JP6681229B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
近年、電子写真装置のユーザーの多様化が進み、出力される画像には、従来のものよりも高画質および高安定性が求められている。それに伴って、電子写真装置に搭載される電子写真感光体についても、高画質および高安定性のさらなる向上が求められている。
画像形成の初期から長期にわたって良好な電子写真感光体の特性を得る技術として、特許文献1には、電荷輸送物質、バインダー樹脂、ジメトキシメタンおよび130℃以上の沸点を有する芳香族炭化水素溶媒を含有する塗布液の塗膜を乾燥させることによって、電荷輸送層を形成するという技術が記載されている。具体的には、特許文献1には、芳香族炭化水素溶媒としてアニソール(メトキシベンゼン)を用いる技術が記載されている。
また、特許文献2には、溶剤として芳香族エーテルを含有する電荷輸送層用組成物および電子写真感光体に関する技術が記載されている。
特開2002−55466号公報 特開平7−261422号公報
近年、電子写真装置の設置場所が世界各地に広がってきており、物流も世界各地に広がってきている。設置場所の温湿度の違いや、物流時の温湿度の変化によっても、電子写真感光体の特性の変化が生じにくくなるように、電子写真装置や電子写真感光体には、耐環境性(環境依存性の低さ)の向上が求められている。
しかしながら、特許文献1に記載されているように電子写真感光体を製造する際にメトキシベンゼンを用いた場合、高温高湿環境下で電子写真感光体を保管し、その後、常温環境で保管を行うと、電荷輸送物質の析出によると思われるクラックが生じる場合があった。
また、特許文献2に記載されているように電子写真感光体を製造する際に芳香族エーテルを用いた場合にも、上記同様の環境で保管を行うことで同様のクラックを生じる場合があった。
いずれの場合も、電子写真感光体を製造する際に用いたメトキシベンゼン(芳香族エーテル)が、電子写真感光体の電荷輸送層に存在することが原因であると考えられる。
本発明の目的は、メトキシベンゼンを含有する電荷輸送層のクラックおよびそれによる画像不良が抑制された電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
本発明は、支持体および該支持体上の感光層を有する電子写真感光体において、前記感光層が、電荷発生物質を含む電荷発生層、および、電荷輸送物質を含む電荷輸送層をこの順に有し、前記電荷輸送層が、
(α)下記式(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂、および、下記式(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、
(β)電荷輸送物質と、
(γ)メトキシベンゼンと、
(δ)メトキシシクロヘキサン、メチルヘキサノール、および、置換基としてメチル基もしくはエチル基を有するメトキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、
を含有し、前記(δ)の含有量Wδが、前記電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上1質量%以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
Figure 0006681229
(式(A)および(B)中、R11〜R14およびR21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、または、エチル基を示す。XおよびXは、それぞれ独立に、単結合、または、2価の炭化水素基を示す。Yは、フェニレン基、または、ジフェニレンエーテル基を示す。)
また、本発明は、上記電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体の表面に露光光を照射して前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段、前記静電潜像をトナーによって現像して前記電子写真感光体の表面にトナー像を形成する現像手段、前記トナー像を前記電子写真感光体の表面から転写材に転写する転写手段、および、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
また、本発明は、上記電子写真感光体、ならびに、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体の表面に露光光を照射して前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段、前記静電潜像をトナーによって現像して前記電子写真感光体の表面にトナー像を形成する現像手段、および、前記トナー像を前記電子写真感光体の表面から転写材に転写する転写手段、を有することを特徴とする電子写真装置である。
本発明によれば、メトキシベンゼンを含有する電荷輸送層のクラックによる画像欠陥が抑制された電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の構成例を示す概略図である。
本発明の電子写真感光体は、支持体および該支持体上の感光層を有する電子写真感光体において、前記感光層が、電荷発生物質を含む電荷発生層および電荷輸送物質を含む電荷輸送層をこの順に有し、前記電荷輸送層が、
(α)下記式(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂、および、下記式(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種と、
(β)電荷輸送物質と、
(γ)メトキシベンゼンと、
(δ)メトキシシクロヘキサン、メチルヘキサノール、および、置換基としてメチル基もしくはエチル基を有するメトキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、
を含有し、前記(δ)の含有量Wδが、前記電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上1質量%以下であることを特徴とする。
Figure 0006681229
(式(A)および(B)中、R11〜R14およびR21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、または、エチル基を示す。XおよびXは、それぞれ独立に、単結合、または、2価の炭化水素基を示す。Yは、フェニレン基、または、ジフェニレンエーテル基を示す。)
以下、上記(α)を「樹脂α」とも表記し、上記(β)を「化合物β」とも表記し、上記(γ)を「化合物γ」とも表記し、上記(δ)を「化合物δ」とも表記する。
まず、本発明者らが推測している、効果の発現メカニズムについて述べる。
本発明の電子写真感光体は、電荷輸送層が、メトキシベンゼン(化合物γ)と、特定の量の、メトキシベンゼンと似た構造を有する化合物(化合物δ)と、を含有する。
本発明者らは、電荷輸送物質の析出によると推測される電荷輸送層のクラック、および、このクラック由来の画像欠陥を、電荷輸送層に化合物δを含有させることによって抑制できる理由を以下のように推測している。
高温高湿環境におかれた場合、分子の運動性が上がり、電荷輸送層中の電荷輸送物質およびメトキシベンゼンはお互いに安定な状態になるように動く。また、本発明者らの検討の結果から、電荷輸送物質とメトキシベンゼンとが共存すると、メトキシベンゼンを伴った電荷輸送物質のパッキング構造は、エネルギー的に極めて安定なものになると推測している。そのため、電荷輸送層に含有されるメトキシベンゼンの量がごくわずかであっても、高温高湿環境中で分子の運動性が上がる。そして、その後、常温で保管されることにより、高温高湿保管前よりも安定なパッキング構造で安定化することで、電荷輸送物質が結晶化すると推測される。これに対して、メトキシベンゼンと似た構造を有する化合物δは、メトキシベンゼンと電荷輸送物質との相互作用を効率的に阻害する働きを有していると考えられる。
本発明の電子写真感光体の電荷輸送層を構成する樹脂α、化合物β、化合物γおよび化合物δについて説明する。
〈樹脂αについて〉
樹脂αは、下記式(A)で示される構造単位(繰り返し構造単位)を有するポリカーボネート樹脂、および、下記式(B)で示される構造単位(繰り返し構造単位)を有するポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
Figure 0006681229
上記式(A)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、または、エチル基を示す。好ましくは、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基である。
上記式(A)中、Xは、単結合、または、2価の炭化水素基を示す。好ましくは、Xは、単結合、シクロヘキシリデン基、または、下記式(C)で示される構造を有する2価の基である。
上記式(B)中、R21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、または、エチル基を示す。好ましくは、R21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、または、メチル基である。
上記式(B)中、Xは、単結合、または、2価の炭化水素基を示す。好ましくは、Xは、単結合、シクロヘキシリデン基、または、下記式(C)で示される構造を有する2価の基である。
上記式(B)中、Yは、フェニレン基、または、ジフェニレンエーテル基を示す。フェニレン基の中でも、好ましくは、m−フェニレン基、または、p−フェニレン基である。ジフェニレンエーテル基の中でも、好ましくは、2つのp−フェニレン基が酸素原子を介して結合してなる2価の基(4,4’−ジフェニレンエーテル基、または、p,p’−ジフェニレンエーテル基とも呼ばれる。)である。
Figure 0006681229
上記式(C)中、R31およびR32は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、または、フェニル基を示す。
以下に、上記式(A)で示される構造単位の具体例を示す。
Figure 0006681229
これらの中でも、(A−1)、(A−2)、(A−4)が好ましい。
上記式(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂は、上記式(A)で示される構造単位の1種のみを有する単独重合体のポリカーボネート樹脂であってもよいし、2種以上を有する共重合体のポリカーボネート樹脂であってもよい。
以下に、上記式(B)で示される構造単位の具体例を示す。
Figure 0006681229
これらの中でも、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−6)、(B−7)、(B−8)が好ましい。
上記式(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂は、上記式(B)で示される構造単位の1種のみを有する単独重合体のポリエステル樹脂であってもよいし、2種以上を有する共重合体のポリエステル樹脂であってもよい。
以下、上記式(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を「ポリカーボネート樹脂A」とも表記し、上記式(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂を「ポリエステル樹脂B」とも表記する。
ポリカーボネート樹脂Aは、例えば、公知のホスゲン法で合成することができ、また、ポリエステル樹脂Bは、例えば、公知のエステル交換法によって合成することができる。
ポリカーボネート樹脂Aやポリエステル樹脂Bが共重合体である場合、その共重合形態は、ブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合などいずれの形態の共重合体であってもよい。
ポリカーボネート樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bの重量平均分子量は、20000以上300000以下であることが好ましく、50000以上250000以下であることがより好ましい。
本発明における樹脂の重量平均分子量は、特開2007−79555号公報に記載の方法により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
また、ポリカーボネート樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bは、上記式(A)または上記式(B)で示される構造単位に加えて、シロキサン構造を含む構造単位を有する共重合体であってもよい。
以下に、シロキサン構造を含む構造単位の具体例を示す。
Figure 0006681229
以下に、樹脂αの具体例を示す。
Figure 0006681229
〈化合物βについて〉
化合物βは、電荷輸送物質である。電荷輸送物質は1種のみでもよいし、2種以上でもよい。電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、エナミン化合物などが挙げられる。
本発明において、電荷輸送物質は、下記式(E)で示される部分構造を有する電荷輸送物質であることが好ましい。
Figure 0006681229
上記式(E)中、R41〜R46およびR41’〜R45’は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、置換もしくは無置換のアリール基、または、不飽和炭化水素基を示す。
上記不飽和炭化水素基としては、例えば、ブタジエンのような不飽和結合を有する置換基などの不飽和炭化水素基が挙げられる。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基などが挙げられる。上記アリール基が有してもよい置換基としては、例えば、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアミノ基などが挙げられる。
より好ましくは、下記構造式(E−1)〜(E−9)で示される化合物である。
本発明において、電荷輸送物質の分子量は、3000以下であることが好ましい。
Figure 0006681229
〈化合物δについて〉
化合物δは、メトキシシクロヘキサン、メチルヘキサノール、置換基を有するメトキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
本発明の電子写真感光体の電荷輸送層は、上記化合物δを含有する。
上記置換基を有するメトキシベンゼンとしては、下記式(F)で示される構造の化合物であることが好ましい。
Figure 0006681229
上記式(F)中、R51〜R55は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、または、エチル基を示す。ただし、R51〜R55のうち、少なくとも1つは、メチル基、または、エチル基である。
上記式(F)で示される化合物の中でも、電荷輸送物質の析出を効率的に抑制する観点から、メトキシベンゼンと構造が類似しているメトキシトルエンが好ましい。メトキシトルエンの中でも、R51がメチル基で他が水素原子である2−メトキシトルエンや、R53がメチル基で他が水素原子である4−メトキシトルエンがより好ましい。
〈化合物γの含有量Wγと化合物δの含有量Wδについて〉
化合物δの電荷輸送層中の含有量Wδを好適な範囲にすることにより、電荷輸送層のクラックを抑制する効果が得られる。含有量Wδは、電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上1質量%以下であり、多すぎても少なすぎても電荷輸送層のクラックを抑制する効果が得られない場合がある。
また、化合物γの含有量Wγは、電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上2質量%以下であることが好ましい。化合物γの含有量Wγおよび化合物δの含有量Wδは、より効果的にクラックを抑制するという観点および長時間放置における当接部材による変形を抑制する観点から、次の(a)、(b)および(c)を満たすことがより好ましい。
(a)化合物γの電荷輸送層中の含有量Wγが、0.001質量%以上1質量%以下である。
(b)化合物δの電荷輸送層中の含有量Wδが、0.001質量%以上0.5質量%以下である。
(c)化合物γの含有量Wγの化合物δの含有量Wδに対する比(Wγ/Wδ)が、0.5以上200以下である。
より効果的に電荷輸送物質の析出を抑制するためには、化合物γおよび化合物δが、電荷輸送層により好ましい比率で存在することが好ましいと考えられる。
電荷輸送層中の化合物γの含有量Wγおよび化合物δの含有量Wδは、以下に示す測定方法により求めることができる。
本発明においては、四重極型GC/MSシステムTRACE ISQ(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を用いて測定した。
製造した電子写真感光体を5mm×40mmの試料片として切り出した。試料片をバイアル瓶に入れ、ヘッドスペースサンプラー(TurboMatrix HS40(Perkin Elmer(株)))の設定をOven 200℃、Loop 205℃、TransferLine 205℃に設定し、発生したガスをガスクロマトグラフィで測定した。試料片における電荷輸送層の質量は、測定後にバイアル瓶から取り出した試料片の質量と、当該取り出した試料片の電荷輸送層を剥がしたものとの差分から求められる。電荷輸送層を剥がした試料片とは、メチルエチルケトンに5分間浸漬して電荷輸送層を剥がした後、試料片を50℃で5分乾燥させたものである。
本発明においては、上述の方法を用いて、電荷輸送層中の化合物γの含有量Wγ、および、化合物δの含有量Wδを測定した。
〈電子写真感光体の構成〉
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
本発明の電子写真感光体は、支持体および該支持体上の感光層を有する電子写真感光体である。
本発明の電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層された積層型感光層(機能分離型感光層)である。また、積層型感光層の中でも、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した感光層(順層型感光層)である。電荷発生層を積層構成(複数層構成)としてもよいし、電荷輸送層を積層構成(複数層構成)としてもよい。
支持体としては、導電性を示すもの(導電性支持体)であることが好ましい。支持体の材質としては、例えば、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウム、クロム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属(合金)が挙げられる。
また、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金を用いて真空蒸着によって形成した被膜を有する金属製支持体やプラスチック製支持体を支持体として用いることもできる。
また、例えば、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子をプラスチックや紙に含浸させた支持体や、導電性結着樹脂で形成された支持体を用いることもできる。
支持体の表面には、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制を目的として、例えば、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理を施してもよい。
支持体と、電荷発生層または後述の下引き層との間には、例えば、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制や、支持体の傷の被覆を目的として、導電層を設けてもよい。
導電層は、カーボンブラック、導電性顔料、抵抗調節顔料を結着樹脂とともに溶剤に分散処理することによって得られる導電層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。また、導電層用塗布液には、例えば、加熱、紫外線照射、放射線照射により硬化重合する化合物を含有させてもよい。
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂が挙げられる。
導電性顔料および抵抗調節顔料としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀、ステンレス鋼などの金属(合金)の粒子や、これらをプラスチックの粒子の表面に蒸着したものが挙げられる。また、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズがドープされている酸化インジウム、アンチモンやタンタルがドープされている酸化スズなどの金属酸化物の粒子を用いることもできる。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、導電性顔料および抵抗調節顔料には、表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。
また、光散乱を目的として、導電層にシリコーン樹脂粒子やアクリル樹脂粒子などの粒子を含有させてもよい。
また、導電層にレベリング剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、整流性材料などの添加剤を含有させてもよい。
導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
支持体または導電層と、電荷発生層との間には、感光層の接着性改良、支持体からの電荷注入性改良を目的として、下引き層(中間層)を設けてもよい。
下引き層は、結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる下引き層用塗布液の塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
下引き層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロンおよびN−アルコキシメチル化ナイロンなど)樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
下引き層の膜厚は、0.05μm以上40μm以下であることが好ましい。
下引き層には、金属酸化物粒子を含有させてもよい。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する粒子であることが好ましい。上記の金属酸化物を含有する粒子の中でも、酸化亜鉛を含有する粒子がより好ましい。
金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子の表面がシランカップリング剤などの表面処理剤で処理されている粒子であってもよい。
分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法などが挙げられる。
下引き層には、例えば、下引き層の表面粗さの調整、または下引き層のひび割れ軽減を目的として、有機樹脂粒子や、レベリング剤を含有させてもよい。
有機樹脂粒子としては、例えば、シリコーン粒子などの疎水性有機樹脂粒子や、架橋型ポリメタクリレート樹脂(PMMA)粒子などの親水性有機樹脂粒子などが挙げられる。
下引き層には、各種添加物を含有させることができる。
添加物としては、例えば、金属、導電性物質、電子輸送性物質、金属キレート化合物、シランカップリング剤などの有機金属化合物などが挙げられる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、スクワリリウム色素、チアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、アントアントロン顔料、ピラントロン顔料、キサンテン色素、キノンイミン色素、スチリル色素などが挙げられる。
これら電荷発生物質は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
これらの中でも、感度の観点から、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニンの中でも、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θの7.4°±0.3°および28.2°±0.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ブチラール樹脂が好ましい。これらは、単独、混合または共重合体として、1種または2種以上用いることができる。
分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、アトライターを用いた方法などが挙げられる。
電荷発生層における電荷発生物質と結着樹脂との割合は、結着樹脂1質量部に対して電荷発生物質が0.3質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
電荷発生層には、必要に応じて、例えば、増感剤、レベリング剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、整流性材料を含有させることもできる。
電荷発生層の膜厚は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層上には、電荷輸送層が形成される。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させて得られる電荷輸送層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
化合物βである電荷輸送物質としては、例えば、前述したトリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、エナミン化合物の他に、ピレン化合物、N−アルキルカルバゾール化合物、N,N−ジアルキルアニリン化合物、ジフェニルアミン化合物、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、ブタジエン化合物などが挙げられる。これら電荷輸送物質は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これら電荷輸送物質の中でも、前記式(E)の部分構造を有するものが電荷輸送層のクラック抑制の観点から好ましい。より好ましくは、式(E−1)〜(E−9)のいずれかで示される化合物である。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、上記式(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂A、または、上記式(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂B、つまり樹脂αであることが好ましい。また、上記樹脂αとともに、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル共重合体、ポリビニルベンザール樹脂を電荷輸送層中に含有させても構わない。これらは、単独、混合または共重合体として、1種または2種以上用いることができる。
電荷輸送層における電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、結着樹脂1質量部に対して電荷輸送物質が0.3質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
電荷輸送層が1層である場合、その電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層を積層構成とした場合、支持体側の電荷輸送層の膜厚は、5μm以上30μm以下であることが好ましく、表面側の電荷輸送層の膜厚は、1μm以上10μm以下であることが好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤は、上述した化合物γであるメトキシベンゼン(アニソール)のほか、アルコール系溶剤、スルホキシド溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤などが挙げられる。具体的にはキシレン、トルエン、テトラヒドロフランが挙げられる。
本発明の電子写真感光体の電荷輸送層は、化合物δを含有する。
電荷輸送層には、必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、有機粒子、無機粒子を化合物δとともに含有させてもよい。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤、硫黄原子含有酸化防止剤、リン原子含有酸化防止剤などが挙げられる。
有機粒子としては、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン樹脂粒子のような樹脂粒子などが挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナのような金属酸化物などの粒子が挙げられる。
電子写真感光体の耐摩耗性やクリーニング性の向上を目的として、電荷輸送層上に保護層を形成してもよい。
保護層は、結着樹脂を溶剤に溶解させて得られる保護層用塗布液の塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
保護層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
また、保護層は、重合性のモノマーあるいはオリゴマーを溶剤に溶解させて得られる保護層用塗布液の塗膜を形成し、塗膜を架橋または重合反応を用いて硬化(重合)させて保護層を形成してもよい。
重合性のモノマーあるいはオリゴマーとしては、例えば、アクリロイルオキシ基やメタクリロイルオキシ基やスチリル基などの連鎖重合性官能基を有する化合物や、ヒドロキシ基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、エポキシ基などの逐次重合性官能基を有する化合物が挙げられる。
硬化させる反応としては、例えば、ラジカル重合、イオン重合、熱重合、光重合、放射線重合(電子線重合)、プラズマCVD法、光CVD法などが挙げられる。
また、保護層には、導電性粒子や電荷輸送物質を含有させてもよい。
導電性粒子としては、例えば、上述の導電層に用いられる導電性顔料を用いることができる。電荷輸送物質としては、例えば、上述の電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質を用いることができる。
また、耐摩耗性と電荷輸送能力の両立の観点から、重合性官能基を有する電荷輸送物質を用いることがより好ましい。重合性官能基としてはアクリロイルオキシ基が好ましい。また、同一分子内に重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送物質が好ましい。
また、電子写真感光体の表面層(電荷輸送層または保護層)には、有機樹脂粒子や無機粒子を含有させてもよい。
有機樹脂粒子としては、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子、アクリル樹脂粒子などが挙げられる。
無機粒子としては、アルミナ、シリカ、チタニアなどの粒子が挙げられる。
また、電子写真感光体の表面層(電荷輸送層または保護層)には、導電性粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤などを含有させてもよい。
保護層の膜厚は、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
上記各層の塗布液を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などが挙げられる。
〈プロセスカートリッジおよび電子写真装置の構成〉
図1に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の例を示す。
図1において、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向(時計回り方向)に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段3(例えば、帯電ローラーなど)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(画像露光手段)(不図示)から露光光(画像露光光)4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成されていく。露光光4は、例えば、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段から出力される、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された光である。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容された現像剤(トナー)で現像(正規現像または反転現像)され、電子写真感光体の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段(例えば、転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材P上に転写されていく。このとき、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送される。また、転写手段には、トナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧がバイアス電源(不図示)から印加される。
トナー像が転写された転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて、定着手段8へ搬送されて、トナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置1の外へプリントアウトされる。
トナー像が転写材Pに転写された後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段7により、転写残りの現像剤(転写残トナー)などの付着物の除去を受けて清浄される。
さらに、電子写真感光体1の表面には、前露光手段(不図示)からの前露光光が照射され、除電処理されて電荷がキャンセルされた後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光手段は必ずしも必要ではない。
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、露光手段(不図示)、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などの構成要素のうち、電子写真感光体1を含む複数の構成要素を容器に納めて一体に支持してプロセスカートリッジを形成してもよい。このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成することができる。例えば、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7から選択される少なくとも1つとを一体に支持してカートリッジ化する。そして、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9とすることができる。
露光光4は、電子写真装置が複写機である場合には、原稿からの反射光や透過光であってもよい。または、センサで原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動もしくは液晶シャッターアレイの駆動などにより放射される光が露光光4であってもよい。
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、電子写真感光体を、以下単に「感光体」とも表記する。
・電子写真感光体の製造例
(感光体1の製造例)
直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体(円筒状の導電性支持体)とした。
次に、酸化スズで被覆されている硫酸バリウム粒子(商品名:パストランPC1、三井金属鉱業(株)製)60質量部、酸化チタン粒子(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)15質量部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライト J−325、DIC(株)(旧名:大日本インキ化学工業(株))製、固形分70質量%)43質量部、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)(旧名:東レ・シリコーン(株)製))0.015質量部、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(旧名:東芝シリコーン(株)製))3.6質量部、2−メトキシ−1−プロパノール50質量部、および、メタノール50質量部を、ボールミルに入れ、20時間分散処理することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を1時間140℃で加熱し、硬化させることによって、膜厚15μmの導電層を形成した。
次に、共重合ナイロン(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)10質量部およびメトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)製)30質量部を、メタノール400質量部/n−ブタノール200質量部の混合溶剤に溶解させることによって、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚0.45μmの下引き層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)20質量部、下記構造式(1)で示されるカリックスアレーン化合物0.2質量部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)10質量部、および、シクロヘキサノン600質量部を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、4時間分散処理した後、酢酸エチル700質量部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を15分間80℃で乾燥させることによって、膜厚0.17μmの電荷発生層を形成した。
Figure 0006681229
次に、上記構造式(E−1)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))7.2質量部、上記構造式(E−2)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))0.8質量部、および、前述の樹脂B2(段落[0036]表1参照)を10質量部、2−メトキシトルエン0.2質量部、メトキシベンゼン48質量部、ジメトキシメタン(メチラール)35質量部を混合し、電荷輸送層用塗布液とした。
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を60分間120℃で乾燥させることによって、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。
作製した電子写真感光体から上記したサイズの試料片を切り出し、ガスクロマトグラフィを用いて上述の方法でメトキシベンゼン(化合物γ)の含有量Wγおよび2−メトキシトルエン(化合物δ)の含有量Wδを測定した。メトキシベンゼンは0.6質量%、2−メトキシトルエン(化合物δ)は0.2質量%であった。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体1」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体2〜4の製造例)
感光体1の製造例において化合物γの添加量(含有量)および化合物δの種類、化合物δの添加量(含有量)を表2に示したように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体2〜4」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体5〜6の製造例)
感光体1の製造例において樹脂αの種類を表2に示したように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体5〜6」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体7〜25の製造例)
感光体1の製造例において化合物γの添加量(含有量)、化合物δの添加量(含有量)、その他の溶剤の量、および、乾燥温度、乾燥時間を表2に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体7〜25」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体26〜28の製造例)
感光体1の製造例において樹脂αの種類、化合物γの添加量(含有量)、化合物δの添加量(含有量)、その他の溶剤の量、および、乾燥時間を表2に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体26〜28」とする。また、含有量Wγおよび含有量Wδの測定結果ならびに電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体29〜34の製造例)
感光体1の製造例において、化合物βの添加量(含有量)、化合物βの質量比、化合物γの添加量(含有量)、化合物δの種類、化合物δの添加量(含有量)、その他の溶剤の量、および、乾燥時間を表2に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体29〜34」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体35の製造例)
感光体1の製造例において、メチラールをテトラヒドロフラン(THF)に変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体35」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体36の製造例)
感光体27の製造例において、メチラールをテトラヒドロフラン(THF)に変更した以外は、感光体27の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体36」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
(感光体37〜38の製造例)
感光体1の製造例において、化合物γの添加量(含有量)、化合物δの種類、化合物δの添加量(含有量)、その他の溶剤の量、ならびに乾燥温度および乾燥時間を表2に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表2に示す。得られた電子写真感光体を「感光体37〜38」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表6に示す。
Figure 0006681229
(感光体101〜105の製造例)
感光体1の製造例において、化合物βの種類、化合物βの添加量(含有量)、化合物βの質量比、化合物γの添加量(含有量)、化合物δの添加量(含有量)を表3に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表3に示す。得られた電子写真感光体を「感光体101〜105」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表7に示す。
(感光体106〜109の製造例)
感光体1の製造例において、樹脂αの種類、化合物βの種類、化合物βの質量比、化合物γの添加量(含有量)を表3に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表3に示す。得られた電子写真感光体を「感光体106〜109」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表7に示す。
(感光体110〜111の製造例)
感光体1の製造例において、化合物βの種類、化合物βの質量比、化合物γの添加量(含有量)、化合物δの添加量(含有量)、その他の溶剤の量、および、乾燥時間を表3に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表3に示す。得られた電子写真感光体を「感光体110〜111」とする。また、含有量Wγおよび含有量Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表7に示す。
Figure 0006681229
(感光体201〜205の製造例)
感光体1の製造例において、樹脂αの種類、化合物βの質量比、化合物γの添加量(含有量)、化合物δの添加量(含有量)を表4に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表4に示す。得られた電子写真感光体を「感光体201〜205」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表8に示す。
Figure 0006681229
(感光体1001〜1003の製造例)
感光体1の製造例において化合物γの添加量(含有量)、化合物δの種類、化合物δの添加量(含有量)、および、乾燥時間を表5に示すように変更した以外は、感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層用塗布液の処方の詳細および製造条件を表5に示す。得られた電子写真感光体を「感光体1001〜1003」とする。また、含有量Wγ,Wδの測定結果および電荷輸送層の膜厚を表9に示す。
Figure 0006681229
・電子写真感光体の実機評価
(実施例1)
〈初期画像評価〉
作製した感光体1を、評価装置であるキヤノン(株)製の電子写真装置(複合機)(商品名:iR−ADV C5255)の改造機のシアンステーションに装着し、以下のように試験および評価を行った。
まず、温度23℃/湿度50%RH環境下で、電子写真感光体の暗部電位(Vd)が−700V、明部電位(Vl)が−200Vになるように帯電装置および画像露光装置の条件を設定し、電子写真感光体の初期電位を調整した。
次に、シアン濃度30%のスクリーン画像をハーフトーン画像として出力し、画像欠陥がないことを確認した。
〈電位変動評価〉
電子写真感光体の表面電位(暗部電位および明部電位)の測定は上記評価装置のカートリジを改造し、電子写真感光体の端部から178mm位置(およそ中央部)に電位測定用プローブが位置するように固定された冶具と現像機とを交換して現像位置で行った。電子写真感光体の非露光部の暗部電位が−700Vになるように印加バイアスを設定し、レーザー光(0.26μJ/cm)を照射して暗部電位から光減衰させた明部電位(表中の初期明部電位)を測定した。また、A4サイズの普通紙を用い、連続して画像出力を2000枚行い、その後の明部電位(表中の耐久後明部電位)を測定した。さらに画像出力後の明部電位と画像出力前の明部電位との差をΔとして算出した。結果を表6に示す。
〈保存性評価〉
電子写真感光体の保存性試験は以下のように試験および評価を行った。
まず、電子写真感光体を温度50℃/湿度95%RHの環境下で30日間保管する。その後23℃/50%RHで30日間保管を行った後、上記評価機を用いて初期画像と同様にシアン濃度30%のスクリーン画像をハーフトーン画像として出力し、下記のように画像欠陥がないことを確認した。
その後、感光体の表面を顕微鏡により観察し、電荷輸送物質の析出および電荷輸送層のクラックが生じていないことを確認した。結果を表6に示す。
A:保存性試験後の画像に欠陥がなく、感光体表面を観察しても電荷輸送物質の析出を確認することができない。
B:保存性試験後の画像に欠陥がないが、感光体表面を観察すると電荷輸送物質の析出と思われる状況を確認できる。
C:保存性試験後の画像に欠陥がないが、感光体表面を観察すると一部電荷輸送物質の析出が確認できるが、電荷輸送層のクラックは生じていない。
D:保存性試験後の画像に欠陥がないが、感光体表面を観察すると電荷輸送物質の析出が確認される。電荷輸送層にわずかにクラックのようなものがみられることはあるがクラックであるかどうかの確認はできない。
E:保存性試験後の画像に黒ポチなどの画像欠陥が顕著に生じ、感光体表面を観察すると電荷輸送物質の析出およびクラックが確認できる。
(実施例2〜38)
実施例1において感光体1を感光体2〜38に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表6に示す。
(実施例101〜111)
実施例1において感光体1を感光体101〜111に変更し、電位評価を行わなかった以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表7に示す。
(実施例201〜205)
実施例1において感光体1を感光体201〜205に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表8に示す。
(比較例1〜3)
実施例1において感光体1を感光体1001〜1003に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表9に示す。
Figure 0006681229
Figure 0006681229
Figure 0006681229
Figure 0006681229

Claims (7)

  1. 支持体および該支持体上の感光層を有する電子写真感光体において、
    前記感光層が、電荷発生物質を含む電荷発生層および電荷輸送物質を含む電荷輸送層をこの順に有し、
    前記電荷輸送層が、
    (α)下記式(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂、および、下記式(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、
    (β)電荷輸送物質と、
    (γ)メトキシベンゼンと、
    (δ)メトキシシクロヘキサン、メチルヘキサノール、および、置換基としてメチル基もしくはエチル基を有するメトキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、
    を含有し、
    前記(δ)の含有量Wδが、前記電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上1質量%以下である
    ことを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0006681229
    (式(A)および(B)中、R11〜R14およびR21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、または、エチル基を示す。XおよびXは、それぞれ独立に、単結合、または、2価の炭化水素基を示す。Yは、フェニレン基、または、ジフェニレンエーテル基を示す。)
  2. 前記置換基としてメチル基もしくはエチル基を有するメトキシベンゼンが、メトキシトルエンである請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記(γ)の含有量Wγが、前記電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上2質量%以下である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記(γ)の含有量Wγが、前記電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上1質量%以下であり、
    前記(δ)の含有量Wδが、前記電荷輸送層の全質量に対して0.001質量%以上0.5質量%以下であり、
    前記(γ)の含有量Wγの前記(δ)の含有量Wδに対する比(Wγ/Wδ)が、0.5以上200以下である
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記(β)が、下記式(E)で示される構造を有する化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0006681229
    (式(E)中、R41〜R46およびR41’〜R45’は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、置換もしくは無置換のアリール基、または、不飽和炭化水素基である。)
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体の表面に露光光を照射して前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段、前記静電潜像をトナーによって現像して前記電子写真感光体の表面にトナー像を形成する現像手段、前記トナー像を前記電子写真感光体の表面から転写材に転写する転写手段、および、前記電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、
    を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体、ならびに、
    前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、
    前記電子写真感光体の表面に露光光を照射して前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段、
    前記静電潜像をトナーによって現像して前記電子写真感光体の表面にトナー像を形成する現像手段、および、
    前記トナー像を前記電子写真感光体の表面から転写材に転写する転写手段、
    を有することを特徴とする電子写真装置。
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