JP4447472B2 - 位相差フィルム、光学フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents

位相差フィルム、光学フィルムおよび画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、液晶表示装置等の画像表示装置に有用な位相差フィルム、該位相差フィルムを有する光学フィルム、および、これらを用いた画像表示装置に関する。
位相差フィルムは、直線偏光を楕円偏光または円偏光に変換する機能や、別の方向に変換(旋光)する機能を有しており、これらの機能を利用することにより、たとえば液晶表示装置(LCD)の視野角やコントラストなどを改善することができる。
このような位相差フィルムは、通常、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマーなどのプラスチックフィルムを一軸または二軸延伸することによって得られる。このとき、延伸によって発生する屈折率の異方性によって複屈折が発生し、位相差フィルムとして機能する。
位相差フィルムの性能は、たとえば、位相差フィルムの正面方向における遅相軸方向(面内で屈折率が最大となる方向)の屈折率と進相軸方向(面内で遅相軸方向と直交する方向)の屈折率との差と、位相差フィルムの厚さとの積によって求められる位相差値によって評価することができる。この位相差値は、位相差フィルムの正面方向だけでなく、正面から傾斜した方向の位相差値も重要である。通常の一軸延伸により作製された位相差フィルムは、正面の位相差値と傾斜した方向の位相差値とは異なっており、また、延伸方向に対して、どの角度で傾斜したかによっても異なる。
これに対し、特許文献1には、実質的な二軸延伸により、傾斜に伴う位相差値の変化を制御した位相差フィルムが開示されている。このような位相差フィルムの場合は、傾斜しても正面方向との位相差値がほとんど変化しないという特徴を付与できる。
また、近年では、上記のようなプラスチックフィルムの延伸による位相差フィルムではなく、特許文献2〜6に記載されているような液晶性化合物を特定の方向に配向させ、該配向を固定化することによって位相差フィルムを作製することも行われている。このような液晶性化合物を用いた位相差フィルムは、プラスチックフィルムの延伸では実現できないような複雑な配向状態を実現できることから注目されており、各種LCDの視野角特性、色およびコントラストを改善できることが知られている。
たとえば、特許文献2には、ハイブリッド配向したディスコティック液晶層を有する位相差フィルムを用いたTN(twisted nematic)型LCDの視野角特性の改善について開示されている。特許文献3には、STN(super twisted nematic)型LCDの色補償について開示されている。特許文献4には、ハイブリッド配向した液晶性ポリエステルを有する位相差フィルムを用いたECB(electrically controlled birefringence)型LCDの視野角改善について開示されている。特許文献5には、紫外域に選択反射波長域を有する捩れ配向した液晶層を用いたVA(vartically alignment)型LCDやOCB(optically compensated bend)型LCDの視野角特性の改善について開示されている。特許文献6には、上記各LCDを補償するための位相差フィルムに用いられる液晶性化合物および位相差フィルムの製造方法などについて開示されている。
このように液晶性化合物を用いた位相差フィルムは、LCDの視野角特性を改善する有
用なフィルムであるが、位相差フィルムに要求される重要な性能の一つである耐久性が充分であるかどうかは、これまで明らかではなかった。
位相差フィルムの耐久性は、位相差フィルムを構成する液晶性化合物からなる層(液晶層)の配向の安定性(配向性)や、液晶層と基材フィルムとの密着性が、高温および高温高湿度雰囲気下に長時間(たとえば、数百時間)放置する試験を行い、該試験前後の変化の程度で評価することができ、これらが極力変化しないことが好ましい。このような耐久性試験において配向性が大きく変化すれば、LCDの表示画像に悪影響を与えてしまうおそれがあり、また、密着性が低下すれば、フィルムが剥がれるなど、表示装置としての安定性に問題が生じるおそれがあると判断することができる。
特に近年、LCDに使用されるバックライトの高輝度化に伴い、LCDそのものの使用環境温度が上昇しており、さらに、季節や地域によっては湿度の高い環境下で長時間使用する場合があるため、上記耐久性は位相差フィルムに求められる非常に重要な特性となっている。なお、特許文献6には垂直(ホメオトロピック)配向した液晶位相差フィルムの機械的安定性(耐クラック性)についての記載はあるものの、上記配向性および密着性については何の記載もされていない。
特許第2818983号公報 特許第2592701号公報 特許第2587398号公報 特開2004−125830号公報 特開2003−315556号公報 特開2004−29824号公報
本発明の目的は、LCDの視野角特性を改善することができるとともに、高温雰囲気下および高温高湿度雰囲気下に長時間放置しても位相差値の変化が極めて小さく、かつ、基材である高分子フィルムと液晶層との密着性の変化も極めて小さい位相差フィルム、該位相差フィルムを有する光学フィルム、および、これらを用いることにより長時間にわたって安定した画像表示を行うことができる画像表示装置を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、表面の水の接触角が0°以上10°以下である高分子フィルム上に、特定の複数のカチオン重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物層(液晶層)を形成した位相差フィルムを用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示される位相差フィルム、光学フィルムおよび画像表示装置に関する。
〔1〕 表面の水の接触角が0°以上10°以下である高分子フィルム上に、下記式(a)、(b)および(c)で表される複数のカチオン重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物層が形成されていることを特徴とする位相差フィルム。
Figure 0004447472
(式中、mは1〜4の整数であり、nは2〜8の整数である。)
〔2〕 前記高分子フィルムが、表層をアルカリ処理したトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする〔1〕に記載の位相差フィルム。
〔3〕 前記硬化物層中の液晶分子がツイスト配向していることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の位相差フィルム。
〔4〕 前記高分子フィルムと硬化物層との碁盤目試験による密着性が、90℃雰囲気下に500時間放置前後、および、65℃、93%RH雰囲気下に500時間放置前後のいずれにおいても、100マス中80マス以上であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の位相差フィルム。
〔5〕 90℃雰囲気下に500時間放置する耐久性試験後の位相差値をR(1)とし、65℃、93%RH雰囲気下に500時間放置する耐久性試験後の位相差値をR(2)とし、各耐久性試験前の位相差値をR(0)とした場合、下記式(I)および(II)を満たすことを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の位相差フィルム。
|R(0)−R(1)|≦10nm ・・・(I)
|R(0)−R(2)|≦10nm ・・・(II)
〔6〕 上記位相差値R(0)、R(1)およびR(2)が、遅相軸方向に50°傾斜させたときの波長590nmにおける位相差値であることを特徴とする〔5〕に記載の位相差フィルム。
〔7〕 上記位相差値R(0)、R(1)およびR(2)が、進相軸方向に50°傾斜させたときの波長590nmにおける位相差値であることを特徴とする〔5〕に記載の位相差フィルム。
〔8〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の位相差フィルムと偏光フィルムとを有することを特徴とする光学フィルム。
〔9〕 前記偏光フィルムを構成する偏光素子と、前記位相差フィルムを構成する高分子フィルムとが接着剤を介して直接積層されていることを特徴とする〔8〕に記載の光学
フィルム。
〔10〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の位相差フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。
〔11〕 〔8〕または〔9〕に記載の光学フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。
本発明の位相差フィルムは、たとえばVA型LCDの視野角特性を改善することができるとともに、高温雰囲気下および高温高湿度雰囲気下に長時間放置しても位相差値の変化が極めて小さく、かつ、基材である高分子フィルムと液晶層との密着性の変化も極めて小さい。このような優れた耐久性を有する本発明の位相差フィルムまたは該位相差フィルムと偏光フィルムとを積層した光学フィルムを用いた液晶表示装置は、長時間にわたって安定した画像表示を行うことができ、安定した装置状態を保持することができる。
以下、本発明に係る位相差フィルム、該位相差フィルムを有する光学フィルム、および、これらを用いた画像表示装置について詳細に説明する。
本発明の位相差フィルムは、高分子フィルム上に、複数のカチオン重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物層(液晶層)が形成されている。
本発明の位相差フィルムに用いられる高分子フィルムは、表面の水の接触角が0°以上10°以下、好ましくは0°以上8°以下である。なお、水の接触角とは、高分子フィルムの表面に一定量の水滴を滴下し、該水滴の形状から求めた接触角を意味し、通常、接触角計と呼ばれる測定器を用いて測定される。
高分子フィルム表面の水の接触角が上記範囲にあることにより、上記液晶層の密着性および配向性が良好なものとなる。なお、上記水の接触角が15°〜50°であると、液晶層の配向性は良好であるが密着性に劣る傾向にあり、さらに60°以上になると、液晶層が高分子フィルムに密着しなくなるばかりでなく、安定した配向性が得られなくなる傾向にある。
このような高分子フィルムとしては、たとえば、表層が上記接触角になるまでアルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルム;ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性セルロース誘導体からなるフィルム;ポリビニルアルコールまたはその誘導体からなるフィルム;アルカリ処理されたポリ酢酸ビニルフィルム;およびエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムなどが挙げられる。これらの中では、表層が上記接触角になるまでアルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムや、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性セルロース誘導体からなるフィルムが、強度、透明性および耐熱性などの点で好ましく、特に表層が上記接触角になるまでアルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。上記高分子フィルムの厚さは特に限定されないが、通常20μm〜200μm、好ましくは40μm〜80μm程度である。
また、上記表面の水の接触角が0°以上10°以下の高分子フィルム上に、親水性の高分子層を形成することにより、液晶層の密着性や配向性をさらに向上させることができることから好ましい。また、水の接触角が10°以下にならないような高分子フィルムを用いた場合でも、同様に親水性の高分子層を形成することにより、液晶層の密着性や配向性を改善することができることから好ましい。
このような親水性の高分子層は、上記アルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルム上に、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体の(水)溶液、または、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体の(水)溶液を、該フィルム上に塗布し、加熱などによって溶媒を除去して形成することができる。
上記水の接触角が10°以上であるような高分子フィルムとしては、たとえば、水の接触角が10°以上に調節された(アルカリ処理された)トリアセチルセルロースフィルム、アートン(JSR社製)やゼオノア(日本ゼオン社製)などのシクロオレフィンポリマーからなるフィルム、および、ポリカーボネートやポリエステルなどからなる高分子フィルムが挙げられる。これらのフィルム上に上記親水性高分子層を形成する場合、上記と同様に、親水性高分子の(水)溶液を塗布し、加熱などによって溶媒を除去することにより得られるが、該溶液のぬれ性を向上させるために、該フィルム表面をコロナ処理、プラズマ処理といった表面処理を施してもよい。
上記のような高分子フィルムを用いることにより、液晶層との密着性が向上するだけでなく、過酷な条件下においても長時間優れた密着性を維持することができる。
高分子フィルム表面の水の接触角を上記範囲に調整するためのアルカリ処理は、たとえば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液中に一定時間浸漬した後、水で充分に洗浄して表面に付着したアルカリ性水溶液を除去し、温風などにより乾燥することによって行うことができる。アルカリ性水溶液の濃度は0.5〜6N程度、温度は10〜60℃程度がよく、浸漬時間は上記接触角を測定しながら適宜設定すればよい。
本発明の位相差フィルムを構成する液晶層は、下記式(a)、(b)および(c)で表される複数のカチオン重合性液晶化合物(それぞれ「化合物(a)」、「化合物(b)」、「化合物(c)」ともいう。)を含む液晶組成物からなる。
Figure 0004447472
上記式(a)〜(c)中、mは1〜4の整数であり、nは2〜8の整数である。上記化合物(a)〜(c)は、重合性基としてオキシラニル基またはオキセタニル基を少なくとも1つ有しており、酸触媒により重合する液晶化合物である。化合物(a)は、たとえば
、文献「POLYMER, Volume 35, Number 3, 622ページ、1994年」に記載されている方
法により合成することができ、化合物(b)は、特願2004−216929号に記載されている方法により合成することができ、化合物(c)は、特願2004−319380号に記載されている方法により合成することができる。
上記液晶層中の液晶分子の配向状態は、該液晶層を構成する液晶化合物の種類または添加剤により制御することができる。配向状態としては、液晶分子が基板面に対し平行に配向するホモジニアス配向;液晶分子が基板面に対して垂直に配向するホメオトロピック配向;液晶分子が基板表面付近ではホモジニアス配向しているが空気界面側では垂直に近い角度で配向するハイブリッド配向;液晶分子が基板面から空気界面まで略一定の傾きをもって配向するチルト配向;および液晶分子が基板面から空気界面まで捩れて配向するツイスト配向などが挙げられる。
上記添加剤としては、たとえば、ツイスト配向状態を形成する際に一般的に用いられるカイラル剤と呼ばれる化合物が挙げられる。このカイラル剤の量を適宜調整することにより、選択反射波長域が紫外域になるように調節することができる。このように調節された配向状態を固定化して得られる液晶層を有する位相差フィルムは、フィルム面の正面方向の位相差値がほとんどなく、フィルム面の法線方向から傾斜することによって位相差値が発生する。このような位相差フィルムは、たとえばVA型LCDの視野角補償フィルムとして好適に用いられる。
本発明の位相差フィルムを構成する液晶層の形成に用いられる液晶組成物は、上記化合物(a)〜(c)および必要に応じて各種添加剤を混合することにより得られる。上記液晶組成物において、化合物(a)は、液晶相を示す温度を室温付近にするために用いられ、化合物(b)は、液晶相の温度範囲を広くするために用いられ、化合物(c)はツイスト配向状態を形成するためのカイラル剤として用いられる。
上記液晶組成物を調製する際、化合物(a)は5〜90重量%、好ましくは10〜85重量%の量で用いられ、化合物(b)は5〜90重量%、好ましくは10〜85重量%の量で用いられ、化合物(c)は5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の量で用いられる。なお、化合物(a)〜(c)の合計量を100重量%とし、各成分はそれぞれ1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物(a)を上記範囲の量で用いることにより、液晶相を示す温度を室温付近にすることができる。化合物(b)を上記範囲の量で用いることにより、液晶相の温度範囲を広くすることができる。化合物(c)を上記範囲の量で用いることにより、液晶層の選択反射波長域が紫外域になるようなツイスト配向状態を形成することができる。
上記液晶層の配向状態を固定化するには、たとえば、上記液晶化合物を特定の配向状態とした後、光重合開始剤の存在下で紫外線を照射して重合させることにより行うことができる。光重合開始剤としては、紫外光などを照射することによりカチオン種を発生することができる化合物であれば特に限定されない。具体的には、みどり化学(株)製「DTS−102」、UCC社製「サイラキューアーUVI−6990」、「サイラキュアーUVI−6974」、「サイラキュアーUVI−6992」、旭電化(株)製「アデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172」、ローディア社製「PHOTOINITIATOR2074」、チバスペシャリティー社製「イルガキュアー250」、GEシリコンズ社製「UV−9380C」などが挙げられる。上記光重合開始剤は、上記液晶化合物(a)〜(c)の合計100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部の範囲の量で用いられる。
本発明の位相差フィルムは、上記液晶化合物(a)〜(c)および光重合開始剤を含む液晶組成物を溶剤を用いて溶解させた溶液を調製し、該溶液を上記高分子フィルム上に一定の厚さで塗布した後、加熱などにより溶剤を除去して液晶層を形成し、該液晶層中の液晶分子を特定の配向状態とした後、該液晶層に紫外線を照射して該配向状態を固定化することによって得られる。
上記液晶組成物を溶解する溶剤としては、該組成物を溶解することができれば特に限定されず、たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノンなどのケトン類;n−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;メチルセロソルブ、酢酸メチルセロソルブ等のセロソルブ類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類などが挙げられる。
上記溶剤は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。上記液晶組成物を溶解する際の該組成物の濃度は、用いる溶剤に対する溶解性、基板上へのぬれ性、塗布後の厚みなどによって異なるが、通常、5〜95重量%、好ましくは10〜80重量%程度である。
上記液晶組成物の溶液を高分子フィルムに塗布して液晶層を形成する前に、液晶化合物を均一に配向させるために、上記高分子フィルムに配向処理を施すことが好ましい。配向処理の方法としては、たとえば、高分子フィルム表面を直接ラビング処理する方法、高分子フィルム上に配向膜を形成し、該配向膜をラビング処理する方法、および、光配向処理する方法などが挙げられる。これらの中では高分子フィルム表面を直接ラビングする方法が好ましい。
上記ラビング処理は、鋼やアルミニウムなどの金属ロールに、ナイロン、レーヨン、コットンなどのベルベット状のいわゆるラビング布を、両面テープなどを用いて巻き付けたラビングロールを用い、これを高速回転させて高分子フィルム表面を擦るように移動させることにより行われる。また、ラビング処理は、液晶化合物によって配向のしやすさなどが異なるため、液晶層が所望の配向状態となるように、ラビング処理条件やラビング装置の運転条件などを適宜調節して行われる。
上記液晶組成物の溶液を上記高分子フィルム上に塗布する方法としては、たとえば、スピンコート方式、ワイヤーバーコート方式、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、カレンダーコート方式、スプレーコート方式、メニスカスコート方式などによる方法が挙げられる。塗布量は、乾燥後の液晶層の厚みが0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm程度となるように、溶液の濃度、塗布方法および塗布条件に応じて適宜調節すればよい。
上記液晶組成物の溶液を塗布し、加熱などにより溶剤を除去する際または除去した後に、上記液晶化合物が液晶相を示す温度領域に一定時間放置することにより該液晶化合物を特定の配向状態とする。
特定の配向状態となった液晶層に紫外線を照射することにより、上記液晶化合物(a)〜(c)を重合させ、該配向状態を固定化する。紫外線の照射量は、用いるカチオン重合性化合物の種類、光重合開始剤の種類と添加量、硬化物層の膜厚などによって異なるが、通常、100〜1000mJ/cm2程度である。また、紫外線照射時の雰囲気は、液晶
化合物の重合のしやすさなどの性質に応じて、空気雰囲気や窒素などの不活性ガス雰囲気
などを適宜選択することができる。
上記のようにして得られた位相差フィルムは、液晶層と高分子フィルムとの密着性が優れているとともに、高温雰囲気下や高温高湿度雰囲気下に長時間放置してもその密着性が変化せず、かつ、配向性の変化もほとんどないという優れた特徴を有する。類似の技術として、特開2003−287749号公報には、カチオン重合性基を有する主鎖型液晶性ポリエステルからなる液晶層を、ポリエチレンナフテレートなどの基材上に形成した後、粘着剤等を用いてトリアセチルセルロースフィルム上に転写して液晶層を形成する方法が記載されている。一方、本発明では、高分子フィルムとして、表面の水の接触角が0°以上10°以下の高分子フィルム、具体的には、該接触角になるようにアルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることにより、転写することなく液晶層を直接該トリアセチルセルロースフィルム上に形成することができ、さらに密着性にも優れている。
液晶層と高分子フィルムとの密着性は、碁盤目試験と呼ばれる試験によって評価することができる。具体的には、液晶層にカッターナイフ等で約1mm角のマス目を碁盤目状に100マス形成する。次いで、セロハンテープ(ニチバン製)を該マス目全体に貼り付けた後、手で一気にセロハンテープを剥離し、高分子フィルムから剥離せずに密着しているマス目の数で密着性を評価する。
本発明の位相差フィルムは、90℃雰囲気下に500時間放置前後、および、65℃、93%RH雰囲気下に500時間放置前後のいずれにおいても、上記碁盤目試験で液晶層が高分子フィルムに100マス中80マス以上、好ましくは100マス中90マス以上、より好ましくは100マス中100マス全て密着していることを特徴とする。
液晶層の配向性および配向安定性は、上記位相差フィルムの偏光顕微鏡観察および位相差値を測定することにより評価することができる。具体的には、液晶の配向性は、得られた位相差フィルムを偏光顕微鏡にて観察する。このとき、良好な配向状態であれば、配向欠陥は観察されないが、配向不良の場合は、多数の配向欠陥が観察される。配向安定性については、まず、高温雰囲気下および高温高湿度雰囲気下に一定時間放置する耐久性試験を行う前に、位相差フィルムの位相差値を自動複屈折計を用いて測定し、次に、位相差フィルムの耐久性試験を行う。各耐久性試験後、試験前の環境に戻して同様の操作により各耐久性試験後の位相差フィルムの位相差値を測定し、試験前後の位相差値の変化量で評価する。
本発明の位相差フィルムは、90℃雰囲気下に500時間放置する耐久性試験(1)後の位相差値をR(1)とし、65℃、93%RH雰囲気下に500時間放置する耐久性試験(2)後の位相差値をR(2)とし、各耐久性試験前の初期位相差値をR(0)とするとき、下記式(I)および(II)を満たすことを特徴とする。
|R(0)−R(1)|≦10nm ・・・(I)
|R(0)−R(2)|≦10nm ・・・(II)
上記位相差値は、位相差フィルムのフィルム面に対して正面方向の位相差値でもよく、あるいは、正面からある角度に傾けたときの位相差値(以下、「傾斜位相差値」または「Rth」ともいう。)でもよい。特に選択反射波長域が紫外域となるように液晶層をツイスト配向させた本発明の位相差フィルムの場合は、該フィルム面に対して正面方向の位相差値がほとんどないため、傾斜位相差値を測定することが好ましい。
本発明に係る光学フィルムは、上記のようにして得られる本発明の位相差フィルムと、偏光フィルムとを、粘着剤や接着剤を用いて積層することによって得られる。このとき用
いられる偏光フィルムは、画像表示装置に一般的に用いられている偏光フィルムであれば特に限定されず、偏光素子の両側に保護フィルムを有するものであっても、片側のみに保護フィルムを有するものであってもよい。偏光素子は、たとえば、ポリビニルアルコールフィルムに染料や多ヨウ素イオン等の二色性色素を含浸させ、ホウ酸温浴中にて一軸延伸後乾燥したものなどを用いることができる。また、保護フィルムとしては、たとえば、表層がアルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムなどを用いることができる。
本発明の位相差フィルムを構成する高分子フィルムが、アルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムである場合、該位相差フィルムをそのまま偏光フィルムの保護フィルムとして用いることができる。このように、偏光フィルムを構成する偏光素子と、本発明の位相差フィルムを構成する高分子フィルムとを、接着剤等を介して直接積層させた光学フィルムは、偏光素子の両側に通常の保護フィルムを有する偏光フィルムに別途位相差フィルムを貼り合わせる工程が不要となるだけでなく、該光学フィルムを用いた画像表示装置の厚みも薄くできることから、特に好ましい。また、接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤など種々の接着剤を用いることができる。図1に、このような本発明の光学フィルムの一例を示す(なお、接着剤層は省略してある)。
図1において、本発明の光学フィルム6は、偏光素子1に保護フィルム2と本発明の位相差フィルム5とを、接着剤を用いて貼り合わせた構成となっている。このとき、液晶層4は偏光素子1とは反対側になるように配置される。
本発明に係る画像表示装置は、上記本発明の位相差フィルムまたは光学フィルムを有する。具体的には、上記本発明の位相差フィルムまたは光学フィルムを、液晶セルに粘着剤等を用いて貼り合せることにより、液晶表示装置を得ることができる。図2に、本発明の画像表示装置の一例であるVA型LCD11の概略図を示す。
図2において、本発明の画像表示装置11は、液晶セル7を挟むようにして本発明の光学フィルム6と偏光フィルム8が粘着剤により液晶セル7に貼り合わされた構成となっている。なお、本発明の光学フィルム6を液晶セル7と貼り合わせる時は、該光学フィルム6を構成する本発明の位相差フィルム5の液晶層4が液晶セル側になるよう配置して貼り合わされる。また、光源となるバックライト10と偏光フィルム8との間には、輝度を向上させるための輝度向上フィルム9が配置されている。
本発明の光学フィルム6を構成する本発明の位相差フィルム5の液晶層4は、選択反射波長域が紫外域になるようツイスト配向しており、概ね垂直配向している液晶セルの位相差値を補償するような位相差値、具体的には、液晶セルの傾斜位相差値を打ち消すような傾斜位相差値(Rth)を有している。厳密には、液晶セルを挟む上下の偏光素子間に配置される全てのフィルムについての傾斜位相差値(Rth)を考慮した上で、本発明の位相差フィルムのRthが決定される。なお、傾斜位相差値(Rth)は下記式(III)で
求められる。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d ・・・(III)
上記式(III)中、nxはフィルムまたは液晶セル面内における最大屈折率を示し、
nyはフィルムまたは液晶セル面内における最小屈折率を示し、nzはフィルムまたは液晶セルの厚さ方向の屈折率を示し、dはフィルムまたは液晶セルの厚さを示す。フィルム面内で屈折率差が無い場合は、nx=nyである。
たとえば、VA型LCDの液晶セルの傾斜位相差値をRth(cell)、本発明の位相差フィルムの傾斜位相差値をRth(reta)、液晶セルを挟む上下の偏光素子間に
配置される全てのフィルム(本発明の位相差フィルムを除く。)の傾斜位相差値を
Rth(f1)、Rth(f2)・・・Rth(fn)(nは偏光素子間に配置される、本発明の位相差フィルムを除くフィルムの数)とするとき、下記式(IV)を満たすことにより、液晶セルの視野角を補償することができる。
Rth(cell)=Rth(reta)+Rth(f1)+Rth(f2)+・・・+Rth(fn) ・・・(IV)
上記式(IV)を満たす傾斜位相差値Rth(reta)を有する本発明の位相差フィルムを用いた本発明の画像表示装置は、本発明の位相差フィルムを用いない場合と比較して視野角特性に優れている。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されることはない。
<実施例1>
(高分子フィルムのアルカリ処理およびラビング処理)
トリアセチルセルロースフィルム(厚さ約80μm、富士写真フィルム社製)を表面の水の接触角が10°となるように、40℃の2N水酸化ナトリウム水溶液に10分浸漬してアルカリ処理を行い、蒸留水で充分に洗浄した後、70℃で5分間乾燥した。なお、水の接触角は、23℃、52%RHの雰囲気下で、蒸留水を用いて10マイクロリットルの水滴をフィルム表面に滴下し、20秒後の接触角を接触角計(協和界面科学社製)にて測定した。次いで、このフィルムをガラス板に粘着剤で貼り合わせ、EHC社製ラビングマシン(ラビングロール径:45mm、ラビングロール回転数:1500rpm、搬送速度:1m/min、1回処理)を用いてラビング処理した。
(液晶組成物の調製)
下記カチオン重合性化合物(a1)〜(c1)および光重合開始剤(d1)を含む液晶組成物(M1)を調製した。
Figure 0004447472
なお、上記化合物(a1)は、文献「POLYMER, Volume 35, Number 3, 622ページ、1
994年」に記載されている方法により合成し、上記化合物(b1)は特願2004−216929号に記載されている方法で合成し、上記化合物(c1)は特願2004−319380号に記載されている方法で合成した。
(位相差フィルムの作製)
上記液晶組成物(M1)をトルエン:シクロペンタノン=2:1の混合溶剤に溶解して、33重量%の溶液を調製した。得られた溶液を、上記ラビング処理した、アルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムに、乾燥後の膜厚が約2μmとなるようにスピンコート方式で塗布した後、70℃で2分間乾燥した。次いで、空気中で高圧水銀灯(80W/cm)を用いて紫外線を照射して重合させることにより、可視光域に選択反射波長を持たないツイスト配向した液晶層を有する本発明の位相差フィルムを得た。
(位相差フィルムの評価)
得られた位相差フィルムについて、偏光顕微鏡による観察を行ったところ、配向欠陥は観察されず、良好な配向状態であることが分かった。次に、約590nmにおける正面方向の位相差値、ならびに、同波長での遅相軸および進相軸方向に50°傾斜させた時のそれぞれの位相差値を、自動複屈折計(王子計測社製「KOBRA−21ADH」)を用いて測定した。また、上記位相差フィルムの密着性を碁盤目試験によって評価した。碁盤目試験は、まず、カッターナイフで、上記位相差フィルムの液晶層部分に、約1mm角のマス目を碁盤目状に100マス形成し、セロハンテープ(ニチバン製)を該マス目全体に貼り付けた後、手で一気にセロハンテープを剥離して行った。その結果、碁盤目の100マス中100マス全てが剥離せずに密着していた。以上の結果を表1に示す。
(光学フィルムの作製)
次に、二色性色素としてヨウ素を吸着させたポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸することにより得られた偏光素子に、上記位相差フィルムと、該位相差フィルムを作製する際に用いたアルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムとを、図1に示すような構成になるように、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせることにより、本発明の光学フィルムを作製した。得られた光学フィルムは、上記位相差フィルムと偏光素子とが充分に接着されており、該光学フィルムの総厚みは約182μmであった。
<実施例2>
トリアセチルセルロースフィルムの表面の水の接触角が8°となるように、40℃の2N水酸化ナトリウム水溶液への浸漬時間を変更したこと以外は実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
トリアセチルセルロースフィルムの表面の水の接触角が15°となるように、40℃の2N水酸化ナトリウム水溶液への浸漬時間を変更したこと以外は実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表1に示す。
得られた位相差フィルムと該位相差フィルムを作製する際に用いたアルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィルムとを、図2の構成になるように実施例1と同様の操作により偏光素子と貼り合わせたが、充分に接着しなかった。
また、実施例1で用いた接触角が10°のトリアセチルセルロースフィルム2枚を、実施例1と同様の操作により偏光素子に貼り合わせて作製した偏光フィルムと、比較例1で得られた位相差フィルムとを、アクリル系粘着剤を用いて貼り合わせて光学フィルムを作製した。得られた光学フィルムの総厚みは約295μmであった。
<比較例2>
トリアセチルセルロースフィルムの40℃の2N水酸化ナトリウム水溶液への浸漬処理を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の操作および評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0004447472
〔耐久性試験〕
実施例1および2で作製した位相差フィルムについて、90℃の高温雰囲気下に500時間放置する耐久性試験(1)、および、65℃、93%RHの高温高湿度雰囲気下に500時間放置する耐久性試験(2)を行った。各耐久性試験後、実施例1の環境下に24時間放置してから、実施例1と同様の方法で位相差値の測定と碁盤目試験を行った。耐久性試験(1)の結果を表2に、耐久性試験(2)の結果を表3に示す。
Figure 0004447472
表2中、R(0)は耐久性試験(1)実施前の位相差値であり、R(1)は耐久性試験(1)実施後の位相差値を示す。
Figure 0004447472
表3中、R(0)は耐久性試験(2)実施前の位相差値であり、R(2)は耐久性試験(2)実施後の位相差値を示す。
実施例および比較例から明らかなように、本発明の位相差フィルムは、高分子フィルムの接触角を10°以下とすることにより、液晶層の配向性および密着性性が良好となる。また、本発明の位相差フィルムは、高温雰囲気下および高温高湿度雰囲気下に長時間放置しても密着性が変化することなく、優れた密着安定性を有しているだけでなく、位相差値の変化も極めて少ないことから、優れた配向安定性を有している。さらに、実施例1の光学フィルムの厚みと比較例1の光学フィルムの厚みとの比較から明らかなように、本発明の位相差フィルムは偏光素子の保護フィルムとしても使用できるため、液晶表示装置の薄型化が可能となる。
本発明の光学フィルムの一例を示した図である。 本発明の画像表示装置の一例を示した図である。
符号の説明
1 偏光素子
2 保護フィルム
3 アルカリ処理されたトリアセチルセルロースフィル
4 液晶層
5 本発明の位相差フィルム
6 本発明の光学フィルム
7 液晶セル
8 偏光フィルム
9 輝度向上フィルム
10 バックライト
11 本発明の画像表示装置

Claims (11)

  1. 表面の水の接触角が0°以上10°以下である高分子フィルム上に、
    下記式(a)、(b)および(c)で表される複数のカチオン重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物層が形成されていることを特徴とする位相差フィルム。
    Figure 0004447472
    (式中、mは1〜4の整数であり、nは2〜8の整数である。)
  2. 前記高分子フィルムが、表層をアルカリ処理したトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 前記硬化物層中の液晶分子がツイスト配向していることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム。
  4. 前記高分子フィルムと硬化物層との碁盤目試験による密着性が、90℃雰囲気下に500時間放置前後、および、65℃、93%RH雰囲気下に500時間放置前後のいずれにおいても、100マス中80マス以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルム。
  5. 90℃雰囲気下に500時間放置する耐久性試験後の位相差値をR(1)とし、
    65℃、93%RH雰囲気下に500時間放置する耐久性試験後の位相差値をR(2)とし、各耐久性試験前の位相差値をR(0)とした場合、下記式(I)および(II)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の位相差フィルム。
    |R(0)−R(1)|≦10nm ・・・(I)
    |R(0)−R(2)|≦10nm ・・・(II)
  6. 上記位相差値R(0)、R(1)およびR(2)が、遅相軸方向に50°傾斜させたときの波長590nmにおける位相差値であることを特徴とする請求項5に記載の位相差フィルム。
  7. 上記位相差値R(0)、R(1)およびR(2)が、進相軸方向に50°傾斜させたときの波長590nmにおける位相差値であることを特徴とする請求項5に記載の位相差フ
    ィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の位相差フィルムと偏光フィルムとを有することを特徴とする光学フィルム。
  9. 前記偏光フィルムを構成する偏光素子と、前記位相差フィルムを構成する高分子フィルムとが接着剤を介して直接積層されていることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルム。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の位相差フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。
  11. 請求項8または9に記載の光学フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。

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