JP5994746B2 - ハードコートフィルム、偏光板およびタッチパネル付き液晶表示装置 - Google Patents

ハードコートフィルム、偏光板およびタッチパネル付き液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、ハードコートフィルム、それを用いた偏光板、およびその偏光板を有するタッチパネル付き液晶表示装置に関する。
近年、画像表示素子として液晶表示装置が注目されている。液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能などの様々な利点から、パーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。液晶表示装置の表面には、物理的な損傷防止から、トリアセテートフィルム等のセルロースエステルフィルム上に、ハードコート層を有したフィルム(以下ハードコートフィルムという)が用いられている。
一般に、液晶表示装置の表示パネルは、2枚の偏光板で液晶セルを挟んだ構造で構成されている。表面側に使用される偏光板は、ハードコートフィルムと偏光板保護フィルムとの間に偏光子(偏光膜)を挟んだ3層構造で構成される。上記の偏光子は、ヨウ素又は二色性染料を吸着させ染着させたポリビニルアルコール(以下PVAと略す)系フィルムを一定方向に延伸配向させたもので構成される。
最近、スマートフォンやタブレット端末等の出現により、液晶表示装置の更なる小型化や薄膜化が求められており、液晶表示装置に用いられる偏光板などの部材も薄膜化が望まれている。特にスマートフォンやタブレット端末では、液晶表示装置上にタッチパネルを備える必要があり、部材が増える一方で薄膜化の要望が強く、各部材の薄膜化の要求が更に強まっている。そのため、ハードコートフィルムを薄膜化するために、樹脂フィルム基材を薄膜化するだけでは十分ではなく、その上に形成されるハードコート層も薄膜化することが必要とされている。
更に、液晶表示装置上にタッチパネルが設けられる場合には、タッチパネルを設置する際に液晶表示装置の最表面に位置するハードコートフィルムが損傷を受けないことが必要とされる。特に、タッチパネルを装着する際の傷の発生を十分抑制できる耐傷性、及びタッチパネルを貼り合わせる際に用いられる粘着剤の収縮力等の影響によるハードコートフィルムの表面剥離を抑制するための強い密着性が要求される。
一方、近年の液晶表示装置の高精細化に伴い、画像品質への要求性能も高まっており、液晶表示装置の最表面に設けられるハードコートフィルムで発生するわずかな干渉ムラが画像品質に与える影響が無視できなくなっている。
このような干渉ムラの発生は、ハードコートフィルムのように樹脂フィルム基材に塗布層を形成して光学フィルムを形成する場合において、塗布層と樹脂フィルム基材との界面で屈折率が急峻に変化することで発生すると考えられる。このような問題に対しては、樹脂フィルム基材に塗布層を設ける際に、塗布層に含まれる有機溶媒によって、樹脂フィルム基材を溶解又は膨潤させることにより、界面の屈折率変化をなだらかにすることで干渉ムラを抑制できることが知られている(例えば特許文献1参照)。
ところが、上記のように、よりハードコートフィルムを薄膜化するために、ハードコート層が薄膜化された場合において、上記の特許文献のように樹脂フィルム基材を単に溶解させたり、膨潤させたりすることで干渉ムラを抑制すると、タッチパネルを設ける際に必要な耐傷性が悪化し、十分な性能が得られない場合があることが明らかになった。
特開2004−263082号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ハードコートフィルムに起因する干渉ムラを十分に抑制し、十分な密着性を有しながら、ハードコート層を薄膜化した場合においても十分な耐傷性を達成したハードコートフィルムを提供することである。また、該ハードコートフィルムを用いた視認性に優れた偏光板、およびタッチパネル付き液晶表示装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ハードコート層が薄膜化された場合において、干渉ムラを抑制するためにハードコート層と樹脂フィルム基材との界面を、ハードコート層を設ける際に用いられる溶剤により溶解又は膨潤させることで、ハードコート層を構成する組成物と、樹脂フィルム基材を構成する組成物とが混合した混合層を形成すると、樹脂フィルム基材に含まれる成分がハードコート層の表面側(樹脂フィルム基材と反対側)に溶出して、ハードコートフィルムとしての耐傷性を損なっていることを見出した。一方で、表面への溶出を抑制するために、ハードコート層を形成する際の樹脂フィルム基材の溶解又は膨潤を抑制した場合は、表面への溶出は抑制することができる一方で、干渉ムラの問題が発生するとともに十分な密着性が得られないことが判明した。すなわち、ハードコート層を薄膜化した場合において、ハードコート層と樹脂フィルム基材の混合層を特定の厚みで発生させる一方で、樹脂フィルム基材に含まれる成分のハードコート層表面に含まれる量を低く保つことで、上記の課題をいずれも解決できることを見出したものである。
また、本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板によれば、当該偏光板を液晶表示装置に設け、その上にタッチパネルを設けた場合においても、傷の発生が抑制されるとともに粘着剤の収縮等による膜剥がれが抑制でき、干渉ムラの発生も十分に抑制することが可能となる。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.樹脂フィルム基材上に直接ハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層の膜厚が0.5〜5μmの範囲であり、前記ハードコート層と前記樹脂フィルム基材との界面に、前記ハードコート層の成分に対して、前記樹脂フィルム基材の成分が30質量%〜70質量%の範囲で混合した混合領域が100nm以上の厚みで形成されることで、前記ハードコート層と前記樹脂フィルム基材との界面における屈折率が連続的に変化しており、且つ、前記ハードコート層の表面部における前記樹脂フィルム基材由来の成分量が1%以下であることを特徴とするハードコートフィルム。
なお、上記におけるハードコート層の表面部とは、ハードコート層の樹脂フィルム基材とは反対側の表面から0.1μmの厚みまでの領域を表す。
2.前記混合領域が120nm〜150nmの厚み範囲で形成されることを特徴とする前記1に記載のハードコートフィルム。
3.前記ハードコート層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする前記1または2に記載のハードコートフィルム。
4.前記ハードコート層の厚みが1〜3μmであることを特徴とする前記1から3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
5.前記樹脂フィルム基材がセルロースエステルフィルムであり、前記セルロースエステルフィルムの膜厚が5〜70μmの範囲であることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
6.前記樹脂フィルム基材がセルロースエステルフィルムであり、前記セルロースエステルフィルムの膜厚が5〜30μmの範囲であることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
7.前記1から6のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法において、
セルロースエステル樹脂と溶媒とを含有するドープを支持体上に流延し、前記支持体上で乾燥させることでウェブを形成する工程と、
前記ウェブを更に乾燥して前記樹脂フィルム基材を形成する工程と、
前記樹脂フィルム基材上に、活性線硬化性樹脂と溶剤とを含むハードコート層組成物を塗布する工程と、
前記ハードコート層組成物を乾燥、固化してハードコート層を形成する工程とを有し、
前記ハードコート層は、前記樹脂フィルム基材の、前記樹脂フィルム基材を形成する過程で前記支持体上に前記ドープが流延されたときの前記支持体とは反対側であった側の面に形成されることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
8.前記ハードコート層組成物から溶剤を除いた固形成分の25℃における粘度が10000〜90000mPa・sの範囲内であることを特徴とする前記7に記載のハードコートフィルムの製造方法。
9.前記ハードコート層を乾燥、固化する工程において、前記塗布工程後15秒未満の間の乾燥温度が15℃〜70℃の範囲であり、15秒以後36秒未満の乾燥温度が60℃〜120℃の範囲であり、36秒以後40秒未満の乾燥温度が30℃〜80℃の範囲であることを特徴とする前記7または8に記載のハードコートフィルムの製造方法。
10.前記1から6のいずれかに記載のハードコートフィルムと、偏光子とを有することを特徴とを特徴とする偏光板。
11.前記10に記載の偏光板を用いた液晶表示装置の前記ハードコートフィルムの上にタッチパネルを設置したことを特徴とするタッチパネル付き液晶表示装置。
本発明の上記手段により、ハードコートフィルムに起因する干渉ムラを十分に抑制し、十分な密着性を有しながら、ハードコート層を薄膜化した場合においても十分な耐傷性を達成したハードコートフィルムを提供することができる。また、該ハードコートフィルムを用いることで視認性に優れた偏光板、およびタッチパネル付き液晶表示装置を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るハードコートフィルムが適用されるタッチパネル付き液晶表示装置の概略の構成を示す断面図である。 上記タッチパネル付き液晶表示装置の他の構成を示す断面図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。また、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
本実施の形態のハードコートフィルムは、樹脂フィルム基材上に直接ハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層の膜厚が0.5〜5μmの範囲であり、前記ハードコート層と前記樹脂フィルム基材との界面に、前記ハードコート層の成分に対して、前記樹脂フィルム基材の成分が30質量%〜70質量%の範囲で混合した混合領域が100nm以上の厚みで形成されることで、前記ハードコート層と前記樹脂フィルム基材との界面における屈折率が連続的に変化しており、且つ、前記ハードコート層の表面部における前記樹脂フィルム基材由来の成分量が1%以下である。
なお、上記におけるハードコート層の表面部とは、ハードコート層の樹脂フィルム基材とは反対側の表面から0.1μmの厚みまでの領域を表す。ハードコート層の表面部における前記樹脂フィルム基材由来の成分量の測定方法は特に限定されないが、例えば、ハードコート層の表面部を0.1μmの厚さで削り取り、核磁気共鳴分光法(NMR法)により測定することもできるし、X線分析や赤外線分析などによって測定することもできる。なお、ハードコート層と樹脂フィルム基材とが同一成分を含む場合、その成分は、ハードコート層の表面部における樹脂フィルム基材由来の成分には含まれないものとする。
また、ハードコート層の厚さは、樹脂フィルム基材の成分が30質量%〜70質量%の範囲で混合した混合領域において、厚さ方向において樹脂フィルム基材の成分が50質量%(ハードコート層の成分も50質量%)となる位置を基準とし、その基準位置からの厚さとする。
また、本発明の実施態様としては、十分に干渉ムラを抑制し、密着性を高める観点から、前記混合領域が120nm〜150nmの厚み範囲で形成されることが好ましい。
さらに、樹脂フィルム基材の劣化を抑制するため、ハードコート層が紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
また、本発明の効果はハードコート層の厚みがより薄いときに顕著に得られることから、前記ハードコート層の厚みが1〜3μmであることが好ましい。
また、ハードコートフィルムを薄膜化した上で、偏光子との密着性を高める観点から、樹脂フィルム基材がセルロースエステルフィルムであり、前記セルロースエステルフィルムの膜厚が5〜70μmの範囲であることが好ましい。
また、ディスプレイの薄膜化の要望に応えるという観点から、前記セルロースエステルフィルムの膜厚が5〜30μmの範囲であることが好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、干渉ムラの発生が抑制され、耐傷性及び密着性が良好であることから、偏光板や、その偏光板を有するタッチパネル付き液晶表示装置に好適に具備され得る。
また、本発明の実施の形態である上記のハードコートフィルムを得るための製造方法としては、セルロースエステル樹脂と溶媒とを含有するドープを支持体上に流延し、前記支持体上で乾燥させることでウェブを形成する工程と、前記ウェブを更に乾燥して前記樹脂フィルム基材を形成する工程と、前記樹脂フィルム基材上に、活性線硬化性樹脂と溶剤とを含むハードコート層組成物を塗布する工程と、前記ハードコート層組成物を乾燥、固化してハードコート層を形成する工程とを有する製造方法が挙げられる。
特に、前記ハードコート層は、前記樹脂フィルム基材の、前記樹脂フィルム基材を形成する過程で前記支持体上に前記ドープが流延されたときの前記支持体とは反対側であった側の面に形成されることが好ましい。樹脂フィルム基材をいわゆる溶液流延法で形成する場合において、ドープを支持体上に流延した際には、支持体の反対側の表面から溶剤が揮発するため、ドープの支持体側の溶媒含有量が多くなる傾向となる。このため、溶媒に可溶性の可塑剤等の成分が支持体側に偏在する場合が多い。したがって、ハードコート層を樹脂フィルム基材に設ける際に、流延時の支持体側の反対側(空気界面側)にハードコート層を設けることで、樹脂フィルム基材の成分がハードコート層表面部に溶出することを抑制することができる。
また、上記の製造方法において、ハードコート層組成物から溶剤を除いた固形成分の25℃における粘度が10000〜90000mPa・sの範囲内であることが好ましい。ハードコート層組成物に含まれる活性線硬化性樹脂として比較的粘度の高い樹脂を用いることで、ハードコート層と樹脂フィルム基材との間に混合層(混合領域)を形成する過程で、ハードコート層が硬化する前に樹脂フィルム基材から溶出した成分がハードコート層表面部に到達することを抑制することができる。
更に、ハードコート層を乾燥、固化する工程において、前記塗布工程後15秒未満の間の乾燥温度が15℃〜70℃の範囲であり、15秒以後36秒未満の乾燥温度が60℃〜120℃の範囲であり、36秒以後40秒未満の乾燥温度が30℃〜80℃の範囲とすることが好ましい方法として挙げられる。このような条件でハードコート層組成物を乾燥させることで、ハードコート層組成物の表面部が速やかに乾燥される一方で、樹脂フィルム基材との界面は比較的ゆっくりと乾燥されることとなり、ハードコート層の表面部への樹脂フィルム基材由来の成分の溶出を抑制しながら、ハードコート層と樹脂フィルム基材との間に混合層を形成しやすくなる。
本発明のハードコートフィルムは上記のような条件を組み合わせることで、工程を複雑化することなく得ることができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
<ハードコートフィルム>
(ハードコート層)
本発明に係るハードコート層は、活性線硬化樹脂を含有することが機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層である。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。活性線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が特に機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられ、中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。
本発明の目的効果から、本発明に係るハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を含有しても良い。
活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に1個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に制限はないが、下記一般式(1)で示される同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が本発明の目的効果の点から好ましい。エチレン性不飽和基の種類は、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、より好ましくはメタクリロイル基又はアクリロイル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。
Figure 0005994746
式中L2は、2価の連結基であり、好ましくは、イソシアヌレート環に炭素原子が結合している置換又は無置換の炭素原子数4以下のアルキレンオキシ基又はポリアルキレンオキシ基であり、特に好ましくはアルキレンオキシ基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。R2は、水素原子又はメチル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。一般式(1)で示される具体的化合物を以下に示すが、これらに限られない。
Figure 0005994746
Figure 0005994746
Figure 0005994746
その他の化合物としては、イソシアヌル酸ジアクリレート化合物が挙げられ、下記一般式(2)で表されるイソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレートが好ましい。
Figure 0005994746
またその他として、ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を挙げることもでき、具体的には下記一般式(3)で表される化合物である。
Figure 0005994746
上記化学構造式のR1〜R3の−には、下記a,b,cで示される官能基が付くが、R1〜R3の少なくとも一つはbの官能基である。
a:−H、若しくは−(CH2)n−OH(n=1〜10、好ましくはn=2〜6)
b:−(CH2)n−O−(COC510)m−COCH=CH2(n=1〜10、好ましくはn=2〜6、m=2〜8)
c:−(CH2)n−O−R(Rは(メタ)アクリロイル基、n=1〜10、好ましくはn=2〜6)
一般式(3)で示される具体的化合物を以下に示すが、これらに限られない。
Figure 0005994746
イソシアヌル酸トリアクリレート化合物の市販品としては、例えば新中村化学工業株式会社製A−9300などが挙げられる。イソシアヌル酸ジアクリレート化合物の市販品としては、例えば東亞合成株式会社製アロニックスM−215などが挙げられる。イソシアヌル酸トリアクリレート化合物及びイソシアヌル酸ジアクリレート化合物の混合物としては、例えば東亞合成株式会社製アロニックスM−315、アロニックスM−313などが挙げられる。ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、ε−カプロラクトン変性トリス−(アクリロキシエチル)イソシアヌレートである新中村化学工業株式会社製A−9300−1CL、東亞合成株式会社製アロニックスM−327などを挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの市販品としては、アデカオプトマーNシリーズ、サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(東亞合成(株)製)、NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(新中村化学工業(株))、PE−3A(共栄社化学)などが挙げられる。上記活性線硬化樹脂を単独又は2種以上混合しても良い。
活性線硬化型樹脂の粘度は、樹脂をディスパーにて撹拌混合し25℃の条件にてB型粘度計を用いて粘度測定を行うことができる。また、単官能アクリレートを用いても良い。
単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。
単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=80:20〜98:2で含有することが好ましい。
(微粒子)
また、ハードコート層には硬度を向上させるために、金属酸化物微粒子を含有しても良い。金属酸化物微粒子としては、具体的には、シリカ、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化スズ、酸化スズ−アンチモン、アンチモン酸亜鉛、セリア、五酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化イットリウム等を挙げることができるが、特にこれに限定されるものではない。好ましい金属酸化物微粒子としては、シリカ微粒子が挙げられる。シリカ微粒子としては、公知のものを使用できる。シリカ微粒子としては、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性の重合性不飽和基を表面に有するシリカ微粒子が好ましい。重合性不飽和基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル、ビニル基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基であることがさらに好ましい。
上述した微粒子は、ハードコート組成物中の微粒子を含む固形分成分に対し、0.1質量部以上、0.9質量部以下の範囲で含有することが好ましく、0.3質量部以上、0.8質量部以下の範囲で含有することがより好ましく、0.4質量部以上、0.7質量部以下の範囲で含有することがより一層好ましい。また、各種微粒子を2種類以上混合して用いても良い。
(光重合開始剤)
また、ハードコート層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及び、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
このような光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
(導電剤)
ハードコート層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていても良い。好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子又はπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。
(添加剤)
ハードコート層には、アルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)を所定の範囲(例えば5〜55°)に制御しやすい点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びフッ素−シロキサングラフト化合物、フッ素系化合物、アクリル共重合物、アセチレングリコール、アクリル系ポリマーなどの添加剤を含有させても良い。また、HLB値が3〜18の化合物を含有しても良い。これら添加剤の種類や添加量を調整することで、撥水性を制御でき、θΔを前記範囲に制御しやすい。θΔが前記範囲内であれば、ハードコート層が親水性を示し、ロール状に巻き取った際、ハードコートフィルム同士の滑り性が抑制され、巻ズレ防止の効果が得られる。
HLB値とは、Hydrophile−Lipophile−Balance、親水性−親油性−バランスのことであり、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。また、HLB値は以下のような計算式によって求めることができる。
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。あるいはグリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.Cosmetic Chem.,5(1954),294)等が挙げられる。HLB値が3〜18の化合物の具体的化合物を下記に挙げるが、本発明はこれに限定されるものでない。( )内はHLB値を示す。
花王株式会社製:エマルゲン102KG(6.3)、エマルゲン103(8.1)、エマルゲン104P(9.6)、エマルゲン105(9.7)、エマルゲン106(10.5)、エマルゲン108(12.1)、エマルゲン109P(13.6)、エマルゲン120(15.3)、エマルゲン123P(16.9)、エマルゲン147(16.3)、エマルゲン210P(10.7)、エマルゲン220(14.2)、エマルゲン306P(9.4)、エマルゲン320P(13.9)、エマルゲン404(8.8)、エマルゲン408(10.0)、エマルゲン409PV(12.0)、エマルゲン420(13.6)、エマルゲン430(16.2)、エマルゲン705(10.5)、エマルゲン707(12.1)、エマルゲン709(13.3)、エマルゲン1108(13.5)、エマルゲン1118S−70(16.4)、エマルゲン1135S−70(17.9)、エマルゲン2020G−HA(13.0)、エマルゲン2025G(15.7)、エマルゲンLS−106(12.5)、エマルゲンLS−110(13.4)、エマルゲンLS−114(14.0)、日信化学工業株式会社製:サーフィノール104E(4)、サーフィノール104H(4)、サーフィノール104A(4)、サーフィノール104BC(4)、サーフィノール104DPM(4)、サーフィノール104PA(4)、サーフィノール104PG−50(4)、サーフィノール104S(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(8)、サーフィノール465(13)、サーフィノール485(17)、サーフィノールSE(6)、信越化学工業株式会社製:X−22−4272(7)、X−22−6266(8)、KF−351(12)、KF−352(7)、KF−353(10)、KF−354L(16)、KF−355A(12)、KF−615A(10)、KF−945(4)、KF−618(11)、KF−6011(12)、KF−6015(4)、KF−6004(5)。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーンなどを挙げることができ、上記信越化学工業社製のKFシリーズなどを挙げることができる。アクリル共重合物としては、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355/356、BYK−358N/361N、BYK−381、BYK−392、BYK−394、BYK−3441などの市販品化合物を挙げることができる。
フッ素系界面活性剤としては、DIC株式会社製のメガファック RSシリーズ、メガファックF−444メガファックF−556などを挙げることができる。フッ素−シロキサングラフト化合物とは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/又はオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物をいう。あるいは、市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またフッ素系化合物としては、ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX、オプツールDACなどを挙げることができる。
アセチレングリコールとしては、日信化学工業株式会社のサーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104PA、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノールPSA−336、サーフィノール61、サーフィノール604、サーフィノール607、サーフィノール2502、サーフィノール82を挙げることができる。
アクリルポリマーとしては、共栄社化学(株)製のポリフローNo.7、ポリフローNo.50E、ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.90、ポリフローNo.90D−50、ポリフローNo.95、ポリフローPW−95、ポリフローNo.99C等を挙げることができる。
上述した添加剤は、ハードコート組成物中の固形分成分に対し、0.005質量部以上、5質量部以下の範囲で添加することが好ましく、0.01質量部以上、3質量部以下の範囲で添加することがより好ましく、0.1質量部以上、2質量部以下の範囲で添加することがより一層好ましい。また、各添加剤を2種類以上混合して用いても良い。
(紫外線吸収剤)
ハードコート層は、後述する樹脂フィルム基材で説明する紫外線吸収剤をさらに含有することが好ましい。
紫外線吸収剤の含有量としては質量比で、紫外線吸収剤:ハードコート層構成樹脂=0.01:100〜25:100で含有することが好ましい。
(溶剤)
ハードコート層は、上記したハードコート層を形成する成分を、樹脂フィルム基材を膨潤又は一部溶解をする溶剤で希釈してハードコート層組成物として、以下の方法で樹脂フィルム基材上に塗布、乾燥、硬化して形成されることが好ましい。
溶剤としては、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)及び/又は酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール(エタノール、メタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。ハードコート層の塗布量はウェット膜厚として0.8〜30μmの範囲が適当で、好ましくは1.0〜15μmの範囲である。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.5〜5μmの範囲、好ましくは1〜3μmの範囲である。
ハードコート層の塗布方法としては、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。
(ハードコート層形成方法)
ハードコート層組成物塗布後、乾燥し、硬化(活性線を照射(UV硬化処理ともいう))し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理しても良い。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、膜強度に優れたハードコート層を得ることができる。
乾燥は、前記塗布工程後15秒未満の間の乾燥温度が15℃〜70℃の範囲であり、15秒以後36秒未満の乾燥温度が60℃〜120℃の範囲であり、36秒以後40秒未満の乾燥温度が30℃〜80℃の範囲であることが望ましい。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm2の範囲、好ましくは50〜300mJ/cm2の範囲である。また、UV硬化処理では酸素による反応阻害を防止するため、酸素除去(例えば、窒素パージなどの不活性ガスによる置換)を行うこともできる。酸素濃度の除去量を調整することで、表面の硬化状態を制御できる。これにより、前述した添加剤のハードコート層面での存在状態をコントロールでき、その結果、θΔを前記範囲に制御しやすい。活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックローラ上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、又は2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
(ヘイズ)
ハードコートフィルムのヘイズは、画像表示装置に用いた場合の視認性から0.2〜10%の範囲内であることが好ましい。ヘイズは、JIS−K7105及びJIS K7136に準じて測定できる。
(硬度)
本発明のハードコートフィルムは、硬度の指標である鉛筆硬度がHB以上、より好ましくはH以上である。HB以上であれば、偏光板化工程で、傷が付きにくい。鉛筆硬度は、作製した光学性フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、ハードコート層及び又は機能性層をJIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
次いで、本実施形態に係る樹脂フィルム基材について説明する。
<樹脂フィルム基材>
本発明に係るハードコートフィルムの樹脂フィルム基材としては、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂フィルム、セルロースエステルフィルムなどがあるが、中でもセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。また、偏光板を作成する際には、ハードコートフィルムが設けられた裏面側に貼合されるフィルムもセルロースエステルフィルムであることが好ましい。以下、セルロースエステルフィルムについて詳細に説明する。なお、以下では、セルロースエステルフィルムを中心に説明するが、樹脂フィルム基材として他の樹脂材料を用いる場合でも、以下で説明する方法や構成を適宜採用することができる。
セルロースエステルフィルム(以下、セルロースアシレートフィルムともいう。)は、例えばトリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等が挙げられる。またセルロースエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー等を併用してもよい。セルロースエステルフィルムの市販品としては、例えばコニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC8UY、KC4UY、KC6UA、KC4UA、KC4UE及びKC4UZ(以上、コニカミノルタオプト(株)製)が挙げられる。セルロースエステルフィルムの屈折率は1.45〜1.55であることが好ましい。屈折率は、JIS K7142−2008に準じて測定することができる。
(セルロースエステル樹脂)
セルロースエステル樹脂(以下、セルロースエステルともいう)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独あるいは混合して用いることができる。
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%〜56.0%が好ましく用いられる。市販品としては、(株)ダイセル製のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカルジャパン(株)製のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
セルローストリアセテートとしては、数平均分子量(Mn)が125000以上、155000未満、重量平均分子量(Mw)は、265000以上310000未満、Mw/Mnが1.9〜2.1であるセルローストリアセテートA、アセチル基置換度が2.75〜2.90であり、数平均分子量(Mn)が155000以上、180000未満、Mwは290000以上360000未満、Mw/Mnは、1.8〜2.0であるセルローストリアセテートBを含有することが好ましい。
セルロースアセテートプロピオネートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものが好ましい。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
上記アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。測定条件は以下のとおりである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
(熱可塑性アクリル樹脂)
セルロースエステルフィルムは、熱可塑性アクリル樹脂を併用しても良い。併用する場合には、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50が好ましい。
アクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を併用してよい。
これらの中でも共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは110000〜500000の範囲内である。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。アクリル樹脂の市販品としては、例えばデルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
(微粒子)
セルロースエステルフィルムには、取扱性を向上させるため、例えばアクリル粒子、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。またアクリル粒子は、特に限定されるものではないが、多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。これらの中でも二酸化ケイ素がセルロースエステルフィルムのヘイズを小さくできる点で好ましい。微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmの範囲内であり、特に好ましくは、5〜12nmの範囲内である。
セルロースアセテートフィルムは、環境変化での寸法安定性から、下記一般式(X)で表されるエステル化合物又は糖エステルを含有することが好ましい。先ずは、一般式(X)で表されるエステル化合物について説明する。
一般式(X)B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。)
一般式(X)において、炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
また、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。以下に、一般式(X)で表される化合物の具体例(化合物X−1〜化合物X−17)を示すが、これに限定されるわけではない。
Figure 0005994746
Figure 0005994746
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次に糖エステル化合物について説明する。糖エステル化合物としては、セルロースエステル以外のエステルであって、下記単糖、二糖、三糖又はオリゴ糖などの糖のOH基の全て若しくは一部をエステル化した化合物である。糖としては例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース及びケストースを挙げることができる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。これらの化合物の中で、特にフラノース構造及び/又はピラノース構造を有する化合物が好ましい。これらの中でも、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、さらに好ましくは、スクロースである。また、オリゴ糖として、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖も好ましく使用することができる。
糖をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸は、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。使用するカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−、m、p−アニス酸、クレオソート酸、o−、m、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。エステル化したエステル化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化合物が好ましい。以下に本発明に用いられ得る糖エステル化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
Figure 0005994746
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糖エステル化合物は、一般式(Y)で示される化合物が好ましい。以下に、一般式(Y)で示される化合物について説明する。
Figure 0005994746
(式中、R1〜R8は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数2〜22のアルキルカルボニル基、あるいは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアリールカルボニル基を表し、R1〜R8は、同じであっても、異なっていてもよい。)
以下に一般式(Y)で示される化合物をより具体的(化合物Y−1〜化合物Y−23)に示すが、これらに限定はされない。なお、下表において平均置換度が8.0未満の場合、R1〜R8のうちのいずれかは水素原子を表す。
Figure 0005994746
Figure 0005994746
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置換度分布は、エステル化反応時間の調節、又は置換度違いの化合物を混合することにより目的の置換度に調整できる。
一般式(X)で表されるエステル化合物又は糖エステル化合物は、セルロースアセテートフィルムに、1〜30質量%含有させることが好ましく、5〜25質量%含有させることがより好ましく、5〜20質量%含有させることが特に好ましい。
(その他の添加剤)
〔可塑剤〕
セルロースアセテートフィルムは、必要に応じて可塑剤を含有しても良い。可塑剤としては、特に限定されないが、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、及び多価アルコールエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等が挙げられる。これらの中では、後述するリターデーション値にセルロースエステルフィルムを制御しやすい点から、アクリル系可塑剤が好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。以下に、多価アルコールエステル系可塑剤の具体的例を示すがこれらに限定されるものではない。
Figure 0005994746
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グリコレート系可塑剤としては、特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる化合物である。具体例としては、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
アクリル系可塑剤としてはアクリル系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーはアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はコポリマーが好ましい。アクリル酸エステルのモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。アクリル系ポリマーは上記モノマーのホモポリマー又はコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、またメタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
なお、セルロースアセテートフィルムに、上述した可塑剤を含有させる場合、その使用量はセルロースアセテートに対し、1〜50質量%含有させることが好ましく、5〜35質量%含有させることがより好ましく、5〜25質量%含有させることが特に好ましい。
(紫外線吸収剤)
セルロースアセテートフィルムは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収するため、耐久性を向上させるができる。紫外線吸収剤は、特に波長380nmでの透過率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、更に好ましくは2%以下である。紫外線吸収剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
より具体的には、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等を用いることができる。これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類を好ましく使用できる。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などである。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特にポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 109(オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物)、TINUVIN 928(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)などを用いることができる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応生成物)、TINUVIN 460(2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン)、TINUVIN 405(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物)などを用いることができる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから、樹脂フィルム基材となる樹脂溶液(ドープ)に添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、セルロースアセテートフィルムに対して0.5〜15質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
セルロースアセテートフィルムは、さらに酸化防止剤(劣化防止剤)を含有していてもよい。酸化防止剤は、セルロースアセテートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアセテートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有する。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。これら化合物の添加量は、セルロースアセテートフィルムに対して、質量割合で1ppm〜10000ppmが好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(欠点)
セルロースエステルフィルムは、直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ローラ傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認できる。
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
また、目視で確認できない場合でも、ハードコート層を形成したときに、塗膜が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。また、セルロースエステルフィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
(光学特性)
セルロースエステルフィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。ヘイズ値は2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。全光線透過率、ヘイズ値はJIS K7361及びJIS K7136に準じて測定することができる。
また、セルロースエステルフィルムの面内リターデーション値Roが0〜5nm、厚さ方向のリターデーション値Rthが−10〜10nmの範囲が好ましい。更にRthは−5〜5nmの範囲であることがより好ましい。
Ro及びRthは下記式(i)及び(ii)で定義された値である。
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはセルロースエステルフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはセルロースエステルフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzはセルロースエステルフィルムの厚さ方向の屈折率、dはセルロースエステルフィルムの厚さ(nm)をそれぞれ表す。)
上記リターデーションは、例えばKOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RH(相対湿度)の環境下で、波長が590nmで求めることができる。上記リターデーション値に制御したセルロースエステルフィルムを用いることで、タッチパネルや液晶表示装置などの画像表示装置に用いた際の視認性に優れる点から好ましい。リターデーションは、前述した可塑剤の種類や添加量及びセルロースエステルフィルムの膜厚や延伸条件等で調整できる。
(セルロースエステルフィルムの製膜)
次に、セルロースエステルフィルムの製膜方法の例を説明するが、これに限定されるものではない。セルロースエステルフィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
(有機溶媒)
セルロースエステルフィルムを溶液流延製膜法で製造する場合の樹脂溶液(ドープ組成物)を形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。前記溶媒はセルロースエステル樹脂、その他添加剤を計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
〔溶液流延製膜法〕
溶液流延製膜法では、樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったセルロースエステルフィルムを巻き取る工程により製膜が行われる。
金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃以上で、溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を得るためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量が10〜150質量%であることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、Nは質量Mのものを115℃で1時間の加熱後の質量である。
またセルロースエステルフィルムの乾燥工程は、ウェブを金属支持体より剥離し、乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にローラ乾燥方式(上下に配置した多数のローラにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
延伸工程では、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次又は同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲で行うことが好ましい。例えば、複数のローラに周速差をつけ、その間でローラ周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、あるいはMD方向及びTD方向を同時に広げて両方向に延伸する方法等が挙げられる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター等の製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120〜200N/mが好ましく、140〜200N/mが更に好ましい。140〜160N/mが最も好ましい。
延伸する際の温度は、セルロースエステルフィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、更に好ましくは(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
セルロースエステルフィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。セルロースエステルフィルムの乾燥時のTgは、110℃以上が好ましく、更に120℃以上が好ましい。特に好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。セルロースエステルフィルムのTgはJIS K7121に記載の方法等によって求めることができる。延伸する際の温度は、150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗れるため、好ましい。セルロースエステルフィルム表面を粗らすことにより、滑り性が向上するとともに、表面加工性が向上するため好ましい。
〔溶融流延製膜法〕
セルロースエステルフィルムは、溶融流延製膜法によって製膜しても良い。溶融流延製膜法は、セルロースエステル樹脂、可塑剤等のその他の添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
溶融流延製膜法では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化できる程度になるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルター等で濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラと弾性タッチローラでフィルムをニップし、冷却ローラ上で固化させることにより、セルロースエステルフィルムを製膜する。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入する等して安定に調整することが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や粒子等の添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラと弾性タッチローラでセルロースエステルフィルムをニップする際のタッチローラ側のセルロースエステルフィルム温度は、フィルムのTg以上(Tg+110℃)以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するローラは、公知のローラが使用できる。
弾性タッチローラは挟圧回転体ともいう。弾性タッチローラとしては、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラからセルロースエステルフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたセルロースエステルフィルムは、冷却ローラに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のローラ延伸機やテンター等を好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜(Tg+60)℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きや擦り傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凹凸のパターンを側面に有する金属リングを用いて加熱や加圧をすることにより加工することができる。フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、セルロースエステルフィルムが変形しており製品として使用できないので切除され、再利用される。
(セルロースエステルフィルムの物性)
樹脂フィルム基材を構成するセルロースエステルフィルムの膜厚は、5〜70μmであることが好ましい。該範囲の膜厚を有するセルロースエステルフィルムにおいて本発明の効果発現が得られる。セルロースエステルフィルムの膜厚の好ましい範囲は、10〜30μmである。セルロースエステルフィルムの幅は、4mを超えると搬送が困難となるため、1〜4mのものが好ましく用いられる。
また、セルロースエステルフィルムの長さは、500〜10000mが好ましく、より好ましくは1000〜8000mである。前記長さの範囲とすることで、ハードコート層等の塗布における加工適正やセルロースエステルフィルム自体のハンドリング性に優れる。
また、セルロースエステルフィルムの算術平均粗さRaは、好ましくは2〜10nm、より好ましくは2〜5nmである。算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準じて測定できる。
また、セルロースエステルフィルムのアルカリ処理前の対水接触角は、40°〜80°の範囲が一般的であり、好ましくは50℃〜70°である。また、アルカリ処理後の対水接触角はアルカリの処理条件にもよるが、10°〜60°が一般的であり、好ましくは20°〜60°である。
アルカリ処理の方法としては、セルロースエステルフィルムをアルカリ溶液に浸潰した後、水洗して乾燥する。また、アルカリ処理後、酸性水工程で中和してから、水洗、及び乾燥を行ってもよい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液があげられ、水酸化イオンの濃度は,0.1〜5mol/Lの範囲であることが好ましく、0.5mol/L〜3mol/Lの範囲であることが更に好ましい。更には、アルカリ溶液の温度は25〜90℃の範囲が好ましく、40〜70℃の範囲が更に好ましい。アルカリ処理時間は5秒〜5分の範囲、好ましくは30秒〜3分の範囲である。
<その他の層>
本発明のハードコートフィルムには、反射防止層や導電性層等、その他の層を設けることができる。
〈反射防止層〉
本発明に係るハードコートフィルムは、ハードコート層上に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体である保護フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層、若しくは支持体である保護フィルムよりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。又は、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
低屈折率層/ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
(低屈折率層)
低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜0.3μmの範囲内であることが更に好ましく、30nm〜0.2μmの範囲内であることが最も好ましい。
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物若しくはその加水分解物、あるいは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi−1):Si(OR)4
式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。またフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み、且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素化合物を主としてなる熱硬化性及び/又は光硬化性を有する化合物を含有しても良い。具体的には含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル化合物などである。含フッ素ポリマーとしては、例えばパーフルオロアルキル基含有シラン化合物〔例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン〕の加水分解物や脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性単位とを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。その他、溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。また、用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができる。
(導電性層)
ハードコートフィルムは、ハードコート層上に導電性層を形成して構成されても良い。設けられる導電性層としては、一般的に広く知られた導電性材料を用いることができる。例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、金、銀、パラジウム等の金属酸化物を用いることができる。これらは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、溶液塗布法等により、ハードコートフィルム上に薄膜として形成することができる。また、前記したπ共役系導電性ポリマーである有機導電性材料を用いて、導電性層を形成することも可能である。
特に、透明性、導電性に優れ、比較的低コストに得られる酸化インジウム、酸化錫又は酸化インジウム錫のいずれかを主成分とした導電性材料を好適に使用することができる。導電性層の厚さは、適用する材料によっても異なるため一概には言えないが、表面抵抗率で1000Ω以下、好ましくは500Ω以下になるような厚さであって、経済性をも考慮すると、10nm以上、好ましくは20nm以上、80nm以下、好ましくは70nm以下の範囲が好適である。このような薄膜においては導電性層の厚さムラに起因する可視光の干渉縞は発生しにくい。
〈バックコート層〉
本発明のハードコートフィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、塗布やCVDなどによって、ハードコート層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正する為に設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。尚、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設されることも好ましく、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせる為に微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては、無機化合物を用いることができる。無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子としては、ヘイズが低くなる点で珪素を含むものが好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
バックコート層に添加される微粒子として、ポリマー微粒子を用いることもできる。ポリマー微粒子の例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されているものを使用することができる。
これらの中でも、アエロジル200V、アエロジルR972Vが、ヘイズを低く保ちながらブロッキング防止効果が大きい為、特に好ましく用いられる。本発明で用いられるハードコートフィルムは、ハードコート層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%の割合で含まれていることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的には、透明樹脂フィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって形成されることが好ましい。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他、更に溶解させない溶媒を含む場合もある。透明樹脂フィルムのカールの度合や樹脂の種類によってこれらを適宜の割合で混合した組成物を、適切な塗布量で塗布することにより、バックコート層が形成される。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。好ましい混合比率は、(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜0.3:9.7である。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール、1,3−ジオキソラン、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸フプロピレン、シクロペンタノン、3−ペンタノン、1, 2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、乳酸エチル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、酢酸2−メトキシエチル、プロピレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールジアセテート、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、二酢酸エチレン、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、或いは炭化水素類(トルエン、キシレン、シクロヘキサノール)などがある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布することが好ましいが、特に5〜30μmの膜厚で塗布することが好ましい。
バックコート層はバインダーとして樹脂を含有しても良い。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましいものを適宜選択することもできる。特に好ましくは、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順序としては、反射防止フィルムの、バックコート層とは反対側の層(ハードコート層或いはその他の例えば帯電防止層等の層)を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は、先に塗設することが望ましい。或いはハードコート層の塗設の前後に2回以上に分けてバックコート層を塗布することもできる。
<偏光板>
本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。
例えば、本発明のハードコートフィルムをアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
偏光膜のもう一方の面には、該ハードコートフィルムを貼り合わせてもよく、前記したセルロースエステルフィルムを貼り合わせてもよい。もう一方の面に貼り合わせるセルロースエステルフィルムの膜厚は、平滑性やカールバランスを整え、巻きズレ防止効果をより高める観点から、5〜34μmの範囲であることが好ましい。
また、市販品である、KC8UX、KC4UX、KC4UY、KC8UY、KC6UA、KC4UA、KC4UE、KC4CZ、KC8UCR、KC4FR(コニカミノルタオプト(株)製)、アートンフィルム(JSR(株)製)、ゼオノアフィルム(日本ゼオン(株)製)等を用いることができる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子(偏光素子)であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるが、これのみに限定されるものではない。
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられる。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmである。
該偏光膜の面上に、本発明に係るハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
(粘着層)
液晶セルの基板と貼り合わせるためにフィルム片面に用いられる粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。
具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤若しくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化させることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
<巻き取り>
上述したハードコートフィルム、セルロースエステルフィルム、またはハードコートフィルムを用いた偏光板が、ロール状に巻かれた際の層間に保持される空気層の厚みは、0.5μm〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。空気層厚み(t’)は、t’=[{π(D2−d2)/4L}−t]の式から求められる値である。ただし、Dは巻き取り直径、dは巻き芯直径、Lは巻き長さ、tはフィルム厚みをそれぞれ表している(単位は全てμmとする)。
また、ハードコートフィルム等の巻き取り方法は、巻き取り軸の前にフィルムがタッチするロールを設けてフィルムを巻き取っていく方法、巻き取り軸にフィルムを巻き取っていく際に、フィルムがタッチするロールが一定距離間隔で徐々に離れながらフィルムを巻き取る方法(ギャップ巻き)、巻芯を回転させて巻芯にフィルムを巻き取るフィルム巻取部と、フィルムが巻芯上でフィルムの幅方向に一定範囲内で周期的にずれながら巻き取るオシレート巻き方法などを用いることができる。空気層厚みは、巻き取り条件の調整(例えば巻き取り時の張力の調整)によって制御できる。
<画像表示装置>
本発明のハードコートフィルムは、画像表示装置に使用することで、視認性(クリア性)に優れた性能が発揮される点で好ましい。画像表示装置としては、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置又は、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置、タッチパネル表示装置、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ等が挙げられる。これら画像表示装置の中でも液晶表示装置やタッチパネル表示装置に本発明のハードコートフィルムを用いた場合、高い視認性に優れる点で好ましい。
<タッチパネル>
図1は、本実施形態のハードコートフィルムが適用される画像表示装置の一例である、タッチパネル付き液晶表示装置1の概略の構成を示す断面図である。タッチパネル付き液晶表示装置1は、液晶表示装置2上(特に後述するハードコートフィルム15上)に粘着層31を介してタッチパネル3を装着して構成されている。粘着剤層31は、OCA(Optical Clear Adhesive tape)やUV硬化樹脂(OCR)などの接着層で構成されており、液晶表示装置2の後述する偏光板5の表面全体に形成されて、液晶表示装置2とタッチパネル3とを接合する。
液晶表示装置2は、液晶層を一対の基板で挟持した液晶セル4の両側に、偏光板5・6をそれぞれ配置して構成されている。偏光板5は、粘着層7を介して液晶セル4の一方の面側(例えば視認側)に貼り付けられている。偏光板6は、粘着層8を介して液晶セル4の他方の面側(例えばバックライト側)に貼り付けられている。液晶表示装置2の駆動方式は特に限定されず、IPS(In Plane Switching)型式、TN(Twisted Nematic)方式など、様々な駆動方式を採用することができる。
偏光板5は、所定の直線偏光を透過する偏光子11(偏光素子、偏光膜)と、偏光子11のタッチパネル3側に順に積層される樹脂フィルム基材12およびハードコート層13と、偏光子11の液晶セル4側に積層される光学フィルム14とで構成されており、樹脂フィルム基材12とハードコート層13とでハードコートフィルム15が構成されている。ハードコートフィルム15は、偏光板5の傷つきを防止する表面保護フィルムとして機能している。光学フィルム14は、偏光板5の裏面を保護するために設けられている。なお、光学フィルム14は、樹脂フィルム基材12と同様の材料(例えばセルロースエステル)で構成されてもよいし、他の材料で構成されてもよい。
偏光板6は、所定の直線偏光を透過する偏光子21(偏光素子、偏光膜)と、偏光子21の液晶セル4側に配置される光学フィルム22と、偏光子21の液晶セル4とは反対側に配置される光学フィルム23とを積層して構成されている。偏光子21は、透過軸が偏光子11と垂直となるように配置されている(クロスニコル状態)。光学フィルム22・23は、偏光板6の表面および裏面を保護するために設けられているが、これらは偏光板5の樹脂フィルム基材12と同様の材料(例えばセルロースエステル)で構成されてもよいし、他の材料で構成されてもよい。
タッチパネル3は、例えば静電容量方式のタッチパネルであり、ガラス基板上に、透明導電膜からなる第1電極パターンと、層間絶縁層と、透明導電膜からなる第2電極パターンとをこの順で積層して構成されている。この構成では、ガラス基板の表面がタッチパネル3のタッチ面となる。なお、第2電極パターンをさらに覆うように絶縁膜を設けてもよい。
第1電極パターンは、ガラス基板上で一方向(例えばX方向)に延びるように形成されている。層間絶縁層は、第1電極パターンを覆うようにガラス基板上に形成されている。第2電極パターンは、第1電極パターンの延びる方向とは直交する方向(例えばY方向)に延びるように形成されている。タッチパネル3の表面を指で押圧すると、第1電極パターンと第2電極パターンとが接触し、第1電極パターンと第2電極パターンとの間の静電容量が変化する。その静電容量の変化を第1電極パターンおよび第2電極パターンを介して検出することにより、押圧位置(座標)を特定することができる。
なお、タッチパネル3は、上記の静電容量方式のもの限定されるわけではなく、抵抗膜方式など他の方式のものであってもよい。
図2は、タッチパネル付き液晶表示装置1の他の構成を示す断面図である。同図に示すように、タッチパネル付き液晶表示装置1は、液晶表示装置2上(特に偏光板5のハードコートフィルム15上)に反射防止層32および粘着層33を介してタッチパネル20を装着して構成されてもよい。粘着層33は、例えば光学粘着テープで構成されており、タッチパネル3と反射防止層32を介して液晶表示装置2の縁部とを接着している。反射防止層32は、例えば低屈折率層で構成されており、タッチパネル3(特にタッチパネル3における粘着層33との接着部分以外の部位)と液晶表示装置2との間に空隙層34が形成されることによって生じる液晶表示装置2の表面での反射を防止するために設けられている。
本実施形態のハードコートフィルム15を用いて偏光板5を構成することにより、干渉ムラの発生が抑制され、耐傷性及び密着性が良好となることから、本実施形態のハードコートフィルム15および偏光板5は、タッチパネル付き液晶表示装置1に好適となる。
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
(セルロースエステルフィルム1の作製)
・二酸化珪素分散液の調整
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
(一次粒子の平均径7nm)
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。そして、二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。その後、微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
〈ドープ組成物1の調製〉
(セルロースエステル樹脂)
セルローストリアセテートA(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000) 90質量部
(添加剤)
X−1 5質量部
X−12 4質量部
(紫外線吸収剤)
TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
(微粒子)
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
(溶媒)
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ(ドープ組成物1)を調製した。
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に上記ドープを均一に流延した。そして、ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から流延膜(ウェブ)を剥離した。その後、セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.15倍に延伸しながら、140℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、120℃の乾燥装置内を多数のローラで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して巻芯に巻き取り、セルロースエステルフィルム1を得た。セルロースエステルフィルム1の膜厚は25μm、巻長は5000mであった。
なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
(セルロースエステルフィルム2の作製)
・二酸化珪素分散液の調整
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
(一次粒子の平均径7nm)
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。そして、二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。その後、微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
〈ドープ組成物2の調製〉
(セルロースエステル樹脂)
セルローストリアセテートA(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000) 90質量部
(添加剤)
X−1 5質量部
X−12 4質量部
(紫外線吸収剤)
TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(微粒子)
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
(溶媒)
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ(ドープ組成物2)を調製した。
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に上記ドープを均一に流延した。そして、ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から流延膜(ウェブ)を剥離した。その後、セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.15倍に延伸しながら、140℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、120℃の乾燥装置内を多数のローラで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して巻芯に巻き取り、セルロースエステルフィルム2を得た。セルロースエステルフィルム2の膜厚は25μm、巻長は5000mであった。
なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
(セルロースエステルフィルム3の作製)
ステンレスバンド支持体へのドープの流延量を、セルロースエステルフィルム1の作製時の1.6倍にした以外は、セルロースエステルフィルム1の作製と同様の方法でセルロースエステルフィルム3を作製した。セルロースエステルフィルム3の膜厚は40μm、巻長は5000mであった。
なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
[ハードコートフィルムの作製]
以下の比率で各材料を混合して、ハードコート層組成物1〜20およびバックコート層組成物1〜5を作製した。
《ハードコート層組成物1》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物2》
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(M−305、東亜合成(株)製)
30質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は700mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物3》
(活性線硬化樹脂)
ウレタンアクリレート(U−6LPA、新中村化学(株)製) 30質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は450000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物4》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 56質量部
メチルエチルケトン 14質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、20%であった。
《ハードコート層組成物5》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 28質量部
メチルエチルケトン 42質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、60%であった。
《ハードコート層組成物6》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(UV吸収剤)
TINUVIN109(BASFジャパン(株)製) 3重量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物7》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(UV吸収剤)
TINUVIN928(BASFジャパン(株)製) 2重量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物8》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(UV吸収剤)
TINUVIN400(BASFジャパン(株)製) 2重量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物9》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(UV吸収剤)
TINUVIN460(BASFジャパン(株)製) 2重量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物10》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
KF−351A(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物11》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
BYK−381(アクリル系共重合物、信越化学工業株式会社製) 1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物12》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
BYK−355(アクリル系共重合物、信越化学工業株式会社製) 1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物13》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
サーフィノール104PG50(アセチレン系ジアルコール、日信化学工業株式会社)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物14》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
サーフィノール440(アセチレン系ジアルコール、日信化学工業株式会社)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物15》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
ZX−022H(フッ素−シロキサングラフト化合物、富士化成工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物16》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
10質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 20質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 48質量部
メチルエチルケトン 22質量部
(添加剤)
ZX−049(フッ素−シロキサングラフト化合物、富士化成工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は18000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、31%であった。
《ハードコート層組成物17》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
3質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 6質量部
(微粒子)
シリカ微粒子分散液 (IPA−ST、日産化学工業(株)製) 70質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
メチルエチルケトン 23質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は19000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、32%であった。
《ハードコート層組成物18》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
5質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 10質量部
(微粒子)
シリカ微粒子分散液 (V−8804、日揮触媒化成(株)製) 38質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 25質量部
メチルエチルケトン 23質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は19000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、32%であった。
《ハードコート層組成物19》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
3質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 6質量部
(微粒子)
シリカ微粒子分散液(IPA−ST、日産化学工業(株)製) 70質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 7質量部
メチルエチルケトン 14質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は19000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、20%であった。
《ハードコート層組成物20》
(活性線硬化樹脂)
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(M−403、東亜合成(株))
5質量部
ウレタンアクリレート(U−4H、新中村化学工業(株)製) 10質量部
(微粒子)
シリカ微粒子分散液 (MEK−ST、日産化学工業(株)製) 50質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 1.5質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 28質量部
メチルエチルケトン 7質量部
(添加剤)
KF−354L(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製)
1質量部
なお、上記組成物中の固形成分(組成物から溶剤を除いた成分)の25℃の粘度は19000mPa・sであった。また、全溶剤に対する溶解性溶剤の比率は、60%であった。
《バックコート層組成物1》
(溶剤)
アセトン 84.0質量部
イソプロパノール 16.0質量部
(樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換基度1.9、プロピオニル基置換度0.8) 0.7質量部
(微粒子)
超微粒子シリカ2%アセトン分散液(日本アエロジル株式会社製アエロジル200V)
0.3質量部
《バックコート層組成物2》
(溶剤)
アセトン 84.0質量部
イソプロパノール 16.0質量部
《バックコート層組成物3》
(溶剤)
シクロペンタノン 20.0質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0質量部
《バックコート層組成物4》
(溶剤)
炭酸プロピレン 6.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 53.5質量部
イソプロパノール 40.0質量部
《バックコート層組成物5》
(溶剤)
ビス(2−メトキシエチル)エーテル 50質量部
イソプロパノール 22質量部
(実施例1)
上記作製したセルロースエステルフィルム1のA面(流延ベルトに接していない面)上に、ハードコート層組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、押し出しコーターを用いて塗布し、塗布工程後3秒までは乾燥温度15℃で、3秒から15秒までの間は乾燥温度70℃で、15秒後から36秒後までは乾燥温度80℃で、36秒から40秒までは乾燥温度が45℃で乾燥し、乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚3μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルム1を作製した(プロセス条件A)。
(実施例2)
ドライ膜厚を5μmに変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム2を作製した。
(実施例3)
用いる樹脂フィルム基材をセルロースエステルフィルム2に変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム3を作製した。
(実施例4)
用いる樹脂フィルム基材をセルロースエステルフィルム3に変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム4を作製した。
(実施例5)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物6に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム5を作製した。
(実施例6)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物7に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム6を作製した。
(実施例7)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物8に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム7を作製した。
(実施例8)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物9に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム8を作製した。
(実施例9)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物10に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム9を作製した。
(実施例10)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物11に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム10を作製した。
(実施例11)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物12に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム11を作製した。
(実施例12)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物13に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム12を作製した。
(実施例13)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物14に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム13を作製した。
(実施例14)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物17に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム14を作製した。
(実施例15)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物18に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム15を作製した。
(実施例16)
上記作製したセルロースエステルフィルム1のB面(流延ベルトに接している面)上に、バックコート層組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、押し出しコーターを用いてウェット膜厚が10μmになるように塗布し、70℃で90秒乾燥後、A面(流延ベルトに接していない面)上に、ハードコート層組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、押し出しコーターを用いて塗布し、塗布工程後3秒までは乾燥温度15℃で、3秒から15秒までの間は乾燥温度70℃で、15秒後から36秒後までは乾燥温度80℃で、36秒から40秒までは乾燥温度が45℃で乾燥し、乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚3μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルム16を作製した。
(実施例17)
バックコート層組成物1をバックコート層組成物2に変更した以外は実施例16と同様にして、ハードコートフィルム17を作製した。
(実施例18)
バックコート層組成物1をバックコート層組成物3に変更した以外は実施例16と同様にして、ハードコートフィルム18を作製した。
(実施例19)
バックコート層組成物1をバックコート層組成物4に変更した以外は実施例16と同様にして、ハードコートフィルム19を作製した。
(実施例20)
バックコート層組成物1をバックコート層組成物5に変更した以外は実施例16と同様にして、ハードコートフィルム20を作製した。
(比較例1)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物2に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム21を作製した。
(比較例2)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物3に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム22を作製した。
(比較例3)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物4に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム23を作製した。
(比較例4)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物5に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム24を作製した。
(比較例5)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物19に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム25を作製した。
(比較例6)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物20に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム26を作製した。
(比較例7)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物15に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム27を作製した。
(比較例8)
ハードコート層組成物1をハードコート層組成物16に変更してハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム28を作製した。
(比較例9)
上記作製したセルロースエステルフィルム1のA面(流延ベルトに接していない面)上に、ハードコート層組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、押し出しコーターを用いて塗布し、塗布工程後6秒までは乾燥温度15℃で、6秒から25秒までの間は乾燥温度70℃で、25秒後から36秒後までは乾燥温度80℃で、36秒から40秒までは乾燥温度が45℃で乾燥し、乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚3μmのハードコート層を形成し、ハードコートフィルム29を作製した(プロセス条件B)。
(比較例10)
樹脂フィルム基材のB面(A面とは反対側の面、製膜時に支持体と接触していた面)上にハードコート層を形成した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム30を作製した。
(比較例11)
用いる樹脂フィルム基材を光学用PETフィルムに変更した以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム31を作製した。
(比較例12)
ハードコートの膜厚を10μmにした以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム32を作成した。
(比較例13)
ハードコートの膜厚を15μmにした以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルム33を作成した。
(比較例14)
ハードコートの膜厚を10μmにした以外は実施例18と同様にして、ハードコートフィルム34を作成した。
(比較例15)
ハードコートの膜厚を15μmにした以外は実施例18と同様にして、ハードコートフィルム35を作成した。
(比較例16)
ハードコートの膜厚を10μmにした以外は実施例15と同様にして、ハードコートフィルム36を作成した。
(比較例17)
ハードコートの膜厚を15μmにした以外は実施例15と同様にして、ハードコートフィルム37を作成した。
《ハードコートフィルムの評価》
・干渉ムラの評価
各ハードコートフィルムのハードコートされていない側の面を黒アクリル板に基材レステープ(リンテック社製)で接着し、三波長ランプで照らし、干渉ムラの強度を観察し、以下の基準に基づいて干渉ムラを評価した。
(評価基準)
○ :干渉ムラを目視で確認できない。
× :凝視すると干渉ムラを確認できる。
××:干渉ムラを容易に確認できる。
・耐擦傷性の評価
各ハードコートフィルム試料の表面をスチールウール#0000上に、500g/cm2の荷重をかけて10往復させ、それによって発生した傷の本数を目視にて調べた。そして、以下の基準に基づいて耐擦傷性を評価した。
(評価基準)
○○ :傷の本数が0本である。
○ :傷の本数が5本以下である。
× :傷の本数が6本以上10本以下である。
×× :傷の本数が11本以上20本以下である。
×××:傷の本数が21本以上である。
・密着性の評価
各ハードコートフィルム1〜37を23℃55%RHの雰囲気下で12時間調湿後、JISK5400に準拠する方法で、各ハードコートフィルム1〜37のハードコート層に1mmの間隔で縦横に11本の切れ目を入れ、1mm角、100個の碁盤目を作製し、セロハンテープを貼り付けて90度の角度ですばやくはがした。セロハンテープは、1回剥離する毎に交換しながら、該テープの剥離作業を6回実施後、剥れずに残っている碁盤目の面積から、以下の基準で評価した。
○:全く剥離されなかった
×:剥離された碁盤目があった
・カール測定
各ハードコートフィルム試料を縦10cm×横10cmの大きさに切り出し、該フィルム試料片のエッジ部の浮き上がりを測定し、下記のランクにより評価した。
(評価基準)
○:フィルム試料片のエッジ部の浮き上がりが、3cm以下である。
×:フィルム試料片が筒状となった。
・鉛筆硬度
ハードコートフィルム1〜37について、鉛筆硬度試験で硬度を確認した。すなわち、JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆でハードコートフィルム1〜37のハードコート層面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本までの硬度を測定した。そして、以下の基準に基づいて硬度を評価した。
(評価基準)
○:鉛筆硬度が2H以上である。
×:鉛筆硬度が2H未満である。
・液加工適正
樹脂500kgを室温25℃環境下で、長さ20cm、直径5cmのパイプに通し、調液釜に投入するのにかかる時間を測定した。そして、以下の基準に基づいて液加工適正を評価した。
(評価基準)
○○:投入にかかる時間が31分未満である。
○ :投入にかかる時間が31分以上61分未満である。
× :投入にかかる時間が61分以上である。
表1は、実施例1〜20、比較例1〜17についての評価の結果を示している。なお、実施例1〜20、比較例1〜17の各ハードコートフィルムにおける混合層(混合領域)は、ハードコート層の成分に対して、樹脂フィルム基材の成分が30質量%〜70質量%の範囲で混合した領域とした。混合層の厚みは、厚さ0.01μm毎にハードコート層の樹脂フィルム基材とは反対側の表面からハードコート層を削り取って核磁気共鳴分光法によって測定し、樹脂フィルム基材の成分が30質量%〜70質量%の範囲で混合した領域を評価した。各ハードコートフィルムの表面部は、ハードコート層の樹脂フィルム基材とは反対側の表面から0.1μmの厚みまでの領域とした。表面部における樹脂フィルム基材由来の成分量については、表面部(厚さ0.1μm)を削り取って核磁気共鳴分光法によって測定した。
Figure 0005994746
表1より、比較例1、4、6〜10では、ハードコート層の表面部における樹脂フィルム基材由来の成分量が1%を超えており、ハードコートフィルムの耐擦傷性が損なわれている。これは、ハードコート層の溶剤によって樹脂フィルム基材を溶解または膨潤させて混合層を形成すると、ハードコート層が厚さ5μm以下と薄膜化されているために、樹脂フィルム基材に含まれる成分がハードコート層の表面側に溶出しやすくなっているためと考えられる。
また、比較例2、3、5、10、11では、干渉ムラが発生しているが、これは、混合層の厚さが100nm未満であることから、混合層において屈折率を厚み方向に十分になだらかに変化させることができていないためと考えられる。
また、比較例2、3、5、10、11では、密着性が損なわれているが、これは、混合層の厚さが100nm未満であることから、ハードコート層のアンカリングの効果が弱いためと考えられる。
これに対して、実施例1〜20では、樹脂フィルム基材とハードコート層との界面に混合領域が100nm以上の厚みで形成されており、混合層において屈折率を厚み方向に十分になだらかにかつ連続的に変化させることができるため、干渉ムラを良好に抑えることができており、十分な密着性を得られていると考えられる。また、ハードコート層の表面部における樹脂フィルム基材由来の成分量が1%以下であり、樹脂フィルム基材の成分の溶出が十分に抑えられているため、ハードコート層が厚み5μm以下と薄膜化されても、耐擦傷性が良好であるものと考えられる。
なお、比較例12〜17では、カールおよび鉛筆硬度の評価が低いが、これは、ハードコート層の膜厚が10μm以上の厚膜となっているためと考えられる。
なお、以上では、ハードコートフィルムを液晶表示装置の偏光板に適用した例について説明したが、本実施形態の製法で製造されるハードコートフィルムは、このほかにも、タッチパネルの表面を保護するフィルムや、画像表示装置表面のガラス飛散防止フィルムとしても用いることができる。
本発明のハードコートフィルムは、偏光板やそれを用いた液晶表示装置、さらにはタッチパネル付きの液晶表示装置に利用可能である。
1 タッチパネル付き液晶表示装置
2 液晶表示装置
3 タッチパネル
5 偏光板
11 偏光子
12 樹脂フィルム基材
13 ハードコート層
15 ハードコートフィルム

Claims (10)

  1. 樹脂フィルム基材上に直接ハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、
    前記ハードコート層の膜厚が0.5〜5μmの範囲であり、
    前記ハードコート層と前記樹脂フィルム基材との界面に、前記ハードコート層の成分に対して、前記樹脂フィルム基材の成分が30質量%〜70質量%の範囲で混合した混合領域が100nm以上120nm以下の厚みで形成されることで、前記ハードコート層と前記樹脂フィルム基材との界面における屈折率が連続的に変化しており、且つ、
    前記ハードコート層の表面部における前記樹脂フィルム基材由来の成分量が1%以下であり、
    さらに、前記ハードコート層の固形分粘度が、25℃のときで18000〜19000mPa・sであることを特徴とするハードコートフィルム。
  2. 前記ハードコート層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
  3. 前記ハードコート層の厚みが1〜3μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
  4. 前記樹脂フィルム基材がセルロースエステルフィルムであり、前記セルロースエステルフィルムの膜厚が5〜70μmの範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
  5. 前記樹脂フィルム基材がセルロースエステルフィルムであり、前記セルロースエステルフィルムの膜厚が5〜30μmの範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法において、
    セルロースエステル樹脂と溶媒とを含有するドープを支持体上に流延し、前記支持体上で乾燥させることでウェブを形成する工程と、
    前記ウェブを更に乾燥して前記樹脂フィルム基材を形成する工程と、
    前記樹脂フィルム基材上に、活性線硬化性樹脂と溶剤とを含むハードコート層組成物を塗布する工程と、
    前記ハードコート層組成物を乾燥、固化してハードコート層を形成する工程とを有し、
    前記ハードコート層は、前記樹脂フィルム基材の、前記樹脂フィルム基材を形成する過程で前記支持体上に前記ドープが流延されたときの前記支持体とは反対側であった側の面に形成されることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
  7. 前記ハードコート層組成物から溶剤を除いた固形成分の25℃における粘度が18000〜19000mPa・sの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  8. 前記ハードコート層組成物を乾燥、固化してハードコート層を形成する工程において、前記塗布工程後15秒未満の間の乾燥温度が15℃〜70℃の範囲であり、15秒以後36秒未満の乾燥温度が60℃〜120℃の範囲であり、36秒以後40秒未満の乾燥温度が30℃〜80℃の範囲であることを特徴とする請求項6または7に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  9. 請求項1から5のいずれかに記載のハードコートフィルムと、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
  10. 請求項9に記載の偏光板を用いた液晶表示装置の前記ハードコートフィルムの上にタッチパネルを設置したことを特徴とするタッチパネル付き液晶表示装置。
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