JP2009196202A - ハードコートフィルム、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置 - Google Patents

ハードコートフィルム、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 透明基材フィルムとの密着性が良好で、耐光性試験後も優れた密着性を有し、かつ高いハード性と優れた帯電防止性能を有するハードコート層を備えたハードコートフィルム、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置を提供する。
【解決手段】 ハードコートフィルムは、ハードコート層が、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)を含有する。ハードコート層用組成物の配合量が、π共役系導電性ポリマー(A)は0.05〜1.5質量%、電離放射線硬化型樹脂(B)は60〜99質量%、環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)は0.1〜30質量%の範囲であり、さらに光重合開始剤を、1〜10質量%含有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ハードコートフィルム、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置に関するものである。
一般的に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、傷付きを防止する目的で、最表面にハードコートフィルムを設けることが行われている。このようなハードコートフィルムは、セルロースアセテート樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂等の基材フィルム上にハードコート層を設けることで作製される。
このようなプラスチックからなる光学物品は絶縁性であるために、静電気等により帯電し、表面にほこり等が付着することにより、表示パネルの視認性が悪くなることを防ぐ目的で、帯電防止性能を付与することが求められている。
下記の特許文献1と2には、ハードコートフィルムに帯電防止性能を付与する方法として、スズ含有酸化インジウム(ITO)や、アンチモン含有酸化スズ(ATO)等の導電性金属酸化物粒子を、紫外線硬化型アクリル樹脂などのハードコート樹脂に分散させたものを使用することが記載されている。
特開平10−231444号公報 特開平10−244618号公報 特開2002−169001号公報
しかしながら、上記特許文献1と2に記載のような導電性金属酸化物粒子を分散したハードコート層は、導電性金属酸化物粒子の添加量を多くしなければ帯電防止性能が得られにくく、添加量を多くすることで透明性が損なわれたり、塗膜が脆くなってしまうという問題があった。
透明性を確保するために、帯電防止剤として界面活性剤を用いることもできるが、この場合にはイオン導電性のために湿度の影響を受けやすく、安定した帯電防止性能を得ることが困難になる。
また、一般的にハードコート層に使用される紫外線硬化型アクリル樹脂としては、ハード性を確保するためにエチレン性不飽和二重結合を多数有する樹脂を用いることが多いが、このような樹脂は硬化収縮が大きく、基材フィルムとの密着性が悪くなる傾向がある。特に、耐光性試験を実施するとさらに密着性が低下するという問題があった。
上記の特許文献3には、基材フィルムとの密着性を向上させるために、例えば基材フィルムを溶解または膨潤する溶媒を用いた塗布液によってハードコート層を形成することが記載されている。
しかしながら、特許文献3に記載されているように、基材フィルムを溶解してしまうことで、ハード性や透明性が損なわれやすくなったり、塗工後は密着性が良好でも耐光性試験後では密着性が十分とは言えないという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、透明基材フィルムとの密着性が良好で、耐光性試験後も優れた密着性を有し、かつ高いハード性と優れた帯電防止性能を有するハードコート層を備えたハードコートフィルム、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層が、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)を含有することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載のハードコートフィルムであって、ハードコート層用組成物の配合量が、π共役系導電性ポリマー(A)は0.05〜1.5質量%、電離放射線硬化型樹脂(B)は60〜99質量%、環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)は0.1〜30質量%の範囲であり、さらに光重合開始剤を1〜10質量%含有することを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のハードコートフィルムであって、π共役系導電性ポリマー(A)が、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、及びポリアニリン誘導体のうちの一種のポリマーであることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、電離放射線硬化型樹脂(B)が、分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物を含有することを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、環状エーテルを有するビニル化合物(C)が、テトラヒドロフルフリル環を有するビニル化合物、またはジオキソラン環を有するビニル化合物であることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、アミド基を有するビニル化合物(D)が、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、及びアクリロイルモルフォリンよりなる群の中から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、透明フィルム基材が、セルロースエステルフィルムであることを特徴としている。
請求項8の反射防止フィルムの発明は、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムのハードコート層上に、基材よりも屈折率の低い低屈折率層が設けられていることを特徴としている。
請求項9の偏光板の発明は、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムを一方の面に用いることを特徴としている。
請求項10の偏光板の発明は、請求項8に記載の反射防止フィルムを一方の面に用いることを特徴としている。
請求項11の表示装置の発明は、請求項9または10に記載の偏光板を用いることを特徴としている。
請求項1の発明は、透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層が、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)を含有するもので、請求項1の発明によれば、ハードコートフィルムは、帯電防止性や透明性、ハード性、密着性、特に耐光性試験後も密着性が優れているという効果を奏する。
また特に、ハードコート層用組成物中のアミド基を有するビニル化合物(D)は、透明基材フィルムとの接着性の向上のために含有されるものであるが、他にも、単独で用いた場合には帯電防止性能は無く、多官能アクリレートほどのハード性を得られないが、π共役系導電性ポリマー(A)と電離放射線硬化型樹脂(B)に添加することで導電性の発現を助けるため、帯電防止性能を向上させることができ、また、π共役系導電性ポリマー(A)の添加量が少なくても良好な帯電防止性能が得られるため、フィルムの着色、ヘイズ及びハード性の劣化を抑制することができることがわかった。さらに、電離放射線硬化型樹脂(B)の反応性を向上させるため、膜強度を上げることができることもわかった。
請求項2の発明は、請求項1に記載のハードコートフィルムであって、ハードコート層用組成物の配合量が、π共役系導電性ポリマー(A)は0.05〜1.5質量%、電離放射線硬化型樹脂(B)は60〜99質量%、環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)は0.1〜30質量%の範囲であり、さらに光重合開始剤を1〜10質量%含有するもので、請求項2の発明によれば、ハードコート層用組成物の配合量を具体的に設定することにより、上記ハードコートフィルムの優れた性能を確実に発揮することができるという効果を奏する。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のハードコートフィルムであって、π共役系導電性ポリマー(A)が、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、及びポリアニリン誘導体のうちの一種のポリマーであるもので、請求項3の発明によれば、π共役系導電性ポリマー(A)は、ハードコートフィルムの帯電防止性発現のために添加され、上記の具体的なπ共役系導電性ポリマー(A)を用いることにより、帯電防止性や透明性、ハード性が優れているという効果を奏する。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、電離放射線硬化型樹脂(B)が、分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物を含有することを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、環状エーテルを有するビニル化合物(C)が、テトラヒドロフルフリル環を有するビニル化合物、またはジオキソラン環を有するビニル化合物であるもので、請求項4の発明によれば、環状エーテルを有するビニル化合物(C)は、特に、ハードコート層の透明フィルム基材との密着性向上のために添加され、上記の具体的な環状エーテルを有するビニル化合物(C)を用いることにより、透明性やハード性を損なうことなく密着性に優れ、特に耐光性試験後も密着性が優れるという効果を奏する。
請求項6の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、アミド基を有するビニル化合物(D)が、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、及びアクリロイルモルフォリンよりなる群の中から選ばれた少なくとも一種の化合物であるもので、請求項5の発明において、特に、ハードコート層用組成物中のアミド基を有するビニル化合物(D)は、透明フィルム基材との密着性の向上のために含有されるものであるが、他にも、単独で用いた場合には帯電防止性能は無く、多官能アクリレートほどのハード性を得られないが、π共役系導電性ポリマー(A)と電離放射線硬化型樹脂(B)に添加することで導電性の発現を助けるため、帯電防止性能を向上させることができ、また、π共役系導電性ポリマー(A)の添加量が少なくても良好な帯電防止性能が得られるため、フィルムの着色、ヘイズ及びハード性の劣化を抑制することができることがわかった。さらに、電離放射線硬化型樹脂(B)の反応性を向上させるため、膜強度を上げることができることもわかった。
従って、上記の具体的なアミド基を有するビニル化合物(D)を用いることにより、特に、透明性やハード性、密着性に優れ、耐光性試験後も密着性が優れるという効果を奏する。
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムであって、透明フィルム基材が、セルロースエステルフィルムであるもので、請求項7の発明によれば、ハードコートフィルムの透明性が良好であり、接着性に優れているうえに、コストが安くつくという効果を奏する。
請求項8の反射防止フィルムの発明は、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムのハードコート層上に、基材よりも屈折率の低い低屈折率層が設けられているもので、請求項8の発明によれば、フィルムの反射率が低下することにより、映り込みが低減され、視認性が向上するという効果を奏する。
請求項9の偏光板の発明は、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムを一方の面に用いるもので、請求項9の発明によれば、本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板を液晶表示パネルに張り付けた場合、液晶表示パネル視認性が良好であるという効果を奏する。
請求項10の偏光板の発明は、請求項8に記載の反射防止フィルムを一方の面に用いるもので、請求項10の発明によれば、本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板を液晶表示パネルに張り付けた場合、液晶表示パネル視認性が良好であるという効果を奏する。
請求項11の表示装置の発明は、請求項9または10に記載の偏光板を用いるもので、請求項11の発明によれば、本発明のハードコートフィルムや反射防止フィルムを用いた偏光板を張り付けた液晶表示パネルは、視認性が良好であるという効果を奏する。
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明によるハードコートフィルムは、透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層が、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)を含有するものである。
本発明によるハードコートフィルムは、帯電防止性や透明性、ハード性、密着性、特に耐光性試験後も密着性が優れている。
本発明のハードコートフィルムにおけるハードコート層用組成物の配合量としては、ハードコート層用塗布組成物の溶媒を除いた固形分全体量に対して、π共役系導電性ポリマー(A)は0.05〜1.5質量%、電離放射線硬化型樹脂(B)は60〜99質量%、環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)は0.1〜30質量%の範囲であることが好ましい。さらに光重合開始剤を1〜10質量%含有することが好ましい。
ここで、π共役系導電性ポリマー(A)の配合量が0.05質量%未満であると十分な導電性が得られないことがあり、1.5質量%を超えるとフィルムの透明性を損なうことがあり、好ましくない。
また、環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)の配合量は0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。0.1質量%未満では耐光性試験後の密着性が不足し、30質量%超過ではハード性が不足し、好ましくない。
さらに、光重合開始剤が1質量%未満であれば、少なすぎて電離放射線硬化型樹脂(B)の硬化が不充分となり、フィルム強度が低下するので、好ましくない。光重合開始剤が10質量%を超えると、電離放射線硬化型樹脂(B)の硬化反応に使用されずにフィルム中に残ることによって耐光性の劣化を招くことがあり、好ましくない。
本発明によるハードコートフィルムにおいて、π共役系導電性ポリマー(A)としては、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、及びポリアニリン誘導体のうちの一種のポリマーであることが好ましい。
π共役系導電性ポリマー(A)は、特に、ハードコートフィルムの帯電防止性発現のために添加されるもので、これらのπ共役系導電性ポリマー(A)を用いることにより、帯電防止性や透明性、ハード性が優れているという利点がある。
本発明によるハードコートフィルムにおいて、電離放射線硬化型樹脂(B)としては、分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物を含有することが好ましい。
本発明によるハードコートフィルムにおいて、環状エーテルを有するビニル化合物(C)としては、テトラヒドロフルフリル環を有するビニル化合物、またはジオキソラン環を有するビニル化合物であるのが、好ましい。
環状エーテルを有するビニル化合物(C)は、特に、ハードコート層の透明フィルム基材との密着性向上のために添加されるもので、このような環状エーテルを有するビニル化合物(C)を用いることにより、透明性やハード性を損なうことなく密着性に優れ、特に耐光性試験後も密着性が優れるという利点がある。
本発明によるハードコートフィルムにおいて、アミド基を有するビニル化合物(D)としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、及びアクリロイルモルフォリンよりなる群の中から選ばれた少なくとも一種の化合物を用いるのが、好ましい。
ここで、ハードコート層用組成物中のアミド基を有するビニル化合物(D)は、透明フィルム基材との密着性の向上のために含有されるものであるが、他にも、単独で用いた場合には帯電防止性能は無く、多官能アクリレートほどのハード性を得られないが、π共役系導電性ポリマー(A)と電離放射線硬化型樹脂(B)に添加することで導電性の発現を助けるため、帯電防止性能を向上させることができ、また、π共役系導電性ポリマー(A)の添加量が少なくても良好な帯電防止性能が得られるため、フィルムの着色、ヘイズ及びハード性の劣化を抑制することができることがわかった。さらに、電離放射線硬化型樹脂(B)の反応性を向上させるため、膜強度を上げることができることもわかった。
従って、上記の具体的なアミド基を有するビニル化合物(D)を用いることにより、特に、透明性やハード性、密着性に優れ、耐光性試験後も密着性が優れるというという利点がある。
本発明による反射防止フィルムは、上記のハードコートフィルムのハードコート層上に、基材よりも屈折率の低い低屈折率層が設けられているものであることが好ましい。
本発明によるハードコートフィルムは、透明フィルム基材が、セルロースエステルフィルムであることが好ましい。透明フィルム基材については、後述する。
つぎに、本発明によるハードコートフィルムのハードコート層について説明する。
(ハードコート層)
本発明によるハードコートフィルムのハードコート層は、傷付き防止のためのハード性に加えて帯電防止層としての機能を有しており、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)を含有するものである。
まず、π共役系導電性ポリマー(A)について説明する。
本発明において使用する導電性ポリマー(A)は、π共役系導電性高分子であり、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さや安定性の点からは、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性ポリマー(A)は、無置換のままでも十分な導電性やバインダー樹脂への溶解性が得られるが、導電性や溶解性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導入してもよい。
このようなπ共役系導電性ポリマー(A)の具体例としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−N−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でも良いし、2種からなる共重合体でも好適に用いることができる。
これらのπ共役系導電性ポリマー(A)には、ドーパント成分が添加されていても良い。ドーパント成分としては、例えば、ハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハライドなどの低分子量ドーパントや、ポリアニオンのようなポリマー等が挙げられる。
ポリアニオンとは、π共役系導電性ポリマー(A)に対するドーパントとして機能するアニオン基を有する高分子であり、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位からなるものである。
ポリアルキレンとは主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
ポリアルケニレンとは主鎖に不飽和結合が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーであり、例えば、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2-オクチル-1-ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
ポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしてはポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性ポリマー(A)への化学酸化ドープが起こりうる官能基であれば良いが、製造の容易さや安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性ポリマー(A)へのドープ効果の観点から、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体でも良く、2種以上の共重合体でも良い。これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、得られる導電層の導電性をより高めることができる。
本発明においては、ポリアニオンの他にも、π共役系導電性ポリマー(A)を酸化還元することができれば、以下のようなドナー性あるいはアクセプタ性のドーパントを用いることができる。
ドナー性ドーパントとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
アクセプタ性ドーパントとしては、Cl、Br、I、ICl、IBr、IF等のハロゲン化合物、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等のルイス酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等の有機シアノ化合物、プロトン酸、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
プロトン酸としては無機酸、有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を1つまたは2つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を1つまたは2つ以上含むもの、またはスルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を1つ含むものとしては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
スルホ基を2つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
π共役系導電性ポリマー(A)の配合量としては、ハードコート層用塗布組成物の溶媒を除いた固形分全体量に対して、0.05〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。π共役系導電性ポリマー(A)の配合量が0.05質量%未満
であると十分な導電性が得られないことがあり、1.5質量%を超えるとフィルムの透明性を損なうことがあり、好ましくない。
つぎに、電離放射線硬化型樹脂(B)について説明する。
電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線(以下、活性エネルギー線ともいう。)照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。電離放射線硬化型樹脂(B)としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて電離放射線硬化樹脂層が形成される。電離放射線硬化型樹脂(B)としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
なお、この明細書中において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「メタクリレートもしくはアクリレート」のことを意味するものとする。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることができる。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ株式会社製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン株式会社製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシ(メタ)アクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は、該組成物100質量部に対して、0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジ(メタ)アクリレート、前出のトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(株式会社ADEKA製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成株式会社製)等を適宜選択して利用できる。また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
続いて、環状エーテルを有するビニル化合物(C)とアミド基を有するビニル化合物(D)について説明する。
本発明のハードコートフィルムは、透明フィルム基材とハードコート層との密着性を向上させる目的で、ハードコート層に環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)を含有する。
これら環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)の添加量は、放射線硬化型樹脂組成物全体量に対して、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。0.1質量%未満では耐光性試験後の密着性が不足し、30質量%超過では、ハード性が不足し、好ましくない。
本発明において、環状エーテルを有するビニル化合物(C)は、例えば下記[化1]で表されるテトラヒドロフラン環を持つモノマー、及び[化2]で表されるジオキソラン環を持つモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマールアクリレート等や、それぞれのエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、[化1]で表されるテトラヒドロフラン骨格を持つモノマー、及び[化2]で表されるジオキソラン骨格を持つモノマーが好ましい。
Figure 2009196202
Figure 2009196202
これらは、例えばビスコート#150、ビスコート#150D、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30(以上、大阪有機化学工業株式会社製)等として入手することができる。
本発明において、アミド基を有するビニル化合物(D)は、上述の通り透明フィルム基材との接着性の向上のために含有されるものであるが、他にも、単独で用いた場合には帯電防止性能は無く、多官能アクリレートほどのハード性を得られないが、π共役系導電性ポリマー(A)と電離放射線硬化型樹脂(B)に添加することで導電性の発現を助けるため帯電防止性能を向上させることができ、また、π共役系導電性ポリマー(A)の添加量が少なくても良好な帯電防止性能が得られるため、フィルムの着色、ヘイズ及びハード性の劣化を抑制することができることがわかった。さらに、電離放射線硬化型樹脂(B)の反応性を向上させるため、膜強度を上げることもできることがわかった。
具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N,N,−トリメチルアミノエチルアクリルアミドクロリド、N,N,N,−トリメチルアミノプロピルアクリルアミドクロリド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等のN−ビニルラクタム等が挙げられる。
これらは、例えばDMAA、DMAEA、DMAPAA、NIPAM、DEAA、HEAA、ACMO(以上、株式会社興人製)等として入手することができる。
また、ハードコート層には耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために無機化合物または有機化合物の微粒子を含んでもよい。
無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を添加することができる。好ましい微粒子は、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子の平均粒径は特に制限されないが、以下に記載する防眩性を示さない点から、0.5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下であって、特に好ましくは0.001〜0.1μmである。
微粒子の平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有しても良い。紫外線硬化性樹脂と微粒子の割合は、樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
また、ハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、ハードコート層を形成する塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することで形成できる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmである。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜150mJ/cmである。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行なうことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性優れたフィルムを得ることができる。
ハードコート層を形成する塗布組成物には溶媒が含まれていてもよい。塗布組成物に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒からも適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
有機溶媒としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等が好ましい。また、有機溶媒の含有量としては塗布組成物中、5〜80質量%が好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、防眩性を示さないグレアタイプである。防眩性とは、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に反射像の映り込みが気にならないようにすることであり、具体的には、表面に凹凸形状を設けることによって上記性質が得られる。
本発明のハードコートフィルムのハードコート層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.05μm以下である。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製の非接触表面微細形状計測装置「WYKO NT−2000」を用いて測定することができる。
さらにハードコート層には、後述する低屈折率層で記載した下記のシリコーン系界面活性剤あるいはポリオキシエーテル化合物を含有させることが好ましい。これらは塗布性を高める。また、これら成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
ポリオキシエーテル化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキルフェニルエーテル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、エマルゲン1108、エマルゲン1118S−70(以上、花王社製)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの市販品としては、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン150、エマルゲン130K(以上、花王社製)、ポリオキシエチレンセチルエーテルの市販品としては、エマルゲン210P、エマルゲン220(以上、花王社製)、ポリオキシエチレンステアリルエーテルの市販品としては、エマルゲン220、エマルゲン306P(以上、花王社製)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの市販品としては、エマルゲンLS−106、エマルゲンLS−110、エマルゲンLS−114、エマルゲンMS−110(以上、花王社製)ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルの市販品としては、エマルゲン705,エマルゲン707、エマルゲン709等が挙げられる。
これら非イオン性のポリオキシエーテル化合物の中でも好ましくは、ポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物であり、下記の一般式(1)で表される化合物である。
1835−O(CO)H …(1)
式中、nは2〜40を表す。
オレイル部分に対するエチレンオキシドの平均付加個数(n)は、2〜40であり、好ましくは2〜10である。また、上記一般式(1)の化合物はエチレンオキシドとオレイルアルコールとを反応させて得られる。
具体的商品としては、エマルゲン404〔ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル〕、エマルゲン408〔ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル〕、エマルゲン409P〔ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル〕、エマルゲン420〔ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル〕、エマルゲン430〔ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル〕(以上、花王社製)、日本油脂社製NOFABLEEAO−9905(ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル)等が挙げられる。なお、( )がnの数字を表す。
ポリオキシエーテル化合物は単独あるいは2種以上を併用しても良い。
ハードコート層中のポリオキシエーテル化合物やシリコーン界面活性剤の好ましい含有量は、両者の総含有量で0.1〜8.0質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜4.0質量%であり、該範囲で添加することでハードコート層の中で安定に存在する。
また、フッ素界面活性剤、アクリル系共重合物、アセチレングリコール系化合物または非イオン性界面活性剤、ラジカル重合性の非イオン性界面活性剤等を併用しても良い。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート等のポリオキシアルキルエステル化合物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル化合物、等が挙げられる。
アセチレングリコール系化合物としてはサーフィノール104E、サーフィノール104PA、サーフィノール420、サーフィノール440、ダイノール604(以上、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
ラジカル重合性の非イオン性界面活性剤としては、例えば、RMA−564、RMA−568、RMA−1114(以上、商品名、日本乳化剤株式会社製)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系重合性界面活性剤などを挙げることができる。
また、ハードコート層は、硬化助剤として多官能チオール化合物を含有しても良く、例えば1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。また、市販品としては昭和電工社製商品名カレンズMTシリーズ等が挙げられる。多官能チオール化合物は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.01〜50質量部の範囲で添加されることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜30質量部である。この範囲で添加することで、硬化助剤として好適に作用し、また、ハードコート層の中でも安定に存在する。
ハードコート層は、2層以上の重層構造を有していてもよい。その中の1層は例えば導電性微粒子、または、イオン性ポリマーを含有するいわゆる帯電防止層としてもよいし、また、種々の表示素子に対する色補正用フィルターとして色調調整機能を有する色調調整剤(染料もしくは顔料等)を含有させてもよいし、また電磁波遮断剤または赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにしてもよい。
(バックコート層)
本発明のハードコートフィルムは、透明フィルム基材のハードコート層を設けた側と反対側の面にバックコート層を設けてもよい。バックコート層は、ハードコート層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。すなわち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために無機化合物または有機化合物の粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
これらの粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)、シーホスターKE−P10、同KE−P30、同KE−P50、同KE−P100、同KE−P150、同KE−P250(以上、日本触媒株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
有機化合物の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上GE東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972V、シーホスターKE−P30、同KE−P50、及び同KE−P100がヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。
バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、特に0.1%以下であることが好ましい。
バックコート層の塗布に用いられる塗布組成物には溶媒が含まれることが好ましい。溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、または炭化水素類(トルエン、キシレン)等が挙げられ、適宜組み合わされて用いられる。
バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レイヨン株式会社製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レイヨン株式会社製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいものを適宜選択することもできる。
例えば、バインダーとして用いられる樹脂としてはセルロースジアセテート、セルロースアセテートプロヒオネートなどのセルロースエステルとアクリル樹脂のブレンド物を用いることが好ましく、アクリル樹脂からなる粒子を用いて、粒子とバインダーとの屈折率差を0〜0.02未満とすることで透明性の高いバックコート層とすることができる。
また、バックコート層の動摩擦係数は0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層を形成する方法としては、上述したバックコート層を形成するための塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。
また、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化処理することで、バックコート層は形成される。硬化処理は低屈折率層で記載した内容を用いることができる。
バックコート層は2回以上に分けて塗布することもできる。また、バックコート層は偏光子との接着性を改善するための易接着層を兼ねても良い。
(反射防止フィルム)
本発明のハードコートフィルムのハードコート層上に、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮した反射防止層を積層しても良い。反射防止層は、透明フィルム基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、透明フィルム基材よりも屈折率の低い低屈折率層等から構成される。また、ハードコート層が高屈折率層を兼ねても良い。
つぎに、高屈折率層について説明する。
(高屈折率層)
ここで、高屈折率層とは、透明フィルム基材の屈折率よりも高い屈折率の層を言う。高屈折率層の好ましい屈折率としては、23℃、波長550nm測定で、1.5〜2.2の範囲であることが好ましい。高屈折率層の屈折率を調整する手段は、金属酸化物粒子の種類や添加量が支配的であるため、以下に説明する金属酸化物粒子の屈折率は1.60〜2.60であることが好ましく、1.65〜2.50であることがさらに好ましい。
また、高屈折率層の膜厚は、光学干渉層としての特性から、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
つぎに、高屈折率層の屈折率を調整するのに用いられる金属酸化物粒子について説明する。
金属酸化物粒子は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、スズ含有酸化インジウム(ITO)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛等を挙げることができる。
これら金属酸化物粒子の一次粒子の平均粒子径は10nm〜200nmの範囲であり、20〜150nmであることがより好ましく、30〜100nmであることが特に好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。また、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。導電性粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状あるいは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が好ましい。2種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
金属酸化物粒子の使用量は、高屈折率層中に5〜85質量%が好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、20〜75質量%が、最も好ましい。使用量が少ないと、所望の屈折率や効果が得られず、多すぎると、膜強度の劣化などが発生する。
金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ケトンアルコール(例、ジアセトンアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールが特に好ましい。
また金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することができる。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。分散剤を含有させることも好ましい。
さらに、コア/シェル構造を有する金属酸化物粒子を含有させてもよい。シェルはコアの周りに1層形成させてもよいし、耐光性をさらに向上させるために複数層形成させてもよい。コアは、シェルにより完全に被覆されていることが好ましい。
また、高屈折率層には、電離放射線硬化型樹脂を金属酸化物粒子のバインダーとして、塗膜の製膜性や物理的特性の向上のために含有させることが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂としては、紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接、または光重合開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。官能基としては(メタ)アクリロイルオキシ基等のような不飽和二重結合を有する基、エポキシ基、シラノール基等が挙げられる。中でも不飽和二重結合を2個以上有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを好ましく用いることができる。必要に応じて光重合開始剤を組み合わせてもよい。
このような電離放射線硬化型樹脂としては、ポリオールアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートもしくはそれらの混合物が用いられる。例えば多官能(メタ)アクリレート化合物等が好ましく用いられ、炭素数1〜3のアルコキシ化した(メタ)アクリレートおよびジオキサン構造を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましく用いられる。
炭素数1〜3のアルコキシ化した(メタ)アクリレートおよびジオキサン構造を有する(メタ)アクリレートとは、分子構造中にメチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよび/または1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン構造を含有するものであり、具体的にはメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、その他の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが好ましく挙げられる。
これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
電離放射線硬化型樹脂の添加量は、高屈折率組成物では固形分中の15質量%以上、50質量%未満であることが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤と分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物とを、質量比で3:7〜1:9含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明において、反射防止フィルムの高屈折率中に含まれる電離放射線硬化型樹脂と金属酸化物粒子の混合比率は、固形分で、1:1.5〜1:10の範囲がよく、より好ましくは1:2〜1:8であり、さらに好ましくは1:3〜1:7である。この範囲外になると、例えば金属酸化物粒子が少なすぎると、密着性がとれなくなり、金属酸化物粒子が多すぎると、反射防止フィルムの生産時に、粒子が脱落して、塗工中のフィルム表面に付着し、外観故障の原因となるので、好ましくない。
本発明において、高屈折率層には、下記一般式(2)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物あるいはその重縮合物を含有することが好ましい。
R’Si(OR)4−n …(2)
式中、R’はビニル基、アミノ基、エポキシ基、クロル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基などの官能基のうち、少なくとも1つを有する置換基、Rはアルキル基であり、nは置換数である。
有機珪素化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−1,3−ジメチルブチリデンプロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
透明フィルム基材の表面に、高屈折率層用組成物を塗布する際に、有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。
高屈折率層は上記組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルム、あるいはハードコート層表面にウェット膜厚0.1〜100μmで塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化して形成される。硬化工程は、後述する低屈折率層で記載した内容を用いることができる。
なお、ドライ膜厚が上記膜厚になるようにするのは、塗布組成物の固形分濃度で調整する。
つぎに、低屈折率層について説明する。
(低屈折率層)
低屈折率層とは、透明フィルム基材の屈折率より低い層をいう。具体的な屈折率としては、23℃、波長550nmで1.20〜1.45の範囲のものが好ましい。また、低屈折率層の膜厚は、光学干渉層としての特性から、5nm〜0.5μmが好ましく、10nm〜0.3μmがより好ましく、30nm〜0.2μmであることがさらに好ましい。
コーティングによって形成される低屈折率層は、有機珪素化合物もしくはその加水分解物あるいはその重縮合物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂、フルオロアクリレート、含フッ素ポリマー等から形成される。フッ素ポリマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。これらの中で好ましくは、炭素数が1〜4の有機珪素化合物もしくはその加水分解物あるいはその重縮合物であり、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等もしくはこれらの加水分解物あるいは重縮合物が挙げられる。
本発明において、低屈折率層には、コロイダルシリカ、フッ化マグネシウム、及び外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の無機粒子を含有することが好ましい。
コロイダルシリカの具体例としては、二酸化ケイ素をコロイド状に水または有機溶媒に分散させたものであり、特に限定はされないが球状、針状または数珠状である。
コロイダルシリカの平均粒径は50〜300nmの範囲が好ましく、変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
コロイダルシリカは、市販されており、例えば日産化学工業社のスノーテックスシリーズ、触媒化成工業社のカタロイド−Sシリーズ、バイエル社のレバシルシリーズ等が挙げられる。また、アルミナゾルや水酸化アルミニウムでカチオン変性したコロイダルシリカやシリカの一次粒子を2価以上の金属イオンで粒子間を結合し、数珠状に連結した数珠状コロイダルシリカも好ましく用いられる。数珠状コロイダルシリカは日産化学工業社のスノーテックス−AKシリーズ、スノーテックス−PSシリーズ、スノーテックス−UPシリーズ等があり、具体的にはIPS−ST−L(イソプロパノール分散、粒子径40〜50nm、固形分30%)、MEK−ST−MS(メチルエチルケトン分散、粒子径17〜23nm、固形分35)等が挙げられる。
フッ化マグネシウムとしては、例えば日産化学工業社のイソプロパノール分散フッ化マグネシウムゾルや、シーアイ化成社のナノテックシリーズ等が挙げられる。
外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子の具体例としては、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層からなる複合粒子、または(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。
なお、空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空シリカ系粒子の平均粒径は5〜200nm、好ましくは10〜70nmが望ましい。中空シリカ系粒子の粒径は変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。
本発明において、用いられる中空シリカ系粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
本発明で使用する中空シリカ系粒子の平均粒径は、形成される低屈折率層の透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、透明被膜の膜厚の3/2〜1/10、好ましくは2/3〜1/10が望ましい。これらの中空シリカ系粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。
分散媒としては、水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)、及びケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)、プロピレンモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜40nm、好ましくは1〜20nm、さらに好ましくは2〜15nmが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、塗布液成分が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率化の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、塗布液成分が内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率化の効果が十分得られなくなることがある。
また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持できないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率化の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的にはAl、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、Sb、Sb、SbO、MoO、ZnO、WO等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF、NaF、NaAlF、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。
シリカ以外の無機化合物としては、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、Sb、Sb、SbO、MoO、ZnO、WOとの1種または2種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiOで表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOx)で表したときのモル比:MOx/SiOが、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。
多孔質粒子のモル比:MOx/SiOが、0.0001未満のものは、得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また多孔質粒子のモル比:MOx/SiOが1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、さらに屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
なお、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。
また多孔質物質としては、多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような中空粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1工程〜第3工程を実施するこれによって中空粒子を製造することができる。
(第1工程:多孔質粒子前駆体の調製)
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。なお、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、W等から選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
これら水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類、及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度には特に制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。
当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO、Al、TiO、またはZrO等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。さらに上記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。
シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整した後、該シード粒子分散液中に上記化合物の水溶液を、アルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにしてシード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
上記したシリカ原料、及び無機化合物原料は、アルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン、及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して粒子に成長したり、またはシード粒子上に析出して粒子成長が起る。従って、粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行なう必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiOのモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。
空洞粒子を調製する場合、MOx/SiOのモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
(第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去)
第2工程では、第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、または、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
なお、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有するケイ酸液または加水分解性の有機珪素化合物を添加して、シリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜40nm、好ましくは0.5〜15nmの厚さであればよい。なお、シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり、厚さが薄いので、上記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、上記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく、後述するシリカ被覆層を形成することができる。なお、除去する無機化合物の量が少ない場合は、粒子が壊れることがないので、必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また、空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多すぎると、シリカ保護膜が厚くなりすぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。
シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、下記の一般式(3)で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、フッ素置換したテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
R”Si(OR′)4−m …(3)
式中、R”とR′は、アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、mは0、1、2または3を表す。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。
このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。なお、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
(第3工程:シリカ被覆層の形成)
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有する加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
なお、ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜40nm、好ましくは1〜20nmとなるような量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。またシリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜40nm、好ましくは1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
ついで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満では、シリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると、緻密な粒子となることがあり、低屈折率化の効果が得られないことがある。
このようにして得られた中空シリカ系粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような中空シリカ系粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
また、塗布組成物に添加したときの安定性の点から中空粒子としては、表面に炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合している中空粒子が好ましい。
つぎに、炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合している中空粒子について説明する。炭化水素主鎖を有するポリマーとは、直接共有結合、または中空シリカ系粒子の表面のシリカと炭化水素主鎖を有するポリマーとの間に結合剤を介在させ、シリカと結合剤とを共有結合し、結合剤とポリマーとが共有結合しているものも言う。結合剤としては、カップリング剤が好ましく用いられる。
炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合している中空粒子は、(1)中空シリカ系粒子表面を未処理、もしくはカップリング剤などで処理した状態で、中空シリカ系粒子表面と共有結合を形成可能な官能基を有するポリマーを反応させ、中空シリカ系粒子表面にポリマーをグラフトさせる方法、あるいは(2)中空シリカ系粒子表面を未処理、もしくはカップリング剤などで処理した状態で、中空シリカ系粒子表面から単量体を重合することでポリマー鎖を生長させ、表面グラフトさせる方法等により製造することができる。具体的な製造方法としては、特開2006−257308号公報に記載の方法を用いることができる。
上記製造方法では、表面修飾率向上の観点から、中空シリカ系粒子表面から単量体を重合することでポリマー鎖を生長させ、表面グラフトさせる方法が好ましい。重合開始能、もしくは連鎖移動能を有する官能基を含むカップリング剤で中空シリカ系粒子を表面処理し、そこから単量体を重合し、ポリマー鎖を生長させて表面グラフトさせる方法がさらに好ましい。重合開始能もしくは連鎖移動能を有する官能基を、中空シリカ系粒子に導入するための表面処理剤(カップリング剤)としては、アルコキシ金属化合物(例えばチタンカップリング剤、アルコキシシラン化合物(シランカップリング剤))が好ましく用いられる。
中空シリカ系粒子は平均粒径の異なる2種以上の中空シリカ系粒子を含有していてもよい。
本発明において、低屈折率層には、導電性金属酸化物被覆層を有する中空シリカ系粒子を用いることも、導電性をさらに高めることができ好ましい。導電性金属酸化物被覆層を形成する金属酸化物としては特に制限はないが、例えば、酸化スズ、アンチモンスズ酸化物、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物およびこれらの混合物から選ばれるものが挙げられる。この中でも、酸化アンチモンにより被覆されている中空シリカ系粒子が特に好ましい。
導電性金属酸化物被覆層の平均厚さとしては、1〜40nm、より好ましくは1〜20nmの範囲であり、中空シリカ系粒子を十分に被覆でき、得られる導電性金属酸化物被覆中空シリカ系粒子の導電性が十分となる点で、被覆層の厚さは1nm以上が好ましい。導電性の向上効果が十分で、導電性金属酸化物被覆中空シリカ系粒子の平均粒子径が小さい場合にも屈折率が十分である点で、被覆層の厚さは40nm以下が好ましい。
本発明において、特に好ましい酸化アンチモン被覆層を有する中空シリカ系粒子について説明する。
酸化アンチモンは、Sb、Sb、SbO等いずれでも良く、酸化アンチモン被覆層中には酸化スズなどを含有していても良い。酸化アンチモン被覆層中のこれらの酸化アンチモンの合計含有率は10%以上が好ましい。また、酸化アンチモン被覆層は、さらにシリカ等で被覆されていても良い。
酸化アンチモン被覆中空シリカ粒子の体積抵抗値は、10〜5000Ω/cmが好ましく、10〜2000Ω/cmの範囲にあることがより好ましい。体積抵抗値をこの範囲にすることで、粒子の屈折率を低く保ちつつ、低屈折率塗膜の表面抵抗を低下せしめることが可能となる。体積抵抗値は、核粒子の粒子サイズ、表面被覆金属酸化物層の膜厚、組成を調整することにより制御できる。
体積抵抗値については、以下の方法で測定した。
内部に円柱状のくりぬき(断面積0.5cm)を有するセラミック製セルを用い、架台電極上にセルを置き、内部に試料粉体0.6gを充填し、円柱状突起を有する上部電極の突起を挿入し、油圧機にて上下電極を加圧し、100kg/cm加圧時の抵抗値(Ω)と試料の高さ(cm)を測定し、抵抗値に高さを乗することによって求めた。
酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子の製造方法について説明する。
まず、多孔質シリカ系粒子、または内部に空洞を有するシリカ系粒子の分散液を前述の方法等により調製する。分散液の固形分濃度として0.1〜40質量%、さらには0.5〜20質量%の範囲にあることが好ましい。固形分濃度が0.1質量%未満の場合は、生産効率が低く、固形分濃度が40質量%を超えると、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が凝集することがあり、被膜の透明性が低下したり、ヘイズが悪化することがある。
また、アンチモン酸の分散液(水溶液)を調製する。アンチモン酸の調製方法としては、多孔質シリカ系粒子または内部に空洞を有するシリカ系粒子の細孔や空洞を埋めることなく、粒子表面に酸化アンチモンの被覆層を形成することができれば特に制限はないが、以下に示す方法は均一で薄い酸化アンチモン被覆層を形成することができるので好ましい。
具体的には、アンチモン酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で処理してアンチモン酸(ゲル)分散液を調製し、ついで、陰イオン交換樹脂で処理する。アンチモン酸アルカリ水溶液としては、例えば特開平2−180717号公報に記載されている、酸化アンチモンゾルの製造方法に用いるアンチモン酸アルカリ水溶液は好適である。
アンチモン酸アルカリ水溶液は、三酸化アンチモン(Sb)、アルカリ物質及び過酸化水素を反応させて得たものであることが好ましく、酸化アンチモンとアルカリ物質と過酸化水素のモル比を1:2.0〜2.5:0.8〜1.5、好ましくは1:2.1〜2.3:0.9〜1.2とし、三酸化アンチモンとアルカリ物質を含む系に、過酸化水素を三酸化アンチモン1モルあたり、0.2モル/hr以下の速度で添加して得られる。
この時使用される三酸化アンチモンは、粉末、特に平均粒子径が10μm以下の微粉末のものが好ましく、また、アルカリ物質としては、LiOH、KOH、NaOH、Mg(OH)、Ca(OH)等を挙げることができ、中でもKOH、NaOHなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。これらのアルカリ物質は、得られるアンチモン酸溶液を安定化させる効果を有する。
まず、水に所定量のアルカリ物質と三酸化アンチモンを加えて三酸化アンチモン懸濁液を調製する。この三酸化アンチモン懸濁液の三酸化アンチモン濃度は、Sbとして3〜15質量%の範囲とすることが望ましい。ついで、この懸濁液を50℃以上、好ましくは80℃以上に加温し、これに濃度が5〜35質量%の過酸化水素水を三酸化アンチモン1モルあたり0.2モル/hr以下の速度で添加する。過酸化水素水の添加速度が0.2モル/hrより速い場合は、得られる酸化アンチモン粒子の粒子径が大きくなり、粒子径分布が広がるので好ましくない。また、過酸化水素水の添加速度が非常に遅い場合は生産性が悪いので、好ましい添加速度範囲としては、0.04〜0.2モル/hrの範囲である。
上記反応で得られたアンチモン酸アルカリ(MHSbO:Mがアルカリ金属の場合)水溶液を、必要に応じて未溶解の残渣を分離した後、さらに必要に応じて希釈し、陽イオン交換樹脂で処理し、アルカリイオンを除去することによってアンチモン酸ゲル(HSbO−)分散液を調製する。
また、アンチモン酸アルカリ水溶液には、スズ酸アルカリ水溶液、リン酸ナトリウム水溶液等のドーピング剤を含む水溶液が含まれていても良い。このようなドーピング剤が含まれているとさらに導電性の高い酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が得られる。
ここで、アンチモン酸は、(HSbO−)(n=2以上の重合体)で表すことができ、粒子径が1〜5nm程度のアンチモン酸(HSbO−)の重合物からなり、微粒子が凝集し、ゲル状態を呈している。
陽イオン交換樹脂で処理する際のアンチモン酸アルカリ水溶液の濃度は、固形分Sbとして0.01〜5質量%、さらには0.1〜3質量%の範囲にあることが好ましい。固形分として0.01質量%未満の場合は生産効率が低く、5質量%を超えるとアンチモン酸の大きな凝集体が生成することがあり、アンチモン酸による中空シリカ系粒子の被覆ができにくく、できたとしても不均一になることがある。
陽イオン交換樹脂の使用量は、得られるアンチモン酸分散液のpHが1〜4、さらには1.5〜3.5の範囲とすることが好ましい。pH1未満の場合は鎖状粒子にならず凝集粒子が生成する傾向にあり、pH4を超えると単分散粒子が生成する傾向がある。また、pH1未満の場合は、酸化アンチモンの溶解度が高いために所定量の酸化アンチモンの被覆が困難になり、pH4を超えると、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が凝集体となることがあり、被膜中での分散性が低下したり、帯電防止効果が不十分となることがある。
ついで、アンチモン酸分散液と多孔質シリカ系粒子、または内部に空洞を有するシリカ系粒子の分散液とを混合し、温度50〜250℃、好ましくは70〜120℃で、通常1〜24時間熟成を行うことによって酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子分散液を得ることができる。
アンチモン酸分散液とシリカ系粒子分散液との混合比率は、シリカ系粒子を固形分として100質量部に、アンチモン酸をSbとして1〜200質量部、好ましくは5〜100質量部となるように添加する。アンチモン酸の混合比率が1質量部未満の場合は、被覆が不均一であったり被覆層の厚さが不十分となり、酸化アンチモンで被覆する効果、即ち、導電性を付与、向上する効果が十分に得られないことがある。アンチモン酸の混合比率が200質量部を超えても、被覆に寄与しない酸化アンチモンが増加したり、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子の導電性がさらに向上することも無く、屈折率が1.60を超えて高くなることがある。
混合した分散液の濃度は、固形分として1〜40質量%、さらには2〜30質量%の範囲にあることが好ましい。混合分散液の濃度が1質量%未満の場合は、酸化アンチモンの被覆効率が不十分であったり、生産効率が低下する。一方、40質量%を超えると、アンチモン酸の使用量が多い場合に、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が凝集することがある。
本発明において、低屈折率層には、触媒を含有することが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸等の有機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類、後述する金属キレート化合物等が挙げられるが、中でも酸触媒および金属キレート化合物が好ましく用いられる。
酸触媒では、塩酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、フタル酸等が好ましく用いられる。金属キレート化合物としては、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするキレート化合物が、特に制限なく好適に用いることができる。
具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが特に好ましく用いられる。また、これらの金属キレート化合物は、単独でも併用でも使用することができる。
また、本発明において、低屈折率層には、下記一般式(4)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物あるいはその重縮合物を含有することが好ましい。
SiX 4−m …(4)
式中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基、Xは水酸基または加水分解可能な置換基であり、mは0〜3の整数である。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
の加水分解可能な置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基等が挙げられる。
具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−1,3−ジメチルブチリデンプロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ジエチルシラン等が挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して用いられる。
低屈折率層を形成する塗布組成物には、有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エタノール、イソプロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
低屈折率層を形成する塗布組成物中の固形分濃度は、1〜4質量%であることが好ましく、固形分濃度を4質量%以下とすることによって、塗布ムラが生じにくくなり、1質量%以上とすることによって、乾燥負荷が軽減される。
低屈折率層を形成する塗布組成物には、フッ素系またはシリコーン系の界面活性剤を含有することが好ましい。上記界面活性剤を含有させることで、塗布ムラを低減したり膜表面の防汚性を向上させるのに有効である。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を含有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを母核としたもので、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン等の誘導体等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は市販品を用いることもでき、例えばサーフロンS−381、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104(旭硝子株式会社製)、フロラードFC−430、同FC−431、同FC−173(フロロケミカル−住友スリーエム製)、エフトップEF352、同EF301、同EF303(新秋田化成株式会社製)、シュベゴーフルアー8035、同8036(シュベグマン社製)、BM1000、BM1100(ビーエム・ヒミー社製)、メガファックF−171、同F−470(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
フッ素系界面活性剤のフッ素含有割合は、0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。上記のフッ素系界面活性剤は、1種または2種以上を併用することができる。
つぎに、シリコーン界面活性剤について説明する。
シリコーン界面活性剤は、ケイ素原子に結合した有機基の種類により、ストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルに大別できる。
ここで、ストレートシリコーンオイルとは、メチル基、フェニル基、水素原子を置換基として結合したものをいう。変性シリコーンオイルとは、ストレートシリコーンオイルから二次的に誘導された構成部分をもつものである。一方、シリコーンオイルの反応性からも分類することができる。これらをまとめると、以下のようになる。
(シリコーンオイル)
1.ストレートシリコーンオイル
1−1.非反応性シリコーンオイル:ジメチル、メチルフェニル置換等。
1−2.反応性シリコーンオイル:メチル水素置換等。
2.変性シリコーンオイル
ジメチルシリコーンオイルに、さまざまな有機基を導入することで生まれたものが変性シリコーンオイルである。
2−1.非反応性変性シリコーンオイル:アルキル、アルキル/アラルキル、アルキル/ポリエーテル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル置換等。
アルキル/アラルキル変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を長鎖アルキル基あるいはフェニルアルキル基が置換したシリコーンオイルである。
ポリエーテル変性シリコーンオイルは、親水性のポリオキシアルキレンを疎水性のジメチルシリコーンを導入した界面活性剤である。
高級脂肪酸変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を高級脂肪酸エステルに置換えたシリコーンオイルである。
アミノ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をアミノアルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイルである。
エポキシ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をエポキシ基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイルである。
カルボキシル変性あるいはアルコール変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をカルボキシル基あるいは水酸基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイルである。
これらのうち、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる。
具体的な商品としては、東レダウコーニング社のL−45、L−9300、FZ−3704、FZ−3703、FZ−3720、FZ−3786、FZ−3501、FZ−3504、FZ−3508、FZ−3705、FZ−3707、FZ−3710、FZ−3750、FZ−3760、FZ−3785、FZ−3785、Y−7499、信越化学社のKF96L、KF96、KF96H、KF99、KF54、KF965、KF968、KF56、KF995、KF351、KF351A、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、FL100、ビックケミージャパン社製の界面活性剤BYKシリーズ、BYK−300/302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−340、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−352、BYK−354、BYK−355/356、BYK−358N/361N、BYK−357、BYK−390、BYK−392、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570、BYK−Silclean3700、GE東芝シリコーン社製のジメチルシリコーンシリーズ、XC96−723、YF3800、XF3905、YF3057、YF3807、YF3802、YF3897等が挙げられる。
また、シリコーン界面活性剤は、シリコーンオイルのメチル基の一部を親水性基に置換した界面活性剤である。置換の位置は、シリコーンオイルの側鎖、両末端、片末端、両末端側鎖等がある。親水性基としては、ポリエーテル、ポリグリセリン、ピロリドン、ベタイン、硫酸塩、リン酸塩、4級塩等がある。
シリコーン界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
非イオン界面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない界面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば東レダウコーニング社のシリコーン界面活性剤SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。低屈折率層を形成する塗布組成物を塗布した際のムラ抑制やレベリング性から好ましい。これらの具体例としては、例えば東レダウコーニング社のシリコーン界面活性剤ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208、FZ−2222等が挙げられる。
低屈折率層を形成する塗布組成物には、より過酷な条件下での耐久試験後に好ましい性能を発揮しやすい点から、以下に説明する反応性変性シリコーン樹脂(反応性変性シリコーンオイルともいう)を含有することが好ましい。
2−2.反応性変性シリコーンオイル:アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコール置換等。
反応性変性シリコーン樹脂としては、ポリシロキサンの側鎖、片末端または両末端にアミノ、エポキシ、カルボキシル、水酸基、メタクリル、メルカプト、フェノール等で置換された反応性タイプの変性シリコーン樹脂である。アミノ変性シリコーン樹脂として、具体的にはKF−860,KF−861,X−22―161A、X−22―161B(以上、信越化学工業株式会社製)、FM−3311,FM−3325(以上、チッソ株式会社製)、エポキシ変性シリコーン樹脂としては、KF―105、X−22−163A、X−22−163B、KF−101、KF−1001(以上、信越化学工業株式会社製)、ポリエーテル変性シリコーン樹脂としてはX−22−4272、X−22−4952、カルボキシル変性シリコーン樹脂としてはX−22−3701E、X−22−3710(以上、信越化学工業株式会社製)、カルビノール変性シリコーン樹脂としてはKF−6001、KF−6003(以上、信越化学工業株式会社製)、メタクリル変性シリコーン樹脂としてはX−22−164C(以上、信越化学工業株式会社製)、メルカプト変性シリコーン樹脂としてはKF−2001(以上、信越化学工業株式会社製)、フェノール変性シリコーン樹脂としてはX−22−1821(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。水酸基変性シリコーン樹脂としては、FM−4411、FM−4421、FM−DA21,FM−DA26(以上、チッソ株式会社製)等が挙げられる。その他、片末端反応性シリコーン樹脂のX−22−170DX、X−22−2426、X−22−176F(信越化学工業株式会社製)等も含まれる。
上記した界面活性剤は、他の界面活性剤と併用して用いてもよく、また適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、また、ポリオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等と併用しても良い。上記した界面活性剤の添加量は、低屈折率層塗布組成物中、0.05〜3.0質量%であることが、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する点から好ましい。
また、上記した界面活性剤は、塗布ムラを低減させる目的で、導電層にも含有させることができる。
低屈折率層は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、低屈折率層を形成する上記塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化処理することで形成される。
塗布量は、ウェット膜厚として0.05〜100μmが適当で、好ましくは、0.1〜50μmである。また、ドライ膜厚が上記膜厚となるように塗布組成物の固形分濃度は調整される。
硬化方法としては、加熱することによって熱硬化させる方法、紫外線等の光照射によって硬化させる方法などが挙げられる。熱硬化させる場合は、加熱温度は50〜300℃が好ましく、好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは80〜150℃である。光照射によって硬化させる場合は、照射光の露光量は10mJ/cm〜10J/cmであることが好ましく、100mJ/cm〜500mJ/cmがより好ましい。
ここで、照射される光の波長域としては特に限定されないが、紫外線領域の波長を有する光が好ましく用いられる。具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜150mJ/cmであるが、特に好ましくは20〜100mJ/cmである。
また、低屈折率層を形成後、温度50〜160℃で加熱処理を行う工程を含んでも良い。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば50℃であれば、好ましくは3日間以上30日未満の期間、160℃であれば10分以上1日以下の範囲が好ましい。
上記のように各層を塗布により形成するに際して、透明フィルム基材の幅が1.4〜4mでロール状に巻き取られた状態から繰り出して、上記塗布を行い、乾燥・硬化処理した後、ロール状に巻き取られることが好ましい。また、反射防止フィルムにおいては反射防止層を積層した後、ロール状に巻き取った状態で、温度50〜160℃で加熱処理を行う製造方法によって製造されることが、反射防止フィルムを長尺塗布した際の効率性や安定性から好ましい。加熱処理期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば、温度50℃であれば、好ましくは3日間以上、30日未満の期間、温度160℃であれば、10分以上、1日以下の範囲が好ましい。通常は、巻外部、巻中央部、巻き芯部の加熱処理効果が偏らないように、比較的低温に設定することが好ましく、温度50〜60℃付近で、7日間程度行うことが好ましい。
加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが必要であり、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが好ましい。
ハードコートフィルム及び反射防止フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれば特に限定されないが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックが好ましく、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。またガラス繊維などの充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることがさらに好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましい。
(反射防止フィルムの反射率)
上記した反射防止フィルムの反射率は、分光光度計により測定を行うことができる。その際、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行ってから、可視光領域(400〜700nm)の反射光を測定する。反射率は低いほど好ましいが、可視光領域の波長における平均値が2.5%以下であることが好ましく、最低反射率は1.5%以下であることが好ましい。また、反射率が2.5%以下であれば、本発明の反射防止フィルムと見なすことができ、可視光の波長領域において、平坦な形状の反射スペクトルを有することが好ましい。
また、反射防止処理を施した画像表示装置表面の反射色相は、反射防止膜の設計上可視光領域において短波長域や長波長域の反射率が高くなることから赤や青に色づくことが多いが、反射光の色味は用途によって要望が異なり、薄型テレビ等の最表面に使用する場合にはニュートラルな色調が好まれる。
この場合、一般的に反射色相範囲は、XYZ表色系(CIE1931表色系)上で、
0.17≦x≦0.33、
0.10≦y≦0.33
であれば、実用上問題はないが、xy平面上において(x、y)=(0.31、0.31)からの距離=xyが0.05以下となる範囲が、より色味がないニュートラルに近いため好ましく、0.03以下がさらに好ましい。
高屈折率層と低屈折率層の膜厚は、各々の層の屈折率より反射率、反射光の色味を考慮して常法に従って計算で求められる。
(表面処理)
各層を塗布する前に表面処理することが好ましい。表面処理方法としては、洗浄法、アルカリ処理法、フレームプラズマ処理法、高周波放電プラズマ法、電子ビーム法、イオンビーム法、スパッタリング法、酸処理、コロナ処理法、大気圧グロー放電プラズマ法等が挙げられる。
コロナ処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理のことであり、春日電機株式会社や株式会社トーヨー電機などで市販されている装置を用いて行うことができる。コロナ放電処理の強度は、電極間距離、単位面積当たりの出力、ジェネレーターの周波数に依存する。
コロナ処理装置の一方の電極(A電極)は、市販のものを用いることができるが、材質はアルミニウム、ステンレスなどから選択ができる。もう一方はプラスチックフィルムを抱かせるための電極(B電極)であり、コロナ処理が、安定かつ均一に実施されるように、前記A電極に対して一定の距離に設置されるロール電極である。これも通常市販されているものを用いることができ、材質は、アルミニウム、ステンレス、及びそれらの金属でできたロールに、セラミック、シリコン、EPTゴム、ハイパロンゴムなどがライニングされているロールが好ましく用いられる。
本発明において、コロナ処理に用いる周波数は、20kHz以上100kHz以下の周波数であり、30kHz〜60kHzの周波数が好ましい。周波数が低下するとコロナ処理の均一性が劣化し、コロナ処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ処理を行う場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ処理を実施する場合には、安定した処理を行うことが難しくなり、結果として、処理ムラが発生する。
コロナ処理の出力は、1〜5W・min./mであるが、2〜4W・min./mの出力が好ましい。電極とフィルムとの距離は、5mm以上50mm以下であるが、好ましくは、10mm以上35mm以下である。
間隙が開いてくると、一定の出力を維持するためにより高電圧が必要になり、ムラが発生しやすくなる。また、間隙が狭くなりすぎると、印加する電圧が低くなりすぎ、ムラが発生しやすくなる。さらにまた、フィルムを搬送して連続処理する際に電極にフィルムが接触し傷が発生する。
アルカリ処理方法としては、ハードコート層を塗設したフィルムをアルカリ水溶液に浸す方法であれば特に限定されない。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等が使用可能であり、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
アルカリ水溶液のアルカリ濃度、例えば水酸化ナトリウム濃度は0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。アルカリ処理温度は、通常10〜80℃、好ましく20〜60℃である。アルカリ処理時間は、5秒〜5分、好ましくは30秒〜3分である。アルカリ処理後のフィルムは、酸性水で中和した後、十分に水洗いを行うことが好ましい。
(透明樹脂フィルム)
ここで、本発明のハードコートフィルムに用いられる透明樹脂フィルムよりなる透明フィルム基材について、説明する。
透明フィルム基材としては、製造が容易であること、電離放射線硬化型樹脂層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
ここでいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(商品名アートン:JSR社製、商品名ゼオネックスおよびゼオノア:日本ゼオン社製)、ポリビニルアセタール、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム、またはガラス板等を挙げることができる。
中でも、セルロースエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系フィルムであって、例えば、コニカミノルタタック、製品名KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、およびKC12UR(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)が、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
これらのフィルムは、溶融流延製膜法で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜法で製造されたフィルムであってもよい。
透明フィルム基材としては、セルロースエステル系フィルム(以下セルロースエステルフィルムともいう)を用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
特に、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースエステルフィルムを用いるのが、好ましい。
2.3≦X+Y≦3.0 0.1≦Y≦2.0
特に、2.5≦X+Y≦2.9 3.0≦Y≦1.2
であることが好ましい。
以下、好ましい透明樹脂フィルムであるセルロースエステルフィルムについて詳細に説明する。
セルロースエステルフィルムは、熱処理による基材変形が少なく、平面性に優れた反射防止フィルムを得る上で、陽電子消滅寿命法により求められる自由体積半径が0.250〜0.310nmであることが好ましい。さらに、全自由体積パラメータが1.0〜2.0であるセルロースエステルフィルムであることがより好ましい。
なお、上記自由体積とは、透明樹脂フィルムの分子鎖に占有されていない空隙部分を表している。これは、陽電子消滅寿命法を用いて測定することができる。具体的には、陽電子を試料に入射してから消滅するまでの時間を測定し、その消滅寿命から原子空孔や自由体積の大きさ、数濃度等に関する情報を非破壊的に観察することにより求めることができる。
(陽電子消滅寿命法による自由体積半径と全自由体積パラメータの測定)
下記測定条件にて陽電子消滅寿命と相対強度を測定した。
(測定条件)
陽電子線源:22NaCl(強度1.85MBq)
ガンマ線検出器:プラスチック製シンチレーター+光電子増倍管
装置時間分解能:290ps
測定温度:23℃
総カウント数:100万カウント
試料サイズ:20mm×15mm
20mm×15mmにカットした試料切片を、20枚重ねて約2mmの厚み
にした。試料は測定前に24時間真空乾燥を行った。
照射面積:約10mmφ
1チャンネルあたりの時間:23.3ps/ch
上記の測定条件に従って、陽電子消滅寿命測定を実施し、非線形最小二乗法により3成分解析して、消滅寿命の小さいものから、τ、τ、τとし、それに応じた強度をI1,I,I(I+I+I=100%)とした。
最も寿命の長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて自由体積半径R(nm)を求めた。τが空孔での陽電子消滅に対応し、τが大きいほど空孔サイズが大きいと考えられている。
τ=(1/2)〔1−{R/(R+0.166)}
+(1/2π)sin{2πR/(R+0.166)}〕−1
ここで、0.166(nm)は、空孔の壁から浸出している電子層の厚さに相当する。
さらに、全自由体積パラメータVPは、下記式により求めた。
={(4/3)π(R}(nm
=I(%)×V(nm
ここでI(%)は、空孔の相対的な数濃度に相当するため、Vは相対的な空孔量に相当する。
以上の測定を2回繰り返し、その平均値を求めた。
陽電子消滅寿命法は、例えば MATERIAL STAGE vol.4,No.5 2004 p21-25、東レリサーチセンター THE TRC NEWS No.80(Jul.2002)p20-22、「ぶんせき」(1988,pp.11-20)に「陽電子消滅法による高分子の自由体積の評価」が掲載されており、これらを参考にすることができる。
セルロースエステルフィルムにおける自由体積半径は、0.250〜0.315nm、好ましくは0.250〜0.310nmであり、さらに好ましい範囲は、0.285〜0.305nmである。自由体積半径が0.250nm未満である。自由体積半径が0.250〜0.315nmでは、熱処理に対する基材変形が小さく、平面性に優れた反射防止フィルムが得られる。
セルロースエステルフィルムを形成するセルロースエステルの原料としては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
アシル化剤が、酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法等を参考にして合成することができる。
また、本発明に用いられるセルロースエステルは、各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
セルロースエステルの数平均分子量は、50,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、かつ、適度なドープ粘度となり好ましく、さらに好ましくは、80,000〜150,000である。
セルロースエステルフィルムは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し、製膜する方法で製造される。
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
上記の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド、あるいは酢酸メチルが好ましく用いられる。
上記有機溶媒の他に、0.1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。
これらは上記のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70〜95質量%に対してエタノール5〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
セルロースエステルフィルムには、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
中でも、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等が好ましい。特に多価アルコールエステル系可塑剤を用いることが好ましく、ハードコート層の鉛筆硬度が4H以上を安定に得ることができるため、好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明において、好ましく用いられる多価アルコールは、つぎの一般式(5)で表される。
−(OH) …(5)
式中、Rは、n価の有機基、nは、2以上の正の整数、OH基はアルコール性及び/またはフェノール性の水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 2009196202
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Figure 2009196202
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グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることができる。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
また、他の可塑剤としてリン酸エステル系可塑剤を用いることもでき、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
このほか、特開2003−12859号公報記載のアクリルポリマーなどを含有させることも好ましい。
(アクリルポリマー)
セルロースエステルフィルムは、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示す重量平均分子量が、500以上、30,000以下であるアクリルポリマーを含有することが好ましい。
該ポリマーの重量平均分子量が、500以上、30,000以下のもので、該ポリマーの組成を制御することで、セルロースエステルと該ポリマーとの相溶性を良好にすることができる。
特に、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーについて、好ましくは重量平均分子量が、500以上、10,000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、反射防止フィルムとして優れた性能を示す。
該ポリマーは重量平均分子量が、500以上、30,000以下であるから、オリゴマーから低分子量ポリマーの間にあると考えられるものである。このようなポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、さらに特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
なお、アクリルポリマーとは、芳香環あるいはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーを指す。芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、必ず芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
また、シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
アクリルポリマーは上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、また、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることができるが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることができる。
芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーの中で、芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位が20〜40質量%を有し、且つアクリル酸またはメタクリル酸メチルエステルモノマー単位を50〜80質量%有することが好ましい。該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
シクロヘキシル基を有するアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることができるが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることができる。
シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマー中、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を20〜40質量%を有しかつ50〜80質量%有することが好ましい。また、該ポリマー中、水酸基
を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー及びシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーは何れもセルロース樹脂との相溶性に優れる。
これらの水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリルポリマー中2〜20質量%含有することが好ましい。
また、側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることができる。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2〜20質量%含有したものは、勿論セルロースエステルとの相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
アクリルポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号公報は2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることができ、特に該公報に記載の方法が好ましい。
この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることができる。上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/または側鎖に水酸基を有するポリマーは、ポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
さらに、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示すエチレン性不飽和モノマーとして、スチレン類を用いたポリマーであることが負の屈折性を発現させるために好ましい。スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定される物ではない。
前記不飽和エチレン性モノマーとして挙げた例示モノマーと共重合してもよく、また複屈折性を制御する目的で、2種以上の上記ポリマーをもちいてセルロースエステルに相溶させて用いても良い。
さらに、セルロースエステルフィルムは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、より好ましくは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
(ポリマーX、ポリマーY)
本発明に用いられるポリマーXは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと、分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上、30000以下のポリマーである。
好ましくは、Xaは、分子内に芳香環と親水性基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは、分子内に芳香環を有せず親水性基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
ポリマーXは、下記の一般式(6)で表される。
−(Xa)−(Xb)−(Xc)− …(6)
さらに好ましくは、下記の一般式(7)で表されるポリマーである。
−[CH−C(−R)(−CO)]−[CH−C(−R
(−CO−OH)−]−[Xc]− …(7)
式中、R、Rは、HまたはCHを表す。Rは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基を表す。Rは−CH−、−C−または−C−を表す。Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表す。m、nおよびpは、モル組成比を表す。ただし、m≠0、n≠0、k≠0、m+n+p=100である。
本発明において、アクリル系ポリマーXを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
アクリル系ポリマーXにおいて、親水性基とは、水酸基、エチレンオキシド連鎖を有する基をいう。
分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えばアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
Xcとしては、Xa、Xb以外のものでかつ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
Xa、Xb、及びXcのモル組成比=m:nは、99:1〜65:35の範囲が好ましく、さらに好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
Xaのモル組成比が多いと、セルロースエステルとの相溶性が良化するが、フィルム厚み方向リタデーション(Rt)値が大きくなる。Xbのモル組成比が多いと、上記相溶性が悪くなるが、厚み方向リタデーション(Rt)を低減させる効果が高い。また、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると、製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図り、Xa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
ポリマーXの分子量は、重量平均分子量が、5,000以上、30,000以下であり、さらに好ましくは8,000以上、25,000以下である。
重量平均分子量を5,000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの、高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。重量平均分子量が30,000を以内とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、さらには製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
ポリマーXの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することができる。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。また、重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度または重合反応時間を調整することで可能である。
つぎに、ポリマーYは、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上、3,000以下のポリマーである。
ここで、ポリマーYの重量平均分子量が500以上では、ポリマーの残存モノマーが減少するので、好ましい。また、ポリマーYの重量平均分子量を3,000以下とすることは、厚み方向リタデーション(Rt)値の低下性能を維持するために好ましい。
Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリルまたはメタクリルモノマーである。
ポリマーYは、下記の一般式(8)で表される。
−(Ya)−(Yb)− …(8)
さらに好ましくは、下記の一般式(9)で表されるポリマーである。
−[CH−C(−R)(−CO)]−[Yb]− …(9)
式中、Rは、HまたはCHを表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Ybは、Yaと共重合可能なモノマー単位を表す。kおよびqは、モル組成比を表す。ただし、k≠0、k+q=100である。
また、Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーYを構成するエチレン性不飽和モノマーYaは、アクリル酸エステルとして、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
ポリマーX、及びポリマーYを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法で、できるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
ポリマーX、及びポリマーYの重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、さらに特開2000−128911号公報または同2000−344823号公報に記載された一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができる。
ポリマーYは、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。この場合、ポリマーYの末端には、重合触媒および連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、ポリマーYとセルロースエステルとの相溶性を調整することができる。
ポリマーXおよびポリマーYの水酸基価は30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
ここで、水酸基価の測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。具体的には試料xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。つぎに、電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。さらに空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。水酸基価は、つぎの式によって算出する。
水酸基価={(B−C)×f×28.05/x}+D
式中、Bは、空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは、滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは、酸価、また28.05は、水酸化カリウムの1mol量・56.11の1/2を表す。
ポリマーXとポリマーYのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(i)、式(ii)を満足する範囲であることが好ましい。ポリマーXの含有量をxg(質量%)、ポリマーYの含有量をyg(質量%)とすると、
式(i) 5質量%≦xg+yg≦35質量%
式(ii) 0.05≦yg/(xg+yg)≦0.4
なお、式(i)の好ましい範囲は、10質量%≦xg+yg≦25質量%である。
ここで、質量%=ポリマーXまたはポリマーYの質量/セルロースエステルの質量×100
また、ポリマーの重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
測定条件は、以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工株式会社製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所株式会社製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK
standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1,000,000〜500までの13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
ポリマーXとポリマーYは、総量として5質量%以上であれば、厚み方向リタデーション(Rt)値の低減に十分な作用をする。また、総量として35質量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。
ポリマーXとポリマーYは、後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することができる。
セルロースエステルフィルム中の上記可塑剤の総含有量は、固形分総量に対し、5〜20質量%が好ましく、6〜16質量%がさらに好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。また、2種の可塑剤の含有量は各々少なくとも1質量%以上であり、好ましくは各々2質量%以上含有することである。
多価アルコールエステル系可塑剤は、1〜15質量%含有することが好ましく、特に3〜11質量%含有することが好ましい。多価アルコールエステル系可塑剤の含有量が、少ないと平面性の劣化が認められ、また多すぎると、ブリードアウトがしやすい。多価アルコールエステル系可塑剤とその他の可塑剤との質量比率は、1:4〜4:1の範囲であることが好ましく、1:3〜3:1であることがさらに好ましい。可塑剤の添加量が多すぎても、また少なすぎてもフィルムが変形しやすく好ましくない。
(溶液流延製膜法)
セルロースエステルフィルムの溶液流延製膜法による製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
まず、ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は、特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤または膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃がさらに好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
または冷却溶解法も、好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
つぎに、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
この明細書において、輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、さらに好ましくは50個/m2以下であり、さらに好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は、通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
つぎに、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面
をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃がさらに好ましい。または、冷却することによって、ウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら、目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mは、ウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、Nは、Mを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の反射防止フィルム用のセルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが特に好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.01〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍がさらに好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.12〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることができる。縦方向と横方向の延伸倍率のいずれかが1.01倍未満ではハードコート層を形成する際の紫外線照射による平面性の劣化が生じやすくなる。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜180℃の範囲で段階的に高くすることが寸法安定性をよくするためさらに好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に10〜70μmの薄膜フィルムでは平面性と耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを得ることが困難であったが、本発明によれば、平面性と耐擦傷性に優れた薄膜の反射防止フィルムが得られ、また生産性にも優れているため、セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜70μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは20〜60μmである。最も好ましくは35〜60μmである。また、共流延法によって多層構成としたセルロースエステルフィルムも好ましく用いることができる。セルロースエステルが多層構成の場合でも紫外線吸収剤と可塑剤を含有する層を有しており、それがコア層、スキン層、もしくはその両方であってもよい。
本発明のハードコートフィルム及び反射防止フィルムは、幅1m以上であり、幅1.4〜4mのものが好ましく用いられる。特に好ましくは1.4〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。また、セルロースエステルフィルムのハードコート層を設ける面の中心線平均粗さ(Ra)は0.001〜1μmのものを用いることができる。
(溶融流延製膜法)
セルロースエステルフィルムは、溶融流延製膜法によって形成することも、好ましい。
溶液流延製膜法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流延による成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れるセルロースエステルフィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
セルロースエステル及び添加剤の混合物を熱風乾燥または真空乾燥した後、溶融押出し、T型ダイよりフィルム状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
セルロースエステルと、その他、必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましく、セルロースエステルと添加剤を加熱前に混合することが、さらに好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、また、セルロースエステル調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー一般的な混合機を用いることができる。
上記のようにフィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機で溶融して製膜するようにしてもよい。また、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
押出し機は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
押出し機内及び押出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出し機内のフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。具体的には、溶融押出し時の温度は、150〜300℃であることが好ましく、特に180〜270℃の範囲であることが好ましい。さらに200〜250℃の範囲であることが好ましい。
押出し時の溶融粘度は、10〜100,000ポイズ、好ましくは100〜10,000ポイズである。
また、押出し機内でのフィルム構成材料の滞留時間は、短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機1の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
上記押出し機でフィルム状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、幅手方向もしくは製膜方向に延伸製膜されたフィルムであることが特に好ましい。
前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、セルロースエステルのガラス転移温度(Tg)から、Tg+100℃の範囲内に加熱し、一段または多段縦延伸することが好ましい。
つぎに、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたセルロースエステルフィルムを横延伸し、ついで熱処理することが好ましい。
熱処理は、ガラス転移温度(Tg)−20℃〜延伸温度の範囲内で、通常0.5〜300秒間搬送しながら行うことが好ましい。
熱処理されたフィルムは、通常、ガラス転移温度(Tg)以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。また冷却は、最終熱処理温度からガラス転移温度(Tg)までを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
冷却する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度は、最終熱処理温度をT1、フィルムが最終熱処理温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記の紫外線吸収剤を具体例として挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)、LA31(旭電化社製)、Sumisorb250(住友化学社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
また、特開2001−187825号公報に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、長尺フィルムの面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
また、セルロースエステルフィルムには滑り性を付与するため、前述の活性線硬化型樹脂を含む塗布層で記載するものと同様の微粒子を用いることができる。
微粒子としては、無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒子径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましいのは7〜20nmである。これらは、主に粒子径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、これらの微粒子を使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976、及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
微粒子としてポリマー粒子を用いることもでき、ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上GE東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため、特に好ましく用いられる。
また、セルロースエステルフィルムには、以下に説明する劣化防止剤を含有することが好ましい。
つぎに劣化防止剤について説明する。
(劣化防止剤)
劣化防止剤とは、高分子が熱や酸素、水分、酸などによって分解されることを化学的な作用によって抑制する材料のことである。本発明に用いられる透明基材フィルムは、溶融流延法の場合、特に200℃以上の高温下で成形されるため、高分子の分解・劣化が起きやすい系であり、劣化防止剤をフィルム形成材料中に含有させることが好ましい。
フィルム形成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために劣化防止剤を用いる。
劣化防止剤としては、例えば、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸捕捉剤、金属不活性化剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。これらの中でも、フィルム形成材料中に劣化防止剤として酸化防止剤を含むことが好ましい。
フィルム形成材料中の劣化防止剤は、少なくとも1種以上選択でき、フィルムの透明性から添加する量は、透明基材フィルムを形成する透明基材樹脂100質量%に対して、劣化防止剤の添加量は0.01質量%以上、10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、5.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上、2.0質量%以下である。
フィルム形成材料は、材料の変質や吸湿性を回避する目的で、構成する材料が1種または複数種のペレットに分割して保存することができる。ペレット化は、加熱時の溶融物の混合性または相溶性が向上でき、または得られたフィルムの光学的な均一性が確保できることもある。
(酸化防止剤)
また、セルロースエステルフィルムには以下に説明する酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、酸素によるフィルム形成材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でもフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、酸素スカベンジャー等が挙げられる。これらの中でもフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤が好ましいが、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の2者の組み合わせを用いることがより好ましく、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とアルキルラジカル捕捉剤の3者の組み合わせを用いることが最も好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、使用目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に用いられるセルロースエステルの質量に対して、0.01質量%以上、10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、5.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上、2.0質量%以下である。
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤は既知の化合物であり、パラ−t−ブチルフェノール、パラ−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等のアルキル基置換フェノールの他、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載の、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物、いわゆるヒンダードフェノール系化合物が挙げられるが、これらの中で、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
ヒンダードフェノールフェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えば、チバスペシャルティケミカルズ株式会社から、「IRGANOX1076」及び「IRGANOX1010」という商品名で市販されている。
(リン系酸化防止剤)
リン系酸化防止剤として、ホスファイト系化合物、及びホスホナイト系化合物が挙げられる。ホスファイト系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイト等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス[フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト]等のジホスファイト系化合物;等が挙げられる。上記タイプのホスファイト系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、「SumilizerGP」、株式会社ADEKA社から「ADK STAB PEP−24G」、「ADK STAB PEP−36」、「ADK STAB 3010」、「ADK STAB HP−10」及び「ADK STAB 2112」という商品名で市販されている。
ホスホナイト系化合物の具体例としては、ジメチル−フェニルホスホナイト、ジ−t−ブチル−フェニルホスホナイト、ジフェニル−フェニルホスホナイト、ジ−(4−ペンチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2−t−ブチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2−メチル−3−ペンチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2−メチル−4−オクチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(3−ブチル−4−メチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(3−ヘキシル−4−エチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,4,6−トリメチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,3−ジメチル−4−エチル−フェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,6−ジエチル−3−ブチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,3−ジプロピル−5−ブチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ジ−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ビフェニル−4−イル−ホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4′−(ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル−ホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−4−プロピルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジエチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジエチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,5−トリエチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジエチル−4−プロピルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジエチル−6−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジエチル−5−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジエチル−6−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジプロピル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジプロピル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジプロピル−5−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジプロピル−6−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジプロピル−5−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−6−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−6−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−3−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。上記タイプのリン系化合物は、例えば、チバスペシャルティケミカルズ株式会社から「IRGAFOSP−EPQ」、堺化学工業株式会社から「GSY−P101」という商品名で市販されている。
リン系酸化防止剤として、ホスホナイト系化合物が好ましく、中でも、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト等の4,4′−ビフェニレンジホスホナイト化合物が好ましく、特に好ましいものはテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイトである。
(アルキルラジカル捕捉剤)
セルロースエステルフィルムには以下に説明するアルキルラジカル捕捉剤を含有することが好ましい。ここでいうアルキルラジカル捕捉剤とは、アルキルラジカルが速やかに反応しうる基を有し、かつアルキルラジカルと反応後に後続反応が起こらない安定な生成物を与える化合物を意味する。
アルキルラジカル捕捉剤として、住友化学株式会社から、「SumilizerGM」、「SumilizerGS」という商品名で市販されている。
(ヒンダードアミン光安定剤)
セルロースエステルフィルムには、フィルム形成材料の熱溶融時の劣化防止剤、また製造後に偏光子保護フィルムとして晒される外光や液晶ディスプレイのバックライトからの光に対する劣化防止剤として、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物を添加することが好ましい。ヒンダードアミン光安定剤としては、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。
ヒンダードアミン光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
また、高分子タイプの化合物でもよく、具体例としては、N,N′,N″,N″′−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルホリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等の、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等の、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等で、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。
上記タイプのヒンダードアミン化合物は、例えばチバスペシャルティケミカルズ株式会社から、「TINUVIN144」及び「TINUVIN770」、株式会社ADEKA社から「ADK STAB LA−52」という商品名で市販されている。
ヒンダードアミン光安定剤は、本発明に用いられるセルロースエステルの質量に対して、0.1〜10質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(酸捕捉剤)
セルロースエステルフィルムには、酸捕捉剤が、高温環境下では酸による分解を抑制することから、含有されることが好ましい。酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物が好ましい。
このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(すなわち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル、例えば、ブチルエポキシステアレート等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油、及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815Cやその他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物も好ましく用いることができる。
さらに上記以外に用いることが可能な酸捕捉剤としては、オキセタン化合物やオキサゾリン化合物、あるいはアルカリ土類金属の有機酸塩やアセチルアセトナート錯体、特開平5−194788号公報の段落番号[0068]〜[0105]に記載されているものが含まれる。
本発明においては、酸捕捉剤は、本発明に用いられるセルロースエステルの質量に対して、0.1〜10質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
なお酸捕捉剤は、酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
(金属不活性剤)
セルロースエステルフィルムには、金属不活性剤も含まれることも好ましい。金属不活性剤とは、酸化反応において開始剤あるいは触媒として作用する金属イオン不活性化する化合物を意味し、ヒドラジド系化合物、シュウ酸ジアミド系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられ、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2−ヒドロキシエチルシュウ酸ジアミド、2−ヒドロキシ−N−(1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ベンズアミド、N−(5−tert−ブチル−2−エトキシフェニル)−N′−(2−エチルフェニル)シュウ酸アミド等が挙げられる。
金属不活性剤は、透明基材フィルムの樹脂100質量%に対して、0.0002〜2質量%添加することが好ましく、さらに0.0005〜2質量%添加することが好ましく、さらに0.001〜1質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(その他の添加剤)
セルロースエステルフィルムには、その他の添加剤として、例えば、染料、顔料、蛍光体、二色性色素、リターデーション制御剤、屈折率調整剤、ガス透過抑制剤、抗菌剤、生分解性付与剤などを添加しても良い。
そして、これらの添加剤をセルロースエステルフィルムに含有させる方法としては、各々の材料を固体或いは液体のまま混合し、加熱溶融し混練して均一な溶融物とした後、流延してセルロースエステルフィルムを形成する方法であっても、予め全ての材料を溶媒等を用いて、溶解して均一溶液とした後、溶媒を除去して、添加剤とセルロースエステルフィルムの混合物で含有させても良い。
(偏光板)
本発明によるハードコートフィルムを用いた偏光板について述べる。
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。本発明のハードコートフィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面に該ハードコートフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。
本発明のハードコートフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは、面内リタデーション(Ro)が、20〜70nm、厚み方向リタデーション(Rt)が100〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)であることが好ましい。
なお、リタデーション値Ro、Rtは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
これらは例えば、特開2002−71957号、特願2002−155395号記載の方法で作製することができる。または、さらにディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。あるいは面内リタデーション(Ro)が、0〜5nm、厚み方向リタデーション(Rt)が−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられる。
本発明のハードコートフィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2(コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明のハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
(画像表示装置)
本発明のハードコートフィルム面を画像表示装置の鑑賞面側に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の画像表示装置を作製することができる。
本発明のハードコートフィルムは、偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の反射防止フィルムは、反射防止層の反射光の色ムラが著しく少なく、また反射率が低く、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。
特に、本発明のハードコートフィルムを、プラズマディスプレイの前面板フイルターとして加工し、装着したプラズマディスプレイは、光干渉ムラもなく優れた視認性を有する画像表示装置である。また、30型以上の大画面のプラズマディスプレイ画像表示装置でも、色ムラや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果がある。また本発明のハードコートフィルムは、良好な帯電防止性も有しているものである。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
本発明によるハードコートフィルムを作製するにあたり、まず、透明フィルム基材を作製した。
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート(平均酢化度61.0%) 100質量部
トリフェニルフォスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 1質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で温度80℃に保温し、攪拌しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。
つぎに、このドープ組成物を濾過し、冷却して温度33℃に保ち、ステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところでステンレスバンドから剥離し、テンターで幅方向に1.1倍に延伸した後、多数のロールで搬送させながら乾燥させ、両端部に高さ10μmのナーリングを設けて巻き取り、膜厚80μm、幅1.5m、長さ4000mの透明フィルム基材1(セルローストリアセテートフィルム)を作製した。また、膜厚及び長さを変更した以外は上記と同様にして、膜厚40μm、幅1.5m、長さ5000mの透明フィルム基材2(セルローストリアセテートフィルム)を作製した。
(ハードコートフィルムの作製)
上記作製した透明フィルム基材上に、下記のハードコート層用塗布組成物をダイコートし、温度80℃で乾燥の後、0.2J/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化させ、厚さ7μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
(ハードコート層用塗布組成物1−1)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 4質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 18質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 46質量部
メチルエチルケトン 107質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−2)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 5質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 18質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 46質量部
メチルエチルケトン 107質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−3)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル
アクリレート 0.1質量部
(MEDOL10、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 37質量部
メチルエチルケトン 86質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−4)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル
アクリレート 0.2質量部
(MEDOL10、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 37質量部
メチルエチルケトン 87質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−5)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)
メチルアクリレート 3質量部
(MIBDOL10、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 13質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 38質量部
メチルエチルケトン 89質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−6)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 20質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)
メチルアクリレート 20質量部
(MIBDOL10、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−7)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 21質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)
メチルアクリレート 40質量部
(MIBDOL10、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 16質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 47質量部
メチルエチルケトン 110質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−8)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 25質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル
メタクリレート 70質量部
(MMDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 18質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 54質量部
メチルエチルケトン 125質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−9)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 25質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル
メタクリレート 80質量部
(MMDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 18質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 56質量部
メチルエチルケトン 131質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−10)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 140質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
[シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)]
メチルメタクリレート 18質量部
(CHDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 15質量部
メチルエチルケトン 30質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−11)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 150質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
[シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)]
メチルメタクリレート 18質量部
(CHDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
メチルエチルケトン 20質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−12)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 37質量部
メチルエチルケトン 86質量部
(ハードコート層用塗布組成物1−13)
イソプロパノール分散アンチモンドープ酸化スズゾル
(固形分濃度20%、触媒化成工業株式会社製) 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 20質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
さらに、上記作製したハードコートフィルムのハードコート層と反対側の透明フィルム基材の表面に、下記バックコート層用塗布組成物を、ウェット膜厚14μmとなるようにダイコートし、温度80℃にて乾燥して、バックコート層を形成した後、得られたハードコートフィルムを巻き取った。
(バックコート層用塗布組成物)
ジアセチルセルロース 0.6質量部
アセトン 35質量部
メチルエチルケトン 35質量部
メタノール 35質量部
シリカ微粒子(KE−P30、日本触媒株式会社製)の
2%メタノール分散液 16質量部
(評価方法)
上記のようにして作製したハードコートフィルム試料について、物性すなわち、防塵性、ヘイズ(%)、鉛筆硬度、密着性、及び耐光性を下記方法により測定して評価した。得られた結果を、下記の表1に示した。
(防塵性)
ハードコートフィルム試料の帯電防止性能の評価として、各ハードコートフィルムのバックコート側の表面を、陰極管表示装置(CRT)の表示面上に貼り付け、0.5μm以上のホコリ及びティッシュペーパー屑(粉塵)を、1ft あたり100〜200万個有する部屋で、24時間使用した。
その後、陰極管表示装置(CRT)表示面上の各ハードコートフィルム表面に付着したホコリとティッシュペーパー屑(粉塵)の、フィルム100cm あたりの個数を測定し、得られた測定結果を、下記の基準でランク分けして評価した。
防塵性評価基準
◎:10個以下
○:11〜20個
△:21〜50個
×:51〜200個
××:201個以上
ここで、ハードコートフィルムの防塵性が、ランク:○(20個以下)であれば実用上問題はなく、ランク:◎(10個以下)であるのが、より好ましい。
(ヘイズ)
透明性の評価として、各ハードコートフィルム試料のヘイズ(%)を、JIS K 7361−1に準拠して、濁度計NDH2000(日本電色製)を用いて測定した。
(鉛筆硬度)
各ハードコートフィルム試料を、温度25℃、湿度60%RHの環境下で2時間調湿した後、JIS K 5600−5−4に準拠して引っ掻き試験を行った。1kgのおもりを用いて各硬度の鉛筆で引っ掻きを5回場所を変えながら行い、傷が1本になるまでの硬度を測定した。なお、ここでいう傷とは、塗膜の破れ、擦り傷、及び凹みを対象とした。数値が高いほど高硬度を示し、2H以上が好ましい。
(密着性)
各ハードコートフィルム試料について、JIS K 5600−5−6に準拠して、碁盤目テープ剥離試験を行った。各ハードコートフィルム試料のハードコート層表面にカッターで切り込みを入れて100個のマス目をつくり、粘着テープ(日東電工製、No.31B)を圧着してから剥離することを同じ場所で3回繰り返して行った。その後、テープ剥離後の試料のハードコート層表面を目視観察し、以下の基準で評価を行った。
密着性評価基準
○:ハードコート層が全く剥離しない
△:ハードコート層の剥離が認められる
×:ハードコート層が全面剥離する
(耐光性)
ハードコートフィルム試料の耐光性の評価として、各ハードコートフィルム試料の表面に、アイスーパーUVテスター(SUV−F11、岩崎電気株式会社製)を用いて紫外線(UV)照射を行った後、上記と同様にして密着性試験を行った。このとき、ハードコート層表面の剥離が認められるまでのUV照射時間によって、下記の基準でランク分けして耐光性を評価した。
耐光性評価基準
◎:301時間以上
○:201〜300時間
△:101〜200時間
×:100時間以下
Figure 2009196202
上記表1の結果から明らかなように、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)を含有する本発明のハードコートフィルム1−1〜1−11は、環状エーテルを有するビニル化合物(C)を含有しない比較例のハードコートフィルム1−12に比べて、耐光性に優れていることがわかる。また、π共役系導電性ポリマー(A)の代わりに、導電性金属酸化物粒子を使用した比較例のハードコートフィルム1−13に比べて、透明性と硬度が優れていることがわかる。
また、π共役系導電性ポリマー(A)の添加量が、ハードコート層塗布組成物の溶媒を除いた固形分全体量に対して0.05質量%未満であるハードコートフィルム1−1はやや防塵性が不足しており、1.5質量%超過であるハードコートフィルム1−11は非常に優れた防塵性と高い硬度を示しているが、ヘイズがやや高めであることがわかる。
さらに、環状エーテルを有するビニル化合物(C)の添加量が、ハードコート層塗布組成物の溶媒を除いた固形分全体量に対して0.1質量%未満であるハードコートフィルム1−3はやや耐光性が不足しており、30質量%超過であるハードコートフィルム1−9は非常に優れた耐光性を示しているが、硬度がやや低めであることがわかる。
実施例2
(ハードコートフィルムの作製)
下記のハードコート層用塗布組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
(ハードコート層用塗布組成物2−1)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 4質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 18質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 46質量部
メチルエチルケトン 107質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−2)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 5質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 18質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 46質量部
メチルエチルケトン 107質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−3)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジエチルアクリルアミド 0.1質量部
(DEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 37質量部
メチルエチルケトン 86質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−4)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジエチルアクリルアミド 0.2質量部
(DEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 37質量部
メチルエチルケトン 87質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−5)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 3質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 13質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 38質量部
メチルエチルケトン 89質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−6)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 20質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 20質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−7)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 21質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 40質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 16質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 47質量部
メチルエチルケトン 110質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−8)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 25質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ビニルホルムアミド 70質量部
(ビームセット770、荒川化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 18質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 54質量部
メチルエチルケトン 125質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−9)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 25質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ビニルホルムアミド 80質量部
(ビームセット770、荒川化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 18質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 56質量部
メチルエチルケトン 131質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−10)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 140質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
アクリロイルモルフォリン 18質量部
(ACMO、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 15質量部
メチルエチルケトン 30質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−11)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 150質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
アクリロイルモルフォリン 18質量部
(ACMO、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
メチルエチルケトン 20質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−12)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 18質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 37質量部
メチルエチルケトン 86質量部
(ハードコート層用塗布組成物2−13)
イソプロパノール分散アンチモンドープ酸化スズゾル
(固形分濃度20%、触媒化成工業株式会社製) 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 20質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
上記のようにして作製したハードコートフィルム試料について、実施例1と同
様にして評価した。得られた結果を、下記の表2に示した。
Figure 2009196202
上記表2の結果から明らかなように、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びにアミド基を有するビニル化合物(D)を含有する本発明のハードコートフィルム2−1〜2−11は、アミド基を有するビニル化合物(D)を含有しない比較例のハードコートフィルム2−12に比べて、耐光性に優れていることがわかる。また、π共役系導電性ポリマー(A)の代わりに、導電性金属酸化物粒子を使用した比較例のハードコートフィルム2−13に比べて、透明性と硬度が優れていることがわかる。
また、π共役系導電性ポリマー(A)の添加量が、ハードコート層塗布組成物の溶媒を除いた固形分全体量に対して0.05質量%未満であるハードコートフィルム2−1はやや防塵性が不足しており、1.5質量%超過であるハードコートフィルム2−11は非常に優れた防塵性と高い硬度を示しているが、ヘイズがやや高めであることがわかる。
さらに、アミド基を有するビニル化合物(D)の添加量が、ハードコート層塗布組成物の溶媒を除いた固形分全体量に対して0.1質量%未満であるハードコートフィルム2−3はやや耐光性が不足しており、30質量%超過であるハードコートフィルム2−9は非常に優れた耐光性を示しているが、硬度がやや低めであることがわかる。
実施例3
(ハードコートフィルムの作製)
上記作製した透明フィルム基材2上に、下記のハードコート層用塗布組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
(ハードコート層用塗布組成物3−1)
ポリアニリン誘導体2%溶液 4質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 18質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 46質量部
メチルエチルケトン 107質量部
(ポリアニリン誘導体2%溶液の調製)
なお、ポリアニリン誘導体2%溶液は、つぎのようにして調製した。
酢酸エチル4500mlに、下記の式[7]で表されるアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(3つのアルキル置換基を有し、アルキル置換基の炭素数合計が20、Mn:460、スルホン酸基量:2.2mmol/g、酢酸エチルへの溶解度15%以上)1モル(スルホン酸官能基換算)を溶解し、o−アニシジン1モルを加えた後、1N塩酸15L(15モル相当)を加え、この溶液を2〜8℃に保ちながら攪拌して乳化させ、上記o−アニシジンに、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩に由来するスルホン酸構造を導入した。ここで、上記塩酸の混合割合は、上記o−アニシジン1モルに対して15モルである。ついで、酸化剤として過硫酸アンモニウム1.2モルを加え、20時間重合反応を行った。重合反応が進行するにつれてポリo−アニシジン特有の緑色の溶液が得られた。そして、この溶液にメタノールを加え、生じた沈殿を乾燥して導電性ポリマーを得た。ここで得た導電性ポリマー2gに、メチルエチルケトン98gを加えて攪拌したところ、メチルエチルケトンに完全に溶解したポリアニリン誘導体2%溶液を得た。
Figure 2009196202
(ハードコート層用塗布組成物3−2)
ポリアニリン誘導体2%溶液 5質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 18質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 46質量部
メチルエチルケトン 107質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−3)
ポリアニリン誘導体2%溶液 18質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジエチルアクリルアミド 3質量部
(DEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 13質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 38質量部
メチルエチルケトン 89質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−4)
ポリアニリン誘導体2%溶液 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 20質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−5)
ポリアニリン誘導体2%溶液 21質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ビニルホルムアミド 40質量部
(ビームセット770、荒川化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 16質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 47質量部
メチルエチルケトン 110質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−6)
ポリアニリン誘導体2%溶液 140質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
アクリロイルモルフォリン 18質量部
(ACMO、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 15質量部
メチルエチルケトン 30質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−7)
ポリアニリン誘導体2%溶液 150質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
アクリロイルモルフォリン 18質量部
(ACMO、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
メチルエチルケトン 20質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−8)
ポリアニリン誘導体2%溶液 10質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 20質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 45質量部
メチルエチルケトン 104質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−9)
ポリアニリン誘導体2%溶液 10質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N−ビニルホルムアミド 40質量部
(ビームセット770、荒川化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 16質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 50質量部
メチルエチルケトン 117質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−10)
ポリアニリン誘導体2%溶液 18質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 37質量部
メチルエチルケトン 86質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−11)
イソプロパノール分散アンチモンドープ酸化スズゾル
(固形分濃度20%、触媒化成工業株式会社製) 50質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 20質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
メチルエチルケトン 85質量部
(ハードコート層用塗布組成物3−12)
イソプロパノール分散アンチモンドープ酸化スズゾル
(固形分濃度20%、触媒化成工業株式会社製) 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 20質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
上記のようにして作製したハードコートフィルム試料について、実施例1と同様にして評価した。得られた結果を、下記の表3に示した。
Figure 2009196202
上記表3の結果から明らかなように、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びにアミド基を有するビニル化合物(D)を含有する本発明のハードコートフィルム3−1〜3−9は、π共役系導電性ポリマー(A)をポリアニリン誘導体に置き換えても実施例2と同様な効果を示していることがわかる。また、アミド基を有するビニル化合物(D)を含有しない比較例のハードコートフィルム3−10に比べて、耐光性に優れていることがわかる。さらに、π共役系導電性ポリマー(A)の代わりに、導電性金属酸化物粒子を使用した比較例のハードコートフィルム3−11、3−12に比べて、透明性と硬度が優れていることがわかる。
また、本発明のハードコートフィルム3−4、3−5は非常に優れた防塵性を示しているが、このうちπ共役系導電性ポリマー(A)の添加量を少なくしたハードコートフィルム3−8、3−9においても良好な防塵性を維持しており、かつ、π共役系導電性ポリマー(A)の添加量を減らしたことによりヘイズが低下し、フィルムの透明性が向上している。これは、アミド基を有するビニル化合物(D)が導電性の発現を助けるため帯電防止性能を向上させているものと推測され、このことから、π共役系導電性ポリマー(A)の含有量を減らすことで、良好な防塵性を維持しつつ透明性を高めることが可能であることが明らかである。
実施例4
(ハードコートフィルムの作製)
下記のハードコート層用塗布組成物を使用した以外は実施例3と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
(ハードコート層用塗布組成物4−1)
ポリアニリン誘導体2%溶液 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 10質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−2)
ポリアニリン誘導体2%溶液 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
N,N−ジエチルアクリルアミド 10質量部
(DEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−3)
ポリアニリン誘導体2%溶液 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 10質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−4)
ポリアニリン誘導体2%溶液 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ビニルホルムアミド 10質量部
(ビームセット770、荒川化学工業株式会社製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−5)
ポリアニリン誘導体2%溶液 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
アクリロイルモルフォリン 10質量部
(ACMO、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−6)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 20質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 10質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−7)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 20質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル
アクリレート 10質量部
(MEDOL10、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 10質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−8)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 20質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)
メチルアクリレート 10質量部
(MIBDOL10、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 10質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−9)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 20質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル
メタクリレート 10質量部
(MMDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 10質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−10)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 20質量部
(BAYTRON P ET V2、H.C.Stark 社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
[シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)]
メチルメタクリレート 10質量部
(CHDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 10質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−11)
テトラシアノテトラアザナフタレンドープポリピロール2%溶液
(SSPY、ティーエーケミカル株式会社製) 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
[シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)]
メチルメタクリレート 10質量部
(CHDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
アクリロイルモルフォリン 10質量部
(ACMO、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 14質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42質量部
メチルエチルケトン 98質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−12)
ポリアニリン誘導体2%溶液 10質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 20質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 47質量部
メチルエチルケトン 110質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−13)
ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシ
チオフェン)2%溶液 10質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
[シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)]
メチルメタクリレート 10質量部
(CHDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 20質量部
(HEAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 47質量部
メチルエチルケトン 110質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−14)
テトラシアノテトラアザナフタレンドープポリピロール2%溶液
(SSPY、ティーエーケミカル株式会社製) 10質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
[シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)]
メチルメタクリレート 10質量部
(CHDOL30、大阪有機化学工業株式会社製)
アクリロイルモルフォリン 20質量部
(ACMO、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 47質量部
メチルエチルケトン 110質量部
(ハードコート層用塗布組成物4−15)
イソプロパノール分散アンチモンドープ酸化スズゾル
(固形分濃度20%、触媒化成工業株式会社製) 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 10質量部
(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 10質量部
(DMAA、株式会社興人製)
2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ
プロパン−1−オン 15質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
上記のようにして作製したハードコートフィルム試料について、実施例1と同
様にして評価した。得られた結果を、下記の表4に示した。
Figure 2009196202
上記表4の結果から明らかなように、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)及びアミド基を有するビニル化合物(D)を含有する本発明のハードコートフィルム4−1〜4−14は、環状エーテルを有するビニル化合物(C)あるいはアミド基を有するビニル化合物(D)のどちらかのみを含有する実施例1〜3のハードコートフィルムと同様な効果を示していることがわかる。また、アミド基を有するビニル化合物(D)を含有することによって帯電防止性能の向上が認められ、優れた防塵性を示していることがわかる。また、π共役系導電性ポリマー(A)の代わりに、導電性金属酸化物粒子を使用した比較例のハードコートフィルム4−15に比べて、透明性と硬度が優れていることがわかる。
実施例5
つぎに、実施例1〜4で作製したハードコートフィルムを用いて、反射防止フィルムを作製した。
(表面処理)
まず、上記実施例1〜4で作製したハードコートフィルムを、2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に、温度60℃で90秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥させて、アルカリ表面処理を行った。
(反射防止フィルムの作製)
上記表面処理をしたハードコートフィルム上に、下記の低屈折率層用塗布組成物をダイコートし、温度80℃で1分間乾燥させ、ついで、0.1J/cm の紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化させ、さらに温度120℃で1分間熱硬化させて厚さ90nm、屈折率1.35の低屈折率層を形成し反射防止フィルムを作製した。
(低屈折率層用塗布組成物)
シラン加水分解物 50質量部
中空シリカ系粒子分散液 30質量部
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 3質量部
(KBM−5103、信越化学工業株式会社製)
アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート 1質量部
(ALCH、川研ファインケミカル株式会社製)
ポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサンコポリマー
(FZ−2207、東レダウコーニング株式会社製)の
10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 450質量部
イソプロピルアルコール 450質量部
(シラン加水分解物の調製)
テトラエトキシシラン205gとトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン25g、及びエタノール440gとを混和し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後、温度25℃のウォーターバス中で20時間攪拌することで、シラン加水分解物を調製した。
(中空シリカ系粒子分散液の調製)
工程a:平均粒径5nm、SiO 濃度20質量%のシリカゾル100gと、純水1900gとの混合物を温度80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gと、Alとして1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度20質量%のSiO ・Al核粒子分散液を調製した。
工程b:この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO 濃度3.5質量%)3000gを添加して、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。
工程c:ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
ついで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら、限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO ・Al多孔質粒子の分散液を調製した。
上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1750g、及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO 濃度28質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。ついで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ系粒子分散液を調製した。
この中空シリカ系粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は45nm、MO /SiO (モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
(反射防止性評価)
上記作製した反射防止フィルム試料の反射率を、CM−3700d(コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて測定した結果、本発明のハードコートフィルムを用いた反射防止フィルム試料は、視感反射率1.3%であり、良好な反射防止性能を有していた。
また、実施例1と同様にして評価した結果、本発明のハードコートフィルムを用いた反射防止フィルム試料は、防塵性や透明性、鉛筆硬度、密着性、及び耐光性が良好であったのに対し、比較例のハードコートフィルムを用いた反射防止フィルム試料は、耐光性が劣っていたり、透明性が悪いものであった。
実施例6
つぎに、実施例1〜4で作製したハードコートフィルム、及び実施例5で作製した反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用い、それぞれセルロースエステル系光学補償フィルムであるKC4FR−1(コニカミノルタオプト株式会社製)と組み合わせて、偏光板を作製した。
(偏光フィルムの作製)
ケン化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)100質量部に、グリセリン10質量部及び水170質量部を含浸させたものを溶融混錬し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押し出しし、製膜した。その後、乾燥、熱処理してPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムは平均厚みが40μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。
このPVAフィルムを予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して偏光フィルムを作製した。
すなわち、上記のPVAフィルムを、温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/L、温度35℃のヨウ化カリウム濃度40g/Lの水溶液中に3分間浸した。ついで、温度50℃のホウ酸濃度4%の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/L、ホウ酸濃度40g/L、温度30℃の塩化亜鉛濃度10g/Lの水溶液中に5分間浸して、固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、さらに温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムは平均厚みは、15μmであった。
(偏光板の作製)
ついで、下記の工程1〜工程5に従って、上記の偏光フィルムと、光学補償フィルム、実施例1〜4のハードコートフィルム、および実施例5の反射防止フィルムよりなる偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて、偏光板を作製した。
工程1:光学補償フィルム、実施例1〜4のハードコートフィルム、および実施例5の反射防止フィルムを、それぞれ2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に、温度60℃で、90秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥させた。
工程2:ついで、偏光フィルムを、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程3:工程2で偏光フィルムに付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、該偏光フィルムを、工程1でアルカリ処理した光学補償フィルムと、実施例1〜4のハードコートフィルム、または実施例5の反射防止フィルムとで挟み込んで、積層配置した。
工程4:2つの回転するローラにて20〜30N/cmの圧力で、約2m/minの速度で張り合わせた。
工程5:80℃の乾燥機中にて、工程4で作製した試料を2分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
(試験用液晶表示パネルの作製)
ついで、市販の液晶表示パネル(VA型)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに、上記作製した実施例1〜4のハードコートフィルム、及び実施例5の反射防止フィルムを用いた偏光板をそれぞれ張り付けて、試験用の液晶表示パネルを作製した。
上記のようにして得られた各液晶表示パネルを、床から80cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部に昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X 松下電器産業株式会社製)40W×2本を1セットとして1.5m間隔で10セット配置した。
ここで、評価者が液晶表示パネルの表示面正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に前記蛍光灯がくるように配置した。液晶表示パネルは机に対する垂直方向から25°傾けて蛍光灯が写り込むようにして画面の見易さ(視認性)を、下記のようにランク評価した。
A:最も近い蛍光灯の写り込みから気にならず、フォントの大きさ8以下の文
字もはっきりと読める
B:近くの蛍光灯の写り込みはやや気になるが、遠くは気にならず、フォント
の大きさ8以下の文字もなんとかと読める
C:遠くの蛍光灯の写り込みも気になり、フォントの大きさ8以下の文字を
読むのは困難である
D:蛍光灯の写り込みがかなり気になり、写り込みの部分はフォントの大きさ
8以下の文字を読むことはできない
評価の結果、実施例1〜4の本発明のハードコートフィルム、および実施例5の本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板を張り付けた液晶表示パネルは、いずれもB以上の評価結果であり、視認性が良好であった。
これに対し、実施例1〜4の比較例のハードコートフィルムや、実施例5の比較例の反射防止フィルムを用いた偏光板を張り付けた液晶表示パネルは、いずれもC以下の評価結果であり、視認性が劣るものであった。

Claims (11)

  1. 透明フィルム基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層が、π共役系導電性ポリマー(A)、電離放射線硬化型樹脂(B)、並びに環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)を含有することを特徴とする、ハードコートフィルム。
  2. ハードコート層用組成物の配合量が、π共役系導電性ポリマー(A)は0.05〜1.5質量%、電離放射線硬化型樹脂(B)は60〜99質量%、環状エーテルを有するビニル化合物(C)及び/またはアミド基を有するビニル化合物(D)は0.1〜30質量%の範囲であり、さらに光重合開始剤を1〜10質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のハードコートフィルム。
  3. π共役系導電性ポリマー(A)が、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、及びポリアニリン誘導体のうちの一種のポリマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
  4. 電離放射線硬化型樹脂(B)が、分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  5. 環状エーテルを有するビニル化合物(C)が、テトラヒドロフルフリル環を有するビニル化合物、またはジオキソラン環を有するビニル化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  6. アミド基を有するビニル化合物(D)が、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、及びアクリロイルモルフォリンよりなる群の中から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  7. 透明フィルム基材が、セルロースエステルフィルムであることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  8. 請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムのハードコート層上に、基材よりも屈折率の低い低屈折率層が設けられていることを特徴とする、反射防止フィルム。
  9. 請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のハードコートフィルムを一方の面に用いることを特徴とする、偏光板。
  10. 請求項8に記載の反射防止フィルムを一方の面に用いることを特徴とする、偏光板。
  11. 請求項9または10に記載の偏光板を用いることを特徴とする、表示装置。
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