JP2004054257A - 光学補償シート、その製造方法およびそれを用いた偏光板、液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学異方性の湿度依存性を改善した透湿度の低い、さらにレターデーション上昇剤や可塑剤などによる表面汚染を低減した、表示品位が良好で光学補償能に優れたセルロースアシレート光学補償シートを提供すること。また、この光学補償フイルムを用いた偏光板、液晶表示装置を提供することである。
【解決手段】少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有し、該芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部の方が高く、波長550nmにおけるフイルム面内方向と厚さ方向のレターデーション値が、それぞれ、2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、透湿度が2〜150g/m2・24hであるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シート。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有し、該芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部の方が高く、波長550nmにおけるフイルム面内方向と厚さ方向のレターデーション値が、それぞれ、2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、透湿度が2〜150g/m2・24hであるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シート。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置用として好適な、耐湿性に優れた光学補償シートおよびその製造方法に関する。さらには、この光学補償シートを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフイルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。例えば、セルロースアシレートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアシレートフイルムは、液晶表示装置にも用いられている。
セルロースアシレートフイルムは、他のポリマーフイルムと比較して、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)との特徴がある。従って、これまで光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板の保護フイルムなどに、セルロースアシレートフイルムが用いられるが多かった。
液晶表示装置の光学補償シート(位相差フイルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。従って、光学補償シートとしては、ポリカーボネートフイルムやポリスルホンフイルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフイルムを用いられることが多かった。
以上のように光学材料の技術分野では、ポリマーフイルムに光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される場合には合成ポリマーフイルムを使用し、光学的等方性(低いレターデーション値)が要求される場合にはセルロースアシレートフイルムを使用することが一般的であった。
【0003】
ところが、従来の一般的な原則を覆して、光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアシレートフイルムが開示され(例えば、特許文献1参照)、セルロースアシレートフイルムの用途が広がり、液晶表示装置にも用いられるようになった。
近年、液晶表示装置の軽量化、薄層化が強く望まれ、液晶表示装置に用いられるようになったセルロースアシレートフイルムにおいても薄層化が望まれ、該セルロースアシレートフイルムを用いて薄いながらもこれまでと同様のレターデーション値やその他の特性を有する光学フイルムが望まれている。
例えば、偏光板の耐久性に関して、特許文献2にはポリマーフイルム(セルロースアシレートフイルム)の透湿度を制御した光学補償シートを偏光膜保護フイルムとして用いることで偏光板の耐久性を高める技術が開示されている。しかし、このセルロースアシレートフイルムは特に高温高湿の下で、長時間曝されると透明性が劣化してくる傾向があり、これは、可塑剤などの添加剤が水蒸気の出入りに伴いフイルム表面に析出するためと考えられている。また、外気の温湿度が大きく変化した時には、レターデーション値が変化する問題が生じることがあり、透湿度が低く、かつレターデーション値など光学特性の湿度依存性の小さいフイルムが望まれる。
【0004】
【特許文献1】
欧州特許0911656A2号明細書
【特許文献2】
特開2002−14230号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、セルロースアシレートフイルムを用い、透湿度が低く、光学特性の湿度依存性が小さく、透明で光学補償能に優れた光学補償シートを提供することである。また、本発明の他の目的は、長尺フイルムの製造においても、異物発生の軽減された生産性良好な光学補償シートを提供することである。さらに、本発明の他の目的は、セルロースアシレートフイルムを用い、透湿度が低く、光学特性の湿度依存性が小さく、透明で光学補償能に優れた光学補償シートの製造方法を提供することである。さらにまた、本発明の他の目的は、この光学補償シートを用いた偏光板、液晶表示装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記(1)〜(15)の光学補償シート、下記(16)の偏光板、下記(17)、(18)の液晶表示装置および下記(19)の光学補償シートの製造方法により達成される。
【0007】
(1)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該セルロースアシレートフイルムの該芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部の方が高く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hである、
ことを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0008】
(2)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有する2軸性セルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該セルロースアシレートフイルムの該芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部の方が高く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hである、
ことを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0009】
(3)該セルロースアシレートフイルムが少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムから成ることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0010】
(4)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0011】
(5)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、横延伸して得られる2軸性のセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0012】
(6)セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値の、30℃15%RHから30℃85%RHの範囲における湿度依存性が、絶対値で各々、0.5nm/%RH以下、0.7nm/%RH以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0013】
(7)該セルロースアシレートフイルムの30℃85%RH雰囲気下での含水量が、0.3〜12g/m2であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学補償シート。
(8)該セルロースアシレートフイルムが、長さが100〜5000m、幅が0.7m以上の長尺フイルムであって、該セルロースアシレートフイルムの30℃85%RH雰囲気下での引き裂き強度が3〜50gであり、かつ30℃85%RH雰囲気下での引掻き強度が2〜30gであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の光学補償シート。
(9)該セルロースアシレートフィルムの膜厚が20〜100μmであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0014】
(10)該セルロースアシレートフィルム上に配向膜を有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の光学補償シート。
(11)該セルロースアシレートフィルムが表面処理を施され、表面処理後の該セルロースアシレートフイルムの表面エネルギーが55〜75mN/mであることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の光学補償シート。
(12)該表面処理が、アルカリ性処理液による鹸化処理であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0015】
(13)セルロースアシレートフイルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層が積層されてなり、
30℃50%RHにおけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の値がそれぞれ35±30nm、40±35nm、110±85nmの範囲にあり、30℃15%RHから30℃85%RHの範囲におけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の湿度依存性が、絶対値で全て0.5nm/%RH以下であることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の光学補償シート。
ここで、Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、光学異方層の面内でレターデーション値が最小となる方向(最小値の方向)と、該光学異方性層の法線とを含む平面内で、法線方向、法線から最小値の方向に50°傾いた方向、それとは逆に法線から50°傾いた方向からそれぞれ測定した該光学補償シートのレターデーション値を表す。
【0016】
(14)該光学異方層が、円盤状液晶性化合物(ディスコティック液晶)の配向が固定されてなることを特徴とする上記(13)に記載の光学補償シート。
(15)該光学異方層に用いる液晶性化合物が円盤状液晶性化合物であり、該円盤状構造単位の面が、セルロースアシレートフイルム表面に対して傾き、かつ円盤状構造単位の面とセルロースアシレートフイルム表面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向に変化していることを特徴とする上記(13)または(14)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0017】
(16)偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護フイルムからなる偏光板であって、該透明保護フイルムの少なくとも一方が上記(1)〜(15)のいずれかに記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板。
【0018】
(17)液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板を含み、該偏光板が偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護フイルムからなる液晶表示装置であって、該偏光板が、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の光学補償シートを透明保護フイルムとして有する偏光板、または上記(16)に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
(18)該液晶セルが、TNモード、OCBモード、VAモード、またはMVAモードの液晶セルであることを特徴とする(17)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(19)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートの製造方法において、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シートの製造方法。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0020】
本発明は、光学補償シートのセルロースアシレート基体(フイルム)に含有させる2つの芳香族環を有する特定の芳香族化合物の含有量をフイルム表面近傍で少なくし、フイルム深さ方向でその存在量を変えたことを特徴とする。本発明者らは、これにより、セルロースアシレートフイルムの透湿性を低く抑え、かつ光学補償シートとしてのレターデーションの湿度依存性を小さくできることを見出した。このことは、所望のレターデーション値を保持しながら、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物のセルロースアシレートフイルム内部での濃度を高濃度化することにより、フイルム内部の疎水的雰囲気が高まり耐透湿性が改善され、且つフイルム表面近傍では該芳香族化合物が低濃度なので該芳香族化合物の泣き出しが抑えられ、高湿度条件下での変化抑制等を可能にしたと思われる。更には、セルロースアシレート基体(フイルム)をアルカリ鹸化処理でフイルム表面を親水化して配向膜を塗設しその上に光学異方層を設けてなる光学補償シートにおいては、鹸化処理工程でのアルカリ溶液への溶出が軽減若しくは解消されて、光学特性が安定し、且つ視覚的異物欠陥の見られない光学補償シートが得られ、特に長尺品を安定に生産性良く製造できる。
該芳香族化合物は、レターデーション調整剤として主に用いられるのが好ましい。また、必要に応じて添加される可塑剤についても、同様に、その含有量をフイルム表面近傍で少なくしフイルム深さ方向でその存在量を変えると、より本発明の効果が大きい。
【0021】
尚、本発明で「フイルム表面近傍」とは、フイルム最表面からフイルム厚みに対して25%程度の深さまでの部分を言い、「フイルム内部」とはこのフイルム表面近傍を除いたフイルム内側部分を言う。本発明のセルロースアシレートフイルムは、後述する積層流延法により製膜した後、延伸して製造することが好ましいが、この積層流延法により製膜する場合、「フイルム表面近傍」とは最外層の部分に相当する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[セルロースアシレートフイルム]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて以下に記す。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケフナー、木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンター、ケフナー、パルプを精製して用いられる。
【0023】
本発明において、セルロースアシレートとは、セルロースの脂肪酸エステルのことであるが、特に、低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数に関しては、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアシレートとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましい。
【0024】
一般に、セルロースアセテートの2,3,6位の水酸基がそれぞれアシル基に置換される割合(置換度;各位それぞれ100%置換された場合は置換度1)は、全体の置換度(各位の置換度の総和)の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアセテートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して、6位の水酸基の置換度が30%以上40%以下占めていることが好ましく、更には31%以上、特に32%以上であることが好ましい。さらにセルロースアセテートの6位水酸基の置換度が0.88以上であることが好ましい。
6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
【0025】
セルロースアセテートとしては、酢化度が54.0〜62.5%であるセルロースアセテートを用いることが好ましい。より好ましくは57.0〜62.0%である。また、混合脂肪酸セルロースエステルの場合にはアシレートのアシル基の種類及びその割合に応じて、上記の酢化度の範囲内で調節するこが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
また、セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、セルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜2.5であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
【0026】
[レターデーション調整剤]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムは、溶液の紫外線吸収スペクトルの吸収極大を与える波長(λmax)が400nmより短波長にある紫外線を吸収する化合物をレターデーション調整剤として含有することが好ましい。このような化合物の例として、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾトシアゾール類、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤を挙げることができる。また、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物、トリフェニレン化合物、円盤状化合物(1,3,5−トリアジン骨格、ポルフィリン骨格を分子に含有の化合物等)等が好ましい。これらの化合物類は、可視光領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0027】
[少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムは、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物(以下、「本発明の芳香族化合物」とも言う)を少なくとも1種を含有する。本発明の芳香族化合物は、レターデーション調整剤として含有することが好ましい。
本発明の芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環でもかまわない。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0028】
本発明の芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましい。3以上の芳香族環を有する場合、少なくとも二つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければよい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。レターデーション上昇機能の観点では、(a)〜(c)のいずれでもよい。具体的には、特開2002−131537号公報明細書段落番号[0016]〜[0023]記載の内容のものが挙げられる。更に、上記(b)または(c)の場合は、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しないことが好ましい。
【0029】
本発明の芳香族化合物としては、特開2002−363343号公報明細書の段落番号[0011]〜[0031]記載されると同一内容の直線的な分子構造を有する棒状化合物、特開2000−111914号公報明細書の段落番号[0011]〜[0085]記載されると同一内容の立体障害しない立体配座となっている二つの芳香族環を含有する化合物、少なくとも1つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物またはポルフィリン骨格を有する化合物(特開2001−166144号公報記載の化合物)が挙げられる。
特に、少なくとも一つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物が好ましい(該トリアジン環がもう一つの芳香環となる)。具体的には、特開2001−166144号公報明細書の段落番号[0016]に記載の一般式(I)記載の1,3,5−トリアジン化合物が挙げられる。
本発明の芳香族化合物の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0030】
本発明の芳香族化合物の含有量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、レターデーション調整剤として用いる場合には所望のレターデーションに調整するためにレターデーション調整用化合物の種類に応じた使用量を選択するのが好ましい。また、フィルムを作製するときにフィルム形成用組成物中での溶解性、製膜時での不溶化や析出等の問題を生じさせないことから、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜25質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0031】
[セルロースアシレート可塑剤]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムにはフイルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、従来公知の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類(カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、クオキシカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸等)、芳香族カルボン酸(フタル酸等)等が挙げられ、発明協会公開技法(公技2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)16頁に記載の化合物等が挙げられる。また、アルカンポリオールとカルボン酸とのエステル化化合物(特開平11−124445号公報、特開2001−247717号公報等)等も好ましい。
本発明では、後ほど記載する積層流延法よってセルロースアシレートフイルムを作製する際に、可塑剤の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して、内部層では5〜30質量部とすることが好ましく、10〜28質量部とすることがより好ましく、15〜25質量部とすることが最も好ましい。最外層の添加量は内部層よりも低いことが好ましく、2〜15質量部とすることが好ましく、3〜10質量部とすることがより好ましい。最外層の添加量が15質量部を超えると可塑剤によっては析出が生じ、異物欠陥となる可能性が高くなる。
【0032】
[セルロースアシレートの他の添加剤]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムには、用途に応じて他の種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、帯電防止剤、赤外吸収剤など)を加えることができる。前記の公技番号 2001−1745の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレートフィルム中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
後述のソルベントキャスト方法での製膜では、その添加する時期はでのドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されており、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、前記の公技番号
2001−1745の22頁〜25頁に詳細に記載されている。
【0033】
[セルロースアシレートフイルムの製造方法]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムは、フイルム内部と表面近傍とで本発明の芳香族化合物含有濃度が異なるものであり、表面近傍より内部の方が高いことを特徴とする。
【0034】
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの製造方法は、どのような方法を用いても構わないが、後に示す積層流延法を用いることができる。また、この方法によらずとも、製膜・乾燥後あるいは乾燥途中に、レターデーション調整剤を溶解するあるいは、溶解性に乏しい溶剤を塗布することにより表面近傍のレターデーション調整剤含有濃度を低下させることができる。または、製膜・乾燥後または乾燥途中に、レターデーション調整剤を低濃度で含有するセルロースアシレート溶液を塗布することにより表面近傍のレターデーション調整剤含有濃度を低下させたものを得ることができる。
本発明は上記のレターデーション調整剤が本発明の芳香族化合物であることが好ましい。
【0035】
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましく、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムは製造される。
ドープ溶液に用いる有機溶媒としては、従来公知の溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3〜12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物に対する上記規定範囲内であればよい。
具体的には、例えば前記の公技番号2001−1745の12頁〜16頁に詳細の化合物が挙げられる。
【0036】
特に、本発明では、溶媒は2種類以上の有機溶媒を混合して用いることが好ましく、特に好ましい有機溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数が3〜4のケトンおよび炭素原子数が3〜4のエステルまたはその混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が5〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として沸点が30〜170℃のアルコールまたは沸点が30〜170℃の炭化水素から選ばれる。
特に、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることが、セルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
【0037】
また、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系が特に好ましい。具体的には、例えば特開2002−146043号明細書の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号明細書の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
【0038】
本発明に用いるドープには、上記有機溶媒以外に、フルオロアルコールやメチレンクロライドを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有させることもフイルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。フルオロアルコールとしては沸点が165℃以下のものがよく、好ましくは111℃以下がよく、更に80℃以下が好ましい。フルオロアルコールは炭素原子数が2から10程度、好ましくは2から8程度のものがよい。また、フルオロアルコールはフッ素原子含有脂肪族アルコールで、置換基があってもなくてもよい。置換基としてはフッ素原子含有或いはなしの脂肪族置換基、芳香族置換基などがよい。
このようなフルオロアルコールは例えば、特開平8−143709号公報明細書中の段落番号[0020]、同11−60807号公報明細書中の段落番号[0037]等に記載の化合物が挙げられる。これらのフルオロアルコールは一種又は二種以上使用してもよい。
【0039】
セルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させてもよい。セルローストリアセテート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10ps・s〜2000ps・sの範囲に調製されることが好ましく、特に30ps・s〜400ps・sが好ましい。
本発明において、セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。さらにセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮とろ過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0040】
次に、本発明において、セルロースアシレート溶液(ドープ)を用いたフイルムの製造方法について述べる。セルロースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、セルローストリアセテートフイルム製造に供するドラム方法またはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法(ソルベントキャスト法)及び溶液流延製膜装置を用いることができる。
バンド法を例として製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープを貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類)については、前記の公技番号2001−1745の25頁〜30頁に詳細に記載された内容が挙げられる。
【0041】
[積層フイルム]
本発明のセルロースアシレートフイルムは、共流延法または逐次流延法により2層以上の複数のドープ溶液を積層させる、いわゆる積層流延法によりレターデーション調整剤量がフィルム内部で多く且つ表層部で少なくなるように積層して製造することが好ましい。セルロースアシレートフイルムは2層以上、10層以下の積層流延層から構成されていることが好ましい。
【0042】
少なくとも1つの内部層において、本発明の芳香族化合物の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、1〜30質量部である。3〜25質量部とすることがより好ましく、5〜20質量部とすることが特に好ましい。一方、最外層の添加量は少なくとも1つの内部層よりも低く、0.01〜10質量部である。0.1〜8質量部とすることがより好ましく、0.3〜5質量部とすることが特に好ましい。いかなる場合でも本発明においては最外層ドープでの濃度の方が少なくとも1つの内部層ドープでの濃度より低くなるようにする。これにより、得られるフイルムにおいて、長時間経時後や高温高湿下でのフイルム表面へ本発明の芳香族化合物が析出することを抑えることができ、透明性の劣化や異物欠陥の原因となるのを防ぐことができる。
【0043】
内層と外層のセルロースアシレートエステルの種類は同じであっても構わないし、異なっていても構わない。最外層の厚みは0.2乃至50μmが好ましく、0.5乃至20μmが更に好ましく、0.5乃至5μmが特に好ましい。流延するための装置は、共流延の場合は、内部合流ダイ、先端合流ダイ等があり、逐次流延の場合は、エクストルージョンダイ等がある。
【0044】
積層流延するには、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からドープ溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号などに記載の方法を用いることができる。また、2つ以上の流延口からドープ溶液を流延することによってフイルム化してもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号に記載の方法を用いることができる。
【0045】
または2個の流延口を用いて、第1の流延口により支持体に成型したフイルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第2の流延を行うことにより、フイルムを作製してもよく、例えば特公昭44−20235号に記載されている方法を用いることができる。本発明のセルロースアシレートフイルムを製造する際には、本発明の芳香族化合物のように、流延するドープ溶液では前記したように最外層にあたる層の添加剤量を内部のそれよりも低くすることができる。本発明の芳香族化合物以外にも前記したように可塑剤の量を低くして用いることが好ましい。
さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)を同時に流延することもできる。
【0046】
[二軸延伸処理]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの製造において、延伸処理は積層流延、乾燥、巻き取りの際に流延方向に延伸されることに加えて、流延方向とは垂直に延伸(横延伸)して二軸延伸フイルムとすることにより行なうことができる。延伸は破断伸度の10%〜90%の範囲で行うことが好ましく、20%〜85%で行うことがより好ましく、30%〜80%で行うことが特に好ましい。90%を超えると破断前に発生するクラックのためにヘイズが上昇し、10%に満たないと効果がない。延伸によりセルロースアシレート分子のフイルム面内での配向が進み、Re値、Rth値を増大させることができる。
【0047】
セルロースアシレートフイルムの膜厚は20〜100μmの範囲にあることが好ましく、20〜80μmの範囲にあることが更に好ましく、30〜70μmの範囲にあることが最も好ましい。光学補償シート、偏光板および液晶表示装置を薄く軽量化するためや透過率を高めるなどの光学特性が好ましい。20μm未満では長尺で幅広な支持体をハンドリングすることが難しく好ましくない。
長尺・幅広な形態であることは生産性を高め、安価に本製品を提供するために好ましい。長尺ロールの長さは100〜5000mであることが好ましく、500〜4500mであることがより好ましく、1000〜4000mであることが特に好ましい。長尺ロールの幅は広いほど好ましく、0.7m以上であることが好ましい。0.7〜3mであることがより好ましく、1〜2.5mであることが特に好ましい。
【0048】
[セルロースアシレートフイルムの光学特性]
本発明のセルロースアシレートフイルムの光透過率は80%以上、ヘイズは3%以下であることが好ましい。
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムは、下記の式(I)、(II)で定義されるRe、Rthの値がそれぞれ波長550nmに対して2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、光学異方性を示す。Re、Rthの値はそれぞれ波長550nmに対して2〜200nm、70〜380nmの範囲にあることがより好ましい。
【0049】
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
【0050】
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]。
【0051】
なお、セルロースアシレートフイルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、波長550nmに対して0.000025〜0.0088であることが好ましく、より好ましくは0.0003〜0.005である。又、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、波長550nmに対して0.0006〜0.01であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.007である。
【0052】
また、Re値及びRth値の15℃から40℃における、15%RHから85%RHでの湿度依存性が小さいほど好ましく、絶対値で各々、0.8nm/%RH以下、1nm/%RH以下であることが好ましい。特に、30℃15%RHから30℃85%RHの間での湿度依存性は、絶対値で各々、0.5nm/%RH以下、0.7nm/%RH以下であることが好ましい。なお、ここで言う「湿度依存性」とは、本発明においては、定温湿度係数を意味する。
【0053】
[セルロースアシレートフイルムの遅相軸角度]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの面内における遅相軸の角度は、フイルムの延伸方向を基準線(0°)とし、遅相軸と基準線のなす角度で定義する。ここで、ロール形態のフイルムを幅方向に延伸する時は幅方向を基準線とし、長手方向に延伸する時は長手方向を基準線とする。
遅相軸角度の平均値は3°以下であることが好ましく、2°以下であることがさらに好ましく、1°以下であることが最も好ましい。遅相軸角度の平均値の方向を遅相軸の平均方向と定義する。
また、遅相軸角度の標準偏差は1.5°以下であることが好ましく、0.8°以下であることがさら好ましく、0.4°以下であることが最も好ましい。
【0054】
[セルロースアシレートフイルムの透湿度]
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフイルムの透湿度は、JIS規格JIS Z0208、B条件(温度40℃、湿度90%RH)において、2〜150g/m2・24hである。10〜120g/m2・24hであることがより好ましく、10〜100g/m2・24hであることが特に好ましい。150g/m2・24hを越えると、Re値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなり、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.7nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、セルロースアシレートフイルムに光学異方性層を積層させた光学補償シートとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフイルムの透湿度が2g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフイルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
【0055】
[セルロースアシレートフイルムの含水量]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの含水量は、偏光板と組み合わせて用いる場合にポリビニルアルコール(偏光膜)などの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、30℃85%RH下で0.3〜12g/m2であることが好ましい。0.5〜5g/m2であることがより好ましい。12g/m2より大きいとレターデーションの湿度変化による依存性も大きくなりすぎてしまい好ましくない。
【0056】
[セルロースアシレートフイルムの機械的特性]
セルロースアシレートフイルムの引き裂き強度は、本発明の光学補償シートを偏光板保護膜として用いる場合に優れたリワーク性を発現させるためやフイルム製造時に高速でのハンドリング性を損なわないために、30℃85%RHにおいて3〜50gであることが好ましい。
【0057】
セルロースアシレートフイルムの引掻き強度は、フイルム製造の際、ゴミの発生や高速でのハンドリング時に発生する微細傷を発生させないために、30℃85%RHにおいて2〜30gであることが好ましい。5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。フイルム内部と表面近傍とで本発明の芳香族化合物や可塑剤などの含有濃度を変え、表面近傍の濃度を内部より低くすることによりフイルム表面の強度の低下を防ぎ、引掻き強度を高めることができる。引掻き強度は円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mmのサファイヤ針を用いて支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
【0058】
[セルロースアシレートフイルム表面の密着性付与の方法]
セルロースアシレートフイルムは、配向膜を塗布方式で設ける場合には、該セルロースアシレートフイルム表面に密着性を付与し、配向膜用塗布液が均一に塗工されるように表面処理を施すことが好ましい。
表面処理の方法としては、まず配向膜の下塗り層を設ける方法が挙げられる。特開平7−333433号公報記載の下塗り層、または疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を一層のみ塗布する単層法第1層として高分子フイルムによく密着する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第2層と略す)を塗布する所謂重層法(例えば、特開平11−248940号公報記載)の内容内容が挙げられる。
他方、セルロースアシレートフイルムの表面を直接処理として表面を親水性に改質する方法も用いられる。例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、オゾン処理、酸処理、アルカリ処理等で該フィルム表面を改質する方法が挙げられる。これらについては、詳細が前記の公技番号 2001−1745の30頁〜32頁に詳細に記載されている。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフイルムの表面処理が、簡易な処理装置で迅速にケン化処理できることから極めて有効である。
【0059】
表面処理後のフイルムの表面エネルギーは55〜75mN/mの範囲が好ましい。この範囲において、該フィルム上に塗設する配向膜が均一に塗布され、且つ密着も充分に保持される。
【0060】
[アルカリ鹸化方法]
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.3〜2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液は、水のほか、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)や低級グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール)等を含有することが好ましい。これにより、フイルム表面へのアルカリ溶液の濡れ性を向上させ、鹸化反応がフイルム面全面で均一に且つ速やかに進行させることができる。
【0061】
アルカリ溶液を用いたセルロースアシレートフイルムの表面処理方法は、浸漬、塗布、吹き付け等従来公知のいずれの方法でもよい。特に、フイルムの片面のみをムラ無く均一に鹸化処理する場合は、塗布方式が好ましい。塗布の方法としては、従来公知の塗布方法[例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター、ブレードコーター等]が好ましく利用できる。
【0062】
鹸化処理は、処理するフイルムの変形、処理液の変質等が生じない温度120℃を越えない範囲の処理温度で行うことが好ましい。更に温度10℃以上であり100℃以下の範囲が好ましい。特に、温度20〜80度が好ましい。また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液、処理温度により適宜調整して決定するが、1秒から60秒の範囲で行われるのが好ましい。
更に、セルロースアシレートフイルムをその表面が少なくとも10℃以上の温度でアルカリ溶液で鹸化処理する工程、セルロースアシレートフイルムの温度を少なくとも10℃以上に維持する工程、そして、アルカリ溶液をセルロースアシレートフイルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
【0063】
セルロースアシレートフイルムをその表面が所定の温度でアルカリ溶液で鹸化処理には、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、またはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和し水洗等でフイルム表面からアルカリ溶液及び鹸化処理反応物とを洗浄し除去することが好ましい。具体的には、例えばWO02/46809号公報等に記載の内容が挙げられる。
【0064】
本発明のセルロースアシレートフイルムを用いたアルカリ鹸化処理による表面改質は、本発明の芳香族化合物のフイルム表面近傍での析出が解消され、且つフイルムからの析出を著しく軽減若しくは解消し、異物欠陥や濁り発生等のない優れた光学的な透明性及び後述する光学異方特性の変化を抑止できる点で好ましい。
【0065】
[光学補償シート]
本発明の光学補償シートとしては、セルロースアシレートフイルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層を積層させたものも好ましい。
【0066】
[配向膜]
この場合、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に水平に配向させるために配向膜を光学異方性層の下層に設けることが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。有機化合物(好ましくはポリマー)塗布液を塗布して形成される配向膜が好ましい。配向膜の膜自身の強度、下層または上層となる光学異方性層との密着性の観点から硬化されたポリマー膜であることが好ましい。配向規定の方法としては、従来公知のラビング、磁場或は電場の付与、光照射等が挙げられる。本発明に供される配向膜は、液晶セルの表示モードの種類に応じることができる。
【0067】
有機ポリマー膜の種類については、その用途、例えば適用する液晶表示装置の様々な表示モードに対応して、適宜選択することができる。例えば、ディスコティック液晶性化合物を用いた光学補償シートについての下記文献に記載があり、それらを用いることができる。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例は、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載の化合物が挙げられる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70乃至100%が好ましく、80乃至100%がさらに好ましく、85乃至95%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100乃至3000であることが好ましい。
【0068】
変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−56310号公報明細書中の段落番号[0074]、同2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[022]に記載のもの等が挙げられる。
【0069】
また、配向を光照射で行う場合には、光配向機能を発現する光配向性基を分子内に有することが好ましい。これらの光配向性基としては、例えば、長谷川雅樹著書の「液晶、第3巻(1)3〜16頁(1999)」記載のもの、C=C結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、シンナモイル基、ヘミチオインジゴ基、カルコン基等)、C=O結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基等の構造を有する基等)が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−122069号公報、同2002−317013号公報明細書段落番号[0021]等記載のものが挙げられる。
【0070】
ポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコール)の架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0071】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1乃至20質量%が好ましく、0.5乃至15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で架橋剤が残存していると、充分な耐久性が得られない。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にレチキュレーションが発生することがある。
【0072】
配向膜は、基本的に、配向膜形成用組成物である前記ポリマー、架橋剤を含む塗布液をセルロースアシレートフイルム上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、配向処理することにより形成することができる硬化膜である。架橋反応は、前記のように、セルロースアシレートフイルム上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成用組成物として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0073】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、温度が20℃〜110℃、乾燥時間は1分〜36時間の範囲で行なうことができる。
【0074】
配向膜は上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面を従来公知の配向処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0075】
[光学補償シートの特性]
セルロースアシレートフイルム上に液晶化合物からなる光学異方性層が積層されてなる光学補償シートの光学特性は、30℃50%RHにおいてRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の値が、それぞれ35±30nm、40±35nm、110±85nmの範囲にあることが好ましい。ここで、Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、光学異方層の面内でレターデーション値が最小となる方向(最小値の方向)と、該光学異方性層の法線とを含む平面内で、法線方向、法線から最小値の方向に50°傾いた方向、それとは逆に法線から50°傾いた方向からそれぞれ測定した該光学補償シートのレターデーション値を表す。Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、公知のエリプソメーターで測定することができる。
【0076】
また、Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)値の15℃から40℃における、15%RHから85%RHでの湿度依存性は小さいほど好ましく、いずれも絶対値で、0.6nm/%RH以下であることが好ましい。特に、30℃15%RHから30℃85%RHの間での湿度依存性は、絶対値で全て0.5nm/%RH以下であることがより好ましく、0.3nm/%RH以下であることが特に好ましい。
【0077】
なお、セルロースアシレートフイルム上に液晶化合物からなる光学異方性層が積層されてなる光学補償シートは、どの方向からレターデーション値を測定しても、0となる方向は存在しない。
【0078】
[光学異方性層]
本発明の光学補償シートにおいては、液晶性化合物の配向を固定した光学異方性層を有することが、液晶表示装置に用いる際により優れた視野角拡大等の効果を持たせる点から好ましい。
光学異方性層を有する光学補償シートはベンド配向、ハイブリッド配向などを示すネマチック液晶からなる液晶セルの複屈折をキャンセルするために好ましく用いられ、構成、原理については、特許第3118197号公報などに詳細が示されている。
【0079】
光学異方性層を有する光学補償シートは、液晶セルに起因する複屈折をキャンセルするため、液晶セル内のネマチック液晶のラビング方向と、光学補償シートの、光学異方性層のレターデーションが最小値となる方向をシート面上へ正射影した方向とを平行にすることが好ましい。
【0080】
液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物や円盤状(ディスコティック)液晶性化合物を用いることができる。
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。これら低分子液晶化合物は重合性基を分子内に有することが好ましい(例えば、特開2000−304932号公報明細書段落番号[0016]等記載)。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。高分子液晶性化合物は、以上のような低分子液晶性化合物に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性化合物を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報に記載がある。
【0081】
液晶性化合物としては、円盤状液晶性化合物が好ましい。さらに、円盤状液晶性化合物の円盤状構造単位の面が、セルロースアシレートフイルム表面に対して傾き、かつ円盤状構造単位の面とセルロースアシレートフイルム表面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向に変化していることが好ましい。このような光学異方性層は、セルロースアシレートフイルム上に配向膜を設け、その上に液晶性化合物からなる層を積層させ、円盤状液晶性化合物を例えば重合させるなどして、液晶性分子の配向を固定することで形成することができる。
【0082】
円盤状液晶性化合物(ディスコティック液晶性化合物)は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol.71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合するディスコティック液晶性化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。重合性基は、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基から選ばれる重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和重合性基(アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基等)、エポキシ基であることが最も好ましい。
例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
【0083】
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記連結基に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学的異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
【0084】
二種類以上のディスコティック液晶性化合物を併用してもよい。例えば、以上述べたような重合性ディスコティック液晶性化合物と非重合性ディスコティック液晶性化合物とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性化合物は、重合性ディスコティック液晶性化合物の重合性基を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性化合物としては、例えば特許第2640083号公報記載の化合物等が挙げられる。
【0085】
「光学異方性層の他の添加剤」
光学異方性層には、上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの添加剤は、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角(例えば、円盤状液晶性化合物の場合、円盤状構造単位の面のフイルム表面からの傾斜角)の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
【0086】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0087】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0088】
円盤状液晶性化合物とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0089】
光学的異方性層は、液晶性化合物、さらに下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成する。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0090】
[液晶性分子の配向状態の固定]
液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子の配向が固定されていることが最も好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0091】
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20〜5000mJ/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射による光ラジカル重合の場合は空気又は不活性気体中で行うことができ、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のためにできるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。
【0092】
光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがさらに好ましい。0.5乃至5μmであることがさらに好ましい。但し、液晶セルのモードによっては、高い光学的異方性を得るために、光学的異方性層を厚く(3〜10μm)する場合がある。
【0093】
光学的異方性層内での液晶性分子の配向状態は、前述したように、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定される。液晶性分子の配向状態は、具体的には、液晶性分子の種類、配向膜の種類および光学異方性層内の添加剤(例、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御される。
【0094】
[光学補償シートの表面処理]
本発明では、光学補償シートの偏光膜側の面を表面処理することにより、光学補償シートと偏光膜との接着を改善する。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理又はアルカリ処理を実施する。
コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理等の処理方法は、例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、30頁〜31頁に記載の内容が挙げられる。本発明は、アルカリ処理することが好ましく、前記したセルロースアシレートフイルムの鹸化処理で記載したのと同様の内容のものが挙げられる。
【0095】
[偏光板の透明保護膜]
偏光板の透明保護膜としては、ポリマーフイルムが用いられる。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフイルム、好ましくはセルロースアセテートフイルムが用いられる。透明保護膜として用いるセルロースエステルフイルムは、前記のセルロースアシレートフイルムの製造方法についての説明で記載したソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがさらに好ましい。特に好ましくは30〜80μmである。
【0096】
[偏光膜]
本発明の偏光板に用いられる偏光膜は、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜などを用いることができる。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造される。
【0097】
偏光膜としては、いかなる製法の偏光膜をも適用することができる。例えば、ポリビニルアルコール系フイルムを連続的に供給し、その両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸する際に、フイルムの一方端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L1と、もう一端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L2が、左右の実質保持解除点の距離Wに対し、下記式(2)の関係にあると共に、左右の実質保持開始点を結ぶ直線は、保持工程に導入されるフイルムの中心線と略直交するものとし、左右の実質保持解除点を結ぶ直線は、次工程に送り出されるフイルムの中心線と略直交するようにして延伸したものであってもよい(米国特許公開2002−8840A1参照。)
【0098】
式(2) |L2−L1|>0.4W
【0099】
偏光膜は機械的強度が弱く、また吸湿性を有するなどの特性を持つため保護能を有するフイルムで保護して偏光板を得ることができる。偏光膜の保護フイルムとしては、通常は光学的に透明で複屈折の小さいフイルムが好ましく、セルローストリアセテートなどが用いられるが、偏光板に光学補償機能を持たせたい場合などは本発明のセルロースアシレート光学補償シートを、保護フイルムを兼ねるフイルムとして用いることができる。
【0100】
[偏光板]
本発明では、偏光膜の保護フイルムとして本発明のセルロースアシレート光学補償シートを用い偏光板を得ることができる。保護フイルムの遅相軸と偏光膜の透過軸のなす角度は3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することがさらに好ましく、1°以下になるように配置することが最も好ましい。
保護フイルムとしては、他にもハードコート層付基材フイルムや機能性薄膜付フイルムなどを併用することもできる。例えば、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
【0101】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、印加電圧が低い時に明表示、高い時に暗表示であるノーマリーホワイトモードでも、印加電圧が低い時に暗表示、高い時に明表示であるノーマリーブラックモードでも用いることができる。
本発明では、透過型、反射型および半透過型液晶表示装置の駆動方式については単純マトリックス方式よりも、アクティブマトリックス方式が好ましく、TFT(Thin Film Transistor)、TFD(Thin Film Diode)またはMIM(MetalInsulator Metal)を使うことがより好ましい。TFTについては低温ポリシリコンまたは連続粒界シリコンを使うことがより好ましい。
詳細については、「液晶デバイスハンドブック」日本学術振興会第142委員会編,日刊工業新聞社、「液晶 応用編」岡野光治他,培風館、「カラー液晶ディスプレイ」小林俊介他,産業図書、「次世代液晶ディスプレイ技術」内田龍男,工業調査会、「液晶ディスプレイの最先端」液晶若手研究会編,シグマ出版、「液晶:LCDの基礎と新しい応用」液晶若手研究会編,シグマ出版等に記載されている。
【0102】
本発明の液晶表示装置には、例えばTNモード、STNモード、ECBモード、OCBモード、HANモード、VAモード、MVAモード、ホモジニアス配向モード等各種のモードの液晶セルを用いることができる。なかでもTNモード、OCBモード、HANモード、VAモード、MVAモードまたはホモジニアス配向モード等のECBモードの液晶セルが好ましい。液晶セルについては、「‘99PDP/LCD構成材料・ケミカルスの市場」1999年7月30日,シーエムシー、「EL,PDP,LCDディスプレイ技術と市場の最新動向―」2001年3月,東レリサーチセンター等に記載されている。
【0103】
液晶モードについて、以下でさらに説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0104】
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0105】
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−76625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0106】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
[実施例1]
(セルロースアシレートフイルムの作製)
(セルロースアシレート溶液の調製)
表1に示す組成のセルロースアシレート原液溶液(元ドープ液)調製した。溶解はミキシングタンクに原料を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解した。
【0108】
【表1】
【0109】
(レターデーション調整剤溶液の調製)
表2に示すように組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション調整剤溶液を調製した。レターデーション調整剤(スミソルブTM165F)は下記に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
【化1】
【0112】
(内層用及び外層用セルロースアシレートドープ溶液の調製)
表3、4に示すように組成物をミキシングタンクに投入、攪拌、溶解し、内層用、外層用セルロースアシレートドープ溶液を調製した。セルロースアシレート(セルロースアセテート)100質量部に対するレターデーション調整剤の添加量は、表3、4に示した。
得られたドープを50℃にて、絶対ろ過精度0.01mmのフィルター(東洋濾紙(株)製、#63)および絶対ろ過精度0.0025mmのフィルター(ポール社製、FH025)にてろ過した。
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
3層共流延ダイを用いて、ろ過したドープを内層用ドープが内側に外層用ドープが両外側になるように配置してバンド流延機を用いて重層流延した。ドープをゲル化させ、70℃で3分、120℃で5分乾燥した後にフイルムをバンドから剥離し、130℃で60秒間乾燥し、セルロースアシレートフイルムを製造した。表5に示す内層厚み、両外層厚みとなるようにドープ吐出量を調整した。
得られたフイルムを、テンターを用いて表5に示した延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持し、表5に示したセルロースアシレートフイルムを長さ3000m、幅1.2mの巻きロール形態で作製した。
【0116】
【表5】
【0117】
(セルロースアシレートフイルムの光学特性の測定)
作製したセルロースアシレートフイルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値(Re550)およびRthレターデーション値(Rth550)を測定した。結果を表6に示す。
【0118】
(透湿度の測定)
JIS規格JIS Z0208、B条件(温度を40℃、湿度を90%RH)で測定を行った。結果を表6に示す。
【0119】
(ヘイズの測定)
ヘイズはヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。フイルム1サンプルにつき、5点を測定し、その平均値を採用した。結果を表6に示す。
【0120】
(面状の評価)
フイルムを目視で観察し、その面状を以下の基準で評価した。結果を表6に示す。
A:フイルム表面に汚染は全くなく、極めて良好である。
B:フイルム表面に汚染はほとんど認められない、異物はわずかにあるが良好である。
C:フイルム表面に汚染が一部に認められる。フイルムとして不適である。
D:フイルム表面に汚染がほぼ全面に認められる。フイルムとして不適である。
E:フイルム表面に汚染が全面に認められ、異物が多数見られる。フイルムとして不適である。
【0121】
(水分量の評価)
フイルムを所定のサイズに裁断したサンプルに対し、三菱化学製VA−05型気化器を用い、150℃にてサンプル中の水分揮発させ、三菱化学製CA−03型カールフィッシャー水分計に導入して測定した。結果は表6に示す。
【0122】
(引き裂き強度の評価)
フイルムを幅65mm×長さ50mmに切断してサンプルを作製する。このサンプルを温度30℃、相対湿度85%の室内で2時間以上調湿し、ISO6383/2−1983の規格に従い、東洋精機製作所製軽荷重引裂強度試験器を用いて、引き裂きに要する荷重(g)を求めた。結果は表6に示す。
【0123】
(引掻き強度の評価)
引掻き強度は円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mmのサファイヤ針を用いてフイルム表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価した。結果を表6に示す。
【0124】
【表6】
【0125】
本発明−2、3、10のセルロースアシレートフイルムの30℃15%RH、30℃55%RH、30℃85%RHでの波長550nmにおけるRe値(Re550)、Rth値(Rth550)を測定した。結果を表7に示した。
【0126】
【表7】
【0127】
表6、7に示す結果から以下のことが分かる。
本発明−1、5、10は、少なくとも2つの芳香族環を有する化合物を含有するセルロースアシレートフイルムからなり、この芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部が高く、波長550nmにおけるRe、Rthの値がそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、透湿度が2〜150g/m2・24hである光学補償シートで、ヘイズが小さく優れた透明性と、汚染のない優れた面状とを有するセルロースアシレート光学補償シートであることが分かる。
また、本発明−2、3、4、6、7、8、9、11、12、13は、少なくとも2つの芳香族環を有する化合物を含有するセルロースアシレートフイルムを積層流延法により製膜した後、セルロースアシレートフイルムを横延伸した2軸性フイルムであって、波長550nmにおけるRe、Rthの値がそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、透湿度が2〜150g/m2・24hである光学補償シートで、ヘイズが小さく優れた透明性と、汚染が極めて少なく優れた面状とを有するセルロースアシレート光学補償シートであることが分かる。
特に、横延伸し2軸性のセルロースアシレートフイルムでは、Reの値が20〜200nmとなり、その透明性と面状が特に優れていることが分かる。
また、本発明の光学補償シートは、本発明−2、3、10にみられるように、セルロースアシレートフイルムのRe値、Rth値の30℃15%RH〜30℃85%RHにおける湿度依存性が、絶対値で各々0.5nm/RH%以下、0.7nm/RH%以下であり、湿度依存性が小さいことが分かる。
【0128】
[実施例2]
上記の内層用ドープDを用い、外層用ドープDを用いずに100μm厚のセルロースアシレートフイルムを上記比較例2と同様に作製した。このフイルムにメタノール/エタノール/酢酸メチルの混合溶液を塗布・掻き取り処理を繰り返し実施して、表面から3μmの深さまでのレターデーション調整剤濃度が、セルロースアシレート100質量部に対して6質量部となるようにした(内部は16質量部である)。これを両面に対して実施し、セルロースアシレートフイルムを作製した(本発明−14)。
この本発明−14のセルロースアシレートフイルムは、実施例1と同様な評価を行ったところ、上記本発明−6や本発明−7と同様に優れたセルロースアシレート光学補償シートであった。
【0129】
[実施例3]
セルロースアシレートフイルムの長さを1000m、幅を0.7mの巻きロール形態で作製する以外は上記本発明−1と同様にセルロースアシレートフイルムを作製した(本発明−15)。実施例1と同様な評価を行ったところ、本発明−1と同様に優れた光学補償シートであった。
【0130】
同様に、セルロースアシレートフイルムの長さを100mとして作製した場合(本発明−16)も、本発明−1と同様に優れたセルロースアシレート光学補償シートが得られた。
但し、この場合、1日の生産量は1400m2と少なかった。
【0131】
[実施例4]
(セルローストリアシレートフイルムの鹸化処理)
実施例1で作製したセルローストリアシレートフイルムのうち、表8に示したフイルム上に、1.0モル/リットルの水酸化カリウム溶液(溶剤:イソプロピルアルコール/プロピレングリコール/水=75/13/12質量%)を#6バーで塗布し、40℃で10秒間加熱した後、濡れたままの塗布面に#1.6バーで水を塗布し、すぐに25℃の洗浄水500cc/m2をノズルから吹き付け、エアナイフでフイルム表面の洗浄水を吹き飛ばす処理を三回連続して行い、100℃の温風で乾燥して、表面が鹸化されたセルローストリアシレートフイルムを作製した(本発明−17〜本発明−22、比較例−4)。
鹸化されたフイルムの諸特性測定結果を表8に示す。
なお、表面特性の表面エネルギーの評価方法は、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989年刊行)に記載の接触角法に準拠した。具体的には、表面エネルギーが既知の2種類の溶媒をセルロースアシレートフイルムに滴下し、液滴表面とフイルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフイルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフイルムの表面エネルギーを算出した。
【0132】
【表8】
【0133】
表8に示すように、作製したセルロースアシレートフイルムは、アルカリ溶液により鹸化処理した場合にも、Re、Rth、透湿性が処理前と同様に良好であり、鹸化処理していないフイルムと同様に優れた透明性と汚染のない優れた面状を有していることが分かった。また、処理後のフイルムの表面エネルギーは58〜68mN/mの範囲にあり、このフイルムを偏光板の透明保護フイルムと用いても、偏光膜との接着力に優れることが確認された。
一方、比較例4は、表面エネルギーは好ましい範囲内に親水化処理されたがRe、Rthが何れも低下し変化した。又、鹸化処理後のフイルムの面状が白濁となる部分が生じ、実用に供し得るものではなかった。
【0134】
[実施例5]
(配向膜の形成)
表9に示した鹸化処理済セルローストリアシレートフイルム(本発明−18、19、21)の片面に、下記処方の配向膜塗布液を、#14のワイヤーバーコーターで塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で160秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状のセルローストリアシレートフイルムを作製した。次に、上述の配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアシレートフイルムの遅相軸方向となす角度が45゜となる方向にラビング処理を実施した。
【0135】
<配向膜塗布液処方>
下記の変性ポリビニルアルコール(化2) 19質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1質量部
【0136】
【化2】
【0137】
(光学異方性層用塗布液の作製)
SUS製のタンク中に、下記の処方の光学異方性層塗布液を調製した。
【0138】
<光学異方性層塗布液処方>
下記ディスコティック液晶性化合物(A) 42質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.92質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.23質量部
光重合開始剤
(イルガキュア−907、チバガイギー社製) 1.40質量部
増感剤 (カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
メチルエチルケトン 101質量部
【0139】
【化3】
【0140】
上述の長尺ロール状セルロースアシレートフイルムの配向膜上に、上記塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の熟成ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性分子を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック液晶性分子を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を有する光学補償シートを作製した(本発明−23、24、25)。
【0141】
(偏光膜の作製)
PVAフイルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフイルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、テンター出口におけるシワ、フイルム変形は観察されなかった。
得られた偏光膜の550nmにおける透過率43.7%、偏光度99.97%であった。
【0142】
(偏光板の作製)
下記処方の低屈折率層塗布液を攪拌、調製し、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後、フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分乾燥後、120℃で10分間加熱してポリマーを架橋させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止フイルムを作製した。
【0143】
<屈折率層塗布液処方>
熱架橋性含フッ素ポリマー 210質量部
(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)
シリカゾル(MEK−ST) 18質量部
(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30wt%、日産化学(株)製)
メチルエチルケトン 200質量部
【0144】
この反射防止フイルムと、上記の通り作製した光学異方性層を有する光学補償シートとを液温度が55℃の1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液中に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸および水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアシレート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光膜の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した(本発明−26〜本発明−28)。
【0145】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔn(波長550nm)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
【0146】
(ベンド配向モード透過型液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、作製した偏光板(反射防止フイルム1、偏光膜2、セルロースアシレートフイルム3、光学異方性層4よりなる)の光学異方性層4上にアクリル系粘着剤をつけ、液晶セルのラビング方向と光学補償シートのラビング方向とが反平行となる様にして貼り合せ、ベンド配向モードの透過型液晶表示装置を作製した(本発明−29〜本発明−31)。
この液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。結果を表9に示した。
【0147】
【表9】
【0148】
表9に示すように、本発明の液晶表示装置は優れた正面コントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
【0149】
[実施例6]
(配向膜の形成)
表10に示した鹸化処理済セルローストリアシレートフイルム(本発明−17、20、22)の片面に、下記内容の配向膜塗布液を、#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状のセルローストリアシレートフイルムを作製した。
【0150】
<配向膜塗布液組成>
下記の変性ポリビニルアルコール(化4) 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0151】
【化4】
【0152】
(配向膜の形成、ラビング処理)
次に、上述の実施例5と同様にして配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアシレートフイルムの遅相軸方向にラビング処理を実施した。
【0153】
この長尺ロール状セルロースアシレートフイルムの配向膜上に、実施例5で用いた光学異方性層用塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の熟成ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性分子を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック液晶性分子を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を有する光学補償シートを作製した(本発明−32、33、34)。
【0154】
(偏光膜の作製)
PVAフイルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフイルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、テンター出口におけるシワ、フイルム変形は観察されなかった。
得られた偏光膜の550nmにおける透過率43.8%、偏光度99.98%であった。
【0155】
(偏光板の作製)
実施例5と同様に低屈折率層塗布液を攪拌、調製し孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後、フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分乾燥後、120℃で10分間加熱してポリマーを架橋させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止フイルムを作製した。
【0156】
この反射防止フイルムと、上記の通り作製した光学異方性層を有する光学補償シートtpを水酸化カリウム1.5規定の水/イソプロピルアルコール(30/70)質量比から成る溶液に35℃で1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸および水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアシレート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光膜の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した(本発明−35〜本発明−37)。
【0157】
(TN型液晶表示装置の作製)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに本発明29の偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるようにアクリル系粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸は直交するように配置し、TN型液晶表示装置を作製した(本発明−38)。
この液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。結果を表10に示した。
また、本発明−36及び本発明−37の偏光板を用いて、同様にTN型液晶表示装置を作製し(本発明−39〜本発明−40)、正面コントラスト比と視野角を調べた。
【0158】
【表10】
【0159】
表10に示したように、本発明の液晶表示装置は優れた正面コントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
【0160】
[実施例7]
【0161】
(偏光板の作製)
フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)と本発明−3の光学補償シートにポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、実施例6記載と同様にして作成した偏光膜の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した(本発明−41)。
【0162】
(VA型液晶表示装置の作製)
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板および一対の光学補償シートを剥がし、代わりに本発明−41の偏光板を、本発明−3の光学補償シートが液晶セル側となるようにアクリル系粘着剤を介して、観察者側に一枚貼り付けた。バックライト側には市販の偏光板(HLC2−5618HCS(株)サンリッツ製)を一枚貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸は直交するように配置し、VA型液晶表示装置を作製した(本発明−42)。
この液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。結果を表11に示した。
【0163】
【表11】
【0164】
表11に示したように、本発明の液晶表示装置は優れた正面コントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
【0165】
[実施例8]
(セルロースアシレートフイルムの作製)
実施例1のレターデーション調整剤溶液において、レターデーション調整剤スミソルブTM165F16質量部の代わりに、下記構造のレターデーション調整剤11.6質量部を用いた他は実施例1と同様にしてドープ液を調製し、セルロースアシレートフイルム[本発明−1]と同様にして膜厚62μmのセルロースアシレートフイルム[本発明−43]を作製した。得られたフイルムのRe(550)は9nm、Rth(550)は65nm、透湿度130g/m2・24hであった。
【0166】
【化5】
【0167】
(フイルムのアルカリ鹸化)
上記のフイルムを温度60℃の誘電式加熱ロール上を通過させ、フイルム表面温度40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−3)をロッドコーターを用いて塗布量12cc/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に12秒滞留させた後に、同じくロッドコーターを用いて純水を8cc/m2塗布した。この時のフイルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥した。
【0168】
<アルカリ溶液(S−3)組成>
水酸化カリウム 8.55質量%
水 23.235質量%
イソプロパノール 54.20質量%
界面活性剤(K):C14H29O(CH2CH2O)20H 1.0質量%
プロピレングリコール 13.0質量%
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製)0.015質量%
【0169】
この表面処理したフィルム上に、下記の組成の配向膜塗布液をロードーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。次に、セルロースアシレートフイルムの長手方向にラビング処理を実施した。
【0170】
<配向膜塗布液>
下記変性ポリビニルアルコール(化6) 20質量%
水 360質量%
メタノール 120質量%
グルタルアルデヒド 0.5質量%
【0171】
【化6】
【0172】
(光学異方性層の形成)
下記構造のディスコティック液晶性化合物(B)41.01kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06kg、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.35kg、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35kg、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45kg、下記構造のフッ素系界面活性剤(F)0.45kgを、102kgのメチルエチルケトンに溶解し、この塗布液を配向膜上に、#3.6のワイヤーバーで連続的に塗布し、130℃の状態で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして光学補償シート(本発明−43)を作製した。
【0173】
【化7】
【0174】
偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償シートのムラを観察したところ、正面、および法線から60°まで傾けた方向から見ても、ムラは検出出来なかった。
得られた光学補償シートを、実施例5において用いた光学補償シート「本発明−23」の代わりに用いた他は実施例5と同様にして偏光板、及び液晶表示装置を作製し、実施例5と同様の性能を評価した。その結果、実施例5と同様の性能結果が得られ、良好なものであった。
【0175】
[実施例9]
実施例1においてレターデーション調整剤溶液のレターデーション調整剤16質量部の代わりに、下記内容の化合物を用いた他は、実施例1の「本発明−1」と同様にして膜厚107μmのセルロースアセテートフイルムを作製した。波長550nmにおけるフイルム厚み方向のレターデーション値(Rth値)は80nm、面内のレターデーション値(Re値)は17nmであった。
【0176】
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン:12質量部
2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン :4質量部
【0177】
得られた光学補償シートを、実施例5において用いた光学補償シート「本発明−23」の代わりに用いた他は実施例5と同様にして偏光板、及び液晶表示装置を作製し、実施例5と同様の性能を評価した。その結果、実施例5と同様の性能結果が得られ、良好なものであった。
【0178】
[実施例10]
実施例5で作製したセルロースアシレートフイルム上に液晶性化合物からなる光学異方性層が積層されてなる本発明−23、24、32、33の光学補償シートの30℃15%RH、30℃50%RH、30℃85%RHにおけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の値をエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定した。Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、光学異方層の面内でレターデーション値が最小となる方向(最小値の方向)と、該光学異方性層の法線とを含む平面内で、法線方向、法線から最小値の方向に50°傾いた方向、それとは逆に法線から50°傾いた方向からそれぞれ測定した該光学補償シートのレターデーション値である。結果を表12に示す。
【0179】
【表12】
【0180】
表12に示すとおり、30℃15%RHから30℃85%RHの間でのレターデーション値の湿度依存性が絶対値で0.3nm/%RH以下であり、湿度依存性が小さいことが分かる。
【0181】
【発明の効果】
本発明によれば、レターデーションの湿度依存性が小さく、レターデーション上昇剤や可塑剤などによる表面汚染や異物を低減され、表示品位が良好で、光学補償能に優れたセルロースアシレートフイルムからなる光学補償フイルムを提供することができる。
また、本発明の光学補償フイルムを、偏光膜の少なくとも一方の保護フイルムとして用いることで、偏光板に光学補償機能を付与することができる。
上記の光学補償フイルムおよび上記の光学補償フイルムを保護フイルムとして用いた偏光板は、OCB(optically compensatory bend)型、HAN(hybrid aligned nematic)型、TN(twisted nematic)型、STN(supper twisted nematic)型、VA(vertical aligned)型、IPS(in−plane switching)型、ECB(electrically controlled birefringence)型、及びFLC(ferroelectric liquid crystal)型のいずれのモードの液晶表示装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5で使用のベンド配向モードの透過型液晶表示装置の断面概略図を示す。
【符号の説明】
1 反射防止フィルム
2 偏光素子(PVA/I2)
3 透明支持体
4 光学異方性層
5 ベンド配向液晶セル(OCBモード)
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置用として好適な、耐湿性に優れた光学補償シートおよびその製造方法に関する。さらには、この光学補償シートを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフイルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。例えば、セルロースアシレートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアシレートフイルムは、液晶表示装置にも用いられている。
セルロースアシレートフイルムは、他のポリマーフイルムと比較して、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)との特徴がある。従って、これまで光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板の保護フイルムなどに、セルロースアシレートフイルムが用いられるが多かった。
液晶表示装置の光学補償シート(位相差フイルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。従って、光学補償シートとしては、ポリカーボネートフイルムやポリスルホンフイルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフイルムを用いられることが多かった。
以上のように光学材料の技術分野では、ポリマーフイルムに光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される場合には合成ポリマーフイルムを使用し、光学的等方性(低いレターデーション値)が要求される場合にはセルロースアシレートフイルムを使用することが一般的であった。
【0003】
ところが、従来の一般的な原則を覆して、光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアシレートフイルムが開示され(例えば、特許文献1参照)、セルロースアシレートフイルムの用途が広がり、液晶表示装置にも用いられるようになった。
近年、液晶表示装置の軽量化、薄層化が強く望まれ、液晶表示装置に用いられるようになったセルロースアシレートフイルムにおいても薄層化が望まれ、該セルロースアシレートフイルムを用いて薄いながらもこれまでと同様のレターデーション値やその他の特性を有する光学フイルムが望まれている。
例えば、偏光板の耐久性に関して、特許文献2にはポリマーフイルム(セルロースアシレートフイルム)の透湿度を制御した光学補償シートを偏光膜保護フイルムとして用いることで偏光板の耐久性を高める技術が開示されている。しかし、このセルロースアシレートフイルムは特に高温高湿の下で、長時間曝されると透明性が劣化してくる傾向があり、これは、可塑剤などの添加剤が水蒸気の出入りに伴いフイルム表面に析出するためと考えられている。また、外気の温湿度が大きく変化した時には、レターデーション値が変化する問題が生じることがあり、透湿度が低く、かつレターデーション値など光学特性の湿度依存性の小さいフイルムが望まれる。
【0004】
【特許文献1】
欧州特許0911656A2号明細書
【特許文献2】
特開2002−14230号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、セルロースアシレートフイルムを用い、透湿度が低く、光学特性の湿度依存性が小さく、透明で光学補償能に優れた光学補償シートを提供することである。また、本発明の他の目的は、長尺フイルムの製造においても、異物発生の軽減された生産性良好な光学補償シートを提供することである。さらに、本発明の他の目的は、セルロースアシレートフイルムを用い、透湿度が低く、光学特性の湿度依存性が小さく、透明で光学補償能に優れた光学補償シートの製造方法を提供することである。さらにまた、本発明の他の目的は、この光学補償シートを用いた偏光板、液晶表示装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記(1)〜(15)の光学補償シート、下記(16)の偏光板、下記(17)、(18)の液晶表示装置および下記(19)の光学補償シートの製造方法により達成される。
【0007】
(1)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該セルロースアシレートフイルムの該芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部の方が高く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hである、
ことを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0008】
(2)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有する2軸性セルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該セルロースアシレートフイルムの該芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部の方が高く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hである、
ことを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0009】
(3)該セルロースアシレートフイルムが少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムから成ることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0010】
(4)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0011】
(5)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、横延伸して得られる2軸性のセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0012】
(6)セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値の、30℃15%RHから30℃85%RHの範囲における湿度依存性が、絶対値で各々、0.5nm/%RH以下、0.7nm/%RH以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0013】
(7)該セルロースアシレートフイルムの30℃85%RH雰囲気下での含水量が、0.3〜12g/m2であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学補償シート。
(8)該セルロースアシレートフイルムが、長さが100〜5000m、幅が0.7m以上の長尺フイルムであって、該セルロースアシレートフイルムの30℃85%RH雰囲気下での引き裂き強度が3〜50gであり、かつ30℃85%RH雰囲気下での引掻き強度が2〜30gであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の光学補償シート。
(9)該セルロースアシレートフィルムの膜厚が20〜100μmであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0014】
(10)該セルロースアシレートフィルム上に配向膜を有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の光学補償シート。
(11)該セルロースアシレートフィルムが表面処理を施され、表面処理後の該セルロースアシレートフイルムの表面エネルギーが55〜75mN/mであることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の光学補償シート。
(12)該表面処理が、アルカリ性処理液による鹸化処理であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0015】
(13)セルロースアシレートフイルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層が積層されてなり、
30℃50%RHにおけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の値がそれぞれ35±30nm、40±35nm、110±85nmの範囲にあり、30℃15%RHから30℃85%RHの範囲におけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の湿度依存性が、絶対値で全て0.5nm/%RH以下であることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の光学補償シート。
ここで、Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、光学異方層の面内でレターデーション値が最小となる方向(最小値の方向)と、該光学異方性層の法線とを含む平面内で、法線方向、法線から最小値の方向に50°傾いた方向、それとは逆に法線から50°傾いた方向からそれぞれ測定した該光学補償シートのレターデーション値を表す。
【0016】
(14)該光学異方層が、円盤状液晶性化合物(ディスコティック液晶)の配向が固定されてなることを特徴とする上記(13)に記載の光学補償シート。
(15)該光学異方層に用いる液晶性化合物が円盤状液晶性化合物であり、該円盤状構造単位の面が、セルロースアシレートフイルム表面に対して傾き、かつ円盤状構造単位の面とセルロースアシレートフイルム表面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向に変化していることを特徴とする上記(13)または(14)のいずれかに記載の光学補償シート。
【0017】
(16)偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護フイルムからなる偏光板であって、該透明保護フイルムの少なくとも一方が上記(1)〜(15)のいずれかに記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板。
【0018】
(17)液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板を含み、該偏光板が偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護フイルムからなる液晶表示装置であって、該偏光板が、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の光学補償シートを透明保護フイルムとして有する偏光板、または上記(16)に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
(18)該液晶セルが、TNモード、OCBモード、VAモード、またはMVAモードの液晶セルであることを特徴とする(17)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(19)少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートの製造方法において、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シートの製造方法。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
【0020】
本発明は、光学補償シートのセルロースアシレート基体(フイルム)に含有させる2つの芳香族環を有する特定の芳香族化合物の含有量をフイルム表面近傍で少なくし、フイルム深さ方向でその存在量を変えたことを特徴とする。本発明者らは、これにより、セルロースアシレートフイルムの透湿性を低く抑え、かつ光学補償シートとしてのレターデーションの湿度依存性を小さくできることを見出した。このことは、所望のレターデーション値を保持しながら、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物のセルロースアシレートフイルム内部での濃度を高濃度化することにより、フイルム内部の疎水的雰囲気が高まり耐透湿性が改善され、且つフイルム表面近傍では該芳香族化合物が低濃度なので該芳香族化合物の泣き出しが抑えられ、高湿度条件下での変化抑制等を可能にしたと思われる。更には、セルロースアシレート基体(フイルム)をアルカリ鹸化処理でフイルム表面を親水化して配向膜を塗設しその上に光学異方層を設けてなる光学補償シートにおいては、鹸化処理工程でのアルカリ溶液への溶出が軽減若しくは解消されて、光学特性が安定し、且つ視覚的異物欠陥の見られない光学補償シートが得られ、特に長尺品を安定に生産性良く製造できる。
該芳香族化合物は、レターデーション調整剤として主に用いられるのが好ましい。また、必要に応じて添加される可塑剤についても、同様に、その含有量をフイルム表面近傍で少なくしフイルム深さ方向でその存在量を変えると、より本発明の効果が大きい。
【0021】
尚、本発明で「フイルム表面近傍」とは、フイルム最表面からフイルム厚みに対して25%程度の深さまでの部分を言い、「フイルム内部」とはこのフイルム表面近傍を除いたフイルム内側部分を言う。本発明のセルロースアシレートフイルムは、後述する積層流延法により製膜した後、延伸して製造することが好ましいが、この積層流延法により製膜する場合、「フイルム表面近傍」とは最外層の部分に相当する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[セルロースアシレートフイルム]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて以下に記す。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケフナー、木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンター、ケフナー、パルプを精製して用いられる。
【0023】
本発明において、セルロースアシレートとは、セルロースの脂肪酸エステルのことであるが、特に、低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数に関しては、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアシレートとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましい。
【0024】
一般に、セルロースアセテートの2,3,6位の水酸基がそれぞれアシル基に置換される割合(置換度;各位それぞれ100%置換された場合は置換度1)は、全体の置換度(各位の置換度の総和)の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアセテートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して、6位の水酸基の置換度が30%以上40%以下占めていることが好ましく、更には31%以上、特に32%以上であることが好ましい。さらにセルロースアセテートの6位水酸基の置換度が0.88以上であることが好ましい。
6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
【0025】
セルロースアセテートとしては、酢化度が54.0〜62.5%であるセルロースアセテートを用いることが好ましい。より好ましくは57.0〜62.0%である。また、混合脂肪酸セルロースエステルの場合にはアシレートのアシル基の種類及びその割合に応じて、上記の酢化度の範囲内で調節するこが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
また、セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、セルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜2.5であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
【0026】
[レターデーション調整剤]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムは、溶液の紫外線吸収スペクトルの吸収極大を与える波長(λmax)が400nmより短波長にある紫外線を吸収する化合物をレターデーション調整剤として含有することが好ましい。このような化合物の例として、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾトシアゾール類、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤を挙げることができる。また、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物、トリフェニレン化合物、円盤状化合物(1,3,5−トリアジン骨格、ポルフィリン骨格を分子に含有の化合物等)等が好ましい。これらの化合物類は、可視光領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0027】
[少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムは、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物(以下、「本発明の芳香族化合物」とも言う)を少なくとも1種を含有する。本発明の芳香族化合物は、レターデーション調整剤として含有することが好ましい。
本発明の芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環でもかまわない。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0028】
本発明の芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましい。3以上の芳香族環を有する場合、少なくとも二つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければよい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。レターデーション上昇機能の観点では、(a)〜(c)のいずれでもよい。具体的には、特開2002−131537号公報明細書段落番号[0016]〜[0023]記載の内容のものが挙げられる。更に、上記(b)または(c)の場合は、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しないことが好ましい。
【0029】
本発明の芳香族化合物としては、特開2002−363343号公報明細書の段落番号[0011]〜[0031]記載されると同一内容の直線的な分子構造を有する棒状化合物、特開2000−111914号公報明細書の段落番号[0011]〜[0085]記載されると同一内容の立体障害しない立体配座となっている二つの芳香族環を含有する化合物、少なくとも1つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物またはポルフィリン骨格を有する化合物(特開2001−166144号公報記載の化合物)が挙げられる。
特に、少なくとも一つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物が好ましい(該トリアジン環がもう一つの芳香環となる)。具体的には、特開2001−166144号公報明細書の段落番号[0016]に記載の一般式(I)記載の1,3,5−トリアジン化合物が挙げられる。
本発明の芳香族化合物の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0030】
本発明の芳香族化合物の含有量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、レターデーション調整剤として用いる場合には所望のレターデーションに調整するためにレターデーション調整用化合物の種類に応じた使用量を選択するのが好ましい。また、フィルムを作製するときにフィルム形成用組成物中での溶解性、製膜時での不溶化や析出等の問題を生じさせないことから、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜25質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0031】
[セルロースアシレート可塑剤]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムにはフイルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、従来公知の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類(カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、クオキシカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸等)、芳香族カルボン酸(フタル酸等)等が挙げられ、発明協会公開技法(公技2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)16頁に記載の化合物等が挙げられる。また、アルカンポリオールとカルボン酸とのエステル化化合物(特開平11−124445号公報、特開2001−247717号公報等)等も好ましい。
本発明では、後ほど記載する積層流延法よってセルロースアシレートフイルムを作製する際に、可塑剤の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して、内部層では5〜30質量部とすることが好ましく、10〜28質量部とすることがより好ましく、15〜25質量部とすることが最も好ましい。最外層の添加量は内部層よりも低いことが好ましく、2〜15質量部とすることが好ましく、3〜10質量部とすることがより好ましい。最外層の添加量が15質量部を超えると可塑剤によっては析出が生じ、異物欠陥となる可能性が高くなる。
【0032】
[セルロースアシレートの他の添加剤]
本発明に用いられるセルロースアシレートフイルムには、用途に応じて他の種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、帯電防止剤、赤外吸収剤など)を加えることができる。前記の公技番号 2001−1745の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレートフィルム中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
後述のソルベントキャスト方法での製膜では、その添加する時期はでのドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されており、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、前記の公技番号
2001−1745の22頁〜25頁に詳細に記載されている。
【0033】
[セルロースアシレートフイルムの製造方法]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムは、フイルム内部と表面近傍とで本発明の芳香族化合物含有濃度が異なるものであり、表面近傍より内部の方が高いことを特徴とする。
【0034】
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの製造方法は、どのような方法を用いても構わないが、後に示す積層流延法を用いることができる。また、この方法によらずとも、製膜・乾燥後あるいは乾燥途中に、レターデーション調整剤を溶解するあるいは、溶解性に乏しい溶剤を塗布することにより表面近傍のレターデーション調整剤含有濃度を低下させることができる。または、製膜・乾燥後または乾燥途中に、レターデーション調整剤を低濃度で含有するセルロースアシレート溶液を塗布することにより表面近傍のレターデーション調整剤含有濃度を低下させたものを得ることができる。
本発明は上記のレターデーション調整剤が本発明の芳香族化合物であることが好ましい。
【0035】
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましく、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムは製造される。
ドープ溶液に用いる有機溶媒としては、従来公知の溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3〜12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物に対する上記規定範囲内であればよい。
具体的には、例えば前記の公技番号2001−1745の12頁〜16頁に詳細の化合物が挙げられる。
【0036】
特に、本発明では、溶媒は2種類以上の有機溶媒を混合して用いることが好ましく、特に好ましい有機溶媒は、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数が3〜4のケトンおよび炭素原子数が3〜4のエステルまたはその混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が5〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として沸点が30〜170℃のアルコールまたは沸点が30〜170℃の炭化水素から選ばれる。
特に、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることが、セルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
【0037】
また、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系が特に好ましい。具体的には、例えば特開2002−146043号明細書の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号明細書の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
【0038】
本発明に用いるドープには、上記有機溶媒以外に、フルオロアルコールやメチレンクロライドを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有させることもフイルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。フルオロアルコールとしては沸点が165℃以下のものがよく、好ましくは111℃以下がよく、更に80℃以下が好ましい。フルオロアルコールは炭素原子数が2から10程度、好ましくは2から8程度のものがよい。また、フルオロアルコールはフッ素原子含有脂肪族アルコールで、置換基があってもなくてもよい。置換基としてはフッ素原子含有或いはなしの脂肪族置換基、芳香族置換基などがよい。
このようなフルオロアルコールは例えば、特開平8−143709号公報明細書中の段落番号[0020]、同11−60807号公報明細書中の段落番号[0037]等に記載の化合物が挙げられる。これらのフルオロアルコールは一種又は二種以上使用してもよい。
【0039】
セルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させてもよい。セルローストリアセテート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10ps・s〜2000ps・sの範囲に調製されることが好ましく、特に30ps・s〜400ps・sが好ましい。
本発明において、セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。さらにセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮とろ過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0040】
次に、本発明において、セルロースアシレート溶液(ドープ)を用いたフイルムの製造方法について述べる。セルロースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、セルローストリアセテートフイルム製造に供するドラム方法またはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法(ソルベントキャスト法)及び溶液流延製膜装置を用いることができる。
バンド法を例として製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープを貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類)については、前記の公技番号2001−1745の25頁〜30頁に詳細に記載された内容が挙げられる。
【0041】
[積層フイルム]
本発明のセルロースアシレートフイルムは、共流延法または逐次流延法により2層以上の複数のドープ溶液を積層させる、いわゆる積層流延法によりレターデーション調整剤量がフィルム内部で多く且つ表層部で少なくなるように積層して製造することが好ましい。セルロースアシレートフイルムは2層以上、10層以下の積層流延層から構成されていることが好ましい。
【0042】
少なくとも1つの内部層において、本発明の芳香族化合物の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、1〜30質量部である。3〜25質量部とすることがより好ましく、5〜20質量部とすることが特に好ましい。一方、最外層の添加量は少なくとも1つの内部層よりも低く、0.01〜10質量部である。0.1〜8質量部とすることがより好ましく、0.3〜5質量部とすることが特に好ましい。いかなる場合でも本発明においては最外層ドープでの濃度の方が少なくとも1つの内部層ドープでの濃度より低くなるようにする。これにより、得られるフイルムにおいて、長時間経時後や高温高湿下でのフイルム表面へ本発明の芳香族化合物が析出することを抑えることができ、透明性の劣化や異物欠陥の原因となるのを防ぐことができる。
【0043】
内層と外層のセルロースアシレートエステルの種類は同じであっても構わないし、異なっていても構わない。最外層の厚みは0.2乃至50μmが好ましく、0.5乃至20μmが更に好ましく、0.5乃至5μmが特に好ましい。流延するための装置は、共流延の場合は、内部合流ダイ、先端合流ダイ等があり、逐次流延の場合は、エクストルージョンダイ等がある。
【0044】
積層流延するには、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からドープ溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号などに記載の方法を用いることができる。また、2つ以上の流延口からドープ溶液を流延することによってフイルム化してもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号に記載の方法を用いることができる。
【0045】
または2個の流延口を用いて、第1の流延口により支持体に成型したフイルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第2の流延を行うことにより、フイルムを作製してもよく、例えば特公昭44−20235号に記載されている方法を用いることができる。本発明のセルロースアシレートフイルムを製造する際には、本発明の芳香族化合物のように、流延するドープ溶液では前記したように最外層にあたる層の添加剤量を内部のそれよりも低くすることができる。本発明の芳香族化合物以外にも前記したように可塑剤の量を低くして用いることが好ましい。
さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)を同時に流延することもできる。
【0046】
[二軸延伸処理]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの製造において、延伸処理は積層流延、乾燥、巻き取りの際に流延方向に延伸されることに加えて、流延方向とは垂直に延伸(横延伸)して二軸延伸フイルムとすることにより行なうことができる。延伸は破断伸度の10%〜90%の範囲で行うことが好ましく、20%〜85%で行うことがより好ましく、30%〜80%で行うことが特に好ましい。90%を超えると破断前に発生するクラックのためにヘイズが上昇し、10%に満たないと効果がない。延伸によりセルロースアシレート分子のフイルム面内での配向が進み、Re値、Rth値を増大させることができる。
【0047】
セルロースアシレートフイルムの膜厚は20〜100μmの範囲にあることが好ましく、20〜80μmの範囲にあることが更に好ましく、30〜70μmの範囲にあることが最も好ましい。光学補償シート、偏光板および液晶表示装置を薄く軽量化するためや透過率を高めるなどの光学特性が好ましい。20μm未満では長尺で幅広な支持体をハンドリングすることが難しく好ましくない。
長尺・幅広な形態であることは生産性を高め、安価に本製品を提供するために好ましい。長尺ロールの長さは100〜5000mであることが好ましく、500〜4500mであることがより好ましく、1000〜4000mであることが特に好ましい。長尺ロールの幅は広いほど好ましく、0.7m以上であることが好ましい。0.7〜3mであることがより好ましく、1〜2.5mであることが特に好ましい。
【0048】
[セルロースアシレートフイルムの光学特性]
本発明のセルロースアシレートフイルムの光透過率は80%以上、ヘイズは3%以下であることが好ましい。
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムは、下記の式(I)、(II)で定義されるRe、Rthの値がそれぞれ波長550nmに対して2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、光学異方性を示す。Re、Rthの値はそれぞれ波長550nmに対して2〜200nm、70〜380nmの範囲にあることがより好ましい。
【0049】
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
【0050】
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]。
【0051】
なお、セルロースアシレートフイルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、波長550nmに対して0.000025〜0.0088であることが好ましく、より好ましくは0.0003〜0.005である。又、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、波長550nmに対して0.0006〜0.01であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.007である。
【0052】
また、Re値及びRth値の15℃から40℃における、15%RHから85%RHでの湿度依存性が小さいほど好ましく、絶対値で各々、0.8nm/%RH以下、1nm/%RH以下であることが好ましい。特に、30℃15%RHから30℃85%RHの間での湿度依存性は、絶対値で各々、0.5nm/%RH以下、0.7nm/%RH以下であることが好ましい。なお、ここで言う「湿度依存性」とは、本発明においては、定温湿度係数を意味する。
【0053】
[セルロースアシレートフイルムの遅相軸角度]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの面内における遅相軸の角度は、フイルムの延伸方向を基準線(0°)とし、遅相軸と基準線のなす角度で定義する。ここで、ロール形態のフイルムを幅方向に延伸する時は幅方向を基準線とし、長手方向に延伸する時は長手方向を基準線とする。
遅相軸角度の平均値は3°以下であることが好ましく、2°以下であることがさらに好ましく、1°以下であることが最も好ましい。遅相軸角度の平均値の方向を遅相軸の平均方向と定義する。
また、遅相軸角度の標準偏差は1.5°以下であることが好ましく、0.8°以下であることがさら好ましく、0.4°以下であることが最も好ましい。
【0054】
[セルロースアシレートフイルムの透湿度]
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフイルムの透湿度は、JIS規格JIS Z0208、B条件(温度40℃、湿度90%RH)において、2〜150g/m2・24hである。10〜120g/m2・24hであることがより好ましく、10〜100g/m2・24hであることが特に好ましい。150g/m2・24hを越えると、Re値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなり、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.7nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、セルロースアシレートフイルムに光学異方性層を積層させた光学補償シートとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフイルムの透湿度が2g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフイルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
【0055】
[セルロースアシレートフイルムの含水量]
本発明の光学補償シートを構成するセルロースアシレートフイルムの含水量は、偏光板と組み合わせて用いる場合にポリビニルアルコール(偏光膜)などの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、30℃85%RH下で0.3〜12g/m2であることが好ましい。0.5〜5g/m2であることがより好ましい。12g/m2より大きいとレターデーションの湿度変化による依存性も大きくなりすぎてしまい好ましくない。
【0056】
[セルロースアシレートフイルムの機械的特性]
セルロースアシレートフイルムの引き裂き強度は、本発明の光学補償シートを偏光板保護膜として用いる場合に優れたリワーク性を発現させるためやフイルム製造時に高速でのハンドリング性を損なわないために、30℃85%RHにおいて3〜50gであることが好ましい。
【0057】
セルロースアシレートフイルムの引掻き強度は、フイルム製造の際、ゴミの発生や高速でのハンドリング時に発生する微細傷を発生させないために、30℃85%RHにおいて2〜30gであることが好ましい。5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。フイルム内部と表面近傍とで本発明の芳香族化合物や可塑剤などの含有濃度を変え、表面近傍の濃度を内部より低くすることによりフイルム表面の強度の低下を防ぎ、引掻き強度を高めることができる。引掻き強度は円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mmのサファイヤ針を用いて支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
【0058】
[セルロースアシレートフイルム表面の密着性付与の方法]
セルロースアシレートフイルムは、配向膜を塗布方式で設ける場合には、該セルロースアシレートフイルム表面に密着性を付与し、配向膜用塗布液が均一に塗工されるように表面処理を施すことが好ましい。
表面処理の方法としては、まず配向膜の下塗り層を設ける方法が挙げられる。特開平7−333433号公報記載の下塗り層、または疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を一層のみ塗布する単層法第1層として高分子フイルムによく密着する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第2層と略す)を塗布する所謂重層法(例えば、特開平11−248940号公報記載)の内容内容が挙げられる。
他方、セルロースアシレートフイルムの表面を直接処理として表面を親水性に改質する方法も用いられる。例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、オゾン処理、酸処理、アルカリ処理等で該フィルム表面を改質する方法が挙げられる。これらについては、詳細が前記の公技番号 2001−1745の30頁〜32頁に詳細に記載されている。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフイルムの表面処理が、簡易な処理装置で迅速にケン化処理できることから極めて有効である。
【0059】
表面処理後のフイルムの表面エネルギーは55〜75mN/mの範囲が好ましい。この範囲において、該フィルム上に塗設する配向膜が均一に塗布され、且つ密着も充分に保持される。
【0060】
[アルカリ鹸化方法]
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.3〜2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液は、水のほか、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)や低級グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール)等を含有することが好ましい。これにより、フイルム表面へのアルカリ溶液の濡れ性を向上させ、鹸化反応がフイルム面全面で均一に且つ速やかに進行させることができる。
【0061】
アルカリ溶液を用いたセルロースアシレートフイルムの表面処理方法は、浸漬、塗布、吹き付け等従来公知のいずれの方法でもよい。特に、フイルムの片面のみをムラ無く均一に鹸化処理する場合は、塗布方式が好ましい。塗布の方法としては、従来公知の塗布方法[例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター、ブレードコーター等]が好ましく利用できる。
【0062】
鹸化処理は、処理するフイルムの変形、処理液の変質等が生じない温度120℃を越えない範囲の処理温度で行うことが好ましい。更に温度10℃以上であり100℃以下の範囲が好ましい。特に、温度20〜80度が好ましい。また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液、処理温度により適宜調整して決定するが、1秒から60秒の範囲で行われるのが好ましい。
更に、セルロースアシレートフイルムをその表面が少なくとも10℃以上の温度でアルカリ溶液で鹸化処理する工程、セルロースアシレートフイルムの温度を少なくとも10℃以上に維持する工程、そして、アルカリ溶液をセルロースアシレートフイルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
【0063】
セルロースアシレートフイルムをその表面が所定の温度でアルカリ溶液で鹸化処理には、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、またはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和し水洗等でフイルム表面からアルカリ溶液及び鹸化処理反応物とを洗浄し除去することが好ましい。具体的には、例えばWO02/46809号公報等に記載の内容が挙げられる。
【0064】
本発明のセルロースアシレートフイルムを用いたアルカリ鹸化処理による表面改質は、本発明の芳香族化合物のフイルム表面近傍での析出が解消され、且つフイルムからの析出を著しく軽減若しくは解消し、異物欠陥や濁り発生等のない優れた光学的な透明性及び後述する光学異方特性の変化を抑止できる点で好ましい。
【0065】
[光学補償シート]
本発明の光学補償シートとしては、セルロースアシレートフイルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層を積層させたものも好ましい。
【0066】
[配向膜]
この場合、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に水平に配向させるために配向膜を光学異方性層の下層に設けることが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。有機化合物(好ましくはポリマー)塗布液を塗布して形成される配向膜が好ましい。配向膜の膜自身の強度、下層または上層となる光学異方性層との密着性の観点から硬化されたポリマー膜であることが好ましい。配向規定の方法としては、従来公知のラビング、磁場或は電場の付与、光照射等が挙げられる。本発明に供される配向膜は、液晶セルの表示モードの種類に応じることができる。
【0067】
有機ポリマー膜の種類については、その用途、例えば適用する液晶表示装置の様々な表示モードに対応して、適宜選択することができる。例えば、ディスコティック液晶性化合物を用いた光学補償シートについての下記文献に記載があり、それらを用いることができる。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例は、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載の化合物が挙げられる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70乃至100%が好ましく、80乃至100%がさらに好ましく、85乃至95%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100乃至3000であることが好ましい。
【0068】
変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−56310号公報明細書中の段落番号[0074]、同2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[022]に記載のもの等が挙げられる。
【0069】
また、配向を光照射で行う場合には、光配向機能を発現する光配向性基を分子内に有することが好ましい。これらの光配向性基としては、例えば、長谷川雅樹著書の「液晶、第3巻(1)3〜16頁(1999)」記載のもの、C=C結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、シンナモイル基、ヘミチオインジゴ基、カルコン基等)、C=O結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基等の構造を有する基等)が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−122069号公報、同2002−317013号公報明細書段落番号[0021]等記載のものが挙げられる。
【0070】
ポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコール)の架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0071】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1乃至20質量%が好ましく、0.5乃至15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で架橋剤が残存していると、充分な耐久性が得られない。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にレチキュレーションが発生することがある。
【0072】
配向膜は、基本的に、配向膜形成用組成物である前記ポリマー、架橋剤を含む塗布液をセルロースアシレートフイルム上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、配向処理することにより形成することができる硬化膜である。架橋反応は、前記のように、セルロースアシレートフイルム上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成用組成物として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0073】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、温度が20℃〜110℃、乾燥時間は1分〜36時間の範囲で行なうことができる。
【0074】
配向膜は上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面を従来公知の配向処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0075】
[光学補償シートの特性]
セルロースアシレートフイルム上に液晶化合物からなる光学異方性層が積層されてなる光学補償シートの光学特性は、30℃50%RHにおいてRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の値が、それぞれ35±30nm、40±35nm、110±85nmの範囲にあることが好ましい。ここで、Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、光学異方層の面内でレターデーション値が最小となる方向(最小値の方向)と、該光学異方性層の法線とを含む平面内で、法線方向、法線から最小値の方向に50°傾いた方向、それとは逆に法線から50°傾いた方向からそれぞれ測定した該光学補償シートのレターデーション値を表す。Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、公知のエリプソメーターで測定することができる。
【0076】
また、Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)値の15℃から40℃における、15%RHから85%RHでの湿度依存性は小さいほど好ましく、いずれも絶対値で、0.6nm/%RH以下であることが好ましい。特に、30℃15%RHから30℃85%RHの間での湿度依存性は、絶対値で全て0.5nm/%RH以下であることがより好ましく、0.3nm/%RH以下であることが特に好ましい。
【0077】
なお、セルロースアシレートフイルム上に液晶化合物からなる光学異方性層が積層されてなる光学補償シートは、どの方向からレターデーション値を測定しても、0となる方向は存在しない。
【0078】
[光学異方性層]
本発明の光学補償シートにおいては、液晶性化合物の配向を固定した光学異方性層を有することが、液晶表示装置に用いる際により優れた視野角拡大等の効果を持たせる点から好ましい。
光学異方性層を有する光学補償シートはベンド配向、ハイブリッド配向などを示すネマチック液晶からなる液晶セルの複屈折をキャンセルするために好ましく用いられ、構成、原理については、特許第3118197号公報などに詳細が示されている。
【0079】
光学異方性層を有する光学補償シートは、液晶セルに起因する複屈折をキャンセルするため、液晶セル内のネマチック液晶のラビング方向と、光学補償シートの、光学異方性層のレターデーションが最小値となる方向をシート面上へ正射影した方向とを平行にすることが好ましい。
【0080】
液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物や円盤状(ディスコティック)液晶性化合物を用いることができる。
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。これら低分子液晶化合物は重合性基を分子内に有することが好ましい(例えば、特開2000−304932号公報明細書段落番号[0016]等記載)。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。高分子液晶性化合物は、以上のような低分子液晶性化合物に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性化合物を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報に記載がある。
【0081】
液晶性化合物としては、円盤状液晶性化合物が好ましい。さらに、円盤状液晶性化合物の円盤状構造単位の面が、セルロースアシレートフイルム表面に対して傾き、かつ円盤状構造単位の面とセルロースアシレートフイルム表面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向に変化していることが好ましい。このような光学異方性層は、セルロースアシレートフイルム上に配向膜を設け、その上に液晶性化合物からなる層を積層させ、円盤状液晶性化合物を例えば重合させるなどして、液晶性分子の配向を固定することで形成することができる。
【0082】
円盤状液晶性化合物(ディスコティック液晶性化合物)は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol.71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合するディスコティック液晶性化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。重合性基は、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基から選ばれる重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和重合性基(アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基等)、エポキシ基であることが最も好ましい。
例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
【0083】
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記連結基に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学的異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
【0084】
二種類以上のディスコティック液晶性化合物を併用してもよい。例えば、以上述べたような重合性ディスコティック液晶性化合物と非重合性ディスコティック液晶性化合物とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性化合物は、重合性ディスコティック液晶性化合物の重合性基を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性化合物としては、例えば特許第2640083号公報記載の化合物等が挙げられる。
【0085】
「光学異方性層の他の添加剤」
光学異方性層には、上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの添加剤は、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角(例えば、円盤状液晶性化合物の場合、円盤状構造単位の面のフイルム表面からの傾斜角)の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
【0086】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0087】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0088】
円盤状液晶性化合物とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0089】
光学的異方性層は、液晶性化合物、さらに下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成する。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0090】
[液晶性分子の配向状態の固定]
液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子の配向が固定されていることが最も好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0091】
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20〜5000mJ/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射による光ラジカル重合の場合は空気又は不活性気体中で行うことができ、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のためにできるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。
【0092】
光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがさらに好ましい。0.5乃至5μmであることがさらに好ましい。但し、液晶セルのモードによっては、高い光学的異方性を得るために、光学的異方性層を厚く(3〜10μm)する場合がある。
【0093】
光学的異方性層内での液晶性分子の配向状態は、前述したように、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定される。液晶性分子の配向状態は、具体的には、液晶性分子の種類、配向膜の種類および光学異方性層内の添加剤(例、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御される。
【0094】
[光学補償シートの表面処理]
本発明では、光学補償シートの偏光膜側の面を表面処理することにより、光学補償シートと偏光膜との接着を改善する。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理又はアルカリ処理を実施する。
コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理等の処理方法は、例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、30頁〜31頁に記載の内容が挙げられる。本発明は、アルカリ処理することが好ましく、前記したセルロースアシレートフイルムの鹸化処理で記載したのと同様の内容のものが挙げられる。
【0095】
[偏光板の透明保護膜]
偏光板の透明保護膜としては、ポリマーフイルムが用いられる。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフイルム、好ましくはセルロースアセテートフイルムが用いられる。透明保護膜として用いるセルロースエステルフイルムは、前記のセルロースアシレートフイルムの製造方法についての説明で記載したソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがさらに好ましい。特に好ましくは30〜80μmである。
【0096】
[偏光膜]
本発明の偏光板に用いられる偏光膜は、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜などを用いることができる。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造される。
【0097】
偏光膜としては、いかなる製法の偏光膜をも適用することができる。例えば、ポリビニルアルコール系フイルムを連続的に供給し、その両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸する際に、フイルムの一方端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L1と、もう一端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L2が、左右の実質保持解除点の距離Wに対し、下記式(2)の関係にあると共に、左右の実質保持開始点を結ぶ直線は、保持工程に導入されるフイルムの中心線と略直交するものとし、左右の実質保持解除点を結ぶ直線は、次工程に送り出されるフイルムの中心線と略直交するようにして延伸したものであってもよい(米国特許公開2002−8840A1参照。)
【0098】
式(2) |L2−L1|>0.4W
【0099】
偏光膜は機械的強度が弱く、また吸湿性を有するなどの特性を持つため保護能を有するフイルムで保護して偏光板を得ることができる。偏光膜の保護フイルムとしては、通常は光学的に透明で複屈折の小さいフイルムが好ましく、セルローストリアセテートなどが用いられるが、偏光板に光学補償機能を持たせたい場合などは本発明のセルロースアシレート光学補償シートを、保護フイルムを兼ねるフイルムとして用いることができる。
【0100】
[偏光板]
本発明では、偏光膜の保護フイルムとして本発明のセルロースアシレート光学補償シートを用い偏光板を得ることができる。保護フイルムの遅相軸と偏光膜の透過軸のなす角度は3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することがさらに好ましく、1°以下になるように配置することが最も好ましい。
保護フイルムとしては、他にもハードコート層付基材フイルムや機能性薄膜付フイルムなどを併用することもできる。例えば、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
【0101】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、印加電圧が低い時に明表示、高い時に暗表示であるノーマリーホワイトモードでも、印加電圧が低い時に暗表示、高い時に明表示であるノーマリーブラックモードでも用いることができる。
本発明では、透過型、反射型および半透過型液晶表示装置の駆動方式については単純マトリックス方式よりも、アクティブマトリックス方式が好ましく、TFT(Thin Film Transistor)、TFD(Thin Film Diode)またはMIM(MetalInsulator Metal)を使うことがより好ましい。TFTについては低温ポリシリコンまたは連続粒界シリコンを使うことがより好ましい。
詳細については、「液晶デバイスハンドブック」日本学術振興会第142委員会編,日刊工業新聞社、「液晶 応用編」岡野光治他,培風館、「カラー液晶ディスプレイ」小林俊介他,産業図書、「次世代液晶ディスプレイ技術」内田龍男,工業調査会、「液晶ディスプレイの最先端」液晶若手研究会編,シグマ出版、「液晶:LCDの基礎と新しい応用」液晶若手研究会編,シグマ出版等に記載されている。
【0102】
本発明の液晶表示装置には、例えばTNモード、STNモード、ECBモード、OCBモード、HANモード、VAモード、MVAモード、ホモジニアス配向モード等各種のモードの液晶セルを用いることができる。なかでもTNモード、OCBモード、HANモード、VAモード、MVAモードまたはホモジニアス配向モード等のECBモードの液晶セルが好ましい。液晶セルについては、「‘99PDP/LCD構成材料・ケミカルスの市場」1999年7月30日,シーエムシー、「EL,PDP,LCDディスプレイ技術と市場の最新動向―」2001年3月,東レリサーチセンター等に記載されている。
【0103】
液晶モードについて、以下でさらに説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0104】
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0105】
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−76625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0106】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
[実施例1]
(セルロースアシレートフイルムの作製)
(セルロースアシレート溶液の調製)
表1に示す組成のセルロースアシレート原液溶液(元ドープ液)調製した。溶解はミキシングタンクに原料を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解した。
【0108】
【表1】
【0109】
(レターデーション調整剤溶液の調製)
表2に示すように組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション調整剤溶液を調製した。レターデーション調整剤(スミソルブTM165F)は下記に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
【化1】
【0112】
(内層用及び外層用セルロースアシレートドープ溶液の調製)
表3、4に示すように組成物をミキシングタンクに投入、攪拌、溶解し、内層用、外層用セルロースアシレートドープ溶液を調製した。セルロースアシレート(セルロースアセテート)100質量部に対するレターデーション調整剤の添加量は、表3、4に示した。
得られたドープを50℃にて、絶対ろ過精度0.01mmのフィルター(東洋濾紙(株)製、#63)および絶対ろ過精度0.0025mmのフィルター(ポール社製、FH025)にてろ過した。
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
3層共流延ダイを用いて、ろ過したドープを内層用ドープが内側に外層用ドープが両外側になるように配置してバンド流延機を用いて重層流延した。ドープをゲル化させ、70℃で3分、120℃で5分乾燥した後にフイルムをバンドから剥離し、130℃で60秒間乾燥し、セルロースアシレートフイルムを製造した。表5に示す内層厚み、両外層厚みとなるようにドープ吐出量を調整した。
得られたフイルムを、テンターを用いて表5に示した延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持し、表5に示したセルロースアシレートフイルムを長さ3000m、幅1.2mの巻きロール形態で作製した。
【0116】
【表5】
【0117】
(セルロースアシレートフイルムの光学特性の測定)
作製したセルロースアシレートフイルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値(Re550)およびRthレターデーション値(Rth550)を測定した。結果を表6に示す。
【0118】
(透湿度の測定)
JIS規格JIS Z0208、B条件(温度を40℃、湿度を90%RH)で測定を行った。結果を表6に示す。
【0119】
(ヘイズの測定)
ヘイズはヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。フイルム1サンプルにつき、5点を測定し、その平均値を採用した。結果を表6に示す。
【0120】
(面状の評価)
フイルムを目視で観察し、その面状を以下の基準で評価した。結果を表6に示す。
A:フイルム表面に汚染は全くなく、極めて良好である。
B:フイルム表面に汚染はほとんど認められない、異物はわずかにあるが良好である。
C:フイルム表面に汚染が一部に認められる。フイルムとして不適である。
D:フイルム表面に汚染がほぼ全面に認められる。フイルムとして不適である。
E:フイルム表面に汚染が全面に認められ、異物が多数見られる。フイルムとして不適である。
【0121】
(水分量の評価)
フイルムを所定のサイズに裁断したサンプルに対し、三菱化学製VA−05型気化器を用い、150℃にてサンプル中の水分揮発させ、三菱化学製CA−03型カールフィッシャー水分計に導入して測定した。結果は表6に示す。
【0122】
(引き裂き強度の評価)
フイルムを幅65mm×長さ50mmに切断してサンプルを作製する。このサンプルを温度30℃、相対湿度85%の室内で2時間以上調湿し、ISO6383/2−1983の規格に従い、東洋精機製作所製軽荷重引裂強度試験器を用いて、引き裂きに要する荷重(g)を求めた。結果は表6に示す。
【0123】
(引掻き強度の評価)
引掻き強度は円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mmのサファイヤ針を用いてフイルム表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価した。結果を表6に示す。
【0124】
【表6】
【0125】
本発明−2、3、10のセルロースアシレートフイルムの30℃15%RH、30℃55%RH、30℃85%RHでの波長550nmにおけるRe値(Re550)、Rth値(Rth550)を測定した。結果を表7に示した。
【0126】
【表7】
【0127】
表6、7に示す結果から以下のことが分かる。
本発明−1、5、10は、少なくとも2つの芳香族環を有する化合物を含有するセルロースアシレートフイルムからなり、この芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部が高く、波長550nmにおけるRe、Rthの値がそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、透湿度が2〜150g/m2・24hである光学補償シートで、ヘイズが小さく優れた透明性と、汚染のない優れた面状とを有するセルロースアシレート光学補償シートであることが分かる。
また、本発明−2、3、4、6、7、8、9、11、12、13は、少なくとも2つの芳香族環を有する化合物を含有するセルロースアシレートフイルムを積層流延法により製膜した後、セルロースアシレートフイルムを横延伸した2軸性フイルムであって、波長550nmにおけるRe、Rthの値がそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、透湿度が2〜150g/m2・24hである光学補償シートで、ヘイズが小さく優れた透明性と、汚染が極めて少なく優れた面状とを有するセルロースアシレート光学補償シートであることが分かる。
特に、横延伸し2軸性のセルロースアシレートフイルムでは、Reの値が20〜200nmとなり、その透明性と面状が特に優れていることが分かる。
また、本発明の光学補償シートは、本発明−2、3、10にみられるように、セルロースアシレートフイルムのRe値、Rth値の30℃15%RH〜30℃85%RHにおける湿度依存性が、絶対値で各々0.5nm/RH%以下、0.7nm/RH%以下であり、湿度依存性が小さいことが分かる。
【0128】
[実施例2]
上記の内層用ドープDを用い、外層用ドープDを用いずに100μm厚のセルロースアシレートフイルムを上記比較例2と同様に作製した。このフイルムにメタノール/エタノール/酢酸メチルの混合溶液を塗布・掻き取り処理を繰り返し実施して、表面から3μmの深さまでのレターデーション調整剤濃度が、セルロースアシレート100質量部に対して6質量部となるようにした(内部は16質量部である)。これを両面に対して実施し、セルロースアシレートフイルムを作製した(本発明−14)。
この本発明−14のセルロースアシレートフイルムは、実施例1と同様な評価を行ったところ、上記本発明−6や本発明−7と同様に優れたセルロースアシレート光学補償シートであった。
【0129】
[実施例3]
セルロースアシレートフイルムの長さを1000m、幅を0.7mの巻きロール形態で作製する以外は上記本発明−1と同様にセルロースアシレートフイルムを作製した(本発明−15)。実施例1と同様な評価を行ったところ、本発明−1と同様に優れた光学補償シートであった。
【0130】
同様に、セルロースアシレートフイルムの長さを100mとして作製した場合(本発明−16)も、本発明−1と同様に優れたセルロースアシレート光学補償シートが得られた。
但し、この場合、1日の生産量は1400m2と少なかった。
【0131】
[実施例4]
(セルローストリアシレートフイルムの鹸化処理)
実施例1で作製したセルローストリアシレートフイルムのうち、表8に示したフイルム上に、1.0モル/リットルの水酸化カリウム溶液(溶剤:イソプロピルアルコール/プロピレングリコール/水=75/13/12質量%)を#6バーで塗布し、40℃で10秒間加熱した後、濡れたままの塗布面に#1.6バーで水を塗布し、すぐに25℃の洗浄水500cc/m2をノズルから吹き付け、エアナイフでフイルム表面の洗浄水を吹き飛ばす処理を三回連続して行い、100℃の温風で乾燥して、表面が鹸化されたセルローストリアシレートフイルムを作製した(本発明−17〜本発明−22、比較例−4)。
鹸化されたフイルムの諸特性測定結果を表8に示す。
なお、表面特性の表面エネルギーの評価方法は、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989年刊行)に記載の接触角法に準拠した。具体的には、表面エネルギーが既知の2種類の溶媒をセルロースアシレートフイルムに滴下し、液滴表面とフイルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフイルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフイルムの表面エネルギーを算出した。
【0132】
【表8】
【0133】
表8に示すように、作製したセルロースアシレートフイルムは、アルカリ溶液により鹸化処理した場合にも、Re、Rth、透湿性が処理前と同様に良好であり、鹸化処理していないフイルムと同様に優れた透明性と汚染のない優れた面状を有していることが分かった。また、処理後のフイルムの表面エネルギーは58〜68mN/mの範囲にあり、このフイルムを偏光板の透明保護フイルムと用いても、偏光膜との接着力に優れることが確認された。
一方、比較例4は、表面エネルギーは好ましい範囲内に親水化処理されたがRe、Rthが何れも低下し変化した。又、鹸化処理後のフイルムの面状が白濁となる部分が生じ、実用に供し得るものではなかった。
【0134】
[実施例5]
(配向膜の形成)
表9に示した鹸化処理済セルローストリアシレートフイルム(本発明−18、19、21)の片面に、下記処方の配向膜塗布液を、#14のワイヤーバーコーターで塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で160秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状のセルローストリアシレートフイルムを作製した。次に、上述の配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアシレートフイルムの遅相軸方向となす角度が45゜となる方向にラビング処理を実施した。
【0135】
<配向膜塗布液処方>
下記の変性ポリビニルアルコール(化2) 19質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1質量部
【0136】
【化2】
【0137】
(光学異方性層用塗布液の作製)
SUS製のタンク中に、下記の処方の光学異方性層塗布液を調製した。
【0138】
<光学異方性層塗布液処方>
下記ディスコティック液晶性化合物(A) 42質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.92質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.23質量部
光重合開始剤
(イルガキュア−907、チバガイギー社製) 1.40質量部
増感剤 (カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
メチルエチルケトン 101質量部
【0139】
【化3】
【0140】
上述の長尺ロール状セルロースアシレートフイルムの配向膜上に、上記塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の熟成ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性分子を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック液晶性分子を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を有する光学補償シートを作製した(本発明−23、24、25)。
【0141】
(偏光膜の作製)
PVAフイルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフイルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、テンター出口におけるシワ、フイルム変形は観察されなかった。
得られた偏光膜の550nmにおける透過率43.7%、偏光度99.97%であった。
【0142】
(偏光板の作製)
下記処方の低屈折率層塗布液を攪拌、調製し、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後、フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分乾燥後、120℃で10分間加熱してポリマーを架橋させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止フイルムを作製した。
【0143】
<屈折率層塗布液処方>
熱架橋性含フッ素ポリマー 210質量部
(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)
シリカゾル(MEK−ST) 18質量部
(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30wt%、日産化学(株)製)
メチルエチルケトン 200質量部
【0144】
この反射防止フイルムと、上記の通り作製した光学異方性層を有する光学補償シートとを液温度が55℃の1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液中に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸および水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアシレート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光膜の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した(本発明−26〜本発明−28)。
【0145】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔn(波長550nm)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
【0146】
(ベンド配向モード透過型液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、作製した偏光板(反射防止フイルム1、偏光膜2、セルロースアシレートフイルム3、光学異方性層4よりなる)の光学異方性層4上にアクリル系粘着剤をつけ、液晶セルのラビング方向と光学補償シートのラビング方向とが反平行となる様にして貼り合せ、ベンド配向モードの透過型液晶表示装置を作製した(本発明−29〜本発明−31)。
この液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。結果を表9に示した。
【0147】
【表9】
【0148】
表9に示すように、本発明の液晶表示装置は優れた正面コントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
【0149】
[実施例6]
(配向膜の形成)
表10に示した鹸化処理済セルローストリアシレートフイルム(本発明−17、20、22)の片面に、下記内容の配向膜塗布液を、#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状のセルローストリアシレートフイルムを作製した。
【0150】
<配向膜塗布液組成>
下記の変性ポリビニルアルコール(化4) 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0151】
【化4】
【0152】
(配向膜の形成、ラビング処理)
次に、上述の実施例5と同様にして配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアシレートフイルムの遅相軸方向にラビング処理を実施した。
【0153】
この長尺ロール状セルロースアシレートフイルムの配向膜上に、実施例5で用いた光学異方性層用塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の熟成ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性分子を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック液晶性分子を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を有する光学補償シートを作製した(本発明−32、33、34)。
【0154】
(偏光膜の作製)
PVAフイルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフイルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、テンター出口におけるシワ、フイルム変形は観察されなかった。
得られた偏光膜の550nmにおける透過率43.8%、偏光度99.98%であった。
【0155】
(偏光板の作製)
実施例5と同様に低屈折率層塗布液を攪拌、調製し孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後、フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分乾燥後、120℃で10分間加熱してポリマーを架橋させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止フイルムを作製した。
【0156】
この反射防止フイルムと、上記の通り作製した光学異方性層を有する光学補償シートtpを水酸化カリウム1.5規定の水/イソプロピルアルコール(30/70)質量比から成る溶液に35℃で1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸および水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアシレート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光膜の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した(本発明−35〜本発明−37)。
【0157】
(TN型液晶表示装置の作製)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに本発明29の偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるようにアクリル系粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸は直交するように配置し、TN型液晶表示装置を作製した(本発明−38)。
この液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。結果を表10に示した。
また、本発明−36及び本発明−37の偏光板を用いて、同様にTN型液晶表示装置を作製し(本発明−39〜本発明−40)、正面コントラスト比と視野角を調べた。
【0158】
【表10】
【0159】
表10に示したように、本発明の液晶表示装置は優れた正面コントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
【0160】
[実施例7]
【0161】
(偏光板の作製)
フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)と本発明−3の光学補償シートにポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、実施例6記載と同様にして作成した偏光膜の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作製した(本発明−41)。
【0162】
(VA型液晶表示装置の作製)
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板および一対の光学補償シートを剥がし、代わりに本発明−41の偏光板を、本発明−3の光学補償シートが液晶セル側となるようにアクリル系粘着剤を介して、観察者側に一枚貼り付けた。バックライト側には市販の偏光板(HLC2−5618HCS(株)サンリッツ製)を一枚貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸は直交するように配置し、VA型液晶表示装置を作製した(本発明−42)。
この液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。結果を表11に示した。
【0163】
【表11】
【0164】
表11に示したように、本発明の液晶表示装置は優れた正面コントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。
【0165】
[実施例8]
(セルロースアシレートフイルムの作製)
実施例1のレターデーション調整剤溶液において、レターデーション調整剤スミソルブTM165F16質量部の代わりに、下記構造のレターデーション調整剤11.6質量部を用いた他は実施例1と同様にしてドープ液を調製し、セルロースアシレートフイルム[本発明−1]と同様にして膜厚62μmのセルロースアシレートフイルム[本発明−43]を作製した。得られたフイルムのRe(550)は9nm、Rth(550)は65nm、透湿度130g/m2・24hであった。
【0166】
【化5】
【0167】
(フイルムのアルカリ鹸化)
上記のフイルムを温度60℃の誘電式加熱ロール上を通過させ、フイルム表面温度40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−3)をロッドコーターを用いて塗布量12cc/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に12秒滞留させた後に、同じくロッドコーターを用いて純水を8cc/m2塗布した。この時のフイルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥した。
【0168】
<アルカリ溶液(S−3)組成>
水酸化カリウム 8.55質量%
水 23.235質量%
イソプロパノール 54.20質量%
界面活性剤(K):C14H29O(CH2CH2O)20H 1.0質量%
プロピレングリコール 13.0質量%
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製)0.015質量%
【0169】
この表面処理したフィルム上に、下記の組成の配向膜塗布液をロードーコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。次に、セルロースアシレートフイルムの長手方向にラビング処理を実施した。
【0170】
<配向膜塗布液>
下記変性ポリビニルアルコール(化6) 20質量%
水 360質量%
メタノール 120質量%
グルタルアルデヒド 0.5質量%
【0171】
【化6】
【0172】
(光学異方性層の形成)
下記構造のディスコティック液晶性化合物(B)41.01kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06kg、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.35kg、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35kg、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45kg、下記構造のフッ素系界面活性剤(F)0.45kgを、102kgのメチルエチルケトンに溶解し、この塗布液を配向膜上に、#3.6のワイヤーバーで連続的に塗布し、130℃の状態で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして光学補償シート(本発明−43)を作製した。
【0173】
【化7】
【0174】
偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償シートのムラを観察したところ、正面、および法線から60°まで傾けた方向から見ても、ムラは検出出来なかった。
得られた光学補償シートを、実施例5において用いた光学補償シート「本発明−23」の代わりに用いた他は実施例5と同様にして偏光板、及び液晶表示装置を作製し、実施例5と同様の性能を評価した。その結果、実施例5と同様の性能結果が得られ、良好なものであった。
【0175】
[実施例9]
実施例1においてレターデーション調整剤溶液のレターデーション調整剤16質量部の代わりに、下記内容の化合物を用いた他は、実施例1の「本発明−1」と同様にして膜厚107μmのセルロースアセテートフイルムを作製した。波長550nmにおけるフイルム厚み方向のレターデーション値(Rth値)は80nm、面内のレターデーション値(Re値)は17nmであった。
【0176】
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン:12質量部
2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン :4質量部
【0177】
得られた光学補償シートを、実施例5において用いた光学補償シート「本発明−23」の代わりに用いた他は実施例5と同様にして偏光板、及び液晶表示装置を作製し、実施例5と同様の性能を評価した。その結果、実施例5と同様の性能結果が得られ、良好なものであった。
【0178】
[実施例10]
実施例5で作製したセルロースアシレートフイルム上に液晶性化合物からなる光学異方性層が積層されてなる本発明−23、24、32、33の光学補償シートの30℃15%RH、30℃50%RH、30℃85%RHにおけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の値をエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定した。Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、光学異方層の面内でレターデーション値が最小となる方向(最小値の方向)と、該光学異方性層の法線とを含む平面内で、法線方向、法線から最小値の方向に50°傾いた方向、それとは逆に法線から50°傾いた方向からそれぞれ測定した該光学補償シートのレターデーション値である。結果を表12に示す。
【0179】
【表12】
【0180】
表12に示すとおり、30℃15%RHから30℃85%RHの間でのレターデーション値の湿度依存性が絶対値で0.3nm/%RH以下であり、湿度依存性が小さいことが分かる。
【0181】
【発明の効果】
本発明によれば、レターデーションの湿度依存性が小さく、レターデーション上昇剤や可塑剤などによる表面汚染や異物を低減され、表示品位が良好で、光学補償能に優れたセルロースアシレートフイルムからなる光学補償フイルムを提供することができる。
また、本発明の光学補償フイルムを、偏光膜の少なくとも一方の保護フイルムとして用いることで、偏光板に光学補償機能を付与することができる。
上記の光学補償フイルムおよび上記の光学補償フイルムを保護フイルムとして用いた偏光板は、OCB(optically compensatory bend)型、HAN(hybrid aligned nematic)型、TN(twisted nematic)型、STN(supper twisted nematic)型、VA(vertical aligned)型、IPS(in−plane switching)型、ECB(electrically controlled birefringence)型、及びFLC(ferroelectric liquid crystal)型のいずれのモードの液晶表示装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5で使用のベンド配向モードの透過型液晶表示装置の断面概略図を示す。
【符号の説明】
1 反射防止フィルム
2 偏光素子(PVA/I2)
3 透明支持体
4 光学異方性層
5 ベンド配向液晶セル(OCBモード)
Claims (10)
- 少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該セルロースアシレートフイルムの該芳香族化合物含有濃度がフイルム表面近傍よりフイルム内部の方が高く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hである、
ことを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。] - 少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートにおいて、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。] - セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値の、30℃15%RHから30℃85%RHの範囲における湿度依存性が、絶対値で各々、0.5nm/%RH以下、0.7nm/%RH以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。] - 該セルロースアシレートフイルムの30℃85%RH雰囲気下での含水量が、0.3〜12g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学補償シート。
- 該セルロースアシレートフイルムが、長さが100〜5000m、幅が0.7m以上の長尺フイルムであって、該セルロースアシレートフイルムの30℃85%RH雰囲気下での引き裂き強度が3〜50gであり、かつ30℃85%RH雰囲気下での引掻き強度が2〜30gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学補償シート。
- 該セルロースアシレートフィルムの膜厚が20〜100μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学補償シート。
- セルロースアシレートフイルム上に液晶性化合物を含む光学異方性層が積層されてなり、
30℃50%RHにおけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の値がそれぞれ35±30nm、40±35nm、110±85nmの範囲にあり、30℃15%RHから30℃85%RHの範囲におけるRe(0°)、Re(−50°)、Re(50°)の湿度依存性が、絶対値で全て0.5nm/%RH以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学補償シート。
ここで、Re(0°)、Re(−50°)、Re(50°)は、光学異方層の面内でレターデーション値が最小となる方向(最小値の方向)と、該光学異方性層の法線とを含む平面内で、法線方向、法線から最小値の方向に50°傾いた方向、それとは逆に法線から50°傾いた方向からそれぞれ測定した該光学補償シートのレターデーション値を表す。 - 偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護フイルムからなる偏光板であって、該透明保護フイルムの少なくとも一方が請求項1〜7のいずれかに記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板。
- 液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板を含み、該偏光板が偏光膜およびその両側に配置された2枚の透明保護フイルムからなる液晶表示装置であって、該偏光板が、請求項1〜7のいずれかに記載の光学補償シートを透明保護フイルムとして有する偏光板、または請求項8に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
- 少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物を含有するセルロースアシレート溶液を流延法により製膜した後、延伸して得られるセルロースアシレートフイルムを少なくとも有する光学補償シートの製造方法において、
(a)該流延法が積層流延法であり、該セルロースアシレート溶液中の該芳香族化合物含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、少なくとも1つの内部層溶液では1〜30質量部であり、最外層溶液では0.01〜10質量部であり、かつ最外層溶液での該芳香族化合物のセルロースアシレート100質量部あたりの含有量が少なくとも1つの内部層溶液のそれより低く、
(b)該セルロースアシレートフイルムの下記式(I)、(II)で定義されるRe値、Rth値が波長550nmにおいてそれぞれ2〜200nm、50〜400nmの範囲にあり、
(c)該セルロースアシレートフイルムの透湿度が2〜150g/m2・24hであることを特徴とする光学補償シートの製造方法。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、フイルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、フイルム面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、フイルムの厚み方向の屈折率であり;dは、フイルムの厚さである。]
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