体として参照することによってより的確に規定される。
また、本明細書で使用する単数を表わす「a」「an」及び「the」は、文意より明確に異なる意味に解せられない限りその複数形をも含む。数値範囲はその範囲を規定する数値を含む。他に断らない限り、各々、核酸は左から右へ5’ から3’の方向へ記載され;アミノ酸配列は左から右へ、アミノ基からカルボキシ基の方向に記載される。本発明は記載された特定の方法論、手順、及び試薬に限定されるものではないことを理解するべきである。
これらは当業者により使用される状況により変わりうるからである。
更に、本明細書に記載の各見出しは、本発明の種々の特徴又は実施の態様を限定するものではなく、本発明は明細書を全体として考察することにより把握することができる。したがって、これに直ちに続く定義は明細書を全体として考察することにより更に十分に理解される。しかし、本発明の理解の促進を図るために、多数の用語を以下に定義する。
定義 本明細書において、他の意味を持つものとして規定しない限り、本明細書の全ての技術及び科学用語はこの発明が関係する技術分野の当業者により通常理解されると同じ意味を持つ。本明細書に記載のこれらの方法と同様又は同等な方法及び材料は、本発明の実施に使用することができるが、本明細書では好ましい方法及び材料が記載されている。したがって、以下に続いて定義される用語は明細書を全体として考察することにより、より完全に把握することができる。
また、本明細書で使用する単数を表わす「a」「an」及び「the」は、文意より明確に異なる意味に解せられない限りその複数形をも含む。断らない限り、各々、核酸は左から右へ5’ から3’の方向へ記載され;アミノ酸配列は左から右へ、アミノ基からカルボキシ基の方向に記載される。本発明は記載された特定の方法論、手順、及び試薬に限定されるものではないことを理解するべきである。これらは当業者により使用される状況により変わりうるからである。
本明細書を通じ記載されている各最大限界数値は、その下限数値が本明細書に記載されている様に、各下限値を含んでいることを意図している。本明細書を通じ記載されている各最小限界数値は、その上限限界値が本明細書に記載されている様に、各上限値を含んでいることを意図している。本明細書を通じ記載されている各数値範囲は、そのより狭い数値範囲が、全て本明細書に記載されている様に、その様なより広い数値範囲内にある各狭い数値範囲を含む。
引用される文献のすべては、その関連する部分について参照により本明細書に組み入れられ、文献の引用により、その様な文献が本発明との関係において先行技術であることを承認するものと理解してはならない。
本明細書で用いる「プロテアーゼ」(protease)及び「タンパク質分解活性」(proteolytic activity)はペプチド又はペプチド結合を持つ基質を加水分解する能力を示すタンパク質又はペプチドを言う。タンパク質分解活性を測定するための多くの知られた手順が存在する(Kalisz,「微生物プロチナーゼ」(Microbial Proteinases)Fiechter (編纂), Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology, [1988]を参照)。例えば、タンパク質分解活性は比較アッセイにより確認しても良く、それにより市販の基質を加水分解するプロテアーゼの各能力を分析する。その様なプロテアーゼ及びタンパク質分解活性の分析で有用な代表的な基質はジメチル カゼイン(Sigma C-9801), 牛のコラーゲン (Sigma C-9879), 牛のエラスチン(Sigma E- 1625)及び牛のケラチン (ICN Biomedical 902111)を含むがこれに限定されるものではない。これらの基質を使用する熱量アッセイは技術分野で良く知られている(例えば、WO 99/34011及び米国特許第6,376,450号を参照願いたい。これらの文献は参照により本明細書に組み入れられる。)pNAアッセイ(例えば、Del Mar他、Anal Biochem, 99:316-320 [1979]を参照願いたい)はまた、勾配溶離中に回収される部分の活性酵素濃度を決定するのに用いることが出来る。このアッセイは、酵素が可溶合成基質、スクシニルーアラニンーアラニンープロリンーフェニルアラニンーp−ニトロアニリド(sAAPF-pNA)を加水分解するに連れてp−ニトロアニリンが放出される速度を測定する。加水分解反応から黄色の生成される速度が分光光度計において410nm波長で測定され、これは活性酵素濃度に比例する。さらに280nmでの吸光測定は全タンパク質濃度の決定に用いることができる。活性酵素/全タンパク質の比率は酵素純度を示す。
本明細書で用いる「NprE プロテアーゼ」及び 「NprE」は本明細書に言う中性金属プロテアーゼを指す。ある好ましい実施の態様においては、NprE プロテアーゼは精製されたMULTIFECT(登録商標)Neutral又はバチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)から得られるPMNとして本明細書で呼ばれるプロテアーゼである。この様に、ある実施の態様においては、「PMNプロテアーゼ」はバチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来の天然に発生する成熟プロテアーゼを指す。
他の実施の態様においては、本発明はNprE プロテアーゼの部分を提供する。
「バチルス プロテアーゼ 同族体」(Bacillus protease homologue)の用語はバチルス テルモプロテオリチクス サーモリシン(Bacillus thermoproteolyticus thermolysin)又はその様な天然発生プロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列に由来する成熟プロテアーゼと実質的に同一のアミノ酸配列を持つ天然発生プロテアーゼを指し、そのプロテアーゼはその様な核酸によりコードされる中性金属プロテアーゼの機能的特徴を保持している。
本明細書で用いる「サーモリシン変異体」は、特にその機能において野生型サーモリシンに類似するが、野生型プロテアーゼとその配列を異にするアミノ酸配列中に変異を持つプロテアーゼを指すのに用いる。
本明細書で用いるバチルス(Bacillus)種の用語はバチルス属の中の全ての種を言い、バチルス科(Family Bacillaceae), バチルス目(Order Bacillales), バチルス綱(Class Bacilli)のメンバーとして分類されるグラム陽性細菌である。バチルス属はバチルス スブチリス (Bacillus subtilis)、バチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス レンツス (Bacillus lentus)、バチルス ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amylloliquefaciens)、バチルス クラウシ(Bacillus clausii)、バチルス ハロジュランス(Bacillus halodurans)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス ランツス(Bacillus lantus)及びバチルス ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)を含む技術分野で知られているバチルス属内の全ての種を含み、これらに限定されるものではない。
Bacillus属は分類上の再編成を受けることが知られている。バチルス属は、これに限定されるものではないが、現在「ゲオバチルス ステアロテルモフィルス」(Geobacillus stearothermophilus)と呼ばれているバチルス ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)のような有機体を含み、分類上の再編成を受けた種を含むと考えられる。酸素の存在下において耐性のある内生胞子を生産することがバチルス属を規定する特徴と考えられる。この特徴はまた最近命名されたアリシクロバチルス(Alicyclobacillus), アンフィバチルス(Amphibacillus), アネウリニバチルス(Aneurinibacillus), アノキシバチルス(Anoxybacillus), ブレビバチルス(Brevibacillus), フィロバチルス(Filobacillus), グラシリバチルス(Gracilibacillus), ハロバチルス(Halobacillus), パエニバチルス(Paenibacillus), サリバチルス(Salibacillus), テルモバチルス(Thermobacillus), ウレイバチルス(Ureibacillus), ビルギバチルス(Virgibacillus)に当てはまる。
関連する(及び由来の)タンパク質は「変異タンパク質」(variant protein)を含む。
ある好ましい実施の態様においては、変異タンパク質は親タンパク質と及びお互いにアミノ酸残基の数が少し異なる。異なるアミノ酸残基の数は一以上、好ましくは1, 2, 3, 4, 5, 10, 15, 20, 30, 40, 50,又はそれより多いのがよい。ある好ましい実施の態様においては、変異体の間の異なるアミノ酸残基の数は1及び10の間である。特に好ましくは実施の態様においては、関連するタンパク質及び特に変異体タンパク質は少なくとも35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 97%, 98%, 又は99%のアミノ酸配列が同一である。さらに本明細書で用いる関連するタンパク質又は変異体タンパク質は他の関連するタンパク質又は親タンパク質と顕著な領域の数において異なるタンパク質を言う。例えば、ある実施の態様においては、変異体タンパク質は親タンパク質と異なる1, 2, 3, 4, 5, 又は10の対応する顕著な領域を持つ。
本発明の酵素の変異体を生成するのに好適な幾つかの方法が知られており、部位飽和突然変異、走査突然変異、挿入突然変異、ランダム突然変異、部位特異的突然変異、及び指向進化、及びその他の種々の組み換えアプローチを含むがこれに限定されるものではない。
野生型及び変異タンパク質の特徴の決定は任意の方法又は好適な「試験」により実現され、好ましくは関心の対象である特性の評価に基づくのが良い。例えば、pH及び/又は温度、並びに洗剤及び/又は酸化安定性は本発明のある実施の態様において決定される。事実、これらの一以上の特徴(pH,温度、タンパク質分解に対する安定性、洗剤安定性、及び/又は酸化安定性)で種々のレベルの安定性を持つ酵素を使用することができることが意図されている。
「ポリヌクレオチド」(polynucleotide)及び「核酸」(nucleic acid)の用語は本明細書において相互交換的に用いられ、任意の長さのポリマー形式のヌクレオチドを指し、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを問わない。これらの用語は単一鎖、二重鎖、又は三重鎖DNA、ゲノムDNA, cDNA, RNA, DNA-RNAハイブリッド又はプリン及びピリミジン塩基を含むポリマー又は他の天然の、化学的、生物学的に修飾された、非天然の、又は誘導体ヌクレオチド塩基を含むがこれに限定されるものではない。以下に挙げるものはポリヌクレオチドの非限定的例である:遺伝子、遺伝子断片、染色体断片、EST, エクソン、イントロン、mRNA, tRNA, rRNA, リボザイム, cDNA, 組み換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の分離RNA、核酸プローブ及びプライマである。ある実施の態様においては、ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドの様な修飾されたヌクレオチド及びヌクレオチドアナログ、ウラシル、他の糖、及びフロロリボース、チオエートのような連結基及びヌクレオチド分枝を含む。他の実施の態様においては、ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断される。
本明細書で用いる「DNA構築体」(DNA construct)及び 「形質転換DNA」(transforming DNA)は相互交換的に用いられ、宿主細胞又は有機体に配列を導入するために用いるDNAを指す。このDNAはインビトロでPCRにより又は技術分野で知られた任意の好適な技術によって生成することができる。ある特に好ましい実施の態様においては、このDNA構築体は関心の対象の配列(例えば、入って来る配列(incoming sequence)として)を含む。
ある実施の態様においては、配列は制御要素(例えば、プロモータ等)の様な追加要素に動作可能にリンクされている。DNA構築体はさらに選択可能なマーカーを含んでも良い。
それはさらに、ホモロジーボックスが側面に付いた、入ってくる配列を含む。更なる実施の態様においては、形質転換DNAは末端に加えられた他の非相同配列を含む(例えば、スタッファ配列又は側面)。ある実施の態様においては、入ってくる配列の末端は閉じられており、そのため、形質転換DNAは閉じた円を形成する。形質転換配列は野生型、突然変異体又は修飾されたものであっても良い。ある実施の態様においては、DNA構築体は宿主細胞染色体に相同な配列を含む。他の実施の態様においては、DNA構築体は非相同配列を含む。DNA構築体がインビトロで組立てられると、それは1)非相同配列を宿主細胞の所望の標的配列に挿入する、及び/又は2)宿主細胞染色体の領域に突然変異を起させる(例えば、内在性配列を非相同配列で置換する)及び/又は3)標的遺伝子を欠失させる、及び/又は宿主に複製型プラスミドを導入する。
本明細書で用いる「発現カセット」(expression cassette)及び「発現ベクター」(expression vector)はある標的細胞中の特定の核酸の転写を認める一連の特定された核酸要素(nucleic acid element)を持つ組み換え又は合成により生成された核酸構築体を指す。組み換え発現カセットはプラスミド、染色体、ミトコンドリアのDNA、プラスチドDNA、ウイルス、又は核酸断片に組み入れることができる。典型的には、発現ベクターの組み換え発現カセット部分は、他の配列の中でも、転写される核酸及びプロモータを含む。
好ましい実施の態様においては、発現ベクターは宿主細胞に非相同DNA断片を組み入れ及び発現する能力を持つ。多くの原核生物及び真核生物発現ベクターは市場で調達可能である。好適な発現ベクターを選択することは当業者の常識の範囲にある。「発現カセット」(expression casette)の用語は本明細書において「DNA構築体」及びその文法的同等体と相互交換的に用いられる。適当な発現ベクターを選択することは当業者の常識の範囲内にある。
本明細書で用いる、「ベクター」(vector)は核酸を一以上の細胞型に導入する様に設計されたポリヌクレオチド構築体を指す。ベクターはクローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、カセット等を指す。ある実施の態様においては、ポリヌクレオチド構築体は、好適な宿主細胞でDNAを発現させることのできる好適なプロ配列(例えば、分泌腺など)に動作可能にリンクされているプロテアーゼ(例えば、前駆体又は成熟プロテアーゼ)をコードするDNA配列を含む。
本明細書で用いる「プラスミド」(plasmid)はクローニングベクターとして用いられる環状二重鎖(ds)DNA構築体を指し、このプラスミドはある新核生物又は原核生物中の染色体外自己複製遺伝子要素を形成し又は宿主染色体に一体化する。
細胞に核酸配列を導入することについて本明細書で用いられる「導入される」(introduced)は核酸配列を細胞に転写するのに好適な任意の方法を指す。導入のためのその様な方法は原形質融合、トランスフェクション、形質転換、接合及び軽質導入を含むがこれに限定されるものではない(例えば、Ferrari他、「遺伝子」(Genetics)、Hardwood 他 (編纂), 「バチルス」(Bacillus)、Plenum Publishing Corp., 57-72ページ [1989]参照)。
本明細書で用いる「形質転換された」(transformed)及び「安定的に形質転換された」(stably transformed)は非天然(非相同)ポリヌクレオチド配列がそのゲノムに一体化され又は少なくとも2世代に亙り維持されるエピソーププラスミドとしての細胞を指す。
本明細書で用いる「選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列」(selectable marker-encoding nucleotide sequence)の用語は宿主細胞で発現が可能であり、選択可能なマーカーの発現は発現された遺伝子を含む細胞に、対応する選択剤の存在下で又は必須栄養素が存在しない中で成長する能力を与える、ヌクレオチド配列を指す。
本明細書で用いる、「選択可能なマーカー」(selectable marker)又は「選択マーカー」(selective marker)の用語は、ベクターを含むこれらの宿主の選択を容易にする宿主細胞中で発現することが可能な核酸(例えば、遺伝子)を指す。これらの選択可能なマーカーの例には、抗菌剤を含むが、これに限定されるものではない。このように「選択可能なマーカー」は、宿主細胞が関心の対象となる入ってくるDNAを取り上げた、又は他のある反応が起きた兆候を示す遺伝子を言う。典型的には選択可能なマーカーは、外因性DNAを含む細胞を、形質転換中に外因性配列を受容していない細胞から区別する宿主細胞に抗菌剤耐性を与え、又は代謝上の利益を与える遺伝子を指す。「居住する選択可能なマーカー」(residing selectable marker)は形質転換される、微生物の染色体にあるマーカーである。居住する選択可能なマーカーは形質転換DNA構築体上の選択可能なマーカーとは異なる遺伝子をコードする。選択マーカーは当業者に良く知られている。上に述べた様に、好ましくはマーカーは抗菌剤耐性マーカーである(例えば、ampR; phleoR; specR ; kanR; eryR; tetR; cmpR; 及びneoR (例えば、Guerot-Fleury, Gene, 167:335- 337 [1995); Palmeros他、Gene 247:255-264 [2000];及びTrieu-Cuot他、Gene, 23:331-341, [1983]を参照)のが良い。本発明で有用な他のマーカーは、トリプトファンの様な栄養要求性マーカー、β―ガラクトシダーゼの様な検出マーカーを含むがこれに限定されるものではない。
本明細書で用いる「プロモータ」(promoter)は下流遺伝子の転写を指示するように機能する核酸配列を指す。好ましい実施の態様においては、プロモータは標的遺伝子を発現させる宿主細胞に適している。プロモータは他の転写及び翻訳調整核酸配列(これは「制御配列」(control sequences)とも呼ばれる)とともにある遺伝子を発現させるのに必要である。一般的に転写及び翻訳調整配列には、プロモータ配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終了配列、翻訳開始及び終了配列、及びエンハンサ又は活性配列を含むがこれに限定されるものではない。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係におかれた場合「動作可能にリンクされている」(operably linked)。例えば、分泌リーダー(例えば、シグナル ペプチド)をコードするDNAは、もしポリペプチドの分泌に参加する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAと動作可能にリンクされており;プロモータ又はエンハンサは、配列の転写に影響する場合は、コード配列に動作可能にリンクされており;リボソーム結合部位は、翻訳を促進するような位置にある場合、コード配列と動作可能にリンクされている。一般的に、「動作可能にリンクされている」はリンクされているDNA配列が連続しており、そして分泌リーダーの場合は連続しかつ読取層(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサは連続である必要はない。リンクは適当な制限部位での結紮により行われる。もしその様な部位がない場合は、従来の慣例に従い合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
本明細書で用いる「遺伝子」(gene)はポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、DNAセグメント)を指し、個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)のみならずコード領域に先行し及び続く領域を含む。
本明細書で用いる、「相同遺伝子」(homologous genes)は、異なるが、通常関連している種の一対の遺伝子を言い、これらの種は互いに対応し、及びお互いに同一又は非常に類似している。この用語は遺伝子複製によって分離された遺伝子(例えば、パラロガス遺伝子)のみならず、種分化(speciation:すなわち、新しい種の開発)(例えば、オルソロガス遺伝子)によって分離された遺伝子を含む。
本明細書で用いる、「オルソログ」(ortholog)及び「オルソロガス遺伝子」(orthologous gene)は種分化によって共通の先祖遺伝子(すなわち、相同遺伝子)より進化した異なる種の遺伝子を言う。典型的には、オルソログは進化の過程で同じ機能を保持する。
オルソログの同定は新しく配列決定されたゲノムでの遺伝子機能を予測する信頼される方法として用いられる。
本明細書で用いる、「パラログ」(paralog)及び「パラロガス遺伝子」(paralogous gene)はゲノム内で複製されることにより関連する遺伝子を言う。オルソログが進化の過程で同じ機能を保持するのに対し、パラログは、その幾つかの機能は元の機能としばしば関連するものであるが、新しい機能を発展させる。
パラロガス遺伝子の例には、これらは全てセリンプロテナーゼであり、同じ種内で一緒に生じるトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ及びトロンビンをコードする遺伝子を含むがこれに限定されるものではない。
本明細書で用いる「相同」(ホモロジー)(homology)は配列の類似又は同一性、好ましくは同一であるのが良いが)を指す。この相同は技術分野で知られている標準的技術により決められる(例えば、Smith及びWaterman, Adv. Appl. Math., 2:482 [1981]; Needleman及びWunsch, J. MoI. Biol., 48:443 [1970]; Pearson及びLipman, Proc. Natl. Acad .Sci. USA, 85:2444 [1988]; Wisconsin Genetics Software Package中のGAP, BESTFIT, FASTA, 及びTFASTAの様なプログラム, Genetics Computer Group, Madison, WI;及びDevereux 他、Nucl. Acid Res., 12:387-395 [1984)を参照)。
本明細書で用いる「類似配列」(アナログ配列)(analogous sequence)は、遺伝子の機能がジオバチルス カルドプロテオリチクス サーモリシン(Geobacillus caldoproteolyticus thermolysin)に基づくものと実質的に同じであるものを指すさらに、類似遺伝子はジオバチルス カルドプロテオリチクス サーモリシンの配列と少なくとも45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%,97%,98%,99% 又は100%同じ配列を含む。
更なる実施の態様においては、一以上の上記の特性が配列に適用される。類似配列は配列アラインメントにおける既知の方法により決定される。本明細書に述べる様に配列アラインメントで用いられる他の方法もあるが、通常用いられるアラインメント方法はBLASTである。
有用なアルゴリズムの一つの例はPILEUPである。PILEUPは漸進的、ペアーワイズ アラインメント(progressive, pair-wise alignment)を用いた群の関連配列から多配列アラインメントを作る。またアラインメントを作るために用いられたクラスター関係を示すツリー(tree)をプロットすることもできる。PILEUPはFeng及びDoolittleの漸進的アラインメントを簡素化したものを用いる (Feng及びDoolittle, J. MoI. Evol., 35:351-360 [1987])。この方法はHiggins及びSharpにより記述されているもの(Higgins及びSharp, CABIOS 5:151-153 [1989])と類似する。有用なPILEUPパラメータは3.00のデフォールト ギャップ ウエイト、0.10のデフォールト ギャップ レングスウエイト、及び加重エンドギャップを含む。
他の有用なアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムであり、Altschul他(Altschul他、J. MoI. Biol., 215:403-410 [1990];及びKarlin他、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90:5873-5787 [1993))により記述されている。特に有用なBLAST プログラムはWU-BLAST-2 プログラムである(Altschul他, Meth. Enzymol., 266:460-480 [1996]を参照)。WU-BLAST-2は幾つかのサーチパラメータを用いるが、その大半はデフォールト値に設定される。調整可能なパラメータは以下の値に設定される:重複範囲=1、重複画分= 0.125、言語閾値(word threshold (T))= 11。HSP S及びHSP S2 パラメータは動値であり、特定の配列の組成及び関心の対象となる配列が調査される特定のデータベースの組成に依存するプログラム自体により決定される。しかし、これらの値は感度を高めるように調整しても良い。%アミノ酸配列による同一性の値は一致する同一の残基の数をアラインされる領域中の「より長い」配列の残基の全数によって除して決定される。「より長い」配列はアラインされる領域中に最も確かな残基(mostr actuacl residue)を持つものである(アラインメント数値を最大にする様にWU-Blast-2により導入されたギャップは考慮されない)。
宿主細胞「パーセント(%)核酸配列の同一性」(percent (%) nucleic acid sequence identity)は、開始配列のヌクレオチド残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基のパーセントとして定義される。好ましい方法は、重複範囲及び重複画分をそれぞれ1及び0.125のデフォールトパラメータに設定したWU-BLAST-2のBLASTNの基準を用いる。
本明細書で用いる、「ハイブリッドする」(hybridization)は、技術分野で知られている様に、核酸の鎖が塩基ペアを通して相補鎖と結合するプロセスを言う。
2つの配列が中程度から高度に厳格(stringency)なハイブリッド条件及び洗濯条件でお互いに特異的にハイブリッドする場合は、核酸配列は参照核酸配列に「選択的にハイブリッド可能である」(selectively hybridizable)と考えられる。ハイブリッド条件は核酸結合複合体又はプローブの溶融温度(Tm)に基づく。例えば、「最も厳格」(maximum stringency)は典型的には約Tm−5℃(プローブのTmより5℃低い);「高度に厳格」(high stringency)は、Tmより5-10℃低い;「中程度に厳格」(intermidiate stringency)はプローブのTmより約10-20℃低い;「低度に厳格」(low stringency)はTmより約20-25℃低い。
機能的には、「最も厳格」条件は、ハイブリッドプローブを用いて厳格な同一性又は厳格な同一性に近い同一性を持つ配列を同定するのに用いても良く、中程度に厳格又は低度に厳格なハイブリッド条件はポリヌクレオチド配列の相同を同定又は検出するのに用いることができる。
中程度又は高度に厳格なハイブリッド条件は技術分野で良く知られている。高度に厳格な条件の例には50%ホルムアルデヒド中、約42℃、5X SSC, 5X デンハート溶液, 0.5% SDS及び100 μg/ml 変性キャリアー DNA、続いて2X SSC 及び0.5% SDS中で室温で2度洗浄し、さらに0.1 X SSC 及び 0.5% SDSで、420Cで2度洗浄するハイブリッドを含む。中程度に厳格な条件は、20%ホルムアルデヒド、5 x SSC (150mM NaCl, 15 mM クエン酸3ナトリウム、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.6), 5 x デンハート溶液、10% 硫酸デキストラン及び20 mg/ml 変性せん断した鮭の精液DNAを含む溶液中で37℃で一夜培養し、続いて約37−50℃でIx SSC でフィルターを洗浄することを含む。当業者は、プローブ長さ等の様な要素を用いるため必要に応じて、温度、イオン強度等の調整する方法を知っている。
本明細書で用いる「組み換え体」(recombinant)の用語は、非相同核酸配列の導入により修飾された細胞又はベクター、又はその様に修飾された細胞から誘導された細胞を含む。したがって、例えば、組み換え細胞は、細胞の天然(非組み換え)型の中に同一の型がない遺伝子を発現させ、又はそうでなければ異常に発現された又は人の意図的な干渉により低発現し又は発現しない天然の遺伝子を発現させる。「組み換え」(Recombination)、「組み換えること」(recombining)及び「組み換えられた」(recombined)核酸を生成することは一般的に、その集合(assembly)がキメラ遺伝子を作る2以上の核酸断片の集合を作ることである。
ある好ましい実施の態様において、突然変異DNA配列は少なくとも一つのコドンで部位飽和突然変異誘発により生成される。他の好ましい実施の態様においては、部位突然変異誘発は2以上のコドンで実行される。さらに他の実施の態様においては、突然変異DNA配列は、野生型配列と50%より大きい、55%より大きい、 60%より大きい、 65%より大きい、 70%より大きい、 75%より大きい、80%より大きい、 85%より大きい、90%より大きい、95%より大きい、又は98%より大きい相同性を持つ。他の実施の態様においては、突然変異DNAはインビボで通常知られている任意の突然変異手順、例えば、放射、ニトロソグアジニン等を用いて生成される。そして所望のDNA配列が分離され本明細書に記載の方法に用いられる。
本明細書で用いる「標的配列」(target sequence)は、入ってくる配列が宿主細胞ゲノムに挿入されることが所望される、その配列をコードする宿主細胞中のDNA配列を指す。
ある実施の態様においては、標的配列は機能的野生型遺伝子又はオペロンをコードし、他の実施の態様において標的配列は機能的突然変異遺伝子又はオペロン又は非機能的遺伝子又はオペロンをコードする。
本明細書用いる「フランキング配列」(flanking sequence)は以下に説明する配列の上流又は下流の任意の配列を指す(例えば、遺伝子A-B-Cにおいて, 遺伝子BはA及びC遺伝子配列が両側面に沿っている)。ある好ましい実施の態様においては入ってくる配列はそれぞれの側にホモロジーボックスが側面に沿っている。他の実施の態様においては、入ってくる配列及びホモロジーボックスは両側にスタッファ配列が沿うユニットを含む。ある実施の態様においては、フランキング配列は一つの末端にのみ存在する(3’又は5’)が、好ましい実施の態様においては、それはその側面に沿う配列の何れの側にも存在する。ある実施の態様においては、フランキング配列は一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、好ましい実施の態様においては、それ沿う配列の何れの側にも存在する。
本明細書で用いる「スタッファ配列」(stuffer sequence)はホモロジーボックス(典型的にはベクター配列)に沿う任意の追加のDNAを指す。しかし、この用語は任意の非相同DNA配列を含む。理論に捕われるわけではないが、スタッファ配列は細胞がDNAの取り込みを開始するための重要でない標的を提供する。
本明細書で用いる、「増幅」(amplification)及び「遺伝子増幅」(gene amplification)は、特定のDNA配列が不釣合いに複製され、増幅された遺伝子がゲノムに当初存在したよりも多いコピー数で存在するプロセスを言う。ある実施の態様においては、薬剤(例えば、抑制可能な酵素の抑制剤)の存在下で成長によって細胞を選択することにより、薬剤の存在下で成長に必要な遺伝子製品をコードする内生遺伝子を増幅するか、又はこの遺伝子製品をコードする外因性(すなわち、投入された)配列を増幅することによるかのいずれか、又はその双方となる。
「増幅」(amplification)は鋳型特異性(template specificity)を含む核酸の複製の特異な場合である。これは非特異的鋳型複製(すなわち、複製は鋳型に依存するが、特定の鋳型に依存するものではない)と対比されるべきである。ここでの鋳型特異性は、複製が忠実であるかどうか(すなわち、適正なポリヌクレオチド配列の合成)及びヌクレオチド(リボ−又はデオキシリボ−)特異性とは区別される。鋳型特異性は、しばしば「標的」(target)特異性と呼ばれる。標的配列は、これらが他の核酸から選定されるという意味で「標的」である。増幅技術は、主にこの選定をするために設計されたものである。
本明細書で用いる、「共増幅」(co-amplification)は、単一細胞に他の遺伝子配列(すなわち、発現ベクターに含まれる一以上の非選択性遺伝子)と共に増幅マーカーを導入し、細胞が増幅可能なマーカー及び他の非選択的遺伝子配列を増幅する様に、適当な選択圧を与えることを言う。増幅可能なマーカーは物理的に他の遺伝子配列にリンクされても良く、又は代替的に、その一つは増幅可能なマーカーを含み、他は非選択的マーカーを含む2つの別々のDNA が同じ細胞に導入されても良い。
本明細書で用いる、「増幅可能なマーカー」(amplifiable marker)、「増幅可能な遺伝子」(amplifiable gene)及び「増幅ベクター」(amplification vector)は、適当な成長条件でその遺伝子を増幅させる、遺伝子又は遺伝子をコードするベクターを言う。
「鋳型特異性」(template specificity)は酵素を選択することにより殆んどの増幅技術によって実現される。増幅酵素は、それらが使用される条件下で、異種の核酸の混合物中の核酸の特異の配列のみを処理する酵素である。例えば、Qβ レプリカーゼの場合, MDV-I RNAがレプリカーゼの特異鋳型である(例えば、 Kacian 他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:3038 [1972]を参照)。他の核酸はこの増幅酵素によっては複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素はそれ自身のプロモータに厳格な特異性を持つ(Chamberlin他、Nature 228:227 [1970]を参照)。T4 DNAリガーゼの場合、この酵素は、結紮接合点でオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質及び鋳型間にミスマッチのある場合、2つのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを結紮しない(Wu 及びWallace, Genomics 4:560 [1989]を参照)。最後に、Taq 及びPfuポリメラーゼは、高温で機能するという能力のため、プライマにより画され(bounded)、それにより規定される配列に高い特異性を示すことが判明しており、高温はプライマが標的配列とハイブリッドするのに都合が良いが、非標的配列とハイブリッドするにはそうはならない熱力学条件を作り出す。
本明細書で用いる、「増幅可能な核酸」(amplifiable nucleic acid)は、任意の増幅方法により増幅される核酸を言う。「増幅可能な核酸」は通常「サンプル鋳型」(sample template)を含むと考えられる。
本明細書で用いる、「サンプル鋳型」(sample template)は、「標的」(target)(以下に定義される)の存在が分析されるサンプル由来の核酸を言う。対照的に、「バックグラウンド鋳型」(background template)は、サンプル中に存在し、又は存在しないサンプル鋳型と異なる核酸について用いられる。バックグラウンド鋳型は殆んどの場合偶然による。それはキャリーオーバーの結果であるか、又はサンプルから精製されて除去される核酸汚染物質の存在によるものである。例えば、検知されるべき有機体以外の有機体からの核酸は、テストサンプル中にバックグラウンドとして存在することもある。
本明細書で用いる、「プライマ」(primer)は、精製された制限消化の様に自然に生成されるか合成により生成されるかを問わず、核酸鎖に相補的なプライマ伸長製品の合成が誘発される条件下に置かれる場合、合成の開始点として作動することができる(すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼの様な誘発剤の存在下及び好適な温度及びpHで)オリゴヌクレオチドを言う。オリゴヌクレオチドは、。プライマは、増幅で最大の効果を得るためには好ましくは単一鎖であるのが良いが、代替的に、二重鎖であっても良い。もし、二重鎖の場合は、プライマはまず、伸長製品を得るために使用する以前に、その鎖を分離する処理がなされる。好ましくは、プライマはオリゴデキシリボヌクレオチドであるのが良い。プライマは誘発剤の存在下で伸長製品の合成を準備するために十分長くなければならない。プライマの正確な長さは、温度、プライマソース及び使用法を含み数多くの要因に依る。
本明細書で用いる、「プローブ」(probe)は、精製された制限消化の様に自然に生成されるか、合成により、組み換えにより又はPCR増幅により生成されるかを問わず、関心の対象である他のオリゴヌクレオチドにハイブリッドすることができるオリゴヌクレオチドを言う。プローブは単一鎖であるか又は二重鎖であっても良い。プローブは特定の遺伝子配列の検出、同定及び単離に有用である。本発明で用いられるいずれのプローブも任意の「レポーター分子」(reporter molecule)によりラベルを付されることが予定され、酵素(例えば、酵素ベースの組織化学的アッセイのみならずELISA)、蛍光、放射線、及び発光システムを含む検出システムで検出することができるが、これに限定されるものではない。本発明は特定の検出システム又はラベル方式に限定されるものではない。
本明細書で用いる、「標的」(target)は、ポリメラーゼ連鎖反応との関係で用いる場合は、ポリメラーゼ連鎖反応に使用されるプライマにより画された(bounded)核酸の領域を言う。したがって、「標的」は他の核酸配列から選定される。「部分」(segment)は標的配列内の核酸の領域として定義される。
本明細書で用いる、「ポリメラーゼ連鎖反応」(polymerase chain reaction (PCR))は米国特許第4,683,195号, 第4,683,202号及び第4,965,188号に記載の方法を言う。これらの文献は参照により本明細書に組み入れられる。この方法は、クローン又は精製をすることなくゲノムDNA混合物中で標的配列のある部分の濃度を増大させる方法を含む。
標的配列を増幅するこのプロセスは、所望の標的配列を含むDNA混合物に過剰な量の2つのオリゴヌクレオチドを導入し、続いてDNAポリメラーゼの存在下で厳密な熱サイクル工程を実施することを含む。2つのプライマは二重ストランド標的配列の各標的ストランドに相補的である。増幅を行うため、混合物は変性されそしてプライマが標的分子内のその相補配列にアニールされる。アニールに続いて、プライマはポリメラーゼにより伸長され新たな一組の相補ストランドを作る。変性、プライマのアニール及びポリメラーゼによる伸長は何度も繰り返され(すなわち、変性、アニール及びポリメラーゼによる伸長は一つの「サイクル」を構成し、数多くの「サイクル」があり得る)所望の標的配列の高い濃度の増幅された配列が得られる。所望の標的配列の増幅された配列の長さはプライマの間のお互いの相対的位置により決定され、そのためこの長さは制御可能なパラメータである。
このプロセスが繰り返されるため、この方法は「ポリメラーゼチェーンリアクション」(以下「PCR」)と呼ばれる。標的配列の所望の増幅部分が混合物中の主要な配列(濃度において)になるため、これらは「PCR増幅された」と言われる。
本明細書で用いる、「増幅試薬」(amplification reagent)は、プライマ、核酸鋳型、及び増幅酵素を除く増幅に必要な試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝剤等)を言う。典型的には、増幅試薬は他の反応成分と共に反応容器(テスト管、ミクロウエル等)に置かれ、そして収容される。
PCRでは、ゲノムDNAにおいて特定の標的配列の単一コピーをいくつかの異なる方法により検出可能なレベルまで増幅することが可能である(例えば、標識を付したプローブとハイブリッドさせ;ビオチニル化したプライマを組み込み、続いてアビジン酵素と結合させることにより検出する;dCTP 又はdATPの様な 32P標識を付したデオキシヌクレオチド三リン酸を増幅された部分に組み込む)。ゲノムDNAの他に、任意のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列も適切なプライマ分子のセットによって増幅することができる。
特に、PCRプロセス自身により作られた増幅部分は、それ自身続くPCR増幅のための効果的な鋳型である。
本明細書で用いる、「PCR製品」(PCR product)、「PCRフラグメント」(PCR fragment)及び「増幅製品」(amplification product)はPCRの変性、アニーリング及び伸長の2以上のサイクルが終了した後の結果の化合物の混合物を言う。これらの用語は一以上の標的配列の一以上の部分が増幅された場合を含む。
本明細書で用いる「RT-PCR」(RT-PCR)はRNA配列の複製及び増幅を言う。この方法では、逆転写は、PCRに結合され、その場合非常にしばしば米国特許第5,322,770号(本文献は参照により本明細書に組み入れられる)に記載の様に熱安定性ポリメラーゼを用いた一つの酵素を用いる手順による。RT-PCRではRNA鋳型はポリメラーゼの逆転写酵素活性によりcDNAに変換され、そしてポリメラーゼの重合活性(すなわち、他のPCR方法の様に)を用いて増幅される。
本明細書で用いる「制限エンドヌクレアーゼ」(restriction endonuclease)及び「制限酵素」(restriction enzyme)は細菌酵素を言い、そのそれぞれが特定のヌクレオチド配列において、又はその近辺で二重鎖DNAを切断する。
「制限部位」(restriction site)はある制限エンドヌクレアーゼにより認識され開裂されるヌクレオチド配列を指し、しばしばDNA断片の挿入部位である。本発明のある実施の態様においては制限部位は操作され選択マーカー及びDNA構築体の5' 及び3'末端に挿入される。
本明細書で用いる「染色体への組み込み」(chromosomal integration)は入ってくる配列が宿主細胞の染色体に導入されるプロセスを指す。形質転換するDNAの相同領域は染色体の相同領域とアラインする。続いて、ホモロジーボックスの間の配列は入ってくる配列によりダブル クロスオーバーで置換される(すなわち、相同的組み換え)。本発明のある実施の態様において、DNA構築体の不活性化染色体セグメントの相同部分はバチルス(Bacillus)染色体の固有の染色体領域の隣接する相同領域とアラインする。そして、固有の染色体領域はDNA構築体によりダブル クロスオーバーで取除かれる(すなわち、相同的組み換え)。
「相同的組み換え」(Homologous recombination)は同一又は同一に近いヌクレオチド配列の部位で2つのDNA分子又はペア染色体の間のDNA断片の交換を言う。好ましい実施の態様においては、染色体の統合は相同的組み換えである。
本明細書で用いる「相同配列」(Homologous sequence)は比較のために最も最適にアラインされた他の核酸又はポリペプチド配列と100%, 99%, 98%, 97%, 96%, 95%, 94%, 93%, 92%, 91%, 90%, 88%, 85%, 80%, 75%, 又は70%同一配列を持つ核酸又はポリペプチド配列を言う。ある実施の態様においては、85%から100%の同一の配列を持ち、他の実施の態様においては、90%から100%の同一配列を持ち、そしてより好ましい実施の態様においては、95%から100%の同一配列を持つ。
本明細書で用いる「アミノ酸」(amino acid)はペプチド又はタンパク質配列又はその一部を指す。「タンパク質」(protein)、「ペプチド」(peptide)及び「ポリペプチド」(polypeptide)の用語は相互交換的に用いられる。
本明細書で用いる「非相同タンパク質」(heterologous protein)は宿主細胞で自然に生成されないタンパク質又はポリペプチドを指す。非相同タンパク質の例には、プロテアーゼを含むヒドロラーゼの様な酵素を含む。ある実施の態様においてはタンパク質をコードする遺伝子は天然に生ずる遺伝子であり、他の実施の態様においては突然変異の及び/又は合成遺伝子が使用される。
本明細書で用いる「相同タンパク質」(homologous protein)は、細胞中に自然に存在し、又は自然に生ずるタンパク質又はポリペプチドを言う。ある好ましい実施の態様においては細胞はグラム陽性細胞であり、特に好ましい実施の態様においては、細胞はバチルス(Bacillus)宿主細胞である。他の実施の態様においては、相同タンパク質は、これに限定されるものではないが、大腸菌、ストレプトマイセス トリコデルマ及びアスペルギルスを含む他の有機体により生成される天然のタンパク質である。本発明は組み換えDNA技術により相同タンパク質を生成する宿主細胞を含む。
本明細書で用いる「オペロン領域」(operon region)は通常のプロモータから単一転写ユニットとして転写される隣接遺伝子のグループを含み、それにより同時制御される。ある実施の態様においては、オペロンは調節遺伝子を含む。もっとも好ましい実施の態様においては、RNAレベルで測定し高度に発現するが未知の又は不必要な機能を持ったオペロンが用いられる。
本明細書で用いる「抗菌領域」(antimicrobial region)は抗菌タンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子を含む領域である。
ポリヌクレオチドは、その天然の状態又は当業者に知られている方法により操作された場合、RNA、ポリペプチド又はその断片を生成するために転写され、及び/又は翻訳され得る場合、RNA又はポリペプチドを「コードする」(encode)すると言われる。その様な核酸のアンチセンス鎖はまたその配列をコードすると言われる。
技術分野で知られている様に、DNAはRNAポリメラーゼにより転写され、RNAを生成することができるが、RNAは逆転写酵素により逆転写されDNAを生成することができる。この様にDNAはRNAをコードしその逆も起きうる。
「制御セグメント」(regulatory segment)又は「制御配列」(regulatory sequence)又は「発現制御配列」(expression control sequence)はコードされたアミノ酸配列の発現を実行するためにポリペプチド鎖のアミノ酸配列をコードするDNAのポリヌクレオチド配列に動作可能にリンクされているDNAのポリヌクレオチド配列を指す。制御配列はアミノ酸をコードする動作可能にリンクされているポリヌクレオチド配列の発現を抑制し、抑止し又は促進することができる。
「宿主株」(Host strain)又は「宿主細胞」(host cell)は本発明のDNAを含む発現ベクターに相応しい宿主を指す。
酵素は、もし酵素が対応する野生型細胞で発現されるレベルよりもより高度のレベルで細胞で発現される場合、「過剰に発現される」(overexpressed)と言う。
「タンパク質」(protein)及び「ポリペプチド」(polypeptide)は本明細書では相互交換的に使用される。国際生化学分子生物学連合の命名法委員会の生化学命名法(JCBN)(IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature (JCBN))により定めたアミノ酸の3文字コードが本明細書で用いられる。また、ポリペプチドは遺伝子コードの縮退のため一より多いヌクレオチド配列によりコードされることもある。
「プロ配列」(prosequence)はシグナル配列とプロテアーゼの分泌に必要な成熟プロテアーゼの間にあるアミノ酸配列である。プロ配列の開裂により成熟活性を持つプロテアーゼが生成される。
「シグナル配列」(signal sequence)又は「シグナル ペプチド」(signal peptide)の用語は成熟した又は前駆体の形のタンパク質の分泌に参加するヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列を指す。シグナル配列のこの定義は機能的なものであり、タンパク質遺伝子のN-末端部分によりコードされる全てのこれらのアミノ酸配列を含むことを意味し、このアミノ酸配列はタンパク質の分泌に参加する。しかし例外がない訳ではないが、これらはしばしばタンパク質のN-末端部分又は前駆体タンパク質のN-末端部分に結合される。シグナル配列は内因性又は外因性であることもある。シグナル配列は通常タンパク質(例えば、プロテアーゼ)と関連し、又は他の分泌されたタンパク質をコードする遺伝子から生成されることもある。一つの代表的な外因性シグナル配列は、バチルス レンツス(Bacillus lentus)(ATCC 21536)のスブチリシンのシグナル配列の残りの部分に融合されるバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)のシグナル配列の第一の7つのアミノ酸残基を含む。
「ハイブリッド シグナル配列」(hybrid signal sequence)はその配列の一部が、発現される遺伝子の配列に融合される発現宿主から得られるシグナル配列を言う。ある実施の態様においては合成配列が用いられる。
タンパク質又はペプチドの「成熟」形の用語はタンパク質又はペプチドの最終機能形態を指す。例証すると、サーモリシンの成熟した形は少なくとも配列番号3のアミノ酸配列を含む。
タンパク質又はペプチドの「前駆体」(precursor)の形は、タンパク質のアミノ酸末端又はカルボニル末端に動作可能にリンクされているプロ配列を持つタンパク質の成熟形を指す。前駆体はまたプロ配列のアミノ酸末端に動作可能にリンクされている「シグナル」配列を持つこともある。前駆体はまた翻訳後活動に関係する追加のポリヌクレオチドを持つこともある(例えば、それから開裂されたポリヌクレオチドはタンパク質又はペプチドの成熟形を残す)。
「天然発生酵素」(Naturally occurring enzyme)は天然に見出される配列と同一の非修飾アミノ酸配列を持つ酵素を指す。天然発生酵素は、天然の酵素、天然に発現された酵素又は特定の微生物に見出される天然の酵素を含む。
「由来する」(derived from)及び「から得られる」(obtained from)の用語は問題となる有機体の株により生成され、又は生成されうるプロテアーゼのみならず、その様な株から分離された及びその様なDNA配列を含む宿主有機体中で生成されたDNA配列によりコードされるプロテアーゼを指す。さらにこの用語は合成及び/又はcDNA起源のDNA配列によりコードされ、問題となるプロテアーゼとして識別される特徴を持つプロテアーゼを指す。例証すると、「バチルス種由来のプロテアーゼ」はバチルス種により天然に生成されたタンパク質分解活性を持つこれらの酵素を指すのみならず、バチルス種のソースなどにより生成された酵素のような中性金属プロテアーゼを指すが、これらは遺伝子工学技術により、前記中性金属プロテアーゼをコードする核酸により形質転換された非ジオバチルス カルドプロテオリチクス(Geobacillus caldoproteolyticus)有機体により生成される。
この定義の範囲内の「誘導体」(derivative)は誘導体が、野生型、天然、又は親の型と同様の目的に有用であるという限りにおいて、野生型、天然、又は親の型において観察される特徴的なタンパク質分解活性を通常持つ。機能的な中性金属プロテアーゼの誘導体は、本発明の中性金属プロテアーゼの一般的特徴を持つ天然、合成又は組み換えにより生成されたペプチド又はペプチド断片を含む。
「機能的誘導体」(functional derivative)の用語は、中性金属プロテアーゼをコードする核酸の機能的特徴を持つ核酸の誘導体を指す。核酸の機能的誘導体は、本発明の中性金属プロテアーゼをコードするが、天然、合成又は組み換えにより生成される核酸又は断片を含み、そして本発明の中性金属プロテアーゼの特徴をコードする。本発明の中性金属プロテアーゼをコードする野生型核酸は、技術分野で知られている遺伝子コードの縮退に基づく天然の対立遺伝子及び同族体を含む。
2つの核酸又はポリペプチド配列について言う「同一」(identical)の用語は、以下の配列の比較又は解析アルゴリズムの一つを用いて測定され、最大の対応を生むようアラインされた場合に同一である2つの配列中の残基について言う。
「最適のアラインメント」(optimal alignment)は最大%の同一性の評点を与えるアラインメントを言う。
2つのアミノ酸、ポリヌクレオチド及び/又は遺伝子配列(適当である場合)に関する「パーセント配列同一性」(Percent sequence identity)、(「パーセント アミノ酸配列同一性」(percent amino acid sequence identity)、「パーセント遺伝子配列同一性」(percent gene sequence identity)及び/又は「パーセント核酸/ポリヌクレオチド配列同一性」(percent nucleic acid/polynucleotide sequence identity)は、配列が最適にアラインされた場合に2つの配列中の同一の残基のパーセントを言う。
したがって、80%のアミノ酸配列が同一であるということは2つの最適にアラインされたポリペプチド配列中のアミノ酸の80%が同一であることを意味する。
2つの核酸又はポリペプチドについて言う「実質的に同一」(substantially identical)の用語は、標準パラメータを用いたプログラム又はアルゴリズム(例えば、BLAST, ALIGN, 及びCLUSTAL)を用いて、参照配列と比べて、少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約75%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、好ましくは少なくとも約85%同一、好ましくは少なくとも約90%同一、好ましくは少なくとも約95%同一、最も好ましくは少なくとも約97%同一、好ましくは少なくとも約98%及び約99%同一の配列を持つポリヌクレオチド又はポリペプチドを言う。2つのポリペプチドが実質的に同一である一つの印は第一のポリペプチドが第二のポリペプチドと免疫学的に交差反応することである。典型的に、保存アミノ酸置換によって異なるポリペプチドは免疫学的に交差反応する。したがって、例えば、2つのポリペプチドが保存置換のみが異なるポリペプチドの場合は実質的に第二ポリペプチドと同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である他の印は2つの分子がお互いに厳格な条件(例えば、中程度から高度に厳格な条件の範囲内)においてお互いにハイブリッドすることである。
「分離された」(isolated)又は「精製された」(purified)はその元の環境(例えば、もし天然(自然)に発生する場合は自然環境)から取出された材料を言う。例えば、材料は、それが特別の組成物中で、天然に発生する又は野生型有機体に存在する、又は天然に発生する又は野生型有機体から発現して通常存在しない組成物と組み合わされたものよりも、より高い又は低い濃度で存在する場合「精製されている」と言う。例えば、生きている動物中で天然に発生するポリヌクレオチド又はポリペプチドは分離されていないが、天然のシステム中の共存する材料の一部又は全部から分離されている同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは分離されている。その様なポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、及び/又はその様なポリヌクレオチド又はポリペプチドは組成物の一部であり得る、及びさらにその様なベクター又は組成物はその自然環境の一部でないと言う意味で分離されている。ある好ましい実施の態様において、例えば、もしそれが電気泳動ゲル又はブロットで本質的に一つのバンドを生成する場合は核酸又はタンパク質は精製されていると言われる。
DNA配列について使用される場合、「分離された」(単離された)(isolated)の用語は自然の遺伝子環境から取出されたDNA配列を言い、したがって、他の異質の又は望まれないコード配列を含まず、そして遺伝子的に操作されたタンパク質の生成システム内の使用に適した形である。その様な分離された分子はその自然環境から分離されたものであり、cDNA 及び遺伝子クローンを含む。本発明の分離されたDNA分子は、それが通常関連する他の遺伝子を含まないが、プロモータ又はターミネータのような天然に発生する5' 及び3'非翻訳領域を含んでも良い。関連する領域を同定することは当業者にとり明らかである(例えば、Dynan及びTijan, Nature 316:774-78, 1985を参照)。「分離されたDNA配列」(isolated DNA sequence)の用語は、代替的にまた「クローンされたDNA配列」(cloned DNA sequence)とも呼ばれる。
タンパク質との関係で用いられる「分離された」(単離された)(isolated)の用語は自然環境以外の条件に見出されるタンパク質を指す。ある好ましい形では、分離されたタンパク質は本質的に他のタンパク質、特に他の相同タンパク質を含まない。分離されたタンパク質はSDS-PAGEにより決定される、10%より高い純度、好ましくは20%より高い純度、さらに好ましくは30%より高い純度を持つ。本発明の他の特徴にはSDS-PAGEにより決定される高度に純粋な形のタンパク質(すなわち、40%より高い純度、60% より高い純度、80%より高い純度、 90%より高い純度、 95%より高い純度、97% より高い純度、さらに99%より高い純度)を含む。
他の方法も用いることができるが、以下のカセット変異誘発法が本発明の酵素変異体の構築を容易にするために用いられる。まず、本明細書に記載の様に、酵素をコードする天然の遺伝子を得てその全部又は一部を配列決定する。その後配列について、コード化された酵素中の一以上のアミノ酸の変異(欠失、挿入又は置換)を起すことが望まれる点をスキャンする。この点に隣接する配列について、遺伝子の短いセグメントを、それが発現した場合種々の変異体をコードするオリゴヌクレオチドプールにより置換する制限部位の存在が評価される。その様な制限部位は好ましくは、遺伝子セグメントの置換を容易にするためにタンパク質遺伝子内の特異部位であるのが良い。しかし、制限消化により生成される遺伝子断片が適正な配列に再構成することができる限り、酵素遺伝子が過度に重複していない任意の好都合な制限部位を使うことができる。もし制限部位が選択された点から都合の良い距離内の位置(10から15ヌクレオチド)にない場合、最終構築においてリーディングフレーム及びコードされるアミノ酸のいずれもが変わらない様な方法で、その様な部位が遺伝子中のヌクレオチドを置換することにより生成される。その配列を変えて所望の配列に適合させるために遺伝子を変異させることは一般的に良く知られた方法によりM13プライマ伸長法により実現される。好適な隣接領域を探しそして2つの好都合な制限部位配列に到達するために必要な変化を評価する仕事は、遺伝子コードの重複、遺伝子の制限酵素マップ、及び多数の異なる制限酵素により日常的に行われる仕事になっている。
もし隣接領域が得られる場合、上に述べた方法は、部位を持たない隣接領域に関してのみ用いる必要がある。
天然のDNA及び/又は合成DNAがクローンされると、変異される位置に隣接する制限部位は同種制限酵素により消化され、複数の末端相補オリゴヌクレオチドカセットが遺伝子中に結紮される。突然変異誘発はこの方法により簡素化される。その理由は全てのオリゴヌクレオチドは、同じ制限部位を持つ様に合成され、制限部位を生成するために合成されたリンカーは必要ないからである。
本明細書で用いる「対応する」(corresponding)の用語はタンパク質又はペプチド中の、又はタンパク質又はペプチド中の列挙された残基に類似、相同又は同等する残基中の列挙された位置の残基について言う。
本明細書で用いる「対応する領域」(corresponding region)の用語は,一般的に関連タンパク質又は親タンパク質に沿った類似の位置を指す。
本明細書で用いる「組み合わせ突然変異誘発法」(combinatorial mutagenesis)は、開始配列の変異体ライブラリーが生成される方法を言う。これらのライブラリーでは変異体は事前に決められた変異体のセットから選ばれた一又は幾つかの変異を含む。さらにこの方法は、それが事前に決められた変異体のセットのメンバーではないランダム変異を導入する方法を提供する。ある実施の態様においては、この方法は2000年10月26日に出願された米国特許出願第09/699,250号に規定のものを含む(この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。他の実施の態様においては、組み合わせ突然変異誘発法は市場で入手可能なキット(例えば、QUIKCHANGE(登録商標)Multisite, Stratagene, San Diego, CA)を含む。
本明細書で用いる「変異体ライブラリー」(library of mutant)の用語は、そのゲノムの殆んどが同一であるが、一以上の遺伝子の異なる相同物を含む細胞群について言う。
その様なライブラリーは、例えば、改良された特質を持つ遺伝子又はオペロンを同定するために用いることができる。
本明細書で用いる「開始遺伝子」(starting gene)及び「親遺伝子」(parent gene)は、本発明を用いて改良され及び/又は改変される関心の対象であるタンパク質をコードする関心の対象である遺伝子を指す。
本明細書で用いる「多配列アラインメント」(multiple sequence alignment)及び「MSA」はアルゴリズム(例えば、Clustal W)を用いてアラインされる開始遺伝子の複数の同族体配列を指す。
本明細書で用いる「コンセンサス配列」(consensus sequence)及び「正準配列」(canonical sequence)の用語は特定のタンパク質又は関心の対象となる配列の全ての変異体が比較される原始型アミノ酸配列を指す。この用語はまた関心の対象となるDNA配列中に最もしばしば存在するヌクレオチドを記述する配列を指す。遺伝子の各位置に関しては、コンセンサス配列はMSA中のその位置に最も豊富なアミノ酸を作る。
「コンセンサス突然変異」(consensus mutation)の用語は開始遺伝子の配列とコンセンサス配列の相違を指す。コンセンサス突然変異は開始遺伝子の配列とMSAから得られたコンセンサス配列を比較することにより同定される。ある実施の態様においては、コンセンサス突然変異は開始遺伝子に導入されるため開始遺伝子はコンセンサス配列により一層類似する。コンセンサス突然変異はまた、開始遺伝子中のアミノ酸を、開始遺伝子中のそのアミノ酸の頻度に比較してその位置のMSA中に、より頻繁に見出されるアミノ酸に変えるアミノ酸の変化を含む。したがって、コンセンサス突然変異の用語は、開始遺伝子のアミノ酸をMSA中のアミノ酸よりもより豊富なアミノ酸によって置換する全ての単一アミノ酸の変化を含む。
「修飾された配列」(modified sequence)又は「修飾された遺伝子」(modified gene)は、天然発生核酸配列の欠失、挿入、又は中断を含む配列を指し、相互交換的に用いられる。ある好ましい実施の態様においては、修飾された配列の発現生成物は短縮タンパク質(例えば、修飾が配列の欠失、又は中断である場合)である。ある特に好ましい実施の態様においては、短縮されたタンパク質は生物学的活性を維持する。他の実施の態様においては、修飾された配列の発現生成物は細長いタンパク質である(例えば、修飾は核酸配列中への挿入を含む)。ある実施の態様においては、挿入により短縮タンパク質となる(例えば、挿入がストップコドンを形成する場合)。この様に、挿入は、短縮タンパク質又は発現生成物として細長いタンパク質となることもある。
本明細書で用いる「突然変異配列」(mutant sequence)及び「突然変異遺伝子」(mutant gene)は相互交換的用いられ、宿主細胞の野生型配列中に少なくとも一つのコドンの改変を持つ配列を言う。突然変異配列の発現生成物は野生型と比べて改変されたアミノ酸配列を持つタンパク質である。発現生成物は改変された機能的能力(例えば、強化された酵素活性)を持つこともある。
「変異プライマ」(mutagenic primer)又は「変異オリゴヌクレオチド」(mutagenic oligonucleotide) (本明細書において相互交換的に使用される)は鋳型配列の一部に対応し、かつそれとハイブリッドすることの出来るオリゴヌクレオチド組成を指す。変異プライマについて言うと、そのプライマは鋳型核酸と厳密にマッチするものでなく、用いられるプライマ中の一のミスマッチ又は複数のミスマッチは核酸ライブラリーに所望の突然変異を導入するのに用いられる。本明細書で用いる「非変異プライマ」(non-mutagenic primer)又は「非変異オリゴヌクレオチド」(non-mutagenic oligonucleotide)は鋳型核酸と厳密にマッチするオリゴヌクレオチド組成を指す。本発明のある実施の態様においては、変異プライマのみが使用される。本発明の他の好ましい実施の態様においては、プライマは、変異プライマが含まれている少なくとも一つの領域で、またオリゴヌクレオチド混合物に非変異プライマも含まれる様に設計される。変異プライマ及び少なくとも一つの変異プライマに対応する非変異プライマの混合物を加えることにより、種々の組み合わせ突然変異パターンが生ずる核酸ライブラリーを生成することができる。例えば、変異核酸ライブラリーのメンバーの幾つかがある位置で親配列を維持し、他のメンバーはその様な部位で変異することを望む場合、非変異プライマはある残基の核酸ライブラリー内のある特定のレベルの非変異メンバーを得る能力を提供する。本発明の方法は、その塩基の長さが通常10-50塩基、より好ましくは約15-45塩基の間の変異及び非変異オリゴヌクレオチドを用いる。しかし、所望の突然変異誘発の結果を得るためには10塩基より短い又は50塩基より長いプライマを使用することが必要なこともある。対応する変異プライマ及び非変異プライマについて言うと、対応するオリゴヌクレオチドは同一の長さである必要はないが、追加される変異に対応する領域で重複があることが必要である。
プライマは本発明にしたがって事前に規定された比率で添加される。例えば、結果のライブラリーが、添加されるプライマの量を調整することにより、かなりのレベルの、ある特定の変異体を持ち、同じ又は異なる部位でより少ない異なる量の変異体をもつことを所望する場合、所望の偏ったライブラリーを生成することが可能である。代替的に、より少量の又はより多量の非変異プライマを加えることにより、変異体核酸ライブラリー中に対応する変異がおきる頻度を調整することができる。
「野生型配列」(wild-type sequence)又は「野生型遺伝子」(wild-type gene)は、本明細書では相互交換的に用いられ、天然に存在し又は宿主細胞中で自然発生的に生じる配列を指す。ある実施の態様においては野生型配列はタンパク質組み換え計画の開始点である関心の対象である配列を言う。野生型配列は相同タンパク質又は非相同タンパク質をコードすることもある。相同タンパク質はインターベンションなしに宿主細胞が生成するタンパク質である。非相同タンパク質は、インターベンションがない場合には宿主細胞は生成しないタンパク質である。
本明細書で用いる「同等」(equivalent)の用語は、サーモリシンタンパク質のアミノ酸残基の位置について使用される場合は、修飾されていない前駆体、例えば、野生型サーモリシンの一次配列中の位置で対応するサーモリシン変異体のアミノ酸残基の位置について言う。サーモリシン中の同等のアミノ酸位置の中での位置を確立するために、サーモリシン変異体を生成するために修飾されたサーモリシンのアミノ酸配列が配列番号3のサーモリシンと直接に対比される。残基をアラインし、アラインを維持するために(すなわち、任意の欠失又は挿入により保存残基の除去を避けるため)挿入及び欠失を可能にした後に、配列番号3のサーモリシンの配列中の特定のアミノ酸の位置に同等の位置の残基が規定される。
「酸化に安定的」(oxidation stable)の用語はタンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスにおいて存在する条件下で、例えば、漂白剤又は酸化剤に曝され又は接触している条件で、ある一定の時間に亘りある特定量の酵素活性を維持する本発明のプロテアーゼについて言う。ある実施の態様においては、プロテアーゼは、漂白剤又は酸化剤とある一定の時間、例えば、少なくとも1分、3分、5分、8分、12分、16分、20分等の間接触した後にそのタンパク質分解活性を少なくとも50%, 60%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 92%, 95%, 96%, 97%, 98%,又は99%を維持する。
「キレート剤に安定的」(chelator stable)の用語はタンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスにおいて存在する条件下で、例えば、キレート剤に曝され又は接触している条件で、ある一定の時間に亘りある特定量の酵素活性を維持する本発明のプロテアーゼについて言う。ある実施の態様においては、プロテアーゼは、キレート剤とある一定の時間、例えば、少なくとも10分、20分、40分、60分、100分等の間接触した後にそのタンパク質分解活性の少なくとも50%, 60%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 92%, 95%, 96%, 97%, 98%,又は99%を維持する。
「熱に安定的」(thermally stable)及び「熱安定的」(thermostable)は、タンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスにおいて存在する条件で、例えば、変更された温度に曝されて、プロテアーゼがある一定の時間に亘りある特定の温度に曝された後にある特定量の酵素活性を維持する本発明のプロテアーゼについて言う。変更された温度には、高い又は低い温度を含む。ある実施の態様においては、プロテアーゼは、変更された温度にある一定の時間、例えば、少なくとも60分、120分、180分、240分、300分等の間曝した後にそのタンパク質分解活性の少なくとも50%, 60%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 92%, 95%, 96%, 97%, 98%,又は99%を維持する。
本明細書で用いる「化学的安定性」はタンパク質の活性に悪い影響を与える化学物質に対するタンパク質(例えば、酵素)の安定性を言う。ある実施の態様においては、その様な化学物質には、過酸化水素、過酸、アニオン性洗剤、カチオン性洗剤、ノンイオン性洗剤、キーラント(chelant)等を含むがこれに限定されるものではない。しかし、本発明はある特定の化学的安定性レベル又は化学的安定性の範囲に限定することを意図するものではない。
特に、「洗剤に安定的」(detergent stable)及び「LASに安定的」(LAS stable)の用語は、本発明のタンパク質分解、加水分解、洗浄又はその他のプロセスにおける主要な条件下で,ある与えられた時間の間洗剤組成物に暴露された後に、ある特定の量の酵素活性を維持する本発明のプロテアーゼについて言う。
ある実施の態様においては、プロテアーゼは、洗剤にある一定の時間、例えば、少なくとも60分、120分、180分、240分、300分等の間曝した後にそのタンパク質分解活性の少なくとも50%, 60%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 92%, 95%, 96%, 97%, 98%,又は99%を維持する。
酸化、キレート剤、熱及び/又はpH安定的プロテアーゼについて用いる場合、「安定性の強化された」(enhanced stability)の用語は、他の中性金属プロテアーゼ及び/又は野生型酵素に比べて、長時間に亘りより高いタンパク質分解活性が維持されることを言う。
酸化、キレート剤、熱及び/又はpH安定的プロテアーゼについて用いる場合、「安定性の低下した」(diminished stability)の用語は他の中性金属プロテアーゼ及び/又は野生型酵素に比べて、長時間に亘りタンパク質分解活性の維持の程度が低いことを言う。
本明細書で用いる「洗浄用組成物」(cleaning composition)は、特に断らない限り、顆粒状又は粉末状汎用又は「強力」(heavy-duty)洗濯剤、特に洗浄洗剤;液体、ゲル、又はペースト状汎用洗濯用剤、特にいわゆる強力液タイプ;液状のきめ細かい織物用洗剤;手洗い用食器洗い用洗剤又は軽質食器洗い用洗剤、特に高泡立ちタイプの食器洗い用洗剤;家庭用及び業務用の種々の錠剤、顆粒、液体及びすすぎ補助タイプを含む機械洗い食器洗い用洗剤;抗菌性手洗いタイプ、洗浄用石鹸、うがい薬、入れ歯洗浄剤、車又はカーペット用シャンプー、フロ洗浄剤を含む液体洗浄剤及び殺菌剤;ヘアシャンプー、及びヘアリンス;シャワーゲル及び泡バス及び金属洗浄剤を含み、並びに漂白用添加剤及び「汚染物用棒」(stain stick)又は事前処理タイプの様な洗浄補助剤を含む。
特に断らない限り、本明細書に記載の成分又は組成物のレベルはすべて、その活性レベルに関して言うものであり、不純物、例えば、市販の商品に存在する残留溶媒又は副生物を除いたものである。
酵素成分の重量は全活性タンパク質に基づく。全てのパーセント及び比率は、特に示さない限り重量に基づき計算される。全てのパーセント及び比率は、特に示さない限り全組成に基づき計算される。
「洗浄活性」(cleaning activity)はタンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスの間に存在する条件下でプロテアーゼにより達成される洗浄能力を指す。ある実施の態様においては、洗浄能力は、汚れを標準の洗濯条件に付した後に、種々のクロマトグラフィー、分光光度計又は他の数量測定法によって決定される、草、血液、ミルク、又は卵のタンパク質の様な酵素に反応する汚れに関する種々の洗浄アッセイにより決定される。代表的なアッセイには、実施例に記載の方法及びWO 99/34011及び米国特許第6,605,458号(両文献は参照により本明細書に組み入れられる)に記載のものを含むがこれに限定されるものではない。
プロテアーゼの「洗浄に効果的な量」(cleaning effective amount)は上で述べたプロテアーゼの量を言い、特定の洗浄組成物において所望のレベルの酵素活性を達成する量である。その様な効果的な量は当業者により容易に確認され、また多くの要因、例えば、使用される特定のプロテアーゼ、洗浄方法、洗浄組成物中の特定の組成物、液体又は乾燥(例えば、粒状、棒状)組成物が必要か等に基づく。
本明細書で用いる「洗浄添加材料」(cleaning adjunct material)は特定のタイプの所望の洗浄組成物及び製品の形(例えば、液体、粒状、粉末、棒状、ペースト、霧状、錠剤、ゲル、又は泡組成物)のために選択される任意の液体状、固体状又は気体状材料を指し、その材料はまた好ましくは組成物中で用いられるプロテアーゼ酵素と適合性のあるものが良い。ある実施の態様においては粒状組成物は「コンパクト」な形のものであり、他の実施の態様においては液体組成物は「濃縮された」形である。
本明細書で用いる「低洗剤濃度」(low detergent concentration)系は洗濯水中に約800ppmより低い洗剤成分が存在する場合の洗剤を含む。日本の洗剤は
通常低洗剤濃度系であると考えられる。その理由は日本の洗剤は洗濯水中に通常約667 ppmの洗剤成分を含むからである。
本明細書で用いる「中程度の洗剤濃度」(medium detergent concentration)系は洗濯水中に約800ppmから約2000ppmの間の洗剤成分が存在する場合の洗剤を含む。北米の洗剤は通常洗濯水中に約975ppmの洗剤成分が存在するため、一般的に中程度の洗剤濃度系と考えられる。ブラジルの洗剤は通常洗濯水中に約1500ppmの洗剤成分を含む。
本明細書で用いる「高洗剤濃度」(high detergent concentration)系は洗濯水中に約2000ppmより大きい洗剤成分が存在する場合の洗剤を含む。ヨーロッパの洗剤は通常洗濯水中に約3000−8000ppmの洗剤成分を含むため一般的に高洗剤濃度系と考えられる。
本明細書で用いる「繊維洗浄組成物」(fabric cleaning composition)は、洗浄用添加組成物及び汚れた繊維(例えば、衣服、リンネル、及び他の繊維材料)を浸し及び/又は事前処理するのに適した組成物を含む、手洗い及び/又は機械洗い洗浄組成物を含む。
本明細書で用いる「非繊維洗浄組成物」(non-fabric cleaning composition)は、食器洗浄用組成物、口内洗浄組成物、入れ歯洗浄組成物、パーソナル洗浄組成物を含む非織物(すなわち、非繊維)表面洗浄組成物を含むがこれに限定されるものではない。
本明細書で用いる洗浄組成物の「コンパクト」(compact)な形のものはその密度、及び組成については無機充填塩の量に最も反映される。無機充填塩は粉末形の洗剤組成物に従来用いられる成分である。従来の洗剤組成物では、充填塩は主要な分量、典型的には全組成物の重量の17-35%存在する。対照的にコンパクトな組成物では、充填塩は全組成物の15%を超えない量で存在する。ある実施の態様においては、充填塩は組成物の重量の10%を超えない、より好ましくは5%を超えない量で存在する。ある実施の態様においては無機充填塩は硫酸塩及び塩化物のアルカリ及びアルカリ土類金属塩から選択される。好ましい充填塩は硫酸ナトリウムである。
発明の詳細な説明
中性金属エンドペプチダーゼ(すなわち、中性金属プロテアーゼ)(EC 3.4.24.4)は触媒活性に亜鉛イオンが絶対的に必要であるプロテアーゼ類に属する。これらの酵素は中性pHで最適な活性を持ち30 から40 kDaのサイズである。中性金属プロテアーゼはタンパク質の構造的安定性に役立つ2から4のカルシウムイオンの間で結合する。金属プロテアーゼの活性部位で結合した金属イオンは水分子の活性化を可能にする必須の特徴である。
そして水分子は求核試薬として機能し、そしてペプチド結合のカルボニル基を切断する。
中性亜鉛結合金属プロテアーゼファミリーは、カルボキシペプチダーゼA(消化酵素)のみならず、細菌酵素サーモリシン及びサーモリシン類似プロテアーゼ(TLP)及び組織改造及び分解において反応を触媒するマトリクス金属プロテアーゼを含む。
安定性及び機能に関してこれらのプロテアーゼの内で十分その特徴が良く分かっているものはサーモリシンのみであり、疎水性アミノ酸残基のアミノ末端側のタンパク質結合を加水分解する。サーモリシンはバチルスサーモプロテオリチカス ロッコ(Bacillus thermoproteolyticus Rokko)の培養液中で最初に同定された熱安定的な中性亜鉛金属プロティナーゼである。続いて同様の中性金属プロテアーゼがジオバチルスカルドロプロテオリティカスで同定されたがこの酵素は本明細書でサーモリシンとも呼ばれる。天然の及びサーモリシンの様な遺伝子操作されたプロテアーゼはしばしばバチルススブチリスで発現され(O'Donohue 他 Biochem J, 300:599-603, 1994)、その幾つかはタンパク質性の汚れを除去するための洗剤調剤で使用されている。今日ではサーモリシンは、工業で用いられ、特に人工甘味料アルパルテームの前駆体であるN-カルボベンゾキシ1-Asp-1-Pheメチル エステル(N-carbobenzoxy 1-Asp-1-Phe methyl ester)の酵素による合成に使用される。しかし、一般に、少なくとも部分的にこのプロテアーゼは比較的容易に安定化させることができるため、セリンプロテアーゼが洗剤でより広く使用されている。
事実、金属プロテアーゼは工業での使用頻度はそれ程多くはなく、多くの理由から特に洗剤工業ではその様である。これらの酵素は、それぞれ安定性及び機能の観点よりカルシウム及び亜鉛イオンが絶対的に必要であるためより複雑なタンパク質系を含む。
さらに洗濯のプロセスで使用される水並びに洗剤溶液は、しばしば酵素によるイオンの結合に干渉し又はこれらのイオンをキレート(chelate)する成分を含み、タンパク質分解機能の減少又は喪失及びプロテアーゼの不安定化をもたらす。
本発明の洗浄及び洗剤調剤の詳細な説明
断らない限り、本明細書に記載のすべての成分又は組成物のレベルはその成分及び組成物の活性レベルに関して言い、商業的に入手可能なソースに存在する不純物、例えば、残留溶媒又は副産物を含まない。酵素成分重量は全活性タンパク質に対するものである。すべてのパーセント及び比率は断らない限り重量によるものである。代表的な洗剤組成物では酵素レベルは全組成物の重量による純粋酵素により表し、断らない限り洗剤成分は全組成物の重量によるものである。
中性金属プロテアーゼを含む洗浄組成物 本発明の中性金属プロテアーゼは種々の洗浄組成物を調剤するのに有用である。本発明の洗浄組成物は、例えば、入れ歯、歯、毛髪、皮膚の様な化粧での応用のみならず洗濯、硬表面洗浄、自動皿洗機で有利に用いることができる。しかし、低温溶液でより効果的に使用できるというユニークな有利な点及び優れた色彩維持特性により、本発明の酵素は織物の漂白の様な洗濯での使用に理想的に適している。さらに、本発明の酵素は顆粒状及び液体組成物の両方で使用することができる。
本発明の酵素はまた洗浄添加物製品で使用することができる。本発明の少なくとも一つの酵素を含む洗浄添加物製品は、追加の漂白効果が望まれる場合、洗濯プロセスに含むことに理想的に適している。そのような例には低温溶液洗浄での使用を含むがこれに限定されるものではない。添加物製品は、そのもっとも簡単な形では、本発明により提供される一以上の中性金属プロテアーゼ酵素である場合もある。ある実施の態様においては、添加物は、ペロキシゲン(peroxygen)のソースが使用され、より強い漂白効果が望まれる洗浄プロセスに加えられる錠剤の形でパッケージされる。ある実施の態様においては、単一のパッケージは、丸薬、錠剤、ジェルキャップ又は事前計量された粉末及び/又は液体を含む他の単一の服用単位を含む。ある実施の態様においては、そのような組成物の容量を増やすために充填剤、及び/又は担体材料が含まれる。
好適な充填材又は担体材料にはタルク、粘土等のみならず種々の硫酸塩、炭酸塩及びケイ酸塩を含むがこれに限定されるものではない。ある実施の態様においては、液体組成物の充填材及び担体材料は水及び/又はポリオール及びジオールを含み低分子量第一級及び第二級アルコールを含む。その様なアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールを含むがこれに限定されるものではない。ある実施の態様においては、組成物は約5%から約90%のその様な材料を含む。さらに他の実施の態様においては、酸性充填材は組成物のpHを低下させるために用いられる。さらに他の実施の態様においては、洗浄用添加物は、以下に説明する様に少なくとも一つの活性ペオキシゲンソース及び/又は以下により詳細に説明する補助成分を含む。
本発明の洗浄組成物及び洗浄添加物は本発明において提供される効果的な量の中性金属プロテアーゼ酵素を必要とする。ある実施の態様においては、酵素の必要なレベルは本発明の一種以上の中性金属プロテアーゼを添加することにより実現する。通常本発明の洗浄組成物は本発明の少なくとも一つの中性金属プロテアーゼを少なくとも0.0001重量%、約0.0001から約1, 約0.001から約0.5, 又はさらに約0.01から約0.1重量%含む。
ある好ましい実施の態様においては、本明細書に記載の洗浄組成物は、水生洗浄中での使用において、洗濯水は約5.0から約11.5のpH,又は他の実施の態様においては、さらには約6.0 から約10.5のpHを持つ様に調剤される。ある好ましい実施の態様においては、液体製品製剤は通常約3.0から約9.0のネットpHを持つ様に調剤され、他の実施の態様においては、製剤は約3から約5のネットpHを持つ様に調剤される。ある好ましい実施の態様においては、顆粒洗濯製品は通常約8から約11のネットpHを持つ様に調剤される。pHを推奨されるレベルに制御する技術は、緩衝材、アルカリ、酸などの使用を含み、当業者に良く知られている。
ある特に好ましい実施の態様においては、少なくとも一つの中性金属プロテアーゼが顆粒状組成物又は液体で使用される場合、液体中性金属プロテアーゼは保存中に顆粒状組成物の他の成分から酵素を保護するために粒子をカプセルに収めた形になる。さらにカプセル化は洗浄プロセスにおいて、中性金属プロテアーゼの利用を制御する手段を提供し、中性金属プロテアーゼの効果を増大させる。本発明のカプセル化された中性金属プロテアーゼは種々の設定環境で使用できる様に考慮されている。また、この中性金属プロテアーゼは当業者に知られた好適なカプセル材料及び方法を用いてカプセル化することが意図されている。
ある好ましい実施の態様においては、カプセル化材料は通常中性金属プロテアーゼ触媒の少なくとも一部をカプセル化する。ある実施の態様においては、カプセル化材料は水溶性及び/又は水分散性をもつ。さらに他の実施の態様では、カプセル化材料は0℃以上のガラス転移温度(Tg)を持つ(ガラス転移温度に関するさらに詳細な情報については(例えば、WO 97/11151, 特に6ページ、25行から7ページ, 2行を参照))。
ある実施の態様においては、カプセル化材料は炭水化物、天然又は合成ゴム、キチン(chitin)及びキトサン、セルロース及びセルロース誘導体、ケイ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、パラフィンワックス及びこれらの組み合わせから選択される。カプセル化材料が炭化水素である、ある実施の態様においては、その材料は単糖類、オリゴ糖、多糖類及びこれらの組み合わせから選択される。ある好ましい実施の態様においては、カプセル化材料はでんぷんである(ある代表的なでんぷんについては、例えば、欧州特許EP 0 922 499; 米国特許第4,977,252号. 第5,354,559号, 及び第5,935,826号を参照)。
さらに他の実施の態様においては、カプセル化材料はプラスチックから成るミクロスフェアを含む(例えば、熱可塑性プラスチック、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリメタアクリロニトリル、及びこれらの混合物を含み、使用可能な商業的に入手可能な、ミクロスフェアはEXPANCEL(登録商標)[Casco Products, Stockholm, Sweden], PM 6545, PM 6550, PM 7220, PM 7228, EXTENDOSPHERES(登録商標)及びQ-CEL(登録商標)[PQ Corp., Valley Forge, PA], LUXSIL(登録商標)及びSPHERICELl(登録商標) [Potters Industries, Inc., Carlstadt, NJ and Valley Forge, PA]を含むがこれらに限定されるものではない)。
本願発明の洗浄組成物の製造及び使用プロセス ある好ましい実施の態様においては、本発明の組成物は使用者により選択される任意の好適な形に調剤され及び任意のプロセスにより調剤される(例えば、米国特許第5,879,584号, 米国特許第5,691,297号, 米国特許第5,574,005号, 米国特許第 5,569,645号, 米国特許第5,565,422号, 米国特許第5,516,448号、米国特許第5,489,392号, 米国特許第5,486,303号を参照願いたいが、これらに限定されるものではない)。低いpH洗浄組成物が望まれるある実施の態様においては、その様な組成物のpHは、HCLの様な酸性材料を加えることにより調整される。
補助材料 本発明の目的の実現に必須ではないが、ある実施の態様においては、本明細書に記載の補助材料は本発明の洗浄組成物での使用に好適であるが補助材料はこれらに限定されるものではない。
事実、ある実施の態様においては、補助材料は本発明の洗浄組成物に組み入れられる。ある実施の態様においては、補助材料は洗浄組成物の洗浄効果を増大させ、基質を洗浄し及び/又は洗浄組成物の美観(例えば、香り、着色剤、染料など)を修飾するのを助ける。
その様な補助材料は本発明の中性金属プロテアーゼにさらに添加されると了解されている。これらの添加成分の厳密な性質及びその組み入れるレベルは、組成物の物理的形式及びそれらが使用される洗浄のための操作の性質による。好適な補助材料は、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、染料移動抑制剤、沈着補助剤、分散剤、追加酵素及び酵素安定剤、触媒材料、漂白活性剤、漂白増幅剤、過酸化水素、過酸化水素ソース、事前形成過酸、重合分散剤、粘土除去/再沈着防止剤、光沢剤、せっけん泡抑制剤、染料、香料、構造弾性化剤、繊維軟化剤、担体、ハイドロトロープ、加工助剤及び/又は色素を含むがこれに限定されるものではない。本明細書に明確に記載のこれらの材料に加えて、その他の例が当業者に知られている(例えば、米国特許第5,576,282号, 米国特許第6,306,812 Bl号及び 米国特許第6,326,348号Bl)を参照)。ある実施の態様においては、上に記載の補助成分は本発明の洗浄組成物の残りの材料を構成する。
界面活性剤
ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は少なくとも一つの界面活性剤又は界面活性剤系を含み、界面活性剤は非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性電解質界面活性剤、両性イオン界面活性剤、半極性非イオン性界面活性剤及びこれらの混合物から選択される。ある低pH洗浄組成物の場合(例えば、約3から約5の純粋pHの組成物)、その様な界面活性剤は酸性組成物中で加水分解されると信じられているため、その様な組成物は通常アルカリエトキシ化硫酸塩を含まない。
ある実施の態様においては、界面活性剤は洗浄組成物の重量の約0.1%から約60%のレベルで存在し、他の実施の態様では、そのレベルは約1%から約50%のレベル、さらに他の実施の態様においては、そのレベルは約5%から約40%のレベルである。
ビルダー ある実施の態様においては、本発明の洗剤組成物は一以上の洗剤ビルダー又はビルダー系を含む。少なくとも一つのビルダーを含むある実施の態様においては、洗剤組成物は洗浄組成物の重量の少なくとも約1%から、約3%から約60%又はさらに約5%から約40%のビルダーを含む。
ビルダーにはアルカリ金属、アンモニア、及びポリリン酸塩のアルカノールアンモニア塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類及びアルカリ金属炭酸塩、アルミノケイ酸塩ビルダーポリカルボン酸化合物、エーテル、ハイドロキシポリカルボン酸、無水マレイン酸とエチレン又はビニルメチルエーテルのコポリマー、1, 3, 5-トリヒドロキシ ベンゼンー2, 4, 6-トリスルフォン酸(1, 3, 5-trihydroxy benzene-2, 4, 6-trisulphonic acid)、及びカルボキシメチルオキシスルフォン酸、種々のアルカリ金属、アンモニア及び例えば、エチレンジアミン テトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸の様なポリ酢酸の置換アンモニア塩及びメリト酸、コハク酸、クエン酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン1, 3, 5-トリトリカルボン酸、カルボキシメチルコハク酸の様なポリカルボン酸、及びこれらの可溶塩を含むがこれに限定されるものではない。事実、任意の好適なビルダーは本発明の種々の実施の態様において使用することができるように考慮されている。
キレート剤 ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は少なくとも一つのキレート剤を含む。好適なキレート剤は、銅、鉄及び/又はマンガンキレート剤及びこれらの混合物を含む。少なくとも一つのキレート剤が使用される実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は洗浄組成物の重量の約0.1% から約15% 又はさらに約3.0% から約10%キレート剤を含む。
沈着助剤 ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は少なくとも一つの沈着助剤を含む。好適な沈着助剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカルボキシレート、ポリテレフタル酸の様な汚れ防止ポリマー、カオリナイト、モンモリナイト、アタプルガイト、イライト、ハロイサイト及びこれらの混合物を含むが、これに限定されるものではない。
染料移動用抑制済 ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は一以上の染料移動抑制剤を含む。好適な重合染料移動抑制剤には、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンンーオキシドポリマー、ンービニルピロリドン、及びN-ビニルイミダゾール、ポリビニルオキサドリドン及びポリビニルイミダゾールのコポリマー又はこれらの混合物を含むがこれに限定されるものではない。
少なくとも一つの染料移動抑制剤が使用される実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は、洗剤組成物の重量の約0.0001%から約10%, 約0.01から約5%, 又はさらに約0.1%から約3%含む。
分散剤 ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は少なくとも一つの分散剤を含む。好適な水溶性有機材料はホモー又はコポリマー酸又はそれらの塩を含み、コポリマー酸又はその塩はお互いに2つの炭素原子より多く分離されていない少なくとも2つのカルボキシルラジカルを含んでいるが、水溶性有機材料はこれに限定されるものではない。
酵素 ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は一以上の洗剤用酵素を含み、これらの酵素は洗浄効果及び/又は衣類の柔軟材の持つ利点を提供する。好適な酵素の例には、ヘミセルラーゼ、ペロキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォスフォリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β―グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ又はこれらの混合物を含むが、これに限定されるものではない。ある実施の態様においては、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ及び/又はセルラーゼの様な従来用いられる酵素を含むがアミラーゼと組み合されて使用される(すなわち、カクテル)。
酵素安定剤
本発明のある実施の態様においては、本発明の洗剤製剤に使用される酵素は安定化される。酵素の安定化のための種々の技術が本発明において使用することが考慮されている。例えば、ある実施の態様においては、本発明で使用される酵素は最終製品組成物において水に可溶な亜鉛(II)、カルシウム(II)及び/又はマウネシウム(II)イオンの存在により安定化される。前記組成物は酵素にその様なイオン並びに他の金属イオン(例えば、バリウム(II),スカンジウム(II)、鉄(II)、マンガン(II)、アルミニウム(III)、スズ(II)、コバルト(II)、銅(II),ニッケル(II),及びオキソ バナジウム(IV)を提供する。
触媒金属複合体 ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は一以上の触媒金属複合体を含む。ある実施の態様においては、金属含有漂白触媒を使用することができる。ある好ましい実施の態様においては、金属漂白触媒は、規定された漂白触媒活性の遷移金属カチオン(例えば、銅、鉄、チタン、レニウム、タングステン、モリブデン、又はマンガンイオン)、漂白触媒活性を殆ど又は全く持たない補助金属カチオン(例えば、亜鉛、又はアルミニウムカチオン)、及び触媒性及び補助金属カチオンにおいて既定の安定度定数を持つ金属イオン封鎖を含む触媒系を含み、特にエチレンジアミンテトラ酢酸、液体ジアミンテトラ(メチレンリン酸)及びそれらの水溶性塩が使用される(例えば、米国特許第4,430,243号を参照)。
ある実施の態様においては、本発明の洗浄組成物はマンガン化合物により触媒される。その様な化合物及び使用のレベルは技術分野で良く知られている(例えば、米国特許第5,597,936号及び米国特許第5,595,967号を参照)。
さらに別の実施の態様において、コバルト漂白触媒は本発明の洗浄組成物において使用することができる。種々のコバルト漂白触媒は技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,597,936号及び米国特許第5,595,967号を参照)。
さらに別の実施の態様では、本発明の洗浄組成物はマクロ多環式剛性リガンド(MRL)の遷移金属複合体を含む。実際問題として、また本発明を限定するためではなく、ある実施の態様において、本発明により提供される組成物及び洗浄プロセスは水性洗濯媒体中に少なくとも100百万分の1のオーダーで活性MRL種を提供する様に調製され、ある好ましい実施の態様においては、洗濯液中に約 0.005 ppm から 約 25 ppm, より好ましくは約0.05 ppmから約10 ppm, 及び最も好ましくは約0.1 ppmから約5 ppm提供する。
本発明の遷移金属漂白触媒中の好ましい遷移金属は、マンガン、鉄及びクロムを含むがこれに限定されるものではない。好ましいMRLはまた、架橋された特別の超剛性リガンド(例えば、5,12-ジエチル- 1,5,8,12- テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(5,12-diethyl-1,5,8,12-tetraazabicyclo [6.6.2]hexadecane)を含むがこれに限定されるものではない。好適な遷移金属MRLは既知の手順に従い容易に作ることができる(例えば、WO 00/32601及び米国特許第6,225,464号を参照)。
洗浄組成物の生成及びその使用プロセス 本発明の洗浄組成物は任意の好適な形に製剤され及び調剤者により選択される任意の好適なプロセスにより生成される(例えば、米国特許第5,879,584号, 米国特許第5,691,297号, 米国特許第5,574,005号, 米国特許第5,569,645号, 米国特許第5,565,422号, 米国特許第5,516,448号, 米国特許第5,489,392号, 米国特許第5,486,303号, 米国特許第4,515,705号, 米国特許第4,537,706号, 米国特許第 4,515,707号, 米国特許第. 4,550,862号, 米国特許第. 4,561,998号, 米国特許第. 4,597,898号, 米国特許第4,968,451号, 米国特許第5,565,145号, 米国特許第5,929,022号, 米国特許第6,294,514号,及び米国特許第6,376,445号を参照願いたい。これらの全ての文献は非限定的例として参照により本明細書に組み入れられる。) 使用方法 好ましい実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は表面及び/又は織物洗浄に使用できる。ある実施の態様においては、表面及び/又は織物の少なくとも一部は、純粋な形で又は洗濯液中で希釈させた本発明の洗浄組成物の少なくとも一つの実施の態様において接触させ、その後表面及び/又は織物は任意選択的に洗濯され及び/又は濯がれる。本発明の目的との関係では、「洗濯」の用語は手洗い及び機械的攪拌を含むがこれに限定されるものではない。ある実施の態様においては、織物には、通常の消費者の使用条件で洗濯可能な織物を含む。好ましい実施の態様においては、本発明の洗浄組成物は溶液中で約500 ppmから約15,000 ppmの濃度で使用される。
洗濯溶液が水である実施の態様においては、水温は典型的には約5℃から約90℃である。織物の洗浄での好ましい実施の態様においては、水と織物の質量比は通常約1 : 1から約30: 1である。
実験 以下の実施例は本発明のある好ましい実施の態様及び特徴を示し及び説明するために提供するものであって本発明の範囲を限定するものと理解してはならない。
以下に開示される実験においては、以下の略称が用いられる: ℃(摂氏度);rpm(分当り回転数);H2O(水);HCL(塩酸);aa及びAA(アミノ酸);bp(塩基ペア);kb(キロベースペア);kD(キロダルトン)gm(グラム);μg及びug(ミクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μl及びυl(ミクロリットル);ml (ミリリットル); mm (ミリメータ); nm (ナノメータ); μm 及び um (ミクロメータ); M (モルの); mM (ミリモルの); μM及び uM (ミクロモルの); U (単位); V (ボルト); MW (分子量); sec (秒); min(s) (分); hr(s) (時間); MgCl2 (塩化マグネシウム); NaCl (塩化ナトリウム); OD280 (280 nmの光学濃度); OD405 (405 nmの光学濃度); OD600 (600 nmの光学濃度); PAGE (ポリアクリルアミド ゲル電気泳動法); EtOH (エタノール); PBS (リン酸緩衝生理食塩水 [150 mM NaCl, 10 mM リン酸ナトリウム緩衝液, pH 7.2]); LAS (ラウリル硫酸ナトリウム); SDS (ドデシル硫酸ナトリウム); Tris (トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン); TAED (N,N,N'N'-テトラアセチルエチレンジアミン); BES (スルホンポリエステル); MES (2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物; f.w. 195.24; Sigma # M-3671); CaCl2 (無水塩化カルシウム; f.w. 110.99; Sigma # C-4901); DMF (N,N-ジメチルフォルムアミド, f.w. 73.09, d = 0.95); Abz-AGLA-Nba (2-アイノベンゾイル-L- アラニルグリシル-L-ロイシル-L-アラニノ-4-ニトロベンジルアミド, f.w. 583.65; Bachem # H-6675, VWR catalog # 100040-598); SBGl % ("Super Broth with Glucose"; 6 g Soytone [Difco], 3 g イースト抽出、6 g NaCl, 6 g グルコース);pHは、技術分野で知れらている方法を用いて殺菌前にNaOHによって7.1に調整された; ; w/v (重量対容積); v/v (容積体容積); Npr及びnpr (中性金属プロテアーゼ); SEQUEST(登録商標) (SEQUEST データベースサーチプログラム、 University of Washington); MS (質量分光法); BMI (blood, milk, ink); SRI (汚れ除去指数); Npr及びnpr (中性金属プロテアーゼ遺伝子); npr 及びNpr(中性金属プロテアーゼ酵素);nprE 及びNprE (バチルス アミロリケファシエンス中性金属プロテアーゼ);Prt及びprt(プロテイナーゼ−T酵素)及びTLP(サーモリシン類似のプロテアーゼ)。
以下の略称が、その製品及びサービスがこの実施例の実験で参照された企業を指すのに使用される: TIGR (ゲノム調査機構(The Institute for Genomic Research) , Rockville, MD); AATCC (米国繊維化学者・色彩技術者協会(American Association of Textile and Coloring Chemists)); Amersham (Amersham Life Science, Inc. Arlington Heights, IL); Corning (Corning International, Corning, NY); ICN (ICN Pharmaceuticals, Inc., Costa Mesa, CA); Pierce (Pierce Biotechnology, Rockford, IL); Equest (Equest, Warwick International Group, Inc., Flintshire, UK); EMPA (スイス材料検査及び試験協会(Eidgenossische Material Prufungs und Versuch Anstalt), St. Gallen, Switzerland); CFT (材料試験センター(Center for Test Materials)、Vlaardingen, The Netherlands); Amicon (Amicon, Inc., Beverly, MA); ATCC (American Type Culture Collection, Manassas, VA); Becton Dickinson (Becton Dickinson Labware, Lincoln Park, NJ); Perkin-Elmer (Perkin-Elmer, Wellesley, MA); Rainin (Rainin Instrument, LLC, Wobura, MA); Eppendorf (Eppendorf AG, Hamburg, Germany); Waters (Waters, Inc., MiIf ord, MA); Perseptive Biosystems (Perseptive Biosystems, Ramsey, MN); Molecular Probes (Molecular Probes, Eugene, OR); BioRad (BioRad, Richmond, CA); Clontech (CLONTECH Laboratories, Palo Alto, CA); Cargill (Cargill, Inc., Minneapolis, MN); Difco (Difco Laboratories, Detroit, MI); GIBCO BRL 又はGibco BRL (Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD); New Brunswick (New Brunswick Scientific Company, Inc., Edison, NJ); Thermoelectron (Thermoelectron Corp., Waltham, MA); BMG (BMG Labtech, GmbH, Offenburg, Germany); Greiner (Greiner Bio-One, Kremsmuenster, Austria); Novagen (Novagen, Inc., Madison, WI); Novex (Novex, San Diego, CA); Finnzymes (Finnzymes OY, Finland) Qiagen (Qiagen, Inc., Valencia, CA); Invitrogen (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA); Sigma (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO); DuPont Instruments (Asheville, NY); Global Medical Instrumentation or GMI (Global Medical Instrumentation; Ramsey, MN); MJ Research (MJ Research, Waltham, MA); Infors (Infors AG, Bottmingen, Switzerland); Stratagene (Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA); Roche (Hoffmann La Roche, Inc., Nutley, NJ); Agilent (Agilent Technologies, Palo Alto, CA); S-Matrix (S-Matrix Corp., Eureka, CA); US Testing (United States Testing Co., Hoboken, NY); West Coast Analytical Services (West Coast Analytical Services, Inc., Santa Fe Springs, CA);Ion Beam Analysis Laboratory (Ion Bean Analysis Laboratory, The University of Surrey Ion Beam Centre (Guildford, UK); BaChem (BaChem AG, Bubendorf, Switzerland); Molecular Devices (Molecular Devices, Inc., Sunnyvale, CA); MicroCal (Microcal, Inc., Northhampton, MA); Chemical Computing (Chemical Computing Corp., Montreal, Canada); NCBI (National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD); Argo Bioanalytica (Argo Bioanalytica. Inc, New Jersey); Vydac (Grace Vydac, Hesperia, CA); Minolta (Konica Minolta, Ramsey, NJ); Zeiss (Carl Zeiss, Inc., Thornwood, NY); Sloning BioTechnology GmbH (Puchheim, Germany); and Procter and Gamble (Cincinnati, OH).
実施例1 アッセイ 以下に記載の実施例において以下のアッセイが使用された。以下に記載の手順と異なる点は各実施例に示される。これらの実験では反応完了後に形成された製品の吸光度を測定するために分光光度計が使用された。
A.96ウエルプレートでのタンパク質含有容量の決定のためのBradfordアッセイ Bradford染料試薬(Quick Start)アッセイがマイクロタイタープレート(MTP)スケール上でサーモリシンサンプル中のタンパク質濃度を決定するために使用された。
このアッセイで使用された化学及び試薬溶液は: Bradford Quick Start Dye Reagent(登録商標)(BIO-RADカタログ番号. 500-0205) 希釈緩衝液(10mM NaCl, 0.ImM CaCl2, 0.005% TWEEN(登録商標)-80)
使用された機器はBiomek FX Robot (Beckman Coulter) 及びSpectraMAX MTP Reader (タイプ340; Molecular Devices) である。MTPはCostar (タイプ9017)から入手した。
試験では、200μl Bradford 染料試薬(Bradford Dye Reagent)が各ウエルにピペットで取られ、続いて15μl希釈緩衝液が加えられた。最後に、濾過された培養上澄みを含むl0μlサーモリシンがウエルに加えられた。完全に混合した後に、MTPが室温で少なくとも10分培養された。発生する空気の泡が飛ばされ、ウエルの吸光度は595nmと測定された。
タンパク質濃度を決定するために、背景ノイズ数値(すなわち、非植菌ウエルの)がサンプルについての数値から差し引かれた。結果のOD595 値はサンプル中のタンパク質含有量の相対的測定値を与えた。Bradfordによる結果はmlあたり10からl00μgのタンパク質の間でサーモリシンタンパク質濃度に関して線形であった。
B.プロテアーゼ効果の試験のためのミクロ材料見本(microswatch) サーモリシン及びその変異体による汚れ除去効果がMTPスケール上でミクロ材料見本(EMPA 1 16)を用いて決定された。サーモリシンを含むプロテアーゼサンプルが、湿気を含む通気中で37℃、280rpmで振動させつつ3日間ミクロ材料見本で成長させた濾過培養液から得られた。
このアッセイで使用された化学及び試薬溶液は: 培養上澄みを含むサーモリシン(mlあたり-100 - 200 μgタンパク質) TIDE(登録商標)2X (酵素は含まない)洗剤(P&G)
希釈緩衝液(10mM NaCl, 0.ImM CaCl2, 0.005% TWEEN(登録商標)-80) 使用された機器はBiomek FX Robot (Beckman Coulter), SpectraMAX MTP 読取機 (タイプ340; Molecular Devices)、及びiEMS 培養器/振動器 (Thermo/Labsystems)であり、 MTPはCostar (タイプ9017)から入手した。
TIDE(登録商標)2X液体洗剤調剤(米国での条件):
Milli-Q水が(Ca/Mg 3:1) 硬度原液(282.3 g/L CaCl2.2H20, 130.1 g/L MgCl2.6H2O)を用いて6 gpgの水硬度に調製され、0.78 g/1洗剤TIDE(登録商標)2Xが加えられ、洗剤溶液は少なくとも15分強く攪拌された。その後5mM HEPESが加えられ、pHが8.2に調製された。
ミクロ材料見本 1/4インチ直径の円形ミクロ材料見本をCFT (Vlaardingen, オランダ)から入手した。材料見本を切断する前に、織物(EMPA 116)が脱イオン水中で大気温度で20分事前に洗われ、続けて空気乾燥された。2つのミクロ材料見本は全表面を露出させるために96ウエル マイクロタイタープレートの各ウエルに垂直に置かれた(すなわち、ウエルの底に水平にではなく)。
試験方法 培養器の温度は20℃にされた。濾過された培養液は10 mM NaCl, 0.1 mM CaCl2, 0.005% TWEEN(登録商標)-80溶液の混合したものにより希釈され適当な濃度で試験された。洗剤溶液が上に述べた様に準備された。その後190μlの洗剤溶液がミクロ材料見本を含むMTPの各ウエルに加えられた。この混合物に、(各ウエルの全容量が200μl となるように)10μlの希釈酵素溶液が各ウエルに加えられた。MTPはプレートシールにより覆われ、そして1400rpm (iEMS培養器)で攪拌しつつ培養器中で20℃で30分置かれた。適当な条件下で、培養しそれに続いて各ウエルからl00μlの溶液が取られて新たなMTPに置かれた。
続いて、各ウエルにl00μl溶液を含むこのMTPの吸光度がMTP読取機によって計測され405nmであった。各ウエルに2ミクロ材料見本及び洗剤を含んでいるが、サーモリシンを含むサンプルを追加していないブランク対照も試験に含まれていた。
BMI(血液/ミルク/インキ、blood/milk/ink)効果の算出 観測された吸光度はブランク値と対比して修正された(追加の酵素を加えることなくミクロ材料見本を培養した後に得られた)。得られた吸光度は加水分解活性の評価尺度である。各サンプル(サーモリシン又は変異体)についての効果指数(PI)が算出された。効果指数は同一のタンパク質濃度での変異体(実際の数値)と標準サーモリシン酵素(理論値)の効果との対比である。
さらに、理論値が標準酵素のラングミュア等式のパラメータを用いて算出された。
1より大きい効果指数(PI>1)は(標準(例えば、野生型)と比較して)より良い変異体を同定し、1のPIは標準と同等の効果を持つ変異体を同定し、そして1より小さいPI(PI<1)は標準より劣る効果の変異体を同定した。このようにIPはある環境で使用が望ましくない変異体のみならず勝者も同定した。
C.洗剤の存在下での安定性アッセイ サーモリシン及びその変異体の安定性が25%TIDE(登録商標)2X洗剤の存在下で既定の条件下で培養後に測定された。当初及び残留活性が決定された。
このアッセイで使用された化学及び試薬溶液は以下の通り:
サーモリシンを含む培養上澄み(mlあたり-100 - 200 μgタンパク質) DTPAキレート剤を含む及び含まないTIDE(登録商標)2X液体洗剤(P&G) 5.5 mM HEPES緩衝液中にDTPAを含む27.5% TIDE(登録商標)2X洗剤溶液, pH 8.2 (TIDE(登録商標)+溶液) 5.5 mM HEPES緩衝液中にDTPAを含まない27.5% TIDE(登録商標)2X洗剤溶液, pH 8.2 (TIDE(登録商標)+溶液) MESアッセイ緩衝液(55.5 mM MES/NaOH, 2.6 mM CaCl2, 0.005% TWEEN(登録商標)-80, pH 6.5) 使用された機器はBiomek FX Robot (Beckman Coulter)、蛍光分光光度計(FLUOstar Optima; BMG), iEMS培養器/攪拌機(Thermo/Labsystems)であった。MTPはCostar (タイプ9017)及びGreiner (ブラックプレート(black plate)、タイプ 655076)から入手した。
試験方法 ストレスのない条件 最初に、20μlのサーモリシンを含む培養上澄みが180μl MESアッセイ緩衝液により希釈された。その後20μlの希釈上澄みがさらに180μl MESアッセイ緩衝液により希釈された。続いてl0μlのこの希釈液が事前に25℃に温められたプレート(Greiner 655076)で190μl AGLA基質溶液に移された。全ての空気の泡は取り払われプレートは以下に述べるAGLA プロテアーゼアッセイ手順に従い測定された。
ストレスのある条件 最初に、20 μlの培養上澄みが180 μl 27.5% TIDE(登録商標)+洗剤溶液により希釈され、iEMS攪拌機に置かれた。プレートシールにより覆われたプレートは32°Cで、900 rpmの状態で合計で60分培養された。さらに、20 μlの培養上澄みが180 μl 27.5% TIDE(登録商標)+洗剤溶液により希釈され、iEMS攪拌機に置かれた。プレートシールにより覆われたプレートは50°Cで、900 rpmの状態で合計で180分培養された。
それぞれの培養に続いて、これらの各20μlの溶液が180μl MESアッセイ緩衝液により希釈され、そしてl0μlのこの希釈液は事前に25°Cで温められたプレート(Greiner 655076) で190μl AGLA- 基質溶液により希釈された。全ての空気の泡は取り払われ、プレートは以下に述べるAGLAプロテアーゼアッセイ手順に従い測定された。
TIDE(登録商標)2X安定性の算出 蛍光測定が励起350 nm及び放射420 nmで行なわれた。分光蛍光光度計ソフトウエアが各ウエルの蛍光の増加率(傾き)を(ミリー)RFU/分の回帰直線に対して算出された。
残留及び当初のAGLA活性の比率が、25% TIDE(登録商標)2X安定性を表わするために次の様に用いられた。
残留活性%=[ストレスのある場合の傾き]*100/[ストレスのない場合の傾き] 各サンプル(サーモリシン及びその変異体)について効果指数が、変異体の残留活性をサーモリシンの残留活性により除することにより算出された。効果指数は、同じ条件で決定された変異体の安定性と標準サーモリシン酵素(例えば、野生型又は親酵素)の安定性を比較したものである。
1より大きい効果指数(performance index (PI)) (PI>1)は(標準(例えば、野生型)と比較して)より良い変異体を同定し、1のPIは標準と同じ効果を持つ変異体を同定し、そして1より小さいPI(PI<1)は標準より安定性の劣る効果の変異体を同定する。
このように、IPはある環境で使用が望ましくない変異体のみならず勝者も同定した。
D. 2-アミノベンゾイル-L-アラニル-L-グリシル-L-ロイシル-L-アラニノ-4-ニトロベンゾイルアミド (Abz-AGLA-Nba) プロテアーゼアッセイ(2-Aminobenzoyl-L-alanvI-L- gIvcyl-L-leucyl-L-alanino-4-nitrobenzyIamide(Abz- AGLA-Nba))protease assay) 本明細書に記載の方法は、時間及び場所を問わず再生可能なプロテアーゼアッセイデータを生み出すレベルの技術的な明細を提供する。このアッセイはある与えられた実験室条件に適合させることができるが、変形された手順を用いて得られた任意のデータは本来の方法により得られた結果と調和させる必要がある。中性金属プロテアーゼは、2-アミノベンゾイル-L-アラニル-L-グリシル-L-ロイシル-L-アラニノ-4-ニトロベンゾイルアミド (Abz-AGLA-Nba)のグリシル及びロイシルの間のペプチド結合を切断する。溶液中の遊離 2-アミノベンゾイルーL-アラニングリシン(Abz-AG)(2-Aminobenzoyl-L- alanylglycine (Abz- AG))は415 nmの最大蛍光放射と340 nmの最大蛍光励起とを持つ。
Abz-AGの蛍光は無傷Abz-AGLA-Nba分子中のニトロベンジルアミドにより消光される。これらの実験では、Abz-AGLA-Nbaのプロテアーゼによる切断によるAbz-AGの分離が蛍光分光計によりモニターされた(励起350/放射420)。Abz-AGの出現の頻度はプロテアーゼ活性の測定尺度であった。
このアッセイで使用された化学及び試薬溶液は以下の通りである。
MES 基質緩衝液- 52.5 mM MES, 2.5 mM CaCl2, 0.005% TWEEN(登録商標)-80, pH 6.5 MES アッセイ緩衝液- 55.5 mM MES, 2.6 mM CaCl2, 0.005% TWEEN(登録商標)-80, pH 6.5 Abz-AGLA-Nba 原液-ジメチルフォルムアミド (28.2 mg/ml DMF)中の48 mM Abz-AGLA-Nba 使用された機器はBiomek FX Robot (Beckman Coulter)、分光蛍光光度計(FLUOstar Optima; BMG), iEMS培養器/攪拌機(Thermo/Labsystems)及びInnova 培養器 (Innova-4230; New Brunswick)である。MTPはCostar (タイプ9017)及びGreiner (ブラックプレート(black plate)、タイプ 655076)から入手した。
試験方法 Abz-AGLA-Nbaアッセイ溶液は1 mlのAbz- AGLA-Nba原液を19 ml MES基質緩衝液に加えることにより準備し、そして少なくとも2分混合された。続いてサーモリシン又はその変異体を含む培養上澄みがMESアッセイ緩衝液によりmlあたり1-6 μgタンパク質濃度に希釈された。
このアッセイは各ウエルにl0μlの希釈プロテアーゼ溶液を加え、続いて、25℃で少なくとも15分間事前に平衡にされた190μl Abz-AGLA-Nbaアッセイ溶液が加えられた。溶液は強く混合され、Abz-AGLA-Nbaのプロテアーゼによる切断によるAbz-AGの分離が励起350nm及び放射420nmの運動モードで蛍光分光計によりモニターされた。Abz-AGの出現の頻出はサンプル中のプロテアーゼ活性の測定尺度であった。プロテアーゼ活性はRFU(分当たり相対蛍光単位(relative fluorescence units-min-1)として表わされた。
実施例2 バチルススブチリスでのサーモリシンの生成 この実施例では、バチルススブチリスでサーモリシンを生成する実験について記述する。
ジオバチルス カルドプロテオリチカスの全長のサーモリシンはバチルス サーモプロテオリチカス ロッコのサーモリシン前駆体と、及びバチルス ステアロフィルスのバチロリシン(NprS)前駆体と99%を超えた同一性を持つ。したがって、「サーモリシン」、「バチロリシン」、「プロティナーゼ−T」及び「PrT」の用語は本明細書では相互交換的に用いられジオバチルス カルドプロテオリチカスの中性金属プロテアーゼを指す。以下に示すDNA配列(ジオバチルス カルドプロテオリチカスのサーモリシンリーダー、サーモリシンpro、及び成熟サーモリシン)はサーモリシン前駆体タンパク質をコードする。
Figure 0006894342
上の配列では、太字は成熟サーモリシンプロテアーゼをコードするDNAを示し、標準字体はリーダー配列(サーモリシンリーダー)をコードするDNAを示す、下線を付した個所はpro配列(サーモリシンpro)をコードするDNAを示す。以下に示すアミノ酸配列(サーモリシンリーダー、サーモリシンpro、及び成熟サーモリシンDNA配列)(配列番号2)は全長のサーモリシン前駆体タンパク質に対応する。この配列では下線部分はpro配列を示し、太字は成熟サーモリシンプロテアーゼを示す。
Figure 0006894342
成熟サーモリシン配列は配列番号3として表わし図1に示す。この配列は本明細書に示す変異体ライブラリーを作るベースとして使用された。
Figure 0006894342
pHPLTサーモリシン発現ベクターは、ジオバチルス カルドプロテオリチカスのゲノムDNA(Chen他, Extremophiles, 8:489-498, 2004)及びpHPLT プラスミドDNA(van Solingen他, Extremophiles, 5:333-341、2001)由来のサーモリシン遺伝子を増幅して構築された。pHPLT プラスミドのマップは図2に示す。このプラスミドはサーモリシンを発現をさせるためにバチルスリチェニフォルミスの熱安定的アミラーゼLATプロモータ(PLAT)を含む。サーモリシン遺伝子はゲノムDNAからFinnzymes (Finnzymes OY, Espoo, Finland) Phusion High-Fidelity DNA Polymerase (カタログ番号 F-530L)及び以下のプライマーを用いて増幅された。
Figure 0006894342
pHPLT断片がFinnzymes Phusion High- Fidelity DNA Polymerase及び以下のプライマーを用いてpHPLTプラスミドから増幅された。
Figure 0006894342
上のいずれの増幅においても以下のPCR条件が用いられた、 98℃で30秒、30x(98°Cで10秒、55℃で20秒及び72℃で45秒 (サーモリシン)又は72℃で80秒 (pHPLT)), 続いて72℃で5分。
結果のPCR生成物は、E−ゲル(E-gel)(Invitrogen)に掛けられ、切断され、ゲル抽出キット(Qiagen)で精製された。さらに、PCR重複伸長融合(Ho, Gene, 15:51-59, 1989)が、下のプライマーを用いて上の遺伝子断片をHigh fidelity platinum Taq DNA polymerase (Invitrogen)と融合させるために、用いられた。
Figure 0006894342
これらの反応では以下の条件を用いた。
94℃で2分、25X(94℃で30秒、55℃で30秒及び68℃で5分)、続いて68℃で5分。
結果のPCR融合生成物は、E−ゲル(E-gel)(Invitrogen)に掛けられ、切断され、ゲル抽出キット(Qiagen)で精製された。さらに精製された融合生成物は切断され(Pstl)そして自己結紮された(T4 DNA リガーゼ, Invitrogen)。
pHPLT−サーモリシン発現ベクターのマップは図3に示し、pHPLT−サーモリシン発現ベクターのDNA配列(配列番号8)は図4に示す。結紮混合物がバチルススブチリスSC6.1を形質転換するために使用された(表現型:ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK)。バチルススブチリスSC6.1株の形質転換がWO 02/14490に記載の様に実施された。本文献は参照により本明細書に組み入れられる。
pHPLT−サーモリシンベクターを含むバチルススブチリス形質転換細胞の選択的成長が20 mg/L のネオマイシンを含む25 ml MBD媒体(MOPS ベースの規定媒体)を含む振動フラスコで実施された。
培養によりタンパク質分解活性を持つ分泌された成熟サーモリシン酵素が生成された。ゲル分析がNuPage Novex 10% Bis-Trisゲル(Invitrogen, カタログ番号 NP030 IBOX)を用いて実施された。分析のためのサンプルを準備するために、2容量の上澄みが1容量の1M HCL、1容量 4xLDSサンプル緩衝液(Invitrogen, カアログ番号NP0007)及び1% PMSF (20 mg/ml)と混合され、続いて70℃で10分加熱された。その後各25 μLサンプルが10 μLのSeeBlueプラス2 事前に汚染したタンパク質標準 (Invitrogen, カタログ番号LC5925)の近くのゲルに置かれた。結果は明らかに、この実施例で示すサーモリシンクローン戦略はバチルススブチリス中で活性組み換えサーモリシンの生成に適していることを示した。
実施例3 サーモリシン部位評価ライブラリーの生成(SEL) この実施例ではサーモリシンSELの構築で使用される方法について記述する。上で述べた様に、「サーモリシン」、「バチロリシン」、「プロティナーゼ−T」及び「PrT」の用語は本明細書を通して相互交換的に用いられ、ジオバチルス カルドプロテオリチカスの中性金属プロテアーゼを指す。pHPLT-サーモリシンベクター(図3)はサーモリシン発現カセットを含み、前記カセットは部位評価ライブラリーのためのテンプレートDNAとして働く。各サーモリシン部位評価ライブラリーはバチルススブチリスのクローンの集まりを含み、その全てが特異サーモリシン変異体を発現させる。各ライブラリーはバチルススブチリス クローンを最大20の異なる変異体を含む。
例えば、サーモリシンSEL 27は、成熟サーモリシン酵素の27の位置のチロシンをコードするDNAトリプレットが、以下をコードする他のDNAトリプレットにより置換されている変異体を含む。すなわち、アラニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、又はチロシンである。
端的に言えば、成熟サーモリシンのDNAをコードするストランド中の特異の位置のDNAトリプレットが置換される。変異されたサーモリシン断片はその後pHPLTに結紮される。pHPLT−サーモリシン変異体プラスミドがバチルススブチリスSC6.1を形質転換するために用いられる。
prt変異体の生成はSloning BioTechnology GmbH (Puchheim, ドイツ)の遺伝子合成生成物及びサービスを用いて実施された。各変異体の特異的突然変異がDNA配列決定により確認された。
実施例4 粗サーモリシンサンプルの生成 サーモリシン(またプロテイナーセーT、又はPrTと言う)変異体が、10 mg/Lネオマイシンを含むMBD媒体(MOPSベースの規定された媒体)中で、96 ウエルMTPで37℃で68時間バチルススブチリス形質転換細胞を培養することにより生成された。MBD媒体は本質的に技術分野で知られている方法で生成された(Neidhardt 他, J Bacteriol, 1 19: 736-747, 1974を参照)が、以下の点のみが異なっている。すなわち、ベース媒体からNH4Cl, FeSO4,及びCaCl2が除かれ、3 mM K2HPO4 が使用され、そしてベース媒体は60 mM 尿素、75 g/Lグルコース及び1% のソイトン(soytone)で補充された。また微量栄養素は1リットル中に以下を含む100X量の原料として作られた:400 mg FeSO4.7H2O, 100 mg MnSO4.H2O, 100 mg ZnSO4.7H2O, 50 mg CuCl2 .2H2O, 100 mg CoCl2.6H2O, 100 mg NaMoO4.2H2O, 100 mg Na2B4O7.10H2O, 10 mlの1M CaCl2,及び10 mlの0.5 Mクエン酸ナトリウム。
実施例5 重質液体洗剤(Heavy Duty Liquid (HDL) Detergent)中のサーモリシンの安定性 Unileverの洗剤ALL Small and Mighty, P&G TIDE(登録商標) Fresh Breeze, P&G TIDE(登録商標)2X Fresh BreezeをWalmartで購入した。この市場で入手可能な洗剤が90℃で1時間加熱され、その後室温に冷やされ、この洗浄組成物のプロテアーゼを不活性化した。凍結乾燥された粉末中のサーモリシン(またプロテイナーセーT、又はPrTと言う)をSigmaから購入し、100mM Tris pH 7及び20mg/mlの 50%プロピレングリコールで溶解した。
NprEがバチルス属上澄みからイオン交換クロマトグラフィーを通して精製された。エペンドルフ管で加熱処理された1mlの洗剤に800μgのサーモリシン又はNprEが加えられた。
エペンドルフ管は室温で15分振動装置で十分混合され、その後25℃又は32℃で培養された。異なる時間に上の実施例1で記載のAGLAアッセイを用いて残留プロテイナーゼ活性が測定された。端的に言うと10μlのサンプルがAGLA緩衝液(50mM MES, pH 6.5, 0.005% Tween 80, 2.5mM CaCl2)中で441倍に希釈された。
希釈された10μlのサンプルが200μlのAGLA基質 (AGLA緩衝液中の2.4mM Abz-AGLA-Nba)に添加された。励起350nm及び放射415nmで最初の100秒モニターされ、当初の傾きが酵素活性として記録された。酵素活性が時間に対してプロットされ、曲線は指数関数的減衰にあてはめられる様調整された。
図5に示す様に、サーモリシンは室温においてUnilever All Small & MightyのNprEより140倍安定している。同様に図6に示す様に、サーモリシンは32℃でP&G TIDE(登録商標)中のNprEより68倍安定的であり、また図7に示す様に、サーモリシンは32℃でP&G TIDE(登録商標)2X中のNprEより98倍安定的である。この様にサーモリシンはUnilever洗剤ALL (3X), P&G TIDE(登録商標)IX Fresh Breeze及びP&G TIDE(登録商標)2X Fresh Breeze中のNprEよりもはるかに安定的である。
実施例6
金属プロティナーゼ抑制剤は重質液体(HDL)洗剤中でサーモリシンの安定性を向上させることができる。塩化亜鉛(Zinc Chloride), フォスフォラミドン(Phosphoramidon), ガラルジン(Galardin)は知られた金属プロテイナーゼ抑制剤である。これらはSigmaから購入し水又はDMSOで溶解した。異なる濃度の抑制剤が室温で10分サーモリシン(またプロテイナーセーT、又はPrTと言う)と事前混合された。その後抑制剤はUnilever 洗剤ALL Small and Mightyに加えられサーモリシンの最終濃度は、1mlの全容量中で800μg/mlであった。異なる時間に、サンプルが採取されTCAで沈殿された。端的に言うと、酵素を含む10μlの洗剤のサンプルが冷やされた500μlの0.2N HCLに加えられ、その後500μlの20%TCAが加えられた。試験管は混合され氷上で20分培養された。ペレットが回収され良く冷やした90%アセトンで洗われた。SDS-PAGE分析のため、ペレットがサンプルを含む緩衝液(Invitrogen)中で溶解された。図8に示す様に、500μDMのフォスフォラミドン(Phosphoramidon)及び1mMのガラルジン(Galardin)は共に洗剤中でサーモリシンを大きく安定化させる。
実施例7 TIDE(登録商標)2Xミクロ材料見本アッセイでのサーモリシン変異体の汚れ除去効果
この実験では、種々の単一置換されたサーモリシン(またプロテイナーセーT、又はPrTと言う)変異体の汚れ除去効果を決定することが行われた。
実施例1に記載の様に、サーモリシン変異体の汚れ除去効果の確認は血液/ミルク/インキ(BMI)ミクロ材料見本アッセイを用いて行った。端的に言えば、洗濯された単一置換サーモリシン変異体の洗浄効果がTIDE(登録商標)2Xミクロ材料見本アッセイで評価された。表7−1は試験された変異体(例えば、野生型サーモリシン酵素に比較して改良された効果を示す)の効果指数を表わす。1より大きい効果指数を持つこれらの変異体は改良された効果を持つ。これらの結果に示される様に単一のアミノ酸が置換された多くの変異体はこれらのアッセイでは野生型酵素よりもよりよい効果を示す。
Figure 0006894342
実施例8 TIDE(登録商標)2X液体洗剤中のサーモリシン変異体の安定性
この実施例では、液体洗剤の存在する中で、種々の単一置換されたサーモリシン(またプロテイナーセーT、又はPrTと言う)変異体の安定性を評価する実験が行われた。
実施例1に記載の様に、サーモリシン変異体の安定性が、高い温度のTIDE(登録商標)IX重質液体(HDL)洗剤の存在する中で培養前及び後にAGLA活性を決定することにより測定された。表は野生型サーモリシンと対比した相対的安定性の値を含み、それは変異体の残留活性を野生型の残留活性により除した商である。1より大きい値は洗剤の存在下でより高い安定性を示す。表8−1及び表8―2では、データはDTPAが存在し及び存在しない場合のHDL中の、野生型サーモリシンの安定性に対する、サーモリシンの単一置換変異体の相対的安定性を示す。
Figure 0006894342
Figure 0006894342
本明細書中に記載の全ての出願公開広報及び特許は参照により本明細書に組み入れられる。本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、本発明について記載した方法及びシステムに対して修飾及び改変することは当業者にとり明白である。
本発明は特定の好ましい実施の態様に関して記載しているが、本発明はその様な特別な実施の態様に不当に限定されるものでないことは了解されるべきである。事実、本明細書に記載されたモードを、本発明を実施するために種々修飾することは関連分野の当業者にとり明らかであり、これらの修飾は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲にあることを了解すべきである。

Claims (6)

  1. 単離されたジオバチルス カルドプロテオリチクスサーモリシン変異体であって、
    前記サーモリシン変異体は、配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも95%のアミノ酸の同一性を持ち、かつ、配列番号3に示すアミノ酸配列の65の位置に置換を含み、
    前記置換は、S065I、S065T、S065V、S065W及びS065Yからなる群から選択され、
    前記サーモリシン変異体が、配列番号3に示す野生型ジオバチルス カルドプロテオリチカスサーモリシンに比較して改良された安定性を有し、そして、
    前記改良された安定性が、洗剤の存在下での安定性アッセイにおける効果指数(PI)で1.04以上である、サーモリシン変異体。
  2. 請求項1に記載のサーモリシン変異体を含む組成物。
  3. 前記組成物は洗浄組成物である、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記洗浄組成物は洗剤である、請求項3に記載の組成物。
  5. プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヘミセルラーゼ及びセルラーゼから選択される少なくとも一つの追加の酵素又は酵素誘導体をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
  6. 前記組成物は、動物の飼料用組成物、繊維加工用組成物、及び皮革加工用組成物から選択される、請求項2に記載の組成物。
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