本開示に係る屋根は、屋根材と太陽光発電装置との一体感があり、意匠性に優れる。太陽光発電装置は、屋根材の段葺き形状に合わせて太陽電池モジュールが段葺き状に配置された構造を有する。屋根材の働き長さは、例えば太陽電池モジュールの軒棟方向長さとカバーの軒棟方向長さとを足した長さと略同一であるから、本開示に係る屋根では、屋根材と太陽光発電装置の軒棟方向ピッチが略一致し、段差の位置が揃っている。このため、屋根材と太陽光発電装置との高い一体感が得られる。
本開示に係る屋根材は、第1屋根材と第2屋根材とで構成されるが、第2屋根材の受け部によって第1屋根材の表面が第2屋根材の表面と略同一平面上に配置され、各表面の間に高低差が形成されない。このため、本開示に係る屋根材は1枚の屋根材のように見える。そして、屋根材と太陽光発電装置の段差の位置を合せることができる。他方、本開示に係る屋根材は、2枚に分割されているため、大型の屋根材と比べて取り扱いが容易であり施工性が良い。
屋根材と太陽光発電装置の軒棟方向ピッチを一致させる方法としては、軒棟方向長さが太陽電池モジュールより長い大型の屋根材を用いる方法が考えられる。しかし、大型の屋根材の取り扱いは容易ではなく施工面で問題がある。加えて、屋根材の強度が低下することが想定される。また、一般的な屋根材の働き長さに合せた小型の太陽電池モジュールを用いる方法も考えられるが、この場合は、太陽電池モジュールの製造コスト増が想定される。本開示に係る屋根材を用いることで、このような問題がなく、意匠性に優れた屋根を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例について詳細に説明する。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において、「略〜」との記載は、略同一を例に挙げて説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められる場合を含む意図である。
以下では、屋根の桁方向(屋根の軒棟方向に垂直な方向)に沿う屋根材等の方向を「横方向」、屋根の野地板に垂直な方向に沿う屋根材等の方向を「上下方向」という。また、軒棟方向に沿う屋根材等の方向を「縦方向」という場合がある。図面には、屋根の軒棟方向・縦方向を矢印α、桁方向・横方向を矢印β、上下方向を矢印γで示す。
以下で説明する実施形態では、各太陽電池モジュール11の軒側端部にカバー70が取り付けられた太陽光発電装置10を例示するが、太陽光発電装置はカバーを有していなくてもよい。この場合、第1屋根材の働き長さと第2屋根材の働き長さとを足した長さは、太陽電池モジュールの軒棟方向長さと略同一になる。
図1及び図2は、実施形態の一例である屋根1を示す図である。図1及び図2に例示するように、屋根1は、太陽光発電装置10と、屋根材2とを備える。太陽光発電装置10は、複数の太陽電池モジュール11と、当該各モジュールの軒側端部に取り付けられたカバー70とを有する。屋根材2は、第1屋根材4と、第1屋根材4より軒側に配置される第2屋根材90とで構成され、太陽光発電装置10の周囲の少なくとも一部に敷設されている。
屋根材2を構成する第1屋根材4は、軒側部分が第2屋根材90の棟側部分に重ねられる。第1屋根材4と第2屋根材90、及び各屋根材2は互いにオーバーラップする。詳しくは後述するが、第2屋根材90は、第1屋根材4の表面Sxと第2屋根材90の表面Syとが略同一平面上に位置するように第1屋根材4の軒側部分を支持する受け部92(図3参照)を有する。ここで、表面Sx,Syとは、第1屋根材4及び第2屋根材90(屋根材2)の表面のうち、屋根材2が段葺きされた状態で他の屋根材2に隠れることなく露出する部分を意味する。
本実施形態では、屋根材2が第1屋根材4及び第2屋根材90を1枚ずつ含む。即ち、1枚の屋根材2は、1枚の第1屋根材4と、1枚の第2屋根材90とで構成されている。そして、第1屋根材4の働き長さLxと、第2屋根材90の働き長さLyとを足した長さ(Lx+Ly)が、太陽電池モジュール11の軒棟方向長さとカバー70の軒棟方向長さとを足した長さLzと略同一である。
屋根1には、桁方向に沿った太陽電池モジュール11の列が複数形成されるように太陽光発電装置10が取り付けられている。太陽電池モジュール11は、例えば平面視略矩形形状を呈する。本実施形態では、各太陽電池モジュール11の短辺が軒棟方向に略平行であり、各列を構成する複数の太陽電池モジュール11の短辺同士が略接触した状態で各モジュールが配置されている。桁方向に延びる列を構成する太陽電池モジュール11の数は、屋根1の軒側に位置する列で多くなり、また軒棟方向に隣り合う一部の列で同数である。但し、太陽光発電装置10を構成する太陽電池モジュール11の数、配列等は特に限定されない。
太陽光発電装置10は、屋根材2の段葺き形状に合わせて太陽電池モジュール11が段葺き状に配置された構造を有する。即ち、太陽電池モジュール11A,11Bの間には、太陽電池モジュール11Bの軒側端部が太陽電池モジュール11Aの棟側端部より高くなった段差が形成されている。太陽光発電装置10は、屋根1に対して太陽電池モジュール11を段葺き状に固定する取り付け器具20を有する。ここで、太陽電池モジュール11A,11B(第1、第2太陽電池モジュール)の用語は、2枚の太陽電池モジュールの相対的な位置関係を示すものである。軒棟方向に隣り合う任意の2枚の太陽電池モジュール11において、軒側に配置される方が太陽電池モジュール11A、棟側に配置される方が太陽電池モジュール11Bである。
太陽光発電装置10では、太陽電池モジュール11A,11Bの間(以下、「中間部」という場合がある)に、屋根材2の段葺き形状に対応する段差が形成される。カバー70は、屋根材の前垂れを模擬した外観形状を呈することが好ましく、例えば太陽電池モジュール11と桁方向に隣接配置される第2屋根材90の前垂れ95(図3参照)の位置に合わせて取り付けられる。カバー70は、例えば取り付け器具20によって太陽電池モジュール11の軒側端部に設置される。
屋根1には、上述の通り、太陽光発電装置10の周囲の少なくとも一部に屋根材2が配置される。一方、太陽光発電装置10の下に屋根材2は配置されていない。屋根材2は、例えば平板瓦(平板陶器瓦)であるが、屋根材2はこれに限定されない。図1に示す例では、寄棟屋根である屋根1の台形部分に太陽光発電装置10が取り付けられ、太陽光発電装置10の軒側を除く三方を囲むように複数の屋根材が敷設されている。なお、太陽光発電装置10は屋根1の三角形部分に設置されてもよく、方形屋根、切妻屋根等に設置されてもよい。
屋根材2は、例えば太陽光発電装置10の下以外の部分に敷設される。屋根材2を構成する第1屋根材4は、屋根1の桁方向に一列に並んで配置される。また、第2屋根材90も屋根1の桁方向に一列に並んで配置される。そして、第1屋根材4の列と第2屋根材90の列が軒棟方向に交互に設けられる。第1屋根材4と第2屋根材90を軒棟方向に交互に設けることで、屋根材2が構成されると共に、第1屋根材4とその棟側に配置される第2屋根材90との間に段差が形成される。即ち、屋根材2が段葺きされる。
第1屋根材4は、例えば桁方向に沿った列の両端に配置されるものを除き、平面視略矩形形状を有する。第2屋根材90についても、桁方向に沿った列の両端に配置されるものを除き、平面視略矩形形状を有する。当該列の両端に配置される各屋根材は、例えば平面視略三角形状又は五角形状を有する。第1屋根材4と第2屋根材90は、横方向長さが互いに略同一であり、軒棟方向に並んで配置されている。但し、第1屋根材4と第2屋根材90は千鳥状に配置されてもよい。また、第1屋根材4と第2屋根材90の横方向長さは互いに異なっていてもよい。
第1屋根材4と第2屋根材90は、上述のように軒棟方向に隣接配置されるが、例えば第1屋根材4が単独で使用されてもよい。図1に示す例では、屋根1の最も棟側において第1屋根材4の列が軒棟方向に2つ連続して配置されている。太陽光発電装置10の棟側には、第2屋根材90は配置されず第1屋根材4だけが配置されている。
図3は、図1中のAA線断面図である(なお、第2屋根材90を抜き出して示す)。図1〜図3に例示するように、屋根材2を構成する第1屋根材4の表面Sxと第2屋根材90の表面Syは、略同一平面上に位置している。第2屋根材90の棟側部分には第1屋根材4の軒側部分が重ねられるが、第2屋根材90には、表面Sxを表面Syと同じ高さで支持する受け部92が形成されている。受け部92の表面Srの高さは表面Syよりも低く、第2屋根材90の棟側部分には凹部93が形成される。そして、凹部93に第1屋根材4の軒側部分が収容されることで表面Sx,Syの高低差をなくすことができる。第1屋根材4の表面Sxと第2屋根材90の表面Syの境界位置には、例えば小さな溝が形成されるが、一般的な屋根材を重ねた場合のように大きな段差は形成されない。
一方、第1屋根材4の棟側端部には凹部93のような凹部(段差)が存在しないため、第2屋根材90の軒側部分を、その軒側に配置される第1屋根材4の棟側部分に重ねると、表面Sx,Syの間に高低差が形成される。即ち、当該第1屋根材4と当該第2屋根材90の間に大きな段差が形成される。なお、当該第1屋根材4と当該第2屋根材90は1枚の屋根材2を構成するものではない。
第1屋根材4には、軒側端部に前垂れ5が、棟側端部に上突起6、下突起7がそれぞれ形成された従来公知の屋根材を用いることができる。また、第1屋根材4の裏面にはリブ9が形成されている。上突起6は、上方に突出した突起であって、雨水等が第1屋根材4の裏側に浸入することを防止する。上突起6は、一般的に水返しと呼ばれる。下突起7は、下方に突出した突起であって、桁方向に沿う桟木8に引っ掛けられる。桟木8は、軒棟方向に略等間隔で、互いに略平行に設けられる。下突起7は、一般的に引っ掛けと呼ばれる。第1屋根材4の棟側端部には、図示しない貫通孔が形成されている。第1屋根材4は、当該貫通孔に挿通される釘によって桟木8及び野地板3に固定される。
第2屋根材90には、第1屋根材4と同様に、軒側端部に前垂れ95が、棟側端部に上突起96、下突起97がそれぞれ形成されている。また、第2屋根材90の裏面にはリブ98が形成されている。上突起96は上方に突出した水返しであり、下突起97は下方に突出した引っ掛けである。上突起96と下突起97は、受け部92の棟側端部に形成されている。また、受け部92には、図示しない貫通孔が形成されている。第2屋根材90は、当該貫通孔に挿通される釘によって桟木8及び野地板3に固定される。
第2屋根材90は、本体部91と、本体部91の棟側端部から棟側に張り出した受け部92とを有する。受け部92は、本体部91の下部から棟側に延び、第2屋根材90の棟側端部に凹部93(段差)を形成する。受け部92の表面Srは本体部91の表面Syより低く、表面Sr,Syの間に高低差が形成される。表面Sr,Syの高低差、即ち凹部93の深さは、第1屋根材4の軒側端部の厚みに相当する。受け部92の表面Srを本体部91の表面Syより第1屋根材4の厚み分低く形成することで、上述のように第1屋根材4の表面Sxと本体部91の表面Syとの高低差をなくすことができる。
第1屋根材4の軒側部分は、凹部93に収容され、受け部92によって支持される。第1屋根材4と第2屋根材90は、第1屋根材4の前垂れ5が第2屋根材90の本体部91に当接し、表面Sx,Syが連続するように設けられることが好適である。第1屋根材4には、一般的な屋根材を使用できるが、例えば軒側の端まで表面Sxが真っ直ぐに形成された屋根材2の専用品を用いてもよい。この場合、第1屋根材4の表面Sxと第2屋根材90の表面Syの境界位置に形成され得る溝をなくすことができる。
第1屋根材4の働き長さLxと、第2屋根材90の働き長さLyとを足した長さ(Lx+Ly)は、上述の通り、太陽電池モジュール11の軒棟方向長さとカバー70の軒棟方向長さとを足した長さLzと略同一である。即ち、屋根材2と太陽光発電装置10の軒棟方向ピッチが略一致して段差の位置が揃うため、屋根材2と太陽光発電装置10との高い一体感が得られる。なお、長さ(Lx+Ly)は屋根材2の働き長さであり、本体部91の軒棟方向長さは第2屋根材90の働き長さLyである。
長さ(Lx+Ly)≒長さLzであれば、Lx,Lyは互いに異なっていてもよい。Lx≠Lyであっても、屋根材2と太陽光発電装置10の段差の位置を揃えることは可能である。但し、屋根1の意匠性、屋根材2の施工性、強度等を考慮すると、Lx,Lyは互いに略同一であることが好ましい。つまり、第2屋根材90の働き長さLyは長さLzの略1/2であることが好ましい。
本体部91と受け部92の軒棟方向長さの比率は特に限定されないが、本体部91の軒棟方向長さは、Lx≒Lyとなる長さであることが好ましい。受け部92の軒棟方向長さは、受け部92の棟側端部に形成される下突起97が桟木8に引っ掛かる長さとすることが好ましい。受け部92の軒棟方向長さは、例えば屋根材2同士がオーバーラップする部分の長さと略同一である。
なお、1枚の第1屋根材4と、複数の第2屋根材90とで、1枚の屋根材2を構成することもできる。例えば、棟側から順に第1屋根材4、1枚目の第2屋根材90、及び2枚目の第2屋根材90を配置して、3枚に分割された屋根材2を構成してもよい。この場合、これらの働き長さを足した長さ(Lx+2×Ly)が長さLzと略同一になる。軒側に配置される2枚目の第2屋根材90の受け部92には、棟側に配置される1枚目の第2屋根材90の軒側部分が載せられ、各屋根材の表面は略同一平面上に位置する。
図4は、太陽電池モジュール11の断面図である。図4に例示するように、太陽電池モジュール11は、太陽電池パネル12と、当該パネルの端縁部に設置されたモジュールフレーム13とを有する。モジュールフレーム13は、例えば平面視略矩形形状の太陽電池パネル12の各長辺及び各短辺に沿って設置される複数のフレームからなり、コーナーピース等により互いに接続されて太陽電池パネル12の四方を囲む。本実施形態では、太陽電池モジュール11の棟側端部に設置されるフレーム13Aと、軒側端部に設置されるフレーム13Bとで、フレーム下部の形状が異なっている。
フレーム13Aは、太陽電池パネル12の裏側に配置される断面略C字状の本体部14Aと、本体部14Aの上部から外側に張り出した断面略U字状の鉤部15Aと、本体部14Aの下部から下方に延出した断面略L字状の鉤部17Aとを有する。即ち、フレーム13Aは上部が下部よりもモジュールの外側に張り出した形状を有する。断面略U字状の鉤部15Aは、フレーム13Aの上部に太陽電池パネル12の端縁部を挿入可能な内溝16Aを形成する。
フレーム13Bは、本体部14B、鉤部15B,17Bを有し、フレーム13Bの上部が下部よりもモジュールの外側に張り出している点で、フレーム13Aと共通する。一方、フレーム13A,13Bでは、本体部14A,14Bに対する鉤部17A,17Bの向きが互いに異なっている。鉤部17Aは、本体部14Bの外側から下方に延び、途中でモジュールの内側に折れ曲がって断面略L字状に形成される。他方、鉤部17Bは、本体部14Bの内側から下方に延び、途中でモジュールの外側に折れ曲がって断面略L字状に形成される。このため、フレーム13Aの下部には内側に向かって開口した内溝18Aが形成され、フレーム13Bの下部には外側に向かって開口した外溝18Bが形成される。
図5は、取り付け器具20の全体構成を示す図である。図5に例示するように、取り付け器具20は、太陽電池モジュール11A,11Bを含む複数の太陽電池モジュール11を屋根1に取り付ける器具であって、野地板3上に敷設されたベースプレート21,22を有する。図5に示す例では、1枚の太陽電池モジュール11に対して1枚のベースプレートが設けられている。
ベースプレート21,22は、例えば金属製の板状部材であって、野地板3に直接固定される。ベースプレート21,22は略矩形形状を有し、長辺方向が屋根1の桁方向に沿うように野地板3上に配置される。ベースプレート21は、複数のベースプレートのうち最も軒側に配置され、棟側端部にベース金具30が、軒側端部に軒端ベース金具200がそれぞれ設置される板金である。ベースプレート22は、棟側端部にベース金具30又は棟端ベース金具100が設置される板金である。
取り付け器具20は、太陽電池モジュール11A,11Bに跨って設置され、当該各モジュールを支持するベース金具30を有する。また、取り付け器具20は、太陽電池モジュール11A,11Bをベース金具30に固定する押え金具50を有する。ベース金具30は、例えば太陽電池モジュール11Aの下に配置されるベースプレート21の棟側端部又はその近傍において、屋根1の桁方向に間隔をあけて2つ設置される。押え金具50は、太陽電池モジュール11A,11Bの長辺方向に延びた長尺状の部材であって、2つのベース金具30に跨って設置される。押え金具50は、第1押え金具51と第2押え金具52とで構成されている。カバー70は、第2押え金具52によって太陽電池モジュール11Bの軒側端部に設置される。
取り付け器具20は、太陽電池モジュール11Bの棟側端部を支持する棟端ベース金具100と、当該モジュールの棟側端部を棟端ベース金具100に固定する棟端押え金具120とを有する。棟端ベース金具100は、太陽光発電装置10を構成する太陽電池モジュール11の棟側端部のうち、その棟側にモジュールが配置されない部分を支持する。
棟端ベース金具100は、例えば太陽電池モジュール11Bの下に配置されるベースプレート22の棟側端部又はその近傍において、屋根1の桁方向に間隔をあけて2つ設置される。棟端押え金具120は、太陽電池モジュール11Bの長辺方向に延びた長尺状の部材であって、2つの棟端ベース金具100に跨って設置される。
取り付け器具20は、太陽電池モジュール11Aの軒側端部を支持する軒端ベース金具200と、当該モジュールの軒側端部を軒端ベース金具200に固定する第2押え金具52とを有する。軒端ベース金具200は、太陽光発電装置10を構成する太陽電池モジュール11の軒側端部のうち、その軒側にモジュールが配置されない部分を支持する。軒端ベース金具200には専用の押え金具を用いてもよいが、第2押え金具52を用いることで、例えば部品の共通化を図り製造コストを削減することができる。
軒端ベース金具200は、例えば太陽電池モジュール11Aの下に配置されるベースプレート21の軒側端部又はその近傍において、屋根1の桁方向に間隔をあけて2つ設置される。第2押え金具52は、2つの軒端ベース金具200に跨って設置される。本実施形態では、1枚の太陽電池モジュール11Aが2つのベース金具30と2つの軒端ベース金具200によって支持され、また1枚の太陽電池モジュール11Bが2つのベース金具30と2つの棟端ベース金具100によって支持されている。カバー70は、中間部の場合と同様に、第2押え金具52を介して軒端ベース金具200に固定される。また、カバー70の下には軒カバー220が設けられる。
図6及び図7は、ベースプレート21,22の構成、及びベースプレート21,22を野地板3上に設置する方法を説明するための図である。図6及び図7に例示するように、太陽電池モジュール11の下には複数のベースプレート21,22が配置され、各ベースプレート21,22上に上述のベース金具がそれぞれ設けられる。各ベース金具は野地板3上に直接固定することも可能であるが、ベースプレート21,22を用いることで各ベース金具の位置合わせが容易になり施工性が向上する。
野地板3の上には、一般的に防水シートが設けられるが、図6及び図7では図示を省略している。防水シートが設けられる場合、後述する桟木用墨170及び縦墨171は防水シート上に形成される。また、ベースプレート21,22の縁部等には、防水テープ(図示せず)を貼着することが好ましい。
ベースプレート21,22は、屋根1の軒側の桁方向一方側(以下、「左側」とする)から野地板3上に配置される。左側に配置されるベースプレート21a上には、桁方向他方側(以下、「右側」とする)に隣接配置されるベースプレート21bの一部が重ねられる。また、ベースプレート21a上には、棟側に隣接配置されるベースプレート22cの一部が重ねられる。このようにして、ベースプレート21,22は軒側の左から棟側の右に向かって順に設置される。ベースプレート21,22の設置は、簡便で精度良く行うことができる。
ベースプレート21,22には、浮き止め23,24が設けられている。浮き止め23,24はいずれもベースプレート21,22の棟側端部において、浮き止め23がベースプレート21,22の横方向中央部に、浮き止め24が横方向端部(右側)にそれぞれ設置される。ベースプレート21には、3つ目の浮き止め25が設けられている。浮き止め25は、ベースプレート21の軒側端部において横方向端部(右側)に設置される。
各浮き止めは、ベースプレート21,22との間に、当該プレートの上に重ねられるベースプレート21,22を挿し込み可能な隙間を有する。例えば、ベースプレート21a上に重ねられるベースプレート21bの端部は浮き止め24,25によって、またベースプレート22cの端部は浮き止め23,24によって、それぞれ上方に浮き上がらないように押えられる。なお、浮き止めの位置を変えることで、例えば屋根1の右側から順にベースプレート21,22を配置することもできる、この場合、右側のベースプレート21上に左側に隣接配置されるベースプレート21の一部が重ねられる。
以下、ベースプレート21を例に挙げて、当該プレートに形成される位置合わせ用マークについて説明する。当該位置合わせ用マークについて、ベースプレート22は、軒端ベース金具用マーク162及び貫通孔163が形成されない点を除き、ベースプレート21と共通する。
ベースプレート21には、桁方向に引かれた桟木用墨170を利用して当該プレートの位置合わせを行うためのマークである横マーク150,151,152が形成されている。桟木用墨170は、屋根材2を支持する桟木8の位置を示すマークである。また、ベースプレート21には、縦墨171との位置合わせに用いられるマークである縦マーク153,154が形成されている。縦墨171は、専らベースプレート21の位置合わせに使用されるマークであって、ベースプレート21の左端の位置を示す。ベースプレート21の棟側に、軒棟方向に真っ直ぐ並んでベースプレート22が配置される所謂格子配置の場合、縦墨171は各ベースプレート22の左端の位置を示す。他方、図6に示すように、ベースプレート21,22が千鳥状に配置される場合、左側のベースプレート22について縦墨171は、、右側のベースプレート22が上に載せられた状態で当該プレートに隠れない部分の横方向中央の位置を示す。
桟木用墨170及び縦墨171は、ベースプレート21を配置する前に野地板3上に形成される。屋根1では、屋根材2と太陽光発電装置10の軒棟方向ピッチが略一致し、かつベースプレート21に横マーク150,151,152が形成されているため、桟木用墨170を利用してベースプレート21を配置することが可能である。
桟木用墨170は、桟木8が取り付けられる位置に形成されるが、一般的にはベースプレート21を敷設する部分を含む野地板3の全体に形成される。桟木用墨170は、屋根1の桁方向に沿って略直線状に複数形成される。各桟木用墨170は、軒棟方向に略等間隔で、互いに略平行に形成される。縦墨171は、屋根1の軒棟方向に沿って略直線状に複数形成される。各縦墨171は、桁方向に略等間隔で、互いに略平行に形成される。各縦墨171の間隔は、例えばベースプレート22の横方向長さからプレート同士の重なり幅を引いた長さに対応する。ベースプレート21,22が千鳥配置される場合、ベースプレート22はベースプレート21に対して桁方向に当該間隔だけずらして配置される。
横マーク150,151は、ベースプレート21の縦方向中央部(縦方向中央よりやや軒側)において、ベースプレート21の端から横方向に沿って略直線状にそれぞれ形成される。横マーク150はベースプレート21の左側端部に形成され、横マーク151はベースプレート21の右側端部に形成される。横マーク152は、横マーク151より左側であって、右側のベースプレート21が重ねられたときに隠れない位置に形成される。横マーク152は、例えば略T字状に形成され、当該マークの横方向に延びる部分が、上に重ねられるベースプレート21の左端に対応する位置に形成される。
横マーク150,151は、互いに略同一直線上に形成される。また、横マーク152の横方向に延びる部分も、横マーク150,151と略同一直線上に形成される。そして、ベースプレート21が野地板3上の正しい位置に配置されたときに、横マーク150,151,152と、桟木用墨170とが略同一直線上に位置する。なお、横マーク150,151,152は、ベースプレート21の縦方向端部に形成されてもよい。
縦マーク153は、ベースプレート21の横方向中央部(横方向中央よりやや左側)において、ベースプレート21の棟側の端から縦方向に沿って略直線状に形成される。縦マーク154は、ベースプレート21の横方向端部(右側端部)において、ベースプレート21の棟側の端から縦方向に沿って略直線状に形成される。縦マーク153は、上に重ねられる棟側のベースプレート22の左端に対応する位置に形成される。ベースプレート21に対して千鳥状に配置されるベースプレート22は、縦マーク153が縦墨171と一致するように配置される。また、縦マーク154は、上に重ねられるベースプレート21の左端に対応する位置に形成される。ベースプレート22の縦マーク153、及びベースプレート21の縦マーク154は、ベースプレート21,22が野地板3上の正しい位置に配置されたときに、それぞれ縦墨171と略同一直線上に位置する。
ベースプレート21は、上述の各マークに加えて、ベース金具用マーク160を有することが好適である。ベースプレート21上には、さらに、軒端ベース金具用マーク162も形成されている。ベース金具用マーク160は、ベースプレート21の棟側端部において左右両側に1つずつ形成される。軒端ベース金具用マーク162は、ベースプレート21の軒側端部において左右両側に1つずつ形成される。ベース金具用マーク160と軒端ベース金具用マーク162は、軒棟方向に並んで形成される。
ベースプレート21には、ベース金具30を野地板3に固定するためのネジ42が挿通される貫通孔161が形成されている。貫通孔161を設けることで、ネジ42の取り付けが容易になり施工性が向上する。ベースプレート21には、さらに、軒端ベース金具200用の貫通孔163も形成される。ベースプレート21に形成される上述の各マークは、例えばNC加工により形成されるため、マークを形成する際に貫通孔161,163を形成することができる。
太陽光発電装置10の取り付け及び屋根材2の敷設は、例えば下記の手順で行われる。(1)野地板3上に桟木用墨170及び縦墨171を形成する。
(2)桟木用墨170とベースプレート21の横マーク150,151が一致するように、かつ縦墨171が縦マーク154と一致するように、ベースプレート21を野地板3上に配置する。
(3)ベースプレート21上に両面テープで固定された浮き止め23,24,25をネジ止めする。
(4)野地板3に形成された桟木用墨170、縦墨171、及びベースプレート21に形成された各マークを用いて、屋根1の軒側の左から棟側の右に向かって順にベースプレート21を配置する。例えば、ベースプレート21aにベースプレート21bを重ねるときには、ベースプレート21aの横マーク152を用いて、ベースプレート21bの横マーク151が当該横マーク152と一致するように配置する。また、ベースプレート22cをベースプレート21に対して千鳥状に配置する場合は、ベースプレート22cの縦マーク153が縦墨171と一致するように当該パネルを配置する。
(5)ベースプレート21,22のベース金具用マーク160、軒端ベース金具用マーク162に合わせて、ベース金具30、軒端ベース金具200をそれぞれ配置し、貫通孔161,163にネジ42を挿通して各ベース金具を野地板3にネジ止めする。
(6)ベースプレート21,22上に設置した各ベース金具上に太陽電池モジュール11を固定して、太陽光発電装置10を構築する。
(7)桟木用墨170上に桟木8を設置する。
(8)桟木8に屋根材2を構成する第1屋根材4と第2屋根材90を引っ掛け、各屋根材を釘打ちして野地板3に固定することで、屋根材2を段葺きする。
図8〜図10は、太陽電池モジュール11Aの棟側端部及び太陽電池モジュール11Bの軒側端部の取り付け構造(中間部の取り付け構造)を示す図である。図8〜図10に例示するように、ベース金具30は、太陽電池モジュール11Aの棟側端部を支持する第1支持部34と、第1支持部34よりも高く形成され、太陽電池モジュール11Bの軒側端部を支持する第2支持部35とを含む。第1支持部34と第2支持部35によってベース金具30の軒棟方向に段差を設けることで、太陽電池モジュール11A,11Bを段葺き状に配置することが可能となる。
ベース金具30は、ベースプレート21に当接し、野地板3に固定される一対の脚部31と、各脚部31上に立設した第1支持部34及び第2支持部35をそれぞれ含む一対の立壁部32とを有する。さらに、ベース金具30は、各立壁部32を連結する連結部33を有する。
脚部31は、例えば軒棟方向に長い平坦な板状の部分であって、ベースプレート21上に密接した状態で配置される。各脚部31には、ネジ42が挿通される貫通孔41が形成されている。ネジ42には、例えばタッピンネジが用いられる。ネジ42は、貫通孔41及びベースプレート21の貫通孔161に挿通されて野地板3に固定される。これにより、ベース金具30は、野地板3との間にベースプレート21を介在させた状態で野地板3に直接固定される。
立壁部32は、脚部31に対して略垂直に形成されることが好適である。この場合、立壁部32が野地板3に対して略垂直に配置されるため、立壁部32にかかる太陽電池モジュール11A,11Bの荷重が野地板3に対して略垂直に伝わり、ベース金具30の耐荷重性が向上する。立壁部32は、高さが異なる2つの壁部(第1支持部34及び第2支持部35)を含む。第1支持部34には、太陽電池モジュール11Aの棟側端部に設置されたフレーム13Aが載せられ、第1支持部34はフレーム13Aを支持する。第2支持部35には太陽電池モジュール11Bの軒側端部に設置されたフレーム13Bが載せられ、第2支持部35はフレーム13Bを支持する。
第1支持部34と第2支持部35の高さの差は、第1支持部34に載せられるフレーム13Aの高さ以上であることが好ましい。この場合、太陽電池モジュール11A,11Bの段差が明確に形成され、段葺きされた屋根材2との一体感が高まる。より詳しくは、第2支持部35のフレーム13Bが載せられる部分の高さ(h35)が、第1支持部34のフレーム13Aが載せられる部分の高さ(h34)より、少なくともフレーム13Aの高さの分だけ高いことが好ましい(図9参照)。
高さ(h34)と高さ(h35)の差は、例えば第2屋根材90の前垂れ95の高さと略同一である。ここで、高さ(h34)とは、ベース金具30の下端から第1支持部34のフレーム13Aが載せられる部分の最も高い位置までの長さを意味する。高さ(h35)とは、ベース金具30の下端から第2支持部35のフレーム13Bが載せられる部分の最も高い位置までの長さを意味する。
第1支持部34は、フレーム13Aが嵌る凹部36を有する。凹部36の底にあたる部分には、複数の突起37が形成されている。フレーム13Aは凹部36に嵌め込まれ、突起37上に載せられる。突起37は、例えばフレーム13Aの底に当接し、太陽電池モジュール11Aからベースプレート21につながる導通経路を形成する。即ち、突起37はアース端子として機能する。また、第2支持部35のフレーム13Bが載せられる部分にも複数の突起38が形成されている。
連結部33は、各第2支持部35の上端部同士を連結する。連結部33は、一対の脚部31及び一対の立壁部32を有するベース金具30を一体化し、ベース金具30の耐荷重性、施工性を向上させる。また、連結部33は、押え金具50が締結される部分として機能する。本実施形態では、各第2支持部35の軒側部分の高さが、軒側端部に近づくほど次第に低くなっている。そして、連結部33は棟側から軒側に向かって下方に傾斜している。連結部33を傾斜させることで、例えば太陽電池モジュール11を取り外す必要が生じた場合に後述するボルト43の取り外しが容易になる。
取り付け器具20は、押え金具50をベース金具30に固定するボルト43を有する。押え金具50の第1押え金具51及び第2押え金具52には、ボルト43が挿通される貫通孔55,60がそれぞれ形成されている。また、連結部33にもボルト43が挿通される貫通孔が形成されている。連結部33の貫通孔は、バーリング加工により形成されることが好ましく、また施工性向上等の観点からボルト43を固定可能なネジ孔39であることが好ましい。
押え金具50は、上述の通り、ベース金具30に太陽電池モジュール11A,11Bを固定するための金具であって、太陽電池モジュール11Aのフレーム13A及び太陽電池モジュール11Bのフレーム13Bをそれぞれ押える。押え金具50は、カバー70と共に、太陽電池モジュール11A,11Bの間からベース金具30等が見えることを防止し、太陽光発電装置10の意匠性を高める役割も果たす。
押え金具50は、フレーム13Aの上端部を押える押え部54と、フレーム13Bの下部を押える押え部58とを有する。本実施形態では、押え部54を含む第1押え金具51と、押え部58を含む第2押え金具52とにより押え金具50が構成されている。第2押え金具52は、長さが第1押え金具51よりも短く、例えば1つの第1押え金具51に対して2つ設けられ、各ベース金具30にそれぞれ固定される。
第1押え金具51は、連結部33上に設置されるベース部53と、ベース部53の軒側端部から軒側に延出した押え部54とを有する。ボルト43が挿通される貫通孔55は、ベース部53に形成される。押え部54は、ベース部53が連結部33に固定された状態でフレーム13Aをベース金具30の第1支持部34に押え付ける。第1押え金具51は、ベース部53の棟側端部から下方に延出し、フレーム13aの外側に張り出した鉤部15Aに引っ掛かる断面略L字状の鉤部61を有する。
第2押え金具52は、連結部33との間に第1押え金具51を介在させた状態で連結部33上に配置されるベース部57と、ベース部57の棟側端部から棟側に延出した押え部58とを有する。ボルト43が挿通される貫通孔60は、ベース部57に形成される。押え部58は、フレーム13Bの外溝18Bに挿し込まれ、ベース部57が連結部33に固定された状態でフレーム13Bの底板をベース金具30の第2支持部35に押え付ける。
第2押え金具52は、ベース部57の棟側端部から上方に延出した断面略T字状のレール部59を有する。レール部59には、カバー70を構成するジョイント金具80の爪部82が引っ掛けられて係合する。カバー70は、爪部82がレール部59に係合した状態で桁方向にスライド可能である。カバー70は、第2押え金具52を介してベース金具30に固定される。
カバー70は、カバー本体71と、カバー本体71の裏側に設けられたジョイント金具80とを有する。カバー本体71は、例えば屋根材2の前垂れ95を模擬した外観形状を呈するベース部72と、ベース部72の棟側端部から下方に延出した断面略L字状の鉤部73とを含む。カバー本体71は、第1押え金具51と略同一の長さを有する長尺状の部材であることが好ましい。他方、ジョイント金具80は、長さがカバー本体71よりも短く、1つのカバー本体71に対して2つ設けられ、各第2押え金具52にそれぞれ固定されることが好ましい。
ベース部72は、フレーム13Bの上端部と略同じ高さからフレーム13Aに当接する押え部54の近傍に亘って設けられることが好適である。ベース部72は、棟側端部からベース金具30の連結部33と略同じ角度で下方に向かって傾斜し、途中で折れ曲がって押え部54の近傍まで略真っ直ぐに延びた断面略L字形状を有する。鉤部73は、ジョイント金具80の後述する鉤部83と係合する。鉤部73は、例えばフレーム13Bの上端部から鉤部15Bを超えて下方に延び、先端部の近傍で棟側に折れ曲がっている。
ジョイント金具80は、断面略L字状のベース部81と、ベース部81の棟側端部に設けられた鉤部83とを有する。ベース部81は、棟側部分が軒棟方向に延び、軒側部分がカバー本体71のベース部72の裏面に沿って下方に延びている。鉤部83は、ベース部81の棟側端部から上方に突出している。鉤部83は、ベース部81との間にカバー本体71の鉤部73の先端部を挿入可能な隙間をあけて断面略L字状に形成されている。カバー本体71とジョイント金具80は、鉤部73,83によって互いに係合され、さらにネジ84を用いて互いに固定されることが好適である。
ジョイント金具80は、ベース部81の棟側端部に設けられた一対の爪部82を有する。爪部82は、ベース部81の棟側端部から下方に突出し、ベース部81との間にレール部59を挿通可能な隙間をあけて断面略L字状に形成されている。カバー70は、第2押え金具52の長手方向端部(桁方向端部)からレール部59をベース部81と爪部82の間に挿通させることで第2押え金具52に取り付けることができる。
以上のように、太陽光発電装置10が取り付けられ、その周囲に屋根材2が敷設された屋根1は、屋根材2と太陽光発電装置10との一体感があり、意匠性に優れている。太陽光発電装置10は、上述の通り、屋根材2の段葺き形状に合わせて太陽電池モジュール11が段葺き状(階段状)に配置された構造を有する。そして、屋根材2と太陽光発電装置10の軒棟方向ピッチが略一致し、段差の位置が揃っているため、屋根材2と太陽光発電装置10との高い一体感が得られる。また、屋根材2は第1屋根材4と第2屋根材90とで構成されるため、取り扱いが容易であり施工性が良い。