[第1実施形態]
先ず、第1実施形態に係る床制振構造について説明する。
図1に示されるように、第1実施形態に係る床制振構造10は、コンクリートスラブ12と、制振装置30とを備えている。コンクリートスラブ12は、例えば、鉄筋コンクリート造とされる。
また、コンクリートスラブ12には、二重床構造が適用されている。このコンクリートスラブ12の上面(以下、「スラブ上面」という)12Uには、複数の支柱14を介して床材(床パネル)16が敷設されている。また、コンクリートスラブ12と床材16との間には、設備空間18が形成されている。設備空間18には、例えば、配線や配管等の設備が収容される。
コンクリートスラブ12の下面(以下、「スラブ下面」という)12Lには、天井材(天井パネル及びクロス材)20が重ねられた状態で取り付けられている。つまり、スラブ下面12Lには、天井材20が直張りされている。
制振装置30は、コンクリートスラブ12の振動、特に上下方向の振動を低減する動吸振器(TMD:Tuned Mass Damper)とされている。この制振装置30によって、例えば、重量床衝撃音が低減される。
制振装置30は、筐体32と、錘40と、弾性体54とを有している。筐体32は、筐体本体部34と、ネック部36とを有している。筐体本体部34は、金属板等によって箱状に形成されている。また、筐体本体部34の内部には、収容室Rが形成されている。この筐体本体部34をコンクリートスラブ12に埋設することにより、コンクリートスラブ12の内部に収容室Rが形成されている。
ネック部(通路部)36は、筒状に形成されており、筐体本体部34の上壁部34Uの中央部から上方へ突出している。ネック部36の内部には、収容室Rに通じる通路が形成されている。また、ネック部36の上端には、露出口38が形成されている。このネック部36は、コンクリートスラブ12の上部に埋設されている。これにより、ネック部36によってスラブ上面12Uに、収容室Rに通じる露出口38が形成されている。
錘40は、吊り部42と、錘本体部50とを有している。吊り部42は、ベース部材44と、吊りロッド46と、ナット48とを有している。ベース部材44は、例えば、金属板等によって円盤状に形成される。このベース部材44は、設備空間18に配置されており、後述する弾性体54を介してスラブ上面12Uに支持されている。
吊りロッド46は、金属等によって棒状に形成されている。この吊りロッド46は、上下方向を軸方向(長手方向)として配置されており、ベース部材44の中央部に形成された図示しない貫通孔に挿入されている。また、吊りロッド46の上部46Uには、雄ネジ部が設けられており、この雄ネジ部にナット48が取り付けられている。そして、ナット48がベース部材44と係合することにより、吊りロッド46がベース部材44に支持されている。
吊りロッド46は、ベース部材44から下方へ延出し、スラブ上面12Uに形成された露出口38に挿入されている。この吊りロッド46は、ネック部36の内壁面と非接触状態でネック部36内に配置されている。また、吊りロッド46の先端部(下端部)は、収容室Rに達している。この吊りロッド46の先端部には、錘本体部50が設けられている。
なお、本実施形態では、吊りロッド46とネック部36の内壁面との間に緩衝材(絶縁材)52が設けられている。緩衝材52は、後述する弾性体54と同様の材料によって形成されている。この緩衝材52は、吊りロッド46の上下方向の揺動を補助(許容)する一方で、吊りロッド46の横方向の揺動を抑制している。なお、緩衝材52は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
錘本体部50は、錘40の半分以上の重量を占める部材とされており、例えば、金属等によってブロック状に形成されている。この錘本体部50は、吊りロッド46に吊り下げられた状態で、収容室Rに収容されている。つまり、本実施形態では、錘40の一部(錘本体部50)が収容室Rに収容されている。一方、吊りロッド46の上部46U、ベース部材44、ナット48、及び弾性体54は、露出口38を介してスラブ上面12Uに露出している。
錘本体部50は、収容室Rの内壁面と非接触状態で当該収容室Rに収容されている。より具体的には、錘本体部50と収容室Rの内壁面との間には、隙間Gが形成されている。この隙間Gによって、錘本体部50の上下方向及び横方向の揺動に伴う錘本体部50と収容室Rの内壁面との接触が抑制される。
弾性体54は、例えば、弾性を有する発泡ウレタン等によってブロック状又はシート状に形成される。また、弾性体54は、収容室Rよりも上方のスラブ上面12Uに、上下方向に伸縮可能に設置されている。この弾性体54の上に、ベース部材44が載置されている。そして、ベース部材44及び吊りロッド46を介して、錘本体部50が弾性体54に支持されている。換言すると、錘40は、弾性体54を介してスラブ上面12Uに上下方向に揺動可能に支持されている。これにより、弾性体54をバネとし、錘40をマスとしたバネマスの振動系(1質点)が構成されている。
なお、弾性体54は、粘弾性体によって形成されても良い。また、弾性体54は、高分子材料(ナノコンポジットゲル、ハイドロゲル)、エラストマー(天然、合成、ウレタン、シリコン、フッ素ゴム)、アスファルト系材料等によって形成されても良い。
このように構成された制振装置30の固有振動数は、錘40の質量や弾性体54のバネ定数によって、コンクリートスラブ12と共振するように適宜設定されている。
次に、制振装置の設置方法の一例について説明する。
先ず、コンクリートスラブ12用の図示しない底型枠上にスペーサを介して、制振装置30の筐体32を設置する。なお、筐体32の収容室Rには、錘本体部50及び吊りロッド46を予め収容しておく。次に、筐体32の周囲にスラブ筋等を適宜配筋した後、ネック部36の上端までコンクリートを打設し、コンクリートスラブ12を形成する。なお、ネック部36の露出口38には、コンクリートが流れ込まないように、図示しない蓋部材を設けても良い。
次に、コンクリートスラブ12のスラブ上面12Uに、弾性体54を介してベース部材44を設置する。この際、ベース部材44の中央部に形成された貫通孔に、ネック部36の露出口38から上方へ突出する吊りロッド46の上部46Uを挿入する。次に、吊りロッド46の上部46Uにナット48を締め込み、吊りロッド46を上方へ移動させることにより、錘本体部50を吊り上げる。これにより、錘本体部50が、吊りロッド46及びベース部材44を介して弾性体54に支持される。
その後、必要に応じて、弾性体54を交換する。若しくは、吊りロッド46やベース部材44を、例えば、径や板厚が異なるものに交換したり、吊りロッド46の上部46Uやベース部材44に図示しない調整用錘(例えば、鉄やコンクリート)を付加したりして錘40の質量を調整する。これにより、錘40とコンクリートスラブ12とが共振するように、制振装置30の固有振動数を調整する。この際、例えば、吊りロッド46の上部46Uやベース部材44に、錘40の振動を検出する加速度センサ等の振動センサを設置しても良い。これにより、制振装置30の固有振動数の調整が容易となる。
次に、第1実施形態の作用について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る制振装置30によれば、錘40は、弾性体54を介してスラブ上面12Uに支持されている。これにより、例えば、人の歩行等に伴ってコンクリートスラブ12が上下方向に振動すると、錘40が上下方向に揺動(振動)し、動吸効果を発揮する。したがって、コンクリートスラブ12の振動が低減される。また、コンクリートスラブ12の振動が低減される結果、重量床衝撃音等が低減される。
ここで、錘40は、吊り部42及び錘本体部50を有している。錘本体部50は、吊り部42に吊り下げられた状態で、収容室Rに収容されている。つまり、錘40は、その一部がコンクリートスラブ12内の収容室Rに収容されている。これにより、本実施形態では、錘本体部50をコンクリートスラブ12の上方に設置する場合と比較して、コンクリートスラブ12の上方に確保する制振装置30の設置スペースが低減される。
また、吊りロッド46の上部46U、ベース部材44、ナット48、及び弾性体54は、露出口38からスラブ上面12Uに露出し、設備空間18に配置されている。これにより、コンクリートスラブ12の施工後に、弾性体54を交換したり、ベース部材44や吊りロッド46の上部46Uに調整用錘を付加したりすることにより、制振装置30の固有振動数を調整することができる。
このように本実施形態では、コンクリートスラブ12の上方に確保する制振装置30の設置スペースを低減しつつ、コンクリートスラブ12の施工後においても制振装置30の固有振動数を調整することができる。
また、吊り部42は、収容室Rよりも上方で、弾性体54を介してスラブ上面12Uに支持されている。また、錘本体部50は、吊り部42に吊り下げられた状態で、収容室Rに収容されている。これにより、収容室Rに錘本体部50を収容しつつ、スラブ上面12Uに形成された露出口38から、吊り部42の一部及び弾性体54を露出させることができる。したがって、前述したようにコンクリートスラブ12の施工後においても、弾性体54の交換等が可能になるため、制振装置30の固有振動数を調整することができる。
さらに、前述したように、例えば、吊りロッド46の上部46Uやベース部材44に、加速度センサ等の振動センサを設置することにより、制振装置30の振動を検出することができる。したがって、制振装置30の固有振動数の調整が容易となる。
また、吊りロッド46とネック部36の内壁面との間には、緩衝材52が設けられている。この緩衝材52によって、吊りロッド46の横方向の揺動が抑制される。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には、同符号を付して説明を適宜省略する。
図2に示されるように、第2実施形態に係る床制振構造60では、コンクリートスラブ12の上部に調整室Cが形成されている。調整室Cは、例えば、コンクリートスラブ12の上部に型枠62を埋設することにより形成されている。この調整室Cは、収容室Rの上方に配置されており、ネック部36を介して収容室Rと接続されている。
調整室Cには、ベース部材44が収容されている。ベース部材44は、弾性体54を介して調整室Cの下壁部(床部)62Lに支持されている。このベース部材44には、ネック部36から上方へ延出する吊りロッド46の上部46Uがナット48で取り付けられている。
ここで、調整室Cの上端には、露出口64が形成されている。これにより、スラブ上面12Uに、吊りロッド46の上部46U、ベース部材44、ナット48、及び弾性体54を露出させる露出口64が形成されている。なお、調整室Cは、スラブ上面12Uに形成され、吊りロッド46の上部46U等を収容する凹部と捉えることも可能である。
また、スラブ上面12Uには、床材16が重ねられた状態で取り付けられている。つまり、床材16は、スラブ上面12Uに直張りされている。また、調整室Cには、床材16を支持する支持台66が収容されている。この支持台66によって、床材16の撓み等が抑制されている。なお、支持台66は、省略可能である。
次に、第2実施形態の作用について説明する。
図2に示されるように、第2実施形態に係る床制振構造60によれば、コンクリートスラブ12の上部に調整室Cが形成されている。この調整室Cには、吊りロッド46の上部46U、ベース部材44、ナット48、及び弾性体54が収容されている。これにより、吊りロッド46の上部46U等が、スラブ上面12Uから上方へ突出しないため、コンクリートスラブ12の上方に確保する制振装置30の設置スペースを低減することができる。
また、調整室Cによって、スラブ上面12Uに露出口64が形成されている。この露出口64から、吊りロッド46の上部46U等が露出可能とされている。したがって、第1実施形態と同様に、コンクリートスラブ12の施工後においても、制振装置30の固有振動数を調整することができる。また、床材16の施工後においても、調整室C上の床材16を撤去することにより、吊りロッド46の上部46U等を露出させ、制振装置30の固有振動数を調整することができる。
さらに、吊りロッド46の上部46U等は、スラブ上面12Uから上方へ突出しない。そのため、スラブ上面12Uに床材16を直張りすることができる。これにより、本実施形態では、二重床構造と比較して、床材16上の居住空間等を広げることができる。
さらに、調整室Cには、床材16を支持する支持台66が設けられている。これにより、スラブ上面12Uに露出口64を形成しつつ、床材16の撓み等を抑制することができる。
なお、図3に示されるように、制振装置30は、プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材)68の内部に設けられても良い。具体的には、プレキャスト部材68は、収容室R及び調整室Cを有している。この収容室Rと調整室Cとの間の隔壁部68Aには、吊りロッド46の上部46Uが挿入される貫通孔(ネック部)69が形成されている。このプレキャスト部材68は、ハーフプレキャスト床版70の上に載置されている。
また、プレキャスト部材68には、複数の連結筋72が適宜設けられている。これらの連結筋72を介して、プレキャスト部材68とその周囲に打設されたコンクリート(現場打ちコンクリート)74とが一体化されている。これにより、コンクリートスラブ12が形成されている。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態等と同様等の構成には、同符号を付して説明を適宜省略する。
図4に示されるように、第3実施形態に係る床制振構造80の制振装置82は、錘84と、調整機構98とを有している。錘84は、錘本体部50と、調整用ロッド90と、保持部材92と、ナット94とを有している。
錘本体部50は、弾性体54を介して筐体本体部34(収容室R)の下壁部34Lに支持されている。また、筐体本体部34の下壁部34Lには、筐体32を構成するネック部86が設けられている。ネック部86は、筐体本体部34の下壁部34Lからが下方へ突出している。また、ネック部86の下端には、露出口88が形成されている。このネック部86をコンクリートスラブ12の下部に埋設することにより、スラブ下面12Lに露出口88が形成されている。
なお、スラブ下面12Lは、複数の吊りボルト22を介して天井材20が取り付けられている。このコンクリートスラブ12と天井材20との間には、天井裏24が形成されている。天井裏24には、例えば、配線や配管等の設備が収容される。
錘本体部50の下面には、調整用ロッド90が設けられている。調整用ロッド90は、錘本体部50から下方へ延出し、ネック部86に挿入されている。この調整用ロッド90の下部90Lは、露出口88を介して天井裏24に配置されている。
調整用ロッド90の下部90Lは、保持部材92の中央部に形成された図示しない貫通孔に挿入されている。保持部材92は、例えば、金属板等によって円盤状に形成されている。また、調整用ロッド90の下部90Lには、雄ネジ部が設けられており、この雄ネジ部にナット94が取り付けられている。このナット94によって、保持部材92が下側から支持されている。
また、保持部材92とスラブ下面12Lとの間には、弾性体96が設けられている。この弾性体96は、収容室R内の弾性体54と共に、錘84を上下方向に揺動可能に支持している。なお、弾性体96は、例えば、弾性体54と同様の材料によって形成される。
ここで、調整用ロッド90の下部90L、保持部材92、ナット94、及び弾性体96は、露出口88を介してスラブ下面12Lに露出し、天井裏24に配置されている。また、本実施形態では、調整用ロッド90、保持部材92、ナット94、及び弾性体54,96によって、調整機構98が構成されている。
具体的には、調整用ロッド90の下部90Lにナット94を締め込むことにより、コンクリートスラブ12に対して調整用ロッド90が下方へ移動する。これにより、錘本体部50と筐体本体部34の下壁部34Lとの間で弾性体54が圧縮されるとともに、スラブ下面12Lと保持部材92との間で弾性体96が圧縮される。一方、調整用ロッド90の下部90Lのナット94を緩めることにより、弾性体54,96が復元する。この弾性体54,96の圧縮及び復元によって、制振装置82の固有振動数が調整される。
次に、第3実施形態の作用について説明する。
図4に示されるように、本実施形態に係る制振装置82によれば、錘84は、錘本体部50と、調整用ロッド90と、保持部材92と、ナット94とを有している。この錘本体部50は、コンクリートスラブ12内の収容室Rに収容されている。これにより、本実施形態では、錘本体部50をコンクリートスラブ12の下方に設置する場合と比較して、コンクリートスラブ12の下方に確保する制振装置82の設置スペースを低減することができる。
また、スラブ下面12Lには、露出口88が形成されている。この露出口88を介して、調整用ロッド90の下部90L、保持部材92、ナット94、及び弾性体96がスラブ下面12Lに露出し、天井裏24に配置されている。これにより、コンクリートスラブ12の施工後に、弾性体96を交換したり、調整用ロッド90や保持部材92に調整用錘を付加したりすることで、制振装置82の固有振動数を調整することができる。
さらに、本実施形態では、調整用ロッド90、保持部材92、ナット94、及び弾性体54,96によって調整機構98が構成されている。これにより、調整用ロッド90に対してナット94を締めたり、緩めたりすることにより、制振装置82の固有振動数を増減することができる。したがって、制振装置82の固有振動数の調整が容易となる。
なお、図5に示されるように、収容室Rの下方には、露出口99を有する調整室Cを形成しても良い。これにより、スラブ下面12Lに形成された露出口99から調整機構98を露出させることができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態において、第1実施形態等と同様の構成には、同符号を付して説明を適宜省略する。
図6及び図7に示されるように、第4実施形態に係る床制振構造100は、制振装置102を有している。制振装置102は、筐体104と、錘40と、弾性体54,122とを有している。
筐体104は、筐体本体部106と、蓋部110とを有している。筐体本体部106は、金属板等によって、上方が開口された箱状に形成されている。この筐体本体部106の内部には、収容室Rが形成されている。また、筐体本体部106の上端には、収容口108が形成されている。この収容口108は、蓋部110によって開閉可能とされている。
筐体本体部106の上端には、蓋部110がビス116で取り付けられるフランジ部106Aが形成されている。また、筐体本体部106は、複数のスペーサ109によって支持されている。なお、本実施形態では、フランジ部106Aが、筐体本体部106の上端から筐体本体部106の内側へ延出しているが、フランジ部は、筐体本体部106の上端から筐体本体部106の外側へ延出させても良い。この際、フランジ部に取り付けられるビス116がコンクリートスラブ12に干渉する場合には、フランジ部の下側にスポンジ等の保護材(スペーサ)を配置しても良い。
蓋部110は、金属板等によって形成されている。この蓋部110は、調整室Cを形成する凹部112と、凹部112の外周部から外側へ張り出し、筐体本体部106のフランジ部106Aにビス116で固定されるフランジ部114とを有している。凹部112の上端には、露出口118が形成されている。また、凹部112(調整室C)の底壁部112Lには、貫通孔120が形成されている。貫通孔120には、吊りロッド46の上部46Uが挿入される。
弾性体122は、錘本体部50の上面に配置されている。この弾性体122は、調整室C内の弾性体54と共に、錘40を上下方向に揺動可能に支持している。また、本実施形態では、吊り部42及び弾性体54,122によって、調整機構124が構成されている。
次に、制振装置の設置方法の一例について説明する。
図8(A)に示されるように、先ず、コンクリートスラブ12の底型枠128の上に、複数のスペーサ109を介して制振装置102の筐体本体部106を設置する。次に、筐体本体部106内の収容室Rに、吊りロッド46が設けられた錘本体部50を収容する。
次に、図8(A)及び図8(B)に示されるように、筐体本体部106の周囲にスラブ筋26を適宜配筋する。次に、筐体本体部106の周囲に、コンクリートを打設してコンクリートスラブ12を形成する。なお、筐体本体部106の外面には、コンクリートスラブ12との一体性を高めるアンカー部材等を適宜設けても良い。
次に、図9に示されるように、錘本体部50の上面に弾性体122を設置するとともに、筐体本体部106の収容口108を蓋部110によって塞ぐ。次に、調整室Cの底壁部112Lに、弾性体54を介してベース部材44を設置する。次に、吊りロッド46の上部46Uにナット48を締め込む。これにより、ベース部材44に対して吊りロッド46が上方へ移動し、錘本体部50が吊り下げられた状態で蓋部110に支持される。
なお、吊りロッド46の上部46Uにナット48を締め込む際に、ナット48と共に吊りロッド46及び錘本体部50が回転(共回り)する可能性がある。この対策として本実施形態では、蓋部110のフランジ部114の取付孔から回転拘束部材126を挿入し、錘本体部50の回転を拘束した状態で、吊りロッド46の上部46Uにナット48を締め込む。その後、回転拘束部材126を撤去し、筐体本体部106のフランジ部106Aに蓋部110のフランジ部114をビス116で固定する。
次に、調整機構124のナット48の締め込み量を増減したり、弾性体54を交換したりすることにより、制振装置102の固有振動数を調整する。次に、図6に示されるように、調整室Cの支持台66を設置する。次に、スラブ上面12Uに床材16を敷設する。
次に、第4実施形態の作用について説明する。
図6に示されるように、本実施形態に係る制振装置102によれば、筐体104は、筐体本体部106と、蓋部110とを有している。この筐体104をコンクリートスラブ12に埋設することにより、コンクリートスラブ12の内部に、錘本体部50を収容する収容室Rを容易に形成することができる。
また、蓋部110には、吊りロッド46の上部46U、ベース部材44、ナット48、及び弾性体54を収容する調整室Cが形成されている。これにより、第2実施形態(図2参照)と同様の効果を得ることができる。
さらに、吊りロッド46の上部46U、ベース部材44、ナット48、及び弾性体54,122によって調整機構124が構成されている。これにより、第3実施形態と同様に、制振装置102の固有振動数を容易に調整することができる。
[変形例]
次に、第4実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、蓋部110の凹部112内に調整室Cを形成したが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、図10に示される変形例では、平板状の蓋部130の上面に、筒状部132が設けられている。この筒状部132の内部に、調整室Cが形成されている。
また、例えば、図11及び図12に示される変形例では、筒状部132の下部に充填コンクリート(プレキャストコンクリート)134が予め充填されている。充填コンクリート134の中央部には貫通孔136が形成されており、この貫通孔136に吊りロッド46の上部46Uが挿入されている。
また、筒状部132には、複数の連結筋138が適宜設けられている。これらの連結筋138を介して、筒状部132とその周囲に打設されたコンクリート(現場打ちコンクリート)140とが一体化されている。
次に、図13に示される変形例では、制振装置141は、弾性体としての板バネ142を有している。具体的には、吊りロッド46の両側には、一対の板バネ142が配置されている。各板バネ142は、板状に形成されており、蓋部144に片持ちで支持されている。なお、各板バネ142は、ビス146で蓋部144に固定されている。また、蓋部144は、筐体本体部106に溶接等で固定されている。
一対の板バネ142には、ナット48及び吊りロッド46を介して錘本体部50が吊り下げられた状態で支持されている。これにより、コンクリートスラブ12が振動すると、一対の板バネ142が弾性変形(矢印K)し、錘本体部50が振動する。この振動に伴って錘本体部50が動吸効果を発揮することにより、コンクリートスラブ12の振動が低減される。
なお、制振装置141の固有振動数を調整する場合は、板バネ142を板厚の異なる板バネに交換したり、板バネ142にスリットを形成したりすることで、板バネ142のバネ定数を増減する。また、板バネ142に調整用錘を付加したり、板バネ142に図示しない補剛板を貼付したりしても良い。さらに、板バネ142に粘弾性体等を貼付することにより、板バネ142に減衰を付与することも可能である。
次に、図14に示される変形例では、コンクリートスラブ12に制振装置150が埋設されている。制振装置150は、図6に示される制振装置102を上下反転させたものに相当する。この制振装置150では、調整機構98を露出させる露出口118がスラブ下面12Lに形成されている。これにより、スラブ下面12L側から調整機構98を操作し、制振装置102の固有振動数を調整することができる。なお、制振装置150の調整機構98は、図4に示される調整機構98と同様の構成となる。
次に、図15に示される変形例では、ハーフプレキャスト床版70上に制振装置150が設置されている。このハーフプレキャスト床版70には、調整室Cの露出口118に通じる操作用貫通孔152が形成されている。これにより、スラブ下面12L側から操作用貫通孔152を介して調整機構98を操作し、制振装置150の固有振動数を調整することができる。
次に、図16(A)及び図16(B)に示される変形例では、筐体104の筐体本体部106の上に箱状のスペーサ型枠154を載置した状態で、筐体本体部106の周囲にコンクリート(現場打ちコンクリート)し、コンクリートスラブ12を形成する。その後、スペーサ型枠154を撤去することにより、筐体本体部106の上方に調整室Cを形成している。このようにスペーサ型枠154を用いることにより、コンクリートスラブ12に収容室Rを容易に形成することができる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。なお、第5実施形態において、第1実施形態等と同様の構成には、同符号を付して説明を適宜省略する。
図17(A)に示されるように、第5実施形態に係る床制振構造160は、制振装置162を有している。制振装置162は、錘164と、弾性体としての被覆弾性体170とを有し、コンクリートスラブ12に埋設されている。
錘164は、例えば、金属等によってブロック状に形成されている。また、錘164の表面は、全面に亘って被覆弾性体170で被覆されている。被覆弾性体170は、例えば、発泡ウレタン等によって形成されている。この被覆弾性体170は、錘164の上面を被覆する上面被覆部170Uと、錘164の下面を被覆する下面被覆部170Lと、錘164の側面を被覆する側面被覆部170Sとを有している。
上面被覆部170U及び下面被覆部170Lは、錘164を上下方向に揺動可能に支持している。一方、側面被覆部170Sは、錘164と収容室Rの内壁面との干渉を抑制する緩衝材として機能する。
ここで、錘164及び被覆弾性体170は、コンクリートスラブ12の底型枠上に図示しないスペーサを介して設置される。この状態で、錘164及び被覆弾性体170の周囲にコンクリート(現場打ちコンクリート)を打設することにより、コンクリートスラブ12に錘164及び被覆弾性体170が埋設されている。この結果、コンクリートスラブ12の内部に、錘164及び被覆弾性体170を収容する収容室Rが形成されている。つまり、本実施形態では、錘164全体が、コンクリートスラブ12内の収容室Rに収容されている。
次に、第5実施形態の作用について説明する。
図17(A)に示されるように、本実施形態に係る制振装置162によれば、錘164は、被覆弾性体170の上面被覆部170U及び下面被覆部170Lを介してコンクリートスラブ12に支持されている。これにより、例えば、コンクリートスラブ12が上下方向に振動すると、錘164が上下方向に揺動(振動)し、動吸効果を発揮する。したがって、コンクリートスラブ12の振動が低減される。また、コンクリートスラブ12の振動が低減される結果、重量床衝撃音等が低減される。
また、本実施形態では、錘164全体が、コンクリートスラブ12内の収容室Rに収容されている。これにより、コンクリートスラブ12の上方又は下方に確保する制振装置162の設置スペースを低減することができる。
さらに、本実施形態では、被覆弾性体170によって表面が被覆された錘164の周囲にコンクリートを打設することにより、コンクリートスラブ12に錘164及び被覆弾性体170が埋設される。したがって、コンクリートスラブ12の内部に錘164及び被覆弾性体170を容易に設置することができる。
なお、図17(B)に示される変形例のように、錘164の表面は、弾性体としての被覆弾性体172と、緩衝材174とによって被覆することも可能である。
[補足]
次に、制振装置の設置位置について補足する。
図18には、コンクリートスラブ12の平面図が示されている。また、図18には、コンクリートスラブ12の3次モード及び4次モードの振動波形を示すグラフG3,G4が示されている。なお、コンクリートスラブ12の周囲には、4本の柱180が立てられている。
グラフG3,G4から分かるように、制振装置30は、コンクリートスラブ12の振動の腹P又はその周辺部に設置することで、コンクリートスラブ12の振動を効率的に低減することができる。
また、コンクリートスラブ12の長手方向の全長をLとした場合、3次モード及び4次モードの振動の腹Pは、コンクリートスラブ12の長手方向の端部12Eから略(1/6)Lの辺りに位置する。したがって、コンクリートスラブ12の端部12Eから(1/6)Lの辺りに制振装置30を設置することにより、コンクリートスラブ12の3次モード及び4次モードの振動を効率的に低減することができる。
ここで、重量床衝撃音は、例えば、63Hz帯域(45〜90Hz)で性能を確保することが難しい。このような重量床衝撃音は、一般的な板状集合住宅(スパン6〜8m×10〜13m、スラブ厚150〜250mm)では、上記3次モード及び4次モードの振動に相当する。したがって、上記のように、コンクリートスラブ12の端部12Eから(1/6)Lの辺りに制振装置30を設置することにより、重量床衝撃音も効率的に低減することができる。
次に、上記第1〜第5実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、第1実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、第2〜第4実施形態にも適宜適用可能である。
上記第1実施形態では、スラブ上面12Uに露出口38が形成されるが、これに限らない。露出口は、スラブ上面12U及びスラブ下面12Lの少なくとも一方に形成することができる。したがって、例えば、スラブ下面12Lに露出口を形成し、当該スラブ下面12Lから錘本体部50を露出させても良い。この場合、例えば、錘本体部50に調整用錘等を付加することにより、制振装置30の固有振動数を調整することができる。
また、制振装置30の設置方法、及びコンクリートスラブ12の施工方法は、適宜変更可能である。
また、制振装置30は、ボイドスラブの中空部(収容室)に設置することも可能である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。