JP2021090980A - 海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】水平すみ肉溶接において、スパッタ発生量が少なく、溶接作業性が良好なガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供する。【解決手段】ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.01〜0.09%、Si:0.1〜0.7%、Mn:1.0〜2.5%、Cu:0.01〜0.7%、Ni:2.0〜4.0%、Al:0.02〜0.40%を含有し、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、TiO2換算値の合計:2.0〜4.0%、SiO2換算値の合計:0.1〜1.0%、ZrO2換算値の合計:0.1〜0.6%、FeO換算値の合計:0.01〜0.5%、Al2O3換算値の合計:0.01〜0.5%、Na換算値及びK換算値の合計:0.01〜0.3%、Mg:0.05〜0.8%、F換算値の合計:0.01〜0.2%を含有することを特徴する。【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼構造物等に使用される耐候性鋼、特に、海からの飛来塩分濃度の高い環境下で水平すみ肉溶接する際に用いられる海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、スパッタ発生量が少なく、多層盛溶接時のビード形状が良好、かつ、強度及び靭性に優れた溶接金属を得る上で好適な海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
海岸地帯などの塩害が発生する場所で使用される鋼構造物の防食としては、普通鋼材への塗装、めっき鋼材の使用、溶射技術による表面皮膜の形成、ステンレス鋼やチタン合金などの高合金耐食材の使用、鋼板成分を調整した耐候性鋼材を無塗装で適用する例が挙げられる。
塗装処理の場合、塗装の塗り替えを定期的に実施する必要性があるため、維持管理費用がかかるといった問題がある。また、めっき処理の場合、鋼構造物の熱応力による変形により、めっきが剥離してしまう問題がある。溶射処理の場合も同様に形成した表面の防食皮膜の剥離や経年劣化が問題となっている。さらに高合金材の場合、材料コストが高く、主要構造部材には使い難いという問題がある。
耐候性鋼材は無塗装で適用した場合、使用開始から数年から十数年で鋼材表面に防食性に優れた緻密な安定さび層を形成し、この安定さび層がその後の鋼材の腐食の進行を抑制するため、橋梁、鉄骨構造物、船舶などの幅広い鋼構造物に適用されている。しかしながら、海からの飛来塩分濃度の高い海浜地域、あるいは山間部で融雪剤を散布する地域では鋼板表面に付着した塩分によって保護性に優れた安定さび層の形成が阻害されるため、無塗装では適用できないという問題点がある。
そのため、飛来する海塩粒子の多い地域用の塗装やめっき処理を必要としない鋼材の開発が進められている。鋼材の化学成分が質量%でNiを1.0〜5.5%、Cuを0.30〜1.0%を含有させ、Crを無添加とすることで安定さび層の破壊を防止する鋼板が開発されている。
このような耐候性鋼に適用される、溶接作業性が良好なフラックス入りワイヤが、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。しかし、特許文献1の開示技術は、JIS Z3320に規定されるCu、Cr、Niを含有させることで鋼表面に安定さび層を形成させるタイプであり、塩分腐食環境下での溶接には向いていない。また、特許文献2の開示技術は、スラグ形成剤であるTiO2を多量に含有しているため、多層盛水平すみ肉溶接において、スラグを除去せずに連続溶接を行った際に、次パス溶接中にビード表面を覆っていたスラグが自然剥離し、ビード止端部が不揃いになりやすい。
また、特許文献3の開示技術は、脱酸効果を有するAl及びMgが含有されていないため、溶接金属の低温での靭性が得られないという問題点がある。
特開2011−125904号公報 特開2000−288781号公報 特開2000−102893号公報
そこで本発明は、上述した問題点に檻みて案出されたものであり、耐候性鋼を溶接するにあたり、水平すみ肉溶接において、スパッタ発生量が少なく、多層盛溶接時のビード形状及びビード外観が優れるなど溶接作業性が良好な海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
すなわち本発明の要旨は、鋼製外皮にフラックスを充填してなる海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.01〜0.09%、Si:0.1〜0.7%、Mn:1.0〜2.5%、Cu:0.01〜0.7%、Ni:2.0〜4.0%、Al:0.02〜0.40%を含有し、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Ti酸化物のTiO2換算値の合計:2.0〜4.0%、Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.1〜1.0%、Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.1〜0.6%、Fe酸化物のFeO換算値の合計:0.01〜0.5%、Al酸化物のAl23換算値の合計:0.01〜0.5%、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種類以上のNa換算値及びK換算値の合計:0.01〜0.3%、Mg:0.05〜0.8%、金属弗化物のF換算値の合計:0.01〜0.2%を含有し、残部が鋼製外皮のFe、フラックス中の鉄粉のFe分、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする。
本発明を適用した海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、海浜耐候性鋼の水平すみ肉溶接において、スパッタ発生量が少なく、多層盛溶接時のビード形状及びビード外観が良好であり、特に低温での靭性に優れた溶接金属が安定して得られるなど溶接部の品質向上を図ることができる。
本発明者らは、海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤについて、水平すみ肉溶接において、スパッタ発生量が少なく、多層盛溶接時のビード形状及びビード外観に優れた溶接作業性を得るべく種々検討を行った。
その結果、フラックスに添加するCu及びNi量を適量とし、Crを無添加とすることで、溶接金属と母材成分の成分バランスの最適化を図り、飛来する海塩粒子に対する耐食性向上を図る方法を見出した。
また、C、Ti酸化物、Si酸化物、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物、Mg、金属弗化物を適量とすることによってアークが安定してスパッタ発生量が少なくなり、Si、Mn、Al、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Fe酸化物、Al酸化物、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物、金属弗化物を適量とすることによって、ビード形状が良好になることを見出した。
さらに、フラックス入りワイヤ中のC、Si、Mn、Cu、Ni及びMgを適量とすることによって、機械的性能、特に低温での靭性に優れた溶接金属が安定して得られることを見出した。
以下、本発明の海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成及びその含有量と各成分組成の限定理由について説明する。なお、各成分の組成は、ワイヤ全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときには単に%と記載して表すこととする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.01〜0.09%]
Cは、アークを安定させて溶滴サイズを細粒化させる効果がある。Cが0.01%未満では、アークが不安定で溶滴の細粒化が困難となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Cが0.09%を超えると、Cが溶接金属中に過剰に歩留まり靱性が低下する。したがって、Cは0.01〜0.09%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属粉及び合金粉等から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi:0.1〜0.7%]
Siは、溶接時に一部が溶接スラグとなってビード形状を良好にし、溶接作業性の向上に寄与する。Siが0.1%未満では、溶接ビード形状が不良となる。一方、Siが0.7%を超えると、Siが溶接金属中に過剰に歩留まり靱性が低下する。したがって、Siは0.1〜0.7%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:1.0〜2.5%]
Mnは、Siと同様、溶接時に一部が溶接スラグとなってビード形状を良好にし、溶接作業性の向上に寄与するとともに脱酸剤として作用し溶接金属の低温靭性を向上させる効果がある。Mnが1.0%未満では、溶接金属中にMnが十分に歩留まらず、溶接金属の低温靭性が低下するとともにビード形状が不良となる。一方、Mnが2.5%を超えると、Mnが溶接金属中に過剰に歩留まり、強度が過剰になって靱性が低下する。したがって、Mnは1.0〜2.5%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加される。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCu:0.01〜0.7%]
Cuは、さび層形成時にさび粒子の結晶化・粗大化を抑制し、さび層の緻密さを保持するために必須の元素である。Cuが0.01%未満では、この効果が十分に得られず、溶接金属の耐食性が低下する。一方、Cuが0.7%を超えると、高温割れが発生しやすくなり、また溶接金属の靭性が低下する。したがって、Cuは0.01〜0.7%とする。なお、Cuは、鋼製外皮に含まれる成分の他、ワイヤ表面のCuめっき、フラックスからの金属Cu、Fe−Cu等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でNi:2.0〜4.0%]
Niは、高濃度の飛来海塩粒子環境下での耐食性を向上させる上で最も重要な元素であり、飛来海塩粒子に含まれるClイオンのさび層への侵入を抑え、さび層内部のCl濃度増加を抑制する効果を持っている。そのため、鋼板表面に構成されているさび層の結晶化及び粗大化を抑えることができ、さび層の結晶化を保ち、飛来海塩粒子環境下での耐食性を向上させることができる。Niが2.0%未満では、この効果が十分に得られず、溶接金属の耐食性が低下する。一方、Niが4.0%を超えると、耐食性が飽和状態になると共に溶接金属部に高温割れが発生し易くなる。またNiが4.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎ、靭性が低下する。したがって、Niは2.0〜4.0%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni、Ni−Mg等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でAl:0.02〜0.40%]
Alは、脱酸剤として作用するとともに溶融中にAl酸化物となってスラグの粘性を高めて、水平すみ肉溶接で溶融プールの後退を抑制し十分なスラグ被包性を保持する効果がある。しかし、Alが0.02%未満では、この効果が十分に得られず、ビードが凸状になり上脚部にアンダーカットやスラグ焼き付きが発生する。一方、Alが0.40%を超えると、ビード形状に滑らかさがなくなり止端部が膨らんだ形状となる。また、Alが0.40%を超えると溶融スラグの凝固むらが生じてスラグ剥離性が不良となる。したがって、Alは0.02〜0.40%とする。なお、Alは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Al、Fe−Al、Al−Mg等の合金粉末から添加できる。
[フラックス中のTi酸化物のTiO2換算値の合計:2.0〜4.0%]
Ti酸化物は、溶接時のアーク安定化に寄与するとともに、溶接スラグとなって溶接ビード全体を均一に被包する作用を有する。またTi酸化物は、アークを持続して安定させスパッタ発生量を低減させるといった溶接作業性の向上に寄与する効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が2.0%未満では、これらの効果が十分に得られず、アークが不安定になってスパッタ発生量が多く、ビード形状が劣化する。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が4.0%を超えると、アークが安定してスパッタ発生量が少なくなるが、スラグ量が多くなりスラグが自然剥離しやすくなるため、スラグ除去を行わない多層盛溶接時にビード形状が劣化する。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は2.0〜4.0%とする。なお、Ti酸化物は、フラックスからのルチールサンド、酸化チタン、チタンスラグ、イルミナイト等から添加される。
[フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計:0.1〜1.0%]
Si酸化物は、溶融スラグの粘性や融点を調整してスラグ被包性を向上させる効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.1%未満では、この効果が十分に得られずビード形状が不良となる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が1.0%を超えると、スパッタ発生量が多くなり、さらに、ビード止端部(下板側)が膨れビード形状及びビード外観が不良となる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値は0.1〜1.0%とする。なお、Si酸化物は、フラックスからの珪砂、カリ長石、珪酸ナトリウム、ジルコンサンド等から添加できる。
[フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計:0.1〜0.6%]
Zr酸化物は、溶融スラグの粘性や融点を調整し、スラグ被包性を高めてビード形状を平滑にする効果がある。Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.1%未満では、この効果が十分に得られずビード形状が不良となる。一方、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.6%を超えると、ビード形状が平滑にならず、凸状のビード形状となるとともにスラグ剥離性が不良になる。したがって、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は0.1〜0.6%とする。なお、Zr酸化物は、フラックスからの酸化ジルコニウム、ジルコンサンド等から添加できると共にTi酸化物に微量含有される。
[Fe酸化物のFeO換算値:0.01〜0.5%]
FeO、Fe23等のFe酸化物は、溶融スラグの粘性及び凝固温度を調整し、ビード止端部の膨らみをなくし、下板とのなじみ性を良好にする。Fe酸化物のFeO換算値が0.01%未満であると、ビード止端部の形状が不良になる。一方、Fe酸化物のFeO換算値が0.5%を超えると、スラグ被包状態が悪くなりスラグ剥離性が不良でビード止端部が膨らみビード形状及びビード外観も不良となる。したがって、Fe酸化物のFeO換算値は0.01〜0.5%とする。なお、Fe酸化物は、フラックスからの酸化鉄、ミルスケール等から添加できると共にTi酸化物に微量含有される。
[フラックス中のAl酸化物のAl23換算値の合計:0.01〜0.5%]
Al酸化物は、スラグ形成剤としてスラグ被包性を高め、ビード形状及びスラグ剥離性を良好にする効果がある。Al酸化物のAl23換算値の合計が0.01%未満では、この効果が十分に得られず、スラグ被包性が悪くなり、ビード形状及びスラグ剥離性も不良となる。一方、Al酸化物のAl23換算値の合計が0.5%を超えると、スラグ被包むらが生じ、スラグ被包性が悪くなり、ビード形状及びスラグ剥離性が不良となる。したがって、Al酸化物のAl23換算値の合計は0.01〜0.5%とする。なお、Al酸化物はフラックスからのアルミナ、カリ長石等から添加される。
[フラックス中のNa酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種類以上のNa換算値とK換算値の合計:0.01〜0.3%]
Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物は、アークを安定にする効果があり、また、スラグ形成剤として溶融スラグの凝固過程の急激な粘性増加を抑えて平滑なビード形状にする作用がある。Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa換算値とK換算値の合計が0.01%未満では、その効果は十分に得られず、アークが不安定となる。一方、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa換算値とK換算値の合計が0.3%を超えると、スラグ剥離性、ビード形状及びビード外観が不良となり、スパッタ発生量が多くなる。したがって、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種類以上のNa換算値とK換算値の合計は0.01〜0.3%とする。なお、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物は、珪酸ソーダ、珪酸カリからなる水ガラスの固質分及びフラックスからのカリ長石、NaF、KF、K2SiF6等から添加でき、Na換算値及びK換算値はこれらに含有されるNa及びK量の合計である。
[フラックス中のMg:0.02〜0.4%]
Mgは、強脱酸剤であり溶接金属中の酸素を低減し、溶接金属の靱性を高める効果がある。Mgが0.02%未満では、この効果が十分に得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Mgが0.4%を超えると、溶接時にアーク中で激しく酸素と反応してスパッタ発生量が多くなって溶接作業性が不良となる。したがって、Mgは0.02〜0.4%とする。なお、Mgは、フラックスからの金属Mg、Al−Mg等の合金粉末から添加される。
[フラックス中の金属弗化物のF換算値の合計:0.01〜0.2%]
金属弗化物は、アークの指向性を高めて安定した溶融プールにするとともにスラグの粘性を調整する効果がある。金属弗化物のF換算値の合計が0.01%未満では、この効果が十分に得られずアークが不安定となる。一方、金属弗化物のF換算値の合計が0.2%を超えると、アークが不安定になりスパッタが多く発生する。また金属弗化物のF換算値の合計が0.2%を超えると、スラグの粘性が低下してビード上脚部に除去しにくい薄いスラグが残り、スラグ剥離性が不良となり、ビード形状は凸状になる。したがって、金属弗化物のF換算値の合計は0.01〜0.2%とする。なお、金属弗化物は、フラックスからのCaF2、NaF、KF、LiF、MgF2、K2SiF6、AlF3等から添加でき、F換算値はこれらに含有されるF量の合計である。
本発明に係る海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成形し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継ぎ目の無いワイヤと、鋼製外皮の合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継ぎ目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用してもよい。但し、鋼製外皮に継ぎ目が無いワイヤは、ワイヤ中の水分量を低減することを目的に焼鈍が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、鋼製外皮に継ぎ目が無いワイヤを用いるのが好ましい。
本発明の海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの残部は、鋼製外皮のFe、成分調整のためにフラックスから添加する鉄粉中のFe、Fe−Mn、Fe−Si合金等の鉄合金粉のFe分及び不可避不純物である。また、特に制限はしないが、フラックス充填率は生産性の観点から、ワイヤ全質量に対して8〜20%とし、Mo、V、Nbは機械性能の強度の観点から、Mo:0.1%以下、V:0.05%以下、Nb:0.05%以下とするのが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
まず、鋼製外皮にJIS G3141 SPCC(C:0.002〜0.06質量%)を使用し、該鋼製外皮をU字型に成形、フラックスを充填率8〜20%で充填してC字型に成形した後、鋼製外皮の合わせ目を溶接して造管、伸線し、表1及び表2に示す各種成分のフラックス入りワイヤを試作した。なお、試作したワイヤ径は1.2mmとした。
Figure 2021090980
Figure 2021090980
これら試作ワイヤを用い、水平すみ肉溶接による溶接作業性を調査した。
溶接作業性は、板厚20mmの海浜耐候性鋼用鋼板をT字に組んだ試験体に、表3に示す溶接条件で、多層盛水平すみ肉溶接を行い、その際のアーク状態、スパッタ発生状態、スラグ被包性、スラグ剥離性、ビード外観形状、多層盛溶接時のスラグ状態の良否を目視確認で調査した。
Figure 2021090980
溶着金属試験は、板厚20mmの海浜耐候性鋼用鋼板を用い、JIS Z 3111に準じて溶接を行い、溶着金属の板厚方向中心から引張試験片(A0号)及び衝撃試験片(2mmVノッチ試験片)を採取して機械試験を実施した。引張試験の評価は、引張強さが550〜650MPaを良好とした。衝撃試験の評価は、−20℃におけるシャルピー衝撃試験を行い、繰返し3本の吸収エネルギーの平均が65J以上を良好とした。その際、初層溶接時に高温割れの有無を目視確認した。これら結果を表4及び表5にまとめて示す。
耐候性(耐食性)の試験は、溶着金属試験を調査した試験片から余盛りを研削し、溶接ビードを長手方向とした厚さ20mm、幅100mm、長さ200mmの短冊状にしたものを試験片とし、千葉県富津市臨海部にて暴露試験を3年間行った。なお、暴露地点は離岸距離が5m(飛来海塩粒子量1日平均1.3mg/dm2)とした。評価は溶接金属部の片面(表側)における平均板厚減少量を測定し、0.2mm以下を良好とした。
Figure 2021090980
Figure 2021090980
表1及び表4のワイヤ記号W1〜W12は本発明例、表2及び表5のワイヤ記号W13〜W28は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W1〜W12は、フラックス入りワイヤ中の鋼製外皮とフラックスの合計でC、Si、Mn、Cu、Ni、Al、フラックス中のTi酸化物のTiO2換算値の合計、Si酸化物のSiO2換算値の合計、Zr酸化物のZrO2換算値の合計、Fe酸化物のFeO換算値の合計、Al酸化物のAl23換算値の合計、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa換算値及びK換算値の合計、Mg、金属弗化物のF換算値の合計が適正であるので、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状・外観が良好で、高温割れが発生しなかった。また、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーも良好であり、耐食性も良好であった。
比較例中ワイヤ記号W13は、Cが少ないので、アークが不安定になりスパッタ発生量が多かった。また、Al酸化物のAl23換算値の合計が多いので、スラグ被包むらが生じ、ビード形状及びスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W14は、Cが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、金属弗化物のF換算値の合計が多いので、アークが不安定になりスパッタ発生量が多く、ビード形状及びスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W15は、Siが少ないので、ビード形状が不良であった。また、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa換算値及びK換算値の合計が少ないので、アーク状態が不安定な状態であった。
ワイヤ記号W16は、Siが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が少ないので、アーク状態が不安定でありスパッタ発生量も多く、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W17は、Mnが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーが低く、ビード形状も不良であった。また、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が多いので、多層盛溶接時にスラグが剥離してビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W18は、Mnが多いので、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が多いので、スパッタ発生量が多く、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W19は、Cuが少ないので、溶接金属の耐食性が不良であった。
ワイヤ記号W20は、Cuが多いので、溶接部初層に高温割れが発生し、溶着金属の吸収エネルギーも低値であった。また、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物のNa換算値及びK換算値の合計が多いので、スパッタ発生量が多く、スラグ剥離性、ビード形状及びビード外観が不良であった。
ワイヤ記号W21は、Niが少ないので、溶着金属の耐食性が不良であった。また、Alが少ないので、スラグ被包性とビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W22は、Niが多いので、溶接部初層に高温割れが発生し、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。また、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が少ないので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W23は、Alが多いのでビード形状、スラグ剥離性が不良であった。また、Mgが少ないので溶着金属の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W24は、Fe酸化物のFeO換算値の合計が多いのでスラグ被包性、スラグ剥離性、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W25は、Si酸化物のSiO2換算値の合計が少ないのでビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W26は、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が多いのでビード形状、スラグ剥離性が不良であった。また、金属弗化物のF換算値の合計が少ないので、アーク状態が不安定な状態であった。
ワイヤ記号W27は、Fe酸化物のFeO換算値の合計が少ないので、ビード形状が不良であった。また、Mgが多いので、スパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W28は、Al酸化物のAl23換算値の合計が少ないのでスラグ被包性、スラグ剥離性、ビード形状が不良であった。

Claims (1)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなる海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.01〜0.09%、
    Si:0.1〜0.7%、
    Mn:1.0〜2.5%、
    Cu:0.01〜0.7%、
    Ni:2.0〜4.0%、
    Al:0.02〜0.40%を含有し、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Ti酸化物のTiO2換算値の合計:2.0〜4.0%、
    Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.1〜1.0%、
    Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.1〜0.6%、
    Fe酸化物のFeO換算値の合計:0.01〜0.5%、
    Al酸化物のAl23換算値の合計:0.01〜0.5%、
    Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種類以上のNa換算値及びK換算値の合計:0.01〜0.3%、
    Mg:0.02〜0.4%、
    金属弗化物のF換算値の合計:0.01〜0.2%を含有し、
    残部が鋼製外皮のFe、フラックス中の鉄粉のFe分、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする海浜耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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