本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。また、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
本願発明者らは、上述した課題を解決すべく、以下の構成の光学フィルムを検討した。すなわち、本実施形態の光学フィルムは、1/4波長位相差フィルム(λ/4フィルム)としてのフィルム基材と、前記フィルム基材の一方の面側に位置する、少なくとも2層の硬化層とを有する光学フィルムであって、前記少なくとも2層の硬化層のうち、前記フィルム基材に最も近い硬化層を第1硬化層とし、前記第1硬化層の次に前記フィルム基材に近い硬化層を第2硬化層とし、前記第1硬化層の厚みをL1(μm)とし、前記第2硬化層の厚みをL2(μm)としたとき、
L1<L2
である。この特徴は、特許請求の範囲に記載した各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
上記光学フィルムの構成による効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
λ/4フィルムとしてのフィルム基材上に、少なくとも2層の硬化層を有する構成において、フィルム基材に最も近い第1硬化層の厚みL1よりも、次にフィルム基材に近い第2硬化層の厚みL2のほうが大きい。第2硬化層の膜厚が厚いため、この第2硬化層によって、λ/4フィルム(フィルム基材)の表面保護を図ることができる。
また、第1硬化層が薄いため、第1硬化層を形成する組成物に含まれる溶剤がλ/4フィルムに浸透することで機械的強度の弱くなる領域(第1硬化層を形成する成分とλ/4フィルムを形成する成分とが混合した混合領域で、比較的脆い領域)も膜厚方向に薄くなる。このため、第1硬化層と第2硬化層とを含む硬化層全体において、機械的強度の相対的に強い領域が増大する。したがって、高温高湿環境下でλ/4フィルムの斜め延伸によって生じた残留応力が緩和され、これによってλ/4フィルムが配向方向(斜め延伸方向)に縮もうとしても、硬化層全体によってλ/4フィルムの寸法変化を抑えることができる。その結果、光学フィルムをロール状に巻き取った場合でも、巻状体におけるねじれや、そのねじれによる光学フィルムのブロッキングおよびブラックバンドの発生を抑えることができる。つまり、光学フィルムの巻状変形を抑えることが可能となる。その結果、光学フィルムを巻状体から繰り出したときに、光学フィルムの平面性を確保することができる。
このように光学フィルムの平面性が確保されることにより、光学フィルムの光学特性がフィルム面全体で良好に発揮されるため、上記光学フィルムを用いて円偏光板を構成し、この円偏光板を画像表示装置に適用した場合でも、偏光サングラス等による画像観察時の視認性の低下(コントラストの低下)を抑えることができる。
本実施形態の偏光板は、上記の光学フィルムが、偏光子の一方の面側に位置している構成である。上記光学フィルムの構成によれば、光学フィルムをロール状に巻き取った場合でも、巻状体の巻状変形を抑えて、光学フィルムの平面性を確保することができる。これにより、上記光学フィルムを偏光子に貼り付けて偏光板(例えば円偏光板)を構成しても、偏光板の平面性を良好に確保することができる。その結果、上記偏光板を画像表示装置に適用した場合において、偏光サングラス等による画像観察時の視認性の低下(例えばコントラストムラ)を抑えることができる。
本実施形態の画像表示装置は、上記偏光板が、表示セルの少なくとも一方の面側に位置している構成である。平面性に優れた上記偏光板を用いて画像表示装置を構成することにより、偏光サングラス等による画像観察時の視認性の低下(例えばコントラストムラ)を抑えることができる。
以下、本実施形態の光学フィルムが適用される画像表示装置の具体的な構成について説明する。
〔画像表示装置の構成〕
図1は、本願の一実施形態の画像表示装置1の概略の構成を分解して示す断面図である。画像表示装置1は、例えば液晶表示装置であり、液晶表示パネル2の後述する偏光板5(特に後述する光学フィルム16上)に、充填層31を介して保護部3を貼り合わせて構成されている。充填層31は、アクリルなどの光硬化性樹脂からなる接着層(空隙充填剤)であり、液晶表示パネル2の偏光板5の表面全体に形成されている。保護部3は、液晶表示パネル2の表面を保護するものであり、例えばアクリル樹脂やガラスからなる前面板で構成される。なお、前面板の代わりにタッチパネル(静電容量方式や抵抗膜方式など)を保護部3として用いてもよい。
液晶表示パネル2は、液晶層を一対の基板で挟持した液晶セル4(表示セル)の両側に、偏光板5・6をそれぞれ配置して構成されている。偏光板5は、粘着層7を介して液晶セル4の一方の面側(例えば視認側)に貼り付けられている。偏光板6は、粘着層8を介して液晶セル4の他方の面側(例えばバックライト9側)に貼り付けられている。液晶表示パネル2の駆動方式は特に限定されず、IPS(In Plane Switching)型式、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式など、様々な駆動方式を採用することができる。
偏光板5は、所定の直線偏光を透過する偏光子11と、偏光子11の保護部3側に順に積層されるフィルム基材12、第1硬化層13および第2硬化層14と、偏光子11の液晶セル4側に積層される裏面保護フィルム15とで構成されている。フィルム基材12、第1硬化層13および第2硬化層14により、偏光子11の視認側の面に形成される保護フィルムとしての光学フィルム16が構成されている。フィルム基材12は、例えばセルロース系樹脂(セルロースエステル系樹脂)からなり、セルロースエステルフィルム基材とも称する。フィルム基材12上に硬化層(第1硬化層13、第2硬化層14)を設けることにより、偏光板5の表面を保護することができる。
裏面保護フィルム15は、偏光板5の裏面を保護するために設けられている。裏面保護フィルム15は、フィルム基材12と同様の材料(例えばセルロースエステル)で構成されてもよいし、他の材料で構成されてもよい。また、裏面保護フィルム15は、光学補償機能を有するフィルム(位相差フィルム)で構成されてもよし、透過光に対してほとんど位相差を付与しないゼロ位相差フィルムで構成されてもよい。
偏光板6は、所定の直線偏光を透過する偏光子21と、偏光子21の液晶セル4側に配置される表面保護フィルム22と、偏光子21の液晶セル4とは反対側に配置される裏面保護フィルム23とを積層して構成されている。偏光子21は、透過軸が偏光子11と垂直となるように配置されている(クロスニコル状態)。表面保護フィルム22および裏面保護フィルム23は、偏光板6の表面および裏面を保護するために設けられているが、これらは偏光板5のフィルム基材12と同様の材料(例えばセルロースエステル)で構成されてもよいし、他の材料で構成されてもよい。
上記した偏光板5の視認側の光学フィルム16について、さらに説明すれば以下の通りである。
光学フィルム16のフィルム基材12は、偏光子11と水糊によって貼合されており、その膜厚は、例えば5〜50μmの範囲内であることが望ましい。フィルム基材12を薄膜化することで、光学フィルム16および偏光板5を薄膜化することができ、画像表示装置1全体の薄型化に寄与できる。
フィルム基材12は、1/4波長位相差フィルム(λ/4フィルム)で構成されている。λ/4フィルムは、透過光に対して波長の1/4程度の面内位相差を付与する層であり、本実施形態では、斜め延伸が施されたフィルムで構成されている。λ/4フィルムの遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度(交差角)は、30°〜60°であり、これによって、偏光子11からの直線偏光は、λ/4フィルム(フィルム基材12)によって円偏光または楕円偏光に変換される。
したがって、観察者が偏光サングラスを装着して表示画像を観察する場合において、偏光子11の透過軸(吸収軸に垂直)と、偏光サングラスの透過軸とがどのようにズレていても、偏光板5から出射される光(円偏光または楕円偏光)に含まれる、偏光サングラスの透過軸に平行な光の成分を観察者の眼に導くことができる。これにより、観察する角度によって表示画像が見え難くなるのを抑えることができる。また、観察者が偏光サングラスを装着しない場合でも、偏光板5から出射されて観察者の眼に入射するのは円偏光または楕円偏光であるので、直線偏光が観察者の眼に直接入射する構成に比べて、観察者の眼の負担を軽減することができる。なお、立体画像を観察すべく、偏光サングラスの代わりに偏光メガネを用いて表示画像を観察する場合においても、上記と同様の理由により、観察する角度によって表示画像が見え難くなるのを抑えることができる。
光学フィルム16において、フィルム基材12上の複数の硬化層のうち、フィルム基材12に最も近い第1硬化層13の厚みをL1(μm)とし、次にフィルム基材12に近い第2硬化層14の厚みをL2(μm)としたとき、本実施形態では、
L1<L2
である。このようにL1およびL2の大小関係を設定することにより、第2硬化層14によってフィルム基材12の表面保護を図りながら、高温高湿環境下でのフィルム基材12の寸法変化による光学フィルム16の巻状変形を抑えることができる。その結果、光学フィルム16を巻状体から繰り出したときでも、光学フィルム16の平面性の低下を抑えることができる。その詳細な理由は、前述した通りである。
第2硬化層14は、脂環構造を有する樹脂と、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子とを含み、第1硬化層13は、第2硬化層14の脂環構造を有する樹脂とは異なる樹脂と、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子とを含んでいてもよい。
第2硬化層14が、脂環構造を有する樹脂を含むことにより、低透湿の第2硬化層14(低透湿層)が実現される。この第2硬化層14は、フィルム基材12上に第1硬化層13を介して形成されている。すなわち、第2硬化層14とフィルム基材12との間には、第1硬化層13が介在している。この第1硬化層13は、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子を含む。上記微粒子は吸湿性(吸水性)を有しているため、例えば上記光学フィルム16を保護フィルムとして偏光子11の片面に水糊によって貼合したときに、水糊の水分がフィルム基材12に進入したとしても、その水分は第1硬化層13(上記微粒子)の吸湿性によって、フィルム基材12から第1硬化層13に抜ける。これにより、フィルム基材12が含水によって変形〈膨張)するのを抑えることができ、その変形によって第2硬化層14に引張応力が付与され、その応力による負荷が生じるのを低減することができる。
また、第1硬化層13が、低透湿を実現する第2硬化層の14樹脂とは異なる樹脂(例えばウレタンアクリレート樹脂が好ましい)を含んでいることにより、この第1硬化層13の上に形成される第2硬化層14に外部からの衝撃が加わった場合でも、その衝撃を第1硬化層13で緩和(吸収)することができる。さらに、第2硬化層14にも、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子を含有させることにより、第2硬化層14の硬度を上げることができる。なお、第2硬化層14では、脂環構造を有する樹脂によって低透湿が実現されるため、第2硬化層14が吸湿性を有する上記微粒子を含有していても、低透湿の第2硬化層14を実現することができる。
このように、フィルム基材12の含水による変形を抑え、第1硬化層13にて衝撃を吸収する構成とし、第2硬化層14の硬度をある程度確保することにより、第2硬化層14に外力(例えば画像表示装置1の曲面化による曲げ応力や、外部からの衝撃)が加わった場合でも、第2硬化層14が割れにくくなる。したがって、低透湿の第2硬化層14を設ける構成であっても、第2硬化層14の割れを低減することができる。
また、フィルム基材12に進入した水糊の水分は第1硬化層13側に抜けるため、フィルム基材12の含水による寸法変形および含水による位相差変動を抑えることもできる。これにより、光学フィルム16を画像表示装置1に適用したときのコントラストの低下をより抑えるとともに、偏光メガネ等を用いた画像観察時に、フィルム基材12の位相差変動によるクロストークを低減することができる。
また、第2硬化層14に含まれる樹脂(脂環構造を有する樹脂)と上記微粒子とは、相溶性が悪い。このため、フィルム基材12上に第2硬化層14を直接設けると、フィルム基材12からの抽出物(例えば添加物)と反応して上記微粒子が凝集しやすくなり、上記微粒子の層が第2硬化層14内で分離して形成されやすくなる。上記微粒子の層が形成されると、第2硬化層14表面での外光の反射光と、上記微粒子の層での外光の反射光とが干渉し、黒表示時にムラが生じる。
一方、本実施形態のように、フィルム基材12と第2硬化層14との間に第1硬化層13を設けると、この第1硬化層13の存在によって、第2硬化層14に含まれる上記微粒子がフィルム基材12からの抽出物と反応しにくくなり、上記微粒子が凝集しにくくなる。したがって、上記微粒子の層が形成されにくくなり、上記層の形成に起因する上述の表示ムラを低減することができる。
また、第1硬化層13に上記微粒子が含有されていない場合、上記微粒子の有無によって第2硬化層14と第1硬化層13と間で屈折率差が生じ、この屈折率差による光の干渉が生じる。しかし、本実施形態では、第1硬化層13にも、第2硬化層14に含まれる微粒子と同じ微粒子が含まれているので、第2硬化層14と第1硬化層13とでの屈折率差を小さくでき、上記屈折率差に起因する光の干渉を低減することができる。
第1硬化層13が含む樹脂(第2硬化層14の樹脂とは異なる樹脂)は、ウレタンアクリレート樹脂であることが望ましい。第1硬化層13が柔らかすぎると、その上に第2硬化層14を形成しても、光学フィルム16の硬度として、高い硬度が出にくくなる。ウレタンアクリレート樹脂を、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子と併せて用いることで、緩衝性を損なわない範囲で比較的硬い第1硬化層13を形成することができる。したがって、ウレタンアクリレート樹脂を含む第1硬化層13上に第2硬化層14を形成することにより、光学フィルム16の硬度を容易に上げることが可能となる。
第1硬化層13の厚みL1は、0.5μm以上3μm以下であることが望ましい。L1が上記範囲の場合、第2硬化層14の硬度を確保しながら、高温高湿環境下でのフィルム基材12の寸法変化を確実に抑えることができる。
ちなみに、L1が0.5μm未満では、第1硬化層13が薄すぎて、硬化不良を起こしやすくなる。第1硬化層13に硬化不良が生じていると、その上に第2硬化層14を形成したときに、第1硬化層13からの抽出物が第2硬化層14にて凝集し、第2硬化層14が所定の硬度を発揮しにくくなる。一方、L1が3μmを超えると、第1硬化層13が厚くなりすぎて、第1硬化層13を形成する組成物に含まれる溶剤がフィルム基材12に浸透し、機械的強度の弱くなる領域が膜厚方向に厚くなり、高温高湿環境下でのフィルム基材12の寸法変化を抑えることが困難となる。
上記した光学フィルム16は、偏光板以外の用途に用いることも可能である。この場合、第1硬化層13および第2硬化層14はフィルム基材12の両面に設けられてもよい。また、2つの偏光板5を液晶セル4の両側に配置して画像表示装置1を構成することも可能である。
図2は、光学フィルム16の他の構成を示す断面図である。光学フィルム16は、第2硬化層14に対して第1硬化層13とは反対側の表面に、機能性層としての帯電防止層17を有していてもよい。また、図示はしないが、フィルム基材12の一方の面側に、硬化層を3層以上形成してもよく、さらに最表面の硬化層上に、上記の帯電防止層17を形成してもよい。
また、図3は、光学フィルム16のさらに他の構成を示す断面図である。光学フィルム16は、フィルム基材12の一方の面側(第2硬化層上)および他方の面側の両方に、帯電防止層17を有していてもよく、図示はしないが、フィルム基材12の第1硬化層13とは反対側の面にのみ、帯電防止層17を有していてもよい。
このように、光学フィルム16が、フィルム基材12の少なくとも一方の面側に、帯電防止層17をさらに有していることによりフィルムの帯電が防止され、フィルム巻き取り時のブロッキングを抑制することができ、光学フィルム16の巻状変形をより抑えることができる。また、光学フィルム16に帯電防止機能を付与できるため、例えば表面が帯電しやすい画像表示装置の偏光板(例えば画像表示装置1上に保護部3としてタッチパネルを設ける構成において、その画像表示装置1におけるタッチパネル側の偏光板5)に上記光学フィルム16を適用することが非常に有効となる。
〔光学フィルム〕
以下、光学フィルム16の詳細について説明する。
<第2硬化層>
本実施形態の第2硬化層は、脂環構造を有する活性エネルギー線硬化性樹脂(以下、単に硬化性樹脂とも記載する)を含有している。脂環構造としては、具体的には、ノルボルニル、トリシクロデカニル、テトラシクロドデカニル、ペンタシクロペンタデカニル、アダマンチル、ジアマンタニル等が挙げられる。
活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物(光重合開始剤)を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線(UV)、電子線(EB)、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点から、紫外線を使用することが好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CH2が好ましい。
脂環構造を有する活性エネルギー線硬化性樹脂は、脂環構造の炭化水素基とエチレン性不飽和二重結合を有する基とが連結基を介して結合することで構成されているものが好ましい。連結基としては、単結合、アルキレン基、アミド基、カルバモイル基、エステル基、オキシカルボニル基、エーテル基等またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。具体的には、脂環構造を有するジオール、トリオール等のポリオールと、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等を有するカルボン酸、カルボン酸誘導体、エポキシ誘導体、イソシアナート誘導体化合物等との一段あるいは二段階の反応により、容易に合成できる。
以下、脂環構造を有する活性エネルギー線硬化性樹脂の具体的化合物を、下記一般式(I)〜(VII)で示すが、本発明はこれらには限定されるものではない。
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数1〜5のアルキレン基またはアルキレンオキサイド基、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、nは1または2の整数。)
(式中、R1、R3およびnは、上記一般式(I)と同じ意味である。)
一般式(I)及び一般式(II)において、R1は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基を表す。R2は炭素数1〜5のアルキレン基またはアルキレンオキサイド基を表し、好ましくは、メチレン基、エチレン基、メチレンオキサイド基、エチレンオキサイド基を表す。R3は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基を表す。
以下、一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下、一般式(II)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上記一般式(I)、(II)で表される化合物の市販品としては、例えばNKエステルA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業社製)などを挙げることができるが、これらには限定されない。
一般式(III)中、L及びL’は各々独立に二価以上の連結基を表し、同時に二価とはならない。nは1〜3の整数を表す。
一般式(IV)中、L及びL’は各々独立に二価以上の連結基を表し、同時に二価とはならない。nは1〜2の整数を表す。
一般式(V)中、L及びL’は各々独立に二価以上の連結基を表し、同時に二価とはならない。nは1〜2の整数を表す。
一般式(VI)中、L、L’及びL’’は各々独立に二価以上の連結基を表す。
一般式(VII)中、L及びL’は各々独立に二価以上の連結基を表し、同時に二価とはならない。
前記一般式(III)〜(VII)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これらには限定されない。
第2硬化層は、脂環構造を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を30質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。
(光重合開始剤)
第2硬化層は、活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤の含有量は、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100となる含有量であることが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等、およびこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。光重合開始剤としては市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
(微粒子)
第2硬化層は微粒子を含有しても良い。微粒子としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン等が挙げられ、好ましくはシリカである。シリカ微粒子は、内部に空洞を有する中空粒子でも良い。中でも、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子が、硬化層に適度な硬度を与え、良好な機械特性を発揮することから特に好ましい。含有量については、微粒子:活性線硬化樹脂=0.1:100〜400:100となる含有量が好ましい。
(ポリマーシランカップリング剤)
ポリマーシランカップリング剤とは、重合性モノマーとシランカップリング剤(反応性シラン化合物)との反応物をいう。このようなポリマーシランカップリング剤は、例えば、特開平11−116240号公報に開示された重合性モノマーと反応性シラン化合物との反応物の製法に準じて得ることができる。
重合性モノマーとして、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジバーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルシチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール、アクリル樹脂モノマー類;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
反応性シラン化合物としては、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
X−R−Si(OR)3 (1)
(式中、Rは、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基を表す。Xは(メタ)アクロイル基、エポキシ基(グリシド基)、ウレタン基、アミノ基、フルオロ基から選ばれる1種または2種以上の官能基。)
式(1)で表される有機ケイ素化合物として、具体的には、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
重合性モノマーと反応性シラン化合物とを反応させて、ポリマーシランカップリング剤が調製される。具体的には、重合性モノマー100重量部に対し、反応性シラン化合物を0.5〜20重量部、さらには1〜10重量部の範囲で混合した有機溶媒溶液を調製し、これに重合開始剤を添加し、加熱することによって得ることができる。
(ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の調製方法)
ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子は、具体的には、微粒子の有機溶媒分散液にポリマーシランカップリング剤を加え、アルカリ存在下にポリマーシランカップリング剤で微粒子を被覆することによって調製できる。得られるポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の平均粒子径の範囲は、5〜500nm、さらには10〜200nmであることが、光学フィルムに用いた際の光学特性を確保できる点で好ましい。
第2硬化層中のポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の含有量は、固形分として0.5〜80質量部、さらには1〜60質量部であることが、第2硬化層の膜強度を確保する観点から好ましい。
(導電剤)
第2硬化層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていても良い。好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子又はπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。また、第2硬化層に導電剤を含有させず、第2硬化層上に帯電防止層を形成するようにしてもよい。なお、帯電防止層の詳細については後述する。
(添加剤)
第2硬化層には、塗布性を良好にする観点から、フッ素−シロキサングラフト化合物、フッ素系化合物、シリコーン系化合物やHLB値が3〜18の化合物が含まれていても良い。これら添加剤の種類や添加量を調整することで、親水性を制御しやすい。HLB値とは、Hydrophile−Lipophile−Balance、つまり、親水性−親油性のバランスのことであり、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。また、HLB値は以下のような計算式によって求めることができる。
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。或いはグリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.Cosmetic Chem.,5(1954),294)等が挙げられる。
HLB値が3〜18の化合物の具体的化合物を下記に挙げるが、これに限定されるものでない。( )内はHLB値を示す。花王株式会社製:エマルゲン102KG(6.3)、エマルゲン103(8.1)、エマルゲン104P(9.6)、エマルゲン105(9.7)、エマルゲン106(10.5)、エマルゲン108(12.1)、エマルゲン109P(13.6)、エマルゲン120(15.3)、エマルゲン123P(16.9)、エマルゲン147(16.3)、エマルゲン210P(10.7)、エマルゲン220(14.2)、エマルゲン306P(9.4)、エマルゲン320P(13.9)、エマルゲン404(8.8)、エマルゲン408(10.0)、エマルゲン409PV(12.0)、エマルゲン420(13.6)、エマルゲン430(16.2)、エマルゲン705(10.5)、エマルゲン707(12.1)、エマルゲン709(13.3)、エマルゲン1108(13.5)、エマルゲン1118S−70(16.4)、エマルゲン1135S−70(17.9)、エマルゲン2020G−HA(13.0)、エマルゲン2025G(15.7)、エマルゲンLS−106(12.5)、エマルゲンLS−110(13.4)、エマルゲンLS−114(14.0)、日信化学工業株式会社製:サーフィノール104E(4)、サーフィノール104H(4)、サーフィノール104A(4)、サーフィノール104BC(4)、サーフィノール104DPM(4)、サーフィノール104PA(4)、サーフィノール104PG−50(4)、サーフィノール104S(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(8)、サーフィノール465(13)、サーフィノール485(17)、サーフィノールSE(6)、信越化学工業株式会社製:X−22−4272(7)、X−22−6266(8)。
フッ素−シロキサングラフト化合物とは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/又はオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物をいう。このようなフッ素−シロキサングラフト化合物は、後述の実施例に記載されているような方法で調製することができる。あるいは、市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。
フッ素系化合物としては、DIC株式会社製のメガファックシリーズ(F−477、F−487、F−569等)、ダイキン工業株式会社社製のオプツールDSX、オプツールDACなどを挙げることができる。
シリコーン系化合物としては、信越化学工業株式会社製:KF−351、KF−352、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−618、KF−6011、KF−6015、KF−6004、ビックケミージャパン株式会社製:BYK−UV3576、BYK−UV3535、BYK−UV3510、BYK−UV3505、BYK−UV3500、BYK−UV3510などを挙げることができる。これら成分は第2硬化層形成用組成物中の固形分成分に対し、0.005質量部以上、10質量部以下の範囲で添加することが好ましい。これらの成分は全添加剤量が0.005質量部以上、10質量部以下の範囲であれば、2種類以上添加しても良い。
(紫外線吸収剤)
第2硬化層は、後述するセルロースエステルフィルムで説明する紫外線吸収剤を含有しても良い。紫外線吸収剤の含有量としては、質量比で、紫外線吸収剤:硬化性樹脂=0.01:100〜20:100となる含有量であることが好ましい。
(溶剤)
第2硬化層は、上記した第2硬化層を形成する成分を溶剤で希釈して第2硬化層形成用組成物とし、これを以下の方法で第1硬化層上に塗布し、乾燥、硬化して設けることが好ましい。
溶剤としては、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)及び/又は酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール(エタノール、メタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。第2硬化層形成用組成物の塗布量は、ウェット膜厚で0.1〜80μmとなる量が適当であり、好ましくはウェット膜厚で0.5〜30μmとなる量である。また、ドライ膜厚としては、平均膜厚0.01〜20μmの範囲、好ましくは1〜15μmの範囲である。より好ましくは、2〜12μmの範囲である。
第2硬化層形成用組成物の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。
(第2硬化層の形成方法)
後述する第1硬化層上に第2硬化層形成用組成物を塗布した後、乾燥し、硬化(活性線を照射(UV硬化処理とも言う))し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理しても良い。UV硬化後の加熱処理温度は60℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、膜強度に優れた第2硬化層を得ることができる。
一般に、乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られている。乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。
乾燥は、上記乾燥区間の温度を30℃以上で行うことが好ましい。更に好ましくは、上記乾燥区間の温度は50℃以上である。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm2の範囲、好ましくは50〜300mJ/cm2の範囲である。また、UV硬化処理では、酸素による反応阻害を防止するため、酸素除去(例えば、窒素パージなどの不活性ガスによる置換)を行うこともできる。酸素濃度の除去量を調整することで、表面の硬化状態を制御できる。
活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックローラ上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、又は2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
<第1硬化層>
第1硬化層は、第2硬化層に含まれる樹脂とは異なる樹脂を含有している。第1硬化層の樹脂としては、アクリル系材料を含んでいることが好ましい。アクリル系材料としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコールおよび(メタ)アクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。また、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の両方を示し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示し、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」と「メタクリロイル」の両方を示している。例えば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタクリレート」の両方を示している。
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
特に、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられ、中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。
ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、多塩基酸性アクリレート等が挙げられる。また、単官能アクリレートを用いてもよい。単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。このようなアクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計することができ、第1硬化層に適度な硬度を持たせ、かつ、形成される第1硬化層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネートおよび水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。
第1硬化層の形成に用いる第1硬化層形成用組成物に含まれる溶剤としては、フィルム基材を溶解または膨潤させる溶剤が好ましい。溶剤がフィルム基材を溶解または膨潤させることにより、第1硬化層形成用組成物がフィルム基材の表面から内部に浸透し易くなり、フィルム基材と第1硬化層との密着性を向上させることができる。
また、フィルム基材の表層近傍で、フィルム基材の樹脂成分と第1硬化層の樹脂成分とが混在した層が形成され、この層の作用により、フィルム基材と第1硬化層との屈折率を傾斜させることができ、干渉ムラの発生を防ぐことができる。
フィルム基材として、後述するセルロースエステル系樹脂を用いた場合、フィルム基材表面を溶解または膨潤させる溶剤としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられ、これらを単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセトンおよびシクロヘキサノンの少なくとも1種類を用いることが好ましい。
第1硬化層は、光重合開始剤を含むことが望ましい。光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
第1硬化層は、光増感剤を含むことが望ましい。光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系をあげることが出来、これらを1種類あるいは2種類以上を混合して使用することもできる。
第1硬化層は、レベリング剤を含むことが望ましい。レベリング剤の中でも、アクリル系レベリング剤を用いることが最も好ましい。レベリング剤を用いることで、第1硬化層形成時に発生し得る、膜厚ムラや塗液ハジキなどの欠陥を防止することができる。また、アクリル系レベリング剤を用いることで、フッ素系やシリコーン系のレベリング剤を用いた場合よりも、第1硬化層上に第2硬化層を積層する場合のリコート性、第1硬化層と第2硬化層との密着性の劣化を防ぐことができる。
また、第1硬化層に四級アンモニウムカチオンや導電性金属微粒子等を添加し、第1硬化層に導電性を付与しても構わない。
第1硬化層形成用組成物の塗工方法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を採用することができる。中でも特に、均一な薄膜層を形成する場合には、マイクログラビアコーティング法が好ましく、また、厚膜層を形成する必要がある場合にはダイコーティング法が好ましい。
第1硬化層は、第2硬化層が含有するものと同じ微粒子、つまり、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子を含有している。このとき、第2硬化層に含まれる上記微粒子の含有量aと、第1硬化層に含まれる上記微粒子の含有量bとの比a/bは、1であってもよいが、2以上10以下であることが望ましい。その理由は、前述の通りである。
その他、第1硬化層は、上記微粒子以外にも、第2硬化層と同様の添加物を含んでいてもよい。また、第1硬化層は、第2硬化層の形成方法と同様の方法で、フィルム基材上に形成することができる。
<バックコート層>
光学フィルムの硬化層(第1硬化層、第2硬化層)を設けた側と反対側の面に、バックコート層を設けても良い。バックコート層は、塗布やCVDなどによって、硬化層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正する為に設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は、好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設されることも好ましく、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせる為に微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが、ヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でも、アエロジル200V、アエロジルR972Vが、ヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きい為、特に好ましく用いられる。本実施形態で用いられる光学フィルムの裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%含まれていることが好ましく、0.1〜10質量%含まれていることがより好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的には、透明樹脂フィルム(フィルム基材)を溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって形成されることが好ましい。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他更に溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量で形成すればよい。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は、好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜0.3:9.7である。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール、1,3−ジオキソラン、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、シクロペンタノン、3−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、乳酸エチル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、酢酸2−メトキシエチル、プロピレングリコールジメチルエーテル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、或いは炭化水素類(トルエン、キシレン、シクロヘキサノール)などがある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層はバインダーとして樹脂を含有しても良い。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レイヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レイヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましいものを適宜選択することもできる。好ましくは、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順番は、光学フィルムのバックコート層とは反対側の硬化層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。或いは硬化層の塗設の前後に2回以上に分けてバックコート層を塗布することもできる。
<光学フィルム特性>
(表面形状)
硬化層(第1硬化層、第2硬化層)の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)は、2〜100nmの範囲内が好ましく、特に好ましくは2〜20nmの範囲内である。前記範囲の算術平均粗さRaとすることで、視認性やクリア性に優れる。算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001に準じて光学干渉式表面粗さ計(ZYGO社製、NewView)で測定した値である。
(ヘイズ)
光学フィルムのヘイズは、画像表示装置に用いた場合の視認性から0.05%〜10%の範囲内であることが好ましい。ヘイズは、JIS K7105及びJIS K7136に準じて測定できる。
(硬度)
光学フィルムの硬度については、硬度の指標である鉛筆硬度がHB以上であることが好ましい。鉛筆硬度がHB以上であれば、偏光板化工程で、傷が付きにくい。鉛筆硬度は、作製した光学フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従って測定することによって得られる。
<フィルム基材>
光学フィルムのフィルム基材を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロース系樹脂又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、ウレタン変性アクリル、アートン(商品名、JSR社製)又はアペル(商品名、三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。好ましくは、フィルム基材は、セルロース系樹脂、特にセルロースエステルを主成分とする。例えば、フィルム基材として、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルムが挙げられる。
セルロースエステルフィルムの市販品としては、例えばコニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC8UY、KC4UY、KC6UA、KC4UA、KC2UA、KC4UE及びKC4UZ(以上、コニカミノルタ(株)製)が挙げられる。セルロースエステルフィルムの屈折率は1.45〜1.55であることが好ましい。屈折率は、JIS K7142−2008に準じて測定することができる。
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂(セルロースエステル、セルロースエステル樹脂)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。セルロースの低級脂肪酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%〜56.0%のものが好ましく用いられる。市販品としては、(株)ダイセル製のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカルジャパン(株)製のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
セルローストリアセテートは、セルローストリアセテートAと、セルローストリアセテートBとを含有することが好ましい。セルローストリアセテートAは、数平均分子量(Mn)が125000以上155000未満であり、重量平均分子量(Mw)が265000以上310000未満であり、Mw/Mnが1.9〜2.1であるセルローストリアセテートである。セルローストリアセテートBは、アセチル基置換度が2.75〜2.90であり、Mnが155000以上180000未満であり、Mwが290000以上360000未満であり、Mw/Mnが1.8〜2.0であるセルローストリアセテートである。
セルロースアセテートプロピオネートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとしたとき、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものであることが好ましい。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
中でも、1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
上記アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。セルロースエステルの数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定できる。測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
(熱可塑性アクリル樹脂)
フィルム基材は、セルロースエステル樹脂に熱可塑性アクリル樹脂を併用して構成されても良い。併用する場合には、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50であることが好ましい。
アクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を併用してよい。
これらの中でも共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは110000〜500000の範囲内である。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。アクリル樹脂の市販品としては、例えばデルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
(λ/4フィルム)
フィルム基材として、λ/4フィルムを用いても良い。λ/4フィルムを用いることで、画像表示装置に本実施形態の光学フィルムを組み入れた場合、視認性に優れるばかりか、クロストークにも優れる点から好ましい。
λ/4フィルムとは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となるフィルム(1/4波長位相差フィルム)をいう。λ/4フィルムは、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4フィルムであることが好ましい。
λ/4フィルムは、波長550nmで測定した面内リタデーション値Ro(550)が、60nm以上220nm以下の範囲にあることが好ましく、80nm以上200nm以下の範囲であることがより好ましく、90nm以上190nm以下の範囲であることがさらに好ましい。なお、面内リタデーション値Roは、以下の式で表される。
Ro=(nx−ny)×d
ただし、式中、nx、nyは、23℃55%RH、波長550nmにおける屈折率のうち、フィルムの面内で最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率ともいう)、およびフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。Roは、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定により算出することができる。
さらに、λ/4フィルムとして有効に機能するためには、同時に、Ro(590)−Ro(450)≧2nmの関係を満足することが好ましく、Ro(590)−Ro(450)≧5nmであることがより好ましく、Ro(590)−Ro(450)≧10nmであることがさらに好ましい。なお、Ro(A)は、波長Anmで測定した面内リタデーション値を指す。
λ/4フィルムの遅相軸と後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。実質的に45°とは、30°〜60°の範囲、より望ましくは40°〜50°の範囲であることを意味する。λ/4フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることがより一層好ましく、44〜46°であることがさらに好ましい。
λ/4フィルムとしては、光学的に透明な樹脂であれば特に限定はなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、前述したセルロース系樹脂などを用いることができる。中でも、耐薬品性の観点から、λ/4フィルムは、セルロース系樹脂またはポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。また、耐熱性の観点から、λ/4フィルムは、セルロース系樹脂であることが好ましい。
(リタデーション調整剤)
λ/4のリタデーション調整は、前述したフィルム基材に以下のリタデーション調整剤を添加することで行うことができる。リタデーション調整剤としては、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することができる。
また、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環が含まれる。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
(微粒子)
フィルム基材には、取扱性を向上させるため、例えばアクリル粒子、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。また、アクリル粒子は、特に限定されるものではないが、多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。これらの中でも二酸化ケイ素がフィルム基材のヘイズを小さくできる点で好ましい。微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmの範囲内であり、特に好ましくは、5〜12nmの範囲内である。
(エステル化合物)
フィルム基材は、環境変化での寸法安定性の観点から、下記一般式(X)で表されるエステル化合物又は糖エステルを含有することが好ましい。先ずは、一般式(X)で表されるエステル化合物について説明する。
一般式(X)B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。)
一般式(X)において、炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
また、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。以下に、一般式(X)で表される化合物の具体例(化合物X−1〜化合物X−17)を示すが、これに限定されない。
(糖エステル化合物)
次に糖エステル化合物について説明する。糖エステル化合物としては、セルロースエステル以外のエステルであって、下記単糖、二糖、三糖又はオリゴ糖などの糖のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物である。糖としては例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース及びケストースを挙げることができる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。これらの化合物の中で、特にフラノース構造及び/又はピラノース構造を有する化合物が好ましい。これらの中でも、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、さらに好ましくは、スクロースである。また、オリゴ糖として、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖も好ましく使用することができる。
糖をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸は、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。使用するカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチルーヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、べヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−、m、p−アニス酸、クレオソート酸、o−、m、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。エステル化したエステル化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化合物が好ましい。
一般式(X)で表わされるエステル化合物又は糖エステル化合物は、セルロースアセテートフィルムに、1〜30質量%含有させることが好ましく、5〜25質量%含有させることがより好ましく、5〜20質量%含有させることが特に好ましい。
(可塑剤)
フィルム基材は、必要に応じて可塑剤を含有しても良い。可塑剤としては、特に限定されないが、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等が挙げられる。これらの中では、後述するリタデーション値にセルロースエステルフィルムを制御しやすい点から、アクリル系可塑剤が好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
なお、本実施形態のフィルム基材に、上述した可塑剤を含有させる場合、セルロースアセテートに対し、1〜50質量%含有させることが好ましく、5〜35質量%含有させることがより好ましく、5〜25質量%含有させることが特に好ましい。
(紫外線吸収剤)
本実施形態のフィルム基材は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収するため、耐久性を向上させるができる。紫外線吸収剤は、特に波長370nmでの透過率が10%以下となるものであることが好ましく、より好ましくは上記透過率が5%以下、更に好ましくは2%以下である。紫外線吸収剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
より具体的には、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等を用いることができる。これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類を好ましく使用できる。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などである。この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特にポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 109(オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ―2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ―2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物)、TINUVIN 928(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)などを用いることができる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応生成物)、TINUVIN 460(2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン)、TINUVIN 405(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物)などを用いることができる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから、フィルム基材となる樹脂溶液(ドープ)に添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、セルロースアセテートフィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
本実施形態のフィルム基材は、さらに酸化防止剤(劣化防止剤)を含有していてもよい。酸化防止剤は、セルロースアセテートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアセテートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有する。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。これら化合物の添加量は、セルロースアセテートフィルムに対して、質量割合で1ppm〜10000ppmが好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(欠点)
フィルム基材は、直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ローラ傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認できる。
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
また、目視で確認できない場合でも、硬化層を形成したときに、塗膜が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。また、フィルム基材は、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
(光学特性)
フィルム基材は、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。ヘイズ値は2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。全光線透過率、ヘイズ値はJIS K7361及びJIS K7136に準じて測定することができる。
<セルロースエステルフィルムの製膜>
次に、フィルム基材の一例であるセルロースエステルフィルムの製膜方法の例を説明するが、製膜方法はこれに限定されるものではない。セルロースエステルフィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
(有機溶媒)
セルロースエステルフィルムを後述する溶液流延製膜法で製造する場合の樹脂溶液(ドープ組成物)を形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。前記溶媒はセルロースエステル樹脂、その他添加剤を計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
(溶液流延製膜法)
溶液流延製膜法では、樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったセルロースエステルフィルムを巻き取る工程により行われる。
金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャスト(流延)の幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を得るためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量が10〜150質量%であることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、Nは質量Mのものを115℃で1時間の加熱後の質量である。
セルロースエステルフィルムの乾燥工程では、ウェブを金属支持体より剥離し、乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では、一般にローラ乾燥方式(上下に配置した多数のローラにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
延伸工程では、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次又は同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲で行うことがさらに好ましい。例えば、複数のローラに周速差をつけ、その間でローラ周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD方向及びTD方向を同時に広げて両方向に延伸する方法等が挙げられる。
製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター等の製膜工程でのフィルム搬送張力は、温度にもよるが、120〜200N/mが好ましく、140〜200N/mが更に好ましく、140〜160N/mが最も好ましい。
延伸する際の温度は、セルロースエステルフィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、更に好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
セルロースエステルフィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。セルロースエステルフィルムの乾燥時のTgは、110℃以上が好ましく、更に120℃以上が好ましい。特に好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。セルロースエステルフィルムのTgはJIS K7121に記載の方法等によって求めることができる。延伸する際の温度は、150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗れるため、好ましい。セルロースエステルフィルム表面を粗らすことにより、滑り性が向上するとともに、表面加工性が向上するため好ましい。
(溶融流延製膜法)
セルロースエステルフィルムは、溶融流延製膜法によって製膜しても良い。溶融流延製膜法は、セルロースエステル樹脂、可塑剤等のその他の添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
溶融流延製膜法では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給して1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化できる程度になるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルター等で濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラと弾性タッチローラでフィルムをニップし、冷却ローラ上で固化させることにより、セルロースエステルフィルムを製膜する。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入する等して安定に調整することが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターには、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や粒子等の添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラと弾性タッチローラでセルロースエステルフィルムをニップする際のタッチローラ側のセルロースエステルフィルム温度は、フィルムのTg以上(Tg+110℃)以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するローラは、公知のローラを使用できる。
弾性タッチローラは挟圧回転体ともいう。弾性タッチローラとしては、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラからセルロースエステルフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたセルロースエステルフィルムは、冷却ローラに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のローラ延伸機やテンター等を好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜(Tg+60)℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きや、すり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凹凸のパターンを側面に有する金属リングを用いて加熱や加圧をすることにより加工することができる。フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、セルロースエステルフィルムが変形しており、製品として使用できないので切除され、再利用される。
(斜め延伸フィルムの製造方法)
λ/4フィルムは、斜め延伸フィルムの製造方法により製造することができる。斜め延伸フィルムの製造方法とは、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度に遅相軸を有する延伸フィルムを製造する方法である。斜め延伸前の未延伸フィルムとしては、前述したセルロースエステルフィルムを用いることができる。
ここで、フィルムの延長方向に対する角度とは、フィルム面内における角度である。遅相軸は、通常延伸方向又は延伸方向に直角な方向に発現するので、フィルムの延長方向に対して0°を超え90°未満の角度で延伸を行うことにより、かかる遅相軸を有する延伸フィルムを製造できる。
フィルムの延長方向と遅相軸とがなす角度(配向角θ)は、0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができるが、より好ましくは10°〜80°、更に好ましくは40°〜50°である。
(斜め延伸)
斜め延伸フィルムは、斜め延伸装置(斜め延伸テンター)を用いて作製することができる。斜め延伸テンターとしては、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸をフィルム幅手方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚みやリタデーションを制御できる装置を好ましく用いることができる。
(フィルム基材の物性)
セルロースエステルフィルム基材の膜厚は、5〜200μmが好ましく、より好ましくは5〜80μmであり、特に好ましくは5〜34μmである。薄膜のセルロースエステルフィルム基材に本実施形態の硬化層を形成することにより、本実施形態の効果がより発揮されやすい。また、フィルム基材の長さは、500〜10000mが好ましく、より好ましくは1000〜8000mである。前記長さの範囲とすることで、硬化層等の塗布における加工適正やフィルム基材自体のハンドリング性に優れる。
また、フィルム基材の算術平均粗さRaは、好ましくは2〜10nm、より好ましくは2〜5nmである。算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準じて測定できる。
<その他の層>
本実施形態の光学フィルムには、反射防止層や導電性層等、その他の層を設けることができる。
(反射防止層)
本実施形態の光学フィルムは、硬化層上に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体である保護フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体である保護フィルムよりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。
〈低屈折率層〉
低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜0.3μmの範囲内であることが更に好ましく、30nm〜0.2μmの範囲内であることが最も好ましい。
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi−1):Si(OR)4
式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。一般式で表される有機珪素化合物としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
また、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み、且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素化合物を主としてなる、熱硬化性及び/又は光硬化性を有する化合物を、低屈折率層形成用組成物に含有させても良い。具体的には含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル化合物などである。含フッ素ポリマーとしては、例えばパーフルオロアルキル基含有シラン化合物〔例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン〕の加水分解物や脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性単位とを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。その他、溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を低屈折率層形成用組成物に添加してもよい。
〈高屈折率層〉
高屈折率層においては、23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率の調整は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。また、用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができる。
〈帯電防止層〉
本実施形態の光学フィルムは、硬化層上に帯電防止層(導電性層)を有していてもよい。帯電防止層は、導電性化合物を含むことが望ましい。導電性化合物としては、例えば、金属酸化物微粒子、π共役系導電性ポリマー化合物、イオン性化合物、などを挙げることができる。中でも、金属酸化物微粒子は、より厳しい湿熱耐久試験を行った後も、帯電防止性能を安定して維持することができる点で望ましい。
〈金属酸化物微粒子〉
金属酸化物微粒子は、特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を金属酸化物微粒子として用いることができる。これらの金属酸化物微粒子には、Al、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Ta等の微量の原子がドープされていてもよい。また、金属酸化物微粒子は、上記いずれかの元素を含む金属酸化物の混合物であってもよい。中でも、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが好ましく、特に好ましくは、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛といったアンチモン化合物である。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は、5〜200nmであることが好ましく、10〜150nmであることがより好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。なお、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって、上記平均粒径を計測してもよい。粒径が小さすぎると、金属酸化物微粒子が凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大きすぎると、ヘイズが著しく上昇し、好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
〈π共役系導電性ポリマー〉
π共役系導電性ポリマーとしては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さ、安定性点からは、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類が好ましい。
π共役系導電性ポリマーは、無置換のままでも十分な導電性やバインダー樹脂への溶解性が得られるが、導電性や溶解性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性ポリマーに導入してもよい。
このようなπ共役系導電性ポリマーの具体例としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−N−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)、ポリフェニルアセチレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてよいし、2種からなる共重合体でも好適に用いることができる。
これらのπ共役系導電性ポリマーには、ドーパント成分が添加されていても良い。ドーパント成分としては、例えば、ハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハライドなどの低分子量ドーパントや、ポリアニオンのようなポリマー等が挙げられる。
ポリアニオンとは、π共役系導電性ポリマーに対するドーパントとして機能するアニオン基を有する高分子であり、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
ポリアルキレンは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
ポリアルケニレンは、主鎖に不飽和結合が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーであり、例えば、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性ポリマーへの化学酸化ドープが起こりうる官能基であれば良いが、製造の容易さや安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。更に、官能基のπ共役系導電性ポリマーへのドープ効果の観点から、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよく、2種以上の共重合体であってもよい。これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、得られる帯電防止層の導電性をより高めることができる。
ポリアニオンの他にも、π共役系導電性ポリマーを酸化還元することができれば、以下のようなドナー性或いはアクセプタ性のドーパントを用いることができる。
ドナー性ドーパントとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
アクセプタ性ドーパントとしては、Cl2、Br2、I2、ICl、IBr、IF等のハロゲン化合物、PF5、AsF5、SbF5、BF5、BCl5、BBr5、SO3等のルイス酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等の有機シアノ化合物、プロトン酸、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を1つまたは2つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を1つまたは2つ以上含むもの、またはスルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を1つ含むものとしては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
スルホ基を2つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。上記した導電性化合物は後述するバインダーとして用いられる樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜300質量部が好ましく、更に好ましくは0.1質量部〜100質量部である。
〈イオン性化合物〉
イオン性化合物としては、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系の陽イオンとBF4 -、PF6 -等の無機イオン系、CF3SO2 -、(CF3SO2)2N-、CF3CO2 -等のフッ素系の陰イオンとからなる化合物等が挙げられる。
また、イオン性化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物、特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などにみられるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー、特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることができる。また、特開平9−203810号に記載されているアイオネン導電性ポリマー或いは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー(例えば、以下に示すP−1)などを含有することも望ましい。上記したポリマー化合物は、一般に、約0.05μm〜0.5μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05μm〜0.2μmの範囲の粒子サイズである。該ポリマーと後述するバインダーとの比率は、ポリマー100質量部に対して、バインダーが10〜400質量部であることが、フィルム基材との密着性の点で好ましく、特に好ましくは、ポリマー100質量部に対して、バインダーが100〜200質量部である。
その他、アニオン性帯電防止剤、非イオン性帯電防止剤、両性イオン性帯電防止剤等も挙げられる。
アニオン性帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミンおよび脂肪属アマイドの硫酸塩類、脂肪属アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類等が挙げられ、カチオン性帯電防止剤としては、例えば、脂肪族アミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
非イオン性帯電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等が挙げられる。
両性イオン性帯電防止剤としては、例えば、イミダゾリン誘導体、ベタイン型高級アルキルアミノ誘導体、硫酸エステル誘導体、リン酸エステル誘導体等が挙げられる。
具体的な化合物は、丸茂秀雄著「帯電防止剤 高分子の表面改質」幸書房、増補「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧 p333〜p455」化学工業社刊、特開平11−256143号、特公昭52−32572号、特開平10−158484号等に記載されている。
帯電防止層の表面比抵抗は、1013Ω/sq(25℃、55%RH)以下に調整された層であることが好ましい。更に好ましくは、1010Ω/sq(25℃、55%RH)以下であり、特に好ましくは、109Ω/sq(25℃、55%RH)以下である。また、帯電防止層の表面比抵抗は、103Ω/sq(25℃、55%RH)以上に調整された層であることが好ましい。更に好ましくは、107Ω/sq(25℃、55%RH)以上である。
ここで、表面比抵抗の測定は、試料を25℃、55%RHの条件にて24時間調湿し、抵抗率計を用いて測定した値である。また、抵抗率計装置としては、例えば三菱化学株式会社製ハイレスタUP MCP−HT450を用いることができる。
次に帯電防止層に含まれても良いバインダーについて説明する。帯電防止層の樹脂バインダーは硬化性樹脂であることが好ましい。中でも、塗膜の製膜性や物理的特性、及び積層膜との密着性に優れる点から、活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化して活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、特に、紫外線硬化樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも、紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般に、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に、更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば特開昭59−151110号公報に記載のもの、ユニディック17−806(大日本インキ化学工業株式会社製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン株式会社製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般に、ポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂は、反応促進の点から、光重合開始剤と合わせて用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。
また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤または光増感剤は、硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
その他モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、イソボルニルアクリレート等を挙げることができる。また、特開2006−3647号公報記載のモノマー等も好ましく用いることができる。
紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成株式会社製);NKハードB−420、NKエステルA−IB、B−500(新中村化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。
また、硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂も含まれる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミドなどを挙げることができる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えばオルソフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、テレフタル酸系樹脂、ビスフェノール系樹脂、プロピレングリコール−マレイン酸系樹脂、ジシクロペンタジエンないしその誘導体を不飽和ポリエステル組成に導入して低分子量化した、或いは被膜形成性のワックスコンパウンドを添加した低スチレン揮発性樹脂、熱可塑性樹脂(ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリスチレン、飽和ポリエステルなど)を添加した低収縮性樹脂、不飽和ポリエステルを直接Br2でブロム化する、或いはヘット酸、ジブロムネオペンチルグリコールを共重合するなどした反応性タイプ、塩素化パラフィン、テトラブロムビスフェノール等のハロゲン化物と三酸化アンチモン、燐化合物の組み合わせや水酸化アルミニウムなどを添加剤として用いる添加タイプの難燃性樹脂、ポリウレタンやシリコーンとハイブリッド化、またはIPN(Interpenetrating Polymer Networks)化した強靭性(高強度、高弾性率、高伸び率)の強靭性樹脂等がある。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、ノボラックフェノール型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型を含むグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系、グリシジルエステル系、環式脂肪系、複素環式エポキシ系を含む特殊エポキシ樹脂等を挙げることができる。ビニルエステル樹脂としては、例えば普通エポキシ樹脂とメタクリル酸等の不飽和一塩基酸とを開環付加反応して得られるオリゴマーを、スチレン等のモノマーに溶解した物がある。また分子末端や側鎖にビニル基を持ちビニルモノマーを含有する等の特殊タイプもある。
グリシジルエーテル系エポキシ樹脂のビニルエステル樹脂としては、例えばビスフェノール系、ノボラック系、臭素化ビスフェノール系等があり、特殊ビニルエステル樹脂としては、ビニルエステルウレタン系、イソシアヌル酸ビニル系、側鎖ビニルエステル系等がある。フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類を原料として重縮合して得られ、レゾール型とノボラック型がある。
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えばマレイン酸系ポリイミド、例えばポリマレイミドアミン、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド、ジアリルビスフェノール−A樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂等、またナジック酸変性ポリイミド、及びアセチレン末端ポリイミド等がある。
帯電防止層は、無機粒子や有機粒子を含有しても良い。これら粒子の平均粒径は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜5.0μmであることがさらに好ましく、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、帯電防止層は、粒径の異なる2種以上の粒子を含有しても良い。粒子は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
また、帯電防止層には、硬化助剤として、ポリウレタン樹脂の側鎖にビニル基とカルボキシル基を有し、重量平均分子量が10000以上30000以下であり、且つ、二重結合当量が500以上2000以下であるポリマーや、ポリマーの側鎖にビニル基を有し、重量平均分子量(Mw)が10000以上100000以下であり、二重結合当量が1000以下であり、ポリマーTg(ガラス転移温度)が−50℃以上120℃以下であるアクリルポリマー、他官能チオール化合物等を含有させてもよい。他官能チオール化合物としては、例えば1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。市販品としては、昭和電工社製、商品名カレンズMTシリーズ等が挙げられる。
また、帯電防止層は、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有しても良い。フッ素−アクリル共重合体樹脂とは、フッ素単量体とアクリル単量体とからなる共重合体樹脂である。特に、フッ素単量体セグメントとアクリル単量体セグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。フッ素−アクリル共重合体樹脂の分子量は、数平均分子量で5000〜1000000であることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましく、10000〜100000であることがさらに好ましい。フッ素−アクリル共重合体樹脂の製造は、ポリメリックペルオキシドを重合開始剤とした公知の製造プロセス(例えば特公平5−41668号公報、特公平5−59942号公報参照)により製造できる。
ポリメリックペルオキシドとは、1分子中に2個以上のペルオキシ結合を持つ化合物である。ポリメリックペルオキシドとしては、特公平5−59942号公報に記載されている各種ポリメリックペルオキシドの一種または二種以上を使用することができる。
フッ素−アクリル共重合体樹脂の市販品としては、日本油脂株式会社の商品名、モディパーF−200、モディパーF−600、モディパーF−2020等が挙げられる。
更に、帯電防止層には、シリコーン系界面活性剤、フッ素系化合物を含有させることが、面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高められる点で好ましい。また、フッ素系化合物としては、フッ素−シロキサングラフトポリマー等を挙げることができる。
帯電防止層は、種々の表示素子に対する色補正用フィルターとして、色調調整機能を有する色調調整剤(染料もしくは顔料等)、電磁波遮断剤、または赤外線吸収剤等を含有してもよい。
更に、オーバーコート層との易接着性を保持するため、帯電防止層は、セルロースエステル系樹脂またはアクリル系樹脂を含有しても良い。
帯電防止層を塗設するための塗布組成物には、次の溶剤が好ましく用いられる。溶剤としては、炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒を適宜混合して使用することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
上記炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられる。グリコールエーテル(C1〜C4)類としては、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、またはプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)が挙げられる。その他の溶媒としては、メチレンクロライド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒も好ましく用いられる。
帯電防止層塗布組成物の塗布方法としては、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて、フィルム基材の一方の面にウェット膜厚0.1〜100μm、好ましくは、0.5〜30μm、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmで塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化して形成される。硬化工程は、加熱処理或いはUV硬化処理によって行われる。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件は、それぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜200mJ/cm2である。また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜500N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることができる。帯電防止層は、1層でも2層以上の多層構造でも良い。
帯電防止層は、前述の塗布によって設けられてもよいし、蒸着のような方法によって設けてもよい。なお、帯電防止層の厚さは、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。更に好ましくは、0.1μm以上10μm以下である。
<偏光板>
次に、本実施形態の光学フィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。例えば、活性エネルギー線硬化性接着剤等を用いて貼り合わせることもできるが、光学フィルムをアルカリ鹸化処理し、処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜(偏光子)の一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊、水系の接着剤)を用いて貼り合わせることが好ましい。
偏光子のもう一方の面には、該光学フィルムを貼り合わせてもよいし、前記したフィルム基材などを貼り合わせてもよい。もう一方の面に貼り合わせるフィルム基材の膜厚は、平滑性やカールバランスを整え、巻きズレ防止効果をより高める観点から、5〜100μmの範囲が好ましく、5〜34μmの範囲がより好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。上記偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものとがあるが、これらに限定されるものではない。
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられる。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmである。
<円偏光板>
光学フィルムを用いて円偏光板を構成することもできる。つまり、偏光板保護フィルム、偏光子、λ/4フィルムをこの順で積層して円偏光板を構成することができる。この場合、λ/4フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸(または透過軸)とのなす角度は45°である。長尺状偏光板保護フィルム、長尺状偏光子、長尺状λ/4フィルム(長尺斜め延伸フィルム)がこの順で積層して形成されることが好ましい。
円偏光板は、偏光子として、ヨウ素または二色性染料をドープしたポリビニルアルコールを延伸したものを使用し、λ/4フィルム/偏光子の構成で貼合して製造することができる。偏光子の膜厚は、5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
円偏光板は、一般的な方法で作製することができる。つまり、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて、アルカリ鹸化処理したλ/4フィルムを貼り合わせることが好ましい。
<粘着層>
液晶セルの基板と偏光板とを貼り合わせるために、偏光板のフィルム片面に用いられる粘着層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。
具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化させることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
<画像表示装置>
本実施形態の光学フィルムは、画像表示装置に使用することで、視認性に優れた性能が発揮される点で好ましい。画像表示装置としては、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置又は、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ等が挙げられる。これら画像表示装置の中でも液晶表示装置が、高い視認性に優れる点で好ましい。
視認側偏光板の光学フィルムの硬化層のさらに視認側に、保護部が配置されていてもよい。この保護部は、前面板やタッチパネルで構成することができる。上記保護部は、硬化層との間の空隙を埋めるための充填剤(光硬化型樹脂)を介して、上記硬化層に貼り合わされる。保護部の前面板は特に制限されず、アクリル板やガラス板等の従来公知のものを使用できる。また、前面板の材質、厚み等は、画像表示装置の用途に応じて、適宜選択できる。
充填剤としては、無溶剤充填剤が好ましく、市販品としては例えばSVR1120、SVR1150、SVR1320、SVR1241H(以上,デクセリアルズ株式会社製)、或いはHRJ−60、HRJ−302、HRJ−53(以上、協立化学産業株式会社製)等を挙げることができる。充填剤を用いる場合、一種類を単独で使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。
光学フィルムと前面板との貼り合わせは、例えば以下のようにして行うことができる。まず、充填剤を準備する。そして、光学フィルムの硬化層の表面に充填剤を塗工し、充填剤の塗膜上に前面板を重ね合わせる。この状態で、充填剤を光照射などにより硬化させ、光学フィルムと前面板とを貼り合わせる。硬化層の表面に充填剤を塗工する際に、硬化層の表面自由エネルギーを30mN/m以上とすることで、充填剤が硬化層の端部ではじかれることなく、均一に広がった状態を維持し、視認性に優れた画像表示装置を得ることができる。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<光学フィルム1の作製>
[セルロースエステルフィルム1の作製]
〈二酸化珪素分散液の調製〉
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製、一次粒子の平均径7nm)
10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
〈ドープ組成物1の調製〉
(セルロースエステル樹脂)
セルロースアセテートA(リンター綿から合成されたセルロースアセテート、アセチル基置換度2.45、Mw=200000)
90質量部
(添加剤)
一般式(X)で表されるエステル(例示化合物X−1) 5質量部
一般式(X)で表されるエステル(例示化合物X−12) 4質量部
(紫外線吸収剤)
TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
(微粒子)
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
(溶媒)
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ(ドープ組成物1)を調製した。
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が100質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、斜め延伸テンターで延伸温度175℃、延伸倍率1.5倍で斜め延伸を行い、テンター出口における引取張力200N/m、配向角θ(フィルム幅手方向と遅相軸とのなす角度)が45°となるように斜め方向に延伸を行った。その後、120℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、λ/4フィルムとしてのセルロースエステルフィルム1を得た。セルロースエステルフィルム1の膜厚は30μm、巻長は3900m、面内リタデーションRoは135nm、厚み方向リタデーションRtは140nm、配向角θは45°であった。
[ポリマーシランカップリング剤被覆微粒子の調製]
容器に、メタクリル酸メチル(共栄社化学(株)製:ライトエステルM)30ml、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−803)1mlと、溶媒としてテトラヒドロフラン100ml、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(関東化学(株)製:AIBN)50mgを添加し、N2ガスで置換した後、80℃で3時間加熱してポリマーシランカップリング剤を調製した。得られたポリマーシランカップリング剤の分子量は16,000であった。なお、分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置で測定した。
次に、シリカゾル(日揮触媒化成工業(株)製:Si−45P、SiO2濃度30重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)をイオン交換樹脂にてイオン交換し、限外濾過膜法で水をエタノールに溶媒置換してシリカ微粒子のエタノール分散液100g(SiO2濃度30重量%)を調製した。
このシリカ微粒子エタノール分散液100gとポリマーシランカップリング剤1.5gとをアセトン20g(25ml)に分散し、これに濃度29.8重量%のアンモニア水20mgを添加し、室温で30時間攪拌してポリマーシランカップリング剤をシリカ微粒子に吸着させた。
その後、平均粒子径5μmのシリカ粒子を添加し、2時間攪拌して溶液中の未吸着のポリマーシランカップリング剤をシリカ粒子に吸着させ、ついで、遠心分離により未吸着であったポリマーシランカップリング剤を吸着した平均粒子径5μmのシリカ粒子を除去した。ポリマーシランカップリング剤を吸着したシリカ微粒子分散液にエタノール1000g加え、シリカ微粒子を沈降させ、これを分離、減圧乾燥し、ついで、25℃で8時間乾燥してポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1)を得た。得られたポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1)の平均粒子径は57nmであった。平均粒子径はレーザー粒子径測定装置により測定した。
[第1硬化層形成用組成物の調製]
上記で作製したポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1)と、下記の化合物とを攪拌混合して、第1硬化層形成用組成物を調整した。
(微粒子)
ポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1) 10質量部
(活性線硬化樹脂)
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製)
35質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
(添加剤)
KF−642(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80質量部
酢酸メチル 20質量部
[第2硬化層形成用組成物の調製]
上記で作製したポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1)と、下記の化合物とを攪拌混合して、第2硬化層形成用組成物を調整した。
(微粒子)
ポリマーシランカップリング剤被覆シリカ(1) 50質量部
(活性線硬化樹脂)
NKエステルA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業社製)
35質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
(添加剤)
KF−642(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80質量部
酢酸メチル 20質量部
[帯電防止層形成用組成物の作製]
〈粒子分散液の調製〉
メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業株式会社製、アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgに、イソプロピルアルコール6.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液を調製した。
〈帯電防止層形成用組成物の調製〉
上記粒子分散液と下記の化合物とを攪拌混合して、帯電防止層形成用組成物を調製した。
粒子分散液 60質量部
ジオキサングリコールジアクリレート(NKエステルA−DOG、新中村化学工業株式会社製)
3質量部
ウレタン(メタ)アクリレート(UA−1100H、新中村化学工業株式会社製)
15質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・ジャパン(株)製)
2質量部
メチルエチルケトン 22質量部
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業社製)
0.5質量部
[光学フィルム1の作製]
上記作製したセルロースエステルフィルム1のA面(流延ベルトに接していない面)上に、上記第1硬化層形成用組成物を、押し出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度50℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.25J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚0.5μmの第1硬化層を形成した。
続いて、第1硬化層上に、上記で作製した第2硬化層形成用組成物を、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度50℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.3J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚2μmの第2硬化層を形成した。
次に、上記帯電層形成用組成物を超音波ホモジナイザーで5分間処理した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過後、押出しコーターで塗布し、80℃で乾燥後、紫外線ランプを用い、照射部の照度が100mW/cm2、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚1.0μmの帯電防止層を作製し、光学フィルム1を作製した。作製した光学フィルム1は、ロール状に巻き取った。
<光学フィルム2〜10、12、13の作製>
第1硬化層を構成する樹脂、第1硬化層の膜厚、第2硬化層におけるシリカ微粒子の有無、第2硬化層の膜厚、帯電防止層の有無を、表1のように変更した以外は、光学フィルム1の作製と同様にして光学フィルム2〜10、12、13を作製した。なお、光学フィルム1〜3、5〜8、12においては、フィルム基材の片面(第2硬化層上)にのみ帯電防止層を形成し、光学フィルム10においては、フィルム基材の両面に帯電防止層を形成した。
<光学フィルム11の作製>
ドープ組成物1のセルロースアセテートA(90質量部)を、シクロオレフィン樹脂(JSR(株)アートンG7810 Mw=140000)100質量部に置き換えた以外は、光学フィルム1の作製と同様にして、光学フィルム11を作製した。
<偏光板101の作製>
光学フィルム1を偏光膜の一方の面に貼り付け、市販品の光学フィルムであるKC4UZ(コニカミノルタ社製)を偏光膜の他方の面に貼り付けて、偏光板101を作製した。より詳しくは、以下の通りである。
(a)偏光膜の作製
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理してPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムは、平均厚みが15μm、水分率が2.4%、フィルム幅が3mであった。
次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚みが5μm、偏光性能は透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
(b)偏光板の作製
下記工程1〜5に従って偏光板を作製した。
工程1:前述の偏光膜を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程2:光学フィルム1及びKC4UZに対して、下記条件でアルカリ鹸化処理を実施した。次いで、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に浸漬した偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜を光学フィルム1の硬化層とは反対面とKC4UZとで挟み込んで積層配置した。
(アルカリ鹸化処理)
ケン化工程 4M−KOH 50℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥する。
工程3:上記の積層物を、2つの回転するローラにて挟み込み、20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意して実施した。
工程4:工程3で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
工程5:工程4で作製した偏光板の保護フィルム(KC4UZ)側に市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層に剥離性の保護フィルムを貼り付けた。この偏光板を裁断(打ち抜き)し、偏光板101を作製した。
<液晶表示装置201の作製>
市販の液晶表示装置(SONY製60型ディスプレイ BRAVIA LX900)の上側偏光板を剥し、上記偏光板101を上側偏光板として液晶セルに貼り合わせた。つまり、偏光板101のKC4UZが液晶セル側になるようにして、偏光板101の粘着層と液晶セルのガラスとを貼り合わせた。このとき、上側偏光板(偏光板101)の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置した。
<偏光板102〜113の作製>
偏光板101の光学フィルム1を光学フィルム2〜13にそれぞれ変更した以外は、偏光板101の作製と同様にして偏光板102〜113を作製した。
<液晶表示装置202〜213の作製>
偏光板101を偏光板102〜113に変更した以外は、液晶表示装置101の作製と同様にして液晶表示装置202〜213を作製した。
<評価>
(コントラストムラ評価)
通常の実験室内の蛍光灯点灯下で、所定の台上に液晶表示装置を置くとともに、この液晶表示装置の斜め上約50cmの距離に白熱電球(100W)を配置した。そして、白熱電球を点灯しながら、液晶表示装置のバックライトを点灯させて白表示にしたときの輝度と、バックライトを消灯させて黒表示にしたときの輝度とを、色彩色差計(コニカミノルタオプティクス社製CS−100)により測定し、次式により、液晶表示装置の定点(10点)の正面コントラストを算出した。
正面コントラスト(%)={(白表示のときの輝度)/(黒表示のときの輝度)}×100
なお、輝度測定時の光学的環境は、液晶表示装置が実際に使用される際の代表的な光学的環境を模したものである。
このような正面コントラストの算出を、液晶表示装置201〜213の各々について行った。そして、以下の基準に基づいて、コントラストムラについて評価した。
《評価基準》
◎◎:正面コントラストのばらつきが1%未満であり、コントラストムラが全くない。
◎ :正面コントラストのばらつきが1%以上3%未満であり、コントラストムラが非常に小さい。
○ :正面コントラストのばらつきが3%以上5%未満であり、コントラストムラが小さい。
△ :正面コントラストのばらつきが5%以上10%未満であり、コントラストムラがややあるが、実害性はない。
× :正面コントラストのばらつきが10%以上であり、コントラストムラが大きく、実害性がある。
(ブロッキング評価)
作製した光学フィルム1〜13をそれぞれ2600m巻き取り、高温高湿条件下(40℃90%RH)で200時間静置した後、巻き状態からブロッキングの発生を目視で判断し、以下の基準に基づいて評価した。
《評価基準》
◎ :ブロッキングの発生はない。
○ :ハンドランプで照らしてようやくブロッキングがわかるが、実害性はない。
○△:ハンドランプ無しでもブロッキングがわかるが、実害性はない。
△ :ブロッキングが弱く発生しているが、実害性はない。
× :ブロッキングが強く発生しており、実害性がある。
(ブラックバンド評価)
作製した光学フィルム1〜13をそれぞれ2600m巻き取り、高温高湿条件下(40℃90%RH)で200時間静置した後、巻き状態からブラックバンドの発生を目視で判断し、以下の基準に基づいて評価した。
《評価基準》
◎ :ブラックバンドの発生はない。
○ :ハンドランプで照らしてようやくブラックバンドがわかるが、実害性はない。
○△:ハンドランプ無しでもブラックバンドがわかるが、実害性はない。
△ :ブラックバンドが弱く発生しているが、実害性はない。
× :ブラックバンドが強く発生しており、実害性がある。
各光学フィルム1〜13の主要な組成、パラメータ、および各評価の結果を表1に示す。なお、表1中、CEは、セルロースエステルを指し、COPは、シクロオレフィン樹脂を指し、UAは、ウレタンアクリレートを指し、PETAは、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレートを指す。
表1より、光学フィルム1〜11では、コントラストムラ、ブロッキング、ブラックバンドのいずれの評価においても、良好な結果(△以上)が得られている。これは、第1硬化層が第2硬化層よりも薄いため、第1硬化層形成時の溶剤がフィルム基材に浸透することで形成される機械的強度の弱い領域が薄くなり、高温高湿環境下でフィルム基材が配向方向に収縮しようとしても、第1硬化層および第2硬化層によってフィルム基材の寸法変化および光学フィルムの巻状変形が抑えられ、これによって光学フィルムを平面に繰り出したときの平面性が確保されているためと考えられる。
また、光学フィルム1〜7と光学フィルム8〜9の結果より、第2硬化層が脂環構造を有する樹脂(例えばA−DCP)と、シリカ微粒子とを含み、第1硬化層が上記樹脂とは異なる樹脂(例えばウレタンアクリレート樹脂、PETA)と、シリカ微粒子とを含むことで、特にコントラストムラを抑える効果が高くなると言える。これは、第1硬化層および第2硬化層を上記構成とすることで、フィルム基材の含水による寸法変形を抑えることができるため、光学フィルムの巻状変形をより抑えることができているためと考えられる。
また、光学フィルム2および7の結果より、第1硬化層がウレタン系の樹脂を含む場合は、非ウレタン系の樹脂を含む場合に比べて、コントラストムラ、ブロッキング、ブラックバンドを抑える効果が高い。これは、第1硬化層が、ウレタン系樹脂と、シリカ微粒子とを含むことで、比較的硬い第1硬化層が形成され、このような第1硬化層上に第2硬化層を形成することにより、硬化層全体の硬度が上がる結果、高温高湿環境下でのフィルム基材の寸法変化および光学フィルムの巻状変形をより抑えることができているためと考えられる。
また、光学フィルム5のように、第1硬化層の膜厚L1が0.3μmである場合、コントラストムラを抑える効果が小さい。これは、第1硬化層が薄すぎると、第1硬化層の硬化不良が生じやすくなって、その上の第2硬化層に所定の硬度を付与することが困難となり、第1硬化層および第2硬化層の硬度不足によって、高温高湿環境下でのフィルム基材の寸法変形を抑える効果が小さくなり、光学フィルムの巻状変形を抑えてコントラストムラを抑える効果が小さくなるためと考えられる。したがって、第1硬化層の膜厚L1は、光学フィルム1〜3のように、0.5μm以上確保することが望ましいと言える。
また、光学フィルム6のように、第1硬化層の膜厚L1が3.2μmである場合も、コントラストムラを抑える効果が小さい。これは、第1硬化層が厚くなりすぎると、第1硬化層形成時の溶剤がフィルム基材に浸透することによって形成される機械的強度の弱い領域が厚くなりすぎて、高温高湿環境下でのフィルム基材の寸法変化を抑える効果が小さくなるためと考えられる。したがって、第1硬化層の膜厚L1は、光学フィルム3における2.8μmと、光学フィルム6における3.2μmとの間の値である3.0μm以下であることが望ましいと言える。
また、光学フィルム2および4の結果より、光学フィルムが帯電防止層を含む構成では、帯電防止層を含まない構成よりも、コントラストムラ、ブロッキング、ブラックバンドを抑える効果が高い。これは、帯電防止層を設けることによってフィルムの帯電が防止され、フィルム巻き取り時のブロッキングを抑制することができ、光学フィルムの巻状変形をより抑えることができているためと考えられる。
なお、フィルム基材上に硬化層を3層以上設けて光学フィルムを構成した場合でも、フィルム基材に最も近い硬化層の膜厚を、次にフィルム基材に近い硬化層の膜厚よりも薄くすることにより、高温高湿環境下でのフィルム基材の寸法変化および光学フィルムの巻状変形を抑えることができることが確認された。また、セルロースエステル樹脂およびシクロオレフィン樹脂以外の樹脂(アクリル、ポリカーボネート、ポリエステルなど)でフィルム基材を構成した場合でも、フィルム基材上の2つの硬化層の膜厚を上記と同様に設定することにより、光学フィルムの巻状変形を抑えることができることが確認された。
以上で説明した本実施形態の光学フィルム、偏光板および液晶表示装置は、以下のように表現することができる。
1. 1/4波長位相差フィルムとしてのフィルム基材と、
前記フィルム基材の一方の面側に位置する、少なくとも2層の硬化層とを有する光学フィルムであって、
前記少なくとも2層の硬化層のうち、前記フィルム基材に最も近い硬化層を第1硬化層とし、前記第1硬化層の次に前記フィルム基材に近い硬化層を第2硬化層とし、前記第1硬化層の厚みをL1(μm)とし、前記第2硬化層の厚みをL2(μm)としたとき、
L1<L2
であることを特徴とする光学フィルム。
2.前記第2硬化層は、
脂環構造を有する樹脂と、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子とを含み、
前記第1硬化層は、
前記第2硬化層の前記脂環構造を有する樹脂とは異なる樹脂と、ポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる微粒子とを含むことを特徴とする前記1に記載の光学フィルム。
3.前記第1硬化層が含む前記樹脂は、ウレタンアクリレート樹脂であることを特徴とする前記2に記載の光学フィルム。
4.前記第1硬化層の厚みL1が、0.5μm以上3μm以下であることを特徴とする前記1から3のいずれかに記載の光学フィルム。
5.前記フィルム基材の少なくとも一方の面側に、帯電防止層をさらに有していることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載の光学フィルム。
6.前記1から5のいずれかに記載の光学フィルムが、偏光子の一方の面側に位置していることを特徴とする偏光板。
7.前記6に記載の偏光板が、表示セルの少なくとも一方の面側に位置していることを特徴とする画像表示装置。