JP6658423B2 - 耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDFInfo
- Publication number
- JP6658423B2 JP6658423B2 JP2016184790A JP2016184790A JP6658423B2 JP 6658423 B2 JP6658423 B2 JP 6658423B2 JP 2016184790 A JP2016184790 A JP 2016184790A JP 2016184790 A JP2016184790 A JP 2016184790A JP 6658423 B2 JP6658423 B2 JP 6658423B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- flux
- wire
- corrosion
- oxide
- resistant steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Nonmetallic Welding Materials (AREA)
Description
しかしながら、海浜地域に加え、内陸部でも融雪剤が散布される地域のように飛来塩分量が多い環境下では、耐候性鋼材の表面に保護性のあるさび層が形成されにくく、腐食を抑制する効果が発揮されにくい。そのため、これらの地域では、裸のままの耐候性鋼材を用いることができず、塗装をして用いる必要がある。
特許文献2(特開2007−262555号公報)には、石炭・鉱石運搬船のホールド内の高湿度、かつ、硫黄分や塩分のような腐食性物質が存在する環境下において、さらに、荷下ろし時の機械的摩擦によって塗膜が剥がれやすい前提で塗膜の寿命延長と塗膜が剥がれた後の腐食抑制が可能であることを特徴とする耐食鋼についての開示がある。
特に溶接継手において余盛は溶接金属の最終層であり、通常はこれを切削除去せずに母材表面から突出した形状のままで使用することが通例である。余盛の領域に施された塗膜は、その周囲の平滑な母材に施された塗膜表面に比較して、使用中の積載物からの衝突や機械的摩擦を相対的により頻回に、強く受けやすい。また、余盛自体が凸形で複雑な形状を呈するため、塗装施工において、周囲の母材と比較して相対的に塗膜の膜厚が薄手となる傾向があり、これらの理由から余盛表面は、塗膜の剥離を誘引しやすく、鋼構造物の使用開始から早期に、累進的な塗膜破壊が進行する腐食形態の起点となりやすい。
さらに、特許文献3〜6に記載の溶接材料は、溶接継手の最終層に施された塗膜が、その周囲の平坦な母材に施された塗膜表面に比較して、余盛が凸状で複雑な形状を呈するため、塗装皮膜が薄くなる傾向にあり、塗膜の剥離を誘引しやすく、飛来塩分量の多い環境下では、腐食形態の起点となるという問題もあった。
(1)鋼製外皮にフラックスを充填してなる耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、前記ワイヤ中に、ワイヤの全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.40〜0.85%、Mn:1.5〜3.5%、Cu:0.03〜0.70%、Al:0.05〜0.50%、Ti酸化物のTiO2換算値:1.5〜5.0%、Si酸化物のSiO2換算値:0.3〜1.0%、Zr酸化物のZrO2換算値:0.1〜0.5%、Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、Al酸化物のAl2O3換算値:0.05〜0.50%、Mg:0.05〜0.50%、Sn:0.05〜0.30%、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.05〜0.20%、弗素化合物のF換算値:0.02〜0.20%を含有し、残部は鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉及び不可避不純物であることを特徴とする耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(3)ワイヤ全質量に対する質量%で、Ti:0.30%以下、B:0.01%以下の1種又は2種をさらに含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(4)ワイヤ全質量に対する質量%で、Ni:2.5%以下をさらに含有することを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
先ず、飛散塩分量が多い腐食環境での耐食性について、化学成分の影響を調査した。この結果、フラックス入りワイヤの組成成分として、Cu及びSnを添加することにより、当該環境での耐食性を向上させることが可能であるとの知見を得た。
さらに、ビード形状及びビード外観は、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Al、Fe酸化物、Al酸化物及び弗素化合物量の調整で、スラグ剥離性は、Si酸化物、Zr酸化物、Al、Fe酸化物及びK化合物とNa化合物量の調整で、耐ピット性及びスパッタ発生量の低減は、Ti酸化物、Si酸化物、Mg量の調整で、機械的性能はC、Si及びMn量の調整で、それぞれ良好となることを知見した。
Cは、溶接構造物に要求される溶接金属の強度及び靭性を得るために添加する。Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスとしてFe−Si、Fe−Mn及びFe−Si−Mn等の鉄合金が微量含有する金属粉から添加される。Cが0.03%未満では、溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。従って、Cは0.03〜0.10%とする。好ましくは、0.05%〜0.10%である。
Siは、脱酸剤として作用して、溶接金属の強度及び靭性を確保するために添加する。Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスとして金属Si、Fe-Si及びFe-Si-Mn等から添加される。Siが0.40%未満では、脱酸不足となりピットが発生する。また、溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Siが0.85%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。従って、Siは0.40〜0.85%とする。好ましくは、0.65〜0.75%である。
Mnは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度及び靭性を確保するために添加する。Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスとして金属Mn、Fe−Mn及びFe−Si−Mn等から添加される。Mnが1.5%未満では、脱酸不足となり、ピットが発生する。また、溶接金属の強度及び靭性も低下する。一方、Mnが3.5%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。従って、Mnは、1.5〜3.5%とする。好ましくは、2.4〜3.0%である。
Cuは、耐食性を向上させる作用を有する。Cuは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスとしての金属Cu及びワイヤ表面のCuめっき等から添加される。Cuが0.03%未満では、耐食性が劣る。一方、Cuが0.70%を超えると、耐食性向上効果は飽和する。また、溶接金属の靭性が低下する。従って、Cuは、0.03〜0.70%とする。好ましくは、0.15〜0.35%である。
Cuが溶接金属の耐候性および耐塗装剥離性を向上させる理由は、Cuを含有した溶接金属そのものの溶解反応(腐食反応)の反応速度を低減すること、および、Cuを含有する溶接金属では、表面(余盛部など)に生成する腐食生成物(錆)が、特徴的な微細かつ緻密な構造を呈することにより、水、酸素、塩化物イオン等の透過を抑制する防食性の高い錆層を形成するからである。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、溶融スラグ中でAl酸化物となってスラグの粘性を高めて、水平すみ肉溶接で溶融プールの後退を抑制し十分なスラグ被包性を保持する作用を有する。Alは、鋼製外皮、フラックスとしての金属Al、Fe−Al及びAl−Mg合金等より添加される。Alが0.05%未満では、ビード形状が凸状になり、上脚部にアンダーカットが発生する。一方、Alが0.50%を超えると、ビード形状に滑らかさがなくなり止端部が膨らんだ形状となる。また、溶融スラグの凝固むらが生じてスラグ剥離性が不良となる。従って、Alは、0.05〜0.50%とする。好ましくは、0.07〜0.25%である。
Ti酸化物は、ビード全体を均一にスラグで被包させる作用を有する。Ti酸化物は、フラックスとして、ルチール、酸化チタン、チタンスラグ、イルメナイト、チタン酸ソーダ、チタン酸カリ等から添加される。また、アークの持続を安定させ、スパッタ発生量を低減させる効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値が1.5%未満であると、スラグ生成量が不足してビードを均一に被包できないので、スラグがビード表面に焼き付きビード外観が不良になる。また、アークを安定させる効果がなくなり、スパッタ発生量も増加する。一方、Ti酸化物のTiO2換算値が5.0%を超えると、アークは安定してスパッタ発生量は減少するが、スラグが厚くなり、スラグの粘性が高まり、ビードの止端部が膨らんだ形状となる。また、ピットが発生しやすくなる。従って、Ti酸化物のTiO2換算値は、1.5〜5.0%とする。好ましくは、2.5〜4.0%である。
Si酸化物は、溶融スラグの粘性を高め、スラグ剥離性を改善する作用を有する。Si酸化物は、フラックスとして、珪砂、ジルコンサンド、カリ長石、珪酸ソーダ、珪酸カリ等から添加される。Si酸化物のSiO2換算値が0.3%未満では、スラグ被包状態が悪くスラグ剥離性が不良になり、ビード形状及びビード外観も不良になる。一方、Si酸化物のSiO2換算値が1.0%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。さらに、ピットやガス溝も発生しやすくなる。従って、Si酸化物のSiO2換算値は、0.3〜1.0%とする。好ましくは、0.6〜0.8%である。
Zr酸化物は、水平すみ肉溶接でスラグ被包性を高めてビード形状を平滑にする作用を有する。Zr酸化物は、フラックスとして、ジルコンサンド、酸化ジルコニウム等から添加される。Zr酸化物のZrO2換算値が0.1%未満では、ビード形状が平滑にならず、凸状のビード形状となり、スラグ剥離性が不良となる。一方、Zr酸化物のZrO2換算値が0.5%を超えると、ビード形状が凸状になりやすい。従って、Zr酸化物のZrO2換算値は、0.1〜0.5%とする。好ましくは、0.2〜0.4%である。
FeO、Fe2O3等のFe酸化物は、溶融スラグの粘性及び凝固温度を調整し、ビード止端部の膨らみをなくし、下板とのなじみ性を良好にする。Fe酸化物は、フラックスとして添加される。Fe酸化物のFeO換算値が0.1%未満であると、ビード止端部が膨らんで形状が不良になる。一方、Fe酸化物のFeO換算値が1.0%を超えると、スラグ被包状態が悪くなり、スラグ剥離性が不良でビード止端部が膨らみビード形状及びビード外観も不良となる。従って、Fe酸化物のFeO換算値は、0.1〜1.0%とする。好ましくは、0.2〜0.7%である。
Al酸化物は、アルミナ、長石等から添加され、溶融スラグ成分としてスラグ被包性を良好にしてすみ肉ビードの上脚側のアンダーカットを防止する。Al酸化物は、フラックスとして添加される。Al酸化物のAl2O3換算値が0.05%未満では、上脚側にアンダーカットが生じやすくなる。一方、Al酸化物のAl2O3換算値が0.50%を超えると、下脚側のビード止端部が膨らんだビード形状となる。従って、Al酸化物のAl2O3換算値は、0.05〜0.50%とする。好ましくは、0.10〜0.25%である。
Mgは、強脱酸剤として作用してピットを防止する。Mgは、フラックスから添加することが好ましく、金属Mg、Al−Mg等の合金粉末から添加できる。Mgが0.05%未満であると、脱酸剤としての効果がなく、ピットが発生する。一方、Mgが0.50%を超えると、アークが荒くなりスパッタ発生量が多くなる。従って、Mgは、0.05〜0.50%とする。好ましくは、0.15〜0.25%である。
Snは、溶接金属の耐食性を向上させる効果を有する。Snは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスとして金属SnあるいはSn化合物から添加される。Snが0.05未満では、耐食性が劣る。一方、Snが0.30%を超えると、高温割れが生じやすくなる。従って、Snは、0.05〜0.30%とする。好ましくは、0.10〜0.20%である。
Snが溶接金属の耐候性及び耐塗装剥離性を向上させる理由は、溶接金属中の金属Snがスズイオン(II)(Sn2+)として溶出し、環境中に暴露されている部位、すなわち、酸性塩化物溶液中でインヒビター作用を示し、pHが低下したアノードでの腐食を抑制するからである。また、鉄(III)イオン(Fe3+)を還元させる作用(2Fe3++Sn2+→2Fe2++Sn4+)も持つため、Fe3+の腐食促進作用を抑制し、飛来塩分の多い環境での耐候性を向上させる。
Na化合物及びK化合物は、アーク安定剤としての作用だけではなく、スラグ形成剤として溶融スラグの凝固過程の急激な粘性増加を抑えて耐ピット性を高め、平滑なビード形状にする作用がある。Na化合物及びK化合物は、フラックスとして、珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪弗化カリなどの弗素化合物より添加される。
Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.05%未満では、大粒のスパッタが多発し、ピットやガス溝なども発生しやすく、ビードはごつごつした表面となり、ビード形状及びビード外観が不良になる。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.20%を超えると、スラグ剥離性、ビード形状及びビード外観が不良となり、スパッタ発生量も多くなる。従って、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は、0.05〜0.20%とする。好ましくは、0.08〜0.15%である。
弗素化合物は、アークの指向性を高めて安定した溶融プールにするとともに、スラグの粘性を調整してビード形状を平滑にする作用並びに耐ピット性を良好にする作用を有する。弗素化合物は、フラックスとして、弗化マグネシウム、氷晶石、弗化ソーダや珪弗化カリ等より添加される。
弗素化合物のF換算値が0.02%未満では、アークが不安定になり、下板側下脚部のなじみ性が不良となる。また、ピットが発生しやすくなる。一方、弗素化合物のF換算値が0.20%を超えると、スラグの粘性が低下してビード上脚部に除去しにくい薄いスラグが残り、スラグ剥離性が不良となり、ビード形状は凸状になる。従って、弗素化合物のF換算値は、0.02〜0.20%とする。好ましくは、0.03〜0.10%である。
Biは、スラグ剥離性を向上させ、ビード表面に光沢を出し、ビード外観を良好にする作用を有するので添加してもよい。Biは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスとして金属Biや酸化Bi等より添加される。しかし、金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計が0.035%を超えると、ビード上部のスラグが流れて、ビード全面をスラグで被包することができなくなり、ビード外観が不良となる。従って、フラックス中の金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計は、0.035%以下とする。なお、スラグ剥離性を向上させる効果を得るためにはBi換算値の合計は、0.005%以上添加することが好ましい。
TiおよびBは、溶接金属の低温における靭性を確保するために添加してもよい。Tiは、鋼製外皮、フラックスとしての金属TiやFe−Tiから添加される。Bは、鋼製外皮、フラックスとしてのFe−BやFe−Mn−B等から添加される。しかし、Tiが0.30%を超えると、スラグがビード表面に焼き付き、ビード外観が不良になり、スパッタ発生量も多くなる。さらに、溶接金属の靭性も低下する。また、Bが0.01%を超えると、高温割れが生じやすくなる。従って、Tiは、0.30%以下、Bは、0.01%以下の1種又は2種とする。なお、溶接金属の低温における靭性を確保するためにはTi:0.03%以上、B:0.002%以上の1種又は2種を添加することが好ましい。
Niは、溶接金属の低温における靭性を確保するために添加してもよい。Niは、鋼製外皮、フラックスとしての金属NiやFe−Ni等から添加され。しかし、Niが2.5%を超えると、高温割れが生じやすくなる。従って、Niは、2.5%以下とする。なお、溶接金属の低温における靭性を確保するためには、0.1%以上添加することが好ましい。
フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼または低合金鋼の外皮内に、前記限定した成分のフラックスをワイヤ全質量に対して10〜16%程度充填後、孔ダイス伸線やローラダイス等により所定のワイヤ径(0.9〜1.6mm)に縮径して製造する。なお、鋼製外皮に貫通した隙間がないシームレス又は隙間があるシームタイプのいずれのワイヤも適用できる。
JIS G 3141で規定されるSPCCを鋼製外皮として使用してフラックスを充填後、縮径して(外皮の軟化および脱水素のため中間焼鈍を1回実施)、表1に示す成分(数値はワイヤの全質量に対する質量%で示す)を有し、フラックス充填率13.5%、ワイヤ径1.2mmの鋼製外皮に貫通した隙間が無いシームレスタイプのフラックス入りワイヤを各種試作した。なお、ワイヤは、残部として、鋼製外皮のFe分、合金鉄のFe分、鉄粉及び不可避不純物を含む。
その後、得られた腐食試験片5をSAE(Society of Automotive Engineers) J2334試験に従い、耐食性を評価した。
SAE J2334試験を80サイクル後に、各試験片の塗膜剥離、膨れ面積率を計測した。その後、表面の残存塗膜と生成した錆層を除去し、塗装被膜疵部の腐食深さを測定後、平均腐食深さを算出した。
耐候性・耐塗装剥離性の評価は、塗膜剥離・膨れ面積率が50%未満、かつ、塗膜傷部平均腐食深さが0.5mm未満の場合を合格とした。
これらの結果を表3にまとめて示す。
本発明例であるワイヤNo.1〜18は、TiO2換算値、SiO2換算値、ZrO2換算値、FeO換算値、Al2O3換算値、C、Si、Mn、Cu、Al、Mg、Sn、Na2O換算値とK2O換算値の合計及びF換算値が適量であるので、ピットの発生がなく、スパッタ発生量が少なく、X線透過試験で欠陥が無く、ビード形状、ビード外観及びスラグ剥離性が良好で、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーも良好な結果であった。また、耐食性評価試験結果も良好であり、満足な結果であった。
なお、Biを適量含むワイヤNo.4、5、6、13、14、17、18は、スラグ剥離性が非常に良好であった。また、Ti及びBの1種又は2種を適量含むワイヤNo.7、8、9、Niを適量含むワイヤNo.10、11、12、13、14及びTi及びBの1種又は2種とNiを適量含むワイヤNo.15、16、17、18は、−40℃における溶着金属の吸収エネルギーが60J以上と良好であった。
ワイヤNo.20は、TiO2換算値が大きいので、スラグが厚くピットが発生し、スラグの粘性が高まり、ビードの止端部が膨らんだ形状になった。また、Cが少ないので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤNo.22は、SiO2換算値が大きいので、スパッタ発生量が多くなり、ピットも発生した。また、ZrO2換算値が大きいので、ビード形状が凸状であった。
ワイヤNo.24は、FeO換算値が大きいので、スラグ被包状態が悪くスラグ剥離性が不良となり、ビード止端部が膨らみビード形状及びビード外観も不良であった。また、Sn量が多いのでクレータ割れが発生した。
ワイヤNo.26は、Al2O3換算値が大きいので、ビード止端部が膨らみ、なじみ性が悪くなり、ビード形状が不良であった。また、Mg量が少ないのでピットが発生した。
ワイヤNo.28は、Al量が多いので、ビード形状に滑らかさがなくなり、止端部が膨らんだ形状となり、溶融スラグにおいても凝固むらが生じてスラグ剥離性が不良であった。また、Mg量が多いので、アークが荒くなり、スパッタ発生量も多かった。さらに、Mn量が多いので、溶着金属の引張強さが高く、延性低下に起因して吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤNo.29は、Sn量が少ないので、溶着金属の塗膜剥離及び膨れの面積率が大きく、塗膜傷部の平均腐食深さも深かった。また、Bi換算値が大きいので、ビード外観が不良となった。
ワイヤNo.31は、Cu量が少ないので、溶着金属の塗膜剥離及び膨れの面積率が大きく、塗膜傷部の平均腐食深さも深かった。また、F換算値が小さいので、下板側下脚部のなじみ性が悪く、ビード形状が不良で、ピットも発生した。さらに、B量が多いので、クレータ割れが生じた。
ワイヤNo.33は、Mg量が少ないのでピットが発生した。また、Ti量が多いので、スパッタ発生量が多く、ビード表面にスラグが焼き付き、ビード外観が不良であった。
ワイヤNo.34は、Na2O換算値とK2O換算値の合計が少ないので、アークが不安定になり大粒のスパッタ発生量が多く、ビード形状及びビード外観が不良となり、ピットも発生した。また、Ni量が多いので、クレータ割れが生じた。
2 溶着金属
3 腐食試験片の採取位置
4 クロスカット
5 腐食試験片
Claims (4)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなる耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、前記ワイヤ中に、ワイヤの全質量に対する質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.40〜0.85%、
Mn:1.5〜3.5%、
Cu:0.03〜0.70%、
Al:0.05〜0.50%、
Ti酸化物のTiO2換算値:1.5〜5.0%、
Si酸化物のSiO2換算値:0.3〜1.0%、
Zr酸化物のZrO2換算値:0.1〜0.5%、
Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、
Al酸化物のAl2O3換算値:0.05〜0.50%、
Mg:0.05〜0.50%、
Sn:0.05〜0.30%、
Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.05〜0.20%、
弗素化合物のF換算値:0.02〜0.20%
を含有し、残部は鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉及び不可避不純物であることを特徴とする耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - ワイヤ全質量に対する質量%で、金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計:0.035%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- ワイヤ全質量に対する質量%で、Ti:0.30%以下、B:0.01%以下の1種又は2種をさらに含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- ワイヤ全質量に対する質量%で、Ni:2.5%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016184790A JP6658423B2 (ja) | 2016-09-21 | 2016-09-21 | 耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016184790A JP6658423B2 (ja) | 2016-09-21 | 2016-09-21 | 耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018047486A JP2018047486A (ja) | 2018-03-29 |
JP6658423B2 true JP6658423B2 (ja) | 2020-03-04 |
Family
ID=61766676
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016184790A Active JP6658423B2 (ja) | 2016-09-21 | 2016-09-21 | 耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6658423B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111819029B (zh) * | 2018-03-28 | 2021-09-21 | 日本制铁株式会社 | 药芯焊丝的制造方法、药芯焊丝以及焊接接头的制造方法 |
CN111819030B (zh) * | 2018-03-28 | 2021-09-07 | 日本制铁株式会社 | 药芯焊丝的制造方法以及焊接接头的制造方法 |
JP2022121317A (ja) * | 2021-02-08 | 2022-08-19 | 株式会社神戸製鋼所 | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3793429B2 (ja) * | 2001-07-12 | 2006-07-05 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
JP4586489B2 (ja) * | 2004-10-22 | 2010-11-24 | 住友金属工業株式会社 | 海浜耐候性に優れた鋼材と構造物 |
JP5704573B2 (ja) * | 2012-04-25 | 2015-04-22 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | 原油油槽鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
JP5717688B2 (ja) * | 2012-04-25 | 2015-05-13 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | 原油油槽鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
JP2015139784A (ja) * | 2014-01-27 | 2015-08-03 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | 2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法 |
-
2016
- 2016-09-21 JP JP2016184790A patent/JP6658423B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2018047486A (ja) | 2018-03-29 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5717688B2 (ja) | 原油油槽鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP5384312B2 (ja) | 耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP5557790B2 (ja) | 2電極水平すみ肉co2ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP6658423B2 (ja) | 耐食鋼の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP6432714B1 (ja) | フラックス入りワイヤの製造方法、フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 | |
JP5014189B2 (ja) | 2電極すみ肉ガスシールドアーク溶接方法 | |
JP6658424B2 (ja) | 耐食鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP6939508B2 (ja) | 耐食鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 | |
JP4838100B2 (ja) | 耐候性鋼用水平すみガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP5662086B2 (ja) | Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP7364448B2 (ja) | 海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP6432715B1 (ja) | フラックス入りワイヤの製造方法、フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 | |
JP6848479B2 (ja) | 耐食鋼の溶接金属及びサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤ | |
JP5361797B2 (ja) | 水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP4841238B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP6463234B2 (ja) | 原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP7346328B2 (ja) | 水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒 | |
JPH10286692A (ja) | 耐プライマ性ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP6787171B2 (ja) | 耐食鋼のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ | |
JP2003112287A (ja) | 海浜耐候性鋼溶接用フラックス入りワイヤ | |
JP2004243350A (ja) | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190415 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20191212 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200107 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200120 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6658423 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |