JP6766026B2 - 電動コンプレッサー - Google Patents

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Description

この発明は、電動コンプレッサーに関する。
自動車等の車両用のターボチャージャーにおいては、車両の運転者がアクセルを操作した場合に、ターボチャージャーの応答が遅れる、いわゆるターボラグが生じる場合がある。ターボラグは、アクセルの操作に応じてエンジンの回転数が上昇し、エンジンから排出される排気ガスの圧力が高まるまで、空気を十分に圧縮できないことによって生じる。
ターボチャージャーにおけるターボラグを解消するため、電動コンプレッサーを組み合わせる手法がある。電動コンプレッサーは、電動モーターと、電動モーターによって駆動されるコンプレッサー部と、を備えている。このような電動コンプレッサーは、車両の運転者のアクセル操作に応じて電動モーターを作動させ、コンプレッサー部を駆動する。コンプレッサー部は、空気を圧縮する。この圧縮された空気は、ターボチャージャーのコンプレッサーホイール又はエンジンに送り込まれる。
上記電動モーターにおいては、作動時に、ローター(回転子)の回転に起因してハウジングが振動し、騒音を発生する場合がある。具体的には、回転するローターに設けられた永久磁石の磁界と、ステーターに設けられたコイルに流れる電流との相互作用により発生する電磁力によってステーターに振動が生じる。このステーターの振動は、ハウジングに伝達される。これにより、ハウジングが振動し、騒音が発生してしまう。
例えば、特許文献1には、電動モーターのハウジングとステーターとの間に、半径方向に伸縮可能な熱伝導性樹脂を配置する技術が開示されている。このような構成によれば、ハウジングとステーターとの半径方向の機械的結合を解除させ、ローターの回転にともなう振動が、ステーターを介してハウジングに伝達されることを抑制できる。
特許第4092195号公報
特許文献1においては、ハウジングとステーターとは、樹脂を介して互いに接触している。そのため、ローターの回転に伴う振動が、ステーターから樹脂を介してハウジングに伝達されてしまう。
過給用の電動コンプレッサーにおいては、作動時の電動モーターの回転数が、1万rpm以上となる場合がある。すると、ハウジングの振動による騒音は、電動モーターの回転周波数の2倍、4倍といった周波数で大きくなる場合がある。そのため、ターボチャージャー用の電動コンプレッサーの電動モーターに、特許文献1に開示されたような構成を適用した場合、騒音を十分に抑えることができない可能性が有る。
さらに、特許文献1では、ステーターが樹脂を介してハウジングと接しているため、ステーターの熱がハウジングに伝わり難く、ステーターが十分に放熱できない可能性が有る。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ステーターを十分に放熱させつつ電動モーターのハウジングの振動を低減し、騒音が発生することを抑制できる電動コンプレッサーを提供することを目的とする。
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、電動コンプレッサーは、空気を圧縮するコンプレッサー部と、前記コンプレッサー部を駆動するモーター部と、を備える。前記モーター部は、前記モーター部の外殻をなすハウジングと、前記ハウジング内に設けられ、中心軸回りに回転自在に支持されたローターと、前記ローターの径方向外側に配置されたステーターと、前記中心軸方向の一部のみで前記ハウジングに固定され、前記中心軸方向の残部において、前記ハウジングの内周面に対して前記中心軸を中心とした径方向に隙間をあけて設けられ、その内側に前記ステーターを収容するステーター保持体と、を備える。前記ステーター保持体は、前記中心軸方向の第一の端部において、前記ハウジングに対して固定される固定部と、前記ステーターを保持する保持体本体部と、前記中心軸方向において前記固定部と前記保持体本体部との間に設けられ、前記固定部及び前記保持体本体部よりも剛性が低い低剛性部と、を備える。前記ハウジングは、中心軸方向に開口するハウジング本体と、前記ハウジング本体の開口を塞ぐように配置された蓋体と、を備え、前記ステーターと前記蓋体との間に挟まれて、前記ステーターが前記ステーター保持体内で前記中心軸方向に移動することを抑えるリング部材が設けられている。
このように構成することで、ステーターを収容するステーター保持体は、ハウジングに固定される中心軸方向の一部を除き、ハウジングの内周面との間に径方向に隙間を有する。このため、ローターの回転にともなう振動が、ステーター保持体を介してハウジングに伝わり難くなる。これにより、ハウジングが振動して騒音が発生することを抑制できる。さらに、ステーター保持体が中心軸方向の一部でハウジングに固定されているのでステーターからハウジングへステーター保持体を介して直接的に熱伝導させることができる。そのため、ステーターを十分に放熱させることができる。
さらに、ステーター保持体の中心軸方向の少なく第一の端部以外の部分では、ステーター保持体とハウジングの内周面との間に、径方向に隙間が有する。このため、ローターの回転にともなう振動が、ステーター保持体を介してハウジングに伝わり難くなる。その一方で、少なくとも第一の端部では、ステーター保持体がハウジングに固定されているので、この固定されている箇所を介してステーター保持体からハウジングに対して熱伝導させることができる。
また、ステーター保持体を中心軸方向の第一の端部においてのみハウジングに固定することで、ステーター保持体がハウジングに固定される部分を最小限に抑えることができる。これにより、ローターの回転にともなう振動が、ステーター保持体を介してハウジングに伝わることをさらに抑える。さらに、ステーター保持体が第一の端部でハウジングに固定されているので、この固定されている箇所を介してステーター保持体からハウジングに対して熱伝導させることができる。
さらに、ローターの回転時にステーターが振動した場合、ステーターの振動は、保持部本体から低剛性部を経て固定部へと伝達される。固定部と保持体本体部との間に設けられた低剛性部は、固定部および保持体本体部よりも剛性が低いので、ステーターから伝わった振動により保持部本体が振動すると、低剛性部が弾性変形する。この低剛性部の弾性変形により、ステーターの振動が減衰され、固定部に伝わる振動を抑えることができる。これにより、ローターの回転にともなう振動が、ステーター保持体を介してハウジングに伝わるのを、さらに有効に抑えることができる。
この発明の第態様によれば、第態様に係るステーター保持体は、前記中心軸方向の第二の端部において、前記径方向において前記ステーター保持体と前記ハウジングとの間にスペーサーを有していてもよい。
このように構成することで、ステーター保持体を中心軸方向の第一の端部のみで固定した場合に、ステーター保持体の中心軸方向の第二の端部側が径方向に変位することを抑えることができる。
この発明の第態様によれば、第一又は第二態様に係る低剛性部は、中心軸を中心とする周方向に間隔をあけて複数の開口部が形成された開口部形成部を備えてもよい。
このように構成することで、開口部形成部によって開口部が形成されている分だけ、ステーター保持体の剛性を低下させることができる。そのため、低剛性部において容易に剛性を低下させることができる。
この発明の第態様によれば、第一から第態様の何れか一つの態様に係るステーター保持体は、少なくとも前記保持体本体部において、前記中心軸に交差する方向の断面形状が多角形状とされているようにしてもよい。
このように構成することで、ステーター保持体の剛性を高めることができ、ローターの回転に伴う振動の影響がステーター保持体に及び難くなる。
この発明の第態様によれば、第態様に係る多角形状の角数は、前記ローターの回転に伴い前記ステーターの振動が大きくなる高調波の次数が偶数の場合には、奇数とされ、前記次数が奇数の場合には、偶数とされていてもよい。
このように構成することで、ローターの回転によりステーターが変形して振動する方向と、ステーター保持体の変形し易い方向とが一致しないようにすることができる。そのため、ステーター保持体がステーターの振動の影響を受け難くなる。
この発明の第態様によれば、第一から第態様の何れか一つの態様に係る電動コンプレッサーは、前記径方向において、前記ステーター保持体と前記ステーターとの間に、充填材が充填されているようにしてもよい。
このように構成することで、充填材により、ステーター保持体とステーターとの間における熱伝導性が高まり、ローターの作動時にステーターに発生した熱を、効率良くステーター保持体30に伝達し、放熱性を高めることができる。
上記電動コンプレッサーによれば、ステーターを十分に放熱させつつ電動モーターのハウジングの振動を低減し、騒音が発生することを抑制できる。
この発明の実施形態における電動コンプレッサーを備えたターボチャージャーシステムの概略構成を示す模式図である。 この発明の第一実施形態における電動コンプレッサーの断面図である。 この発明の第一実施形態におけるステーター保持体を示す斜視図である。 図2のA−A線に沿う断面図である この発明の第二実施形態における電動コンプレッサーの図4に相当する断面図である。 高調波の次数が「2」のときのステーターの変形の様子を模式的に示す図である。 高調波の次数が「4」のときのステーターの変形の様子を模式的に示す図である。 この発明の第二実施形態の変形例における電動コンプレッサーの図4に相当する断面図である。
以下、この発明の実施形態における電動コンプレッサーを図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この実施形態の電動コンプレッサーを備えたターボチャージャーシステムの概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、この第一実施形態におけるターボチャージャーシステム1は、ターボチャージャー2と、エンジン8と、電動コンプレッサー10と、を備えている。
ターボチャージャー2は、タービンホイール3と、コンプレッサーホイール4と、を備えている。タービンホイール3は、エンジン8から排出された排気ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換する。コンプレッサーホイール4は、回転軸6を介してタービンホイール3に連結され、タービンホイール3で変換された回転エネルギーが回転軸6を介して伝達される。コンプレッサーホイール4は、タービンホイール3から伝達された回転エネルギーを用いて、外部から導入された空気を圧縮してエンジン8に送り込む。
電動コンプレッサー10は、インペラ13を備えたコンプレッサー部11と、コンプレッサー部11を駆動するモーター部20と、を備えている。電動コンプレッサー10は、モーター部20で発生させた回転エネルギーを用いてコンプレッサー部11のインペラ13を回転させ、空気を圧縮する。コンプレッサー部11で圧縮した空気は、ターボチャージャー2のコンプレッサーホイール4に送り込まれる。
この実施形態における電動コンプレッサー10は、例えばエンジン8の回転数が予め定めた閾値よりも低い場合にのみ作動するよう制御される。電動コンプレッサー10を作動させない場合、外部から取り込んだ空気は、バイパス路9を経て、電動コンプレッサー10を通らずにターボチャージャー2のコンプレッサーホイール4に送り込まれる。
図2は、この発明の第一実施形態における電動コンプレッサーの断面図である。
図2に示すように、モーター部20は、ハウジング21と、ローター22と、ステーター23と、ステーター保持体30と、を備えている。
ハウジング21は、モーター部20の外殻をなしている。ハウジング21は、ハウジング本体24と、蓋体25と、を備えている。
ハウジング本体24は、中心軸O方向の第一の端部24a側が端部壁24wによって塞がれた筒状(言い換えれば、有底筒状)に形成されている。この実施形態で例示する端部壁24wは、中心軸O方向における第一の端部24aの位置において、中心軸Oに交差する方向に延びている。ハウジング本体24は、中心軸O方向の第二の端部24bに、中心軸O方向に開口する開口24oを有している。
蓋体25は、中心軸Oに交差する方向に延びて、ハウジング本体24の開口24oを塞ぐように配置されている。
ローター22は、ハウジング21内に配置されている。ローター22は、ローター軸22sと、永久磁石22mと、を有する。ローター軸22sは、中心軸O方向に延びている。ローター軸22sは、軸受26,27により、中心軸O周りに回転自在に支持されている。軸受26,27は、それぞれ中心軸O方向に間隔をあけて設けられている。軸受26は、ハウジング本体24の端部壁24wに設けられた軸受支持部24cに保持されている。軸受27は、蓋体25に設けられた軸受支持部25dに保持されている。ローター軸22sの蓋体25側の端部22aは、蓋体25を貫通し、ハウジング21の外部に突出している。ハウジング21の外部において、ローター軸22sの端部22aには、インペラ13が設けられている。
永久磁石22mは、ローター軸22sの中心軸O方向の中間部に形成されたコア部22cに保持されている。永久磁石22mは、中心軸O周りの周方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、永久磁石22mの配置は、図2の配置に限られず、様々な配置を採用できる。
ステーター23は、ローター22の径方向外側に配置されている。ステーター23は、ローター22に対し、径方向に隙間を挟んで配置されている。ステーター23は、中心軸O周りの周方向に間隔をあけて設けられた複数のティース(図示無し)に、コイル(図示無し)が巻き回されている。
図3は、この発明の第一実施形態におけるステーター保持体を示す斜視図である。
図2、図3に示すように、ステーター保持体30は、その内側にステーター23を収容する。このステーター保持体30は、高い熱伝導性を有する金属材料等により形成されている。ステーター保持体30は、筒状部30tと、固定部32と、端壁部36と、を備えている。
筒状部30tは、中心軸O方向に延びる筒状に形成され、保持体本体部31と低剛性部33とを有している。
保持体本体部31は、中心軸Oに直交する断面形状が円形をなし、その径方向内側にステーター23を収容する。保持体本体部31とステーター23とは、径方向に延びる雄ネジ部等を有した留め具39等により締結されている。保持体本体部31には、留め具39を挿通するため、ネジ挿通孔31hが形成されている。留め具39は、筒状部30tの中心軸O方向の中間部に、中心軸O方向に間隔をあけて例えば2本が配置されている。
また、保持体本体部31の外径は、ハウジング本体24の内径よりも所定寸法小さく形成されている。
固定部32は、ステーター保持体30において、中心軸O方向の第一の端部30aに形成されている。この固定部32は、筒状部30tから中心軸Oを中心とした径方向の外側に延びるフランジ状に形成されている。固定部32は、蓋体25とともに、中心軸O方向に延びるボルト34により、ハウジング本体24に固定される。固定部32は、ハウジング本体24に固定された状態において、ハウジング本体24と蓋体25との間に挟み込まれている。
端壁部36は、中心軸O方向におけるステーター保持体30の第二の端部30bから、中心軸Oを中心とした径方向の内側に向かって延びている。この端壁部36は、筒状部30tと一体に形成されている。ここで、モーター部20の組立時にステーター23を筒状部30tに挿入する際、例えば、端壁部36にステーター23が突き当たることで、ステーター23の中心軸O方向における位置決めを行うことができる。
端壁部36は、中心軸Oを中心とした径方向の中央部に、ローター軸22s等が中心軸O方向に貫通する貫通孔36hを備えている。
低剛性部33は、中心軸O方向において固定部32と保持体本体部31との間に設けられている。低剛性部33には、開口部35が形成されている。開口部35は、筒状部30tを板厚方向(径方向)に貫通するようにして形成されている。開口部35は、中心軸Oを中心とした周方向に間隔をあけて複数形成されている。このように、開口部35が形成されていることで、低剛性部33は、固定部32及び保持体本体部31よりも剛性(断面二次係数)が低くなっている。なお、筒状部30tのうち、開口部35の周縁の部分により、この発明の開口部形成部が構成されている。
この低剛性部33は、上述したステーター23にステーター保持体30を固定するためのネジ挿通孔31hに対し、中心軸O方向で異なる位置に形成されている。これにより、低剛性部33の弾性変形が、留め具39で固定したステーター23により阻害されることを抑制できる。
ステーター保持体30は、中心軸O方向の第一の端部30a側に設けられた固定部32においてのみ、ハウジング21に固定されている。言い換えると、ステーター保持体30は、その中心軸O方向の一部分だけでハウジング21に固定されている。さらに言い換えると、ステーター保持体30は、ハウジング21に対していわゆる片持ち梁のように支持されている。
図4は、図2のA−A線に沿う断面図である。
図2、図4に示すように、中心軸O方向におけるステーター保持体30の固定部32以外の残部を構成する筒状部30tは、ハウジング21の内周面21fに対し、中心軸Oを中心とした径方向に隙間Sをあけて設けられている。
このように構成することで、ステーター保持体30がハウジング21に固定される中心軸O方向の一部(固定部32)を除き、ステーター保持体30とハウジング21の内周面21fとの間には、径方向に隙間Sが存在する。そのため、ローター22の回転に伴ってステーター23に振動が生じたとしても、径方向への振動がステーター保持体30を介してハウジング21に伝わり難くなる。
ステーター保持体30は、第二の端部30bにおいて、端壁部36の貫通孔36hとハウジング21の軸受支持部24cとの間に、スペーサー40を備えている。このスペーサー40は、ステーター保持体30が径方向へ振動してハウジング21に接触するのを防止する。より具体的には、スペーサー40は、ステーター保持体30が振動するのを許容しつつ、所定以上ハウジング21に近づくことを抑制する。スペーサー40は、ステーター保持体30よりも柔軟な材料、例えば樹脂系材料やゴム系材料により形成することができる。さらに、スペーサー40としては、例えば、所定以上伸びないチューブ式のダンパー(例えば、オイルダンパー等)を用いても良い。
ここで、上述したスペーサー40は、周方向に連続する円環状としても良いし、周方向に間隔をあけて複数個を設けるようにしても良い。さらに、ステーター保持体30の第二の端部30bの下方への変形を抑えるのであれば、スペーサー40は、軸受支持部24cの上側にのみ設けてもよい。
また、スペーサー40は、ステーター保持体30の外周面とハウジング21の内周面との間に設けるようにしても良い。この場合、ステーター保持体30の第二の端部30bの下方への変形を抑えるのであれば、スペーサー40は、ステーター保持体30の下側にのみ設けてもよい。なお、スペーサー40は、必要に応じて設ければ良い。例えば、ステーター保持体30の第二の端部30bとハウジング21とが接触する可能性が無い場合には、省略しても良い。
ところで、ステーター23と、蓋体25との間には、例えばゴム系材料等からなる円環状のリング部材41が設けられている。このリング部材41により、ステーター23がステーター保持体30内で中心軸O方向に移動することを抑えている。
したがって、上述した第一実施形態の電動コンプレッサー10によれば、ステーター23を収容するステーター保持体30がハウジング21に固定される中心軸O方向の一部の固定部32を除き、ステーター保持体30とハウジング21の内周面21fとの間には、径方向に隙間Sが存在する。そのため、ローター22の回転にともなってステーター23が径方向に振動しても、その振動が、ステーター保持体30を介してハウジング21に伝わり難くなる。その結果、モーター部20の作動時にハウジング21が振動して発生する騒音を有効に抑えることが可能となる。
また、ステーター保持体30の内側にステーター23を収容することで、ステーター23で発する熱は、ステーター保持体30に伝達される。ステーター23を収容したステーター保持体30とハウジング21の内周面21fとの間には隙間Sが設けられているので、ステーター23に伝達された熱は、隙間Sに放出されるか、または、固定部32を介してハウジング21に熱伝導される。その結果、モーター部20で発する熱を効率良く放出することができる。
また、ステーター保持体30は、中心軸O方向の第一の端部30a以外の部分では、ステーター保持体30とハウジング21の内周面21fとの間に、径方向に隙間Sを有する。そのため、ローター22の回転に伴う振動が、ステーター保持体30を介してハウジング21に伝わり難くなる。
さらに、中心軸O方向の第一の端部30aの固定部32においてのみステーター保持体30をハウジング21に固定することで、ステーター保持体30がハウジング21に接触する部分を最小限に抑えることができる。したがって、ローター22の回転にともなう振動が、ステーター保持体30を介してハウジング21に伝わるのを、より効果的に抑えることができる。
また、ステーター保持体30は、中心軸O方向の第二の端部30bにおいて、ステーター保持体30とハウジング21との間にスペーサー40を有している。
このように構成することで、ステーター保持体30を中心軸O方向の第一の端部30aのみで固定した場合に、ステーター保持体30の中心軸O方向の第二の端部30b側が変位してハウジング21に接触することを抑制できる。
さらに、ステーター保持体30は、ハウジング21に固定された固定部32と、ステーター23を保持する保持体本体部31との間に設けられた低剛性部33が弾性変形する。そのため、ローター22の回転時に生じるステーター23の振動を減衰することができる。したがって、ローター22の回転にともなう振動が、ステーター保持体30を介してハウジング21に伝わるのを、さらに有効に抑えることができる。
また、低剛性部33は、筒状部30tに形成された開口部35を有している。このように、筒状部30tに開口部35を形成することによって、ステーター保持体30の剛性を容易に低くすることができる。
上記第一実施形態の低剛性部33は、筒状部30tに開口部35を形成するようにしたが、この構成に限られない。低剛性部33において剛性が低くなるのであれば、例えば、低剛性部33において筒状部30tの肉厚を小さくしたり、低剛性部33を保持体本体部31よりも弾性変形しやすい材料で形成したりしてもよい。
(第二実施形態)
次に、この発明に係る電動コンプレッサーの第二実施形態について説明する。この第二実施形態は、第一実施形態とステーター保持体の断面形状のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図5は、この発明の第二実施形態における電動コンプレッサーの図4に相当する断面図である。
図5に示すように、この実施形態における電動コンプレッサー10Bは、コンプレッサー部11(図1、図2参照)と、モーター部20Bと、を備えている。
モーター部20Bは、ハウジング21と、ローター22と、ステーター23と、ステーター保持体30Bと、を備えている。
ステーター保持体30Bは、ステーター23を収容する。ステーター保持体30Bは、上記第一実施形態のステーター保持体30と同様、保持体本体部31Bと、固定部32と、低剛性部33と、を備える。
この第二実施形態において、ステーター保持体30Bは、少なくとも保持体本体部31Bにおいて、中心軸Oに交差する方向の断面形状が多角形状とされている。このように断面形状を多角形状とすることで剛性を高めることができる。
ここで、ローター22の回転に起因してステーター23に生じる振動は、ローター22の回転数(基本周波数)に対する高調波を含む。そして、ステーター23に生じる振動の大きくなる高調波の次数(言い換えれば、振動伝達の低減対象となる高調波の次数)が、「2」、「4」といった偶数である場合、ステーター保持体30Bの保持体本体部31Bは、奇数の角部31eを有する正多角形状とするのが好ましい。
また、ステーター23に生じる振動の大きくなる高調波の次数(言い換えれば、振動伝達の低減対象となる高調波の次数)が、「3」、「5」といった奇数である場合、ステーター保持体30Bの保持体本体部31Bは、偶数の角部31eを有する正多角形状とするのが好ましい。
なお、ステーター23の振動が大きくなる高調波の次数が奇数となるか偶数となるかは、一般に、スロット数とモーター極数とによって決まる。
図6は、高調波の次数が「2」のときのステーターの変形の様子を模式的に示す図である。図7は、高調波の次数が「4」のときのステーターの変形の様子を模式的に示す図である。
例えば、図6に示すように、ステーター23の振動における高調波の次数が「2」である場合、ステーター23には、周方向で互いに反対側となる2個所において、径方向外側に突出するような変形が生じる。これに対し、保持体本体部31Bを、例えば正五角形状とすることで、ステーター23に生じる変形の方向と、保持体本体部31Bの変形し易い方向とが一致しなくなる。そのため、ステーター23の変形による影響が保持体本体部31Bに伝播するのを抑えることができる。
また、図7に示すように、ステーター23振動における高調波の次数が「4」である場合、ステーター23には、周方向の4個所において、径方向外側に突出するような変形が生じる。これに対し、保持体本体部31Bを、例えば正五角形状とすることで、次数が「2」の場合と同様に、ステーター23に生じる変形の方向と、保持体本体部31Bの変形し易い方向とが一致しなくなる。そのため、ステーター23の変形による影響が保持体本体部31Bに伝播するのを抑えることができる。
また、図5に示すように、ステーター23と、断面が多角形状に形成された保持体本体部31Bとは、固定部材Pによって結合されている。この実施形態における固定部材Pは、それぞれ保持体本体部31Bのうち、断面視で多角形の各辺の中央の位置でステーター23に固定されている。これら固定部材Pは、熱伝導性の高い金属等の材料で形成されている。なお、固定部材Pの形状は図5に示すものに限られない。
したがって、上述した第二実施形態の電動コンプレッサー10Bによれば、ステーター保持体30Bは、少なくとも保持体本体部31において、中心軸Oに交差する方向の断面形状が多角形状とされている。このように構成することで、ステーター保持体30Bの剛性を高めることができ、ローター22の回転に伴う振動の影響がステーター保持体30Bに及び難くなる。
また、ローター22の回転による高次の振動がステーター23に生じる場合に、振動が大きくなる高調波の次数が偶数の場合には、ステーター保持体30Bを奇数の角数の多角形状とし、振動が大きくなる高調波の次数が奇数の場合には、ステーター保持体30Bを偶数の角数の多角形状としている。そのため、ステーター保持体30Bが、ステーター23の振動の影響を受け難くなる。
また、上記第一実施形態と同様、ステーター保持体30Bがハウジング21に固定される中心軸O方向の一部を除き、ステーター保持体30Bとハウジング21の内周面21fとの間には、径方向に隙間Sが存在する。このため、ローター22の回転にともなう振動が、ステーター保持体30Bを介してハウジング21に伝わり難くなる。これにより、ハウジング21が振動して騒音を発生することを抑えることができる。
さらに、固定部材Pによってステーター23と保持体本体部31Bとが結合されるため、ステーター23の熱を、固定部材Pを通じてステーター保持体30Bに円滑に逃がすことができる。
(第二実施形態の変形例)
図8は、この発明の第二実施形態の変形例における、電動コンプレッサーの図4に相当する断面図である。
図8に示すように、ステーター保持体30Bとステーター23との間に、充填材50が充填されていてもよい。ここで、充填材50は、ステーター保持体30Bとステーター23との間に形成された空間51における熱伝導性を高める。充填材50は、例えば、樹脂等によって形成することができる。
このように構成することで、多角形のステーター保持体30Bを採用することによってローター22との間に空間51が形成されてしまう場合であっても、充填材50により、ステーター保持体30Bとステーター23との間における熱伝導性を高めることができる。したがって、ローター22の作動時にステーター23に発生した熱を、効率良くステーター保持体30Bに伝達し、放熱性を高めることができる。
また、ローター22の回転にともなう振動がステーター23に生じても、ステーター23とステーター保持体30Bとの間に充填された充填材50によって、振動を吸収することもできる。これにより、ステーター保持体30Bは、ローター22の振動の影響を受け難くなる。
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上記各実施形態及びその変形例においては、ステーター保持体30、30Bを、中心軸O方向の第一の端部30aにおいてのみ、ハウジング21に固定するようにしたが、これに限らない。例えば、ステーター保持体30、30Bを、中心軸O方向の中間部において、ハウジング21に固定するようにしてもよい。また、ステーター保持体30、30Bを、中心軸O方向の両端部で、ハウジング21に固定するようにしてもよい。
1 ターボチャージャーシステム
2 ターボチャージャー
3 タービンホイール
4 コンプレッサーホイール
6 回転軸
8 エンジン
9 バイパス路
10、10B 電動コンプレッサー
11 コンプレッサー部
13 インペラ
20、20B モーター部
21 ハウジング
21f 内周面
22 ローター
22a 端部
22c コア部
22m 永久磁石
22s ローター軸
23 ステーター
24 ハウジング本体
24a 第一の端部
24b 第二の端部
24c、25d 軸受支持部
24o 開口
24w 端部壁
25 蓋体
26、27 軸受
30、30B ステーター保持体
30a 第一の端部
30b 第二の端部
30t 筒状部
31、31B 保持体本体部
31e 角部
31h ネジ挿通孔
32 固定部
33 低剛性部
34 ボルト
35 開口部
36 端壁部
36h 貫通孔
39 留め具
40 スペーサー
41 リング部材
50 充填材
51 空間
O 中心軸
S 隙間

Claims (6)

  1. 空気を圧縮するコンプレッサー部と、
    前記コンプレッサー部を駆動するモーター部と、を備え、
    前記モーター部は、
    前記モーター部の外殻をなすハウジングと、
    前記ハウジング内に設けられ、中心軸回りに回転自在に支持されたローターと、
    前記ローターの径方向外側に配置されたステーターと、
    前記中心軸方向の一部のみで前記ハウジングに固定され、前記中心軸方向の残部において、前記ハウジングの内周面に対して前記中心軸を中心とした径方向に隙間をあけて設けられ、その内側に前記ステーターを収容するステーター保持体と、
    を備え
    前記ステーター保持体は、
    前記中心軸方向の第一の端部において、前記ハウジングに対して固定される固定部と、
    前記ステーターを保持する保持体本体部と、
    前記中心軸方向において前記固定部と前記保持体本体部との間に設けられ、前記固定部及び前記保持体本体部よりも剛性が低い低剛性部と、
    を備え、
    前記ハウジングは、
    中心軸方向に開口するハウジング本体と、前記ハウジング本体の開口を塞ぐように配置された蓋体と、を備え、
    前記ステーターと前記蓋体との間に挟まれて、前記ステーターが前記ステーター保持体内で前記中心軸方向に移動することを抑えるリング部材が設けられている電動コンプレッサー。
  2. 前記ステーター保持体は、前記中心軸方向の第二の端部において、前記径方向において前記ステーター保持体と前記ハウジングとの間にスペーサーを有している請求項に記載の電動コンプレッサー。
  3. 前記低剛性部は、中心軸を中心とする周方向に間隔をあけて複数の開口部を形成する開口部形成部を備える請求項1又は2に記載の電動コンプレッサー。
  4. 前記ステーター保持体は、少なくとも前記保持体本体部において、前記中心軸に交差する方向の断面形状が多角形状とされている請求項1から3のいずれか一項に記載の電動コンプレッサー。
  5. 前記多角形状の角数は、
    前記ローターの回転に伴い前記ステーターの振動が大きくなる高調波の次数が偶数の場合には、奇数とされ、
    前記次数が奇数の場合には、偶数とされている請求項に記載の電動コンプレッサー。
  6. 前記径方向において、前記ステーター保持体と前記ステーターとの間に、充填材が充填されている請求項1からの何れか一項に記載の電動コンプレッサー。
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