JP6742426B2 - 分散物の製造方法、及びインクジェット記録用顔料分散物の製造方法 - Google Patents

分散物の製造方法、及びインクジェット記録用顔料分散物の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、分散物の製造方法、インクジェット記録用顔料分散物及びその製造方法、並びに、インクジェット用インク組成物及びその製造方法に関する。
近年、顔料分散物の製造方法において、顔料の高濃度化への要求が高まっている。顔料を高濃度化することができれば、所望の色濃度を再現するための分散物の塗布量を減らすことが可能となる。例えば、分散媒に対して色材としての顔料の含有量を増加させ、顔料を高濃度化することにより、インク組成物により画像を形成する場合に、所望の色濃度を再現するためのインク組成物の適用量を減らすことが可能となる。
顔料分散物の製造方法としては、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、ホモジナイザー等を用いた製造方法が一般的に知られている。
例えば、医薬品印刷用インクに用いられる顔料組成物の製造方法として、高圧ホモジナイザーを用いた製造方法が知られている(例えば、国際公開第2011/114689号参照)。
また、錠剤、カプセル剤等の医薬品固形製剤の表面に鮮明な印字ができるインクジェット印刷用の顔料含有インク組成物の製造方法として、高圧剪断式ホモジナイザー、ビーズミル等を用いた製造方法が知られている(例えば、特開2015−140414号公報参照)。
また、可食性の材料を用いたインクジェットインクの作製方法として、ビーズミルを用いた作製方法が知られている(例えば、特開2015−224270号公報参照)。
また、顔料を含む分散物の製造方法としては、例えば、ベンガラなどの顔料をインクジェット記録方法にて用いるインク組成物に含有させるための顔料分散方法として、超音波分散を行った後、メディアを用いない高圧ホモジナイザーなどで分散させる方法が提案されている(例えば、特開平10−265710号公報参照)。
また、種々の材料に簡易に、かつ、非接触で画像を記録することができる観点から、インクジェット記録方法が広く用いられるに至っており、食品、医薬品等を内包する包装体に印刷することの他、食品、医薬品等に直接印字することにも用いられている。インクジェット記録用インクに使用される色材としては、染料及び顔料が挙げられる。
経口摂取する食品、医薬品等に直接、印字又は印画するための可食性素材を使用したインク(以下、「可食性インク」ともいう。)としては、各種の可食性インクが知られている。
インクジェット記録方法に用いられる可食性インクとしては、例えば、酸化鉄と、分子量1万〜15万のヒドロキシプロピルセルロースと、エタノールを主体とし、かつ、水を含む溶剤とを必須成分とするインクジェットインキが知られている(例えば、特開2015−000968号公報参照)。
また、黄色系顔料としてFe・HO及びFeを含有するインクジェット用イエローインクが知られている(例えば、特開2009−149719号公報参照)。
また、少なくとも、可食性顔料(即ち、経口摂取可能な顔料)、水、低級アルコール、分散剤、及び可塑剤を含有するインク組成物が知られている(例えば、特開2015−140414号公報参照)。
インクジェット記録方法は、非平面の被記録体にも簡易に印刷が可能であるという利点を有する。
このため、例えば、錠剤等の非平面を有する固形製剤では、インクジェット記録方法により、可食性インクを固形製剤の表面に付与し、印字又は印画することが行われている。即ち、錠剤には割線が付与されているものがあり、従来の印刷方法であるロール式のオフセット印刷またはグラビア印刷では、割線を避けて印刷しなければならず、工程が複雑である。一方、インクジェット記録方法を適用すると、錠剤の形状、配置を読み取り、割線を避けて印刷することを容易に行うことができ、従来の印刷方法の如く錠剤の方向を一律に正確に並べるなどの工程の簡略化が図れる。
しかし、国際公開第2011/114689、特開2015−140414号公報、又は特開2015−224270号公報に記載された従来の製造方法によって、顔料濃度のより高い分散物を製造しようとすると、顔料濃度が高くなるにつれて、分散物中の粗大粒子の割合が増加する傾向を示すことが判明した。分散物中の粗大粒子の割合が増加すると、例えば、分散物をインクジェット記録用インクに適用した場合に、インクジェット記録装置のノズルが詰まり、インク吐出性が悪化するという問題が生じ得る。
また、食品又は医薬品に直接印刷する目的においては、印字又は印画に用いられる可食性インクも経口摂取可能なものでなければならない。このため、可食性インクは、経口摂取する食品、医薬品等の印字又は印画に用いられるという用途に鑑みると、より少ない塗布量で十分な色濃度を再現できることが望ましい。そのためには、液中に可食性顔料を高濃度で分散させることが必要となる。この点に関し、特開2015−140414号公報、特開2009−149719号公報又は特開2015−140414号公報に記載の可食性インクは、少量で十分な色濃度を再現できるほど、可食性顔料の濃度が高いとは言い難い。
一般に、可食性顔料の原料粉末は、その粒子径が大きく、また、可食性顔料の分散に使用される可食性分散剤は、可食性顔料の表面への吸着が十分ではない。そのため、可食性インク中に可食性顔料を高濃度で含有させると、可食性顔料の粗大粒子が多く存在しやすくなり、インクジェット記録用インクに適用した場合には、インク吐出性が悪化する。よって、可食性顔料を高濃度で含有する可食性インクを実現することは困難であった。
また、特開平10−265710号公報に記載の技術の如く、超音波分散、高圧ホモジナイザー等の一般に用いられる高剪断力を付加する分散方法を、可食性顔料に適用した場合には、目的とする粒子径が小さくなるほど、顔料が破砕され易くなり、微細な粒子が多くなる。微細な粒子が多くなるにつれて、分散処理を行っても、分散が充分に進行せず、粒子が分散剤に十分に被覆されないために、経時により分散物の粘度が増加したり、粗大粒子が形成されたりする傾向が見られた。経時による分散物の粘度上昇、或いは、粗大粒子の生成は、分散物をインクジェットインキ記録用インク組成物に適用した場合に、吐出性の低下が懸念され、好ましくない。
また、例えば、医薬品には、医薬品添加物として経口摂取可能な認定材料を使用する必要があるため、使用可能な色材の種類は限られている。また、色材として染料を用いる場合、水溶性を有する点で水系インクの調製が容易である。一方で、染料は、光及び湿度等の影響を受けて褪色又は変色し易く、堅牢性の点で改良の余地がある。特に、医薬品分野では、製造直後に経口摂取されず、数年経過した後に経口摂取されることが想定され、医薬品用途における認定材料であって堅牢性がより良好な顔料を選択することが望ましいとされている。医薬品のほか、保存食品などについても、堅牢性が良好な色材が所望される点は同様である。
しかし、堅牢性が良好な色材として顔料を用いた場合、既述の如く分散物に含まれる固形分である顔料の分散媒に対する含有比率を増加させると、分散物の濃度が上昇するにつれて粘度が上昇するという問題がある。
また、可食性顔料の中でも、黒色の再現に有用な黒酸化鉄は磁性を持ち、強固に凝集しており、インクジェット記録方法によって吐出可能とされる粒子サイズ、例えば、500nm以下、好ましくは200nm以下にすることは非常に困難である。特に、分散後の粒子サイズが250nm以上である場合には、分散性が良好ではない場合に沈降が起き易く、さらに、分散後の粒子径が100nm以下とした場合には、顔料粒子の破砕が進行し、分散物の安定性が低下することがある。
黒酸化鉄顔料以外にも、可食性顔料として公知の三二酸化鉄顔料、黄色三二酸化鉄顔料、青色2号レーキ顔料なども、強固に凝集しており、顔料の破砕も起こりやすい。
このため、可食顔料を高濃度で含む安定な分散物としてのインク組成物が望まれている。
さらに、錠剤への印刷の目的の一つとして、印字することによる誤飲防止が挙げられ、誤飲防止のためには、類似の形状の錠剤において、印刷されている印字の色が互いに異なることが好ましい。また、鮮明で視認性が良好な印字であることも望まれる。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、従来の方法により得られる分散物と比較して、粗大粒子の少ない分散物を得ることができる分散物の製造方法を提供することである。
本発明の別の一実施形態が解決しようとする課題は、従来よりも可食性顔料の濃度が高く、粗大粒子が少なく、かつ、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性に優れるインクジェット記録用顔料分散物を提供することである。
本発明の別の一実施形態が解決しようとする課題は、上記インクジェット記録用顔料分散物を製造することができるインクジェット記録用顔料分散物の製造方法を提供することである。
本発明の別の一実施形態が解決しようとする課題は、2種以上の可食性顔料を含み、顔料の含有量が多い場合においても、吐出性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することである。
本発明の別の一実施形態が解決しようとする課題は、吐出性に優れたインクジェット用インク組成物の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有する混合物を準備する工程Aと、
上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程Bと、
上記静水圧を加えた上記混合物に対して、分散処理を行う工程Cと、
を含む分散物の製造方法。
<2> 上記工程Bは、上記混合物に対して、100MPa以上の静水圧を6時間以上加える工程である<1>に記載の分散物の製造方法。
<3> 上記工程Bは、上記混合物に対して、70℃以上の熱を加えながら、100MPa以上の静水圧を15時間以上加える工程である<1>に記載の分散物の製造方法。
<4> 上記工程Cは、上記静水圧を加えた上記混合物に対して、メディアミルを用いて分散処理を行う工程である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<5> 上記工程Bは、上記混合物に対して、冷間等方加圧法を用いて上記静水圧を加える工程である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<6> 上記工程Aは、密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、上記混合物を得る工程を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<7> 上記可食性顔料は、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキからなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<8> 上記工程Aにて準備した上記混合物における上記可食性顔料の濃度が、上記混合物の全体積に対して1.0体積%以上である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<9> 更に、上記工程Cの後の分散物の25℃でのpHを6.3以下に調整する工程Dを含む<1>〜<8>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<10> 工程Dは、酸及び弱酸の塩を用いて分散物のpHを調整する<9>に記載の分散物の製造方法。
<11> 工程Aが終了する前、又は工程A後であって工程Bの前に、更に、可食性分散剤の一部を除去する工程Eを含む<1>〜<10>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<12> 工程Aは、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を混合して混合物を得る工程であり、かつ、
密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、混合物を得る工程a2と、
工程a2で得られた混合物に対して分散処理を行う工程a3と、を含み、
工程a3の工程内、又は工程a3の後であって工程Bの前に、上記の工程Eを含む、<11>に記載の分散物の製造方法。
<13> 工程Aにおいて、可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率Pは、質量基準で下記式Iを満たし、かつ、工程Aの後における、可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率Qは、質量基準で下記式IIを満たす、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
0.25<比率P<1.2 式I
0.05<比率Q<0.40 式II
<14> 可食性分散剤は、第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体である<1>〜<13>のいずれか1つに記載の分散物の製造方法。
<15> 1.0体積%以上の可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有し、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び厚みが5μmのスペーサを備えた光路長可変セルを用いて測定した粒子径分布において、検出頻度の体積累積が10%になる粒子径D10、検出頻度の体積累積が50%になる粒子径D50、及び検出頻度の体積累積が90%になる粒子径D90が、下記の式(A1)及び式(B1)を満たすインクジェット記録用顔料分散物。
50 ≦ 0.5μm ・・・式(A1)
(D90−D10)/D50 ≦ 1.0 ・・・式(B1)
<16> 上記粒子径D10、上記粒子径D50、及び上記粒子径D90が、下記の式(A2)及び式(B2)を満たす<15>に記載のインクジェット記録用顔料分散物。
50 ≦ 0.1μm ・・・式(A2)
(D90−D10)/D50 ≦ 0.5 ・・・式(B2)
<17> 上記可食性顔料が、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキからなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料である<15>又は<16>に記載のインクジェット記録用顔料分散物。
<18> 23℃における粘度が、10mPa・s以下である<15>〜<17>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用顔料分散物。
<19> <15>〜<18>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用顔料分散物を製造する方法であって、
密閉容器に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、混合物を得る工程と、
上記混合物に対して、第1の分散処理を行う工程と、
上記第1の分散処理を行った上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程と、
上記静水圧を加えた上記混合物に対して、第2の分散処理を行う工程と、
を含むインクジェット記録用顔料分散物の製造方法。
<20> 黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキから選ばれる2種以上の可食性顔料と、アミノ基及び4級アンモニウム基の少なくとも一方を含み、上記可食性顔料の少なくとも一部を被覆する可食性分散剤と、水と、を含み、上記可食性顔料の濃度が3質量%〜20質量%であるインクジェット用インク組成物であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び光路長可変セルを用いて測定した上記可食性顔料の平均粒子径が500nm以下であるインクジェット用インク組成物。
<21> 上記可食性顔料の平均粒子径が200nm以下である<20>に記載のインクジェット用インク組成物。
<22> 上記可食性顔料の粒子径をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び光路長可変セルを用いて測定した際に、上記可食性顔料の全量に対する、粒子径が500nm以上の粗大粒子の含有量が1頻度未満である<20>又は<21>に記載のインクジェット用インク組成物。
<23> 上記可食性分散剤が、医薬品添加物として経口投与可能な分散剤から選ばれる少なくとも1種ある<20>〜<22>のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
<24> 高沸点溶媒を含有する<20>〜<23>のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
<25> 上記2種以上の可食性顔料の分散に用いられる可食性分散剤が互いに同じ可食性分散剤である<20>〜<24>のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
<26> 上記可食性顔料が、上記三酸化二鉄及び上記黒酸化鉄の少なくとも1種と、上記食用青色2号アルミニウムレーキと、を含む<20>〜<25>のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
<27> 上記三酸化二鉄及び上記黒酸化鉄の総含有量をAとし、上記食用青色2号アルミニウムレーキの含有量をBとしたとき、A/Bが2/3〜1/10の範囲である<26>に記載のインクジェット用インク組成物。
<28> 上記可食性顔料が、上記黄色三二酸化鉄と、上記食用青色2号アルミニウムレーキと、を含む<20>〜<25>のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
<29> 上記黄色三二酸化鉄の含有量をCとし、上記食用青色2号アルミニウムレーキの含有量をBとしたとき、C/Bが2/3〜1/5の範囲である<28>に記載のインクジェット用インク組成物。
<30> 上記可食性顔料が、前記三酸化二鉄と、前記黄色三二酸化鉄と、を含む<20>〜<25>のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
<31> 前記三酸化二鉄の含有量をDとし、前記黄色三二酸化鉄の含有量をCとしたとき、D/Cが1/2〜1/5の範囲である<30>に記載のインクジェット用インク組成物。
<32> 黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキから選ばれる2種以上の可食性顔料と、アミノ基及び4級アンモニウム基の少なくとも一方を含み、上記可食性顔料の少なくとも一部を被覆する可食分散剤と、水と、を密閉容器内に充填し、振動させながら混合して混合物を得る工程と、得られた混合物に含まれる上記可食性顔料の少なくとも一部を粉砕し、かつ、顔料を分散して分散物を得る工程と、を含み、密閉容器内に充填された上記可食性顔料の合計質量が、密閉容器内の充填物の全質量に対して3質量%〜20質量%であるインクジェット用インク組成物の製造方法。
<33> さらに、混合物又は分散物に対して高圧処理する工程を有する<32>に記載のインクジェット用インク組成物の製造方法。
本発明の一実施形態によれば、従来の方法により得られる分散物と比較して、粗大粒子の少ない分散物を得ることができる分散物の製造方法が提供される。
本発明の別の一実施形態によれば、従来よりも可食性顔料の濃度が高く、粗大粒子が少なく、かつ、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性に優れるインクジェット記録用顔料分散物が提供される。
本発明の別の一実施形態によれば、上記インクジェット記録用顔料分散物を製造することができるインクジェット記録用顔料分散物の製造方法が提供される。
本発明の別の一実施形態によれば、2種以上の可食性顔料を含み、顔料の含有量が多い場合においても、吐出性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することができる。
本発明の別の一実施形態によれば、吐出性に優れたインクジェット用インク組成物の製造方を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録用顔料分散物における粒子径分布の測定に用いた光路長可変セルの斜視図である。 図1の光路長可変セルの構成を示す分解図である。 図1の光路長可変セルの断面図である。
以下、本開示の分散物の製造方法、インクジェット記録用顔料分散物及びその製造方法、並びに、インクジェット用インク組成物及びその製造方法の実施形態について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、各成分の濃度又は含有率は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計の濃度又は含有率を意味する。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。
本明細書において、被分散体を分散させるために用いられる分散媒体は、「分散メディア」又は「ビーズ」とも称される。
分散メディアの「メディア径」とは、球状メディア(例えば、球状ビーズ)の場合は、分散メディア(例えば、ビーズ)の直径を意味し、非球状メディア(例えば、非球状ビーズ)の場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)の観察像から複数個のメディア(例えば、ビーズ)の円相当径を測定し、測定値を算術平均して求められる直径を指す。円相当径とは、観察される分散メディアの2次元形状の面積と同一面積に相当する円の直径をいう。
本明細書において「食品添加物」とは、食品添加物公定書第8版に記載の食品添加物を指す。また、本明細書において「医薬品添加物」とは、医薬品添加物事典2007(編集:日本医薬品添加剤協会、2007年7月25日第1刷発行)及び医薬品添加物事典2016(編集:日本医薬品添加剤協会、2016年2月第1刷発行)に記載の医薬品添加物を指す。
なお、本明細書において「印字」の語は、インクジェット用インク組成物により被記録媒体上に記録を行うことを指し、文字及び数字の他、人物、建物、模様、マーク等の絵柄を記録する場合も包含する意味で用いられる。
本明細書において、pHは、25℃環境下において、被検液を25℃に調温した状態でpHメーター「WM−50EG(東亜DK社製)」を用いて測定される値である。
[分散物の製造方法]
本開示に係る第1の実施形態は、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有する混合物を準備する工程Aと、上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程Bと、上記静水圧を加えた上記混合物に対して、分散処理を行う工程Cと、を含む分散物の製造方法である。
以下、上記実施形態の製造方法を、単に「製造方法A」ともいう。
近年、分散物の製造方法において、顔料の高濃度化への要求が高まっている。顔料を高濃度化することができれば、所望の色濃度を再現するための分散物の塗布量を減らすことが可能となる。
従来、分散物の製造方法では、一般的に、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、ホモジナイザー等が用いられてきた。例えば、既述の国際公開第2011/114689号、特開2015−140414号公報、及び特開2015−224270号公報においても、高圧ホモジナイザー(例えば、高圧剪断式ホモジナイザー)、ビーズミル等を用いて分散物を製造している。
しかし、国際公開第2011/114689、特開2015−140414号公報又は特開2015−224270号公報に記載された従来の製造方法によって、顔料濃度のより高い分散物を製造しようとすると、顔料濃度が高くなるにつれて、分散物中の粗大粒子の割合が増加する傾向を示すことが判明した。分散物中の粗大粒子の割合が増加すると、例えば、分散物をインクジェット記録用インクに適用した場合に、インクジェット記録装置のノズルが詰まり、インク吐出性が悪化するという問題が生じ得る。
このような傾向は、特に、顔料として可食性顔料を用いた場合に顕著である。可食性顔料の原料粉末は、その粒子径が大きく、また、可食性顔料の分散に使用される可食性分散剤は、可食性顔料の表面に十分に吸着し難い傾向がある。そのため、可食性顔料は、一般的な顔料と比べて分散し難く、粗大粒子が生じやすい。
これに対し、本開示の製造方法Aによれば、従来の方法により得られる分散物と比較して、粗大粒子の少ない分散物を得ることができる。
本開示の製造方法Aにおいて、かかる効果が奏される理由は明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
本開示の製造方法Aでは、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有する混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加えることで、可食性顔料(混合しただけでは、可食性分散剤による被覆が不足している可食性顔料を含む)が凝集した粒子(所謂、粗大粒子)の内部、即ち、粒子と粒子との間に、可食性分散剤が強制的に浸透すると考えられる。この内部に可食性分散剤が浸透した粗大粒子が、次工程における分散処理により解砕されることで、可食性分散剤により過不足なく被覆された可食性顔料の粒子が形成されるため、分散物中に粗大粒子が少なくなると推測される。
但し、本開示の製造方法Aは、上記の理由によって何ら限定されることはない。
以下、本開示の製造方法Aにおける各工程について詳細に説明する。
<工程A>
工程Aは、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有する混合物を準備する工程である。工程Aは、予め混合された混合物を単に準備するだけの工程であってもよいし、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を混合して混合物を得る工程であってもよい。
混合物中における可食性顔料の含有率は、特に限定されず、例えば、印字又は画像の形成に適した着色濃度を得やすいという観点から、混合物の全質量に対して、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、12質量%以上が特に好ましい。
混合物中における可食性顔料の含有率の上限は、特に限定されず、例えば、最終的に得られる分散物の分散状態が安定しやすく、インクジェット法による吐出に適した粘度に調整し易いという観点から、混合物の全質量に対して、20質量%以下が好ましい。
混合物における可食性顔料の濃度は、特に限定されず、例えば、印字又は画像の形成に適した着色濃度を得やすいという観点から、混合物の全体積に対して、1.0体積%以上が好ましく、1.5体積%以上がより好ましく、2.0体積%以上が更に好ましい。
混合物における可食性顔料の濃度の上限は、特に限定されず、例えば、最終的に得られる分散物の分散状態が安定しやすく、インクジェット法による吐出に適した粘度に調整し易いという観点から、混合物の全体積に対して、10体積%以下が好ましい。
混合物中における可食性分散剤の含有率は、特に限定されず、例えば、混合物の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。
混合物中における可食性分散剤の含有率の上限は、特に限定されず、例えば、混合物の全質量に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
混合物中における可食性分散剤の含有率が、混合物の全質量に対して、1質量%以上15質量%以下であると、最終的に得られる分散物の分散状態が安定しやすく、インクジェット法による吐出に適した粘度に調整し易い。
混合物中における可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率(即ち、可食性分散剤の含有量/可食性顔料の含有量)は、質量比で、0.10以上1.2以下が好ましく、0.20以上0.90以下がより好ましく、0.30以上0.85以下が更に好ましい。
なお、ここでいう「可食性分散剤の含有量」とは、顔料分散物中において、可食性顔料を被覆している可食性分散剤と、可食性顔料を被覆せずに液中に遊離している可食性分散剤と、の合計量を指す。
混合物中における可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率(即ち、可食性分散剤の含有量/可食性顔料の含有量)が、質量比で、0.10以上であると、可食性顔料の量に対する可食性分散剤の量が可食性顔料の分散に適切な量となるため、可食性顔料をより安定に分散させることができる。
一般に、分散剤の量が多くなると分散粒子の粒子径を小さくし易い。しかし、その一方で、分散剤の量が多くなると分散粒子が分散し難くなる傾向がある。このような観点から、混合物中における可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率(即ち、可食性分散剤の含有量/可食性顔料の含有量)は、質量比で、1.2以下に抑えることが好ましい。
混合物中における水の含有率は、特に限定されず、例えば、分散物の製造適性の観点から、混合物の全質量に対して、60質量%以上95質量%以下が好ましく、65質量%以上90質量%以下がより好ましく、70質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
工程Aが、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を混合して混合物を得る工程である場合、工程Aは、以下の工程a1又は工程a2を含むことが好ましく、工程a2を含むことがより好ましい。
工程a1:可食性顔料、可食性分散剤、及び水を撹拌により混合し、混合物を得る工程
工程a2:密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、上記混合物を得る工程
(工程a1)
工程a1は、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を撹拌により混合し、混合物を得る工程である。
可食性顔料、可食性分散剤、及び水は、単に混合すればよく、全ての成分を一度に混合してもよいし、各成分をいくつかに分けて混合してもよい、
例えば、分散性の観点からは、まず、可食性顔料と可食性分散剤とを混合した後、水を加えて更に混合することが好ましい。
(工程a2)
工程a2は、密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、上記混合物を得る工程である。
本明細書において、以下、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、密閉容器の内容物を振動させて混合することを「低周波処理」と称する場合がある。
工程a2では、密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合することで、可食性顔料の表面の少なくとも一部が可食性分散剤により被覆された状態とする。
工程a2では、密閉容器内に充填した成分(可食性顔料、可食性分散剤等)の固有振動数に合わせて、密閉容器内の成分の上下の振動幅を共振により調整し、内容物に対して音響圧力波を伝播させることで、可食性顔料を高濃度の状態で、その表面の少なくとも一部を可食性分散剤で被覆し、分散させることができる。
工程a2で得られた混合物中では、高濃度の可食性顔料が粗分散された状態で存在する。
密閉容器としては、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を充填し、振動を与えた場合に内容物が漏れたり、容器が破損したりしない密閉性、強度、耐久性等を有していれば、公知の密閉式の容器を制限なく使用することができる。
密閉容器の素材としては、合成樹脂、金属等から適宜選択することができる。密閉容器の素材としては、内容物の視認性の観点から、合成樹脂が好ましい。
合成樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン(PE)などが挙げられる。
これらの中でも、合成樹脂としては、内容物の視認性及び汎用性の観点から、PP又はPEが好ましい。
密閉容器の容量は、取り扱いが良好であり、均一な混合物を得やすいという観点から、10mL以上500mL未満が好ましく、50mL以上400mL以下がより好ましく、100mL以上300mL以下が更に好ましい。
密閉容器としては、市販品を用いてもよい。
密閉容器の市販品の例としては、ニッコー・ハンセン(株)のPP製のクリアジャー(商品名:CJ−250、CJ−400、容量:250mL、400mL)が挙げられる。
PPクリアジャーは、PP製の容器と、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)製の中栓と、既述のPP製容器をねじ込みにより密閉することができるPP製のねじ式キャップと、を備える密閉容器である。
密閉容器における内容物の充填率は、特に限定されず、例えば、内容物の内壁への衝突による分散の効率性の観点から、50体積%〜90体積%が好ましい。
振動の周波数は、50Hz〜70Hzの範囲内であり、好ましくは55Hz〜65Hzの範囲内である。
振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であると、振動周波数が密閉容器の内容物の共振周波数に近くなり、振動による分散効率が向上する。
振動の加速度は、98m/s〜1962m/sの範囲内であり、好ましくは98m/s〜981m/sの範囲内であり、より好ましくは687m/s〜981m/sの範囲内であり、更に好ましくは785m/s〜981m/sの範囲内である。
振動の加速度が98m/s以上であることで、密閉容器の内容物が均一に混合され、かつ、可食性顔料の表面の少なくとも一部が可食性分散剤によって被覆されるため、可食性顔料の分散性が発現し得る。
また、振動の加速度が1962m/s以下であることで、密閉容器の内容物が過剰に分散されることによる可食性顔料の破砕物の凝集が生じ難いため、粗大粒子の発生を抑制し得る。
振動時間は、可食性顔料の濃度、可食性分散剤の種類、振動の加速度等により最適な時間が異なるため、一概に規定することはできない。
例えば、振動時間は、30秒間以上5分間以下とすることができる。
低周波処理は、例えば、低周波共振音響ミキサー(商品名:LabRAM-MIXER、Resodyn Acoustic Mixers, Inc.)を用いることにより行うことができる。
可食性顔料、可食性分散剤、及び水を容器に充填する順序は、特に限定されない。
例えば、分散性の観点からは、まず、可食性顔料を充填した後に可食性分散剤を充填し、次いで、水を充填することが好ましい。
工程Aが工程a2を含む場合、工程Aは、工程a2の後に、工程a2にて得られた混合物に対して分散処理を行う工程(以下、「工程a3」ともいう。)を更に含むことが好ましい。
(工程a3)
工程a3は、工程a2で得られた混合物に対して分散処理を行う工程である。
工程a3では、工程a2にて低周波処理により得られた混合物に対して、分散処理を行うことで、可食性分散剤で被覆された可食性顔料を解砕し、分散させる。
工程a3において、工程a2で得られた混合物に対して行う分散処理の方法は、特に限定されず、例えば、分散装置を用いる方法が挙げられる。
分散装置としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ソルトミル、アトライター、ロールミル(例えば、3本ロールミル)、タワーミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の分散装置が挙げられる。
工程a3における分散処理の方法としては、可食性顔料をより良好に分散させる観点から、ミル(所謂、粉砕機)を用いる方法が好ましく、分散メディア(所謂、分散媒体)を用いる方法、即ち、ボールミル、又はビーズミル(特に、循環型のビーズミル)を用いる方法がより好ましく、ボールミルを用いる方法が特に好ましい。
分散メディアは、被分散体を分散させるために用いられる分散媒体である。
工程a3における分散処理では、分散メディアとして、例えば、0.01mm〜3.0mm、好ましくは0.05mm〜1.5mm、より好ましくは0.1mm〜1.0mmの大きさ(即ち、メディア径)の、いわゆるビーズと称される粒体を用いることができる。
分散メディアとしては、特に限定されず、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の公知の分散メディアを適宜選択することができる。既述のとおり、以下では、分散メディアを「ビーズ」とも称する。
例えば、ボールミル又はビーズミルによる分散では、分散容器としてステンレス(SUS)製の容器を使用することが多い。ステンレス製の容器を使用すると、ステンレスの一成分であるクロムが分散物中に溶出し得るため、可食性の観点からは好ましいとはいえない。
このような観点から、工程a3における分散処理の方法がボールミルを用いる方法である場合には、分散容器の素材としては、合成樹脂が好ましい。
合成樹脂としては、PP、PET、PEN等のポリエステル樹脂、PEなどが挙げられる。これらの中でも、合成樹脂としては、汎用性の観点から、PP又はPEが好ましい。
分散時の回転数は、使用する装置によって適宜選択すればよく、特に限定されない。
例えば、分散装置としてボールミルを使用する場合は、分散容器の回転数(好ましくは、容器外縁部の回転数)を、100rpm(round per minute;以下同じ。)以上とすることが好ましく、200rpm以上とすることがより好ましく、300rpm以上とすることが更に好ましい。
分散容器の回転数を100rpm以上とすることで、分散メディアを容器の壁面に貼り付かせた状態で、分散メディアの微振動により、可食性顔料を粉砕することができる。これにより、可食性顔料同士の衝突による凝集を極力抑えた上で、可食性顔料を可食性分散剤で被覆しながら粉砕することができるため、粗大粒子のより少ない分散物を得ることができる。また、分散容器の回転数が低いと、分散メディアとしてジルコニアビーズを用いた場合に、ジルコニアビーズが分散物に与える衝撃が強くなるため、ジルコニウムが分散物中に溶出する可能性が生じ得る。しかし、分散容器の回転数が100rpm以上であると、ジルコニアビーズが分散物に与える衝撃力が抑えられるため、ジルコニウムが分散物中に溶出し難くなると考えられる。
分散容器の回転数の上限値は、特に限定されず、例えば、容器の破損及び液漏れ防止の観点から、500rpm以下とすることが好ましい。
分散時間は、可食性顔料の濃度、可食性分散剤の種類、分散メディアのメディア径等により最適な時間が異なるため、一概に規定することはできない。
例えば、分散時間は、3時間以上150時間以下とすることができる。
上記の工程Aが終了する前、又は工程A後であって下記の工程Bの前に、更に、可食性分散剤の一部を除去する工程Eを有していることが好ましい。即ち、
工程Aにおいて、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を混合して混合物を得る場合、可食性分散剤を過剰に加えておき、工程Aが終了する前、又は工程A後であって下記の工程Bの前に、可食性分散剤の一部を除去する工程Eを設け、例えば可食性顔料の分散に寄与しない不要な可食性分散剤を除去する態様が好ましい。
可食性分散剤を過剰に加えておくことにより、可食性顔料の表面への可食性分散剤の吸着を促進することができる。逆に、分散が終了した工程A後において、例えば工程Aで準備した混合物の保管時に、分散に寄与しない遊離の可食性分散剤が多く存在していると、可食性顔料の粒子間で可食性分散剤による橋架け凝集を招き、混合物の保存安定性が低下しやすくなる場合がある。かかる観点より、工程Aでの分散時には、可食性分散剤を過剰に入れて分散安定化を促進する一方、分散終了後には不要な可食性分散剤を除去することで、分散後の混合物の経時安定性を向上させることが可能になる。
工程Eの詳細については後述する。
可食性分散剤を過剰に加える場合、工程Aにおける可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率P(=可食性分散剤の含有量/可食性顔料の含有量)は、質量基準で下記の式Iを満たしていることが好ましい。
0.25<比率P<1.2 式I
工程Aにおける可食性分散剤の含有量の比率が0.25を超えていると、可食性顔料の量に対する可食性分散剤の量が、可食性顔料の分散の安定化により好適なものとなり、可食性顔料をより安定に分散させることができる。
中でも、工程Aにおける比率Pは、質量基準で0.40以上であることがより好ましい。工程Aにおける可食性分散剤の含有量の比率Pの上限は、既述した通り、1.2以下が好ましく、0.90以下がより好ましく、0.85以下が更に好ましい。
工程Aの中でも、工程a1〜工程a3の少なくとも一つにおいて、可食性分散剤を過剰に加えることが好ましく、中でも、工程a2及び工程a3の少なくとも一方において過剰の可食性分散剤を加える態様がより好ましく、更には工程a3において可食性分散剤を過剰に加える態様が好ましい。
<工程B>
工程Bは、工程Aにて準備した上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程である。
工程Bにおいて、以下、30MPa以上の静水圧を加えることを「高圧処理」と称する場合がある。
工程Bでは、工程Aにて準備した上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加えることで、可食性顔料(可食性分散剤による被覆が不足している可食性顔料を含む)が凝集した粒子(所謂、粗大粒子)の内部、即ち、粒子と粒子との間に、可食性分散剤を強制的に浸透させる。この内部に可食性分散剤が浸透した粗大粒子が、次工程である工程Cにおける分散処理により解砕されることで、可食性分散剤により過不足なく被覆された可食性顔料の粒子が形成される。
一方、粗大粒子の内部に可食性分散剤が浸透していない状態では、工程Cにおいて粗大粒子を砕いたとしても、砕かれた微粒子がすぐに再凝集するため、粗大粒子の低減を実現することは困難となる。
また、工程Bでは、工程Aにて準備した上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加えることで、混合物中に存在する微細な粒子同士が接触して固まり、粒子の大きさが全体的に均一化される傾向がある。粒子の大きさが全体的に均一化されると、分散物の安定性が良好となる。
工程Aにて準備した上記混合物に対して加える静水圧は、分散物中の粗大粒子をより低減する観点から、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは75MPa以上であり、更に好ましくは100MPa以上である。
静水圧の上限は、特に限定されず、例えば、200MPa以下が好ましい。
工程Aにて準備した上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える時間(「処理時間」ともいう。)は、静水圧の強さ、水の温度等により最適な時間が異なるため、一概に規定することはできないが、例えば、6時間以上が好ましく、15時間以上がより好ましく、18時間以上が更に好ましく、24時間以上が特に好ましい。
処理時間の上限は、特に限定されず、例えば、72時間以下が好ましい。
高圧処理は、室温(23℃)で行ってもよいし、工程Aにて準備した上記混合物に対して熱を加えながら行ってもよい。
例えば、分散物中の粗大粒子をより低減する観点からは、高圧処理は、工程Aにて準備した上記混合物に対して熱を加えながら行うことが好ましく、50℃以上の熱を加えながら行うことがより好ましく、70℃以上の熱を加えながら行うことが更に好ましい。
工程Bは、工程Aにて準備した上記混合物に対して、100MPa以上の静水圧を6時間以上加える工程である態様が好ましく、工程Aにて準備した上記混合物に対して、70℃以上の熱を加えながら、100MPa以上の静水圧を15時間以上加える工程である態様がより好ましい。
工程Aにて準備した上記混合物に対して、静水圧を加える方法としては、冷間等方加圧法が好適である。冷間等方加圧法では、工程Aにて準備した上記混合物に対して、混合物を撹拌させることなく静止状態で、混合物の温度を制御しながら、360°の方角から水を使用して圧力をかけることができる。
工程Aにて準備した上記混合物に対して、冷間等方加圧法により、30MPa以上の静水圧を加えることができる装置の市販品の例としては、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)が挙げられる。
なお、工程Bでは、粗大粒子をより低減する観点から、工程Aにて準備した上記混合物に対して、可食性分散剤を更に添加し、高圧処理を行うことが望ましい。
<工程C>
工程Cは、工程Bにて上記静水圧を加えた上記混合物に対して、分散処理を行う工程である。
工程Cでは、工程Bにて上記静水圧を加えた上記混合物に対して分散処理を行うことで、工程Bにて可食性分散剤を内部に浸透させた粗大粒子が解砕されて、可食性分散剤により過不足なく被覆された可食性顔料の粒子が形成される。
工程Cにおいて、工程Bにて上記静水圧を加えた上記混合物に対して行う分散処理の方法は、特に限定されず、例えば、分散装置を用いる方法が挙げられる。
分散装置としては、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ソルトミル、アトライター、ロールミル(例えば、3本ロールミル)、タワーミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の分散装置が挙げられる。
工程Cにおける分散処理の方法としては、可食性顔料をより良好に分散させる観点から、ミル(所謂、粉砕機)を用いる方法が好ましく、分散メディア(所謂、分散媒体)を用いる方法、即ち、メディアミルを用いる方法がより好ましく、ボールミル、又はビーズミル(特に、循環型のビーズミル)を用いる方法が更に好ましく、ボールミルを用いる方法が特に好ましい。
工程Cにおける分散処理では、分散メディアとして、例えば、0.01mm〜3.0mm、好ましくは0.05mm〜1.5mm、より好ましくは0.1mm〜1.0mmの大きさ(即ち、メディア径)の、いわゆるビーズと称される粒体を用いることができる。
分散メディアとしては、特に限定されず、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の公知の分散メディアを適宜選択することができる。
工程Cにおける分散処理の方法がボールミルを用いる方法である場合には、分散容器の素材としては、合成樹脂が好ましい。既述のとおり、一般にボールミル等における分散容器として使用されているSUS製の容器を使用すると、ステンレスの一成分であるクロムが分散物中に溶出し得るため、可食性の観点から好ましいとはいえないからである。
合成樹脂としては、PP、PET、PEN等のポリエステル樹脂、PEなどが挙げられる。これらの中でも、合成樹脂としては、汎用性の観点から、PP又はPEが好ましい。
分散時の回転数は、使用する装置によって適宜選択すればよく、特に限定されない。
例えば、分散装置としてボールミルを使用する場合は、分散容器の回転数(好ましくは、容器外縁部の回転数)を、50rpm以上とすることが好ましく、100rpm以上とすることがより好ましい。
分散容器の回転数を50rpm以上とすることで、被分散物の粘度が下がった状態でも容器の壁面への分散メディアの貼り付きが良好となり、分散メディアを容器の壁面に貼り付かせた状態で、分散メディアの微振動により、可食性顔料を粉砕することができる。これにより、可食性顔料同士の衝突による凝集を極力抑えた上で、可食性顔料を可食性分散剤で被覆しながら粉砕することができるため、粗大粒子のより少ない分散物を得ることができる。また、分散容器の回転数が低いと、分散メディアとしてジルコニアビーズを用いた場合に、ジルコニアビーズが分散物に与える衝撃が強くなるため、ジルコニウムが分散物中に溶出する可能性が生じ得る。しかし、分散容器の回転数が50rpm以上であると、ジルコニアビーズが分散物に与える衝撃力が抑えられるため、ジルコニウムが分散物中に溶出し難くなると考えられる。
分散容器の回転数の上限値は、特に限定されず、例えば、容器の破損及び液漏れ防止の観点から、500rpm以下とすることが好ましい。
分散時間は、可食性顔料の濃度、可食性分散剤の種類、分散メディアのメディア径等により最適な時間が異なるため、一概に規定することはできない。
例えば、分散時間は、3時間以上48時間以下とすることができる。
なお、分散処理は、例えば、常圧にて行われることが望ましい。
工程Aが、工程a3を含む場合、工程a3における分散処理と、工程Cにおける分散処理とは、分散条件(例えば、分散装置、分散メディア、及び分散容器の種類、メディア径、分散容器の回転数、分散時間等の条件)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
<工程D>
製造方法Aは、さらに工程Cが終了した後の分散物を、25℃でのpHが6.3以下になるように調整する工程Dを有することが好ましい。
上記の工程Aにおいて、分散が進行すると、可食性顔料として酸化鉄(例えば、三酸化二鉄)を用いた場合に分散物のpHが高くなる傾向がある。これは、酸化鉄の表面積が大きくなり、プロトンを受け取りやすくなるためと推察される。しかしながら、分散物のpHが6.3を越えて高くなり過ぎると、分散物中の粒子の粒子径が経時で大きくなりやすく、分散物自体の安定性が低下しやすい。したがって、分散物のpHを6.3以下に調整することにより、粒子径の小さい分散粒子が得られやすくなり、分散物の安定性を向上させることができる。
なお、ここでいう分散物とは、工程Cが終了した後の分散物を指し、製造方法Aにより、最終的に調製された分散物でもよい。分散物は、水を分散物の全質量に対して50質量%以上含む液体をいう。
pHを調整する工程Dは、最終的に調製される分散物のpHを6.3以下の範囲に調整することができる限り、上記の工程A、工程B、及び工程Cのうち、いずれの時期に設けられてもよい。最終的に得られる分散物のpHを6.3以下の範囲に調整し得る時期としては、分散処理を行う工程Cの前後が好ましく、中でも、分散後の粒子径の変化が生じにくく安定化しやすい点で、工程B後、かつ、工程Cの前がより好ましい。
工程Cのように分散処理を行う時期にpHが分散に適した範囲に調整されていると、分散処理を行った際に分散物中の分散粒子の粒子径がより小径化でき、分散の安定化を図ることができる点で好ましい。
少なくとも工程C後の分散物の25℃でのpHの範囲としては、更に6.2以下が好ましい。
また、少なくとも工程C後の分散物の25℃でのpHの下限値は、5.0以上であることが好ましい。
工程Dにおいて、pHを6.3以下に調整する方法としては、pHを下げる被対象物である混合物又は分散物に対し、例えば、酸剤、緩衝剤、又はプロトンを放出する化合物を添加することが挙げられる。
酸剤としては、無機又は有機のいずれの酸でもよい。有機酸としては、例えば、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等が挙げられ、無機酸としては、炭酸などが挙げられる。酸剤としては、インクジェット用インクを調製する場合の吐出安定性の点で、有機酸が好ましい。
緩衝剤としては、弱酸の塩が好適であり、例えば、クエン酸の塩、リンゴ酸の塩、酢酸の塩などが挙げられる。塩としては、例えば、アルカリ金属(例えばカリウム、ナトリウム)塩又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩が好ましい。緩衝剤は、分散物のpH変化を緩和して急激な変化を抑える役割を担うので、混合物又は分散物のpHをより安定的に保持することができる。
プロトンを放出する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
上記の中でも、工程Dにおいて、pHを6.3以下に調整する方法としては、pHを安定的に低く維持する観点から、酸を添加する方法、又は酸及び緩衝剤を添加する方法が好適であり、特に酸及び弱酸の塩(中でも、有機酸及び弱有機酸の塩)を添加する方法がより好ましい。
pHは、既述の測定方法により測定される値である。
<工程E>
製造方法Aは、上記の工程Aが終了する前、又は工程A後であって工程Bの前に、更に、可食性分散剤の一部を除去する工程Eを有していることが好ましい。工程Eを有することで、工程Dを有さない場合でも、最終的なpHを6.3以下に調整することができる。
製造方法Aでは、工程Eと工程Dとの両方を有する態様もpH調整の点で好適な方法として採用してもよい。
また、工程Eを有することは、分散液中の遊離の分散剤を除去することにより、架橋凝集等による経時変化が抑制されるため、安定性が良化する効果があり、好ましい。
工程Bは、工程Aにて準備した上記混合物に対して高圧処理を行う工程であり、工程Bで高圧処理がなされると、凝集した可食性顔料の粒子間に可食性分散剤が浸透して可食性分散剤の除去を行い難くなる。そのため、工程Eは、工程Bの前に設けられることが好ましい。
工程Aが終了する前とは、工程A中のいずれの時期でもよいことを意味し、例えば、上記の工程a1、工程a2もしくは工程a3と同時、又は、工程a1と工程a2との間、工程a2と工程a3との間、もしくは工程a3と工程bとの間等のいずれの時期でもよい。
中でも、工程a3の工程中、又は工程a3後であって工程Bの前(即ち、工程a3と工程bとの間)に、可食性分散剤の一部を除去する工程Eを有することが好ましい。
既述したように、工程Aで可食性分散剤を過剰に加えた場合、工程Aにおける可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率Pは、質量基準で下記の式Iを満たしていることが好ましい。
0.25<比率P<1.2 式I
この場合、可食性顔料の分散に寄与しない遊離の可食性分散剤が多く存在すると、例えば工程Bにおいて、可食性顔料の粒子間で可食性分散剤による橋架け凝集を招き、混合物の保存安定性が低下しやすくなる。そのため、工程Aでの分散時には可食性分散剤を過剰に入れて分散安定化を促進する一方、分散終了後には不要な可食性分散剤が除去されることが好ましい。これにより、分散後の混合物の経時安定性をより向上させることが可能になる。
即ち、工程A後において、可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率Qが、質量基準で下記式IIを満たしていることが好ましい。
0.05<比率Q<0.40 式II
可食性分散剤の含有量の比率Qが0.05を超えることで、可食性顔料の分散に必要な可食性分散剤の量を確保しつつ、可食性顔料の分散性をより良好に維持できる。また、可食性分散剤の含有量の比率Qが0.40未満であると、分散後の混合物の経時安定性がより向上する。
中でも、可食性分散剤の含有量の比率Qとしては、質量基準で、0.35以下であることがより好ましく、0.30以下であることが更に好ましく、0.25以下であることが特に好ましい。
<その他の工程>
本開示の製造方法Aは、必要に応じて、工程A、工程B、及び工程C以外のその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、本開示の工程A、工程B、及び工程Cの工程を経て得られた分散物を用いてインクを調製する工程が挙げられる。
以下、本開示の製造方法Aにおける各工程で用いられる成分について詳細に説明する。
〔可食性顔料〕
製造方法Aに用いる可食性顔料としては、特に限定されず、例えば、食品添加物として公知の顔料、及び医薬品添加物として公知の経口投与可能な顔料を制限なく用いることができる。
ここでいう「食品添加物」及び「医薬品添加物」の定義は、既述のとおりである。
可食性顔料の具体例としては、黒酸化鉄(IUPAC名:四酸化三鉄、Fe)、三酸化二鉄(IUPAC名:三酸化二鉄、Fe)、黄色三二酸化鉄(IUPAC名:三酸化二鉄・一水和物、Fe・HO)、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用緑色3号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ、酸化チタン、炭酸カルシウム、備長炭、竹炭等が挙げられる。
これらの中でも、製造方法Aに用いる可食性顔料としては、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキからなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料が好ましい。
製造方法Aに用いる可食性顔料としては、市販品を用いることができる。
可食性顔料の市販品の例としては、三二酸化鉄(商品名、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)、黒酸化鉄(商品名、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)、黄色三二酸化鉄(商品名、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)、食用青色2号アルミニウムレーキ(商品名、形状:粉末状、用途:食品添加物、ダイワ化成(株))等が挙げられる。
本開示の製造方法Aでは、可食性顔料を、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
〔可食性分散剤〕
製造方法Aに用いる可食性分散剤としては、特に限定されず、例えば、食品添加物として公知の分散剤、及び医薬品添加物として公知の経口投与可能な分散剤を制限なく用いることができる。
ここでいう「食品添加物」及び「医薬品添加物」の定義は、既述のとおりである。
製造方法Aに用いる可食性分散剤としては、樹脂が好ましい。
樹脂は、一般的に分散樹脂として用いられているものに限定されず、例えば、医薬品のコーティング剤として用いられている樹脂であってもよい。
可食性分散剤として用いられる樹脂としては、例えば、可食性顔料を安定に分散させ、分散物をインクジェット記録用インクに適用した場合に、インクの吐出性を向上させる観点から、アミノ基及び第4級アンモニウム基の少なくとも一方を含む樹脂が好ましい。
ここで、アミノ基とは、アンモニア、1級アミン、又は2級アミンから水素原子を除去した1価の官能基を意味する。
第4級アンモニウム基としては、第4級アンモニウムカチオン又は第4級アンモニウム塩が好ましい。
アミノ基を有する樹脂及び第4級アンモニウム基を有する樹脂は、いずれも複数のモノマーの共重合体であってもよい。アミノ基を有する樹脂及び第4級アンモニウム基を有する樹脂が共重合体である場合、モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキルアンモニウム塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等を共重合させた共重合体であってもよい。
モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸トリメチルアンモニウムエチル又はメタクリル酸トリメチルアンモニウムエチルの塩、アクリル酸トリエチルアンモニウムエチル又はメタクリル酸トリエチルアンモニウムエチルの塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどが挙げられる。
アミノ基を有する樹脂としては、ゼラチン、アミノアルキルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
ゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等が挙げられる。
既述の可食性顔料が、黒酸化鉄、三酸化二鉄等の酸化鉄である場合には、ゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチンが好ましい。
ゼラチンの市販品の例としては、新田ゼラチン(株)のアルカリ処理ゼラチン等が挙げられる。
アミノアルキルメタクリレート共重合体としては、市販品である、エボニック社のオイドラギット(登録商標) E100、及びオイドラギット(登録商標) EPO(いずれも、メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体)等が挙げられる。
第4級アンモニウム基を有する樹脂としては、第4級アンモニウム基を含む(メタ)アクリル系共重合体が好ましく、第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体(即ち、アンモニオアルキル(メタ)アクリレートコポリマー)がより好ましい。
第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体(アンモニオアルキル(メタ)アクリレートコポリマー)としては、少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構造単位と(メタ)アクリル酸アルキルアンモニウム塩に由来の構造単位とを含む共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから選ばれる少なくとも一つのモノマーに由来の構造単位と(メタ)アクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルに由来の構造単位とを含む共重合体がより好ましい。
第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体の具体例としては、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等を挙げることができる。
アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体としては、市販品である、オイドラギット(登録商標)RLPO、オイドラギット(登録商標)RSPO、オイドラギット(登録商標)RL100、オイドラギット(登録商標)RS100等が挙げられる。
その他、可食性分散剤としては、例えば、リグノセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ビートサポニンシラノール等の高分子化合物が挙げられる。
本開示の製造方法Aでは、可食性分散剤を、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
〔水〕
本開示の製造方法Aにおいて、水は、分散媒として機能する。分散媒として水を用いることは、安全性の観点から好ましい。
水としては、特に制限はなく、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等を使用することができる。
これらの中でも、水としては、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、又は超純水が好ましい。
〔他の成分〕
本開示の製造方法Aでは、発明の効果を損なわない範囲で、可食性顔料、可食性分散剤、及び水以外の他の成分を用いてもよい。
他の成分は、経口摂取が可能な化合物から適宜選択することができる。他の成分の具体例は、後述する他の成分と同様であるため、ここでは説明を省略する。
[製造方法Aにより得られる分散物の用途]
本開示の製造方法Aにより得られる分散物(以下、分散物Aともいう。)は、従来の方法により得られる分散物と比較して、粗大粒子の少ない。粗大粒子が少ない分散物Aは、例えば、インクジェット記録用インクに適用した場合には、ノズルの詰まりが生じ難く、インクジェットヘッドからの吐出性に優れる。したがって、本開示の製造方法Aにより得られる分散物Aは、例えば、インクジェット記録用途に好適である。
本開示の製造方法Aにより得られる分散物Aをインクジェット記録用途に用いる場合、分散物自体をインクジェット記録用インクとして用いてもよい。
また、本開示の製造方法Aにより得られる分散物Aに、既述の成分以外の他の成分を更に加えた上で、インクジェット記録用インクとして用いてもよい。
本開示の製造方法Aにより得られる分散物Aをインクジェット記録用途に用いる場合に、分散物Aに更に加えてもよい他の成分は、経口摂取が可能な化合物から適宜選択することができる。
他の成分としては、水溶性有機溶剤、界面活性剤、キレート剤、防黴剤、乳化安定剤、褪色防止剤、防腐剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤等のうち、経口摂取が可能な公知の可食性添加剤が挙げられる。
水溶性有機溶剤は、インクジェット記録装置における噴射ノズルのインク吐出口でのインクの付着乾燥によって発生し得る目詰まりを防止する乾燥防止剤として機能し得る。
本明細書において、「水溶性有機溶剤」とは、25℃の水100gに対して、5g以上(好ましくは10g以上)溶解する有機溶剤を意味する。
水溶性有機溶剤としては、乾燥防止の観点から、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましく、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等の可食性アルコールが挙げられる。プロピレングリコール及びグリセリンは、入手が容易で、かつ、保湿性に優れたインクとすることができる点で好ましい。
界面活性剤は、製造方法Aにより得られる分散物Aの表面張力を適正な範囲に調整することができるため、インク吐出性を向上させることができる。
界面活性剤としては、コハク酸モノグリセリド、ダイズサポニン、エリスリトール、キラヤサポニン、バリウム塩化物水和物、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等)などの可食性の界面活性剤が挙げられる。
また、本開示の製造方法Aにより得られる分散物Aをインクジェット記録用途に用いる場合、分散物は、フラボノイド化合物、ラウリン酸プロピレングリコール、ローズマリー化合物、ジオレイン酸プロピレングリコール、グリセリン二酢酸エステル、リン酸水素二ナトリウム、ステアリルモノグリセリジル、クエン酸エステル、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グアーガム、アミロペクチン、ペクチン、クマリンドガム、キサンタンガム、メタリン酸カリウム、酵素処理大豆サポニン、動物性ステロール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸等の可食性添加剤を含んでいてもよい。
これらの可食性添加剤は、単独で用いてもよいし複数種を併用してもよい。
本開示の製造方法Aにより得られる分散物Aは、経口摂取される固形の食品、医薬品(例えば、錠剤、カプセル剤等の固形製剤)などの物品に対する、インクジェット法を利用した印字又は印画に、特に好適に用いることができる。
インクジェット法を利用した印字又は印画によれば、食品又は医薬品の表面に接触することなく印字又は印画を行えるため、食品又は医薬品の剤形又は形状に依らず、安定的に記録することができる。
固形製剤としては、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠等のほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠等の医薬品が挙げられる。
なお、本開示の製造方法Aにより得られる分散物は、食品又は医薬品のみならず、固形肥料、衛生用品等、経口摂取を目的としない固形物に対するインクジェット記録にも適用することができる。
[インクジェット記録用顔料分散物]
本開示に係る第2の実施形態は、1.0体積%以上の可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び厚みが5μmのスペーサを備えた光路長可変セルを用いて測定した粒子径分布において、検出頻度の体積累積が10%になる粒子径D10(以下、単に「D10」ともいう。)、検出頻度の体積累積が50%になる粒子径D50(以下、単に「D50」ともいう。)、及び検出頻度の体積累積が90%になる粒子径D90(以下、単に「D90」ともいう。)が、下記の式(A1)及び式(B1)を満たすインクジェット記録用顔料分散物である。
50 ≦ 0.5μm ・・・式(A1)
(D90−D10)/D50 ≦ 1.0 ・・・式(B1)
以下、上記実施形態のインクジェット記録用顔料分散物を、単に「顔料分散物B」ともいう。
可食性インクは、経口摂取する食品、医薬品等の印字又は印画に用いられるという用途に鑑みると、より少ない塗布量で十分な色濃度を再現できることが望ましい。少量で十分な色濃度を再現できる可食性インクとするためには、液中に可食性顔料を高濃度で分散させることが必要となる。
しかし、一般に、可食性顔料の原料粉末は、その粒子径が大きく、また、可食性顔料の分散に使用される可食性分散剤は、可食性顔料の表面への吸着が十分ではない。そのため、可食性インク中における可食性顔料の濃度が高いと、可食性顔料の粗大粒子が多く存在しやすくなり、インクジェット記録用インクに適用した場合には、インク吐出性が悪化する。そのため、可食性顔料を高濃度で含有する可食性インクを実現することは困難であった。
これに対し、本発明者らは、従来よりも可食性顔料の濃度が1.0体積%以上と高く、粗大粒子が少なく、かつ、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性に優れる、可食性インクとして好適な顔料分散物(即ち、顔料分散物B)を実現した。
ところで、従来、顔料濃度が1.0体積%以上の顔料分散物の場合、希釈することなく粒子径分布を測定することは困難であった。本発明者らは、このような顔料濃度が高い顔料分散物の原液のままでの測定を可能とした。
粒子径分布の測定方法としては、動的光散乱法、レーザー回折/散乱法等による測定方法が知られている。例えば、動的光散乱法では、粒子がブラウン運動していないと測定することができない。また、動的光散乱法は、原理的に粘度の影響を受ける。そのため、動的光散乱法では、顔料濃度が高い顔料分散物の場合、希釈した上で測定に供する必要がある。しかし、顔料分散物を希釈してしまうと、粗大粒子が見え難くなる等、高濃度の状態での正確な粒子径分布を測定することができない。また、レーザー回折/散乱法では、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折/散乱光の強度分布パターンから計算によって粒子径分布を求める。レーザー回折/散乱法では、後方広角散乱光及び前方広角散乱光(セルの透過散乱光)のデータが必要であるため、透過光が得られるまで試料液を希釈して、せん断しながら計測する必要があり、顔料濃度が高い顔料分散物の測定は厳しい。
これに対し、本発明者らは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いるレーザー回折/散乱法による測定方法に、ある特定の構造を有する光路長可変セルを組み合わせることで、顔料濃度が高い顔料分散物における粒子径分布を、顔料分散物を希釈することなく原液のままで測定することを可能とした。
光路長可変セルは、本発明者らが開発した、試料液の光路長を調整することができるセルであり、光路長を狭くすることで、顔料濃度が高い顔料分散物を希釈せずに、レーザー光の透過光を十分な強度で得ることが可能となる。
〔光路長可変セル〕
以下、本開示の光路長可変セルの概要について、図面(図1〜図3)を参照しながら説明する。
図1は、本開示の光路長可変セルの斜視図である。図2は、図1の光路長可変セルの構成を示す分解図であり、図3は、図1の光路長可変セルの断面図である。
図1〜図3に示すように、光路長可変セル1は、金属製の冶具10(10A及び10Bで構成される)と、2枚のガラス板20(20A、20B)と、スペーサ30とを備えている。光路長可変セル1は、2枚のガラス板20A及び20B用いてスペーサ30を挟み、スペーサ30を挟んだ2枚のガラス板20A及び20Bを、スクリュー固定型の冶具10A及び10Bで固定することにより形成される。ガラス板20Bには、小さな2つの穴(図示せず)が空いており、冶具10(10A及び10B)による固定後に、一方の穴から試料液を注入する。注入された試料液は、2枚のガラス板20(20A、20B)とスペーサ30とにより形成された空間に拡がる。
光路長可変セル1では、スペーサの厚みを変えることで、光路長を調整することができる。そのため、顔料濃度が高い場合であっても、スペーサ30の厚みを狭くすることで、レーザー光の透過光を十分な強度で得ることができ、レーザー回折/散乱法による測定が可能となる。なお、本開示の顔料分散物における粒子径分布の測定では、厚み5μmのスペーサ30を使用している。
スペーサ30の素材は、特に限定されず、金属、樹脂等の素材が挙げられる。
本開示の顔料分散物Bは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び厚みが5μmのスペーサを備えた既述の光路長可変セルを用いて測定した粒子径分布において、D10、D50及びD90が、下記の式(A1)及び式(B1)を満たし、好ましくは、下記の式(A1)及び式(B2)を満たすか、或いは、下記の式(A2)及び式(B1)を満たし、より好ましくは、下記の式(A2)及び式(B2)を満たす。
50 ≦ 0.5μm ・・・式(A1)
50 ≦ 0.1μm ・・・式(A2)
(D90−D10)/D50 ≦ 1.0 ・・・式(B1)
(D90−D10)/D50 ≦ 0.5 ・・・式(B2)
(D90−D10)/D50の値は、粒子径分布が狭いほど小さい値を示す。
ここで、D10、D50及びD90は、それぞれ、レーザー回折/散乱により測定した粒度の体積累積分布(%)において、粒子径の小さい方から10%となるときの粒子径、粒子径の小さい方から50%となるときの粒子径、及び粒子径の小さい方から90%となるときの粒子径を指す。
本開示の顔料分散物Bは、上記の式(A1)及び式(B1)を満たす、即ち、分散粒子の粒子径が小さく、かつ、粒子径分布が狭いため、可食性顔料の濃度が1.0体積%以上と高いにもかかわらず、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性に優れる。
本開示の顔料分散物Bにおいて、可食性顔料は、可食性分散剤と混合して分散されることにより、可食性顔料の表面の少なくとも一部が可食性分散剤により被覆された状態となって、顔料分散物B中に分散されて存在している。
上記の式(A1)及び式(B1)を満たすことは、可食性顔料の分散にとって必要な量の可食性分散剤が、可食性顔料の表面を過不足なく被覆しており、可食性顔料の粗大粒子及び遊離の可食性分散剤が少ないことを示している。
以下、本開示の顔料分散物Bにおける各成分について詳細に説明する。
〔可食性顔料〕
本開示の顔料分散物Bは、可食性顔料を含有する。
可食性顔料としては、特に限定されず、例えば、食品添加物として公知の顔料、及び医薬品添加物として公知の経口投与可能な顔料を制限なく用いることができる。
ここでいう「食品添加物」及び「医薬品添加物」の定義は、既述のとおりである。
顔料分散物Bが含有する可食性顔料の具体例としては、本開示の製造方法Aの説明にて例示した可食性顔料が挙げられ、好ましい態様も製造方法Aに用いる可食性顔料と同様である。
顔料分散物Bが含有する可食性顔料としては、本開示の製造方法Aに用いる可食性顔料の説明にて例示した市販品を用いることができる。
本開示の顔料分散物Bは、可食性顔料を、1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
本開示の顔料分散物B中における可食性顔料の含有率は、特に限定されず、例えば、印字又は画像の形成に適した着色濃度を得やすいという観点から、顔料分散物Bの全質量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上が更に好ましい。
本開示の顔料分散物B中における可食性顔料の含有率の上限は、特に限定されず、例えば、分散状態が安定しやすく、インクジェット法による吐出に適した粘度に調整しやすいという観点から、顔料分散物の全質量に対して、20質量%以下が好ましい。
本開示の顔料分散物Bにおける可食性顔料の濃度は、顔料分散物Bの全体積に対して、1.0体積%以上であり、1.5体積%以上が好ましく、2.0体積%以上がより好ましく、2.5体積%以上が更に好ましく、3.0体積%が特に好ましい。
本開示の顔料分散物Bにおける可食性顔料の濃度の上限は、特に限定されず、例えば、最終的に得られる分散物の分散状態が安定しやすく、インクジェット法による吐出に適した粘度に調整し易いという観点から、顔料分散物Bの全体積に対して、10体積%以下が好ましい。
〔可食性分散剤〕
本開示の顔料分散物Bは、可食性分散剤を含有する。
可食性分散剤としては、特に限定されず、例えば、食品添加物として公知の分散剤、及び医薬品添加物として公知の経口投与可能な分散剤を制限なく用いることができる。
ここでいう「食品添加物」及び「医薬品添加物」の定義は、既述のとおりである。
顔料分散物Bが含有する可食性分散剤としては、樹脂が好ましい。
顔料分散物Bが含有する可食性分散剤としては、製造方法Aに用いる可食性分散剤が適用でき、その好ましい態様も製造方法Aに用いる可食性分散剤と同様である。
本開示の顔料分散物Bは、可食性分散剤を、1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
本開示の顔料分散物B中における可食性分散剤の含有率は、特に限定されず、例えば、顔料分散物の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。
また、本開示の顔料分散物B中における可食性分散剤の含有率の上限は、特に限定されず、例えば、顔料分散物の全質量に対して、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
本開示の顔料分散物B中における可食性分散剤の含有率が、顔料分散物Bの全質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下であると、最終的に得られる分散物の分散状態が安定しやすく、インクジェット法による吐出に適した粘度に調整し易い。
本開示の顔料分散物B中における可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率(可食性分散剤の含有量/可食性顔料の含有量)は、質量比で、0.1以上1.5以下が好ましく、0.2以上1.2以下がより好ましく、0.3以上1.0以下が更に好ましい。
なお、ここでいう「可食性分散剤の含有量」とは、顔料分散物B中において、可食性顔料を被覆している可食性分散剤と、可食性顔料を被覆せずに液中に遊離している可食性分散剤と、の合計量を指す。
本開示の顔料分散物B中における可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率(可食性分散剤の含有量/可食性顔料の含有量)が、質量比で、0.1以上であると、可食性顔料の量に対する可食性分散剤の量が可食性顔料の分散に適切な量となるため、可食性顔料をより安定に分散させることができ、顔料分散物Bをインクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性をより向上し得る。
一般に、分散剤の量が多くなると分散粒子の粒子径を小さくしやすい。しかし、その一方で、分散粒子が分散しにくくなる傾向がある。このような観点から、本開示の顔料分散物中における可食性顔料の含有量に対する可食性分散剤の含有量の比率(可食性分散剤の含有量/可食性顔料の含有量)は、質量比で、1.5以下に抑えることが好ましい。1.5以下に抑えることで、可食性顔料をより良好に分散させることができ、顔料分散物Bをインクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性をより向上し得る。
〔水〕
本開示の顔料分散物Bは、水を含有する。
本開示の顔料分散物Bにおいて、水は、分散媒として機能する。分散媒として水を用いることは、安全性の観点から好ましい。
顔料分散物Bが含有する水としては、特に制限はなく、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等を使用することができる。
顔料分散物に含有される水としては、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、又は超純水が好ましい。
顔料分散物B中における水の含有率は、特に限定されず、例えば、顔料分散物Bの保存安定性の観点から、顔料分散物Bの全質量に対して、60質量%以上95質量%以下が好ましく、65質量%以上90質量%以下がより好ましく、70質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
なお、本開示の顔料分散物Bは、本発明の効果を損なわない範囲で、水以外の他の溶剤(例えば有機溶剤)を含んでいてもよい。
<顔料分散物Bの用途>
本開示の顔料分散物Bは、インクジェット記録用途に用いられる。
本開示の顔料分散物Bは、従来よりも顔料濃度が高いため、少量で十分な色濃度を再現することができる。また、本開示の顔料分散物Bは、粗大粒子が少ないため、インクジェット記録用インクに適用した場合には、インクジェットヘッドからの吐出性に優れる。さらに、本開示の顔料分散物Bは、良好な分散安定性を有し、分散後に経時で粒子の分散状態が悪くなり難いため、インクジェットヘッドからの吐出性が損なわれ難い。
本開示の顔料分散物Bをインクジェット記録用途に用いる場合、顔料分散物自体をインクジェット記録用インクとして用いてもよい。
また、本開示の顔料分散物Bに、既述の成分以外の他の成分を更に加えた上で、インクジェット記録用インクとして用いてもよい。
本開示の顔料分散物Bをインクジェット記録用途に用いる場合に、顔料分散物Bに更に加えてもよい他の成分は、経口摂取が可能な化合物から選択することができる。
他の成分としては、水溶性有機溶剤、界面活性剤、キレート剤、防黴剤、乳化安定剤、褪色防止剤、防腐剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤等のうち、経口摂取が可能な公知の可食性添加剤が挙げられる。
水溶性有機溶剤は、インクジェット記録装置における噴射ノズルのインク吐出口でのインクの付着乾燥によって発生し得る目詰まりを防止する乾燥防止剤として機能し得る。
本明細書において、「水溶性有機溶剤」とは、25℃の水100gに対して、5g以上(好ましくは10g以上)溶解する有機溶剤を意味する。
顔料分散物Bに更に加えてもよい水溶性有機溶剤としては、乾燥防止の観点から、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましく、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等の可食性アルコールが挙げられる。プロピレングリコール及びグリセリンは、入手が容易で、かつ、保湿性に優れたインクとすることができる点で好ましい。
本開示の顔料分散物Bが水溶性有機溶剤を含有する場合、顔料分散物中における水溶性有機溶剤の含有率は、顔料分散物の全質量に対して、10質量%以上50質量%以下が好ましい。
界面活性剤は、顔料分散物Bの表面張力を適正な範囲に調整することができるため、インク吐出性を向上させることができる。
顔料分散物Bに更に加えてもよい界面活性剤としては、コハク酸モノグリセリド、ダイズサポニン、エリスリトール、キラヤサポニン、バリウム塩化物水和物、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等)などの可食性の界面活性剤が挙げられる。
本開示の顔料分散物Bが界面活性剤を含有する場合、顔料分散物中における界面活性剤の含有率は、顔料分散物Bの全質量に対して、0.05質量%以上0.5質量%以下が好ましい。
また、本開示の顔料分散物Bは、フラボノイド化合物、ラウリン酸プロピレングリコール、ローズマリー化合物、ジオレイン酸プロピレングリコール、グリセリン二酢酸エステル、リン酸水素二ナトリウム、ステアリルモノグリセリジル、クエン酸エステル、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グアーガム、アミロペクチン、ペクチン、クマリンドガム、キサンタンガム、メタリン酸カリウム、酵素処理大豆サポニン、動物性ステロール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸等の可食性添加剤を含んでいてもよい。
これらの可食性添加剤は、単独で用いてもよいし複数種を併用してもよい。
本開示の顔料分散物Bは、経口摂取される固形の食品、医薬品(例えば、錠剤、カプセル剤等の固形製剤)などの物品に対する、インクジェット法を利用した印字又は印画に、特に好適に用いることができる。
インクジェット法を利用した印字又は印画によれば、食品又は医薬品の表面に接触することなく印字又は印画を行えるため、食品又は医薬品の剤形又は形状に依らず、安定的に記録することができる。
固形製剤としては、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠等のほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠等の医薬品が挙げられる。
なお、本開示の顔料分散物は、食品又は医薬品のみならず、固形肥料、衛生用品等、経口摂取を目的としない固形物に対するインクジェット記録にも適用することができる。
<顔料分散物Bの好ましい物性>
本開示の顔料分散物Bは、可食性顔料の濃度を1.0体積%以上とし、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び既述の光路長可変セル(スペーサの厚み:5μm)を用いて測定した半導体レーザー光(波長:650nm)の光透過率が、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上である。
上記の方法にて測定される顔料分散物Bの光透過率は、顔料分散物B中に粗大粒子が少ないほど、また、粒子径が全体的に小さいほど、高値を示す傾向がある。上記の方法にて測定される顔料分散物Bの光透過率が40%以上であると、顔料分散物Bをインクジェット記録用インクに適用した場合に、優れたインク吐出性を実現しやすい。
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置としては、例えば、(株)HORIBAのPartica LA−960(製品名)を使用する。
本開示の顔料分散物Bは、23℃における粘度が、10mPa・s以下であることが好ましい。
顔料分散物Bの粘度は、可食性顔料が可食性分散剤によって過不足なく被覆されており、可食性顔料を被覆していない余剰の可食性分散剤(所謂、遊離の可食性分散剤)が少ないほど低値を示す傾向がある。23℃における顔料分散物Bの粘度が10mPa・s以下であると、ろ過性が良好となるため、生産性が向上し、かつ、顔料分散物をインクジェット記録用インクに適用した場合に、優れたインク吐出性を実現しやすい。
なお、上記の顔料分散物Bの粘度は、振動式粘度計を用いて測定される値である。振動式粘度計としては、例えば、CBC社のVM−10A(製品名)を使用する。
本開示の顔料分散物BのpHは、特に限定されず、例えば、可食性顔料の分散安定性の観点から、4以上9以下が好ましく、5以上7以下がより好ましい。
なお、上記の顔料分散物のpHは、既述の測定方法により測定される値である。
[インクジェット記録用顔料分散物の製造方法]
本開示の第3の実施形態であるインクジェット記録用顔料分散物の製造方法は、既述の顔料分散物Bを製造できればよく、特に制限されるものではない。
以下、本開示の顔料分散物Bの好ましい製造方法の一例について説明する。
本開示の一実施形態であるインクジェット記録用顔料分散物の製造方法(以下、「本開示の製造方法B」ともいう。)は、密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、混合物を得る工程(以下「工程X1」ともいう。)と、上記混合物に対して、第1の分散処理を行う工程(以下、「工程X2」ともいう。)と、上記第1の分散処理を行った上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程(以下、「工程X3」ともいう。)と、上記静水圧を加えた上記混合物に対して、第2の分散処理を行う工程(以下、「工程X4」ともいう。)と、を含む。
従来、経口摂取する食品、医薬品等に直接、印字又は印画するための可食性素材を使用した可食性インクの製造方法では、一般的に、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、ホモジナイザー等が用いられてきた。例えば、既述の特開2015−000968号公報、特開2009−149719号公報、及び特開2015−140414号公報においても、ビーズミルを用いて可食性インクを製造している。可食性インクは、経口摂取する食品、医薬品等の印字又は印画に用いられるという用途に鑑みると、より少ない塗布量で十分な色濃度を再現できることが望ましい。少量で十分な色濃度を再現できる可食性インクとするためには、液中に可食性顔料を高濃度で分散させることが必要となる。しかし、一般に、可食性顔料の原料粉末は、その粒子径が大きく、また、可食性顔料の分散に使用される可食性分散剤は、可食性顔料の表面への吸着が十分ではない。そのため、可食性インク中における可食性顔料の濃度が高いと、可食性顔料の粗大粒子が多く存在しやすくなり、インクジェット記録用インクに適用した場合には、インク吐出性が悪化する。また、液中に可食性顔料を高濃度で分散させた場合、分散した可食性顔料が経時で凝集し易い。
これに対して、本開示の製造方法Bは、特定の分散方法を組み合わせることにより、従来よりも可食性顔料の濃度が高く、粗大粒子が少なく、かつ、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性に優れる、可食性インクとして好適な既述の顔料分散物Bを容易に製造することを可能とした。
以下、本開示の製造方法Bにおける各工程について詳細に説明する。
なお、各工程で用いる成分の具体例、及び好ましい態様については、上述の顔料分散物Bの項に記載したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
<工程X1>
工程X1は、密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、混合物を得る工程である。既述のとおり、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器の内容物を振動させて混合することを「低周波処理」と称する場合がある。
工程X1の詳細は、製造方法Aにおける工程a2と同様であり、工程a2の項において説明した事項は、工程X1においても同様に適用される。
工程X1における各成分の混合量については、既述の顔料分散物Bに含有される量に見合う量とすることができる。なお、顔料分散物B中の粗大粒子をより低減する観点からは、可食性分散剤は、工程X1と工程X3とに分けて使用することが望ましい。
<工程X2>
工程X2は、工程X1で得られた混合物に対して、第1の分散処理を行う工程である。
工程X2では、工程X1にて低周波処理により得られた混合物に対して、第1の分散処理を行うことで、可食性分散剤で被覆された可食性顔料を解砕し、分散させる。
工程X2の詳細は、製造方法Aにおける工程a3と同様であり、製造方法Aの工程a3の項において説明した事項は、製造方法Bの工程X2においても同様に適用される。
<工程X3>
工程X3は、工程X2にて第1の分散処理を行った上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程である。
製造方法Aにおける工程(B)と同様、工程X3において30MPa以上の静水圧を加えることを「高圧処理」と称する場合がある。
工程X3では、工程X2にて第1の分散処理を行った上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加えることで、可食性顔料(可食性分散剤による被覆が不足している可食性顔料を含む)が凝集した粒子(所謂、粗大粒子)の内部、即ち、粒子と粒子との間に、可食性分散剤を強制的に浸透させる。この内部に可食性分散剤が浸透した粗大粒子が、次工程である工程X4における第2の分散処理により解砕されることで、可食性分散剤により過不足なく被覆された可食性顔料の粒子が形成される。
一方、粗大粒子の内部に可食性分散剤が浸透していない状態では、工程X4において粗大粒子を砕いたとしても、砕かれた微粒子がすぐに再凝集するため、粗大粒子の少ない顔料分散物を実現することは困難となる。
また、工程X3では、工程X2にて第1の分散処理を行った上記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加えることで、混合物中に存在する微細な粒子同士が接触して固まり、粒子の大きさが全体的に均一化される傾向がある。粒子の大きさが全体的に均一化されると、分散物の安定性が良好となる。
工程X3の詳細は、製造方法Aにおける工程Bと同様であり、製造方法Aの工程Bの項において説明した事項は、製造方法Bの工程X3においても同様に適用される。
なお、工程X3では、粗大粒子をより低減する観点から、工程X2にて第1の分散処理を行った上記混合物に対して、可食性分散剤を更に添加し、高圧処理を行うことが望ましい。
<工程X4>
工程X4は、工程X3にて静水圧を加えた上記混合物に対して、第2の分散処理を行う工程である。
工程X4では、工程X3にて静水圧を加えた上記混合物に対して第2の分散処理を行うことで、工程X3にて可食性分散剤を内部に浸透させた粗大粒子が解砕されて、可食性分散剤により過不足なく被覆された可食性顔料の粒子が形成される。
工程X4の詳細は、製造方法Aにおける工程Cと同様であり、製造方法Aの工程Cの項において説明した事項は、製造方法Bの工程X4においても同様に適用される。
工程X2における第1の分散処理と、工程X4における第2の分散処理とは、分散条件(例えば、分散装置、分散メディア、及び分散容器の種類、メディア径、分散容器の回転数、分散時間等の条件)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
<その他の工程>
本開示の製造方法Bは、必要に応じて、工程X1、工程X2、工程X3、及び工程X4以外のその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、本開示の顔料分散物Bを用いてインクを調製する工程が挙げられる。
[インクジェット用インク組成物]
本開示に係る第4の実施形態は、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキから選ばれる2種以上の可食性顔料と、アミノ基及び4級アンモニウム基の少なくとも一方を含み、可食性顔料の少なくとも一部を被覆する可食性分散剤(以下、特定分散剤と称することがある)と、水と、を含み、顔料濃度が3質量%〜20質量%であるインクジェット用インク組成物であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び光路長可変セルを用いて測定した可食性顔料の平均粒子径が500nm以下である。
上記のインクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物C」と称することがある)の作用機構は明らかではないが、以下のように考えている。
インク組成物Cは、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキから選ばれる可食性顔料のうち、少なくとも2種を含む。
既述のように、可食性顔料の分散性を向上させ、かつ、粗大粒子の発生を抑制することが困難であったところ、本開示におけるインク組成物Cは、互いに異なる2種以上の可食性顔料を含む場合であっても、インク組成物Cがアミノ基及び4級アンモニウム基の少なくとも一方を含み、可食性顔料の少なくとも一部を被覆する分散剤(特定分散剤)を含むことで、インク組成物Cにおける物性の異なる複数種の顔料の分散性が良好となり、経時的な顔料の凝集による分散性の低下、顔料の凝集に起因する粗大粒子の生成が抑制されると考えている。
従って、インク組成物Cは、顔料濃度が3質量%〜20質量%であっても、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置、具体的には、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−960((株)堀場製作所)及び光路長可変セルを用いて測定したインク組成物に含まれる顔料の平均粒子径が500nm以下に抑えられる。
従来、顔料の含有量が高いインク組成物の場合、顔料の粒子径を測定するためには、インク組成物を希釈してセルに充填して測定することが一般的であり、顔料を含むインク組成物を希釈することなく粒子径分布を測定することは困難であった。しかし、今回、本発明者らは、希釈せずに粒子径分布を測定する方法を見出し、本開示におけるインク組成物Cを測定したところ、希釈しない原液でも軟凝集等による粗大粒子が見られないことが確認できた。即ち、本開示におけるインク組成物Cは、2種以上の可食顔料を含み、顔料が高濃度で含まれる希釈を行わない原液の状態であっても、軟凝集を起こさないことが確認できた。なお、平均粒子径の測定方法については後述する。
以下、本発明の一実施形態であるインクジェット用インク組成物(インク組成物C)に含まれる各成分について詳細に説明する。
−黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキから選ばれる2種以上の可食性顔料−
本開示におけるインク組成物Cは、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキから選ばれる2種以上の可食性顔料を被分散物として含む。以下、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキから選ばれる可食性顔料を、「特定可食性顔料」と総称することがある。
また、以下では、特定可食性顔料に包含される4種の顔料を、それぞれ、「可食黒酸化鉄顔料」若しくは単に「黒酸化鉄顔料」、「可食三二酸化鉄顔料」若しくは単に「三二酸化鉄顔料」、「可食黄色三二酸化鉄顔料」若しくは単に「黄色三二酸化鉄顔料」、又は、「可食青色2号レーキ顔料」若しくは単に「青色2号レーキ顔料」とも称する。
インク組成物Cが2種以上の特定可食性顔料を含むことで、インク組成物Cの色相の選択の幅が拡がり、より良好な色相、外観を有するインク組成物となる。
本開示における特定可食性顔料について説明する。
(可食黒酸化鉄顔料)
可食黒酸化鉄顔料(IUPAC名:四酸化三鉄、Fe)は、乾燥粉の状態で黒色の鉄の酸化物であり、四酸化三鉄(Fe)を主成分として含むことが好ましい。黒酸化鉄顔料は複数の組成が考えられるところ、本明細書における「主成分」とは、酸化鉄全量中に占めるFeの比率が50質量%以上であることを指す。なかでも、酸化鉄全量中に占めるFeの比率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。黒酸化鉄顔料は、医薬品用として上市されている黒酸化鉄を用いてもよい。市販品としては、例えば、黒酸化鉄(商品名、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成(株))が挙げられる。
(可食三二酸化鉄顔料)
可食三二酸化鉄顔料(IUPAC名:三酸化二鉄、Fe)は、天然鉱物である赤鉄鉱の主成分であり、別名ベンガラ(弁柄)として知られる赤褐色を呈する顔料である。医薬品添加物としても認可されている。市販品としては、例えば、三二酸化鉄(商品名、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成(株))が挙げられる。
(可食黄色三二酸化鉄顔料)
可食黄色三二酸化鉄顔料(IUPAC名:三酸化二鉄・一水和物、Fe・HO)は、天然鉱物である赤鉄鉱の主成分であり、黄褐色を呈する顔料である。医薬品添加物としても認可されている。市販品としては、KISHI黄色三二酸化鉄顔料(商品名、形状:粉末状、平均粒子径0.3μm、最大径0.7μm、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成(株))等が挙げられる。
(可食青色2号レーキ顔料)
可食青色2号レーキ顔料は、食用色素である青色2号をアルミニウム塩と反応させ、不溶性とした顔料であり、インジゴカルミンアルミニウムレーキとも称される。食品添加物として認可されている。市販品としては、青色2号ALレーキ(商品名、形状:粉末状、用途:食品添加物、ダイワ化成(株))等が挙げられる。
インク組成物Cは、既述の特定可食性顔料のうち2種以上を含む。
2種以上の特定可食性顔料の組み合わせは任意であり、例えば、黒酸化鉄顔料に他の顔料を組み合わせて目視による黒色の色相を改良したり、2種以上の互いに異なる色相の特定可食性顔料を組み合わせて所望の色相に調整したりすることができる。
以下に好ましい可食性顔料の組み合わせを挙げるが、組み合わせは以下の例に限定されない。
インク組成物Cは、例えば、可食性顔料として、三二酸化鉄顔料及び黒酸化鉄顔料の少なくとも1種と、青色2号レーキ顔料と、を含むことができる。
インク組成物Cが、三二酸化鉄顔料及び黒酸化鉄顔料のうち少なくとも1種と、青色2号レーキ顔料と、を含む場合の含有量の比率としては、三二酸化鉄顔料及び黒酸化鉄顔料の総含有量をAとし、青色2号レーキ顔料の含有量をBとしたとき、A/Bが2/3〜1/10の範囲であることが、人間が好ましいと感じられる黒い色を再現できるという観点から好ましく、A/Bは、2/5〜1/8の範囲であることがより好ましく、2/7〜1/6の範囲であることがさらに好ましい。
また、インク組成物Cは、例えば、可食性顔料として、黄色三二酸化鉄顔料と、青色2号レーキ顔料と、を含むことができる。
インク組成物Cが、黄色三二酸化鉄顔料と、青色2号レーキ顔料と、を含む場合の含有量の比率としては、黄色三二酸化鉄顔料の含有量をCとし、青色2号レーキ顔料の含有量をBとしたとき、C/Bが2/3〜1/5の範囲であることが、人間が好ましいと感じられる緑色を再現できるという観点から好ましく、C/Bは、2/3.5〜1/4の範囲であることがより好ましく、1/2〜1/3の範囲であることがさらに好ましい。
さらに、インク組成物Cは、例えば、可食性顔料として、三二酸化鉄顔料と、黄色三二酸化鉄顔料と、を含むことができる。
インク組成物が。三二酸化鉄顔料と、黄色三二酸化鉄顔料と、を含む場合の含有比率としては、三二酸化鉄顔料の含有量をDとし、黄色三二酸化鉄顔料の含有量をCとしたとき、D/Cが1/2〜1/5の範囲であることが、人間が好ましいと感じられるオレンジ色を再現できるという観点から好ましく、D/Cは、1/2.5〜1/4.5の範囲であることがより好ましく、1/3〜1/4の範囲であることがさらに好ましい。
〔その他の可食性顔料)
インク組成物Cには、既述の特定可食性顔料に加え、効果を損なわない範囲において、特定可食性顔料に加えて、特定可食性顔料以外の、その他の可食性顔料を含むことができる。
インク組成物Cが含みうるその他の可食性顔料としては、特に限定されず、例えば、食品添加物として公知の顔料、及び医薬品添加物として公知の経口投与可能な顔料が挙げられ、これらを目的に応じて適宜選択して用いることができる。
ここでいう「食品添加物」とは、既述のとおり、食品添加物公定書第8版に記載の食品添加物を指す。
その他の可食性顔料としては、例えば、赤酸化鉄、食用赤色2号アルミニウム(AL)レーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用緑色3号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、酸化チタン、竹炭、備長炭などの可食性顔料が挙げられる。
可食性顔料の市販品としては、赤色3号ALレーキ(ダイワ化成(株)、食品添加物)、酸化チタン(和光純薬工業(株)、医薬品グレード)等の可食性顔料が挙げられる。
(特定可食性顔料の平均粒子径)
インク組成物Cに含まれる被分散物である特定可食性顔料は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び光路長可変セルを用いて測定した顔料の平均粒子径が500nm以下である。
平均粒子径の測定は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−960(製品名:(株)堀場製作所)及び光路長可変セル((株)堀場製作所)を用いて測定することができる。
インク組成物Cに含まれる特定可食性顔料の平均粒子径は200nm以下であることが好ましく、50nm以上170nm以下の範囲であることがより好ましく、70nm以上150nm以下の範囲であることがさらに好ましい。
インク組成物Cに含まれる特定可食性顔料の平均粒子径が上記範囲であることで、顔料の分散性が良好となり、粗大粒子が存在せず、吐出性が良好なインク組成物となる。
また、特定可食性顔料の色相を所望の範囲とする目的で粒子径を選択することができる。
例えば、黒酸化鉄顔料の色相をより黒色に近づける観点からは、粒子径は、200nm以上400nm以下の範囲とすることができ、250nm以上350nm以下の範囲が好ましい。
また、既述の方法にて、特定可食性顔料の粒子径を測定した際に、インク組成物Cに含まれる特定可食性顔料の全量(総含有量)に対する、粒子径が500nm以上の粗大粒子の含有量は1頻度未満であることが好ましい。即ち、平均粒子径が500nm以下、好ましくは200nmである場合において、インク組成物C中に粗大粒子の含有量を1頻度未満とすることで、インク組成物Cをインクジェット記録方法に適用した場合、粗大粒子の存在に起因する吐出不良が抑制され、良好な吐出性が維持されるためである。
なお、粗大粒子の含有量を低減させる方法としては、例えば、後述するように、インク組成物の製造に際し、特定分散剤と特定可食性顔料と水とに振動を付与して予め混合物を作製し、その後、分散処理を行う方法が挙げられる。この方法によれば、特定可食性顔料の顔料粒子表面の少なくとも一部が特定分散剤により強固に被覆され、微細な顔料粒子の再凝集に起因する粗大粒子の生成を効果的に抑制することができる。
なお、特定可食性顔料の平均粒子径は、インク組成物Cに含まれる特定可食性顔料の平均粒子径であり、後述する分散剤が特定可食性顔料表面の少なくとも一部に付着した状態の特定可食性顔料の粒子径を指す。
(特定可食性顔料の平均粒子径の測定方法)
インク組成物Cにおける特定可食性顔料の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び光路長可変セルを用いて測定した値を用いている。
従来、顔料濃度が3質量%以上であるインク組成物の場合、希釈することなく粒子径分布を測定することは困難であった。そこで、本発明者らは、特定の構造を有する光路長可変セルを組み合わせることで、顔料濃度が高いインク組成物を希釈することなく、原液のままで粒子径分布を測定することを可能とした。
既述のとおり、光路長可変セルは、試料液の光路長を、スペーサを用いて適宜調整することができるセルであり、本発明者らにより開発された。光路長可変セルを用いることにより、顔料濃度が高いインク組成物を希釈しなくても、光路長を狭く調整することにより、セル内のレーザーの透過光を十分な強度で得ることを可能とし、正確な測定が可能となる。
光路長可変セルを用いること以外は、公知のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて、インク組成物Cにおける分散された特定可食性顔料の平均粒子径及び粒度分布を測定することができる。レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置としては、例えば、(株)HORIBAのPartica LA−960(製品名)を使用する。
〔光路長可変セル〕
本開示の光路長可変セルの構成及び光路長可変セルを用いた測定の概要は、図面(図1〜図3)を参照して、既述したとおりである。
本開示のインク組成物Cにおいて、特定可食性顔料は、特定分散剤と混合して分散されることにより、可食性顔料の表面の少なくとも一部が特定分散剤により被覆された状態となって、顔料分散物中に分散されて存在している。
このため、既述の測定方法により測定した特定可食性顔料の平均粒子径が500nm以下であることは、特定可食性顔料の分散にとって必要な量の特定分散剤が、特定可食性顔料の表面を過不足なく被覆しており、特定可食性顔料の分散性が良好であり、特定可食性顔料の粗大粒子の生成が抑制されていることを示している。
インク組成物Cは、特定可食性顔料は2種のみを含有してもよく、3種以上を含有してもよい。
インク組成物C中における特定可食性顔料の含有率、即ち、2種以上含まれる特定可食性顔料の総含有率は、3質量%〜20質量%であり、3.5質量%〜15質量%が好ましく、4質量%〜10質量%がより好ましい。
特定可食性顔料の含有率が上記範囲において、インク組成物Cにより画像を形成際に適切な着色濃度の画像が得られやすく、インク組成物をインクジェット記録方法に適用した場合の吐出性に優れる。
−アミノ基及び4級アンモニウム基の少なくとも一方を含み、顔料の少なくとも一部を被覆する分散剤(特定分散剤)−
特定可食性顔料の分散に用いる分散剤としては、アミノ基及び第4級アンモニウム基の少なくとも一方を有する分散剤が用いられる。分散剤は、既述の特定可食性顔料の少なくとも一部を被覆することで、特定可食性顔料のインク組成物C中における安定な分散に寄与する。
特定分散剤は、経口投与可能なインク組成物に用いられることから、医薬品添加物として経口投与可能な分散剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
医薬品添加物として経口可能な分散剤としては、例えば、「医薬品添加物事典2007」(編集:日本医薬品添加剤協会、2007年7月25日第1刷発行)及び「医薬品添加物事典2016」(編集:日本医薬品添加剤協会、2016年2月第1刷発行)等において経口投与可能と記載されている分散剤が挙げられる。
以下、インク組成物Cに含まれる特定可食性顔料について説明する。
インク組成物Cに含まれる特定可食性顔料は、アミノ基及び第4級アンモニウム基の少なくとも一方を有する分散剤によって表面の少なくとも一部が被覆されることにより、特定可食性顔料の分散安定性が良好となり、インク組成物としての吐出性に優れる。この効果は、特定可食性顔料が金属酸化物粒子或いは金属を含むレーキ顔料であることでより顕著となる。
これは、特定分散剤が有するアミノ基及び第4級アンモニウム基が、特定可食性顔料と静電的な相互作用を形成したり、金属酸化物又は金属レーキに含まれる官能基と水素結合性の相互作用を形成したりして、特定分散剤が、特定可食性顔料の表面に吸着し易くなるためと考えられる。
特に、第4級アンモニウム基は、金属酸化物粒子の表面との静電的な相互作用による吸着力が強く、さらに第4級アンモニウム基を含む特定分散剤により表面の少なくとも一部が被覆された特定可食性顔料の粒子間には荷電反発作用が働き、分散を安定化させる効果がより高くなると考えられる。この効果は、特定可食性顔料として酸化鉄粒子を用いた場合により顕著となる。
特定分散剤は、アミノ基及び第4級アンモニウム基の少なくとも一方を有する分散剤の中から特定可食性顔料の分散に適した化合物を選択すればよい。本明細書における特定分散剤は、一般的な分散剤として知られているもののみならず、例えば、医薬品のコーティング剤として用いられる高分子化合物から適切な化合物を選択して用いることもできる
特定分散剤が含むことができるアミノ基は、アンモニア、1級アミン、又は2級アミンから水素原子を除去した1価の官能基を意味し、これらのいずれであってもよい。
特定分散剤が含むことができる第4級アンモニウム基は、第4級アンモニウムカチオン又は第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
特定分散剤は、複数のモノマーの共重合体であってもよい。即ち、アミノ基及び第4級アンモニウム基の少なくとも一方を有するモノマーと、アミノ基及び第4級アンモニウム基のいずれも含まないモノマーとの共重合体とすることができる。この場合、共重合成分であるアミノ基及び第4級アンモニウム基のいずれをも含まないモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができ、これらのモノマーを共重合成分として含む共重合体であってもよい。
以下に、特定分散剤に含まれ得るモノマーの具体例を挙げるが、以下の記載に限定されない。
アミノ基及び第4級アンモニウム基の少なくとも一方を有するモノマーとしては、アクリル酸トリメチルアンモニウムエチル又はメタクリル酸トリメチルアンモニウムエチルの塩、アクリル酸トリエチルアンモニウムエチル又はメタクリル酸トリエチルアンモニウムエチルの塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
アミノ基及び第4級アンモニウム基のいずれをも含まないモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
アミノ基を有する高分子分散剤の例としては、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ゼラチン等が挙げられる。
アミノアルキルメタクリレート共重合体としては、市販品を用いることができる。市販品としては、エボニックジャパン(株)のオイドラギット(登録商標)E100、オイドラギットEPO(メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体)等を挙げることができる。
ゼラチンには、酸処理ゼラチン及びアルカリ処理ゼラチン等が挙げられるが、粒子の分散に用い得るゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチンが好ましい。アルカリ処理ゼラチンは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、新田ゼラチン(株)のアルカリ処理ゼラチン等を挙げることができる。
第4級アンモニウム基を有する高分子分散剤としては、第4級アンモニウム基を含む(メタ)アクリル系共重合体が好ましく、第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体(アンモニオアルキル(メタ)アクリレートコポリマー)がより好ましい。
第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体(アンモニオアルキル(メタ)アクリレートコポリマー)としては、少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構造単位と(メタ)アクリル酸アルキルアンモニウム塩に由来の構造単位とを含む共重合体が好適であり、更には、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから選ばれる少なくとも一つのモノマーに由来の構造単位と(メタ)アクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルに由来の構造単位とを含む共重合体がより好ましい。
第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体の具体例としては、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等を挙げることができる。
第4級アンモニウム基を有する高分子分散剤は市販品を用いてもよい。市販品としては、エボニックジャパン(株)のオイドラギット(登録商標)RLPO、オイドラギットRSPO、オイドラギットRL100、オイドラギットRL30D、オイドラギットRS100、オイドラギットRS30D等を挙げることができる。
第4級アンモニウム基を有する高分子分散剤の中でも、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体は特に好ましい。
特定分散剤は、常温(25℃)で固体であることが好ましく、40℃、100gの水に対する溶解度が3g以下であることが好ましい。粒子を分散処理する際に、特定分散剤が粒子の表面に吸着することによって粒子の分散性、及び分散安定性が得られる。特定分散剤の水への溶解性が低いことにより、分散媒中において、特定分散剤が粒子から水を含む分散媒へ脱離することを抑制し易くなる。このため、分散された粒子の再凝集を起こし難く、分散安定性がより向上する。特定分散剤は、水への溶解性が低いことが好ましいが、水膨潤性を有し、水に膨潤するものであってもよい。
インク組成物Cは、特定分散剤を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。また、異なる2種以上の特定可食性顔料を分散する際に、2種以上の特定可食性顔料の混合物を特定分散剤で分散して分散物を調製してもよく、特定可食性顔料を1種のみ有する分散物を予め調製し、それぞれをインク組成物Cに含有させてもよい。
なかでも、長期保存時の分散安定性の観点からは、インク組成物Cに含まれる2種以上の顔料の分散に用いられる分散剤が互いに同じ分散剤であることが好ましい。
ここで、「2種以上の顔料の分散に用いられる分散剤が互いに同じ分散剤である」とは、2種の特定可食性顔料の分散に用いられる分散剤が「同一」の分散剤を用いることを意味する。
インク組成物C中における特定分散剤の含有率としては、インク組成物の総量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2質量%未満が更に好ましい。
上記好ましい含有率の範囲内において、特定可食性顔料と特定分散剤との含有比率は、粒子の含有量をEとし、分散剤の含有量をFとしたとき、粒子の含有量に対する分散剤の含有量(F/E:質量比)は、下記式1を満たす範囲にあることが好ましい。
0.05<F/E<1.12 式1
−水−
インク組成物Cは、分散媒として水を含有する。
インク組成物Cが水を含むことで、インク組成物Cの生体適合性がより良好となり、可食に適するため好ましい。水としては、不純物が少ないという観点から、イオン交換水、純水、超純水などを用いることができる。なお、イオン交換水と同等の純度を有する水であれば上記に限定されない。
水の含有量には、特に制限はないが、インク組成物Cの保存安定性がより良好となるという観点から、インク組成物の全質量に対して、15質量%以上88質量%以下が好ましく、20質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上55質量%以下がさらに好ましい。
−その他の分散媒−
インク組成物Cは、インク組成物の保湿性がより良好となる点で、高沸点有機溶媒を含有することが好ましい。
高沸点有機溶媒としては、沸点が150℃以上の有機溶媒が挙げられる。高沸点溶媒としては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、可食用途に適することから、プロピレングリコール、グリセリン等の可食性アルコールが好ましい。
インク組成物Cが、高沸点有機溶媒を含有する場合の含有率としては、インク組成物Cの全質量に対して、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
インク組成物Cは、高沸点溶媒を、1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
水、高沸点溶媒等を含むインク組成物Cにおける分散媒の総含有率としては、インク組成物Cの全質量に対して、16質量%以上89質量%以下が好ましく、8質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
インク組成物Cは、特定可食性顔料、特定分散剤及び水を含む分散媒に加え、効果を損なわない範囲において、目的に応じて種々の添加剤(以下、他の成分と称することがある)を含むことができる。
他の成分として、例えば、特定可食性顔料以外の色材、特定分散剤以外の高分子成分及び界面活性剤、キレート剤、防黴剤、乳化安定剤、褪色防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤等が挙げられる。
なお、インク組成物を経口投与する成分への印刷に用いる場合には、他の成分もまた、経口投与が可能な化合物から選択することが好ましい。
既述の特定可食性顔料及び、任意に含むことができる既述の他の可食顔料以外の色材としては特に制限はなく、従来公知の合成食用色素、天然食用色素から適宜選択することができる。インク組成物を経口投与可能なものとするためには、可食性の色材を用いればよい。
粒子以外の色材である合成食用色素及び天然食用色素としては、特開2015−3883号公報の段落番号[0013]〜[0014]に記載の色材のうち、特定可食性顔料に包含されない色材を適宜選択して用いることができる。
インク組成物Cが含むことができる特定分散剤以外の高分子成分には特に制限はない。
高分子成分としては天然樹脂が好ましい。インク組成物を経口投与可能なものとするためには、高分子成分として可食性の高分子成分を選択すればよい。天然樹脂としては、パームヤシ類等が挙げられる。他の樹脂成分として、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ビートサポニンシラノール等が挙げられる。分散剤以外の高分子成分は、例えば、インク組成物の粘度調整などに使用することができる。
特定分散剤以外の高分子成分を添加する場合の含有率としては、インク組成物の全質量に対して、0.3質量%以上15質量%以下が好ましい。
特定分散剤以外の界面活性剤は、インク組成物Cの表面張力を適正な範囲に調整するために用いることができ、インクジェット法で吐出する際のインク組成物Cの吐出性をより向上させるために有用である。
分散剤以外の界面活性剤としては、コハク酸モノグリセリド、ダイズサポニン、エリスリトール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニン、バリウム塩化物水和物、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、等が挙げられる。
例えば、ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドが約20分子縮合したポリソルベート類(ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル)が挙げられる。ポリソルベート類の例としては、脂肪酸の違いから例えば、ポリソルベート20(ラウリン酸エステル)、ポリソルベート60(ステアリン酸エステル)、ポリソルベート80(オレイン酸エステル)、ポリソルベート65(ステアリン酸エステル)等が挙げられる。
界面活性剤を添加する場合の含有率としては、インク組成物Cの全質量に対して、0.01質量%以上3.0質量%以下が好ましい。
また、インク組成物Cを可食用途に使用する場合には、さらに、以下の可食性添加剤を含んでいてもよい。
インク組成物Cが含んでもよい可食性添加剤の例として、フラボノイド化合物、ラウリン酸プロピレングリコール、ポリビニル、ローズマリー化合物、ジオレイン酸プロピレングリコール、グリセリン二酢酸エステル、リン酸水素二ナトリウム、ステアリルモノグリセリジル、クエン酸エステル、ピロリン酸四ナトリウム、アエロジル(登録商標:エボニック社製、フュームドシリカ粒子)、ポリリン酸ナトリウム、グアーガム、アミロペクチン、ペクチン、クマリンドガム、キサンタンガム、メタリン酸カリウム、酵素処理大豆サポニン、動物性ステロール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で用いてもよいし複数種を併用してもよい。
インク組成物CのpH(25℃)としては、特に制限はないが、粒子の分散安定性により優れる観点から、pHは9以下が好ましく、7以下がより好ましく、4以上が好ましく、5以上がより好ましい。
インク組成物CのpHは、既述の測定方法により測定される値である。
<インク組成物Cの製造方法>
既述のインク組成物Cの製造方法には特に制限はないが、以下に示す本開示における第5の実施形態であるインク組成物の製造方法(以下、「製造方法C」ともいう。)により製造されることが好ましい。
本開示における製造方法Cは、可食黒酸化鉄顔料、可食三二酸化鉄顔料、可食黄色三二酸化鉄顔料、及び可食青色2号レーキ顔料から選ばれる2種以上の可食性顔料と、アミノ基及び4級アンモニウム基の少なくとも一方を含み、顔料の少なくとも一部を被覆する分散剤と、水と、を密閉容器内に充填し、密閉容器を振動させながら混合して混合物を得る工程(以下「工程Y1」ともいう。)と、得られた混合物に含まれる顔料の少なくとも一部を粉砕し、かつ、顔料を分散してインク組成物を得る工程(以下「工程Y2」ともいう。)と、を含み、密閉容器内に充填された顔料の合計質量が、密閉容器内の充填物の全質量に対して3質量%〜20質量%であるインクジェット用インク組成物の製造方法である。
以下、本開示におけるインク組成物の製造方法Cについて工程順に説明する。
−工程(Y1)−
工程(Y1)では、特定可食性顔料と、特定分散剤と、水とを密閉容器内に充填し、密閉容器を振動させながら混合して混合物を得る。
密閉容器内に充填された2種以上の特定可食性顔料の合計質量は、密閉容器内に充填される物質の全質量に対して、3質量%〜60質量%であり、5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましい。
工程(Y1)では、特定可食性顔料と、特定分散剤と、水とを密閉容器内に充填するに際し、密閉容器内に充填された特定可食性顔料と特定分散剤との合計質量は、密閉容器内の充填質の全質量に対して、4質量%〜90質量%であることが好ましく、6質量%〜75質量%が好ましく、12質量%〜60質量%がより好ましい。
密閉容器内の特定可食性顔料と特定分散剤との合計含有量が上記範囲であることで、密閉容器内における固体と液体とのバランスが良好となり、分散処理前の混合物の調製において、特定可食性顔料と特定分散剤とが十分に混合され、密に接触することで、引き続き行われる分散処理において近傍に存在する特定分散剤が特定可食性顔料表面に吸着しやすくなり、得られるインク組成物における顔料の分散性、分散安定性がより良好となり、吐出性に優れたインク組成物を得ることができる。
特定可食性顔料、特定分散剤及び水を充填した密閉容器は振動を与えられ、密閉容器内に充填された物質が混合されて混合物が調製される。
なお、密閉容器内に充填される各成分の詳細は、既述のインク組成物Cの説明にて説明した通りである。
工程Y1に用いる密閉容器としては、既述の製造方法Aにおける工程a2に用いる密閉容器と同様であり、製造方法Aにおける工程a2の工程において密閉容器について説明した事項は、工程Y1においても同様に適用される。
既述のように、工程(Y1)において、密閉容器内に充填される特定可食性顔料の量をEとし、分散剤の量をFとしたとき、特定可食性顔料の量に対する分散剤の量(F/E:質量比)は下記式1を満たすことが好ましい。
0.05<F/E<1.12 式1
なお、インク組成物Cに含まれる特定分散剤の含有量Fは、インク組成物中において、特定可食性顔料を被覆している特定分散剤と、特定可食性顔料に吸着せず分散媒中に遊離している特定分散剤との合計量を指す。
式1において、F/Eが0.05以上であると、固形分である特定可食性顔料の量に対する特定分散剤の量が適切な範囲となり、混合物を調製した後、分散処理する際の分散性がより良好となる。特定分散剤の質量比が多くなると分散される特定可食性顔料の粒子径を小さくし易いが、その一方で、分散し難くなる傾向がある。そのため、F/Eを1.12以下に抑えることが好ましい。上記範囲において、分散し易く、かつ、得られたインク組成物の分散性の経時安定性がより良好となる混合物が調製される。
なお、F/Eとしては、上記と同様の理由から、下記式2を満たす範囲がより好ましく、下記式3を満たす範囲が更に好ましい。
0.1≦F/E≦1 式2
0.1≦F/E≦0.7 式3
なお、容器に各成分を投入する順には特に制限はない。特定可食性顔料と特定分散剤とを、より良好な条件で接触させ得るという観点からは、容器内にまず特定可食性顔料を投入し、次に特定分散剤を投入し、その後、分散媒である水を投入することが好ましい。
工程(Y1)では、特定可食性顔料、特定分散剤、水、及び所望により含有させるその他の成分を充填した密閉容器を振動させて、内容物の混合物を調製する。分散処理に先立ち、低周波であり、かつ、高加速度で各成分を充填した密閉容器を振動させることで、密閉容器内において特定可食性顔料と分散剤とが均一に混合される。さらに、振動が付与されることにより、特定可食性顔料と分散剤との接触がより密に頻度高く行われることで、得られた混合物中の特定可食性顔料は、十分に分散剤と接触され、より分散性に優れると考えられる。
工程(Y1)において密閉容器を振動させる際に、密閉容器に与える振動の周波数は30Hz〜90Hzであり、40Hz〜80Hzが好ましく、50Hz〜70Hzがより好ましい。
一般に、超音波付与による混合の場合、周波数は少なくとも5Hz以上であり、通常は20kHz程度であるところ、本開示の製造方法Cでは、より低い周波数で振動させることで、振動の付与による特定可食性顔料の損傷が抑制される。
周波数が30Hz以上であることで、混合が十分に行なわれ、90Hz以下であると処理時の著しい発熱が抑制されるため好ましい。
また、工程(Y1)において振動の加速度は、98m/s以上1962m/s以下であり、294m/s以上が好ましく、490m/s以上がより好ましく、784m/s以上がさらに好ましい。
工程(Y1)における加速度は、1962m/s以下であり、1471.0m/s以下が好ましく、980.7m/s以下がより好ましい。
加速度は98m/s以上とすることで、混合が良好に行われ、好ましい。
また、得られるインク組成物Cにおける特定可食性顔料の分散性がより良好となるという観点からは、加速度は294m/s〜1471.0m/sが好ましく、490m/s〜980.7m/sがより好ましく、784m/s〜980.7m/sがさらに好ましい。
なお、工程(Y1)において、既述の周波数、加速度。及び後述の処理時間等の各条件は、使用する特定可食性顔料のサイズ、比重、硬さ及び特定分散剤の含有量、特定可食性顔料と分散剤との含有比率(F/E:質量比)によって、適宜、検討し、調整することが好ましい。
例えば、被分散物である顔料自体が、衝撃によりダメ−ジを受けて、高機能性が損なわれるものについては、加速度294m/s〜784m/sの範囲に設定することが好ましい。さらに、より破砕されやすいアルミニウム(AL)レーキ顔料等を被分散物とする場合、当初の粒子の粒径がミクロンサイズであり、この場合には、密閉容器に充填する特定可食性顔料の含有量(濃度)を下げることも併せて行うことが好ましい。既述の調整を行うことにより、引き続き行われる特定可食性顔料を分散する処理において過分散等の好ましくない事態の発生を抑制することが可能となる。
工程(Y1)において、密閉容器を振動させる時間は、10秒間〜5分間が好ましく、1分間〜4分間がより好ましく、2分間〜3分間がさらに好ましい。
また、工程(Y1)における温度条件としては、処理開始前温度(室温、より具体的には23℃〜28℃)に対して、処理後の温度が40℃未満であることが好ましい。既述の好ましい温度条件で振動処理を実施することで、熱による内容物の変質も抑制することができる。
既述のように、工程(Y1)において、密閉容器内に充填され、特定の条件で振動処理されることで、特定可食性顔料、特定分散剤、水、及び所望により含有されるその他の成分を含む均一な混合物が得られる。
なお、所望により含有されるその他の成分を含有させる時期は任意であり、工程(Y1)のみならず、後述する工程(Y)において含有されてもよく、工程(Y)の後で含有させてもよい。
−工程(Y2)−
工程(Y1)において、既述のようにして得られた少なくとも、特定可食性顔料、特定分散剤、及び水を含む混合物は、工程(Y2)において、混合物中に含まれる特定可食性顔料の少なくとも一部を粉砕し、かつ、特定可食性顔料を分散してインク組成物を得る。
工程(Y2)における特定可食性顔料の粉砕及び分散は、剪断力を付与し得る公知の装置を用いて行うことができる。剪断力を付与しうる装置としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、撹拌翼を有する撹拌装置等が挙げられる。
なお、工程(Y2)における「特定可食性顔料の少なくとも一部を粉砕し、かつ、特定可食性顔料を分散する」とは、一次粒子の少なくとも一部を粉砕し、かつ、粉砕物を分散させること、二次粒子の凝集を分解させ、一次粒子として分散させることのいずれも含む。
なお、特定可食性顔料の粉砕、分散処理に先立ち、混合物を水などの溶媒で希釈し、撹拌して特定可食性顔料の含有量をより少なくした粗分散液を調製する工程を行ってもよい。
工程(Y1)の後に、溶媒を添加して特定可食性顔料の濃度を下げることにより、顔料粒子間の距離を所望の程度に拡げ、特定可食性顔料への特定分散剤の吸着を促進することができ、さらに、分散物の流動性をより向上させ、液収率を上げることができる。また、容器内での乾燥(溶媒蒸発)による凝集物発生を抑制し、手振り程度の振とうにより、容易に混合物の分散性を良好な状態に戻すことができる、等の利点がある。このため、混合物を希釈すること、希釈した後に手振りなどにより低い圧力で振動を付与したり、低応力で撹拌したりして粗分散液を調製する工程を実施することが好ましい。
希釈は、例えば、分散媒として用いられる水などを添加して行うことができる。希釈後の特定可食性顔料の含有量は、その後の分散処理方法に応じて適切な値とすることが好ましい。例えば、特定可食性顔料をビーズミルなどで粉砕、分散処理する場合には、粗分散液における特定可食性顔料の含有率を1質量%〜10質量%の範囲とすることができる。
工程(Y2)では、工程(Y1)を経て得られた混合物又は混合物を希釈した粗分散液を用いて、特定可食性顔料を特定分散剤の存在下で、水を含む分散媒中において、粉砕、分散処理を行ない、表面の少なくとも一部が特定分散剤により被覆された特定可食性顔料の分散物であるインク組成物を調製する。
分散の条件は、混合物又はインク組成物が含有する特定分散剤の種類及び量、分散方法により調整することができる。
本開示におけるインク組成物の製造方法Bでは、十分に予備混合された混合物を用いて、特定分散剤の存在下で特定可食性顔料が分散され、これにより、特定可食性顔料の分散性、分散性の経時安定性が良好で吐出性に優れたインク組成物を得ることができる。既述の方法により得られたインク組成物では、特定可食性顔料表面に特定分散剤が強固に付着しており、経時後も、特定分散剤が特定可食性顔料より遊離して分散媒中に溶出することが抑制されるため、インク組成物をインクジェット記録方法により吐出した場合の吐出性及び吐出の経時安定性がより良好となる。
工程(Y2)において、特定分散剤の存在下、特定可食性顔料を、水を含む分散媒中に粉砕し、分散する。分散処理の条件を制御することによって、吐出性がより良好なインク組成物が得られる。
分散は公知の方法で行うことができ、例えば、分散メディア(分散媒体)を用いて特定可食性顔料を分散処理する方法が挙げられる。
即ち、工程((Y2)は、特定可食性顔料の分散性により優れる観点から、メディアミルを用いて特定可食性顔料の少なくとも一部を粉砕し、かつ、特定可食性顔料を分散する工程を含むことが好ましい。
メディアミルを用いた方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、タワーミル等を用いた方法が挙げられる。
これらの中でも、ボールミル、ビーズミル等を用いることが好ましく、循環型のビーズミル、又はボールミルを用いた方法がより好ましい。
メディアミルを用いる場合の分散の条件は、分散液とメディアとの体積比率、メディアの種類、メディアの粒径、分散時間等を調整すること、或は、後述するように、段階的に複数回の分散処理を行う複数段分散の場合の段数等を制御することで適宜、調節することができる。
工程(Y2)で用いる分散メディアは、被分散体である特定可食性顔料を分散させるために用いる分散媒体であり、0.03mm〜2.0mm程度の粒径の、いわゆるビーズと称される粒体をメディアとして用いることができる。メディアとしては、例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の公知の分散メディアを適宜選択することができる。既述のとおり、以下では、分散メディアを「ビーズ」と称することがある。
従来の分散方法である、既述の予備混合を行わず、ビーズを用いたボールミル分散のみを行なう場合は、低い回転数で容器を回転させることで、ビーズを容器の壁面から中心部へと移動させる際の衝撃を利用して顔料を粉砕していた。これに対して、本開示の製造方法Cにおける分散処理では、後述する如き容器を比較的速い回転数で回転させることで、遠心場によりビーズを容器の壁面に貼り付かせた状態でビーズの微振動により特定可食性顔料をマイルドに粉砕させる手法を用いている。
この手法を用いることにより、特定可食性顔料同士の衝突による凝集を極力抑えた上で、特定分散剤を特定可食性顔料表面に均一に被膜させながら粉砕させ、粗大粒子成分の少ないインク組成物の作製を可能としたと、本発明者らは考えている。
工程(Y2)において、ミルを用いて特定可食性顔料の粉砕及び分散を行う場合の回転数は、使用する装置により適宜選択すればよい。例えば、ボールミルを用いる場合は、容器回転数を50rpm(回転/分)以上2000rpm以下とすることができ、100rpm以上400rpm以下とすることがより好ましく、100rpm以上250rpm以下とすることがさらに好ましい。なお、工程(Y2)において、容器回転数とは、容器外縁部の回転数を指す。
工程(Y2)では、1回の粉砕、分散処理のみならず、複数の分散段階を組み合わせた複数段分散を行ってもよい。複数段分散を行う場合、互いに異なる条件の分散を複数回行うことが、特定可食性顔料を所望する平均粒径に調整しやすいため好ましい。
複数段分散によって分散物を調製する場合、第1の分散メディアを用いて特定可食性顔料を水中に分散させる第1の分散工程と、第1の分散メディアよりメディア径が小さい第2の分散メディアを用いて、第1の分散工程で分散された特定可食性顔料をさらに分散させる第2の分散工程と、を含む態様が好ましい。例えば、最初の分散工程(第1の分散工程)では、比較的直径の大きいビーズを使用して分散を行ない、次いで行う第2の分散工程では、メディア径を第1の分散メディアよりも小さくすることができる。
工程(Y2)では、異なる複数の分散条件で複数回分散する複数段分散を行う場合、例えば、異なる2つの分散条件で2回分散させる2段分散、異なる3つの分散条件で3回分散させる三段分散を行う方法が好適である。
複数段分散による場合、最初の第1の分散工程において、大きめのビーズで被分散物である特定可食性顔料の粒子径が著しく低下しない状態の分散物を形成し、次いで行う第2の分散工程では粒子径を制御しながら安定した分散状態の分散物を形成するといった方法をとることができる。
2段分散を行う場合、第2の分散工程で用いる第2の分散メディアのメディア径に対する、第1の分散工程で用いる第1の分散メディアのメディア径の比率は、5倍以上50倍以下であることが好ましい。ここでの比率が5倍以上であると、小径になり過ぎず、その後の第2の分散工程での分散作用が相俟って、分散性、及び分散の経時安定性が良好な分散物を得られる点で好ましい。また、比率が50倍以下であると、第1の分散メディアのメディア径が大き過ぎないため、最初の第1の分散工程での分散が良好に進みやすく、また第2の分散メディアのメディア径が小さ過ぎて小径化し過ぎることも抑え得る点で好ましい。
第2の分散メディアのメディア径に対する第1の分散メディアのメディア径の比率は、特定可食性顔料を、分散安定性の良好な適当な粒子径に調節しやすい観点から、5倍以上20倍以下であることがより好ましく、5倍以上15倍以下であることが更に好ましい。
工程(Y2)において、分散に用いる分散メディアのメディア径は、1段分散を行う場合、0.1mm以上2mm以下が好ましく、より好ましくは0.3mm以上1mm以下の範囲である。
2段分散を行う場合には、第1の分散工程での分散に用いる第1の分散メディアは、メディア径が0.5mm以上2mm以下であることが好ましく、0.8mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。次いで行う第2の分散工程において分散に用いる第2の分散メディアは、メディア径が0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましく、0.08mm以上0.15mm以下であることがより好ましく、0.08mm以上0.12mm以下であることがさらに好ましい。
工程(Y2)における分散時間は、混合物又は粗分散液における特定可食性顔料の含有量、分散剤の種類、メディア径等により最適な時間が異なるため一概に特定できないが、工程(B)における合計の分散時間として、5時間以上150時間以下が好ましい。分散時間が上記範囲であると、特定可食性顔料の平均粒子径が500nm以下の小径になって分散安定性が確保され、吐出性に優れたインク組成物を生産性よく得ることができる。
2段分散を行う場合、第1の分散工程では、分散時間を5時間以上120時間以下として分散を行い、第2の分散工程では、分散時間を1時間以上80時間以下として分散を行うことが好ましい。第1の分散工程では、分散時間を10時間以上70時間以下として分散を行い、第2の分散工程では、分散時間を5時間以上80時間以下として分散を行うことが好ましく、第2の分散工程における分散時間を30時間以上80時間以下として分散を行うことがより好ましい。
混合物又は粗分散液における特定可食性顔料の含有量は、1段分散を行う場合は、分散物の全質量に対して、0.1質量%〜10質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
また、2段分散を行う場合の特定可食性顔料の含有量は、第1の分散工程では、分散物の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下の範囲が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましく、3質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。第2の分散工程では、分散物の全質量に対して、0.1質量%以上3質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上3質量%以下の範囲がより好ましく、1質量%以上2.5質量%以下がさらに好ましい。第2の分散工程での特定可食性顔料の含有量が3質量%以下であることは、特定可食性顔料の分散安定性において特に好適である。
さらに、第1の分散工程では、特定可食性顔料の含有量を、分散物の全質量に対して3質量%以上10質量%以下として分散を行い、第2の分散工程では、特定可食性顔料の含有量を、分散物の全質量に対して0.1質量%以上3質量%以下として分散を行う態様が特に好ましい。
2段分散を行う場合、既述のとおり、2段分散後の最終的な特定可食性顔料の平均粒径は90nm以上500nm以下の範囲とされるが、1回目の分散終了後であり、かつ2回目の分散開始前における粒子の平均粒子径は、150nm以上400nm以下の範囲が好ましく、190nm以上400nm以下の範囲がより好ましい。
(その他の工程)
本開示におけるインク組成物の製造方法Cにおいては、既述の工程(Y1)、工程(Y2)、更に所望により行われる混合物を希釈する工程に加え、効果を損なわない範囲において、さらに、その他の工程を有していてもよい。
例えば、さらに、工程(A)を経て得られた混合物又は工程(Y2)を経て得られた分散物を高圧処理する工程を有していてもよい。
本開示の製造方法Cにおいて、さらに、高圧処理を行うことにより、破砕した微粒子の凝集体の生成抑制、及び微粒子への分散剤の吸着促進が達成され、かつ、粒子への分散剤の被覆がより良好となり、粒子の分散がより安定化する効果を得ることができる。
高圧処理は、混合物又は分散物に高圧力を付与して、被処理物を殺菌させたり、反応させたり、分散を進行させたりする処理であり、製造方法Cにおける高圧処理とは、50MPa以上の圧力を付与する処理を指す。
製造方法Cにおける高圧処理は、公知の方法で行うことができる。
製造方法Cにおいて、高圧処理するには、容器内に混合物又は分散物を投入し、50MPa〜100MPaの静水圧を付加する高圧加工処理装置にて処理する。高圧処理は、好ましくは、液温50℃〜90℃の温度条件にて、10時間〜36時間かけて行うことが好ましい。
高圧加工処理装置としては、東洋高圧(株)製、超高圧加工処理装置(まるごとエキス)が挙げられる。
一方、製造方法Cにおいては、高圧ホモジナイザー等を用いる高圧処理を行うことができる。この場合の高圧処理は、高圧ホモジナイザー等を用いる高圧処理は、混合物又は分散物に高圧力を付与して、特定可食性顔料をさらに微細に粉砕し、分散させたり、分散をさらに進行させたりする処理である。
高圧ホモジナイザーは、攪拌方式と比べて高圧力を付与できるために、特定可食性顔料の微細化が可能であり、種々の装置が市販されている。
高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、スターバースト((株)スギノマシン製)等のチャンバー型高圧ホモジナイザー、又は、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等の均質バルブ型高圧ホモジナイザーが挙げられる。
製造方法Cにおいて、高圧ホモジナイザーを用いた乳化条件としては、分散性(微細化)の観点から、圧力は100MPa以上とし、より好ましくは150MPa以上であることが好ましい。高圧側の限界は市販の装置では耐圧性の観点から300MPa以下であることが好ましいが、温度上昇の観点からは、水性媒体中の分散においては400MPa以下にすることもできると推定される。
製造方法Cにおいて、所望により実施される高圧処理は1回のみ行なってもよく、2回以上の高圧処理を行ってもよい。
本開示におけるインク組成物の製造方法Cにより得られたインク組成物Cは、被分散物である特定可食性顔料の分散性が良好であり、かつ、経時による粘度の変動が抑制された吐出性に優れたインク組成物であるため、各種のインクジェット記録法に好適に使用される。
なかでも、被分散物である特定可食性顔料を高濃度で含む場合でも、分散安定性が良好で、粘度の経時による変化が抑制されることから、吐出性に優れたインク組成物としてインクジェット記録方法に好適に適用される。
本開示におけるインク組成物の製造方法Cにより得られたインク組成物Cは、経口摂取される食品又は医薬品(例えば、錠剤又はカプセル剤等の固体製剤)などの物品に対して画像を形成するためのインクジェット用インクとして好適である。画像の形成にインクジェット記録方法を利用する場合、インクジェット記録装置を用いて、例えば錠剤の表面に対して非接触で画像を形成できるので、錠剤の剤形又は形状に依らず、安定的に記録できる。
被記録媒体の例である固体製剤としては、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠などが挙げられる。さらに、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠などの医薬品を挙げることができる。また、医薬品のみならず、動物薬、農薬、肥料、衛生用品等としてある剤形に製せられた組成物も含まれる。
フィルムコーティング錠剤のコート層としては、ヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース、高分子のポリエチレングリコールなどが挙げられる。
<インクジェット記録方法>
本開示におけるインクジェット用インク組成物(インク組成物C)が適用されるインクジェット記録方法には特に制限はない。吐出性に優れ、被記録媒体に画像を形成する際、色材として可食顔料を高濃度で含む場合であっても、吐出性が良好であり、色材として顔料を用いることから形成された画像の堅牢性に優れるという利点も有する。
本開示におけるインク組成物Cが適用されるインクジェット記録方法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等のいずれであっても、本開示におけるインクジェット記録方法に使用することができる。
得られたインク組成物Cは、所望によりフィルターにてろ過した後、インクジェット記録装置に適用され、画像を形成することができる。
インクジェット用インク組成物(インク組成物C)の被記録媒体への吐出量は、特に制限はないが、2pl(ピコリットル;以下同様)以上100pl以下の範囲で必要に応じて適宜選択することができる。
画像を記録する被記録媒体としては、食品、又は医薬品(例えば、錠剤又はカプセル剤等の固体製剤)などの物品を挙げることができる。
画像を形成した後には、必要に応じて乾燥工程を設けてもよい。具体的には、乾燥風、又は温風もしくは熱風を被記録媒体にあてて行うことができる。乾燥には、公知の加熱手段を用いることができる。
本開示におけるインク組成物Cによれば、インクジェット記録方法を適用して、被記録媒体に非接触で画像を記録できる形態であれば、記録形態に制限はなく、市販のインクジェット装置に適用可能である。
インクジェット記録方法としては、例えば、特開2013−121432号公報に記載の錠剤印刷装置を用いてインクジェット法で画像を記録する態様であってもよい。
本開示におけるインク組成物Cは、良好な吐出性を有するため、経時で特定可食性顔料の分散性が低下して粘度が上昇、及び顔料の凝集体である粗大粒子の生成が抑制されており、インクジェット記録用途に適している。
本開示におけるインクジェット用インク組成物(インク組成物C)によれば、特定可食性顔料を高濃度で含む場合でも、吐出性が良好であり、経時による吐出不良の発生が抑制される。このため、少量のインクを使用して、高濃度であり、かつ、堅牢性に優れた画像を形成でき、食品及び医薬品への印刷用途に好適に使用し得る。
以下、既述の第1の実施形態を、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[分散物の調製]
<実施例A1>
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)16g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)4g、及び水(超純水)180gを撹拌により混合し、第1の混合物を得た(工程a1)。
−工程B−
上記の工程Aにて得られた第1の混合物200gと、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)2gと、をPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った混合物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、第2の混合物を得た。
−工程C−
上記の工程Bにて得られた第2の混合物200gを、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、ジルコニアビーズ(商品名:YTZ(登録商標)ボール、ビーズ径:0.1mmφ、(株)ニッカトー)240gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、第2の混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)100rpmの条件にて、12時間分散処理を行った。分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、実施例A1の分散物を得た。
<実施例A2>
実施例A1において、分散物の処方を、下記の表1に記載の処方に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A2の分散物を得た。
<実施例A3>
実施例A1において、分散物の処方を下記の表1に記載の処方に変更し、かつ、工程Bにおける処理時間を「24時間」から「48時間」に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A3の分散物を得た。
<実施例A4>
実施例A1において、工程Bにおける処理時間を「24時間」から「6時間」に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A4の分散物を得た。
<実施例A5>
実施例A1において、分散物の処方を下記の表1に記載の処方に変更し、かつ、工程Bにおける処理時間を「24時間」から「18時間」に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A5の分散物を得た。
<実施例A6>
実施例A1において、分散物の処方を下記の表1に記載の処方に変更し、かつ、工程Bにおける処理温度を「70℃」から「室温(23℃)」に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A6の分散物を得た。
<実施例A7>
実施例A1において、分散物の処方を下記の表1に記載の処方に変更し、かつ、工程Bにおける処理温度を「70℃」から「50℃」に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A7の分散物を得た。
<実施例A8>
実施例A1において、分散物の処方を、下記の表1に記載の処方に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A8の分散物を得た。
<実施例A9>
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)60g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)24g、及び水(超純水)83gをこの順に、容器(商品名:CJ−250、PP製のクリアジャー、容量:250mL、ニッコー・ハンセン(株))に充填した。
上記にて容器に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、低周波共振音響ミキサー(商品名:LabRAM-MIXER、Resodyn Acoustic Mixers, Inc.)を用い、振動の周波数60Hz及び振動の加速度980.665m/s(100G)の条件にて、容器を2分間振動させることにより混合し、第1の混合物を得た(工程a2)。
上記にて得られた第1の混合物のうち66gを、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、超純水134gを添加し、次いで、ジルコニアビーズ(ビーズ径:1.0mmφ)480gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)300rpmの条件にて、121時間分散処理を行った(工程a3)。分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、第2の混合物を得た。
−工程B−
上記の工程Aにて得られた第2の混合物200gと、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)9.5gと、をPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った混合物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、第3の混合物を得た。
−工程C−
上記の工程Bにて得られた第3の混合物200gを、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、ジルコニアビーズ(商品名:YTZ(登録商標)ボール、ビーズ径:0.1mmφ、(株)ニッカトー)240gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、第混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)100rpmの条件にて、12時間分散処理を行った。
分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、実施例A9の分散物を得た。
<実施例A10>
実施例A1において、工程Bにおける処理圧力を「100MPa」から「50MPa」に変更したこと以外は、実施例A1と同様の操作を行い、実施例A10の分散物を得た。
<実施例A11>
実施例A1において、工程Bにおける処理圧力を「100MPa」から「30MPa」に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施A11の分散物を得た。
<比較例A1>
実施例A3において、工程Bを行わなかったこと以外は、実施例A3と同様の操作を行い、比較例A1の分散物を得た。具体的には、以下の工程A及び工程Cを行った。
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)24g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)12g、及び水(超純水)164gを撹拌により混合し、第1の混合物を得た(工程a1)。
−工程C−
上記の工程Aにて得られた第1の混合物200gを、1リットル容量の容器(PP製)に移した後、ジルコニアビーズ(商品名:YTZ(登録商標)ボール、ビーズ径:0.1mmφ、(株)ニッカトー)240gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、第混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)100rpmの条件にて、12時間分散処理を行った。分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、比較例A1の分散物を得た。
<比較例A2>
実施例A3において、工程Cを行わなかったこと以外は、実施例A3と同様の操作を行い、比較例A2の分散物を得た。具体的には、以下の工程A及び工程Bを行った。
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)24g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)6g、及び水(超純水)170gを撹拌により混合し、第1の混合物を得た(工程a1)。
−工程B−
上記の工程Aにて得られた第1の混合物200gと、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)6gと、をPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った混合物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、比較例A2の分散物を得た。
<比較例A3>
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)24g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)6g、及び水(超純水)170gをこの順に、1リットル容量の容器(PP製)に充填し、次いで、ジルコニアビーズ(ビーズ径:1.0mmφ)480gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)300rpmの条件にて、121時間分散処理を行った(工程a3)。分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、第1の混合物を得た。
−工程B−
上記の工程Aにて得られた第1の混合物200gと、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)6gと、をPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った混合物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、比較例A3の分散物を得た。
[測定及び評価A1]
上記にて得られた実施例A1〜実施例A11、比較例A1〜比較例A3の分散物について、以下に示す測定及び評価を行った。
A1.平均粒子径の測定
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Partica LA−960、(株)HORIBA)を用い、超純水で1000倍に希釈した分散物をガラスセルに充填し、雰囲気温度23℃の条件にて、分散物中に含まれる分散粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
なお、測定される平均粒子径は、一次粒子の粒子径及び二以上の粒子が凝集した二次粒子の粒子径を含めて算出される平均値である。
A2.ろ過性
分散物50mLについて、ミニザルト(シリンジフィルターユニット、カタログ番号:SM17594K、素材:セルロースアセテート、孔径:5.0μm、(株)ハイテック)を装着したシリンジを用いたろ過を試みた。そして、5分以内にシリンジフィルターの膜を通過した分散物の量(通過量)を測定し、下記の評価基準に従って、分散物のろ過性を評価した。結果を表1に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題ない。
−評価基準−
A:通過量が30mL以上である。
B:通過量が20mL以上30mL未満である。
C:通過量が10mL以上20mL未満である。
D:通過量が10mL未満である。
A3.インク吐出性
分散物100gに、プロピレングリコール40gを添加した後、超純水を60g添加し、次いで、1分間撹拌することにより、インク組成物を得た。次いで、得られたインク組成物を、ミニザルト(シリンジフィルターユニット、カタログ番号:SM17594K、素材:セルロースアセテート、孔径:5.0μm、(株)ハイテック)を装着したシリンジを用いてろ過した。
少量インクジェット試験機(製品名:ダイマティックス・マテリアルプリンタ DMP−2831、ドロップオンデマンド型ピエゾ方式、ノズル数16、富士フイルムグローパルグラフィックシステムズ(株))に、上記ろ過後のインク組成物を装填し、10分間放置した後、16個の吐出ノズルからのインク組成物の吐出(液滴量=10pL)を試みた。そして、インク組成物が正常に吐出したノズルの数(正常吐出ノズル数)を測定し、下記の評価基準に従って、インク吐出性を評価した。結果を表1に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題ない。
−評価基準−
A:正常吐出ノズル数が16個中5個以上である。
B:正常吐出ノズル数が16個中4個である。
C:正常吐出ノズル数が16個中2個又は3個である。
D:正常吐出ノズル数が16個中0個又は1個である。

表1における成分の欄に記載の「−」は、その成分を含有していないことを示す。また、表1における製造工程の欄に記載の「−」は、該当する物又は条件がないことを示す。
表1に記載の各成分の詳細を以下に示す。
・可食性顔料:
三二酸化鉄(商品名、IUPAC名:三酸化二鉄、Fe、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)
黒酸化鉄(商品名、IUPAC名:四酸化三鉄、Fe、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)
・可食性分散剤:
オイドラギット(登録商標) RLPO(商品名、第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル(=1/2/0.2[モル比])共重合体、エボニック社)
表1に示すように、実施例A1〜実施例A11の製造方法により得られた分散物は、比較例A1〜比較例A3の製造方法により得られた分散物と比較して、平均粒子径が顕著に小さく、かつ、ろ過性に優れており、粗大粒子が少ないことが確認された。
また、実施例A1〜実施例A11の製造方法により得られた分散物は、比較例A1〜比較例A3の製造方法により得られた分散物と比較して、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性に優れていた。
また、工程Aが低周波処理を行う工程a2及び分散処理を行う工程a3を含む、実施例A9の製造方法により得られた分散物は、工程Aが工程a2及び工程a3を含まない、他の実施例の製造方法と比較して、平均粒子径が顕著に小さかった。
実施例A3と比較例A1との対比によれば、工程Bを経ない場合には、平均粒子径が顕著に大きくなり、ろ過性が顕著に悪化し、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性が顕著に低下することがわかった。
実施例A3と比較例A2との対比によれば、工程Bを経た後に工程Cを経ない場合には、平均粒子径が顕著に大きくなり、ろ過性が顕著に悪化し、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性が顕著に低下することがわかった。
実施例A3と比較例A3との対比によれば、分散処理を、工程Bを経た後に行う代わりに、工程Bを経る前に行っても、粗大粒子の少ない分散物が得られないことがわかった。
<実施例A12>
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)60g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)15g、及び水(超純水)90gをこの順に、容器(商品名:CJ−120、PP製のクリアジャー、容量:120mL、ニッコー・ハンセン(株))に充填した。
上記にて容器に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、低周波共振音響ミキサー(商品名:LabRAM-MIXER、Resodyn Acoustic Mixers, Inc.)を用い、振動の周波数60Hz及び振動の加速度980.665m/s(100G)の条件にて、容器を2分間振動させることにより混合し、第1の混合物を得た(工程a2)。
上記にて得られた第1の混合物を、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、超純水235gを添加し、次いで、ジルコニアビーズ(ビーズ径:0.5mmφ)700gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)200rpmの条件にて、66時間分散処理を行った(工程a3)。その後、オイドラギットRLPO(登録商標)を25g及び超純水75gを添加し、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)200rpmの条件にて、16時間分散処理を行った。
この時点での、Feに対する可食性分散剤であるオイドラギットRLPOの含有量の比率は、0.67である。
工程a3での分散処理を終了した後、ナイロンメッシュ(オープニング(目開)77μm、N−No.200HD、株式会社NBCメッシュテック)を用いて、ジルコニアビーズを分離し、かつ、可食性分散剤であるオイドラギットRLPOの一部を分離して除去した(工程E)。この時点での、Feに対する可食性分散剤であるオイドラギットRLPOの含有量の比率を調べたところ、0.2であった。
以上のようにして、第2の混合物を得た。
なお、表2中の「初期処方」とは、工程Aが終了した時点、分散剤の一部分離前での処方を指す。
−工程B−
上記の工程Eを経て得られた第2の混合物200gをPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った混合物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、第3の混合物を得た。
−工程C−
上記の工程Bにて得られた第3の混合物200gを、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、ジルコニアビーズ(商品名:YTZ(登録商標)ボール、ビーズ径:0.1mmφ、(株)ニッカトー)150gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、第混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)100rpmの条件にて、12時間分散処理を行った。
分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、実施例A12の分散物を得た。
<実施例A13〜A14>
実施例A12において、分散物の処方を、分散剤の2回目の添加量を変更し、かつ、過不足を超純水で調整することにより下記の表2に記載の処方に変更したこと以外は、実施例A12と同様の操作を行い、実施例A13及びA14の分散物を得た。
<実施例A15>
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)60g、可食性分散剤であるオイドラギットRLPO(登録商標)(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)15g、及び水(超純水)90gをこの順に、容器(商品名:CJ−120、PP製のクリアジャー、容量:120mL、ニッコー・ハンセン(株))に充填した。
上記にて容器に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、低周波共振音響ミキサー(商品名:LabRAM-MIXER、Resodyn Acoustic Mixers, Inc.)を用い、振動の周波数60Hz及び振動の加速度980.665m/s(100G)の条件にて、容器を2分間振動させることにより混合し、第1の混合物を得た(工程a2)。
上記にて得られた第1の混合物を、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、超純水335gを添加し、次いで、ジルコニアビーズ(ビーズ径:0.5mmφ)700gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)200rpmの条件にて、90時間分散処理を行った(工程a3)。
分散処理後、ナイロンメッシュ(オープニング435μm、NB40、株式会社NBCメッシュテック)を用いてジルコニアビーズを分離し、第2の混合物を得た。
本実施例では、工程a1〜工程a3において可食性分散剤を除去していないので、第2の混合物中における、Feに対する可食性分散剤であるオイドラギットRLPOの含有量の比率は、初期処方と同じ0.25である。
−工程B−
上記の工程Aにて得られた第2の混合物200gをPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った混合物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、第3の混合物を得た。
−工程C−
上記の工程Bにて得られた第3の混合物200gを、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、ジルコニアビーズ(商品名:YTZ(登録商標)ボール、ビーズ径:0.1mmφ、(株)ニッカトー)150gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、第混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)100rpmの条件にて、12時間分散処理を行った。
分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、実施例A15の分散物を得た。
<実施例A16>
−工程A−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)60g、可食性分散剤であるオイドラギットRLPO(登録商標)(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)15g、及び水(超純水)90gをこの順に、容器(商品名:CJ−120、PP製のクリアジャー、容量:120mL、ニッコー・ハンセン(株))に充填した。
上記にて容器に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、低周波共振音響ミキサー(商品名:LabRAM-MIXER、Resodyn Acoustic Mixers, Inc.)を用い、振動の周波数60Hz及び振動の加速度980.665m/s(100G)の条件にて、容器を2分間振動させることにより混合し、第1の混合物を得た(工程a2)。
上記にて得られた第1の混合物を、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、超純水335gを添加し、次いで、ジルコニアビーズ(ビーズ径:0.5mmφ)700gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)200rpmの条件にて、90時間分散処理を行った(工程a3)。
分散処理後、ナイロンメッシュ(オープニング435μm、NB40、株式会社NBCメッシュテック)を用いてジルコニアビーズを分離し、第2の混合物を得た。
本実施例では、工程a1〜工程a3において可食性分散剤を除去していないので、第2の混合物中における、Feに対する可食性分散剤であるオイドラギットRLPOの含有量の比率は、初期処方と同じ0.25である。
−工程B−
上記の工程Aにて得られた第2の混合物200gをPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った混合物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、第3の混合物を得た。
上記の工程Bにて得られた第3の混合物200gに、濃度1mol/Lのクエン酸(C)水溶液及び濃度1mol/Lのクエン酸三ナトリウム(クエン酸三Na:Na)水溶液の1:1(体積基準)混合液を、第3の混合物のpHが6になるまで添加した(工程D)。
−工程C−
その後、1リットル容量の容器(PP製)に移し替え、ジルコニアビーズ(商品名:YTZ(登録商標)ボール、ビーズ径:0.1mmφ、(株)ニッカトー)150gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、第混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)100rpmの条件にて、12時間分散処理を行った。
分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、実施例A16の分散物を得た。
<実施例A17>
実施例A16において、工程Dで添加したクエン酸水溶液及びクエン酸三ナトリウム水溶液の混合液を、クエン酸の10質量%水溶液に代えたこと以外は、実施例A16と同様にして、実施例A17の分散物を得た。
<実施例A18〜A19>
実施例A12において、オープニングの異なるメッシュ(実施例A18ではオープニングを67μmとし、実施例A19ではオープニングを108μmとした)を用いて工程Eで分離除去する可食性分散剤(オイドラギットRLPO)の量を変え、工程Bでの、Feに対する可食性分散剤(オイドラギットRLPO)の含有量の比率を下記表2に示すように0.25から0.17、0.40にそれぞれ変更したこと以外は、実施例A12と同様の操作を行い、実施例A18及びA19の分散物を得た。
[評価A2]
上記にて得られた実施例A12〜実施例A19の分散物について、以下に示す経時での安定性について評価を行った。
A4.粒子径の経時変化
各実施例で得られた分散物を1リットル容量の容器(PP製)に入れたままの状態で40℃の環境下で静置し、14日間保管した。
14日間保管する前の分散物と14日間保管した後の分散物との両方の平均粒子径を、既述の「1.平均粒子径の測定」に記載の方法で測定し、測定値をもとに下記の評価基準にしたがって経時による粒子径変化を評価した。測定及び評価の結果を下記表2に示す。
−評価基準−
A:粒子径変化が5nm未満である。
B:粒子径変化が5nm〜10nm未満である。
C:粒子径変化が10nm〜20nm未満である。
D:粒子径変化が20nm以上である。

表2に示すように、過剰量のオイドラギッド(可食性分散剤)を用いるが工程B前に不要な分散剤の除去を行わなかった実施例A15に対し、可食性分散剤の除去量を2質量%以上とした実施例A12〜A14では、保管後の分散物における分散粒子の経時での粒子径変化が顕著に抑制されており、分散物の経時安定性が著しく良化した。
これは、系中に未吸着の分散剤が存在することによって粒子間で分散剤が架橋して凝集することが抑制され、最終の分散物において分散に適したpHが得られたためと考えられる。分散粒子の帯電状態はpHに依存しやすいため、pHが低下することで荷電反発力が高まり、分散安定化する効果があると推定される。
また、分散工程である工程Bの前に、pH調整を施した実施例A16及びA17では、pH調整を施していない実施例15に対し、実施例A12〜A14と同様に、保管後の分散物における分散粒子の経時での粒子径変化が顕著に抑制され、分散粒子の経時安定性が著しく良化した。また、実施例A16及びA17との対比から明らかなように、酸剤のみを添加する場合に比べ、酸剤と弱酸の塩とを添加した場合がより効果的であった。
可食性分散剤の一部を除去する工程E(除去工程)を設けた態様は、分散物中のイオン濃度の上昇をより抑制するため、分散物のpH調整を行う工程D(pH調整工程)を設ける態様に比べ、分散物の経時安定性の向上効果の点で優れていた。
以下、既述の第2及び第3の実施形態を、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[顔料分散物の調製]
(実施例B1)
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe)(商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)60g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)15g、及び水(超純水)92gをこの順に、容器(商品名:CJ−250、PP製のクリアジャー、容量:250mL、ニッコー・ハンセン(株))に充填し、密閉した。
−工程X1−
上記にて密閉容器に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、低周波共振音響ミキサー(商品名:LabRAM-MIXER、Resodyn Acoustic Mixers, Inc.)を用い、振動の周波数60Hz及び振動の加速度980.665m/s(100G)の条件にて、密閉容器を2分間振動させることにより混合し、混合物(即ち、粗分散物)を得た。
−工程X2−
上記の工程X1にて得られた混合物のうち22gを、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、超純水178gを添加し、次いで、ジルコニアビーズ(ビーズ径:1.0mmφ)480gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)300rpmの条件にて、121時間分散処理を行った。
分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、第1の分散物を得た。
−工程X3−
上記の工程X2にて得られた第1の分散物200gと、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)2.0gと、をPE製の袋に入れて密封した。
次いで、袋に入った第1の分散物及び可食性分散剤に対して、超高圧処理装置(製品名:まるごとエキス、(株)東洋高圧)を用いて、70℃に加温しながら、100MPaの静水圧を24時間加え、第2の分散物を得た。
−工程X4−
上記の工程X3にて得られた第2の分散物200gを、1リットル容量の容器(PP製)に移し替えた後、ジルコニアビーズ(商品名:YTZ(登録商標)ボール、ビーズ径:0.1mmφ、(株)ニッカトー)240gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、第2の分散物等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)100rpmの条件にて、12時間分散処理を行った。
分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、実施例B1の顔料分散物を得た。
(実施例B2〜実施例B5)
実施例B1において、顔料分散物の処方を、下記の表3に記載の処方に変更したこと以外は、実施例B1と同様の操作を行い、実施例B2〜実施例B5の顔料分散物を得た。
(実施例B6)
実施例B2において、工程Dの容器の回転数を50rpmに変更したこと以外は、実施例B2と同様の操作を行い、実施例B6の顔料分散物を得た。
(比較例B1)
実施例B1において、顔料分散物の処方を、下記の表3に記載の処方に変更し、かつ、工程X1、工程X3、及び工程X4を行わなかったこと以外は、実施例B1と同様の操作を行い、比較例B1の顔料分散物を得た。具体的には、以下の工程X2を行った。
−工程X2−
可食性顔料である粉末状の三酸化二鉄(Fe、商品名:三二酸化鉄、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)32g、可食性分散剤であるオイドラギット(登録商標) RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比]、エボニック社)8g、及び水(超純水)160gをこの順に、1リットル容量の容器(PP製)に充填した後、ジルコニアビーズ(ビーズ径:1.0mmφ)480gを添加した。
次に、ボールミル用架台(製品名:BMU−100、(株)伊藤製作所)に、混合液等が入った上記容器を搭載させ、容器の回転数(容器外縁部の回転数)300rpmの条件にて、121時間分散処理を行った。
分散処理後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、比較例B1の顔料分散物を得た。
(比較例B2)
比較例B1において、顔料分散物の処方を、下記の表3に記載の処方に変更したこと以外は、比較例B1と同様の操作を行い、比較例B2の顔料分散物を得た。
[測定及び評価B]
上記にて得られた実施例B1〜実施例B6、比較例B1及び比較例B2の顔料分散物について、以下に示す測定及び評価を行った。
B1.粒子径(D10、D50及びD90)の測定
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Partica LA−960、(株)HORIBA)、及び既述の光路長可変セル(スペーサの厚み:5μm)を用いて、雰囲気温度23℃の条件において、顔料分散物中に含まれる分散粒子の粒子径を測定した。そして、得られた粒子径分布から、検出頻度の体積累積が10%になる粒子径D10、検出頻度の体積累積が50%になる粒子径D50、及び検出頻度の体積累積が90%になる粒子径D90を求めた。具体的には、光路長可変セルの試料注入口から顔料分散物を注入し、セル内を顔料分散物で満たした後、セルをレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置に取り付けて測定を行った。
なお、比較例B1及び比較例B2の顔料分散物は、粘度が高すぎて原液のままでは光路長可変セルに充填することができず、測定不能であったため、顔料分散物を超純水にて1000倍に希釈した上で、分散粒子の粒子径の測定に供した。
50及び(D90−D10)/D50の値を、下記の表3に示す。
B2.光透過率の測定
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Partica LA−960、(株)HORIBA)、及び既述の光路長可変セル(スペーサの厚み:5μm)を用いて、雰囲気温度23℃の条件において、半導体レーザー光(波長:650nm)の光透過率を測定した。具体的には、光路長可変セルの試料注入口から顔料分散物を注入し、セル内を顔料分散物で満たした後、セルをレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置に取り付けて測定を行った。
なお、比較例B1及び比較例B2の顔料分散物は、粘度が高すぎて原液のままでは光路長可変セルに充填することができず、測定不能であったため、顔料分散物を超純水にて1000倍に希釈し、光透過率の測定に供した。
光透過率の測定値を、下記の表3に示す。
B3.平均粒子径(キュムラント平均径)の測定
ゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(製品名:Zetasizer Nano ZS、Malvern社)を用いて、雰囲気温度23℃の条件下、動的光散乱法により、顔料分散物中に含まれる分散粒子の粒子径を測定した。そして、得られた粒子径の測定値から、キュムラント法で解析された流体力学的直径である平均粒子径(Z−Average.(d.nm);キュムラント平均径)を求めた。測定には、超純水にて100倍に希釈した顔料分散物を用いた。
顔料分散物中に含まれる分散粒子の平均粒子径(キュムラント平均径)の測定値を、下記の表3に示す。
B4.粘度の測定
振動式粘度計(製品名:VM−10A、CBC社)を用いて、調製直後の顔料分散物の粘度を測定した。具体的には、振動式粘度計の検出端子を、液温23℃の顔料分散物中に浸し、粘度を測定した。
顔料分散物の粘度の測定値を、下記の表3に示す。
B5.分散安定性(1)
顔料分散物中に、粗大粒子、可食性顔料を被覆していない分散剤(所謂、遊離の分散剤)等が存在すると、顔料分散物に対して振動を与えたときにこれらが凝集し、顔料分散物の粘度に変動が生じ得る。そこで、顔料分散物の分散安定性を評価するための加速試験として、振動式粘度計を用いる粘度測定を行った。
振動式粘度計(製品名:VM−10A、CBC社)の検出端子を液温23℃の顔料分散物中に浸し、顔料分散物に対して4分間振動を与えながら、顔料分散物の粘度を測定した。振動を与えてから10秒後の粘度測定値及び4分後の粘度測定値を読み取り、下記の式(A)に基づいて、顔料分散物の粘度変動率を算出した。そして、下記の評価基準に従って、顔料分散物の分散安定性(振動による粘度変動からみた分散安定性)を評価した。結果を表3に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題ない。
粘度変動率(%)=|(4分後の粘度測定値)−(10秒後の粘度測定値)|/(4分後の粘度測定値)×100・・・式(A)
−評価基準−
A:粘度変動率が4%未満である。
B:粘度変動率が4%以上13%未満である。
C:粘度変動率が13%以上20%未満である。
D:粘度変動率が20%以上である。
B6.分散安定性(2)
振動式粘度計(製品名:VM−10A、CBC社)を用いて、調製直後の顔料分散物の粘度を測定した。具体的には、振動式粘度計の検出端子を、液温23℃の顔料分散物中に浸し、粘度を測定し、得られた粘度測定値を「初期粘度測定値」とした。
また、別の系として、調製直後の顔料分散物20mLを容器に量り取り、密閉した後、40℃の雰囲気温度下にて2ヶ月間保管した。この保管後の顔料分散物の粘度を、上記と同様の方法により測定し、得られた粘度測定値を「経時粘度測定値」とした。
そして、初期粘度測定値及び経時粘度測定値を用いて、下記の式(B)に基づいて、顔料分散物の経時での粘度変動率を算出し、下記の評価基準に従って、顔料分散物の分散安定性(経時での粘度変動からみた分散安定性)を評価した。結果を表3に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題ない。
経時での粘度変動率(%)=|(経時粘度測定値)−(初期粘度測定値)|/(経時粘度測定値)×100・・・式(B)
−評価基準−
A:粘度変動率が5%未満である。
B:粘度変動率が5%以上10%未満である。
C:粘度変動率が10%以上20%未満である。
D:粘度変動率が20%以上である。
B7.ろ過性
顔料分散物50mLについて、ミニザルト(シリンジフィルターユニット、カタログ番号:SM17594K、素材:セルロースアセテート、孔径:5.0μm、(株)ハイテック)を装着したシリンジを用いたろ過を試みた。そして、5分以内にシリンジフィルターの膜を通過した顔料分散物の量(通過量)を測定し、下記の評価基準に従って、顔料分散物のろ過性を評価した。結果を表3に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題ない。
−評価基準−
A:顔料分散物50mLの全てが通過した。
B:通過量が40mL以上50mL未満である。
C:通過量が20mL以上40mL未満である。
D:通過量が20mL未満である。
B8.インク吐出性
顔料分散物100gに、プロピレングリコール40gを添加した後、超純水を60g添加し、次いで、1分間撹拌することにより、インク組成物を得た。次いで、得られたインク組成物を、ミニザルト(シリンジフィルターユニット、カタログ番号:SM17594K、素材:セルロースアセテート、孔径:5.0μm、(株)ハイテック)を装着したシリンジを用いてろ過した。なお、10mLのインク組成物について、ろ過を試みて、シリンジフィルターの膜を通過した量が1mLを超えるインク組成物についてのみ、以下の操作を行った。
少量インクジェット試験機(製品名:ダイマティックス・マテリアルプリンタ DMP−2831、ドロップオンデマンド型ピエゾ方式、ノズル数16、富士フイルムグローパルグラフィックシステムズ(株))に、上記ろ過後のインク組成物を装填し、10分間放置した後、16個の吐出ノズルからのインク組成物の吐出(液滴量=10pL)を試みた。そして、インク組成物が正常に吐出したノズルの数(正常吐出ノズル数)を測定し、下記の評価基準に従って、インク吐出性を評価した。結果を表3に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題ない。
−評価基準−
A:正常吐出ノズル数が16個中13個以上である。
B:正常吐出ノズル数が16個中6個以上12個以下である。
C:正常吐出ノズル数が16個中3個以上5個以下である。
D:正常吐出ノズル数が16個中2個以下であるか、或いは、ろ過性が悪いため、インク吐出性の評価を行うことができない。
表3における成分の欄に記載の「−」は、その成分を含有していないことを示し、工程の欄に記載の「−」は、その工程を行っていないことを示す。
表3におけるD50値、(D90−D10)/D50値、及び光透過率の評価の欄に記載の「−」は、顔料分散物を原液のままで光路長可変セルに充填することができず、測定不能であったことを示し、括弧内の数値は、顔料分散を超純水にて1000倍に希釈して測定したときの値を示す。
表3に記載の各成分の詳細を以下に示す。
<可食性顔料>
・三二酸化鉄(商品名、IUPAC名:三酸化二鉄、Fe、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)
・黒酸化鉄(商品名、IUPAC名:四酸化三鉄、Fe、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)
・黄色三二酸化鉄(商品名、IUPAC名:三酸化二鉄・一水和物、Fe・HO、形状:粉末状、用途:医薬品グレード、規格:薬添規、癸巳化成社)
・食用青色2号アルミニウムレーキ(商品名、形状:粉末状、用途:食品添加物、ダイワ化成(株)規格:食用)
<可食性分散剤>
・オイドラギット(登録商標) RLPO(商品名、第4級アンモニウム基を有する樹脂、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル(=1/2/0.2[モル比])共重合体、エボニック社)
表3に示すように、実施例B1〜実施例B6の顔料分散物は、可食性顔料の濃度が1.0体積%以上と高いにも関わらず、粗大粒子が少なく、かつ、インクジェット記録用インクに適用した場合のインクの吐出性に優れていた。
また、実施例B1〜実施例B6の顔料分散物は、粘度が低く、分散安定性に優れ、かつ、ろ過性が良好であり、インクジェット記録用途に好適な物性を有していた。
一方、比較例B1及び比較例B2の顔料分散物は、粘度が高すぎて原液のままでは光路長可変セルに充填することができなかった。そこで、顔料分散物を希釈し、動的光散乱法により平均粒子径を測定したところ、比較例B1及び比較例B2の顔料分散物は、実施例B1〜実施例B6の顔料分散物と比較して、平均粒子径が顕著に高いことが確認された。
また、比較例B1及び比較例B2の顔料分散物は、分散安定性及びろ過性が悪く、インクジェット記録用途には適さない物性を有していた。
製造方法に着目すると、特定の分散方法を特定の順序で組み合わせて製造した顔料分散物(例えば、実施例B2)は、従来のボールミルを使用する分散方法を用いて製造した顔料分散物(例えば、比較例2)と比較して、分散粒子の粒子径が小さく、粗大粒子が少なく、かつ、粒子径が揃っており、インクジェット記録用途に好適な物性、即ち、粘度、分散安定性、ろ過性、及びインク吐出性の全てにおいて、優れていた。
以下、既述の第4及び第5の実施形態を、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例においては、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。また、以下の実施例においては、分散メディアとしてビーズを用いる。
<調製例1;黒色の顔料分散液(KM分散液)の調製>
(混合物の調製)
密閉容器(商品名:CJ−250、PP製クリアジャー、容量:250mL、ニッコー・ハンセン(株)、以下PPクリアジャーと称する)に、粉末状の黒酸化鉄(Fe;癸巳化成社製、医薬品グレード:薬添規)40g、分散剤であるオイドラギット(登録商標)RLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、エボニックジャパン(株)、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比])10g、及び分散媒としての超純水61gをこの順に投入した。
密閉容器を、低周波高加速振動装置(LabRAM−II・Resodyn Acoustic Mixers, Inc.社製:以下、RAM装置と称することがある)を用いて、加速度980.7m/s、周波数60Hzにて2分間処理を行って混合物を得た。
その後、得られた混合液中に超純水56g、およびジルコニアビーズ(ビーズ径1mmφ・YTZ−1 ニッカトー社製)を90g添加した後、再度、低周波高加速振動装置LabRAM−II(LabRAM−II・Resodyn Acoustic Mixers, Inc.社製)を用いて、加速度785m/s、周波数60Hzにて1分間処理を行って粗分散液を得た。
(第一の分散工程)
ポリプロピレン(PP)製の1L(リットル)容器(外壁に目盛による凸有り)に、得られた粗分散液42gと超純水158gを加えた後、ジルコニアビーズ(ビーズ径1mmφ・YTZ−1 ニッカトー社製)を390g追加添加し、ボールミル(BMU−100、(株)伊藤製作所)にて回転数を426rpm(回転/分)とし、分散時間を121時間として分散を行った。その後、ろ布を用いてジルコニアビーズを分離してKM分散液(1)を得た。
(第二の分散工程)
第一の分散工程によって得た分散液(1)に、オイドラギットRLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、エボニック社製、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比])を2.5g添加し、この液を、超高圧加工処理装置(まるごとエキス・東洋高圧社製)を用いて液温度70℃、圧力100MPa、処理時間24時間の条件にて処理を行った後、液温度70℃で、圧力を1Ma〜100MPaまでの常圧−超高圧繰り返し処理を10回行ってKM分散液(2)を得た。
(第三の分散工程)
第二の分散工程によって得た分散液(2)をポリプロピレン(PP)製の500ml容器に移し替え、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.1mmφ・YTZ−0.1 ニッカトー社製)240gを添加して、ボールミル(BMU−100、(株)伊藤製作所)にて回転数を148rpmとし、分散時間を12時間として分散を行った。その後、ろ布を用いてジルコニアビーズを分離し、黒色を呈するKM分散液(3)を得た。
(分散液の評価)
<レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置による平均粒子径測定>
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置:Partica LA−960(製品名:(株)堀場製作所)及び図1〜図3に示す光路長可変セル(製品名:(株)堀場製作所)を用い、スペーサを用いて1組のガラス板間の間隙を5μmとして、調製したKM分散液(3)を希釈せずセル内に充填して測定し、平均粒子径(メジアン径/D10平均径/D90平均径)を求めた。結果を下記表4に示す。
<調製例2;赤色の顔料分散液(RM分散液)の調製>
(混合物の調製)
ニッコー・ハンセン(株)のPPクリアジャー(密閉容器:容量250ml)に、粉末状の三二酸化鉄(Fe;癸巳化成社製、医薬品グレード:薬添規)40g、オイドラギットRLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、エボニック社製、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比])10g、及び超純水61gをこの順で投入した。
密閉容器を、低周波高加速振動装置(LabRAM−II・Resodyn Acoustic Mixers, Inc.社製)を用いて、加速度980.7m/s、周波数60Hzにて2分間処理を行って混合物を得た。
その後、得られた混合液中に超純水56g、およびジルコニアビーズ(ビーズ径1mmφ・YTZ−1 ニッカトー社製)を90g添加した後、再度、低周波高加速振動装置LabRAM−II(LabRAM−II・Resodyn Acoustic Mixers, Inc.社製)を用いて、加速度785m/s、周波数60Hzにて1分間処理を行って混合物を得た。
(第一の分散工程)
得られた混合物42gをポリプロピレン(PP)製の1L容器(外壁に目盛による凸有り)に移し替え、超純水158gを加えた後、ジルコニアビーズ(ビーズ径1mmφ・YTZ−1 ニッカトー社製)を390g添加し、ボールミル(BMU−100:製品名、(株)伊藤製作所)にて回転数を426rpmとし、分散時間を121時間として分散を行った。その後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、RM分散液(1)を得た。
(第二の分散工程)
得されたRM分散液(1)に、オイドラギットRLPO(第4級アンモニウム基を有する樹脂、エボニック社製、アクリル酸エチル:メタクリル酸メチル:メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル=1:2:0.2[モル比])を2.5g添加し、この液を、超高圧加工処理装置(まるごとエキス:製品名、東洋高圧(株)製)を用いて、液温度70℃、圧力100MPa、処理時間24時間の条件にて処理を行った後、液温度70℃で、圧力を1MPa〜100MPaまでの常圧−超高圧繰り返し処理を10回行って、RM分散液(2)を得た。
(第三の分散工程)
得られたRM分散液(2)500mlをポリプロピレン(PP)製の1L容器に移し替え、ジルコニアビーズ(ビーズ径0.1mmφ・YTZ−0.1 ニッカトー社製)を240g投入し、ボールミル(BMU−100、(株)伊藤製作所)にて回転数を148rpmとし、分散時間を12時間として分散を行った。その後、濾布を用いてジルコニアビーズを分離し、RM分散液(3)を得た。
<調製例3;青色の顔料分散液(BM分散液)の調製>
調製例1において、用いる可食性顔料としての粉末状の黒酸化鉄顔料を、青色2号レーキ顔料(BM分散液用)に変えた以外は、調製例1と同様にして、青色の顔料分散液(BM分散液(3))を得た。
<調製例4;黄色の顔料分散液(YM分散液)の調製>
調製例2において、用いる可食性顔料としての粉末状の三二酸化鉄顔料を、黄色三二酸化鉄顔料(YM分散液用)に変えた以外は、調製例2と同様にして、黄色の顔料分散液(YM分散液(3))を得た。
(分散液の評価)
調製例1で得たKM分散液と同様の方法にて、調製例2で得られたRM分散液(3)、調製例3で得られたBM分散液(3)、及び調製例4で得られたYM分散液(3)について、それぞれレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び光路長可変セルによる平均粒子径の測定及び粗大粒子の割合(頻度)の測定を行った。下記表4〜表8における粗大粒子の割合は「頻度」を表す。
結果を下記表4に示す。最終的に得られた分散液を、表4には、色相を示すKM、RM、BM及びYMと表記した。

表4の結果より、調製例で得られた可食性顔料の分散液は、含量の平均粒子径が小さく、粗大粒子も極めて少なく、可食性顔料の分散性が良好な分散液であることがわかる。
なお、上記顔料分散液RMにおいて、顔料濃度を21%として分散を行ったところ、分散物の粘度が上昇して均一な分散物が得られなかった。
<顔料分散液の調製>
上記分散液の調製例において、混合物調製工程及び第1の分散工程における処理時間を、下記表5〜表8に示すように変えた以外は、同様にして顔料分散液を得た。得られた顔料分散液について調製例1と同様にして平均粒子径の測定及び粗大粒子の割合(頻度)の測定を行った。
結果を下記表5〜表8に示す。
なお、分散液KM1、KM2、KM3及びKM4の組成はいずれもKM分散液と同様である。
分散液RM1、RM2、RM3及びRM4の組成はいずれもRM分散液と同様である。分散液BM1、BM2、BM3及びBM4の組成はいずれもBM分散液と同様である。分散液YM1、YM2、YM3及びYM4の組成はいずれもYM分散液と同様である。




表5〜表8の結果より、同様の処方の顔料分散液であっても、混合物調製工程及び第1の分散工程における処理時間を調整することで所望の粒径の顔料分散液を調整しうることがわかる。なお、例えば、KM4に記載の如く、第1の分散工程の時間を短くすることで粒子径が大きくなり、粗大粒子も増加し、また、混合物調製工程の時間を短くすることで、粒子サイズは小さくなっても粗大粒子が増加することが分かる。
なお、上記表5〜表8において、KM4、RM4、BM4及びYM4は本開示におけるインク組成物の範囲外の粒子径を有する対照例としての分散液である。
<実施例C1−1〜実施例C4−7、比較例C1−5、比較例C2−5、比較例C3−5、比較例C4−5:インク組成物の製造>
調製例で得られた可食性顔料分散液を用いて、分散液の顔料濃度(顔料の含有量)に対し、インク組成物中の顔料濃度が1/2になる量で2種の互いに異なる顔料分散液を添加し、さらに、プロピレングリコールをインク組成物全量に対し20%含有させた混合物を、スターラー攪拌装置を用いて常温(25℃)で、30分間撹拌し、目開き5μmのフィルター濾過を行ってインク組成物を得た。
インク組成物中に含まれる顔料分散液の種類と含有量、各可食性顔料の含有比率を表9〜表12に示す。
(インク組成物の吐出性評価)
得られたインク組成物をインクジェット記録装置(ダイマティックス・マテリアルプリンター DMP−2831(富士フイルムダイマテックス製)を用いて、被記録媒体である素錠に吐出させ、吐出性を以下の基準により評価した。
ソリッド画像を目視で観察し、吐出不良によるスジ(画像のとぎれ)の有無を確認し、以下の基準により評価して吐出性の評価とした。
−評価基準−
1:ソリッド画像に吐出不良によるスジが目視で観測できない。
2:ソリッド画像に吐出不良によるスジが目視で観測できるが、実用上問題のないレベルである。
3:インク組成物が吐出できない。



表9〜表12の結果より実施例のインク組成物は、いずれも吐出性が良好であった。一方、分散物における平均粒子径が500nmを超える比較例C1−5、比較例C2−5、比較例C3−5、及び比較例C4−5では、インク組成物は吐出できなかった。
<実施例C1−8〜実施例C1−14>
実施例C1−1(K1)のインク組成物に含まれる特定可食性顔料である黒酸化鉄顔料と青色2号レーキ顔料との含有比率を下記表10に示す比率にした以外はK1と同様にしてインク組成物K17(実施例C1−8)〜K113(実施例C1−14)を作製した。

<実施例C2−8〜実施例C2−14>
実施例インク組成物K2において含まれる可食性顔料である三二酸化鉄顔料と青色2号レーキ顔料との含有比率を下記表14に示す比率にした以外はK2Iと同様にしてインク組成物K27〜K213を作製した。

<実施例C3−8〜実施例C3−13>
インク組成物G1において含まれる可食性顔料である黄色三二酸化鉄顔料と青色2号レーキ顔料の比率を下記表15に示す比率にした以外はGI1と同様にしてインク組成物GI7〜GI12を作製した。

<実施例C4−8〜実施例C4−12>
インク組成物O1において含まれる可食性顔料である三二酸化鉄顔料と黄色三二酸化鉄顔料との含有比率を下記表16に示す比率にした以外はOI1と同様にしてインク組成物OI7〜OI11を作製した。

<インク組成物の評価>
得られたインク組成物について以下の評価を行い、結果を表13〜表16に記載した。なお、K1(実施例C1−1)、K2(実施例C2−1)、GI(実施例C3−1)及びOI(実施例C4−1)の評価結果を併記した。
(錠剤印字物の作製)
ダイマティックス・マテリアルプリンター DMP−2831(富士フイルムダイマテックス製)を用い、素錠、フイルムコート錠に以下の画像を作成した。描画条件は液滴サイズ10pl、画像密度、1200dpi×1200dpi、描画環境は23℃、50%で行った。
画像1 網%が100のソリッド画像
画像2 FUJIFILMの文字
形成された画像について、以下の各基準で評価し、結果を上記表13〜表16に併記した。
(色味評価)
色味を目視で観察した。
ソリッド画像を5人で観察し、K1、K2インクに対しては黒に見えるものをA、黒に見えないものをBと評価した。
Gインクに対しては緑に見えるものをA、緑に見えないものをBと評価した。
Oインクに関してはオレンジに見えるものをA、オレンジに見えないものをBと評価した。
さらに、得られたソリッド画像のab値を蛍光分光濃度計FD−5(製品名:コニカミノルタ(株))にて測定した。
(光堅牢性評価)
ソリッド画像を、蛍光灯耐光性試験機(蛍光灯退色試験機 LST−300、東京理化器機社製)にて合計積算光量が120万Lxとなるように照射した。照射後のソリッド画像のLabをFD−5(コニカミノルタ製)にて測定し、照射前後のΔEを算出した。数値が小さいほど光堅牢度が良好であると評価する
(画質評価)
画像2:FUJIFILMの4pt文字画像を目視で以下の基準により評価を行った。
−評価基準−
1:滲みが無い鮮明な文字が観察される。
2:滲みが見られるが文字が判別できる。
3:滲みが大きく文字が判別できない。
(吐出性評価)
ソリッド画像を目視で観察し、吐出不良によるスジ(画像のとぎれ)の有無を確認し、以下の基準により評価して吐出性の評価とした。
−評価基準−
1:ソリッド画像に吐出不良によるスジが目視で観測できない。
2:ソリッド画像に吐出不良によるスジが目視で観測できるが、実用上問題のないレベルである。
3:インク組成物が吐出できない。
既述のようにインク組成物について評価を行った。
表の結果より、吐出性を良好とするためには、本開示のインク組成物に規定される平均粒子径は500nm以下である必要があることがわかる。
また、得られた画像のスジなどを軽減し良好な画質を得るためには、粒子サイズが200nm以下であり、500nm以上の粗大粒子は1%以下であることが好ましい。
インク組成物の色相では、黒酸化鉄顔料単独では茶色、三二酸化鉄顔料単独では赤、青色2号レーキ顔料では青、黄色三二酸化鉄では黄色のみが再現できる。
また、黒を再現するためには黒酸化鉄顔料、三二酸化鉄顔料と青色2号レーキ顔料の比が2/3〜1/10である場合は黒を、黄色三二酸化鉄顔料と青色2号レーキ顔料の比が2/3〜1/5である場合は緑色を、三二酸化鉄顔料と黄色三二酸化鉄顔料の比が1/2〜1/5である場合はオレンジ色を良好に表すことができることがわかる。
2016年9月30日に出願された日本国特許出願2016−195142、2016年9月30日に出願された日本国特許出願2016−195143、2016年9月30日に出願された日本国特許出願2016−195144、及び、2017年3月30日に出願された日本国特許出願2017−068885の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (18)

  1. 可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有する混合物を準備する工程Aと、
    前記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程Bと、
    前記静水圧を加えた前記混合物に対して、分散処理を行う工程Cと、
    を含む分散物の製造方法。
  2. 前記工程Bは、前記混合物に対して、100MPa以上の静水圧を6時間以上加える工程である請求項1に記載の分散物の製造方法。
  3. 前記工程Bは、前記混合物に対して、70℃以上の熱を加えながら、100MPa以上の静水圧を15時間以上加える工程である請求項1に記載の分散物の製造方法。
  4. 前記工程Cは、前記静水圧を加えた前記混合物に対して、メディアミルを用いて分散処理を行う工程である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  5. 前記工程Bは、前記混合物に対して、冷間等方加圧法を用いて前記静水圧を加える工程である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  6. 前記工程Aは、密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、前記密閉容器を振動させて混合し、前記混合物を得る工程を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  7. 前記可食性顔料は、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキからなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  8. 前記工程Aにて準備した前記混合物における前記可食性顔料の濃度が、前記混合物の全体積に対して1.0体積%以上である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  9. 更に、前記工程Cの後の分散物の25℃でのpHを6.3以下に調整する工程Dを含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  10. 前記工程Dは、酸及び弱酸の塩を用いて分散物のpHを調整する請求項9に記載の分散物の製造方法。
  11. 前記工程Aが終了する前、又は工程A後であって前記工程Bの前に、更に、前記可食性分散剤の一部を除去する工程Eを含む、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  12. 前記工程Aは、可食性顔料、可食性分散剤、及び水を混合して混合物を得る工程であり、かつ、
    密閉容器内に充填した可食性顔料、可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、上記密閉容器を振動させて混合し、混合物を得る工程a2と、
    前記工程a2で得られた混合物に対して分散処理を行う工程a3と、を含み、
    前記工程a3の工程内、又は前記工程a3の後であって前記工程Bの前に、前記工程Eを含む、請求項11に記載の分散物の製造方法。
  13. 前記工程Aにおいて、前記可食性顔料の含有量に対する前記可食性分散剤の含有量の比率Pは、質量基準で下記式Iを満たし、かつ、
    前記工程Aの後における、前記可食性顔料の含有量に対する前記可食性分散剤の含有量の比率Qは、質量基準で下記式IIを満たす、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
    0.25<比率P<1.2 式I
    0.05<比率Q<0.40 式II
  14. 前記可食性分散剤は、第4級アンモニウム基を含むアルキル(メタ)アクリレート共重合体である請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の分散物の製造方法。
  15. 1.0体積%以上の可食性顔料、可食性分散剤、及び水を含有し、
    前記可食性分散剤は、4級アンモニウム基を含み、可食性顔料の少なくとも一部を被覆する可食性分散剤であり、
    レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置及び厚みが5μmのスペーサを備えた光路長可変セルを用いて測定した粒子径分布において、検出頻度の体積累積が10%になる粒子径D 10 、検出頻度の体積累積が50%になる粒子径D 50 、及び検出頻度の体積累積が90%になる粒子径D 90 が、下記の式(A1)及び式(B1)を満たすインクジェット記録用顔料分散物を製造する方法であって、
    密閉容器に充填した前記可食性顔料、前記可食性分散剤、及び水を、振動の周波数が50Hz〜70Hzの範囲内であり、かつ、振動の加速度が98m/s〜1962m/sの範囲内である条件にて、前記密閉容器を振動させて混合し、混合物を得る工程と、
    前記混合物に対して、第1の分散処理を行う工程と、
    前記第1の分散処理を行った前記混合物に対して、30MPa以上の静水圧を加える工程と、
    前記静水圧を加えた前記混合物に対して、第2の分散処理を行う工程と、
    を含むインクジェット記録用顔料分散物の製造方法。
    50 ≦ 0.5μm ・・・式(A1)
    (D 90 −D 10 )/D 50 ≦ 1.0 ・・・式(B1)
  16. 前記粒子径D 10 、前記粒子径D 50 、及び前記粒子径D 90 が、下記の式(A2)及び式(B2)を満たす請求項15に記載のインクジェット記録用顔料分散物の製造方法。
    50 ≦ 0.1μm ・・・式(A2)
    (D 90 −D 10 )/D 50 ≦ 0.5 ・・・式(B2)
  17. 前記可食性顔料が、黒酸化鉄、三酸化二鉄、黄色三二酸化鉄、及び食用青色2号アルミニウムレーキからなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料である請求項15又は請求項16に記載のインクジェット記録用顔料分散物の製造方法。
  18. 23℃における粘度が、10mPa・s以下である請求項15〜請求項17のいずれか1項に記載のインクジェット記録用顔料分散物の製造方法。
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