(本発明に相当する第1の技術)
特許文献1のモータは、ステータが発生する回転磁界の数と、ロータの磁界の数が同じになるように設定されている。しかしながら、例えば、アウターロータ側を3相駆動、インナーロータ側を6相駆動とした場合に、アウターロータ側の巻線係数は0.87であるが、インナーロータ側の巻線係数は0.5と小さくなってしまい、特に、低速回転時において所定のトルクを発生させることが困難となる。
ここで、低速回転時に高トルクを得られるように、アウターロータ側を3相駆動、インナーロータ側を9相又は12相駆動とすることも考えられる。しかしながら、この場合には、IGBTやMOSFET等の駆動素子の数が、18個又は24個と多くなってしまい、コストが増大するという問題がある。
そこで、第1の技術の目的は、比較的簡単な構成で、コイルの巻線係数を改善してトルクを効率良く発生できるようにすることにある。
(本発明に相当する第2の技術)
多くの縦型の洗濯機では、タブ(水槽)の内部に、多数の通水孔を有するドラム(脱水槽)が収容されていて、パルセータ(撹拌羽根)が、そのドラムの底部に配置されている。タブの下部にモータが設置されていて、ドラム及びパルセータは、そのモータによって回転駆動される。近年では、複雑な変速機構を介さずに、ドラム及びパルセータをモータで直接駆動する形式が一般的になってきている(ダイレクトドライブ形式)。
パルセータが回転駆動される洗濯時や濯ぎ時には、ドラム内に多量の水が溜まっているため、モータには、低速であるが高トルクな出力が求められる。一方、脱水時には、ドラム内の水が除去されるため低トルクで駆動できるが、モータには高速回転の出力が求められる。そのため、洗濯機用のモータは、低速高トルクと高速低トルクとに対応した特定の出力性能が求められる。
従って、特許文献2の洗濯機では、高トルクが求められない脱水モータをインナーロータ形状に配置し、ロータの外径が大きく、高トルクが得られるアウターロータ形状に洗いモータを配置することで、適切な出力性能を実現している。
ところが、近年では、運転制御が複雑になり、洗濯時や濯ぎ時に、パルセータだけでなくドラムの回転も要求される場合がある。そうした場合、ドラムの回転にも高トルクが必要になるが、特許文献2の洗濯機のモータは、構造上、高トルクを得るのは難しい。脱水モータのロータの外径を大きくすれば、高トルクが得られるが、そうした場合、モータ全体のサイズが巨大化してしまう。
その点、特許文献1のようなデュアルロータ型のモータであれば、ステータが1つであることから、その分、内側のロータの外径を大きくできるので、モータ全体が巨大になるのを回避しながら、脱水モータのトルクを高めることも可能である。
しかし、このようなデュアルロータ型のモータの場合、特許文献1のモータのように、ステータの独立したコアの個数が内外のロータの極数よりも多いと、大きなコギングトルクや大きな相互リップルが発生する。その結果、不快な騒音や振動が生じて、洗濯機としての商品価値が損なわれるという問題がある。
そこで、第2の技術の目的は、コギングトルクや相互リップルを低減でき、従来の洗濯機と遜色無いレベルまで騒音等を抑制できるデュアルロータ型のモータを提供することにある。
(第3の技術)
上述したように、特許文献1のようなデュアルロータ型のモータであれば、モータ全体が巨大になるのを回避しながら、脱水モータのトルクを高めることも可能である。
しかし、洗濯機用のモータの場合、ステータの極数が多い(通常20個以上)ことから、特許文献3のように、コイル付きステータコアを個別に形成して組み付ける製造方法では、作業工数が多くなり、生産性に欠ける問題がある。
しかも、特許文献3の製造方法は、各コイル付きステータコアを適正に配置したうえでの一対のギャラリープレートでの挟み込み、絶縁性や締め付け具合に注意を要する多数のボルトやナットの締結、高度な精度が求められる凸部の除去など、ステータの極数の増加によって作業量や作業難度が増加する作業が多いため、生産性に欠けるだけでなく、品質の確保にも支障が生じる。
そこで、第3の技術の目的は、極数が多いデュアルロータ型のモータのステータであっても、効率的に製造できるようにすることで、多様な運転制御に対応できる洗濯機用のモータの実用化を図ることにある。
(第4の技術)
特許文献2のような洗濯機では、脱水後の、ドラム及びパルセータを減速させる減速工程において、ドラムとパルセータとに回転速度の差が生じると、ドラムとパルセータとの間で洗濯物が引っ張られてしまい、布傷みが生じるおそれがある。これを防ぐためには、前記減速工程において、ドラム(脱水モータ)及びパルセータ(洗いモータ)の回転速度が同程度になるように同期制御を実行する必要がある。
また、特許文献2の洗濯機のように、2つのモータを用いて、ドラム及びパルセータを独立して回転させるようにしている場合、モータのトルクに基づく回生電力が、モータが1つの場合と比較して大きくなる。そのため、ドラム及びパルセータの回転速度を急激に低下させると、モータからの回生電力を消費しきれずに、回生電流が電源に逆流して、電源を破壊するおそれがある。そこで、これを防ぐために、前記回生電力が適切に消費されるように、ドラム及びパルセータを緩やかに減速させる必要がある。
上述のように、同期制御を実行しかつ回生電力を適切に消費させるようにするためには、減速率が低い方、すなわち、回転速度が大きい方に回転速度を合わせることが望ましい。しかし、回転速度が大きい方に回転速度を合わせると、ドラム及びパルセータを停止させるまでに時間が掛かってしまう。
そこで、第4の技術の目的は、モータからの回生電力を適切に消費しながら、ドラム及びパルセータに対して同期制御を実行しながら減速させる際の減速時間を短縮させることにある。
(第5の技術)
セーターなどは傷つき易いため、そのようなデリケートな洗濯物を適切に洗濯するためには、水中で洗濯物を適度に分散させながら、柔らかいタッチで洗いや濯ぎを行う必要がある。その一方で、汚れが取れ難い頑固な汚れや、大きな物など、弱い水流では適切な洗濯が難しい洗濯物もある。
そのためには、方向や流速が様々な水流をドラム内で発生させる必要があり、特許文献2や特許文献4の洗濯機のように、パルセータやドラムの一方だけを回転させるだけでは、不十分である。
そこで、第5の技術の目的は、多種多様な洗濯物に幅広く対応できる洗濯機を提供することにある。
(第6の技術)
特許文献2の洗濯機では、パルセータを、交互に異なる方向に回転(以下、相反回転という)させることで、ドラム内の水に捻り力を発生させ、洗濯物の洗いむらを防止している。
それに対し、ドラムもパルセータと同時に回転させれば、更なる洗濯効率の向上が期待できる。例えば、その場合、ドラムを時計回り方向に回転させかつパルセータを反時計回り方向に回転させるモードと、逆にドラムを反時計回り方向に回転させかつパルセータを時計回り方向に回転させるモードとが考えられるが、これらのモードを交互に実行するようにすると、水流の方向を入れ替えながら、洗濯物をほぐすことができる。
しかしながら、相反回転の方向を切り替える際には、ドラム及びパルセータの回転方向を反転させるために、モータ(脱水モータ及び洗いモータ)に比較的大きな起動負荷が加えられる。特に、ドラムは洗濯機の中でも大きい部品であり、ドラムを回転させた時には、該回転方向に対して比較的大きな慣性力がドラムに付与される。そのため、ドラムの回転方向を反転させる際には、ドラムを固定又はドラムを自由回転可能にした構成の場合と比較して、モータ(特に、脱水モータ)に過大な起動負荷が加えられる。この過大な起動負荷によって、モータが起動不良を起こすおそれがある。
そこで、第6の技術の目的は、ドラム及びパルセータの回転方向を反転させる際に、モータに加えられる負荷を低減させて、モータの起動不良を防止することにある。
(第7の技術)
特許文献2の洗濯機では、脱水処理において、洗いモータと脱水モータとの回転がずれるように構成されているため、洗濯物の位置が変更されることが期待できる。しかしながら、単に洗濯物の位置を変更するだけでは、その位置がアンバランス量を大きくするように変化することも否定できず、必ずしもアンバランスの発生を確実に防止できるとは限らない。
そこで、第7の技術の目的は、より安定的にアンバランスの発生を防止し、低振動でありかつ脱水時間の短縮が可能な洗濯機を提供することにある。
(第8の技術)
特許文献2の洗濯機のように、脱水処理において、回転速度が小さい方のモータを他方のモータの回転速度に近付けるように制御すると、この速度差の蓄積によって、ドラムとパルセータとの位置ずれが相対的に大きくなってしまい、布傷みを十分に防止できないという問題がある。
具体的に、洗いモータの回転速度の方が大きい場合には、脱水モータの回転速度を加速して洗いモータの回転速度に近付けるように制御するが、このとき、脱水モータの回転速度がオーバーシュートして洗いモータの回転速度を超えてしまうことがある。この場合、今度は、洗いモータの回転速度を加速して脱水モータの回転速度に近付けるように制御する必要がある。このように、回転速度の大きなモータがランダムな周期で入れ替わることで制御が不安定になってしまい、ドラムとパルセータとの位置ずれが相対的に大きくなるという問題がある。
そこで、第8の技術の目的は、洗濯物の布傷みを軽減し得る脱水運転が可能な洗濯機を提供することにある。
(第9の技術)
洗いモータを回転フリー状態にすべき適正なタイミングは、洗濯物の重量、状態、種類等によりさまざまに変わり得る。そのため、特許文献2のように、脱水処理において、洗いモータを回転フリー状態にするときの洗いモータの回転速度を固定すると、適正なタイミングで洗いモータを回転フリー状態にできなくなるおそれがある。
例えば、適正なタイミングよりも早めに洗いモータを回転フリー状態にすると、ドラムに連れ回される洗濯物が回転フリーになったパルセータに擦れてパルセータを連れ回すことにより洗濯物を傷めるおそれがある。一方、適正なタイミングよりも遅めに洗いモータを回転フリー状態にすると、洗いモータに通電する時間が長くなり、消費電力が増大する。
そこで、第9の技術の目的は、洗濯物の布傷みを軽減しつつ省電力で脱水運転が可能な洗濯機を提供することにある。
(第10の技術)
特許文献2の洗濯機において、脱水運転時に洗いモータを回転フリー状態にしたとしても、例えば重力によって衣類が回転槽及び撹拌体に押し付けられるので、脱水モータの回転に伴って撹拌体が連れ回される場合がある。
すなわち、洗いモータも脱水モータに追随して回転する場合がある。すると、逆起電力による抵抗力(脱水モータの回転を妨げる方向の力)が発生し、高速回転ができないという問題が生じたり、脱調や制御不能が発生したりする可能性がでてくる。このような現象を回避するためには、洗いモータ及び脱水モータの両方を同一方向にかつ同時に駆動することが考えられるが、2つモータを回転させるエネルギーが必要なため、効率が悪いという問題がある。
そこで、第10の技術の目的は、脱水運転時のエネルギー効率を高めた洗濯機を提供することにある。
(第1の技術)
第1の技術では、環状のステータと、駆動方式の相数が異なる第1及び第2ロータとを備え、該第1ロータの駆動相数が該第2ロータの駆動相数よりも多いモータを対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、前記ステータは、前記第1及び第2ロータに対応する電流を重ね合わせた複合電流が供給されることで該第1及び第2ロータを独立して駆動させるための別々の回転磁界を発生させるコイルを有し、前記ステータが発生する回転磁界の数は、前記第1及び第2ロータの磁極の数とは異なっており、前記ロータの磁束分布の基本波に対する前記コイルの巻線係数は、前記第1ロータ側及び前記第2ロータ側の両方とも、0.5よりも大きいことを特徴とする。
第1の技術では、ステータが発生する回転磁界の数と第1及び第2ロータの磁極の数とが異なり且つロータの磁束分布の基本波に対するコイルの巻線係数が0.5よりも大きくなっている。
これにより、コイルの巻線係数を改善してトルクを効率良く発生させることができる。特に、低速回転時であっても高トルクを得ることが可能となる。
前記ステータのスロット数S、前記第1ロータ又は前記第2ロータの一方の極数P1、他方の極数P2は、1以上の整数をnとしたときに、
S=12n
P1=(6±1)・2n
P2=(6±2)・2n
という条件を満たすように設定してもよい。
この場合、ステータのスロット数、第1ロータの極数、及び第2ロータの極数を、上述した条件を満たすように設定している。これにより、ロータの磁束分布の基本波に対するコイルの巻線係数が0.5よりも大きなモータを得ることができる。
前記ロータの磁束分布の基本波に対する前記コイルの巻線係数は、前記第1ロータ側及び前記第2ロータ側の両方とも、0.7以上にしてもよい。
この場合、ロータの磁束分布の基本波に対するコイルの巻線係数を0.7以上とすることで、高トルクを発生させることができる。
前記ロータの磁束分布の高調波に対する前記コイルの短節巻係数は、前記第1ロータ側又は前記第2ロータ側の何れかが、1未満であるようにしてもよい。
この場合、ロータの磁束分布の高調波に対するコイルの短節巻係数を1未満とすることで、トルクリップルを低減して振動や騒音を抑えることができる。
上述したモータと、
前記第1ロータ又は前記第2ロータの一方により構成されるインナーロータに連結されて洗濯物を収容するドラムと、
前記第1ロータ又は前記第2ロータの他方により構成されるアウターロータに連結されて前記ドラム内の洗濯物を撹拌させるパルセータと、を備えた洗濯機とするのが好ましい。
そうすれば、ドラム及びパルセータを独立して駆動させるためのモータとして、第1の技術のモータを適用することができる。
(第2の技術)
第2の技術は、1つのステータの内外にインナーロータ及びアウターロータを備え、前記ステータが前記インナーロータと前記アウターロータとで共用されているデュアルロータ型のモータに関する。
前記ステータは、周方向に独立して一定の間隔で配置された複数のコア要素と、前記コア要素の各々にワイヤを巻回して構成された複数のコイルと、を有している。前記コア要素は、前記インナーロータと対向する内側ティースと、前記アウターロータと対向する外側ティースと、を備えている。前記インナーロータと前記アウターロータとは、異なる極数を有し、前記コア要素は、前記インナーロータ及び前記アウターロータのいずれの極数よりも少ない個数で構成されている。
そして、前記インナーロータ及び前記アウターロータのうち、極数の多いロータと対向している、前記内側ティース及び前記外側ティースのいずれか一方のティースにおいて、当該ティースのティース開角が、180°/Nc〜257°/Nc(Ncはコア要素数)の範囲内に設定されている。
すなわち、このモータは、1つのステータが、極数の異なるインナーロータとアウターロータとで共用されているデュアルロータ型のモータであり、そのステータには、これらロータの極数よりも少ない個数で、周方向に独立した複数のコア要素が備えられている。そして、極数の多いロータと対向しているコア要素のティースのティース開角が、180°/Nc〜257°/Nc(Ncはコア要素数)の範囲内に設定されている。
このように、極数の多いロータと対向しているコア要素のティースのティース開角を所定の範囲に設定することで、後述するように、デュアルロータ型のモータにおいて、従来の洗濯機と遜色無いレベルにコギングトルクを低減でき、騒音等を抑制できる。
更に、前記インナーロータ及び前記アウターロータのうち、極数の少ないロータと対向している、前記内側ティース及び前記外側ティースの他方のティースにおいて、当該ティースのティース開角が、96°/Nc〜342°/Nc(Ncはコア要素数)の範囲内に設定するのが好ましい。
そうすれば、後述するように、デュアルロータ型のモータにおいて、従来の洗濯機と遜色無いレベルに相互リップルを低減できるので、よりいっそう騒音等を抑制できる。
具体的には、前記インナーロータ及び前記アウターロータのうち、極数の少ないロータの極数をP1とし、極数の多いロータの極数をP2とした場合に、次の各条件を満たすモータに適用するのが好ましい。
Nc=12n
P1=(6±1)・2n
P2=(6±2)・2n
(nは1以上の整数)
Nc=6n
P1=6n±2
P2=6n±4
(nは2以上の整数)
Nc=6n
P1=6n±4
P2=6n±8
(nは2以上の整数)
これら条件を満たすモータであれば、コギングトルクや相互リップルの低減が効果的に実現できる。
また、このようなデュアルロータ型のモータは、洗濯機に好適である。すなわち、このようなモータと、タブの内部に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムの内部に回転可能に設けられたパルセータと、を備えた洗濯機であって、前記ドラムに、前記インナーロータ及び前記アウターロータのいずれか一方が連結され、前記パルセータに、前記インナーロータ及び前記アウターロータの他方が連結されているようにするとよい。
そうすれば、騒音や振動を抑制しながら、ドラム及びパルセータの双方で高トルクが発揮できる洗濯機を実現することができる。
特にこの場合、前記ドラムに前記インナーロータが連結され、前記パルセータに前記アウターロータが連結されているようにするとよい。
そうすれば、構造上、相対的に高いトルクを、相対的に高トルクが求められるパルセータで発揮させることができるので、より効率的である。
(第3の技術)
第3の技術の1つは、回転軸まわりに2つのシャフトを個別に回転駆動する洗濯機用のモータに関する。
前記モータは、前記シャフトの一方に連結されて回転自在なインナーロータと、前記インナーロータの外周側に配置され、前記シャフトの他方に連結されて回転自在なアウターロータと、前記インナーロータと前記アウターロータとの間に配置され、これらインナーロータ及びアウターロータで共用されるステータと、を備える。前記ステータは、各々が分離独立して配置される複数のコア要素と、インシュレータを介して、前記コア要素の各々の周囲にワイヤを巻回して形成される複数のコイルと、熱硬化性樹脂によって成形され、前記コア要素、前記コイル、及び前記インシュレータを埋設する樹脂成形体と、を有している。前記インシュレータは、複数の前記コア要素を間に挟み込んだ状態で、軸方向に突き合わせて連結される一対の環状連結体で構成されている。そして、前記環状連結体の少なくとも一方が一体に形成された主連結体とされ、当該主連結体に、前記コア要素の各々が嵌入される複数のコア嵌入部が周方向に略等間隔で設けられている。
すなわち、このモータによれば、複数のコア要素と複数のコイルとの間に介在するインシュレータが、軸方向に突き合わせて連結される一対の環状連結体で構成されていて、その少なくとも一方が、一体に形成された主連結体とされている。そして、その主連結体に、コア要素の各々が嵌入される複数のコア嵌入部が周方向に等間隔で設けられているので、これらコア嵌入部にコア要素の各々を1個ずつ嵌入する単純作業を繰り返すだけで、各コア要素を適切な位置に配置できる。従って、極数が多いデュアルロータ型のモータのステータであっても、効率的に製造できる。
前記環状連結体の他方は、円弧形状をした複数の連結要素を連結して形成される副連結体で構成するのが好ましい。
主連結体に連結される環状連結体が、一体に形成されていると、その環状連結体のコア嵌入部が全てのコア要素の位置に一致しないと嵌入できないため、連結が困難であるが、連結要素に分割されている副連結体であれば、連結が容易になり、効率よく作業できる。
この場合、前記副連結体に、前記コイルから導出される前記ワイヤの端部が接続される端子部を配置するのが好ましい。
そうすれば、安定した主連結体を下側にして取り扱うことにより、副連結体に配置されている端支部が上側に位置することになるので、接続処理が容易に行える。
前記主連結体は、絶縁性樹脂とCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とで構成してもよい。
そうすれば、主連結体の剛性をより強化することができるので、主連結体の変形や破損が抑制でき、より取り扱いが容易になる。
その場合、前記CFRPを構成している樹脂は、前記絶縁性樹脂と同種の樹脂にするのが好ましい。
そうすれば、CFRPと絶縁性樹脂との一体性が向上するので、主連結体の剛性を更に向上させることができる。
複数の前記コイルは、例えば、6本の前記ワイヤの各々を一定の順序で複数の前記コア要素の各々に巻回することによって形成し、一対の前記環状連結体を連結して構成されるコア保持構造体の外周の両縁部に、軸方向に張り出すフランジ部を設け、前記フランジ部の各々に沿って、前記ワイヤの渡り線を3本ずつ配索するようにするとよい。
ワイヤの巻き崩れを防止する両側のフランジ部に3本ずつ振り分けて渡り線を配索することで、インシュレータ、ひいてはステータの軸方向の高さを抑制することができるので、モータの小型化が図れる。
一対の前記環状連結体を連結して構成されるコア保持構造体の内周面及び外周面には、前記コア要素が露出することによって内側コア面部及び外側コア面部が形成されているが、前記内側コア面部は、前記インシュレータの内周面よりも内側に位置し、前記外側コア面部は、前記インシュレータの外周面よりも外側に位置しているようにするのが好ましい。
そうすれば、成形時の金型に、内側コア面部及び外側コア面部が接することとなるため、コア要素を径方向に精度高く位置決めでき、ステータの真円度を高めることができる。
その結果、インナーロータやアウターロータとの間の隙間を小さくできるようになり、モータ性能の向上が図れる。
また、隣り合った前記コア嵌入部の内周側又は外周側のいずれか一方の両縁部の間を、連結壁部で連結し、軸方向から見て、前記連結壁部の中央部の厚みがその両端部よりも大きく形成されているようにするとよい。
そうすれば、主連結体の剛性を向上させることができる。
なお、一体形の主連結体を用いずに、複数に分割されている連結体で環状連結体の双方を構成することもできる。具体的には、前記環状連結体の双方を、前記コア要素の各々が嵌入される複数のコア嵌入部が周方向に略等間隔で設けられている円弧形状をした複数の連結要素を連結して形成し、一方の前記環状連結体における前記連結要素の各々の間の連結部位と、他方の前記環状連結体における前記連結要素の各々の間の連結部位とが、周方向にずれて配置されているようにするとよい。
この場合、上下の環状連結体で、連結部位が互い違いになっているため、双方の環状連結体が複数の連結要素で構成されていても、一体化でき、安定して支持できる。一体形の主連結体を成形する金型に比べて金型を小さくできるので、金型のコストを大幅に低減できる。
更には、一方の前記環状連結体の前記連結要素の個数が、他方の前記環状連結体の前記連結要素の個数よりも少なく構成され、前記連結要素の個数の多い前記環状連結体に、前記コイルから導出される前記ワイヤの端部が接続される端子部が配置されているようにするとよい。
そうすれば、端支部を上側にして取り扱うことにより、分割数が少なくて強度の高い環状連結体が下側になるので安定して支持でき、接続処理も容易に行える。
第3の技術の他の1つは、洗濯機に関する。
前記洗濯機は、洗濯時に回転駆動されるパルセータと、洗濯時及び脱水時に回転駆動されるドラムと、上述したモータと、を備え、前記シャフトの一方が前記ドラムに連結され、前記シャフトの他方が前記パルセータに連結されている。
上述したモータであれば、極数が多いデュアルロータ型のモータのステータを効率的に製造できるうえに、モータの巨大化を回避しながら、ドラムが連結されるインナーロータ側でも比較的高トルクを得ることができるので、多様な運転制御に対応できる洗濯機を安価で提供できる。
第3の技術の他の1つは、上述した洗濯機用のモータの製造方法に関する。
前記製造方法は、前記コア嵌入部の各々に前記コア要素の各々を嵌入した後、前記主連結体に前記環状連結体の他方を突き合わせて連結することにより、コア保持構造体を形成する第1ステップと、前記コア保持構造体を巻線機にセットし、前記インシュレータで被覆された前記コア要素の各々に、ワイヤを巻回して複数の前記コイルを形成することにより、巻線体を形成する第2ステップと、前記巻線体を金型にセットし、前記熱硬化性樹脂を用いてモールド成形する第3ステップと、を含む。
すなわち、この製造方法によれば、単純作業で形成されるコア保持構造体を巻線機で機械的に巻線処理して巻線体を形成することができ、その巻線体を金型にセットしてモールド成形することができるので、比較的容易に製造することができ、生産性に優れる。
前記第2ステップでは、例えば、3本の前記ワイヤを同時に同じ動作で巻回する処理が2回行われ、1回目に処理される3本の前記ワイヤの渡り線を、前記コア保持構造体の外周の両縁部から軸方向に張り出す一対のフランジ部のうち、当該フランジ部の一方に沿って配索し、2回目に処理される3本の前記ワイヤの渡り線を、前記フランジ部の他方に沿って配索するようにするとよい。
そうすれば、巻線処理ごとに発生する渡り線を効率よく配索することができ、ワイヤの配索構造が簡素化されるので、巻線機の処理効率を向上させることができる。
前記主連結体には、例えば、前記コア嵌入部の各々を連結する環状支持部を除去可能に設け、前記第3ステップの後に、前記環状支持部を除去する第4ステップを更に含むようにしてもよい。
そうすれば、環状支持部で主連結体の剛性が強化できるので、巻線処理や成形処理の際に、コア保持構造体や巻線体の取り扱いが容易になる。更に、コア保持構造体等の変形を抑制した状態でモールド成形できるので、モータ品質の向上も図れる。
前記巻線体の内側及び外側の少なくともいずれか一方の周面と、当該周面と対向する前記金型の対向面との間に位置決め構造を設け、前記位置決め構造により、前記巻線体を、前記金型に対して周方向に位置決めした状態でモールド成形するようにしてもよい。
前記位置決め構造は、前記周面に露出した前記コア要素に形成された凹部と、当該凹部に嵌合するように前記金型に形成された凸部とで構成してもよいし、前記周面に面する複数のスロット開口と、当該スロット開口に嵌合するように前記金型に形成された嵌合突部とで構成してもよい。特に、前記位置決め構造は、前記巻線体の内周面と、当該内周面と対向する前記金型の対向面との間に設けるのが好ましい。
そうすれば、巻線体を金型に対して精度高く周方向に位置決めすることができる。
前記コア保持構造体の内側及び外側のいずれか一方の周面に挟持構造を設け、前記巻線機が、前記挟持構造を挟み込んだ状態で前記ワイヤの巻回処理が行われるようにしてもよい。
前記挟持構造は、前記周面に露出した前記コア要素に形成された溝部で構成してもよいし、前記周面から突出した前記コア要素の両側の縁部で構成してもよい。
そうすれば、コア保持構造体を強固に支持することができ、安定して巻線処理が行える。
更に、前記第3ステップで、前記巻線体の外周側に面する前記インシュレータが前記金型に接するように、当該巻線体を当該金型にセットしてもよい。
そうすれば、巻線体の内周面と金型との密着性が高まるため、巻線体の内周側の真円度を向上させることができる。
(第4の技術)
第4の技術は、洗濯物を収容する回転可能なドラムと、該ドラムの回転軸心と同心状に設けられ、該ドラム内の洗濯物を撹拌させるパルセータと、前記ドラム及び前記パルセータをそれぞれ独立して回転させるモータと、を備えた洗濯機のモータ制御装置を対象とする。
前記モータに接続され、前記ドラムを回転駆動させるためのドラム側インバータ回路と、前記モータに接続され、前記パルセータを回転駆動させるためのパルセータ側インバータ回路と、前記ドラム及び前記パルセータの回転速度をそれぞれ検出するための回転速度検出手段と、指令信号と搬送波とを用いてPWM制御された電気信号によって、前記ドラム側インバータ回路及び前記パルセータ側インバータ回路を介して、前記モータの作動制御を行う制御装置と、をさらに備える。
前記ドラム側インバータ回路及び前記パルセータ側インバータ回路は、互いに直列に接続された上アーム側スイッチング素子と下アーム側スイッチング素子とからなるインバータが、複数個並列に接続されて構成されている。
前記制御装置は、前記ドラム及び前記パルセータを同じ方向に回転させる脱水工程の終了後の減速工程において、前記回転速度検出手段によってそれぞれ検出される、前記ドラム及び前記パルセータの検出回転速度を同程度にするための同期制御と、前記上アーム側スイッチング素子の全てをオンさせかつ前記下アーム側スイッチング素子の全てをオフさせて、前記モータに短絡ブレーキをかける上アーム側短絡ブレーキ制御と、前記上アーム側スイッチング素子の全てをオフさせかつ前記下アーム側スイッチング素子の全てをオンさせて、前記モータに短絡ブレーキをかける下アーム側短絡ブレーキ制御と、を実行するとともに、前記搬送波の1周期あたりにおける、前記検出回転速度に基づいて前記PWM制御によって設定された、前記同期制御を実行する期間である同期制御期間の長さを変えずに、前記上アーム側短絡ブレーキ制御を実行する期間である上アーム側短絡ブレーキ期間を短縮させるとともに、前記下アーム側短絡ブレーキ制御を実行する期間である下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行するように構成されている。
この構成によると、前記ドラムと前記パルセータとを同期制御しながら減速させる際の減速時間を短縮させることができる。
すなわち、PWM制御に用いられる搬送波の1周期あたりには、ドラム及びパルセータの検出回転速度に基づいて、前記PWM制御によって設定された電気信号による同期制御を行い、ドラム及びパルセータ(詳しくは、モータ)の回転速度を調節する同期制御期間と、インバータ回路の上アーム側を短絡させてモータに短絡ブレーキを掛ける上アーム側短絡ブレーキ期間と、インバータ回路の下アーム側を短絡させてモータに短絡ブレーキを掛ける下アーム側短絡ブレーキ期間とがある。
制御装置は、この3期間に対して、前記同期制御期間の長さを変えずに、前記上アーム側短絡ブレーキ期間を短縮させるとともに、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行する。
一般に、上アーム側短絡ブレーキは、電源電圧の影響を受けるため、下アーム短絡ブレーキと比べてブレーキ効果が低い。そこで、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行することにより、モータに、よりブレーキ効果の大きい下アーム側短絡ブレーキをかける期間を長くするとともに、適切に同期制御を実行することができる。
この結果、ドラムとパルセータとを同期制御して減速させる際の減速時間を短縮させることができる。
また、上アーム側短絡ブレーキ期間を短縮させることで、モータからの回生電流が電源側に流れて、電源を破壊させるリスクを低減することができる。
前記洗濯機のモータ制御装置の一実施形態において、前記搬送波は三角波からなり、前記制御装置は、前記PWM制御において前記指令信号と前記搬送波とによって設定される、前記上アーム側スイッチング素子をオンさせるしきい値を、前記三角波の山側にそれぞれ同じ大きさだけずらすことで、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させるように構成されている、ことが好ましい。
すなわち、上アーム側スイッチング素子をオンさせるしきい値を、前記搬送波の山側に同じ大きさだけずらすようにすることで、上アーム側スイッチング素子の一部及び下アーム側スイッチング素子の一部をオンさせて、ドラム及びパルセータの回転速度を同程度にする同期制御期間の長さについては、変化させないようにすることができるとともに、上アーム側スイッチング素子の全てをオフさせかつ下アーム側スイッチング素子の全てをオンさせる下アーム側短絡ブレーキの期間を拡大することができる。
これにより、前記同期制御期間の長さを変えないようにするとともに、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させることができる。
前記洗濯機のモータ制御装置において、前記制御装置は、前記上アーム側スイッチング素子のうち、前記PWM制御におけるデューティ比が最も小さい前記上アーム側スイッチング素子における前記デューティ比に基づいて、前記下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定するように構成されている、ことが好ましい。
すなわち、下アーム側短絡ブレーキ制御では、上アーム側スイッチング素子のオンする期間が短縮されるため、上アーム側スイッチング素子の、前記PWM制御におけるデューティ比が小さくなる。
そのため、上アーム側スイッチング素子のうち、PWM制御におけるデューティ比が最も小さい上アーム側スイッチング素子のデューティ比を、デューティ比0%にするまでが、拡大させることのできる下アーム側短絡ブレーキ期間の最大の長さになる。そのため、上述のように制御することで、適切に下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大することができる。
前記洗濯機のモータ制御装置において、前記制御装置は、前記ドラム及び前記パルセータの前記検出回転速度と予め設定された目標回転速度との差に基づいて、前記下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定するように構成されている、ことが好ましい。
この構成によると、ドラム及びパルセータの検出回転速度と予め設定された目標回転速度とを比較しながら、ドラム及びパルセータを減速させることができるため、ドラム及びパルセータを早くかつ正確に減速させて、停止させることができる。
また、検出回転速度が目標回転速度よりも大きく、モータからの回生電力を消費しきれない可能性があるときなどには、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を長くすることによって、適切にモータからの回生電力を消費することができる。
前記洗濯機のモータ制御装置において、前記ドラム側インバータ回路及び前記パルセータ側インバータ回路は互いに並列に接続されており、前記ドラム側インバータ回路及び前記パルセータ側インバータ回路に印加される直流電圧を検出する電圧検出手段をさらに備え、前記制御装置は、前記電圧検出手段によって検出される検出電圧が、予め設定された目標電圧よりも高くなるほど、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を長くするように構成されている、ことが好ましい。
すなわち、モータからの回生電力を消費しきれない場合、モータ側の電位が直流電源の電位よりも高くなり、電圧検出手段によって検出される検出電圧が高くなる。そこで、前記検出電圧が目標電圧よりも高くなるほど、下アーム側短絡ブレーキ期間を長くすることによって、前記回生電力を消費できるようになる。この結果、前記回生電力を適切に消費しながら、ドラム及びパルセータを減速させることができる。
(第5の技術)
第5の技術は、縦型の洗濯機であって、タブの内部に回転可能に設けられたドラムと、 前記ドラムの底部に回転可能に設けられたパルセータと、前記ドラム及び前記パルセータの各々を個別に駆動するモータと、前記モータを制御する制御装置と、を備える。そして、前記制御装置が、洗い処理及び濯ぎ処理におけるいずれかの行程において、前記ドラム及び前記パルセータの双方を同時に独立して回転させる二重回転制御部を有している。
すなわち、この洗濯機によれば、洗い処理や濯ぎ処理において、ドラム及びパルセータの双方が同時に独立して回転されるので、方向や流速が様々な水流をドラム内で発生させることができ、水中で洗濯物を適度に分散させながら、多種多様な洗濯物に対して効果的に洗いや濯ぎを行うことができる。
具体的には、前記二重回転制御部が、前記ドラムと前記パルセータとを同一の方向に異なる回転数で回転させるようにするとよい。
そうすれば、洗濯物を回転させながら緩やかにドラムの外側や内側に移動させることができ、洗濯物を水中で適度に分散させながら、柔らかいタッチで洗いや濯ぎを行うことができる。
この場合、前記ドラム及び前記パルセータのうち、前記ドラムのみが前記モータによって回転駆動され、前記パルセータが前記ドラムの回転に付随して回転するようにしてもよい。
そうすれば、消費電力を抑制しながら、パルセータを、ドラムの回転に付随してドラムと同一方向に低い回転数で回転させることができる。
また、前記二重回転制御部が、前記ドラム及び前記パルセータの各々を異なる周期で反転させながら回転させるようにしてもよい。
この場合でも、洗濯物を水中で適度に分散させながら、多種多様な洗濯物に対して効果的に洗いや濯ぎを行うことができる。
また、前記二重回転制御部が、前記ドラムを同一方向に回転させた状態で、前記パルセータを反転させながら回転させるようにしてもよい。
そうすれば、洗濯物を水中で適度に分散させながら、多種多様な洗濯物に対して効果的に洗いや濯ぎを行うことができ、少ない水量で効率よく洗い処理や濯ぎ処理を行うことができる。
また、前記二重回転制御部が、目標回転数に達するまでの起動時間、及び目標回転数から停止するまでの終了時間の少なくともいずれか一方を、前記ドラムと前記パルセータとで異ならせるようにしてもよい。
そうすれば、ドラムやパルセータの慣性力に応じた効率的な起動が行えるため、消費電力を低減できる。
この場合、前記二重回転制御部が、前記モータによる駆動の開始タイミングを、前記ドラムと前記パルセータとで異ならせるようにするとよい。
そうすれば、ドラムとパルセータとでモータによる駆動時間を同一にして、ドラムとパルセータとが同時に目標回転数で回転する期間に差が生じても、ドラム及びパルセータの目標回転数に達するタイミングを一致させることによってその期間を最適化することができる。
またその場合、前記二重回転制御部が、前記モータによる駆動期間及び駆動停止期間の少なくともいずれか一方を、前記ドラムと前記パルセータとで異ならせるようにしてもよい。
そうすれば、ドラムとパルセータとで、回転期間及び停止期間の長さ及びタイミングを一致させることができ、洗い処理や濯ぎ処理が効率よく行える。
また、前記二重回転制御部が、前記ドラム及び前記パルセータを、互いに逆方向に間欠的に回転させるとともに、前記ドラム及び前記パルセータの少なくともいずれか一方において、間欠的に行われる各回転の回転期間及びこれら回転期間の間の各停止期間の少なくともいずれか一方の長さを異ならせるようにしてもよい。
ドラムとパルセータとを互いに逆方向に間欠的に回転させた場合、ドラムの内部に水流が滞る状態が生じて、滞留する洗濯物が発生する傾向があるが、このように、各回転期間や各停止期間の長さを異ならせることで、ドラムの内部に水流が滞る状態が生じるのを防ぐことができ、洗濯物を全体的に移動させることができる。
また、前記二重回転制御部が、前記ドラム及び前記パルセータを、互いに逆方向に間欠的に回転させるとともに、前記ドラム及び前記パルセータの少なくともいずれか一方において、間欠的に行われる各回転の回転数を異ならせるようにしてもよい。
この場合でも、各回転期間や各停止期間の長さを異ならせるのと同様の効果を得ることができる。
(第6の技術)
第6の技術は、洗濯物を収容する回転可能なドラムと、該ドラムの回転軸心と同心状に設けられ、該ドラム内の洗濯物を撹拌させるパルセータと、前記ドラム及び前記パルセータをそれぞれ独立して回転させるモータと、該モータを駆動するためのインバータと、を備えた洗濯機を対象とする。
前記モータが作動するときに、該モータに加えられる負荷を検出する負荷検出手段と、前記負荷検出手段によって検出された検出負荷に基づいて、前記インバータを介して、前記モータに電気信号を付与して、前記ドラム及び前記パルセータの動作を制御する制御装置と、をさらに備える。
前記制御装置は、前記ドラムを正回転させかつ前記パルセータを逆回転させる第1相反駆動モードと、前記ドラムを逆回転させかつ前記パルセータを正回転させる第2相反駆動モードとを、停止期間を挟みながら交互に実行するとともに、前記検出負荷が、予め設定された目標負荷以下になるように、前記ドラム及び前記パルセータの少なくとも一方の、オン及びオフの少なくとも一方のタイミングを制御する負荷低減補正制御を実行するように構成されている。
この構成によると、ドラム内の洗濯物の慣性力を利用することで、モータに加えられる負荷を低減させることができる。
具体的には、第1又は第2相反駆動モードをオンして、ドラムとパルセータとを相反回転させると、ドラム内の洗濯物は、ドラム又はパルセータのいずれかに連れ回される。これにより、ドラム内の洗濯物には慣性力が発生する。そして、第1又は第2相反駆動モードへ切り替える際に、ドラム又はパルセータのオン又はオフのタイミングを制御することで、前記洗濯物の慣性力を利用して、ドラム又はパルセータの回転方向を反転させる。
例えば、洗濯物がパルセータの回転方向に連れ回っているときには、ドラムをパルセータよりも早くオンして、回転方向を反転させることで、洗濯物の慣性を利用して、ドラムの回転方向を反転させることができる。これにより、ドラム又はパルセータの回転方向を反転させる際に、モータに加えられる負荷が低減される。
前記洗濯機において、前記負荷低減補正制御は、前記停止期間が経過した後、第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードのオン時に、前記ドラム又は前記パルセータの一方をオンさせてから、第1所定時間が経過した後に、前記ドラム又は前記パルセータの他方をオンさせる制御であることが望ましい。
この構成によると、第1又は第2相反駆動モードのオン時に、ドラム又はパルセータの一方を、他方よりも早くオンさせることができる。これにより、ドラム又はパルセータの一方を洗濯物の慣性力を利用して反転させることができる。例えば、洗濯物がパルセータの回転方向に連れ回っているときには、ドラムをパルセータよりも早くオンさせて、回転方向を反転させることで、パルセータによって洗濯物の回転方向が反転される前に、ドラムの回転方向を反転させることができる。
これにより、ドラムの回転方向を反転させる時には、該ドラムの反転後の回転方向と同じ方向を向いた、洗濯物の慣性力を利用することができる。これにより、ドラム又はパルセータの回転方向を反転させる際に、モータに加えられる負荷がより効率的に低減される。
また、前記洗濯機において、前記負荷低減補正制御は、前記停止期間に入る前の、第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードのオフ時に、前記ドラム又は前記パルセータの一方をオフさせてから、第2所定時間が経過した後に、前記ドラム又は前記パルセータの他方をオフさせる制御であってもよい。
この構成によると、第1又は第2相反駆動モードのオフ時に、ドラム又はパルセータの一方を、他方よりも遅くオフさせることで、換言すると、ドラム又はパルセータの一方を、他方よりも長く回転させることで、洗濯物により強い慣性力を持たせることができる。
例えば、洗濯物がパルセータに連れ回っているときに、パルセータをドラムよりも遅くオフさせるようにすると、洗濯物にはパルセータの回転方向と同じ方向のより大きな慣性力が残る。これにより、ドラムの回転方向を反転させる時には、該ドラムの反転後の回転方向と同じ方向を向いた、洗濯物の慣性力がより大きく残っている。これにより、洗濯物の慣性力を利用してドラムの回転方向を反転させることができる。このようにして、ドラム又はパルセータの回転方向を反転させる際に、モータに加えられる負荷がより効率的に低減される。
前記洗濯機において、前記制御装置は、前記停止期間が予め設定された基準時間よりも短い場合に、前記負荷低減補正制御を実行するように構成されている、ことが好ましい。
すなわち、停止期間として、ドラム及びパルセータの慣性力が十分に低下する程度に長い時間(以下、基準時間という)を設定している場合には、ドラム及びパルセータの回転方向を反転させる際にモータに加えられる負荷は、モータの起動不良が発生するほど大きくはならない。そのため、停止時間が、基準時間よりも短い場合にのみ、負荷低減補正制御を実行するようにすることで、適切に負荷低減補正制御を実行することができる。
前記洗濯機において、前記ドラム内に収容された洗濯物が、前記ドラムの回転方向と同じ方向に回転しているときには、前記停止期間の間に、前記ドラムの回転を減速させて停止させ、該停止後に、次の第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードをオンするように構成されていることが好ましい。
すなわち、洗濯物がドラムに張り付いていると、洗濯物がドラムの回転方向に連れ回ることがあるが、このときドラムには、ドラム自身の慣性力に加え、洗濯物の慣性力が作用するため、ドラムの回転方向を反転させる際に、モータには過大な負荷が加えられてしまう。
そこで、洗濯物がドラムの回転方向と同じ方向に回転しているときは、第1相反駆動モードと第2相反駆動モードとの間の停止期間において、ドラムの回転を減速させて停止させ、該停止後に、次の第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードをオンするようにする。これにより、ドラムに慣性力が残っていない状態で、該ドラムの回転方向を反転させることとなるため、モータに過大な負荷が加えられるのを防止することができる。
第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードのオン時に、ドラム又はパルセータの一方をオンさせてから、第1所定時間が経過した後に、ドラム又はパルセータの他方をオンさせるように構成された洗濯機において、前記洗濯機に加えられている振動を検出する振動検出手段をさらに備え、前記制御装置は、前記振動検出手段によって検出された検出振動が、予め定められた所定振動よりも大きいときには、前記第1所定時間を短くするよう構成されている、ことが好ましい。
すなわち、第1所定時間の間は、ドラム又はパルセータの一方のみが洗濯物の回転方向と同じ方向に回転するところ、洗濯物に偏りがあると、第1所定時間の間に洗濯物の遠心力によって洗濯機に強い振動が加えられるおそれがある。
そこで、振動検出手段によって、所定振動よりも大きい振動が検出されたときには、第1所定時間を短くするようにして、早期に洗濯物の回転方向とは逆方向の水流を発生させて、洗濯物の回転を該水流によって減速させ、洗濯物から洗濯機に作用する遠心力を減少させる。これにより、洗濯機に振動が働くのを防止することができる。
また、第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードのオフ時に、前記ドラム又は前記パルセータの一方をオフさせてから、第2所定時間が経過した後に、前記ドラム又は前記パルセータの他方をオフさせるように構成されている洗濯機において、前記洗濯機に加えられている振動を検出する振動検出手段をさらに備え、前記制御装置は、前記振動検出手段によって検出された検出振動が、予め定められた所定振動よりも大きいときには、前記第2所定時間を短くするよう構成されている、ことが好ましい。
すなわち、第2所定時間の間は、ドラム又はパルセータの一方を、他方よりも長く回転させて、洗濯物により大きい慣性力を発生させるところ、洗濯物に偏りがあると、第2所定時間の間に洗濯物の遠心力によって洗濯機に強い振動が加えられるおそれがある。そこで、振動検出手段によって、所定振動よりも大きい振動が検出されたときには、第2所定時間を短くするようにして、洗濯物の回転による遠心力を減少させる。これにより、洗濯機の振動を減少させることができる。
第6の技術の他の1つは、洗濯物を収容する回転可能なドラムと、該ドラムの回転軸心と同心状に設けられ、該ドラム内の洗濯物を撹拌させるパルセータと、前記ドラム及び前記パルセータをそれぞれ独立して回転させるモータと、該モータを駆動するためのインバータと、を備えた洗濯機を対象とする。
前記モータが作動するときに、該モータに加えられる負荷を検出する負荷検出手段と、前記負荷検出手段によって検出された検出負荷に基づいて、前記インバータを介して、前記モータに電気信号を付与して、前記ドラム及び前記パルセータの動作を制御する制御装置と、をさらに備える。
前記制御装置は、前記ドラムを正回転させかつ前記パルセータを逆回転させる第1相反駆動モードと、前記ドラムを逆回転させかつ前記パルセータを正回転させる第2相反駆動モードとを、停止期間を挟みながら交互に実行するとともに、前記ドラム内に収容された洗濯物が、前記ドラムの回転方向と同じ方向に回転しているときには、前記停止期間の間に、前記ドラムの回転を減速させて停止させ、該停止後に、次の第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードをオンするように構成されている。
すなわち、例えば、洗濯物がドラムに張り付いていると、洗濯物がドラムの回転方向に連れ回ることがあるが、このときドラムには、ドラム自身の慣性力に加えて、洗濯物の慣性力が作用するため、ドラムの回転方向を反転させる際に、モータには過大な負荷が加えられてしまう。
そこで、洗濯物がドラムの回転方向と同じ方向に回転しているときには、第1相反駆動モードと第2相反駆動モードとの間の停止期間において、ドラムの回転を減速させて停止させ、該停止後に、次の第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードをするようにする。これにより、ドラムに慣性力が残っていない状態で、該ドラムの回転方向を反転させることとなるため、モータに過大な負荷が加えられるのを防止することができる。
(第7の技術)
第7の技術の洗濯機は、ドラムの脱水運転時に、ドラムとパルセータとの間に意図的に所定の速度差を与えることでアンバランス量を周期的に変化させ、その後に該アンバランス量が最小になるときにドラム及びパルセータの速度が同一になるように回転制御を行うようにした。
すなわち、洗濯物を収容する回転可能なドラムと、該ドラムの回転軸心と同心状に設けられ、該ドラム内の洗濯物を撹拌させるパルセータと、該ドラム及び該パルセータをそれぞれ独立して回転させるモータとを備えた洗濯機である。
前記モータは、前記パルセータを回転させる第1ロータと、前記ドラムを回転させる第2ロータとを有し、前記ドラム及び前記パルセータの少なくともいずれか一方の回転時のアンバランス量を検出するアンバランス検出手段と、前記アンバランス量の検出値に基づいて前記第1及び前記第2ロータの回転動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、洗濯物の脱水運転時に、前記ドラムと前記パルセータとの間に所定の回転速度差を与えることでアンバランス量を周期的に変化させ、該アンバランス量が最小になるときに前記ドラム及び前記パルセータの速度が同一になるように回転制御を行う。
この洗濯機によると、制御部は、ドラムとパルセータとの間に所定の速度差を与えることでアンバランス量を周期的に変化させ、アンバランス量の変化が最小になるようなタイミングでドラムとパルセータとの速度が同一になるように速度制御を行う。これにより、アンバランスを最小の状態にしてドラム及びパルセータを同一速度で回転させることができる。すなわち、アンバランスの発生を防止することができる。また、ドラムやパルセータの回転を停止させずにアンバランスの発生を防止できるため、脱水時間を大幅に短縮することができる。
前記アンバランス検出手段は、前記ドラム及び前記パルセータが同一速度で回転している状態で前記ドラム及び前記パルセータのアンバランス量を検出するものであり、前記制御部は、前記ドラム及び前記パルセータの少なくともいずれか一方のアンバランス量の検出値が所定値より大きく、かつ、前記アンバランス量の検出値に基づいて算出される前記ドラムのアンバランスモーメントと前記パルセータのアンバランスモーメントとの差が所定値以下の場合、前記回転制御を実行するように構成することができる。
そうした場合、回転制御を行うか否かをアンバランス量及びアンバランスモーメントに基づいて判断する。このような判断基準を設けることで、適性度及び必要度のより高い条件で回転制御を実施することができるため、より効果的にアンバランス発生を防止することができる。
前記アンバランス検出手段は、前記ドラム及び前記パルセータが同一速度で回転している状態で前記ドラム及び前記パルセータのアンバランス量を検出するものとし、前記制御部は、前記アンバランス量の検出値に応じてアンバランスの解消方法を選択的に変更するように構成してもよい。
そうした場合、制御部がアンバランス量の検出値に応じてアンバランスの解消方法を選択的に変更するため、適性度及び必要度のより高いアンバランス解消方法を適用することができる。これにより、より効果的にアンバランス発生を防止することができる方法が選択でき、脱水時間をさらに短縮することが可能になる。
前記制御部は、前記ドラム及び前記パルセータの前記アンバランス量の検出値がともに所定値以下の場合、前記回転制御を行わずに、前記ドラム及び前記パルセータの回転速度を同一に維持したまま上昇させるように構成してもよい。
そうすれば、アンバランス量が所定の基準値以下の場合、回転制御を行わずにドラム及びパルセータの回転速度を加速するため、脱水時間を短縮することができる。
また、前記制御部は、前記ドラム及び前記パルセータのいずれか一方のアンバランス量の検出値が所定値より大きく、かつ、前記アンバランス量の検出値に基づいて算出される前記ドラムのアンバランスモーメントと前記パルセータのアンバランスモーメントとの差が所定値より大きい場合、前記ドラム及び前記パルセータのうちでアンバランスモーメントが大きい方に所定の速度変動を与えてアンバランス状態を変化させるようにしてもよい。
そうすれば、アンバランスモーメントの差に基づいて、制御部がドラム又はパルセータに所定の速度制御を与えることで、ドラムやパルセータを停止することなく、短時間でアンバランスを解消することができる。これにより、脱水時間を大幅に短縮することができる。
第7の技術の他の1つは、洗濯物を収容する回転可能なドラムと、該ドラムの回転軸心と同心状に設けられ、該ドラム内の洗濯物を撹拌させるパルセータとをそれぞれ独立して回転させるモータを備える洗濯機の制御方法である。
その制御方法は、洗濯物の脱水運転時において、前記ドラムと前記パルセータとの間に所定の速度差を与えることでアンバランス量を周期的に変化させるステップと、前記相対回転期間中で、前記ドラム及び前記パルセータの少なくともいずれか一方のアンバランス量を検出するステップと、前記アンバランス量の検出値が最小になるときに前記ドラム及び前記パルセータの速度が同一になるようにするステップとを含む。
この制御方法によると、アンバランスの検出値を最小の状態にして、ドラム及びパルセータを同一速度で回転させることができる。すなわち、アンバランスの発生を防止することができる。また、ドラムやパルセータの回転を停止させずにアンバランスの発生を防止できるため、脱水時間を大幅に短縮することができる。
(第8の技術)
第8の技術は、洗濯物を収容するドラムと、該ドラム内の該洗濯物を撹拌させるパルセータと、該ドラム及び該パルセータをそれぞれ独立して回転させるモータとを備えた洗濯機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、前記モータは、環状のステータと、該ステータの外側に配設されて前記パルセータを回転させるアウターロータと、該ステータの内側に配設されて前記ドラムを回転させるインナーロータとを有し、前記アウターロータ及び前記インナーロータの回転速度を検出する速度検出部と、前記アウターロータ及び前記インナーロータの回転動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ドラムの脱水運転時に、前記速度検出部で検出された前記インナーロータの回転速度を目標速度として、前記アウターロータの回転速度が該目標速度と略一致するように該アウターロータの回転動作を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
この構成では、ドラムの脱水運転時に、インナーロータの回転速度を目標速度として、アウターロータの回転速度を目標速度に略一致させるようにしている。このように、脱水運転時にアウターロータ及びインナーロータを同期運転させて速度変動を抑えることで、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
具体的に、脱水運転時に、アウターロータ及びインナーロータを両方とも、目標とする回転速度まで加速しようとすると、両ロータの性能の違いによって互いに異なる加速をしながら目標とする回転速度まで制御されることとなる。そのため、目標とする回転速度に達するまでの間、アウターロータ及びインナーロータを同じ速度で回転数を上げていくことが困難となってしまう。
これに対し、この洗濯機では、目標とする回転速度までインナーロータを加速する一方、アウターロータは、基準となるインナーロータの回転速度を目標速度として追従させるように制御しているので、アウターロータ及びインナーロータの速度差を抑えることができる。また、インナーロータを基準としてアウターロータを追従させているので、制御対象となるロータがランダムな周期で入れ替わることがなく、制御安定性が向上する。
前記速度検出部で検出された前記アウターロータ及び前記インナーロータの回転速度に基づいて、該インナーロータに対する該アウターロータの位相差を算出する位相算出部を備え、前記制御部は、前記ドラムの脱水運転時に、前記位相算出部で算出された前記位相差が所定値よりも大きい場合に、該位相差が所定値よりも小さくなるように該アウターロータの回転動作を制御するように構成してもよい。
この構成では、インナーロータに対するアウターロータの位相差が所定値よりも大きくなった場合に、アウターロータの回転動作を制御して位相差を解消するようにしている。
これにより、ドラムとパルセータとに跨がって配設されていた洗濯物が、ドラムとパルセータとの位置ずれによって引っ張られてしまう前に、この位置ずれを解消することで、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
(第9の技術)
第9の技術は、洗濯物を収容するドラムと、該ドラム内の該洗濯物を撹拌させるパルセータと、該ドラム及び該パルセータをそれぞれ独立して回転させるモータとを備えた洗濯機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、前記モータは、環状のステータと、該ステータの外側に配設されて前記パルセータを回転させるアウターロータと、該ステータの内側に配設されて前記ドラムを回転させるインナーロータとを有し、前記アウターロータ及び前記インナーロータの回転速度を検出する速度検出部と、前記アウターロータ及び前記インナーロータの回転動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ドラムの脱水運転時に、前記アウターロータ及び前記インナーロータを同期運転させて回転速度を加速している最中に前記洗濯物による前記パルセータの前記ドラムへの連れ回りがなくなったと判定した場合に、前記アウターロータを回転させる前記モータへの通電を停止して前記パルセータを回転フリーにするように構成されていることを特徴とするものである。
この構成では、ドラムの脱水運転時に洗濯物によるパルセータの連れ回りがなくなったと判定した場合に、パルセータを回転フリーにするようにしている。
これにより、ドラムに連れ回される洗濯物が回転フリーになったパルセータに擦れてパルセータを連れ回すことにより洗濯物を傷めることがなくなるとともに、アウターロータを回転させるモータへの通電を停止することで消費電力を低減することができる。
前記制御部は、前記アウターロータの設定回転速度に対する前記速度検出部で検出された前記アウターロータの回転速度の変動が所定量よりも大きくなったとき、前記洗濯物による前記パルセータの前記ドラムへの連れ回りがなくなったと判定するように構成してもよい。
この構成では、アウターロータの回転速度の変動からパルセータの連れ回りの有無が判定される。
これにより、パルセータの連れ回りの有無を容易に判定することができる。
また、前記モータに通電される電流を検出する電流検出部を備え、前記制御部は、前記電流検出部で検出された電流を回転座標系に変換した回転座標系電流が所定量よりも小さくなったとき、前記洗濯物による前記パルセータの前記ドラムへの連れ回りがなくなったと判定するように構成してもよい。
この構成では、モータに通電される電流からパルセータの連れ回りの有無が判定される。
これにより、パルセータの連れ回りの有無を容易に判定することができる。
更に、前記制御部は、前記インナーロータが最大回転速度から所定の回転速度まで減速したとき、前記アウターロータの回転動作の制御を再開して前記アウターロータ及び前記インナーロータを同期運転させて回転速度を減速させるように構成してもよい。
この構成では、パルセータを回転フリーにした後、ドラムを回転させるインナーロータが所定の回転速度まで減速したときにアウターロータとインナーロータの同期運転を再開する。
これにより、脱水工程の終わりにおいて、ドラムに連れ回される洗濯物が回転フリーのパルセータに擦れてパルセータを連れ回すことにより洗濯物を傷めることをなくすことができる。
この場合、前記制御部は、前記洗濯物による前記パルセータの前記ドラムへの連れ回りがなくなったと判定したときの前記アウターロータの回転速度を前記所定の回転速度として使用するように構成するのが好ましい。
この構成では、パルセータを回転フリーにしたときの回転速度でパルセータを再び回転させ始めるようにしている。
これにより、洗濯物の重量、状態、種類等に応じた適正なタイミングでパルセータの回転を再開することができ、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
(第10の技術)
第10の技術の洗濯機では、ドラム及びパルセータがそれぞれ独立して回転可能に構成されており、洗濯物の脱水運転時に、パルセータを回転フリーにした状態でドラムを回転制御する一方で、洗濯物によるパルセータのドラムへの連れ回りが生じていると判定した場合に、パルセータを回転フリーの状態からトルク制御モードに切り替えるようにした。
すなわち、その洗濯機は、洗濯物を収容する回転可能なドラムと、該ドラムの回転軸心と同心状に設けられ、該ドラム内の洗濯物を撹拌させるパルセータと、該ドラム及び該パルセータをそれぞれ独立して回転させるモータと、前記モータの回転を制御する制御部とを備えており、前記制御部は、洗濯物の脱水運転時に、前記モータによる前記パルセータの駆動を停止して該パルセータを回転フリーにした状態で前記ドラムを回転制御する一方で、前記洗濯物による前記パルセータの前記ドラムへの連れ回りが生じていると判定した場合に、前記パルセータを回転フリーの状態からトルク指令値を与えて該パルセータのトルクを制御するトルク制御モードに切り替える。
この構成の洗濯機によると、制御部は、脱水運転時に、パルセータを回転フリーにした状態でドラムを回転制御するため、パルセータ駆動に係る消費エネルギーを大幅に削減することができる。
さらに、制御部は、パルセータのドラムへの連れ回りが生じていると判定した場合にパルセータを回転フリーの状態から積極的にトルク制御するように切り替えるように構成されている。パルセータのドラムへの連れ回りが生じている場合には、パルセータ側の逆起電力とドラム側の制御電流が影響し合うことで発生する抵抗力のために、ドラム側モータの負荷が増大し、洗濯機の消費エネルギーが増加している。そのため、パルセータのトルクを積極的に制御することにより、洗濯機トータルの消費エネルギーを減少させるような制御が可能になる。
前記制御部は、前記トルク制御に係るトルク指令値を前記パルセータの被駆動トルク以下とし、かつ、所定のd軸電流を与えて弱め界磁制御を実行するように構成してもよい。
また、前記制御部は、前記制御部は、前記トルク制御に係るトルク指令値を、
トルク指令値=0
で制御するように構成してもよい。
このように、トルク指令値をパルセータの被駆動トルク以下で与えたとき、例えば被駆動トルクのトルク指令値を与えると、連れ回っているパルセータの回転を積極的にサポートすることができ、連れ回りの負荷が軽減する。
そうすると、洗濯機全体としての消費エネルギーを削減することができる。なお、パルセータの被駆動トルク以下とすることで、被駆動トルクによる消費エネルギー以上のエネルギーは必要としないため、消費エネルギーを増加させることにはならない。
また、弱め界磁制御を実行しているため、パルセータのドラムへの連れ回り(以下、単にパルセータの連れ回りともいう)によって誘起される逆起電力を抑制することができるので、モータ12をより高速に回転させることができるようになる。すなわち、脱水運転時に高速域まで安定した動作が可能な洗濯機を実現することができる。
さらに、前述のとおりパルセータ側のトルク指令値を“0”にすることにより、パルセータ側の逆起電力とドラム側の制御電流が影響し合うことで発生する抵抗力を抑制し、モータ(ドラム側)への負荷を低減することができるため、洗濯機トータルの消費エネルギーも低減することが可能になる。
また、前記パルセータの回転速度を検出する速度検出手段を備え、前記制御部は、前記速度検出手段で検出された前記パルセータの回転速度が所定の閾値に達したときに、前記パルセータの前記ドラムへの連れ回りが生じていると判定するように構成してもよい。
なお、この所定の閾値は、パルセータを制御可能な回転速度であれば、可能な限り低い値であることが望ましい。例えば、ホールセンサを用いた制御であれば所定の閾値として10[rpm]を設定する。ただし、10[rpm]に限定されず、所定の閾値は任意に設定することができる。
このように、パルセータの連れ回りが生じているか否かの判断に速度検出手段を用いることで、より直接的に検出された値に基づく判定が可能になる。
この場合、前記制御部は、前記トルク制御モードに切り替えた後に、前記速度検出手段で検出された前記パルセータの回転速度が所定の速度以下になった場合に、前記パルセータを回転フリー状態に戻すように構成するのが好ましい。
この構成によると、制御部がトルク制御モードに切り替えた後に、例えば、洗濯物がほぐれて連れ回りの状態が解除されてパルセータの回転速度が所定速度以下になったときに、パルセータを回転フリー状態に戻すように構成されている。これにより、極低速回転数における制御不安定を防止することができる。
第1の技術によれば、コイルの巻線係数を改善してトルクを効率良く発生させることができる。
第2の技術によれば、コギングトルクや相互リップルを低減でき、騒音や振動を効果的に抑制しながら、2軸を高トルクで駆動できる。
第3の技術によれば、極数が多いデュアルロータ型のモータのステータであっても、効率的に製造できるので、多様な運転制御に対応できる洗濯機を安価で提供できるようになる。
第4の技術によれば、同期制御を実行しつつ、上アーム側短絡ブレーキよりもブレーキ効果の大きい下アーム側短絡ブレーキによって、モータからの回生電力を適切に消費して、モータにブレーキをかけることで、ドラム及びパルセータを比較的早く停止させることができる。この結果、モータからの回生電力を適切に消費しながら、ドラム及びパルセータを同期制御して減速させる際の減速時間を短縮させることができる。
第5の技術によれば、多種多様な洗濯物が適切かつ効果的に洗濯できるようになる。
第6の技術によれば、ドラム内の洗濯物の慣性力を利用して、ドラム又はパルセータの回転方向を反転させることができる。これにより、ドラム又はパルセータの回転方向を反転させる際に、モータに加えられる負荷が低減される。この結果、モータの起動不良を防止することができる。
第7の技術によれば、ドラム及びパルセータの回転制御によってアンバランスを制御することで、より安定的にアンバランスの発生を防止することができる。
第8の技術によれば、脱水運転時にアウターロータ及びインナーロータを同期運転させて速度変動を抑えることで、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
第9の技術によれば、ドラムの脱水運転時に洗濯物によるパルセータの連れ回りがなくなったと判定した場合に、パルセータを回転フリーにすることで、洗濯物の布傷みを軽減しつつ省電力で脱水運転することができる。
第10の技術によれば、洗濯機の脱水運転時にパルセータの連れ回りが生じていると判定した場合にパルセータを回転フリーの状態からトルク制御モードに切り替えることで、脱水運転時のエネルギー効率を高め、高速領域における制御安定性を向上することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
まず最初に、第1〜第10の技術に共通する洗濯機やモータの構成について説明する。そうして、第1〜第10の技術の各々について個別に説明する。
(洗濯機の全体構成)
図1に、本実施形態の洗濯機1を示す。この洗濯機1は、洗いから濯ぎ、脱水の各処理が自動制御によって行うことができる全自動式の洗濯機である。洗濯機1は、縦長な矩形箱状の筐体2を有し、その上部に、蓋3で開閉する投入口4が形成されている。洗濯物の出し入れは、この投入口4を通じて行われる(いわゆる縦型の洗濯機)。投入口4の後方には、ユーザが操作する各種スイッチや表示部が設けられている。
図2に示すように、筐体2の内部には、タブ10、ドラム11、モータ12、パルセータ13、バランサ14、制御装置15などが設置されている。特にこの洗濯機1では、モータ12が工夫されていて、コンパクトなサイズで、洗濯機1の各処理に応じた適切な性能を発揮できるようになっているため、モータ12については別途詳細に説明する。
タブ10は、貯水可能な有底円筒状の容器であり、開口を上方の投入口4に向けた状態で、複数の吊し部材16によって筐体2の内部に懸架されている。タブ10の内部には、不図示の注水機構を通じて注水可能となっている。タブ10の下部には、バルブで開閉制御される排水管17が連結されており、不要な水は、この排水管17を通じて洗濯機1の外部に排水される。
ドラム11は、タブ10よりもひとまわり小さい、洗濯物を受け入れる有底円筒状の容器である。ドラム11は、その開口を投入口4に向けて、鉛直方向に延びる縦軸Jまわりに回転可能な状態でタブ10に収容されている。洗濯物の処理は、全てこのドラム11の内部で実行される。ドラム11の円筒形状をした周壁には、多数の水抜孔11aが全面にわたって形成されている(図2では一部のみ図示)。ドラム11の開口部には、バランサ14が設置されている。バランサ14は、内部に複数のボールや粘性流体を収容した円環状の部材であり、ドラム11の回転時に洗濯物の偏りによって生じる重量バランスの不均衡を調整する。ドラム11の底部には、上面に撹拌羽根を有する円板状のパルセータ13が回転可能に設置されている。
制御装置15は、CPUやROMなどのハードウエアと、制御プログラムなどのソフトウエアとで構成されており、洗濯機1で行われる各処理を総合的に制御する。制御装置15は、各種スイッチやモータ12、バルブなどと電気的に接続されており、ユーザの指示に従って、制御プログラムが、洗濯や脱水の運転を行い、洗いや濯ぎ、脱水の処理を実行する。
例えば、一般には、洗いや濯ぎの処理では、モータ12が、パルセータ13を一定周期で反転させながら回転駆動し、水や洗剤と共に洗濯物を撹拌する。脱水処理では、モータ12が、ドラム11を一定方向に高速で回転駆動し、遠心力の作用で洗濯物を周壁に押し付けて脱水する。
それに対し、この洗濯機1では、より高度な運転制御が行えるように、洗いや濯ぎの処理の際に、パルセータ13とともにドラム11も回転駆動できるように構成されている。
(モータ)
モータ12は、直径がタブ10よりも小さい扁平な円柱状の外観を有し、縦軸Jがその中心を通るように、タブ10の下側に組み付けられている。
図3、図4に示すように、モータ12は、アウターロータ20、インナーロータ30、インナーシャフト40、アウターシャフト50、ステータ60などで構成されている。すなわち、このモータ12は、1つのステータ60の内外に2つのロータ20,30を備えており(デュアルロータ)、これらロータ20,30が、クラッチや加減速機などを介在することなくパルセータ13やドラム11に連結されていて、これらを直接駆動するように構成されている(ダイレクトドライブ)。ロータ20,30は、ステータ60のコイル63を共用しており、これらコイル63に制御された複合電流を供給することにより、このモータ12は、ロータ20,30の各々を独立して駆動できるようになっている。
アウターロータ20は、扁平な有底円筒状の部材であり、中心部分が開口した円板状の底壁部21と、底壁部21の周縁に立設された円筒状の周壁部22と、底壁部21の中心部分に一体化されたボス部23と、複数のアウターマグネット24とを有している。底壁部21及び周壁部22は、バックヨークとして機能するように、鉄板をプレス加工して形成されており、ボス部23は、焼結合金などで形成されている。ボス部23の中心には、鋸歯状にするセレーション加工が内周面に施された軸孔が形成されている。
底壁部21には、放熱を行う複数のスリット21aが形成されている。各アウターマグネット24は、矩形板状又は瓦状の永久磁石からなり、周壁部22の内面に固定されている。本実施形態では、図5に示すように、48個のアウターマグネット24が、周方向に連続してN極とS極とが交互に並ぶように配置されている。
インナーロータ30は、アウターロータ20よりも外径が小さい扁平な有底円筒状の部材であり、中心部分が開口した台形状の内側底壁部31と、内側底壁部31の周囲に立設された円筒状の内側周壁部32と、内側底壁部31の中心部分に一体化された内側ボス部33と、複数のインナーマグネット34とを有している。アウターロータ20と同様に、内側底壁部31及び内側周壁部32は、鉄板をプレス加工して形成されており、内側ボス部33は、焼結合金などで形成されている。内側ボス部33の中心には、ボス部23の軸孔よりも内径が大きく、内周面にセレーション加工が施された軸孔が形成されている。
内側底壁部31には、ステータ60をタブ10に締結する作業用の開口31aが複数形成されている。各インナーマグネット34は、矩形板状又は瓦状の永久磁石からなり、内側周壁部32の外面に固定されている。本実施形態では、図5に示すように、42個のインナーマグネット34が、周方向に連続してN極とS極とが交互に並ぶように配置されている。
インナーシャフト40は、細長い円柱状の軸部材であり、その上下の端部に、外周面にセレーション加工が施された嵌合部位を有する取付部41,41が形成されている。嵌合部位を軸孔に圧入又はボルト止めすることによって下側の取付部41がボス部23に固定され、インナーシャフト40の下端部は、アウターロータ20に固定されている。
アウターシャフト50は、インナーシャフト40よりも短く、インナーシャフト40の外径よりも大きな内径を有する細長い円筒状の軸部材である。アウターシャフト50の上下の端部にも、外周面にセレーション加工が施された嵌合部位を有する取付部51,51が形成されている。嵌合部位を軸孔に圧入又はボルト止めすることによって下側の取付部51が内側ボス部33に固定され、アウターシャフト50の下端部は、インナーロータ30に固定されている。
ステータ60は、アウターロータ20の内径よりも外径が小さくてインナーロータ30の外径よりも内径が大きい円環状のボディ部60aと、その上部の内周縁から中心側に張り出したフランジ部60bとを有し、樹脂モールド成形によって形成されている。ステータ60の詳細については後述する。
(モータの組付け)
図4に示すように、ステータ60は、タブ10の底面に設けられたモータブラケット70に、フランジ部60bを締結することによって取り付けられている。インナーロータ30が連結されたアウターシャフト50は、軸受71及びボールベアリング72を介してモータブラケット70に回転自在に支持されている。タブ10の内部に突出した上側の取付部51に、ドラム11に固定されたブラケットが取り付けられることにより、アウターシャフト50の上端部は、ドラム11に固定されている。
アウターロータ20が連結されたインナーシャフト40は、その上端部がドラム11の内部に突出するように、アウターシャフト50の下端部に挿入されている。インナーシャフト40は、上下のインナー軸受73,73を介して、ドラム11及びアウターシャフト50に回転自在に支持されている。パルセータ13の中央部に形成された取付孔に、上側の取付部41の嵌合部位を嵌合させた状態で締結することにより、インナーシャフト40の上端部は、パルセータ13に固定されている。
インナーロータ30とアウターロータ20が、ステータ60と僅かな隙間を隔てて対向するように、ステータ60、インナーロータ30、アウターロータ20が組み付けられている。このモータ12では、ステータ60に、制御された複合電流が供給されることにより、各コイル63で周期的に変動する磁界が形成される。
このモータ12の場合、3相及び6相からなる複合電流が供給され、極数の少ないインナーロータ30は、3相で駆動され、極数の多いアウターロータ20は、6相で駆動されるようになっている。
その周期的な磁界の変動が、インナーマグネット34及びアウターマグネット24の各々に作用することで、インナーロータ30とアウターシャフト50とドラム11とからなる一体構造物と、アウターロータ20とインナーシャフト40とパルセータ13とからなる一体構造物とが、縦軸Jまわりに個別に回転駆動される。
(ステータの細部構造)
図6に示すように、ステータ60の本体部分であるボディ部60aは、複数のI型コア(コア要素)61、インシュレータ62、複数のコイル63、樹脂成形体75などで構成されている。本実施形態のステータ60には、図5に示すように、36個のI型コア61及びコイル63が備えられている。
I型コア61は、図26や図29にも示すように、軸方向から見た断面がI形状を有する薄板状の鉄部材である。I型コア61の内周側の端部には、その両隅部が周方向に鍔状に張り出すことにより、縦長で横幅の広い内側ティース61aが設けられている。また、I型コア61の外周側の端部にも、その両隅部が周方向に鍔状に張り出すことにより、縦長で横幅の広い外側ティース61bが設けられている。これらI型コアは、ボディ部60aの全周に等間隔で放射状に並べられており、各々が分離独立した状態で配置されている。
これらI型コア61の各々の周囲に、インシュレータ62を介して、ワイヤW(絶縁材で被覆された導電線)を、所定の順序及び構成で連続して巻回することにより、I型コア61毎にコイル63が形成されている。I型コア61、インシュレータ62、及びコイル63は、モールド成形によって円環状に成形された樹脂成形体75に埋設されており、内側ティース61a及び外側ティース61bの各端面部分のみが、樹脂成形体75の内周面及び外周面から露出している。ボディ部60aの上部には、制御装置や電源の電気配線が接続されるコネクタ76が設けられている。
<第1の技術>
第1の技術は、洗濯機に好適なモータに関する。
(スロット数とロータの極数の関係)
図7に示すように、第1の技術における本実施形態では、インナーロータ30側を3相駆動、アウターロータ20側を6相駆動とするモータ12を対象とする。つまり、アウターロータ20が第1ロータ、インナーロータ30が第2ロータである。そして、巻線を分数スロット巻としている。ステータ60のコイル63には、アウターロータ20及びインナーロータ30に対応する電流を重ね合わせた複合電流が供給される。これにより、コイル63は、アウターロータ20及びインナーロータ30を独立して駆動させるための別々の回転磁界を発生させる。
また、このモータ12では、ステータ60が発生する回転磁界の数と、アウターロータ20及びインナーロータ30の磁極の数とが異なるように構成されている。具体的には、ステータ60のスロット数Sが36、インナーロータ30の極数P1が42、アウターロータ20の極数P2が48となるように構成され、その比率は、S:P1:P2=6:7:8となっている(図5参照)。
図8は、従来のモータにおけるステータが発生する回転磁界の数とインナーロータの磁極の数との関係を示す図である。図8に示すように、従来のモータは、S:P1:P2=6:4:2となるように構成されたモータである。このように構成されたモータでは、ステータ60が発生する回転磁界の数と、インナーロータ30の磁極の数とが同じとなっている。なお、図示は省略するが、アウターロータの磁極の数についても、ステータ60が発生する回転磁界の数と同じである。
図9は、本実施形態のモータにおけるステータが発生する回転磁界の数とインナーロータの磁極の数との関係を示す図である。図9に示すように、本実施形態のモータ12では、ステータ60が発生する回転磁界の数と、インナーロータ30の磁極の数とが異なるように構成されている。なお、図示は省略するが、アウターロータ20の磁極の数についても、ステータ60が発生する回転磁界の数とは異なっている。
(巻線係数)
以下、本実施形態のモータ12の巻線係数について、従来のモータの巻線係数と比較しながら説明する。図10は、従来のモータの巻線係数を示す図である。図11は、本実施形態のモータの巻線係数を示す図である。なお、短節巻係数Kp、分布巻係数Kd、巻線係数Kw=Kp・Kdとする。
図10に示すように、従来のモータでは、インナー側(図10の4Pole)を駆動するとき、3相ではKp=0.87、Kd=1、Kw=0.87となり駆動することができる。6相ではKp=0.87、Kd=0、Kw=0となり駆動できない。
一方、アウター側(図10の2Pole)を駆動するとき、3相ではKp=0.5、Kd=0、Kw=0となり駆動できない。6相ではKp=0.5、Kd=1、Kw=0.5となり駆動することができる。
つまり、3相駆動はインナー側のみに影響を与え、アウター側へは影響を与えない。6相駆動ではアウター側のみ影響を与え、インナー側へは影響を与えない。
図11に示すように、本実施形態のモータ12では、インナー側(図11の7Pole)を駆動するとき、3相ではKp=0.97、Kd=0.97、Kw=0.93となり駆動することができる。6相ではKp=0.97、Kd=0、Kw=0となり駆動できない。
一方、アウター側(図11の8Pole)を駆動するとき、3相ではKp=0.87、Kd=0、Kw=0となり駆動できない。6相ではKp=0.87、Kd=0.87、Kw=0.75となり駆動することができる。
つまり、3相駆動はインナー側のみに影響を与え、アウター側へは影響を与えない。6相駆動ではアウター側のみ影響を与え、インナー側へは影響を与えない。
このように、本実施形態のモータ12では、ロータの磁束分布の基本波に対するコイル63の巻線係数が、従来のモータに比べて大きくなっている。特に、アウターロータ20側では、従来のモータの巻線係数Kw=0.5であるのに対し、本実施形態のモータ12の巻線係数Kw=0.75となっており、巻線係数が50%改善されていることが分かる。これにより、巻線係数を改善してトルクを効率良く発生させることができる。
以下、図12〜図15を用いて、本実施形態のモータ12の構成を採用した場合に、トルクを効率良く発生させることが可能となる原理について説明する。
図12に示すように、従来のモータでは、アウターロータ20の1つのアウターマグネット24に対して3つの外側ティース61bが対向している。そして、中央位置のティース61bでは、アウターマグネット24の中央部を含んだ磁束波形の60°相当の磁束を受けることができる。これにより、1つのアウターマグネット24全体の磁束の50%を利用可能であり、Kp=0.5となる。
ここで、中央位置のティース61bがA相である場合、次のA相のティース61bも、1つのアウターマグネット24全体の磁束の50%を利用可能であり、Kp=0.5となる。
なお、Kpの一般式は下記のように示される。
Kp=sin(β/2)、βはスロット幅(電気角)
そして、図13の各相のベクトル図に示すように、A相の2つのティース61bで受けた磁束を合成すると、0.5cos0°+0.5cos0°=1となる。つまり、A相に対して2つのティース61bの磁束ベクトルは大きさが0.5でそれぞれA相と同じ位相で、合成すると大きさが1となる。このA相に対しての0°のずれがKdを示しており、従来のモータでは、Kd=cos0°=1である。
一方、図14に示すように、本実施形態のモータ12では、アウターロータ20の1つのアウターマグネット24の中央部から30°ずれた位置に、ティース61bの中央部が対向している。このティース61bでは、隣接するアウターマグネット24のN極とS極とでキャンセルされる磁束を除いて、磁束波形の120°相当の磁束を受けることができる。これにより、1つのアウターマグネット24全体の磁束の87%を利用可能であり、Kp=0.87となる。
ここで、上述したティース61bがA相である場合、次のA相のティース61bも、1つのアウターマグネット24全体の磁束の87%を利用可能であり、Kp=0.87となる。
そして、図15の各相のベクトル図に示すように、A相の2つのティース61bで受けた磁束を合成すると、0.87cos30°+0.87cos30°=1.5となる。つまり、A相に対して2つのティース61bの磁束ベクトルは大きさが0.87でそれぞれ30°進んでいるか、もしくは遅れており、合成するとA相の位相で大きさが1.5となる。このA相に対しての30°のずれがKdを示しており、本実施形態のモータ12では、Kd=cos30°=0.87となる。
以上のように、本実施形態のモータ12の構成を採用した方が、従来のモータの構成に比べて、より多くの磁束を利用可能であり、トルクを効率良く発生させることができる。
なお、本実施形態では、A相のみに着目して磁束を比較しているが、B相〜F相の磁束についてもA相と同様であるため、説明を省略する。
(ロータの磁束分布の高調波に対する短節巻係数)
図16は、ロータの磁束分布の高調波に対する短節巻係数を比較した図である。
図16に示すように、従来のモータでは、3次、5次、及び7次の高調波に対する短節巻係数は、最大は6相側の3次でKp=1となっている。これに対し、本実施形態のモータ12では、3次、5次、及び7次の高調波に対する短節巻係数は、最大は6相側の5次と7次でKp=0.87となっている。つまり、本実施形態では、高調波に対する短節巻係数を1未満とすることができる。
ここで、図17のグラフ図に示すように、従来のモータでは、誘起電圧の波形が歪んでおり、このときの歪率は、31%である。一方、図18のグラフ図に示すように、本実施形態のモータ12では、誘起電圧の波形がほとんど歪んでおらず、このときの歪率は、4.9%である。
以上のように、本実施形態のモータ12では、ロータの磁束分布の高調波に対するコイル63の短節巻係数が、従来のモータに比べて小さくなっている。また、本実施形態のモータ12では、従来のモータに比べて、誘起電圧の波形の歪率が84%程度下がっている。これにより、トルクリップルを低減して振動や騒音を抑えることができる。
(変形例等)
本実施形態では、ステータ60のスロット数を36、インナーロータ30の極数を42、アウターロータ20の極数を48とした構成(S:P1:P2=6:7:8)について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、ステータ60のスロット数を36、インナーロータ30の極数を48、アウターロータ20の極数を42とした構成(S:P1:P2=6:8:7)であってもよい。
また、本実施形態では、アウターロータ20及びインナーロータ30の外周部分にマグネットが等間隔に貼り付けられたモータ12について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、アウターロータ20及びインナーロータ30の外周部分に磁性体及びマグネットが互いに密着した状態で周方向に交互に配設された、いわゆる磁束集中型のモータであってもよい。
<第2の技術>
第2の技術は、洗濯機に好適な、1つのステータの内外に2つのロータを備えたデュアルロータ型のモータに関し、その中でも特に、ステータのコアが、互いに独立した複数のコア要素で構成されていて、これらコア要素の個数が両ロータの極数よりも少ないモータに関する。
(モータの要部構成)
洗濯機1では、大きなコギングトルク(非励磁の状態でロータを動かした場合に、マグネットとコアの間に働く磁気的吸引力によって発生するトルク)は、騒音や振動の原因となるため、コギングトルクは小さいのが好ましい。
また、このモータ12のように、インナーロータ30とアウターロータ20とが1つのステータ60を共用しているデュアルロータ型のモータの場合、インナーロータ30及びアウターロータ20のいずれか一方が駆動すると、そのロータの駆動によって形成される磁界の影響により、他方のロータでトルクリップルが発生するという特有の問題がある(相互リップル)。
この相互リップルが大きくなると、コギングトルクと同様に、騒音や振動の原因となる。そのため、洗濯機1でこのようなデュアルロータ型のモータを使用する場合、コギングトルクだけでなく、相互リップルも小さくする必要がある。
そこで、電磁界解析を行うことにより、インナーロータ30の極数、アウターロータ20の極数、及びステータ60のスロット数(I型コア61と同数)の組み合わせ(いわゆるスロットコンビネーション)別に、I型コア61のティース開角を検討することで、コギングトルクと相互リップルの双方を効果的に小さくできる条件を見出した。
次に、上述したモータ12を例に、その内容について詳しく説明する。ちなみに、モータ12のスロットコンビネーションは、インナーロータ30の極数:42、アウターロータ20の極数:48、ステータ60のスロット数:36であり、そのI型コア61の個数は、インナーロータ30及びアウターロータ20のいずれの極数よりも少なく、そして、アウターロータ20はインナーロータ30よりも極数が多くなっている。
図19に、その極数の多いアウターロータ20を無負荷で駆動し、内側ティース61aのティース開角(4.76°、6.19°、7.62°)別に、外側ティース61bのティース開角により、アウターロータ20で発生する誘起電圧及びコギングトルクがどのように変化するかを調べた結果を示す。
なお、ここでいうティース開角とは、ティースの周方向の両端とステータの中心とを結ぶ線によって挟まれる角度(中心角)であり、図20に、内側ティース61aのティース開角(内側ティース開角θ1)及び外側ティース61bのティース開角(外側ティース開角θ2)を示す。
モータ12の場合、I型コア61数は36であることから、ティース開角の物理的上限は10°となる(隣接するティースの間の隙間が0になる)ため、概ね略3°〜略9°のティース開角の範囲で解析した。
図19に示すように、アウターロータ20で発生する誘起電圧は、外側ティース開角θ2の変化の影響を受け、外側ティース開角θ2の解析範囲の中程で極大となるピークを示す曲線状に変化した。また、アウターロータ20で発生する誘起電圧は、内側ティース開角θ1の影響を受け、内側ティース開角θ1が大きくなるほど高くなる傾向が認められた。
アウターロータ20で発生するコギングトルクは、外側ティース開角θ2の変化の影響を受け、外側ティース開角θ2の解析範囲の中程が谷となる2つのピークを示す曲線状に変化した。対して、アウターロータ20で発生するコギングトルクは、内側ティース開角θ1が変化しても変化せず、内側ティース開角θ1の影響は極めて小さかった。
続いて図21に、極数の少ないインナーロータ30を無負荷で駆動し、外側ティース開角θ2(5.42°、6.25°、7.08°)別に、内側ティース開角θ1により、インナーロータ30で発生する誘起電圧及びコギングトルクがどのように変化するかを調べた結果を示す。
図21に示すように、インナーロータ30で発生する誘起電圧は、内側ティース開角θ1の変化の影響を受け、内側ティース開角θ1の解析範囲の中程で極大となるピークを示す曲線状に変化した。また、インナーロータ30で発生する誘起電圧は、外側ティース開角θ2の影響を受け、外側ティース開角θ2が大きくなるほど高くなる傾向が認められた。
インナーロータ30で発生するコギングトルクは、アウターロータ20で発生するコギングトルクに比べて非常に小さいうえに、内側ティース開角θ1が変化しても変化せず、内側ティース開角θ1の影響は極めて小さかった。また、インナーロータ30で発生するコギングトルクは、外側ティース開角θ2が変化しても変化せず、外側ティース開角θ2の影響も極めて小さかった。
従って、コギングトルクについては、アウターロータ20が問題となり、インナーロータ30については無視できる。しかし、このモータ12の場合、アウターロータ20の駆動により、インナーロータ30で相互リップルが発生するため、その相互リップルが問題になり得る。そこで、その相互リップルについても検討した。
図22に、アウターロータ20を駆動し、内側ティース開角θ1(4.76°、6.19°、7.62°)別に、外側ティース開角θ2によってインナーロータ30で発生する相互リップルがどのように変化するかを調べた結果を示す。その結果、インナーロータ30で発生する相互リップルは、外側ティース開角θ2の影響を受け、外側ティース開角θ2が大きくなるほど高くなる傾向が認められた。
図23に、この場合において、外側ティース開角θ2(5.00°、6.25°、7.14°)別に、内側ティース開角θ1によってインナーロータ30で発生する相互リップルがどのように変化するかを調べた結果を示す。インナーロータ30で発生する相互リップルは、内側ティース開角θ1の影響を受け、内側ティース開角θ1の解析範囲の中程で極小となる曲線状に変化した。
図19に、現行の基準値を一点鎖線で示す。高い誘起電圧を確保しながら、アウターロータ20で発生するコギングトルクを現行の基準値以下に抑制するには、外側ティース開角θ2を、5.0°〜7.14°の範囲に設定すればよいことがわかる。また、この範囲であれば、図22に示したように、インナーロータ30で発生する相互リップルも抑制できる。
更に、図23にも現行の基準値を一点鎖線で示す。インナーロータ30で発生する相互リップルも、現行の基準値を超え得るため、基準値以下に抑制するのが好ましい。インナーロータ30で発生する相互リップルも基準値以下にするには、内側ティース開角θ1を2.67°〜9.5°の範囲に設定すればよいことがわかる。
なお、モータ12の場合、アウターロータ20の極数がインナーロータ30よりも多いため、内側ティース開角θ1及び外側ティース開角θ2は上述した関係になるが、アウターロータ20の極数とインナーロータ30の極数とが逆の場合、つまり、インナーロータ30の極数がアウターロータ20よりも多い場合には、上述した関係は逆になる。
また、上述した内側ティース開角θ1及び外側ティース開角θ2の範囲は、I型コア61の数(コア要素数)によって規定されるため、これらの範囲については、コア要素数に基づいて一般化できる。
すなわち、上述した外側ティース開角θ2の範囲5.0°〜7.14°については、インナーロータ30及びアウターロータ20のうち、極数の多いロータと対向している、内側ティース61a及び外側ティース61bのいずれか一方のティースにおいて、このティースのティース開角が、180°/Nc〜257°/Nc(Ncはコア要素数)となる範囲に一般化できる。
そして、上述した内側ティース開角θ1の範囲2.67°〜9.5°については、インナーロータ30及びアウターロータ20のうち、極数の少ないロータと対向している、内側ティース61a及び外側ティース61bの他方のティースにおいて、このティースのティース開角が、96°/Nc〜342°/Nc(Ncはコア要素数)となる範囲に一般化できる。
また、上述した関係は、モータ12のスロットコンビネーション(インナーロータ30極数:42、アウターロータ20の極数:48、ステータ60のスロット数:36)に限らず、所定のスロットコンビネーションにおいて成立し得る。
具体的には、インナーロータ30及びアウターロータ20のうち、極数の少ないロータの極数をP1とし、極数の多いロータの極数をP2とした場合に、次の条件を満たすスロットコンビネーションにおいて成立し得る。
Nc=12n
P1=(6±1)・2n
P2=(6±2)・2n
(nは1以上の整数)
更に、上述したスロットコンビネーションに比べると効果は弱いが、次の条件を示すスロットコンビネーションにおいても成立し得る。
Nc=6n
P1=6n±2
P2=6n±4
(nは2以上の整数)
図24に、このスロットコンビネーションにおける図19に相当する電磁界解析結果の一例を示す。
同様に、次の条件を示すスロットコンビネーションにおいても成立し得る。
Nc=6n
P1=6n±4
P2=6n±8
(nは2以上の整数)
図25に、このスロットコンビネーションにおける図19に相当する電磁界解析結果の一例を示す。
このように、第2の技術の実施形態のモータによれば、コギングトルクや相互リップルを効果的に低減できるので、洗濯機に使用すれば、騒音や振動を効果的に抑制しながら、ドラム及びパルセータを高トルクで駆動できるようになる。
<第3の技術>
第3の技術は、洗濯機のドラム等をダイレクトドライブ形式によって回転駆動するデュアルロータ型のモータに関し、その中でも特に、モールド成形によって形成されるステータの構造に関する。
(インシュレータ等の詳細、ステータの製造方法)
ステータ60の製造は、分離独立した多数のI型コア61を正確に所定位置に配置する必要があるなど、作業工数が多いうえに作業難度も高い。そこで、高い品質を確保しながら効率的に製造できるように、インシュレータ62等が工夫されている。次に、ステータ60の製造方法を説明しながら、インシュレータ62等の構造について具体的に説明する。
図26に、I型コア61及びインシュレータ62の分解斜視図を示す。インシュレータ62は、厚みの薄い壁体が連なった構造物であり、樹脂の射出成形等によって形成されている。インシュレータ62は、全てのI型コア61を間に挟み込んだ状態で、軸方向に突き合わせて連結される一対の環状連結体81,82で構成されている。
本実施形態のインシュレータ62の場合、下側の環状連結体81は、円環状に形成された一体物とされている(主連結体81)。上側の環状連結体82は、円弧形状をした複数(本実施形態では3個)の連結要素82aで構成されており、これらを連結することで、主連結体81と上下対称状の円環形状に形成される(副連結体82)。ただし、副連結体82には、主連結体81と異なり、コネクタ76を構成する端子部83が設けられている。コイル63から導出されるワイヤWの端部は全てこの端子部83に接続される。
主連結体81には、I型コア61の各々が嵌入される36個のコア嵌入部84が周方向に等間隔で設けられている。コア嵌入部84は、I型コア61の下側の略半分の部分を収容し、厚みの薄い壁体でI型コア61の外形に沿った形状に形成されている。各コア嵌入部84は、その外周側の両縁部の間が壁体(連結壁部84a)によって連結されている。
各連結要素82aの基本構造も、主連結体81と同じであり、I型コア61の各々が嵌入される12個のコア嵌入部84が周方向に等間隔で設けられている。コア嵌入部84は、I型コア61の上側の略半分の部分を収容し、厚みの薄い壁体でI型コア61の外形に沿った形状に形成されている。各コア嵌入部84の外周側の壁体(連結壁部84a)が連なることで、コア嵌入部84は互いに連結されている。
インシュレータ62である主連結体81及び副連結体82は、I型コア61とコイル63との間の絶縁性を確保する必要がある。そのため、主連結体81及び副連結体82は、絶縁性樹脂(絶縁性に優れた樹脂)を用いて形成されている。特に、主連結体81は、絶縁性樹脂とCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とで構成できる。そうすれば、更に剛性が強化され、それにより、主連結体81の変形や破損が抑制でき、取り扱いが容易になる。
ただし、CFRPは絶縁性が低いことから、本実施形態では、例えば、連結壁部84aなど、主連結体81のうち、コイル63が巻回されない部位がCFRPで構成され、コイル63が巻回されるI型コア61の周辺部位などは絶縁性樹脂で構成されるように、2重成形されている。また、CFRPと絶縁性樹脂とを部位別に分けて成形するのではなく、CFRPが絶縁性樹脂で被覆されるように成形し、主連結体81の全域がCFRPと絶縁性樹脂とで構成されるようにしてもよい。
CFRPを構成するベース樹脂には、絶縁性樹脂と同種の樹脂を用いるのが好ましい。ベース樹脂を絶縁性樹脂と同種にすることで、2重成形によるCFRPと絶縁性樹脂との一体性が向上し、剛性を更に向上させることができる。
(第1ステップ)
製造時には、まず、作業台等に主連結体81を載せて安定に支持した後、主連結体81のコア嵌入部84の各々にI型コア61の各々を1個ずつ嵌入する。単純作業の繰り返しであるため、嵌入作業は簡単にでき、自動化する場合も容易である。コア嵌入部84に嵌入するだけで、各I型コア61を適切な位置に配置できる。
そうして、主連結体81に副連結体82を突き合わせて連結することにより、コア保持構造体C1(連結された一対の環状連結体81,82にI型コア61が挟み込まれた構造体)を形成する。このとき、環状連結体81,82の双方が一体に形成されていると、全てのI型コア61とコア嵌入部84の位置を一致させないと嵌入できないため、連結が困難であるが、後から連結される副連結体82が、連結要素82aに分割されているため、連結が比較的容易にできる。また、一体に形成されていて剛性に優れた主連結体81を下側にして取り扱うことで、コア保持構造体C1を安定して取り扱うことができる。
図27、図28、図29に、コア保持構造体C1を示す。コア保持構造体C1には、36個のティース本体61cと、36個のスロット85とが形成されている。ティース本体61cは、I型コア61がインシュレータ62で被覆された部分であり、これにワイヤWが巻回される。スロット85は、互いに隣接するティース本体61c,61cの間を軸方向に貫通したスペースであり、これに巻回したワイヤWが収容される。
コア保持構造体C1の外周側の両縁部には、軸方向に張り出す外側フランジ部86,86が設けられている。同様に、コア保持構造体C1の内周側の両縁部にも、軸方向に張り出す内側フランジ部87,87が設けられている。これら外側フランジ部86及び内側フランジ部87は、巻回されるワイヤWの巻き崩れを防止するものであり、コイル63の軸方向の高さより僅かに大きく形成されている。
コア保持構造体C1の内周面には、各スロット85に連通する36個のスロット開口85aがスリット状に開口している。コア保持構造体C1の内周面及び外周面には、I型コア61が露出することによって内側コア面部88及び外側コア面部89が形成されている。
図29に示すように、軸方向から見て、連結壁部84aの中央部の厚みtは、その両端部よりも大きく形成されている。それにより、主連結体81やコア保持構造体C1の剛性の向上が図られている。
同様に、軸方向から見て、内側コア面部88は、インシュレータ62の内周面よりも内側に位置し、外側コア面部89は、インシュレータ62の外周面よりも外側に位置している。このように、構成することで、モールド成形時には、金型Dに、内側コア面部88及び外側コア面部89が接することとなるため、I型コア61を径方向に精度高く位置決めでき、ステータ60の真円度を高めることができる。その結果、インナーロータ30やアウターロータ20との間の隙間を小さくできるようになり、モータ性能の向上が図れる。
(第2ステップ)
コア保持構造体C1は、巻線機Mにセットされ、インシュレータ62で被覆されたI型コア61の各々に、ワイヤWを巻回してコイル63を形成する巻線処理が機械的に行われる。そうすることで、コア保持構造体C1にコイル63が形成された構造体(巻線体C2)を形成する。
図30に示すように、巻線機Mには、コア保持構造体C1を回転制御可能に支持する支持部材Msと、コア保持構造体C1に対して軸方向に変位可能であるとともに、先端からワイヤWを送り出す3本のノズルMnとが備えられている。巻線機Mでは、コア保持構造体C1の外周側を支持した支持部材Msを回転制御しながら、コア保持構造体C1の内周側で、3本のノズルMnを同期して変位制御することにより、巻線処理が行われる。
コア保持構造体C1を支持部材Msで強固に支持するため、図28に示すように、外側コア面部89の上部及び下部には、軸方向に延びる溝部89a(挟持構造の一例)が形成されている。支持部材Msには、図30に示すように、これら溝部89aを挟み込む挟持機構Mpが設けられていて、巻線処理時に挟持機構Mpが各溝部89aを挟み込むことで、コア保持構造体C1は、支持部材Msに強固に支持され、安定して巻線処理が行えるようになっている。
また、外側コア面部89の両側(周方向)の縁部が、インシュレータ62の外面から突出している場合には、挟持機構Mpで溝部89aを挟み込むのではなく、外側コア面部89の両側(周方向)の縁部を挟持機構Mpで挟み込むようにしてもよい。
複合電流の供給により、インナーロータ30及びアウターロータ20の双方を個別に駆動させるために、各コイル63は、3相及び6相の双方に対応した6相構成となっている(A〜F相)。具体的には、各コイル63は、6本のワイヤWの各々を一定の順序で36個のI型コア61の各々に巻回することによって形成されており、巻線処理では、3本のノズルMnを同期して変位制御することにより、3本のワイヤWを同時に同じ動作で巻回する処理が2回行われる。従って、少ない工数でコイル63を形成することができ、生産性に優れる。
巻線機Mは、巻線処理が開始されると、所定のティース本体61cにワイヤWを巻き付けていき、所定の巻線パターンで自動的に3相のコイル群を形成するように制御される。詳しくは、各相の所定のティース本体61cに対して各ノズルMnが位置決めされた後、ワイヤWの巻き付けが開始される。そうして、図30、図31に矢印で示すように、各ノズルMnの軸方向の変位とコア保持構造体C1の回転とを、所定の順序で交互に繰り返しながら各ノズルMnを径方向に変位させることにより、ノズルMnから引き出されたワイヤWがティース本体61cに巻き付けられていく。
図32、図33を参照しながら巻線パターンについて説明する。コア保持構造体C1は、同じ巻線パターンからなるI〜IIIの3つの区画に分けることができる。1つの区画は、12個のティース本体61cで構成されており、ここでは、図32において、時計回りに各ティース本体61cに1〜12の番号を付与し、区別するものとする。
図33は、1区画の巻線パターンを表している。白丸を付したティース本体61cは、反時計回り(CCW)に巻回されることを示し、黒丸を付したティース本体61cは、時計回り(CW)に巻回されることを示している。例えば、1回目の巻線処理において、Iの区画の番号2,4,6のティース本体61cからワイヤWの巻き付けが開始されたとする。これらティース本体61cに反時計回りに所定回数で巻回されてコイル63が形成されると、ワイヤWが上方に引き出される。その後、引き続き、番号1,3,5のティース本体61cに時計回りに所定回数で巻回されてコイル63が形成され、ワイヤWが上方に引き出される。
そうして引き出されたワイヤWは、IIの区画に移行し、IIの区画の番号2,4,6のティース本体61cからワイヤWの巻き付けが開始され、Iの区画と同様に巻線処理が行われる。続いて、IIIの区画に移行し、I、IIの区画と同様に巻線処理が行われる。それにより、I〜IIIの各区画に、同じ巻線パターンのコイル63(D、E、F)が18個形成される。
次に、新たなワイヤWが各ノズルMnに引き出され、2回目の巻線処理が行われる。
Iの区画の番号7,9,11のティース本体61cからワイヤWの巻き付けが開始され、これらティース本体61cに反時計回りに所定回数で巻回されてワイヤWが下方に引き出された後、引き続き、番号8,10,12のティース本体61cに時計回りに所定回数で巻回され、ワイヤWが下方に引き出される。
そうして引き出されたワイヤWは、IIの区画に移行し、IIの区画の番号7,9,11のティース本体61cからワイヤWの巻き付けが開始され、Iの区画と同様に巻線処理が行われる。続いて、IIIの区画に移行し、I、IIの区画と同様に巻線処理が行われる。それにより、I〜IIIの各区画に、同じ巻線パターンのコイル63(A、B、C)が18個形成され、巻線処理が完了する。
図34に示すように、これら巻線処理の際、1回目に処理される3本のワイヤWの渡り線Wa(区画間に渡される部分)は、上側に位置する外側フランジ部86の外面に沿って配索され、2回目に処理される3本のワイヤWの渡り線Waは、下側に位置する外側フランジ部86の外面に沿って配索されている。外側フランジ部86の所定箇所には切欠部86aが形成されており、これら切欠部86aを通じて、ワイヤWは、外側フランジ部86の外面側に引き出せるようになっている。
このように、上下の外側フランジ部86に3本ずつ振り分けて渡り線Waを配索することで、インシュレータ62、ひいてはステータ60の軸方向の高さを抑制することができるので、モータ12の小型化が図れる。巻線処理ごとに、渡り線Waを同じ側の外側フランジ部86に配索することで、ワイヤWの配索構造が簡素化され、巻線機Mの処理効率を向上させることができる。
巻線処理の終了後、巻線体C2は、巻線機Mから取り外された後、作業台等に載置され、各ワイヤWの始端及び終端が端子部83の所定の端子に接続される。その際、巻線体C2は、主連結体81を下側にして取り扱われ、副連結体82に配置されている端子部83が上側に位置することになるので、接続処理が容易に行える。
(第3ステップ)
巻線体C2は、金型Dにセットされ、熱硬化性樹脂を用いてモールド成形が行われる。
図35に示すように、金型Dは、軸方向から突き合わされる一対の上型及び下型で構成されていて、金型Dの内部には、巻線体C2を収容する円環状のキャビティDcが形成されている。内側コア面部88及び外側コア面部89の部分が樹脂成形体75から露出するように、キャビティDcの内周面に内側コア面部88が面接触し、キャビティDcの外周面に外側コア面部89が面接触するように、キャビティDcは寸法設定されている。
巻線体C2の内周面は、スロット開口85aにより、複数に分割されているため、巻線処理によって位置ずれや変形が生じ易い。しかも、このモータ12では、ステータ60の内周側が高速で回転して騒音を発生し易くなっているため、巻線体C2の内周側の真円度や磁極の配置の精度が低いと、騒音を高めるおそれがある。
そこで、巻線体C2の内周面と、これに対向する金型Dの対向面と間に位置決め構造が設けられていて、位置決め構造により、巻線体C2を、金型Dに対して周方向に位置決めした状態でモールド成形するようにしている。
具体的には、巻線体C2の内周面には、図27に示したように、上縁及び下縁の各々から軸方向に延びる複数の凹部90が内側コア面部88及びインシュレータ62にわたって形成されている。そして、上型や下型の対向面には、図35に示すように、これら凹部90に嵌合する凸部D1が複数形成されている。各凹部90に各凸部D1を嵌合して、巻線体C2を上型及び下型に装着することで、巻線体C2を金型Dに対して精度高く周方向に位置決めすることができる。
また、巻線体C2の内周面に面している複数のスロット開口85aを利用して位置決め構造を設けることもできる。すなわち、図36に示すように、各スロット開口85aに嵌合するように、複数の嵌合突部D2を金型Dに設け、これら嵌合突部D2を各スロット開口85aに嵌合して、巻線体C2を上型及び下型に装着する。そうすることによっても、巻線体C2を金型Dに対して精度高く周方向に位置決めすることができる。
更に、このとき、巻線体C2の外周側に面するインシュレータ62の全周の一部が、金型Dの外周面に接触し、巻線体C2を内周側に押し付けるように寸法設定されている。それにより、巻線体C2の内周面と金型Dとの密着性が高まるため、巻線体C2の内周側の真円度を向上させることができる。そのように巻線体C2を金型Dにセットしてモールド成形を行うことにより、樹脂成形体75が形成され、図6に示したような構造のステータ60が形成される。
(変形例等)
例えば、図37、図38に示すように、副連結体82と突き合わされる主連結体81の連結部位の周囲に、複数の小さな棒状の仮連結部92を介してコア嵌入部84の各々を連結する環状支持部93を設け、第3ステップの後に、仮連結部92を切断するなどして、環状支持部93を除去する第4ステップを更に含むようにしてもよい。
そうすれば、環状支持部93により、主連結体81の剛性を強化することができるので、巻線処理や成形処理の際に、コア保持構造体C1や巻線体C2の取り扱いが容易になる。更に、コア保持構造体C1等の変形を抑制した状態でモールド成形できるので、モータ品質の向上も図れる。
図39に示すように、主連結体81を用いずに、複数に分割されている副連結体82で環状連結体の双方を構成することもできる。この場合、一方の副連結体82における連結要素82aの各々の間の連結部位95と、他方の副連結体82における連結要素82aの各々の間の連結部位95とが、周方向にずれて互い違いになる(上下に重なり合わない)ように配置する。そうすることで、双方の環状連結体を複数の連結要素で構成しても、一体化でき、安定して支持できる。一体形の主連結体81を成形する金型に比べると、分割されている分だけ金型を小さくできるので、金型のコストを大幅に低減できる利点もある。
特にこの場合、図39に示すように、端子部83が配置されている上側の副連結体82の個数よりも、主連結体81に相当する側の副連結体82の個数を少なくするとよい。そうすれば、連結部位95を容易にずらせるし、分割数が少なくて強度の高い副連結体82が下側になるので安定して支持でき、接続処理も容易に行える。
ステータ60のスロット開口85aは、外周側に設けてもあってもよい。ステータ60、インナーロータ30、アウターロータ20の極数は仕様に応じて適宜変更できる。コイル63の配置や構成も変更可能である。モータ12を駆動する電流は複合電流に限らない。
<第4の技術>
第4の技術は、洗濯機に用いられるモータ制御装置に関する。
(モータの回転動作の制御)
図40に示すように、洗濯機1に備えられている制御装置15とインナーロータ30とは、ドラム側インバータ回路101を介して接続されている一方、制御装置15とアウターロータ20とは、パルセータ側インバータ回路102を介して接続されている。また、各インバータ回路101,102は、互いに並列に接続されるとともに、共通の直流電源100に接続されている。
制御装置15は、所定の指令信号と三角波からなる搬送波とを用いて、パルス幅変調制御(PWM制御)された電気信号をドラム側及びパルセータ側インバータ回路101,102に入力して、モータ12に直流電圧を印加させる。
ドラム側インバータ回路101は、3相インバータ回路であり、高電位側である上アーム側に3個の上アーム側スイッチング素子(以下、上アーム側SW素子という)80a,80b,80cが設けられ、低電位側である下アーム側に3個下アーム側スイッチング素子(以下、下アーム側SW素子という)80d,80e,80fが設けられており、合計6個のSW素子を有している。
上アーム側SW素子80aと下アーム側SW素子80dは互いに直列に接続されてインバータを形成しており、同様に、上アーム側SW素子80bと下アーム側SW素子80e、及び、上アーム側SW素子80cと下アーム側SW素子80f、も互いに直列に接続されてインバータを形成している。そして、これらの3つのインバータが並列に接続されて、ドラム側インバータ回路101を構成している。
各SW素子80a〜80fは、制御装置15からの前記電気信号に基づいてオン又はオフ制御され、このオン及びオフの組み合わせにより、モータ12への供給電力が制御される。これにより、インナーロータ30の回転速度、すなわち、ドラム11の回転速度が制御される。なお、各SW素子80a〜80fは、本実施形態ではIGBTである。
ドラム側インバータ回路101には、ドラム側インバータ回路101からモータ12へ供給される電流を検出するためのドラム側電流センサ103が接続されている。ドラム側電流センサ103で検出された検出電流は、制御装置15に伝達される。
一方、パルセータ側インバータ回路102もドラム側インバータ回路101と同様に、3相インバータ回路であり、高電位側である上アーム側に3個の上アーム側SW素子90a,90b,90cが設けられ、低電位側である下アーム側に3個の下アーム側SW素子90d,90e,90fが設けられており、合計6個のSW素子を有している。上アーム側SW素子90aと下アーム側SW素子90dは互いに直列に接続されてインバータを形成しており、同様に、上アーム側SW素子90bと下アーム側SW素子90e、及び、上アーム側SW素子90cと下アーム側SW素子90f、も互いに直列に接続されてインバータを形成している。
そして、これらの3つのインバータが並列に接続されて、パルセータ側インバータ回路102を構成している。また、ドラム用インバータ回路101と同様に、各SW素子90a〜90fは、制御装置15からの前記電気信号に基づいてオン又はオフ制御され、このオン及びオフの組み合わせにより、モータ12への供給電力が制御されて、アウターロータ20の回転速度、すなわち、パルセータ13の回転速度が制御される。なお、各SW素子90a〜90fは、本実施形態ではIGBTである。
さらに、パルセータ側インバータ回路102には、パルセータ側インバータ回路102からモータ12へ供給される電流を検出するためのパルセータ側電流センサ104が接続されている。パルセータ側電流センサ104で検出された検出電流は、制御装置15に伝達される。
また、洗濯機1は、インナーロータ30の回転数を検出するドラム側位置センサ105と、アウターロータ20の回転数を検出するパルセータ側位置センサ106と、を備えている。ドラム側位置センサ105は、インナーロータ30の実回転速度を検出することで、ドラム11の回転速度を検出する一方、パルセータ側位置センサ106は、アウターロータ20の実回転速度を検出することで、パルセータ13の回転速度を検出する。各位置センサ105,106で検出された検出回転速度は、制御装置15に伝達される。
制御装置15は、ドラム側及びパルセータ側電流センサ103,104から検出された検出電流から算出されるドラム11及びパルセータ13の算出回転速度や、ドラム側及びパルセータ側位置センサ105,106から検出される検出回転速度に基づいて、ドラム11及びパルセータ13が所望の回転速度になるように、ドラム側及びパルセータ側インバータ101,102に入力する電気信号を補正する。
これにより、ドラム11及びパルセータ13の回転速度が制御される。以上のことから、ドラム側及びパルセータ側電流センサ103,104や、ドラム側及びパルセータ側位置センサ105,106は、回転速度検出手段を構成する。
ここで、制御装置15は、脱水工程では、ドラム11及びパルセータ13を同じ方向に高速回転させ、該脱水工程の終了後に、ドラム11及びパルセータ13を前記高速回転から減速させて停止させる減速工程を実行する。該減速工程において、ドラム11とパルセータ13とに回転速度の差が生じると、洗濯物が速度の遅い方に連れ回って、ドラム11とパルセータ13との間で洗濯物が引っ張られてしまい、布傷みが生じるおそれがある。
また、本実施形態のように、インナーロータ30とアウターロータ20とを備え、ドラム11とパルセータ13とを独立して回転させるようにしている場合、インナーロータ30及びアウターロータ20のそれぞれに働くトルクに基づく回生電力が発生するため、該回生電力が、ロータが1つの場合のおよそ二倍になる。
そのため、ドラム11及びパルセータ13(詳しくは、インナーロータ30及びアウターロータ20)を急激に減速させてしまうと、前記回生電力を消費しきれずに、前記回生電力が直流電源100に作用して、直流電源100を破壊してしまうおそれがある。これを防ぐために、ドラム11及びパルセータ13を緩やかに減速させて、前記回生電力を適切に処理する必要がある。
このように、同期制御を実行しつつ、ドラム11及びパルセータ13を緩やかに減速させる必要がある場合、減速率が低い方、すなわち、回転速度が大きい方に回転速度を合わせる方が望ましい。しかし、回転速度が大きい方に回転速度を合わせるようにすると、ドラム11及びパルセータ13を停止させるまでに時間が掛かってしまう。
そこで、実施形態1では、制御装置15が、PWM制御に用いられる搬送波の1周期あたりで実行する、ドラム側及びパルセータ側位置センサ105,106によって検出される、ドラム11及びパルセータ13の検出回転速度を同程度にする同期制御と、上アーム側SW素子の全てをオンさせ下アーム側SW素子の全てをオフさせて短絡ブレーキをかける上アーム側短絡ブレーキ制御と、上アーム側SW素子の全てをオフさせ下アーム側SW素子の全てをオンさせて短絡ブレーキをかける下アーム側短絡ブレーキ制御と、において、前記搬送波の1周期あたりの、前記検出回転速度に基づいて前記PWM制御によって設定された、前記同期制御を実行する期間である同期制御期間の長さを変えずに、上アーム側短絡ブレーキ制御を実行する期間である上アーム側短絡ブレーキ期間を短縮するとともに、下アーム側短絡ブレーキ制御を実行する期間である下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行するようしている。
短絡ブレーキでは、モータ12から回生電流が流れなければブレーキ効果を示さないところ、直流電源100からの直流電圧の影響を受ける上アーム側SW素子を短絡させる上アーム側短絡ブレーキよりも、接地側に接続され、直流電圧の影響を受けない下アーム側SW素子を短絡させる下アーム側短絡ブレーキの方が、ブレーキ効果大きい。そのため、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行することで、ドラム11及びパルセータ13に対して同期制御を実行しながら減速させる際の、減速時間を短縮することができる。
以下において、図41及び図42を参照しながら、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御について説明する。なお、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御の方法については、ドラム側インバータ回路101とパルセータ側インバータ回路102とで、実質的に同じであるため、以下の説明では、ドラム側インバータ回路101に対する制御についてのみ説明する。
先ず、図41を参照しながら、前記同期制御期間、前記上アーム側短絡ブレーキ期間及び前記下アーム側短絡ブレーキ期間について説明する。
図41に、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行する前の、PWM制御における指令信号Va,Vb,Vcと搬送波Cとの関係、及びそれに基づく上アーム側及び下アーム側SW素子80a〜80fへの電気信号を示す。なお、図面中のa,b,c,d,e,fは、例えば、aは上アーム側SW素子80aに送られる電気信号というように、各SW素子とそれぞれ対応している。また、図41ではドラム側インバータ回路101に送られる電気信号のうちの任意の部分を抜き出しており、図41に示す期間の前後においても、同様の又は異なる電気信号が、制御装置15からドラム側インバータ回路101に送られている。
制御装置15からドラム側インバータ回路101に送られる、PWM制御された電気信号は、指令信号Va,Vb,Vcと搬送波Cとの比較によって決定される。詳しくは、指令信号Va,Vb,Vcと搬送波Cとが交差した点を基準にして、搬送波Cに対して指令信号Va,Vb,Vcの方が上回っている範囲では、上アーム側SW素子80a〜80cをオフさせかつ下アーム側SW素子80d〜80fをオンさせるような電気信号を送る一方、搬送波Cに対して指令信号Va,Vb,Vcの方が下回っている範囲では、上アーム側SW素子80a〜80cをオンさせかつ下アーム側SW素子80d〜80fをオフさせるような電気信号を送る。
なお、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行する前の指令信号Va,Vb,Vcは、ドラム及びパルセータの検出回転速度に基づいて決定されている。また、説明を簡単にするために、図41では、上アーム側SW素子80a〜80cのオンとオフとの切り換えと、下アーム側SW素子80d〜80fのオンとオフとの切り換えとが、同時に行われているように描いているが、実際には、インバータを形成するSW素子同士(例えば、上アーム側SW素子80aと下アーム側SW素子80d)が同時にオン状態にならないように切り換えのタイミングをずらしている。
具体的には、〜t1の期間では、制御装置15は、搬送波Cに対して全ての指令信号Va,Vb,Vcが高いため、上アーム側SW素子80a〜80cの全てをオフさせかつ下アーム側SW素子80d〜80fの全てをオンさせた状態にする。このときには、モータ12からの回生電流が下アーム側SW素子80d〜80fを介して消費され、モータ12のインナーロータ30には短絡ブレーキがかかる。ここから、t1において、搬送波Cが指令信号Vaを上回ると、制御装置15は、上アーム側SW素子80aをオンさせるとともに、下アーム側SW素子80dをオフさせる。
これにより、モータ12に直流電源100からの直流電圧が印加され、インナーロータ30の回転速度が調整される。この後、搬送波Cが指令信号Vbを上回ったときには、制御装置15は、上アーム側SW素子80bをオンさせるとともに、下アーム側SW素子80eをオフさせる。そして、t2において、搬送波Cが指令信号Vcを上回ったときには、制御装置15は、上アーム側SW素子80cをオンさせるとともに、下アーム側SW素子80fをオフさせて、上アーム側SW素子80a〜80cの全てをオンさせかつ下アーム側SW素子80d〜80fの全てをオフさせた状態にする。
このときには、モータ12へ接続された部分が全て同電位となり、モータ12には、ドラム側インバータ回路101から直流電圧が印加されなくなる。このときには、モータ12からの回生電流が上アーム側SW素子80a〜80cを介して消費され、インナーロータ30には短絡ブレーキがかかる。
そして、搬送波Cである三角波の山側の頂点を通過した後、時間t3において、搬送波Cが指令信号Vcを下回ったときには、制御装置15は、上アーム側SW素子80cをオフさせるとともに、下アーム側SW素子80fをオンさせる。これにより、モータ12に対して再び電位差が生じて、モータ12に直流電圧が印加され、インナーロータ30の回転速度が調整される。
この後、搬送波Cが指令信号Vbを下回ったときには、制御装置15は、上アーム側SW素子80bをオフさせるとともに、下アーム側SW素子80eをオンさせる。そして、t4において、搬送波Cが指令信号Vaを下回ったときには、制御装置15は、上アーム側SW素子80aをオフさせるとともに,下アーム側SW素子80dをオンさせる。これにより、再び上アーム側SW素子80a〜80cの全てをオフさせかつ下アーム側SW素子80d〜80fの全てをオンさせた状態となる。このときは、再びモータ12からの回生電力が下アーム側SW素子80a〜80fを介して消費され、インナーロータ30に短絡ブレーキがかかる。
上述のように、図41の〜t1及びt4〜の期間では、モータ12のインナーロータ30に下アーム側短絡ブレーキがかかり、図41のt1〜t2及びt3〜t4の期間では、モータ12に直流電圧が印加されて、その回転速度が調整され、図41のt2〜t3の期間では、モータ12のインナーロータ30に上アーム側短絡ブレーキがかかる。すなわち、図41の〜t1及びt4〜の期間が前記下アーム側短絡ブレーキ期間に相当し、図41のt1〜t2及びt3〜t4の期間が前記同期制御期間に相当し、図41のt2〜t3の期間が前記上アーム側短絡ブレーキ期間に相当する。
次に、図42を参照しながら、下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御について説明する。
図42に、下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行したときの、PWM制御における指令信号Va’,Vb’,Vc’と搬送波Cとの関係、及びそれに基づく上アーム側及び下アーム側SW素子80a〜80fへの電気信号を示す。なお、図42に示す仮想線は、図41における指令信号Va,Vb,Vcに対応する。
制御装置15は、下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行するときには、同期制御期間の長さを変えないようにして、下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させる。具体的には、前記PWM制御において補正前の指令信号Va,Vb,Vcと搬送波Cとによって設定される、上アーム側SW素子80a〜80cがオンするしきい値を搬送波Cの山側へ同じ大きさだけずらす。
すなわち、指令信号Va,Vb,Vcと搬送波Cとの交点が、搬送波Cの山側へずれるように、図42に仮想線で示す補正前の指令信号Va,Vb,Vcを補正して、図42に実線で示す指令信号Va’,Vb’,Vc’にする。指令信号Va,Vb,Vcを搬送波Cの山側へずらして、新たな指令信号Va’,Vb’,Vc’にすることで、指令信号が搬送波Cを下回る期間が短縮されかつ指令信号が搬送波Cを上回る期間が拡大されるため、上アーム側SW素子80a〜80cが全てオンしかつ下アーム側SW素子80d〜80fが全てオフする上アーム側短絡ブレーキ期間を短縮させ、上アーム側SW素子80a〜80cが全てオフしかつ下アーム側SW素子80d〜80fが全てオンする下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大(具体的には、図42に示すt1〜t1’及びt4’〜t4の期間分だけ拡大)させることができる。
また、山側へずらす、各上アーム側SW素子80a〜80cのしきい値の大きさを同じにすることで、上アーム側SW素子80a〜80c及び下アーム側SW素子80d〜80fがオン又はオフするタイミングだけが変化し、同期制御期間(図42のt1’〜t2’及びt3’〜t4’の期間)の長さについては維持することができる。これにより、前記同期制御期間の長さを維持しつつ、ブレーキ効果の大きい下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させることができる。
ここで、制御装置15は、上アーム側SW素子80a〜80cがオンする、それぞれの期間のうち最も短い期間に基づいて、すなわち、上アーム側SW素子80a〜80cのうち、PWM制御におけるデューティ比の最も小さい上アーム側SW素子(図41及び図42では、上アーム側SW素子80c)の前記デューティ比に基づいて、下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定する。下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御では、上アーム側SW素子80a〜80cのオンする期間が短縮されるため、上アーム側SW素子80a〜80cにおける前記デューティ比が小さくなる。
そのため、上アーム側SW素子80a〜80cのうち、前記デューティ比が最も小さい上アーム側SW素子の前記デューティ比が、デューティ比0%になる期間が、下ターム側短絡ブレーキ期間の最長期間になる。このことから、制御装置15は、上アーム側SW素子80a〜80cのうち、PWM制御のデューティ比が最も小さい上アーム側SW素子の前記デューティ比に基づいて、下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定する。これにより、適切に前記下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大することができる。
制御装置15は、上述した下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御をパルセータ側インバータ回路102に対しても行って、アウターロータ20を減速させることで、パルセータ13を減速させる。なお、下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御の方法については、ドラム側及びパルセータ側インバータ回路101,102で同じであるが、下アーム側短絡ブレーキ期間の長さは、ドラム11とパルセータ13との回転速度の差によって、適宜変更される。また、前記搬送波の周期は、ドラム側インバータ回路101に対する制御とパルセータ側インバータ回路102に対する制御とで異なっていてもよい。
したがって、実施形態1では、制御装置15は、ドラム11及びパルセータ13を同じ方向に回転させる脱水工程の終了後の減速工程において、ドラム側及びパルセータ側位置センサ105,106によってそれぞれ検出される、ドラム11及びパルセータ13の検出回転速度を同程度にするための同期制御と、上アーム側SW素子80a〜80cの全てをオンさせかつ下アーム側SW素子80d〜80fの全てをオフさせて、モータ12に短絡ブレーキをかける上アーム側短絡ブレーキ制御と、上アーム側SW素子80a〜80cの全てをオフさせかつ下アーム側SW素子80d〜80fの全てをオンさせて、モータ12に短絡ブレーキをかける下アーム側短絡ブレーキ制御と、を実行するとともに、搬送波の1周期あたりにおける、前記検出回転速度に基づいて前記PWM制御によって設定された、前記同期制御を実行する期間である同期制御期間の長さを変えずに、前記上アーム側短絡ブレーキ制御を実行する期間である上アーム側短絡ブレーキ期間を短縮させるとともに、前記下アーム側短絡ブレーキ制御を実行する期間である下アーム側短絡ブレーキ期間を拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行するように構成されているため、モータ12からの回生電力を適切に消費しながら、ドラム11とパルセータ13とを同期制御して減速させる際の減速時間を短縮させることができる。
次に、上述した実施形態(実施形態1)とは別の態様(実施形態2)について説明する。なお、実施形態2は、洗濯機1の構成については実施形態1と共通であり、制御装置15による制御の内容のみが実施形態1と異なるため、以下の説明では、制御の内容のみを説明し、洗濯機1の構成については説明を省略する。また、以下の説明では、実施形態1と共通の要素については、同じ符号を付して説明する。
実施形態2では、予め目標回転速度が定められており、ドラム11及びパルセータ13を減速させる際には、ドラム側及びパルセータ側位置センサ105,106によって検出される、ドラム11及びパルセータ13の検出回転速度が、前記目標回転速度となるように制御される点、特に、実施形態1の下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御において、拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間の長さが、前記検出回転速度と前記目標回転速度との差に基づいて決定される点で、実施形態1とは異なる。
このように、予め目標回転速度を定めておき、前記検出回転速度と該目標回転速度との差に基づいて、下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定することで、減速工程において、ドラム11及びパルセータ13を早くかつ正確に減速させて、停止させることができる。
実施形態2における制御について、図43のグラフを参照しながら説明する。なお、ドラム11に対する制御とパルセータ13に対する制御とは、実質的に同じであるため、以下では、ドラム11に対する制御のみを説明し、パルセータ13に対する制御については省略する。
図43は、ドラム11の検出回転速度及び目標回転速度の関係を示すグラフである。縦軸は回転速度であり、横軸は時間である。ドラム11は、脱水工程中(図43の0〜t1までの期間)は、略一定速度となるように制御される。そして、時間t1において脱水工程が終了すると、減速工程に入る。
前記減速工程では、制御装置15は、ドラム11の前記検出回転速度が前記目標回転速度となるように、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行しながら、ドラム11を減速させる。
前記減速工程における制御を具体的に説明すると、前記検出回転速度が前記目標回転速度を下回りかつ前記検出回転速度と前記目標回転速度との差が所定値よりも大きくなったときには、制御装置15は、ドラム11とパルセータ13との回転速度に差が出る可能性があると判断して、前記回転速度の差の大きさに基づいて、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御において拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間を短くするように制御する。これにより、ドラム11の回転速度を前記目標回転速度に近づけることができる。
一方で、前記検出回転速度が前記目標回転速度を上回りかつ前記検出回転速度と前記目標回転速度との差が所定値よりも大きくなったときには、制御装置15は、モータ12からの回生電力を消費しきれていないと判断して、前記回転速度の差の大きさに基づいて、前記拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間を長くするように制御する。これにより、消費できなかった回生電力を消費することができる。なお、前記拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間を長くする場合は、上アーム側SW素子80a〜80cのPWM制御におけるデューティ比から定められた、下アーム側短絡ブレーキ期間の最長期間を範囲で長くする。
次に、図44のフローチャートを参照しながら、実施形態2に係る洗濯機1の減速工程における制御装置15の処理動作について説明する。
最初のステップS101で、ドラム側位置センサ105によって、ドラム11(詳しくは、インナーロータ30)の回転速度を検出する。
次に、ステップS102で、ステップS101検出された検出回転速度と前記目標回転速度との差の絶対値が所定値よりも小さいか否かについて判定する。該回転速度の差の絶対値が該所定値以上であるNOときには、ステップS103に進む一方、前記回転速度の差の絶対値が前記所定値よりも小さいであるYESのときには、リターンする。
前記ステップS103では、下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御において拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間を変更する。具体的には、前記検出回転速度が前記目標回転速度よりも大きいときには、前記拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間を長くする一方、前記検出回転速度が前記目標回転速度よりも小さいときには、前記拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間を短くする。これにより、ドラム11の回転速度を前記目標回転速度に近づけつつ、モータ12からの回生電力を適切に消費することができる。ステップS103の後は、ステップS101に戻って、ドラム11の回転速度を検出し、ステップS102で再び判定を受ける。
なお、パルセータ側インバータ回路102に対しても同様のフローチャートに基づいて制御を行う。
したがって、実施形態2では、ドラム11及びパルセータ13の目標回転速度を予め設定しておき、前記検出回転速度と前記目標回転速度との差に基づいて、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御において拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定するため、実施形態1と同様の効果を得ることができるとともに、ドラム11及びパルセータ13を正確に減速させて、停止させることができる。
更に別の態様(実施形態3)について説明する。なお、以下の説明では、実施形態1と共通の要素については、同じ符号を付して説明する。
実施形態3では、図45に示すように、ドラム側及びパルセータ側インバータ回路101,102に印加される直流電圧を検出するための電圧センサ108が設けられている点で、実施形態1,2とは異なる。電圧センサ108は、ドラム側及びパルセータ側インバータ回路101,102よりも直流電源100側に、ドラム側及びパルセータ側インバータ回路101,102と並列になるように接続された、抵抗109,110の間の電圧を測定して、ドラム側及びパルセータ側インバータ回路101,102に印加される直流電圧を検出する。その他の洗濯機1の構成については、実施形態1,2と同様である。
また、実施形態3は、拡大させる下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定する方法が実施形態1,2と異なる。詳しくは、実施形態3では、電圧センサ108で検出される検出電圧と予め設定された目標電圧との差に基づいて、下アーム側短絡ブレーキ期間の長さが決定される。
実施形態3における制御について、図46のグラフを参照しながら説明する。なお、ドラム11に対する制御とパルセータ13に対する制御とは、実質的に同じであるため、以下では、ドラム11に対する制御のみを説明し、パルセータ13に対する制御については省略する。
図46は、ドラム側インバータ回路101に印加される直流電圧、ドラム11の回転速度及び目標回転速度の関係を示すグラフである。図46の左側の縦軸はドラム側インバータ回路101に印加される直流電圧であり、右側の縦軸は回転速度であり、横軸は時間である。また、目標電圧は直流電源100に基づく電圧に設定されている。なお、ドラム11の回転速度は、実施形態2と同様に、ドラム側位置センサ105によって検出される。
ドラム11は、脱水工程中(図46の0〜t1までの期間)は、略一定速度となるように制御される。このとき、ドラム側インバータ回路101には、直流電源100から電源電圧が印加されているため、前記検出電圧は前記目標電圧と等しくなる。そして、時間t1において脱水工程が終了すると、減速工程に入る。該減速工程では、制御装置15は、ドラム11の前記検出回転速度が前記目標回転速度となるように、前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御を実行しながら、ドラム11を減速させる。
この減速工程において、前記検出回転速度が前記目標回転速度を上回ったときには、モータ12からの回生電力を消費しきれず、モータ12からドラム側インバータ回路101へ、直流電源100の電圧よりも高い電圧が印加される。このとき、図46に示すように、電圧センサ108で検出される検出電圧は前記目標電圧よりも高くなる。
そこで、制御装置15は、前記検出電圧が前記目標電圧を上回ったときには、モータ12からの回生電力を消費しきれていないと判断して、前記検出電圧が前記目標電圧よりも高いほど、下アーム側短絡ブレーキ期間を長くするように制御する。これにより、消費できなかった回生電力を消費させて、ドラム11の前記検出回転速度を前記目標回転速度にすることができる。
上述のように下アーム側短絡ブレーキ期間の長さを決定することで、前記回生電力を適切に消費しながら、ドラム及びパルセータを減速させることができる。なお、下アーム側短絡ブレーキ期間を長くするときには、上アーム側SW素子80a〜80cのPWM制御におけるデューティ比から定められた、下アーム側短絡ブレーキ期間の最長期間を超えない範囲で長くする。
次に、図47のフローチャートを参照しながら、実施形態3に係る洗濯機1の減速工程における制御装置15の処理動作について説明する。
最初のステップS201で、電圧センサ108によって、ドラム側インバータ回路101に印加されている電圧を検出する。
次に、ステップS202で、ステップS201で検出された検出電圧が、予め設定された目標電圧より大きいか否かについて判定する。ステップS201の判定がYESときには、ステップS203に進む一方、ステップS201の判定がNOときには、リターンする。
前記ステップS203では、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を長くする。このとき、前記検出電圧が前記目標電圧よりも高いほど、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を長くするようにする。これにより、モータ12からの回生電力を適切に消費することができる。ステップS103の後は、ステップS201に戻って、ドラム側インバータ回路101に印加されている電圧を検出し、ステップS202で再び判定を受ける。
なお、パルセータ側インバータ回路102に対しても同様のフローチャートに基づいて制御を行う。
したがって、実施形態3では、ドラム側及びパルセータ側インバータ回路101,102に印加される電圧を検出する電圧センサ108を備え、該電圧センサ108で検出される検出電圧が予め設定された目標電圧よりも高くなるほど、前記下アーム側短絡ブレーキ期間を長くするように構成されているため、実施形態1と同様の効果を得ることができるとともに、より適切にモータ12の回生電力を消費しながら、ドラム11及びパルセータ13を減速させることができる。
(変形例等)
前記下アーム側短絡ブレーキ期間拡大制御の際に用いるドラム11及びパルセータ13の検出回転速度として、ドラム側及びパルセータ側位置センサ105,106によって検出された検出回転速度を用いていたが、これに限らず、ドラム側及びパルセータ側電流センサ103,104で検出される検出電流から算出された回転速度を用いるようにしてもよい。
また、下アーム側短絡ブレーキ期間を決定する制御については、それぞれ組み合わせるようにしてもよい。例えば、実施形態2の制御と実施形態3の制御とを組み合わせて、検出電圧が目標電圧よりも高くなった場合に、ドラム11及びパルセータ13の検出回転速度と目標回転速度との差から、モータ12からの回生電力を消費できていないのが、ドラム側インバータ回路101であるかパルセータ側インバータ回路102であるかを特定して、前記回生電力を消費できていない方だけ、下アーム側短絡ブレーキ期間を長くする、などの制御をしてもよい。
<第5の技術>
第5の技術は、洗い運転や濯ぎ運転に関し、特に、その洗い処理や濯ぎ処理におけるドラム及びパルセータの回転制御技術に関する。
すなわち、この洗濯機1の制御装置15には、図48に示すように、洗い処理及び濯ぎ処理におけるいずれかの行程において、ドラム11及びパルセータ13の双方を同時に独立して回転させる二重回転制御部15aが設けられている。二重回転制御部15aがドラム11及びパルセータ13の双方を同時に独立して回転させることで、ドラム11の内部で方向や流速が様々な水流を発生させることができ、洗濯物を適度に水中に分散させながら柔らかいタッチで洗いや濯ぎの処理が行えるようになっている。
(洗い処理や濯ぎ処理におけるドラム及びパルセータの回転制御)
この洗濯機1には、上述したように、インナーロータ30とアウターロータ20とで1つのステータ60を共用するタイプのデュアルロータ型のモータ12が設置されている。そのため、ドラム11及びパルセータ13の双方を独立して駆動させることができるうえに、インナーロータ30の径をアウターロータ20に近づけることができるため、インナーロータ30でも高トルクが得られるようになっている。
この洗濯機1の場合、ドラム11を高トルクでも安定して駆動できるため、図48に示すように、二重回転制御部15aが、モータ12に供給する複合電流を制御することで、洗い処理や濯ぎ処理の際に、インナーロータ30によるドラム11の回転とアウターロータ20によるパルセータ13の回転とが、個別に独立して制御され、高度かつ繊細な処理が多様に行えるようになっている。
(第1の制御パターン)
図49に、二重回転制御部15aによって行われる回転制御の一例(第1の制御パターン)を示す。第1の制御パターンは、ドラム11とパルセータ13とをモータ12で駆動して同一の方向に異なる回転数で回転させる制御パターンである。例示した第1の制御パターンでは、ドラム11とパルセータ13とが同期して間欠的に同一の方向に回転し、ドラム11の回転数R1がパルセータ13の回転数R2よりも大きくなるように設定されている。
間欠的に行われるドラム11及びパルセータ13の回転の方向は、仮想線で示すように同一方向であってもよいし、逆方向、つまり反転してもよい。ドラム11とパルセータ13とを同じ方向に回転させることで、洗濯物を回転させながら緩やかにドラム11の外側や内側に移動させることができ、洗濯物を水中で適度に分散させながら、柔らかいタッチで洗いや濯ぎを行うことができる。
例示のように、ドラム11の回転数をパルセータ13の回転数よりも大きくすれば、洗濯物を緩やかにドラム11の外側に移動させることができ、逆に、ドラム11の回転数をパルセータ13の回転数よりも小さくすれば、洗濯物を緩やかにドラム11の内側に移動させることができる。
(第2の制御パターン)
図50に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第2の制御パターン)を示す。第2の制御パターンは、ドラム11及びパルセータ13のうち、ドラム11のみがモータ12によって回転駆動され、パルセータ13がドラム11の回転に付随して回転する制御パターンである。インナーロータ30及びアウターロータ20を駆動する複合電流の供給が行われずに、インナーロータ30のみを駆動する3相の電流がステータ60に供給される。それにより、消費電力を抑制しながら、パルセータ13を、ドラム11の回転に付随してドラム11と同一方向に低い回転数で回転させることができる。
アウターロータ20には、コギングトルク(非励磁の状態でロータを動かした場合に、マグネットとコアの間に働く磁気的吸引力によって発生するトルク)が作用する。また、このモータ12の場合、アウターロータ20に相互リップル(インナーロータ30の駆動によって形成される磁界の影響により、アウターロータ20で発生するトルクリップル)も作用する。そのため、パルセータ13の回転には一定のブレーキがかかる。
そのため、パルセータ13は、ドラム11よりも低い回転数で回転することとなり、洗濯物を回転させながら緩やかにドラム11の外側に移動させることができる。
(第3の制御パターン)
図51に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第3の制御パターン)を示す。第3の制御パターンは、ドラム11及びパルセータ13の各々を異なる周期で反転させながら回転させる制御パターンである。例示した第3の制御パターンでは、ドラム11及びパルセータ13の各々は、一定間隔で反転しながら回転し、ドラム11で1周期(例示では正転、停止、及び逆転が行われる期間)分の処理が行われる間に、パルセータ13では2周期分の処理が行われるように設定されている。
このように回転制御することによっても、洗濯物を水中で適度に分散させながら、柔らかいタッチで洗いや濯ぎを行うことができるようになる。なお、ドラム11及びパルセータ13の各周期は異なっていればよく、1:2の関係に限らない。
(第4の制御パターン)
図52に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第4の制御パターン)を示す。第4の制御パターンは、ドラム11を同一方向に回転させた状態で、パルセータ13を反転させながら回転させる制御パターンである。例示した第4の制御パターンでは、ドラム11は一定の回転数で正転した状態に保持され、その間、パルセータ13は、間欠的に反転し、正転と逆転とを繰り返すように設定されている。
この場合、パルセータ13の回転数は、ドラム11の回転数と同一でもよいし異なっていてもよい。また、パルセータ13の正転時及び逆転時の各回転数も同一でもよいし異なっていてもよい。このように回転制御することで、ドラム11の回転によってドラム11の内部の水や洗濯物に遠心力が作用するため、ドラム11の周辺部の水位が相対的に高くなり、洗濯物もドラム11の周辺部に集まり易くなる。そうした状態でパルセータ13が回転するため、洗濯物を水中で適度に分散させながら、多種多様な洗濯物に対して効果的に洗いや濯ぎを行うことができ、少ない水量で効率よく洗い処理や濯ぎ処理を行うことができる。
(第5の制御パターン)
図53に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第5の制御パターン)を示す。第5の制御パターンは、回転数が目標回転数に達するまでの起動時間t1、及び目標回転数から回転が停止するまでの終了時間t2の少なくともいずれか一方を、ドラム11とパルセータ13とで異ならせる制御パターンである。
この回転制御では、慣性力が大きいドラム11は、停止状態から小さい速度で起動され、予め設定されている目標回転数までゆっくりと増速される。そして、慣性力の小さいパルセータ13は、停止状態から大きい速度で起動され、予め設定されている目標回転数まで速やかに増速される。
すなわち、ドラム11の起動時間t1が、パルセータ13の起動時間t1よりも長く設定されている。そうすることにより、慣性力に応じた効率的な起動が行えるため、消費電力を低減できる。
起動時間t1だけでなく、終了時間t2も起動時間t1と同様に異ならせるのが好ましい。すなわち、制動制御を行うことなく、慣性力が大きいドラム11は、目標回転数から小さい速度で終了させ、停止状態までゆっくりと減速させる。慣性力の小さいパルセータ13は、目標回転数から大きい速度で終了させ、停止状態まで速やかに減速させる。そうすれば、よりいっそう消費電力を低減できる。
なお、図53では、便宜上、前半でドラム11及びパルセータ13を逆方向に回転させるパターンを、後半で同方向に回転させるパターンを示したものである。後半を、前半と同様にドラム11及びパルセータ13を逆方向に回転させながら、反転させてもよいし、前半を、後半と同様にドラム11及びパルセータ13を同方向に回転させながら、反転させてもよい。ドラム11及びパルセータ13の回転は任意に制御できる。
(第6の制御パターン)
図54に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第6の制御パターン)を示す。第6の制御パターンは、第5の制御パターンにおいて更に、モータ12による駆動の開始タイミングPを、ドラム11とパルセータ13とで異ならせる制御パターンである。
ドラム11及びパルセータ13は、双方が同時に目標回転数で回転することによって洗い処理や濯ぎ処理が効率的に行えるので、その適正回転期間Kは長いのが好ましいが、第5の制御パターンでは、ドラム11とパルセータ13とで起動時間や終了時間が異なるため、ドラム11とパルセータ13とでモータ12による駆動時間Tonを同一にすると、ドラム11とパルセータ13とで適正回転期間Kに差が生じる。
そこで、例示した第6の制御パターンでは、ドラム11のモータ12による駆動開始タイミングPを、パルセータ13のモータ12による駆動開始タイミングPよりも早くすることで、ドラム11及びパルセータ13の目標回転数に達するタイミングを一致させ、双方の適正回転期間Kの最適な組み合わせを実現している。
(第7の制御パターン)
図55に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第7の制御パターン)を示す。第7の制御パターンは、第5の制御パターンにおいて更に、モータ12による駆動期間Ton及び駆動停止期間Toffの少なくともいずれか一方を、ドラム11とパルセータ13とで異ならせる制御パターンである。なお、駆動期間Tonは、ドラム11等がモータ12によって駆動される通電期間であり、駆動停止期間Toffは、ドラム11等がモータ12によって駆動されない非通電期間である。
第5の制御パターンでは、ドラム11とパルセータ13とで起動時間や終了時間が異なるため、ドラム11とパルセータ13とで回転期間(回転している期間)や停止期間(回転が停止している期間)に差が生じる。
そこで、例示した第7の制御パターンでは、ドラム11とパルセータ13とで駆動期間Ton及び駆動停止期間Toffを異ならせることにより、ドラム11とパルセータ13とで、回転期間及び停止期間の長さ及びタイミングが一致するように設定されている。従って、洗い処理や濯ぎ処理を効率よく行える。
(第8の制御パターン)
図56に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第8の制御パターン)を示す。第8の制御パターンは、ドラム11及びパルセータ13を、互いに逆方向に間欠的に回転させ、その状態で、ドラム11及びパルセータ13の少なくともいずれか一方において、間欠的に行われる各回転の回転期間Tr及びこれら回転期間の間の各停止期間Tsの少なくともいずれか一方の長さを異ならせる制御パターンである。
ドラム11とパルセータ13とを互いに逆方向に間欠的に回転させた場合、ドラム11の内部に水流が滞る状態が生じて、滞留する洗濯物が発生する傾向がある。そこで、例示した第8の制御パターンでは、ドラム11及びパルセータ13の双方において、互いの回転期間Tr及び停止期間Tsの長さ及びタイミングは一致させながら、これら回転期間Tr及び停止期間Tsの長さが各々異なるように設定されている。
具体的には、前半のドラム11及びパルセータ13の回転時における回転期間Tr1に対して、後半のドラム11及びパルセータ13の回転時における回転期間Tr2は短くなっている。そして、前半のドラム11及びパルセータ13の停止期間Ts1に対して、後半のドラム11及びパルセータ13の停止期間Ts2は長くなっている。
このように、各回転期間Trや各停止期間Tsの長さを異ならせることで、ドラム11の内部に水流が滞る状態が生じるのを防ぐことができ、洗濯物を全体的に移動させることができる。なお、回転期間Trや停止期間Tsの長さは適宜調整できる。また、回転期間Trや停止期間Tsの長さを異ならせるのは、ドラム11及びパルセータ13の一方だけであってもよく、長さを異ならせるのは、回転期間Tr及び停止期間Tsの一方だけであってもよい。
(第9の制御パターン)
図57に、二重回転制御部15aによって行われる他の回転制御の一例(第9の制御パターン)を示す。第9の制御パターンは、ドラム11及びパルセータ13を、互いに逆方向に間欠的に回転させるとともに、ドラム11及びパルセータ13の少なくともいずれか一方において、間欠的に行われる各回転の回転数を異ならせる制御パターンである。この第9の制御パターンによっても、第8の制御パターンと同様の効果を得ることができる。
例示した第9の制御パターンでは、ドラム11及びパルセータ13の双方において、互いの各回転期間Tr及び各停止期間Tsの長さ及びタイミングは一致させながら、各回転での回転数Rが異なるように設定されている。
具体的には、ドラム11では、前半の回転時の回転数R1に対して、後半の回転時の回転数R2が小さくなるように設定されている。そして、パルセータ13では、前半の回転時の回転数R3に対して、後半の回転時の回転数R4が大きくなるように設定されている。
この場合、回転数Rは適宜調整できる。また、回転数Rを異ならせるのは、ドラム11及びパルセータ13の一方だけであってもよい。更には、第8及び第9の制御パターンを組み合わせ、各回転の回転数Rを異ならせることと、各回転期間Trや各停止期間Tsの長さを異ならせることの双方を組み合わせて行ってもよい。
第8及び第9の制御パターンに限らず、第1〜第9の制御パターンは、個別に行ってもよいし、これら制御パターンを組み合わせて行ってもよい。
(変形例等)
例えば、モータのタイプは、実施形態のデュアルロータ型のモータ12に限らない。特許文献2のような構造のモータであってもよい。また、変速機等を組み合わせたモータであってもよい。要は、ドラムとパルセータとが個別に駆動できるモータであればよい。
<第6の技術>
第6の技術は、ドラムとパルセータとを相反回転させる際にモータに加わる負荷を低減させる技術に関する。
図58に示すように、制御装置15とモータ12とは、インバータ回路111を介して接続されている。インバータ回路111には、インバータ112と、負荷検出手段113a,113bとが設けられている。
インバータ112は、制御装置15から送信された電気信号に基づいて、駆動電圧をモータ12に伝達する。モータ12のアウターロータ20及びインナーロータ30の動作は、インバータ112から伝達された駆動電圧に基づいて制御される。
負荷検出手段113a,113bは、アウターロータ20に駆動連結されたパルセータ13及びインナーロータ30に駆動連結されたドラム11を作動させるときに、モータ12に加えられる負荷を検出するものである。負荷検出手段113aは、パルセータ13を駆動させる際にモータ12に加えられる負荷を検出し、負荷検出手段113bは、ドラム11を駆動させる際にモータ12に加えられる負荷を検出する。
負荷検出手段113a,113bは、ドラム11及びパルセータ13を作動させるときにモータ12に加えられる負荷を検出可能なものであれば特に限定されない。例えば、電流センサによってモータ12に流れる電流を検出することで、モータ12に加えられる負荷を検出してもよいし、位置センサによって検出されるロータ20,30の回転速度を検出することで、モータ12が作動するときに、該モータ12に加えられる負荷を検出するようにしてもよい。負荷検出手段113a,113bで検出された検出負荷は、検出信号として制御装置15に送信される。
また、図58に示すように、洗濯機1には、洗濯機1の振動を検出するための振動検出手段114が設けられている。振動検出手段114は、例えば、ドラム11よりも外側のタブ10に配置されている。洗濯機1の振動、特にドラム11の振動を検出可能なものであれば特に限定されない。
例えば、変位センサによって洗濯機1の変位を観測することで、洗濯機1の振動の大きさを検出するようにしてもよいし、加速センサによって振動する洗濯機1の加速度を検出することで、振動の大きさを検出するようにしてもよい。また、前記負荷検出手段113a,113bを振動検出手段114と兼用するようにしてもよい。振動検出手段114で検出された検出振動は、検出信号として制御装置15に送信される。
制御装置15は、負荷検出手段113a,113bによって検出された検出負荷や振動検出手段114で検出された検出振動等に基づいて、ドラム11及びパルセータ13の動作を制御する。詳しくは、検出負荷や検出振動等に基づいて、モータ12を制御するための電気信号を送信する。制御装置15から送信された電気信号は、インバータ112に入力され、インバータ112を介して、前記電気信号に基づく駆動電圧がモータ12に付与される。
そして、前記駆動電圧によって、モータ12のアウターロータ20及びインナーロータ30の動作が制御される。以上のことから、制御装置15から送信された電気信号に基づいて、アウターロータ20に駆動連結されたパルセータ13及びインナーロータ30に駆動連結されたドラム11の動作が制御される。
(モータの回転動作の制御)
洗濯機1は、上述したように、ロータ20,30を各々独立して駆動できるようになっているため、従来とは異なる態様の運転を実現することができる。
特に、洗濯機1では、洗濯運転時に、インナーロータ30(ドラム11)を時計回りに回転(以下、正回転という)させかつアウターロータ20(パルセータ13)を反時計回りに回転(以下、逆回転という)させる第1相反駆動モードと、インナーロータ30(ドラム11)を逆回転させかつアウターロータ20(パルセータ13)を正回転させる第2相反駆動モードとを、停止期間を挟みながら交互に繰り返す運転が提供される。
すなわち、ドラム11とパルセータ13とを互いに相反方向に回転させることで、ドラム内の水に捻り力を発生させ、洗濯物の洗いむらを防止することができる。また、第1相反駆動モードと第2相反駆動モードとを停止期間を挟みながら交互に繰り返すことで、水流の方向を入れ替えて、洗濯物をほぐすことができる。この結果、洗濯効率の向上が期待される。
ここで、第1相反駆動モードから第2相反駆動モードへ、又は第2相反駆動モードから第1相反駆動モードへ切り替える際には、ドラム11及びパルセータ13の回転方向を反転させるために、モータ12に比較的大きな起動負荷が加えられる。特に、ドラム11は洗濯機1の中でも大きい部品であるため、ドラム11を回転させた時には、該回転方向に対して比較的大きな慣性力がドラム11に付与される。そのため、ドラム11の回転方向を反転させる際に、モータ12には過大な起動負荷が加えられる。このとき、この過大な起動負荷によって、モータ12が起動不良を起こすおそれがある。
また、上述のようなドラム11及びパルセータ13の慣性力は、モータ12によって加速された後である、停止期間中に最も大きくなるところ、前記停止期間が短いときほど慣性力が大きく残った状態で回転方向を反転させることになるため、前記停止期間が短いときほど、モータ12の起動不良が起こりやすい。
そこで、実施形態1では、停止期間が予め定められた基準時間よりも短い時間に設定されている場合に、負荷検出手段113a,113bによって検出される検出負荷が、予め設定された目標負荷以下になるように、ドラム11及びパルセータ13の少なくとも一方の、オン及びオフの少なくとも一方のタイミングを制御する負荷低減補正制御を実行するようにしている。
具体的には、検出負荷が目標負荷よりも大きくなったときに、負荷低減補正制御として、以下に説明する、第1補正制御又は第2補正制御のうちの1つを実行して、モータ12に加えられる起動負荷を低減させる。なお、前記基準時間は、ドラム11及びパルセータ13の慣性力が十分に低下する程度の長さの時間である。また、目標負荷は、モータ12の起動不良が発生しない程度の負荷である。
以下に、第1補正制御及び第2補正制御について、図59及び図60を参照しながら詳細に説明する。
図59に、第1補正制御の実行時にモータ12に付与される電気信号を示す。第1補正制御は、第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードのオン時に、ドラム11又はパルセータ13の一方をオンさせてから、第1所定時間が経過した後に、ドラム11又はパルセータ13の他方をオンさせる制御である。なお、図59は、ドラム11をオンさせてから第1所定時間(図59ではt1)が経過した後に、パルセータ13をオンさせるようにした場合に、モータ12に付与される電気信号(パルス信号)である。
ここでは、図59に基づいて、ドラム11をオンさせてから、第1所定時間が経過した後に、パルセータ13をオンさせる場合についてのみ詳細に説明する。
図59を参照すると、先ず、制御装置15は、第1相反駆動モードをオンにして、ドラム11を正回転させかつパルセータ13を逆回転させる。このとき、ドラム11内の洗濯物は、一般に、パルセータ13の回転方向に連れ回る。
次に、第1相反駆動モードをオフにして、所定時間(以下、停止期間という)の間、モータ12を休止させる。この停止期間の間、ドラム11は慣性力によって正回転方向に惰性回転する一方、パルセータ13も慣性力によって逆回転方向に惰性回転する。
また、図59に示すように、パルセータ13の回転方向に連れ回ったことにより、ドラム11内の洗濯物にも慣性力が発生しており、洗濯物は、パルセータの回転方向と同じ逆回転方向に惰性回転する。この停止期間は、基準時間よりも短いため、洗濯物の慣性力は次の第2相反駆動モードがオンされるまで残り続ける。
停止期間の経過後、制御装置15は、第2相反駆動モードをオンにして、ドラム11を逆回転させかつパルセータ13を正回転させる。
この第2相反駆動モードをオンするときに、負荷検出手段113a,113bは、モータ12に加えられる負荷を検出する。そして、該検出負荷が目標負荷よりも大きいときには、制御装置15は、モータ12の起動不良が発生する可能性があると判断して、次の第1相反駆動モードを起動するときに、第1補正制御を実行する。
次に、制御装置15は、第2相反駆動モードをオフにして、停止期間の間、モータ12を休止させる。この停止期間の間、上述したように、ドラム11及びパルセータ13は慣性力によって惰性回転する。このとき、洗濯物はパルセータ13の回転方向と同じ正回転方向に惰性回転する。
そして、停止期間の経過後、第1相反駆動モードをオンする際に、制御装置15は、第1補正制御を実行して、先ず、ドラム11のみをオンして、該ドラム11を正回転させる。この時点では、パルセータ13は逆回転していないため、ドラム11内の洗濯物には正回転方向の慣性力が残っている。
そのため、ドラム11は洗濯物の慣性力を利用して駆動される。これにより、ドラム11の回転方向を正回転方向に反転させやすくなり、ドラム11を正回転させるためにモータ12に加えられる起動負荷が低減される。
次に、ドラム11をオンしてから第1所定時間が経過した後、制御装置15は、パルセータ13をオンして、逆回転させる。ドラム11内の洗濯物は、再びパルセータ13の回転方向に連れ回されて、正回転方向から逆回転方向へと回転方向を変える。
これにより、今度はドラム11内の洗濯物に逆回転方向の慣性力が発生する。この結果、次の第2相反駆動モードを起動するときに、再び第1補正制御を実行することで、ドラム11の回転方向を逆回転方向に反転させるためにモータ12に加えられる起動負荷が低減される。
上述のように、第1補正制御を実行することで、ドラム11内の洗濯物に発生した慣性力の方向が、パルセータ13によって切り替えられる前に、該慣性力を利用して、ドラム11の回転方向を反転させることができ、ドラム11の回転方向を反転させる際に、モータ12に加えられる起動負荷が低減される。
ここで、例えば、洗濯物がドラム11に張り付くなどして、上述とは逆に、洗濯物がドラム11の回転方向に連れ回っているときには、パルセータ13をドラム11よりも先にオンさせるようにする。洗濯物がドラム11の回転方向に連れ回っている場合、ドラム11には、ドラム11自身の慣性力に加えて洗濯物の慣性力が作用するため、ドラム11の回転方向を反転させる際に、モータ12に過大な負荷が加えられる。
そのため、パルセータ13を先に回転させて、洗濯物がパルセータ13に連れ回るように洗濯物に勢いをつける。そして、洗濯物がパルセータ13の方向に連れ回るようになったら、ドラム11の方を先にオンさせるようにする。これにより、モータ12に過大な負荷が加えられるのを防止する。
なお、洗濯物がドラム11の回転方向に連れ回っているか否かは、負荷検出手段113a,113bによって検出することができる。例えば、洗濯物がドラム11の回転方向に連れ回っているときには、洗濯物の反転前の慣性力の方向とパルセータ13の反転後の回転方向とが同じになるため、パルセータ13の反転時のモータ12(アウターロータ20)の負荷が小さくなる。
負荷が小さくなることにより、電流センサによって検出される電流が小さくなる。これにより、洗濯物がドラム11の回転方向に連れ回っていることが検出される。また、位置センサによって、停止期間中のアウターロータ20及びインナーロータ30の回転速度を検出して、洗濯物がドラム11の回転方向に連れ回っていることを検出することもできる。
図60に、第2補正制御の実行時にモータ12に付与される電気信号を示す。第2補正制御は、第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードのオフ時に、ドラム11又はパルセータ13の一方をオフさせてから、第2所定時間が経過した後に、ドラム11又はパルセータ13の他方をオフさせる制御である。なお、図60は、ドラム11をオフさせてから第2所定時間(図60ではt2)が経過した後に、パルセータ13をオフさせるようにした場合に、モータ12に付与される電気信号(パルス信号)である。
ここでは、図60に基づいて、先ずドラム11をオフさせてからパルセータ13をオフさせる場合についてのみ詳細に説明する。
図60を参照すると、先ず、制御装置15は、第1相反駆動モードをオンにして、ドラム11を正回転させかつパルセータ13を逆回転させる。このとき、ドラム11内の洗濯物は、パルセータ13の回転方向に連れ回る。
次に、第1相反駆動モードをオフにして、停止期間の間、モータ12を休止させる。上述したように、この停止期間の間、ドラム11及びパルセータ13は慣性力によって惰性回転する。このとき、洗濯物はパルセータ13の回転方向である逆回転方向に惰性回転する。
停止期間の経過後、制御装置15は、第2相反駆動モードをオンにして、ドラム11を逆回転させかつパルセータ13を正回転させる。
この第2相反駆動モードをオンするときに、負荷検出手段113a,113bは、モータ12に加えられる負荷を検出する。そして、該検出負荷が目標負荷よりも大きいときには、制御装置15は、モータ12の起動不良が発生する可能性があると判断して、第2相反駆動モードをオフするときに、第2補正制御を実行する。
第2補正制御を実行する時、制御装置15は、先ず、ドラム11のみをオフする。ドラム11は、オフした後、慣性力によって逆回転方向に惰性回転する。そして、ドラム11をオフさせてから第2所定時間が経過した後に、パルセータ13をオフさせる。
パルセータ13を遅れてオフさせることにより、換言すると、パルセータ13を長めに回転させることにより、ドラム11内の洗濯物にパルセータ13の回転方向に勢いが付くため、ドラム11内の洗濯物には、ドラム11とパルセータ13とを同時にオフさせる場合と比べて、大きな慣性力が残る。パルセータ13をオフさせた後、制御装置15は、停止期間の間、モータ12を休止させる。この停止期間の間、ドラム11内の洗濯物とパルセータ13とは、正回転方向に惰性回転する。
そして、停止期間の経過後、制御装置15は、次の第1相反駆動モードをオンにして、ドラム11を正回転させかつパルセータ13を逆回転させる。このとき、ドラム11内の洗濯物には、ドラム11とパルセータ13とを同時にオフさせる場合と比べて、大きな慣性力が残っているため、該洗濯物の慣性力を利用してドラム11の回転方向を正回転方向に反転させることで、モータ12に加えられる起動負荷が低減される。
また、パルセータ13の回転方向が逆回転方向に反転することで、ドラム11内の洗濯物は、再びパルセータ13の回転方向に連れ回されて、正回転方向から逆回転方向へと回転方向を変える。これにより、第1相反駆動モードをオフしたときには、今度はドラム11内の洗濯物に逆回転方向の慣性力が発生する。この結果、第1相反駆動モードをオフする際に、再び第2補正制御を実行することで、次の第2相反駆動モードをオンしてドラム11の回転方向を逆回転方向に反転させる際に、モータ12に加えられる起動負荷が低減される。
上述のように、第2補正制御を実行することで、ドラム11とパルセータ13とを同時にオフさせる場合と比べて、大きな慣性力をドラム11内の洗濯物に残すことができるため、該慣性力を利用してドラム11を起動させることで、モータ12に加えられる起動負荷を低減することができる。
以上のように、第1又は第2補正制御のいずれかを実行することによって、第1相反駆動モードと第2相反駆動モードとを交互に実行する際に、モータ12に加えられる負荷を低減することができる。この結果、モータの起動不良を防止される。
なお、停止期間が前記基準時間よりも長い時間に設定されている場合には、停止期間の間にドラム11及びパルセータ13の慣性力が十分に低下するため、第1相反駆動モードから第2相反駆動モードに又は第2相反駆動モードから第1相反駆動モードに切り替えられる際にモータ12に加えられる負荷は、目標負荷以下になる場合がほとんどである。そのため、停止期間が基準時間以上の時間に設定されている場合には、前記第1又は第2補正制御は実行されない。
ここで、上述の第1補正制御では、ドラム11内の洗濯物の慣性力を利用して、ドラム11の回転方向を反転させることで、ドラム11の回転方向を反転させやすくしている。第1補正制御を実行するときに、第1所定時間の間は、ドラム11のみが洗濯物の慣性力と同じ方向に回転するため、洗濯物には、慣性力に加えてドラム11の回転力が付与される。
このように慣性力と回転力が組み合わされることで、第1所定時間の間、洗濯機1には洗濯物の回転による遠心力が働く。また、上述の第2補正制御の場合でも、ドラム11を先にオフさせて、第2所定時間の間、パルセータ13のみを回転させることで、ドラム11内の洗濯物に、パルセータ13と同じ回転方向の比較的大きな慣性力を付与しているため、第2所定時間の間は、ドラム11とパルセータ13とを互いに相反方向に回転させた場合と比べると、洗濯機1には洗濯物から大きな遠心力が働く。これは、第1補正制御においてパルセータ13を先にオンした場合や、第2補正制御においてドラム11を遅くオフさせた場合でも同様である。
このように、洗濯機1に洗濯物からの遠心力が働くと、洗濯機1が振動し、洗濯工程における騒音等の原因となることがある。特に、洗濯物が、ドラム11内で一箇所に偏っていた場合は、前記遠心力が大きくなるため、洗濯機1の振動も大きくなりやすい。
そこで、制御装置15は、振動検出手段114で、洗濯機1の振動を検出して、検出された検出振動が、予め定められた所定振動よりも大きいときには、振動低減制御として、第1補正制御における第1所定時間及び第2補正制御における第2所定時間の長さを短縮させる制御を実行する。第1所定時間を短縮させることによって、パルセータ13によって、洗濯物の回転方向とは反対方向の水流が早期に発生するため、洗濯物の回転が該水流によって減速され、洗濯物から洗濯機1に働く遠心力が減少する。
これにより、洗濯機1の振動を減少させることができる。一方、第2所定時間を短縮させることによって、パルセータ13の回転時間が短くなるため、によって洗濯物に発生する回転方向の慣性力が減少するため、該慣性力による遠心力も減少する。これにより、洗濯機1の振動を減少させることができる。
なお、検第1所定時間及び第2所定時間の長さを短縮させたことで、検出振動が所定振動よりも小さくなったときには、制御装置15は、第1所定時間及び第2所定時間の長さをもとに戻すようにしてもよい。例えば、振動の原因が洗濯物の偏りであった場合は、ドラム11とパルセータ13との相反回転によって、洗濯物がほぐされて、偏りが解消している可能性があるためである。
逆に、第1所定時間又は第2所定時間を短縮させたとしても、洗濯機1の振動が所定振動以下にならないときには、第1所定時間又は第2所定時間をさらに短くする。ただし、第1予定時間又は第2所定時間をさらに短くしたことによって、モータ12の負荷が目標負荷よりも大きくなったときには、制御装置15は、振動低減制御よりも負荷低減補正制御を優先させて、第1所定時間又は第2所定時間をさらに短くしないように制御する。
以上により、モータ12の負荷を低減し、さらに洗濯機1の振動を低減させることができる。
次に、図61を参照しながら、制御装置15による洗濯機1の負荷低減補正実行時の処理動作について説明する。なお、図61は、初期状態から第1又は第2相反駆動モードが実行されて、停止期間が経過するまでを省略しており、第1又は第2相反駆動モードに切り替えられる部分から記載している。
ステップS101において、制御装置15は、モータ12に電気信号を送り、モードを、第1相反駆動モードから第2相反駆動モードへ、第2相反駆動モードから第1相反駆動モードへ切り替える。
次のステップS102において、制御装置15は、停止期間が基準時間よりも短く設定されているか否かについて判定する。停止期間が基準時間よりも短いYESの場合は、ステップS103に進む。一方、停止期間が基準時間以上のNOの場合は、制御装置15は、モータ12の起動不良が発生する可能性は小さいと判断して、ステップS103以降を省略して、しかる後にリターンさせる。
前記ステップS103では、負荷検出手段113a,113bは、モードを切り替える際にモータ12に加えられる負荷を検出する。
ステップS104では、制御装置15は、ステップS103で検出された検出負荷が、目標負荷よりも大きいか否かについて判定する。このステップS104において、検出負荷が目標負荷よりも大きいYESのときは、制御装置15は、モータ12が起動不良を発生させる可能性があると判断して、ステップS105に進む。一方、検出負荷が目標負荷以下のNOときには、しかる後にリターンする。
前記ステップS105では、検出負荷を目標負荷以下にすべく第1又は第2補正制御を実行する。いずれを実行するかは、予め制御装置15によって決定されていてもよいし、洗濯機1を操作する際にユーザが任意に決定できるようにしてもよい。
次のステップS106では、振動検出手段114によって、洗濯機1の振動を検出する。検出後、ステップS107に進む。
前記ステップS107では、検出振動が所定振動よりも大きいか否かについて判定する。このステップS107において、検出振動が所定振動よりも大きいYESのときには、振動低減制御を実行すべく、ステップS108へ進む。一方、このステップS107において、検出振動が所定振動以下のNOのときには、振動低減制御を実行することなく、しかる後にリターンする。
前記ステップS108では、振動低減制御として、第1所定時間又は第2所定時間を短縮させる。上述してように、第1所定時間又は第2所定時間を短縮させることによって、洗濯物の遠心力が小さくなり、振動が低減される。振動低減制御の実行後は、しかる後にリターンする。
したがって、この洗濯機1は、モータ12の負荷を検出する負荷検出手段113a,113bと、負荷検出手段113a,113bによって検出された検出負荷に基づいて、インバータ112を介して、モータ12に電気信号を付与して、ドラム11及びパルセータ13の動作を制御する制御装置15と、を備え、制御装置15は、ドラム11を正回転させかつパルセータ13を逆回転させる第1相反駆動モードと、ドラム11を逆回転させかつパルセータ13を正回転させる第2相反駆動モードとを、停止期間を挟みながら交互に実行するとともに、検出負荷が、予め設定された目標負荷以下になるように、ドラム11及びパルセータ13の少なくとも一方の、オン及びオフの少なくとも一方のタイミングを制御する第1補正制御又は第2補正制御を実行するように構成されているため、ドラム11内の洗濯物の慣性力を利用して、ドラム11又はパルセータ13の回転方向を反転させることができ、この結果、第1及び第2相反駆動モードを切り替える際に、モータ12に加えられる負荷を低減させることができる。これにより、モータ12の起動不良の発生を防ぐことができる。
次に、上述した実施形態と異なる態様(実施形態2)について説明する。なお、洗濯機1の構成については上述した実施形態と共通であり、制御装置15による制御が異なるため、異なる構成を説明し、共通の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
実施形態2は、特に、モータ12の負荷を低減するための負荷低減補正制御の内容が、実施形態1とは異なる。具体的には、制御装置15は、ドラム11内に収容された洗濯物がドラム11の回転方向と同じ方向に回転している場合は、停止期間の間に、ドラム11の回転を減速させて停止させ、該停止後に、次の第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードを実行させるようにしている。
すなわち、実施形態1では、第1又は第2補正制御によって、ドラム11又はパルセータ13をオン又はオフするタイミングを補正することで、モードを切り替える際にモータ12に加えられる負荷を低減するようにしていたが、実施形態2では、負荷低減補正制御としての第3補正制御によって、停止期間の間に、ドラム11の回転を減速させて停止させ、該停止後に、次の第1相反駆動モード又は第2相反駆動モードをオンさせるようにすることで、モータ12に加えられる負荷を低減するようにしている。
以下において、図62を参照しながら、第3補正制御について詳細に説明する。
図62に、第3補正制御の実行時にモータ12に付与される電気信号を示す。第3補正制御は、上述したように、第1相反駆動モードと第2相反駆動モードとの間の停止期間において、ドラム11の回転を減速させて停止させ、該停止後に、次の第1又は第2相反駆動モードをオンさせる制御である。
第3補正制御は、例えば、洗濯物がドラムに張り付く等にして、ドラム11内の洗濯物が、パルセータ13ではなく、ドラム11の回転方向に連れ回ったときに実行される。なお、洗濯物がドラム11の回転方向に連れ回っているか否かは、実施形態1と同様に負荷検出手段113a,113bによって検出することができる。
図62を参照すると、先ず、制御装置15は、第1相反駆動モードをオンにして、ドラム11を正回転させかつパルセータ13を逆回転させる。
次に、制御装置15は、第1相反駆動モードをオフにして、停止期間の間、モータ12を休止させる。停止期間において、負荷検出手段113a,113b(特に、位置センサ)は、ドラム11内の洗濯物が回転している方向を検出する。
そして、洗濯物の回転方向がドラム11の回転方向と同じであった場合は、制御装置15は、ドラム11の回転方向を反転させる際に、モータ12に過大な負荷が加えられると判断して、第3補正制御を実行し、停止期間の間に、ドラム11の回転を減速させて停止させる。
具体的には、所謂、電磁ブレーキ制御を実行して、モータ12に逆位相のパルス信号を付与し、ドラム11の回転に対してブレーキを発生させる。該パルス信号の大きさは、停止期間の間にドラム11の回転を停止させることができる程度の大きさである。なお、ブレーキは、逆位相の短パルスを複数回付与するようにして、発生させてもよい。
停止期間が経過した後は、制御装置15は、第2相反駆動モードをオンにして、ドラム11を逆回転させかつパルセータ13を正回転させる。第3補正制御によって、ドラム11の回転を停止させたことにより、ドラム11には正回転方向の慣性力が発生していないため、ドラム11を逆回転させる際に、モータ12に加えられる起動負荷が小さくなる。
また、ドラム11を停止させたとしても、図62に示すように、ドラム11内の洗濯物には正回転方向の慣性力が残るため、パルセータ13の回転方向を正回転方向に反転させれば、洗濯物はパルセータ13の回転方向に連れ回されやすくなる。洗濯物がパルセータ13の回転方向に連れ回されれば、図62に示すように、洗濯物の慣性力はパルセータ13の回転方向に働くため、第2相反駆動モードをオフした後の停止期間におけるドラム11の慣性力は、洗濯物の慣性力によって小さくなる。
これにより、次の第1相反駆動モードをオンして、ドラム11の回転方向を反転させる際に、モータ12に加えられる起動負荷を小さくすることができる。また、ドラム11の回転を減速させるだけであれば、モータ12には、ドラム11の回転方向を反転させるよりも小さい負荷しか加えられないため、第3補正制御によってモータ12に過大な負荷が加えられることもない。
なお、実施形態2においても、前記基準時間よりも長い時間に設定されている場合には、制御装置15は、停止期間の間に、ドラム11の慣性力が十分に低下すると判断して、前記第3補正制御を実行しない。
〈変形例等〉
例えば、1つのモータ12に、インナーロータ30とアウターロータ20とを備え、インナーロータ30でドラム11を駆動し、アウターロータ20でパルセータ13を駆動するように構成していたが、これに限らず、モータを2つ設けて、ドラム11とパルセータ13とにそれぞれ接続するようにしてもよい。
このとき、2つモータに対してインバータを1つずつ設けるようにしてもよいし、2つのモータに対して1つのインバータを設けるようにしてもよい。なお、インバータを1つにする場合は、モータは可変磁極モータを用いることが望ましい。
また、負荷検出手段113a,113bによって検出される検出負荷が目標負荷よりも大きくなったときに、第1又は第2補正制御を実行するようにしているが、これに限らず、洗濯工程の間、常に第1又は第2補正制御を実行するようにしてもよい。
さらに、停止期間が基準時間よりも長いときには、第1〜第3補正制御を実行しないようにしていたが、これに限らず、停止期間の長さに関わらず第1〜第3補正制御を実行するようにしてもよい。
また、第1〜第3補正制御をそれぞれ組み合わせるようにしてもよい。例えば、第1補正制御と第2補正制御とを組み合わせて、ドラム11のオンのタイミングを早くしつつ、パルセータ13のオフのタイミングを遅らせるようにする。このように、第1〜第3補正制御をそれぞれ組み合わせることで、ドラム11内の洗濯物の慣性力をさらに利用しやすくなり、モータ12の負荷がより低減される効果が期待される。
<第7の技術>
第7の技術は、洗濯槽及びパルセータが独立駆動できる洗濯機に関する。
図63に示すように、モータ12には、アウターロータ20に駆動連結されたパルセータ13及びインナーロータ30に駆動連結されたドラム11のアンバランス量を検出するアンバランス検出手段121a,121bが接続されている。検出手段121aは、パルセータ13のアンバランス量を検出し、検出手段121bは、ドラム11のアンバランス量を検出する。
アンバランス検出手段121a,121bは、パルセータ13及びドラム11のアンバランス量が検出可能なものであれば特に限定されず、例えば、電流センサ、振動センサ、速度センサ等を用いることができる。アンバランス検出手段121a,121bで検出されたアンバランス量は、検出信号D121a,121bとして制御装置15に送信される。D121aは、アンバランス検出手段121aの検出信号であり、D121bは、アンバランス検出手段121bの検出信号である。
(モータの回転動作の制御)
この洗濯機1は、ロータ20,30の各々を独立して駆動できるようになっているため、異なる態様の運転を実現することができる。
=脱水運転時のモータ制御=
洗濯運転時には、アウターロータ20(パルセータ13)のみを駆動する通常洗濯、インナーロータ30(ドラム11)とアウターロータ20とを反対に駆動する逆水流、インナーロータ30のみを駆動する弱水流等が提供される。
=脱水運転時のモータ制御=
脱水運転時には、両方のロータ20,30を同じ方向に同時に駆動することができる。これにより、特に低速時において、大きなトルクが得やすくなり、起動が早くなる効果が得られる。さらに、本態様では、制御装置15が脱水運転時にモータ制御を行うことでアンバランスの解消できるようにしている。
以下において、脱水運転時のアンバランス解消に係るモータ制御について、図64〜図70を用いて詳細に説明する。
−制御例1−
図64に示すように、まず、ステップS110では、両方のロータ20,30を同じ方向で回転駆動し、インナーロータ30の回転数(回転速度)ωIL及びアウターロータ20の回転数ωOLが所定の回転数ω1(ω1<ωC)になるまで上昇させる。すなわち、ドラム11とパルセータ13とが同一回転数ω1で回転するようになる。なお、本開示において、同一とは実質的に同一である範囲を包含する概念である。また、ωCは、洗濯機1(ドラム11)の共振回転数である。
アウターロータ20及びインナーロータ30の回転数ωOL,ωILがω1になった後、ステップS111では、アンバランス検出手段121a,121bがドラム11及びパルセータ13のアンバランス量を検出し、ステップS112に進む。
ステップS112において、ドラム11のアンバランス量の検出値MUSBが所定値α以下であり、かつ、パルセータ13のアンバランス量の検出値MUPLが所定値β以下の場合(S112でYES)、ステップS113に進む。
ステップS113では、両方のロータ20,30の回転数ωIL,ωOLを同一に維持したまま、同じ速度勾配で共振回転数ωC以上の所定の回転数まで上昇させ、所定時間経過後に脱水運転を終了する。
図65は、制御例1に係るロータ20,30の回転数(図65ではドラム速度、パルセータ速度と記載し、図66、図70においても同様とする。)の時間変化を示した図である。図65に示すように、ドラム11及びパルセータ13のアンバランス量の検出値MUSB,MUPLが所定値以下である場合、すなわち、そのまま加速しても振動量が所定値以下であると予測される場合には、両方のロータ20,30の回転数を同じ速度勾配で共振回転数ωC以上の回転数まで上昇させる(図65の時間T130以降参照)。これにより、より短い時間で脱水運転を終了させることができる。
−制御例2−
一方で、ステップS112において、ドラム11のアンバランス量の検出値MUSBが所定値αより大きい、又は、パルセータ13のアンバランス量の検出値MUPLが所定値βより大きい場合(S112でNO)、ステップS114に進む。
ステップS114において、下式(1)の条件が満たされる場合(ステップS114でYES)、回転制御に移行する。具体的には、ステップS115及びS116に進む。
|(MUSB×L1)−(MUPL×L2)| ≦ γ ・・・・・(1)
ここで、図68及び図69に示すように、L1はドラム11側のアンバランスUSBの回転半径、L2はパルセータ13側のアンバランスUPLの回転半径である。
すなわち、「MUSB×L1」はドラム11側のアンバランスに係るモーメント量PUSB、「MUPL×L2」はパルセータ13側のアンバランスに係るモーメント量PUPLである。また、γは任意に設定可能な所定のモーメント量である。なお、前記式(1)のL1,L2として、それぞれ、ドラム11の半径及びパルセータ13の半径を用いてもよい。以下の式(2)においても同様とする。
ステップS115では、インナーロータ30の回転数ωILをω1に維持したまま、アウターロータ20の回転数ωOLをω1からω2(ω2<ω1)に変更する。図66は、制御例2に係るロータ20,30の回転数の時間変化を示した図であり、時間T120から時間T121において、ステップS115での速度変化を示している。
このように、アウターロータ20及びインナーロータ30との間に所定の速度差(回転数差:ω1−ω2)を与えて回転させることにより、ドラム11側のアンバランスUSBの位置と、パルセータ13側のアンバランスUPLの位置との位置関係を周期的に変化させることができる。これにより、ドラム11及びパルセータ13を総計したアンバランス量UTが周期的に変化する。
図67は、アンバランス検出手段121a,121bとしての電流センサを用いて、前記アンバランス量の周期的な変化を検出した結果を示している。図67において、実線はアンバランス検出手段121a,121bの検出信号D121a,D121bであるq軸電流波形を示している。図68は、図67の点A(検出信号D121a,D121bの振幅が最大時)におけるアンバランスの位置を示した図である。図69は、図67の点B(検出信号D121a,D121bの振幅が最小時)におけるアンバランスの位置を示した図である。
図67に示すように、パルセータ側とドラム側とで、アンバランス検出手段121a,121bの検出信号の周期は異なる一方で、アンバランス量を示す振幅(図67の破線)は同じような周期で変化する。したがって、制御装置15は、パルセータ側又はドラム側のいずれか一方のアンバランス検出手段121a,121bからの検出信号D121a,D121bを確認することにより、アンバランス量UTの周期的な変化を検出することができる。
そこで、ステップS116では、検出信号D121a,D121bのいずれか一方に基づいて、アンバランス量の検出値MUSB又はMUPLが最小になるタイミングにあわせて、アウターロータ20の回転数ωOLをω2からω1に線形的に変化させ、ステップS113に進む。ステップS116に対応した回転数変化は、図66の時間T122から時間T130に示されている。なお、制御装置15は、検出信号D121a,D121bの両方に基づいて、前記アンバランス量が最小になるタイミングを判断してもよい。
これにより、ドラム11及びパルセータ13は、それぞれのアンバランスUSB,UPLが図69に示すような平面視で対向する位置になった状態で同じ回転数になる。このような対向位置での回転により、それぞれのアンバランスモーメントが打ち消しあってドラム11及びパルセータ13のアンバランス量の総計値(トータルのアンバランス量)が最小化される。
その後、ステップS113において、両方のロータ20,30の回転数ωIL,ωOLをω1から共振回転数ωC以上の所定の回転数まで同じ速度勾配で上昇させ、所定時間経過後に脱水運転を終了する(図66の時間T130以降参照)。これにより、ステップS116で最小化されたアンバランス量を維持したまま加速することができ、ドラム11の振動を防止することができる。また、アンバランス量を積極的に制御しているため、洗濯機1の継続使用に係る脱水運転間のドラム11の振動のばらつきを減少させることができる。
なお、本開示において、同じ速度勾配とは実質的に同じである範囲を包含する概念である。例えば、アンバランスUSBとアンバランスUPLとの相対的位置が実質的に変わらない範囲での速度勾配差(時間差)を包含する概念である。
−制御例3−
一方で、ステップS114において、下式(2)の条件が満たされる場合(ステップS114でNO)、速度変動制御に移行する。具体的には、ステップS117に進む。
|(MUSB×L1)−(MUPL×L2)| > γ ・・・・・(2)
ステップS117では、ドラム11側のアンバランスに係るモーメント量PUSBと、パルセータ13側のアンバランスに係るモーメント量PUPLとの比較を行い、モーメント量が大きい方に所定の速度変動を与える。
具体的には、例えば、パルセータ13側のモーメント量PUPLの方が大きい場合、アウターロータ20の回転数ωOLを矩形波状(所定周期)に減速させる。すなわち、ω1とω3(ω3<ω1)との間で矩形波状に速度変動させる。このとき、インナーロータ30の回転数ωILは、ω1に維持したままである。図70は、制御例3に係るロータ20,30の回転数の時間変化を示した図であり、時間T111から時間T112において、ステップS117での速度変化の一例を示している。
このように、モーメント量が大きい方に所定の速度変動を与えることで、アンバランスの状態を変化させることができる。なお、速度変動は、矩形波状に減速させることに限定されず、任意に設定することができる。例えば、矩形波状に増速させたり、三角波状、台形波状に増速、減速をしたり、これらを組み合わせたりしてもよい。ただし、モータトルクよる負担や発熱の観点において減速させる方が好ましい。
所定の速度変動制御が行われた後、フローはS112に戻り、ドラム11及びパルセータ13のアンバランス量の検出値MUSB,MUPLの判定が行われる。以降のフローは、アンバランス量やモーメント量に応じて、「制御例1」、「制御例2」又は前記速度変動制御のいずれかが実施される。
図70では、時間T112以降に「制御例2」記載の回転制御が実施された例を示している。なお、速度変動制御が繰り返し実施される場合において、その実施毎に速度変動制御の変動速度の増減や、変動波形のモード(形状等)を変更してもよい。また、速度変動制御の繰り返し回数に上限値を設定するようにしてもよい。
以上のように、本実施形態に係る洗濯機1によれば、ドラム及びパルセータを所定の速度差で回転させ、アンバランスが最小になるタイミングでドラム及びパルセータを同一速度にしてそのまま加速させるので、アンバランスの発生を防止することができる。
より具体的には、ドラム11及びパルセータ13のトータルのアンバランス(アンバランスの総計値)は、それぞれのアンバランスが対向位置にあるときにアンバランスモーメントが打ち消しあって最小になる。
したがって、本態様では、ドラム11とパルセータ13との間に所定の速度差を与えることでアンバランスの位置を周期的に変化させ、アンバランスが最小になるタイミングにあわせて、すなわち、アンバランスが対向位置になるときにドラム11及びパルセータ13が同一速度になるように回転制御し、その後、同一速度のまま同一速度勾配で一緒に加速させる。このアンバランスが最小になるタイミングは、いずれか一方のアンバランス検出手段121a,121bからの検出信号D121a,D121bを確認することにより判断することができる。
これにより、アンバランスが対向位置にある状態でドラム11及びパルセータ13を加速させることができるため、より効果的かつ安定的にアンバランスの発生を防止することができる。このように、アンバランスの発生が防止できることで、ドラムの振動が防止され、脱水時間を短縮化することができる。また、アンバランスの位置が対向位置にくるように積極的に制御するため、継続使用に係る脱水運転間のドラムの振動のばらつきを減少させることができる。
また、図64のステップS112において、アンバランス量が所定の基準値以下の場合には、加速させても所定の振動以下で脱水運転できるとの判断に基づき、回転制御を行わずにドラム11及びパルセータ13を同時かつ同じ速度勾配で加速させるようにしている。これにより、より短い時間で脱水時間を終了させることができる。さらに、ドラム11及びパルセータ13を同時に加速させるので、特に低速時において、大きなトルクが得やすくなり、起動が早くなる効果が得られ、脱水時間を短縮することができる。
さらに、図64のステップS114において、ドラム11及びパルセータ13のアンバランスモーメントの差が所定の値よりも大きい場合には、ステップS117において、所定の速度変動制御を行うようにしている。ドラム11、パルセータ13間でアンバランスモーメントの差が大きい場合、回転制御を行っても十分にアンバランスの発生を防止できない場合があり、速度変動制御によって、回転制御や加速制御が効果的に行えるようにアンバランスの状態を変化させる。このような速度変動制御を行うことで、ドラム11やパルセータ13を停止させることなくアンバランス解消ができるため、脱水時間の大幅な短縮が可能になる。
(変形例等)
図64のステップS115において、アウターロータ20の回転数ωOLをω1からω2(ω2<ω1)に減速するものとしたが、回転数ωOLをω1からω4(ωc>ω4>ω1)に増速するようにしてもよい。また、図64のステップS115において、アウターロータ20の回転数ωOLをω1に維持したまま、インナーロータ30の回転数ωILをω1からω2やω4に変更してもよい。
前記のいずれの場合においても、ステップS116では、アンバランス量の検出値MUSB又はMUPLが最小になるタイミングにあわせて、両方のロータ20,30の回転数ωOL,ωILを同じにし、ステップS113に進む。なお、前記同じ回転数はω1に限定されず、他の回転数であってもよい、例えば該同じ回転数がω2やω4であってもよい。
また、図66及び図70では、共振回転数ωC以下の回転数で回転制御を実施するものとしたがこれに限定されない。例えば、ステップS113で共振回転数ωC以上の所定の回転数まで上昇させた後に、アンバランスを補正するために、回転制御を実施してもよい。その場合、図64のステップS115及びS116と同様に、ドラム及びパルセータを所定の速度差で回転させ、アンバランスが最小になるタイミングでドラム及びパルセータを同一速度に戻せばよい。
<第8の技術>
第8の技術は、洗濯機の脱水運転に関する。
(モータの回転動作の制御)
図71に示すように、モータ12には、アウターロータ20及びインナーロータ30の回転速度を検出する速度検出部としての速度センサ18が接続されている。速度センサ18によって検出されたアウターロータ20及びインナーロータ30の回転速度を示す信号は、制御装置15に送信される。
制御装置15は、ドラム11の脱水運転時に、速度センサ18で検出されたインナーロータ30の回転速度を目標速度として、アウターロータ20の回転速度が目標速度と略一致するようにアウターロータ20の回転動作を制御する。つまり、本実施形態では、ドラム11を回転させるインナーロータ30を基準として、パルセータ13を回転させるアウターロータ20を追従させる制御を行うようにしている。このように、脱水運転時にアウターロータ20及びインナーロータ30を同期運転させて速度変動を抑えることで、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
ところで、アウターロータ20の回転速度と、インナーロータ30の回転速度とに速度差が生じている場合には、この速度差が積算されることで、アウターロータ20とインナーロータ30との間で位相差が生じることとなる。
例えば、アウターロータ20の回転速度とインナーロータ30の回転速度との速度差が5rpmであり、この速度差が一定の状態のままで回転を続けると、1秒後には、30degの位相差が生じることとなる。そして、このような位相差が生じると、ドラム11の脱水運転時に、ドラム11とパルセータ13との間で洗濯物が引っ張られて布傷みが生じるため、好ましくない。
そこで、本実施形態では、ドラム11の脱水運転時に、このような位相差を解消できるようにしている。
具体的に、図71に示すように、制御装置15は、位相算出部15bを有する。位相算出部15bは、速度センサ18から送信されたアウターロータ20及びインナーロータ30の回転速度を積算することにより、アウターロータ20及びインナーロータ30の位相を算出する。また、位相算出部15bでは、アウターロータ20及びインナーロータ30の位相に基づいて、インナーロータ30に対するアウターロータ20の位相差が算出される。制御装置15は、位相算出部15bで算出された位相差を解消するように、アウターロータ20の回転動作を制御する。
(脱水運転時のモータの動作)
以下、脱水運転時のモータの動作について、図72を用いて説明する。図72に示すように、まず、ステップS101では、インナーロータ30の回転速度が、目標とする回転速度となるように、インナーロータ30の回転動作を制御して、ステップS102に進む。図73に示す例では、インナーロータ30は、1000rpmを目標速度としている。
ステップS102では、位相算出部15bによって、インナーロータ30の回転速度に基づいてインナーロータ30の位相を算出し、ステップS103に進む。
ステップS103では、インナーロータ30の回転速度を目標速度として、アウターロータ20の回転速度を目標速度に略一致させるように、アウターロータ20の回転動作を制御して、ステップS104に進む。
ステップS104では、位相算出部15bによって、アウターロータ20の回転速度に基づいてアウターロータ20の位相を算出し、ステップS105に進む。
ステップS105では、位相算出部15bにおいて、インナーロータ30に対するアウターロータ20の位相差を算出し、ステップS106に進む。ここで、図73に示す例では、0.5秒までの間に、位相差が10deg程度発生している。
ステップS106では、制御装置15において、アウターロータ20及びインナーロータ30の位相差が所定値よりも小さいかを判定する。ステップS106での判定が「YES」の場合には、ステップS101に戻って処理を繰り返す。ステップS106での判定が「NO」の場合には、ステップS107に分岐する。図73に示す例では、位相差が0degとなるように、所定値を設定している。
ステップS107では、位相差が所定値よりも小さくなるように、アウターロータ20の目標速度を補正して、ステップS104に進む。
ここで、図73に示す例では、0〜0.4秒くらいの間は、アウターロータ20の回転速度がインナーロータ30の回転速度を下回っているため、アウターロータ20を加速するように目標速度を補正している。一方、0.4〜0.9秒くらいの間は、アウターロータ20の回転速度がインナーロータ30の回転速度を上回っているため、アウターロータ20を減速するように目標速度を補正している。
以上のように、本実施形態に係る洗濯機1によれば、目標とする回転速度までインナーロータ30を加速する一方、アウターロータ20は、基準となるインナーロータ30の回転速度を目標速度として追従させるように制御しているので、アウターロータ20及びインナーロータ30の速度差を抑えることができる。
また、インナーロータ30に対するアウターロータ20の位相差が所定値よりも大きくなった場合に、アウターロータ20の回転動作を制御して位相差を解消するようにしている。これにより、ドラム11とパルセータ13とに跨がって配設されていた洗濯物が、ドラム11とパルセータ13との位置ずれによって引っ張られてしまう前に、この位置ずれを解消することで、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
<第9の技術>
第9の技術も、第8の技術と同様に洗濯機の脱水運転に関する。
(モータの回転動作の制御)
図74に示すように、第8の技術と同様に、モータ12には速度センサ18が接続されている。また、第9の技術では更に、モータ12のステータ60に備えられたコイル63に通電される電流を検出する電流センサ19が備えられている。
速度センサ18で検出されたアウターロータ20及びインナーロータ30の各回転速度及び電流センサ19で検出されたモータ12の電流値は制御装置15にフィードバックされ、制御装置15は、アウターロータ20及びインナーロータ30を目標の回転速度で回転動作させる。
特に、制御装置15は、ドラム11の脱水運転時に、速度センサ18で検出されたインナーロータ30の回転速度を目標速度として、アウターロータ20の回転速度が目標速度と略一致するようにアウターロータ20の回転動作を制御する。つまり、本実施形態では、ドラム11を回転させるインナーロータ30を基準として、パルセータ13を回転させるアウターロータ20を追従させる制御を行うようにしている。このように、脱水運転時にアウターロータ20及びインナーロータ30を同期運転させて速度変動を抑えることで、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
さらに、制御装置15は、ドラム11の脱水運転時に、アウターロータ20及びインナーロータ30を同期運転させて回転速度を加速している最中に洗濯物によるパルセータ13のドラム11への連れ回りがなくなったと判定した場合に、アウターロータ20を回転させるモータ12への通電を停止してパルセータ13を回転フリーにする。つまり、本実施形態では、パルセータ13の連れ回りがなくなったタイミングで、アウターロータ20のみ回転フリー状態にしてインナーロータ30の回転速度の加速制御を継続する。これにより、洗濯物の重量、状態、種類等に応じた適正なタイミングでパルセータ13を回転フリーにすることができ、洗濯物の布傷みを軽減しつつ、モータ12への通電停止による省電力化が達成される。
洗濯物によるパルセータ13のドラム11への連れ回りがなくなったか否かは、アウターロータ20の回転速度の揺らぎから判定することができる。図75は、重負荷時と軽負荷時におけるアウターロータ20の回転速度変動を示すグラフ図である。なお、図75のグラフでは便宜上、重負荷時と軽負荷時のアウターロータ20の回転速度変動周期が同じしているが、実際はその限りでない。アウターロータ20は設定回転速度で回転するように制御装置15により回転動作が制御される。
ここで、重負荷時、すなわち、洗濯物がパルセータ13に擦れてアウターロータ20の連れ回りがある場合、アウターロータ20の設定回転速度に対する実際の回転速度(速度センサ18で検出された回転速度)の変動は小さいのに対して、軽負荷時、すなわち、洗濯物によるアウターロータ20の連れ回りがない場合、アウターロータ20の設定回転速度に対する実際の回転速度の変動は大きい。
脱水開始時には洗濯物がドラム11内に均等に分散して重力によりドラム11の底に溜まっている。この初期状態からアウターロータ20及びインナーロータ30の同期運転を開始させると、アウターロータ20は重負荷で動作することとなり、アウターロータ20の設定回転速度に対する実際の回転速度の変動は小さい。アウターロータ20及びインナーロータ30の回転速度の加速に伴い洗濯物が遠心力によりドラム11の内壁面に貼り付くようになり、アウターロータ20に擦れる洗濯物が少なくなってアウターロータ20の負荷が徐々に軽くなる。
すなわち、アウターロータ20の設定回転速度に対する実際の回転速度の変動は徐々に大きくなる。従って、制御装置15は、アウターロータ20の設定回転速度に対する速度センサ18で検出されたアウターロータ20の回転速度の変動が所定量よりも大きくなったとき、洗濯物によるパルセータ13のドラム11への連れ回りがなくなったと判定することができる。
また、洗濯物によるパルセータ13のドラム11への連れ回りがなくなったか否かは、電流センサ19で検出された電流から判定することができる。図76は、アウターロータ20の回転速度とモータ電流の時間変化を示すグラフ図である。脱水運転が開始されると、モータ12のq軸電流が増大してアウターロータ20は徐々に回転速度を上げていき設定回転速度に達する。
アウターロータ20の回転加速中に電圧飽和するとモータ12のd軸電流を増やして位相を進める。洗濯物がパルセータ13に擦れてアウターロータ20の連れ回りがある場合、モータ12の負荷が重いためd軸電流及びq軸電流ともに大きいが、アウターロータ20の連れ回りがなくなると、モータ12の負荷が軽くなってd軸電流及びq軸電流ともに小さくなる。
従って、制御装置15は、電流センサ19で検出された電流を回転座標系に変換した回転座標系電流、具体的には、d軸電流、q軸電流、これらを合成したベクトル量の少なくとも一つが所定量よりも小さくなったとき、洗濯物によるパルセータ13のドラム11への連れ回りがなくなったと判定することができる。あるいは、d軸電流とq軸電流の合成電流の進角からパルセータ13の連れ回りを判定することもできる。
(脱水運転時のモータの動作)
以下、脱水運転時のモータの動作について、図77を用いて説明する。図77に示すように、まず、ステップS1では、制御装置15は、アウターロータ20とインナーロータ30の同期運転を開始して回転速度を加速して、ステップS2に進む。
ステップS2では、制御装置15は、洗濯物によるパルセータ13の連れ回りがあるか否かを判定する。パルセータ13の連れ回りの有無は、上述したように、アウターロータ20の回転速度変動又はモータ12の電流量から判定することができる。もしパルセータ13の連れ回りがあると判定すれば、ステップS1に戻る。一方、もしパルセータ13の連れ回りがないと判定すれば、ステップS3に進む。
ステップS3では、制御装置15は、アウターロータ20を回転させるモータ12への通電を停止してパルセータ13を回転フリーにし、ステップS4に進む。
ステップS4では、制御装置15は、パルセータ13を回転フリーにしたとき、すなわち、洗濯物によるパルセータ13のドラム11への連れ回りがなくなったと判定したときのアウターロータ20の回転速度を記憶し、ステップS5に進む。
ステップS5では、制御装置15は、インナーロータ30の回転速度を最大にしてドラム11を最大回転速度で回転させ、ステップS6に進む。
ステップS6では、制御装置15は、インナーロータ30の回転速度を下げてドラム11を減速させ、ステップS7に進む。
ステップS7では、制御装置15は、インナーロータ30の回転速度が、パルセータ13を回転フリーにしたときに記憶したアウターロータ20の回転速度よりも小さいか否かを判定する。もしインナーロータ30の回転速度が記憶していた回転速度よりも小さければ、ステップS6に戻る。一方、もしインナーロータ30の回転速度が記憶していた回転速度以上になれば、ステップS8に進む。
ステップS8では、制御装置15は、アウターロータ20を回転させるモータ12への通電を再開して、アウターロータ20とインナーロータ30の同期運転を再開させて回転速度を徐々に下げ、ステップS9に進む。
ステップS9では、制御装置15は、モータ12への通電を停止して、アウターロータ20とインナーロータ30の回転速度をゼロにする。
前記のように、パルセータ13を回転フリーにしたときの回転速度でパルセータ13を再び回転させ始めることで、洗濯物の重量、状態、種類等に応じた適正なタイミングでパルセータ13の回転を再開することができ、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
なお、アウターロータ20の回転速度が所定の回転速度に達したときにパルセータ13を再び回転させ始めるようにしてもよい。この場合、前記ステップS4を省略することができる。ただし、当該所定の回転速度としていくつかの値を用意しておき、洗濯物の重量、状態、種類等に応じてユーザが任意に設定値を変更できるようにしておくことが好ましい。
以上のように、本実施形態に係る洗濯機1によれば、ドラム11の脱水運転時に洗濯物によるパルセータ13の連れ回りがなくなったと判定した場合に、パルセータ13を回転フリーにするようにしているので、ドラム11に連れ回される洗濯物が回転フリーになったパルセータ13に擦れてパルセータ13を連れ回すことにより洗濯物を傷めることがなくなるとともに、アウターロータ20を回転させるモータ12への通電を停止することで消費電力を低減することができる。
また、アウターロータ20の回転速度の変動又はモータ12に通電される電流から、パルセータ13の連れ回りの有無を容易に判定することができる。
また、脱水工程の終わりにおいて、ドラム11に連れ回される洗濯物が回転フリーのパルセータ13に擦れてパルセータ13を連れ回すことにより洗濯物を傷めることをなくすことができる。
さらに、洗濯物の重量、状態、種類等に応じた適正なタイミングでパルセータ13の回転を再開することができ、洗濯物の布傷みを軽減することができる。
<第10の技術>
第10の技術も、第8や第9の技術と同様に洗濯機の脱水運転に関する。
=脱水運転時のモータ制御=
脱水運転時には、両方のロータ20,30を同じ方向に同時に駆動することができる。これにより、特に低速時において、大きなトルクが得やすくなり、起動が早くなる効果が得られる。
また、脱水運転時のエネルギー効率を高める、すなわち、洗濯機トータルの消費エネルギーを低減することを目的として、パルセータ13を回転フリーにした状態でドラム12を回転制御することが可能である。
図78及び図79は、モータ12及び制御装置15(一部抜粋)の構成を示すブロック図である。
−通常状態に係るモータ制御−
図78は、モータ12及び制御装置15の構成要素のうちで、パルセータ13を回転フリー状態にした場合に動作するブロックを中心に記載したブロック図である。本態様では、モータ12側及びパルセータ13側の両方が図78に示した制御装置15によって制御される。
図78に示すように、モータ12には、モータ12を駆動するインバータ131が接続されている。また、モータ12には、アウターロータ20に駆動連結されたパルセータ13及びインナーロータ30に駆動連結されたドラム11それぞれの回転速度を検出する速度検出手段130が取り付けられている。
速度検出手段130は、パルセータ13の回転速度を検出可能なものであれば特に限定されず、例えば、ホールセンサ等の速度センサを用いることができる。速度検出手段130で検出された速度ωmmは、位相演算器133及び制御装置15に送信される。
インバータ131には、電流センサ132が接続されており、インバータ131の各相に流れる相電流Iuvwを検出する。
位相演算器133は、前記検出速度ωmmを角度θに変換する機能を有し、例えば、積分器で実現することができる。電圧変換器134は、後述する電流制御器152からの電圧指令値Vdqsを受けて、3相電圧に変換し、インバータ131に出力する。
電流変換器135は、電流センサ132で検出された相電流Iuvwを受けて、q軸電流Iqおよびd軸電流Idの合成電流であるIdqmに変換し、制御装置15にフィードバックする。位相演算器133から出力された角度θは、電圧変換器134及び電流変換器135が電圧及び電流の変換過程で実施する回転変換に用いられる。
図78において、制御装置15は、速度制御器151と、電流制御器152と、弱め界磁制御器153と、トルク指令部154とをさらに備えている。
速度制御器151は、脱水時の速度プロファイルに従う速度指令値ωmsと、速度検出手段130から受けた検出速度ωmmとの差分を受けて、ドラム11及びパルセータ13の回転速度が速度指令値ωmsとなるようなトルク指令値Iqsを出力する。
電流制御器152は、速度制御器151から出力されたトルク指令値Iqs及び弱め界磁制御器から出力されたd軸電流指令値Idsが合成された電流指令値Idqsと、電流変換器135から受けたq軸電流及びd軸電流の合成電流Idqmとの差分を受けて、モータ12のq軸電流及びd軸電流が電流指令値Idqsになるような電圧指令値Vdqsを出力する。
図80は、回転フリー状態におけるドラム及びパルセータの回転数、Iq及びIdの時間変化を示すグラフ図である。
なお、図80において、上段図は、パルセータ13(アウターロータ20)の回転速度No1と、ドラム11(インナーロータ30)の回転速度Niの時間変化を示している。また、中段図は、ドラム11側のモータ駆動に係るq軸電流Iqi及びd軸電流Idiの時間変化を示し、下段図は、パルセータ13側のモータ駆動に係るq軸電流Iqo及びd軸電流Ido(以下、単にq軸電流Iqo及びd軸電流Idoともいう)の時間変化を示している。以下の図81においても同様とする。
図80の態様では、上段図に示すように、全時間領域においてドラム11の回転速度Niにパルセータ13の回転速度No1が同一速度で追随するものとし、図81のパルセータ13の回転速度No1についても同様とする。例えば、多量の洗濯物が抑え込まれた状態で脱水運転が行われると、このような状態になる場合がある。
まず、図80中段図に示すように、制御部15は、ドラム11の速度指令値ωmsを1000[rpm]に設定し、それに応じてドラム11側のq軸電流Iqiが上昇する。その後、このドラム11の回転速度の上昇によって誘起された逆起電力による抵抗力が増加する。
そのため、制御装置15では、この抵抗力を低減させるための弱め界磁制御が行われる。弱め界磁制御器153は、ドラム11側の電流制御器152に対して時間経過に伴って絶対値が大きくなる逆方向のd軸電流Idiを出力している。なお、弱め界磁制御は、公知の技術を適用することができる。
また、ドラム11の回転に追随してパルセータ13が連れ回される状態が発生しているため、パルセータ13側に対して、時間経過に伴って絶対値が大きくなる逆方向のq軸電流Iqoが発生している。また、パルセータ13の回転数の上昇によって誘起された逆起電力による抵抗力が増加する。そのため、制御装置15では、この抵抗力を低減するための弱め界磁制御が行われる。弱め界磁制御器153は、パルセータ13側の電流制御器152に対して時間経過に伴って絶対値が大きくなる逆方向のd軸電流Idiを出力している。
前記のパルセータ13側のq軸電流Iqo及び誘起された逆起電力は、パルセータ13と同軸周りに回転するドラム11側の抵抗力も増加させるため、ドラム11側のd軸電流Idiが発散して飽和電流に達し、脱調や制御不能が発生している(図80中段図のE参照)。
その結果、図80上段図に示すように、所定時間経過後もドラム11の回転速度は、速度指令値ωmsである1000[rpm]に到達せずに、速度上昇が頭打ちになる場合がある。すなわち、高速域まで安定した動作(制御)ができない場合がある。なお、図80上段図では、一点鎖線で速度上昇が理想的に行われた場合の例を示している。
−トルク制御モードに係るモータ制御−
図79は、モータ12及び制御装置15の構成要素のうちでトルク制御モード時に動作するブロックを中心に記載したブロック図である。なお、本実施形態では、ドラム11側は、図78と同じブロック図で動作させるものとし、パルセータ13側に関して、図79のブロック図で動作させるものとする。
図79の態様では、図78の速度制御器151に代えて、電流制御器152に対して所定のトルク指令値Iqsを出力するトルク指令部154を備えている。なお、パルセータ13側を図79のブロック図で動作させる場合に、図78の制御装置15に対して、速度制御器151と並列にトルク指令部154を設けて、例えば、制御プログラムが速度制御器151とトルク指令部154とのどちらを使用するかをスイッチで切替えるようにしてもよい。
所定のトルク指令値Iqsは、パルセータ13のドラム11への連れ回りが生じた場合でも所望の高速域までの安定した動作が実現されるような任意の値を設定することが可能である。また、所定のトルク指令値Iqsは、パルセータ13を回転フリーにした状態でパルセータ13のドラム11への連れ回りが生じた場合と比較して、洗濯機トータルの消費エネルギーを減少させるような任意の値を設定することが可能である。
例えば、所定のトルク指令値Iqsは、Iqs=0に設定されるのが好ましい。ここで、パルセータ13のドラム11への連れ回りが生じている場合には、パルセータ13を回すためのトルクは不要であるため、前記のようにトルク指令値をIqs=0に設定することが可能である。
図81は、ドラム11及びパルセータ13の回転速度が0[rpm]である状態、すなわち、脱水運転の開始段階から制御装置15がトルク制御モードで脱水運転を行った例を示している。例えば、制御部15が、脱水運転開始直前にドラム11を駆動させ、連れ回りが生じているか否かを検出可能にした場合に、その結果に応じて脱水運転の開始段階からトルク制御モードで動作させる場合がある。
図80の場合と同様に、まず、図81中段図に示すように、制御部15は、ドラム11の速度指令値ωmsを1000[rpm]に設定し、それに応じてドラム11側のq軸電流Iqiが上昇する。その後、ドラム11の回転数上昇によって誘起された逆起電力による抵抗力を低減するために、弱め界磁制御が行われ、ドラム11側に対して時間経過に伴って絶対値が大きくなる逆方向のd軸電流Idiが与えられている。
図81上段図に示すように、ドラム11の回転に追随してパルセータ13が連れ回される状態が発生している。しかしながら、制御装置15は、トルク指令部154からトルク指令値Iqs=0を出力させてパルセータをトルク制御しているため、図81下段図に示すように、パルセータ13側のq軸電流Iqoが略“0”になっている。
一方で、パルセータ13の回転数の上昇によって誘起された逆起電力による抵抗力が増加するため、制御装置15の弱め界磁制御器153は、パルセータ13側の電流制御器152に対して時間経過に伴って絶対値が大きくなる逆方向のd軸電流Idoを出力している。
ここで、図81では、後述するパルセータ側のトルク制御により、パルセータ13側のq軸電流Iqo及び誘起された逆起電力が減少するため、ドラム11側のq軸電流Iqiの図81中段図における脱水工程初期の電流増加が少なくてもドラム11の回転数を上昇させることができている。さらに、図81上段図に示すように、モータ12をより高速に回転させることができ、脱水運転時に高速域まで安定した動作を実現することができている。
図82、図83は、回転フリー状態及びトルク制御モードにおけるインバータの相電流の時間変化を示している。図82は回転フリー状態、図83はトルク制御モードにおけるグラフである。
図82、図83及び次の表1に示すように、パルセータ側のトルク制御を実施することにより、ドラム11側のq軸電流Iqi及びd軸電流Idi並びにパルセータ13側のq軸電流Iqo及びd軸電流Idoを大幅に削減することができている。
以上のように、本実施形態によると、トルク指令値Iqsを“0”にすることにより、パルセータ側の逆起電力とドラム側の制御電流が影響し合うことで発生する抵抗力がなくなることでドラム側モータの負荷が低減し、消費エネルギーを大幅に低減させることができる。
(変形例等)
脱水運転の開始段階から制御装置15がトルク制御モードで脱水運転を行った例を示したがこれに限定されない。例えば、速度検出手段130で検出されたパルセータ13の速度が所定の閾値Cに達したときに、パルセータ13のドラム11への連れ回りが生じていると判定するようにしてもよい。図81上段図では、閾値Cが10[rpm]に設定された例を示している。
この場合、パルセータ13側は、パルセータ13の速度が10[rpm]未満では図78のブロック図で制御され、パルセータ13の速度が所定の10[rpm]に達すると図79のブロック図で制御されるようになる。制御装置15による具体的な制御は、前記の実施形態と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
所定の閾値Cは任意に設定することが可能であるが、例えば、以下に示すような基準に基づいて設定されるのが好ましい。洗濯機に用いられる速度センサは、ホールセンサを用いるのが一般的であるが、ホールセンサの場合、分解能の問題で10[rpm]未満で制御することは好ましくない。
すなわち、ホールセンサを用いる場合のように、分解能の問題等で正確な速度(磁極位置)をセンシングすることが困難なシステムに対しては、その分解能以上の回転速度で閾値Cを設定するのが好ましい。そこで、本開示では、閾値Cとして10[rpm]を設定している例を示している。
また、全時間領域においてドラム11の回転速度Niにパルセータ13の回転速度No1が同一速度で追随する場合について説明したが、同一速度で追随する場合に限定されない。
例えば、洗濯物の量が少なくなると、パルセータ13のドラム11への連れ回りの状態が変わり、例えば、パルセータ13の回転速度が図81上段の回転速度No2,No3のような状態になる場合がある。回転速度No2は、約400[rpm]でパルセータ13の回転が安定化した例を示しており、回転速度No3は、脱水運転の途中でパルセータ13の連れ回りが解除された例を示している。このような場合においても、制御装置15は、所定の基準に基づいてトルク制御を実施するようにすればよく、同様の効果が得られる。
なお、制御装置15は、回転速度No3に示すように、脱水運転の途中でパルセータ13の回転数が減少し、パルセータ13の回転速度が所定の速度以下(例えば、閾値D以下)になった場合に、パルセータ13を回転フリー状態に戻すように制御してもよい。
これにより、パルセータ13の駆動に係る消費エネルギーをパルセータ13の状態に応じて最適化することができる。なお、閾値Dは、ヒステリシスを考慮して、閾値Cよりも小さい値に設定されていることが好ましく、図81上段図では、閾値Dが5[rpm]に設定された例を示している。