JP2015108173A - 塩害環境下での耐食性に優れた塗装鋼材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】一層の塗膜形成(1コート1ベーク)で塩害環境のような、厳しい腐食環境下においても優れた耐食性を有する塗装鋼材の製造方法の提供。【解決手段】溶融Zn−5%Al合金めっき鋼材を基材とし、該基材に遊離酸含有量を適正範囲に調整したリン酸塩処理液による化成処理を施し、リン酸塩系成処理皮膜を反応形成し、さらにその上層として塗膜を、有機樹脂を含む塗料による塗装処理を施して1層の塗膜を形成した塗装鋼材とする。なお、リン酸塩処理液は、適正量の、水溶性リン酸化合物、水溶性硝酸化合物、水溶性亜鉛化合物、水溶性ニッケル化合物等を含み、遊離酸を0.3〜0.9ポイントに調整した水溶液とすることが好ましい。【効果】これにより、塩害環境のような厳しい腐食環境においても、塗膜フクレの発生を防止でき、塗装後耐食性に優れ、しかも、2コート塗装と同等の耐久性を1コート塗装処理で確保できる。【選択図】なし
Description
本発明は、防護柵、フェンス等の屋外で使用される使途に好適な、塗装鋼材の製造方法に係り、とくに塩分を多く含む環境(以下、塩害環境ともいう)下での耐食性改善に関する。ここでいう「鋼材」には、鋼板、鋼帯、鋼管、形鋼を含むものとする。
防護柵、フェンス等の屋外に設置される部材(製品)は、設置場所の環境に応じて、防錆、防食のために、基材表面にめっき、塗装等が施されて使用されている。基材として鉄鋼材料を用いる場合、部材の防錆防食処理としては、溶融亜鉛めっきによる処理が優れており、広く一般に用いられている。しかし、厳しい腐食環境下で使用する場合や、人が通行する道路等で使用する場合には、さらに溶融亜鉛めっき層の上層として、塗装による皮膜(塗膜)を形成している。通常、溶融亜鉛めっき鋼材ではめっき面にリン酸塩処理などの下地処理を施したのち塗装を行って塗膜を形成している。
例えば、非特許文献1に示されるように、防護柵では、JIS G 3302に規定される溶融亜鉛めっき鋼板Z27(亜鉛付着量275g/m2)を用い、所定形状に成形加工したのち、下地処理(化成処理)を施し、さらに熱硬化性アクリル樹脂系塗料、熱硬化性ポリエステル樹脂系塗料等を使用して、最小膜厚:20μmの塗膜を形成した材料を使用する必要があるとしている。溶融亜鉛めっき鋼板の化成処理としては、リン酸塩処理が一般的である。また、塗膜を形成する塗装方法としては、最近では環境等に配慮して、従来の溶剤塗装から、主として粉体塗装が利用されている。なお、粉体塗装は、塗料の付き回りが悪い部位でも20μm以上の膜厚を形成することが容易である。
しかし、海岸地方など塩分を多量に含み、激しい塩害を生じる厳しい腐食環境下では、上記したような防錆、防食処理を施された材料を使用しても、塗膜下腐食が進行し、塗膜剥離が発生するという問題がある。そのため、このような環境下で使用される部材(製品)では、塗膜を厚く形成することが要求され、例えば、2コート2ベーク塗装により、80μm以上、さらには100μm程度以上の厚い塗膜を形成する場合がある。しかし、このような厚い塗膜を形成するためには、塗装工程を長くする必要があり、製造コストの高騰を招くという問題もある。また、2コート2ベーク塗装(2層塗装)では、下塗り塗膜と上塗り塗膜との間で、界面剥離が発生する恐れがあるという問題もある。
更なる耐食性の向上を目的として、例えば、特許文献1には、Zn中に4.0〜10%Alと1.0〜4.0%Mgを適量含有させためっき層を表面に形成した、耐食性および表面外観の良好な溶融Zn−Al−Mgめっき鋼板(溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板)が提案されている。特許文献1に記載された溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板は、高耐食性素材として、厳しい腐食環境下で広く使用されるようになっている。溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板に比べて、めっき層中にMgを含有していることに起因して耐食性が向上するとされている。
このような耐食性に優れためっき層を利用して、耐食性を向上させ、厳しい腐食環境下でも使用できる部材として、例えば特許文献2には、重量%で、Mg:1〜4%、Al:4〜22%、残部Znおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛系合金めっき(溶融Zn−Al−Mg合金めっき)が施された鉄基道路用部材が提案されている。特許文献2に記載された、この道路用部材は、従来の溶融亜鉛めっき処理が施された部材に比較し、耐食性、耐候性に優れるとされ、遮音壁、防音壁、ガードレール、防護柵などに適しているといわれている。さらに、特許文献2に記載された技術では、このめっき鋼板あるいは部材に、クロメート系あるいはノンクロム系の化成処理を施せば、耐食性の向上や塗装の密着性を向上させることができるとしている。
また、例えば特許文献3には、塗装前処理として、Zn−4.0〜10.0%Al−1.0〜4.0%Mg合金系溶融めっき鋼板を、タンニン酸またはタンニン酸類の水溶液に浸漬し、またはタンニン酸またはタンニン酸類の水溶液をZn−4.0〜10.0%Al−1.0〜4.0%Mg合金系溶融めっき鋼板にスプレーし、ついで樹脂塗膜を形成する、塗装後耐食性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板(溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板)の製造方法が記載されている。これにより、めっき層表面に保護作用の強いバリアー層が形成されるため、リン酸塩処理を凌駕する、従来にみられない優れた塗装後耐食性が得られるとしている。
社団法人日本道路協会編集発行:防護柵の設置基準・同解説 平成11年1月28日改訂版第2刷発行 p.31〜32。
特許文献1、2に記載された技術では、めっき層を溶融Zn−Al−Mg合金めっきとすることによりめっき層自体の耐食性は向上するが、しかし、その上層として通常形成される塗膜までを含めた耐食性(塗装後耐食性)を顕著に向上させるまでに至っていない。
また、特許文献3に記載された技術は、特殊な処理液を使用して、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の塗装後耐食性を向上できるとしているが、高々、一般的な屋外環境下での塗装後耐食性が向上する程度に留まっており、特許文献3に記載された技術では、塩害環境下におけるような、とくに厳しい腐食環境下での塗装後耐食性の向上を安定して確保できるまでに至っていないという問題があった。また、特許文献3に記載された技術は、塗布型の皮膜(バリアー層)形成を指向しており、コイル等などのプレコート材への適用は容易であるが、例えば、防護柵やフェンス等のように所定形状に成形後に皮膜(バリアー層)形成を行う、ポストコート材への適用には問題を残していた。
また、特許文献3に記載された技術は、特殊な処理液を使用して、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の塗装後耐食性を向上できるとしているが、高々、一般的な屋外環境下での塗装後耐食性が向上する程度に留まっており、特許文献3に記載された技術では、塩害環境下におけるような、とくに厳しい腐食環境下での塗装後耐食性の向上を安定して確保できるまでに至っていないという問題があった。また、特許文献3に記載された技術は、塗布型の皮膜(バリアー層)形成を指向しており、コイル等などのプレコート材への適用は容易であるが、例えば、防護柵やフェンス等のように所定形状に成形後に皮膜(バリアー層)形成を行う、ポストコート材への適用には問題を残していた。
例えば、防護柵やフェンス等は、通常、めっき層の上層として塗装が施されており、このような塗膜を有する防護柵やフェンス等の長寿命化のためには、めっき層自体の長寿命化に加えて、塗膜の剥離を防止して、塗膜を含めた耐食性(塗装後耐食性)を向上させる必要がある。めっき層自体の長寿命化のみで、塗膜の耐久性が不足すると、塗膜剥離が生じ、防護柵やフェンス等の外観、さらには景観を阻害する場合がある。
本発明は、かかる問題を有利に解決し、安価な、1層の塗膜形成(1コート1べーク)で、塩害環境のような、厳しい腐食環境下においても、優れた耐食性(塗装後耐食性)を有する塗装鋼材とすることができる、塗装鋼材の製造方法および塗装部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記した目的を達成するために、塗装後耐食性に及ぼす各種要因について研究した。その結果、Mgを含有する溶融Zn合金系めっき鋼板に、塗装前処理として、通常、亜鉛めっき鋼板の塗装前処理として使用されている安価なリン酸塩処理を施し、さらに塗装処理して塗膜を形成すると、塗膜のフクレが生じやすいことを知見した。これは、Mgを含有する溶融Zn合金系めっき鋼板の表面には、緻密な酸化膜が形成されており、このような状態の表面にリン酸塩処理を施すと、リン酸塩処理がめっき層を溶解する反応によりリン酸塩皮膜を形成する処理であることから、表面の緻密な酸化膜が不均一に腐食され、表面で電池が形成しやすくなり、塗膜にフクレを生じさせやすくしたものと考えた。
そこで、使用する基材として、Mgを含まない溶融Zn−Al合金めっき層である溶融Zn−Al合金めっき鋼板を選択し、塗装前処理(化成処理)として、通常、亜鉛めっき鋼板の塗装前処理として使用されている安価なリン酸塩処理液を用いる処理とすることにした。
しかし、Alを含有する溶融Zn−Al合金めっき鋼板に、塗装前処理としてリン酸塩処理を施し、塗装処理を行うと、塗膜の耐水密着性が不十分で、塗膜剥離を生じやすい場合があり、これは、めっき層に含まれるAlがリン酸亜鉛と反応しないため、適正な化成処理皮膜が形成されないことに起因するためであると考えられる。
しかし、Alを含有する溶融Zn−Al合金めっき鋼板に、塗装前処理としてリン酸塩処理を施し、塗装処理を行うと、塗膜の耐水密着性が不十分で、塗膜剥離を生じやすい場合があり、これは、めっき層に含まれるAlがリン酸亜鉛と反応しないため、適正な化成処理皮膜が形成されないことに起因するためであると考えられる。
そこで、本発明者は、基板を、比較的Al含有量の低い溶融亜鉛めっき層である、Al:5%程度の溶融Zn−Al合金めっき層を有する溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板とした。溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板は、それ自体でも優れた耐食性を有するめっき鋼板である。
このような溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板に、塗装前処理(化成処理)としてリン酸塩処理を施した場合に、塗膜の耐食性に影響する各種要因について研究した。その結果、リン酸塩処理液の遊離酸含有量を、0.7ポイント程度と従来より低く抑えることにより、塗膜の耐食性が顕著に向上することを見出した。また、このような基板と化成処理液とを組み合わせることにより、塗膜を1コートとしても、塩害環境下における塗装部材の寿命延長が可能となることを知見した。
このような溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板に、塗装前処理(化成処理)としてリン酸塩処理を施した場合に、塗膜の耐食性に影響する各種要因について研究した。その結果、リン酸塩処理液の遊離酸含有量を、0.7ポイント程度と従来より低く抑えることにより、塗膜の耐食性が顕著に向上することを見出した。また、このような基板と化成処理液とを組み合わせることにより、塗膜を1コートとしても、塩害環境下における塗装部材の寿命延長が可能となることを知見した。
本発明はかかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)鋼材を基材とし、該基材に化成処理と塗装処理とを順次施して、基材表面に化成処理皮膜と塗膜とを順次形成する塗装鋼材の製造方法であって、前記基材が、表面に、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.0〜6.0%含み残部Znからなる組成の溶融Zn−Al合金めっき層を有する溶融Zn−Al合金めっき鋼材であり、前記化成処理が、前記基材を化成処理液に浸漬して、または前記基材に化成処理液を吹付けして該基材表面に化成処理皮膜を反応形成する処理であり、前記化成処理液を、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とし、前記塗装処理が、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装処理であることを特徴とする、塩害環境下での耐食性に優れた塗装鋼材の製造方法。
(2)(1)において、前記リン酸塩処理液が、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含む、水溶液であることを特徴とする塩害環境下での耐食性に優れた塗装鋼材の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記塗装処理が、有機樹脂を含む粉体塗料を吹付けたのち焼付ける処理であることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記塗装処理で形成される塗膜が、膜厚:20μm以上100μm未満であることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
(5)(3)または(4)において、前記有機樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載の塗装鋼材の製造方法で製造されてなる塗装鋼材。
(7)鋼材を基材とし、該基材に、所定形状の部材に成形する成形工程と、ついで該部材に化成処理を施す化成処理工程と、該化成処理工程を経た前記部材に塗装処理を施す塗装工程とを順次施して、部材表面に化成処理皮膜と塗膜とを順次形成した塗装部材とするに当たり、前記基材が、表面に、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.0〜6.0%含み残部Znからなる組成の溶融Zn−Al合金めっき層を有する溶融Zn−Al合金めっき鋼材であり、前記化成処理が、前記基材を化成処理液に浸漬して、または前記基材に化成処理液を吹付けして該基材表面に化成処理皮膜を反応形成する処理であり、前記化成処理液を、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とし、前記塗装処理が、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装処理であることを特徴とする、塩害環境下での耐食性に優れた塗装部材の製造方法。
(8)(7)において、前記化成処理液が、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含む、水溶液であるリン酸塩処理液とすることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(9)(7)または(8)において、前記塗装処理が、有機樹脂を含む粉体塗料を吹付けたのち焼付ける処理であることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(10)(7)ないし(9)のいずれかにおいて、前記塗装処理で形成される塗膜が、膜厚:20μm以上100μm未満であることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(11)(9)または(10)において、前記有機樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(12)(7)ないし(11)のいずれかに記載の塗装部材の製造方法を用いて得られた塗装部材であって、部材表面に、遊離酸含有量を適正範囲に調整したリン酸塩処理液により反応形成されたリン酸塩処理皮膜と、有機樹脂塗膜とをその順に形成してなる塩害環境下の耐食性に優れた塗装部材。
(13)(12)において、前記塗装部材が防護柵である塗装部材。
(1)鋼材を基材とし、該基材に化成処理と塗装処理とを順次施して、基材表面に化成処理皮膜と塗膜とを順次形成する塗装鋼材の製造方法であって、前記基材が、表面に、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.0〜6.0%含み残部Znからなる組成の溶融Zn−Al合金めっき層を有する溶融Zn−Al合金めっき鋼材であり、前記化成処理が、前記基材を化成処理液に浸漬して、または前記基材に化成処理液を吹付けして該基材表面に化成処理皮膜を反応形成する処理であり、前記化成処理液を、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とし、前記塗装処理が、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装処理であることを特徴とする、塩害環境下での耐食性に優れた塗装鋼材の製造方法。
(2)(1)において、前記リン酸塩処理液が、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含む、水溶液であることを特徴とする塩害環境下での耐食性に優れた塗装鋼材の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記塗装処理が、有機樹脂を含む粉体塗料を吹付けたのち焼付ける処理であることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記塗装処理で形成される塗膜が、膜厚:20μm以上100μm未満であることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
(5)(3)または(4)において、前記有機樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載の塗装鋼材の製造方法で製造されてなる塗装鋼材。
(7)鋼材を基材とし、該基材に、所定形状の部材に成形する成形工程と、ついで該部材に化成処理を施す化成処理工程と、該化成処理工程を経た前記部材に塗装処理を施す塗装工程とを順次施して、部材表面に化成処理皮膜と塗膜とを順次形成した塗装部材とするに当たり、前記基材が、表面に、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.0〜6.0%含み残部Znからなる組成の溶融Zn−Al合金めっき層を有する溶融Zn−Al合金めっき鋼材であり、前記化成処理が、前記基材を化成処理液に浸漬して、または前記基材に化成処理液を吹付けして該基材表面に化成処理皮膜を反応形成する処理であり、前記化成処理液を、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とし、前記塗装処理が、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装処理であることを特徴とする、塩害環境下での耐食性に優れた塗装部材の製造方法。
(8)(7)において、前記化成処理液が、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含む、水溶液であるリン酸塩処理液とすることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(9)(7)または(8)において、前記塗装処理が、有機樹脂を含む粉体塗料を吹付けたのち焼付ける処理であることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(10)(7)ないし(9)のいずれかにおいて、前記塗装処理で形成される塗膜が、膜厚:20μm以上100μm未満であることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(11)(9)または(10)において、前記有機樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする塗装部材の製造方法。
(12)(7)ないし(11)のいずれかに記載の塗装部材の製造方法を用いて得られた塗装部材であって、部材表面に、遊離酸含有量を適正範囲に調整したリン酸塩処理液により反応形成されたリン酸塩処理皮膜と、有機樹脂塗膜とをその順に形成してなる塩害環境下の耐食性に優れた塗装部材。
(13)(12)において、前記塗装部材が防護柵である塗装部材。
本発明によれば、塩害環境のような厳しい腐食環境下において、1層の塗装のみで2層塗装と同等の耐久性を有する、優れた耐食性(塗装後耐食性)を示す塗装鋼材を安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、防護柵のような塗装部材の耐久性を安価に向上させることができるという効果もある。また、本発明によれば、新たに生産ラインを設けることなく、溶融亜鉛めっき鋼板の製造ラインにおける化成処理液の組成を微調整するだけで、本発明塗装鋼材を製造できるという効果もある。
本発明では、溶融Zn−Al合金めっき鋼材を基材とし、基材表面に、化成処理皮膜としてリン酸塩処理皮膜を、該化成処理皮膜の上層として塗膜(有機樹脂皮膜)を形成して、塗装鋼材とする。基材として利用する溶融Zn−Al合金めっき鋼材は、JIS G 3317に規定される溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板および鋼帯がいずれも適用でき、市販品の中から使用目的に応じて選定し、使用するものとする。
なお、鋼材表面に形成されためっき層は、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.0〜6.0%、それ以外の合金元素:合計で1%未満、を含み、残部Znからなる組成を有する溶融Zn−5%Al合金めっき層とする。
まず、鋼材表面に形成される溶融Zn−5%Al合金めっき層の組成について説明する。
Al:4.0〜6.0質量%
Alは、固着性の強いZn−Al系腐食生成物を形成し、めっき層の耐食性向上に寄与する。このような効果を得るためには4.0質量%以上の含有を必要とする。一方、6.0質量%を超えて含有すると、塗料密着性が低下する。このようなことから、めっき層中のAlは4.0〜6.0質量%の範囲とした。
まず、鋼材表面に形成される溶融Zn−5%Al合金めっき層の組成について説明する。
Al:4.0〜6.0質量%
Alは、固着性の強いZn−Al系腐食生成物を形成し、めっき層の耐食性向上に寄与する。このような効果を得るためには4.0質量%以上の含有を必要とする。一方、6.0質量%を超えて含有すると、塗料密着性が低下する。このようなことから、めっき層中のAlは4.0〜6.0質量%の範囲とした。
それ以外の合金元素:合計で0〜1質量%未満
めっき層中には、上記したAl以外の合金元素は含まないほうが好ましいが、少量であれば許容できる。合金元素として、例えば、Mg、Ni等を含有してもよいが、合計で1質量%以上と多量に含有すると、めっき層が脆化し、めっき密着性が低下する。このため、Al以外の合金元素は合計で0%を含み1%未満に限定することが好ましい。
めっき層中には、上記したAl以外の合金元素は含まないほうが好ましいが、少量であれば許容できる。合金元素として、例えば、Mg、Ni等を含有してもよいが、合計で1質量%以上と多量に含有すると、めっき層が脆化し、めっき密着性が低下する。このため、Al以外の合金元素は合計で0%を含み1%未満に限定することが好ましい。
残部は、Znおよび不可避的不純物からなる。なお、上記した組成の溶融Zn−5%Al合金めっき層を形成する方法は、とくに限定する必要はない。
基材を上記した溶融Zn−5%Al合金めっき鋼材とすることにより、めっき層の耐食性が向上し、めっき層表面の腐食の進行が低減される。
そして、本発明では、上記した組成の溶融Zn−5%Al合金めっき層を有する溶融Zn−5%Al合金めっき鋼材を基材として、該基材を化成処理液中に浸漬して、または該基材に化成処理液を吹き付けて、めっき層の上層として化成処理皮膜を反応形成させる。なお、反応形成される化成処理皮膜は0.5〜3g/m2程度の付着量とすることが、塗装後耐食性、塗膜密着性の観点から好ましい。
基材を上記した溶融Zn−5%Al合金めっき鋼材とすることにより、めっき層の耐食性が向上し、めっき層表面の腐食の進行が低減される。
そして、本発明では、上記した組成の溶融Zn−5%Al合金めっき層を有する溶融Zn−5%Al合金めっき鋼材を基材として、該基材を化成処理液中に浸漬して、または該基材に化成処理液を吹き付けて、めっき層の上層として化成処理皮膜を反応形成させる。なお、反応形成される化成処理皮膜は0.5〜3g/m2程度の付着量とすることが、塗装後耐食性、塗膜密着性の観点から好ましい。
本発明では、化成処理液としてリン酸塩処理液を使用して、基材表面のめっき層の上層として、リン酸塩系化成処理皮膜を反応形成させる。
使用するリン酸塩処理液は、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とする。上記したように、遊離酸含有量を低く調整した処理液とすることにより、化成処理時にめっき層のエッチングが抑制され、めっき層表面に均一なリン酸塩皮膜が形成でき、リン酸塩皮膜の上層として形成される塗膜下の腐食反応が抑制され、塗膜の耐水密着性が向上するものと考えられる。一方、遊離酸含有量が0.9ポイントを超えて高くなると、めっき層の侵食が著しくなり、塗膜の耐水密着性が低下する。一方、遊離酸含有量が0.3ポイント未満では、所望のリン酸塩皮膜の形成が不十分となる。なお、遊離酸含有量の調整(ポイント調整)には、希釈した硝酸または希釈したアンモニア水を用いる。遊離酸含有量(ポイント)を低下させるとは、希釈したアンモニア水を、一方、遊離酸含有量(ポイント)を上げるには希釈した硝酸を添加すればよい。
使用するリン酸塩処理液は、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とする。上記したように、遊離酸含有量を低く調整した処理液とすることにより、化成処理時にめっき層のエッチングが抑制され、めっき層表面に均一なリン酸塩皮膜が形成でき、リン酸塩皮膜の上層として形成される塗膜下の腐食反応が抑制され、塗膜の耐水密着性が向上するものと考えられる。一方、遊離酸含有量が0.9ポイントを超えて高くなると、めっき層の侵食が著しくなり、塗膜の耐水密着性が低下する。一方、遊離酸含有量が0.3ポイント未満では、所望のリン酸塩皮膜の形成が不十分となる。なお、遊離酸含有量の調整(ポイント調整)には、希釈した硝酸または希釈したアンモニア水を用いる。遊離酸含有量(ポイント)を低下させるとは、希釈したアンモニア水を、一方、遊離酸含有量(ポイント)を上げるには希釈した硝酸を添加すればよい。
なお、遊離酸含有量(ポイント)は、常用の方法に従って測定した値を用いるものとする。常用の方法としては、溶液10mlに0.1N苛性ソーダで滴定し、ブロムフェノールブルー指定薬のときの滴定ml数をポイント数として求める方法が挙げられる。
使用するリン酸塩処理液は、好ましくは、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含み、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整した水溶液である。
使用するリン酸塩処理液は、好ましくは、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含み、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整した水溶液である。
なお、リン酸化合物は、皮膜形成という作用を、硝酸化合物はめっきとの適度な反応を付与するという作用を、亜鉛化合物は、めっき亜鉛が溶出するのを抑制する作用を、ニッケル化合物は、皮膜の密着性向上という作用を有する。
なお、水溶性リン酸化合物としては、リン酸亜鉛、リン酸ニッケル等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。また、水溶性硝酸化合物としては、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ニッケル、硝酸セリウム等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。また、水溶性亜鉛化合物としては、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。また、水溶性ニッケル化合物としては、リン酸ニッケル、硝酸ニッケル等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。
なお、水溶性リン酸化合物としては、リン酸亜鉛、リン酸ニッケル等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。また、水溶性硝酸化合物としては、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ニッケル、硝酸セリウム等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。また、水溶性亜鉛化合物としては、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。また、水溶性ニッケル化合物としては、リン酸ニッケル、硝酸ニッケル等が例示でき、それらの1種または2種以上を使用することができる。
なお、上記した反応性皮膜を均一に形成させるためには、化成処理液の温度を40℃以上とすることが好ましい。液温が低いと、不均一な皮膜が形成されやすい。
このようなめっき層のAl含有量を低くした溶融亜鉛−5%Al合金めっき鋼材を基材とし、該基材に、上記したような遊離酸含有量を低く抑えた組成のリン酸塩化成処理液を使用して化成処理皮膜を形成することにより、化成処理液のめっき層へのエッチング性が低減して、塩害環境下においてもめっき表面の腐食の進行が抑制され、上層として形成された塗膜の剥離が抑制され、耐食性に優れた塗装鋼材となるものと考えられる。
このようなめっき層のAl含有量を低くした溶融亜鉛−5%Al合金めっき鋼材を基材とし、該基材に、上記したような遊離酸含有量を低く抑えた組成のリン酸塩化成処理液を使用して化成処理皮膜を形成することにより、化成処理液のめっき層へのエッチング性が低減して、塩害環境下においてもめっき表面の腐食の進行が抑制され、上層として形成された塗膜の剥離が抑制され、耐食性に優れた塗装鋼材となるものと考えられる。
めっき層の上層として化成処理皮膜を形成された鋼材(溶融Zn−Al合金めっき鋼材)は、さらに、塗装処理を施されて、塗膜を形成される。
塗装処理は、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装とし、有機樹脂塗膜を形成する。使用する塗料は、有機樹脂を含む塗料であればとくに限定する必要はないが、環境へ配慮して、溶剤塗料よりは粉体塗料とすることが好ましい。
塗装処理は、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装とし、有機樹脂塗膜を形成する。使用する塗料は、有機樹脂を含む塗料であればとくに限定する必要はないが、環境へ配慮して、溶剤塗料よりは粉体塗料とすることが好ましい。
粉体塗料としては、バインダー樹脂として有機樹脂を含む、常用の粉体塗料がいずれも適用でき、とくに限定されない。なお、バインダー樹脂としての有機樹脂としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が好ましいが、屋外の塩害環境下で使用する場合には、とくにポリエステル系樹脂が、機械的特性、耐候性、塗料密着性、耐食性の観点から好ましい。
なお、粉体塗料には、バインダー樹脂以外に、顔料、硬化剤、さらには、必要に応じて、添加剤等を含有する。顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の汎用の着色顔料に加えて、必要に応じて汎用の充填剤を配合してもよい。硬化剤としては、例えば、アミド化合物、アミン化合物、酸無水物、ブロックイソシアネート等が例示でき、使用するバインダー樹脂に応じて選択できる。添加剤としては、汎用のものがいずれも含有できる。
粉体塗料の塗布方法は、常用の塗布方法がいずれも適用できる。一般的には、静電塗装が適用される。
上記した化成処理を施され、乾燥された基材表面に、有機樹脂を含む粉体塗料を、例えば静電塗装により塗布する。そして、電気炉、ガス炉あるいは誘導加熱等により、基材を所定温度まで加熱して粉体塗料を焼き付け、塗膜を形成する。なお、予め基材を塗料に対応した所定の温度に加熱してから、粉体塗料を塗布し、焼付けて塗膜を形成してもよい。
上記した化成処理を施され、乾燥された基材表面に、有機樹脂を含む粉体塗料を、例えば静電塗装により塗布する。そして、電気炉、ガス炉あるいは誘導加熱等により、基材を所定温度まで加熱して粉体塗料を焼き付け、塗膜を形成する。なお、予め基材を塗料に対応した所定の温度に加熱してから、粉体塗料を塗布し、焼付けて塗膜を形成してもよい。
本発明では、塗装処理により形成される塗膜の厚さは、20μm以上100μm未満とすることが好ましい。本発明鋼材は、塗膜厚さを、通常の1層塗装の場合に該当する100μm未満という薄い塗膜厚さとしても、従来の2層塗装と同様な耐食性を維持できる。本発明鋼材は、塩害環境下でも使用可能な塗装鋼材である。
次に、本発明部材の製造方法について説明する。
次に、本発明部材の製造方法について説明する。
本発明部材では、上記した溶融Zn−Al合金めっき鋼材を基材とし、該基材に、まず防護柵、フェンス等の所定形状の部材に成形する成形工程を施す。成形方法は目的の部材形状に応じた、常用の成形方法がいずれも適用可能である。
所定の形状に成形された部材には、化成処理工程、塗装処理工程が施され、塗装部材とされる。なお、化成処理工程、塗装処理工程はいずれも上記した塗装鋼材の場合と同様の処理を施す。
所定の形状に成形された部材には、化成処理工程、塗装処理工程が施され、塗装部材とされる。なお、化成処理工程、塗装処理工程はいずれも上記した塗装鋼材の場合と同様の処理を施す。
基材(A)として、溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板Y27(市販品:JIS G 3317相当品;めっき付着量275g/m2)を選択した。めっき層の組成は、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.7%、残部Zn及び不可避的不純物であった。なお、基材(B)(比較)として、溶融亜鉛めっき鋼板Z27(市販品:亜鉛付着量275g/m2)を用いた。
これら基材(鋼板)の表面を脱脂し、水洗したのち、基材を化成処理液をスプレー塗布し、化成処理皮膜を形成した。化成処理時間は120s、液温は45℃とした。形成された化成処理皮膜の膜厚を表1に示す。使用した化成処理液は、(a)リン酸塩化成処理液、(b)リン酸塩化成処理液(比較)とした。なお、(a)リン酸塩化成処理液は、遊離酸含有量を調整した液である。
これら基材(鋼板)の表面を脱脂し、水洗したのち、基材を化成処理液をスプレー塗布し、化成処理皮膜を形成した。化成処理時間は120s、液温は45℃とした。形成された化成処理皮膜の膜厚を表1に示す。使用した化成処理液は、(a)リン酸塩化成処理液、(b)リン酸塩化成処理液(比較)とした。なお、(a)リン酸塩化成処理液は、遊離酸含有量を調整した液である。
使用した化成処理液の組成は次のとおりである。
(a)リン酸塩化成処理液
水溶性リン酸化合物:PO4換算で18g/l、
水溶性硝酸化合物:NO3換算で5g/l、
水溶性亜鉛化合物:Zn換算で1.3g/l、
水溶性ニッケル化合物:Ni換算で2g/l、
遊離酸含有量:0.7ポイント、
溶媒:水。
(b)リン酸塩化成処理液
日本パーカライジング(株)製「パルボント(登録商標名)3308」を用いた。なお、遊離酸含有量は1.2ポイントであった。
(a)リン酸塩化成処理液
水溶性リン酸化合物:PO4換算で18g/l、
水溶性硝酸化合物:NO3換算で5g/l、
水溶性亜鉛化合物:Zn換算で1.3g/l、
水溶性ニッケル化合物:Ni換算で2g/l、
遊離酸含有量:0.7ポイント、
溶媒:水。
(b)リン酸塩化成処理液
日本パーカライジング(株)製「パルボント(登録商標名)3308」を用いた。なお、遊離酸含有量は1.2ポイントであった。
ついで、化成処理を施された基材には、塗装処理として、粉体塗装を施し1層の塗膜を有する塗装鋼板とした。粉体塗料としては、ブロックイソシアネート硬化剤を含むポリエステル系樹脂粉体塗料を用いて、焼付け後の塗膜厚が60μmとなるように、静電塗装法により塗布し、焼付け温度:180℃として加熱炉で焼き付ける塗装処理を施した。なお、一部の基材(B)については、さらに、ポリエステル系樹脂の上塗り塗装を行い、2層の塗膜(合計膜厚:120μm)を有する塗装鋼板とした。
得られた塗装鋼板から試験片を採取して、塩水噴霧試験および塩温水浸漬試験を実施し、塗装後耐食性を評価し、また、沸騰水浸漬試験を実施し、塗膜の二次密着性を評価した。
試験方法は次のとおりとした。
(1)塩水噴霧試験
得られた塗装鋼板から試験材(大きさ:70×150mm)を採取して、まず裏面と端面をシールした。ついで、試験片の平坦部にクロスカット(長さ80mm)を入れ、JIS K 5600−7−1の規定に準拠して、塩水噴霧試験を実施した。試験条件は、試験時間:1000hとした。試験後、クロスカット部をテープ剥離試験し、クロスカットからの片側最大剥離幅を測定し、塗装後耐食性を評価した。なお、最大剥離幅が3mm以下を◎、3mm超〜5mm以下を○、5mm超〜7mm以下を△、7mm超えを×として評価した。
(2)塩温水浸漬試験
得られた塗装鋼板から試験材(大きさ:70×150mm)を採取して、まず裏面と端面をシールした。ついで、試験片の平坦部にクロスカット(長さ80mm)を入れ、5%NaCl水溶液(液温:55℃)に浸漬する塩温水浸漬試験を実施した。なお、浸漬時間は10日間とした。試験後、クロスカット部をテープ剥離試験し、クロスカットからの片側最大剥離幅を測定し、塗装後耐食性を評価した。なお、最大剥離幅が3mm以下を◎、3mm超〜5mm以下を○、5mm超〜7mm以下を△、7mm超えを×として評価した。
(3)耐沸騰水浸漬試験
得られた塗装鋼板から試験材(大きさ:70×150mm)を採取して、まず裏面と端面をシールした。ついで、試験片を、JIS K 5400−1990 8.20の規定に準拠して、沸騰水中に浸漬(浸漬時間:1h)した。試験後、JIS K 5600−5−6の規定に準拠して、碁盤目状クロスカット付着性試験を行ない、剥離状況を調査し、同規定表1に準拠して、分類0〜5の段階で判定し、塗膜の二次密着性を評価した。分類0又は1を◎、分類2を○、分類3を△、分類4又は5を×として評価した。
試験方法は次のとおりとした。
(1)塩水噴霧試験
得られた塗装鋼板から試験材(大きさ:70×150mm)を採取して、まず裏面と端面をシールした。ついで、試験片の平坦部にクロスカット(長さ80mm)を入れ、JIS K 5600−7−1の規定に準拠して、塩水噴霧試験を実施した。試験条件は、試験時間:1000hとした。試験後、クロスカット部をテープ剥離試験し、クロスカットからの片側最大剥離幅を測定し、塗装後耐食性を評価した。なお、最大剥離幅が3mm以下を◎、3mm超〜5mm以下を○、5mm超〜7mm以下を△、7mm超えを×として評価した。
(2)塩温水浸漬試験
得られた塗装鋼板から試験材(大きさ:70×150mm)を採取して、まず裏面と端面をシールした。ついで、試験片の平坦部にクロスカット(長さ80mm)を入れ、5%NaCl水溶液(液温:55℃)に浸漬する塩温水浸漬試験を実施した。なお、浸漬時間は10日間とした。試験後、クロスカット部をテープ剥離試験し、クロスカットからの片側最大剥離幅を測定し、塗装後耐食性を評価した。なお、最大剥離幅が3mm以下を◎、3mm超〜5mm以下を○、5mm超〜7mm以下を△、7mm超えを×として評価した。
(3)耐沸騰水浸漬試験
得られた塗装鋼板から試験材(大きさ:70×150mm)を採取して、まず裏面と端面をシールした。ついで、試験片を、JIS K 5400−1990 8.20の規定に準拠して、沸騰水中に浸漬(浸漬時間:1h)した。試験後、JIS K 5600−5−6の規定に準拠して、碁盤目状クロスカット付着性試験を行ない、剥離状況を調査し、同規定表1に準拠して、分類0〜5の段階で判定し、塗膜の二次密着性を評価した。分類0又は1を◎、分類2を○、分類3を△、分類4又は5を×として評価した。
得られた結果を表1に示す。
本発明例はいずれも、塗膜1層(1コート塗装)でも、従来例(リン酸塩処理+2コート塗装の溶融亜鉛めっき鋼板)と同等の優れた塗装後耐食性と、優れた塗膜二次密着性を有する塗装鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、塗装後耐食性、塗膜二次密着性の片方または両方が低下している。
このメカニズムは現在のところ明確になってはいないが、本発明者らは、つぎのように考えている。リン酸塩処理液の遊離酸含有量を低く抑えることにより、化成処理液のめっき層へのエッチング性が低減して、塩害環境下においてもめっき表面の腐食の進行が抑制され、塗膜の剥離が抑制されるものと考えられる。
このメカニズムは現在のところ明確になってはいないが、本発明者らは、つぎのように考えている。リン酸塩処理液の遊離酸含有量を低く抑えることにより、化成処理液のめっき層へのエッチング性が低減して、塩害環境下においてもめっき表面の腐食の進行が抑制され、塗膜の剥離が抑制されるものと考えられる。
Claims (13)
- 鋼材を基材とし、該基材に化成処理と塗装処理とを順次施して、基材表面に化成処理皮膜と塗膜とを順次形成する塗装鋼材の製造方法であって、
前記基材が、表面に、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.0〜6.0%含み残部Znからなる組成の溶融Zn−Al合金めっき層を有する溶融Zn−Al合金めっき鋼材であり、
前記化成処理が、前記基材を化成処理液に浸漬して、または前記基材に化成処理液を吹付けして該基材表面に化成処理皮膜を反応形成する処理であり、
前記化成処理液を、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とし、
前記塗装処理が、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装処理であることを特徴とする、
塩害環境下での耐食性に優れた塗装鋼材の製造方法。 - 前記リン酸塩処理液が、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含む、水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の塗装鋼材の製造方法。
- 前記塗装処理が、有機樹脂を含む粉体塗料を吹付けたのち焼付ける処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装鋼材の製造方法。
- 前記塗装処理で形成される塗膜が、膜厚:20μm以上100μm未満であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の塗装鋼材の製造方法。
- 前記有機樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項3または4に記載の塗装鋼材の製造方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の塗装鋼材の製造方法で製造されてなる塗装鋼材。
- 鋼材を基材とし、該基材に、所定形状の部材に成形する成形工程と、ついで該部材に化成処理を施す化成処理工程と、該化成処理工程を経た前記部材に塗装処理を施す塗装工程とを順次施して、部材表面に化成処理皮膜と塗膜とを順次形成した塗装部材とするに当たり、
前記基材が、表面に、めっき層全量に対する質量%で、Al:4.0〜6.0%含み残部Znからなる組成の溶融Zn−Al合金めっき層を有する溶融Zn−Al合金めっき鋼材であり、
前記化成処理が、前記基材を化成処理液に浸漬して、または前記基材に化成処理液を吹付けして該基材表面に化成処理皮膜を反応形成する処理であり、
前記化成処理液を、遊離酸含有量を0.3〜0.9ポイントに調整したリン酸塩処理液とし、
前記塗装処理が、有機樹脂を含む塗料を用いる塗装処理であることを特徴とする、
塩害環境下での耐食性に優れた塗装部材の製造方法。 - 前記化成処理液が、PO4として5〜30g/lの水溶性リン酸化合物と、NO3として1〜30g/lの水溶性硝酸化合物と、Znとして0.5〜5g/lの水溶性亜鉛化合物と、Niとして0.1〜10g/lの水溶性ニッケル化合物と、を含む、水溶液であるリン酸塩処理液とすることを特徴とする請求項7に記載の塗装部材の製造方法。
- 前記塗装処理が、有機樹脂を含む粉体塗料を吹付けたのち焼付ける処理であることを特徴とする請求項7または8に記載の塗装部材の製造方法。
- 前記塗装処理で形成される塗膜が、膜厚:20μm以上100μm未満であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の塗装部材の製造方法。
- 前記有機樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項9または10に記載の塗装部材の製造方法。
- 請求項7ないし11のいずれかに記載の塗装部材の製造方法を用いて得られた塗装部材であって、部材表面に、遊離酸含有量を適正範囲に調整したリン酸塩処理液により反応形成されたリン酸塩処理皮膜と、有機樹脂塗膜とをその順に形成してなる塩害環境下の耐食性に優れた塗装部材。
- 前記塗装部材が防護柵である請求項12に記載の塗装部材。
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JP2013251575A JP2015108173A (ja) | 2013-12-05 | 2013-12-05 | 塩害環境下での耐食性に優れた塗装鋼材の製造方法 |
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CN105296984A (zh) * | 2015-11-12 | 2016-02-03 | 镇江市隆盛工具有限公司 | 一种丝锥缩柄工艺 |
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2013
- 2013-12-05 JP JP2013251575A patent/JP2015108173A/ja active Pending
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