JP5361797B2 - 水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

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本発明は、軟鋼および490〜590MPa級高張力鋼、低温用鋼や耐候性鋼などにショッププライマを塗装した鋼板の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、特に耐ピット性、溶接作業性を向上させる上で好適な水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
船舶、橋梁構造物などの分野では、溶接母材とする鋼材の表面にショッププライマや無機ジンクプライマ等の一次防錆塗料が防錆の観点から塗布される。このようなプライマにより塗装されたプライマ塗装鋼板では、すみ肉溶接により溶接する比率が高く、係るすみ肉溶接の溶接能率向上のために溶接材料面についても改良要望が依然として強い。
しかしながら、上述した需要分野においてプライマ塗装鋼板を特に水平すみ肉溶接した場合、鋼材に塗布された一次防錆塗料に起因して、かかる溶接金属にピットが生成し易くなり、ビード形状およびビード外観が劣化してしまう。これらピットや外観形状の劣化が生じることにより、溶接品質が低下し、再度手直しのための溶接を余儀なく行わざるを得ない場合もあり、労力の負担の増大、工程数の増加という問題点も引き起こす。このため、従来において、これらの問題点の解決を目的としたフラックス入りワイヤが種々提案されている。
プライマ塗装鋼板の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤとしては、例えば、特許文献1の開示技術のようにTiO2を主体とするスラグ形成剤を少量含有するもの(以下、TiO2系低スラグワイヤという。)が一般的に使用されている。また近年、特許文献2〜4の開示技術のようなZrO2を主体とするスラグ形成剤を少量含有するもの(以下、ZrO2系低スラグワイヤという。)が提案されている。
特開平3−180298号公報 特開平11−5193号公報 特開2000−42787号公報 特開2004−298912号公報
しかしながら、従来のZrO2系低スラグワイヤは、特に高電流で高速度の溶接条件で用いた場合の耐ピット性が良好であるという利点があるものの、比較的低電流側で使用した場合には、所望の耐スパッタ性を得ることができず、ビード形状、ビード外観、スラグ剥離性などの溶接作業性の改良が必要であった。
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するために、溶接電流および溶接速度など広い溶接条件範囲でプライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接に使用して優れた耐ピット性が得られるとともに良好な溶接作業性を確保可能な水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、TiO2系低スラグワイヤおよびZrO2系低スラグワイヤについて、両者間の溶接特性を比較検討した。
例えば造船や橋梁構造物分野で行われている一般的な施工条件として、目標脚長5〜7mmに対して、ワイヤ径1.4mm、溶接速度30〜50cm/分(溶接電流290〜340A)のような比較的低電流で低速度の溶接条件下では、TiO2系低スラグワイヤの方が、ZrO2系低スラグワイヤよりもビード形状、外観および溶接作業性(アーク安定性、スパッタ、スラグ剥離性など)が良好であった。これに対してZrO2系低スラグワイヤは、上述の如き低電流で低速度の溶接条件下では、大粒のスパッタが発生し、またビード形状は凸状でごつごつしたビード外観になりやすく、さらにスラグ剥離性が劣る。
しかしながら、例えばワイヤ径1.4mm、溶接速度60cm/分以上、溶接電流360A以上のような高電流で高速度の水平すみ肉溶接を行った場合、ZrO2系低スラグワイヤの方が、TiO2系低スラグワイヤよりも耐ピット性が良好であった。
すなわち、本発明者は、ZrO2系低スラグワイヤは、特に高電流で高速度の溶接条件で用いた場合の耐ピット性が良好であるという利点があるものの、比較的低電流側で使用した場合の耐スパッタ性、ビード形状、ビード外観、スラグ剥離性などの溶接作業性の改良が必要であることを見出した。このため、本発明者らは、かかるZrO2系低スラグワイヤ特有の問題点を解決するために種々のワイヤを試作して鋭意検討した。その結果、溶融プールの激しい攪拌作用とスラグ被包性から、プライマ燃焼ガスを外部に放出しやすくすることでピットの発生を防止し得るZrO2をスラグ形成剤の主要成分とし、ビードの凸状化を防止する観点からSiO2を添加し、また各種機能を発揮させる観点から他の成分の含有比率を調整し、更にスラグの厚さを薄くしつつ耐ピット性を向上させる観点からTiO2を極力少なくした水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを発明した。
本発明の要旨は、鋼製外皮にフラックスを充填してなる水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、Zr酸化物のZrO2換算値:1.0〜2.0%、Si酸化物のSiO2換算値:0.5〜2.0%、AlおよびAl酸化物のAl23換算値の和、ならびにMgおよびMg酸化物のMgO換算値の和、の合計:0.1〜1.0%、MgおよびMg酸化物のMgO換算値の和:0.5%以下、Fe酸化物のFeO換算値、ならびにMn酸化物のMnO換算値の合計:0.2〜0.7%、NaおよびKの酸化物および化合物のNa2O換算値ならびにK2O換算値の合計:0.05〜0.20%を含有し、TiおよびTi酸化物のTiO2換算値:0.1%以下で、残部は主に鋼製外皮のFe分、鉄粉、合金剤、脱酸剤および不可避不純物であることを特徴とする。
また、BiおよびBi酸化物のBi換算値の和:0.005〜0.035%を更に含有することを特徴とする。
さらに、金属弗化物のF換算値:0.01〜0.10%を更に含有することも特徴とする。
本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、高電流で高速度の溶接条件のみならず低電流域で使用した場合にも、プライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接において優れた耐ピット性が得られるとともに溶接作業性が良好であるので、溶接の高能率化および溶接部の品質向上が図れる。
以下、本発明を実施するための形態として、水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤについて詳細に説明をする。
本発明者らは、前記課題を解決するために種々のワイヤを試作して、詳細を検討した。その結果、ZrO2をスラグ形成剤の主要成分にすることによって、ZrO2による強いアーク力で溶融プールの激しい攪拌作用と、スラグ生成量を少なくしても均一なスラグ被包状態が得られることを利用して、プライマ燃焼ガスを溶融プールから外部に放出しやすくしピットの発生を防止することができることを見出した。また、SiO2は溶融スラグの粘性を調整してアーク力による溶融プールの過度の後退を抑制してビードの凸状化を防止することができることを見出した。
さらに、TiO2を極力少なくすることによりスラグの厚さを従来のスラグより薄くして、さらに耐ピット性を向上させることができた。
以下に本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成および含有量の限定理由について説明する。なお、各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で示す。
[Zr酸化物のZrO2換算値:1.0〜2.0%]
ZrO2は、ジルコンサンドおよび酸化ジルコニウム等より添加され、溶融スラグの凝固温度を高くしてスラグの粘性を高め、薄いスラグにして凝固速度を早める。また、溶融プールの撹拌作用を高めてプライマ燃焼ガスを溶融プールから外部に放出しやすくしピットの発生を防止することができる。Zr酸化物のZrO2換算値が1.0%未満では、特に低電流で低速度の溶接条件で溶融プールの撹拌作用が低下してピットが発生しやすい。一方、Zr酸化物のZrO2換算値が2.0%を超えると、特に低電流で低速度の溶接条件でアークが粗くなり大粒のスパッタが多発する。また、溶融スラグの凝固が早くなりすぎてスラグの粘性が急激に増加するためにピットやガス溝が発生しやすくなる。このため、ビード外観は粗いアーク状態と溶融プールが凝固しやすいことが相まって表面に凹凸が生じて滑らかさが無くなる。したがって、Zr酸化物のZrO2換算値は1.0〜2.0%とする。
[Si酸化物のSiO2換算値:0.5〜2.0%]
SiO2は、珪砂やジルコンサンド、珪砂ソーダ等より添加され、溶融スラグの粘性を高め、スラグ剥離性を改善する作用を有する。Si酸化物のSiO2換算値が0.5%未満では、スラグ被包状態が悪くスラグ剥離が不良になり、ビード形状およびビード外観も不良になる。一方、Si酸化物のSiO2換算値が2.0%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。さらに、ビード止端部(下板側)が膨れビード形状およびビード外観が不良になり、ピットやガス溝も発生しやすくなる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値は0.5〜2.0%とする。
[AlおよびAl酸化物のAl23換算値の和、ならびにMgおよびMg酸化物のMgO換算値の和、の合計:0.1〜1.0%、MgおよびMg酸化物のMgO換算値の和:0.5%以下]
AlおよびMgは、金属Al、金属Mg、Al−Mg合金などより添加され、強脱酸剤として溶接金属の衝撃金属の衝撃値を向上させる作用を有する。また、このときの脱酸生成物であるAl23、MgOはアルミナ粉(Al23)、マグネシア粉(MgO)より添加されるAl酸化物やMg酸化物と同様に溶融スラグ成分として作用して、ビード立板側に発生しやすいアンダーカットを防止し、ビード止端部のなじみ性を良好にする。AlおよびAl酸化物のAl23換算値の和、ならびにMgおよびMg酸化物のMgO換算値の和、の合計が0.1%未満では、ビード立板側にアンダーカットが発生し、ビード形状およびビード外観が不良となる。一方、当該Al23換算値の和と当該MgO換算値の和の合計が1.0%を超えると、スラグ生成量が多くなり耐ピット性が劣化し、またスラグ被包むらが起こりスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良になる。
ただし、当該MgO換算値の和が0.5%を超えるとアークが粗くなりスパッタの多発やスラグ被包状態が悪くなりビード形状およびビード外観が不良となり、ピットも発生しやすくなる。したがって、AlおよびAl酸化物のAl23換算値の和、ならびにMgおよびMg酸化物のMgO換算値の和、の合計は0.1〜1.0%とし、ただし、MgおよびMg酸化物のMgO換算値の和は0.5%以下とする。
[Fe酸化物のFeO換算値、ならびにMn酸化物のMnO換算値の合計:0.2〜0.7%]
FeO、Fe23等のFe酸化物、ならびにMnO、MnO2等のMn酸化物は、Fe酸化物のFeO換算値、ならびにMn酸化物のMnO換算値の合計が0.2%未満では、下板側ビード止端部でビードのなじみ性が悪くなりビード形状が凸状になり、スラグ剥離性も不良となる。一方、当該FeO換算値と当該MnO換算値の合計が0.7%を超えると、スラグ被包状態が悪くなりスラグ剥離性が不良でビード止端部が膨らみビード形状およびビード外観も不良で、さらにヒューム発生量が多くなる。したがって、Fe酸化物のFeO換算値、ならびにMn酸化物のMnO換算値の合計:0.2〜0.7%とする。
[NaおよびKの酸化物および化合物のNa2O換算値ならびにK2O換算値の合計:0.05〜0.20%]
NaおよびKは、カリ長石または珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪酸化カリなどの弗素化合物より添加され、アーク安定剤としての作用だけではなく、スラグ形成剤として溶融スラグの凝固過程の急激な粘性増加を抑えて耐ピット性を高め、平滑なビード形状にする作用がある。NaおよびKの酸化物および化合物のNa2O換算値ならびにK2O換算値の合計が0.05%未満では、大粒のスパッタが多発し、ピットやガス溝なども発生しやすく表面に凹凸が生じてビード形状およびビード外観が不良になる。一方、当該Na2O換算値ならびに当該K2O換算値の合計が0.20%を超えると、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となり、スパッタやヒューム発生量も多くなる。したがって、NaおよびKの酸化物および化合物のNa2O換算値ならびにK2O換算値の合計は0.05〜0.20%とする。
[TiおよびTi酸化物のTiO2換算値:0.1%以下]
TiおよびTi酸化物を0.1%超添加すると、スラグの粘性が低くなり、スラグの凝固温度が低くなり、さらにスラグの厚さが厚くなり、ビードの下板側止端部が膨らみビード形状が不良となり、ピットも発生しやすくなる。したがって、TiおよびTi酸化物のTiO2換算値は0.1%以下とする。
[BiおよびBi酸化物のBi換算値の和:0.005〜0.035%]
Biは、金属Biや酸化Bi等により添加され、スラグ剥離性を向上させ、ビード表面に光沢を出しビード外観を良好にする作用を有する。BiおよびBi酸化物のBi換算値の合計が0.005%未満では、その効果が得られず、0.035%を超えると、ビード上部のスラグが流れて、ビード全面をスラグで被包することができなくなり、ビード外観が不良となる。したがって、BiおよびBi酸化物のBi換算値の和は0.005〜0.035%とする。
[金属弗化物のF換算値:0.01〜0.10%]
Fは、弗化ソーダや珪弗化カリ等より添加され、アークの指向性を高めて安定した溶融プールにするとともにスラグの粘性を調整して耐ピット性を良好にする作用を有する。金属弗化物のF換算値が0.01%未満では、粘性が高くピットが発生しやすくなる。一方、金属弗化物のF換算値が0.10%を超えると、スラグの粘性が低下してビード上脚部に除去しにくい薄いスラグが残りスラグ剥離性が不良となり、ビード形状は凸状になる。したがって、金属弗化物のF換算値は0.01〜0.10%とする。
以上、本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの構成要件の限定理由を述べたが、その他のワイヤ成分としては、軟鋼および490〜590MPa級高張力鋼、低温用鋼や耐候性鋼などフラックス入りワイヤの品種毎に規定されている溶着金属成分の機械試験および化学成分を満足するための元素と残部は主に鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉および不可避不純物である。上記元素としては外皮成分とフラックスの合計で、C:0.03〜0.10%、Si:0.3〜1.2%、Mn:1.0〜4.0%が好ましく、他は、溶接する鋼板の成分におよび溶着金属に要求される機械的性能に応じてNi、Cu、Crなどを単体または合金鉄で添加することができる。
また、本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼および低合金鋼の外皮内に、前記限定した成分のフラックスをワイヤ全質量に対して8〜18%程度充填後、孔ダイス伸線やカセットローラ圧延加工により所定のワイヤ径(0.9〜1.6mm)に縮径して製造する。なお、鋼製外皮に貫通した隙間がないシームレスまたは隙間があるシームタイプのいずれのワイヤも適用できる。
本発明によれば、水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分を上述した範囲内に調整することにより、高電流で高速度の溶接条件のみならず低電流域で使用した場合にも、プライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接において優れた耐ピット性が得られるとともに溶接作業性を向上させることができ、溶接の高能率化および溶接部の品質向上を図ることが可能となる。
上述した構成からなる本発明を適用した水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの実施例について詳細に説明をする。
先ず供試材として、軟鋼外皮にフラックスを充填後、縮径して(外皮の軟化および脱水素のため中間焼鈍を1回実施)、表1に示すフラックス充填率16.0%、ワイヤ径1.4mmの鋼製外皮に貫通した隙間がないシームレスタイプのフラックス入りワイヤを各種試作した。
Figure 0005361797
表1に示す成分からなる試作ワイヤを用いて、無機ジンクプライマ塗装鋼板のT字すみ肉試験体を用いて自動溶接機で水平すみ肉溶接試験を行った。試験体は鋼種SM490B、板厚12mm、試験体長さ1.0mであって、プライマ塗装鋼板のプライマ膜厚は約30〜40μmでT字すみ肉試験体の下板および立板端面にもプライマ塗装がある。これらの鋼板を加圧しながら下板と立板の間隙がない状態で仮付け溶接して試験体とした。
溶接条件は溶接電流300A(電源極性DC+)、アーク電圧30〜32V、溶接速度40cm/分、ワイヤ突出し長さ(チップ−母材間距離)25mm、シールドガスCO2ガス(ガス流量25リットル/分)の低電流で低速度の溶接条件で両側を同時溶接して、耐ピット性、ビード形状、ビード外観、スラグ剥離性、スパッタ発生状況を評価した。
なお、耐ピット性は○:ピットおよびガス溝なし、△:1〜10個/m、×:多発(11個/m以上)を示す。それらの結果を表2に示す。
Figure 0005361797
表1および表2中ワイヤNo.1〜8は本発明例、ワイヤNo.9〜21は比較例である。本発明例であるワイヤNo.1〜8は、ZrO2換算値、SiO2換算値、Al23換算値とMgO換算値の合計および単独でのMgO換算値、FeO換算値とMnO換算値の合計、およびNa2O換算値とK2O換算値の合計が、何れも本発明において規定した範囲にあり、TiO2換算値が何れも0.1%以下であり少ないので、耐ピット性、ビード形状、ビード外観、スラグ剥離性、スパッタ発生量がいずれも良好以上であった。なお、Biを含むワイヤNo.1、3、4および7はスラグ剥離性が非常に良好であり、金属弗化物を含むワイヤNo.1〜3、5および6はアークの指向性が高く安定した溶融プールが得られた。
さらに、別途ワイヤNo.1〜8を用いて溶接電流400A(電源極性DC+)、アーク電圧37〜38V、溶接速度90cm/分の高電流で高速度の溶接条件で同様に水平すみ肉溶接を実施した結果、耐ピット性、ビード形状、ビード外観およびスラグ剥離性が良好以上でスパッタ発生量も少なくて極めて満足な結果であった。
比較中ワイヤNo.9は、ZrO2換算値が本発明において規定した範囲より少ないので溶融プールの撹拌作用が低下してピットが発生した。また、F換算値が多いので、スラグの粘性が低下してビード上脚部に除去しにくい薄いスラグが残りスラグ剥離性が不良となり、ビード形状は凸状で不良であった。
ワイヤNo.10は、ZrO2換算値が本発明において規定した範囲より多いのでアークが粗くなりスパッタの発生量が多く、スラグの粘性が増加したために耐ピット性およびビード外観が不良であった。
ワイヤNo.11は、SiO2換算値が本発明において規定した範囲より少ないのでスラグ被包状態が悪くスラグ剥離が不良になり、ビード形状およびビード外観も不良であった。
ワイヤNo.12は、SiO2換算値が本発明において規定した範囲より多いのでスパッタ発生量が多く、ピットやガス溝も発生し、特にビード止端部(下板側)が膨れビード形状およびビード外観が不良であった。
ワイヤNo.13は、Al23換算値とMgO換算値の合計が本発明において規定した範囲より少ないので、ビード立板側にアンダーカットが発生し、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、弗素化合物を含有していないのでピットが4個生じた。
ワイヤNo.14は、Al23換算値とMgO換算値の合計が本発明において規定した範囲より多いので、スラグ生成量が多くなりピット性が多発し、スラグ被包むらが起こりスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観も不良であった。
ワイヤNo.15は、MgO換算値が本発明において規定した範囲より多いので、アークが粗くなりスパッタ発生量が多く、スラグ被包状態が悪く、ビード形状およびビード外観が不良となり、ピットも6個発生した。
ワイヤNo.16は、FeO換算値とMnO換算値の合計が本発明において規定した範囲より少ないので、下板側ビード止端部でビードのなじみ性が悪くなりビード形状が凸状となり、スラグ剥離も不良となった。また、Bi換算値が多いので、ビード上部のスラグが流れ、被包することができなくなりビード外観が不良であった。
ワイヤNo.17は、ZrO2換算値が本発明において規定した範囲より少ないので溶融プールの撹拌作用が低下してピットが発生した。また、FeO換算値とMnO換算値の合計が本発明において規定した範囲より多いので、スラグ被包性が悪くスラグ剥離性が不良でビード止端部が膨らみビード形状および外観も不良であった。
ワイヤNo.18は、Na2O換算値とK2O換算値の合計が本発明において規定した範囲より少ないので、大粒のスパッタが多発し、ピットやガス溝が発生し、ビード外観はごつごつした表面外観であった。
ワイヤNo.19は、Na2O換算値とK2O換算値の合計が本発明において規定した範囲より多いので、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となり、スパッタ発生量も多かった。また、弗素化合物を含有していないのでピットが2個生じた。
ワイヤNo.20は、TiO2換算値が本発明において規定した範囲より多いのでピットが発生し、ビード形状も不良であった。また、Bi換算値が本発明において規定した範囲より少ないので、ビード外観に光沢がなく、やや不良であった。
ワイヤNo.21は、TiO2換算値が本発明において規定した範囲より多いのでピットが発生し、ビード形状も不良であった。また、Bi換算値が本発明において規定した範囲より多いので、ビード上部のスラグが流れ、被包することができなくなりビード外観が不良であった。



Claims (3)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなる水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、
    Zr酸化物のZrO2換算値:1.0〜2.0%、
    Si酸化物のSiO2換算値:0.5〜2.0%、
    AlおよびAl酸化物のAl23換算値の和、ならびにMgおよびMg酸化物のMgO換算値の和、の合計:0.1〜1.0%、
    MgおよびMg酸化物のMgO換算値の和:0.5%以下、
    Fe酸化物のFeO換算値、ならびにMn酸化物のMnO換算値の合計:0.2〜0.7%、
    NaおよびKの酸化物および化合物のNa2O換算値ならびにK2O換算値の合計:0.05〜0.20%を含有し、
    TiおよびTi酸化物のTiO2換算値:0.1%以下で、残部は主に鋼製外皮のFe分、鉄粉、合金剤、脱酸剤および不可避不純物であることを特徴とする水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. BiおよびBi酸化物のBi換算値の和:0.005〜0.035%を更に含有することを特徴とする請求項1記載の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 金属弗化物のF換算値:0.01〜0.10%を更に含有することを特徴とする請求項1又は2記載の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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