JP2008279071A - パイプ組立式収納棚 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性に優れ、しかも端材の処理や廃棄処理において環境上の問題のないパイプ組立式収納棚を提供することを課題とする。
【解決手段】パイプ1を図に例示するジョイント部材2、3及び締結部材5、6によって結合することにより、ニーズに合わせた種々の構成の収納棚を作製できるパイプ組立式収納棚において、使用されるパイプ1は、表面に亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムを成分とする溶融めっきを施された鋼板から溶接にて製造され、その後、有機溶剤の薄い被膜をコーティングされることで、上記パイプの曲げ加工部や切断端面部の表面においても高耐食性を有し、また、端材処理時や上記収納棚の廃棄処理時において環境上の問題を生じないパイプ組立式収納棚とすることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、工場の備品等を保管する組立式の収納棚に関し、特に、パイプを専用のジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚に関する。
パイプ組立式収納棚は、骨組み部材であるパイプとこのパイプを組み立てるためのジョイントからなっており、これらを組み合わせることにより、溶接等による接合を用いずに種々の形状のラック等を容易に製作することができる(特許文献1)。このラック等は、例えば自動車を始めとする製造組立工場等における部品等の収納用として、あるいは生産組付台及び搬送用台車として使用される。
図1、2にパイプとジョイントの一例を示す。前記ジョイントは、前記パイプの端部または中間部が嵌合される凹部を有する部材と、前記パイプが嵌合された前記部材同士を固定する締結用部材とからなり、パイプの中間部あるいは端部に他のパイプを容易にかつ強固に接続することができ、製造現場のニーズに合わせて様々の形状寸法のラック等を短時間で製作することができる。上記ラックには下部に車輪を取り付けて移動可能とすることも容易であり、製造現場における作業能率向上に役立てられている。
従来、製造現場等で用いられる上記パイプ組立式収納棚では、耐食性、美観の観点から、パイプとしてプラスチックコーティングパイプを使用していた。プラスチックコーティングパイプは金属性パイプの外面にプラスチックの層を接着剤でコーティングしたもので、耐食性に優れ、種々の色彩の表面とできるという美観上の利点もあった。
特開2001−286350号公報
しかしながら、上記従来のパイプ組立式収納棚では、製作時に出る端材の処理あるいは廃棄時の処理において、パイプのプラスチックの層を除去することが困難であるため、環境上の問題があった。すなわち、プラスチック層が付着したままでは廃棄あるいはリサイクルの処理が環境上の問題を生じるために行えず、プラスチック層の除去を行うためには上記のようにコスト過大となってしまうという問題が生じていた。
この問題の解決方法として、発明者らは後述するめっき鋼板で製造されたパイプを使用することにより、プラスチックコーティングを不要とする方法を検討した。しかし、耐食性、硬度等の表面性能において優れており、従来のパイプの代替品として有力であるにもかかわらず、上記めっき鋼管からパイプを製造する段階で、不可避的にパイプ表面に付着してしまう油分により、ジョイントによる組み立てに不具合が生じてしまうという新たな問題が生じた。上記のパイプ表面に付着した油分を能率上、採算上問題ない範囲で除去できなければ、実際上、上記めっき鋼板で製造されたパイプを採用することはできない。
本発明は、従来のめっき処理よりも優れた耐食性を有するめっき処理を施したパイプを使用し、さらにそれに伴う上記の技術上の問題を解決することで上記の環境上の問題点を解消し、従来どおり容易に組立てることができ、耐食性に優れ、丈夫でしかも環境上の問題のないパイプ組立式収納棚を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、パイプをジョイントで結合して組立てる組立式収納棚において、前記パイプは、表面に亜鉛と、質量比率においてアルミニウム6%、マグネシウム3%を成分構成とする溶融めっき(以下「ZAM(登録商標)めっき」と記す。)を施された鋼板から製造され、その後、有機溶剤の被膜をコーティングされたものであることを特徴とする。これにより、表面にプラスチックのコーティングを行うことなく長期間高耐食性を有し、また、表面に油分の付着のないパイプを得る事ができるため、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、しかも従来どおり耐食性に優れ、容易に組立てることができるパイプ組み立て式収納棚とすることができる。
請求項2に記載の発明は、さらに、前記パイプはその外径が27.8mmであることを特徴とする。これにより、従来のジョイントの使用が可能となり、資源の節約及び廃棄物の低減を図ることができる。
請求項3に記載の発明は、さらに、前記鋼板は、前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A〜20A相当となる炭素鋼鋼板であることを特徴とする。これにより、十分な曲げ強度を有し、パイプ表面に傷のつきにくいパイプ組み立て式収納棚とすることができる。
上記解決するための手段により、本発明のパイプ組み立て式収納棚は、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、しかも従来どおり丈夫で耐食性に優れ、既存のジョイントで容易に組立てることができる。
以下に、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、本パイプ組立式収納棚の特徴である、パイプ製造用鋼板の表面処理について説明する。
図3は、本実施形態のパイプの材料として使用されるZAMめっき鋼板の表面における腐食抑制のメカニズムを説明するための図である。鋼素地にドブ漬けによりめっきされたZn−Al−Mgの成分からなる本実施例のめっき層(ZAMめっき層)のさらに表面側に、緻密なMg含有Zn−Al系保護被膜と、該保護被膜のさらに表面側に、緻密なMg含有Zn系保護被膜とが時間経過とともに生じる。これがZAMめっき層の従来のめっき層との違いであって、時間経過と共に生じる上記2層の新たな高耐食めっき被膜によりZAMめっき層の表面は一層腐食しにくくなる。
ZAMめっき鋼板は、後述の溶融Znめっき鋼板の10〜20倍、溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板の5〜8倍の耐食性を示す。また、ZAMめっき層は通常の上記溶融Znめっき層よりも硬く、優れた耐摩耗性、耐疵付き性をも有している。以下、上記のZAMめっき鋼板から溶接にて製造した本実施例のパイプをZAMパイプと記す。
図4に、ZAMめっき層において、Mg含有率をゼロから3%まで増加させた場合の赤錆発生サイクルを表すグラフを示す。これは、塩水噴霧、乾燥、湿潤の条件を1サイクルとして繰り返す複合サイクル腐食試験(CCT:JASO M609−91)の結果であり、試験片の条件としては、めっき付着量90g/m2、Al含有率6質量%一定で行ったものである。図からこの成分範囲ではMg含有率が高いほど赤錆発生に対する抑制力が増すことがわかる。
図5は、曲げ加工部の塩水噴霧試験試験(SST:JISZ2371)において、比較例1と比較例2に比べて本実施例のZAMめっきが長時間赤錆の発生を防止することを示している。ここで、比較例1は溶融Znめっきであり、比較例2は溶融Zn−5%Al合金めっきである。試験条件は、各めっき条件で板厚3.2mmの鋼板にめっき層120g/mを形成させ、1tの荷重にて180°の曲げ加工を行った試験片で上記塩水噴霧試験を行うものである。めっき後の鋼板でパイプを製造するため、本試験にて比較を行ったものである。
比較例1や比較例2に示しためっき鋼板で製造したパイプでは、製造現場の高湿な環境では防食性が不十分であり、従来のプラスチックコーティングパイプの代替品とはなりえない。本パイプ組立式収納棚は上記ZAMめっき鋼板により製造された溶接鋼管を採用することで、高い耐食性と表面の美観を具備することができるため、従来のパイプの環境上の欠点を除去した上記代替品としての採用が可能となった。
また、図示しないが、ZAMめっき鋼板は溶接部においても同条件の上記比較例2の溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板に比べて優れた耐食性を示す。これは、めっき層中のMgが溶接部の金属層へも溶出し優れた保護被膜効果を発現させたことによるものと推定される。これにより、上記ZAMめっき鋼板により製造されたパイプは溶接部においても耐食性に問題ないことが確認された。
図6は、ZAMめっきが鋼板の切断面においても耐食性を向上させるメカニズムを説明するための図であり、ZAMめっき鋼板の切断部を模式的に表している。ZAMめっき処理された鋼板が切断された場合、切断時から数週間の暴露初期段階では図6(a)に示すように、切断面においては端面の鋼素地露出部が酸化し、ZAMめっきされた鋼板表面部には特に変化は見られない。切断されてから数週間以上経過した暴露中期段階になると、図6(b)に示すように、切断面はだれ部から流れた緻密なMg含有Zn系保護被膜に覆われ、徐々に灰色から灰黒色に変化する。さらに、切断されてから1年以上経過した暴露長期段階になると、切断面だけでなく鋼板表面部も緻密なMg含有Zn系保護被膜に覆われる。
上記のように、ZAMめっきにおいては、めっき層に含有されるMgとAlの効果により、時間の経過とともに緻密で付着性の強い二層構造の保護被膜をめっき表面及び切断面に形成し、腐食を抑制するため、優れた防食性を発揮する。本パイプ組み立て式収納棚では、定尺サイズ(2m、4m)のパイプを使用者が必要長さに切断して使うものであるため、切断面の防食が大きな課題であったが、上記性能を有するZAMパイプを採用することによりこの課題は解決された。
ここで、上記ZAMめっきする鋼板として一般の鋼板を用いた場合、パイプ強度が不十分となり、ラック等で使用する場合にたわみが生じやすく、一度たわんだパイプを復元することは困難である。そのため、本実施例ではZAMめっきする鋼板として、前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A〜20A相当となる炭素鋼鋼板を用いる。これにより、十分な曲げ強度を有し、パイプ表面が傷つきにくいパイプ組み立て式収納棚とすることができる。
次に本パイプ組立式収納棚のもう一つの特徴であるパイプ表面の油分除去について説明する。
上述のように、本パイプ組立式収納棚はZAMパイプを用いることで、上記収納棚の製作時に発生するパイプの端材の処理や、廃棄時のパイプの処理については、対環境性に優れたリサイクルに好適なものとすることができる。しかし、その一方で上記収納棚の組み立て時において、ZAM処理された鋼板からの造管工程でパイプ表面に付着した微量の油分によりパイプ表面の摩擦係数が減少し、ジョイントによるパイプの強固な結合ができなくなるという不具合が生じた。
上記油分の除去にはいくつかの方法が考えられたが、人力による拭き取りは能率、コスト面で不可であり、アルカリ脱脂液にドブ漬けする方法についてはパイプの表面処理剤やめっきそのものまで取れてしまう問題、パイプの溶接部とそれ以外の管体部で上記脱脂液の効果に差が出る問題、さらには脱脂後の乾燥を結束状態で行うため、パイプ同士の接触部の乾燥が不十分となりパイプに筋状の塩分が残る問題等様々の問題点があった。
以下に、ZAMパイプ表面の脱脂に関する上記の様々な問題点を解決する方策として、発明者らが見出した方法について説明する。
本方式は「ドライコート」と呼ばれる方法であり、パイプの表面を有機溶剤の蒸気を吹き付けて薄い有機溶剤の被膜(厚さ数ミクロン)でコーティングするものである。この被膜コーティングの過程で上記油分は除去され、コーティングされた有機被膜自体は油分のように摩擦係数を低下させることがないため、ジョイントによるパイプの結合を仕様どおり強固に行うことができる。
この「ドライコート」は従来農業用ビニールハウス向け鋼管で採用されていたものであり、ここでは一般的な洗浄の目的で使われていたものであって、本件のような脱脂の目的で使用されることは想定されておらず、実際に採用されている例もなかった。この処理方法を本パイプ組み立て式収納棚に使用するパイプの脱脂方法として採用することで、実際上、上記収納棚用パイプの自動生産が可能になった。
以上説明したように、本発明により、上記ZAMめっき鋼板より製造された溶接管を採用し、上記パイプ製造時に表面に付着する油分を上記ドライコート処理で除去することで、プラスチックをコーティングせずに高耐食性を有し、しかも十分な曲げ強度を有する硬く傷つきにくいパイプとすることができるため、上記環境上の問題を生じさせないパイプ組み立て式収納棚を提供できる。
本発明のパイプ組立式収納棚のパイプとジョイントの組み立ての一例を示す図であり、(a)はジョイントの分解斜視図、(b)はパイプとジョイントの組立斜視図である。 本発明のパイプ組立式収納棚のパイプとジョイントの組み立ての他の一例を示す図であり、(a)はジョイントの分解斜視図、(b)はパイプとジョイントの組立斜視図である。 ZAMめっき鋼板の断面の模式図である。 めっき層中のMg含有率と赤錆発生時間との関係を示す図である。 塩水噴霧試験による1t曲げ加工部の赤錆発生状況を示す図である。 ZAMめっき鋼板の切断端面部の模式図であり、(a)は暴露初期、(b)は暴露中期、(c)は暴露長期の状態を示す。
符号の説明
1 パイプ
2、3、4 ジョイント部材
5 ボルト
6 ナット
7 ZAMめっき層
8 Mg含有Zn系保護被膜

Claims (3)

  1. パイプをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚において、
    前記パイプは、表面に亜鉛と、質量比率においてアルミニウム6%、マグネシウム3%を成分構成とする溶融めっきを施された鋼板から製造され、その後、有機溶剤の被膜をコーティングされたものである
    ことを特徴とするパイプ組立式収納棚。
  2. 前記パイプはその外径が27.8mmであることを特徴とする、請求項1に記載のパイプ組立式収納棚。
  3. 前記鋼板は、前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A〜20A相当となる炭素鋼鋼板であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパイプ組立式収納棚。
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