JP6828857B2 - 車両の操舵に用いられるアクチュエータ制御装置 - Google Patents
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Description
また、上記特許文献2のアクチュエータ制御装置は、運転者が閾値A以上かつ閾値B未満の操舵トルクで保舵した場合には、角度偏差に応じた積分制御により第2アシスト成分Ta2*を生成するため、時間の経過とともに増大する操舵反力により運転者の操舵感に変化が発生して運転者に違和感を与えるおそれがあった。
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、運転者の操舵操作により生じた自動操舵制御に起因する運転者の操舵感の変化を抑制することを目的とする。
また例えば、目標値制御部は、実際の状態量と目標値との差分に基づき状態量の目標変化速度を演算する目標変化速度演算部と、実際の状態量の変化速度と目標変化速度との偏差を積分して第1積分値を演算し、第1積分値に応じた積分制御によりアクチュエータを制御する積分制御部と、を備えてもよい。
なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構成、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
第1及び第2実施形態の電動パワーステアリング装置の構成例を図1に示す。操向ハンドル1の操舵軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速機構を構成する減速ギア(ウォームギア)3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a、6bを経て、更にハブユニット7a、7bを介して操向車輪8L、8Rに連結されている。
操舵軸2には操舵トルクThを検出するトルクセンサ10が設けられている。また、操舵軸2には、操向ハンドル1の操舵角θを検出する操舵角センサ14が設けられている。
なお、操舵補助力を付与する手段は、モータに限られず、様々な種類のアクチュエータを利用可能である。
なお、操舵角センサ14は必須のものではなく、操舵補助モータ20に連結されたレゾルバ等の回転角センサから操舵角θを取得してもよい。
記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明するEPS−ECU30の機能は、例えばEPS−ECU30のプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
例えば、EPS−ECU30は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばEPS−ECU30はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
指令値演算部31は、走行制御ECU37により設定された目標操舵角θrと、操舵角θと、操舵トルクThと、車速Vhに基づいて、操舵補助モータ20の駆動電流の制御目標値である電流指令値Irefを演算する。
状態検出部36は、車両の周囲環境を検出する測距装置やカメラ、並びに車両の走行状態を検出する角速度センサや加速度センサ等を含んでよい。
指令値演算部31が演算した電流指令値Irefは減算器32に入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差(Iref−Im)が演算され、その偏差(Iref−Im)が操舵動作の特性改善のためのPI制御部33に入力される。
また、指令値演算部31は、目標操舵角θrに実操舵角θを近付けるように操舵補助モータ20を制御する第2補助制御値C2を演算する。
さらに、指令値演算部31は、第1補助制御値C1と第2補助制御値C2との和を電流指令値Irefとして算出する加算器48を備え、第1補助制御値C1及び第2補助制御値C2の少なくとも一方に基づいて電流指令値Irefを演算する。
また、運転者の保舵により偏差Δθが維持されると、偏差Δθの積算が続くことにより第2補助制御値C2が増加し、時間の経過とともに操舵反力が増加して違和感を与えることになる。
しかしながら、操作状態量の増大により積算を停止した後に、操作状態量が減少して積算停止が解除されると、その時点の偏差Δθが積算されることで第2補助制御値C2が急変し、急な操舵制御により運転者が操向ハンドルを取られるおそれがある。
操作状態量に応じた値の積分値に応じて偏差Δθの積分値の増加を抑制することにより、運転者による操作状態量が大きく運転者の操舵意思の強い場合に、運転者の操舵方向と反対方向の第2補助制御値C2の変化が抑制されるので、運転者の操舵感の変化を抑制できる。
また、操作状態量が減って第1積分値の増加抑制を解除する際にも、操作状態量に応じた値の積分値は操作状態量それ自体よりも緩慢に変化するため、第2補助制御値C2の急変を防止できる。
積分抑制変数演算部42は、操舵トルクThに応じて変化する値を積分することにより、積分器46による偏差Δθの積分値の増加を抑制するための積分抑制変数を演算する。
入力制限値Liは、積分器46に入力される偏差Δθに対する上限値及び下限値であり、積分器46に入力する偏差Δθの大きさを制限する。このため、入力制限値Liが小さいほど積分値の増加が抑制され、入力制限値Liが大きいほど積分値の増加抑制が緩和される。
絶対値算出部50は、操舵トルクThの絶対値|Th|を算出して、入力制限値変更量設定部51と漸減ゲイン変更量設定部54へ入力する。
入力制限値変更量ΔLiは、加算器52に入力される。加算器52は、過去値保持部53を通じて直前周期(一周期前)に保持された入力制限値Liと入力制限値変更量ΔLiとを加算することにより入力制限値変更量ΔLiを積分し、積分結果を入力制限値Liとして算出する。
操舵トルクの絶対値|Th|が閾値Th1未満の範囲では入力制限値変更量ΔLiは正値となり閾値Th1以上の範囲では負値となる。
これにより、操舵トルクの絶対値|Th|が閾値Th1未満の場合(|Th|が比較的小さい場合)には入力制限値Liが増加して、積分器46による偏差Δθの積分値の増加抑制が緩和される。
閾値Th1は、運転者の操舵意思がないと判断される操舵トルク(例えば、操向ハンドル1に単に手を添えているときに加わる操舵トルク)より大きな値に設定してよい。これにより、第2補助制御値C2が過度に抑制されることを防止できる。
例えば、閾値Th1と任意の値Δとの和(Th1+Δ)と等しい操舵トルクに対して設定される入力制限値変更量L2の絶対値が、閾値Th1から同じ値Δを減じた差(Th1−Δ)と等しい操舵トルクに対して設定される入力制限値変更量L1の絶対値よりも大きくなるように入力制限値変更量ΔLiを設定してよい。また、操舵トルクの絶対値を表す軸、閾値Th1及び入力制限値変更量ΔLiの特性線とで設定される二つの面積について比較した場合、閾値Th1より原点側の面積が他方の面積より小さくなるように設定してよい。
一方で、運転者の操舵意思がなく(または弱く)偏差Δθの積分値の増加抑制を緩和する際に入力制限値Liの変化を緩慢にすることができる。これにより、偏差Δθが大きくても第2補助制御値C2の変化を緩やかにし、運転者の操舵感の急変を防止できる。
漸減ゲイン変更量ΔGdは、加算器55に入力される。加算器55は、過去値保持部56を通じて直前周期(一周期前)に保持された漸減ゲインGdと漸減ゲイン変更量ΔGdとを加算することにより漸減ゲイン変更量ΔGdを積分し、積分結果を漸減ゲインGdとして算出する。
操舵トルクの絶対値|Th|が閾値Th2未満の範囲では漸減ゲイン変更量ΔGdは正値となり閾値Th2以上の範囲では負値となる。
これにより、操舵トルクの絶対値|Th|が閾値Th2未満の場合(|Th|が比較的小さい場合)には漸減ゲイン変更量ΔGdが増加して、積分器46による偏差Δθの積分値の増加抑制が緩和される。閾値Th2は閾値Th1と異なっていても等しくてもよい。
閾値Th2は、運転者の操舵意思がないと判断される操舵トルク(例えば、操向ハンドル1に単に手を添えているときに加わる操舵トルク)より大きな値に設定してよい。これにより、第2補助制御値C2が過度に抑制されることを防止できる。
例えば、閾値Th2と任意の値Δとの和(Th2+Δ)と等しい操舵トルクに対して設定される漸減ゲイン変更量G2の絶対値が、閾値Th2から同じ値Δを減じた差(Th2−Δ)と等しい操舵トルクに対して設定される漸減ゲイン変更量G1の絶対値よりも大きくなるように漸減ゲイン変更量ΔGdを設定してよい。また、操舵トルクの絶対値を表す軸、閾値Th2及び入力制限値変更量ΔGdの特性線とで設定される二つの面積について比較した場合、閾値Th2より原点側の面積が他方の面積より小さくなるように設定してよい。
一方で、運転者の操舵意思がなく(または弱く)偏差Δθの積分値の増加抑制を緩和する際に漸減ゲインGdの変化を緩慢にすることができる。これにより、偏差Δθが大きくても第2補助制御値C2の変化を緩やかにし、運転者の操舵感の急変を防止できる。
入力制限器43は、積分器46に入力される偏差Δθを、入力制限値Li、(−Li)により制限することで得られる制限後偏差Δθrを、積分器46に入力する。
偏差Δθが下限値(−Li)未満の場合には、制限後偏差Δθrは下限値(−Li)に維持される。偏差Δθが上限値Liより大きい場合には、制限後偏差Δθrは上限値Liに維持される。
絶対値算出部50と、入力制限値変更量設定部51と、加算器52と、過去値保持部53と、入力制限器43と、符号反転器44は、特許請求の範囲に記載された「積分抑制部」の一例である。
また、比例器45は、入力制限値Liに応じて比例成分Opを変更する。例えば比例器45は、入力制限値Liの減少に応じて比例成分Opを増加させる。
絶対値算出部60は、操舵トルクThの絶対値|Th|を算出して、比例ゲイン設定部61へ入力する。比例ゲイン設定部61は、操舵トルクの絶対値|Th|に応じた比例ゲインGpを算出する。
また、増加ゲイン設定部62は、入力制限値Liに応じた増加ゲインGiを算出する。乗算器63及び64は、比例ゲインGp及び増加ゲインGiをそれぞれ操舵角の偏差Δθに乗算して、比例成分Opを演算する。
これにより、操舵トルクThが大きい場合には運転者の操舵意思が強いと判断して、操舵により偏差Δθが発生しても、比例器45が出力する比例成分Opの変化を抑制できる。これにより、第2補助制御値C2の変化を抑制し運転者の操舵を優先する。
増加ゲイン設定部62は、入力制限値Liが閾値Li1以上の場合(比較的大きい場合)には増加ゲインGiが「1」となり、入力制限値Liが閾値Li1未満の場合(比較的小さい場合)には増加ゲインGiが「1」よりも大きく、入力制限値Liが小さいほど増加ゲインGiが大きくなるように増加ゲインGiを設定してよい。
増加ゲイン設定部62と乗算器64は、特許請求の範囲に記載の「比例成分変更部」の一例である。
なお、増加ゲイン設定部62は、入力制限値Liに代えて漸減ゲインGdに基づいて増加ゲインGiを設定してよい。
また、積分器46は、積分器46による積分結果を漸減ゲインGdに応じて変更することにより、積分器46が演算する偏差Δθの積分値の増加を抑制する。
積分ゲイン乗算部70は、制限後偏差Δθrに積分ゲインKiを乗じる。加算器71は、過去値保持部72を通じて直前周期(一周期前)に保持された積分器46の出力値である積分成分Oiに、積(Ki×Δθr)を加算することにより積(Ki×Δθr)の積分値を算出する。
このようにして、絶対値算出部50と、漸減ゲイン変更量設定部54と、加算器55と、過去値保持部56と、乗算器73は、偏差Δθの積算結果を漸減ゲインGdに応じて変更する。
なお、漸減ゲインGdを乗算器73により乗じるのに代えて、操舵トルクThに応じた漸減変化量として、制限後偏差Δθrと積分ゲインKiとの積(Ki×Δθr)の積分値に加えても同様の効果が得られる。また、乗算器73を加算器71の後段に配置するのに代えて、加算器71の前段に配置してもよい。
加算器48は、第1補助制御値C1と第2補助制御値C2を加算して電流指令値Irefを算出し、図2に示す減算器32へ出力する。
次に、図11を参照して第1実施形態のアクチュエータ制御方法の一例を説明する。
ステップS1において第1補助制御値演算部40は、操舵トルクThと車速Vhに基づいて第1補助制御値C1を演算する。
ステップS2において走行制御ECU37は、操舵角θの制御目標値である目標操舵角θrを演算する。
ステップS4において減算器41は、目標操舵角θrから実操舵角θを減じて偏差Δθを演算する。
ステップS5において積分抑制変数演算部42は、入力制限値Liと漸減ゲインGdを演算する。
ステップS7において積分器46は、積分器46による偏差Δθrの積分結果を漸減ゲインGdで変更することにより、積分器46が出力する積分値の増大を抑制する。
ステップS9において加算器47は、比例器45から出力される比例成分Opと積分器46から出力される積分成分Oiを加算して、第2補助制御値C2を演算する。
ステップS10において加算器48は、第1補助制御値C1と第2補助制御値C2を加算して電流指令値Irefを算出する。その後に処理は終了する。
(1)第1補助制御値演算部40は、操舵トルクThと車速Vhに基づいて、操向車輪8L、8Rを転舵する操舵補助モータ20を制御する第1補助制御値C1を演算する。走行制御ECU37は、車両の周囲環境に基づいて、車両の進行方向を示す状態量の目標値として目標操舵角θrを設定する。積分器46は、実操舵角θと目標操舵角θrとの偏差Δθの積分値に応じた積分制御により操舵補助モータ20を制御する。
絶対値算出部50と、入力制限値変更量設定部51と、加算器52、55と、過去値保持部53、56と、漸減ゲイン変更量設定部54は、操舵トルクThに応じた積分値として、入力制限値Liと漸減ゲインGdを演算する。入力制限器43と、符号反転器44と、乗算器73は、入力制限値Liと漸減ゲインGdに応じて偏差Δθの積分値の増加を抑制する。
また、操舵トルクThの代わりに、操舵トルクThに応じた値の積分値に応じて抑制することで、操舵トルクThが変化しない保舵等の状態においても保舵が継続する時間に応じて偏差Δθの積分値の増加が抑制されるので、第2補助制御値C2の増加による運転者の操舵感の変化を抑制できる。
また、操舵トルクThが減って偏差Δθの積分値の増加抑制を解除する際にも、操舵トルクThに応じた値の積分値は操舵トルクThそれ自体よりも緩慢に変化するため、第2補助制御値C2の急変を防止できる。
一方で、運転者の操舵意思がなく(または弱く)偏差Δθの積分値の増加抑制を緩和する際には、入力制限値Liや漸減ゲイン変更量ΔGdの変化を緩慢にすることができる。これにより、偏差Δθが大きくても第2補助制御値C2の変化を緩やかにし、運転者の操舵感の急変を防止できる。
漸減ゲイン変更量設定部54と、絶対値算出部50と、加算器55と、過去値保持部56と、乗算器73は、偏差Δθの積算結果を漸減ゲインGdに応じて変更してよい。
これにより、入力制限値Li及び漸減ゲインGdに応じて偏差Δθの積分値の増加を抑制することができる。
これにより、例えば入力制限値Liの減少に応じて比例成分Opを増加させることにより、入力制限値Liが小さく積分器46へ入力される偏差Δθの大きさが制限される場合に、比例成分Opが増加させることができる。その結果、積分器46へ入力される偏差Δθの大きさが制限されるシーン、すなわち、第2補助制御値C2の変化を抑制して運転者の操舵を優先するシーンにおいて、比例成分Opを増加させて目標舵角への追従性を向上できる。
図5の(a)を参照する。操舵トルクの絶対値|Th|が比較的小さい領域(具体的には、|Th|が閾値Th1未満の領域)では、入力制限値変更量ΔLiは正値に設定され、操舵トルクの絶対値|Th|が小さくなるほど入力制限値変更量ΔLiが大きくなる。このため、運転者が、実操舵角θを目標操舵角θrに近付けるように操舵し、操舵トルクの絶対値|Th|が小さくなると、入力制限値Liが増大するため、積分器46が出力する積分成分Oiの積分を抑制できなくなる。この結果、運転者の操舵意思があるにもかかわらず操舵反力が増大する。
第1変形例の積分抑制変数演算部42は、微分器120と操舵意思判定部121を備える。
操舵意思判定部121は、変化速度τに応じて運転者の操舵意思の有無を判定する。例えば、変化速度τが閾値以上である場合に操舵意図があると判定し、変化速度τが閾値未満である場合に操舵意図がないと判定する。
図12の(b)を参照する。実線122は、運転者の操舵意思が有る場合の入力制限値変更量ΔLiの特性を示し、破線123は、運転者が操舵意思のない場合の入力制限値変更量ΔLiの特性を示す。例えば、入力制限値変更量設定部51は、運転者の操舵意思が有る場合と無い場合とで異なるマップを使用することにより、操舵意思の有る場合と無い場合とで、異なる特性の入力制限値変更量ΔLiを設定してよい。
一方で、操舵トルクの絶対値|Th|が比較的小さい領域(具体的には、|Th|が閾値Th1未満の領域)であり、入力制限値変更量ΔLiが正値である場合には、操舵意思が有る場合の入力制限値変更量ΔLi(実線122)が、操舵意思が無い場合の入力制限値変更量ΔLi(破線123)よりも低減されている。
このような構成により、操舵意思が有り且つ入力制限値変更量ΔLiが正値である場合の入力制限値変更量ΔLiの値を、操舵意思が無く且つ入力制限値変更量ΔLiが正値である場合の入力制限値変更量ΔLiの値よりも低減することができる。
また、変化速度τが閾値未満の範囲であるときは、入力制限値変更量ΔLiが特性122と特性123の間の特性になるようにしても良い。このようにすることで、入力制限値変更量ΔLiの変化による積分値の急変を抑制することができる。
第2変形例の積分抑制変数演算部42は、操舵トルクの絶対値|Th|の変化速度に応じて、入力制限値変更量ΔLiを低減する。このように入力制限値変更量ΔLiを低減しても、上記の第1変形例と同様に、運転者の操舵意思があるにもかかわらず操舵トルクの絶対値|Th|が小さくなる場合の入力制限値Liの増大を抑制することができる。なお、本変形例も、以下に説明する第2実施形態、第3実施形態及び第3実施形態の第1変形例〜第3変形例にも適用可能である。
第2変形例の積分抑制変数演算部42は、微分器120と、低減量設定部124と、加算器125を備える。
低減量設定部124は、操舵トルクの絶対値|Th|の変化速度τに応じて、入力制限値変更量ΔLiの低減量dΔを算出する。
変化速度τが比較的小さい場合(具体的には変化速度τが閾値τ1未満の場合)に低減量dΔは0である。
一方で、変化速度τが閾値τ1以上閾値τ2未満の場合には、低減量dΔは負値となり、変化速度τの増加に伴い低減量dΔは減少する(すなわち低減量dΔの絶対値は増加する)。
変化速度τが閾値τ2以上の場合には、低減量dΔは最小値dΔminを維持する。
具体的には、変化速度τが閾値τ1未満の場合には、入力制限値変更量ΔLiは低減されず、変化速度τが閾値τ2以上の場合には、低減量dΔminで低減される。
このような構成によっても、操舵意思が有る場合の入力制限値変更量ΔLiの値を、操舵意思が無い場合の入力制限値変更量ΔLiの値よりも低減することができる。
なお、第1変形例と同様に、入力制限値変更量ΔLiが正値であるだけ、操舵意思が有る場合の入力制限値変更量ΔLiの値を、操舵意思が無い場合の入力制限値変更量ΔLiの値よりも低減してもよい。例えば低減量設定部124は、操舵トルクの絶対値|Th|が閾値Th1以上であるか否かを判定し、操舵トルクの絶対値|Th|が閾値Th1以上である場合に低減量dΔを0に設定してよい。
第2実施形態の指令値演算部31は、目標操舵角θrと実操舵角θの差分に基づいて目標操舵角速度ωrを設定し、実際の操舵角速度ωと目標操舵角速度ωrとの偏差Δω(=ωr−ω)に基づくPI制御により第2補助制御値C2を演算する。
このように、マイナーループとして操舵角速度フィードバックを有するカスケード制御により、位置制御ループの応答性や安定性を向上できる。
第2実施形態の指令値演算部31は、目標操舵角速度演算部80と、角速度演算部81と、減算器82と、ダンピング演算部83と、減算器84を備える。減算器41及び82、目標操舵角速度演算部80、比例器45、積分器46及び加算器47は、特許請求の範囲に記載の「目標値制御部」の一例である。
減算器41は、目標操舵角θrと実操舵角θの差分Δθを演算する。
減算器82は、実際の操舵角速度ωと目標操舵角速度ωrとの偏差Δω(=ωr−ω)を演算する。偏差Δωは、入力制限器43及び比例器45に入力される。
第2実施形態の比例器45の動作は、比例ゲインGpを偏差Δωに乗じる点以外は、第1実施形態の比例器45の動作と同じである。
図15を参照する。ダンピング演算部83は、実際の操舵角速度の絶対値|ω|が大きいほど、ダンピング制御値Dの絶対値が大きくなるように設定してよい。これにより、実際の操舵角θを目標操舵角θrに追従させる際に、操舵角速度が急変しないように調整できる。
なお、実際の操舵角速度の絶対値|ω|に対する大きなダンピング制御値Dの増加率は、実際の操舵角速度の絶対値|ω|が小さい領域と大きい領域では増加率が小さく、その中間の領域では増加率が大きくなるように設定してよい。
次に、図16を参照して第2実施形態のアクチュエータ制御方法の一例を説明する。
ステップS21の動作は、図11のステップS1の動作と同様である。
ステップS22において目標操舵角速度演算部80は、目標操舵角θrと実操舵角θの差分Δθに基づいて目標操舵角速度ωrを設定する。
ステップS24において、減算器82は、実際の操舵角速度ωと目標操舵角速度ωrとの偏差Δω(=ωr−ω)を演算する。
ステップS25の動作は、図11のステップS5の動作と同様である。
ステップS27において積分器46は、積分器46による偏差Δωrの積分結果を漸減ゲインGdで変更することにより、積分器46が出力する積分値の増大を抑制する。
ステップS28及びステップS29の動作は、図11のステップS8及びステップS9の動作と同様である。
ステップS31において、加算器48は、第1補助制御値C1と第2補助制御値C2を加算する。減算器84は、第1補助制御値C1及び第2補助制御値C2の和からダンピング制御値Dを減じて電流指令値Irefを演算する。その後に処理は終了する。
第1補助制御値演算部40は、操舵トルクThと車速Vhに基づいて、操向車輪8L、8Rを転舵する操舵補助モータ20を制御する第1補助制御値C1を演算する。走行制御ECU37は、車両の周囲環境に基づいて、車両の進行方向を示す状態量の目標値として目標操舵角θrを設定する。目標操舵角速度演算部80は、実操舵角θと目標操舵角θrと差分に基づき目標操舵角速度ωrを演算する。積分器46は、実際の操舵角速度ωと目標操舵角速度ωrとの偏差Δωの積分値に応じた積分制御により操舵補助モータ20を制御する。
絶対値算出部50と、入力制限値変更量設定部51と、加算器52、55と、過去値保持部53、56と、漸減ゲイン変更量設定部54は、操舵トルクThに応じた積分値として、入力制限値Liと漸減ゲインGdを演算する。入力制限器43と、符号反転器44と、乗算器73は、入力制限値Liと漸減ゲインGdに応じて偏差Δωの積分値の増加を抑制する。
さらに第2実施形態によれば、マイナーループとして操舵角速度フィードバックを有するカスケード制御により、位置制御ループの応答性や安定性を向上できる。
第3実施形態のアクチュエータ制御装置は、操向ハンドル1と操向車輪8L、8Rとが機械的に切り離されたステアバイワイヤ(SBW:Steer-By-Wire)機構において、転舵輪を転舵する転舵モータを制御する。なお、転舵モータを転舵する手段は、モータに限られず、様々な種類のアクチュエータを利用可能である。
例えば、運転者による操向ハンドル1の操舵角θと車速Vhにより設定した第1目標転舵角θr1に基づく第1電流指令値Iref1に、車両の周囲環境に基づいて設定された第2目標転舵角θr2に実転舵角を近付けるように転舵モータを制御する第2電流指令値Iref2を加算して、電流指令値Irefを算出する。
第3実施形態では、第2電流指令値Iref2の演算において、第2目標転舵角θr2と第1目標転舵角θr1との偏差の積分値の増加を、操舵機構に対する運転者による操作状態量に応じた値の積分値に応じて抑制する。
また、大きな操作状態量により偏差Δθの積分値の増加を抑制した後に、操作状態量が減少して抑制を解除する際にも、積分値が緩慢に変化するため第2電流指令値Iref2の急変を防止できる。
ステアバイワイヤ機構は、バックアップクラッチ90と、反力モータ91と、転舵モータ92と、減速ギア93と、ピニオン94と、SBW−ECU95と、転舵角センサ96を備える。
操向ハンドル1に反力トルクThを付与する反力モータ91は、減速ギア3を介して操舵軸2に連結されている。
SBW−ECU95は、車速センサ12で検出された車速Vhと、操舵角センサ14で検出された操舵角θと、転舵角センサ96で検出された実転舵角θsに基づいて、転舵制御指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値によって転舵モータ92に供給する電流を制御する。
SBW−ECU95は、例えば、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含むコンピュータを備えてよい。プロセッサは、例えばCPU、やMPUであってよい。
以下に説明するSBW−ECU95の機能は、例えばSBW−ECU95のプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
例えば、SBW−ECU95は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばSBW−ECU95はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ等のプログラマブル・ロジック・デバイス等を有していてもよい。
走行制御ECU37の操舵指令値演算部39は、目標軌道演算部38が演算した目標軌道と、状態検出部36による検出結果に基づいて、車両の周囲環境に基づく転舵角θの制御目標値である第2目標転舵角θr2を演算して、EPS−ECU30へ出力する。
PI制御部102で特性改善された操舵補助指令値VrefがPWM制御部103に入力され、更に駆動部としてのインバータ104を介して転舵モータ92がPWM駆動される。転舵モータ92の電流値Imはモータ電流検出器105で検出され、減算器101にフィードバックされる。インバータ104は、駆動素子としてFET(Field Effect Transistor)が用いられ、FETのブリッジ回路で構成されている。
反力制御部108は、偏差ΔThに基づくフィードバック制御により、反力トルクThを目標反力トルクThrに近付ける制御電流を生成して、反力モータ91に出力する。
目標転舵角演算部110は、運転者による操向ハンドル1の操舵角θと車速Vhに基づいて第1目標転舵角θr1を設定する。
減算器112は、第1目標転舵角θr1から実転舵角θsを減算した偏差(θr1−θs)を演算し、第1電流指令値演算部113に入力する。第1電流指令値演算部113は、偏差(θr1−θs)をゼロに近付けるフィードバック制御により第1電流指令値Iref1を演算する。
第2電流指令値演算部116は、図3に示す第1実施形態の入力制限器43と、符号反転器44と、積分器46と同様の構成を有する入力制限器と、符号反転器と、積分器を備えてよい。第2電流指令値演算部116は、この積分器により偏差Δθの積分値を演算する。
積分抑制変数演算部115には、操舵機構に対する運転者による操作状態量として、第1実施形態の操舵トルクThに代えて偏差Δθが入力される。
積分抑制変数演算部115には、偏差Δθに応じた値の積分値として入力制限値Liと漸減ゲインGdを演算し、第2電流指令値演算部116に入力する。なお、積分抑制変数演算部115には、偏差Δθに代えて反力トルクThに応じて入力制限値Liと漸減ゲインGdを演算してもよい。
また、第2電流指令値演算部116は、偏差Δθの積算結果を漸減ゲインGdに応じて変更する。
第3実施形態のステアバイワイヤ機構においても、第1実施形態及び第2実施形態の電動パワーステアリング装置と同様の効果を奏する。
図20を参照する。減算器114は、第1目標転舵角θr1から第2目標転舵角θr2を減算した差を偏差Δθ(=θr1−θr2)として演算してもよい。第1電流指令値演算部113は、偏差Δθに基づくPI制御により第1電流指令値Iref1を演算してもよい。
そして、偏差(θr2−θs)の積分値の増加を、偏差Δθ(=θr1−θr2)に応じて演算した入力制限値Liと漸減ゲインGdに応じて抑制してもよい。
このように構成しても、第3実施形態と同様の効果が得られる。
第1目標転舵角θr1と第2目標転舵角θr2との角速度偏差や、実転舵角θsと第2目標転舵角θr2との角速度偏差に基づくPI制御により第2電流指令値Iref2を演算してもよい。
(第3変形例)
第1〜3実施形態、第1実施形態の(第1変形例)及び(第2変形例)、第3実施形態の(第1変形例1)及び(第2変形例)において、操舵機構に対する運転者による操作状態量として実操舵角θや実操舵角速度ωを採用して、実操舵角θや実操舵角速度ωに応じて変化する値を積分して、入力制限値Liと漸減ゲインGdを演算してもよい。
Claims (10)
- 運転者による車両の操舵機構に対する操作状態量に基づいて、転舵輪を転舵するアクチュエータを制御する転舵制御値を演算する転舵制御値演算部と、
前記車両の周囲環境に基づいて、前記車両の進行方向を示す状態量の目標値を設定する目標値設定部と、
積分制御により、実際の前記状態量が前記目標値に近付くように前記アクチュエータを制御する目標値制御部と、
前記積分制御において演算される第1積分値の増加を、前記操作状態量に応じて演算される第2積分値に応じて抑制する積分抑制部と、
を備えることを特徴とする、車両の操舵に用いられるアクチュエータ制御装置。 - 前記目標値制御部は、実際の前記状態量と前記目標値との偏差を積分して前記第1積分値を演算し、前記第1積分値に応じた積分制御により前記アクチュエータを制御する積分制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ制御装置。
- 前記目標値制御部は、
実際の前記状態量と前記目標値との差分に基づき前記状態量の目標変化速度を演算する目標変化速度演算部と、
実際の前記状態量の変化速度と前記目標変化速度との偏差を積分して前記第1積分値を演算し、前記第1積分値に応じた積分制御により前記アクチュエータを制御する積分制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ制御装置。 - 前記積分抑制部は、前記第1積分値の演算において積算する前記偏差を前記第2積分値に応じて制限する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のアクチュエータ制御装置。
- 前記偏差の比例成分に応じた比例制御により前記アクチュエータを制御する比例制御部と、
前記第2積分値に応じて前記比例成分を変更する比例成分変更部と、
を更に備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置。 - 前記積分抑制部は、前記操作状態量に応じて変化する変数を積算して前記第2積分値を演算し、
閾値以上の前記操作状態量に対する前記変数の変化率が、前記閾値未満の前記操作状態量に対する前記変数の変化率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置。 - 前記積分抑制部は、前記運転者の操舵意思を判定し、前記操舵意思が有り且つ前記変数が正値である場合の前記変数の値を、前記操舵意思が無く且つ前記変数が正値である場合の前記変数の値よりも低減する、ことを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ制御装置。
- 前記積分抑制部は、前記操作状態量である操舵トルクの変化速度に応じて前記運転者の操舵意思を判定することを特徴とする請求項7に記載のアクチュエータ制御装置。
- 前記積分抑制部は、前記操作状態量である操舵トルクの変化速度に応じて前記変数の値を低減することを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ制御装置。
- 前記積分抑制部は、前記第1積分値の積算結果を前記第2積分値に応じて変更する、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置。
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