JP6866721B2 - トナー用ポリエステル樹脂およびトナーの製造方法 - Google Patents
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Description
これらの方法により画像を得るために用いられる装置は、通常、加熱体である定着部を有するため、装置内での温度が上昇する。そのため、トナーには、ブロッキングしないこと、つまり保存性が求められる。加えて、連続印刷時においても装置の汚れやカブリなどが見られないこと、すなわち耐久性もトナーには求められている。
例えば、特許文献1、2にはテレフタル酸等の多価カルボン酸から導かれる単位と、ビスフェノール誘導体等の多価アルコールから導かれる単位とを特定の割合で含むトナー用ポリエステル樹脂が開示されている。
粉砕法は、バインダー樹脂および他のトナー配合物(例えば顔料(着色剤)、離型剤等)を溶融混練し、得られた混練物を粉砕機などによって微粉砕し、分級することによってトナーを得る方法であり、工業的に広く用いられている。
ケミカル法は、例えばバインダー樹脂等を有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を水系媒体に分散させてバインダー樹脂を乳化した後、有機溶剤を除去し、得られた乳化粒子を凝縮し、凝縮粒子を分離して洗浄、乾燥することによってトナーを得る方法である。
そのため、トナーをケミカル法で製造する場合、バインダー樹脂には残存モノマー量が少ないことが重要である。
さらに、樹脂が微粉化できないと乳化工程での溶剤溶解時間の生産性を損なうため、粉砕性に優れたバインダー樹脂が求められる。
[1]ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を含有する多価アルコール成分と、多価カルボン酸成分を含むスラリー溶液を、240℃以上で重合する工程を有するポリエステル樹脂の製造方法であり、前記スラリー溶液が、3価以上の酸および/またはアルコールを含み、前記ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)と水酸基価(KOH/g)の比率が、酸価/水酸基価≧1.0を満足する、ポリエスエル樹脂の製造方法。
[2]ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物が、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物である、[2]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[3]アルキレンオキサイド付加物の平均付加モル数が2.2〜4.0である、[1]または[2]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[4]3価以上の酸および/またはアルコールを、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と混合した後に、240℃以上で重合する、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]イソソルバイドを添加して重合される、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法
[6]上記製造方法で得られた樹脂を含む混合物を混練する工程を含む、トナーの製造方法
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を含有する多価アルコール成分と、多価カルボン酸成分を含むスラリー溶液を、240℃以上で重合する工程を有するポリエステル樹脂の製造方法であり、前記スラリー溶液が、3価以上の酸および/またはアルコールを含み、前記ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)と水酸基価(KOH/g)の比率が、酸価/水酸基価≧1.0を満足する。
以下、本発明のポリエステル樹脂の製造方法の詳細について説明する。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、多価アルコール成分として、少なくともビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物(ビスフェノールA誘導体)を用いる。
ビスフェノール誘導体としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられ、具体的には、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(4.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(5.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
これらのうち、適度な定着強度と帯電性を付与する観点と、残存モノマーの低減に、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが良く、特にエチレン付加モル数が(2.2)〜(4.0)の物はトナーの保存性を維持可能で、乳化安定性を付与できる点で好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してエチレン付加モル数が(2.2)〜(4.0)に入るように調整してもよい。
イソソルバイドとしては、例えばD−イソソルバイド、L−イソソルバイドなどが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他の2価のアルコールとしては、例えばエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA、スピログリコール、ジオキサングリコール、ズルシッド、ヘキシッドなどが挙げられる。
これらの中でも、重合反応性やポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を40℃以上に設計しやすい観点から、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールが特に好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<多価カルボン酸>
多価カルボン酸としては、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
2価のカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびこれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物などが挙げられる。これらジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、モノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステルなどが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、後述の3価以上のカルボン酸と併用してもよい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、2価のカルボン酸と併用してもよい。
<3価以上の酸および/またはアルコール>
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、3価以上の酸および/またはアルコールを用いる。3価以上の酸および/またはアルコールを用いることで、樹脂強度の高いポリエステル樹脂を生産性よく製造できる。
3価以上のカルボン酸としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸またはそれらの酸無水物や低級アルキルエステルなどが挙げられる。
これらのうち、3価以上のカルボン酸としては、沸点が高く、トナーから発生する揮発成分の原因物質になりにくい点で、トリメリット酸、トリメリット酸無水物が好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
3価以上のアルコールとしては、例えばグリセリン、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
これらのうち、3価以上のアルコールとしては、グリセリンやトリメチロールプロパンが好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)と水酸基価(KOH/g)の比率が、酸価/水酸基価≧1.0を満足する。当該範囲であれば、顔料や染料等の着色剤の分散が良好になる効果を奏する。
酸価/水酸基価を上記範囲にするためには、例えば、仕込み組成の酸とアルコールの比率で酸の比率をアルコールよりも多くしたり、反応性の高い第1級水酸基のみを有するアルコールを用いたりすることが挙げられる。
<他の成分>
ポリエステル樹脂の製造には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、末端官能基数の調整や他の材料の分散性向上目的で、多価カルボン酸および多価アルコールに加えて、1価のカルボン酸や1価のアルコールを併用してもよい。
1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−メチル安息香酸等の炭素数30以下の芳香族カルボン酸;ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数30以下の脂肪族カルボン酸;桂皮酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和二重結合を分子内に1つ以上有する不飽和カルボン酸などが挙げられる。
1価のアルコールとしては、例えばベンジルアルコール等の炭素数30以下の芳香族アルコール;オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数30以下の脂肪族アルコール等が挙げられる。
これら1価のカルボン酸および1価のアルコールは、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
チタン触媒は反応活性が高く、触媒を用いない場合や他の触媒を用いた場合よりもエステル化反応時間が短く樹脂生産性を向上させ、樹脂オリゴマー量を低減できるので水分散後の粒径が均一化しやすい。チタン触媒以外の触媒、例えばスズ触媒やアンチモン触媒は原材料に分散している不均一触媒が一般的であり、水分散処理を行うとこれを核として粒子が凝集しやすく、ケミカルトナー用に適した粒径を安定して得られ難い傾向を示す。またスズ触媒やアンチモン触媒は環境汚染物資として懸念され、使用が制限される傾向にあるため、使用量を少なくして環境負荷と凝集への影響を低減しようとすると、重合時の反応性が低位となり重合時間延長による生産性の低下を招く。
液状のチタン触媒としては有機チタン化合物が挙げられ、固体状のチタン触媒としては無機チタン化合物が挙げられる。
アルコキシ基を有するチタンアルコキシド化合物としては、例えばテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラペントキシチタン、テトラオクトキシチタンなどが挙げられる。
カルボン酸チタン化合物としては、例えば蟻酸チタン、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、オクタン酸チタン、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタン、ヘキサントリカルボン酸チタン、イソオクタントリカルボン酸チタン、オクタンテトラカルボン酸チタン、デカンテトラカルボン酸チタン、安息香酸チタン、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、1,3−ナフタレンジカルボン酸チタン、4,4−ビフェニルジカルボン酸チタン、2,5−トルエンジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタン、トリメリット酸チタン、2,4,6−ナフタレントリカルボン酸チタン、ピロメリット酸チタン、2,3,4,6−ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどが挙げられる。
カルボン酸チタニル化合物としては、例えば安息香酸チタニル、フタル酸チタニル、テレフタル酸チタニル、イソフタル酸チタニル、1,3−ナフタレンジカルボン酸チタニル、4,4−ビフェニルジカルボン酸チタニル、2,5−トルエンジカルボン酸チタニル、アントラセンジカルボン酸チタニル、トリメリット酸チタニル、2,4,6−ナフタレントリカルボン酸チタニル、ピロメリット酸チタニル、2,3,4,6−ナフクレンテトラカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
カルボン酸チタニル塩化合物としては、特に限定されないが、例えば上記のカルボン酸チタニル化合物に対するアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)塩もしくはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)塩などが挙げられる。
これらの中でも、反応性と水分散液の粒径の観点で、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタンが好ましい。また、チタンキレート化合物を用いる場合は、配位子が、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、オクチレングリコール、トリエタノールアミン、乳酸、乳酸アンモニウムから選ばれることが好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステル樹脂は、上述した多価カルボン酸および多価アルコールと、必要に応じて他の成分とを含む単量体混合物を公知のポリエステル重合方法により重合することで得られる。
3価以上のカルボン酸の含有量は、多価カルボン酸100モル%中、0.1〜23モル%が好ましく、1〜20モル%がより好ましく、1〜15モル%がさらに好ましい。3価以上のカルボン酸の含有量が0.1モル%以上であれば、ポリエステル樹脂の樹脂強度がより高まる。特に、3価以上のカルボン酸の含有量が1モル%以上であれば、ポリエステル樹脂の生産性がより向上する。一方、3価以上のカルボン酸の含有量が23モル%以下であれば、ポリエステル樹脂の溶剤溶解性およびトナーの保存性がより向上する。加えて、生産性を良好に維持しつつ、着色しにくいポリエステル樹脂が得られやすくなる。
3価以上のアルコールの含有量は、多価カルボン酸100モル部に対して1〜40モル部が好ましく、1〜35モル部がより好ましく、1〜30モル部がさらに好ましい。特に、3価以上のアルコールの含有量が1モル%以上であれば、ポリエステル樹脂の生産性がより向上する。一方、3価以上のアルコールの含有量が30モル%以下であれば、ポリエステル樹脂の溶剤溶解性およびトナーの保存性がより向上する。加えて、生産性を良好に維持しつつ、着色しにくいポリエステル樹脂が得られやすくなる。
さらに、ポリエステル樹脂の重合安定性を得る目的で、単量体混合物に安定剤を添加して重合してもよい。安定剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。
ポリエステル樹脂のTgは、示差走差熱量計の測定により求めたものである。具体的には、100℃で10分間加熱してメルトクエンチを行った後、昇温速度5℃/minで測定したときのチャートの低温側のベースラインと、Tg近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求め、これをTgとする。
ポリエステル樹脂のT4は、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/minの等速昇温下の条件で測定し、サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度である。
ポリエステル樹脂の酸価は、ポリエステル樹脂をベンジルアルコールに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、0.02規定のKOHベンジルアルコール溶液を用いて滴定して求めた値である。
ポリエステル樹脂のピークトップ分子量(Mp)は、1000〜300000が好ましく、1000〜30000がより好ましく、1000〜20000がさらに好ましい。
ポリエステル樹脂のMwおよびMpは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液とし、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
本実施形態のポリエステル樹脂の製造方法によれば、粉砕性と乳化物安定性に優れ、残存モノマーの少ないポリエステル樹脂を得ることができる。また、保存性に優れた粉砕法、ケミカル法の両トナー製法向けの材料を提供できる。
<溶解工程>
溶解工程は、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解し、樹脂溶液を得る工程である。
ポリエステル樹脂は、有機溶剤に溶解する前に数mm程度に粗粉砕しておくことが好ましい。ポリエステル樹脂を粗粉砕することで、有機溶剤に溶解しやすくなる。
さらに、粗粉砕したポリエステル樹脂を数100μm程度(具体的には平均粒径が1mm未満となるように)に微粉砕してもよい。ポリエステル樹脂を微粉砕することで、後述する乳化工程においてポリエステル樹脂がより乳化しやすくなる。
有機溶剤としては、ポリエステル樹脂を溶解可能であれば特に制限されないが、例えば芳香族系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、グリコールエーテル系有機溶剤などが挙げられる。
芳香族系有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、ベンゼン、エチルベンゼンなどが挙げられる。
ケトン系有機溶剤、としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトンなどが挙げられる。
エステル系有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
アルコール系有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
グリコールエーテル系有機溶剤としては、例えばメチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルトリグリコールなどが挙げられる。
乳化工程は、溶解工程で得られた樹脂溶液に水を加えてポリエステル樹脂を乳化し、樹脂粒子分散液を得る工程である。
樹脂粒子分散液は、樹脂溶液と水との混合物に、剪断力を付与することで得られる。この際、加熱しながら剪断力を付与してもよい。また、加熱しながら有機溶剤を留去してもよい。
剪断力の付与には、例えば回転剪断型ホモジナイザーや、ホモミキサー、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の分散機を用いればよい。
加熱しながら剪断力を付与する場合は、ポリエステル樹脂のTg以上で行うことが好ましく、ポリエステル樹脂のTgより2℃以上高い温度で行うことがより好ましく、さらに好ましくは5℃以上である。ポリエステル樹脂のTg以上で加熱しながら剪断力を付与すれば、樹脂溶液と水との混合物の粘度が十分に下がり、ポリエステル樹脂を容易に乳化できる。
樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回析式粒度分布測定装置で測定される。
塩基性化合物としては、無機塩基性化合物および有機塩基性化合物のいずれであってもよい。
無機塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属;アルカリ金属の炭酸塩や酢酸塩等の弱酸の塩あるいは部分中和塩;アンモニアなどが挙げられる。
有機塩基性化合物としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;コハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
これらの中でも、乳化安定性などの観点から、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
凝集工程は、乳化工程で得られた樹脂粒子分散液中の樹脂粒子を凝集し、凝集粒子分散液を得る工程である。
凝集工程では、例えば樹脂粒子分散液に凝集剤を添加すると共に、樹脂粒子分散液のpHを酸性条件の2〜5程度に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加する。その後、樹脂粒子のTgから80℃程度までに加熱し、樹脂粒子分散液中の樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を形成させる。また、樹脂粒子分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、25℃程度の室温条件下で凝集剤を添加し、樹脂粒子分散液のpHを酸性条件の2〜5下程度に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱処理を行って凝集粒子を形成させてもよい。
無機金属塩としては、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられる。
凝集剤は、水性媒体に溶解させたものを樹脂粒子分散液に添加することが好ましく、凝集剤の添加時および添加終了後には十分な攪拌をすることが好ましい。
キレート剤としては、例えば酒石酸、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などが挙げられる。
キレート剤の使用量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して0.01〜5.0質量部が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
着色剤分散液、荷電制御剤分散液、離型剤分散液、流動改質剤分散液、磁性体分散液等の配合物分散液は、樹脂粒子分散液と同様にして調製される。
配合物分散液を複数用いる場合、全ての配合物分散液中の配合物を同時に凝集してもよいし、任意の配合物分散液中の配合物を凝集した後に、別の配合物分散液をさらに添加して凝集してもよい。
配合物分散液中の配合物の凝集には、凝集剤を用いることが好ましい。
トナーをカラートナーとして用いる場合、イエロー系着色剤としてはベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料などが挙げられ、マゼンタ系着色剤としてはキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料などが挙げられ、シアン系着色剤としてはフタロシアニンブルーなどが挙げられる。
着色剤の含有量は特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性に優れる点から、トナーの総質量に対して、2〜10質量%が好ましい。
トナーをカラートナーとして用いる場合、荷電制御剤としては無色ないし淡色で、トナーへの色調障害が少ないものが適しており、このような荷電制御剤としては、例えばサリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物などが挙げられる。さらに、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、スルホン酸基を有するビニル重合体を荷電制御剤として用いてもよい。
荷電制御剤の含有量は、トナーの総質量に対して、0.5〜5質量%が好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上であればトナーの帯電量が十分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下であれば荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
離型剤の融点は、上記トナー性能を考慮して適宜決定すればよい。
離型剤の含有量は特に制限されないが、上記のトナー性能を左右することから、トナーの総質量に対して、0.3〜15質量%が好ましい。離型剤の含有量の下限値は、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、離型剤の含有量の上限値は、13質量%以下がより好ましく、12質量%以下が特に好ましい。
これらの添加剤の含有量は、トナーの総質量に対して、0.05〜10質量%が好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上であればトナーの性能改質効果が十分に得られる傾向にあり、10質量%以下であればトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
磁性体としては、例えばフェライト、マグネタイト、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金;化合物や強磁性元素を含まないが、適当に熱処理することによって強磁性を示すようになる合金(例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む、所謂ホイスラー合金、二酸化クロム等)などが挙げられる。
磁性体の含有量は特に制限されないが、トナーの粉砕性に大きく影響を与えるため、トナーの総質量に対して、3〜70質量%が好ましい。磁性体の含有量が3質量%以上であればトナーの帯電量が十分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下であればトナーの定着性や粉砕性が良好となる傾向にある。磁性体の含有量の上限値は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
融合・合一工程は、凝集工程で得られた凝集粒子分散液中の凝集粒子を融合・合一させて、粒子状のトナー(以下、「トナー粒子」ともいう。)を得る工程である。
融合・合一工程では、例えば凝集粒子分散液に対して、ポリエステル樹脂のTgから80℃程度までに加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
なお、凝集粒子分散液を加熱する前に、凝集粒子分散液を冷却したり、凝集粒子分散液のpHを3〜10に調整したり、凝集粒子分散液に凝集停止剤を添加したりして、凝集を停止することが好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径は、レーザ回析式粒度分布測定装置で測定される。
本実施形態のトナーの製造方法においては、融合・合一工程の後に、洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程等の後処理工程を行ってもよく、後処理工程を行うことで乾燥した状態のトナー粒子が得られる。
固液分離工程では、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等の濾過方法を実施することが好ましい。
乾燥工程では、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等の乾燥方法を実施することが好ましい。
これらの添加剤の含有量は、トナー中0.05〜10質量%であるのが好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上の場合にトナーの性能改質効果が充分に得られる傾向にあり、10質量%以下の場合にトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
磁性1成分現像剤として用いる場合には磁性体を含有し、磁性体としては、フェライト、マグネタイト、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金の他、化合物や強磁性元素を含まないが、適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金、例えば、マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む所謂ホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。
磁性体の含有量は、特に制限されないが、トナーの粉砕性に大きく影響を与えるため、トナー中3〜70質量%であることが好ましい。磁性体の含有量が3質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下の場合にトナーの定着性や粉砕性が良好となる傾向にある。磁性体の含有量の下限値は、3質量%以上がより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。また、磁性体の含有量の上限値は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
また、2成分現像剤として用いる場合、キャリアと併用して用いられる。キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等を使用することができる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などを使用することができる。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーは、公知の方法で製造できる。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ポリエステル樹脂のTgは、示差走差熱量計(島津製作所社製、「DSC−60」)を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点から測定した。測定試料は10mg±0.5mgをアルミパン内に計量し、ガラス転移温度以上の100℃で10分融解後、ドライアイスを用いて急冷却処理したサンプルを用いて行った。
ポリエステル樹脂のT4は、フローテスター(島津製作所社製、「CFT−500D」)を用いて、1mmφ×10mmのノズル、荷重294N、昇温速度3℃/minの等速昇温下で、樹脂サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度を測定し、これを軟化温度とした。
ポリエステル樹脂のAVは、以下のようにして測定した。
ポリエステル樹脂約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mLを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱しポリエステル樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10mL、クロロホルム20mL、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(mL)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(mL))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)={(B−C)×0.02×56.11×p}/A
ポリエステル樹脂の水酸基価は、以下のようにして測定した。
溶液1:ポリエステル樹脂約5gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、THF50mLを加え、ポリエステル樹脂を溶解した。、溶液2:N、N−ジメチルアミノピリジン5gをTHF500mLへ溶解させたジメチルアミノピリジンTHF溶液30mLを、「溶液1」へ添加する。無水酢酸22mLにTHF200mLを加えた無水酢酸THF溶液を準備し、この溶液10mLを「溶液2」へ添加し、20分間混合したものを「溶液3」とする。イオン交換水3mLを「溶液3」に添加し、20分間混合したものを「溶液4」とうる。「溶液4」に50mLのTHFを加えたものを、「溶液5」とする。「溶液5」に0.5N−KOHメタノール溶液25mLとフェノールフタレイン指示薬を添加したものを、「溶液6」とする。「溶液6」を0.5N−KOHメタノール溶液で滴定し、微紫色に溶液が呈色した点の添加量を測定する(B(mL))。ブランク測定時に必要な滴定量(C(mL))も同時に確認し、0.5N−KOHメタノール溶液の力価pを用いて、以下の式に従って算出した。
水酸基価(mgKOH/g)=[酸価(0082記載)]+{(C−B)×0.5×56.11×p}/A
ポリエステル樹脂のMwおよびMpは、GPC法により、得られた溶出曲線のピーク値に相当する保持時間から、MwおよびMpを標準ポリスチレン換算により求めた。なお、溶出曲線のピーク値とは、溶出曲線が極大を示す点であり、極大値が2点以上ある場合は、溶出曲線が最大値を与える点のことである。測定条件を以下に示す。
・装置:東洋ソーダ工業社製、「HLC8020」
・カラム:東洋ソーダ工業社製、「TSKgelGMHXL」、(カラムサイズ:7.8mm(ID)×30.0cm(L))を3本直列に連結
・オーブン温度:40℃
・溶離液:THF
・試料濃度:4mg/10mL
・濾過条件:0.45μmテフロン(登録商標)メンブレンフィルターで試料溶液を濾過
・流速:1mL/分
・注入量:0.1mL
・検出器:RI
・検量線作成用標準ポリスチレン試料:東洋ソーダ工業社製のTSK standard、A−500(分子量5.0×102)、A−2500(分子量2.74×103)、F−2(分子量1.96×104)、F−20(分子量1.9×105)、F−40(分子量3.55×105)、F−80(分子量7.06×105)、F−128(分子量1.09×106)、F−288(分子量2.89×106)、F−700(分子量6.77×106)、F−2000(分子量2.0×107)。
ポリエステル樹脂を1g精秤する。100mlの分液漏斗に樹脂とクロロホルム(液クロ用)を30ml入れ溶解する。6.8%リン酸水と3.3%アンモニア水を25mlずつ加え振とう器で30分(speed4)処理した後、一晩静置後、上澄み液を以下条件の液体黒的グラフにて、テレフタル酸のモノマー量を測定し、以下基準にて評価した。
液体クロマトグラフ測定条件
島津製作所製 LC−20A
カラム :Shim-pack ・WAX-1 4.6mmID ×15cm
キャリア液:0.3M-NH4H2PO4+10% CH3CN/H2O
流速 :1.0ml/mi
カラム温度:40℃
検出器(UV):波長210nm
試料量 :20μL(オートインジェクター)
○(良好):テレフタル酸の残存モノマー量が、10000ppm未満
×(劣る):テレフタル酸の残存モノマー量が、10000ppm以上
ポリエステル樹脂20gをメチルエチルケトン80gに溶解させた。ポリエステル樹脂が溶解したメチルエチルケトン溶液に5質量%のアンモニア水溶液を、酸価が100%中和されるまで添加した後、蒸留水をさらに添加した。蒸留水の添加量は、アンモニア水溶液の添加量との合計が80gとなる量とした。次いで、撹拌機(IKA社製、「ウルトラミックス」)を用いて回転数8000rpmで5分間撹拌した。その後、丸底フラスコに移して70℃のウォーターバスに設置し、撹拌、減圧してメチルエチルケトンを留去した。留去物の質量が80gを超えた後、減圧を停止し、乳化物を得た。
得られた乳化物の粒子径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、「LA−960」)を用いて測定し、乳化物のメジアン粒子径が0.1〜0.3μmであることを確認した。
得られた乳化物をアルミ皿状に2g計量し、80℃で1.0kPaabs以下に調整した乾燥機にて2時間処理し、乳化物の固形分(A)を測定した。7日間20℃恒温下で静置後の乳化物の固形分(B)を、上記と同様の方法で測定した。固形分(B)と固形分(A)の差:Δを用いて、乳化安定性の評価を以下指標で行った。また固形分の差は小数点以下の変化量は、四捨五入し整数として取り扱った。
◎(最良):Δが2wt%未満
○(良好):Δが2wt%以上5wt%未満
△(使用可能):Δが5wt%以上7wt%未満
×(劣る):Δが7wt%以上
トナーの保存性は以下のようにして評価した。
まず、粗粉砕後のポリエステル樹脂10gをメチルエチルケトン40gに溶解させ、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液50gと5質量%のアンモニア水溶液50gとを混合した後、80℃で加熱混合しながら3kPa abs以下まで減圧処理してメチルエチルケトンを留去し、樹脂粒子分散液を得た。
別途、凝集剤として無水硫酸アルミニウムを濃度が0.3質量%となるように蒸留水に溶解させ、凝集剤溶液を調製した。
得られた樹脂粒子分散液をホモジナイザー(IKA社製、「ULTRA−TURRAX T25digital」)を用いて回転数:5000rpmで攪拌しながら、凝集剤溶液を滴下し、樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の90%以上を凝集させた。その後、フリーズドライにより凝集粒子を乾燥させた。
乾燥後の凝集粒子3g±0.5gをアルミニウム皿に計量し、温度50℃、湿度50%に調整された恒温恒湿度機(佐竹化学機械工業社製)内で72時間保管した。
恒温恒湿度機での保管後のアルミニウム皿上の凝集粒子について、目開き250μm(60メッシュ)の篩を通過した凝集粒子の割合(凝集粒子通過率)を下記式より求めた。
凝集粒子通過率(%)=(目開き250μmの篩を通過した凝集樹脂(g)/目開き250μmの篩を通過させる前の凝集粒子(g))×100
先に求めた凝集粒子通過率より、以下の評価基準に基づいてポリエステル樹脂の保存性を評価した。トナーの保存性は、トナーの構成成分中に8割程含まれるポリエステル樹脂の影響を受けやすいため、ポリエステル樹脂の保存性をトナーの保存性とみなした。
○(良好):凝集粒子通過率が80%以上である。
△(使用可能):凝集粒子通過率が70%以上80%未満である。
×(劣る):凝集粒子通過率が70%未満である。
<ポリエステル樹脂の製造>
表1に示す仕込み組成の多価アルコールに、多価カルボン酸に対して1000ppmのテトラ−n−ブトキシチタンを70℃に加温したステンレス製の反応容器に投入し、5分間200rpmで攪拌を行った後、多価カルボン酸を蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が270℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行った。次いで、反応系内の温度を245℃とし、反応容器内を減圧し、反応系からポリアルコールを留出させながら縮合反応を実施した。
縮合反応中に装置内部を窒素で常圧とした後、約3g樹脂を反応容器からサンプリングして、樹脂を室温まで冷却後、軟化温度を測定して表1記載の軟化温度になるまでサンプリングを繰り返して重合を進めた。
所望の軟化温度になったことを確認後、反応装置の攪拌を停止し、装置内部を常圧とし、窒素により装置内部を加圧して装置下部より反応物を取り出して100℃以下に冷却し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂を、3mmメッシュを吐出口に備えた粉砕器を用いて粗粉砕した。
得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度、軟化温度、酸価、水酸基価、数平均分子量、質量平均分子量およびピーク分子量を測定し、重合安定性、乳化安定性、保存性、粉砕性を評価した。これらの結果を表1に示す。
粗粉砕後のポリエステル樹脂100gをメチルエチルケトン400gに溶解させ、樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液500gと5質量%のアンモニア水溶液400gとを混合した後、80℃で加熱混合しながら3kPa abs以下まで減圧処理してメチルエチルケトンを留去し、ピーク粒子径が0.1〜0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
着色剤(BASF社製、「PigmentRed122」)10gと、蒸留水40gと、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、「ネオゲンR」)1gとをホモジナイザー(IKA社製、「ULTRA−TURRAX T25digital」)を用いて攪拌混合した。さらに、超音波機器(シャープ社製、「UT−206H」)を用いて、10分間、50℃、100%出力にて分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
離型剤としてカルナバワックス(東洋ペトロライド社製)20gと、蒸留水80gと、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、「ネオゲンR」)0.2gとを90℃で加熱混合し、ホモジナイザー(IKA社製、「ULTRA−TURRAX T25digital」)を用いて攪拌混合した。さらに、高圧ホモジナイザー(エムエステー社製、「LAB2000」)を用いて分散させ、離型剤分散液を得た。
凝集剤として無水硫酸アルミニウムを濃度が0.3質量%となるように蒸留水に溶解させ、凝集剤溶液を調製した。
実施例2〜9と比較例3は表1に示す仕込み組成にしたがい、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂およびトナーを製造し、各種測定および評価を行った。比較例1は、反応系内の温度が230℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行った。また比較例2は、表1に示す仕込み組成の多価アルコールに、多価カルボン酸に対して1000ppmのテトラ−n−ブトキシチタンを70℃に加温したステンレス製の反応容器に投入し、5分間200rpmで攪拌を行った後、テレフタル酸を蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が270℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行った。次いで、反応系内の温度を245℃とし、無水トリメリット酸を添加して20分間200rpmで攪拌混合した後反応容器内を減圧し、反応系からポリアルコールを留出させながら縮合反応を実施した。
縮合反応中に装置内部を窒素で常圧とした後、約3g樹脂を反応容器からサンプリングして、樹脂を室温まで冷却後、軟化温度を測定して表1記載の軟化温度になるまでサンプリングを繰り返して重合を進めた。
3価以上の酸又は/及びアルコールを含むスラリー溶液を作成せずに、3価以上のカルボン酸である無水トリメリット酸無水物をエステル化反応後に添加したポリエステル樹脂を製造した比較例2の場合、ポリエステル樹脂の乳化安定性とトナーの保存性が劣っていた。
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物がビスフェノールAエチレンオキサイド付加物であって、エチレンオキサイド付加物の平均付加モル数が5.0モルを用いてポリエステル樹脂を製造した比較例3の場合、ポリエステル樹脂の乳化安定性とトナーの保存性が著しく劣っていた。
樹脂の酸価(mgKOH/g)と水酸基価(KOH/g)の比率が、酸価/水酸基価<1.0の比較例4の場合、ポリエステル樹脂の乳化安定性が劣っていた。
Claims (6)
- ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を含有する多価アルコール成分と、多価カルボン酸成分を含むスラリー溶液を、240℃以上で重合する工程を有するポリエステル樹脂の製造方法であり、
前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のみであり、
前記ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物の平均付加モル数は2.2〜4.0であり、
前記スラリー溶液が、3価以上の酸および/またはアルコールを含み、
前記ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)と水酸基価(KOH/g)の比率が、酸価/水酸基価≧1.0を満足する、ポリエスエル樹脂の製造方法。 - 前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物は平均付加モル数の異なる2種類のビスフェノールAエチレンオキサイド付加物を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- 前記スラリー溶液のpHは4〜8である、請求項1または2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- 前記3価以上の酸および/またはアルコールを、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と混合した後に、240℃以上で重合する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
- イソソルバイドをさらに添加して重合する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法で得られた樹脂を含む混合物を混練する工程を含む、トナーの製造方法。
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