JP7346328B2 - 水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒 - Google Patents

水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒 Download PDF

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Description

本発明は、水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒に関し、特に低温靭性が良好な溶接金属が得られ、プライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接においてピットなどの溶接欠陥が発生せず、優れたビード形状が得られるなど溶接作業性が良好で、かつ、生産性にも優れる水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒に関する。
近年、建築、橋梁及び船舶などの溶接構造物の大型化に伴って490MPa級高張力鋼以上の鋼板が使用されているが、使用環境が低温の場合も考慮して溶接金属の低温靭性向上の要求が高まっている。
しかし、水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒は、1パス溶接での溶着量と脚長を確保するために通常の被覆アーク溶接棒に比べて太径心線で被覆外径が厚く長尺であるため、溶接金属中に比較的多くの酸化物が残留し、溶接金属の低温靭性が低下する傾向がある。
また、水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒は、通常品と比べて太径径心線で被覆外径が厚いので、生産面で溶接棒生産の乾燥時に被覆割れが生じやすく、製品の歩留りが低く、生産性が悪いという問題点がある。
一方、海洋地域などの過酷な環境下で長時間使用される箇所では、鋼板表面に防錆を目的にプライマを塗装したプライマ塗装鋼板が広く使用されている。このようなプライマ塗装鋼板を用いた溶接構造物の溶接では、複雑な構造物の溶接が可能で、溶接能率が高く、溶接金属の品質を均一にできるグラビティ溶接による太径での水平すみ肉溶接用低水素系覆アーク溶接棒が使用されるが、溶接時に鋼板表面に塗装したプライマが蒸気化してピットが発生しやすく、また、アンダーカットなどのビード形状不良も発生しやすいという問題点がある。
このような状況下において、溶接金属の低温靭性が良好で、グラビティ溶接で良好なビード形状が得られ、プライマ塗装鋼板での溶接でもピットなどの溶接欠陥が発生せず、かつ、生産性にも優れた低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒が開示されている。
例えば、特許文献1には、平均粒径が50~90μmの高炭素フェロマンガン、マグネシアクリンカー、マグネサイト、金属弗化物の含有量を規定することで、良好なビード形状が得られる低水素系被覆アーク溶接棒が開示されている。しかし、特許文献1に記載された低水素系被覆アーク溶接棒は、高炭素フェロマンガンを含有することでスラグ流動性が良くなり、ビード形状が改善する反面、溶接金属中にCを多く含有するので、溶接金属の強度が高くなり、靭性が低下する。また、高炭素フェロマンガンの粒径が比較的細かいので、被覆の乾燥割れが発生しやすい。さらに、特許文献1に記載の低水素系被覆アーク溶接棒には、脱酸剤などが全く記載されていないので、プライマ塗装鋼板で溶接する場合、十分な耐ピット性が得られず、ピットが発生しやすいという問題点がある。
また、特許文献2には、Ti、AlまたはMgなどの強脱酸剤による相乗効果によって、溶接金属を低酸素化し、溶接金属の低温靭性を改善した低温鋼用低水素系被覆アーク溶接棒が開示されている。しかし、特許文献2に記載された低温鋼用被覆アーク溶接棒では、溶接金属の低温靭性の向上は図れるものの、良好なビード形状は得ることができない。また、水素または水と反応性が高い金属元素を多く含むので、被覆の乾燥割れが発生しやすくなるという問題点がある。
さらに、特許文献3には、被覆剤中にNi-Mg合金を含有させることで、溶接金属を低酸素化して破壊靭性を改善する低水素系被覆アーク溶接棒が開示されている。しかし、特許文献3に記載の低水素系被覆アーク溶接棒は、良好な溶接金属の低温靭性が得られるものの、良好なビード形状が得られず、プライマ塗装鋼板で溶接する場合には十分な耐ピット性が得られずピットが発生しやすい。また、溶接棒製造時の乾燥の際に被覆割れが発生しやすいという問題点があった。
特開平5-261592号公報 特開平10-175094号公報 特開平9-327793号公報
そこで本発明は、かかる問題点に鑑みて案出されたものであって、-60℃の低温で靭性が良好な溶接金属が得られ、プライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接において、ピットなどの溶接欠陥が発生せず、アンダーカットのない良好なビード形状が得られるなど溶接作業性に優れ、かつ、生産性が良好な水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、鋼心線に被覆剤が塗布されている水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒において、被覆剤全質量に対する質量%で、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:5~15%、金属弗化物の1種または2種以上の合計:1~10%、Ti酸化物のTiO2換算値の合計:8~18%、Si酸化物のSiO2換算値の合計:8~18%、Al酸化物のAl23換算値の合計:1~6%、MgO:5~15%、C及びCを含む合金中のCの合計:0.1~0.3%、Mn:2~8%、Ni:1~5%、Mg:0.1~2.0%、前記Ni及びMgはNi-Mg合金:1~5%を含み、鉄粉:20~40%、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:1~6%を含有し、その他は塗布剤、鉄合金からのFe分及び不可避不純物からなる被覆剤を前記鋼心線に35~55%の被覆率で塗布してなることを特徴とする。
また、被覆剤全質量に対する質量%で、Al:0.1~0.6%をさらに含有することも特徴とする。
さらに、被覆剤全質量に対する質量%で、MnO:0.1~3.0%をさらに含有することも特徴とする水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒にある。
本発明の水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒によれば、低温で優れた靭性の溶接金属が得られ、プライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接でもピットなどの溶接欠陥が発生せず、アンダーカットのない良好なビード形状が得られるなど溶接作業性が良好で、かつ、生産性にも優れるので、溶接の品質向上が図れる。
本発明者らは、水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒の溶接金属の低温靭性について鋭意研究し、NiとMgの一部をNi-Mg合金に置換して被覆剤中に含有させることによって溶接金属の低温靭性を改善できることを見出して本発明を完成した。
水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒は、低温で良好な溶接金属の靭性を確保する目的として、Ni、Mnや強脱酸剤であるAlやMg、Al-Mgなどを含有している。特に、Mgは、高温での酸素との反応性が高く、強脱酸剤としては優れている金属元素である。しかし、Mgの融点は約650℃であり、溶接棒の生産時の焼成温度400~500℃の温度域でMg表面が酸化され、本来のMgとしての脱酸能力が十分に発揮されなくなる。また、溶接棒の生産時に水分を含む固着剤を添加するが、Mgは水との反応性も高いので、Mgの含有量が多いと、固着剤中の水分とMgが反応してしまい、溶接棒の乾燥中に被覆割れを生じやすくなるという問題点があった。
本発明者らは、Mg以外の脱酸剤として、Si、Mn、Si-Mnなどの脱酸剤についてさらに検討した結果、これら脱酸剤を適量添加することで生産時の被覆の被覆割れを抑制することができた。しかし、Mgを含有した時と同等の溶接金属の酸素量を得ようとすると、溶接金属中の合金成分が過剰となり低温靭性を改善するには至らなかった。
そこで、本発明者らは、水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒において、低温靭性に有効な強脱酸剤について検討した結果、NiとMgの含有量を規定し、かつ、融点が約1200℃と高いNi-Mg合金を適量添加することで、焼成温度400~500℃でもMgの酸化が抑制され、Mgが強脱酸剤として脱酸能が低減することなく機能できるので、溶接金属の低温靭性向上に有効であり、Alを適量添加することで、さらに低温靭性を向上できることを突き止めた。また、C及びCを含む合金やMnを適量添加することで、十分な溶接金属の強度を確保できることも突き止めた。
さらに、本発明者らは、Ni-Mg合金を適量添加することで、Mg単体としての含有量が抑えられるので、生産時の乾燥の被覆割れを低減することが可能となり、生産性が向上できることを突き止めた。
溶接作業性に関しては、本発明者らは、アーク吹付け及びアーク安定性は金属炭酸塩、Na酸化物及びK酸化物、C及びCを含む合金、Ti酸化物及び鉄粉を適量添加することで良好になり、スパッタ発生量及びヒューム発生量を低減できることを見出した。また、スラグ被包性及びスラグ剥離性はSi酸化物及びMgOを適量添加することで、ビード形状はTi酸化物、Si酸化物、C及びCを含む合金、Al酸化物及びNi-Mg合金を適量添加することで良好になり、溶接時の棒焼けは鉄粉を適量添加することで防止できることを突き止めた。
また、本発明者らは、ピットなどの溶接欠陥は、金属弗化物や脱酸剤であるMn及びMgを適量添加することで、強いアークを維持しながら溶融池内の酸素を十分に脱酸できるので、ピットなどの溶接欠陥を防止できることを見出した。
以下、本発明の水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒の被覆剤の成分組成及び成分組成の限定理由について詳細に説明する。なお、各成分組成の含有量は、被覆剤全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときには単に%と記載することとする。
[金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:5~15%]
金属炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マンガンなどから添加され、アーク雰囲気中で分解して炭酸ガスを発生して溶融池に侵入しようとする酸素、窒素及び水素などのガス成分から保護するとともに、アークの吹付けを強くして溶融池の撹拌を高めることでピットなどの溶接欠陥の発生を防止する効果がある。金属炭酸塩の1種または2種以上の合計が5%未満であると、シールド効果が不足及びアークの吹付けが弱くなり、ピットなどの溶接欠陥が発生しやすくなる。一方、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計が15%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてアンダーカットが発生しやすくなり、ビード形状が不良となる。したがって、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計は5~15%とする。
[金属弗化物の1種または2種以上の合計:1~10%]
金属弗化物は、蛍石、弗化マグネシウム、弗化バリウム、弗化アルミニウム、氷晶石、弗化ナトリウム、弗化リチウムなどから添加され、溶融スラグの流動性を調整するとともに、弗素の蒸気圧が高いので、酸素、窒素及び水素などのガス成分から溶融地を保護する効果がある。金属弗化物の1種または2種以上の合計が1%未満では、溶融地のシールド性が劣化し、ピットなどの溶接欠陥が発生しやすくなる。一方、金属弗化物の1種または2種以上の合計が10%を超えると、溶融スラグの融点が低下し、スラグ剥離性が不良となる。したがって、金属弗化物の1種または2種以上の合計は1~10%とする。
[Ti酸化物のTiO換算値の合計:8~18%]
Ti酸化物は、ルチール、酸化チタン、チタン酸ナトリウム、チタンスラグ、イルミナイトなどから添加され、アーク安定剤及びスラグ粘性の調整剤として作用し、アークを安定にしてスパッタ発生量を少なくし、ビード形状を良好にする効果がある。Ti酸化物のTiO換算値の合計が8%未満では、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。また、Ti酸化物のTiO換算値の合計が8%未満では、スラグの粘性が悪くなってビード形状が不良になる。一方、Ti酸化物のTiO換算値の合計が18%を超えると、スラグが緻密になりスラグ剥離性が不良となる。したがって、Ti酸化物のTiO換算値の合計は8~18%とする。
[Si酸化物のSiO換算値の合計:8~18%]
Si酸化物は、珪砂、長石、水ガラスなどから添加され、スラグ粘性の調整剤及びスラグ被包性を良好にする効果がある。Si酸化物のSiO換算値の合計が8%未満では、スラグ被包性が悪くなり、ビード形状が不良になる。一方、Si酸化物のSiO換算値の合計が18%を超えると、スラグの粘性が高くなり、溶融池と溶融スラグの距離が近くなるので、スラグ被包性が不良となる。したがって、Si酸化物のSiO換算値の合計は8~18%とする。
[Al酸化物のAl換算値の合計:1~6%]
Al酸化物は、アルミナ、長石、マイカなどから添加され、溶融スラグの粘度を調整してビード形状を良好にする効果がある。Al酸化物のAl換算値の合計が1%未満では、溶融スラグの粘度が低くなり、ビード形状が不良になる。一方、Al酸化物のAl換算値の合計が6%を超えると、スラグの粘性が高くなることで、溶融池と溶融スラグの距離が近くなり、スラグ被包性が不良となる。したがって、Al酸化物のAl換算値の合計は1~6%とする。
[MgO:5~15%]
MgOは、マグネシアクリンカーなどから添加され、スラグ剥離性を良好にする効果がある。MgOが5%未満では、スラグの凝固温度が低く、スラグ剥離性が不良になる。一方、MgOが15%を超えると、スラグの凝固温度が過剰に高くなり、ビード形状が不良になる。したがって、MgOは5~15%とする。
[C及びCを含む合金中のCの合計:0.1~0.3%]
Cは、黒鉛やFe-Mnなどの合金粉にCが付随している状態で添加され、溶接金属の強度を向上させ、アークの吹付けを強くして溶接金属の溶込みを深くしてビード形状を良好にする効果がある。C及びCを含む合金中のCの合計が0.1%未満では、アークの吹付けが弱くなり、十分な溶込み深さが得られず、ビード形状が不良となり、溶接金属の強度が低下する。一方、C及びCを含む合金中のCの合計が0.3%を超えると、溶接金属中にC量が増え、溶接金属の強度が高くなり、溶接金属の靭性が低下する。さらに、C及びCを含む合金中のCの合計が0.3%を超えると、溶融地のアーク温度が上昇し、ヒューム発生量が多くなるとともに、アークの吹付けが過剰に強くなり、スパッタ発生量も増加する。したがって、C及びCを含む合金中のC換算値の合計は0.1~0.3%とする。
[Mn:2~8%]
Mnは、金属Mn、Fe-Mn、などの合金粉などから添加され、脱酸剤として作用し、溶接金属の強度及び靭性を向上させる効果がある。Mnが2%未満では、脱酸不足となって溶接金属の強度及び靭性が低下するとともに、ピットなどの溶接欠陥が発生しやすくなる。一方、Mnが8%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなる。したがって、Mnは2~8%とする。
[Ni:1~5%]
Niは、金属Ni、Fe-Ni、Ni-Mg合金などの合金粉などから添加され、溶接金属の強度及び靭性を向上させる効果がある。Niが1%未満では、必要な溶接金属の靭性が得られない。一方、Niが5%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなる。したがって、Niは1~5%とする。
[Mg:0.1~2.0%]
Mgは、金属Mg、Al-Mg、Ni-Mg合金などの合金粉などから添加され、強脱酸剤として作用し、ピットなどの溶接欠陥を防止し、溶接金属の靭性を向上する効果がある。Mgが0.1%未満では、脱酸不足となり、溶接金属の靭性が低下する。また、Mgが0.1%未満では、ピットなどの溶接欠陥が発生しやすくなる。一方、Mgが2.0%を超えると、溶接金属の靭性は向上するものの、溶接棒生産の乾燥時に被覆割れが発生しやすくなり、製品歩留りが低下し、生産性が悪くなる。したがって、Mgは0.1~2.0%とする。
[Ni-Mg合金:1~5%]
前述の金属Ni及び金属Mgを含むNi-Mg合金は、生産性を向上させるとともに、ビード形状を良好にする効果がある。前述のNi及びMgを含むNi-Mg合金が1%未満では、被覆剤中のMgやAl-Mgが相対的に多くなり、乾燥時の被覆割れが発生しやすくなる。また、Ni及びMgを含むNi-Mg合金が1%未満では、溶接時に保護筒の溶融が不均一となり、アンダーカットが発生しやすくなり、ビード形状が不良になる。一方、前述のNi及びMgを含むNi-Mg合金が5%を超えると、スラグ剥離性が不良となる。したがって、前述のNi及びMgを含むNi-Mg合金は1~5%とする。なお、Ni-Mg合金は、Niが70~90%、Mgが10~30%の割合とする。
[鉄粉:20~40%]
鉄粉は、アークを安定にする効果がある。鉄粉が20%未満では、アークが不安定になってスパッタ発生量が多くなる。一方、鉄粉が40%を超えると、被覆剤に電流が流れやすくなり、棒焼けを発生しやすくなる。したがって、鉄粉は20~40%とする。
[Na酸化物及びK酸化物のNaO換算値及びKO換算値の合計:1~6%]
Na酸化物及びK酸化物は、水ガラス中の珪酸ナトリウム及び珪酸カリウム、カリ長石、カリガラス及びソーダ長石などから添加され、アークを安定にしてスパッタ発生量を低減する効果がある。Na酸化物及びK酸化物のNaO換算値及びKO換算値の合計が1%未満では、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Na酸化物及びK酸化物のNaO換算値及びKO換算値の合計が6%を超えると、アークの吹付けが過剰に強くなり、アンダーカットが発生しやすくなり、ビード形状が不良となる。したがって、Na酸化物及びK酸化物のNaO換算値及びKO換算値の合計は1~6%とする。
[Al:0.1~0.6%]
Alは、金属Al、Fe-Al、Al-Mgなどの合金粉などから添加され、強脱酸剤として作用し、ピットなどの溶接欠陥を防止し、溶接金属の靭性をさらに向上する効果がある。Alが0.1%未満では、ピットなどの溶接欠陥の発生を抑制する効果が十分に得られず、溶接金属の靭性の向上効果も十分に得られない。一方、Alが0.6%を超えると、Alが溶接金属中に過剰に留まってしまい、溶接金属中の酸素量が高くなり、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Alは0.1~0.6%とする。
[MnO:0.1~3.0%]
MnOは、アーク雰囲気中で吸熱反応により分解され、アークの吹付けをさらに強くする効果を有する。MnOが0.1%未満では、アークの吹付けを強くする効果が十分に得られない。一方、MnOが3.0%を超えると、アークの吹付けが過剰に強くなり、アンダーカットが発生しやすくなり、ビード形状が不良となる。したがって、MnOは0.1~3.0%とする。
なお、本発明の水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒の被覆剤中のその他は、上述の成分のほか、生産性の観点からアルギン酸ソーダ、セルロースなどの塗布剤が0.1~3%、Fe-Mn、Fe-Ni、Fe-Alなどの鉄合金からのFe分及び不可避不純物である。
また、使用する鋼心線は、JIS G 3523 SWY11を用いることが好ましい。さらに、鋼心線への被覆剤の被覆率は35~55%であることが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により更に詳細に説明する。
表1に示す各種被覆剤を直径5.0mm、長さ700mmのJIS G 3523 SWY11の鋼心線(鋼心線全質量に対し、C:0.06質量%、Si:0.09質量%、Mn:0.51%、P:0.008%、S:0.003質量)に、表1に示す組成成分の被覆剤を被覆率40~50%で塗布した後に400℃で焼成した溶接棒を各種試作し、生産性、溶接作業性、耐ピット性及び機械的性質について調査した。
Figure 0007346328000001
生産性の評価は、各種試作溶接棒を500kg生産し、生産時に被覆割れなどの有無を目視で確認し、被覆外観が良好で欠陥がないものを良好とした。
溶接作業性の評価は、各種試作溶接棒を用い、JIS G 3106 SM490A、板厚12mm×幅100mm×長さ1000mmの鋼板表面に膜厚25~35μmのウォッシュプライマを塗装したプライマ塗装鋼板をT字型に組んだT字試験体にて、交流溶接機を用いてグラビティ溶接で溶接電流200Aで水平すみ肉溶接を行い、アークの吹付け、アーク安定性、スパッタ発生量及びヒューム発生量、ビード形状、スラグ被包性、スラグ剥離性の良否、棒焼けの有無を目視で調査した。なお、耐ピット性は、溶接ビード全長にピットが全く発生しなかったものを良好とした。
機械的性質の評価は、JIS G 3106 SM490Aの板厚20mmの鋼板を用い、JIS Z 3111に準じて交流溶接機で溶着金属試験を行い、引張試験片(A1号)と衝撃試験片(Vノッチ試験片)を採取して引張試験及び衝撃試験を行った。引張試験は引張強さが490~600MPa、衝撃試験は試験温度-60℃で各々繰り返し3回の吸収エネルギーの平均値が34J以上を良好とした。これらの調査結果を表2にまとめて示す。
Figure 0007346328000002
表1及び表2中溶接棒No.1~溶接棒No.15が本発明例、溶接棒No.16~溶接棒No.30は比較例である。本発明である溶接棒No.1~溶接棒No.15は、被覆剤中の金属炭酸塩の合計、金属弗化物の合計、Ti酸化物のTiO換算値の合計、Si酸化物のSiO換算値の合計、Al酸化物のAl換算値の合計、MgO、C及びCを含む合金中のCの合計、Mn、Ni、Mg、Ni-Mg合金、鉄粉、Na酸化物及びK酸化物のNaO換算値及びKO換算値の合計が適量であるので、生産時に被覆割れの発生は無いなど生産性は良好であった。また、アークの吹付けが良好であり、アークが安定しており、ヒューム発生量及びスパッタ発生量が少なく、ビード形状が良好であり、スラグの被包性及びスラグ剥離性が良好で、棒焼けが発生しないなど溶接作業性が良好であった。また、溶着金属中にピットの発生も無く、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーともに良好であった。
また、溶接棒No.4、6、8、9、12、13、15は、Alが適量添加されているので、溶着金属の吸収エネルギーが60J以上とさらに良好であった。さらに、溶接棒No.5、8、9、11、13~15は、MnOが適量添加されているので、アークの吹付けが強くて良好であった。
比較例中の溶接棒No.16は、金属炭酸塩の合計が多いので、アークの吹付けが過剰に強くなり、アンダーカットが発生してビード形状が不良であった。また、C及びCを含む合金中のCの合計が多いので、ヒューム発生量及びスパッタ発生量が多かった。さらに、溶着金属中にCが過剰に固溶し、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。
溶接棒No.17は、金属炭酸塩の合計が少ないので、アークの吹付けが弱く、ピットが発生した。また、Mnが多いので、溶着金属の引張強さが高かった。
溶接棒No.18は、金属弗化物の合計が多いので、スラグ剥離性が不良であった。また、Na酸化物及びK酸化物のNaO換算値及びKO換算値の合計が多いので、アークの吹付けが過剰に強く、アンダーカットが発生してビード形状が不良であった。
溶接棒No.19は、金属弗化物の合計が少ないので、溶融池のシールド性が低下し、ピットが発生した。また、Ni-Mg合金が少ないので、アンダーカットが発生してビード形状が不良であった。さらに、Ni-Mg合金が少ないので、生産時に乾燥割れが発生し、生産性が悪かった。
溶接棒No.20は、C及びCを含む合金中のCの合計が少ないので、アークの吹付けが弱く、溶込みが十分に得られずにビード形状が不良であった。また、溶着金属の引張強さが低かった。さらに、MnOが少ないので、アークの吹付けを強くする効果は得られなかった。
溶接棒No.21は、Mnが少ないので、脱酸不足となり、ピットが発生し、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。また、Alが少ないので、ピットの発生の抑制及び溶着金属の吸収エネルギーを向上する効果は得られなかった。
溶接棒No.22は、Ti酸化物のTiO換算値の合計が多いので、スラグが緻密になり、スラグ剥離性が不良であった。また、Si酸化物のSiO換算値の合計が少ないので、スラグの被包性が悪く、ビード形状が不良であった。
溶接棒No.23は、Ti酸化物のTiO換算値の合計が少ないので、アークが不安定で、スパッタ発生量が多く、ビード形状が不良であった。また、Al酸化物のAl換算値の合計が多いので、スラグ被包性が不良であった。
溶接棒No.24は、Si酸化物のSiO換算値の合計が多いので、スラグ被包性が不良であった。また、MnOが多いので、アークの吹付けが過剰に強く、アンダーカットが発生してビード形状が不良であった。
溶接棒No.25は、Al酸化物のAl換算値の合計が少ないので、ビード形状が不良であった。また、Niが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。
溶接棒No.26は、MgOが多いので、スラグの凝固が早くなり、ビード形状が不良であった。また、Na酸化物及びK酸化物のNaO換算値及びKO換算値の合計が少ないので、アークが不安定となり、スパッタ発生量が多かった。
溶接棒No.27は、MgOが少ないので、スラグの凝固温度が低く、スラグ剥離性が不良であった。また、鉄粉が少ないので、被覆の通電性が悪くなり、アークが不安定となり、スパッタ発生量が多かった。
溶接棒No.28は、Niが多いので、溶着金属の引張強さが高かった。また、Mgが多いので、乾燥時で被覆割れが発生し、生産性が悪かった。
溶接棒No.29は、Mgが少ないので、脱酸不足となり、ピットが発生した。また、Mgが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。さらに、鉄粉が多いので、溶接時に棒焼けが発生した。
溶接棒No.30は、Ni-Mgが多いので、スラグ剥離性が不良となった。また、Alが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。

Claims (3)

  1. 鋼心線に被覆剤が塗布されている水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒において、
    被覆剤全質量に対する質量%で、
    金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:5~15%、
    金属弗化物の1種または2種以上の合計:1~10%、
    Ti酸化物のTiO2換算値の合計:8~18%、
    Si酸化物のSiO2換算値の合計:8~18%、
    Al酸化物のAl23換算値の合計:1~6%、
    MgO:5~15%、
    C及びCを含む合金中のCの合計:0.1~0.3%、
    Mn:2~8%、
    Ni:1~5%、
    Mg:0.1~2.0%、
    前記Ni及びMgはNi-Mg合金:1~5%を含み、
    鉄粉:20~40%、
    Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:1~6%を含有し、
    その他は塗布剤、鉄合金からのFe分及び不可避不純物からなる被覆剤を前記鋼心線に35~55%の被覆率で塗布してなることを特徴とする水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒。
  2. 被覆剤全質量に対する質量%で、Al:0.1~0.6%をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒。
  3. 被覆剤全質量に対する質量%で、MnO2:0.1~3.0%をさらに含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水平すみ肉溶接用低水素系被覆アーク溶接棒。
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