JP4227289B2 - 電荷輸送層用塗布液及び電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

電荷輸送層用塗布液及び電子写真感光体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体の電荷輸送層を形成するために用いられる電荷輸送層用塗布液及びそれを用い電子写真感光体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体としては、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム及びシリコン等の無機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する無機電子写真感光体が、広く用いられてきた。しかし、これらは感度、熱安定性、耐湿性及び耐久性等において必ずしも満足し得るものではなく、また一部の無機電子写真感光体では電子写真感光体中に人体に有害な物質を含むため、廃棄に際しての問題がある。
【0003】
これら無機電子写真感光体の持つ欠点を克服する目的で様々な有機光導電性化合物を主成分とする感光層を有する有機電子写真感光体の研究・開発が近年盛んに行われている。特に、電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる物質にそれぞれ分担させた機能分離型の電子写真感光体は、それぞれの材料を広い範囲から選択することができ、所望の性能を有する電子写真感光体を比較的容易に作製し得ることから多くの研究がなされており、実用に供されているものも多い。
【0004】
これら有機電子写真感光体を作製するには、導電性支持体上に電荷発生機能や電荷輸送機能を持つ化合物を積層塗布して作製される。従って、通常は多層構造を有し、各層は固体状の化合物を溶媒で溶解した塗工液を、各種の塗布方式を用いて溶媒塗布することになる。
【0005】
しかし、有機溶媒、特に工業生産に適した高い溶解力と適当な沸点を有する溶媒は、意外に少ない。
【0006】
無論、電子写真感光体の製造に用いる溶媒である以上、溶解能や適当な沸点をもつと共に、電子写真感光体としての特性に悪影響を与えないものでないと使用することができないから、これらを全て満足する溶媒の必要性は近年ますます高まっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電子写真感光体を製造する際に広い塗布条件で白化せず、電子写真特性が従来のハロゲン系溶媒を用いた時と同等以上であり、広い使用条件下で画像形成の初期から長期間にわたって電位特性に優れた電子写真感光体の電荷輸送層用塗布液、及び、それを用いた電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層を積層してなる電子写真感光体の電荷輸送層を形成するために用いられる電荷輸送層用塗布液において
メトキシメタン沸点100℃以下(1気圧下)の環状エーテル芳香族系炭化水素(ただしベンゼンを除く)とからなる混合溶媒を含有することを特徴とする電荷輸送層用塗布液が提供される。
【0009】
また、本発明に従って、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層を積層してなる電子写真感光体を製造する方法において、
該電荷輸送層を、上記電荷輸送層用塗布液を用いて形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
電子写真感光体、特に有機電子写真感光体の場合にはその感光層を形成するために、それらを構成する各固形材料を溶媒に溶かして塗布するのが一般的な製造方法である。
【0012】
電荷発生と電荷輸送の機能を分離して積層構造にした積層型の電子写真感光体の場合、感光層の膜厚の殆どが電荷輸送層(10〜40μm程度)であり、そのため、電荷輸送層の塗布液に使う溶媒には、高い溶解性、適当な沸点をもつことにより感光層内に残留しないこと、沸点が高すぎて塗布液がダレないことや不純物として残留し電子写真特性に悪影響を及ぼさないこと等、種々の必要特性が求められる。
【0013】
最近、電荷輸送層のバインダー樹脂によく用いられているポリカーボネートやポリアリレート系バインダーは、優れたバインダーとして電子写真感光体の表面層等に用いられてきた。しかし、これらの塗布溶媒は、メチレンクロライド、エチレンクロライド、クロロホルム、モノクロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の含ハロゲン系の有機溶媒を組み合せたもの又は単体である場合が多い。
【0014】
ハロゲンを含まない有機溶媒としては、アセトン、酢酸、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン及びシクロヘキサノン等多数あるが、表面層のバインダー樹脂として強度的に優れているポリカーボネートやポリアリレート系バインダーに対して溶解能、塗膜形成時にダレない(適当な沸点を有する)、更には電子写真感光体となった時に感度的に優れている、等のあらゆる必要特性を全て満たす非ハロゲン系溶剤はなかなか見つかっていない。特に、電荷輸送層の場合、通常、膜厚が15μm以上必要とされるので、高分子化されたポリカーボネートやポリアリレートをバインダー樹脂として用いる場合等には、これら高分子の溶解能が十分である必要がある。
【0015】
ハロゲンを含まない良溶媒として、分子内に酸素原子を含む環状エーテルのテトラヒドロフラン等や酸素原子を2個含むジオキサン等があるが、テトラヒドロフラン等は構造的に不安定なので安定化剤等のトラップとなりうるものを相当量添加しなければならず、また、ジオキサン等は毒性が強く、発癌性の疑いもあり極力製造工程に投入したくない。
【0016】
また、ジメトキシメタンは沸点が42.5℃程度と他の非ハロゲン溶媒(バインダー樹脂を膨潤、又は溶解できる溶媒)の中では優れた沸点特性(低沸点)を示すものの、各種電荷輸送材の溶解度が小さく、バインダー樹脂にも不溶では無いが膨潤程度にとどまる。
【0017】
本発明者らは、この状況を鋭意検討した結果、ジメトキシメタンと沸点100℃以下(1気圧下)の環状エーテルを混合したものを低沸点溶媒とし、高沸点溶媒に芳香族系炭化水素(ただしベンゼンを除く)を組み合せることにより、固形分(電荷輸送材やバインダー樹脂等)を広く溶解し、芳香族炭化水素を含有しているため塗布〜乾燥の工程で広い温度湿度範囲にわたって白化し難く、かつ、ハロゲン系炭化水素やハロゲン系芳香族炭化水素を好ましく組み合せた溶媒と同等か、それ以上の電子写真特性を発揮することを見出した。
【0018】
なお、この時のジメトキシメタン環状エーテル芳香族系炭化水素との混合比は、白化のし易さと乾燥後の膜厚ダレの関係より所望の混合比を選択できるが、それぞれの特性を満たすより好ましい混合範囲は、ジメトキシメタン環状エーテル芳香族炭化水素の混合比率(ジメトキシメタン/環状エーテル/芳香族炭化水素)が5〜40/30〜70/10〜60(質量比)である。
【0019】
本発明のジメトキシメタンは一般名称がメチラールとも呼ばれ、下記の構造をしている
C−O−CH−O−CH
【0020】
ジメトキシメタンは、他の脂肪族炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、カルボン酸及びエーテル等の他の脂肪族溶媒よりは高分子ポリカーボネートやポリアリレート等のバインダー樹脂高分子と完全相互溶解こそできないが、馴染む(膨潤する)ことが可能で、かつ、電荷輸送材等の低分子機能材料をも少量であれば溶解させることができる電子写真感光体の塗布液に適した溶媒である。特に、沸点が42.5℃程度と電子写真感光体の低沸点塗布溶媒に特に適した蒸発特性を備えている。
【0021】
また、沸点100℃以下(1気圧下)の環状エーテルには、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、オキサン及びこれらにメチル基やエチル基が置換された誘導体が挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
沸点が100℃を超える環状エーテルを高沸点溶媒として用いる場合、塗膜のダレへの悪影響の他に、本発明で組み合せる高沸点溶媒としての芳香族炭化水素を組み合せた場合の様な十分な電子写真特性を得ることはできない。それは、芳香族炭化水素と環状エーテルの溶解特性の差(特に電荷発生層の溶解、電荷発生層への濡れ性の差と思われる)が影響していると考えられる。
【0024】
一方、一般に芳香族系炭化水素にはベンゼンの様に置換基を持たないものの他に、トルエン、キシレン、アニソール、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、モノクロロベンゼン及びジクロロベンゼン等の置換基を有するものも多数ある。この芳香族系炭化水素は、塗布液の構成溶媒として塗布され、しかる後に高温乾燥にて溶媒を蒸発により除去される工程をとるので、蒸発し難い溶媒であれば感光層の中に残留溶媒として存在し、表面層の塗布液であれば、耐摩耗性の障害となる。従って、本発明に係わる芳香族炭化水素は、通常の乾燥温度とかけ離れた沸点を有するのでは電子写真感光体の電荷輸送層用塗布液の溶媒に適さないので、1気圧下で沸点が200℃以下であることが好ましい。
【0025】
上記の様な沸点を有する芳香族炭化水素の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール及びクロロベンゼン等である。ただし、ベンゼンは、人体への悪影響の知見及び後述の白化防止の観点から本発明の芳香族系炭化水素には含めない。
【0026】
なお、これら芳香族炭化水素の中でもキシレン及びその構造異性体の沸点である135〜145℃の範囲は、電荷輸送層塗布液の高沸点溶媒として、急激に蒸発しない成分である点(後述の電荷発生層との濡れ性の観点から)、残留し易い成分ではない点、の相反する特性を兼ね備える適切な温度範囲と考えられる。
【0027】
【化2】
【0028】
この様な芳香族系炭化水素にジメトキシメタンと環状エーテルとを併せて組み合せた電子写真感光体の電荷輸送層用塗布液とすることで、脱ハロゲン系溶媒も可能にするだけでなく、塗布〜乾燥時の急激な温度低下を妨げられるため、広い温度湿度にわたって白化(ブラッシング)が防げ、更に、この組み合せで他の非ハロゲン系溶媒単体や非ハロゲン系溶媒の組み合せではみられない広い使用環境の下で良好な電子写真特性(電子写真感光体の初期から耐久後にわたり高感度、低残留電位を維持)を発現することが可能となる。
【0029】
その理由は定かではないが、電荷発生層の上に電荷輸送層を積層した電子写真感光体の電荷輸送層塗布液の低沸点良溶媒に適当量の芳香族系炭化水素(蒸発の遅い溶媒)が混合されていることで、芳香族系炭化水素のポリカーボネートやポリアリレート等のバインダー樹脂や各種電荷輸送材への高溶解能をもちながらも、電荷発生層に用いられる樹脂(各種アセタール樹脂等)を膨潤させることはできても自由に溶解させることはできない性質のため、電荷発生層と電荷輸送層の界面を残しつつも、電荷輸送層塗布液は十分に電荷発生層を濡らすことができるので、結果として非常に広い面積の電荷発生層/電荷輸送層界面を形成することができ、かつ、電荷発生材である顔料を覆う樹脂を溶解せしめることはないこと、等が高感度の一因と考えられる。更に、現段階では考察が困難であるが、貧溶解能の低沸点溶媒、良溶解能の低〜中沸点環状エーテル系溶媒と良溶解能の高沸点芳香族溶媒という3種類の異なる特性を有する溶媒を混ぜて電荷輸送層用塗布液の溶媒とすることで、低温/低湿〜高温/高湿の広い使用環境にわたって安定した電子写真特性を有することができる。
【0030】
本発明のジメトキシメタン、環状エーテル及び芳香族炭化水素の電子写真感光体中に含まれる残留含有量は、電荷輸送層厚、バインダー樹脂との親和性、塗布スピード、ドラム径及び工程プロセス等によって微妙に変わってくるので、実際はドラム中の含有量分析によって確認後に生産するのが良い。含有量制御は、乾燥温度、乾燥時間、乾燥風速及び風量等の好ましい組み合せにより行われる。
【0031】
本発明の電荷輸送層用塗布液の溶媒の電子写真感光体中に含まれる残留含有量の検出は、当業者において良く知られている方法、例えばガスクロマトグラフィー等により定量できる。
【0032】
本発明に特に適した電荷輸送層用塗布液に溶解させるバインダー樹脂としては、ポリカーボネートやポリアリレート等があり、これらのバインダー樹脂は公知であり、各種資料例えば、特開平7−92703号公報や特開平10−20523号公報等に記述されている。これらポリカーボネートやポリアリレートの例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、例示中のn及びmは重合度(モル比)を表す。
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
上記ジメトキシメタンや環状エーテルの保存安定性を高めるために酸化防止剤(AO剤)の添加を行ってもよい。その際、用いられる酸化防止剤としては、電子写真特性に悪影響を及ぼすものでなければ特に化学構造等に限定は無い。好ましく用いられる化合物の例としては、例えばヒンダードアミン構造単位もしくはヒンダードフェノール構造単位を有するもの、あるいはその双方を有するもの、有機リン系化合物、有機硫黄系化合物、ハイドロキノン系化合物及びフェニルアミン系化合物等があるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
(1)ヒンダードフェノール構造単位を有する化合物例
【0037】
【化5】
【0038】
(2)ヒンダードアミン構造単位を有する化合物例
【0039】
【化6】
【0040】
(3)有機リン系化合物例
【0041】
【化7】
【0042】
(4)有機硫黄系化合物例
S(CCOOC1225 (3−8)
S(CCOOC1429 (3−9)
(5)ハイドロキノン系化合物例{(3−10)及び誘導体}
【0043】
【化8】
【0044】
好ましい酸化防止剤としては、分子内にヒンダードフェノール構造単位を有するものが、塗布液組成物の安定性と成膜された電子写真感光体の繰り返し特性や電位の安定性の点で有利であり、酸化防止剤の異種混合物を用いても良い。
【0045】
酸化防止剤の添加量は、芳香族炭化水素以外の(低〜中沸点エーテル)溶媒に対して10ppm〜500ppmが好ましく、添加量が少ないと塗布液の経時劣化がく、添加量が多すぎると電子写真特性に悪影響を及ぼす(感度劣化や残留電位の増加等)ので、所望の液保存期間に応じてできるだけ少ない添加量にとどめるのが好ましい。
【0046】
以下に本発明に用いる電子写真感光体の構成について説明する。
【0047】
本発明における電子写真感光体は、電荷輸送層と電荷発生層に分離した積層型で、表面層は電荷輸送層である方がより機能を発現できる。
【0048】
使用する導電性支持体は導電性を有するものであればよく、アルミニウムやステンレス等の金属、あるいは導電層を設けた金属、紙及びプラスチック等が挙げられ、形状はシート状や円筒状等が挙げられる。
【0049】
支持体の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。これは、カーボンブラックや金属粒子等の導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には10〜30μmが好ましい。
【0050】
その上に接着機能を有する中間層を設る。中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン及びポリエーテルウレタン等が挙げられる。これらは、適当な溶剤に溶解して塗布される。中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、特には0.3〜1μmが好ましい。
【0051】
中間層の上には、電荷発生層が形成される。本発明に用いられる電荷発生層としては、電荷発生材料及びバインダー樹脂を溶剤中に分散させた塗料を塗工乾燥して形成する。機能分離型の場合、電荷発生層は電荷発生材料をバインダー樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル及び液衝突型高速分散機等の方法でよく分散する。ここで用いる電荷発生材料としては、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン系の各顔料が挙げられる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、塩化ビニルデン、ポリビニルベンザール樹脂及びポリブチラール樹脂等が主として用いられる。顔料とバインダー樹脂の比率は1/0.1〜1/10が好ましく、特には1/1〜3/1が好ましい。分散液を塗布、乾燥させて形成される電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜2μmが好ましい。
【0052】
電荷輸送層は、主として電荷輸送材料とバインダー樹脂とを本発明に基づく混合溶媒中に溶解させた塗料を塗工/乾燥して形成する。用いられる電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリールメタン系化合物及びチアゾール系化合物等の低分子化合物が挙げられる。電荷輸送層のバインダー樹脂としては例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂及びスチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。その中でも、ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂が好ましい。電荷輸送材は、0.5〜2倍量のバインダー樹脂と組み合わされ塗工、乾燥し電荷輸送層を形成する。電荷輸送層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には15〜30μmが好ましい。
【0053】
次に、電子写真感光体の近傍の構成について説明する。
【0054】
図1に接触帯電方式の電子写真装置の一例を示した。本例は転写式複写機もしくはプリンターであり、電子写真感光体1、帯電ローラ2、現像器4及びクリーニングブレード8がプロセスカートリッジ枠体9の中に組み込まれたカートリッジ方式の場合の例である。
【0055】
本発明の対象となっている電子写真感光体1は、ドラム型のものである。この電子写真感光体1は、矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0056】
帯電手段としての接触帯電部材は、帯電ローラ2である。この帯電ローラ2は、該帯電ローラに圧接した電子写真感光体1の回転に従動して回転し、バイアス電源(不図示)からAC電圧を重畳されたDC電圧が印加される。この帯電ローラ2により電子写真感光体1の周面が、所定の極性/電位に一様に帯電される。その電子写真感光体1の帯電処理面に不図示の露光手段(レーザービームスキャナ等)により目的画像情報の露光光3がなされて電子写真感光体1面に目的画像情報に対応した静電潜像が形成されていく。
【0057】
その形成静電潜像は、現像器4内の荷電粒子(トナー)で正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化される。
【0058】
次いで、そのトナー像は電子写真感光体1と該電子写真感光体に圧接している転写ローラ5との間に給送された転写材6に転写される。この時、転写ローラ5にはバイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加されている。
【0059】
トナー像転写を受けた転写材6は、電子写真感光体1面から分離されて定着ローラ7へ搬送されてトナー像の定着処理を受ける。
【0060】
トナー像転写後の電子写真感光体1面は、クリーナー(クリーニングブレード)8により転写残りトナー等の付着物の除去を受け、全工程を終了する。
【0061】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部を示す。
【0062】
(実施例1)
常温/常湿下で、30φ×358mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗工液を支持体上に浸漬法で塗布し、140℃で30分間熱硬化して、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0063】
導電性顔料:SnOコート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
バインダー樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール 0.2/0.8 20部
【0064】
次に、この上にN−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
【0065】
次に、CuKα特性X線回折のブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン(TiOPc)4部及びポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学工業製)2部及びシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、エチルアセテート100部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬法で塗布し、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0066】
次に、下記構造式(4)
【0067】
【化9】
【0068】
の電荷輸送材10部及び、ポリカーボネート樹脂(商品名:Z−400、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)10部をジメトキシメタン15部/テトラヒドロフラン40部/トルエン25部の混合溶媒に溶解させて電荷輸送層用塗布液とした。
【0069】
この塗布液で浸漬法で塗布(塗布速度一定)し、120℃で1時間乾燥することによって、膜厚が30μm(中心付近)の電荷輸送層を形成した。この時、乾燥後の電荷輸送層を光学顕微鏡で観察して微小泡が多数観察された場合は白化:×、若干見られるものは:△、見られないものは白化:○とした。結果を表2に示す。
【0070】
更に、電荷輸送層の(未塗布側)上端から180mmの位置(電子写真感光体のほぼ中心)と同20mmの位置の膜厚差を測定し、膜厚差が4μm未満の場合をダレ:○、4μm以上の場合をダレ:×と評価した。結果を表2に示す。
【0071】
次に、機械を用いた評価について説明する。
【0072】
装置は、キヤノン製LBP−930(プロセススピード106mm/秒の初期設定を倍速の212mm/秒に、レーザー照射部にフィルターをつけ、レーザー光量は通常の50%まで弱めた設定に改造した)及びそのプロセスカートリッジを用いた。
【0073】
作製した電子写真感光体をこの装置で常温常湿(23℃/60RH%程度)の環境下でレター紙耐久を行い、シーケンスはプリント1枚ごとに1回停止する間欠モードで、印字率は2%の文字画像で、初期と2000枚後の明部電位(Vl)を測定した。結果を表2に示す。
【0074】
また、同装置で同じ未耐久の新品の電子写真感光体の初期電位(Vl)を高温高湿(HH:35℃/80%RH)と低温低湿(LL:12℃/12%RH)の環境下でも測定し、常温常湿の環境下でのVlとの差(Δ量:|HH又はLLでのVl−常温常湿でのVl|)も表2に示す。
【0075】
(実施例2〜14)
表1に記載されたNo.2〜14の電荷輸送層用塗布液の溶媒組成であること、酸化防止剤としてBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)の添加の有無と電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレ、耐久前後の感度(Vl)と常温常湿の環境下のVlとのΔ量を測定した。結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(比較例1〜
表3に記載されたNo.1〜9の電荷輸送層用塗布液の溶媒組成であることと電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレ、耐久前後の感度(Vl)と常温常湿の環境下のVlとのΔ量を測定した。結果を表4に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
(実施例15〜17)
表5に記載されたNo.15〜17の電荷輸送層用塗布液の溶媒組成であること、電荷輸送層用のバインダー樹脂に前記(2−2)のポリアリレート樹脂(Mw=10万)を使用し、電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレ、耐久前後の感度(Vl)と常温常湿の環境下のVlとのΔ量を測定した。結果を表6に示す。
【0082】
(実施例18)
表5に記載されたNo.18の電荷輸送層用塗布液の溶媒組成であること、電荷輸送層用のバインダー樹脂に前記ポリカーボネート樹脂Z−400と前記(2−2)のポリアリレート樹脂を1:1の比率(質量比)で混合して使用したこと、電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレ、耐久前後の感度(Vl)と常温常湿下のVlとのΔ量を測定した。結果を表6に示す。
【0083】
(実施例19)
表5に記載されたNo.19の電荷輸送層用塗布液の溶媒組成であること、電荷輸送層用のバインダー樹脂にポリメチルメタクリレート樹脂(Mw=10万)を使用し、電荷輸送層の膜厚を26μmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、白化、ダレ、耐久前後の感度(Vl)と常温常湿下のVlとのΔ量を測定した。結果を表6に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
また、実施例1〜6の電荷輸送層用塗布液を調合後12ヶ月後に外観を観察すると、酸化防止剤が含有されている実施例5及び6に変化は見られなかったが、無添加の実施例1〜4は皆僅かに黄色味が増加し、エーテル溶媒の劣化を示唆する結果となった。
【0087】
【発明の効果】
ジメトキシメタン、沸点100℃以下(1気圧下)の環状エーテル及び芳香族系炭化水素(ただしベンゼンを除く)を組み合せて電荷輸送層用塗布液の溶媒として用いることにより、固形分の十分な溶解能、白化しない温度湿度範囲が広いこと、膜厚のダレが少ないこと、更には広い使用条件下で電子写真感光体として十分な特性を有すること、というハロゲン系溶媒でなければ困難であった電荷輸送層用塗布液の溶媒に求められる各種特性を、本発明はハロゲン系溶媒に限定されない溶媒構成で全て満たすことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 帯電ローラ
3 露光光
4 現像器
5 転写ローラ
6 転写材
7 定着ローラ
8 クリーニングブレード
9 プロセスカートリッジ枠体
10 プロセスカートリッジガイド

Claims (8)

  1. 導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層を積層してなる電子写真感光体の電荷輸送層を形成するために用いられる電荷輸送層用塗布液において
    メトキシメタン沸点100℃以下(1気圧下)の環状エーテル芳香族系炭化水素(ただしベンゼンを除く)とからなる混合溶媒を含有することを特徴とする電荷輸送層用塗布液。
  2. 前記ジメトキシメタン前記環状エーテル前記芳香族炭化水素の混合比率(ジメトキシメタン/環状エーテル/芳香族炭化水素)が5〜40/30〜70/10〜60(質量比)である請求項1に記載の電荷輸送層用塗布液。
  3. 前記環状エーテルがテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン及びオキサンから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の電荷輸送層用塗布液。
  4. 前記芳香族炭化水素がキシレン及びその構造異性体から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の電荷輸送層用塗布液。
  5. さらに電荷輸送層用のバインダー樹脂としてポリカーボネート又はポリアリレートを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の電荷輸送層用塗布液。
  6. さらに酸化防止剤含有る請求項1〜5のいずれかに記載の電荷輸送層用塗布液。
  7. 前記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造単位を有する酸化防止剤である請求項6に記載の電荷輸送層用塗布液。
  8. 導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層を積層してなる電子写真感光体を製造する方法において、
    該電荷輸送層を、請求項1〜7のいずれかに記載の電荷輸送層用塗布液を用いて形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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