JP6859126B2 - 塗装鋼材及び塗装鋼材の製造方法 - Google Patents
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Description
図1は、本発明の実施の形態1に係る塗装鋼材100の表面近傍の断面構成を示す模式図である。図1(a)においては、基材10は、亜鉛めっき鋼材の表面に化成処理被膜20が形成されている。そして、化成処理被膜20の上にプライマー層30が形成され、プライマー層30の表面に塗膜40が形成されている。図1(b)においては、亜鉛めっき鋼材の表面にプライマー層30が形成され、プライマー層30の表面に塗膜40が形成されている。塗装鋼材100は、例えば屋外で長期間使用される、ガードレール及びガードパイプなどの防護柵及びその他の建築用材料などに用いられる。
基材10は、亜鉛めっき鋼材から構成される。亜鉛めっき鋼材は、板状又は管状などの様々な形状に成形されており、表面に処理が施される場合がある。亜鉛めっき鋼材である基材10は、亜鉛めっき層11を備えることにより、通常の鋼材よりも大気中で高い耐食性を備える。亜鉛めっき層11は、例えば溶融亜鉛めっきにより形成されるものである。溶融亜鉛めっき層は、特に、Al:4.0〜10.0重量%,Mg:1.0〜4.0重量%,Ti:0.002〜0.1重量%,B:0.001〜0.045重量%,残部がZnおよび不可避的不純物からなり、めっきを施された鋼板の耐食性及び外観を良好にするものである。
基材10が有する亜鉛めっき層11は、水分に対し錆びやすい性質があるため、表面に化成処理が施されることがある。基材10が有する化成処理被膜20は、化成処理工程において、例えば、クロメート処理、クロムフリー処理、又はリン酸塩処理などにより形成されるものである。これらの化成処理被膜20により、基材10の表面に不動態化した金属層が形成され、不動態化した金属層により防錆性が向上する。また、化成被膜の自己修復により基材10の腐蝕が抑制される効果が得られる。ただし、実施の形態1においては、化成処理被膜20は、形成されていなくても良い。化成処理被膜20は、基材10が有する亜鉛めっき層11の成分、表面の状態、又は化成処理工程の環境により被膜の形成が十分でない場合がある。実施の形態1に係る塗装鋼材100は、この化成処理被膜20が基材10の表面にどのように形成されているかに拘わらず、又は化成処理被膜が形成されているか否かに拘わらず、高い塗装密着性及び耐食性を得ることができる。
プライマー層30は、基材10の表面に塗装される。又は、プライマー層30は亜鉛めっき層11又は化成処理被膜20の表面に直接塗装されてもよい。プライマー層30は、エポキシ系の樹脂を含むものであって、粉体塗料又は液体塗料の形態をとる。粉体塗料でプライマー層30を形成する場合は、亜鉛めっき層11の表面又は化成処理被膜20の表面に粉体塗料を静電気により付着させ、所定の温度で所定の時間加熱し、表面に定着させる。また、液体塗料の場合は、スプレー等で亜鉛めっき層11の表面又は化成処理被膜20の表面に塗布し、所定の温度で所定の時間加熱し、表面に定着させる。なお、加熱する温度及び時間については、塗料の仕様により適宜設定されるものである。また、本発明において、プライマー層30を形成する工程をプライマー処理工程と呼ぶ。
塗膜40は、プライマー層30の上に形成され、塗装鋼材の外観を形成する。塗膜40は、ポリエステル樹脂を含み、粉体塗料又は液体塗料の各形態をとりうる。粉体塗料で塗膜40を形成する場合は、プライマー層30の表面に粉体塗料を静電気により付着させ、所定の温度で所定の時間加熱し、表面に定着させる。また、液体塗料の場合は、スプレー等でプライマー層30の表面に塗布し、所定の温度で所定の時間加熱し、表面に定着させる。なお、加熱する温度及び時間については、塗料の仕様により適宜設定されるものである。また、本発明において、粉体塗料により塗膜40を形成する工程を粉体塗装工程と呼び、液体塗料により塗膜40を形成する工程を液体塗装工程と呼ぶ。
塗装鋼材100から試験片を採取して、未塗装部である端面をシールして評価サンプルとした。試験片は、塗装部分にクロスカットを入れたものとクロスカット無しのものを用意した。試験方法は、JIS K 5600−7−1に従い、35℃の恒温槽内で、試験片の塗装されている面に5%NaCl水溶液をスプレーした。試験時間は、1000時間とした。
塗装鋼材100から試験片を採取して、未塗装部である端面をシールした。試験方法は、JIS K 5400−1990−8.20に準拠して、試験片を沸騰水中に1時間浸漬させた。評価は、試験終了後、JIS K 5600−5−6の規定に準拠して、碁盤目状クロスカット付着性試験を行ない、剥離状況を調査することによって行った。塗膜40の剥離状況は、JIS K 5400の試験結果の分類に準拠して、分類0〜5の段階で判定し、塗膜の二次密着性を評価した。表1及び表2においては、分類0または1を◎、分類2を○、分類3を△、分類4または5を×として表示している。
塗装鋼材100から試験片を採取して、未塗装部である端面をシールした。試験方法は、JIS K 5600−6−1に準拠して、試験片を水温23℃に240時間浸漬した。評価は、1試験終了後、JIS K 5600−5−6の規定に準拠して、碁盤目状クロスカット付着性試験を行ない、剥離状況を調査することによって行った。塗膜40の剥離状況は、JIS K 5400の試験結果の分類に準拠して、分類0〜5の段階で判定し、塗膜の二次密着性を評価した。表1及び表2においては、分類0または1を◎、分類2を○、分類3を△、分類4または5を×として表示している。
塗装鋼材100から試験片を採取して、未塗装部である端面をシールした。試験方法は、塗装表面にクロスカットを入れ、5%NaCl水溶液(液温55℃)に浸漬した。浸漬時間は240時間とした。評価は、クロスカット部をテープ剥離試験し、クロスカットからの片側最大剥離幅を測定した。測定された剥離幅により、各評価サンプルを評価した。表1及び表2における評価結果は、最大剥離幅が3mm以下を◎、3mmを超えて5mm以下を○、5mmを超えて7mm以下を△、7mmを超えたものを×として表示している。
表1及び表2の評価結果は、共通の基材10で実施している。しかし、プライマー層30の相違により、評価結果に差異が認められる。特に、塩温水浸漬試験の結果を見ると、表1に示されている実施の形態1に係るプライマー層30を備える各評価サンプルは◎又は○といった良好な成績であるのに対し、表2の比較例のプライマー層31を備える各評価サンプルは、△〜×といった成績になっている。この点において、実施の形態1に係るプライマー層30を備えることによって、耐食性及び塗装密着性が高くなるという効果が示されている。
(1)実施の形態1に係る塗装鋼材100は、亜鉛めっき鋼材により構成される基材10と、基材10の表面に形成されたプライマー層30と、プライマー層30の表面に形成された塗膜40と、を備える。プライマー層30は、エポキシ系樹脂を含み、厚さが20μm以上150μm以下であり、塗膜40は、ポリエステル樹脂を含み、厚さが30μm以上150μm以下である。
このように構成されることにより、塗装鋼材100は、基材10の表面に化成処理被膜20が形成されているか否かに拘わらず、高い塗装密着性と高い耐食性を得ることができる。また、塗装鋼材100は、基材10に施されている化成処理被膜20の種類に拘わらず、高い塗装密着性と高い耐食性とを得ることができる。これにより、基材10の素性のばらつきがあっても高い塗装密着性と高い耐食性とを備える塗装鋼材100が得られるため、塗装鋼材100は、亜鉛めっき鋼材である基材10の選択が制限されず、コストを抑えつつ高い品質を確保できる。
(3)実施の形態1に係る塗装鋼材100によれば、化成処理被膜20は、クロメート処理被膜、クロメートフリー処理被膜、又はリン酸塩被膜である。
このように構成されていても、塗装鋼材100は、基材10に施されている化成処理被膜20の種類に拘わらず、高い塗装密着性と高い耐食性とを得ることができる。また、クロメート処理被膜又はクロメートフリー処理被膜が施された基材10のように塗膜40が密着しにくい構成の材料であっても、プライマー層30を施すことにより塗膜40を密着し易くすることができる。
このように構成されることにより、塗装前に基材10の表面に化成処理被膜20が形成する化成処理工程を特に必要とせず、塗装鋼材100は高い塗装密着性と高い耐食性を得ることができる。また、プライマー処理工程の前に基材10に特に前処理をしなくても、高い塗装密着性と高い耐食性とを有する塗装鋼材100が得られる。
このように構成されることにより、クロメート処理被膜又はクロメートフリー処理被膜が施された基材10のように塗膜40が密着しにくい構成の材料であっても、プライマー層30を施すことにより塗膜40を密着し易くすることができ、高い塗装密着性と高い耐食性とを有する塗装鋼材100が得られる。
このように構成されることにより、一回の塗装工程により十分な厚さのプライマー層30を形成することができるため、製造コストを抑えつつプライマー層30の厚みを所定の範囲に形成することができる。
(8)また、プライマー処理工程は、液体塗装工程の後に、さらに液体塗料を塗布し、加熱して表面に定着させることによりプライマー層30を積層させる。
このように構成されることにより、液体塗料によりプライマー層30を形成した場合であっても、所定の厚さの膜厚に形成できる。
このように構成されることにより、一回の塗装工程により十分な厚さの塗膜40を形成することができるため、製造コストを抑えつつ塗膜40の厚みを所定の範囲に形成することができる。
Claims (5)
- 亜鉛めっき鋼材により構成される基材と、
前記基材の表面に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層が加熱され前記基材に定着した後の表面に形成された塗膜と、を備え、
前記基材は、
前記亜鉛めっき鋼材の表面にさらに化成処理被膜を備え、
前記プライマー層は、
粉体塗装により塗装され、エポキシ系樹脂を含み、加熱され前記基材の表面に定着した後の厚さが20μm以上150μm以下であり、
前記塗膜は、
ポリエステル樹脂を含み、厚さが30μm以上150μm以下である、塗装鋼材。 - 前記化成処理被膜は、
クロメート処理被膜、クロメートフリー処理被膜、又はリン酸塩被膜である、請求項1に記載の塗装鋼材。 - 亜鉛めっき鋼材により構成される基材に化成処理被膜が形成された表面に、加熱して前記基材の表面に定着させることにより厚さが20μm以上150μm以下のエポキシ系樹脂を含むプライマー層を形成するプライマー処理工程と、
加熱して前記基材の表面に定着した後の前記プライマー層の表面にポリエステル樹脂を含む厚さが30μm以上150μm以下の塗膜を形成する外観塗装工程と、を備え、
前記プライマー処理工程は、
エポキシ系樹脂を含む粉体塗料を前記基材の表面に付着させ、加熱して前記基材の表面に定着させる粉体塗装工程を備える、塗装鋼材の製造方法。 - 前記プライマー処理工程の前に前記亜鉛めっき鋼材の表面に化成処理被膜を形成する化成処理工程を備える、請求項3に記載の塗装鋼材の製造方法。
- 前記外観塗装工程は、
前記粉体塗料を前記プライマー層の表面に付着させ、加熱して前記プライマー層の表面に定着させる、請求項3又は4に記載の塗装鋼材の製造方法。
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