JP2009186651A - 反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents

反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2009186651A
JP2009186651A JP2008024978A JP2008024978A JP2009186651A JP 2009186651 A JP2009186651 A JP 2009186651A JP 2008024978 A JP2008024978 A JP 2008024978A JP 2008024978 A JP2008024978 A JP 2008024978A JP 2009186651 A JP2009186651 A JP 2009186651A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
film
group
acrylate
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008024978A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaru Okano
賢 岡野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Opto Inc
Original Assignee
Konica Minolta Opto Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Opto Inc filed Critical Konica Minolta Opto Inc
Priority to JP2008024978A priority Critical patent/JP2009186651A/ja
Publication of JP2009186651A publication Critical patent/JP2009186651A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Polarising Elements (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)
  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】本発明の目的は、高温高湿下といった湿熱処理後の耐薬品と密着性、及び耐擦傷性に優れる反射防止フィルムの製造方法を提供することにある。
【解決手段】フィルム基材上に直接又は他の層を介してハードコート層、更にハードコート層上に低屈折率層を積層する反射防止フィルムの製造方法において、該ハードコート層がフッ素−シロキサングラフトポリマーを少なくとも1種含有し、更にハードコート層面に表面処理を行った後、外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子を少なくとも1種含有する低屈折率層を積層することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置に関し、より詳しくは、高温高湿下といった湿熱処理後の耐薬品と密着性、及び耐擦傷性に優れる反射防止フィルムの製造方法に関する。
一般に、反射防止フィルムは、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、多層薄膜の光干渉によって、反射率を低減する機能を有しており、ディスプレイの最表面に配置される。
近年、反射防止フィルムは用途に応じて、様々な種類の機能が付加されている。
特許文献1には、これら様々な機能を有した反射防止フィルムを、例えば液晶ディスプレイ偏光子の前面板に貼り合わせることで、ディスプレイに視認性向上のために反射防止機能を付与する方法が用いられている。前面板として用いる光学用フィルムには、塗布、蒸着法またはスパッタ法等で形成した反射防止層が設けられることが多い。また、表示装置の薄型化のため、使用するフィルムの膜厚もますます薄いものが求められている。
一方、屋外や室内など反射防止フィルムの使用環境も様々になってきている。特に屋外用の大画面用途で使用する場合において、平面性、耐擦傷性に優れ、かつ環境変化に対して優れた光学フィルムが求められている。
従来の光学フィルムでは特に広幅、薄膜では平面性に優れたものが得られず、また耐擦傷性、環境変化に対する耐久性(具体的には、高温高湿下での耐薬品)について十分なものが無かった。
特許文献2〜4には、耐傷性に対しては、例えば外殻層を有し、内部が多孔質または空洞となっている中空シリカ微粒子を用いる技術が記載されている。これらの特許文献2〜4に記載の技術は、空隙による優れた屈折率低下を維持したまま、膜強度アップするというものであった。
しかしながら、特許文献2〜4に記載された技術は、ガラス基板上の場合には膜強度は強いものの、偏光板等に使用される光学フィルム上に適用した場合、膜強度が不十分であり、耐傷性が劣り、実用に供し得ないことが分かった。また、該中空シリカ微粒子をバインダー成分に対して20質量%以上添加すると実用膜強度以下に低下するという問題があった。
膜強度アップのため、チタンアルコキシドやシランアルコキシドに代表される金属アルコキシドを支持体の表面に塗布、乾燥、加熱して金属酸化物の膜を形成する方法が行われている。しかし、この方法では加熱温度が300℃以上という高い温度が必要で支持体にダメージを与え、また特開平8−75904号公報に記載されているような加熱温度が100℃と比較的低い方法では、作製に長時間が必要となり、いずれにも問題点があった。また、いずれの技術も高温高湿下での耐薬品については、実用上、問題があった。
特許文献5には、金属酸化物の膜を形成する方法として、例えば、機能性膜の下地膜としてシリカ系膜を所謂ゾルゲル法によって形成する方法が記載されている。
さらに、特許文献6参照には、低屈折率層を同じくゾルゲル法によって形成する方法が記載されている。しかし、これら特許文献5及び6に記載された方法も、耐擦傷性及び高温高湿下での耐薬品について、不十分であるという問題があった。
また、特許文献7には、弾性率が3500〜5500Mpaの範囲にある透明フィルム上に、(a)活性エネルギー線硬化樹脂を含むハードコート層、(b)導電性金属酸化物微粒子を含む中屈折率層、(c)酸化チタン微粒子を含む高屈折率層、(d)外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞になっている中空シリカ系微粒子を含む低屈折率層を設けた反射防止フィルムが開示されている。
この特許文献7に記載の反射防止フィルムによれば、確かに、強制劣化試験後の膜強度(耐傷性)は上昇するものの、反射防止層を3層構成としているため、高コストにも繋がるという問題があった。
特開2002−182005号公報 特開2001−167637号公報 特開2001−233611号公報 特開2002−79616号公報 特開平11−269657号公報 特開2000−910号公報 特開2005−266051号公報
従って本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、高温高湿下といった湿熱処理後の耐薬品と密着性、及び耐擦傷性に優れる反射防止フィルムの製造方法を提供することにある。また、上記膜物性向上を、1層の低屈折率層よりなる反射防止層を形成することで達成できるため、低コスト性にも優れている。
更に本発明の反射防止フィルムの製造方法によって製造された反射防止フィルムは、偏光板、画像表示装置に好適に用いられる。
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.フィルム基材上に直接又は他の層を介してハードコート層、更にハードコート層上に低屈折率層を積層する反射防止フィルムの製造方法において、該ハードコート層がフッ素−シロキサングラフトポリマーを少なくとも1種含有し、更にハードコート層面に表面処理を行った後、外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子を少なくとも1種含有する低屈折率層を積層することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
2.前記表面処理が、アルカリ鹸化処理またはプラズマ処理であることを特徴とする前記1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
3.前記フィルム基材上とハードコート層の間に導電層を設けることを特徴とする前記1または2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
4.前記フィルム基材が、セルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
5.前記フィルム基材がセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
6.前記フィルム基材がセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂及びアクリル粒子を含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。
8.前記7に記載の反射防止フィルムを少なくとも一方の面に用いることを特徴とする偏光板。
9.前記7に記載の反射防止フィルム、または前記8に記載の偏光板を用いることを特徴とする画像表示装置。
本発明によれば、高温高湿下といった湿熱処理後の耐薬品と密着性、及び耐擦傷性に優れる反射防止フィルムの製造方法を提供することができる。また、上記膜物性向上を、1層の低屈折率層よりなる反射防止層を形成することで達成できるため、低コスト性にも優れている。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、フィルム基材上に直接又は他の層を介してハードコート層、更にハードコート層上に低屈折率層を積層する反射防止フィルムの製造方法において、該ハードコート層がフッ素−シロキサングラフトポリマーを少なくとも1種含有し、更にハードコート層面に表面処理を行った後、外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子を少なくとも1種含有する低屈折率層を積層することを特徴とするものであり、該製造方法によって製造された本発明の反射防止フィルムは、高温高湿下による耐久試験後の耐薬品と密着性、及び耐擦傷性を向上することが出来る。
前記効果は、フッ素−シロキサングラフトポリマーという特定の化合物を含有したハードコート層面に表面処理を行った後、中空シリカ系粒子という特定の粒子を含有した低屈折率層を設けることで、ハードコート層と低屈折率層の密着性の向上が得られるものと推定している。よってこれらの構成を満たすことで、初めて本発明の目的効果が発揮される。
《ハードコート層》
先ずハードコート層について説明する。
本発明においては、ハードコート層がフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有することを特徴とする。次に、フッ素−シロキサングラフトポリマーについて説明する。
フッ素−シロキサングラフトポリマーとは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/またはオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/またはオルガノポリシロキサンをグラフト化により共重合して得られるポリマーをいうものであり、具体的には、以下に示す化合物である。
フッ素−シロキサングラフトポリマーとしては、例えば、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂〔以下、ラジカル重合性フッ素樹脂(A)とも言う〕、(B)下記一般式(1)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び/又は下記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、並びに(C)ラジカル重合反応条件下において、ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体を共重合してなるグラフト共重合によって形成される化合物が挙げられる。
Figure 2009186651
式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、アリール基(例えば、フェニル基)、又はシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)等を挙げることができる。R1は、好ましくは水素原子又はメチル基である。R2、R3、R4、R5、及びR6は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立してメチル基、又はフェニル基であることが好ましく、R6はメチル基、ブチル基、又はフェニル基であることが好ましい。またnは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
Figure 2009186651
式中、R7は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。また、R8、R9、R10、R11、及びR12は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立してメチル基又はフェニル基であることが好ましく、R12はメチル基、ブチル基、又はフェニル基であることが好ましい。pは0〜10の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。qは2以上の整数である。
つぎに、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂について、詳しく説明する。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)は、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とを反応させることによって得ることができる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、その構成成分として少なくとも水酸基含有単量体部分とポリフルオロパラフィン部分とを含むものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、繰り返し単位として、下記一般式(3)で表わされる繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表わされる繰り返し単位を含むものである。
Figure 2009186651
式中、R21及びR22は、各繰り返し単位毎に独立して、かつ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、xは2以上の整数である。
Figure 2009186651
式中、R23は、繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R24は、繰り返し単位毎に独立して、OR25a基、CH2OR25b基、及びCOOR25c基から選択した2価の基であり、R25a、R25b、及びR25cは、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、又はヘキサメチレン基)、炭素数6〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基)、炭素数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、及び炭素数6〜10選択した2価の基であり、yは2以上の整数である。
さらに、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、その他の構成成分として、場合により、下記一般式(5)で表わされる繰り返し単位を含むことができる。
Figure 2009186651
式中、R26は、各繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R27は、繰り返し単位毎に独立して、OR28a基又はOCOR28b基であり、R28a及びR28bは、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、炭素数6〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、zは2以上の整数である。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、この一般式(5)で表わされる繰り返し単位を含むことで、有機溶剤に対する溶解性が向上する。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)の水酸基価は、5〜250であることが好ましく、10〜200であることがより好ましく、20〜150であることがさらに好ましい。ここで、水酸基価が、5未満であると、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の導入量が著しく少なくなるために、反応混合物が濁る傾向がある。一方、水酸基価が250を越えると、後述の片末端ラジカル重合性ポリシロキサン〔成分(B)〕との相溶性が悪化し、グラフト共重合が進行しなくなる場合がある。また、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、遊離カルボン酸基を有していても良い。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、公知の方法で調製、あるいは市販品を用いることもできる。市販品としては、ビニルエーテル系フッ素樹脂(ルミフロンLF−100、LF−200、LF−302、LF−400、LF−554、LF−600、LF−986N;旭硝子株式会社製)、アリルエーテル系フッ素樹脂(セフラルコートPX−40、A606X、A202B、CF−803;セントラル硝子株式会社製)、カルボン酸ビニル/アクリル酸エステル系フッ素樹脂(ザフロンFC−110、FC−220、FC−250、FC−275、FC−310、FC−575、XFC−973;東亞合成株式会社製)、又はビニルエーテル/カルボン酸ビニル系フッ素樹脂(フルオネート;大日本インキ化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、単独で使用するか、又は2種類以上を混合して使用することができる。
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)は、イソシアネート基とラジカル重合性を有する部分とを含む単量体であれば、特に限定されるものではないが、イソシアネート基を有し、それ以外の官能基(例えば、水酸基又はポリシロキサン鎖)を有していないラジカル重合体単量体を用いるのが好ましい。
好適なイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)としては、例えば下記一般式(6)で表わされるラジカル重合性単量体、あるいは下記一般式(7)で表わされるラジカル重合性単量体を用いるのが好ましい。
Figure 2009186651
式中、R36は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基であり、R37は酸素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基)、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)である。
Figure 2009186651
式中、R41は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基であり、R42は酸素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基)、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)である。
ラジカル重合性単量体(A−2)としては、具体的には、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、又はm−もしくはp−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等があげられる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とからラジカル重合性フッ素樹脂(A)を調製する反応では、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)を、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)の水酸基1当量あたり、好ましくは0.001モル以上0.1モル未満の量、より好ましくは0.01モル以上0.08モル未満の量で反応させる。
このイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)が0.001モル未満であると、グラフト共重合が困難となり、反応混合物が濁り、経時的に二層分離するために好ましくない。また、0.1モル以上であると、グラフト共重合の際にゲル化が起こりやすくなり好ましくない。また、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の反応は、無触媒下あるいは触媒存在下、室温〜80℃で行なうことができる。
こうして得られたラジカル重合性フッ素樹脂(A)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して2〜70質量%、好ましくは4〜60質量%の範囲で用いられる。ラジカル重合性フッ素樹脂(A)が、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して2質量%未満であるとき、グラフト重合時の安定性が低下することがあり、70質量%を越えると、グラフト重合時にゲル化を起こすことがある。
つぎに、前述の片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)について説明する。片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)の市販品としては、例えば、サイラプレーンFM−0711(数平均分子量1,000、チッソ株式会社製)、サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000、チッソ株式会社製)、サイラプレーンFM−0725(数平均分子量10,000、チッソ株式会社製)、X−22−174DX(数平均分子量4,600、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
また、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前記一般式(1)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンを、単独で又は2種類以上混合、あるいは前記一般式(2)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンを単独で又は2種類以上混合して使用することができ、さらには前記一般式(1)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンの1種もしくはそれ以上と前記一般式(2)で表わされる片末端ラジカル重合性ポリシロキサンの1種もしくはそれ以上とを混合して使用することができる。
これら片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して4〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)が、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して4質量%未満であると、滑り性が不十分となることがあり、40質量%を越えると、重合後の未反応単量体成分が多くなり、塗膜の軟化や未反応単量体成分のブリード等の好ましくない事態を招くことがある。
つぎに、ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)について説明する。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタアクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;これらの(メタ)アクリレート系単量体の水素原子をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等で置換した(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ;シェル化学株式会社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状モノカルボン酸グリシジルエステル(カージュラE、シェル化学株式会社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、又はプロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)は単独、あるいは2種類以上混合して用いてもよく、主として共重合性の観点から(メタ)アクリレート系単量体が好ましく用いられる。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外は反応しないラジカル重合性単量体(C)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し15〜94質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で用いられる。15質量%未満では共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、94質量%を越えると滑り性が不十分となる。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)とラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)との合計質量に対するラジカル重合性フッ素樹脂(A)の質量の比率〔すなわち、A/(B+C);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称することがある〕は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比:A/(B+C)が、2/1未満の場合には、光沢の低下。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には、ブレンドしたポリマーの安定性が低下することがある。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)とを用いてフッ素−シロキサングラフトポリマーを調製するには、公知の重合方法を用いることができ、特に溶液ラジカル重合法又は非水分散ラジカル重合法を用いるのが最も簡便で好ましい。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーとしては、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂、(B)前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び(D)下記一般式(8))で示される片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール、及び(E):成分(A)、(B)、(D)以外のラジカル重合性単量体を、ランダム共重合してなるグラフト共重合からも作製することができる。
Figure 2009186651
式中、R13は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。R14は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくはメチル基である。R15は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状のハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基であり、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、フェニル基、又はアルキル置換フェニル基である。lは、1以上の整数であり、好ましくは2〜100の整数である。また、mは、任意の整数であり、好ましくは0〜10、より好ましくは0である。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前述の通りであり、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)について説明する。
片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)としては、公知のものを用いることもできる。具体的には、ブレンマーPME−100、PME−200、PME−400、PME−4000、50POEP−800B(日本油脂株式会社製)、ライトエステルMC、MTG、130MA、041MA(共栄社化学株式会社製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、MTG−A、130A(共栄社化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)は単独又は2種類以上を混合して用いることができる。片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1〜25質量%、好ましくは1〜15質量%の範囲で用いられる。
ここで、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)が、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1質量%未満あるいは25質量%を越えると、耐汚染性が不十分となる場合がある。
つぎに、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)について説明する。成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;これらの(メタ)アクリレート系単量体の水素原子をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等で置換した(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学株式会社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、又はα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学株式会社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
これら単量体は、単独、あるいは2種類以上を混合して用いてもよく、主として共重合性の観点から(メタ)アクリレート系が好ましく用いられる。
成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し28〜92質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で用いられる。
ここで、ラジカル重合性単量体(E)が、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し28質量%未満では、共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、92質量%を越えると、滑り性が不十分となる。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、前記の片末端アルコキシポリアルキレングリコール(D)と、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)との合計使用質量に対するラジカル重合性フッ素樹脂(A)の使用質量の比率(すなわち、A/(B+D+E);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称することがある)は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比が2/1未満の場合には、光沢が低下することがある。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には、安定性が低下することがある。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、前記の片末端アルコキシポルアリキレングリコール(D)と、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)とを用いて共重合体を調製するには、公知の任意の重合方法を用いることができ、中でも、溶液ラジカル重合法、又は非水分散ラジカル重合法によるのが最も簡便で、特に好ましい。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーは、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂、(B)上記一般式(1):及び/又は上記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び(F)分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体、及び(G)成分(A)、(B)、(F)以外のラジカル重合性単量体を共重合してなるグラフト共重合体等から作製することができる。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前述の通りであり、分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)について説明する。
分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は、例えば、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン、1−メトキシ−(パーフルオロ−2−メチル−1−プロペン)、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロデシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、アクリエステル3FE、4FE、5FE、8FE、17FE(三菱レイヨン社製)、ビスコート3F、3FM、4F、8F、8FM(大阪有機化学工業社製)、ライトエステルM−3F、M−4F、M−6F、FM−108、ライトアクリレートFA−108(共栄社化学社製)、M−1110、M−1210、M−1420、M−1620、M−1633、M−1820、M−1833、M−2020、M−3420、M−3433、M−3620、M−3633、M−3820、M−3833、M−4020、M−5210、M−5410、M−5610、M−5810、M−7210、M−7310、R−1110、R−1210、R−1420、R−1433、R−1620、R−1633、R−1820、R−1833、R−2020、R−3420、R−3433、R−3620、R−3633、R−3820、R−3833、R−4020、R−5210、R−5410、R−5610、R−5810、R−7210、R−7310(ダイキン工業社製)、HFIP−M、HFIP−A、TFOL−M、TFOL−A、PFIP−A、HpIP−AE、HFIP−I(セントラル硝子社製)等を挙げることができる。
分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は単独又は2種類以上を混合して用いることもできる。
また、分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%の範囲で用いられる。1質量%未満とすると安定性が不十分となる場合があり、50質量%を越えると共重合体の価格が高くなり、実用的でない。
成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)について説明する。成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N、N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)は、単独あるいは2種類以上を混合して用いてもよく、主として共重合性及び耐黄変性の観点から(メタ)アクリレート系が好ましく用いられる。
前記成分(G)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し4〜93質量%、好ましくは20〜80質量%の範囲で用いられる。4質量%未満では共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、93質量%を越えると耐汚染性が不十分となる。
成分(B)、成分(F)、成分(G)との合計使用質量に対する成分(A)の使用質量の比率(すなわち、A/(B+F+G);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称する)は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比が2/1未満の場合には、光沢が低下することがある。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には撥水性、撥油性が低下することがある。
成分(A)、(B)、(F)、(G)を用いてフッ素−シロキサングラフトポリマーを調製するには、公知の重合方法を用いることができ、中でも溶液ラジカル重合法又は非水分散ラジカル重合法によるのが最も簡便であり、特に推奨される。
上記した重合に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、又は芳香族炭化水素の混合物(ソルベッソ100、エッソ石油株式会社製)等の芳香族炭化水素系化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、又はケロシン等の脂肪族、脂環族炭化水素系化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、又はブチルセロソルブアセテート等のエステル系化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、又はブチルセロソルブ等のアルコール系化合物等が挙げることができ、それらの溶剤を単独で又は2種類以上を組合せて用いることができる。
合成は、種々のラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系化合物又は過酸化物のラジカル重合開始剤を用いて、常法により実施することができる。重合時間は特に制限されないが、通常1〜48時間の範囲が選ばれる。重合温度は通常30〜120℃、好ましくは60〜100℃である。重合は、さらに必要に応じて公知の連鎖移動剤、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、又はα−メチルスチレンダイマー等を添加して実施することもできる。グラフトポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、その質量平均分子量が、ポリスチレン換算のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、好ましくは約5000〜2000000(より好ましくは約10000〜1000000)の範囲である。ここで、グラフトポリマーの重量平均分子量が、5000未満であれば、造膜性が低下することがあり、2000000を越えると重合時にゲル化する危険がある。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーの市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またこれら化合物は混合して用いても良い。フッ素−シロキサングラフトポリマーは後述するエネルギー活性線硬化性樹脂との含有質量比率をフッ素−シロキサングラフトポリマー:活性光線硬化樹脂=0.05:100〜5.00:100で用いることがハードコート層形成組成物中及びハードコート層で安定して存在する。
次にハードコート層を形成する樹脂バインダーについて説明する。
樹脂バインダーとしては、活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、特に、紫外線硬化樹脂が機械的膜強度(耐擦性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
紫外線硬化樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、イソボロニルアクリレート等が好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
エネルギー活性線硬化性樹脂の添加量は、ハードコート層形成組成物中(以下、ハードコート層塗布液とも言う。)では、固形分中の15質量%以上70質量%未満であることが好ましい。
また、ハードコート層にはエネルギー活性線硬化性樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤;エネルギー活性線硬化性樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
ハードコート層には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはゼラチン等の親水性樹脂等のバインダーを用いることもできる。また、ハードコート層には滑り性や屈折率を調整するために無機化合物または有機化合物の粒子を含んでもよい。
ハードコート層に使用される無機粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物を加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)、フッ素含有アクリル樹脂微粒子が挙げられる。フッ素含有アクリル樹脂微粒子としては、例えば日本ペイント製:FS−701等の市販品が挙げられる。また、アクリル粒子として、例えば日本ペイント製:S−4000、アクリル−スチレン粒子として、例えば日本ペイント製:S−1200、MG−251等が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、更に、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。硬化性樹脂組成物と微粒子の割合は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
ハードコート層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。例えば、ヒンダードフェノール誘導体、チオプロピオン酸誘導体、ホスファイト誘導体等を挙げることができる。具体的には、例えば、4,4′−チオビス(6−tert−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスフェート等を挙げることができる。
ハードコート層形成組成物には、溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
ハードコート層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.1μmのクリアハードコート層、または微粒子等を添加しRaが0.1〜1μmに調整された防眩性ハードコート層であってもよい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製非接触表面微細形状計測装置WYKO NT−2000を用いて測定することができる。
また、防眩性ハードコート層では、ハードコート表面にロールや原盤でエンボスにて凹凸形状を形成してもよい。
更にハードコート層には、シリコーン系界面活性剤或いはポリオキシエーテル化合物を含有させることが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、具体的には、BYK−UV3500,BYK−UV3510、BYK−333、BYK−331、BYK−337(ビックケミ−ジャパン社製)、TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、KF−351、KF−351A、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−6004(ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
また、ポリオキシエーテル化合物の中では、好ましくはポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物であり、一般的に一般式(α)で表される化合物である。
一般式(α) C1835−O(C24O)nH
式中、nは2〜40を表す。
オレイル部分に対するエチレンオキシドの平均付加個数(n)は、2〜40であり、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜9、更に好ましくは2〜8である。また一般式(α)の化合物はエチレンオキシドとオレイルアルコールとを反応させて得られる。
具体的商品としては、エマルゲン404(ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル)、エマルゲン408(ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル)、エマルゲン409P(ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル)、エマルゲン420(ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル)、エマルゲン430(ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル)以上花王社製、日本油脂製NOFABLEEAO−9905(ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル)等が挙げられる。
尚、( )がnの数字を表す。非イオン性のポリオキシエーテル化合物は単独或いは2種以上を併用しても良い。
これらは塗布性を高め、これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
また、ハードコート層には硬化助剤としてポリウレタン樹脂の側鎖にビニル基とカルボキシル基を有し、重量平均分子量が10000以上30000以下であり、且つ、二重結合当量が500以上2000以下であるポリマーやポリマーの側鎖にビニル基を有し、重量平均分子量(Mw)が10000以上100000以下であり、二重結合当量が1000以下、ポリマーTgが−50℃以上120℃以下であるアクリルポリマー、他官能チオール化合物等を含有させてもよい。他官能チオール化合物としては例えば1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。市販品としては昭和電工社製、商品名カレンズMTシリーズ等が挙げられる。
また、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有しても良い。フッ素−アクリル共重合体樹脂とは、フッ素単量体とアクリル単量体とからなる共重合体樹脂で、特にフッ素単量体セグメントとアクリル単量体セグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。フッ素−アクリル共重合体樹脂の分子量は、数平均分子量で5000〜1000000が良く、好ましくは10000〜300000、更に好ましくは10000〜100000である。フッ素−アクリル共重合体樹脂の製造は、ポリメリックペルオキシドを重合開始剤とした。公知の製造プロセス(例えば特公平5−41668号公報、特公平5−59942号公報)により製造できる。ポリメリックペルオキシドとは1分子中に2個以上のペルオキシ結合を持つ化合物である。ポリメリックペルオキシドとしては、特公平5−59942号公報に記載されている各種ポリメリックペルオキシドの一種または二種以上を使用することができる。
フッ素−アクリル共重合体樹脂の市販品としては、日本油脂株式会社の商品名、モディパーF−200、モディパーF−600、モディパーF−2020等が挙げられる。
また、ハードコート層の屈折率は23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。金属酸化また、用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープしてあっても良い。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが特に好ましい。特にアンチモン酸亜鉛粒子を含有することが好ましい。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10nm〜200nmの範囲であり、10〜150nmであることが特に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘーズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でもシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
また、ハードコート層は後述するπ共役系導電性ポリマーを含有しても良い。その他、後述するイオン性ポリマー、種々の表示素子に対する色補正用フィルターとして色調調整機能を有する色調調整剤(染料もしくは顔料等)、電磁波遮断剤または赤外線吸収剤等を含有させても良い。
ハードコート層塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて基材フィルムの一方の面にウェット膜厚0.1〜100μm、好ましくは、0.5〜30μm、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmで塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化して形成される。硬化工程は、加熱処理或いはUV硬化処理によって行われる。UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜200mJ/cm2である。また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜500N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることができる。ハードコート層は1層でも2層以上の多層構造でも良い。
加熱処理は40℃以上、更に好ましくは60℃以上である。また、上限温度としては基材フィルムの特性等から適宜設定される。また、加熱処理は例えば図1のような形態の場合は、45℃以上で30秒〜10分の範囲で行うことが好ましく、更に好ましくは、70℃以上で30秒〜10分の範囲で行うことが好ましい。
図1は、ハードコート層の塗布工程を示した概略図である。
長尺フィルムYは繰り出しロール1より繰り出され、搬送ローラー2により搬送され、押出しコータ3によりハードコート層が塗布される。この時ハードコート層は単層構成でも、複数から構成されている層でもよい。ハードコート層が塗布された長尺フィルムYは、次いで乾燥ゾーン5により乾燥される。乾燥ゾーン5の温度は50〜150℃の範囲で行うことが好ましい。乾燥は長尺フィルムYの表面もしくは裏面或いは両面より、温湿度が制御された温風を吹き付けることにより施される。乾燥後、活性光線照射ランプユニット6内の空冷活性光線ランプ6aにより活性光線、例えば紫外線などを照射することにより薄膜を硬化する。或いは照射量や照射条件を制御してハーフキュア状態とすることもできる。活性光線照射は、予め20〜120℃に温度制御された対向ロール4に長尺フィルムYを巻いた状態で行うこともできる。
その際空冷用Air通風口6bから活性光線照射部の温度調整のために冷却風を送ることも好ましく、また、N2用供給チャンバーからハードコート層の硬化を促進するためにN2ガスを供給してもよい。本発明においては、酸素濃度を2000ppm以上の雰囲気下でハードコート層を硬化させるのが、低屈折率層とハードコート層との密着性が向上する点から好ましい。
また、UV硬化処理後、加熱ゾーン7で熱処理される。加熱ゾーン7は上下に配置された搬送ローラー2により長尺フィルムYを所定の温度で所定の時間、加熱処理を行う。
加熱処理する際に、フィルムの搬送方向または巾手方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、付与する張力は50〜500N/mが好ましく、更に好ましくは、250〜500N/mである。250〜500N/mにおいて、本発明の目的効果がより良く発揮される。500N/mを超えると、フィルムの平面性が保ちにくくなる。
幅手張力付与方法は特に限定されず、フリースパン、バックロール上などでしてもよい。また、幅手方向に幅規制装置を用いて張力を付与する方法も効果があり、好ましくは3.0%以下での延伸、更に好ましくは0.05%〜1.0%延伸することで効果がより発揮される。これによってブロッキング耐性に優れたフィルムを得ることができる。
加熱処理を行った長尺フィルムYは、巻き取り室8において、巻き取りロール9として巻き取られる。その際温風吹き出し口10から所定の温度の温風を吹き付けながら行うことも好ましい。帯電防止、ゴミ付着防止対策として、上記温風は相対湿度10〜70%RHの範囲、好ましくは20〜70%RH、特に40〜60%RHに調整することが好ましい。また、温風がイオン風であることが好ましく、巻き取り部近傍に除電装置やエアークリーナーを設置することが好ましい。
次に、ハードコート層面を処理する表面処理の方法について説明する。
《表面処理》
本発明の特徴である表面処理方法の方法としては、洗浄法、アルカリ鹸化処理法、プラズマ処理法、電子ビーム法、イオンビーム法、スパッタリング法、酸処理、コロナ処理法、大気圧グロー放電プラズマ法等が挙げられる。
コロナ処理としとは、SOFTAL(ソフタル)社のマルチナイフ電極を有するコロナ処理、春日電機株式会社や株式会社トーヨー電機などで市販されている装置を用いて行なうことができる。コロナ放電処理の強度は、電極間距離、単位面積当たりの出力、ジェネレーターの周波数に依存する。
コロナ処理装置の一方の電極(A電極)は、市販のものを用いることができるが、材質はアルミニウム、ステンレスなどから選択ができる。もう一方はプラスチックフィルムを抱かせるための電極(B電極)であり、コロナ処理が、安定かつ均一に実施されるように、前記A電極に対して一定の距離に設置されるロール電極である。これも通常市販されているものを用いることができ、材質は、アルミニウム、ステンレス、及びそれらの金属でできたロールに、セラミック、シリコン、EPTゴム、ハイパロンゴムなどがライニングされているロールが好ましく用いられる。コロナ処理に用いる周波数は、20kHz以上、100kHz以下の周波数であり、30kHz〜60kHzの周波数が好ましい。周波数が低下するとコロナ処理の均一性が劣化し、コロナ処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ処理を行なう場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ処理を実施する場合には、安定した処理を行なうことが難しくなり、結果として、処理ムラが発生する。コロナ処理の出力は、10〜500W・min./m2であるが、20〜400W・min./m2の出力が好ましい。電極とフィルムとの距離は、5mm以上、50mm以下であるが、好ましくは、10mm以上、35mm以下である。間隙が開いてくると、一定の出力を維持するためにより高電圧が必要になり、ムラが発生しやすくなる。また、間隙が狭くなりすぎると、印加する電圧が低くなりすぎ、ムラが発生しやすくなる。さらに、フィルムを搬送して連続処理する際に電極にフィルムが接触し傷が発生する。
アルカリ鹸化処理方法としては、フィルムをアルカリ溶液に浸潰した後、水洗して乾燥するサイクルで行われるのが、一般的である。また、アルカリ処理後、酸性水工程で中和してから、水洗、及び乾燥を行ってもよい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液があげられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1〜3Nであることが好ましく、0.5N〜2Nであることがさらに好ましい。前記範囲とすることで優れたハードコート層と低屈折率層との接着性が得られる。アルカリ溶液の温度は、アルカリ溶液の析出性等の点から、25〜90℃の範囲が好ましく、40〜70℃がさらに好ましい。アルカリ処理時間は5秒〜5分、好ましくは30秒〜3分である。
また、アルカリ鹸化処理は、ハードコート層面にアルカリ溶液を塗布する方式でも良く、例えば特開2003−313326号公報、特開2007−332253号公報に記載の方法を用いても良い。
プラズマ処理としては、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、常圧プラズマ処理等が挙げられる。
また、プラズマ処理としては、特開2004−352777号公報、特開2004−352777号公報、特開2007−314707号公報等に開示されているプラズマ処理技術も参考にすることができる。
また、処理装置としては、積水化学工業社製の常圧プラズマ処理装置であるAP−Tシリーズ等を用いることができる。
次に大気圧プラズマ処理について説明する。
図2は大気圧プラズマ処理装置の模式図である。図中、101aは大気圧プラズマ処理装置を示す。大気圧プラズマ処理装置101aは、高周波高電圧電源101と、互いに対向するロール電極102と曲面電極103と、プラズマガス供給装置104とを有している。ロール電極102と曲面電極103との間(放電空間A)には、高周波高電圧電源101からの高電圧が印加される。又、ロール電極102の内部には温度制御手段(不図示)が内蔵されており、このロール電極102に接触しながら搬送するフィルム122の温度を処理に適した温度に保持することが可能となっている。温度制御手段としては、例えば熱媒体(水やシリコンオイル等が好ましい)を供給・排出し熱交換する循環用流路(不図示)、ヒーター等が挙げられる。熱媒体の温度、循環量及びヒーターの供給電力量を変化させることでロール電極102の温度を制御することが可能となっている。
プラズマ処理の前にフィルム122とロール電極102との密着性を高めるために保持補助手段を配設することが好ましい。保持補助手段としては特に限定はなく、例えば吸引ロール、ニップロール、サクションノズル等が挙げられる。本図ではニップロール123を使用した場合を示している。ニップロール123によりフィルム122とロール電極102との密着性が高められることにより熱交換効率を高めることが可能になり、樹脂フィルムの裏面温度を速やかにロール電極温度と同等温度に到達させることが出来る。
プラズマガス供給装置104は、プラズマガス用ボンベ104aとプラズマガス供給口104bとを有し、プラズマガス用ボンベ104aとプラズマガス供給口104bとはプラズマガス供給管104cで繋げられている。大気圧プラズマ処理装置としては、図2のような1種類の高周波電源を接続した処理装置に限らず、例えば、ロール電極と曲面電極それぞれに異なる周波数の高周波電源を接続して放電を形成する装置でも構わず、2種以上の高周波電源を接続した放電処理装置も適用出来る。
これら表面処理の中でも本発明の目的効果が良好に得られることから、アルカリ鹸化処理方法及びプラズマ処理が好ましい。
また、表面処理後のハードコート層表面の純水接触角は、60°以下が、低屈折率層とハードコート層との密着性が向上する点から好ましい。接触角はJIS K 2396に基づいて測定を行うことができる。
《低屈折率層》
次に、低屈折率層について説明する。本発明における低屈折率層は、外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子を少なくとも1種含有することを特徴とする。
また、低屈折率層とはフィルム基材の屈折率よりも低い層をいう。具体的な屈折率としては、23℃、波長550nmで1.20〜1.45の範囲のものが好ましい。また、低屈折率層の膜厚は、光学干渉層としての特性から、5nm〜0.5μmが好ましく、10nm〜0.3μmがより好ましく、30nm〜0.2μmであることが更に好ましい。
低屈折率層は、有機珪素化合物もしくはその加水分解物或いはその重縮合物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂、フルオロアクリレート、含フッ素ポリマー等から形成される。フッ素ポリマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。これらの中で好ましくは、炭素数が1〜4の有機珪素化合物もしくはその加水分解物或いはその重縮合物であり、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等もしくはこれらの加水分解物或いは重縮合物が挙げられる。
次に外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子について説明する、中空シリカ系粒子の具体例としては、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層からなる複合粒子、または(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。
空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空シリカ系粒子の平均粒径は5〜200nm、好ましくは10〜70nmが望ましい。中空シリカ系粒子の粒径は変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。
本発明で用いられる中空シリカ系粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
中空シリカ系粒子の平均粒径は、形成される低屈折率層の透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、透明被膜の膜厚の3/2〜1/10、好ましくは2/3〜1/10が望ましい。これらの中空シリカ系粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。
分散媒としては、水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)、及びケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)、プロピレンモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜40nm、好ましくは1〜20nm、更に好ましくは2〜15nmが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、塗布液成分が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率化の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、塗布液成分が内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率化の効果が十分得られなくなることがある。
また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持できないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率化の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的にはAl23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、Sb25、SbO2、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。
シリカ以外の無機化合物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、Sb25、SbO2、MoO3、ZnO2、WO3との1種または2種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOx)で表したときのモル比:MOx/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。
多孔質粒子のモル比:MOx/SiO2が、0.0001未満のものは、得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また多孔質粒子のモル比:MOx/SiO2が1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、更に屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。
また多孔質物質としては、多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような中空粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1工程〜第3工程を実施するこれによって中空粒子を製造することができる。
(第1工程:多孔質粒子前駆体の調製)
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。尚、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、W等から選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
これら水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類、及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度には特に制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。
当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al23、TiO2、またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。更に上記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。
シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整した後、該シード粒子分散液中に上記化合物の水溶液を、アルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにしてシード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
上記したシリカ原料、及び無機化合物原料は、アルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン、及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して粒子に成長したり、またはシード粒子上に析出して粒子成長が起る。従って、粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。
空洞粒子を調製する場合、MOx/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
(第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去)
第2工程では、第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、または、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
尚、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有するケイ酸液または加水分解性の有機珪素化合物を添加して、シリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜40nm、好ましくは0.5〜15nmの厚さであればよい。尚、シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり、厚さが薄いので、上記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、上記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく、後述するシリカ被覆層を形成することができる。尚、除去する無機化合物の量が少ない場合は、粒子が壊れることがないので、必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また、空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多過ぎると、シリカ保護膜が厚くなり過ぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。
シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、下記の一般式(9)で表されるアルコキシシランを用いることができる。
一般式(9) R”mSi(OR’)4-m
(式中、R”とR’は、アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、mは0、1、2または3を表す。)
特に、フッ素置換したテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。
このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。尚、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
(第3工程:シリカ被覆層の形成)
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有する加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
尚、ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜40nm、好ましくは1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。またシリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜40nm、好ましくは1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率化の効果が得られないことがある。
このようにして得られた中空シリカ系粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような中空シリカ系粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
また、塗布組成物時の安定性から、中空シリカ系粒子としては、表面に炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合しているものが好ましい。
次に、炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合している中空シリカ系粒子について説明する。
炭化水素主鎖を有するポリマーとは、直接共有結合、または中空シリカ系粒子の表面のシリカと炭化水素主鎖を有するポリマーとの間に結合剤を介在させ、シリカと結合剤とを共有結合し、結合剤とポリマーとが共有結合しているものも言う。結合剤としては、カップリング剤が好ましく用いられる。
炭化水素主鎖を有するポリマーが共有結合している中空粒子は、(1)中空シリカ系粒子表面を未処理、もしくはカップリング剤などで処理した状態で、中空シリカ系粒子表面と共有結合を形成可能な官能基を有するポリマーを反応させ、中空シリカ系粒子表面にポリマーをグラフトさせる方法、或いは(2)中空シリカ系粒子表面を未処理、もしくはカップリング剤などで処理した状態で、中空シリカ系粒子表面から単量体を重合することでポリマー鎖を生長させ、表面グラフトさせる方法等により製造することができる。具体的な製造方法としては、特開2006−257308号公報に記載の方法を用いることができる。
上記製造方法では、表面修飾率向上の観点から、中空シリカ系粒子表面から単量体を重合することでポリマー鎖を生長させ、表面グラフトさせる方法が好ましい。重合開始能、もしくは連鎖移動能を有する官能基を含むカップリング剤で中空シリカ系粒子を表面処理し、そこから単量体を重合し、ポリマー鎖を生長させて表面グラフトさせる方法が更に好ましい。重合開始能もしくは連鎖移動能を有する官能基を、中空シリカ系粒子に導入するための表面処理剤(カップリング剤)としては、アルコキシ金属化合物(例えばチタンカップリング剤、アルコキシシラン化合物(シランカップリング剤))が好ましく用いられる。
中空シリカ系粒子は平均粒径の異なる2種以上の中空シリカ系粒子を含有していてもよい。
更に中空シリカ系粒子の中では、導電性金属酸化物被覆層を有する中空シリカ系粒子が本発明の目的効果がより良く発揮される点で好ましい。導電性金属酸化物被覆層を形成する金属酸化物としては特に制限はないが、例えば、酸化スズ、アンチモンスズ酸化物、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物及びこれらの混合物から選ばれるものが挙げられる。この中でも、酸化アンチモンにより被覆されている中空シリカ系粒子が特に好ましい。
導電性金属酸化物被覆層の平均厚さとしては、1〜40nm、より好ましくは1〜20nmの範囲であり、中空シリカ系粒子を十分に被覆でき、得られる導電性金属酸化物被覆中空シリカ系粒子の導電性が十分となる点で、被覆層の厚さは1nm以上が好ましい。導電性の向上効果が十分で、導電性金属酸化物被覆中空シリカ系粒子の平均粒子径が小さい場合にも屈折率が十分である点で、被覆層の厚さは40nm以下が好ましい。
導電性金属酸化物被覆層を有する中空シリカ系粒子の中でも特に好ましくは、酸化アンチモン被覆層を有する中空シリカ系粒子である。次に酸化アンチモン被覆層を有する中空シリカ系粒子について説明する。
酸化アンチモンは、Sb23、Sb25、SbO2等いずれでも良く、酸化アンチモン被覆層中には酸化スズなどを含有していても良い。酸化アンチモン被覆層中のこれらの酸化アンチモンの合計含有率は10%以上が好ましい。また、酸化アンチモン被覆層は、更にシリカ等で被覆されていても良い。
酸化アンチモン被覆中空シリカ粒子の体積抵抗値は、10〜5000Ω/cmが好ましく、10〜2000Ω/cmの範囲にあることがより好ましい。体積抵抗値をこの範囲にすることで、粒子の屈折率を低く保ちつつ、低屈折率塗膜の表面抵抗を低下せしめることが可能となる。体積抵抗値は、核粒子の粒子サイズ、表面被覆金属酸化物層の膜厚、組成を調整することにより制御できる。
体積抵抗値については、以下の方法で測定できる。
内部に円柱状のくりぬき(断面積0.5cm2)を有するセラミック製セルを用い、架台電極上にセルを置き、内部に試料粉体0.6gを充填し、円柱状突起を有する上部電極の突起を挿入し、油圧機にて上下電極を加圧し、100kg/cm2加圧時の抵抗値(Ω)と試料の高さ(cm)を測定し、抵抗値に高さを乗することによって求めた。
酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子の製造方法について説明する。
まず、多孔質シリカ系粒子、または内部に空洞を有するシリカ系粒子の分散液を前述の方法等により調製する。分散液の固形分濃度として0.1〜40質量%、更に0.5〜20質量%の範囲にあることが好ましい。固形分濃度が0.1質量%未満の場合は、生産効率が低く、固形分濃度が40質量%を超えると、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が凝集することがあり、被膜の透明性が低下したり、ヘーズが悪化することがある。
また、アンチモン酸の分散液(水溶液)を調製する。アンチモン酸の調製方法としては、多孔質シリカ系粒子または内部に空洞を有するシリカ系粒子の細孔や空洞を埋めることなく、粒子表面に酸化アンチモンの被覆層を形成することができれば特に制限はないが、以下に示す方法は均一で薄い酸化アンチモン被覆層を形成することができるので好ましい。
具体的には、アンチモン酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で処理してアンチモン酸(ゲル)分散液を調製し、次いで陰イオン交換樹脂で処理する。アンチモン酸アルカリ水溶液としては、例えば特開平2−180717号公報に記載されている、酸化アンチモンゾルの製造方法に用いるアンチモン酸アルカリ水溶液は好適である。
アンチモン酸アルカリ水溶液は、三酸化アンチモン(Sb23)、アルカリ物質及び過酸化水素を反応させて得たものであることが好ましく、酸化アンチモンとアルカリ物質と過酸化水素のモル比を1:2.0〜2.5:0.8〜1.5、好ましくは1:2.1〜2.3:0.9〜1.2とし、三酸化アンチモンとアルカリ物質を含む系に、過酸化水素を三酸化アンチモン1モル当たり、0.2モル/hr以下の速度で添加して得られる。
この時使用される三酸化アンチモンは、粉末、特に平均粒子径が10μm以下の微粉末のものが好ましく、また、アルカリ物質としては、LiOH、KOH、NaOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2等を挙げることができ、中でもKOH、NaOHなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。これらのアルカリ物質は、得られるアンチモン酸溶液を安定化させる効果を有する。
まず、水に所定量のアルカリ物質と三酸化アンチモンを加えて三酸化アンチモン懸濁液を調製する。この三酸化アンチモン懸濁液の三酸化アンチモン濃度は、Sb23として3〜15質量%の範囲とすることが望ましい。次いで、この懸濁液を50℃以上、好ましくは80℃以上に加温し、これに濃度が5〜35質量%の過酸化水素水を三酸化アンチモン、1モル当たり0.2モル/hr以下の速度で添加する。過酸化水素水の添加速度が0.2モル/hrより速い場合は、得られる酸化アンチモン粒子の粒子径が大きくなり、粒子径分布が広がるので好ましくない。また、過酸化水素水の添加速度が非常に遅い場合は生産性が悪いので、好ましい添加速度範囲としては、0.04〜0.2モル/hrの範囲である。
上記反応で得られたアンチモン酸アルカリ(MHSbO3:Mがアルカリ金属の場合)水溶液を、必要に応じて未溶解の残渣を分離した後、更に必要に応じて希釈し、陽イオン交換樹脂で処理し、アルカリイオンを除去することによってアンチモン酸ゲル(HSbO3 -)n分散液を調製する。
また、アンチモン酸アルカリ水溶液には、スズ酸アルカリ水溶液、リン酸ナトリウム水溶液等のドーピング剤を含む水溶液が含まれていても良い。このようなドーピング剤が含まれていると更に導電性の高い酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が得られる。
ここで、アンチモン酸は、(HSbO3 -)n(n=2以上の重合体)で表すことができ、粒子径が1〜5nm程度のアンチモン酸(HSbO3 -)の重合物からなり、微粒子が凝集し、ゲル状態を呈している。
陽イオン交換樹脂で処理する際のアンチモン酸アルカリ水溶液の濃度は、固形分Sb25として0.01〜5質量%、更に0.1〜3質量%の範囲にあることが好ましい。固形分として0.01質量%未満の場合は生産効率が低く、5質量%を超えるとアンチモン酸の大きな凝集体が生成することがあり、アンチモン酸による中空シリカ系粒子の被覆ができにくく、できたとしても不均一になることがある。
陽イオン交換樹脂の使用量は、得られるアンチモン酸分散液のpHが1〜4、更に1.5〜3.5の範囲とすることが好ましい。pH1未満の場合は鎖状粒子にならず凝集粒子が生成する傾向にあり、pH4を超えると単分散粒子が生成する傾向がある。また、pH1未満の場合は、酸化アンチモンの溶解度が高いために所定量の酸化アンチモンの被覆が困難になり、pH4を超えると、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が凝集体となることがあり、被膜中での分散性が低下したり、帯電防止効果が不十分となることがある。
次いで、アンチモン酸分散液と多孔質シリカ系粒子、または内部に空洞を有するシリカ系粒子の分散液とを混合し、50〜250℃、好ましくは70〜120℃で、通常1〜24時間熟成を行うことによって酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子分散液を得ることができる。
アンチモン酸分散液とシリカ系粒子分散液との混合比率は、シリカ系粒子を固形分として100質量部に、アンチモン酸をSb25として1〜200質量部、好ましくは5〜100質量部となるように添加する。アンチモン酸の混合比率が1質量部未満の場合は、被覆が不均一であったり被覆層の厚さが不十分となり、酸化アンチモンで被覆する効果、砂割、導電性を付与、向上する効果が十分に得られないことがある。アンチモン酸の混合比率が200質量部を超えても、被覆に寄与しない酸化アンチモンが増加したり、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子の導電性が更に向上することも無く、屈折率が1.60を超えて高くなることがある。
混合した分散液の濃度は固形分として1〜40質量%、更に2〜30質量%の範囲にあることが好ましい。混合分散液の濃度が1質量%未満の場合は、酸化アンチモンの被覆効率が不十分であったり、生産効率が低下する。一方40質量%を超えるとアンチモン酸の使用量が多い場合に、得られる酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子が凝集することがある。
その他、低屈折率層には以下のコロイダルシリカ、またはフッ化マグネシウムを含有しても良い。
コロイダルシリカとは、二酸化ケイ素をコロイド状に水または有機溶媒に分散させたものであり、特に限定はされないが球状、針状または数珠状である。
コロイダルシリカの平均粒径は50〜300nmの範囲が好ましく、変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
コロイダルシリカは、市販されており、例えば日産化学工業社のスノーテックスシリーズ、触媒化成工業社のカタロイド−Sシリーズ、バイエル社のレバシルシリーズ等が挙げられる。また、アルミナゾルや水酸化アルミニウムでカチオン変性したコロイダルシリカやシリカの一次粒子を2価以上の金属イオンで粒子間を結合し、数珠状に連結した数珠状コロイダルシリカも好ましく用いられる。数珠状コロイダルシリカは日産化学工業社のスノーテックス−AKシリーズ、スノーテックス−PSシリーズ、スノーテックス−UPシリーズ等があり、具体的にはIPS−ST−L(イソプロパノール分散、粒子径40〜50nm、固形分30%)、MEK−ST−MS(メチルエチルケトン分散、粒子径17〜23nm、固形分35)等が挙げられる。
フッ化マグネシウムとしては、例えば日産化学工業社のイソプロパノール分散フッ化マグネシウムゾルや、シーアイ化成社のナノテックシリーズ等が挙げられる。
低屈折率層には、触媒を含有することが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸等の有機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類、後述する金属キレート化合物等が挙げられるが、中でも酸触媒及び金属キレート化合物が好ましく用いられる。
酸触媒では塩酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、フタル酸等が好ましく用いられる。金属キレート化合物としては、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするキレート化合物が、特に制限なく好適に用いることができる。
具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが特に好ましく用いられる。また、これらの金属キレート化合物は、単独でも併用でも使用することができる。
また、低屈折率層には、下記一般式(10)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物或いはその重縮合物を含有することが好ましい。
一般式(10) R2mSiX24-m
式中、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基、X2は水酸基または加水分解可能な置換基であり、mは0〜3の整数である。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
X2の加水分解可能な置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基等が挙げられる。
具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−1,3−ジメチルブチリデンプロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルシラン等が挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して用いられる。
低屈折率層を形成する塗布組成物には、有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エタノール、イソプロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
低屈折率層を形成する塗布組成物中の固形分濃度は、1〜4質量%であることが好ましく、固形分濃度を4質量%以下とすることによって、塗布ムラが生じにくくなり、1質量%以上とすることによって、乾燥負荷が軽減される。
低屈折率層を形成する塗布組成物には、フッ素系化合物またはシリコーン系界面活性剤を含有することが好ましい。上記界面活性剤を含有させることで、塗布ムラを低減したり膜表面の防汚性を向上させるのに有効である。
フッ素系化合物としては、パーフルオロアルキル基を含有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを母核としたもので、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン等の誘導体等が挙げられる。市販品としては、例えばサーフロン「S−381」、「S−382」、「SC−101」、「SC−102」、「SC−103」、「SC−104」(何れも旭硝子株式会社製)、フロラード「FC−430」、「FC−431」、「FC−173」(何れもフロロケミカル−住友スリーエム製)、エフトップ「EF352」、「EF301」、「EF303」(何れも新秋田化成株式会社製)、シュベゴーフルアー「8035」、「8036」(何れもシュベグマン社製)、「BM1000」、「BM1100」(いずれもビーエム・ヒミー社製)、メガファック「F−171」、「F−470」(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)、等を挙げることができる。
フッ素系化合物の含有割合は、塗布組成物中0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。フッ素系化合物は、1種または2種以上を併用することができる。
次に、シリコーン界面活性剤について説明する。
シリコーン界面活性剤は、ケイ素原子に結合した有機基の種類により、ストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルに大別できる。
ここで、ストレートシリコーンオイルとは、メチル基、フェニル基、水素原子を置換基として結合したものをいう。変性シリコーンオイルとは、ストレートシリコーンオイルから二次的に誘導された構成部分をもつものである。一方、シリコーンオイルの反応性からも分類することができる。これらをまとめると、以下のようになる。
(シリコーンオイル)
1.ストレートシリコーンオイル
1−1.非反応性シリコーンオイル:ジメチル、メチルフェニル置換等。
1−2.反応性シリコーンオイル:メチル水素置換等。
2.変性シリコーンオイル
ジメチルシリコーンオイルに、さまざまな有機基を導入することで生まれたものが変性シリコーンオイルである。
2−1.非反応性変性シリコーンオイル:アルキル、アルキル/アラルキル、アルキル/ポリエーテル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル置換等。
アルキル/アラルキル変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を長鎖アルキル基或いはフェニルアルキル基が置換したシリコーンオイルである。
ポリエーテル変性シリコーンオイルは、親水性のポリオキシアルキレンを疎水性のジメチルシリコーンを導入した界面活性剤である。
高級脂肪酸変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を高級脂肪酸エステルに置換えたシリコーンオイルである。
アミノ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をアミノアルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイルである。
エポキシ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をエポキシ基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイルである。
カルボキシル変性或いはアルコール変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をカルボキシル基或いは水酸基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイルである。
これらのうち、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる。
具体的な商品としては、東レダウコーニング社のL−45、L−9300、FZ−3704、FZ−3703、FZ−3720、FZ−3786、FZ−3501、FZ−3504、FZ−3508、FZ−3705、FZ−3707、FZ−3710、FZ−3750、FZ−3760、FZ−3785、FZ−3785、Y−7499、信越化学社のKF96L、KF96、KF96H、KF99、KF54、KF965、KF968、KF56、KF995、KF351、KF351A、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、FL100、ビックケミージャパン社製の界面活性剤BYKシリーズ、BYK−300/302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−340、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−352、BYK−354、BYK−355/356、BYK−358N/361N、BYK−357、BYK−390、BYK−392、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570、BYK−Silclean3700、GE東芝シリコーン社製のジメチルシリコーンシリーズ、XC96−723、YF3800、XF3905、YF3057、YF3807、YF3802、YF3897等が挙げられる。
また、シリコーン界面活性剤は、シリコーンオイルのメチル基の一部を親水性基に置換した界面活性剤である。置換の位置は、シリコーンオイルの側鎖、両末端、片末端、両末端側鎖等がある。親水性基としては、ポリエーテル、ポリグリセリン、ピロリドン、ベタイン、硫酸塩、リン酸塩、4級塩等がある。
シリコーン界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
非イオン界面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない界面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば東レダウコーニング社のシリコーン界面活性剤SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。低屈折率層を形成する塗布組成物を塗布した際のムラ抑制やレベリング性から好ましい。これらの具体例としては、例えば東レダウコーニング社のシリコーン界面活性剤ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208、FZ−2222等が挙げられる。
低屈折率層を形成する塗布組成物には、より過酷な条件下での耐久試験後に本発明の目的効果を発揮しやすい点から、以下に説明する反応性変性シリコーン樹脂(反応性変性シリコーンオイルともいう)を含有することが好ましい。
2−2.反応性変性シリコーンオイル:アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコール置換等。
反応性変性シリコーン樹脂としては、ポリシロキサンの側鎖、片末端または両末端にアミノ、エポキシ、カルボキシル、水酸基、メタクリル、メルカプト、フェノール等で置換された反応性タイプの変性シリコーン樹脂である。アミノ変性シリコーン樹脂として、具体的にはKF−860,KF−861,X−22−161A、X−22−161B(以上、信越化学工業株式会社製)、FM−3311,FM−3325(以上、チッソ株式会社製)、エポキシ変性シリコーン樹脂としては、KF−105、X−22−163A、X−22−163B、KF−101、KF−1001(以上、信越化学工業株式会社製)、ポリエーテル変性シリコーン樹脂としてはX−22−4272、X−22−4952、カルボキシル変性シリコーン樹脂としてはX−22−3701E、X−22−3710(以上、信越化学工業株式会社製)、カルビノール変性シリコーン樹脂としてはKF−6001、KF−6003(以上、信越化学工業株式会社製)、メタクリル変性シリコーン樹脂としてはX−22−164C(以上、信越化学工業株式会社製)、メルカプト変性シリコーン樹脂としてはKF−2001(以上、信越化学工業株式会社製)、フェノール変性シリコーン樹脂としてはX−22−1821(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。水酸基変性シリコーン樹脂としては、FM−4411、FM−4421、FM−DA21,FM−DA26(以上、チッソ株式会社製)等が挙げられる。その他、片末端反応性シリコーン樹脂のX−22−170DX、X−22−2426、X−22−176F(信越化学工業株式会社製)等も含まれる。
上記した界面活性剤は他の界面活性剤と併用して用いてもよく、また、適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、また、リオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等と併用しても良い。上記した界面活性剤の添加量は、低屈折率層塗布組成物中、0.05〜5.0質量%であることが、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する点から好ましい。
低屈折率層は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、低屈折率層を形成する上記塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じてUV等で硬化処理することで形成される。
塗布量は、ウェット膜厚として0.05〜100μmが適当で、好ましくは、0.1〜50μmである。また、ドライ膜厚が上記膜厚となるように塗布組成物の固形分濃度は調整される。
硬化方法としては、加熱することによって熱硬化させる方法、紫外線等の光照射によって硬化させる方法などが挙げられる。熱硬化させる場合は、加熱温度は50〜300℃が好ましく、好ましくは60〜250℃、更に好ましくは80〜150℃である。光照射によって硬化させる場合は、照射光の露光量は10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100mJ/cm2〜500mJ/cm2がより好ましい。
ここで、照射される光の波長域としては特に限定されないが、紫外線領域の波長を有する光が好ましく用いられる。具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2であるが、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
また、低屈折率層を形成後、温度50〜160℃で加熱処理を行う工程を含んでも良い。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば50℃であれば、好ましくは3日間以上30日未満の期間、160℃であれば10分以上1日以下の範囲が好ましい。また、加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが必要であり、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが好ましい。
《導電層》
次に導電層について説明する。導電層はフィルム基材上とハードコート層との間に設けることで、本発明の効果が良好に発揮される。
導電層とは、具体的には導電性化合物を含有する層である。また導電層の屈折率としては、波長550nm測定で、1.45〜1.60の範囲であることが好ましい。また導電層は、表面比抵抗が1013Ω/cm2(25℃、55%RH)以下に調整された層であることが好ましく。更に好ましくは、1010Ω/cm2(25℃、55%RH)以下であり、特に好ましくは、109Ω/cm2(25℃、55%RH)以下である。
ここで、表面比抵抗の測定は、試料を25℃、55%RHの条件にて24時間調湿し、抵抗率計を用いて測定した値である。また、抵抗率計装置としては、例えば三菱化学株式会社製ハイレスタUP MCP−HT450を用いることができる。
また、導電層上に、オーバーコート層を設けた場合の表面比抵抗値の測定は、導電層が設けられている側の最表面層における表面比抵抗値を実質的に導電層の表面比抵抗値として定義する。
導電性化合物としては、金属酸化物微粒子又はπ共役系導電性ポリマーが好ましい化合物である。
次に金属酸化物微粒子について説明する。金属酸化物微粒子は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Ta等の微量の原子をドープしてあってもよい。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが好ましく、特に好ましくはアンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモン酸亜鉛といったアンチモン化合物である。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘーズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
次にπ共役系導電性ポリマーについて説明する。π共役系導電性ポリマーとは、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さ、安定性点からは、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類が好ましい。
π共役系導電性ポリマーは、無置換のままでも十分な導電性やバインダー樹脂への溶解性が得られるが、導電性や溶解性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導入してもよい。
このようなπ共役系導電性ポリマーの具体例としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−N−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)、ポリフェニルアセチレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でも良いし、2種からなる共重合体でも好適に用いることができる。
これらのπ共役系導電性ポリマーには、ドーパント成分が添加されていても良い。ドーパント成分としては、例えば、ハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハライドなどの低分子量ドーパントや、ポリアニオンのようなポリマー等が挙げられる。
ポリアニオンとは、π共役系導電性ポリマーに対するドーパントとして機能するアニオン基を有する高分子であり、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位からなるものである。
ポリアルキレンとは主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
ポリアルケニレンとは主鎖に不飽和結合が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーであり、例えば、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
ポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしてはポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性ポリマーへの化学酸化ドープが起こりうる官能基であれば良いが、製造の容易さや安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。更に、官能基のπ共役系導電性ポリマーへのドープ効果の観点から、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体でも良く、2種以上の共重合体でも良い。これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、得られる導電層の導電性をより高めることができる。
ポリアニオンの他にも、π共役系導電性ポリマーを酸化還元することができれば、以下のようなドナー性或いはアクセプタ性のドーパントを用いることができる。
ドナー性ドーパントとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
アクセプタ性ドーパントとしては、Cl2、Br2、I2、ICl、IBr、IF等のハロゲン化合物、PF5、AsF5、SbF5、BF5、BCl5、BBr5、SO3等のルイス酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等の有機シアノ化合物、プロトン酸、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
プロトン酸としては無機酸、有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を1つまたは2つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を1つまたは2つ以上含むもの、またはスルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を1つ含むものとしては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
スルホ基を2つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
また、導電性化合物として、イオン性化合物を含有しても良い。イオン性化合物としては、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系の陽イオンとBF4 -、PF6 -等の無機イオン系、CF3SO2 -、(CF3SO22-、CF3CO2 -等のフッ素系の陰イオンとからなる化合物等が挙げられる。
導電性化合物は後述する導電層バインダーとして用いられる樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜300質量部が好ましく、更に好ましくは0.1質量部〜100質量部である。
次に樹脂について説明する。導電層の樹脂バインダーとしては硬化性樹脂が好ましく、中でも塗膜の製膜性や物理的特性、及び積層膜との密着性に優れる点から、活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化して活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、特に、紫外線硬化樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば特開昭59−151110号公報に記載のもの、ユニディック17−806(大日本インキ化学工業株式会社製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン株式会社製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂は反応促進の点から光重合開始剤と合わせて用いる事が好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。
また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤または光増感剤は硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
その他モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、イソボルニルアクリレート等を挙げることができる。また、特開2006−3647号公報記載のモノマー等も好ましく用いることができる。
紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成株式会社製);NKハードB−420、NKエステルA−IB、B−500(新中村化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。
また、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂も含まれる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミドなどを挙げることができる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えばオルソフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、テレフタル酸系樹脂、ビスフェノール系樹脂、プロピレングリコール−マレイン酸系樹脂、ジシクロペンタジエンないしその誘導体を不飽和ポリエステル組成に導入して低分子量化した、或いは被膜形成性のワックスコンパウンドを添加した低スチレン揮発性樹脂、熱可塑性樹脂(ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリスチレン、飽和ポリエステルなど)を添加した低収縮性樹脂、不飽和ポリエステルを直接Br2でブロム化する、或いはヘット酸、ジブロムネオペンチルグリコールを共重合するなどした反応性タイプ、塩素化パラフィン、テトラブロムビスフェノール等のハロゲン化物と三酸化アンチモン、燐化合物の組み合わせや水酸化アルミニウムなどを添加剤として用いる添加タイプの難燃性樹脂、ポリウレタンやシリコーンとハイブリッド化、またはIPN化した強靭性(高強度、高弾性率、高伸び率)の強靭性樹脂等がある。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、ノボラックフェノール型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型を含むグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系、グリシジルエステル系、環式脂肪系、複素環式エポキシ系を含む特殊エポキシ樹脂等を挙げることができる。
ビニルエステル樹脂としては、例えば普通エポキシ樹脂とメタクリル酸等の不飽和一塩基酸とを開環付加反応して得られるオリゴマーを、スチレン等のモノマーに溶解した物がある。また分子末端や側鎖にビニル基を持ちビニルモノマーを含有する等の特殊タイプもある。
グリシジルエーテル系エポキシ樹脂のビニルエステル樹脂としては、例えばビスフェノール系、ノボラック系、臭素化ビスフェノール系等があり、特殊ビニルエステル樹脂としては、ビニルエステルウレタン系、イソシアヌル酸ビニル系、側鎖ビニルエステル系等がある。フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類を原料として重縮合して得られ、レゾール型とノボラック型がある。
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えばマレイン酸系ポリイミド、例えばポリマレイミドアミン、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド、ジアリルビスフェノール−A樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂等、またナジック酸変性ポリイミド、及びアセチレン末端ポリイミド等がある。
導電層には、前記無機粒子や有機粒子を含有しても良い。これら粒子の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、更に、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の粒子を含有しても良い。粒子は硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
また、導電層には硬化助剤としてポリウレタン樹脂の側鎖にビニル基とカルボキシル基を有し、重量平均分子量が10000以上30000以下であり、且つ、二重結合当量が500以上2000以下であるポリマーやポリマーの側鎖にビニル基を有し、重量平均分子量(Mw)が10000以上100000以下であり、二重結合当量が1000以下、ポリマーTgが−50℃以上120℃以下であるアクリルポリマー、他官能チオール化合物等を含有させてもよい。他官能チオール化合物としては例えば1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。市販品としては昭和電工社製、商品名カレンズMTシリーズ等が挙げられる。
また、フッ素−アクリル共重合体樹脂を含有しても良い。フッ素−アクリル共重合体樹脂とは、フッ素単量体とアクリル単量体とからなる共重合体樹脂で、特にフッ素単量体セグメントとアクリル単量体セグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。フッ素−アクリル共重合体樹脂の分子量は、数平均分子量で5000〜1000000が良く、好ましくは10000〜300000、更に好ましくは10000〜100000である。フッ素−アクリル共重合体樹脂の製造は、ポリメリックペルオキシドを重合開始剤とした。公知の製造プロセス(例えば特公平5−41668号公報、特公平5−59942号公報)により製造できる。
ポリメリックペルオキシドとは1分子中に2個以上のペルオキシ結合を持つ化合物である。ポリメリックペルオキシドとしては、特公平5−59942号公報に記載されている各種ポリメリックペルオキシドの一種または二種以上を使用することができる。
フッ素−アクリル共重合体樹脂の市販品としては、日本油脂株式会社の商品名、モディパーF−200、モディパーF−600、モディパーF−2020等が挙げられる。
更に導電層には、低屈折率層で記載のシリコーン系界面活性剤、フッ素系化合物、及び前記ポリオキシエーテル化合物等を含有させることが、面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高められる点で好ましい。また、前記フッ素−シロキサングラフトポリマーを含有してもよい。
非イオン性界面活性剤を含有してもよく、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート等のポリオキシアルキルエステル化合物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル化合物、等が挙げられる。アセチレングリコール系化合物としてはサーフィノール104E、サーフィノール104PA、サーフィノール420、サーフィノール440、ダイノール604(以上、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。ラジカル重合性の非イオン性界面活性剤としては、例えば、「RMA−564」、「RMA−568」、「RMA−1114」[以上、商品名、日本乳化剤株式会社製]等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系重合性界面活性剤などを挙げることができる。
導電層は、種々の表示素子に対する色補正用フィルターとして色調調整機能を有する色調調整剤(染料もしくは顔料等)、電磁波遮断剤、または赤外線吸収剤等を含有してもよい。
導電層はオーバーコート層との易接着性を保持するため、セルロースエステル系樹脂またはアクリル系樹脂を含有することが好ましい。
セルロースエステル系樹脂としては、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、またはセルロースナイトレート等のセルロース誘導体が挙げられる。
また、アクリル系樹脂としては、例えば、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが好ましく用いられる。
導電層を塗設するための塗布組成物には、次の溶剤が好ましく用いられる。溶剤としては、炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒(メチレンクロライド)を適宜混合して使用することができるが特にこれらに限定されるものではない。
上記炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられ、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられ、グリコールエーテル(C1〜C4)類としては、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、またはプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、その他の溶媒としてメチレンクロライド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒も好ましく用いられる。
導電層塗布組成物の塗布方法としては、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて基材フィルムの一方の面にウェット膜厚0.1〜100μm、好ましくは、0.5〜30μm、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmで塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化して形成される。硬化工程は、加熱処理或いはUV硬化処理によって行われる。UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜200mJ/cm2である。また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜500N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることができる。導電層は1層でも2層以上の多層構造でも良い。
(バックコート層)
本発明の反射防止フィルムは、ハードコート層を設けた側と反対側の面にバックコート層を設けてもよい。バックコート層は、反射防止層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。すなわち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)、シーホスターKE−P10、同KE−P30、同KE−P50、同KE−P100、同KE−P150、同KE−P250(以上、日本触媒株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもでアエロジル200V、アエロジルR972V、シーホスターKE−P30、同KE−P50、及び同KE−P100がヘーズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられる反射防止フィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘーズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層の塗布に用いられる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、または炭化水素類(トルエン、キシレン)等があげられ、適宜組みわされて用いられる。
バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン株式会社製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン株式会社製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することもできる。
例えば、バインダーとして用いられる樹脂としてはセルロースジアセテート、セルロースアセテートプロヒオネートなどのセルロースエステルとアクリル樹脂のブレンド物を用いることが好ましく、アクリル樹脂からなる微粒子を用いて、微粒子とバインダーとの屈折率差を0〜0.02未満とすることで透明性の高いバックコート層とすることができる。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。
また、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化処理することで、バックコート層は形成される。硬化処理は低屈折率層で記載した内容を用いることができる。バックコート層は2回以上に分けて塗布することもできる。また、バックコート層は偏光子との接着性を改善するための易接着層を兼ねても良い。
また、上記のように各層を塗布により形成するに際して、基材フィルムの幅は1.4〜4mでロール状に巻き取られた状態から繰り出して、上記塗布を行い、乾燥・硬化処理した後、ロール状に巻き取られることが好ましい。また、反射防止フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、特に限定されないが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックが好ましく、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。またガラス繊維などの充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることがさらに好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましい。
本発明における反射防止フィルムの鉛筆硬度は、2H〜8HであるとLCD等の表示装置の表面における使用や偏光板化工程において傷が付きにくいことから好ましい構成であり、かつハードコート性を有しているといえる。また、より好ましくは4H〜8Hであり、更に好ましくは、5H〜8Hである。
鉛筆硬度は、作製した反射防止フィルム試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
(反射率)
反射防止フィルムの反射率(反射防止層の反射率)は、分光光度計、分光測色計により測定を行うことができる。その際、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色スプレー、黒色アクリル板の貼り付け等して光吸収処理を行ってから、可視光領域(400〜700nm)の反射光を測定する。
本発明における反射防止フィルムとは反射率は低いほど好ましいが、可視光領域の波長における平均値が2.0%以下であることが、LCD等の画像表示装置の最表面に用いた場合の外光反射防止機能が好適に得られる点から好ましい。最低反射率は0.8%以下であることが好ましい。
また、可視光の波長領域において平坦な形状の反射スペクトルを有することが好ましい。また、反射防止処理を施した表示装置表面の反射色相は、反射防止膜の設計上可視光領域において短波長域や長波長域の反射率が高くなることから赤や青に色づくことが多いが、反射光の色味は用途によって要望が異なり、薄型テレビ等の最表面に使用する場合にはニュートラルな色調が好まれる。この場合、一般に好まれる反射色相範囲は、XYZ表色系(CIE1931表色系)上で0.17≦x≦0.27、0.07≦y≦0.17である。また、xy平面上の(x、y)=(0.31、0.31)の距離Δxyが、0.05以下となる範囲がより色味がないニュートラルに近いため好ましく、0.03以下が更に好ましい。色調は、各層の屈折率より、反射率、反射光の色味を考慮して膜厚を常法に従って計算できる。
(層構成)
反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。なお、ここでは積層配置されていることを示している。但し、本発明は下記の層構成に限定されるものではない。
フィルム基材/ハードコート層(表面処理)/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/ハードコート層(表面処理)/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/導電層/ハードコート層(表面処理)/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/防弦層/ハードコート層(表面処理)/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/ハードコート層/ハードコート層(表面処理)/低屈折率層
導電層/フィルム基材/ハードコート層(表面処理)/低屈折率層
導電層/フィルム基材/導電層/ハードコート層(表面処理)/低屈折率層
《基材フィルム》
基材フィルムは製造が容易であること、ハードコート層、導電層等と接着し易いこと、光学的に等方性であることが好ましい。これらの性質を有していれば何れでもよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの内、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX2M、KC4UX2M、KC4UY、KC8UT、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系フィルムが、製造上、コスト面、等方性、接着性、及び本発明の目的効果が好適に得られることから好ましい。
(セルロースエステル系フィルム)
次に基材フィルムとして好ましいセルロースエステル系フィルム(以下、セルロースエステルフィルムともいう)について説明する。
セルロースエステル樹脂(以下セルロースエステルともいう)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同08−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で60000〜300000のものが好ましく、70000〜200000のものが更に好ましく、100000〜200000のものが特に好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルは重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が4.0以下であることが好ましく、更に好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)
Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることができる。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)から合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
また、セルロースエステルフィルムは、本発明の目的効果がより良く発揮される点から、アクリル樹脂を含有した方が好ましい。
次にアクリル樹脂について説明する。
アクリル樹脂としては、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
アクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が80000〜1000000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)は上記の高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。
アクリル樹脂(A)の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。さらに、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。この分子量とすることで、耐熱性と脆性の両立を図ることができる。アクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
次に、セルロースエステルフィルムは、本発明の目的効果が良好に発揮されるほか、鉛筆硬度にも優れることから、アクリル樹脂と更にアクリル粒子を含有することが好ましい。
アクリル粒子について、説明する。アクリル粒子は、例えば、作製したアクリル樹脂含有フィルムを所定量採取し、溶媒に溶解させて攪拌し、充分に溶解・分散させたところで、アクリル粒子の平均粒子径未満の孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾過捕集された不溶物の重さが、アクリル樹脂含有フィルムに添加したアクリル粒子の90質量%以上あることが好ましい。
アクリル粒子は特に限定されるものではないが、2層以上の層構造を有するアクリル粒子であることが好ましく、特に下記多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟質層重合体、および最外硬質層重合体が、層状に重ね合わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体を言う。
アクリル系樹脂組成物に用いられる多層構造アクリル系粒状複合体の好ましい態様としては、以下の様なものが挙げられる。(a)メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%、および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られる最内硬質層重合体、(b)上記最内硬質層重合体の存在下に、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られる架橋軟質層重合体、(c)上記最内硬質層および架橋軟質層からなる重合体の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%とアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%とからなる単量体混合物を重合して得られる最外硬層重合体、よりなる3層構造を有し、かつ得られた3層構造重合体が最内硬質層重合体(a)5〜40質量%、軟質層重合体(b)30〜60質量%、および最外硬質層重合体(c)20〜50質量%からなり、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不溶部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0であるアクリル系粒状複合体、が挙げられる。
なお、特公昭60−17406号あるいは特公平3−39095号において開示されている様に、多層構造アクリル系粒状複合体の各層の組成や粒子径を規定しただけでなく、多層構造アクリル系粒状複合体の引張り弾性率やアセトン不溶部のメチルエチルケトン膨潤度を特定範囲内に設定することにより、さらに充分な耐衝撃性と耐応力白化性のバランスを実現することが可能となる。
ここで、多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最内硬質層重合体(a)は、メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
最内硬質層重合体(a)におけるアルキルアクリレート単位の割合は1〜20質量%であり、該単位が1質量%未満では、重合体の熱分解性が大きくなり、一方、該単位が20質量%を越えると、最内硬質層重合体(c)のガラス転移温度が低くなり、3層構造アクリル系粒状複合体の耐衝撃性付与効果が低下するので、いずれも好ましくない。
多官能性グラフト剤としては、異なる重合可能な官能基を有する多官能性単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸のアリルエステル等が挙げられ、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。多官能性グラフト剤は、最内硬質層重合体と軟質層重合体を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は0.01〜0.3質量%である。
アクリル系粒状複合体を構成する架橋軟質層重合体(b)は、上記最内硬質層重合体(a)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
また、これらの重合性単量体と共に、25質量%以下の共重合可能な他の単官能性単量体を共重合させることも可能である。
共重合可能な他の単官能性単量体としては、スチレンおよび置換スチレン誘導体が挙げられる。アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとスチレンとの比率は、前者が多いほど生成重合体(b)のガラス転移温度が低下し、即ち軟質化できるのである。一方、樹脂組生物の透明性の観点からは、軟質層重合体(b)の常温での屈折率を最内硬質層重合体(a)、最外硬質層重合体(c)、および硬質熱可塑性アクリル樹脂に近づけるほうが有利であり、これらを勘案して両者の比率を選定する。
例えば、被覆層厚みの小さな用途においては、必ずしもスチレンを共重合しなくとも良い。
多官能性グラフト剤としては、前記の最内層硬質重合体(a)の項で挙げたものを用いることができる。ここで用いる多官能性グラフト剤は、軟質層重合体(b)と最外硬質層重合体(c)を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.5〜5質量%が好ましい。
多官能性架橋剤としては、ジビニル化合物、ジアリル化合物、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物などの一般に知られている架橋剤が使用できるが、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200〜600)が好ましく用いられる。
ここで用いる多官能性架橋剤は、軟質層(b)の重合時に架橋構造を生成し、耐衝撃性付与の効果を発現させるために用いられる。ただし、先の多官能性グラフト剤を軟質層の重合時に用いれば、ある程度は軟質層(b)の架橋構造を生成するので、多官能性架橋剤は必須成分ではないが、多官能性架橋剤を軟質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.01〜5質量%が好ましい。
多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最外硬質層重合体(c)は、上記最内硬質層重合体(a)および軟質層重合体(b)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
ここで、アクリルアルキレートとしては、前述したものが用いられるが、メチルアクリレートやエチルアクリレートが好ましく用いられる。最外硬質層(c)におけるアルキルアクリレート単位の割合は、1〜20質量%が好ましい。
また、最外硬質層(c)の重合時に、アクリル樹脂(A)との相溶性向上を目的として、分子量を調節するためアルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用い、実施することも可能である。
とりわけ、最外硬質層に、分子量が内側から外側へ向かって次第に小さくなるような勾配を設けることは、伸びと耐衝撃性のバランスを改良するうえで好ましい。具体的な方法としては、最外硬質層を形成するための単量体混合物を2つ以上に分割し、各回ごとに添加する連鎖移動剤量を順次増加するような手法によって、分子量を内側から外側へ向かって小さくすることが可能である。この際に形成される分子量は、各回に用いられる単量体混合物をそれ単独で同条件にて重合し、得られた重合体の分子量を測定することによって調べることもできる。多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体の粒子径については、特に限定されるものではないが、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、さらに、20nm以上、500nm以下であることがより好ましく、特に50nm以上、400nm以下であることが最も好ましい。
多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体において、コアとシェルの質量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体を100質量部としたときに、コア層が50質量部以上、90質量部以下であることが好ましく、さらに、60質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
アクリル粒子として好適に使用されるグラフト共重合体であるアクリル粒子(c−1)の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体であるアクリル粒子(c−1)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
また、アクリル樹脂およびアクリル粒子のそれぞれの屈折率が近似している場合、基材フィルムの透明性を得ることができるため、好ましい。具体的には、アクリル粒子(C)とアクリル樹脂(A)の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
このような屈折率条件を満たすためには、アクリル樹脂の各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはアクリル粒子に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などにより、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れたアクリル樹脂含有フィルムを得ることができる。
尚、ここで言う屈折率差とは、アクリル樹脂が可溶な溶媒に、アクリル樹脂含有フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂と不溶部分(アクリル粒子))をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
アクリル樹脂に、アクリル粒子を配合する方法には、特に制限はなく、アクリル樹脂とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、アクリル粒子を添加しながら一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。
アクリル粒子としては、市販のものも使用することができる。例えば、メタブレンW−341(C2)(三菱レイヨン(株)製)を、ケミスノーMR−2G(C3)、MS−300X(C4)(綜研化学(株)製)等を挙げることができる。
アクリル粒子はセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の総質量に対して、0.5〜45質量%のアクリル粒子を含有することが好ましい。
また、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルム(以下、セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムともいう)は、張力軟化点が105〜145℃で、かつ延性破壊が起こらないフィルムが好ましい。延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じるものであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。張力軟化点温度の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、アクリル樹脂含有フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
また、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
ガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムの厚みは、20μm以上であることが好ましい。
より好ましくは30μm以上である。厚みの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚みは用途により適宜選定することができる。
セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、加工性および耐熱性の両立の点から、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を95:5〜30:70の質量比で含有することが好ましく、またセルロースエステル樹脂のアシル基の総置換度(T)が2.00〜3.00、アセチル基置換度(ac)が0〜1.89、アセチル基以外のアシル基の炭素数が3〜7であり、重量平均分子量(Mw)が75000〜280000であることが好ましい。また、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、アクリル樹脂含有フィルムの55〜100質量%であり、好ましくは60〜99質量%である。
セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、その他のアクリル樹脂を含有して構成されていても良い。
セルロースエステルフィルムやセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなるフィルムは、溶液流延法で製造されたものでも、溶融流延法で製造されたものでもよいが、少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で剥離残溶量が3〜40質量%である時に幅手方向に1.01〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、剥離残溶量が3〜40質量%である時に幅手方向及び長手方向に、各々1.01〜1.5倍に延伸されることが望ましい。このときの延伸倍率としては特に好ましくは、1.03〜1.45倍である。
また、基材フィルムの長さは100m〜5000m、幅は1.2m以上が好ましく、更に好ましくは1.4〜4mである。基材フィルムの長さ及び幅を前記範囲とすることで、取り扱い性や生産性に優れる。
セルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明支持体であることが好ましい。
(可塑剤)
セルロースエステルフィルムやセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムには、下記のような可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3ープロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2ーブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ーブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5ーペンタンジオール、1,6ーヘキサンジオール、ヘキサントリオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、等を上げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトール、であることが好ましい。多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを上げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを上げることができる。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を上げることができる。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上もつ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を上げることができる。特に安息香酸であることが好ましい。多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基はカルボン酸で全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。これらの可塑剤は単独または併用するのが好ましい。これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
(紫外線吸収剤)
基材フィルムには紫外線吸収剤を含有させても良い。次に紫外線吸収剤について説明する。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては以下の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては以下の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
上記紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
また、特願平11−295209号に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤を用いることができ、特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤が基材フィルムの面品質を良好に維持できる点から好ましい。
また、特開平6−148430号の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
また、基材フィルムには、内部ヘーズを付与させても良い。
(粒子)
内部ヘーズは、例えば基材フィルムに基材フィルムと屈折率の異なる粒子を添加し、添加量や粒子の粒径等をコントロールすることで、内部散乱によるヘーズを発生させ、これを調整することで達成できる。粒子としては、無機粒子と有機粒子に区別される。無機粒子としては特に限定されず、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。また、有機粒子としては特に限定されず、例えば、フッ素化アクリル樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、更にポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリ弗化エチレン樹脂粉末等が挙げられる。これらの無機粒子及び有機粒子は、種類、平均粒子径が異なる2種以上を併用してもよく、粒子の表面を有機物により表面処理したものも好ましく用いられる。
特に好ましい無機粒子は、これらの中でも二酸化珪素である。二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いるとヘーズを調整するのが容易であり好ましい。
有機粒子としては、フッ素含有アクリル樹脂粒子が特に好適である。
フッ素含有アクリル樹脂粒子としては、例えばフッ素含有のアクリル酸エステル或いはメタクリル酸エステルのモノマーまたはポリマーから形成された粒子である。フッ素含有のアクリル酸エステル或いはメタクリル酸エステルの具体例としては、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル−α−フルオロアクリレートが挙げられる。また、フッ素含有アクリル樹脂粒子の中でも、2−(パーフルオロブチル)エチル−α−フルオロアクリレートからなる粒子、フッ素含有ポリメチルメタクリレート粒子、フッ素含有メタアクリル酸を架橋剤の存在下にビニル単量体と共重合させた粒子が好ましく、更に好ましくはフッ素含有ポリメチルメタクリレート粒子である。
フッ素含有(メタ)アクリル酸と共重合可能なビニル単量体としては、ビニル基を有するものであればよく、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル、及びスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類等が挙げられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。重合反応の際に用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、2個以上の不飽和基を有するものを用いることが好ましく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の2官能性ジメタクリレートや、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
尚、フッ素含有ポリメチルメタクリレート粒子を製造するための重合反応は、ランダム共重合およびブロック共重合のいずれでもよい。具体的には、例えば特開2000−169658号公報に記載の方法なども挙げることができる。
市販品としては、根上工業製:MF−0043等の市販品が挙げられる。尚、これらのフッ素含有アクリル樹脂粒子は、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのフッ素含有アクリル樹脂粒子の状態は、粉体或いはエマルジョン等、どのような状態で加えられても良い。
また、特開2004−83707号公報の段落0028〜0055に記載のフッ素含有架橋粒子を用いても良い。
ポリスチレン粒子としては、例えば綜研化学製;SX−130H、SX−200H、SX−350H)、積水化成品工業製、SBXシリーズ(SBX−6、SBX−8)等の市販品を挙げられる。
メラミン系粒子としては、例えば、日本触媒製:ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;M30、商品名:エポスターGP、グレード;H40〜H110)、日本触媒製:メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;S12、S6、S、SC4)等の市販品を挙げられる。また、コアがメラミン系樹脂からなり、シェルがシリカで充填されたコア−シェル型の球状複合硬化メラミン樹脂粒子等も挙げられる。具体的には特開2006−171033号公報に記載の方法で作製することができ、日産化学工業製:メラミン樹脂・シリカ複合粒子(商品名;オプトビーズ)等の市販品を挙げられる。
ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子としては、例えば、綜研化学製;MX150、MX300、日本触媒製;エポスターMA、グレード;MA1002、MA1004、MA1006、MA1010、エポスターMX(エマルジョン)、グレード;MX020W、MX030W、MX050W、MX100W、積水化成品工業製:MBXシリーズ(MBX−8、MBX12)等の市販品を挙げられる。
架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の具体例としては、例えば日本ペイント製:FS−201、MG−351等の市販品が挙げられる。ベンゾグアナミン系粒子としては、例えば日本触媒製:ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;L15、M05、MS、SC25)等が挙げられる。
支持体に添加する粒子の平均粒子径は0.3〜1μmが好ましく、0.4〜0.7μmが更に好ましい。
上記平均粒子径は、500個の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより、または動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測することができる。ここでいう平均粒子径は、個数平均粒子径をさす。尚、平均粒子径は、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の平均粒子径を意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
また、粒子の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.65である。尚、粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定できる。
また、支持体に用いる樹脂と該粒子の屈折率差は、0.02以上0.20以下であることが光散乱効果を利用して内部ヘーズを高める上で好ましい。屈折率差のより好ましい範囲は、0.05以上0.15以下である。
上記無機または有機粒子の含有量は、フィルム基材の作製用の樹脂100質量部に対して、1質量部〜30質量部が好ましく、内部ヘーズを得る上でより好ましくは5質量部〜25質量部である。
前記粒子は、基材フィルムを作製する組成物(ドープ)の調製時にセルロースエステル、他の添加剤及び有機溶媒とともに含有させて分散させてもよく、また、単独で溶液中に分散させてもよい。粒子の分散方法としては、前もって有機溶媒に浸してから高剪断力を有する分散機(高圧分散装置)で細分散させておくのが好ましい。
ドープ調製方法としては、多量の有機溶媒に粒子を分散しておき、セルロースエステル溶液と合流させ、インラインミキサーで混合してドープにすることが好ましい。この場合、粒子分散液に紫外線吸収剤を加え紫外線吸収剤液としてもよい。
また、上記の劣化防止剤、紫外線吸収剤は、セルロースエステルやセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂からなる溶液の調製の際に、セルロースエステル、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂は溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
(有機溶媒)
ドープには、製膜性や生産性の点から、有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒としては、セルロースエステル、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。例えば、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。これら有機溶媒の中でも塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが好ましく用いられる。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜40質量%、ドープ粘度は100〜500ポアズ(P)の範囲に調整されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
(溶液流延法)
セルロースエステルフィルム、及びセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムは、溶液流延法による製造では、セルロースエステル或いはセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂、及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
ドープ中のセルロースエステル、及びセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルム或いはセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂のからなるフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
(溶融製膜法)
セルロースエステルフィルム、及びセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムは、溶融製膜法によって製膜されることも好ましい。溶融製膜法は、セルロースエステル及びセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂、及び可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるセルロースエステルフィルム、及びセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。
溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押し出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。尚、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
(偏光板保護フィルム)
本発明の反射防止フィルムを偏光板保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、更に35μm以上が好ましい。また、150μm以下、更に120μm以下が好ましい。特に好ましくは25以上〜90μmが好ましい。上記領域よりも反射防止フィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いと、リターデーションの発現が困難となること、フィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
(偏光板)
本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した反射防止フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面に該反射防止フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号、特願2002−155395号記載の方法で作製することができる。または、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。或いは、特開2003−12859号記載のリターデーションRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられる。
本発明の反射防止フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明の反射防止フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
(画像表示装置)
本発明の反射防止フィルムを用いて作製した偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することができる。
本発明の反射防止フィルムは前記偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置またはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型、OCB型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられる。
また、本発明の反射防止フィルムは、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(基材フィルム1;セルロースエステルフィルム1の製造)
(ドープ液組成1)
下記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行って、セルロースエステルを完全に溶解した。酸化ケイ素微粒子は予め添加する溶媒と少量のセルロースエステルの溶液中に分散して添加した。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープ液組成1を得た。
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.95) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
酸化ケイ素微粒子 0.2質量部
(アエロジルR972V、日本アエロジル株式会社製)
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
つぎに、得られたドープ液組成1を、温度35℃に保温した流延ダイを通より、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる温度35℃の支持体上に流延して、ウェブを形成した。ついで、ウェブを支持体上で乾燥させ、ウェブの残留溶媒量が80質量%になった段階で、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
剥離後のウェブを、上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で90℃の乾燥風にて乾燥させながら搬送し、続いてテンターでウェブ両端部を把持した後、温度130℃で幅方向に延伸前の1.1倍となるように延伸した。テンターでの延伸の後、ウェブを上下に複数配置したロールによる搬送乾燥工程で、温度135℃の乾燥風にて乾燥させた。乾燥工程の雰囲気置換率15(回/時間)とした雰囲気内で15分間熱処理した後、室温まで冷却して巻き取り、幅1.5m、膜厚80μm、長さ4000m、屈折率1.49の長尺のセルロースエステルフィルム1を作製した。またフィルムは、両端部に幅1cm、平均高さ10μmのナーリング加工を施して巻き取った。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のウェブ搬送方向の延伸倍率は、1.1倍であった。
(反射防止フィルム1の作製)
上記作製したセルロースエステルフィルム1に下記手順により反射防止フィルム1を作製した。
(ハードコートフィルムの作製)
セルロースエステルフィルム1上に、下記のハードコート層組成物1を、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、ハードコート層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いてセルロースエステルフィルム1の表面に塗布し、温度80℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚10μmのハードコート層を形成した。つぎに、下記バックコート層組成物1をウェット膜厚14μmとなるように、セルロースエステルフィルム1のハードコート層を塗布した面とは反対の面に押出しコーターで塗布し、温度50℃にて乾燥し、ハードコートフィルム1を作製した。
(ハードコート層組成物1)
〈フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調製〉
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調製に用いた素材の市販品名を示す。
セフラルコートCF−803(水酸基価60、数平均分子量15,000;セントラル硝子株式会社製)
サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000;チッソ株式会社製)、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)
パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂株式会社製)、ラジカル重合開始剤
スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住友バイエルウレタン株式会社製)硬化剤
〔ラジカル重合性フッ素樹脂(A)の合成〕
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂(A)を得た。
(フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(A)(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、サイラプレーンFM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171,000である35質量%フッ素−シロキサングラフトポリマー1の溶液を得た。
重量平均分子量はGPCにより求めた。またフッ素−シロキサングラフトポリマー1の質量%はHPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
下記材料を攪拌、混合しハードコート層組成物1とした。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 90質量部
(NKエステルA−DPH、新中村化学工業株式会社製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 60質量部
ウレタンアクリレート 10質量部
(新中村化学工業社製 商品名U−4HA)
イルガキュア184 8質量部
(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
イルガキュア907 10質量部
(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
フッ素−シロキサングラフトポリマー1(35質量%) 5.0質量部
ポリオキシオレイルエーテル 1.0質量部
(花王社製 エマルゲン404)
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 4質量部
(商品名:KBM503、信越化学工業社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸エチル 80質量部
メチルエチルケトン 100質量部
(バックコート層組成物1)
アセトン 54質量部
メチルエチルケトン 24質量部
メタノール 22質量部
セルロースアセテートプロピオネート 0.6質量部
(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)
超微粒子シリカ2%アセトン分散液 0.2質量部
(日本アエロジル株式会社製アエロジル200V)
次に、上記作製したハードコートフィルム1を下記条件でアルカリ鹸化処理によりハードコート層を表面処理後、下記にようにして低屈折率層を塗布し、反射防止フィルム1を作製した。
(表面処理)
上記ハードコートフィルム1を、50℃に加熱した1Nの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、アルカリ処理を行い、水洗後、25℃の0.5%−H2SO4水溶液で30秒間浸漬し、中和させ、水洗、乾燥を行い、アルカリ鹸化処理済みのハードコートフィルム1を作製した。
(低屈折率層塗布組成物1)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200質量部
イソプロピルアルコール 660質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 4質量部
(商品名:KBM503、信越化学工業社製)
イソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子ゾル 30質量部
(固形分20%、触媒化成工業社製のシリカゾル、商品名:ELCOM V−8209)
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート 2質量部
シリコーン系界面活性剤(FZ−2207、日本ユニカー株式会社製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 3質量部
酢酸 4質量部
(低屈折率層)
上記アルカリ鹸化処理済みのハードコートフィルム1のハードコート層面上に、上記低屈折率層塗布組成物1を押出しコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射部の照度が100mW/cm2で0.3J/cm2照射して硬化させ、さらに120℃で5分間熱硬化させ、厚さ90nmとなるように低屈折率層を設け、反射防止フィルム1を作製した。得られた反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は1.37であった。
(反射防止フィルム2の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層面の表面処理を下記のプラズマ処理に変更した以外は、同様にして反射防止フィルム2を作製した。
(プラズマ処理)
図3に示すプラズマ処理装置を用い、電極間距離を1.8mmに設定した。パルス電界を発生する電源回路10のDC電源に210〜230Vの直流電圧を印加し、下記の放電ガスを放電空間に供給し、電極間に周波数10kHz、Vpp16.09kVのパルス電界を印加してプラズマ処理を行った。
(放電ガス)
窒素ガス 90.0体積%
酸素ガス 10.0体積%
(反射防止フィルム3の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層面の表面処理をマルチナイフ電極を有するコロナ処理機(SOFTAL(ソフタル)社製)でコロナ処理(エネルギー密度:200W・min./m2)した以外は、同様にして反射防止フィルム3を作製した。
(反射防止フィルム4の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層面のアルカリ鹸化処理後、更に反射防止フィルム2の作製で実施したプラズマ処理を行った以外は、同様にして反射防止フィルム4を作製した。
(反射防止フィルム5の作製)
反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布組成物1のイソプロピルアルコール分散中空シリカ微粒子ゾルを下記の酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子分散液1に変更した以外は、同様にして反射防止フィルム5を作製した。低屈折率層の屈折率は1.39であった。
(酸化アンチモン被覆中空シリカ系粒子分散液1の調製)
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと、純水1900gとの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.17質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として0.83質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al23核粒子分散液を調製した。(工程d)。
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5質量%の硫酸アンモニウム53200gを添加し、ついでSiO2として濃度1.17質量%のケイ酸ナトリウム水溶液3000gとAl23として濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gを添加して複合酸化物粒子1の分散液を得た。(工程e)。
これを限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった複合酸化物粒子1の分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離して固形分濃度20質量%のシリカ系粒子分散液を得た。(工程f)。
純水1800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85質量%)57gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(住友金属鉱山(株)製:KN 純度98.5質量%)111gを懸濁させた。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、純度35質量%)32.8gを純水110.7gで希釈した水溶液を9時間で添加(0.1mol/hr)し、三酸化アンチモンを溶解し、その後11時間熟成した。冷却後、得られた溶液から1000gを取り、この溶液を純水6000gで希釈した後、陽イオン交換樹脂に通して脱イオン処理を行った。このときのpHは2.1、電導度は2.4mS/cmであった。(工程g)。
上記で調製したシリカ系粒子分散液を、固形分濃度1質量%に希釈した分散液400gに、固形分濃度1質量%のアンチモン酸40gを加え、70℃で10時間攪拌し、限外濾過膜で濃縮し、固形分濃度20質量%の酸化アンチモン被覆シリカ系粒子(i)分散液を調製した。(工程h)。
この酸化アンチモン被覆シリカ系粒子(i)分散液100gに、純水300gとメタノール400gを加え、これに正ケイ酸エチル(SiO2濃度28質量%)3.57gを混合し、50℃で15時間加熱攪拌してシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系粒子(ii)分散液を調製した。この分散液を限外濾過膜を用いてメタノールに溶媒置換するとともに、固形分濃度20質量%になるまで濃縮した。次いで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度20質量%のシリカ系粒子(ii)のイソプロピルアルコール分散液とした。(工程i)。
次いで、このシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系粒子(ii)のイソプロピルアルコール分散液100gにメタクリル系シランカップリング剤(信越化学工業(株)製:KBM−503)0.73gを加え、50℃で15時間加熱攪拌し、シランカップリング剤により表面処理されたシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系粒子分散液1を調製した。この粒子の屈折率は1.39、体積抵抗値は1500Ω/cm、平均粒子径は61nm、酸化アンチモン被覆層の厚さは1nmであった。
(反射防止フィルム6の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層塗布組成物のフッ素−シロキサングラフトポリマー1を下記の市販品のフッ素−シロキサングラフトポリマー2に変更し、添加量を4.0質量部に変化した以外は、同様にして反射防止フィルム6を作製した。
〈フッ素−シロキサングラフトポリマー2〉
商品名;ZX−049(富士化成工業社製):45質量%フッ素−シロキサングラフトポリマーと、55質量%酢酸ブチルの混合溶液
(反射防止フィルム7の作製)
反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布組成物1を下記の低屈折率層塗布組成物2に変更した以外は、同様にして反射防止フィルム7を作製した。低屈折率層の屈折率は1.36であった。
(低屈折率層塗布組成物2)
〈ポリシロキサン(A)の調製〉
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコにメタノール58.56gを投入し、攪拌下に蓚酸18.01gを少量づつ添加して、蓚酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液を加熱し、還流下にテトラエトキシシラン(18.75g)とトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(4.68g)、及びγ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン(信越化学社製KBM503)(0.9g)の混合物を滴下した。滴下後、5時間還流し、室温まで放冷してポリシロキサン(A)の溶液を調製した。このポリシロキサン(A)の溶液をGCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出されなかった。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200質量部
イソプロピルアルコール 660質量部
ポリシロキサン(A) 125質量部
尿素 1.2質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子ゾル 30質量部
(固形分20%、触媒化成工業社製のシリカゾル、商品名:ELCOM V−8209)
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート 2質量部
シリコーン系界面活性剤(FZ−2207、日本ユニカー株式会社製)の10%プロピ レングリコールモノメチルエーテル液 3質量部
(反射防止フィルム8の作製)
反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布組成物1のイソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子ゾルをフッ化マグネシウム粒子分散液1(MFANB15WT%−F16、シーアイ化成株式会社製)に変更し、添加量を80質量部に変化した以外は、同様にして反射防止フィルム8を作製した。低屈折率層の屈折率は1.38であった。
(反射防止フィルム9の作製)
反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布組成物1のイソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子ゾルを下記の市販品のコロイダルシリカゾルに変更し、添加量を40質量部に変化した以外は、同様にして反射防止フィルム9を作製した。低屈折率層の屈折率は1.43であった。
〈市販品コロイダルシリカゾル〉
イソプロピルアルコール分散球状コロイダルシリカ(固形分20%、平均粒径45nm、粒径の変動係数30%)
(反射防止フィルム10の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層塗布組成物のフッ素−シロキサングラフトポリマー1を市販品のパーフルオロアルキルオリゴマー(メガファックF−178K、大日本インキ化学工業社製)に変更し、添加量を5.8質量部に変化した以外は、同様にして反射防止フィルム10を作製した。
(反射防止フィルム11の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層塗布組成物のフッ素−シロキサングラフトポリマー1を添加しなかった以外は、同様にして反射防止フィルム11を作製した。
(反射防止フィルム12の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層面に表面処理を実施しなかった以外は、同様にして反射防止フィルム12を作製した。
《評価》
上記作製した反射防止フィルム1〜12について、下記方法により評価した。得られた結果を表1に示した。
(湿熱処理)
反射防止フィルム1〜12について、それぞれA4サイズにカットし、低屈折率層を表面にして、温度80℃、湿度90%RHの高温高湿サーモにて、500時間保存後し、湿熱処理サンプルを作製した。
次に湿熱処理した反射防止フィルムを、温度23℃、相対湿度55%の条件で、24時間調湿して、下記の耐擦傷性(膜強度)、密着性、及び耐薬品性について評価した。
(耐擦傷性)
湿熱処理した反射防止フィルムの低屈折率層面に、1000g/cm2の荷重をかけた日本スチールウール株式会社製の品番#0000のスチールウールを載せて20往復させ、20往復後の1cm幅当たりに生じた傷の本数を測定した。
傷の本数が5本/cm幅以下が、好ましく、1本/cm幅以下が、さらに好ましい。スチールウールを往復させた装置は、新東科学株式会社摩擦摩耗試験機(トライボステーションTYPE:32、移動速度4000mm/min.)を使用した。
(密着性)
湿熱処理した反射防止フィルムの低屈折率層面に、片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロハン製テープを貼り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引っ張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を目視で観察し、下記の基準で評価した。
密着性評価
◎:全く剥離されなかった
○:剥離された面積割合が5%未満であった
△:剥離された面積割合が10%未満であった
×:剥離された面積割合が10%以上であった
(耐薬品性)
耐薬品性1:エタノール
湿熱処理した反射防止フィルムの低屈折率層面を、エタノール(関東化学社製)を染み込ませたベンコット(旭化成株式会社製、製品名M−3)を用いて、同一箇所を20往復擦り、擦った後の状態を観察し、以下の基準で評価した。
耐薬品性2:リグロイン
湿熱耐久試験した反射防止フィルムの低屈折率層面を、リグロイン(和光純薬社製)を染み込ませた。
ベンコット(旭化成株式会社製、製品名M−3)を用いて、同一箇所を20往復擦り、擦った後の状態を観察し、以下の基準で評価した。
なお、反射防止フィルム表面の擦りには、以下の装置を使用した。
表面擦り装置:新東科学株式会社摩擦摩耗試験機(トライボステーションTYPE:32、移動速度4000mm/min.)荷重1000g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm
耐薬品性1:エタノール、及び耐薬品性2:リグロインの評価基準
◎:剥離無し
○:僅かな剥離が見られるレベル(実用上問題なし)
△:剥離が見られる
×:擦った箇所が全て剥離している。
Figure 2009186651
表1の結果から明らかなように、ハードコート層がフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有し、更にハードコート層面を表面処理を行った後、外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子を少なくとも1種含有する低屈折率層が積層された反射防止フィルムは、本発明の目的効果である湿熱処理後の密着性、耐擦傷性及び耐薬品性、全てにおいて優れていることが判る。
中でもハードコート層面の表面処理に、アルカリ鹸化処理及びプラズマ処理を用いた、本発明の反射防止フィルムは湿熱処理後の密着性、耐擦傷性において特に優れていることが判る。
また、反射防止フィルム1〜12について、バックコート面に粘着剤付きの黒色アクリル板を貼り付け、光吸収処理を行い、低屈折率層面から、CM−3700d(コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて反射率を測定した。結果、本発明の反射防止フィルムの平均反射率は全て1.2%以下であり、良好な外光反射防止機能を有していた。
実施例2
(反射防止フィルム13の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層を塗布前に、以下の導電層塗布組成物1を塗布して基材フィルムであるセルロースエステルフィルム1とハードコート層1の間に導電層1を設けた以外は、同様にして反射防止フィルム13を作製した。
(導電層1の形成)
セルロースエステルフィルム1上に、下記導電層用塗布組成物1を超音波ホモジナイザーで5分間処理した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過後、押し出しコーターで塗布し、80℃で乾燥後、紫外線ランプを用い、照射部の照度が100mW/cm2、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚2μmの導電層1を形成した。
(導電層用塗布組成物1)
ポリアニリン含有塗剤(ポリアニリン2質量%含有メチルエチルケトン分散液)
60質量部
(ORMECON NW−F101MEK、ORMECON CHEMIE Gmbh&Co.KG社製)
ジオキサングリコールジアクリレート 110質量部
(NKエステルA−DOG、新中村化学工業株式会社製)
ウレタン(メタ)アクリレート 10質量部
(U−4HA、新中村化学工業株式会社製)
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
N−メチル−2−ピロリドン 80質量部
メチルエチルケトン 100質量部
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業社製) 0.5質量部
(反射防止フィルム14の作製)
反射防止フィルム1の作製において、ハードコート層を塗布前に、以下の導電層塗布組成物2を塗布して基材フィルムであるセルロースエステルフィルム1とハードコート層1の間に導電層2を設けた以外は、同様にして反射防止フィルム14を作製した。
(導電層2の形成)
セルロースエステルフィルム1上に、下記導電層用塗布組成物2を超音波ホモジナイザーで5分間処理した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過後、押し出しコーターで塗布し、80℃で乾燥後、紫外線ランプを用い、照射部の照度が100mW/cm2、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚2μmの導電層2を形成した。
(導電層用塗布組成物2)
〈粒子分散液Aの調製〉
メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業株式会社製、アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgに、イソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調製した。
粒子分散液A 60質量部
ジオキサングリコールジアクリレート 110質量部
(NKエステルA−DOG、新中村化学工業株式会社製)
ウレタン(メタ)アクリレート 10質量部
(U−4HA、新中村化学工業株式会社製)
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン 12質量部
(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
N−メチル−2−ピロリドン 80質量部
メチルエチルケトン 100質量部
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業社製) 0.5質量部
《評価》
実施例1で作製した反射防止フィルム1、及び上記作製した反射防止フィルム13と14について、湿熱処理の時間を700時間に変更した以外は、実施例1と同様にして保存し、評価を行った。
また、湿熱処理後の反射防止フィルムについて、下記の防塵性についても評価を行った。得られた結果を表2に示した。
(防塵性)
湿熱処理後の反射防止フィルム1、13及び14のバックコート面をCRT表面に貼り付け、0.5μm以上のホコリ及びティッシュペーパー屑を930cm2(1ft3)当たり100〜200万個有する部屋で24時間放置した。その後、表面100cm2当たり、付着したホコリとティッシュペーパー屑の数を測定し、20個未満を○、20〜49個を△、50以上を×として評価した。
Figure 2009186651
上記表2の結果から明らかなように、より過酷な湿熱処理後の評価では、本発明の目的効果である密着性及び耐擦傷性について、特に優れるばかりか、防塵性についても優れることが判る。
実施例3
反射防止フィルム1の作製において、基材フィルムを下記の基材フィルム2及び3に変更した以外は、同様にして、反射防止フィルム15及び16を作製した。
〈基材フィルム2の作製〉
〈セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1の作製〉
(ドープ液組成2)
アクリル樹脂ダイヤナールBR80(三菱レイヨン(株)製) 70質量部
(Mw95000)
CAP482−20(アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロ
ピオニル基置換度2.56、Mw=200000 イーストマンケミカル(株)製)
30質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。なお、CAPとはセルロースアセテートプロピオネート樹脂のことである。
(セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1の製膜)
上記作製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
剥離したアクリル樹脂のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。
テンターで延伸後130℃で5分間緩和を行った後、120℃、130℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ10μmのナーリング加工を施し、巻き取り、膜厚80μm、長さ4000m、屈折率1.50のルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1を得た。
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。
〈基材フィルム3の作製〉
基材フィルム2の作製において、以下のドープ液組成2に変更した以外は、同様にして基材フィルム3(アクリル粒子含有のセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1)を作製した。
(アクリル粒子の調製)
内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。APS0.36gを投入し、5分間攪拌後にMMA1657g、BA21.6g、およびALMA1.68gからなる単量体混合物を一括添加し、発熱ピークの検出後さらに20分間保持して最内硬質層の重合を完結させた。次に、APS3.48gを投入し、5分間攪拌後にBA8105g、PEGDA(200)31.9g、およびALMA264.0gからなる単量体混合物を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに120分間保持して,軟質層の重合を完結させた。
次に、APS1.32gを投入し、5分間攪拌後にMMA2106g、BA201.6gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20分間保持して最外硬質層1の重合を完結した。
次いで、APS1.32gを投入し、5分後にMMA3148g、BA201.6g、およびn−OM10.1gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持した。ついで95℃に昇温し60分間保持して、最外硬質層2の重合を完結させた。
このようにして得られた重合体ラテックスを少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたところ0.10μmであった。残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、3層構造のアクリル粒子を得た。
上記の略号は各々下記材料である。
MMA;メチルメタクリレート
MA;メチルアクリレート
BA;n−ブチルアクリレート
ALMA;アリルメタクリレート
PEGDA;ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200)
n−OM;n−オクチルメルカプタン
APS;過硫酸アンモニウム
(アクリル粒子含有のセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1の作製)
(ドープ液組成3)
ダイヤナールBR80(三菱レイヨン(株)製) 70質量部
CAP482−20 30質量部
上記調製したアクリル粒子 20質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 1質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
ブタノール 5質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。
《評価》
実施例1で作製した反射防止フィルム1、及び上記作製した反射防止フィルム15と16について、実施例2と同様に保存し、実施例1に記載した方法で評価を行った。更に、湿熱処理後の反射防止フィルムについて、鉛筆硬度も下記方法で評価した。得られた結果を表3に示した。なお、表3に示した基材フィルムは以下の略称で示した。
基材フィルム1:セルロースエステルフィルム1
基材フィルム2:セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1
基材フィルム3:アクリル粒子含有のセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルム1
(鉛筆硬度)
JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆で導電層表面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本までの硬度を測定した。数字か高いほど、高硬度を示し、硬度が4H以上で、実用上好ましく、5H以上で更に好ましい。
Figure 2009186651
上記表3の結果から明らかなように、より過酷な湿熱処理後の評価では、基材フィルムが、セルロースエステルフィルムよりもセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂からなるフィルムの方が、耐傷擦性及び鉛筆硬度といった膜強度に優れていることが判る。更には、セルロースエステル樹脂・アクリル樹脂から構成され、かつアクリル粒子を含有する基材フィルム3は、耐傷擦性及び鉛筆硬度といった膜強度について特に優れていることが判る。
実施例4
実施例1で作製した反射防止フィルム1〜12を用いて、下記のようにして偏光板を作製し、これらの偏光板を液晶表示パネル(画像表示装置)に組み込み、視認性を評価した。
下記の方法に従って、上記実施例1の反射防止フィルム1〜12をセルロースエステル系光学補償フィルムであるKC8UCR5(コニカミノルタオプト株式会社製)各々1枚を偏光板保護フィルムとして用いて、偏光板101〜112をそれぞれ作製した。
(a)偏光膜の作製
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムは、平均厚みが40μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。
つぎに、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、さらに温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚みが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
(b)偏光板の作製
ついで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と、偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて実施例1の反射防止フィルム1〜12に対応する偏光板101〜112を作製した。
工程1:光学補償フィルムと反射防止フィルムを、2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に、温度60℃で、90秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥させた。各反射防止フィルムの低屈折率層を設けた面には、予め剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けて保護した。
同様にして、前述した光学補償フィルムを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に、温度60℃で、90秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥させた。
工程2:前述の偏光膜を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜を、工程1でアルカリ処理した光学補償フィルムと反射防止フィルムとで挟み込んで、積層配置した。
工程4:積層物を、2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意して実施した。
工程5:工程4で作製した試料を、温度80℃の乾燥機中にて2分間乾燥処理し、偏光板101〜112を作製した。
つぎに、市販の液晶表示パネル(VA型)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた各偏光板101〜112を張り付けた。こうして得られた液晶パネル201〜212を、床から80cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部に、昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X 松下電器産業株式会社製)40W×2本を1セットとして、1.5m間隔で10セット配置した。この場合、評価者が液晶表示パネルの表示面の正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に蛍光灯がくるように配置した。各液晶パネルは机に対する垂直方向から25°傾けて、蛍光灯が写り込むようにして画面の見易さ(視認性)を、下記のランクに分けて評価した。
A:最も近い蛍光灯の写り込みが気にならず、フォントの大きさ8以下の文字もはっきりと読める
B:近くの蛍光灯の写り込みはやや気になるが、遠くは気にならず、フォントの大きさ8以下の文字もなんとかと読める
C:遠くの蛍光灯の写り込みも気になり、フォントの大きさ8以下の文字を読むのは困難である
D:蛍光灯の写り込みがかなり気になり、写り込みの部分はフォントの大きさ8以下の文字を読むことはできない
評価の結果、比較例の反射防止フィルム8〜12、及び比較例の偏光板108〜112を用いた液晶パネル208〜312はC以下の評価に対して、本発明の反射防止フィルム1〜7、並びに本発明の偏光板101〜107を用いた液晶パネル201〜207は、何れもB以上の評価結果であり、より視認性が良好であった。
ハードコート層の塗布工程を示した概略図である。 大気圧プラズマ処理装置の模式図である。 大気圧プラズマ処理装置の別の模式図である。
符号の説明
Y 長尺フィルム
1 繰り出しロール
2 搬送ローラー
3 押出しコータ
4 対向ロール
5 乾燥ゾーン
6 活性光線照射ランプユニット
6a 空冷活性光線ランプ
6b 空冷用Air通風口
6c N2用供給チャンバー
7 加熱ゾーン
8 巻き取り室
9 巻き取りロール
10 温風吹き出し口
12 移動可能な台車
15 巻き取りコア
A 加熱処理室
101a 大気圧プラズマ処理装置
101 高周波高電圧電源
102 ロール電極
103 曲面電極
104 プラズマガス供給装置
104b プラズマガス供給口
104d プラズマガス温度調整装置
105a 第1温度計測装置
105b 第2温度計測装置
106 制御手段
107 予備加熱装置
108a 第3温度計測装置
108b 第4温度計測装置
109 第5温度計測装置
110 冷却ガス供給装置
110c 冷却ガス供給口
111 樹脂フィルム表面状態測定装置
112 ガス供給装置
112c ガスバーナー
122 フィルム
123 ニップロール
201,220 グロー放電プラズマ処理装置
202 ロール状電極(アース電極)
203 曲面電極(ホット電極)
202a,203a,221a,222a 電極面(固体誘電体層)
204,223 放電空間
205 ハードコートフィルム
207,224 ガス導入容器
208,225 ガス排出容器
209 ガスボンベ(処理ガス)
210 電源回路
221,222 電極

Claims (9)

  1. フィルム基材上に直接又は他の層を介してハードコート層、更にハードコート層上に低屈折率層を積層する反射防止フィルムの製造方法において、該ハードコート層がフッ素−シロキサングラフトポリマーを少なくとも1種含有し、更にハードコート層面に表面処理を行った後、外殻層を有しかつ内部が多孔質または空洞である中空シリカ系粒子を少なくとも1種含有する低屈折率層を積層することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
  2. 前記表面処理が、アルカリ鹸化処理またはプラズマ処理であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
  3. 前記フィルム基材上とハードコート層の間に導電層を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
  4. 前記フィルム基材が、セルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
  5. 前記フィルム基材がセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
  6. 前記フィルム基材がセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂及びアクリル粒子を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。
  8. 請求項7に記載の反射防止フィルムを少なくとも一方の面に用いることを特徴とする偏光板。
  9. 請求項7に記載の反射防止フィルム、または請求項8に記載の偏光板を用いることを特徴とする画像表示装置。
JP2008024978A 2008-02-05 2008-02-05 反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置 Pending JP2009186651A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008024978A JP2009186651A (ja) 2008-02-05 2008-02-05 反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008024978A JP2009186651A (ja) 2008-02-05 2008-02-05 反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009186651A true JP2009186651A (ja) 2009-08-20

Family

ID=41069973

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008024978A Pending JP2009186651A (ja) 2008-02-05 2008-02-05 反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009186651A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011136503A (ja) * 2009-12-28 2011-07-14 Fujifilm Corp 光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置
JP2011225846A (ja) * 2010-03-31 2011-11-10 Fujifilm Corp ハードコート層形成用組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置
KR101358841B1 (ko) * 2013-05-02 2014-02-06 도레이첨단소재 주식회사 터치스크린 패널용 보호필름 및 이를 채용한 터치스크린 패널
WO2014208323A1 (ja) * 2013-06-28 2014-12-31 横浜ゴム株式会社 ハードコート層形成用樹脂組成物
WO2015146564A1 (ja) * 2014-03-28 2015-10-01 コニカミノルタ株式会社 光学遮蔽フィルム、光学遮蔽体および光学遮蔽フィルムの製造方法
JP2016090722A (ja) * 2014-10-31 2016-05-23 富士フイルム株式会社 ハードコートフィルム、偏光板、及びタッチパネルディスプレイ
CN113174079A (zh) * 2021-05-06 2021-07-27 深圳市壹鑫光学电子有限公司 一种抗划伤光学反射膜及其制备方法,以及背光模组及液晶显示器面板

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011136503A (ja) * 2009-12-28 2011-07-14 Fujifilm Corp 光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置
JP2011225846A (ja) * 2010-03-31 2011-11-10 Fujifilm Corp ハードコート層形成用組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置
KR101358841B1 (ko) * 2013-05-02 2014-02-06 도레이첨단소재 주식회사 터치스크린 패널용 보호필름 및 이를 채용한 터치스크린 패널
WO2014208323A1 (ja) * 2013-06-28 2014-12-31 横浜ゴム株式会社 ハードコート層形成用樹脂組成物
CN105324687A (zh) * 2013-06-28 2016-02-10 横滨橡胶株式会社 硬涂层树脂组合物
WO2015146564A1 (ja) * 2014-03-28 2015-10-01 コニカミノルタ株式会社 光学遮蔽フィルム、光学遮蔽体および光学遮蔽フィルムの製造方法
JP2016090722A (ja) * 2014-10-31 2016-05-23 富士フイルム株式会社 ハードコートフィルム、偏光板、及びタッチパネルディスプレイ
CN113174079A (zh) * 2021-05-06 2021-07-27 深圳市壹鑫光学电子有限公司 一种抗划伤光学反射膜及其制备方法,以及背光模组及液晶显示器面板
CN113174079B (zh) * 2021-05-06 2022-10-21 深圳市壹鑫光学电子有限公司 一种抗划伤光学反射膜及其制备方法,以及背光模组及液晶显示器面板

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2010078642A (ja) 反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置
JP5321456B2 (ja) クリアーハードコートフィルム、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置
JP4736562B2 (ja) 偏光板及び表示装置
JP4924344B2 (ja) 防眩フィルム、その製造装置、防眩性反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置
JP5182521B2 (ja) 反射防止層用組成物、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置
JP2009042351A (ja) 光学フィルム、偏光板及び表示装置
JPWO2009075201A1 (ja) 防眩性フィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP2009036818A (ja) 防眩性フィルム、防眩性反射防止フィルム、偏光板および画像表示装置
JP2009196202A (ja) ハードコートフィルム、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置
JP6673363B2 (ja) 光学フィルム、偏光板および画像表示装置
JP2009186651A (ja) 反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置
JP5158075B2 (ja) 反射防止フィルム、それを用いた偏光板、及び表示装置
JP2009288413A (ja) ハードコートフィルムの製造方法、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置
JP2010085894A (ja) 反射防止層用組成物、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置
JP2010191023A (ja) 反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置
JP2009134238A (ja) ハードコートフィルム、反射防止フィルム、偏光板及び表示装置
JP2009210876A (ja) 反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置
JP2010107639A (ja) 偏光板、液晶表示装置、及びips(インプレーンスイッチング)モード型液晶表示装置
JP5168278B2 (ja) 防眩性フィルム、これを用いた防眩性反射防止フィルム、偏光板、及び表示装置
JP2007017946A (ja) 反射防止フィルム、反射防止フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置
JP2010217699A (ja) 反射防止層用組成物、反射防止フィルム、偏光板、および画像表示装置
JP2005309120A (ja) 反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置
JP2009036817A (ja) 反射防止フィルム、それを用いた偏光板、及び画像表示装置
JP2010134034A (ja) 反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置
JP2010217504A (ja) 反射防止フィルム