JP6101666B2 - インクジェットインク及びその印字方法 - Google Patents
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Description
この錠剤においては、錠剤の判別を容易とするため、錠剤表面への印刷のニーズがあるが、表面が崩壊しやすい材料となってきたため、従来の刻印や印刷が対応しにくくなっている。
従って、従来の通常の印刷では対応できず、非接触にて印字のできるインクジェットプリンタの使用が検討されるようになった。
このような錠剤への印字では、印字後の早い乾燥性と錠剤表面での固着性が要求される。
しかしながら、食品ないし薬剤(錠剤)用の材料には、制限があり、一般のインク材料を用いることができない。
特許文献2には、木炭を次亜塩素酸にて処理する方法が示されている。このインクについて具体的な調製処方の開示はないが、水を主体とする水性のインクを対象とするものと認められる。フィルム等における乾燥性の適性や定着性については記載されていない。
特許文献3には、木炭と非極性である非水性の溶剤とからなるインクが示されている。これにも木炭を定着させるような成分についての記載は見当たらない。
同様に、特許文献5、特許文献6にもPVPの使用の記載はあるが、カーボンブラックや直接染料を色材とするもので、紙を主に対象とするインクに限られていた。
特に、本発明の対象は、口にいれて食しても問題のないものを食品ないし薬剤(錠剤)として対象とするが、健康食品や薬事法で制約されるような錠剤等も口にいれるものであるため、食品と同様の記録対象物として取り扱う。また、OD錠、素錠のような一般の印刷を行うことが難しい錠剤をおもな対象物とする。
そして、2014年6月に食品衛生法施行規則の改正によりPVPの食品への使用が認められるようになってきたこともあり、このPVPを用いることを検討したところ、所定の重量平均分子量のものを用いた所定配合のインクにおいて、上記の課題を解決できることが判明し、本発明を完成するに至った。
また、本発明に係る印字方法は、前記のインクジェットインクをドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出させて、被印字対象物に前記インクジェットインクを付着させて印字するに当たり、ドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出される前記インクジェットインクを、前記ドロップオンデマンドインクジェット装置のインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させておくことを特徴とする。
このように食品素材及び食品添加物ないし薬事法で認められた材料で構成されたインクは、安心して食品及び薬剤、食品包装材料等に使用することができる。また、直接、食品に印字を行わない場合でも、可食にかかわる商品包装材料は、記録の過程で、このインクによる混入や接触が仮にあっても可食に問題のない材料であることから、健康上の安心感がある。
本発明のインクジェットインクを用いて印字できる対象物として、食品類、薬剤(錠剤)、食品を包装する包装材料及び食品と接触する材料が挙げられる。
特に、OD錠、素錠、フィルムコーティング錠(FC錠)等の錠剤及びカプセルにおいて、好適に使用される。
本発明に係るインクジェットインクは、可食性の色素と、PVPと、水とを含む。
本発明において、色素は、染料でも顔料でもよいが、食することの可能な、あるいは、錠剤への使用が認められているもの、すなわち、可食性の色素である。
このような色素としては、通常、食品添加物として認定されている着色料及び薬事法「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」において認められている色素を用いる。
色素としては、染料が、沈降等の問題が生じにくいため、インクジェットプリンタでの取扱い上は、メンテナンス等、比較的扱いやすく好ましい。しかしながら、耐光性や、錠剤等の表面の状態によっては、にじんだり、場合によっては、変色や退色も危惧されるため、耐光性やにじみ、変色等の強度からは、顔料が強いので、顔料が好ましいといえる。
また、酸化鉄としては、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒色酸化鉄など、また、炭末色素としては、植物炭末などが好ましく用いられる。植物炭末としては、備長炭、竹炭などの粉末が好ましい。
これらの色素は、例えば、インク中に0.1〜5重量%の割合で用いることで、視認性のある、好ましい色及び表示物となる。
本発明においては、前記色素を分散ないし定着させる樹脂としてPVPを用いる。
本発明で用いる前記PVPは、重量平均分子量が5000〜100000である。
PVPの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)に光散乱検出器を組み合わせたGPC−光分散法による測定値とする。溶離液として、DMF(ジメチルホルムアミド)を用い、標準物質として、ポリエチレングリコールを用いる。
そして、重量平均分子量5000〜100000のPVPを用いることで、定着性及び粘度調整に適したインクジェットインクとなり、インクジェットとしての安定吐出も実現できる。特に、錠剤表面が崩壊性材料にて形成されている錠剤においても、良好な定着性及び他の錠剤への転写や剥離の起こり難い被膜強度を付与させることができる。
また、重量平均分子量5000〜100000のPVPは、インクの製造及びインクの撹拌等における泡立ちが、セルロース系誘導体に比較しても非常に少なく取扱い易い。したがって、他の水性樹脂と比べても、ノズルからの安定した吐出適性をも示す。
以上の観点からみたとき、PVPの重量平均分子量は、5000〜100000であることがより好ましく、10000〜50000であることが特に好ましい。
また、錠剤等の崩壊性を意図した表面においては、インク中に1重量%以下の使用量であっても、良好な定着性、擦れても剥がれない被膜強度をもつようにすることができる。
従って、特に、ドラップオンデマンド(以下、「DOD」と記載する。)方式のプリンタにおいても、紙やフィルム等への強固な定着性を意図する含有量に比較し、非常に少量での対応が可能であるため、さらに安定した吐出性を示す。
この少量でのインクの処方化は、比較的ノズルでのつまりに対して特性の良くなかったPVPのノズルでの閉塞性をなくし、また、印字停止後の再吐出における初期のドット不吐出という課題も解決することができた。
また、可食性の色素は、表面処理等の分散を容易とする処理がされていないため、一般の色素に比べ、比較的分散が困難であり、また、限られた材料でしか分散することができないため、上記所定の重量平均分子量を備えたPVPが、前記可食性の色素に適した分散及び定着、強度を有するということは、新たな発見であった。
また、水及びエタノールを併用するインクとして、乾燥性を向上させるDODプリンタでの印字方法もこのPVPを使用することで対応できるようになった。
本発明において、インクの溶剤成分は、水を含む。水を主体として用いることが好ましい。
溶剤成分としては、揮発性のエタノールを含んでもよい。
エタノールの割合としては、水100重量部に対して、エタノールを1〜80重量部の割合でも安定化が図れる。水100重量部に対して、エタノール1〜50重量部の割合であることがより好ましい。
ノズルの乾燥を抑えるため、プロピレングリコールを併用することも好ましい。プロピレングリコールの割合としては、水100重量部に対して、0〜150重量部の割合が好ましく、10〜120重量部の割合がより好ましい。
上記において、各原料の配合割合の好適範囲について個別に言及したが、インク全体の配合としては、前記色素が0.1〜5重量%、前記ポリビニルピロリドンが0.01〜5重量%、エタノールが0〜40重量%、水が10〜80重量%、プロピレングリコールが0〜55重量%の割合であることが、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましい。
より好ましくは、前記色素が0.02〜3重量%、前記ポリビニルピロリドンが0.05〜1.2重量%、エタノールが0〜30重量%、水が20〜70重量%、プロピレングリコールが10〜50重量%の割合である。
本発明に係るインクジェットインクの製造方法としては、特に限定するわけではないが、例えば、まず、PVPを水を主体とする第1溶剤に溶解して樹脂溶液とし、この樹脂溶液に色素を混合してミルベースとし、これを、コンタミの発生の少ないメディアレス分散機や、コーティング(ライニング)を施したメディア分散機等により分散して分散体とする方法が好ましい。
この分散により、色素の微細化分散を図り、粘度調整、粗大粒子の濾過をしてインクを製造することができる。
分散にあたっては、PVPが分散剤の役割も担うため、他の分散剤の添加がなくとも分散ができるが、さらに、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の食品用の種々の分散剤との併用による分散を行うこともできる。
上記本発明のインクジェットインクを用いた印字方法としては、特に限定するわけではないが、インクジェットインクをドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出させて、被印字対象物に前記インクジェットインクを付着させて印字するに当たり、ドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出される前記インクジェットインクを、前記ドロップオンデマンドインクジェット装置のインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させておく印字方法が好適である。
したがって、エタノールを含有させる場合にも5重量%程度が限界とされていた。
上記本発明の印字方法では、ノズル部とインク供給部との間において、インクの循環を行い、吐出を行わないときのノズル部での微振動等の付与方式を設けることで、また、両者を併用することで、乾燥性の付与したインクでも安定した連続吐出性が確保できるようになった。
このようにして、揮発性のエタノール成分を多く含有するインクとし、錠剤表面での乾燥性を向上させることにも対応できる。
そのため、本発明のインクジェットインクにおいて、溶剤の組成が、水100重量部に対して、エタノール1〜80重量部、さらに、プロピレングリコール0〜150重量部でも問題なく印字することができるのであり、また、このような溶剤組成とすることにより、易崩壊性の錠剤表面等においても、高速の搬送速度にも対応する印字方法となる。
また、この高速の印字方法においても、搬送系へのインクの転写や汚れ、また、錠剤同士での擦れからのインクの転写や剥離を防止できるようになる。
また、高速での安定した吐出を確保するため、インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱泡を行うことが好ましい。
また、高速での安定吐出のため、ドットの不吐出が発生することを防ぎ、安定化するため、脱気装置を設けることが好ましい。インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱気を行うことが好ましい。
また、可食用の材料を取り扱うため、水の割合の多いインクとする場合には、前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、殺菌機構により殺菌することが好ましい。
このような殺菌機構としては、深紫外LED、滅菌フィルタ又は瞬間加熱ヒーターである殺菌機構によるもの等が用いられる。
そのためには、例えば、少なくとも1台のインクジェットヘッドが印字のために稼働している間、他の少なくとも1台のインクジェットヘッドを、所定の領域(以下、これを「メンテナンス領域」あるいは「メンテステーション」と称する)にて待機させるようにすればよい。そして、印字のために駆動しているインクジェットヘッドと、メンテナンス領域で待機しているインクジェットヘッドとが、所定の時間ごとに交換されるようにする。
メンテナンス領域(メンテステーション)に待機させたインクジェットヘッドは、フラッシング、ワイピング、プリカーサ等を行って、インクジェットインクの吐出に適した状態に維持しておくようにすることができる。
ここで、フラッシングとは、インクジェットヘッドのノズル近傍の付着物をとりのぞき、飛行の曲りをなくすためのものであり、ヘッドの全ノズルからインクを強制的に吐出させることをいい、ワイピングとはノズルに付着したごみや飛びはねたインクを払拭することをいう。また、プリカーサとは、インクジェットヘッドのノズルからインクが吐出しない程度の微振動を発生させ、インクメニスカスを振動することをいう。
このようなメンテステーションでの工程は、インクの乾燥性を発揮させるようなインク組成において、特に、効果が発揮される。メンテステーションでのフラッシング、ワイピング、プリカーサ等の実施の間隔も、インクの乾燥性の許容値に応じた対応が必要となる。
そこで、まず、実施例で用いたPVP溶液及び分散体の作製についてそれぞれ記載したのち、実施例の各インクジェットインクの作製について記載する。
さらに、実施例の記載に続いて比較例について記載するが、この比較例では、分散体を作製し、次いで分散体を用いてインクジェットインクを作製した。
そこで、比較例の記載においても、まず、比較例で用いた分散体の作製について記載したのち、比較例の各インクジェットインクの作製について記載する。
その後、各インクの物性、印字性能についての評価・考察を示す。
<PVP溶液(1)の作製>
精製水30重量部、エタノール30重量部の混合溶剤に、PVP(重量平均分子量25800、鉛2ppm以下、アルデヒド500ppm以下、1−ビニル−2−ピロリドン10ppm以下、ヒドラジン1ppm以下)0.6重量部を溶解させて、PVP溶液(1)を作製した。
重量平均分子量の異なるPVP(いずれも、鉛2ppm以下、アルデヒド500ppm以下、1−ビニル−2−ピロリドン10ppm以下、ヒドラジン1ppm以下の条件を満たす)を用いて、下表1の処方としたこと以外は上記PVP溶液(1)の作製と同様にして、PVP溶液(2)〜(7)を作製した。
なお、下表1では、PVP溶液(1)の処方も併記した。また、表中、処方を示す数値は重量部を表している。
<分散体(1)の作製>
PVP溶液(1)30.3重量部に、うばめかしを原料とする備長炭1重量部を混合して、ミルベースを作成した。
このミルベースを、ガラスビーズ(ビーズ組成:SiO2が70〜73重量%、Al2O3が1〜3重量%、Na2Oが12〜15重量%、K2Oが0〜1.5重量%、CaOが7〜12重量%、MgOが1〜4.5重量%、ビーズ粒径:φ0.3〜0.5mm(分布あり))を充填した横型サンドミル(ウレタン樹脂製のビーズ撹拌ディスクを備え、ウレタンライニングを施したアシザワファインテック社製のスターミルLMZ06)により2時間分散処理して、分散体(1)を作製した。
分散体(1)では、顔料である備長炭の平均粒子径は0.36μmであった。
また、分散体(1)について、ジルコニウム濃度を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(堀場製作所製型式ULTIMA2)により測定したところ、ジルコニウムの含有量は検出限界5mg/kg以下、百万分率で表すと5ppm以下であった。
下表2の処方に従い、添加成分や添加量を変更したこと以外は上記分散体(1)の作製と同様にして、分散体(2)〜(10)を作製した。
分散体(2)〜(10)中の色素の平均粒子径は、それぞれ、下表2に示したとおりである。
また、分散体(2)〜(10)について、分散体(1)と同様にジルコニウム濃度を測定したところ、いずれにおいても、ジルコニウムの含有量は検出限界5mg/kg以下、百万分率で表すと5ppm以下であった。
なお、下表2では、分散体(1)の処方も併記した。また、表中、処方を示す数値は重量部を表している。
分散体(1)31.3重量部、プロピレングリコール30重量部、エタノール15重量部、精製水23.7重量部を、ガラス製のビーカーに入れ、ステンレス製のプロペラにて撹拌混合した後、濾過精度1μmのフィルタにより濾過し、インクジェットインクを作製した。
本実施例1で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度をICP発光分析装置(堀場製作所製型式ULTIMA2)で測定したところ、分散体(1)と同様、ジルコニウムの含有量は検出限界5mg/kg以下、すなわち百万分率で5ppm以下であった。
下表3の処方に従い、添加成分や添加量を変更したりしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜19のインクジェットインクを作製した。
実施例2〜19のインクジェットインクについても上記実施例1と同様にジルコニウムの濃度を測定したところ、いずれにおいても、ジルコニウムの含有量は検出限界の5ppm以下であった。
なお、下表3では、実施例1のインクの処方も併記した。また、表中、処方を示す数値は重量部を表している。
<分散体(1A)〜(6A)の作製>
下表4の処方に従い、添加成分や添加量を変更したりしたこと以外は、分散体(1)の作製と同様にして、分散体(1A)〜(6A)を作製した。
なお、表中、処方を示す数値は重量部を表している。
また、HPC(※1)は2重量%HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)水溶液の粘度が2.5mPa・sとなるものである。HPC(※2)は2重量%HPC水溶液の粘度が3.85mPa・sとなるものである。CMCはカルボキシメチルセルロースである。
下表5の処方に従い、添加成分や添加量を変更したりしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜6のインクジェットインクを作製した。
なお、表中、処方を示す数値は重量部を表している。
また、HPC(※1)は2重量%HPC水溶液の粘度が2.5mPa・sとなるものである。HPC(※2)は2重量%HPC水溶液の粘度が3.85mPa・sとなるものである。CMCはカルボキシメチルセルロースである。
各実施例及び比較例のインクジェットインクを、ドロップオンデマンド式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製 HQ−MSI)に充填し、連続して印字テストを行い、その印字テストに基づいて性能を評価した。このときの印字対象物には、素錠を用いている。
実施例1〜19についての結果を下表6に、比較例1〜6についての結果を下表7に、それぞれ示す。
「平均粒子径」は、日機装株式会社製の粒度分布計(UPA型)を用いてインクジェットインク中の顔料のメジアン径(d50)を測定した。
「粘度」(20℃、mPa・s)は、TOKI産業社製の粘度計(EHコーン型)を用いて測定した。
「再分散性」は、作製後24時間以上放置したインクジェットインクを、人の手によって20回振とうさせたのちに濾過し、その濾紙に顔料が残留するか否かで評価した。
「にじみ」は、印字した錠剤表面を目視にて評価した。
「定着性(剥離)」は、印字対象物を疑似錠剤(素錠)とし、当該錠剤に対して各実施例にて作製したインクジェットインクを用いて印字し、印字部分を綿棒で擦ったときの剥離の有無により確認した。
「視認性」は、印字物を目視し、文字の判別により評価した。
「こすり」は、錠剤と錠剤をこすっての剥離の有無を評価した。
「転写」は、印字直後の印字面に錠剤を接触させて、転写するかの確認をした。また、印字直後に毛ブラシに接触させてインクの付着を確認した。
「45℃環境印字性能」は、室温を45℃に保持した環境室内にてインクジェットプリンタでの印字テストを行なったときの、連続吐出性及び印字性能を評価した。
「5℃環境印字性能」は、室温を5℃に保持した環境室内にてインクジェットプリンタでの印字テストを行なったときの、連続吐出性及び印字性能を評価した。
「連続吐出性」は、ノズルの詰り、印字不良、フォント異常等の有無で判定した。
「循環機構なしの初期ドット」は、1時間放置後の最初の印字における印字状態で不吐出の有無で確認した。
「乾燥性」は、印字直後の印字面に、印字直後の秒数に設定したタイミングにて毛質の刷毛を接触させ、転写の有無にて評価した。
なお、判定基準は以下のとおりである。
◎は、非常に良好
○は、良好
△は、良好品よりも若干劣る。
×は、明らかな不良。
―は、評価なし。
上記試験では、いずれの実施例も、全般的に良好な印字性能を示すものであったといえる。なお、OD錠,FC錠にも同様に印字テストを行ったが、いずれも良好な印字を示した。
実施例のインクでは、いずれにおいても、分散でのジルコニウムのコンタミも検出されなかった。また、インクの再分散性、にじみもなく、良好な定着性も有していた。
錠剤での印刷におけるこすりや転写も生じない良好な視認性のある印字物を作成できた。
なお、PVPの重量平均分子量から粘度の調整範囲も広くとれ、使用量が1重量%をきっても定着性や転写の問題がなかった。錠剤表面との親和性が認められた。また、このような少量でのPVPの使用量であったため、温度変化の環境テスト、また、連続テストも良好な吐出性を示した。
エタノールが15重量%程度も含有されているため、錠剤表面での乾燥も早く、搬送系での未乾燥インクの転写も生じなかった。
比較例2のインクジェットインクは、分散体(2A)においてCMCをエタノールも加えて溶かしているために、インクでの三二酸化鉄の分散状態が良くなく(再分散性)、それによって平均粒子径の測定もできなかった。プリンタにも入れられない状態であった。
比較例3、4のインクジェットインクは、分散体(3A)、(4A)において70重量%程度の多量のエタノールを使用しているため、ノズルの閉塞が生じやすく、DODプリンタでの適性がなかった。
比較例5のインクジェットインクは、分散体(5A)で精製水を全く用いず食用赤40号のアルミレーキを分散させているので、インクでの再分散性が悪く平均粒子径の測定もできなかった。
比較例6のインクジェットインクは、分散体(6A)の分散はすすんだが、エタノールを多量にいれたため、安定した吐出がやはりできなかった。
上記実施例1〜19において作製したインクジェットインクを、ドロップオンデマンド型インクジェット装置に充填し、連続した印字を実施した。
使用したドロップオンデマンド型インクジェット装置は、インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間及びインクジェットヘッド内にインク循環経路を有する(循環型DOD)。
このような循環機構を有するインクジェット装置を使用することにより、インクジェットヘッド内にインクの滞留や顔料の沈降がなくなり、長時間安定した吐出及び高精細な印字を得た。このインク循環経路には、加熱手段及び放熱手段が設けられており、このような温度調整機構を利用することにより、環境温度変化、また、稼働状況でのインク温度の変化をなくすことができ、安定した吐出及び高精細な印字を継続することができた。
上記実施例1〜19において作製したインクジェットインクを、循環型DODに充填し、連続した印字を実施した。
本実施例21では、インクジェットインクをインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱気や脱泡を行うようにした。
具体的には、循環経路に、カートリッジ状の中空糸繊維を使用した脱気機構、及び、多孔質部材を使用した脱泡機構を付した。
これにより、インク圧力変化による気泡の発生、インクの流動に伴う振動や、外部からの振動による泡の発生があった場合にも、当該脱気機構及び消泡機構によりインクジェットインク中の気体や気泡を除去することができ、高速での印字を安定に継続できた。
上記実施例1〜19において作製したインクジェットインクを用い、インクジェット装置で印字対象物へ印字するために、循環型DODのインクジェットヘッドを2台設置した。
インクジェット装置が稼働し、上記2台の内、一方のインクジェットヘッドが印字対象物へ印字を行っている間、他方のインクジェットヘッドをメンテステーションに待機させ、待機中に、プリカーサ、フラッシング、ワイピングを一定間隔にて実施した。
そして、2台のインクジェットヘッドの内、印字に用いるインクジェットヘッドと、メンテナンスステーションに待機させるインクジェットヘッドとを、所定の時間ごとに変更することで、さらに、長時間安定した吐出及び印字を継続することができた。
また、印字の精度、印字品質共に良好であった。
上記実施例1〜19において作製したインクジェットインクを、ドロップオンデマンド型インクジェット装置に充填し、連続した印字を実施した。
使用したドロップオンデマンド型インクジェット装置は、インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間及びインクジェットヘッド内にインク循環経路を有する(循環型DOD)。
このような循環機構のインク流路部に、深紫外LEDによる殺菌機構を設けインク循環での一般生菌類の殺菌をおこなった。
このインク循環経路に殺菌機構を設けることで、殺菌剤を使用せずとも、菌の繁殖を防ぐことができ、経口するインクの衛生性が確保されるようになった。
Claims (18)
- 可食性の色素と、ポリビニルピロリドンと、水と、プロピレングリコールとを含み、
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が5000〜100000であり、
前記ポリビニルピロリドンの含有割合が0.01〜1.5重量%であり、
前記プロピレングリコールの含有割合が10〜50重量%であり、
可食性材料のみからなる、
インクジェットインク。 - 前記色素が、酸化チタン、酸化鉄、炭末色素、タール系色素のアルミニウムレーキ及びイカスミ色素からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のインクジェットインク。
- さらにエタノールを含む、請求項1又は2に記載のインクジェットインク。
- 前記色素の含有割合が0.1〜5重量%、前記ポリビニルピロリドンの含有割合が0.01〜1.5重量%、エタノールの含有割合が0〜40重量%、水の含有割合が10〜80重量%、プロピレングリコールの含有割合が10〜50重量%である、請求項1から3までのいずれかに記載のインクジェットインク。
- 前記色素が備長炭の粉末である、請求項1から4までのいずれかに記載のインクジェットインク。
- カプセル又は錠剤表面への表示に用いるものである、請求項1から5までのいずれかに記載のインクジェットインク。
- 前記ポリビニルピロリドンが、鉛2ppm以下、アルデヒド500ppm以下、1−ビニル−2−ピロリドン10ppm以下及びヒドラジン1ppm以下の特性をいずれも満たすものである、請求項1から6までのいずれかに記載のインクジェットインク。
- 請求項1から7までのいずれかに記載のインクジェットインクをドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出させて、被印字対象物に前記インクジェットインクを付着させて印字するに当たり、ドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出される前記インクジェットインクを、前記ドロップオンデマンドインクジェット装置のインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させておく、印字方法。
- 前記被印字対象物が錠剤である、請求項8に記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱気を行う、請求項8又は9に記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱泡を行う、請求項8から10までのいずれかに記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの温度調整を行う、請求項8から11までのいずれかに記載の印字方法。
- 前記ドロップオンデマンドインクジェット装置としてインクジェットヘッドを少なくとも2台備えたものを用い、前記インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に供している間、他の少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態で待機させておく、請求項8から12までのいずれかに記載の印字方法。
- 所定の時間内にインクを吐出しないノズルに、一定間隔の時間でノズルの閉塞を防ぐ微振動を与える、請求項8から13までのいずれかに記載の印字方法。
- インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態に維持しておくためにフラッシングを行う、請求項8から14までのいずれかに記載の印字方法。
- インクジェットヘッドの少なくとも1台をインクジェットインクの吐出に適した状態に維持しておくためにワイピングを行う、請求項8から15までのいずれかに記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクを前記インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、深紫外LED、滅菌フィルタ又は瞬間加熱ヒーターである殺菌機構により殺菌する、請求項8から16までのいずれかに記載の印字方法。
- 前記インクジェットインクのジルコニウム濃度が50ppm以下である、請求項8から17までのいずれかに記載の印字方法。
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