JP4336462B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体の製造方法に関し、詳しくは特定の溶媒を含有する電荷輸送層用の塗布液を用いた電子写真感光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な有機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する有機電子写真感光体の研究・開発が盛んに行われている。特に、電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる物質にそれぞれ分担させた機能分離型の電子写真感光体は、それぞれの材料を広い範囲から選択することができ、所望の性能を有する電子写真感光体を比較的容易に作製し得ることから多くの研究がなされており、実用に供されているものも多い。
【0003】
この機能分離型の電子写真感光体は、通常、固体状の有機化合物を有機溶媒で溶解した塗工液を、各種の塗布方式を用いて支持体上に塗布し、乾燥することにより製造される。
【0004】
しかし、有機溶媒、特に工業生産に適した高い溶解力と適当な沸点を有する溶媒は、意外に少ない。
【0005】
無論、電子写真感光体の製造に用いる溶媒である以上、溶解能や適当な沸点をもつと共に、電子写真感光体としての特性に悪影響を与えないものでないと使用することができないから、これらを全て満足する溶媒の必要性は近年ますます高まっている。
【0006】
特に、電荷発生と電荷輸送の機能を分離して積層構造にした積層型の電子写真感光体の場合、感光層の膜厚の殆どが電荷輸送層(10〜40μm程度)であり、そのため、電荷輸送層の塗布液に使う溶媒には、高い溶解性、適当な沸点をもつことにより感光層内に残留しないこと、沸点が高過ぎて塗布液がダレないことや不純物として残留し電子写真特性に悪影響を及ぼさないこと等、種々の特性が求められる。
【0007】
電荷輸送用のバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂が知られている。
【0008】
しかし、これらの樹脂を塗布する際に用いられる溶媒は、メチレンクロライド、エチレンクロライド、クロロホルム、モノクロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の含ハロゲン系の有機溶媒、あるいはこれらを組み合せたものである場合が多い。
【0009】
ハロゲンを含まない有機溶媒としては、アセトン、酢酸、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン及びシクロヘキサノン等多数あるが、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂に対して溶解能、塗膜形成時にダレない(適当な沸点を有する)、更には電子写真感光体となった時に感度的に優れている、等の必要なあらゆる特性を全て満たす非ハロゲン系溶剤はなかなか見つかっていない。特に、電荷輸送層の場合、通常膜厚が15μm以上必要とされるので、高分子化されたポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂をバインダー樹脂として用いる場合等には、これらを溶解する能力が十分である必要がある。
【0010】
良溶媒としては、分子内に酸素原子を含む環状エーテルのテトラヒドロフランや酸素原子を2個含むジオキサン等があるが、テトラヒドロフラン等は構造的に不安定なので安定化剤等のキャリアトラップとなりうるものを相当量添加しなければならず、また、ジオキサン等は毒性が強く、発癌性の疑いもあり極力製造工程に投入したくない。
【0011】
更に、用いる溶媒によって得られる電子写真特性が大きく異なることも多い。加えて、生産性や用いる電荷輸送材料やバインダー樹脂との相性等を考慮すると用いる溶媒の種類は非常に重要な意味を持つため、これらに対してより優れた特性を有する有機溶媒が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電子写真感光体を製造する際に様々な塗布条件で好ましく使用することができ、画像形成の初期から長期間にわたって電位特性、耐久性や画像特性、解像度に優れた電子写真感光体を得ることのできる電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真感光体の製造方法において、
該電荷輸送層を電荷輸送材料、バインダー樹脂、ジメトキシメタン及び130℃以上の沸点を有する芳香族炭化水素系溶媒を含有する溶液を塗布し、乾燥することによって形成する工程を有し、
該バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂であり、
該ジメトキシメタンと該芳香族炭化水素系溶媒が質量比で5:95〜60:40であり、
該芳香族炭化水素系溶媒がキシレン、エチルベンゼン、アニソール、メシチレン及びモノクロロベンゼンからなる群より選択される
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
上記の構成により本発明の顕著な効果を得ることができる理由は定かではないが、次のように推定することができる。すなわち、電荷輸送層の塗布液に比較的低沸点のジメトキシメタンと比較的高沸点の芳香族炭化水素系溶媒(蒸発の遅い溶媒)を用いることによって、電荷輸送層と電荷発生層の界面を非常に好ましい状態にすることができると考えられる。つまり、芳香族炭化水素は、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂のバインダー樹脂や各種電荷輸送材料への高溶解能を有しているが、ジメトキシメタンは芳香族炭化水素系溶媒よりも電荷輸送材料の溶解能が小さいため、電荷輸送材料の濃度が電荷輸送層中で電子写真感光体の表面側より電荷発生層との界面側の方が大きくなる可能性があり、更に、蒸発の遅い芳香族炭化水素系溶媒は、通常、電荷発生層に用いられる樹脂(各種アセタール樹脂等)を膨潤させることはできても自由に溶解させることはできないため、電荷発生層と電荷輸送層の界面を残しつつも、電荷輸送層塗布液は十分に電荷発生層を濡らすことができるので、結果として非常に広い面積の電荷発生層/電荷輸送層界面を形成することができると考えられる。また、芳香族有機化合物は、たとえ感光層中に微少量残留しても他の例えば脂肪族飽和炭化水素や極性の強い有機化合物等に比べて、電荷の電導性や移動性の妨げになり難いとも考えられる。
【0017】
本発明に用いられるジメトキシメタンは一般名称でメチラールとも呼ばれ、下記の構造をしている。
【0018】
H3C−O−CH2−O−CH3
【0019】
ジメトキシメタンは、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂のバインダー樹脂と完全相互溶解こそできないが、他の脂肪族炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、カルボン酸及びエーテル等の脂肪族溶媒よりも馴染む(膨潤する)ことが可能で、かつ、電荷輸送材料等の低分子機能材料をも溶解させることができる。
【0020】
本発明に用いられる芳香族炭化水素は、1気圧下で130℃以上の沸点を有する。好ましい具体例としては、キシレン、アニソール、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、モノクロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の各種置換基を有するものもが多数挙げられる。本発明においては、沸点が130℃以上のものを用いるので、電荷輸送層の塗布液の高沸点溶媒として、急激に蒸発しない成分であり、前述のように電荷発生層との好ましい濡れ性を得ることができる。一方、層形成の工程で、蒸発せずに感光層の中に残留溶媒として存在すると、耐摩耗性等の障害となり得る。従って、本発明においては、芳香族炭化水素の1圧下での沸点が200℃以下であることが好ましい。
【0021】
芳香族炭化水素の好ましい例としては、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、メシチレン及びモノクロロベンゼン等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、特にキシレン(構造異性体も含む)、エチルベンゼン及びモノクロロベンゼンは沸点が約130〜145℃と残留溶剤量が少ないことが期待できるので好ましい。また、キシレン及びエチルベンゼンは、脱ハロゲンという点で、モノクロロベンゼンは、バインダー樹脂の溶解性の点で好ましい。
【0023】
本発明においては、溶液中にジメトキシメタンと芳香族炭化水素系溶媒の合計量は、溶液全質量に対し、70〜90質量%であることが好ましい。この範囲を超えると、十分に均一かつ適切な粘度の溶液を得難くなる。
【0024】
また、本発明におけるジメトキシメタンと芳香族炭化水素系溶媒の混合比は、固型分を溶解しうる芳香族炭化水素系溶媒の量、白化のし易さと乾燥後の膜厚ダレを考慮した上で所望の混合比を選択できるが、ジメトキシメタン/芳香族炭化水素系=5/95〜60/40(質量比)であることが好ましく、特には10/90〜50/50であることが好ましい。
【0025】
電荷輸送層は、主として電荷輸送材料とバインダー樹脂とを上記溶媒中に溶解させた塗布液を塗布し、乾燥することによって形成される。用いられる電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリールメタン系化合物及びチアゾール系化合物等の低分子化合物が挙げられる。また、バインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が用いられる。電荷輸送材料は質量比で0.5〜2倍量、特には0.7〜1倍量のバインダー樹脂と組み合わされることが好ましい。電荷輸送層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には15〜30μmが好ましい。
【0026】
本発明においては、上記溶媒との相性という観点から、特に好ましい電荷輸送材料として、以下の化合物が挙げられる。
【0027】
【化7】
【0028】
また、本発明に用いられるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂は、溶媒や電荷輸送材料との相性の点で好ましい。ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂の特に好ましい例を以下に示す。これらは、必要に応じて共重合体にすることもできる。なお、例示中のn及びmは重合度(モル比)を示す。
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
これらのうち、ポリカーボネート樹脂の構成単位は、(1−2)、(1−3)及び(1−4)、更には(1−3)がより好ましく、ポリアリレート樹脂の構成単位は(2−2)及び(2−4)がより好ましい。
【0032】
本発明においては、ジメトキシメタンの保存安定性を高めるために酸化防止剤(AO剤)の添加を行うことが好ましい。用いられる酸化防止剤としては、電子写真特性に悪影響を及ぼすものでなければ特に化学構造等に限定は無いが、好ましく用いられる化合物の例としては、例えばヒンダードアミン構造単位もしくはヒンダードフェノール構造単位を有するもの、あるいはその双方を有するもの、有機リン系化合物、有機硫黄系化合物、ハイドロキノン系化合物及びフェニルアミン系化合物等が挙げられる。
【0033】
(1)ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物例
【0034】
【化10】
【0035】
(2)ヒンダードアミン構造単位を有する化合物例
【0036】
【化11】
【0037】
(3)有機リン系化合物例
【0038】
【化12】
【0039】
(4)有機硫黄系化合物例
S(C2H4COOC12H25)2 (3−8)
S(C2H4COOC14H29)2 (3−9)
【0040】
(5)ハイドロキノン系化合物例{(3−10)及び誘導体}
【0041】
【化13】
【0042】
これらの中では、分子内にヒンダードフェノール構造単位を有するものが、塗布液組成物の安定性と成膜された電子写真感光体の繰り返し特性や電位の安定性の点で特に好ましい。
【0043】
酸化防止剤の添加量は、ジメトキシメタンに対して10ppm〜500ppmが好ましい。添加量が少ないと塗布液の経時劣化が早く、添加量が多過ぎると電子写真特性に悪影響を及ぼす(感度劣化や残留電位の増加等)ので、所望の液保存期間に応じてできるだけ少ない添加量にとどめるのが好ましい。
【0044】
本発明における電子写真感光体は、支持体上に電荷発生層と電荷輸送層を有するが、電荷輸送層が表面層である方がより機能を発現できるので好ましい。
【0045】
支持体は、導電性を有するものであればよく、アルミニウムやステンレス等の金属、あるいは導電層を設けた金属、紙及びプラスチック等が挙げられ、形状はシート状や円筒状等が挙げられる。
【0046】
本発明においては、支持体の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これは、カーボンブラックや金属粒子等の導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には10〜30μmが好ましい。
【0047】
本発明においては、支持体あるいは支持体上に導電層の間に接着機能及びバリア機能を有する中間層を設けることができる。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン及びポリエーテルウレタン等が挙げられる。これらは、適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、特には0.3〜1μmが好ましい。
【0048】
電荷発生層は、電荷発生材料及びバインダー樹脂を溶剤中に分散させた塗布液を塗布し、乾燥することによって形成する。電荷発生材料は、バインダー樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル及び液衝突型高速分散機等の方法で均一に分散する。ここで用いる電荷発生材料としてはピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン系等の各顔料が挙げられる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、塩化ビニルデン、ポリビニルベンザール樹脂及びポリブチラール樹脂等が挙げられる。電荷発生材料とバインダー樹脂の比率(質量比)は1/0.1〜1/10が好ましく、より好ましくは1/1〜3/1である。電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜2μmが好ましい。
【0049】
図1に接触帯電方式の電子写真装置の一例を示した。本例は転写式複写機もしくはプリンターであり、電子写真感光体1、帯電ローラ2、現像器4とクリーニングブレード8がプロセスカートリッジ枠体9の中に組み込まれたカートリッジ方式の場合の例である。
【0050】
本発明の製造方法で製造された電子写真感光体1は、ドラム型のものである。この電子写真感光体1は、矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0051】
帯電手段としての接触帯電部材は、帯電ローラ2である。この帯電ローラ2は、該帯電ローラに圧接された電子写真感光体1の回転に従動して回転し、バイアス電源(不図示)からAC電圧を重畳されたDC電圧、あるいはDC電圧のみが印加される。この帯電ローラ2により電子写真感光体1の周面が、所定の極性/電位に一様に帯電される。その電子写真感光体1の帯電処理面に不図示の露光手段(レーザービームスキャナ等)により目的画像情報の露光光3が照射されて電子写真感光体1上に目的画像情報に対応した静電潜像が形成されていく。
【0052】
形成された静電潜像は、現像器4内の荷電粒子(トナー)で正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化される。
【0053】
次いで、そのトナー像は電子写真感光体1と該電子写真感光体に圧接されている転写ローラ5との間に給送された転写材6に転写される。この時、転写ローラ5にはバイアス電源(不図示)からトナーが保有する電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
【0054】
トナー像を転写された転写材6は、電子写真感光体1から分離されて定着ローラ7へ搬送されてトナー像の定着処理を受ける。
【0055】
トナー像転写後の電子写真感光体1面は、クリーニングブレード8により転写残りトナー等の付着物の除去を受け、全工程を終了する。
【0056】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部を示す。
【0057】
(実施例1)
以下の電子写真感光体の製造を温度23℃、湿度60%RH、1気圧の環境下で行った。
【0058】
まず、30φ×358mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗布液を浸漬法で塗布し、140℃で30分間熱硬化し、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0059】
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール 0.2/0.8 20部
【0060】
次に、この上にN−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
【0061】
次に、CuKα特性X線回折のブラッグ角(2θ±0.2°)の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン(TiOPc)4部及びポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学工業製)2部及びシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬法で塗布し、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0062】
次に、下記式(4)
【0063】
【化14】
の電荷輸送材料10部及びポリカーボネート樹脂(商品名:Z−400、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)10部をジメトキシメタン20部/エチルベンゼン(沸点136.2℃)60部に溶解して電荷輸送層用塗布液とした。
【0064】
この塗布液を電荷発生層上に浸漬法で塗布(塗布速度一定)し、140℃で30分間乾燥することによって、膜厚が28μm(中心付近)の電荷輸送層を形成した。この時、乾燥後の電荷輸送層を光学顕微鏡で観察して微小泡が多数観察された場合は白化:×、見られないものは白化:○とした。結果を表2に示す。
【0065】
更に、電荷輸送層の(未塗布側)上端から180mmの位置(電子写真感光体のほぼ中心)と同20mmの位置の膜厚差を測定し、膜厚差が5.5μm未満の場合をダレ:○、5.5μmの場合をダレ:△、5.5μmを超えた場合をダレ:×と評価した。結果を表2に示す。
【0066】
次に、電子写真装置を用いた評価について説明する。
【0067】
装置はキヤノン製LBP−930(プロセススピード106mm/秒の初期設定を倍速の212mm/秒に、レーザー照射部にフィルターをつけ、レーザー光量は通常の50%まで弱め、一次帯電の交流成分の電流量と周波数をそれぞれ2倍とした設定に改造した)及びそのプロセスカートリッジを用いた。
【0068】
作製した電子写真感光体をこの装置に設置し、常温/常湿(23℃/60%RH)の環境下でレター紙耐久試験を行った。シーケンスはプリント1枚ごとに1回停止する間欠モードで、印字率が2%の文字画像で、初期と2000枚後の明部電位(Vl)を測定した。結果を表2に示す。なお、暗部電位は−675Vで一定としたので、Vlの絶対値が小さい方がより感度が高いことを示す。
【0069】
(実施例2〜11)
表1に記載されたNo.2〜11の電荷輸送層の組成であること、酸化防止剤としてBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)の添加の有無、電荷輸送層の乾燥温度/時間を120℃/60分とし、膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレと耐久前後の明部電位(Vl)を評価、測定した。結果を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
(比較例1〜8)
表3に記載されたNo.1〜8の電荷輸送層の組成であること、電荷輸送層の乾燥温度/時間を120℃/60分とし、電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレと耐久前後の明部電位(Vl)を評価、測定した。結果を表4に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
(実施例14〜16)
表5に記載されたNo.14〜16の電荷輸送層の組成であること、電荷輸送層用のバインダー樹脂に前記(2−2)のポリアリレート樹脂(重量平均分子量Mw=10万)を使用し、電荷輸送層の乾燥温度/時間を120℃/60分とし、電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレと耐久前後の明部電位(Vl)を評価、測定した。結果を表6に示す。
【0076】
(実施例17)
表5に記載されたNo.17の電荷輸送層の組成であること、電荷輸送層用のバインダー樹脂に前記ポリカーボネート樹脂Z−400と前記(2−2)のポリアリレート樹脂を1:1の比率(質量比)で混合して使用したこと、電荷輸送層の乾燥温度/時間を120℃/60分とし、電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレと耐久前後の明部電位(Vl)を評価、測定した。結果を表6に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
また、実施例1〜7の電荷輸送層用塗布液を調合後12ヶ月後に外観を観察すると、酸化防止剤が含有されている実施例5〜7の塗布液には変化は見られなかったが、無添加の実施例1〜4の塗布液は僅かに黄色味が増加していた。これはジメトキシメタンが劣化したことを示唆していると推定される。
【0080】
(実施例18)
電荷輸送材料として下記式(5)で示される化合物を10部用いた以外は、実施例14と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレと耐久前後の明部電位(Vl)を評価、測定した。結果を表7に示す。
【0081】
【化15】
【0082】
(実施例19)
電荷輸送材料として上記式(4)と(5)を各々5部(合計10部)用いた以外は、実施例15と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレと耐久前後の明部電位(Vl)を評価、測定した。結果を表7に示す。
【0083】
(実施例20)
電荷輸送材料として上記式(4)と(5)を各々8部と2部(合計10部)用い、o−キシレン60部をモノクロロベンゼン60部に変えた以外は、実施例16と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレと耐久前後の明部電位(Vl)を評価、測定した。結果を表7に示す。
【0084】
【表7】
【0085】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、電荷輸送材料、バインダー樹脂、ジメトキシメタン及び130℃以上の沸点を有する芳香族炭化水素系溶媒を含有する溶液を用いることにより様々な塗布条件で塗布することができ、画像形成の初期から長期間にわたって電位特性、耐久性や画像特性、解像度に優れた電子写真感光体を得ることのできる電子写真感光体の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法で製造された電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 帯電ローラ
3 露光光
4 現像器
5 転写ローラ
6 転写材
7 定着ローラ
8 クリーニングブレード
9 プロセスカートリッジ枠体
10 プロセスカートリッジガイド
Claims (8)
- 支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真感光体の製造方法において、
該電荷輸送層を電荷輸送材料、バインダー樹脂、ジメトキシメタン及び130℃以上の沸点を有する芳香族炭化水素系溶媒を含有する溶液を塗布し、乾燥することによって形成する工程を有し、
該バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂であり、
該ジメトキシメタンと該芳香族炭化水素系溶媒が質量比で5:95〜60:40であり、
該芳香族炭化水素系溶媒がキシレン、エチルベンゼン、アニソール、メシチレン及びモノクロロベンゼンからなる群より選択される
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 前記電荷輸送材料が下記式で示される化合物から選択される請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記ポリカーボネート樹脂が下記式(式中、m及びnは重合度を示す)で示される構造から選択される構成単位を有する請求項1又は2に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記ポリアリレート樹脂が下記式(式中、m及びnは重合度を示す)で示される構造から選択される構成単位を有する請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記溶液が更に酸化防止剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有する請求項5に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記溶液が前記酸化防止剤を前記ジメトキシメタンに対して10ppm〜500ppm含有する請求項5又は6に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記工程が、支持体上の電荷発生層の表面に前記溶液を塗布する工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
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