JP2019194335A - 顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物 - Google Patents

顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】顔料の平均分散粒子径が小さく、分散性に優れ、かつ、医薬品や食品等の錠剤等に対してインクジェット方式で直接印刷することが可能な可食性の顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物を提供する。【解決手段】本発明に係る顔料組成物は、顔料組成物を含み、かつ、可食性を有するインクジェット用水性インク組成物であって、前記顔料組成物が、酸化鉄のみからなる有色顔料と、質量平均分子量が1500〜10000であり、前記有色顔料の顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウムと、分散媒とを含み、前記酸化鉄のみからなる有色顔料と前記ポリアクリル酸ナトリウムとの含有比が、質量基準で1:0.05〜1:1.5であり、前記酸化鉄のみからなる有色顔料の平均分散粒子径D50が10nm〜300nmであることを特徴とする。【選択図】 なし

Description

本発明は顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物に関し、より詳細には、分散性に優れ、医薬品や食品等の錠剤等に対して、インクジェット方式で直接印刷することが可能な可食性の顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物に関する。
錠剤の医薬品やサプリメント等の食品に対しては、パッケージだけでなく錠剤本体にも製品情報を表示することによって、それらの識別性を向上させ、調剤ミスや誤飲防止などが図られている。表面がコーティングされた錠剤は、グラビア印刷などの接触方式で印刷できるため、識別性の高い情報表示が行われている半面、表面の平滑性が悪い素錠やOD(口腔内崩壊)錠では接触方式による印刷が困難となっている。そのため、これらの錠剤に対しては、簡単な文字しか表示できない刻印方式が主流となっている。その結果、特に製薬業界では、素錠やOD錠等に対しても識別性の高い情報表示が可能な、新たな印刷方法に対するニーズが高まっている。
そのような印刷方法としては、例えば、染料を用いた水性インク組成物によるインクジェット方式の印刷が挙げられる(下記特許文献1参照)。しかしながら、前記水性インク組成物を用いて医薬品の錠剤等に印刷すると、印刷画像が滲み耐光性に劣るという問題がある。このような問題を解決する方法の一つとして、染料等に代えて顔料を用いたスタンプ印刷を行うことにより、耐光性を向上させて、滲みの問題を解消する方法が挙げられる。
しかし、顔料を用いたスタンプ印刷の場合、印刷版の作成が必要であり、小ロット生産では作業性が悪いという問題を有している。そのため、インクジェット方式により直接印刷する方法が考えられるが、スタンプ印刷に用いられる水性インク組成物の顔料は平均分散粒子径D50が400nm〜2000nm(D99では2000nm〜10000nm)程度と大きく、当該インクジェット方式での印刷には適さないという問題がある。
特開2011−236279号公報
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、顔料の平均分散粒子径が小さく、分散性に優れ、かつ、医薬品や食品等の錠剤等に対してインクジェット方式で直接印刷することが可能な可食性の顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物を提供することにある。
本願発明者等は、前記問題点を解決すべく、顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物について検討した結果、下記構成を採用することにより前記の問題点を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る顔料組成物は、前記の課題を解決する為に、酸化鉄からなる有色顔料と、質量平均分子量が1500〜10000のポリアクリル酸ナトリウムとを含み、前記酸化鉄からなる有色顔料と前記ポリアクリル酸ナトリウムとの含有比が、質量基準で1:0.05〜1:1.5であり、前記酸化鉄からなる有色顔料の平均分散粒子径D50が10nm〜300nmであることを特徴とする。
前記の構成によれば、染料の代わりに酸化鉄からなる有色顔料を用いるので、本発明の顔料組成物を、例えば、インクジェット用水性インク組成物に用いた場合には、染料を用いたインク組成物と比較して、耐光性の向上が図れる。
また、前記の構成によれば、酸化鉄からなる有色顔料の顔料分散剤として、質量平均分子量が1500〜10000の範囲内のポリアクリル酸ナトリウムを用いるので、平均分散粒子径10nm〜300nmの範囲内で、顔料の再凝集を防止すると共に、分散性の向上と良好な保存安定性の維持が図られる。さらに、有色顔料とポリアクリル酸ナトリウムとの含有比を、質量基準で1:0.05〜1:1.5の範囲内にすることにより、顔料の分散性の低下を防止すると共に、ノズルの目詰まり等に起因する吐出安定性の低下も防止することができる。従って、前記構成の顔料組成物によれば、例えば、医薬品等の固体製剤に対してもインクジェット方式での直接印刷を可能にし、また、上述の通り、耐光性にも優れているので、印刷画像の滲みの発生も防止することができる。
本発明に係るインクジェット用水性インク組成物は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の顔料組成物を含み、かつ、可食性を有するものであることを特徴とする。
前記顔料組成物においては、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合したポリアクリル酸ナトリウムが顔料分散剤として使用されているので、当該顔料組成物を含むインクジェット用水性インク組成物は、医薬品や食品等の固体製剤に対し、インクジェット方式で直接印刷するインク材料に好適に用いることができる。また、前記顔料組成物においては、染料の代わりに酸化鉄からなる有色顔料を用いているので、例えば、医薬品等の固体製剤表面にインクジェット方式で印刷しても、印刷画像は耐光性に優れ、かつ、滲みの発生を防止することができる。尚、可食性とは、医薬品若しくは医薬品添加物として経口投与が認められている物質、及び/又は食品若しくは食品添加物として認められている物質のみからなることを意味する。
また、本発明に係るインクジェット用水性インク組成物の製造方法は、前記の課題を解決する為に、分散媒に、酸化鉄からなる有色顔料とポリアクリル酸ナトリウムを、同時に又は任意の順序で添加し、顔料組成物を作製する工程を含み、かつ、気泡を減少又は消失させる消泡工程を含まないことを特徴とする。
気泡は、例えば、インクジェットヘッドからインクを吐出させる際に、ノズル抜けや吐出不良、オープンタイムの低下を招来するものであるが、前記の構成によれば、顔料分散剤として、気泡の発生を抑制することが可能なポリアクリル酸ナトリウムを用いるので、前記ノズル抜け等の吐出安定性の低下を防止することができる。また、気泡を減少又は消失させるための消泡工程も省略することができるので、従来のインクジェット用水性インク組成物の製造方法と比較して、製造工程数の削減が可能となり、製造効率の向上が図られる。
本発明に係る固体製剤は、前記の課題を解決する為に、錠剤又はカプセル剤からなり、インクジェット用水性インクの乾燥皮膜を表面に有する固体製剤であって、前記インクジェット用水性インクが、請求項2に記載のインクジェット用水性インク組成物からなることを特徴とする。
前記の構成によれば、インクジェット用水性インクとして、酸化鉄の有色顔料とポリアクリル酸ナトリウムを含むインクジェット用水性インク組成物を用いるので、当該インクジェット用水性インクでインクジェット記録方法により直接印刷しても、耐光性に優れ、かつ、滲みの発生を防止した印刷画像を実現することができる。これにより、固体製剤本体にも製品情報を表示することが可能になり、識別性を向上させ、調剤ミスや誤飲防止を図ることが可能な固体製剤を提供することができる。尚、本発明の固体製剤は、食品製剤及び医薬製剤を含む意味である。
本発明によれば、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合し、かつ、酸化鉄の有色顔料に対し良好な分散性及び保存安定性を付与するポリアクリル酸ナトリウムを含有させるので、医薬品や食品等の固体製剤に対し、インクジェット方式で、良好な吐出安定性にて直接印刷することが可能な顔料組成物及びインクジェット用水性インク組成物を提供することができる。また、酸化鉄の有色顔料を用いたインクジェット用水性インク組成物は、染料等を用いたものと比較して耐光性に優れ、印刷画像の滲みも防止することができる。
さらに、本発明によれば、ポリアクリル酸ナトリウムは気泡の発生を抑制することも可能であるので、当該気泡を減少又は消失させるための消泡工程の省略が図れる。その結果、本発明の顔料組成物の製造方法及びインクジェット用水性インク組成物の製造方法は、従来の製造方法と比較して、製造工程数の削減が可能となり、製造効率の向上が図られる。
(顔料組成物及びその製造方法)
本実施の形態に係る顔料組成物は、酸化鉄の有色顔料(以下、「顔料」という場合がある。)と、ポリアクリル酸ナトリウムを少なくとも含む組成物である。
前記酸化鉄の有色顔料としては、例えばベンガラ等が挙げられる。さらに、前記ベンガラとしては、例えば、赤色のα−Fe(ヘマタイト)、褐色のγ−Fe(マグマヘイト)、黒色のFe(マグネタイト)、黄色のα−FeOOH等が挙げられる。これらの顔料は適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。但し、本実施の形態の顔料組成物を医薬品やサプリメント等の固体製剤表面への印刷用として用いる場合、酸化鉄の有色顔料は、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準(以下、「薬事法等の基準」という。)に適合するものであることが好ましい。尚、本実施の形態に於いて、有色顔料とは、白色顔料以外の顔料であって、可視光波長域(380〜780nm)における何れかの光を吸収するものを意味する。
前記顔料の平均一次粒子径(体積平均粒子径)としては、30nm〜800nmが好ましく、75nm〜250nmがより好ましく、75nm〜210nmが特に好ましい。前記平均一次粒子径が30nm以上であると、耐光性の低下を抑制することができる。その一方、前記平均一次粒子径が800nm以下であると、高色彩化が図れる。尚、平均一次粒子径は顔料を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径である。また、本実施の形態に於いては、単分散の粒径分布を持つ顔料を用いるが、本発明はこれに限定されず、広い粒径分布を持つ顔料を用いてもよい。また、単分散の粒径分布を持つ顔料を2種以上混合して使用してもよい。
前記顔料の含有量は画像濃度に直接影響するものであり、後述の水性インク組成物の保存性や粘度、pH等に影響を及ぼすものであることから、これらの点を考慮して適宜設定すればよい。通常は、顔料組成物の全質量に対し2質量%〜20質量%の範囲内が好ましく、5質量%〜15質量%の範囲内がより好ましい。顔料の含有量を2質量%以上にすることにより、画像濃度の低下を抑制することができる。その一方、顔料の含有量を20質量%以下にすることにより、光沢性の低下やノズルの目詰まり、吐出安定性の低下を防止することができる。
分散状態にある前記顔料の平均分散粒子径D50は、10nm〜300nmの範囲内であり、25nm〜200nmの範囲内が好ましい。また、前記顔料の分散粒子径D99(体積積算粒度分布における積算粒度で99%の粒径)は、100nm〜800nmの範囲内が好ましく、100nm〜600nmの範囲内がより好ましい。前記D50を10nm以上にすることにより、保存安定性、耐光性及び吐出安定性の悪化を防止し、印刷濃度の低下も防止することができる。その一方、前記D50を300nm以下、又はD99を800nm以下にすることにより、前記顔料の分離や沈降及び凝集を防止し、保存安定性の維持が図れる。尚、顔料の平均分散粒子径D50及びD99は、マイクロトラックUPA−EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した値である。
前記ポリアクリル酸ナトリウムは顔料分散剤としての機能を有する。ポリアクリル酸ナトリウムを配合することにより、酸化鉄の有色顔料の分散性の向上が図れる。また、ポリアクリル酸ナトリウムは、薬事法等で定める基準に適合するものである。従って、ポリアクリル酸ナトリウムは、医薬品又は食品等の錠剤等への印刷に好適に用いることができる。
また、ポリアクリル酸ナトリウムは、例えば、後述する分散媒に添加する際に、他の従来の顔料分散剤の様に気泡を発生することがない。そのため、本実施の形態の顔料組成物においては消泡剤の添加を省略することができる。
ポリアクリル酸ナトリウムの質量平均分子量は1500〜10000であり、2000〜8000が好ましい。質量平均分子量を1500以上にすることにより、顔料表面に吸着したポリアクリル酸ナトリウムが立体障害等による反発力を十分に発揮させることができ、これにより、顔料同士が再凝集するのを抑制することができる。その一方、質量平均分子量を10000以下にすることにより、顔料の平均分散粒子径D50を300nm以下にし、その分散性が低下するのを防止することができる。
前記酸化鉄の有色顔料と前記ポリアクリル酸ナトリウムとの含有比は、質量基準で1:0.05〜1:1.5であり、1:0.1〜1:1であることが好ましい。前記含有比が1:0.05以上であると、有色顔料の分散性の低下を防止することができる。その一方、前記含有比が1:1.5以下であると、例えば、インクジェット用水性インク組成物に用いた場合に、ノズルプレートの付着に起因する吐出安定性の低下を防止することができる。
本実施の形態に係る顔料組成物に於いては、有色顔料を分散させるための分散媒が含まれる。分散媒としては水が挙げられ、より詳細には、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものが挙げられる。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、分散媒の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
また、前記分散媒としては、前記水と水溶性有機溶剤の混合溶液を用いてもよい。前記水溶性有機溶剤としては特に限定されず、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−へキサントリオール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどの多価アルコール類;N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。また、これらの水溶性有機溶剤のうち、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に該当するものとして、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンが好ましい。さらに、分散媒に水溶性有機溶剤を用いる場合の配合量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
本実施の形態の顔料組成物の製造方法において、顔料、ポリアクリル酸ナトリウム、分散媒及び必要に応じて配合するその他の添加剤の混合方法や添加順序は、特に限定されない。例えば、顔料、ポリアクリル酸ナトリウム及び分散媒としての水等を一度に混合し、この混合液に対し通常の分散機を用いて分散処理を施してもよい。
但し、本実施の形態に於いては、顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウムを用いることにより、顔料組成物に気泡が発生するのを抑制することができる。そのため、当該気泡を低減又は消失させるための消泡工程を省略することができ、製造効率の向上が図れる。また、消泡剤の含有も省略できるので、薬事法等の基準に適合した顔料組成物の製造が一層容易になる。
分散処理における分散時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。顔料の分散処理の際に使用される前記分散機としては、一般に使用される分散機であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、ナノマイザー等が挙げられる。
尚、本実施の形態の顔料組成物は、最終製品たるインクジェット用水性インク組成物(詳細については後述する)の形態のほか、当該水性インク組成物を調製するための顔料分散液の形態をも包含するものである。
(インクジェット用水性インク組成物及びその製造方法)
本実施の形態に係るインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)は、少なくとも前記顔料組成物を含み、主溶媒が水である水性インクである。また、本実施の形態の水性インク組成物は可食性を有し、インクジェット記録用として好適に用いられるものである。さらに、水性インク組成物は色材として顔料が用いられることから、染料を用いたインク組成物と比較して発色性や耐光性、耐水性等の点で優れている。
前記顔料組成物の含有量は、水性インク組成物の全質量に対し顔料分換算で2質量%〜20質量%の範囲が好ましく、5質量%〜15質量%の範囲内がより好ましい。顔料組成物の含有量を2質量%以上にすることにより、着色力を向上させることができる。その一方、顔料組成物の含有量を20質量%以下にすることにより、分散性を向上させることができる。
本実施の形態に係る水性インク組成物に於いては、水(主溶媒としての水)を含有する。前記水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものを用いるのが好ましい。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
本実施の形態の水性インク組成物においては、その他の添加剤が配合されていてもよい。但し、医薬品等の固体製剤に対するインクジェット用インクとして用いる場合には、薬事法等の基準に適合するものであることが好ましい。また、本実施の形態に於いては、顔料分散剤であるポリアクリル酸ナトリウムを添加しても気泡の発生を抑制することができることから、消泡剤の添加を省略することができる。さらに、インクジェットヘッドから本実施の形態の水性インク組成物を吐出させる際には、当該気泡が当該水性インク組成物中に存在しないことから、ノズル抜けや吐出不良、オープンタイムの低下も抑制することができる。
前記添加剤としては、表面張力調整剤、湿潤剤(乾燥防止剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤の含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
前記表面張力調整剤としては、薬事法等の基準に適合するものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸デカグリセリル、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。
前記表面張力調整剤の添加量は、水性インク組成物の表面張力を25〜40mN/mに調整できる範囲が好ましく、27〜36mN/mに調整できる範囲がより好ましい。添加量が前記範囲内であると、インクジェット方式での印刷の際の吐出安定性の確保等が図れる。
前記湿潤剤としては、薬事法等の基準に適合するものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
前記湿潤剤の添加量は、水性インク組成物の全質量に対し、3質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましい。
本実施の形態の水性インク組成物は、前述の各成分を適宜な方法で混合することよって製造することができる。即ち、例えば、顔料組成物の分散液に、別途前記添加剤等を加え、更に水にて希釈する。その後、十分に撹拌し、必要に応じて目詰まりの原因となる粗大粒子及び異物を除去するための濾過を行う。これにより、本実施の形態に係る水性インク組成物を得ることができる。
また、本実施の形態に於いては、顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウムを用いることにより、水性インク組成物に気泡が発生するのを抑制することができる。そのため、当該気泡を低減又は消失させるための消泡工程を省略することができ、製造効率の向上が図れると共に、消泡剤の含有も省略できるので、薬事法等の基準に適合した水性インク組成物の製造が一層容易になる。
尚、各材料の混合方法としては特に限定されず、例えば、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合を行う。また、濾過方法としては特に限定されず、例えば、遠心濾過、フィルター濾過等を採用することができる。
本実施の形態の水性インク組成物は、インクや塗料に適用することができる。また、本実施の形態の水性インク組成物は、酸化鉄の有色顔料の分散性に優れているので、インクジェット用インクに好適に使用することができる。特に、本実施の形態の水性インク組成物は、薬事法等の基準に適合した顔料及び顔料分散剤を用いているので、可食性を有しており、医薬品やサプリメント等の錠剤やカプセル剤からなる固体製剤の表面に直接印刷することが可能である。また、素錠やOD錠など表面の平滑性が悪い錠剤等に対しても、インクジェット方式による非接触印刷を可能にする。さらに、水性インク組成物は耐光性にも優れているので、医薬品やサプリメント等の固体製剤の表面に直接印刷しても滲みの発生を防止することができる。
(固体製剤)
本実施の形態の固体製剤は、錠剤又はカプセル剤からなり、当該固体製剤の表面には、前記水性インク組成物からなるインクジェット用水性インクを用いて、インクジェット記録方法により直接印刷されたものである。上述の通り、水性インク組成物は耐光性に優れ、滲みの発生もないので、固体製剤には、製品情報など使用者の識別性を向上させるための各種情報を印刷することでき、その結果、調剤ミスや誤飲の防止が可能になる。
錠剤は常温下において固体状であり、例えば、有効成分を含む錠剤材料を一定の形状に圧縮及び/又は成形により製造されたものが好ましい。また、カプセル剤は、粉末状、顆粒状、液状等の医薬品等を、ゼラチンやセルロース誘導体等からなるカプセルに充填され、又はカプセル基剤で被包成形して製造されたものが好ましい。錠剤及びカプセル剤の形状は特に限定されず、任意の形状を採用することができる。また、錠剤及びカプセル剤は、医薬品用途のものであってもよく、食品用途のものであってもよい。食品用途の錠剤の例としては、錠菓やサプリメント等の健康食品が挙げられる。
固体製剤の表面に対するインクジェット記録方法については、特に限定されない。具体的には、例えば、微細なノズルより前記水性インク組成物を液滴として吐出し、その液滴を固体製剤表面に付着させることにより行うことができる。吐出方法として特に限定されず、例えば、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等の公知の方法を採用することができる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている材料や含有量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
(実施例1〜19)
実施例1〜19においては、顔料と分散剤が表1に示す配合割合となる様に、各材料を容器に入れ、ペイントシェーカーにて、常温下で64時間(分散時間)分散させた。また、分散の際にはジルコニアビーズを混合させて行った。
次に、各顔料組成物に、表面張力調整剤、湿潤剤としてのプロピレングリコール(PG)及び水を加え、表2〜5に示す配合割合となる様に、水性インク組成物を調製し、ディスパーにて撹拌した。これにより、各実施例の水性インク組成物を作製した。尚、顔料組成物及び水性インク組成物の作製過程においては、いずれも気泡が発生しなかったことから消泡剤の添加による消泡工程は行わなかった。
また、下記表1〜表5中の数値は、特に表記がない限り、質量%で表したものである。また、各材料は何れも薬事法等の基準に適合するものである。
(比較例1〜5)
比較例1〜5においては、水性インク組成物の配合組成を下記表1〜表6に示すものに変更した。それ以外は、前記実施例1等と同様の方法にて、各顔料組成物及び水性インク組成物を作製した。
Figure 2019194335
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Figure 2019194335
Figure 2019194335
Figure 2019194335
Figure 2019194335
(実施例20〜25)
実施例20〜25においては、下記表7及び表8に示す配合組成にて、それぞれ顔料組成物を作製した。また、各実施例の顔料組成物の調製は、次の操作により行った。即ち、顔料と分散剤が表7及び表8に示す配合割合となる様に混合し、さらに水を加えてペイントシェーカーにて、常温下で64時間(分散時間)分散させた。また、分散の際にはジルコニアビーズを混合させて行った。これにより、各実施例の顔料組成物を作製した。尚、顔料組成物の作製過程においては、いずれも気泡が発生しなかったことから消泡剤の添加による消泡工程は行わなかった。
(比較例6〜8)
比較例6〜8においては、顔料組成物の配合組成を下記表8に示すものに変更した。それ以外は、前記実施例20等と同様の方法にて、各顔料組成物を作製した。
Figure 2019194335
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(顔料の平均分散粒子径の測定)
各実施例及び比較例の水性インク組成物における顔料の平均分散粒子径D50及びD99は、マイクロトラックUPA−EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した。
(吐出安定性(飛翔性))
記録媒体としてマット紙(商品名:スーパーファイン紙、エプソン(株)製)を用意し、実施例1〜19及び比較例1〜5で調製した水性インク組成物をそれぞれ用いて印刷を行った。印刷は、インクジェットプリンタ(KC 600dpiヘッド搭載印字治具)を用いて、シングルパス(ワンパス)方式にて行った。
ノズル欠け増加数及び寝ぼけの評価は、ヘッドから水性インク組成物を吐出させた後、インクジェットプリンタを停止させ、その後、再度印刷したときの印刷画像にノズル欠けがどれくらい増加したか、及び寝ぼけが観察されたか否かにより行った。尚、ノズル欠けとは目詰まりが発生したノズルから水性インク組成物からなるインク滴が吐出されないことを意味する。寝ぼけとは、印刷の初期において、印刷画像がぼやけ不鮮明となることを意味する。
ノズル増加数の評価は、下記の基準を用いて行った。
○:オープンタイム15分におけるノズル抜け増加数が0
×:オープンタイム15分におけるノズル抜け増加数が1本以上
また、寝ぼけの評価は、下記の基準を用いて行った。
○:オープンタイム15分における画像の書き出し部分の擦れが1mm未満
×:オープンタイム15分における画像の書き出し部分の擦れが1mm以上
また、オープンタイムの評価は、最初にヘッドから水性インク組成物を吐出させた後に停止し、15分経過後に再度印刷して、その際の印刷画像にノズル抜け及び書き出しの擦れの有無を評価したものである。表中の○はノズル抜け及び書き出しの擦れがない場合を意味する。尚、擦れとは、印刷の初期において、印刷画像が擦れることを意味する。
(保存安定性)
実施例1〜19及び比較例1〜5で調製した水性インク組成物について、それぞれ保存安定性を評価した。
すなわち、各水性インク組成物における顔料の平均粒径d1を測定した。顔料の粒径は、前記マイクロトラックUPA−EX150を用いて測定した。その後、各水性インク組成物を70℃、14日間の条件で長期保存した。
さらに、水性インク組成物を長期保存する前の温度に戻した後、前記と同様にして水性インク組成物中の顔料の平均粒径d2を測定した。続いて、長期保存前後の顔料の粒径の値を用いて、D(%)=(d2−d1)/d1×100の計算式により、各Dの値を算出した。そして、下記の評価基準を用いて、長期保存時の顔料の保存安定性の評価を行った。尚、下記Dの値が小さい程、長期保存時の顔料の保存安定性が高い。
○:Dが10%未満
×:Dが10%以上
(気泡評価)
実施例1〜19及び比較例1〜5の水性インク組成物について、それぞれ泡評価を行った。すなわち、各水性インク組成物を100mlのメスシリンダーに100ml入れて液面高さを測定した。続いて、各水性インク組成物を200mlのガラスサンプル瓶に入れて、縦に10回振り、その後、前記メスシリンダーに水性インク組成物を移した。最後に、水性インク組成物を入れたメスシリンダーを5分間静置し、当該水性インク組成物の液面高さを測定した。
尚、気泡評価は、下記の評価基準を用いて行った。
○:液面高さが初期の液面高さと比較して10mm未満
△:液面高さが初期の液面高さと比較して10mm以上30mm未満
×:液面高さが初期の液面高さと比較して30mm以上
(結果)
表2〜5に示す実施例1〜19の実験結果から分かる通り、各種の酸化鉄からなる顔料に対し、ポリアクリル酸ナトリウムを顔料分散剤として配合させた場合には、顔料の平均分散粒子径D50の値を10nm〜300nmの範囲内にすることができ、分散性、吐出安定性(飛翔性)及び保存安定性に優れた水性インク組成物を製造できることが確認された。
一方、顔料分散剤としてポリアクリル酸ナトリウムを用いた場合でも、当該ポリアクリル酸ナトリウムの質量平均分子量が50000である比較例1、3及び4においては、顔料の粒子径が大きく、保存安定性が低下した(表2〜4参照)。また、ポリアクリル酸ナトリウム以外の顔料分散剤を用いた比較例2及び5においては、保存安定性が低く、気泡も発生した(表2及び6)。尚、比較例2及び4の水性インク組成物については、顔料のD99の値が大きすぎたため、吐出安定性の評価は行っていない。また、比較例2及び5の水性インク組成物については、シリコーン消泡剤(シリコーン樹脂エマルション(商品名;KM72、信越化学工業(株)製))を添加することにより気泡を低減又は消滅させることができる。
また、表7及び8に示す実施例20〜25の実験結果から分かる通り、分散剤/顔料比を0.05〜1.5の範囲内にすることにより、顔料の平均分散粒子径D50の値を10nm〜300nmの範囲内にすることができた。その一方、比較例6〜8の水性インク組成物の様に、分散剤/顔料比が2以上であると、D50の値が300nmを超え、あるいは顔料が分散しなくなった。

Claims (3)

  1. 顔料組成物を含み、かつ、可食性を有するインクジェット用水性インク組成物であって、
    前記顔料組成物が、酸化鉄のみからなる有色顔料と、質量平均分子量が1500〜10000であり、前記有色顔料の顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウムと、分散媒とを含み、
    前記酸化鉄のみからなる有色顔料と前記ポリアクリル酸ナトリウムとの含有比が、質量基準で1:0.05〜1:1.5であり、
    前記酸化鉄のみからなる有色顔料の平均分散粒子径D50が10nm〜300nmであるインクジェット用水性インク組成物。
  2. さらに、表面張力調整剤及び湿潤剤を含む請求項1に記載のインクジェット用水性インク組成物。
  3. 錠剤又はカプセル剤からなり、インクジェット用水性インクの乾燥皮膜を表面に有する固体製剤であって、
    前記インクジェット用水性インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット用水性インク組成物からなる固体製剤。
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