JP2015063586A - 液体噴射用液体、液体噴射記録ヘッド及び液体噴射記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】噴射孔から飛翔し、食品などの被記録媒体上に着弾する液体噴射用液体であって、被記録媒体の種類を問わず、前処理等の手間をかけずに被記録媒体上へ着弾時にゲル化することにより、画像の滲みを抑制できる液体噴射用液体を提供する。
【解決手段】水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体。
【選択図】図1
【解決手段】水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体。
【選択図】図1
Description
本発明は、噴射孔から飛翔し、食品などの被記録媒体上に着弾する液体噴射用液体であって、被記録媒体の種類を問わず、前処理等の手間をかけずに被記録媒体上へ着弾時にゲル化することにより、画像の滲みを抑制できる特徴を提供する液体噴射用液体に関する。
液体噴射記録方式は、印刷版を用意する必要のある印刷方式と異なり、一台の機械で様々なパターンを印字できる事から、例えば梱包材やポスター、車体のラッピングなど幅広い分野での利用が可能なものである。数ある記録媒体分野の中でも、近年は情報印字や嗜好表現などを目的に食品への直接印字や、食品包装材への印字が行われるようになってきている。こういった食品関連記録媒体への直接印字は、従来は主にスクリーン印刷方式が用いられてきた。しかし、ヘッドが印刷基材に接触しないため衛生的であること、版を用いないため小ロットの案件を低コストで印刷できることから、現在液体噴射記録方式はこの分野で有望視されている。
上記のような液体噴射記録方式による食品への印字は、近年実用化され、最新ビジネスとして注目を浴びている技術である。具体的には、食品に社名を印字して宣伝用に配布したり、冠婚葬祭等の記念に写真や絵画を印字して近しい人間に配布したりする。そういった場面で記録媒体として用いられている食品は、生クリームケーキ、クッキー、せんべい、パン、マシュマロ、チョコレート、高野豆腐、卵殻など多岐にわたる。
そういった市場の必要性に合わせ、人が食することができる液体噴射記録用の液体噴射用液体の開発も進められており(特許文献1)、それらは可食用の液体噴射用液体と呼ばれている。人が食しても害のない材料を用いることが必須となるため、溶剤に水やエタノールを用いたものが一般的である。これらの液体噴射用液体は、食品へ液滴が着弾する際、食品表面に液体噴射用液体が染みこむことで定着する。そのため、染みこんだ際に滲むことによって高精細な画像が得られないことが問題となっている。
そこで、この問題を解消するため、液体噴射用液体や記録媒体の前処理液にゲル化剤を含有させ、記録媒体に着弾時に液体噴射用液体をゲル化させる技術が考案されている(特許文献2、3)。液体噴射記録ヘッドから吐出される前は液体であり、噴射後に別の溶液と反応させることでゲル化する物質として、特許文献2および3ではアルギン酸が用いられている。アルギン酸を溶解した溶液は、多価金属イオンと接触するとアルギン酸同士を結合させる架橋反応を起こし、水やエタノールに不溶なゲルを形成することが知られている。この技術は、人工イクラを作製する技術に応用されており、水やエタノールを溶媒としてアルギン酸を溶解すれば、人が食しても安全な材料で溶液をゲル化することが可能である。
特許文献2に記載されている技術は、記録媒体に施す前処理液にアルギン酸が含有されており、液体噴射用液体に含まれる染料と接触することでゲル化させるもので、特許文献3に記載されている技術は、液体噴射用液体にアルギン酸が含有されており、記録媒体として用いる紙に含まれる多価金属イオンと接触することでゲル化させるものである。
しかしながら、特許文献2に記載されている技術は、液体噴射用液体とは別に前処理液が必要であり、その前処理液を記録媒体に施す手間がかかる。また、可食の液体噴射用液体に使用される着色材には多価金属イオンが含まれているとは限らないため、色によってはゲル化反応をしない可能性がある。そして、特許文献3に記載されている技術は、記録媒体に多価金属イオンが含まれている必要があり、記録媒体の種類が限定されてしまう。あらゆる食品への展開を考えると、この点は重大な欠点である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被記録媒体の種類を問わず、前処理等の手間をかけずに被記録媒体上へ着弾時にゲル化することにより、画像の滲みを抑制できる特徴を持つ液体噴射用液体を提供する事を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射用液体は以下の手段を採用している。
本発明は、水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体を提供する。
本発明は、水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体を提供する。
また、本発明は、水またはエタノールを主溶剤とし、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらにアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体を提供する。
本発明によれば、水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む構成を採用することにより、人間が食しても無害である物質のみを用いて、液体噴射用液体を記録媒体へ着弾時にゲル化させ、印字時の滲みを防止することが可能となる。また、この構成によれば、記録媒体への前処理剤塗布等の前処理手順を踏まずに、液体噴射用液体を記録媒体へ着弾時にゲル化させることが可能である。
上記の液体噴射用液体に含まれるアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質と塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質は、どちらかの物質がマイクロカプセルに溶液として内包されており、どちらかの物質がマイクロカプセルの外部の溶液に溶解されていればよい。したがって、水またはエタノールを主溶剤とし、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらにアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む構成としてもよい。
さらに、前記マイクロカプセルが、水やエタノールに溶解せず、40℃以上の熱をかけることで融解するものである、という構成を採用する。この構成によれば、主溶剤である水やエタノールにマイクロカプセルが溶解することや、印字前に室温においてマイクロカプセルが崩壊することなく、安定的に保存することができる。そして、印字後に食品等の記録媒体に40℃以上の熱をかけることで、マイクロカプセルが崩壊し、液体噴射用液体がゲル化することで滲みを抑制できる。クッキー等の余熱が残っている記録媒体では、熱を加える手間もなく、マイクロカプセルを崩壊させることができる。
また、前記マイクロカプセルが油溶性である、という構成を採用する。この構成によれば、生クリーム等の動物性または植物性の油分を含む食品等の記録媒体に着弾することで、マイクロカプセルが崩壊し、液体噴射用液体がゲル化することで滲みを抑制できる。熱に弱い記録媒体上でも、にじみを防止する効果を発揮することが可能である。
上記マイクロカプセルの特徴のうち、40℃以上の熱をかけることで融解すること、または油溶性であることのどちらかを備えていればよい。40℃以上の熱をかけることで融解するものに関しては、印字後に熱をかけることが可能な記録媒体に使用できる。また、油溶性であるものに関しては、印字後に熱をかけることができない記録媒体でも、油分を含んでいればゲル化の効果を発揮することができる。
アルギン酸溶液と多価金属イオン溶液のゲル化反応は、人工イクラ作製技術にも実使用されており、汎用性が高く、ゲル化した反応物や元の溶液を人が食べても安全である。アルギン酸溶液として、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質と多価金属イオン溶液として、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を必須成分とすることで、人間が食しても無害である物質のみを用いて、液体噴射用液体をメディア着弾時にゲル化させ、印字時の滲みを防止することが可能となる。また、記録媒体への前処理剤塗布等の前処理手順を踏まずに、液体噴射用液体を記録媒体へ着弾時にゲル化させることが可能となる。
水またはエタノールを主溶剤とすることで、人間が食しても無害である溶剤を用いて、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質及び塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質が溶解した液体噴射用液体の構成が可能となる。そのため、水またはエタノールは本発明において必須の成分である。
熱をかけることで融解するマイクロカプセルは、40℃以上の熱をかけた場合に融解する構成とすることで、室内等に保管中にゲル化することなく、記録媒体に着弾時に熱をかけることでゲル化させることができる。40℃に満たない温度で溶解する構成では、夏場の常温(25℃〜35℃)で倉庫などの室内で保管しておいた場合、マイクロカプセルが融解して使用前にゲル化してしまう。また、このとき、主溶剤である水、エタノールに溶解しない物質とすることで、室内等に保管中にゲル化することを防ぐことができる。この構成によれば、クッキーやせんべい、ケーキ生地等、加熱可能である、または加熱処理を行う食品への印字時ににじみを防ぐことが可能である。
また、マイクロカプセルの構成を、油溶性の物質で構成することで、生クリーム等の加熱ができない食品への印字時にも、滲みを防止することが可能となる。記録媒体へ着弾時に記録媒体の油分でマイクロカプセルが崩壊し、ゲル化することが可能である。
本発明の着色材としては、公知の天然または合成食用色素が使用できる。なお、いずれもその液体噴射用液体の溶剤への溶解性を考慮した上で使用するものである。具体的には、合成色素としては食用赤色2号(アマランス)、食用赤色3号(エリスロシン)、食用赤色40号(アルラレッド)、食用赤色102号(ニューコクシン)、食用赤色104号(フロキシン)、食用赤色105号(ローズベンガル)、食用赤色106号(アシッドレッド)、食用黄色4号(タートラジン)、食用黄色5号(サンセットイエロー)、食用青色1号(ブリリアントブルー)、食用青色2号(インジゴカーミン)、(以下、ダイワ化成株式会社製)食用色素製剤うに色SS−8、食用色素製剤金茶色SN−8、食用色素製剤ダイワレッドFN−8、食用色素製剤オレンジ色S、食用色素製剤梅漬紅色、食用色素製剤メロン色、食用色素製剤メロングリーンT、食用色素製剤みどり色B、食用色素製剤挽茶色、食用色素製剤チョコレート色B、食用色素製剤チョコレート色No.4、食用色素製剤チョコレート色No.5、食用色素製剤ぶどう色、食用色素製剤くろ色、(以下、キリヤ化学株式会社製)合成色素製剤赤色A−1、合成色素製剤赤色AR、合成色素製剤金茶色A、合成色素製剤オレンジ色T、合成色素製剤花紅色K、合成色素製剤メロン色A、合成色素製剤メロン色K、合成色素製剤メロン色、合成色素製剤緑色、合成色素製剤挽茶色S−1、合成色素製剤挽茶色AT、合成色素製剤グレープ色R、合成色素製剤チョコレート色黒口、合成色素製剤チョコレート色赤口、合成色素製剤黒色Aなどが挙げられ、天然色素としては、ウコン色素(クルクミン)、クチナシ黄色素(クロシン)、ベーターカロテン、ベニバナ黄色素(サフラワー)、マリーゴールド色素、ベニコウジ黄色素、コチニール色素、ビートレッド、ブドウ果皮色素、ベニコウジ色素、ムラサキイモ色素、ラック色素、アカダイコン色素、シソ色素、アカキャベツ色素、エルダーベリー色素、アナトー色素、トウガラシ色素、カカオ色素、タマリンド色素、カキ色素、コウリャン色素、クチナシ青色素、スピルリナ色素、クロロフィル、植物性炭末色素、(以下、ダイワ化成株式会社製)緑色着色料製剤ハイグリーンF、緑色着色料製剤ハイメロンP−2、(以下、キリヤ化学株式会社製)キリヤスグリーンL、キリヤスグリーンTM(D)、キリヤスライトグリーンKY−S、キリヤスグリーンCWS、キリヤスブラックTなどが挙げられる。
樹脂としては、公知の可食性樹脂が使用できる。目的としては、定着性付与や粘度調整、マイクロカプセルの分散安定性の付与等である。なお、いずれもその液体噴射用液体の溶剤への溶解性を考慮した上で使用するものである。具体的には、シェラック、アラビアゴム、グリセリン脂肪酸エステル、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合物、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カードランなどが挙げられる。これら樹脂は、その1種または2種以上を選択し、併用しても使用できる。その使用量は、少ない場合は液体噴射用液体の粘度が低すぎて吐出できず、多い場合は液体噴射用液体中の各組成物の溶解バランスを崩してしまい各種不具合が発生する懸念があるため、液体噴射用液体全量に対して1重量%以上15重量%以下が好ましい。
溶剤として、主溶剤である水またはエタノールに、他の可食性溶剤を加えることができるが、前記化合物を溶解し且つ人が食しても安全なものであれば、特に限定されない。具体的には、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上選択して併用できるものである。さらに、その使用量は、少ない場合は液体噴射用液体の内容物の溶解不足により不溶・凝集物が発生し、多い場合は液体噴射用液体粘度が減少して吐出が不可能となるため、液体噴射用液体全量に対して5重量%〜90重量%が好ましい。
本発明ではアルギン酸溶液として、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を用いる。これらは、多価金属イオンと接触することでゲル化反応を引き起こし、人が食しても無害な物質であり、さらに水やエタノールに溶解する。また、多価金属イオン溶液として、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を用いる。これらも、アルギン酸と接触することでゲル化反応を引き起こし、人が食しても無害な物質であり、さらに水やエタノールに溶解する。その使用量としては、余剰分は未反応のまま残ってしまうため、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質と塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の重量比が1:1程度であることが望ましい。アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質と塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の含有量は、少ない場合はゲル化の効果が発揮されず、多い場合は液体噴射用液体粘度が増加して吐出が不可能となるため、液体噴射用液体全量に対して合計で5重量%〜15重量%が好ましい。
40℃以上の熱をかけることで融解するマイクロカプセルの膜材としては、公知の食用ワックス類、脂肪酸、油脂等を使用できる。ただし、いずれも融点が40℃以上であり、常温で水及びエタノールに不溶であるもののみを使用できる。その例を挙げる。食用ワックス類としては、ミツロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、米ぬかロウ、カルナウバロウ、雪ロウ、セラックロウ、ホホバロウ、パラフィン、マイクロクリスタンワックス等が挙げられ、脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸等が挙げられ、油脂としては、シア脂、サル脂、カカオ脂、マンゴー脂、イリッペ脂、牛脂、乳脂、豚脂、(以下、日清オイリオグループ株式会社製)サラコスHS、サラコスFH、サラコス334、ノムコートPHS、ノムコートW、ノムコートHR−822等を挙げることができ、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂も挙げることができる。中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸の部分グリセリド等も使用できる。また、これ以外にも、ダンマルガム、水で膨潤させたゼラチン、カラギーナン等も使用できる。
油溶性であるマイクロカプセルの膜材としては、油溶性であり、且つ水およびエタノールに不溶で、常温で固体である食用物質であれば、公知の物質を使用できる。具体的には、ミツロウ、ダンマルガム、(以下、日清オイリオグループ株式会社製)サラコスHS、サラコスFH、サラコス334、ノムコートPHS、ノムコートW、ノムコートHR−822等が挙げられる。
なお、加熱で溶けるマイクロカプセルだと、生クリームなどの加熱できない食品には使用できないため、本実施形態では油溶性のカプセルを検討している。油溶性であれば、油分によってマイクロカプセルが溶けるため、加熱できない食品にも使用することができる。そのため、本実施形態におけるマイクロカプセルは、「加熱で溶ける」または「油溶性である」のうち、どちらかの特徴を持っていれば良い。
マイクロカプセルの膜材は、上記の1種又は2種以上選択して併用できるものである。さらに、マイクロカプセル膜材の使用量は、少ない場合は膜材が薄すぎて保存安定性が得られず、多い場合はメディア着弾後の融解が困難となるため、液体噴射用液体全量に対して1重量%〜5重量%が好ましい。
本発明のマイクロカプセルを含有する液体噴射用液体の製造方法としては、周知の製造方法が使用できる。具体的には、水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体を製造する方法として、以下の方法が挙げられる。
まず、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質のエタノールまたは水溶液を、マイクロカプセルの膜材(主にOil成分)の融点以上の温度で膜材中に分散させ、油中水滴(W/O型)分散液を作成する。別途、着色剤と樹脂と、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を水およびエタノールを主溶剤とする溶媒に分散または溶解させた溶液を作成しておく。その溶液に、始めに作成した油中水滴(W/O型)分散液を加えて素早く攪拌し、分散させる。このとき、分散液のミセルはW/O/W型となっている。その後、マイクロカプセルの膜材の融点より低い温度に冷却する。そうすることで、マイクロカプセルの膜材が凝固し、水系溶媒にマイクロカプセルが分散した溶液が作成される。
液体噴射用液体に含まれるアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質と塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質は、どちらかの物質がマイクロカプセルに溶液として内包されており、どちらかの物質がマイクロカプセルの外部の溶液に溶解されていればよい。上記の製造方法を、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質と塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を入れ替えた手順で実施した場合、水またはエタノールを主溶剤とし、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらにアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体が得られる。
液体噴射用液体を製造する方法は、液体噴射用液体組成物の製造方法としては従来知られている種々の方法が採用できる。例えば、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ヘンシェルミキサー、プロペラ撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ニーダー等の装置を使用して作る事が出来る。
さらに、撹拌終了後に濾過や遠心分離を行い粗大粒子や気体を除いても良い。粗大粒子や気体を取り除く事により、液体噴射用液体を使用する際に詰まり等の印刷不良や経時的な液体噴射用液体の変質を抑制しやすいためである。
一方で、製造時に加圧や減圧、不活性ガス置換をしても良い。製造時のこれらの作業によって、内容物の溶解や分散の促進効果や脱泡効果に加えて、酸化による内容物の変質を防ぐ事ができる。
また、製造した液体噴射用液体を温度の低い状態(0乃至30℃)で保管する事は、インク組成物の経時性能を劣化させないためにも好ましい。製造後の液体噴射用液体を高温(例えば、35℃以上40℃未満)にて保管すると、液体噴射用液体の粘度が低下して、内容物の沈降が生じやすくなったりするのを防ぐためである。
以下、本発明を実施例1乃至3により詳細に説明する。図1は、それぞれ実施例1乃至3ごとに、含有する材料名を示す。実施例1乃至3中の各成分を含有している箇所にのみ、図1において数字を記載している。図1において、−(ハイフン)で示す箇所は、その成分が含有されていないことを示す。実施例1乃至3中の数字は「重量部」を示す。
図2は、それぞれ比較例1乃至3ごとに、含有する材料名を示す。比較例中の数字は「重量部」を示す。含有していない成分の欄は「−」で示す。
図3は、それぞれ実施例1乃至3および比較例1乃至3ごとに、各項目における評価を示す。
図3は、それぞれ実施例1乃至3および比較例1乃至3ごとに、各項目における評価を示す。
具体的な、液体の噴射環境は、実施例1乃至3、及び比較例1乃至3で得た液体噴射用液体を液体噴射記録装置(360dpi、駆動周波数8kHz、ノズル数508)で各メディア上にテキストパターン「消費期限」を印字した。文字の大きさは4mm×4mm程度である。メディアはクッキー生地を用いた。クッキーは印字した後、すぐに加熱した。
ここで、滲みの程度を説明する。実施例1乃至3、及び比較例1乃至3の液体噴射用液体を液体噴射記録装置で印字を行い、滲まずに文字の判別ができるかどうかを確認した。
○:にじみによる文字のつぶれが無く、楽に判別できる
×:にじんで文字がつぶれてしまい、文字を読むのは困難である
ここで、保存安定性について説明する。保存安定性試験として、液体噴射用液体100ccをポリプロピレン製容器に入れ、35℃の恒温槽に3ヶ月放置した。その後、容器を恒温槽から取り出して、液体噴射用液体の減圧ろ過試験を行った。フィルターは1μmメッシュのグラスフィルターを用いた。
○:にじみによる文字のつぶれが無く、楽に判別できる
×:にじんで文字がつぶれてしまい、文字を読むのは困難である
ここで、保存安定性について説明する。保存安定性試験として、液体噴射用液体100ccをポリプロピレン製容器に入れ、35℃の恒温槽に3ヶ月放置した。その後、容器を恒温槽から取り出して、液体噴射用液体の減圧ろ過試験を行った。フィルターは1μmメッシュのグラスフィルターを用いた。
なお、保存安定性は、インクをボトルに内包した状態で室内等に保存した際の評価項目であって、メディアに印字した後の評価項目ではない。
○:5分以内に流れきり、フィルター上に何も残っていない
×:ろ過時間が5分より多くかかり、フィルター上にゲル状の異物が見られる
以上のとおり、本願発明における実施例1乃至3と比較例1乃至3を比較検討した。すなわち、本願発明の実施形態における液体噴射用液体は、水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含むことを特徴としている。実施例1は、塩化カルシウム水溶液を非油溶性のマイクロカプセルに内包し、アルギン酸ナトリウムを含む水とエタノールを主溶剤とする溶液に、そのマイクロカプセルを分散させた液体噴射用液体である。実施例2は、塩化カルシウムと塩化マグネシウムの水溶液を油溶性のマイクロカプセルに内包し、アルギン酸ナトリウムとアルギン酸アンモニウムを含む水とエタノールを主溶剤とする溶液に、そのマイクロカプセルを分散させた液体噴射用液体である。実施例3は、アルギン酸濃度3.5重量部のアルギン酸カリウム水溶液を非油溶性のマイクロカプセルに内包し、油溶性のマイクロカプセルにも同重量部濃度のアルギン酸カリウム水溶液を内包した。そのマイクロカプセルを塩化カルシウムと塩化マグネシウムを含む水とエタノールを主溶剤とする溶液に分散させた液体噴射用液体である。
○:5分以内に流れきり、フィルター上に何も残っていない
×:ろ過時間が5分より多くかかり、フィルター上にゲル状の異物が見られる
以上のとおり、本願発明における実施例1乃至3と比較例1乃至3を比較検討した。すなわち、本願発明の実施形態における液体噴射用液体は、水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含むことを特徴としている。実施例1は、塩化カルシウム水溶液を非油溶性のマイクロカプセルに内包し、アルギン酸ナトリウムを含む水とエタノールを主溶剤とする溶液に、そのマイクロカプセルを分散させた液体噴射用液体である。実施例2は、塩化カルシウムと塩化マグネシウムの水溶液を油溶性のマイクロカプセルに内包し、アルギン酸ナトリウムとアルギン酸アンモニウムを含む水とエタノールを主溶剤とする溶液に、そのマイクロカプセルを分散させた液体噴射用液体である。実施例3は、アルギン酸濃度3.5重量部のアルギン酸カリウム水溶液を非油溶性のマイクロカプセルに内包し、油溶性のマイクロカプセルにも同重量部濃度のアルギン酸カリウム水溶液を内包した。そのマイクロカプセルを塩化カルシウムと塩化マグネシウムを含む水とエタノールを主溶剤とする溶液に分散させた液体噴射用液体である。
なお、実施例は上述したようにアルギン酸溶液が主溶媒に溶解されており、塩化物がマイクロカプセルに内包されている例を挙げたが、本実施形態はこれに限られるものではない。つまり、塩化物が主溶媒に溶解されており、アルギン酸溶液がマイクロカプセルに内包されている実施形態でもかまわない。
比較例1は、塩化カルシウムを内包するマイクロカプセルを有するが、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含んでいない。また、比較例2は、アルギン酸アンモニウムを内包する油溶性のマイクロカプセルを有するが、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を含んでいない。そのため、比較例1と2は液体噴射用液体がメディア上でゲル化せず、印字した文字が滲んでしまった。比較例3は、上記アルギン酸溶液と上記塩化物の多価金属イオン溶液のどちらも含んでいるが、マイクロカプセル化していないため、液体噴射用液体を保存している間にゲル化成分が消費されてしまい、吐出された液体はメディアに着弾してもゲル化しなかった。また、保存後のろ過試験でもフィルター上にゲルが見られた。
以下、本発明の液体噴射用液体を使用する液体噴射記録ヘッド、および液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置について図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態の液体噴射記録装置の概略構成を示す斜視図である。図4に示すように、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2、3と、被記録媒体Sに液体を噴射する液体噴射記録ヘッド4と、液体噴射記録ヘッド4に液体を供給する液体供給手段5と、液体噴射記録ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。また図示していないが、液体噴射記録装置1は搬送手段2、3、液体噴射記録ヘッド4、液体供給手段5、及び走査手段6などに対して制御信号を送受信して制御する制御部100を備えている。以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向およびY方向にともに直交する方向をZ方向として説明する。
図4は、本実施形態の液体噴射記録装置の概略構成を示す斜視図である。図4に示すように、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2、3と、被記録媒体Sに液体を噴射する液体噴射記録ヘッド4と、液体噴射記録ヘッド4に液体を供給する液体供給手段5と、液体噴射記録ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。また図示していないが、液体噴射記録装置1は搬送手段2、3、液体噴射記録ヘッド4、液体供給手段5、及び走査手段6などに対して制御信号を送受信して制御する制御部100を備えている。以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向およびY方向にともに直交する方向をZ方向として説明する。
一対の搬送手段2、3は、それぞれ副走査方向に延びて設けられたグリッドローラ20、30と、グリッドローラ20、30のそれぞれに平行に延びるピンチローラ21、31と、詳細は図示しないがグリッドローラ20、30を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構とを備えている。
液体供給手段5は、液体噴射用液体が収容された液体収容体50と、液体収容体50と液体噴射記録ヘッド4とを接続する液体供給管51とを備えている。液体収容体50は、複数備えられており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体噴射用液体が収容された液体タンク50Y、50M、50C、50Bが並べて設けられている。液体貯留容器である液体タンク50Y、50M、50C、50Bのそれぞれには図示しないポンプモーターMが設けられており、液体供給管を通じて液体を液体噴射記録ヘッド4へ押圧移動できる。液体供給管51は、液体噴射記録ヘッド4(キャリッジユニット62)の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
走査手段6は、副走査方向(X方向)に延びて設けられた一対のガイドレール60、61と、一対のガイドレール60、61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62を副走査方向に移動させる駆動機構63と、を備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60、61の間に配置された一対のプーリ64、65と、一対のプーリ64、65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67とを備えている。
一対のプーリ64、65は、一対のガイドレール60、61の両端部間にそれぞれ配置されており、副走査方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は一対のガイドレール60、61間に配置されており、この無端ベルトにはキャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには複数の液体噴射記録ヘッド4が搭載されており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体噴射用液体に個別に対応する液体噴射記録ヘッド4Y、4M、4C、4Bが副走査方向に並んで搭載されている。
液体噴射記録装置1のキャリッジユニット62には、液体噴射記録ヘッド4が、長手方向(Y方向)を主走査方向に一致させ、短手方向(X方向)を副走査方向に一致させて搭載されている。またキャリッジユニット62には、複数の液体噴射記録ヘッド4がX方向に並んで搭載されている。そして、被記録媒体SをY方向に搬送し、キャリッジユニット62をX方向に移動させつつ、液体噴射記録ヘッド4から液体噴射用液体を噴射する事で、被記録媒体に記録を行うようになっている。
本実施形態の液体噴射記録ヘッドは、液体を被記録媒体S(図4参照)に向かって液体噴射用液体を噴射するものである。本実施形態における液体噴射記録ヘッドは、本実施形態における液体噴射用液体を使用する液体噴射記録ヘッドであって、不図示の圧電素子に電界を与えることよって駆動される吐出部と、当該吐出部に連通し被記録媒体Sに液体噴射用液体を吐出するノズルとを有する液体噴射記録ヘッドである。
1 液体噴射記録装置
2 搬送手段
4、4C、4Y、4M、4B 液体噴射記録ヘッド
S 被記録媒体
13 ノズル
41 ヘッドチップ
43 制御部
45 回路基板
2 搬送手段
4、4C、4Y、4M、4B 液体噴射記録ヘッド
S 被記録媒体
13 ノズル
41 ヘッドチップ
43 制御部
45 回路基板
Claims (6)
- 水またはエタノールを主溶剤とし、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらに塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体。
- 水またはエタノールを主溶剤とし、塩化カルシウム、塩化マグネシウムから選ばれる1種以上の物質を含み、さらにアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムから選ばれる1種以上の物質の水またはエタノール溶液を内包したマイクロカプセルを含む液体噴射用液体。
- 前記マイクロカプセルが、水やエタノールに溶解せず、40℃以上の熱をかけることで融解する、または、油溶性であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射用液体。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射用液体を有することを特徴とする液体貯留容器。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射用液体を使用する液体噴射記録ヘッドであって、圧電素子に電界を与えることよって駆動される吐出部と、前記吐出部に連通し被記録媒体に前記液体を吐出するノズルとを有することを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
- 請求項5に記載の液体噴射記録ヘッドを有する液体噴射記録装置であって、被記録媒体を搬送する搬送手段と、前記液体噴射記録ヘッドに液体噴射用液体を供給する液体供給手段と、前記液体噴射記録ヘッドを被記録媒体の搬送方向と略直交する方向に走査させる走査手段とを備える事を特徴とする液体噴射記録装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013197239A JP2015063586A (ja) | 2013-09-24 | 2013-09-24 | 液体噴射用液体、液体噴射記録ヘッド及び液体噴射記録装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111334109A (zh) * | 2020-03-16 | 2020-06-26 | 中国文化遗产研究院 | 一种文物保护涂料硬化胶囊及其制备方法、应用 |
WO2020175204A1 (ja) | 2019-02-25 | 2020-09-03 | 日本化薬株式会社 | インク用分散液組成物及びインク組成物 |
-
2013
- 2013-09-24 JP JP2013197239A patent/JP2015063586A/ja active Pending
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