JP5995910B2 - インクジェットインク及びその作製方法並びにインクジェットインクを用いた印字方法 - Google Patents
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Description
上記において、前記高分子分散剤がヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。
前記顔料は、酸化チタン、酸化鉄、炭末色素及び食用色素のアルミニウムレーキから選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
前記高分子分散剤、前記樹脂及び前記顔料のいずれもが可食性の材料から選択されるものであることが好ましい。
更に該インクジェットインクは可食材料として認可されたpH調整剤を含んでいることが好ましい。
上記において、前記分散機としてビーズミルを用い、前記ビーズミルのビーズ撹拌ディスクがウレタン樹脂製であることが好ましい。前記ビーズミルにおいてビーズ撹拌ディスクの周速が6〜15m/secであることが好ましい。
また、本発明の印字方法においては、前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、脱気、脱泡、温度調整などを行うことができる。
さらに、本発明の印字方法においては、前記ドロップオンデマンドインクジェット装置としてインクジェットヘッドを少なくとも2台備えたものを用い、前記インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に供している間、他の少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態で待機させておくことができる。
そして、所定の時間内にインクを吐出しないノズルに、一定間隔の時間でプリカーサをすることが好ましい。
また、インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態に維持しておくために、フラッシングやワイピングを行うことが好ましい。
また、当該循環の際には、温度調整、脱気、消泡を行うことにより、インクジェット装置中を循環するインクジェットインクの物性の変化や劣化を防ぐことができる。さらに、インクへの振動や圧力変動等に伴う、泡の発生や、気泡の発生を制御できるので、インクの吐出を安定化することができる。
さらに、ドロップオンデマンドインクジェット装置としてインクジェットヘッドを少なくとも2台備えたものを用い、前記インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に供している間、他の少なくとも1台は印字を行わせずにインクジェットインクの吐出に適した状態で待機させておくこととし、印字させるインクジェットヘッドと、印字させずに待機させるインクジェットヘッドとを所定の時間ごとに変更することで、吐出不良や飛び曲りを回避し、印字品質を保ち、さらに長期の連続した印字が可能となる。
上記のような固体の酸触媒としてはH+型陽イオン交換樹脂であることが、比較的短時間にて行なえるために好ましい。ここで用いられる酸触媒としては、オルガノ株式会社より市販されているXN−1004、XN−1005、アンバーリスト15DRY、アンバーリスト15WET、アンバーリスト15JWET、アンバーリスト31WET等が例示される。特に、強酸性タイプのものが好ましい。
セラックのこのような酸価、pHの調整は、例えば、以下のようにして行うことができる。
すなわち、粉末のセラックからエタノールの25〜50重量%の樹脂溶液を調製したのち、固体の酸触媒(例えば、H+型陽イオン交換樹脂)を20〜40重量%添加して攪拌し、接触処理することを3〜10時間程度実施する。処理温度としては、20〜30℃にて行なうことができる。その後、酸触媒を濾過にて取り出す。また、酸触媒をカラム充填し、このカラムにセラックのエタノール溶液を通過させるという接触処理でも対応可能である。
常法により酸価を滴定し、酸価が80〜85、また、pHメーターにてpHを測定し、pHが0.5〜3.0であることを確認して、インクジェットインクの材料として使用する。
尚、酸価の調整に伴うセラック溶液の特性の変化としては、固形分が約10%弱低下する。また、粘度は半分程度に低下する。再溶解性が格段に向上する。また、エタノール溶液を乾燥させてフィルム形成した表面のエタノールによる拭き取りにおいても2倍程度のふき取り速さの向上が確認できる。
このようなバインダーとして、特に食品に添加可能な樹脂としては、セラックのほか、ダンマル樹脂、コーパル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂はアルコール系溶剤への溶解性が高いことからインクジェットインクに用いやすい。
その他に、バインダーとして、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、アラビアゴム、シクロデキストリン等の樹脂、とりわけ水溶性の樹脂が好ましく挙げられる。これらの樹脂は、バインダーとしてのみならず、分散剤としての機能を有するものもあり、これらはインクジェットインクに用いる溶剤への可溶性に応じて選択し用いることができる。
これらの顔料は、平均粒子径が0.01〜10μmのものが好ましい。例えば、顔料の平均粒子径が10μmよりも大きいと、分散処理に時間がかかる、又は、安定に分散しにくくなるなどの問題が生じる恐れがある。とりわけ、分散処理では熱を発生し、分散処理を長時間行うと過剰に熱の影響を受けて、顔料を分散させるための高分子分散剤の特性を変えてしまう恐れがある。
これらの乳化剤は水や水溶性溶剤への溶解性を鑑みると、インクジェットインク全量を100重量部とするとき、0.1〜9重量部の範囲で使用することが好ましく、1〜5重量部で使用することがより好ましい。これらの範囲内では十分な分散効果を得ることができる。
また、これらの乳化剤のうち、非イオン活性剤は、印字対象物の種類に応じてインクジェットインクの親水親油バランス(HLB)を考慮して選択することが好ましい。例えば、印字対象物が食品等を包む包装用のフィルムである場合、HLBが8〜16、油脂分の多い食品に対しては、HLBが1〜2のようなインクジェットインクに調整すると印字の質が良好になる。
本発明のインクジェットインクの作製方法は、高分子分散剤溶液を作製する第一の工程と、前記高分子分散剤溶液に顔料を混合し分散機を用いて顔料分散体を作製する第二の工程と、エタノールを50重量%以上含有する溶剤にセラックを溶解させたセラック溶液と前記顔料分散体を撹拌混合する第三の工程とを経て、ジルコニウム濃度が0.01〜10ppmであるドロップオンデマンド用インクジェットインクを作製するものである。このような作製方法を採用することで、顔料の分散性に優れたものが得られる。
セルロース系樹脂を溶解させる溶液としては、インクジェットインク全量を100重量部とするとき、水の含有量が50重量部以上、エタノールの含有量が50重量部未満であることが好ましい。エタノールを50重量部以上含有する溶液での分散は、第二の工程において、顔料の分散が安定しなくなる恐れがある。
目的外成分の混入(コンタミネーション)を避けるためには、メディアレスの分散機が好ましいが、処理量に制限がある、処理時間が長い、顔料の粒子径を小さくすることができない、などにより、生産性が低くなるという短所がある。また、分散時の発熱の影響で分散剤の効果が発揮されにくく、十分な分散効果が得られにくいという短所もある。
このため、本発明のインクジェットインクを作製する場合にも、分散メディアを用いる分散機、とりわけ、ビーズミルを用いる方法が好ましい。用いるビーズの直径は0.1〜2mmが好ましい。
上記の課題に記載したジルコニアや、ジルコニウムの混入を抑えるため、分散メディア撹拌ディスクはウレタン樹脂製、ステンレス製、超硬製、アルミナ製を用いることが好ましい。
ビーズミルにおいてウレタン樹脂製の分散メディア撹拌ディスクを用いることが好ましい。ウレタン樹脂は高分子化合物であるため、仮に分散メディアの衝突により磨耗し、インク中に混入し経口摂取したとしても、人体内で分解、吸収されずに排泄されるため無害である。
分散メディアの構成成分が混入しないよう、分散機内部にポリエチレン、あるいは、ポリウレタン樹脂等を用いてライニング(表面被覆)を設けることが好ましい。また、ジルコニアや、ジルコニウム、その他の夾雑物を除去するため、濾過、遠心分離、分離膜法、イオン交換樹脂処理法、逆浸透法、活性炭法、ゼオライト法、水洗、溶剤抽出等の精製や洗浄を併用することも有効である。これらの精製や洗浄は、顔料分散処理後又はインク調製後のいずれの段階で行ってもよいが、ジルコニアやジルコニウム、その他夾雑物の混入は分散処理時の分散メディアや分散容器からが主と考えられるため、顔料分散処理後が最も有効であると考えられるが、複数の段階で行うのがより好ましい。
本発明の印字方法では、本発明の上記インクジェットインクをドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出させて、被印字対象物に前記インクジェットインクを付着させて印字するに当たり、ドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出される前記インクジェットインクを、前記ドロップオンデマンドインクジェット装置のインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させておく。
このようにインクをインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させるためのドロップオンデマンドインクジェット装置としては、例えば、インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間にインク循環経路を有するものを用いる。
また、ドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド内にもインクの循環流路を設けることで、インクジェットヘッド内においてもインクを循環させることが好ましい。これにより、インクジェットヘッド内でのインクの滞留を防止して、顔料の堆積によるトラブルを防ぐことができる。
さらに本発明のインクジェットインクは揮発性の高いエタノールを含んでいるため、インクジェットヘッドのノズル面において乾燥しやすいものであるが、該循環を実施することでノズル面下を常にインクが通過する状態にあるため、ノズル面で固化したインクを溶解しノズル詰まりを防ぐことができる。
インクの循環は、インク供給経路にインク循環用のポンプを設け、インクがノズル(又はオリフィスともいう)から吐出(ないし排出)しないような条件、環境下で行う。このようなインクジェット装置は、一般的にコンティニアス型インクジェット(CIJ)と呼ばれるインクジェットとは異なり、インクの循環はヘッドのノズルからインクを吐出することなく行われる。
このような温度調整は、例えば、インク循環経路の少なくとも一部において、循環インクを加熱及び/又は放熱するための加熱手段(ヒーター)及び/又は放熱手段を配置することで実施することができる。
このような温度調整は、インクジェット装置が設置されている環境の温度変化が激しいと、インクジェットヘッド内のインクの温度が変化するという点を考慮したものである。すなわち、インクジェットヘッド内のインクの温度が変化するとインクの体積や粘度等の物性が変化し、印字の乱れを生じることがある。本実施の形態では、インクジェットヘッド内の温度を一定に保つため温度調整を可能とすることで、インク粘度を一定にし、印字の精度、印字品質を一定にすることができる。
また、インクジェットインクをインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱気や脱泡を行うようにして気泡の発生を防止し、あるいはフィルタ等を設けてゴミの混入を除去することが好ましい。
そのためには、例えば、少なくとも1台のインクジェットヘッドが印字のために稼働している間、他の少なくとも1台のインクジェットヘッドを、所定の領域(以下、これを「メンテナンス領域」あるいは「メンテステーション」と称する)にて待機させるようにすればよい。そして、印字のために駆動しているインクジェットヘッドと、メンテナンス領域で待機しているインクジェットヘッドとが、所定の時間ごとに交換されるようにする。
メンテナンス領域(メンテステーション)に待機させたインクジェットヘッドは、フラッシング、ワイピング、プリカーサ等を行って、インクジェットインクの吐出に適した状態に維持しておくようにすることができる。
ここで、フラッシングとは、インクジェットヘッドのノズル近傍の付着物をとりのぞき、飛行の曲りをなくすためのものであり、ヘッドの全ノズルからインクを強制的に吐出させることをいい、ワイピングとはノズルに付着したごみや飛びはねたインクを払拭することをいう。また、プリカーサとは、インクジェットヘッドのノズルからインクが吐出しない程度の微振動を発生させ、インクメニスカスを振動することをいう。
このようなメンテステーションでの工程は、インクの乾燥性を発揮させるようなインク組成において、特に、効果が発揮される。メンテステーションでのフラッシング、ワイピング、プリカーサ等の実施の間隔も、インクの乾燥性の許容値に応じた対応が必要となる。
また、少なくとも2台以上のインクジェットヘッドを設け、少なくとも1台のインクジェットヘッドが印字を行う稼働中に、他の少なくとも1台のインクジェットヘッドは印字を行わせずにメンテナンス領域に待機させることとし、メンテナンス領域にあるインクジェットヘッドは、フラッシング、ワイピング、プリカーサを一定間隔で実施する。そして、印字させるインクジェットヘッドと、メンテナンス領域で待機するインクジェットヘッドとを、所定の時間ごとに変更することで、吐出不良やとび曲りを回避し、印字品質を保ち、さらに長期の連続した印字が可能となる。
本実施例1では、インクジェットインク作製の中間工程で得られる顔料分散体として、表1に示す分散体1を作製した。
具体的には、まず、水にヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」と記載)を溶解させて高分子分散剤溶液を作製した(第一の工程)。
次に、前記高分子分散剤溶液中に、うばめかしを原料とする備長炭を混合し、ジルコニアビーズ(ビーズ組成:ZrO2を95重量%含有する他、HfO2及びY2O3を微量含有、ビーズ粒径:φ0.3mm)を充填した横型サンドミル(ウレタン樹脂製のビーズ撹拌ディスクを備え、ジルコニア強化アルミナライニングを施したウィリー・エ・バッコーフェン社製のダイノーミルマルチラボ)にて周速12m/secで2時間分散処理して分散体1を作製した(第二の工程)。
その後、保留粒子径1μmのフィルタにて濾過し、ドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製した。本実施例にて作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度をICP発光分析装置(堀場製作所製型式ULTIMA2)で測定したところ、分散体1と同様、ジルコニウムの含有量は1.0mg/kg、すなわち百万分率で1.0ppmであった。
顔料として酸化チタンを用い、分散体1で用いたものとは異なるHPCを用いて、下記の表1に示す処方で、メディア撹拌ディスクの周速を9m/secとした以外は実施例1と同様の分散処理を行い、分散体2を作製した。さらに、この分散体2を用いて、実施例1と同様に表2に記載された処方に基づき、25%白色セラック(酸価83)−エタノール溶液65重量部、炭酸アンモニウム1重量部、エタノール5重量部、精製水24重量部を撹拌混合して得たセラック溶液と5重量部の分散体2とをガラス製のビーカーに入れ、ステンレス製のプロペラにて撹拌混合した後、濾過精度1μmのフィルタにて濾過し、ドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製した。このインクジェットインクについてもジルコニウムの濃度を測定したところ、ジルコニウムの含有量は0.5ppmであった。
顔料として三二酸化鉄を用い、溶剤として水とエタノールの混合溶剤を用い、下記の表1に示す処方で、メディア撹拌ディスクの周速を13m/secとした以外は実施例1と同様の分散処理を行い、分散体3を作製した。さらに、この分散体3を用いて、実施例1と同様に表2に記載された処方に基づき、25%白色セラック(酸価83)−エタノール溶液72重量部、炭酸アンモニウム1.3重量部、エタノール1.7重量部、精製水20重量部を撹拌混合して得たセラック溶液と5重量部の分散体3とをガラス製のビーカーに入れ、ステンレス製のプロペラにて撹拌混合した後、濾過精度1μmのフィルタにて濾過し、ドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製した。このインクジェットインクについてもジルコニウムの濃度を測定したところ、ジルコニウムの含有量は1.2ppmであった。
顔料として食用青色1号レーキを用い、下記の表1に示す処方で、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体4を作製した。さらに、この分散体4を用いて、実施例1と同様に表2に記載された処方に基づき、50%白色セラック(酸価85)−エタノール溶液35重量部、炭酸アンモニウム1.5重量部、エタノール33.5重量部を撹拌混合して得たセラック溶液と30重量部の分散体4とをガラス製のビーカーに入れ、ステンレス製のプロペラにて撹拌混合した後、濾過精度1μmのフィルタにて濾過し、ドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製した。このインクジェットインクについてもジルコニウムの濃度を測定したところ、ジルコニウムの含有量は2.1ppmであった。
顔料として食用黄色5号レーキを用い、分散体1で用いたものとは異なるHPCを用いて、下記の表1に示す処方で、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体5を作製した。さらに、この分散体5を用いて、実施例1と同様に表2に記載された処方に基づき、50%白色セラック(酸価85)−エタノール溶液35重量部、炭酸アンモニウム1.5重量部、エタノール33.5重量部を撹拌混合して得たセラック溶液と30重量部の分散体4とをガラス製のビーカーに入れ、ステンレス製のプロペラにて撹拌混合した後、濾過精度1μmのフィルタにて濾過し、ドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製した。このインクジェットインクについてもジルコニウムの濃度を測定したところ、ジルコニウムの含有量は2.0ppmであった。
「平均粒子径」は、日機装株式会社製の粒度分布計(UPA型)を用いてインクジェットインク中の顔料のメジアン径(d50)を測定した。
「粘度」(20℃、mPa・s)は、TOKI産業社製の粘度計(EHコーン型)を用いて測定した。
「pH」は、pHメーターを用いて測定した。
「再分散性」は、作製後24時間以上放置したインクジェットインクを、人の手によって20回振とうさせたのちに濾過し、その濾紙に顔料が残留するか否かで評価した。
「耐水性(溶出)」は、各実施例にて作製したインクジェットインクで印字した印字対象物の印字面を、水で湿らせたときのインクの溶け出しの有無とその水への着色により確認した。
「密着性(剥離)」は、印字対象物を疑似錠剤とし、当該錠剤に対して各実施例にて作製したインクジェットインクを用いて印字し、印字部分を綿棒で擦ったときの剥離の有無により確認した。
「高温環境での印字性能」は、室温を45℃に保持した環境室内にてインクジェットプリンタでの印字テストを行なったときの、連続吐出性及び印字性能を評価した。
「低温環境での印字性能」は、室温を5℃に保持した環境室内にてインクジェットプリンタでの印字テストを行なったときの、連続吐出性及び印字性能を評価した。
「連続吐出性」は、ノズルの詰り、印字不良、フォント異常等の有無で判定した。
本比較例1では、実施例1の分散体を作製する工程において、ウレタン樹脂製のメディア撹拌ディスクの代わりにジルコニア製のメディア撹拌ディスクを備えた横型サンドミル(ジルコニア強化アルミナライニングを施したウィリー・エ・バッコーフェン社製のダイノーミルマルチラボ)を用いて、周速16m/secで2時間分散し、その後、実施例1と同様の処方及び工程にてインクジェットインクを作製した。本比較例1にて作製したインクジェットインクのジルコニウムを実施例1と同様の測定方法で測定したところ、ジルコニウムの含有量は15mg/kg、つまり15ppmであった。なお、本比較例1にて作製した分散体及びインクジェットインクの分散性、ならびに循環型DOD(後述の実施例9で用いたもの)を用いた本比較例1のインクジェットインクの印字特性には、とりわけ問題はなかった。
本比較例2では、実施例2の分散体を作製する工程において、周速を20m/secとした以外は比較例1と同様の方法で分散処理し、その後、実施例2と同様の処方にてインクジェットインクを作製したが顔料の凝集が生じ、保留粒子径1μmのフィルタを通過することができなかった。本比較例2にて作製したインクジェットインクのジルコニウムを実施例1と同様の測定方法で測定したところ、ジルコニウムの含有量は18ppmであった。本比較例2にて作製したインクジェットインクでは凝集が生じ、粒子径(d50)が1.2μmまで上昇しているため、循環型DOD(後述の実施例9で用いたもの)においても吐出させることができなかった。
本比較例3では、実施例3の分散体を作製する工程において、比較例1と同様の方法で分散処理し、その後、実施例3と同様の処方及び工程にてインクジェットインクを作製した。本比較例3にて作製したインクジェットインクのジルコニウムを実施例1と同様の測定方法で測定したところ、ジルコニウムの含有量は14ppmであった。なお、本比較例1にて作製した分散体及びインクジェットインクの分散性、ならびに循環型DOD(後述の実施例9で用いたもの)を用いた本比較例3のインクジェットインクの印字特性には、とりわけ問題はなかった。
本比較例4では、実施例4の分散体を作製する工程において、比較例1と同様の方法で分散処理し、その後、実施例4と同様の処方及び工程にてインクジェットインクを作製した。本比較例4にて作製したインクジェットインクのジルコニウムを実施例1と同様の測定方法で測定したところ、ジルコニウムの含有量は21ppmであった。なお、本比較例4にて作製した分散体及びインクジェットインクの分散性、ならびに循環型DOD(後述の実施例9で用いたもの)を用いた本比較例4のインクジェットインクの印字特性には、とりわけ問題はなかった。
本比較例5では、実施例5の分散体を作製する工程において、比較例1と同様の方法で分散処理し、その後、実施例5と同様の処方及び工程にてインクジェットインクを作製した。本比較例5にて作製したインクジェットインクのジルコニウムを実施例1と同様の測定方法で測定したところ、ジルコニウムの含有量は20.5ppmであった。なお、本比較例5にて作製した分散体及びインクジェットインクの分散性、ならびに循環型DOD(後述の実施例9で用いたもの)を用いた本比較例5のインクジェットインクの印字特性には、とりわけ問題はなかった。
本比較例6では、実施例1の分散体を作製する工程において、周速を4m/secとした以外は実施例1と同様の方法で分散処理し、その後、実施例1と同様の処方にてインクジェットインクを作製したところ、保留粒子径1μmのフィルタを通過することができなかった。本比較例6にて作製した分散体、及びインクジェットインクの顔料粒子径(d50)は1.1μmであり、分散処理が不足していた。また、本比較例6にて作製したインクジェットインクは、循環型DOD(後述の実施例9で用いたもの)においても吐出させることができなかった。
本実施例6では、実施例1にて作製した分散体1を10重量部と、25%白色セラック(酸価85)−エタノール溶液64重量部、炭酸アンモニウム1.5重量部、エタノール4.5重量部、精製水20重量部を撹拌混合して得たセラック溶液とをガラス製のビーカー内でステンレス製のプロペラ撹拌機にて攪拌、混合した後、遠心分離機を用いて沈降物を除去し、濾過精度1μmのフィルタにて濾過を行い、ドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製した。本実施例6にて作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を、実施例1と同様の方法にて測定したところ、ジルコニウムの含有量は、2.1ppmであった。さらに、このインクジェットインクを、サーマル方式のインクジェット装置に充填し、上記実施例1〜5と同様の連続印字検査をおこなったところ、にじみのない、また、耐光性の良好な印字物が得られた。
本実施例7では、実施例1で分散体を作製する工程において、ウレタン樹脂製のメディア撹拌ディスクの代わりにステンレス製のメディア撹拌ディスクを備えた横型サンドミル(ジルコニア強化アルミナライニングを施したウィリー・エ・バッコーフェン社製のダイノーミルマルチラボ)を用いて分散体を作製し、その後、実施例1と同様の処理を経てインクジェットインクを作製した。本実施例7にて作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を、実施例1と同様の方法にて測定したところ、ジルコニウムの含有量は、2.5ppmであった。
本実施例では、実施例1で分散体を作製する工程において、メディア撹拌ディスクの周速を6m/secとして分散体を作製し、その後、実施例1と同様の処理を経てインクジェットインクを作製した。本実施例7にて作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を、実施例1と同様の方法にて測定したところ、ジルコニウムの含有量は、1.9ppmであった。ただし、本実施例8では、ビーズミルの周速を12m/secとした場合に比べ、分散処理時間を長くしても、顔料粉体が微細にならなかった。この分散体を用いてインクジェットインクを作製したところ、濾過精度1μmのフィルタが顔料粉体による目詰まりを起こし、何度もフィルタを交換しなければならないという点で、濾過工程に支障があった。
本実施例9では、上記実施例1〜6において作製したインクジェットインクを、ドロップオンデマンド型インクジェット装置に充填し、連続した印字を実施した。使用したドロップオンデマンド型インクジェット装置は、インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間及びインクジェットヘッド内にインク循環経路を有する(循環型DOD)。このような循環機構を有するインクジェット装置を使用することにより、インクジェットヘッド内にインクの滞留や顔料の沈降、ノズル面でのインク固化がなくなり、長時間安定した吐出及び高精細な印字を得た。さらに長時間、無印字のまま放置した後であっても全てのノズルからのインク吐出を確認した。このインク循環経路には、加熱手段及び放熱手段が設けられており、このような温度調整機構を利用することにより、環境温度変化、また、稼働状況でのインク温度の変化をなくすことができ、安定した吐出及び高精細な印字を継続することができた。
本実施例10では、上記実施例1〜6において作製したインクジェットインクを、循環型DODに充填し、連続した印字を実施した。本実施例10では、インクジェットインクをインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱気や脱泡を行うようにした。具体的には、循環経路に、カートリッジ状の中空糸繊維を使用した脱気機構、及び、多孔質部材を使用した脱泡機構を付した。これにより、インク圧力変化による気泡の発生、インクの流動に伴う振動や、外部からの振動による泡の発生があった場合にも、当該脱気機構及び消泡機構によりインクジェットインク中の気体や気泡を除去することができ、高速での印字を安定に継続できた。
本実施例11では、上記実施例1〜6において作製したインクジェットインクを用い、インクジェット装置で印字対象物へ印字するために、循環型DODのインクジェットヘッドを2台設置した。インクジェット装置が稼働し、上記2台の内、一方のインクジェットヘッドが印字対象物へ印字を行っている間、他方のインクジェットヘッドをメンテステーションに待機させ、待機中に、プリカーサ、フラッシング、ワイピングを一定間隔にて実施した。そして、2台のインクジェットヘッドの内、印字に用いるインクジェットヘッドと、メンテナンスステーションに待機させるインクジェットヘッドとを、所定の時間ごとに変更することで、さらに、長時間安定した吐出及び印字を継続することができた。また、印字の精度、印字品質共に良好であった。
Claims (17)
- 少なくとも、水、エタノール、高分子分散剤、樹脂及び顔料を含み、前記樹脂が酸価80〜85のセラックであり、ジルコニウム濃度が0.01〜10ppmである、ドロップオンデマンド用インクジェットインク。
- 前記高分子分散剤が、ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1に記載のインクジェットインク。
- 前記顔料が、酸化チタン、酸化鉄、炭末色素及び食用色素のアルミニウムレーキから選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載のインクジェットインク。
- 前記高分子分散剤、前記樹脂及び前記顔料のいずれもが可食材料から選択される、請求項1から3までのいずれかに記載のインクジェットインク。
- 可食材料として認可されたpH調整剤を更に含んでいる、請求項1から4までのいずれかに記載のインクジェットインク。
- 高分子分散剤溶液を作製する第一の工程と、前記高分子分散剤溶液に顔料を混合し分散機を用いて顔料分散体を作製する第二の工程と、エタノールを50重量%以上含有する溶剤に酸価80〜85のセラックを溶解させたセラック溶液と前記顔料分散体を撹拌混合する第三の工程とを経て、ジルコニウム濃度が0.01〜10ppmであるドロップオンデマンド用インクジェットインクを作製する、インクジェットインクの作製方法。
- 前記分散機としてビーズミルを用い、前記ビーズミルのビーズ撹拌ディスクがウレタン樹脂製である、請求項6に記載のインクジェットインクの作製方法。
- 前記分散機としてビーズミルを用い、前記ビーズミルにおけるビーズ撹拌ディスクの周速が6〜15m/secである、請求項6又は7に記載のインクジェットインクの作製方法。
- 請求項1から5までのいずれかに記載のインクジェットインクをドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出させて、被印字対象物に前記インクジェットインクを付着させて印字するに当たり、ドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出される前記インクジェットインクを、前記ドロップオンデマンドインクジェット装置のインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させておく、印字方法。
- 前記被印字対象物が錠剤である、請求項9に記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱気を行う、請求項9又は10に記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱泡を行う、請求項9から11までのいずれかに記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの温度調整を行う、請求項9から12までのいずれかに記載の印字方法。
- 前記ドロップオンデマンドインクジェット装置としてインクジェットヘッドを少なくとも2台備えたものを用い、前記インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に供している間、他の少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態で待機させておく、請求項9から13までのいずれかに記載の印字方法。
- 所定の時間内にインクを吐出しないノズルに、一定間隔の時間でプリカーサをする、請求項9から14までのいずれかに記載の印字方法。
- インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態に維持しておくためにフラッシングを行う、請求項9から15までのいずれかに記載の印字方法。
- インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態に維持しておくためにワイピングを行う、請求項9から16までのいずれかに記載の印字方法。
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